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特許7245253粉末芯を製造する方法および該芯を用いて製造される製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】粉末芯を製造する方法および該芯を用いて製造される製品
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20230315BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C09D17/00
A61Q1/02
A61K8/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020543628
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019053858
(87)【国際公開番号】W WO2019158711
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-09-11
(31)【優先権主張番号】202018100825.0
(32)【優先日】2018-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】306041363
【氏名又は名称】シュワン-スタビロ コスメティクス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Schwan-STABILO Cosmetics GmbH&Co.KG
【住所又は居所原語表記】Schwanweg 1,D-90562 Heroldsberg,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カトリン ホルマン-ラーベ
(72)【発明者】
【氏名】タマラ ゼゲッツ
(72)【発明者】
【氏名】マークス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン モーツァー
(72)【発明者】
【氏名】ラインハート ピンツァー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュプローガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス シュタッター
(72)【発明者】
【氏名】イリーナ キュンストラー
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭60-026369(JP,B1)
【文献】特開昭61-249909(JP,A)
【文献】特開昭63-188615(JP,A)
【文献】特開昭63-188616(JP,A)
【文献】特開平05-039449(JP,A)
【文献】特開2003-267832(JP,A)
【文献】特開2019-182816(JP,A)
【文献】特開平07-034024(JP,A)
【文献】特開平07-101829(JP,A)
【文献】特開2002-053789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 17/00
C09D 13/00
A61Q 1/02
A61K 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯コアと、安定化被覆剤で構成されるシースと、からなる安定粉末芯であって、前記芯コアは、少なくとも1種類の着色剤、少なくとも1種類の充填剤、および少なくとも1種類の結合剤を含み、前記被覆剤は、温度50~120℃で溶解することができるワックス、ワックス状物質、またはポリマーからなり、完成芯に対する前記被覆剤の比率は重量基準で10%未満であり、前記被覆剤の前記コアへの透過深度は0.05μm未満である、安定粉末芯を製造する方法であって、
a.少なくとも1種類の着色剤、少なくとも1種類の充填剤、および少なくとも1種類の結合剤を、キャリアー液体と混合し、
b.ステップa)で得られた湿性コンパウンドから芯コアを成形し、
