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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】マイクロ流体デバイス
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20230315BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230315BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20230315BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230315BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G01N35/08 A
G01N37/00 101
B81B1/00
C12M1/00 A
C12M1/34 Z
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020055513
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2020169985
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】19166293
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・マイアー
(72)【発明者】
【氏名】クリス・シュタイナート
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ツェダー
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0289669(US,A1)
【文献】特開2018-126132(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033926(WO,A1)
【文献】特開2008-233002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G01N 37/00
B81B 1/00
C12M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応混合物(5)を熱サイクリングするためのマイクロ流体デバイス(1)であって:
入口開口部(42);
出口開口部(43);
該入口開口部(42)および該出口開口部(43)を連結し、そして該入口開口部(42)からフローチャネル(3)を通り該出口開口部(43)へ向かう流動方向を定義するフローチャネル(3)であって、該フローチャネル(3)は、第一のフローチャネル表面(31)および該第一のフローチャネル表面(31)とは反対側の第二のフローチャネル表面(41)を含む、ならびに
該入口開口部(42)および該出口開口部(43)と流体連絡するため、該第一のフローチャネル表面(31)に提供されるウェル(32)のアレイ
を含み、
該フローチャネル(3)の高さおよび各ウェル(32)の長さの間のアスペクト比が、0.3~0.7の間の範囲であり、
該第一のフローチャネル表面(31)が第一の親水性を提供し、そして該第二のフローチャネル表面(41)の少なくとも部分が第二の親水性を提供し、そして
該第一の親水性が該第二の親水性よりも大きい
前記マイクロ流体デバイス(1)。
【請求項2】
前記第一の親水性および/または第二の親水性が、材料特性によって、表面処理によって、または親水性コーティングによって提供される、請求項1のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項3】
前記表面処理がプラズマ親水性化処理であり、そして前記親水性コーティングがSiOコーティングである、請求項2記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項4】
前記ウェル(32)のアレイの少なくとも部分が、前記第一のフローチャネル表面(31)において、六角形型のウェル形状を示し、または、すべてのウェル(32)が、第一のフローチャネル表面(31)において、六角形型のウェル形状を示す、請求項1~3のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項5】
各六角形ウェル(32)の頂点(321)が、流動方向中で、入口開口部(42)の側を向いて配向されている、請求項4のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項6】
互いに反対側に配置された各六角形ウェル(32)の2つの頂点が、流動方向に平行に配向されている、請求項5のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項7】
各六角形ウェル(32)が、流動方向に伸長した、伸長した六角形の形状を含む、請求項4~6のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項8】
各ウェル(32)が、50μm~300μmの範囲の流動方向のウェルの長さ、および/または25μm~150μmの範囲の、ウェルの長さに垂直なウェルの幅、および/または25μm~200μmの範囲のウェルの深さを含む、請求項1~7のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項9】
入口開口部(42)の側を向いた第一のフローチャネル表面(31)における各ウェル(32)のエッジ(322)が丸みを帯びたエッジである、請求項1~8のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項10】
前記丸みを帯びたウェルエッジ(322)が<10μmの半径で丸みを帯びている、請求項9のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項11】
隣接するウェル(32)の流体分離のために、隣接するウェル(32)間にリム(33)が提供され、各リム(33)が>10μmの幅を含む、請求項1~10のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項12】
前記フローチャネル(3)の高さおよび各ウェル(32)の長さの間のアスペクト比0.5である、請求項1~11のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項13】
前記フローチャネル(3)の高さが25μm~200μmの範囲である、請求項1~12のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項14】
マイクロ流体デバイス(1)が、互いに付着可能である2つの部分(2、4)からなる、請求項1~13のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項15】
マイクロ流体デバイス(1)が、その長軸方向に沿って、2つの部分(2、4)に分けられる、請求項14のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項16】
