(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】EHV挿入部位UL43
(51)【国際特許分類】
C12N 15/869 20060101AFI20230315BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/187 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/29 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/15 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/205 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/04 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/08 20060101ALI20230315BHJP
A61K 39/102 20060101ALI20230315BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230315BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230315BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230315BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230315BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230315BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20230315BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230315BHJP
C12N 15/44 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C12N15/869 Z ZNA
A61K39/00 A
A61K39/145
A61K39/187
A61K39/29
A61K39/15
A61K39/205
A61K39/04
A61K39/08
A61K39/102
A61P31/16
A61P31/20
A61P31/12 171
A61P31/14
A61P31/04 171
A61P31/06
A61P37/04
C12N15/44
(21)【出願番号】P 2020550827
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2019056749
(87)【国際公開番号】W WO2019179966
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-09-18
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505258715
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Boehringer Ingelheim Vetmedica GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100215670
【氏名又は名称】山崎 直毅
(72)【発明者】
【氏名】ムント アリス
(72)【発明者】
【氏名】ガレイ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】レフメット クリスティーナ
【審査官】佐久 敬
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2000/61736(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2007/280960(US,A1)
【文献】国際公開第2003/087382(WO,A1)
【文献】国際公開第2000/08191(WO,A2)
【文献】米国特許第6187320(US,B1)
【文献】Journal of Virology,2015年,Vol.89, No.12,P.6251-6263
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
UL43に挿入された発現カセットを含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクターであって、前記発現カセットが、
(i)プロモーター配列に作動可能に連結されている少なくとも1つの抗原コード配列と、
(ii)(i)の上流に位置する、配列番号19ならびにそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号26ならびにそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、
(iii)(i)の下流に位置する、配列番号20ならびにそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列、配列番号27ならびにそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL44隣接領域と
を含む
、前記ウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
【請求項2】
第2の挿入部位に挿入された別の抗原コード配列を
更に含む
、請求項1に記載のEHVベクター。
【請求項3】
UL43への挿入が、UL43における部分欠損、トランケーション、置換、改変によって特徴づけられ、UL44が機能性を維持する、請求項
1または2に記載のEHVベクター。
【請求項4】
UL43への挿入が、RacHのUL43内の配列番号21
で示される配列またはそれと少なくとも90%の配列同一性を有する配列の欠損によって特徴づけられる、請求項
1~3のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項5】
前記抗原コード配列が、動物に感染する病原体に関する、請求項
1~4のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項6】
別の挿入部位に挿入されていてもよい、少なくとも1つのさらなる抗原コード配列をさらに含む、請求項
1~5のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項7】
1つまたは2つもしくはそれ以上の抗原コード配列に作動可能に連結されているプロモーター配列が、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイスルポリヘドリンプロモーター、4pgG600(配列番号1)の機能的断片、4pgG600(配列番号1)の相補的ヌクレオチド配列の機能的断片、4pMCP600(配列番号2)の機能的断片、4pMCP600(配列番号2)の相補的ヌクレオチド配列の機能的断片、またはp422(配列番号5)もしくはその機能的断片もしくはその相補的ヌクレオチド配列からなる群から選択される、請求項
1~6のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項8】
抗原コード配列が、リスト:シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアから選択される病原体由来である、請求項
1~7のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項9】
抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であるか、または抗原コード配列が、ブタA型インフルエンザウイルス由来のヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列である、請求項
1~8のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項10】
抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47からなる群から選択される配列番号に記載のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、請求項
9に記載のEHVベクター。
【請求項11】
EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9からなる群から選択される、請求項
1~10のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項12】
EHV-1またはEHV-4である、請求項
1~11のいずれか1項に記載のEHVベクター。
【請求項13】
請求項
1~12のいずれか1項に記載のEHV-1ベクターを含む免疫原性組成物。
【請求項14】
非ヒト動物を免疫する
ための方法であって、請求項
13に記載の免疫原性組成物を非ヒト動物に投与するステップを含む方法。
【請求項15】
必要とする非ヒト動物において病原体によって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する
ための方法であって、治療有効量の請求項
13に記載の免疫原性組成物を非ヒト動物に投与するステップを含む方法。
【請求項16】
非ヒト動物が、ブタ、子ブタもしくは雌ブタ、家禽、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである、請求項
14または
15に記載の方法。
【請求項17】
非ヒト動物を免疫する
ための方法で使用するための、請求項
13に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
必要とする非ヒト動物において病原体によって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する
ための方法で使用するための、請求項
13に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
非ヒト動物が、ブタ、子ブタもしくは雌ブタ、家禽、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである、請求項
17または
18に記載の免疫原性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、37 C.F.R. 1.821~1.825に従って配列表を含有する。本出願に付随する配列表は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
A.技術分野
2、本発明は、(ベクター)ワクチンの分野、特に新規のEHV挿入部位UL43に関する。本発明は、目的の遺伝子、特に抗原コード配列の発現に好適な関連する発現カセットおよびベクターにさらに関する。本発明のウイルスベクターは、免疫原性組成物またはワクチンの産生に有用である。
【背景技術】
【0002】
B.関連技術の背景および説明
ウマの病原体、ウマアルファヘルペスウイルス1型(ウマ流産ウイルス、EHV-1)は、ヘルペスウイルス目の、ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス亜科のバリセロウイルス属に属する。およそ150,000塩基対の二本鎖DNAゲノムを有する大きなエンベロープウイルスである。バリセロウイルス亜属の他の重要なメンバーは、ヒトアルファヘルペスウイルス3型(水痘帯状疱疹ウイルス)、ブタアルファヘルペスウイルス1型(仮性狂犬病ウイルス)、ウシアルファヘルペスウイルス1型(感染性気管支炎ウイルス)、およびウマアルファヘルペスウイルス4型(ウマ鼻肺炎ウイルス、EHV-4)(http://www.ictvonline.org/virustaxonomy.asp Virus Taxonomy: 2015 Release EC 47, London, UK, July 2015; Email ratification 2016 (MSL #30))。EHV-1およびEHV-4は風土性であり、世界中のウマに影響を及ぼす。EHV-4は、上気道に、大抵は軽度の感染を引き起こすが、EHV-1は、株および宿主の免疫状態によって呼吸器症状から流産および致死性の脳脊髄障害の範囲の疾患を含む全身感染を引き起こし得る。EHV-1に対して使用許諾を得た2つの改変生ワクチン(MLV)がアメリカおよびヨーロッパで現在入手可能であり、それぞれRhinomune(登録商標)(Boehringer Ingelheim)およびPrevaccinol(登録商標)(MSD)である。両方とも、弱毒化のためにブタ上皮細胞において256回継代された、古典的に弱毒化したEHV-1 RacH株を含有する(Ma et al. 2013)。弱毒化のメカニズムは、分子レベルで調査されてきた。Osterrieder et al. (1996)は、RacHがorf67(IR6)の2つのゲノムコピーを欠如し、1つのコピーの回復が毒性を回復させるのに十分であったことを示した。さらに、免疫抑制ウイルスタンパク質をコードするorf1(UL56)のコード配列の90%より多くを除去する1283bpの欠損を持つ。他の変異もまた、弱毒化に影響するが、これまでのところ詳細には調査されていない。これら全てのことから、RacHは非常に安全なワクチン株である。ワクチン接種動物における継代による毒性への復帰は、仮に可能だとしてもその可能性が極めて低いからである。
【0003】
ウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ワクチン株RacH:pRacHおよびpRacH-SEの全ゲノムを持つ大腸菌(E.coli)の細菌人工染色体(BAC)の2つのバリアントは、ベクターワクチン開発のプラットフォームとして公知である。BAC pRacH-SEはpRacH、元々はKlaus Osterriede,FU Berlinの研究室でクローニングされたBACをもとに作製された。pRacHは、糖タンパク質II(gpII;Wellington et al., 1996)をコードするorf71(US5)が欠損している。その場所に、BACベクター配列およびGFP発現カセットが導入された。pRacHから未改変EHV-1 RacHをレスキューするため、ウイルス複製の間に、BACベクター配列部分およびGFP発現カセットが相同組換えによってorf71(US5)によって置き換えられ、元々のRacHゲノムが回復されるように、それは、全orf71(US5)プラス隣接領域を含有するプラスミドとコトランスフェクトされなければならなかった。BACベクター配列/GFP発現カセットが細胞培養でのトランスフェクション時に自己切断可能(SE)になるように、pRacHは本発明において改変された(Tischer et al., 2007)。この改善されたBACはpRacH-SEと名づけられた。pRacHおよびpRacH-SEは、pRacH-SEがorf71(US5)修復ウイルスのレスキューを著しく促進する点が違うのみで、両方ともベクターワクチン開発のためのプラットフォームとなり得る。
【0004】
EHV-1 RacHベースのベクターワクチンは、ブタ、ウシ、およびイヌを含むいくつかの哺乳動物種で免疫性を引き出すことができることが示された(Rosas et al. 2007, Rosas et al. 2008, Trapp et al. 2005, Said et al. 2013)。病原体の抗原タンパク質をコードする遺伝子は、組換えEHV-1 RacHによって発現され得る。EHV-1-RacHゲノムは、大腸菌においてそのBAC形態で操作し、通常導入遺伝子発現カセットを挿入することによってさらなるタンパク質を発現するように調製することができる(Tischer et al., 2010)。培養した許容細胞においてpRacH-SE DNAをトランスフェクションすると、EHV-1複製が細胞の転写因子によって開始される。ウイルスDNAポリメラーゼの活性は、全てのBACベクター関連配列の欠損およびEHV-1 RacHゲノムのその元々の状態への回復をもたらす。感染性ウイルスが生成され、それはRacHと区別がつかない。