c.ステップb)で成形された芯コアを、前記被覆剤に曝露されるチャンバーに案内し、ここで、前記被覆剤は微粉状であり、かつ
d.ステップc)で前記被覆剤を粉掛けされた芯を、乾燥装置内へと案内し、その中で乾燥させる、
方法。
【請求項2】
前記着色剤が、粉末の形態で存在する少なくとも1種類の顔料を含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被覆剤が、前記芯の重量に対し、重量基準で0.5~10%の比率で添加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記芯が、押出装置内で成形されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記芯が、コロナガンを用いて前記被覆剤を粉掛けされることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記粉掛けされた芯が、温度50~120℃で、8~24時間かけて乾燥されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記芯が、乾燥後、シュリンクスリーブで被覆されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
芯コアと、安定化被覆剤で構成されるシースと、からなる安定粉末芯であって、前記芯コアは、少なくとも1種類の着色剤、少なくとも1種類の充填剤、および少なくとも1種類の結合剤を含み、前記被覆剤は、温度50~120℃で溶解することができるワックス、ワックス状物質、またはポリマーからなり、完成芯に対する前記被覆剤の比率は重量基準で10%未満であり、前記被覆剤の前記コアへの透過深度は0.05μm未満である、安定粉末芯。
【請求項9】
前記シースが、0.05~0.2mmの範囲内の厚みを有し、かつ/または前記被覆剤の前記コアへの透過深度が、前記被覆剤の95%について、0.05μm以下である、請求項8記載の安定粉末芯。
【請求項10】
シュリンクスリーブで被覆されることを特徴とする、請求項8または9記載の粉末芯。
【請求項11】
片持ち芯であることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の粉末芯。
【請求項12】
化粧ペンシルの製造のための、請求項8から11のいずれか1項記載の粉末芯の使用。
【請求項13】
前記芯が、片持ち芯として回転デバイスに挿入されるか、ペンシル芯としてブランクに挿入されることを特徴とする、請求項12記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に化粧品分野における、粉末芯の製造および使用に関する。本発明はさらに、本発明の方法により製造できる粉末芯に関する。
【0002】
片持ちのまたは挿入された芯を含むペンシルは、特に筆記具および化粧品の分野で普及しており、公知である。そのようなペンシル用の芯を製造する方法は、長きにわたり知られている。通常、芯は、高比率の充填剤、顔料、および結合剤から製造される。芯の硬さは、個々の事例で用いられる成分および製造法に左右される。硬めの芯は、たとえば成型品に挿入されたりホルダーに挿入されたりといったさらなる加工がより容易になり得るため、加工に便利である。削ることも簡単である。ところが、硬めの芯は色乗りが悪く、このことは一部の筆記具の場合も化粧品分野でも不利点とみなされる。多くの場合、たとえば化粧品分野では、芯は、塗りやすく、かつ肌に心地よい感覚を与えられるように、十分に軟らかいことが望ましい。しかし、軟らかい芯は折れたり砕けたりしがちなので、より加工しにくいという不利点がある。
【0003】
粉末芯は、化粧品としての使用に特に適している。粉末芯とは、マトリックスを形成する充填剤の実質的な非存在下で、微粉成分から製造される芯である。加工中に溶解してマトリックスを形成する充填剤は安定性を生むが、乗り特性について弊害があり得る。したがって、粉末芯は特に化粧品分野で用いられる。粉末芯は、極めて塗り心地がよく、塗布中に肌を擦らず、かつしっかり着色される塗布となるよう十分なコンパウンドを供給する。