ウェル(32)のアレイ、ならびに入口開口部(42)および出口開口部(43)を含むフローチャネル(3)が、第一のフローチャネル表面(31)を提供するマイクロ流体デバイス(1)の一方の部分(2)中に提供され、そしてマイクロ流体デバイス(1)の他方の部分(4)が、第二のフローチャネル表面(41)を提供するカバー部分を構成する、請求項14または15記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項17】
前記第二のフローチャネル表面(41)を提供するカバー部分は、カバープレートまたはカバーホイルの形で提供される、請求項16記載のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項18】
前記フローチャネル(3)によって、ウェル(32)の各々に反応混合物(5)の形で提供される試料のデジタルPCRまたは生化学アッセイのために、マイクロ流体デバイス(1)を用いる、請求項1~17のいずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項19】
マイクロ流体デバイス(1)が消耗品である、請求項1~18いずれか一項のマイクロ流体デバイス(1)。
【請求項20】
マイクロ流体デバイス(1)が、透明材料、環状オレフィンコポリマーCOC、または環状オレフィンポリマーCOPからなる、請求項19のマイクロ流体デバイス(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般的に、本発明は、診断アッセイのためのマイクロ流体デバイスの技術分野に関連し、こうした分野では、通常使い捨ての形の、同じマイクロ流体デバイス上で、1つまたはそれより多い試験試料の多数の異なるアッセイを実行可能とすることが、しばしば目的である。それによって、単一の分析プロセスの経過中に、多数の異なる試薬で、1つまたはそれより多い試験試料の独立の分析が達成可能であり、該プロセスにおいては、少量の試験試料しか必要とされない。より詳細には、本発明は、入口開口部、出口開口部および1つのフローチャネルまたは少なくとも1つのフローチャネルを含むマイクロ流体デバイスであって、該フローチャネルが入口開口部を出口開口部に連結し、そして入口開口部および出口開口部と流体連絡するように、フローチャネル内にウェルのアレイを提供し、該ウェルが、例えば、それぞれ、その中に提供される少なくとも1つの試料の化学的または生物学的反応のための反応チャンバーとして意図される、前記マイクロ流体デバイスに関する。特に、本発明は、可能な限り完全に、そして有効に、試料液体の体積を利用する、改善されたマイクロ流体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
診断アッセイ技術分野において、慣用的実験室プロセスの正確さならびに効率を達成しながら、実行がより迅速で、より安価であり、そしてより単純である診断アッセイを作製する一般的な必要性がある。この目的を達成するため、単一のデバイス上での平行アッセイの数を増加させることを可能にするため、小型化および多様なアッセイ操作の統合を達成するために、かなりの努力が行われてきている。しかし、こうしたマイクロ流体構造を生成するために反応チャンバー体積を減少させると、いくつかの新たな問題、例えば反応チャンバーの出来る限りの小型化に関する製造上の制限、隣接する反応チャンバー間の交差汚染、1つまたはいくつかの反応チャンバーにおける気泡捕捉、液体蒸発、ならびに小型化反応チャンバー内に試料液体を測り入れる際の正確さおよび十分さの欠如の増加が生じる。特に、こうしたマイクロ流体デバイスとして、デジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)チップとも称されるマイクロ流体チップが知られ、このチップは、流動可能な(streamable)液体の形のマイクロリットルまたはナノリットルスケールの試料を受け入れるマイクロスケールのチャネルを提供する。一般的に、こうしたdPCRチップは、小さいウェルまたはマイクロウェルのアレイの形で、複数の反応部位を含有するフローチャンバーを提供する、フローチャネルによって連結された入口開口部および出口開口部を特徴とする。
【0003】
dPCRアッセイを実行するため、既知のdPCRチップは、最初に、通常、生物学的試料およびPCRマスターミックスからなる水性dPCR反応混合物を充填され、このdPCR反応混合物は、ピペット等によって入口開口部内に導入され、そして典型的には、毛細管充填プロセスが停止するまで、毛細管力によって、チップのウェルのアレイ内に受動的に流入する。その後、不混和分離液または密封液、例えばシリコンオイル等を、入口開口部を通じてフローチャネル内に押し込み、まず、残ったいかなるdPCR反応混合物も、任意の残りの空のウェル内に押し出し、そして充填されたウェルを覆い、それによって、いかなる交差混入または汚染も回避するために、その周囲から、そして特に互いから、個々のウェルを流体的に分離する。最初の充填プロセスおよびそれに続く密封プロセスが終了した後、dPCRチップは通常、熱サイクリングに供され、ここで、典型的なPCR実行の経過中に、工程周期の一連の反復によって、特定のターゲット核酸が増幅され、ここで、dPCR反応混合物中に存在する核酸は、(a)二本鎖DNAを分離するため、比較的高温で、例えば90℃を超える、通常約94℃~95℃の変性温度で変性され、次いで(b)テンプレートを提供するために分離されたDNA鎖でのプライマー結合(アニーリング)のため、反応混合物は、短いオリゴヌクレオチドプライマーが一本鎖ターゲット核酸に結合する温度、例えば約52~56℃のアニーリング温度まで冷却され、そしてその後、(c)プライマーは、ポリメラーゼ酵素を用いて、元来の核酸配列が複製されるように、新規DNA鎖の生成のため、例えば約72℃の伸長温度で伸長/延長される。一般的に、1つまたはそれより多いターゲットを含有する各ウェルは、陽性シグナルを生じ、ここで、熱サイクリング後、陽性および陰性シグナルの比は、例えば発光試験測定によって、試料中の最初のターゲット濃度を正確に計算することを可能にするであろう。こうした技術は、小型化されたスケールで、複数のアッセイを同時に実行することを可能にする。
【0004】
蒸発を伴わずに、こうしたマイクロ流体デバイス内に試料液体を提供することを可能にするため、US 6,143,496 Aは、互いに付着した支持体およびカバーの形のいくつかの層からなる、分析目的のための微小構造流体デバイスであって、複数の反応部位を提供するため、支持体およびカバーの間に提供されるフロースルーチャネル、ならびに支持体およびカバーの間に提供され、そして支持体に付着した、パターン化されたさらなる層を伴い、1つの特定の態様にしたがって、パターン化された層が疎水性特性を示していてもよく、そしてパターン化された層の側に向いているカバー表面が親水性特性を示していてもよい、前記デバイスを記載する。したがって、US 6,143,496 Aは、複雑な方式および特定の順序で組み立てられる必要がある、いくつかの異なる層で作製されたマイクロ流体消耗品を開示する。さらなる既知の先行技術として、US 6,027,695 Aは、隣接する複数のマイクロウェルを含む、別の微小構造流体デバイスを開示し、ここで、隣接するマイクロウェルの壁は、上方に向いたエッジを形成するように交差し、例えば六角形のチャンバーの形のマイクロウェルが、ハニカム立体配置の方式で配置される。US 6,027,695 Aの微小構造流体デバイスの使用に関しては、長時間掛けて下に沈むビーズであって、そしてしたがって、各ウェル中に少なくとも1つのビーズが提供されるように、ウェル内に進入する前記ビーズを含む溶液に、デバイス全体を浸すことによって、ウェルを充填する。その後、溶液を蒸発させ、そしてウェルを流体的に互いに分離し、これは一般に、ビーズが液体より密度が高いことを必要とする。しかし、ウェルを分離するためのこうした蒸発プロセスは、かなり時間が掛かり、そして各ウェルの内容物間の変動は可能な限り小さくなければならないため、各ウェルに特定の量の溶液を提供することは、重大な問題である。
