(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】腹膜透析システム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/28 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
A61M1/28 130
A61M1/28 100
(21)【出願番号】P 2019572672
(86)(22)【出願日】2018-06-28
(86)【国際出願番号】 EP2018067436
(87)【国際公開番号】W WO2019002477
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-25
(31)【優先権主張番号】102017114401.3
(32)【優先日】2017-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597075904
【氏名又は名称】フレゼニウス メディカル ケア ドイッチェランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーベル ペーター
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-523304(JP,A)
【文献】特開平11-319075(JP,A)
【文献】特開2016-179179(JP,A)
【文献】特表2015-507944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0125693(US,A1)
【文献】特表2013-515520(JP,A)
【文献】特開2003-260130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14-1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの腹膜透析機を備える腹膜透析システムにおいて、
前記腹膜透析システムが、水を調製及び/又は計量するための少なくとも1つの給水ユニットと、少なくとも1つの濃縮物容器とを有し、
前記濃縮物容器が、少なくとも2つのコネクタを有し、又は、少なくとも2つのコネクタと連通し、
前記給水ユニット及び/又は前記腹膜透析機は、前記コネクタの一方用の少なくとも1つのレシーバを有し、
前記コネクタの少なくとも一方は、前記濃縮物容器に充填される前記水の分量を表すか又はこれに関して結論を出すことができる少なくとも1つの情報を有し、
前記給水ユニット又は前記腹膜透析機は、この情報を読み取って、読み取られた前記情報に従って水の添加を実行又は開始するように構成され、
他方のコネクタは異なる情報を含む、ことを特徴とする、腹膜透析システム。
【請求項2】
前記濃縮物容器が濃縮物バッグであり及び/又はその端部に前記コネクタが配置される少なくとも1つのホースが、前記濃縮物容器に配置されている、ことを特徴とする、請求項1に記載の腹膜透析システム。
【請求項3】
1又は複数の前記濃縮物容器が腹膜透析に必要とされる全ての物質を含み、前記物質は水で希釈した後に所望の濃度で存在し、前記物質は、電解質イオン及び少なくとも1つの浸透物質を含む、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の腹膜透析システム。
【請求項4】
前記腹膜透析機及び/又は前記給水ユニットが、異なる濃縮物容器のコネクタ用の複数のレシーバを有し、及び/又は前記腹膜透析機が、事前充填溶液容器用のコネクタのための少なくとも1つのレシーバを有する、ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項5】
前記1又は複数の濃縮物容器が、前記給水ユニットから前記濃縮物容器に水を添加することができる第1のホースと、前記濃縮物容器において調製された濃縮物を前記腹膜透析機に供給することができる第2のホースとを有し、
又は
前記1又は複数の濃縮物容器が、前記給水ユニットから前記濃縮物容器に水を添加することができ且つ前記濃縮物容器において調製された前記濃縮物が前記腹膜透析機に供給することができる唯一のホースを有する、ことを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項6】