pRacH-SEが、例えば導入遺伝子発現カセットの挿入によって、大腸菌中で操作される場合、許容細胞へのトランスフェクション後に再構築されたウイルスは改変を保持し、さらなる遺伝子を発現するであろう。組換えEHV-1 RacHはベクターワクチンとして使用することができる。
【0005】
野生型EHV-1株は、それらのゲノムの長いユニーク断片の一端にorf1(UL56)、orf2、およびorf3と呼ばれる3つのオープンリーディングフレーム(orf)を保持する(配列座標 1298-3614;
図1)。Orf1(UL56)およびorf3は、DNAの1つの鎖に連続して配置されているが、orf2は相補鎖にコードされている。ワクチン株RacHは、orf1および2に影響を及ぼす領域内に1283bpの欠損があり、これは、これらの遺伝子はウイルス複製に必須ではないことを示している。このため、その部位は導入遺伝子挿入部位となる。この挿入部位はORF1/3(UL56)と呼ばれる。
しかしながら、ORF1/3(UL56)挿入部位に挿入され得る導入遺伝子のサイズおよび数は、通常制限される。したがって、EHVベクターの能力を増強するため、EHVベクター、特に組換えEHV-1 RacHベクターに導入遺伝子を挿入する、およびEHVベクター、特に組換えEHV-1 RacHベクターから導入遺伝子を発現する、新しいおよび代わりの方法の満たされていない要求がある。
【発明の概要】
【0006】
EHVベクターの能力を増大させるために、本発明は、EHVベクター骨格に導入遺伝子を挿入する、およびEHVベクター骨格から導入遺伝子を発現する、新しいおよび代わりの方法を提供する。
本発明は、EHVベクター、特に組換えEHV-1 RacHに導入遺伝子配列を挿入するためにおよびEHVベクター、特に組換えEHV-1 RacHからトランスジェニックタンパク質を発現するために使用することができる、新しい、代わりの導入遺伝子挿入部位UL43に関する。
【0007】
EHVベクターの新規の「UL43挿入部位」は、UL43(ORF17)に関する部分欠損、トランケーション、置換、改変などによって特徴づけられる。UL43の完全な欠損は、糖タンパク質CをコードするUL44のプロモーターに影響を与える可能性があるため、完全なUL43の欠損は、ウイルス複製に不利であり、したがってワクチン製造および有効性に不利であると予想される。新規のUL43挿入部位、および/またはUL43への(発現カセットの)挿入は、UL44が機能性または無傷の状態を維持するように機能的に規定される。
【0008】
特定の態様では、UL43挿入部位は、RacHのUL43(配列番号18)内のおよそ870bp部分(配列番号21)またはその70%、80%、85%、90%、95%、99%相同配列の欠損を包含する。RacHゲノム配列の欠損部分は、配列番号21として示される(完全なRacHゲノム配列が不明であるのでヌクレオチド番号は入手不可能)。別の特定の態様では、UL43挿入部位は、野生型EHV-1 V592株(Genbank受入番号AY464052.1)のUL43の理論的870bp欠損(逆相補的nt23021~24226)(配列番号23)を包含する。この欠損部分は、野生型V592(Genbank受入番号AY464052.1)ゲノム配列の逆相補的ヌクレオチド23353および24226(配列番号24)に対応する。
【0009】
本発明では、「隣接領域」は、目的の配列または遺伝子、好ましくは抗原コード配列、を含む発現カセットのEHVゲノムへの組換えを指示する。これらの隣接領域は、EHVに天然に存在する。Up UL43隣接領域(226bp、配列番号19)およびUp UL44隣接領域(305bp、配列番号20)は、UL43部位に使用される全てのトランスファーベクター/プラスミドの古典的相同組換えに選択される。野生型EHV-1 V592株(Genbank受入番号AY464052.1)では、対応する配列は、逆相補的ヌクレオチド24227~24452(隣接領域up UL43、配列番号26)および逆相補的ヌクレオチド23049~23354(隣接領域up UL44、配列番号27)に位置する。
トランスファープラスミドpU-mC70-BGH(配列番号37)の
図21、トランスファーベクターpU70-p455-71K71(配列番号28)の
図22、およびトランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71(配列番号29)の
図3のプラスミド/ベクターマップは、新規のORF70挿入部位を含む発現カセットを含むベクターの例である。トランスファーベクターpU-1-3-p430-BGHKBGH(配列番号30)の
図23、およびトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1av-BGHKBGH(配列番号31)の
図4のプラスミド/ベクターマップは、ORF1/3(UL56)挿入部位を含む発現カセットを含むベクターの例である。
【0010】
トランスファーベクターpUUL43-p422-18K18(配列番号34)の
図24、トランスファープラスミドpUUL43-422-mC-18K18(配列番号35)の
図14、およびトランスファープラスミドpUUL43-422-H1pdm-18K18(配列番号36)の
図16のプラスミド/ベクターマップは、新規のUL43挿入部位を含む発現カセットを含むベクターの例である。
本発明は、1つのプロモーターの調節下でRNAウイルス由来機能(2aペプチド、IRES部位)によって2つの導入遺伝子を結合するのではなく1つのベクター骨格から2つの異なる導入遺伝子を発現するEHVベクターにさらに関する。
本発明は、1つのプロモーターの調節下でRNAウイルス由来機能(2aペプチド、IRES部位)によって2つまたは3つの導入遺伝子を結合するのではなく1つのベクター骨格から2つまたは3つの異なる導入遺伝子を発現するEHVベクターにさらに関する。
【0011】
本発明は、新規のUL43挿入部位に挿入された目的の第1の配列または遺伝子と、ORF1/3(UL56)などの確立された挿入部位または他の挿入部位ORF70(US4)に挿入された目的の第2の配列または遺伝子とを含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター、好ましくは、EHV-1、RacHまたはRacH-SEに、さらに関する。加えて、本発明は、ウマアルファヘルペスウイルス3型(EHV-3)、ウマアルファヘルペスウイルス4型(EHV-4)、ウマアルファヘルペスウイルス8型(EHV-8)、ウマアルファヘルペスウイルス9型(EHV-9)、ウシアルファヘルペスウイルス1型(BHV-1)、ウシアルファヘルペスウイルス5型(BHV-5)、イヌアルファヘルペスウイルス1型、およびネコアルファヘルペスウイルス1型を含む、他のヘルペスウイルス属、特にアルファヘルペスウイルス属、特にバリセロウイルス属に基づくベクターに、さらに関する。
【0012】
本発明は、新しいUL43挿入部位に挿入された目的の第1の配列または遺伝子と、他の挿入部位ORF70(US4)に挿入された目的の第2の配列または遺伝子と、ORF1/3(UL56)などの確立された挿入部位に挿入された目的の第三の配列または遺伝子とを含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター、好ましくは、EHV-1、RacHまたはRacH-SEに、さらに関する。加えて、本発明は、ウマアルファヘルペスウイルス3型(EHV-3)、ウマアルファヘルペスウイルス4型(EHV-4)、ウマアルファヘルペスウイルス8型(EHV-8)、ウマアルファヘルペスウイルス9型(EHV-9)、ウシアルファヘルペスウイルス1型(BHV-1)、ウシアルファヘルペスウイルス5型(BHV-5)、イヌアルファヘルペスウイルス1型、およびネコアルファヘルペスウイルス1型を含む、他のヘルペスウイルス属、特にアルファヘルペスウイルス属、特にバリセロウイルス属に基づくベクターに、さらに関する。
本発明は、そのようなベクターを含む哺乳動物宿主細胞、およびそのような宿主細胞を使用してベクターワクチンを生成する方法、ならびに本発明のウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクターを含む免疫原性組成物およびワクチンにさらに関する。
【0013】
本発明は、p422を含むプロモーター配列(配列番号5)またはその相補的ヌクレオチド配列またはその機能的断片またはその機能的断片の相補的ヌクレオチド配列にさらに関し、前記プロモーター配列は、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列の発現をもたらす。本発明は、70%、80%、85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の配列同一性および/または相同性を有するプロモーター配列の機能的断片にも関する。
したがって、上記の技術的問題の解決策は請求項に特徴づけられる記載および実施形態によって達成され、その異なる態様内の本発明は請求項に従って実施される。
【0014】
これらの特性は、新規記載のUL43挿入部位から少なくとも1つの抗原を発現する、または新規記載のUL43挿入部位とORF1/3(UL56)などの別の挿入部位および/もしくは他の挿入部位ORF70(US4)とから同様の効率で並行して少なくとも2つの異なる抗原を発現するEHVに基づく組換えベクターワクチン、好ましくは、EHV-1 RacHに基づく組換えベクターワクチンの作製を可能にする。ワクチンの標的が2つの異なる病原体からなる場合、ORF1/3(UL56)のような確立された挿入部位および/または他の挿入部位ORF70(US4)と並行して新しいUL43挿入部位を利用することは、1つだけの抗原成分を発現するベクターに比べて、商品原価を有意に削減することができ、明らかな利点となる。
【0015】
これらの特性は、新規記載のUL43挿入部位から少なくとも1つの抗原を発現する、または新規記載のUL43挿入部位とORF1/3(UL56)のような別の挿入部位もしくは他の挿入部位ORF70(US4)とから同様の効率で並行して少なくとも2つの異なる抗原を発現する、または新規記載のUL43挿入部位と他の挿入部位ORF70(US4)とORF1/3(UL56)のような別の挿入部位とから並行して少なくとも3つの異なる抗原を発現するEHVに基づく組換えベクターワクチン、好ましくは、EHV-1 RacHに基づく組換えベクターワクチンの作製を可能にする。ワクチンの標的が2つの異なる病原体からなる場合、ORF1/3(UL56)のような確立された挿入部位または他の挿入部位ORF70(US4)と並行して新しいUL43挿入部位を利用することは、1つだけの抗原成分を発現するベクターに比べて、商品原価を有意に削減することができ、明らかな利点となる。ワクチンの標的が3つの異なる病原体からなる場合、ORF1/3(UL56)のような確立された挿入部位および他の挿入部位ORF70(US4)と並行して新しいUL43挿入部位を利用することは、1つまたは2つだけの抗原成分を発現するベクターに比べて、商品原価を有意に削減することができ、明らかな利点となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、先行技術につきものの問題を解決し、当技術の状態の明らかな進歩を提供する。
【0017】
一般的には、本発明は、
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
(ii)配列番号19ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号26ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、
(iii)配列番号20ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号27ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL44隣接領域と
を含む発現カセットを提供する。
【0018】
本発明は、本発明の発現カセットを含むウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えば、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9、より具体的にはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的にはRacH株をさらに提供する。
本発明は、本発明の発現カセットを含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター、好ましくは、EHV-1またはRacH株を提供する。
【0019】
本発明は、
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
(ii)配列番号19ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号26ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、
(iii)配列番号20ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号27ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL44隣接領域と
を含むウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えば、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9、より具体的にはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的にはRacH株に、さらに関する。
【0020】
有利なことには、本発明により提供される実験データは、抗原の挿入および発現に使用することができるEHVベクター内の新しい挿入部位が得られたことを開示する。さらに、今般、新しい挿入部位が得られたことにより、異なる挿入部位への抗原の挿入、および異なる挿入部位からの抗原の発現、および1つより多くの抗原の発現がそれぞれ可能になる。
本発明は、UL43に挿入された、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含むウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えば、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9、より具体的にはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的にはRacH株に、さらに関する。
【0021】
本発明は、UL43に挿入された、目的の第1のヌクレオチド配列または遺伝子、好ましくは抗原コード配列と、第2の挿入部位、好ましくはUL56(orf1/3)またはUS4(orf70)に挿入された、目的の第2のヌクレオチド配列または遺伝子、好ましくは別の抗原コード配列とを含むウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えば、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9、より具体的にはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的にはRacH株に、さらに関する。本発明の前記EHVベクターの特定の態様では、少なくとも2つの目的の遺伝子は、制御配列、好ましくはプロモーター配列に、作動可能に連結されている。
本発明のベクターの特定の態様では、UL43への挿入は、UL43における部分欠損、トランケーション、置換、改変などによって特徴づけられ、UL44は機能性を維持する。