【0005】
一般的に、診断アッセイ技術の現在の技術分野において、そして特に、既知のマイクロ流体デバイスまたはチップによって実行されるdPCRの分野において、既知の先行技術の上述の問題を克服するために、いくつかの技術的要件が満たされなければならず、それらは以下の通りである:
dPCR反応ウェル/チャンバーの数だけでなく、それぞれの体積もまた、マイクロ流体デバイス上の所定の領域に関して、最大でなければならないことが見出されてきている。しかし、こうしたマイクロ流体デバイスの製造プロセスは、通常、射出成形により、射出成形しようとするマイクロ流体デバイスにおいて、ウェルのありうる最大数ならびにそれぞれの最大体積に関しては、特定の制約を含む。
【0006】
さらに、各ウェルは、その長さおよび幅に比較して、特定の深さに到達しなければならず、そしてフローチャネルの高さに対するウェルの長さの特定のアスペクト比ならびに隣接するウェル間の任意の種類のリムの最小の幅が望ましい可能性もあるが、これもまた、制限性の製造プロセス条件によって制約される。
【0007】
また、毛細管力によって、受動的方式で、ウェルがdPCR反応混合物で充填されることが望ましい可能性もある。しかし、これに関連して、マイクロ流体デバイスの小型化、そしてしたがってフローチャネルおよびウェルの小型化が、任意の液体、例えばdPCR反応混合物がウェルに容易に進入できないか、またはすでにフローチャネル自体に進入できないという問題を生じるため、毛細管力によるマイクロ流体デバイスのウェルの十分な受動的充填は実行が困難である。
【0008】
さらに、何らかの方式でマイクロ流体デバイスの十分な充填が達成されたとしても、充填は、気泡の生成を伴わずに、そしてしたがって、ウェル内への最初の気泡捕捉を伴わずに達成されなければならない。しかし、ウェル内にすでに捕捉されているいかなる気泡も、そのウェル内で生成されるはずの検出シグナルを捻じ曲げ、そしてさらに、およそ95℃の必要な最大熱サイクリング温度までdPCRマイクロ流体デバイスを加熱した際に、隣接するウェルの確実な分離がもはや保証されない可能性があり、そして望ましくない交差汚染の可能性が非常に高まるように、こうした気泡が拡大するであろうため、いくつかのまたはすべてのウェルおよび/またはフローチャネルにおける気泡捕捉は、なお、望ましくないdPCR分析の失敗を生じる、厳しい問題である。
【0009】
また、任意のマイクロ流体デバイスに関するさらなる要求として、その名目上の体積に関して、特定の最大値まで、ウェルを充填することがしばしば望ましい。しかし、ここで、最初にdPCR反応混合物で充填されたウェルの分離のため、不混和の密封流体でマイクロ流体デバイスを充填する間、進入する密封流体が、しばしば各ウェル内に進入するメニスカスを形成し、そしてしたがって、ウェル内に充填されたdPCR反応混合物を、再びウェルの外に押し出すために、各ウェル中に充填されたdPCR反応混合物のかなりの部分が、再び、密封流体によって置換されうる。それによって、dPCRマイクロ流体デバイスの実際に使用可能なdPCR反応混合物体積は、有意に低下し、これがデバイスの分析性能の低下を生じる。さらに、ウェルからのdPCR反応混合物の望ましくない置換のため、マイクロ流体デバイス中のdPCR反応混合物の総量の決定は不正確となり、いかなる分析結果も不正確にするであろう。
【0010】
さらに、デバイスをdPCR反応混合物で充填し、そして不混和流体によってウェルを分離した後のウェルの流体分離は、熱サイクリングプロセス中、安定な方式で維持されなければならず、すなわち、1つのウェルから別のウェルへのdPCR反応混合物の漏洩は一切起きてはならない。しかし、隣接するウェルの完全な流体分離は、通常、ほとんど達成されず、そして達成されない場合、隣接するウェル間で望ましくない漏洩が生じる。このため、dPCR産物は、1つのウェルから別のウェルに移動する可能性があり、そしてこれを汚染し、それによって、偽陽性シグナルを生じ、これは最終的に、偽dPCR結果を導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】US 6,143,496 A
【文献】US 6,027,695 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
マイクロ流体デバイスの要件および問題の上記リストは、もちろん、完全ではなく、最近の問題のいくつかを列挙したに過ぎない。一般的に、本技術分野において、信頼性を持って、そして十分に、ウェルのアレイの単一のウェル各々を充填することが可能であるマイクロ流体デバイスを提供する必要性、そしてこれに関して、特に、充填中に気泡の生成を回避し、そして充填されたウェル間の適切な分離を確実にすることが可能である、マイクロ流体デバイスに関する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上述の必要性に取り組み、そして反応混合物の熱サイクリングのための改善されたマイクロ流体デバイスを提供し、該デバイスは、上述の問題のすべてを克服し、そして列挙した要件を満たす。
【0014】
本発明の第一の側面にしたがって、反応混合物を熱サイクリングするためのマイクロ流体デバイスであって、流体の入口としての入口開口部、流体の出口としての出口開口部、ならびに該入口開口部と該出口開口部を連結し、そして入口から出口への流体流動のチャネルとして働くフローチャネルを含み、ここで、入口開口部からフローチャネルを通じて出口開口部までの構造配置によって流動方向を定義する、前記マイクロ流体デバイスを提供する。マイクロ流体デバイスは、全体として、消耗品であってもよく、そして通常、約80°~90°の接触角を提供する透明な材料、例えば環状オレフィンコポリマーCOCまたは環状オレフィンポリマーCOPからなってもよく、材料が透明であることは、dPCR結果の視覚的分析のために好適である。さらに、フローチャネル、または特にフローチャネルの内部体積は、第一のフローチャネル表面および第一のフローチャネル表面とは反対側の第二のフローチャネル表面を含み、ウェルのアレイおよび入口開口部ならびに出口開口部の間の流体連絡が確立されるように、第一のフローチャネル表面において、ウェルまたはマイクロウェルのアレイが提供される。フローチャネルの特定の特性に関して、第一のフローチャネル表面、および好ましくは特に、ウェルで覆われた第一のフローチャネル表面の領域部分は、第一の親水性を提供し/含み、そして好ましくはウェルで覆われた領域と正反対の側の第二のフローチャネル表面の部分である、第二のフローチャネル表面の少なくとも部分は、第二の親水性を提供し/含み、ここで、第一の親水性、すなわち第一のフローチャネル表面のそれぞれの表面特性は、第二の親水性、すなわち第一のフローチャネル表面と反対側の第二のフローチャネル表面のそれぞれの表面特性より大きい。ここで、例えば、第一の親水性、すなわち第一のフローチャネル表面の親水性は、約30°~50°の範囲、例えば40°の表面接触角を提示するが、また、<30°であってもよく、そして第二の親水性、すなわち第二のフローチャネル表面の親水性は、約80°~90°の範囲の表面接触角を提示し、本発明のデバイスの第一のフローチャネル表面が、第二のフローチャネル表面よりもより親水性であるという事実を生じる。ウェルのアレイが提供されている第一のフローチャネル表面、およびウェルのアレイと反対側に配置された反対の第二のフローチャネル表面の間の定義された関係を伴うこの特定のセットアップは、フローチャネル内の親水性の関係を達成し、これはマイクロ流体デバイスの改善された充填性能を生じる。さらなる詳細は以下もまた参照されたい。