前記1又は複数の濃縮物容器が少なくとも1つのホースを有し、前記少なくとも1つのホースにより前記給水ユニットから前記濃縮物容器に水を添加することができ、前記ホース内に少なくとも1つのフィルタ及び/又は少なくとも1つの逆止弁が配置される、ことを特徴とする、請求項1から5の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項7】
前記腹膜透析機が、前記情報を有する前記コネクタ用の少なくとも1つのレシーバを備え、前記腹膜透析機が、この情報を前記給水ユニットに伝達する伝達手段を更に有する、ことを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項8】
前記伝達手段は、有線又は無線方式で前記情報を伝達するように構成される、ことを特徴とする、請求項7に記載の腹膜透析システム。
【請求項9】
前
記コネクタが、前記濃縮物のタイプ、特に成分及び/又はこれらの濃度に関する1又は2個以上の情報を有する、ことを特徴とする、請求項1~8の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項10】
前記給水ユニットが、少なくとも1つの調整ポンプを有し、及び/又は少なくとも1つのスケールが、前記濃縮物容器の重量を検出するために設けられ、前記スケールと前記給水ユニットとの間の通信のために通信手段が存在し、これを介して前記濃縮物容器の現在の重量に関する前記情報を前記給水ユニットに伝達することができる、ことを特徴とする、請求項1~9の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項11】
濃縮物の良好な溶解のために前記濃縮物容器を移動させる少なくとも1つの移動要素が設けられ、及び/又は前記濃縮物容器に圧力サージを生じさせるための手段が存在する、ことを特徴とする、請求項1~10の何れか一項に記載の腹膜透析システム。
【請求項12】
腹膜透析用の溶液として使用するために希釈後に使用される濃縮物を含む濃縮物容器であって、前記濃縮物容器は、少なくとも2つのコネクタを有し、前記コネクタの少なくとも一方は、前記濃縮物容器に充填される水の量を表すか又はこれに関して結論を出すことができる1又は2個以上の情報を有し、他方のコネクタは異なる情報を含む、濃縮物容器。
【請求項13】
腹膜透析溶液を製造する方法であって、請求項1~11の何れか一項に記載の腹膜透析システムが前記腹膜透析
溶液を製造することを特徴とする、方法。
【請求項14】
前記方法は、前
記コネクタを前記給水ユニット及び/又は前記腹膜透析機に導入する段階を含み、前記コネクタに配置された情報が読み取られ、読み取られた前記情報に従って前記濃縮物容器への水の添加が行われる、ことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの腹膜透析機を備える腹膜透析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
腹膜透析は、通常の治療現場の患者によって実行される。
【0003】
腹膜透析は、医療行為又は外来診療所とすることができる。腹膜透析は、多くの場合、自宅、又は自宅の寝室で行われる。新鮮な透析液の溶液バッグは、腹膜透析治療の一部として使用され、上記透析液は、ホースシステム及び患者のカテーテルを介して患者の腹腔内に導入され、特定の時間期間の間ここに留まる。腹膜は、廃棄物が患者の血液から腹膜を介して透析溶液に移送される形態で、透析液と患者の血液との間の交換を可能にする透析膜として機能する。透析液は、特定の滞留時間後に再び腹腔から排出される。
【0004】
特に、患者が自宅で治療を行う場合、溶液バッグを家に輸送しなければならず、また十分な数を保管しなければならないという点で、より大きな物流上の取り組みがある。溶液バッグの製造には一定の費用を伴うので、患者にとってこの提供がより高価になるという更なる欠点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の基本的な目的は、比較的小さな物流上の取り組みと安い費用で腹膜透析治療を自宅でも実行することができる腹膜透析システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する腹膜透析システムにより達成される。
【0007】
従って、腹膜透析システムは更に、水を調製及び/又は計量するための少なくとも1つの給水ユニットと、少なくとも1つの濃縮物容器とを有し、濃縮物容器は、少なくとも1つのコネクタを有するか又はこれと連通して、給水ユニット及び/又は腹膜透析機がコネクタ用の少なくとも1つのレシーバを有し、コネクタは、好ましくはバーコードの形態で、濃縮物容器に充填される水の分量を表すか、又はこれに関して結論を出すことができる少なくとも1つの情報、を有し、給水ユニット又は腹膜透析機は、この情報を読み取って、読み取られた情報に従って水の添加を実行又は開始するように構成される、ようにすることができる。