【0004】
ところが、粉末芯は砕けたり折れたりしがちであるうえに、削るにも大きな困難を伴い得る。粉末芯は、塗り心地がよいほど一般に加工がしにくく、加工がしやすいほど通常は硬さおよび塗布時の擦りが増す。
【0005】
粉末芯は普通、非常に高い含量の充填剤および顔料を、水と結合剤との混合物と混錬することにより製造される。次にこの湿潤コンパウンドを押し出し、その後乾燥させて水分を蒸発させる。
【0006】
粉末芯の強度を増加させるために、成形後に粉末芯を液体安定剤に浸漬して硬化させることが知られている。そのために、多くの場合、液体ワックスまたは液体ワックス溶液が用いられる。しかし、この方法は煩雑である。また、浸漬プロセスのために芯が一定の機械的安定性をもたなくてはならないので、さらなる問題も生じる。
【0007】
欧州特許出願公開第2133214号明細書は、有色芯のコンパウンドに微晶質ワックス粒子を混ぜ、それを乾燥プロセス中に該コンパウンド内で溶解させて、乾燥プロセスで生じた孔を埋めさせる、という方法を開示している。この方法により製造された芯は、ワックス塊のおかげで強度が増しているものの、肌への高レベルの乗りは示さず、特に「ワックス状」の塗布感、すなわち肌に塗る間不快な感覚を生じさせる。
【0008】
さらに、欧州特許出願公開第836846号明細書によると、塗布時の態様を変えるために、成形および乾燥の後、芯を液体ワックス、液体脂肪、または脂肪酸に浸漬することが公知である。この浸漬の結果、全重量の約15~25%のワックスの吸収が得られる。このような高比率のワックスを有する芯では、粉末芯の利点はなく、塗り心地のよさは提供されない。
【0009】
プラスチックのカバーとの同時押出により芯を提供することも公知である。しかし、この方法は極めて煩雑であり、硬い芯でのみ満足のいく結果となる。また、同時押出は非常に高い温度を要するが、それは粉末芯の成分にとっては好適ではなく、特に化粧品としての使用が企図される成分にとっては好適ではない。
【0010】
したがって、本発明の目的は、簡単に塗布でき、塗布中に心地よい感覚を与え、塗布中に肌を擦らず、1回の塗布で所望の色合いおよび所望の色深みを実現可能な十分なコンパウンドを供給し、そして、過度に折れることなく一般的な方法により簡単にさらなる加工ができる、粉末芯を提供することである。
【0011】
非常に軟らかい既知の粉末芯のさらなる不利点は、塗布後にほぼ毎回削りなおす必要があることであり、一部のユーザーはこれを煩わしく面倒だと感じている。また、芯があまりにも軟らかいと、完璧な先端部はまず得られない。しかし軟らかい芯は、可能な最高の塗り心地および可能な最高の塗布量のためには極めて有利である。ところが簡単に折れてしまうため、製造時に不良となることが非常に多い。たとえばシュリンクスリーブなどの追加の保護具により自己安定性の粉末芯を製造することは可能であるが、そもそも芯の十分な安定性を保つことが難しい。シュリンクスリーブを取り付けるには、芯を立ててシュリンクスリーブで取り囲む必要がある。これだけでも折れによる不良が生じ得る。
【0012】
したがって、粉末芯を少なくとも一時的に安定化して、少なくとも輸送でき次の加工系に供給できるようにすることもまた、本発明のさらなる目的である。
【0013】
上述の目的は、本発明により、粉末芯に、乾燥温度で溶解し、冷却すると芯に自己安定性を与える安定化シースを形成する微粉被覆剤を粉掛けすることによって、実現される。本発明で添加される粉掛け剤は、こうして、芯のその他の特性を損なうことなく、芯に自己安定性を与える。
【0014】
驚くべきことに、粉末芯の自己安定化は、非常に薄い膜を作ること、そして孔内に比較的深く透過しないように該膜を設置することにより、塗り心地のよさ、最小限の擦り、および十分な乗りなどの所望の特性を損なうことなく実現できることが見出された。また、本発明の方法により、安定した粉末芯を簡単な方法で製造することが可能である。この方法は、個別の事例の所望の配合に合わせて、簡単に調整することができる。本発明の方法により、任意の所望の太さの粉末芯を製造することが可能である。
【0015】