【0015】
通常、第一のフローチャネル表面内で提供されるウェルの充填によって、最初に充填された流体は、ウェルのアレイを含む第一のフローチャネル表面でよりも、いかなるウェルも含まない第二のフローチャネル表面で、より迅速に進行する。したがって、最初の充填中、フローチャネルを通じた流体進行は、第一のフローチャネル表面でよりも第二のフローチャネル表面でより迅速に進行し、ウェルの充填中、充填しようとするウェル内部に流体が気体を封入する可能性があり、これが望ましくない気泡捕捉を生じるという事実を生じる。本発明のマイクロ流体デバイスを用いると、ウェル領域の反対側のフローチャネル表面の親水性に比較して、より親水性である方式で、第一のフローチャネル表面におけるマイクロ流体デバイスのウェル領域の内表面を修飾することで、流体の上述の異なる進行速度が回避可能であり、そしてしたがってマイクロ流体デバイスのフローチャネル内の流体体積進行の正面または前線が実質的に直立の位置/垂直配向を呈するような、相対するフローチャネル表面の親水性関係が達成される。言い換えると、フローチャネルの第二のフローチャネル表面と、入口開口部に進入し、そしてフローチャネルを通じて出口開口部に進行する、最初の充填流体の前線の接触領域は、第一のフローチャネル表面と最初の充填流体の前線の接触領域よりも、フローチャネルを通じてより迅速な速度で流動し、すなわちウェルの表面上の最初の充填流体流の流れの速度は、ウェル領域の反対側に配置されたフローチャネルの内側表面を通じた最初の充填流体の速度よりも速い。この結果、最初の充填流体でのウェルの充填が、フローチャネル自体の一般的な充填よりもより迅速に行われ、それによって充填流体がウェル内で気泡より高くなった際に、ウェル内で充填流体の下に気泡が捕捉されることを防止する。したがって、フローチャネルを通じた流体の進行は、両方のフローチャネル表面側で実質的に等しく、その結果、ウェルが流体で十分に充填され、そして気泡捕捉が回避されることが可能になる。本発明のマイクロ流体デバイスでデジタルPCRを実行しようとする観点において、dPCRまたはPCRマスターミックスとも称される水性dPCR反応混合物、例えばLightCycler480(登録商標)マスターミックスでのウェルの最初の充填のために、これが特に重要であり、これは、最初の充填が受動方式で実行され、そして多様な毛細管力が重要であるためであり、一方、充填されたウェルを互いに流体的に分離する分離プロセスにしたがっている間、能動的な充填圧が適用される。したがって、他方の側よりも高い親水性を持つ、ウェルのアレイを含むフローチャネルの側を提供すると、水性dPCR反応混合物に対して、ウェルのアレイを含むフローチャネルの側のアフィニティがより高くなることによって、マイクロ流体デバイスの充填性能の改善が、そしてしたがって気泡捕捉回避が生じる。言い換えると、本発明にしたがって、気泡不含充填を達成するため、ウェルで覆われていないフローチャネルの側が、ウェル領域よりもdPCR反応混合物に対してよりアフィニティが低い(less affine)ように、マイクロ流体デバイスを構築することが好適である。
【0016】
本発明の特定の態様にしたがって、第一の親水性および/または第二の親水性は、マイクロ流体デバイスの材料特性によって、第一のフローチャネル表面および/または第二のフローチャネル表面の表面処理によって、例えばプラズマ親水性化(hydrophilization)処理によって、あるいは第一のフローチャネル表面および/または第二のフローチャネル表面上に提供される親水性コーティング、例えばSiOコーティングによってのいずれかで提供される。比較理由に関する例として、本発明の発明者によって実行される実験の経過中、マイクロ流体デバイスのウェル領域を、SiOコーティングでコーティングし、そしていかなる親水性化処理も伴わないマイクロ流体デバイスに比較した。次いで、100nMフルオレセインを含むLightCycler 480(登録商標)マスターミックスを、マイクロ流体デバイス内に、入口開口部を通じて、そしてフローチャネル内に充填し、そして続いてシリコン流体、例えばPMXシリコン流体200 50csなどの密封流体または分離流体をフローチャネル内にポンピングすることによって、ウェル内部を密封した。実験の結果として、未処理マイクロ流体デバイスでは、受動的充填がまったくまたは不十分にしか観察されない一方、親水性化処理したマイクロ流体デバイスを用いた際、受動的充填は成功し、そして気泡捕捉はまったくまたはほとんど起こらないことが検出可能であった。
【0017】
さらに、気泡捕捉を回避することを考慮すると、ウェルの形状が重要な要因でありうる。ここで、本発明の発明者らによって、ウェルの円形の形状は、通常は円形である気泡の捕捉を補助することが観察されており、これは、こうした円形の気泡が、実際、完全にエッジで接触して、円形のウェルの全体を封鎖しうるためであり、一方、捕捉された気泡およびウェルの内壁の間の接触領域の最小化を提供するウェルの形状は、気泡およびウェル内壁の間のこうした接触の減少が、ウェルからの気泡の除去を補助するため、気泡捕捉をさらに回避しうるという事実を生じうる。したがって、本発明のさらなる特定の態様にしたがって、ウェルのアレイの少なくとも部分は、第一のフローチャネル表面において、六角形型のウェル形状を提示し、すべてのウェルが、第一のフローチャネル表面において、六角形型のウェル形状を提示してもよい。「ウェル形状」は、この意味で、第一のフローチャネル表面の上面図から見た際のウェルの形状を意味する。ウェルの六角形の形状を選択することによって、充填プロセス中の気泡の包含を減少させるために最適化されたウェル形状の効果だけでなく、例えば、グリッドでの空間の改善された使用を提供する、ハニカム構造での六角形ウェルの配置を考慮すると、ウェルおよびそのそれぞれの内部体積の量が最大化可能である効果もまた提供される。ここで、dPCR用のマイクロ流体デバイスの六角形ウェルの通常の寸法の例として、六角形ウェル形状は、約25μmx50μmx25μm~約150μmx300μmx200μmの範囲の幅x長さx深さの寸法を示しうる。したがって、各ウェルは、50μm~300μmの範囲の流動方向のウェルの長さ、および/または25μm~150μmの範囲の、ウェルの長さに垂直なウェルの幅、および/または25μm~200μmの範囲のウェルの深さを含んでもよい。さらに、これに関連して、ウェルが伸長した六角形の形状、すなわち伸長したまたは延伸した、例えば入口開口部から出口開口部までのフローチャネルによって決定される流動方向で伸長した六角形のウェル形状を有するならば、好適である可能性もあり、この伸長した六角形のウェル形状は、気泡およびウェル内壁の間の接触をさらに減少させることも可能であり、そして各ウェルの内部体積を拡大させることも可能である。
【0018】