【0008】
従って、本発明によれば、給水ユニットによって、1又は複数の濃縮物容器内に水が満たされ、このようにして治療に好適な溶液容器が得られ、すぐに使用できる透析溶液又はその一部が調製されるようにすることができる。これは、このような溶液容器を患者に輸送する必要がなく、ポイントオブケア(POC)での濃縮物容器の提供がかなり十分であり、後者が、例えば患者の自宅の部屋で可能であることを意味する。完成した透析液は、そこでのみ調製される。濃縮物容器は、完成した溶液バッグ又は他の溶液容器よりも実質的に少ないスペースを占有し、軽量で安価であるため、これにより輸送及び保管が容易になる。
【0009】
本発明の構成内の用語「容器」は、箱などの固定壁を備えたもの、又はバッグなどの柔軟な壁を備えたものなど、全ての構想される全ての容器を含む。
【0010】
濃縮物容器内にどのくらいの水が充填されなければならないかに関する情報は、濃縮物容器上に直接配置することができる1又は複数のコネクタ上に配置されるが、濃縮物容器の内部空間に接続されたホースの先端にあることが好ましい。この点に関して、情報は、水の分量(質量、体積など)を具体的に含めることができ、又はこれに関して間接的に結論を出すのを許可することもできる。これは、例えば、情報が、濃縮物のタイプと完全な透析溶液を得るために濃縮物に添加される水の分量とのみを含むように、又はこのような情報から、例えば記憶媒体からその一部が読み取られるように行うことができる。
【0011】
或いは、電解質溶液などの他の流体も、完成した透析溶液の調製に使用できる。
【0012】
「完成した透析液」は、患者に供給できる透析液として理解されたい。「完成した透析液の一部」とは、完成した透析液が2つ以上の部分から例えば腹膜透析機で混合されるようなものと理解されるべきであり、すなわち、この場合、完成した透析液は、完成した透析液の一部分から腹膜透析機でのみ調製される。
【0013】
給水ユニットは、好ましくは、従来の家庭用給水システム又は従来の蛇口に接続されるように構成される。
【0014】
或いは、異なる流体調製装置、例えば、蛇口の代わりに給水タンク又は液体タンクの形態で提供することも構想することができる。
【0015】
給水ユニットは、例えば少なくとも1つのROユニット及び/又は1又は2以上のフィルタを備える。精製水は、ROユニットにおける逆浸透作用により、水道水から調製される。1又は2以上のフィルタにおいて水の更なる処理により、更に精製することができる。フィルタは、ROユニットの上流側及び/又は下流側に接続できる。
【0016】
ROユニットの代わりに、脱イオン化用ユニット、蒸留用ユニット、又は前述のユニットのうちの1又は2以上の組み合わせなど、純水を調製するために異なるユニットが存在することもできる。
【0017】
濃縮物容器は濃縮バッグであること、及び/又はその端部にコネクタが配置された少なくとも1つのホースが濃縮物容器に配置されることを構想することができる。1又は2以上のホースは、水がホースを通って、濃縮物容器内を満たすことができるように濃縮物容器、又は容器の内部空間と流体連通しており、完成した透析液又はその一部は、上記ホースを介して又は異なるホースを介して、濃縮物容器から腹膜透析機に排水することができる。
【0018】
好ましくは、濃縮物容器は、少なくとも2つのコネクタを有するか、又はこれと連通し、コネクタの少なくとも1つが指定された情報を含み、他のコネクタは、同じ情報又は異なる情報を含み、腹膜透析機及び給水ユニットの両方が各々、これらのコネクタのそれぞれのコネクタに対して少なくとも1つのレシーバを有するようにすることができる。
【0019】
従って、本発明の好ましい実施形態は、各々がコネクタを備えた少なくとも2つのホースで設計された濃縮物容器を備える。1つのコネクタは、給水ユニットへの接続に役に立ち、1つのコネクタは、腹膜透析機への接続に役に立つ。
【0020】
これらのコネクタの少なくとも1つは、濃縮物容器内に充填される水の分量を表し又はこれに関して結論を出すことができる上記の指定された情報を含む。この情報は、コネクタ上に、例えばバーコードの形態で、又は読み取り可能な異なるコードの形態で配置することができる。給水ユニット及び/又は腹膜透析機は、このコネクタを受け取るための少なくとも1つのレシーバと、コネクタ上の情報を読み取るように構成された読み取り手段とを含む。