本発明の方法は、塗り心地が極めてよく、かつ乗りも極めて満足がいくほど十分に軟らかい、非常に軟らかい粉末芯を製造することさえも可能にし、したがってそれらは実質的に折れることなくさらに加工されてペンシルを形成することができる。こうして粉末芯のさらなる加工が大幅に容易になり、粉末芯の新用途の可能性が開かれる。
【0016】
粉末芯を製造するための本発明の方法は、
a.少なくとも1種類の着色剤、少なくとも1種類の充填剤、および少なくとも1種類の結合剤を、キャリアー液体と混合するステップ、
b.湿性コンパウンドから芯を成形するステップ、
c.ステップb)で成形された芯を、微粉被覆剤に曝露されるチャンバーに案内するステップ、および
d.粉掛けされた芯を、乾燥装置内へと案内し、その中で乾燥させるステップ
を含む。
【0017】
このようにして、芯を形成する構成要素から混合物を製造し、キャリアー液体によりペースト状にする。得られたコンパウンドを成形して芯を形成し、次いでこれらの芯に被覆剤を粉掛けする。粉末芯を高温で乾燥させると、被覆剤が溶解し、芯の表面を流れる。冷却後、硬化した被覆剤が外皮を形成し、それが芯を折れや砕けから保護するので、容易にさらに加工することができる。
【0018】
本発明の方法により、被覆剤は非常に薄く、実質的に芯の表面にしか存在していないことが保証される。被覆剤の厚みがわずかであるため、芯の表面を削ると被覆が取り除かれ、したがって塗布を妨げ得ない。また、透過深度が低いため、被覆剤が芯コンパウンドの特性を変えることもない。
【0019】
本発明の方法のさらなる利点は、シースの特質および量を、芯または芯の成分とは関係なく調節できることである。シースは芯に載っているので、共在可能性については事実上問題がなく、したがって機能的および美的な観点から被覆剤を選択することができる。透過深度が低く、かつ被覆剤は削ると取り除かれるので、塗布部と接触することはまずなく、つまり塗布される芯コンパウンドの特性を変えることがない。
【0020】
芯を製造し、それから乾燥させた後、本発明により製造された芯は、したがって、何ら問題なくさらに加工することができる。一般に、芯に筒状の保護カバーを設け、企図された長さにし、そして加熱によって保護筒を収縮させる。その後、ペンシルを形成する一般的な要領で、たとえば、芯をペンシルブランクに挿入するか、回転デバイスに挿入するなど、芯をさらに加工する。
【0021】
最初に、成分を混合することにより、芯コンパウンドを製造する。そのために、微粉構成要素と液体構成要素とを互いに混合する。添加の順序は重要ではない。微粉構成要素を予備混合してから液体構成要素に添加してもよいし、すべての構成要素を互いに一度に接触させてから混合してもよいし、個々の構成要素を任意の所望の順序で別々に予備混合してもよい。
【0022】
芯コンパウンドは、少なくとも1種類の着色剤、少なくとも1種類の充填剤、および少なくとも1種類の結合剤を含み、かつ粉末芯の一般的なさらなる成分、たとえば潤滑剤および保存料、ならびに当業者には公知のさらなる添加剤を含み得る。粉末芯の製造に用いられる固形成分はすべて微粉であり、すなわち0.1~200μmの範囲内の、たとえば0.5~150μmの粒子サイズを有する。粒子サイズは成分の特質によってさまざまであり、異なるサイズの粒子の混合物を用いる場合もある。たとえば、最大200μmのサイズのパールが、効果剤として混合物中に存在することがある。他方で、最大0.1μmという極小粒子サイズの微細に粉砕されたカオリンまたはシリカなどの充填剤が芯コンパウンド中に存在することがある。
【0023】
個々の構成要素を別々に所要の粒子サイズにしてもよいし、あるいは予備混合してから一緒に微細化してもよい。たとえば、固形構成要素の一部を個別に、または混合物の状態で、所望の粒子サイズに粉砕してもよく、それからさらなる成分と混合してもよい。具体的には、比較的大きい粒子サイズを有する粒子、たとえばパールなどを、細かく粉砕した混合物に最後に添加してもよい。
【0024】