本発明のベクターの別の特定の態様では、UL43への挿入は、RacHのUL43内の約870bp部分(配列番号21)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/もしくは同一配列の欠損によって特徴づけられる。
【0022】
本発明のベクターの別の特定の態様では、UL43への挿入は、RacHのUL43内の870bp部分(配列番号21)の欠損またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/もしくは同一配列の任意の他の株における欠損によって特徴づけられる。
本発明のベクターのさらなる特定の態様では、UL43への挿入は、野生型EHV-1 V592株(Genbank受入番号AY464052.1)のUL43内のおよそ870bp欠損によって特徴づけられ、野生型V592ゲノム配列の欠損部分は、ヌクレオチド23353~24226の間(配列番号24)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/もしくは同一配列に位置する。
【0023】
本発明のベクターの別の特定の態様では、EHVベクター、具体的にはEHV-1ベクターは、(i)配列番号19、配列番号26からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、(ii)配列番号20、配列番号27からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL44隣接領域とを含む。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列は、天然に存在しない、および/または組換えである。
本発明のベクターまたは発現カセットの別の特定の態様では、前記目的のヌクレオチド配列は、組換えおよび/または異種性および/または外来性である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記抗原コード配列は、動物、例えば、ブタ、家禽もしくはウシなどの食物生産動物またはネコ、イヌもしくはウマなどの伴侶動物に感染する病原体に関する。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記ベクターまたは発現カセットは、終結シグナルまたはポリアデニル化配列などの少なくとも1つのさらなる追加の制御配列をさらに含む。
本発明のベクターまたは発現カセットの別の特定の態様では、前記ベクターまたは発現カセットは、終結シグナルおよび/またはポリアデニル化配列などの追加の制御配列をさらに含む。
【0024】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記ベクターまたは発現カセットは、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列をさらに含む。一態様では、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列は、例えばIRES/2aペプチドを介して、同じ挿入部位UL43に挿入されている。別の態様では、前記ベクターまたは発現カセットは、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含み、別の挿入部位に、好ましくはUL56および/またはUS4に挿入されている。
【0025】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる態様では、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列は、UL56に挿入されている。UL56(ORF1/3)挿入部位は、先行技術分野で説明されている。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる態様では、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列は、US4(ORF70)に挿入されている。
代わりの導入遺伝子挿入部位US4(ORF70)を使用して、EHVベクター、特に組換えEHV-1またはEHV-1 RacHに導入遺伝子を挿入すること、およびEHVベクター、特に組換えEHV-1またはEHV-1 RacHから導入遺伝子を発現することができる。
【0026】
EHVベクターの「US4(ORF70)挿入部位」は、US4(ORF70)に関する部分欠損、トランケーション、置換、改変などによって特徴づけられる。US4(ORF70)の完全な欠損は、gpIIをコードするUS5(ORF71)のプロモーターに影響を与えることになるため、完全なUS4(ORF70)の欠損は、ウイルス複製に不利であり、したがってワクチン製造および有効性に不利であると予想される。US4(ORF70)挿入部位、および/またはUS4(ORF70)への(発現カセットの)挿入は、US5(ORF71)が機能性または無傷な状態を維持するように機能的に規定される。
【0027】
特定の態様では、US4(ORF70)挿入部位は、RacHのUS4(ORF70)内のおよそ801bp部分(配列番号17)またはその70%、80%、85%、90%、95%、99%相同配列の欠損を包含する。RacHゲノム配列の欠損部分は、配列番号17として示される(完全なRacHゲノム配列が不明であるのでヌクレオチド番号は入手不可能)。別の特定の態様では、ORF70挿入部位は、野生型EHV-1 ab4株(Genbank受入番号AY665713.1)のORF70内の理論的801bp欠損(配列番号16)を包含する。欠損部分は、野生型ab4(Genbank受入番号AY665713.1)ゲノム配列のヌクレオチド127681~128482の間(配列番号16)に位置する。
【0028】
本発明では、「隣接領域」は、目的の配列または遺伝子、好ましくは抗原コード配列、を含む発現カセットのEHVゲノムへの組換えを指示する。これらの隣接領域は、EHVに天然に存在する。Up70隣接領域(417bp、配列番号9)およびUp71隣接領域(431bp、配列番号10)は、orf70部位に使用される全てのトランスファーベクター/プラスミドの古典的相同組換えに選択される。野生型EHV-1 ab4株(Genbank受入番号AY665713.1)では、対応する配列は、ヌクレオチド127264~127680(隣接領域up orf70、配列番号11)および128483~128913(隣接領域up orf71、配列番号12)に位置する。RED組換えの場合、隣接領域は、XbaI制限消化に起因してトランケートされる。これらのトランケートされた隣接領域は、上記の、417bp「クラシカルな」隣接領域(Up70隣接領域、配列番号9)の3’の283bp、および431bp「クラシカルな」隣接領域(Up71隣接領域、配列番号10)の5’の114bpと同一である。これらのトランケートされた隣接領域は、配列番号13として含まれる名称Up70隣接領域(283bp)、および配列番号14として含まれる名称Up71隣接領域(144bp)である。これらの様々な隣接領域は、同じORF70挿入部位を規定する。隣接領域は、配列番号9、11、13などの1つの「左」隣接領域および配列番号10、12、14などの1つの「右」隣接領域というペアで、常に使用される。
【0029】
本発明のベクターのさらなる態様では、ベクターは、
(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
(ii)配列番号9ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号11ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、ならびに配列番号13ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの左US4(ORF70)隣接領域と、
(iii)配列番号10ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号12ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、ならびに配列番号14ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの右US4(ORF70)隣接領域と
をさらに含む。
【0030】
本発明は、
(i)目的の第1の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
配列番号19ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号26ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、
配列番号20ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号27ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL44隣接領域と
を含み、かつ
(ii)目的の第2の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
配列番号9ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号11ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、ならびに配列番号13ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの左US4(ORF70)隣接領域と、
配列番号10ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号12ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、ならびに配列番号14ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの右US4(ORF70)隣接領域と
を含むウマヘルペスウイルス(EHV)、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクター、最も具体的にはRacH株に、さらに関する。
【0031】
本発明のベクターのさらなる態様では、US4(ORF70)へのベクター挿入は、RacHのUS4(ORF70)内のおよそ801bp部分(配列番号17)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/もしくは同一配列の欠損によって特徴づけられる。
【0032】
本発明のベクターのさらなる態様では、ベクターは、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号14ならびにこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの隣接領域を含む。
本発明のベクターのさらなる態様では、ベクターは、(i)配列番号9、配列番号11、および配列番号13からなる群から選択される少なくとも1つの左US4(ORF70)隣接領域と、(ii)配列番号10、配列番号12、および配列番号14からなる群から選択される少なくとも1つの右US4(ORF70)隣接領域とを含む。
【0033】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる態様では、目的の第2のさらなるヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列は、US4に挿入されており、目的の第3のさらなるヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列は、UL56に挿入されている。
本発明のベクターの特定の態様では、目的の遺伝子は、制御配列、好ましくはプロモーター配列に、作動可能に連結されている。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる態様では、目的の遺伝子は、制御配列、好ましくは、プロモーター配列または本明細書に記載のEHVベクターに、作動可能に連結されており、少なくとも2つの目的の遺伝子が、制御配列、好ましくはプロモーター配列に、作動可能に連結されている。
【0034】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる態様では、1つまたは2つもしくはそれ以上の目的の配列または遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列は、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイスルポリヘドリンプロモーター、4pgG600(配列番号1)の機能的断片、好ましくは、p430(配列番号3)である前記機能的断片、4pgG600(配列番号1)の相補的ヌクレオチド配列の機能的断片、4pMCP600(配列番号2)の機能的断片、好ましくは、p455(配列番号4)である前記機能的断片、4pMCP600(配列番号2)の相補的ヌクレオチド配列の機能的断片、またはp422(配列番号5)もしくはその機能的断片もしくはそれらの相補的ヌクレオチド配列からなる群から選択される。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列は、p422(配列番号5)またはその機能的断片またはそれらの相補的ヌクレオチド配列である。
本発明のベクターまたは発現カセットの特定の態様では、少なくとも2つの目的の遺伝子は、制御配列、好ましくはプロモーター配列に、作動可能に連結されている。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、少なくとも2つの目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列は、異なる。
【0035】
本発明のベクターまたは発現カセットの別の特定の態様では、少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列は、p422(配列番号5)またはその機能的断片もしくは誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列であり、別の目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列は、p430(配列番号3)またはその機能的断片もしくは誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列であり、別の目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列は、p455(配列番号4)またはその機能的断片もしくは誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、ポリアデニル化配列は、BGHpA、71pA(配列番号6)、または18pA(配列番号7)である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、EHVベクターまたは発現カセットは、組換えである。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記目的の配列もしくは外来性ヌクレオチド配列または目的の遺伝子は、抗原コード配列である。
【0036】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、抗原コード配列は、リスト:シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアから選択される病原体由来である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、抗原コード配列は、ヘマグルチニンコード配列である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、ブタA型インフルエンザウイルス由来である。