【0021】
給水ユニットがこのレシーバを含む場合、及びコネクタがそこにプラグ接続されている場合、給水ユニットは、所望の分量の水を直接供給し、濃縮物容器に計量することができる。
【0022】
腹膜透析機がこのレシーバを含む場合、及びコネクタがそこにプラグ接続されている場合、腹膜透析機は、所望の分量の水を供給して濃縮物容器に計量できるように情報を給水ユニットに伝達する。
【0023】
代替の実施形態では、腹膜透析機によって水の分量の計量が行われることも構想される。
【0024】
他のコネクタも同様に、情報を提供するコネクタとすることができ、又は情報を含まない標準コネクタとすることもできる。しかしながら、他のコネクタは、同様に、例えばバーコードの形態で又は異なるコードの形態で情報を含むコネクタとすることができる。両方のコネクタは、同じ情報又は異なる情報を含むことができる。
【0025】
1又は複数の濃縮物容器は、好ましくは、腹膜透析に必要とされ且つ水で希釈した後に所望の濃度で存在する全ての物質を有し、この物質は、以下のグループ、すなわち、電解質イオン、及び少なくとも1つの浸透物質、特にグルコース、及び任意選択的に1又は複数のバッファーを含む。1又は複数の濃縮物は、この点で濃縮物溶液及び乾燥濃縮物であり得る。
【0026】
腹膜透析機及び/又は給水ユニットは、異なる濃縮物容器のコネクタ用の複数のレシーバを有することができ、及び/又は腹膜透析機は、充填済み溶液容器用のコネクタ用の少なくとも1つのレシーバを有することができる。
【0027】
複数のレシーバが存在する場合、複数の濃縮物容器を接続することができ、連続又は同時に水を満たすことができる。濃縮物容器は、同一の濃縮物又は異なる濃縮物を含むことができる。
【0028】
また、透析溶液を既に含んでいるこのような溶液容器も接続できるように、完成した溶液容器の標準コネクタ用の少なくとも1つのレシーバが存在することが構成することができる。
【0029】
1又は複数の濃縮物容器は、給水ユニットから濃縮物容器に水を添加することができる第1のホースを有することができ、濃縮物容器において調製された濃縮物を腹膜透析機に供給することができる第2のホースを有することができる。第1のホースは、添加された水の分量に関する情報を含むコード、特にバーコードを備えることができ、また、給水ユニットに導入することができ、他のホースは、腹膜透析機に接続されている標準コネクタで構成することができる。しかしながら、このホースはまた、例えば溶液のタイプ及び分量に関する情報を有するコネクタを設けることができる。
【0030】
しかしながら、1又は複数の濃縮物容器は、水が給水ユニットから濃縮物容器に添加することができ、並びに濃縮物容器において調製された濃縮物が腹膜透析機に供給することができる1つのホースだけを有することができることも構想することができる。
【0031】
更に、1又は複数の濃縮物容器は、給水ユニットから濃縮物容器に水を添加することができる少なくとも1つのホースを有し、少なくとも1つのフィルタ及び/又は少なくとも1つの逆止弁が上記ホース内にあることが構想することができる。フィルタは、濃縮物が希釈される水の更なる浄化をもたらし、逆止弁は、流体が濃縮物容器から給水ユニットに逆流せず、逆方向にのみ流れることを保証する。
【0032】
フィルタ及び/又は逆止弁は、使い捨てとして構成することができる。
【0033】
腹膜透析機は、情報を有するコネクタ用の少なくとも1つのレシーバを備えることができ、腹膜透析機は更に、この情報を給水ユニットに伝達する伝達手段を有することができる。これは、コネクタが腹膜透析機にプラグ接続されているが、給水ユニットにはプラグ接続されていない場合に必要となる。この場合、コネクタ用のレシーバとコネクタ情報の読み取りユニットは、給水ユニット内で免除することができる。
【0034】
これらの伝達手段は、有線又は無線で情報を伝達するように構成することができる。
【0035】
1又は複数のコネクタは、濃縮物のタイプ、特に成分及び/又はこれらの濃度に関する1又は2以上の情報を有することができる。
【0036】
1又は複数の濃縮物は、1又は複数の濃縮物容器内に液体又は固体の形態で存在することができる。
【0037】
給水ユニットは、少なくとも1つの調整ポンプを有することができる。これにより、所望の分量の水が1又は複数の濃縮物容器に導入される。
【0038】
ポンプの代わりに、好ましくは1%の精度で水を計量する他の任意の計量ユニットを提供することもできる。
【0039】