芯は、少なくとも1種類の充填剤を含む。充填剤は、芯の主剤であり、着色剤のキャリアー材料である。充填剤は、芯の浸蝕特性に寄与する。充填剤は、塗布しやすさを可能にし、かつコンパウンドを滑りやすくすることになる。好適な充填剤は、カオリン、タルク、炭酸カルシウムもしくは炭酸マグネシウムなどのカーボネート、シリカなどの二酸化ケイ素、または二酸化アルミニウム、窒化ホウ素、合成フルオロフロゴパイト、コーンスターチもしくは米デンプンなどのデンプン、マイカ、ゼオライト、ナイロンもしくはポリアミド系充填剤、シリコーン系充填剤、セルロース、ポリメチルメタクリレートなどのアクリレート系充填剤、粉末状の高融点ポリエチレンワックスなどの微晶質粉末であり、また、これらの充填剤の2つ以上の混合物でもある。
【0025】
粉末芯に不可欠な構成要素が着色剤である。着色剤は有機染料でも無機染料でもよい。着色剤としてはまた、きらめきまたは輝きのある粉末もしくは粒子、またはそれ以外のパールとして市販されている白色の、透明な、もしくは有色の球形もしくはパール形の粒子などの効果材料が挙げられる。たとえば、不溶性顔料および/または有機溶性染料が、着色に用いられ得る。このようにして、任意の所望の色合いを生み出すことが可能である。一般に、本発明の芯は、少なくとも1種類の顔料または顔料の混合物を含み、かつ/または1種類または複数種類の効果材料を含む。この場合、粉末芯に一般に用いられる顔料および効果材料を、一般的な量で用いることができる。顔料の例は、酸化鉄、マンガンバイオレット、ウルトラマリン、二酸化チタンなどの無機酸化物である。カーマインなどの有機染料、または水溶性もしくは溶剤溶性の化粧品として許容される染料も、用いられることがある。コーティングできるものもできないものも、マイカなどのフィロケイ酸塩が、効果材料として多くの場合に用いられている。
【0026】
充填剤と顔料とを結合するために、少なくとも1種類の結合剤が存在する。結合剤は水溶性でも溶剤溶性でもよい。好適な結合剤は、たとえば、セルロースおよびセルロース誘導体、ポリアミド、ポリアクリレート、アルギン酸塩、フィロケイ酸塩、デンプンおよびデンプン誘導体、シクロデキストリンなどのポリサッカライドまたは糖誘導体である。多くの場合、セルロース誘導体が結合剤として用いられる。
【0027】
芯は、助剤および添加剤をさらに含み得る。助剤の例は、保存料、塗り心地をよりよくする潤滑剤、および芯の硬さを定めるために用いられる物質である。これらとしては、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムなどのステアリン酸塩、グリコール、エステル、ポリエチレン、その他が挙げられる。保存料は、さらなる例である。
【0028】
キャリアー液体を添加することで、芯の固形微粉構成要素から形成されるものがペースト状の芯コンパウンドになり、次にこれを成形することができる。キャリアー液体は、成分と共在可能であって、望ましくない反応を起こさず、高温で除去することができ、肌および粘膜に無害であり、かつ好ましくは環境にやさしい、任意の液体であり得る。適切な温度で揮発性である溶剤が好適であり、たとえば50~120℃の範囲内の温度で揮発性である、水、炭化水素、シクロメチコン、その他などである。好ましいキャリアー液体は、水または水性混合物である。
【0029】
本発明の成分は、適切な量だけ用いられる。着色剤の含有量は、用いられる顔料および染料の着色力、ならびに所望の色深みに左右される。芯のすべての固形構成要素の重量に対する着色剤の比率は、普通、重量基準で10~70%の範囲内、たとえば重量基準で15~55%、好ましくは重量基準で23~48%である。充填剤の比率は普通、重量基準で5~80%の範囲内、たとえば重量基準で20~70%、好ましくは重量基準で24~65%である。ここで特定したすべてのパーセンテージは、完成芯の重量、すなわち乾燥後の芯の恒量に対するものである。
【0030】
固形構成要素をペースト状にするために、キャリアー液体を、成形しやすいコンパウンドが生じる量だけ用いるが、これは他の構成要素の特質および量に左右される。キャリアー液体の量自体は重要ではなく、というのは特に、それが完成芯の一部にはならない、または実質的にならないためである。好適なのは、成形しやすいコンパウンドを形成するのに十分であるが、除去が煩雑化するほど多くはない量である。ペースト状の芯コンパウンドに対し重量基準で5~80%の範囲が好適であることがわかっている。
【0031】