第一のフローチャネル表面内の六角形のウェルの特定の配置に関して、本発明の特定の態様は、ウェルの六角形形状の角とも称される、各六角形ウェルの頂点を、流動方向において、入口開口部の側に向かって配向させることを提供し、ここで、互いに相対して配置された各六角形ウェルの2つの頂点/角は、入口開口部から出口開口部へのフローチャネルによって定義される流動方向に平行に配向される。これに関連して、本発明のマイクロ流体デバイスのフローチャネルは、入口開口部の側から、dPCR反応混合物で充填されているため、流動方向と各六角形ウェルの頂点との整列は、マイクロ流体デバイスの充填性能を有意に改善しうる。言い換えると、ウェルの六角形は、六角形の6つの角の1つが充填方向を指している、すなわち入口開口部を指しているならば、この角からのキャピラリー吸引は改善され、これは、dPCR反応混合物でのウェルの最初の充填を有意に促進する。したがって、毛細管力によって、特に六角形の角を流動方向に提供することによって、フローチャネルの充填を補助する方式で、ウェルの六角形の形状は最適に選択され、これにより、各ウェルへの流体の進入が容易になり、そして特に、進入する流体が、ウェルを充填することなく、ウェル上を単に流動することを防止する。特にこれに関連して、伸長した六角形のウェル形状は、正六角形形状と比較してより好適である可能性があり、これは、伸長した六角形のウェル形状が、すでに上述するように気泡が捕捉されている場合に、ウェルの内壁への気泡の接触表面を減少させることが可能であるだけでなく、大きな気泡がエネルギー的に好ましくない伸長した形状を強いられ、そして気泡のウェルからの放出を促進する効果を達成することも可能であるためである。こうした効果は、円形または正六角形のウェル形状を用いた際には達成されない。
【0019】
本発明のさらに特定の態様にしたがって、入口開口部側に向いている第一のフローチャネル表面中の各ウェルのエッジは、丸みを帯びたエッジである。ここで、用語「丸みを帯びたエッジ」は、第一のフローチャネル表面およびウェルの内壁の間のエッジに関し、このエッジは鋭いコーナーを提供せず、曲面の表面、すなわちフローチャネル表面およびウェルのそれぞれの内壁を連結する曲面を提示する。各ウェルにこうした丸みを帯びたエッジを提供することで、各ウェルの充填特性が有意に改善され、それによって各ウェルのdPCR反応混合物での十分な充填が改善されることも可能である。こうした曲面のエッジ表面の例として、丸みを帯びたウェルエッジ各々は、10μm未満(<10μm)の半径で丸みを帯びていてもよい。あるいはまたはさらに、隣接するウェルの流体分離のため、隣接するウェル間にリムを提供してもよい。この文脈において、リムは、隣接するウェルを互いに分離する第一のフローチャネル表面の一部分と理解されるものとし、ここでこうしたリムは、隣接するウェルが充填された後、隣接するウェル間の流体分離をさらに改善するために、隣接するウェル間の十分な距離を達成するため、10μmより多い(>10μm)幅または厚さを含んでもよい。したがって、隣接するウェル間のリムの特定の形状は、第一のフローチャネル表面および分離流体の間の流体層が十分に抑制されるように実装される。それによって、充填後の隣接するウェル間の流体分離が確実になりうる。さらに、dPCR反応混合物の化学組成は、リム領域に渡る流体架橋が起こらないような方式で改変されていてもよい。
【0020】
本発明のマイクロ流体デバイスのさらなる特定の態様にしたがって、フローチャネルの高さhおよび各ウェルの長さlの間のアスペクト比h/lは、0.3~0.7の間の範囲、例えばおよそ0.5であり、これは、これに関連してすでに記載された特徴に加えて、隣接する充填されたウェル間の十分な流体分離を確実にすることが可能であるために、最適なアスペクト比h/lを提供する。例えば、フローチャネルの高さhは、25μm~200μmの範囲であってもよく、そしてウェルの長さlは、50μm~300μmの範囲であってもよく、ここで、これらの範囲内で、先に定義されたアスペクト比が満たされなければならない。例示的な目的のため、0.3未満のアスペクト比h/lは、少なすぎる流体体積のウェルの充填を導く一方、約1.0のアスペクト比h/lはまた、十分に充填されたウェルを導くが、隣接するウェルがもはや互いに十分に流体的に分離されていないという問題を伴う。一般的に、これに関連して、各ウェルの長さlは、流動方向に平行なウェルの縦方向の伸長と理解されるものとし、そしてフローチャネルの高さhは、マイクロ流体デバイスのフローチャネルの第一のフローチャネル表面および第二のフローチャネル表面の間の距離と理解されるものとする。ウェルの適切な分離を達成するため、表面張力により、最初に充填されたdPCR反応混合物のある程度が、各ウェルから押し出されるように、チャネルの高さhは、ウェルの長さlより小さくなければならない。したがって、チャネルの高さhは、ウェルの外へのdPCR反応混合物の最小限の置換のみを伴って、ウェルのきちんとした分離を可能にするため、所定のアスペクト比内で改変される。
【0021】
本発明のマイクロ流体デバイスの別の特定の態様にしたがって、マイクロ流体デバイスは、互いに取り付け可能な2つの部分からなり、デバイスは、その縦軸に沿って2つの部分に分けられる。より詳細には、ウェルのアレイを含むフローチャネルが、デバイスの1つの部分に提供されて、第一のフローチャネル表面、例えば支持体を提供し、そしてもう一方の部分は、第二のフローチャネル表面、ならびに入口開口部および出口開口部を提供するカバー部分であって、好ましくはフローチャネルを覆い、そしてフローチャネル内に流体を流入させるための入口およびフローチャネルから流体を放出するための出口を提供する薄いカバーホイルの形の平坦な構成要素を構成する。あるいは、入口開口部および出口開口部はまた、第一のフローチャネル表面を提供するデバイスの部分に提供されてもよく、この場合、デバイスの他の部分は、単に、例えば薄いカバーホイルの形で、カバー部分を構成する。こうしたマイクロ流体デバイスを、デジタルPCR、dPCR、またはフローチャネルによるウェル各々への反応混合物の形で提供される試料の生化学的アッセイのために用いてもよい。ここで、マイクロ流体デバイスの充填可能性の改善を補助するため、界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)20をdPCR反応混合物に提供してもよく、すなわち水性dPCR反応混合物の化学組成を、例えば界面活性剤の添加によって、充填プロセスを促進する方式で調節した。
【0022】