給水ユニット及び/又は腹膜透析機は、可動ラック又はトローリー上に、又は腹膜透析機のベースとして同時に機能を果たす容器内にも配置することができる。
【0040】
腹膜透析機は、好ましくはAPD機であるが、他の任意の所望の腹膜透析機も本発明の構成内で使用することができる。
【0041】
複数の濃縮物容器が接続されている場合、これらは異なる容量又は同じ容量を有することができる。
【0042】
一般に、濃縮物容器の容積は、同様にコネクタのコード、特にバーコードに含まれる情報を表すようにすることができる。治療全体で1つのバッグのみを使用する場合、例示的な容量は、2リットル、5リットル、又は15リットルである。
【0043】
給水ユニットは、例えば、WiFi、Bluetooth(登録商標)、又は他の技術を介して、プラットフォーム及び/又は腹膜透析機に無線で接続することができる。
【0044】
また、濃縮物容器の重量を検出するために少なくとも1つのスケールが設けられること、並びに濃縮物容器の現在の重量に関する情報を給水ユニットに伝達することができる、スケールと給水ユニット間の通信用通信手段が存在することも実施可能である。従って、非調整ポンプを使用することができる。この場合、濃縮物容器の充填量は、スケールを介して定められる。スケール又はこれに接続された別のユニットが、濃縮物容器内で所望の体積又は重量に既に達しているかどうかに応じて、濃縮物容器内の流路を遮断又は解放する弁を制御することが構想することができる。従って、複数の濃縮物容器を次々に処理するか又は検証することが可能である。
【0045】
一実施形態では、腹膜透析機が、治療のために実行される処方が記憶される少なくとも1つのメモリを有するようにすることができる。処方に基づいて、腹膜透析機は、給水ユニットにどの濃縮物容器が接続されるかを決定する。給水ユニットは、どれほどの体積量が濃縮物を希釈するのに使用されるかに関する情報をバーコード又は他のコードから読み取り、1又は複数の濃縮物容器に対応する充填を実行する。
【0046】
給水ユニットは、溶液が完全に希釈された時間が生じるタイムスタンプを送出するように構成された手段を有することができる。このタイムスタンプは、接続(例えば、無線WLAN、又はLAN)を介して腹膜透析機に伝達される。腹膜透析機は、タイムスタンプが依然として有効かどうか、すなわち溶液の調製から長すぎる時間期間が経過していないかどうかを検証し、時間の経過がまだ超過していない場合にのみ治療のために溶液を利用できる。一般的な値は、6~24時間の範囲である。
【0047】
溶液のより良好な混合のために、1又は複数の濃縮物容器を移動させるために、シェーカーなどの少なくとも1つの運動要素を設けることができる。
【0048】
或いは、又はこれに加えて、濃縮物容器の充填物に圧力サージを加えて、より良好な混合を保証することが可能である。
【0049】
吸引段階と充填段階を交互に使用することも可能である。
【0050】
本発明は更に、腹膜透析のための溶液として使用するために希釈後に使用される濃縮物を含む濃縮物容器に関し、濃縮物容器は、好ましくは少なくとも1つのバーコードの形態で、濃縮物容器に充填される水の分量を表すか又はこれに関して結論を出すことができる1又は2以上の部分の情報を有する少なくとも1つのコネクタを有する。濃縮物容器は、例えば、1又は2以上のホースを有することができる。2つのホースの場合、上記でより詳細に述べたように、各ホースは、情報を有するコネクタ、又は1つのコネクタのみを設けることができる。
【0051】
本発明は更に、腹膜透析溶液を調製する方法に関し、調製は、請求項1~12のうちの何れか一項に記載の腹膜透析システムを使用して行われる。
【0052】
本方法は、好ましくは、少なくとも1つのコネクタを給水ユニット及び/又は腹膜透析機に導入する段階を含み、コネクタに位置付けされた情報が読み取られ、更に読み取られた情報に従って1又は複数の濃縮物容器への水の添加が行われる、ように実行される。
【0053】
本発明の更なる詳細及び利点は、図面に示される実施形態を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】バッグごとにコネクタを備えた2つのホースを有する腹膜透析システムの概略図。
【
図2】バッグごとコネクタを備えたそれぞれ1つのホースを有する腹膜透析システムの概略図。
【
図3】トローリーを備えた腹膜透析システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、第1の実施形態における本発明による腹膜透析システムを示す。