【0037】
ヨーロッパ内で最も高頻度に見られる4つのA型インフルエンザ株は、H1N2、H3N2およびH1N1(トリH1N1およびパンデミックH1N1)亜型である。それ故、H1N2、H3N2およびH1N1(トリH1N1およびパンデミックH1N1)亜型に対して非常に効果があるワクチンであって、したがってこれらのブタIAV野外株に対して非常に広範な防御を提供するワクチンが、必要である。
さらに、多価ワクチンは、一般に一価ワクチンより対費用効果が高く、時間効率がよいので、多価ワクチンを有することは有利である。
【0038】
本明細書に記載のEHV-ベクターベースワクチンは、改変生ワクチン(MLV)でないことから、生IAVが生成されも動物に与えられもせず、結果として、ワクチン株の毒性への潜在的な復帰およびブタまたはヒト由来の野外株との遺伝子組換えまたは再集合を防止するので、ブタIAVに対して究極の安全性を提供する。さらに、死菌ワクチン(現行標準)とは対照的に、ベクターワクチンは、ブタIAV中和抗体を誘導することのみならず、MHCクラスI経路とMHCクラスII経路の両方によってブタIAVに対する細胞免疫を強力に刺激することも期待される。それ故、ベクターベースのSIAVワクチンが必要である。加えて、IAVヘマグルチニンを発現するベクターワクチンは、インフルエンザウイルスの他の抗体誘導タンパク質がベクターワクチンの一部ではないので、感染動物とワクチン接種を受けた動物との区別(DIVA)を可能にする。したがって、NPおよびNは両方ともウイルス構造タンパク質であり、標準的な死菌ワクチンに含有されるが、ワクチン接種は、NP(核タンパク質)に特異的な抗体もN(ノイラミニダーゼ)に特異的な抗体も誘導しないだろう。
【0039】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、外来性抗原コード配列は、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ亜型は、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17およびH18からなる群から選択される。
【0040】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、外来性抗原コード配列は、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、A/swine/Italy/116114/2010(H1N2)、A/swine/Italy/7680/2001(H3N2)、A/swine/Gent/132/2005(H1N1)、A/swine/Italy/4675/2003(H1N2)、A/swine/Italy/259543/2003(H1N2)、A/swine/Denmark/13772-1/2003(H1N1)、A/swine/England/MD0040352R/2009(H1N1)、A/swine/Hungary/13509/2007(H3N2)、A/swine/Italy/13962/95(H3N2)、A/swine/Cotes d’Armor/1121/00(H1N1)、A/Swine/Colorado/1/77、A/Swine/Colorado/23619/99、A/Swine/Cote d’Armor/3633/84、A/Swine/England/195852/92、A/Swine/Finistere/2899/82、A/Swine/Hong Kong/10/98、A/Swine/Hong Kong/9/98、A/Swine/Hong Kong/81/78、A/Swine/Illinois/100084/01、A/Swine/Illinois/100085A/01、A/Swine/Illinois/21587/99、A/Swine/Indiana/1726/88、A/Swine/Indiana/9K035/99、A/Swine/Indiana/P12439/00、A/Swine/Iowa/30、A/Swine/Iowa/15/30、A/Swine/Iowa/533/99、A/Swine/Iowa/569/99、A/Swine/Iowa/3421/90、A/Swine/Iowa/8548-1/98、A/Swine/Iowa/930/01、A/Swine/Iowa/17672/88、A/Swine/Italy/1513-1/98、A/Swine/Italy/1523/98、A/Swine/Korea/CY02/02、A/Swine/Minnesota/55551/00、A/Swine/Minnesota/593/99、A/Swine/Minnesota/9088-2/98、A/Swine/Nebraska/1/92、A/Swine/Nebraska/209/98、A/Swine/Netherlands/12/85、A/Swine/North Carolina/16497/99、A/Swine/North Carolina/35922/98、A/Swine/North Carolina/93523/01、A/Swine/North Carolina/98225/01、A/Swine/Oedenrode/7C/96、A/Swine/Ohio/891/01、A/Swine/Oklahoma/18717/99、A/Swine/Oklahoma/18089/99、A/Swine/Ontario/01911-1/99、A/Swine/Ontario/01911-2/99、A/Swine/Ontario/41848/97、A/Swine/Ontario/97、A/Swine/Quebec/192/81、A/Swine/Quebec/192/91、A/Swine/Quebec/5393/91、A/Swine/Taiwan/7310/70、A/Swine/Tennessee/24/77、A/Swine/Texas/4199-2/98、A/Swine/Wisconsin/125/97、A/Swine/Wisconsin/136/97、A/Swine/Wisconsin/163/97、A/Swine/Wisconsin/164/97、A/Swine/Wisconsin/166/97、A/Swine/Wisconsin/168/97、A/Swine/Wisconsin/235/97、A/Swine/Wisconsin/238/97、A/Swine/Wisconsin/457/985、A/Swine/Wisconsin/458/98、A/Swine/Wisconsin/464/98およびA/Swine/Wisconsin/14094/99からなる株の群から選択される。
【0041】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、外来性抗原コード配列は、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、A/swine/Italy/116114/2010(H1N2)、A/swine/Italy/7680/2001(H3N2)、A/swine/Gent/132/2005(H1N1)およびA/swine/Italy/4675/2003(H1N2)からなる株の群から選択される。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、外来性抗原コード配列は、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ亜型は、H1および/またはH3である。
【0042】
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、抗原コード配列は、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、EHVベクターまたは発現カセットは、NP(核タンパク質)インフルエンザ抗原コード配列もN(ノイラミニダーゼ)インフルエンザ抗原コード配列も含まない。
【0043】
p422を有するUL43のH1pdm:
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、プロモーター配列p422(配列番号5)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列は、配列番号44(H1pdm)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されている。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、EHVベクターは、2つまたはそれより多くのヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列を含む。
【0044】
p430を有するUL56のH1av:
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、配列番号46(H1av)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、UL56に挿入されている。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、本明細書に記載のヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、プロモーター配列p430(配列番号3)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0045】
p455を有するUS4のH3:
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、配列番号45(H3)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列である。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、前記さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、US4に挿入されている。
本発明のベクターまたは発現カセットのさらなる特定の態様では、本明細書に記載のヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列は、プロモーター配列p455(配列番号4)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0046】
組合せ
本発明は、
UL43に挿入された配列番号44(H1pdm)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p422(配列番号5)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と、さらに、
UL56に挿入された配列番号46(H1av)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p430(配列番号3)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と
を含むウマヘルペスウイルス(EHV)にさらに関する。
【0047】
本発明は、
UL43に挿入された配列番号44(H1pdm)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p422(配列番号5)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と、さらに
US4に挿入された配列番号45(H3)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p455(配列番号4)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と
を含むウマヘルペスウイルス(EHV)にさらに関する。
【0048】
本発明は、
UL43に挿入された配列番号44(H1pdm)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p422(配列番号5)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と、さらに
UL56に挿入された配列番号46(H1av)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p430(配列番号3)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と、さらに
US4に挿入された配列番号45(H3)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されているプロモーター配列p455(配列番号4)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列と
を含むウマヘルペスウイルス(EHV)にさらに関する。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9からなる群から選択される。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、EHV-1またはEHV-4である。
本発明のベクターの別の態様では、EHVベクターは、EHV-1、好ましくはRacHである。
【0049】
本発明は、
a.UL43への、目的の第1のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列
を含む、ベクターまたはウマヘルペスウイルス(EHV)にさらに関し、
b.前記目的の第1のヌクレオチド配列は、制御核酸配列/プロモーター配列、好ましくは、p455、p430またはp422と作動可能に連結されていてもよく、
c.前記目的の第1のヌクレオチド配列は、(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)と作動可能に連結されていてもよい。
【0050】
特定の態様では、ベクターまたはEHVは、
a.第2の挿入部位、好ましくはUL56またはUS4への、目的の第2のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列
をさらに含み、
b.前記目的の第2のヌクレオチド配列は、制御核酸配列/プロモーター配列、好ましくは、p455、p430またはp422と作動可能に連結されていてもよく、
c.前記目的の第2のヌクレオチド配列は、(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)と作動可能に連結されていてもよい。
【0051】
特定の態様では、ベクターまたはEHVは、
a.第3の挿入部位、好ましくはUL56またはUS4への、目的の第3のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列
をさらに含み、
b.前記目的の第3のヌクレオチド配列は、制御核酸配列/プロモーター配列、好ましくは、p455、p430またはp422と作動可能に連結されていてもよく、
c.前記目的の第3のヌクレオチド配列は、制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは71pA、BGHpA、または18pAと作動可能に連結されていてもよい。
【0052】
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、orf70(US4)部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域を含むプラスミド、例えば、トランスファープラスミドpU-mC70-BGH(配列番号37)および/またはトランスファーベクターpU70-p455-71K71(配列番号28)、および/またはトランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71(配列番号29)および/またはトランスファープラスミドpU70-p455-H1pdm-71K71(配列番号32)にさらに関する。