キャリアー液体の添加後に得られた湿性コンパウンドから、次に、一般的な要領で芯を成形する。芯の成形およびそのために好適な装置は自体公知であり、本発明の方法では公知の装置を用いることができる。押出装置を用いると、良好な結果が得られる。
【0032】
成形後、芯はチャンバー内を案内され、ここで微粉被覆剤を粉掛けされる。被覆剤は、芯の表面にできるだけ均等に沈積することになる。
【0033】
被覆剤は、乾燥段階で溶解し、芯の表面を被覆することになる。被覆剤は、したがって、周囲温度では固形であり、50~120℃の範囲内の、たとえば65~95℃、好ましくは68~88℃の高温で溶解し、冷却すると膜または外皮の形態で固化する材料である。好適な材料の例は、天然および合成のワックス、水素添加植物油、ならびにワックス状および/または熱可塑性ポリマーである。カルナウバワックス、カンデリラワックス、蜜蝋、米ぬかワックス、水素添加ひまし油、オゾケライト、ダマール、セラック、クマロン樹脂、水素添加ホホバ油などの水素添加植物油、およびロジネート(rosinate)などの化粧品に一般に用いられる植物性、動物性、および合成ワックスが好適である。被覆剤のさらなる例は、合成蜜蝋、微晶質ワックス、シリコーンワックス、セレシン、ステアリルジメチコン、ベヘン酸ベヘニルおよびテトラベヘン酸ペンタエリスリチルなどのエステルワックス、PerformacolおよびPerformacidなどの脂肪アルコールおよび脂肪酸、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアセタール、ポリグリコール、ポリエーテル、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂などの樹脂、スクロースエステルである。記載した材料の混合物を用いることも可能である。
【0034】
被覆剤または被覆剤の混合物は微粒子であり、すなわち0.01~100μmの範囲内の、たとえば0.02~50μm、好ましくは10~40μmの粒子サイズを有する。粒子は、湿潤芯にしっかり接着するように、できるだけ小さくなければならない。たとえばフレークなどのより大きい粒子を使用することも可能であろうが、不均一なコーティングをもたらし得るので、好適とはいえない。
【0035】
被覆剤粉末は、成形後の、すなわち湿潤状態の芯を、被覆剤粉末がかけられるチャンバーに通して案内することにより、芯表面にかけられる。そのために、被覆剤粉末をチャンバー内に分散させ、そして通過していく芯に「粉末として付着」させる。この目的に適した好適な装置が公知である。被覆剤は、芯が所望のポイントで粉掛けされるようにかけられ、好ましくは芯の全周および全長にわたり被覆剤が施されるようにされ、つまり、乾燥ステップ後、連続的な被覆層が芯を被覆する。
【0036】
被覆剤は、チャンバー内で、任意選択により帯電したダストの形態で、ミストの形態で、または粉末として提供され得る。芯がチャンバー内を案内されるとき、被覆剤が表面に付着するか集まることができる。
【0037】
粉掛けにより、被覆剤の量を最小限にすることが可能である。チャンバー内の被覆剤の量、芯がチャンバーを通過する速度、および粉末、ダスト、またはミストの乱流は、芯の太さに応じて、かつシースの所望の厚みに応じて、調節することができる。
【0038】
所望の効果を得るために、被覆剤は、芯の重量に対し、重量基準で0.5~15%、たとえば重量基準で0.5~10%または重量基準で1~10%、好ましくは重量基準で2~8%、特に好ましくは重量基準で3~6%の比率で添加される。
【0039】
被覆剤が表面にしっかり接着するように、コロナ放電により短い間だけ帯電させることができる。一実施形態では、被覆剤はコロナガンを用いてかけられる。これに関し、被覆剤で形成された層の厚みは、粉末の帯電強さおよびフロースルー速度に影響される。
【0040】