言い換えると、各ウェルの信頼性のある充填を確実にしうるマイクロ流体デバイスを提供することを可能にするため、(a)dPCR反応混合物に対してより低いアフィニティを持つカバーホイルまたはプレート、(b)特定のウェル形状、ウェル構造および配向、ならびに(c)フローチャネルの高さh対ウェルの長さlの特定のアスペクト比は、そうでない場合よりも、より長い期間に渡って、液体がウェルを充填することを可能にして、充填中の最初の流体流動を緩慢にし、それとともに隣接する充填されたウェルの続く分離の有意な改善を提供しうる。これに関連して、通常、フローチャネルの部分およびウェルのいくつかを最初に充填した後、dPCR反応混合物と不混和性の密封流体をフローチャネルに押し込み、この密封流体がフローチャネルの残りを通じてそしてしたがってやはり充填される残りのウェル内に、dPCR反応混合物を押し込む。さらに、密封流体は、ウェルに充填されていないすべてのdPCR反応混合物をフローチャネルの外へ押し出し、そして充填されたウェルを互いに流体的に分離する。上述のように、ウェルの適切な分離を達成するため、フローチャネルの高さは、ウェルの長さの約半分でなければならず、そしてマイクロ流体デバイスの分離能をさらに改善するため、ウェルは、特定の幅を持つリムによって分離されなければならない。さらに、dPCR反応混合物のウェルの外への置換を最小限にするため、分離プロセスの速度、すなわちフローチャネルを通じた第二の流体を押し出す力が高められていてもよい。一般的に、フローチャネル内表面の親水性の比は、dPCR反応混合物でのウェルの最初の充填の改善により重要な影響を有するようである一方、ウェルの長さに対するフローチャネルの高さのアスペクト比は、dPCR反応混合物でのウェルの最初の充填を改善するだけでなく、分離中の能動的圧適用(appliance)の観点から、多様な「引張力」に基づくウェルの受動的な最初の充填の異なる動力学のため、密封流体または分離流体と、互いからの隣接するウェルの分離可能性の有意な改善も提供する。したがって、本明細書に提示するようなマイクロ流体デバイスを用いると、最初の充填特性、ならびにそれに続く密封プロセスの全体の改善を達成可能である。
【0023】
本明細書において、そしてまた、付随する請求項において、単数形「a」、「an」、および「the」には、明らかに別に示さない限り、複数の指示対象が含まれる。同様に、単語「含む(comprise)」、「含有する(contain)」および「含む(encompass)」は、排他的であるよりも包含的である;すなわち、「限定されるわけではないが、含む」の意味と解釈されるものとする。同様に、単語「または(or)」には、背景が別に明らかに示さない限り、「および(and)」が含まれると意図される。用語「複数」、「多数」またはまたは「多量」は、2つまたはそれより多く、すなわち2または>2で整数の倍数であり、用語「単一」または「単独」は、1、すなわち=1を指す。さらに、用語「少なくとも1つ」は、1つまたはそれより多く、すなわち1または>1で、やはり整数の倍数であると理解される。したがって、単数または複数の数値を用いる単語にはまた、それぞれ、複数および単数の数値も含まれる。さらに、単語「本明細書において」、「上記」、「先に」および「以下に」、ならびに類似の意味(import)の単語は、本明細書で用いた際、全体としての本明細書を指し、そして本明細書の任意の特定の部分を指すわけではない。
【0024】
さらに、簡便さのために、特定の用語を用い、そしてこうした用語は本発明を制限することを意図されない。用語「右」、「左」、「上がる」、「下がる」、「下に」および「上に」は、図における方向を指す。こうした用語は、明らかに言及する用語ならびにその変形および類似の意味を持つ用語を含む。やはり、空間的に関連する用語、例えば「下方」、「下部」、「より低い」、「上方」、「より上」、「近傍」、「遠位」等を用いて、図に例示するように、1つの要素または特徴の、別の要素または特徴に対する関係を記載してもよい。これらの空間的に関連する用語は、図に示す位置および配向に加えて、使用または操作においてデバイスの異なる位置および配向を含むと意図される。例えば、図中のデバイスが反転した場合、他の要素または特徴の「下方」または「下部」と記載する要素は、他の要素または特徴の「上方」または「上部」となるであろう。したがって、例示的な用語「下方」は、上方および下方の位置および配向の両方を含みうる。デバイスは、別に配向していてもよく(90度または他の配向で回転してもよく)、そして本明細書で用いる空間的な相対的記述子は、適宜解釈される。
【0025】
多様な側面および例示的態様の図および説明において、反復を避けるため、多くの特徴が、多くの側面および態様に共通であることが理解されなければならない。開示の特定の態様の説明は、包括的であるかまたは開示する正確な型に開示を限定することを意図しない。開示の特定の態様、およびその例は、例示目的のために本明細書に記載されるが、関連する技術分野の当業者が理解するであろうように、多様な同等の修飾が、付随する請求項によって定義されるように、本開示の範囲内にありうる。任意の前述の態様の特定の要素を、他の態様における要素と組み合わせるかまたはこうした要素で置換してもよい。さらに、本開示の特定の態様と関連する利点が、これらの態様の背景において記載されてきているが、他の態様もまた、こうした利点を示すことも可能であり、そして付随する請求項によって定義されるような本開示の範囲内に属するために、すべての態様が必ずしもこうした利点を示す必要があるわけではない。説明または図からの側面の省略は、その側面を取り込む態様から、その側面が失われていることを示さない。その代わり、該側面は、明確さのために、そして冗長な説明を回避するために、省略されている可能性もある。この文脈において、以下がこの説明の残りに当てはまる:図を明確にするために、図が説明の直接関連する部分に説明されていない参照符号を含有する場合、先のまたは以下の説明セクションが参照される。さらに、明快さのため、図のセクションにおいて、部分のすべての特徴に参照符号が提供されていない場合、同じ図の他のセクションが参照される。2つまたはそれより多い図において、同様の数字は、同じまたは類似の要素を示す。
【0026】
以下の実施例は、本発明の多様な特定の態様を例示するよう意図される。こうしたものとして、本明細書に後に論じるような特定の修飾は、本発明の範囲に対する限定とは見なされないものとする。本発明の範囲から逸脱することなく、多様な同等物、変化および修飾を行うことも可能であることが当業者には明らかであろうし、そしてしたがって、こうした同等の態様が、本明細書に含まれることが理解されるものとする。本発明のさらなる側面および利点が、図に例示された特定の態様の以下の説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本発明の態様にしたがったマイクロ流体デバイスの分解組立図の模式図である。
図2図2a~dは、比較目的のための、類似の親水性のフローチャネルの内表面を持つ、横断面図で示した図1のマイクロ流体デバイスの1つの例示的なウェルを含む、フローチャネルを通じた水性流体の進行の模式図である。
図3図3a~dは、本発明にしたがった、異なる親水性のフローチャネルの内表面を持つ、横断面図で示した図1のマイクロ流体デバイスの1つの例示的なウェルを含む、フローチャネルを通じた流体の進行の模式図である。
図4図4a~cは、サイズ比較のための、六角形ウェルの異なる伸長レベルを持つ、上面図で示したマイクロ流体デバイスの六角形のウェルのアレイの模式図である。
図5図5a~cは、アスペクト比比較のための、図4a~cに示すような線A-A、B-BおよびC-Cに沿った横断面で示した図4a~cの六角形のウェルの1つの模式図である。
図6図6a~dは、本発明にしたがった、横断面図で示した図4aおよび5aのウェルを含む、フローチャネルを通じた分離流体または密封流体の進行の模式図である。
図7図7a~dは、横断面図で示した図4bおよび5bの例示的なウェルを含む、フローチャネルを通じた流体の進行の模式図である。
図8図8a~dは、横断面図で示した図4cおよび5cの例示的なウェルを含む、フローチャネルを通じた流体の進行の模式図である。