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、UL43部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域を含むプラスミド、例えば、トランスファープラスミドpUUL43-422-18K18(配列番号34)またはpUUL43-422-H1pdm-18K18(配列番号36)にさらに関する。
【0053】
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、orf1/3(UL56)部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸、好ましくはプロモーター、好ましくはp430とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpU-1-3-p430-BGHKBGH(配列番号30)、および/またはトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1av-BGHKBGH(配列番号31)および/またはトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1hu-BGHKBGH(配列番号33)に、さらに関する。
【0054】
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、UL43部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸、好ましくはプロモーター、好ましくはp422とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpUUL43-422-18K18(配列番号34)またはトランスファープラスミドpUUL43-422-mC-18K18(配列番号35)もしくはpUUL43-422-H1pdm-18K18(配列番号36)にさらに関する。
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、orf70(US4)部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸、好ましくはプロモーター、好ましくはp455とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpU70-p455-71K71(配列番号28)、および/またはトランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71(配列番号29)および/またはトランスファープラスミドpU70-p455-H1pdm-71K71(配列番号32)にさらに関する。
【0055】
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、UL56(orf1/3)部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸配列、好ましくはプロモーター、好ましくはp430とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpU-1-3-p430-BGHKBGH(配列番号30)、および/またはトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1av-BGHKBGH(配列番号31)および/またはトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1hu-BGHKBGH(配列番号33)にさらに関する。
【0056】
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、UL56(orf1/3部位)への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸配列、好ましくはプロモーター、好ましくはp430と、第2の制御核酸、好ましくはポリアデニル化配列、好ましくはBGHポリアデニル化配列とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpU-1-3-p430-BGHKBGH(配列番号30)、および/またはトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1av-BGHKBGH(配列番号31)および/またはトランスファープラスミドpU1-3-p430-H1hu-BGHKBGH(配列番号33)にさらに関する。
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、Us4(orf70部位)への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸配列、好ましくはプロモーター、好ましくはp455と、第2の制御核酸、好ましくはポリアデニル化配列、好ましくは71pAポリアデニル化配列とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpU70-p455-71K71(配列番号28)、および/またはトランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71(配列番号29)および/またはトランスファープラスミドpU70-p455-H1pdm-71K71(配列番号32)にさらに関する。
【0057】
本発明は、ウイルスベクターゲノム内の特異的標的部位への、好ましくは、EHVベクター、具体的にはEHV-1、より具体的にはRacHベクターの、UL43部位への、相同組換えまたはRED媒介組換え(両方とも上記を参照されたい)のための隣接領域と、制御核酸配列、好ましくはプロモーター、好ましくはp422と、第2の制御核酸、好ましくはポリアデニル化配列、好ましくは18pAポリアデニル化配列(配列番号7)とを含むプラスミド、例えば、トランスファーベクターpUUL43-422-18K18(配列番号34)、および/またはトランスファープラスミドpUUL43-422-H1pdm-18K18(配列番号36)および/またはトランスファープラスミドpUUL43-422-mC-18K18(配列番号35)にさらに関する。
【0058】
本発明は、本発明に記載のベクターを産生する方法であって、
a.目的の第1のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列をUL43に挿入するステップを含み、
b.前記目的の第1のヌクレオチド配列を制御核酸配列/プロモーター配列、好ましくはp455、p430またはp422と作動可能に連結するステップ、
c.前記目的の第1のヌクレオチド配列を(さらなる)制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)と作動可能に連結するステップ
を含んでいてもよい方法にさらに関する。
【0059】
特定の態様では、方法は、
a.目的の第2のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列を第2の挿入部位、好ましくはUL56またはUS4に挿入するステップ
をさらに含み、
b.前記目的の第2のヌクレオチド配列を制御核酸配列/プロモーター配列、好ましくは、p455、p430またはp422と作動可能に連結するステップ、
c.前記目的の第2のヌクレオチド配列を制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)と作動可能に連結するステップ
をさらに含んでいてもよい。
【0060】
特定の態様では、方法は、
a.目的の第3のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列を第3の挿入部位、好ましくはUL56またはUS4に挿入するステップ
をさらに含み、
b.前記目的の第3のヌクレオチド配列を制御核酸配列/プロモーター配列、好ましくは、p455、p430またはp422と作動可能に連結するステップ、
c.前記目的の第3のヌクレオチド配列を制御核酸、例えばポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)と作動可能に連結させるステップ
をさらに含んでいてもよい。
本発明は、本発明に記載のベクターからなり、トランスフェクション試薬および指示リーフレットからなってもよいキットにさらに関する。
本発明は、本発明に記載のベクターを含むことを特徴とする哺乳動物宿主細胞にも関する。
【0061】
本発明は、宿主細胞を調製する方法であって、
a.本発明に記載の哺乳動物宿主細胞に本発明に記載のベクターを感染させるステップ、
b.感染細胞を好適な条件下で培養するステップ
によって特徴づけられ、
c.前記宿主細胞を回収するステップ
によって特徴づけられていてもよい方法にさらに関する。
本発明は、ウマヘルペスウイルス(EHV)ベクターにおける、具体的にはウマアルファヘルペスウイルス、例えばEHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9における、より具体的にはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)ベクターにおける、最も具体的にはRacHにおけるUL43の、前記ウマヘルペスウイルス(EHV)ベクターにおける挿入部位としての使用であって、前記挿入部位が、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列の発現を支持/助長し、前記UL43挿入部位が、UL43における部分欠損、トランケーション、置換、改変などを含み、UL44が、機能性を維持する、使用にさらに関する。
本発明は、免疫原性組成物またはワクチンを製造するための、本発明に記載のベクターまたは本発明に記載の哺乳動物宿主細胞の使用にさらに関する。
【0062】
本発明は、
a.本発明に記載のベクター、および/または
b.ウイルス、改変生ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)などのような、本発明に記載のベクターにより発現されるポリペプチド
を含み、
c.薬学的または獣医学に許容される担体または賦形剤
を含んでいてもよい、
免疫原性組成物にさらに関し、
好ましくは、前記担体は経口、皮内、筋肉内または鼻腔内適用に好適であり、
好ましくは、前記免疫原性組成物は、ウイルスを含む。特定の態様では、前記ウイルスは、感染性ウイルスである。
【0063】
本発明は、
a.本発明に記載のベクター、および/または
b.改変生ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)などのような、本発明に記載のベクターにより発現されるポリペプチド、および
c.薬学的または獣医学に許容される担体または賦形剤
を含む、ワクチンまたは医薬組成物にさらに関し、
好ましくは、前記担体は、経口、皮内、筋肉内または鼻腔内適用に好適であり、
d.前記ワクチンは、アジュバントをさらに含んでいてもよい。
好ましくは、ワクチンは、本明細書に記載のEHVベクターを含む。好ましくは、免疫原性組成物は、薬学的または獣医学的に許容される担体または賦形剤を含む。
本発明の一態様では、前記薬学的に許容される担体は、細胞培養培地または生理学的再懸濁緩衝剤である。
本発明の一態様では、前記再懸濁緩衝剤は、リン酸緩衝生理食塩水である。
【0064】
特定の態様では、前記免疫原性組成物またはワクチンまたは医薬組成物は、本発明のベクターまたは発現カセットを含み、前記抗原コード配列は、ブタに感染する病原体に関する。さらなる特定の態様では、前記病原体は、ブタA型インフルエンザウイルス(IAV)である。さらなる特定の態様では、前記抗原は、ヘマグルチニン(HA)抗原であり、特に前記ヘマグルチニン抗原はA型インフルエンザウイルスに由来する。例えば、A型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/116114/2010(H1N2))、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2))、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Gent/132/2005(H1N1))、および/またはA型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/4675/2003(H1N2))である。さらなる特定の態様では、前記抗原は、配列番号44、45、46、および47からなる群から選択される配列番号によりコードされる配列を含むか、またはそのような配列からなる。別の特定の態様では、前記抗原は、配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を含むか、またはそのような配列からなる。
本発明は、本明細書に記載の1つまたは複数のEHVベクターを含む、ワクチンまたはDIVAワクチンにさらに関する。
【0065】
本発明は、p422を含むプロモーター配列(配列番号5)またはその相補的ヌクレオチド配列またはその機能的断片またはその機能的断片の相補的ヌクレオチド配列にさらに関し、前記プロモーター配列は、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列の発現をもたらす。
【0066】
本発明は、プロモーター配列p422(配列番号5)またはその相補的ヌクレオチド配列またはその機能的断片およびその機能的断片の相補的ヌクレオチド配列を含む発現カセットであって、
プロモーター配列が、目的の配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列、より好ましくは目的の異種および/もしくは外来性配列、目的の遺伝子または目的の抗原コード配列に作動可能に連結されており、
前記プロモーター配列が、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列の発現をもたらし、
前記プロモーター配列が、好ましくは異種プロモーター配列、より好ましくは外来性プロモーター配列である、
発現カセットにも関する。
本発明は、本明細書に記載のプロモーター配列または発現カセットを含む、ベクターにも関する。
本発明のプロモーターまたは発現カセットまたはベクターのさらなる特定の態様では、プロモーター配列の機能的断片は、p422の配列(配列番号5)と70%、80%、85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の配列同一性および/または相同性を有する。
【0067】
本発明のプロモーターまたは発現カセットまたはベクターのさらなる特定の態様では、プロモーター配列の前記機能的断片は、100ヌクレオチド、好ましくは125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400ヌクレオチド、最も好ましくは410もしくは420ヌクレオチドの長さを有するか、またはプロモーター配列の機能的断片は、100~422ヌクレオチド、200~422ヌクレオチド、300~422ヌクレオチドもしくは350~422ヌクレオチドの間の長さを有する。
【0068】
本発明の発現カセットまたはベクターのさらなる特定の態様では、前記発現カセットまたはベクターは、終結シグナル、ポリアデニル化シグナル、またはIRESおよび/もしくは2aペプチドのような制御エレメントなどの、1つまたは複数のさらなる制御配列を含む。
本発明の発現カセットまたはベクターのさらなる特定の態様では、発現カセットまたはベクターは、ポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)をさらに含む。
本発明のベクターのさらなる特定の態様では、前記ベクターは、組換えおよび/または異種および/または外来性ベクターである。