芯は、粉掛けされた後、乾燥装置内へと案内され、そこで所定の温度で所定の時間をかけて乾燥される。乾燥段階の間に、ペーストを作るために添加されていた液体が逃げる。乾燥時間は、液体があまり急速に逃げないように設定されるが、それは完成芯の構造に悪影響を及ぼし得るためである。乾燥時間は、乾燥温度、芯の太さおよび組成、ならびにキャリアー液体の特質に左右される。太めの芯は、細い芯よりも乾燥に時間がかかり、水よりも沸点が低い溶剤は、水よりも早く蒸発する。ゆっくりと乾燥させるのが、一般には好ましい。普通、芯は8~24時間かけて乾燥させる。8時間よりも少ないと、乾燥が不十分であるか、急速すぎる。いずれの場合も満足のいく結果は得られない。乾燥時間が24時間を超えると、もはや最終製品に何の影響もなく、したがって不要なコストがかかるだけである。非常に良好な結果が、10~18時間、特に12~16時間の乾燥時間で得られた。
【0041】
芯を乾燥させる乾燥装置が周知であり、そうした公知の装置を一般的な要領で用いて、本発明の粉掛けされた芯を乾燥させることができる。
【0042】
乾燥温度は、芯の太さおよび組成、ならびに被覆剤の溶解温度に左右される。乾燥プロセス中に、乾燥温度に影響されて、粉末芯の成分から粉末の肌理が現れる。乾燥温度は、用いられる充填剤および結合剤に応じて50~120℃の範囲内であり得、被覆剤は、各事例の乾燥温度に合わせるべきである。当業者であれば、2~3のルーチンの実験により、芯成分と被覆剤と乾燥パラメーターとの最適な組み合わせを見つけ出すことができる。普通、少なくとも所望の硬さに達するまで、または水分/溶剤の含有量が0.6%未満となるまで、芯を乾燥させる。
【0043】
乾燥中、粉末として付着した被覆剤が次いで溶解し、芯の表面に広がり、それによって芯の他の特性を損なうことなく芯を安定化する。特に理論にとらわられるものではないが、どの場合も非常に小さい、粉末として付着した粒子は、表面で直接溶解して、特定のポイントにごく少量でしか存在しておらず、そのおかげで、溶解した被覆剤が芯内にもっと深く透過するのが防止されている、と考えられる。表面そのものにある孔だけが、溶解した被覆剤で充填され、このことが、芯コアへの被覆剤層の接着をもたらす。こうして、被覆剤が芯コア内へ拡散することが防止され、完成芯の塗り心地は安定化被覆剤により損なわれることがなく、かつ外側から表面に載っている被覆剤層は使用中に削られることで取り除かれる。
【0044】
乾燥後に得られた芯は、あらゆる可能な使用のために、特にペンシルまたはアプリケーターなどに入った芯に一般に企図されるあらゆる目的のためにさらに加工できるほど、安定している。そのような芯は、シェルブランクに挿入したり、またはアプリケーターに挿入したりすることができる。また、芯の一般的なさらなる作業ステップに供することもできる。具体的には、芯は、自体公知の要領で、所望の長さに切断され得る。
【0045】
一実施形態では、芯は、いわゆるシュリンクスリーブを用いることで、すなわち、薄いポリマー被覆を芯に被せてから収縮させ、その結果ポリマー被覆が芯にぴったり装着されることで、さらに安定化する。そのようなポリマー被覆で保護された芯は自立芯として加工可能であるが、あるいは他のアプリケーターに挿入されることもある。このさらなる安定化は、特に、非常に細い芯または非常に軟らかい芯コンパウンドによく適している。
【0046】
本発明はしたがって、芯コアおよび安定化被覆剤で構成されるシースからなる安定粉末芯をさらに提供し、芯コアは、少なくとも1種類の着色剤、少なくとも1種類の充填剤、および少なくとも1種類の結合剤を含み、被覆剤は、50~120℃の温度で溶解できるワックス、ワックス状物質、またはポリマーからなり、完成芯に対する被覆剤の比率は、重量基準で15%未満、好ましくは重量基準で10%未満であり、被覆剤のコアへの透過深度は、0.05μm未満、たとえば0.02μm未満である。
【0047】
そのような芯は、上記の方法により製造することができる。この粉末芯は、その組成のおかげで、従来技術の芯では少なくとも塗布特性を損なわずしては、または大量の不良品なしには実現不可能な、安定性を有する。本発明の粉末芯は、芯の表面に外側から接着しているだけで、芯コアには存在しない、または実質的に存在しない、薄い安定化外皮により区別される。芯の長手方向に直交する断面を観測すると、被覆剤で構成されたシースは外縁にのみ認められ、それよりも内側には認められない。
【0048】