図9図9aおよびbは、比較のための、捕捉された気泡を含む、上面図で示した異なる六角形ウェル寸法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、分解組立透視図による、本発明の特定の態様にしたがった、マイクロ流体デバイス1の模式図を示す。マイクロ流体デバイス1は、基本的に、2つの部分、すなわち支持体2、およびプレートまたはホイルの形のカバー4を含み、この部分2、4は、互いに付着可能である。支持体2の1つの表面において、フローチャネル3が提供され、このフローチャネル3は、第一のフローチャネル表面31を提供し、その中に六角形のウェル/マイクロウェル32のアレイが、例示的なハニカム構造型で導入され、ウェル32のアレイが配置されている領域はまた、マイクロ流体デバイス1のフローチャンバーとも称される。ここで、例示目的のため、フローチャンバー内の空のウェル32は少数のみを示す。
【0029】
気泡捕捉の観点から、ウェル形状は重要な要因である。すでにさらに上に記載されているように、ウェルの円形の形状は、通常は円形である気泡の捕捉を支持するが、これはこうした円形の気泡が実際、完全な表面エッジ接触で円形のウェル全体をふさぎうるためである。したがって非円形のウェルが好ましく、これはこうしたウェル形状が、捕捉された気泡およびウェルの内壁の間の接触面積の最小化を提供しうるためである。ここで、伸長した六角形のウェル形状が、正六角形の形状に比較してより好適である。本発明の発明者らが実施した実験は、円形のウェルでは、ウェルのおよそ40%が捕捉された気泡を含有し、そして小さい正六角形のウェルのおよそ>80%が捕捉された気泡を含有する一方、より大きい六角形のウェルではわずか>1%が捕捉された気泡を含有し、そして伸長した六角形のウェル、例えばマイクロ流体デバイス1のウェル32では、0.01%未満の有意に少ない数が、捕捉された気泡を含有するという結果を導いた。例示的な実施例として、図9aは、ウェル32’の正六角形形状を示し、ここで、気泡6が捕捉され、この気泡6はなお、ウェル内壁と6つの接触点61を達成することが可能である一方、本発明のマイクロ流体デバイス1のウェル32の伸長した六角形形状は、潜在的な気泡接触点61の数を2つに減少させる。図9bを参照されたい。したがって、ウェル32の伸長した六角形の形状は、気泡が捕捉されている場合、ウェル32の内壁と気泡6の表面接触を減少させうる。また、こうした伸長したウェル形状では、より大きな気泡は、エネルギー的に好ましくない伸長した形状を強いられ、そしてしたがって、ウェル32からの気泡6の放出が促進される。
【0030】
さらに、そして図1に戻って、支持体2の言及した表面とは反対側に配置されたカバー4の表面は、第一のフローチャネル表面31と反対側に、第二のフローチャネル表面41を提供する。一般的に、互いに付着した際、支持体2およびカバープレート4は、カバー4中の入口開口部42から始まり、第一のフローチャネル表面31および第二のフローチャネル表面41によって制限されたフローチャネル3中で続き、そして最終的に出口開口部43で終わる、連続したダクトが確立され、これがまた、入口開口部42から出口開口部43までの、すなわち支持体2内のフローチャネル3の縦軸と平行した、マイクロ流体デバイス1の流動方向も定義するような方式で、マイクロ流体デバイス1を提供する。マイクロ流体デバイス1において、ウェル32は流動方向に配向され、これは、ウェル32の伸長した六角形の形状の縦軸が、マイクロ流体デバイス1の流動方向に平行に配置される、すなわち、各六角形ウェル32の頂点321が、入口開口部42の側に向かう流動方向に配向されていることを意味し、これは、ウェル頂点321からの毛細管吸引力がウェル32の充填を促進するため、マイクロ流体デバイス1の充填性能を有意に改善する。
【0031】
寸法の例として、マイクロ流体デバイス、すなわちその2つの部分2、4は、約75mmの全体の長さおよび約25mmの全体の幅を示すことも可能であり、フローチャネル3の幅は約6mmであり、そしてウェル32を覆うフローチャネル3の領域の長さは約47mmである。ここで、六角形の伸長したウェル32の数は、16,000より多い可能性もあり、ここで各ウェル32は、約60μmの長さ、約30μmの幅、および約60μmの深さを含み、そして隣接するウェル間のリム33は、10μmより多い幅を含む。さらに、フローチャネル3の高さは30μmであり、最初の流体、例えばdPCR反応混合物5での充填、および密封流体7による流体分離後、隣接するウェル32間の十分な流体分離を確実にするため、フローチャネルの高さh対ウェルの長さlの好ましいアスペクト比0.5を生じる。
【0032】
本発明で第一のフローチャネル表面31および第二のフローチャネル表面41の異なる親水性を提供する効果に関して、図2a~2dは、上述のように、マイクロ流体デバイス1の1つの例示的なウェル32を含むフローチャネル3を通じた最初のdPCR反応混合物5の進行を示し、ここで第一のフローチャネル表面31’および第二のフローチャネル表面41’は、比較する出発状況と同じかまたは類似の親水性を示す。したがって、第一のフローチャネル31’および第二のフローチャネル表面41’はどちらも、dPCR反応混合物に対して同じまたは類似のアフィニティを示す。ここで、図2a~2dに示すように、充填中にフローチャネル3を通じて進行するdPCR反応混合物5は、第一のフローチャネル表面31’でよりも、第二のフローチャネル表面41’で、より迅速に、前線51とともに進行する結果、ウェル32の充填中、ウェル32に進入するdPCR反応混合物5が、あらかじめ存在していた気体、例えば空気をウェル32内に封入し、これは空気泡6の形の気泡が、ウェル32内のdPCR反応混合物5によって、正確にはウェル底部にそしてウェル32の側壁に接触して捕捉されることを意味する。
【0033】
ここで、図2a~2dとは対照的に、図3a~3dは、図2a~2dに示すようなマイクロ流体デバイス1と構造的に基本的に同一であるマイクロ流体デバイス1を示し、重大な相違は、本発明にしたがって、第一のフローチャネル表面31および第二のフローチャネル表面41が、異なる親水性を示すことであり、マイクロ流体デバイス1の第一のフローチャネル表面31はSiOコーティングでコーティングされた。それによって、第一のフローチャネル表面31は、約30°~50°の範囲の表面接触角で、第一の親水性を提供し、そして第二のフローチャネル表面41の少なくとも部分は、材料特性によって、約80°~90°の範囲の表面接触角の第二の親水性を提供し、第一の親水性が第二の親水性よりもより大きいかまたはより顕著であるという事実を生じる。図3a~3dに見られうるように、フローチャネル3を通じた最初のdPCR反応混合物5の進行を観察した際、dPCR反応混合物5の前線51は、図2a~2dに比較して、実質的に上向きの方式で、フローチャネル3内を進行する。したがって、出口開口部43に向かい、フローチャネル3を通じて進行する、第一のフローチャネル表面31および第二のフローチャネル表面41と前線51の接触領域は、フローチャネル3を通じて、第二のフローチャネル表面41をたどる液体の速度よりも、第一のフローチャネル表面31上で、より迅速な速度で流動する結果、ウェル32の充填が、フローチャネル3の充填よりもより迅速に進行する。特に、図3bおよび3cを参照されたい。それによって、フローチャネル表面31、41の両方で、フローチャネル3を通じた流体の進行が実質的に等しいため、気泡の捕捉が回避可能であり、その結果、気泡捕捉を伴わずに、ウェル32がdPCR反応混合物5で完全に充填され、そしてマイクロ流体デバイス1の改善された充填性能が導かれる。
【0034】