本発明のベクターのさらなる特定の態様では、前記ベクターは、ウイルスベクター、好ましくは、ヘルペスウイルス科、例えば、ウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)、ウマアルファヘルペスウイルス4型(EHV-4)、ならびにPrV(仮性狂犬病ウイルス)およびBHV-1(ウシヘルペスウイルス1型)のような他のバリセロウイルス属、アデノウイルス科(AdV)、例えばCAdV(イヌアデノウイルス)、アデノ随伴ウイルス科、バキュロウイルス科、レンチウイルス科、例えばレトロウイルス属、ならびにポックスウイルス科からなる群から選択される、ウイルスのベクターである。
本発明のベクターのさらなる特定の態様では、前記ベクターは、ヘルペスウイルス科のメンバー、好ましくはアルファヘルペスウイルス属(genus Alphaherpesvirinae)のメンバー、より好ましくはバリセロウイルス亜属のメンバーであり、最も好ましくはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)である。
【0069】
DIVA
効果的なDIVAの大きな利点は、ワクチン接種を受けた動物集団において試料を採取する前に急性感染しているまたはある期間(少なくとも約3週間)感染している食物生産動物(好ましくはブタ)の検出を可能にすること、したがって、動物集団における病原体(好ましくはブタインフルエンザウイルス)の拡散または再導入をモニターする可能性をもたらすことである。したがって、それは、検査室試験の結果に基づいて、ワクチン接種を受けたブタ集団にはブタA型インフルエンザウイルスがないと、ある程度の信頼レベルで、推定することを可能にする。
マーカーワクチンは、迅速かつ有効な投与を容易にし、野外ウイルス(疾患関連)で感染した動物とワクチン接種を受けた動物との判別を可能にする。
本発明の免疫原性組成物またはDIVAワクチンは、N(ノイラミニダーゼ)インフルエンザ抗原コード配列および/またはNP(核タンパク質)インフルエンザ抗原コード配列をコードするいかなる抗原コード配列も含まない。
【0070】
対照的に、野生型ブタA型インフルエンザウイルスでの動物の感染後の、または改変生ワクチンでのワクチン接種を受けた、または不活性化全ウイルスでのワクチン接種を受けた、または母性由来の残留抗体を有する、感染した/ワクチン接種を受けた動物は、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)に対する特異的抗体を産生する/有する。しかし、本発明に記載の免疫原性組成物でのワクチン接種を受けた動物では、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)に対するそのような特異的抗体を検出することができない。
【0071】
本発明の免疫原性組成物でのワクチン接種のみを受けた動物は、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)に対するいかなる特異的抗体も、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)をそれぞれコードするいかなるブタA型インフルエンザウイルス特異的配列も有さないことから、例示的な免疫試験および/またはゲノム解析試験により、本発明の免疫原性組成物でのワクチン接種のみを受けた動物を、野生型ブタインフルエンザウイルスで感染した、または改変生ワクチンでのワクチン接種を受けた、または不活性化全ウイルスワクチンでのワクチン接種を受けた、または母性由来の残留抗体を有する動物と、区別することができる。
【0072】
本発明は、ブタA型インフルエンザウイルスで感染した食物生産動物を、本明細書に記載の免疫原性組成物またはDIVAワクチンでのワクチン接種を受けた食物生産動物と区別する方法であって、
a)食物生産動物から試料を採取するステップ、および
b)免疫試験および/またはゲノム解析試験で前記試料を分析するステップ
を含む方法を提供する。
本発明の一態様では、免疫試験は、試料が、ブタインフルエンザのN(ノイラミニダーゼ)タンパク質またはNP(核タンパク質)タンパク質を特異的に認識する抗体を含むかどうかを試験することを含む。
本発明の一態様では、食物生産動物は、ブタインフルエンザのN(ノイラミニダーゼ)タンパク質またはNP(核タンパク質)タンパク質を特異的に認識する抗体が検出された場合、ブタA型インフルエンザウイルスで感染している。
本発明の一態様では、ゲノム解析試験は、試料が、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)をコードするブタA型インフルエンザウイルス特異的配列を含むかどうかを試験することを含む。
本発明の一態様では、食物生産動物は、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)をコードするブタA型インフルエンザウイルス特異的配列が検出された場合、ブタA型インフルエンザウイルスで感染している。
【0073】
本発明の一態様では、免疫試験は、EIA(酵素免疫測定法)もしくはELISA(酵素結合免疫吸着検定法)であり、またはゲノム解析試験は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)もしくはリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)である。
本発明の一態様では、食物生産動物は、ブタである。
本発明の一態様では、試料は、血清試料である。
【0074】
好ましくは、野生型SIAVのN(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)に特異的な抗体は、SIAVで感染している疑いがあるブタまたは本発明に記載のワクチンでのワクチン接種を受けたブタからの気道の切片においてSIAV抗原を検出するために使用される。そのような場合、感染したブタの試料、または改変生ワクチンでのワクチン接種を受けた試料、または不活性化全ウイルスワクチンでのワクチン接種を受けた試料、または母性由来の残留抗体を有する試料のみが、前記N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)特異的抗体による陽性結果を示すことになる。対照的に、本発明のワクチンでのワクチン接種を受けたブタの試料は、本発明のワクチンにはそのような抗原が非存在(ヘマグルチニンのみ)であるのため、前述のN(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)特異的抗体による結果を示さないことになる。
しかし、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)のエピトープは、進化的に保存され、SIAVに特異的であり、中和抗体の標的である。
【0075】
したがって、試験は、例えば、マイクロウェルアッセイプレートと架橋した野生型SIAVのN(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)エピトープを有するウェルを含み得る。前記架橋は、好ましくは、例えばポリ-L-リシンなどのアンカータンパク質によって行われる。野生型N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)エピトープを得るための発現システムは、当業者に周知である。あるいは、前記N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)エピトープを化学的に合成することもできるだろう。
【0076】
本発明に記載のワクチンでのワクチン接種のみを受けた動物は、野生型N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)エピトープに対する抗体を産生しなかった。しかし、そのような動物は、本発明に記載のHA(ヘマグルチニン)エピトープに対する抗体を産生した。結果として、いずれの抗体も、野生型N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)エピトープで被覆されたウェルと結合しない。対照的に、ウェルが本発明に記載のHAエピトープで被覆されていた場合、抗体は、前記置換HAエピトープと結合する。
本発明の一態様では、ELISAは、間接的ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISAまたはブロッキングELISAである。
しかし、様々なELISA技術が当業者には周知である。ELISAは、例示的に、Wensvoort G. et al., 1988 (Vet.Microbiol. 17(2): 129-140)により、Robiolo B. et al., 2010 (J. Virol.Methods. 166(1 -2): 21-27)により、およびColijn, E.O. et al., 1997 (Vet. Microbiology 59: 15-25)により記載されている。
【0077】
好ましくは、呼吸器細胞および逆転写酵素のRNA単離、続いてのcDNAの増幅により、野外SIAVで感染しているまたは改変生ワクチンでのワクチン接種を受けたまたは不活性化全ウイルスワクチンでのワクチン接種を受けたまたは母性由来の残留抗体を有する動物と、本発明のワクチンでのワクチン接種のみを受けた動物とを区別する試験が、提供される。N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)に特異的なプライマーを使用して、PCRを行うことができる。そのような場合、ブタは、陽性PCRシグナルがあった場合、野生型SIAVで感染している。しかし、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)特異的配列を増幅できなかった場合、動物は、本発明のワクチンでのワクチン接種を受けていた。
【0078】
さらに、N(ノイラミニダーゼ)および/またはNP(核タンパク質)および/または特異的HA(ヘマグルチニン)のいずれかを認識する、リアルタイムベース技術のプライマーおよび/またはプローブを使用してもよい。しかし、そのような方法は、当技術分野において周知である。
本発明の別の態様では、ゲノム解析試験は、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)、RT-PCR(逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応)またはリアルタイムPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)である。
【0079】
本発明は、感染と関連するまたは感染によって引き起こされる1つまたは複数の臨床徴候の発生率または重症度を低減するための免疫原性組成物またはワクチンを調製する方法であって、
a.本発明に記載の哺乳動物宿主細胞に本発明に記載のベクターを感染させるステップ、
b.感染細胞を好適な条件下で培養するステップ
c.感染細胞培養物を回収するステップ
を含み、
d.ステップc)の回収した感染細胞培養物を精製するステップ、
e.前記回収した感染細胞培養物を薬学的に許容される担体と混合するステップ
を含んでいてもよい方法にさらに関する。
医学的使用:
本発明は、動物を免役する方法であって、そのような動物に本明細書に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを投与するステップを含む方法にさらに関する。
本発明は、必要とする動物において病原体によって引き起こされる臨床徴候を軽減または予防する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを動物に投与するステップを含む方法にさらに関する。
【0080】
本発明は、必要とする動物においてブタインフルエンザウイルスによって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する方法であって、治療有効量の本明細書に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを動物に投与するステップを含む方法にさらに関する。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、前記動物は、ブタ、子ブタもしくは雌ブタ、家禽、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンは、1回投与される。
単回用量が1回だけ投与されることは理解される。好ましくは、単回用量は、約0.2ml~2.5mlの間、より好ましくは約0.2ml~2.0mlの間、よりいっそう好ましくは約0.2ml~1.75mlの間、さらにより好ましくは約0.2ml~1.5mlの間、よりいっそう好ましくは約0.4ml~1.25mlの間、よりいっそう好ましくは約0.4ml~1.0mlの間の総体積を有し、単回0.5ml用量または1.0ml用量が最も好ましい。単回用量は0.5ml、1ml、1.5mlまたは2mlの総体積を有することが、最も好ましい。
【0081】
好ましくは、免疫原性組成物またはDIVAワクチンは、子ブタに、それらが3週齢に達する前に投与される。好ましくは、免疫原性組成物またはDIVAワクチンは、1日齢~21日齢、より好ましくは1日齢~10日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~9日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~8日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~7日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~6日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~5日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~4日齢の間、よりいっそう好ましくは1日齢~3日齢の間、よりいっそう好ましくは1または2日齢、および最も好ましくは1日齢の子ブタの各々に投与される。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンは、動物に生後最初の3週間以内、生後最初の2週間以内、生後第1週以内または生後第1日以内に投与される。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンは、2回の投与で投与される。
【0082】
しかし、初回投与が2回目(追加免疫)投与の投与前に投与される、2回またはそれ以上の投与で、免疫原性組成物を動物に投与することができる。好ましくは、初回投与は、生後最初の2週間以内、より好ましくは生後第1週以内、よりいっそう好ましくは生後第1日以内に投与される。好ましくは、2回目の投与は、初回投与の少なくとも15日後に投与される。より好ましくは、2回目の投与は、初回投与後15~40日の間に投与される。よりいっそう好ましくは、2回目の投与は、初回投与の少なくとも17日後に投与される。さらにより好ましくは、2回目の投与は、初回投与後17~30日の間に投与される。よりいっそう好ましくは、2回目の投与は、初回投与の少なくとも19日後に投与される。さらにより好ましくは、2回目の投与は、初回投与後19~25日の間に投与される。最も好ましくは、2回目の投与は、初回投与の少なくとも21日後に投与される。2回投与レジメンの好ましい態様では、免疫原性組成物の初回投与と2回目の投与の両方が、同量で投与される。好ましくは、各投与は、上で指定した好ましい量での投与であり、初回および2回目の投与が1mlの用量であるのが最も好ましい。初回および2回目の投与レジメンに加えて、代わりの実施形態は、後続の投与をさらに含む。例えば、3回目、4回目または5回目の投与をこれらの態様で投与することができるだろう。好ましくは、後続の3回目、4回目および5回目の投与レジメンは、初回投与と同量で投与され、これらの投与間の時間枠は、上述の初回投与と2回目の投与の間のタイミングと一致する。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンは、動物に生後第1週以内に投与され、2回目が生後第2、第3または第4週以内に投与される。
【0083】