本発明の粉末芯は、シースの厚みが非常に低いこと、たとえば0.05~0.2mmの範囲内、たとえば0.07~0.15mmであること、および透過深度の設定を、被覆剤の95%について、被覆剤のコアへの透過深度が0.05μm以下となるように、たとえば0.02μm以下となるようにすることが可能であることにより、区別される。
【0049】
従来技術の方法によりワックスシースを設けられた芯は、完成芯の質量に対し、たとえば重量基準で10%よりもはるかに多いワックスを有する。
【0050】
本発明は、本発明により製造された芯を含む、または本発明の芯を含む、アプリケーターをさらに提供する。特に化粧品用のアプリケーターは、当業者には周知である。たとえば、シェルおよびそれに挿入された芯からなる、アイブローペンシル、アイライナーペンシル、リップライン用ペンシル、コールペンシルなどの化粧ペンシルが知られている。シェルは、木、木の代用物、ポリマー、またはその他の化粧品の一般的な材料からなり得る。
【0051】
このように、本発明で提供するのは、粉末芯およびその製造方法であり、これまでに実現できなかった塗布特性をもつ、化粧品およびその他の目的のための粉末芯の使用を可能にする。したがって、これまで叶わなかったような使用にも粉末芯が利用可能になる。
【0052】
本発明を、以下の実施例により説明する。
【0053】
実施例1
粉末芯のコンパウンドを製造した。そのために、シリカ、カオリン、マイカおよび/またはマイカ様構成要素、ならびにポリメチルメタクリレート、顔料、ならびにパールで構成される乾燥相を、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン、およびラウリン酸ソルビタンを含む結合剤相ならびに保存料とともに、水と混錬して、湿潤コンパウンドを形成した。この湿潤コンパウンドを押出装置内へ案内し、シリンダー内の圧力により、芯を装置から押し出した。
コア長さ:627mm
切断間隔:2秒で627mm、すなわち313.5mm/秒。
【0054】
押出装置から押し出された芯を、次いで85~88℃の溶解範囲を有する被覆剤としての微粒子状の水素添加ひまし油を常時循環させているチャンバーに通し、その結果としてこの粉末で芯が均一に被覆された。被覆物質の層厚は、チャンバー内の被覆剤の量、および循環速度、ならびに芯の移動速度により設定された。コーティングは、自動車の塗装用にも用いられるコロナガンを用いて実施した。帯電強さおよびフロースルー速度は、所望の層厚が得られるように設定した。
【0055】
粉掛けされた芯をチャンバーから出した後、温度90℃の乾燥オーブンで少なくとも8時間かけて恒量になるまで乾燥させた。
【0056】
次に、乾燥した芯を所望の長さに切断し、そしてシュリンクスリーブを施した。
【0057】
同じ組成かつ同じ方法で、ただし被覆剤を添加せずに製造した比較試験の芯の場合、芯が砕けるためシュリンクスリーブを被せることができなかった。また、決まった長さに切断するにも問題があった。
【0058】
次いで、完成芯を木製のシェルブランクに挿入し、接着した。装飾し削った後にペンシルの完成品が得られ、それは非常に容易に肌に塗布することができ、かつしっかり着色される塗布を提供し、非常によい塗り心地が体験された。
【0059】
実施例2
下の表1に挙げる成分で芯コンパウンドを製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
芯コンパウンドから、55~65バールの範囲内の上流圧力で、3.77mm~4.08mmの範囲内の直径を有する芯を押し出した。押し出される芯ストランドの速度は約310mm s-1であった。被覆剤は、電圧45kV、電流4.5μAで静電気を帯電させた。静電気を帯電した被覆剤は、芯ストランドと接触すると接着した。接着しなかった被覆剤はチャンバー内で吸い取った。チャンバーから出た後、被覆された芯ストランドを決まった長さに切断し、各々627mm長の芯片を得た。芯片を金属シート上に置き、乾燥棚で90℃で16時間かけて乾燥させた。乾燥後、芯は3.85~3.95mmの範囲内の直径を有した。
【0062】
実施例1に記載したように、芯をシェルブランクに挿入し、接着した。得られたペンシルを用いて、被験者の肌に線を引いた。非常によい塗り心地が体験された。線はしっかり着色された。