【0056】
計量手段及び水の処理又は浄化手段を備えた給水ユニットは、参照番号10で示される。
【0057】
給水ユニット10は、家庭又は診療所などの蛇口1に接続されている。
【0058】
参照番号20は、腹膜透析機を示し、参照記号Pは、その処方が腹膜透析機20に記憶されている患者を示す。
【0059】
濃縮物K30及びK31を有する異なるサイズの2つの濃縮物容器は、参照番号30及び31で示され、濃縮物容器30が15リットルの容量を有し、濃縮物容器31が5リットルの容量を有する。
【0060】
両方の濃縮物容器は、ユニット10からの水で希釈された濃縮物K30、K31で事前に充填される。
【0061】
図1から分かるように、これらの濃縮物容器30、31の各々は、第1のコネクタK1を有する第1のホースS1と、第2のコネクタK2を有する第2のホースS2とを有し、ホースS1は、ユニット10からバッグ30、31に水を供給するのに役立ち、ホースS2は、希釈した濃縮物又は完成した透析溶液をバッグ30、31から腹膜透析機20に排出する。それぞれの一方向超高純度フィルタ11は、ホースS1に配置される。
【0062】
コネクタK1、及びK2の各々は、バーコードB1及びB2をそれぞれ含む。
【0063】
バーコードB1は、バッグ30、31内に充填される水の量又は質量に関する結論を出すことを可能にする情報を含む。給水ユニット10は、この情報を読み取り、個々の物質の所望の濃度がバッグに存在するように、バッグへの対応する水量を計量する。
【0064】
これが当てはまる場合には、溶液は、腹膜透析機20用に使用することができる。腹膜透析機20は、コネクタK2のバーコードB2からどの溶液であるかを読み取る。
【0065】
本発明により、完成した透析溶液を含む溶液バッグの送達の手間を省くことが可能である。その内容物がその場で所望の濃度に希釈のみされる濃縮物バッグ又は濃縮物容器を提供することで十分である。
【0066】
図1に示すように、腹膜透析機20も同様に、完全に充填された標準溶液バッグ33が接続されて使用できるように、標準コネクタ用に1又は2以上のレシーバを有する。
【0067】
図2は、濃縮物容器が、バーコードB3を有するコネクタK3で設計された1つのホースS3のみを有する実施形態を示す。別の観点から言えば、同じ部品又は同じ機能を有する部品は、
図1と同じ参照番号で示されている。
【0068】
コネクタK3は、腹膜透析機20のレシーバに導入され、従って、給水ユニット10と直接連通していない。
【0069】
給水ユニット10は、プレフィルタ及びROユニット11と、インペラーポンプ12などのポンプと、これらの下流側に接続されたフィルタ13とを含む。給水ユニット10は、ホース40又は別のラインを介して腹膜透析機20と連通している。更なるフィルタ41(例えば、0.2ミクロンフィルタ)がこのホース40に配置される。
【0070】
腹膜透析機20は、バーコードB3を読み取り、どのくらいの量の水が給水ユニット10に計量されるかを報告する。給水ユニット10は、この量の水を腹膜透析機20に送給し、ここから濃縮物容器30、31に入る。希釈及び濃縮物容器30、31への希釈及び溶解が行われた後、溶液は、腹膜透析機に送給され、又は、例えば1又は2以上のポンプを用いて腹膜透析機から患者に搬送される。参照番号60は、濃縮物容器30内の安全チャンバを示す。
【0071】
バーコードB1及びB3は、調製される溶液のタイプ、又は濃縮物のタイプ並びに添加される水の分量を示す情報を含む。同じ参照記号B1にもかかわらず、バッグ30のバーコードB1は、任意選択的に、バッグ31のバーコードB1とは異なる情報を有する。従って、これは、バーコードB2及びB3に適用される。
【0072】
腹膜透析システムは、それぞれの治療の溶液をバッチ方式で調製するバッチタイプシステムとして使用することができる。
【0073】
腹膜透析機又は腹膜透析システムを全体として患者に移動することが構想することができる。
【0074】
腹膜透析機は、充填ステーション又は給水ユニットから患者までトローリーTで移動することができる。
【0075】
図3a)は、移動式腹膜透析システムとしての腹膜透析機20及び給水ユニットを示し、腹膜透析機20は、給水ユニット10の上部にある。
【0076】
図3b)は、腹膜透析機20から分離された分割ユニットとしてここでは構成される給水ユニット10から独立した、トローリーT上の腹膜透析機20を示している。
【符号の説明】
【0077】
1 蛇口
10 給水ユニット
20 腹膜透析機
30、31 濃縮物容器
33 溶液バッグ
K30、K31 濃縮物