免疫原性組成物またはDIVAワクチンは、好ましくは、局所または全身投与される。従来使用されている好適な投与経路は、経口投与、または非経口投与、例えば、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、皮下投与、および吸入である。しかし、化合物の性質および作用様式に依存して、免疫原性組成物またはDIVAワクチンを他の経路で投与することもできる。しかし、免疫原性組成物またはDIVAワクチンは筋肉内または鼻腔内投与されるのが最も好ましい。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、前記免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンは、筋肉内または鼻腔内投与される。
【0084】
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、前記免疫原性組成物またはDIVAワクチンは、1×104~1×109の組織培養感染量50(TCID50)、好ましくは1×104~1×108の間のTCID50、よりいっそう好ましくは1×104~1×107 TCID50のEHVベクターを含む。
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンは、1×104~1×107 TCID50のEHVベクターを含む。
【0085】
本発明の医学的使用または方法のさらなる特定の態様では、前記方法は、同じ種の免疫されていない対照群の動物と比較して、体重減少の軽減、直腸温度低下、臨床症状軽減、(中和)抗体の誘導増加、またはこれらの組合せからなる群から選択される有効性パラメーターの向上をもたらす。
【0086】
上記の本発明の医学的使用の特定の態様または上記の動物を免疫する方法では、前記抗原コード配列は、ブタに感染する病原体に関する。さらなる特定の態様では、前記病原体は、ブタA型インフルエンザウイルス(IAV)である。さらなる特定の態様では、前記抗原は、ヘマグルチニン(HA)抗原であり、特に、前記ヘマグルチニン抗原は、A型インフルエンザウイルスに由来する。例えば、A型インフルエンザウイルスは、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/116114/2010(H1N2))、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2))、A型インフルエンザウイルス(A/swine/Gent/132/2005(H1N1))、および/またはA型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/4675/2003(H1N2))である。さらなる特定の態様では、前記抗原は、配列番号44、45、46、および47からなる群から選択される配列番号によりコードされる配列を含むか、またはそのような配列からなる。別の特定の態様では、前記抗原は、配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする配列を含むか、またはそのような配列からなる。
【0087】
本発明は、動物における病原体と関連する疾患に対するワクチンを、動物、好ましくはブタ、家禽もしくはウシなどの食物生産動物またはネコ、イヌもしくはウマなどの伴侶動物に接種するための、および/または動物において病原体と関連するもしくは病原体によって引き起こされる1つもしくは複数の臨床徴候の発生率もしくは重症度を低減するための、キットであって、
a)前記動物にワクチンを投与することができるディスペンサー、および
b)本発明に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチン
を含み、
c)指示リーフレット
を含んでもよいキットにも関する。
【0088】
定義
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、出願時に本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。用語の意味および範囲は、明らかであるはずであるが、あらゆる潜在的な多義性がある場合には、本明細書で提供した定義は、任意の辞書の定義または外部の定義よりも優先される。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数を含み、複数形の用語は単数を含む。本明細書では、特に言及しない限り、「または(or)」の使用は「および/または(and/or)」を意味する。さらに、用語「含む(including)」ならびに「含む(includes)」および「含まれる(included)」など他の形態の使用は限定されない。本明細書で参照した全ての特許および刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0089】
本発明の実施は、他に示さない限り、当技術分野の範囲内である、ウイルス学、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、タンパク質化学、および免疫学の従来の技術を用いる。そのような技術は文献で完全に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. I, II and III, Second Edition (1989);DNA Cloning, Vols. I and II (D. N. Glover ed. 1985);Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait ed. 1984);Nucleic Acid Hybridization (B. D. Hames & S. J. Higgins eds. 1984);Animal Cell Culture (R. K. Freshney ed. 1986);Immobilized Cells and Enzymes (IRL press, 1986);Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);the series, Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan eds., Academic Press, Inc.);Protein purification methods - a practical approach (E.L.V. Harris and S. Angal, eds., IRL Press at Oxford University Press);およびHandbook of Experimental Immunology, Vols. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell eds., 1986, Blackwell Scientific Publications)を参照。
【0090】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は特定のDNA、ポリペプチド配列またはプロセスのパラメーターに限定されず、当然変化し得るものと理解される。本明細書で使用する用語は、単に本発明の特定の実施形態を記載する目的のためであり、限定することを意図しないことも理解される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が特に明確に規定しない限り、複数の参照を含むことに注意しなければならない。したがって、例えば、「抗原(an antigen)」という言及は2つまたはそれ以上の抗原の混合物を含み、「賦形剤(an excipient)」という言及は2つまたはそれ以上の賦形剤の混合物を含むなどである。
【0091】
分子生物学定義
用語「ベクター」は、当技術分野で公知のように、遺伝材料を宿主細胞に伝達するために使用されるポリヌクレオチド構築物、典型的にはプラスミドまたは細菌人工染色体を指す。ベクターは、例えば、細菌、ウイルス、ファージ、細菌人工染色体、コスミド、またはプラスミドであってよい。本明細書で使用する場合、ベクターは、DNAまたはRNAのいずれかから構成されるまたはDNAまたはRNAのいずれかを含有することができる。いくつかの実施形態では、ベクターはDNAから構成される。いくつかの実施形態では、ベクターは感染性ウイルスである。そのようなウイルスベクターは、細胞培養でも宿主動物でもウイルスベクターの複製に機能を持たない外来遺伝子を有するように操作されたウイルスゲノムを含有する。本開示の特定の態様に従って、ベクターは、遺伝材料の単なる伝達、宿主細胞または生物のトランスフェクションのため、ワクチン、例えばDNAワクチンとしての使用のため、または遺伝子発現目的のためなど、様々な態様のために使用され得る。遺伝子発現は、遺伝子と呼ばれる特定のポリヌクレオチド配列によって導かれるように細胞におけるタンパク質の生合成を記載する用語である。特定の態様では、ベクターは、適切な環境に存在する場合に、ベクターが有する1つまたは複数の遺伝子によってコードされるタンパク質の発現を導くことができるベクターである「発現ベクター」であってよい。
【0092】
ベクターおよび発現のためにベクター(または組換え体)を作製および/または使用する方法は、特に、米国特許第4,603,112号、第4,769,330号、第5,174,993号、第5,505,941号、第5,338,683号、第5,494,807号、第4,722,848号、第5,942,235号、第5,364,773号、第5,762,938号、第5,770,212号、第5,942,235号、第382,425号、PCT国際公開第94/16716号、国際公開第96/39491号、国際公開第95/30018号、Paoletti, "Applications of pox virus vectors to vaccination: An update, "PNAS USA 93: 11349-11353, October 1996;Moss, "Genetically engineered poxviruses for recombinant gene expression, vaccination, and safety," PNAS USA 93: 11341-11348, October 1996;Smith et al., U.S. Pat. No. 4,745,051(recombinant baculovirus);Richardson, C. D. (Editor), Methods in Molecular Biology 39, "Baculovirus Expression Protocols" (1995 Humana Press Inc.);Smith et al., "Production of Human Beta Interferon in Insect Cells Infected with a Baculovirus Expression Vector", Molecular and Cellular Biology, December, 1983, Vol. 3, No. 12, p. 2156-2165;Pennock et al., "Strong and Regulated Expression of Escherichia coli B-Galactosidase in Infect Cells with a Baculovirus vector, "Molecular and Cellular Biology March 1984, Vol. 4, No. 3, p. 406;EPA0370573;米国特許出願第920,197号、1986年10月16日出願;欧州特許出願公開第265785号;米国特許第4,769,331号
【0093】
(組換えヘルペスウイルス);Roizman, "The function of herpes simplex virus genes: A primer for genetic engineering of novel vectors," PNAS USA 93:11307-11312, October 1996;Andreansky et al., "The application of genetically engineered herpes simplex viruses to the treatment of experimental brain tumors," PNAS USA 93: 11313-11318, October 1996;Robertson et al., "Epstein-Barr virus vectors for gene delivery to B lymphocytes", PNAS USA 93: 11334-11340, October 1996;Frolov et al., "Alphavirus-based expression vectors: Strategies and applications," PNAS USA 93: 11371-11377, October 1996;Kitson et al., J. Virol. 65, 3068-3075, 1991;米国特許第5,591,439号、第5,552,143号;国際公開第98/00166号;両方とも1996年7月3日に出願された、許可された米国特許出願第08/675,556号、および第08/675,566号(組換えアデノウイルス);Grunhaus et al., 1992, "Adenovirus as cloning vectors," Seminars in Virology (Vol. 3) p. 237-52, 1993;Ballay et al. EMBO Journal, vol. 4, p. 3861-65, Graham, Tibtech 8, 85-87, April, 1990;Prevec et al., J. Gen Virol. 70, 42434;PCT WO91/11525;Felgner et al. (1994), J. Biol. Chem. 269, 2550-2561, Science, 259: 1745-49, 1993;およびMcClements et al., "Immunization with DNA vaccines encoding glycoprotein D or glycoprotein B, alone or in combination, induces protective immunity in animal models of herpes simplex virus-2 disease", PNAS USA 93: 11414-11420, October 1996;および米国特許第5,591,639号、第5,589,466号、および第5,580,859号、ならびに国際公開第90/11092号、国際公開第93/19183号、国際公開第94/21797号、国際公開第95/11307号、国際公開第95/20660号;Tang et al., Nature, and Furth et al., Analytical Biochemistry, relating to DNA expression vectorsに開示の方法によるまたは類似してよい。また、国際公開第98/33510号;Ju et al., Diabetologia, 41: 736-739, 1998 (lentiviral expression system);Sanford et al.,米国特許第4,945,050号;Fischbachet al. (Intracel);国際公開第90/01543号;Robinson et al., Seminars in Immunology vol. 9, pp. 271-283 (1997), (DNA vector systems);Szoka et al.,米国特許第4,394,448号(生細胞にDNAを挿入する方法);McCormick et al.,米国特許第5,677,178号(細胞変性ウイルスの使用);および米国特許第5,928,913号(遺伝子送達のためのベクター);ならびに本明細書で引用した他の文献も参照。