図4a~4cは、比較するため、第一のフローチャネル表面31内に提供される、異なる型のウェルアレイを示す。ここで、図4aは、入口開口部42に向かって配向した左側のウェル頂点321および六角形の形のウェルエッジ322を伴う、上面図で示した、伸長した六角形形状を有するウェル32のハニカム構造を示し、図4bは、上面図で示した規則的な六角形形状または正六角形形状を有するウェル32’のハニカム構造を示し、そして図4cは、上面図で示した、非常に伸長した六角形形状を有するウェル32”のハニカム構造を示す。各図の左側には、ハニカムウェル構造の少なくとも部分を示し、各図の右側に、拡大した詳細図を提供し、ここで、特に、それぞれの代表的なウェルの形状を上面図で示す。図5a~5cは、図4a~cの線A-A、B-BおよびC-Cに沿った横断面図で、図4a~cのウェル32、32’、32”の各々を示し、ここで、図5aは、図4aの拡大詳細中の線A-Aに沿った横断面図で示した、図4aの伸長した六角形ウェル32を示し、図5bは、図4bの拡大詳細中の線B-Bに沿った横断面図で示した、図4bの正六角形ウェル32’を示し、そして図5cは、図4cの拡大詳細中の線C-Cに沿った横断面図で示した、図4cの非常に伸長した六角形ウェル32”を示す。図5a~5cのすべてにおいて、フローチャネル3の高さhは同じままである一方、ウェル32、32’、32”の長さは異なる。特に、図5aに示すようなウェル32のウェルの長さlは、0.5のアスペクト比h/lを満たし、これは隣接する充填されたウェル間の十分な流体分離を確実にすることが可能であるために、最適なアスペクト比h/lを提供する一方、ウェル32’のウェルの長さl’は、1.0のアスペクト比h/l’を満たし、そしてウェル32”のウェルの長さl”は、0.25のアスペクト比h/l”を満たす。
【0035】
図4aおよび5aの充填された伸長したウェル32の、密封流体7による密封プロセスの進行を図6a~6dに示し、図4bおよび5bの充填された正六角形のウェル32’の、密封流体7による密封プロセスの進行を図7a~7dに示し、そして図4cおよび5cの充填された非常に伸長したウェル32”の、密封流体7による密封プロセスの進行を図8a~8dに示す。図6a~6dでは、密封流体7が入口開口部42の側からフローチャネル3に進入し、そして出口開口部43に向かって進行すると推測されうる。0.5のアスペクト比が満たされた、つまり、ウェルの長さlがフローチャネルの高さhの二倍である、伸長したウェル32に、密封流体7が到達すると直ちに、密封流体7は毛細管力、すなわち表面張力によって、そしてウェル32の壁に関する接触角条件によって、ウェル32内に押し込まれ、そしてウェル32内に滴またはメニスカスを形成し、これがdPCR反応混合物5のある程度をウェル32から外に押し出す。図6bを参照されたい。密封流体7は、フローチャネル3を通じてさらに押されるため、密封流体7は、ウェル32を閉鎖し、dPCR反応混合物のかなりの部分が、図6cで参照されるように、ウェル32の底部に残る一方、図6dで参照されるように、ウェル32の底部に封入されるdPCR反応混合物5の十分な量を除いて、フローチャネル3が密封流体7で完全に充填されるまで、フローチャネル3内のdPCR反応混合物5は、出口開口部42に向かってさらに押される。したがって、伸長したウェル32は、dPCR反応混合物5で十分に充填され、そして隣接する伸長したウェル32は、密封流体7によって、互いに安全に、流体的に分離される。
【0036】
例示的な比較目的のため、図7a~7dは、正六角形ウェル32’が、1.0のアスペクト比を満たす、すなわちフローチャネル3の高さhおよびウェルの長さl’が同一であることを例外とした、類似の密封プロセスを示す。ここで、密封流体7は、再び、入口開口部42の側からフローチャネル3に進入し、そして出口開口部43に向かって進行すると推測されうる。密封流体7が正六角形ウェル32’に到達すると直ちに、密封流体7は、毛細管力、すなわち表面張力によって、そしてウェル32’の壁に関する接触角条件によって、ウェル32’内に押し込まれ、そして図7bで参照されるように、図6bのウェル32’から押し出される量より、明らかにより少ない量で、ウェル32’の外に、少量のdPCR反応混合物5を押し出す。密封流体7が、フローチャネル3を通じてさらに押されるにつれて、密封流体7は、ウェル32’を閉鎖し、図7cで参照されるように、dPCR反応混合物5のかなりの部分がウェル32’内に残る一方、図7dで参照されるように、フローチャネル3が密封流体7で完全に充填されるまで、フローチャネル3内のdPCR反応混合物5は、出口開口部42に向かってさらに押し込まれるが、多量のdPCR反応混合物5がウェル32’に捕捉されることが例外である。したがって、ウェル32’は大部分、dPCR反応混合物5で充填される。
【0037】
再び、例示的な比較目的のため、図8a~8dは、非常に伸長した六角形ウェル32”が、0.25のアスペクト比を満たす、すなわちフローチャネル3の高さhがウェルの長さl”の4分の1であることを例外とした、類似の密封プロセスを示す。ここで、密封流体7は、再び、入口開口部42の側からフローチャネル3に進入し、そして出口開口部43に向かって進行すると推測されうる。密封流体7が非常に伸長した六角形ウェル32”に到達すると直ちに、密封流体7は、毛細管力、すなわち表面張力によって、そしてウェル32”の壁に関する接触角条件によって、ウェル32”内に押し込まれ、そしてウェル32”内に大きなメニスカスを形成し、図8bで参照されるように、ウェル32”の外に、dPCR反応混合物5を押し出し始める。密封流体7が、フローチャネル3を通じてさらに押されるにつれて、密封流体7のメニスカスは、ウェル32”をほぼ完全に充填し、図8cで参照されるように、dPCR反応混合物5の非常にわずかな部分が、ウェル32”の底部の外部エッジに残るのみである。密封流体7が出口開口部43に向かって進行するにつれて、密封流体7は、ウェル32”を閉鎖し、図8dで参照されるように、フローチャネル3が密封流体7で完全に充填されるまで、dPCR反応混合物5のわずかな部分がウェル32”内に残る。したがって、図8dから推測されうるように、ウェル32”は、密封流体7でほぼ完全に充填される一方、ウェル32”内には、単にわずかな量のdPCR反応混合物5が残るのみである。dPCRマイクロ流体デバイス内で、実際に使用可能なdPCR反応混合物がこのように減少することによって、デバイスの分析性能が非常に悪化するだけでなく、マイクロ流体デバイス内に残るdPCR反応混合物の実際の総量が明確には決定不能になり、これによって、いかなる分析結果も不正確になり、そして使用不能になるであろう。
【0038】
本発明は、特定の態様に関連して記載されてきているが、本明細書は例示目的のためのみであることが理解されるものとする。したがって、本発明は付随する請求項の範囲によってのみ限定されると意図される。
【符号の説明】
【0039】
1 マイクロ流体デバイス
2 支持体
3 フローチャネル
31 第一のフローチャネル表面
31’ 第一のフローチャネル表面
32 伸長した六角形のマイクロウェル
32’ 正六角形のマイクロウェル
32” さらにまたは非常に伸長した六角形のマイクロウェル
321 マイクロウェル頂点
322 マイクロウェルエッジ
33 マイクロウェルの間のリム
4 カバー
41 第二のフローチャネル表面
41’ 第二のフローチャネル表面
42 入口開口部
43 出口開口部
5 dPCR反応混合物
51 dPCR反応混合物の前線/正面
6 気泡/空気泡
7 分離/密封流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9