用語「ウイルスベクター」は宿主細胞にそれが入り込むと特定の生物活性、例えばベクターによって運ばれた導入遺伝子の発現をもたらすように、組換えDNA技術によって操作された遺伝子改変ウイルスを記載する。特定の態様では、導入遺伝子は抗原である。ウイルスベクターは標的細胞、組織、または生物において複製可能であってもなくてもよい。
【0094】
ウイルスベクターの生成は、例えば、Sambrook et al. (Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, N.Y. (1989)) or K. Maramorosch and H. Koprowski (Methods in Virology Volume VIII, Academic Press Inc. London, UK (2014))に記載されるように、限定はされないが、制限エンドヌクレアーゼによる消化、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、DNAシーケンシング、細胞培養へのトランスフェクションの標準的な技術を含む、当技術分野で周知の好適な遺伝子工学技術を使用して達成され得る。
ウイルスベクターは、任意の公知の生物のゲノムからの配列を組み込むことができる。配列は、それらの自然な形態に組み込まれることができ、または任意の方法で改変され、所望の活性を得ることができる。例えば、配列は、挿入、欠損または置換を含むことができる。
【0095】
ウイルスベクターは2つまたはそれ以上の目的のタンパク質のコード領域を含むことができる。例えば、ウイルスベクターは、目的の第1のタンパク質のコード領域および目的の第2のタンパク質のコード領域を含むことができる。目的の第1のタンパク質および目的の第2のタンパク質は同じまたは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、目的の第3または第4のタンパク質のコード領域を含むことができる。目的の第3および第4のタンパク質は同じまたは異なっていてもよい。1つのウイルスベクターによってコードされる目的の2つまたはそれ以上のタンパク質の全長は異なり得る。例えば、2つまたはそれ以上のタンパク質の全長は、少なくとも約200アミノ酸であってよい。少なくとも約250アミノ酸、少なくとも約300アミノ酸、少なくとも約350アミノ酸、少なくとも約400アミノ酸、少なくとも約450アミノ酸、少なくとも約500アミノ酸、少なくとも約550アミノ酸、少なくとも約600アミノ酸、少なくとも約650アミノ酸、少なくとも約700アミノ酸、少なくとも約750アミノ酸、少なくとも約800アミノ酸、またはそれ以上。
好ましいウイルスベクターは、EHV-1またはEHV-4またはPrV(仮性狂犬病ウイルス)またはBHV-1(ウシヘルペスウイルス1)のような他のバリセロウイルス由来などのヘルペスウイルスベクターを含む。
【0096】
本開示の特定の態様に従って、用語「ウイルスベクター」または代わりに「ウイルス構築物」は、EHV-1、EHV-4などのヘルペスウイルス科から選択されるウイルス由来の組換えウイルス構築物を指す。好ましいウイルスベクターは、EHV-1またはEHV-4に由来するなどのヘルペスウイルスベクターを含む。
用語「ウイルスベクター」および「ウイルス構築物」は交換可能に使用することができる。
用語「構築物」は、本明細書で使用する場合、人工的に生成されたプラスミド、BAC、または組換えウイルスなどの組換え核酸を指す。
【0097】
用語「プラスミド」は、細菌宿主細胞内の細菌染色体とは独立して複製する細胞質のDNAを指す。本発明の特定の態様では、用語「プラスミド」および/または「トランスファープラスミド」は、例えばウイルスベクターへの挿入のための発現カセットの構築に有用な組換えDNA技術のエレメントを指す。別の特定の態様では、用語「プラスミド」は、DNAワクチン接種目的のために有用なプラスミドを特定するために使用され得る。
本明細書で使用される場合、用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、交換可能であり任意の核酸を指す。
【0098】
用語「核酸」、「核酸配列」、「ヌクレオチド配列」、「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「RNA配列」または「DNA配列」は、本明細書で使用される場合、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドおよびその断片および部分、ならびにゲノムまたは合成起源のDNAまたはRNAを指し、それらは一本鎖または二本鎖であってよく、センスまたはアンチセンス鎖を表してよい。配列は、非コード配列、コード配列、または両方の混合であってよい。本発明の核酸配列は、当業者に周知の標準的な技術を使用して調製され得る。
用語「核酸」および「ポリヌクレオチド」は、5つの生物学的に生じる塩基(アデニン、グアニン、チミン、シトシンおよびウラシル)以外の塩基から構成される核酸も特別に含む。
【0099】
用語「制御核酸」、「制御エレメント」および「発現調節エレメント」は交換可能に使用され、特定の宿主生物において作動可能に連結されたコード配列の発現に影響し得る核酸分子を指す。これらの用語は、プロモーター、プロモーター配列、RNAポリメラーゼと転写因子の基本的な相互作用に必要なコアエレメント、上流エレメント、エンハンサーおよび応答エレメントを含む、転写を促進または制御する全てのエレメントに広く使用され、全てのエレメントをカバーする。原核生物における例示的な制御エレメントは、プロモーター、オペレーターシーケンスおよびリボソーム結合部位を含む。真核細胞において使用される制御エレメントは、限定はされないが、転写および翻訳調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター、タンパク質分解シグナル、配列内リボソーム進入部位(IRES)、ピコルナウイルス2A配列等を含むことができ、コード配列の発現および/または宿主細胞におけるコードポリペプチドの産生を提供および/または制御する。
【0100】
「配列内リボソーム進入部位」または「IRES」は、IRESの5’の遺伝子に非依存的に翻訳開始を機能的に促進し、動物細胞において2つのシストロン(オープンリーディングフレーム)が単一の転写物から翻訳されるようにする配列を記載する。IRESは、そのすぐ下流のオープンリーディングフレームの翻訳のための非依存的なリボソーム進入部位を提供する。ポリシストロニックであり得る、すなわちmRNAから順に翻訳されるいくつかの異なるポリペプチドをコードする細菌mRNAとは異なり、動物細胞のほとんどのmRNAは、モノシストロニックであり1つのポリペプチドのみの合成のためにコードする。真核細胞におけるポリシストロニック転写により、翻訳は翻訳開始部位の最も5’側から開始され、最初の終止コドンで終結され、転写物はリボソームから放出され、mRNAにおいて最初にコードされたポリペプチドのみの翻訳をもたらす。真核細胞では、転写物の第2のまたは続くオープンリーディングフレームに作動可能に連結されたIRESを有するポリシストロニック転写は、その下流のオープンリーディングフレームの連続的な翻訳を可能にし、同じ転写物によってコードされた2つまたはそれ以上のポリペプチドを産生する。IRESは様々な長さであってよく、例えば、脳心筋炎ウイルス(EMCV)、ピコルナウイルス(例えば、口蹄疫ウイルス、FMDVまたはポリオウイルス(PV)、またはC型肝炎ウイルス(HCV)など、様々な起源由来であってよい。ベクター構築物における様々なIRES配列およびそれらの使用が記載され、当技術分野で周知されている。下流のコード配列は、下流の遺伝子の発現にネガティブに影響しないであろう任意の距離でIRESの3’端に作動可能に連結されている。IRESと下流の遺伝子の始まりの間の最適なまたは許容的な距離は、距離を変化させ、距離の関数として発現を測定することによって容易に決定することができる。
用語「2a」または「2aペプチド」は、リボソームスキッピングとして定義されたプロセスによって、翻訳の際にタンパク質間の切断を媒介することができるリンカーとして機能する短いオリゴペプチド配列を意味し、2aおよび「2a様」と記載される。そのような2aおよび「2a様」配列(ピコナウイルス科および他のウイルスまたは細胞配列に由来する)は、複数の遺伝子配列を単一の遺伝子に鎖状につなぐために使用され、同じ細胞内でのそれらの共発現を確実にすることができる(Luke and Ryan, 2013参照)。
【0101】
本明細書で使用する場合、用語「プロモーター」または「プロモーター配列」は、RNAポリメラーゼの結合を許容し、遺伝子の転写を導くヌクレオチド配列を意味する。典型的には、プロモーターは、遺伝子の5’非コード領域、遺伝子の転写開始部位の近位に位置する。転写の開始に機能するプロモーター内の配列エレメントは、コンセンサスヌクレオチド配列によって特徴づけられることが多い。プロモーターの例としては、限定はされないが、細菌、酵母、植物、ウイルス、および哺乳動物(ウマ、ブタ、ウシ、家禽、イヌ、ネコおよびヒトを含む)などの動物、トリまたは昆虫由来のプロモーターが挙げられる。プロモーターは、誘導性、抑圧可能、および/または構成的であり得る。誘導性プロモーターは、温度の変化など、培養条件のいくつかの変化に応じてそれらの調節下でDNAからの転写のレベルの増加を開始する(Ptashne, 2014)。当業者に周知のプロモーターの例は、例えば、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイルスポリヘドリンプロモーターである。
【0102】
本発明に関して本明細書で使用される場合、用語プロモーターは、特に、機能的断片、例えば、4pgG600(配列番号1)またはその相補的ヌクレオチド配列のトランケーションを指し、好ましくは、配列同一性は、長さ全体にわたって(少なくとも)72%である(またはそれより高い)。さらに、本発明に関して本明細書で使用される場合、用語プロモーターは、特に、機能的断片、例えば、4pMCP600(配列番号2)またはその相補的ヌクレオチド配列のトランケーションを指し、好ましくは、配列同一性は、長さ全体にわたって(少なくとも)78%である(またはそれより高い)。さらに、本発明に関して本明細書で使用される場合、用語プロモーターは、特に、p422(配列番号5)またはその機能的断片またはそれらの相補的ヌクレオチド配列を指す。最も好ましくは、「プロモーター」は、p430(配列番号3)、p455(配列番号4)、またはp422(配列番号5)を指す。本発明に関して本明細書でさらに使用される場合、用語プロモーターは、例えば、配列同一性が70%、80%、85%、90%、95%、99%同一または相同であるような小さい置換、変異または逆位を有する、p430(配列番号3)またはp455(配列番号4)または4pgG600(配列番号1)または4pMCP600(配列番号2)の機能的誘導体を特に指す。
【0103】
用語「4pgG430」、「p430」、「gG 430」および「430」は、本明細書、図、配列表などを通して同義語として、交換可能に使用される。用語「4pMCP455」、「p455」、「MCP 455」および「455」は、本明細書、図、配列表などを通して同義語として、交換可能に使用される。用語p422および422は、本明細書、図、配列表などを通して同義語として、交換可能に使用される。
【0104】
用語「エンハンサー」は、cis位置にあるポリヌクレオチド配列を意味し、プロモーターの活性に作用し、したがって、このプロモーターに機能的に結合した遺伝子またはコード配列の転写を刺激する。プロモーターとは異なり、エンハンサーの効果は位置および方向に非依存的であり、したがってそれらは、イントロン内またはコード領域内でさえも転写ユニットの前または後に位置することができる。エンハンサーは、転写ユニットのすぐ近くとプロモーターからかなり距離のある位置の両方に位置し得る。プロモーターと物理的および機能的なオーバーラップを有することもできる。当業者は、様々な起源由来の(およびGenBankなどのデータバンクに寄託された、例えばSV40エンハンサー、CMVエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウイルスエンハンサー)多くのエンハンサーを把握しており、それらは非依存的なエレメントまたはポリヌクレオチド配列内にクローニングされたエレメントとして利用可能である(例えば、ATCCに寄託され、または市販され、および個々の起源)。多くのプロモーター配列はまた、頻繁に使用されるCMVプロモーターなどのエンハンサー配列も含有する。ヒトCMVエンハンサーは、これまでに同定された最も強いエンハンサーの1つである。誘導性エンハンサーの1つの例は、メタロチオネインエンハンサーであり、グルココルチコイドまたは重金属によって刺激され得る。
【0105】
用語「相補的ヌクレオチド配列」は、DNAまたはRNAなどのポリヌクレオチドの2対の鎖の1つの鎖を記載する。相補的な鎖のヌクレオチド配列は、各アデノシンはチミン(またはRNAの場合はウラシル)、各グアニンはシトシン、逆もまた同様になるように、その対の鎖のヌクレオチド配列を写す。例えば、5’-GCATAC-3’の相補的ヌクレオチド配列は3’-CGTATG-5’、またはRNAの場合は3’-CGUAUG-5’である。
【0106】
用語「遺伝子」、「目的の遺伝子」は、本明細書で使用する場合、同じ意味を有し、目的の産物をコードする任意の長さのポリヌクレオチド配列を指す。遺伝子は、コード配列の前(5’非コードまたは非翻訳配列)および後(3’非コードまたは非翻訳配列)に制御配列をさらに含んでよい。選択された配列は全長またはトランケート、融合、またはタグ化遺伝子であってよく、cDNA、ゲノムDNA、またはDNA断片であってよい。ポリペプチドまたはRNAをコードするゲノムDNAは、成熟メッセンジャーRNA(mRNA)からスプライシングされ、したがって、同じポリペプチドまたはRNAをコードするcDNAには存在しない、非コード領域(すなわち、イントロン)を含み得ることが通常理解される。それは、天然配列、すなわち自然発生的な形態であってよく、または変異され、または異なる起源由来の配列を含んでもよく、そうでなければ所望のように改変されてもよい。これらの改変は、選択された宿主細胞またはタグ付けにおけるコドン利用を最適化するコドン最適化を含む。さらに、それらは、例えば(潜在性の)スプライスドナー、アクセプター部位および枝分かれ点、ポリアデニル化シグナル、TATAボックス、chi部位、リボソーム進入部位、繰り返し配列、二次構造(例えば、ステムループ)、転写因子または他の制御因子の結合部位、制限酵素部位等のcis作用性部位の除去または付加を含み、限定はされないが、わずかな例を挙げることができる。選択された配列は、分泌、細胞質、核、膜結合または細胞表面ポリペプチドをコードすることができる。
【0107】
本明細書で使用する場合、用語「目的のヌクレオチド配列」は、それが必ずしも遺伝子を含まないが、遺伝子または他の遺伝情報のエレメントまたは部分、例えばori(複製オリジン)を含み得るため、目的の遺伝子よりも、より一般的な用語である。目的のヌクレオチド配列は、それがコード配列を含むかどうかに非依存的な任意のDNAまたはRNA配列であり得る。
「オープンリーディングフレーム」または「ORF」は、翻訳開始シグナルまたはATGもしくはAUGなどの開始コドン、および終止コドンを含み、ポリペプチド配列に潜在的に翻訳され得る、DNAまたはRNAのいずれかの核酸配列の長さを指す。
用語「UL(長いユニーク)」は、EHV、好ましくはEHV-1ゲノムの長いユニーク断片を記載する略語である。
用語「US(短いユニーク)」は、EHV、好ましくはEHV-1ゲノムの短いユニーク断片を記載する略語である。
用語「転写」は、細胞でのmRNAの生合成を記載する。
【0108】
用語「発現」は、本明細書で使用する場合、宿主細胞内での核酸配列の転写および/または翻訳を指す。本発明の特定の態様に従って、用語「発現」は、宿主細胞内での異種および/または外来性核酸配列の転写および/または翻訳を指す。宿主細胞における所望の産物の発現レベルは、細胞に存在する相当するRNAまたはmRNAの量、または選択された配列によってコードされる所望のポリペプチドの量のいずれかに基づいて決定され得る。例えば、選択された配列から転写されたmRNAは、ノーザンブロットハイブリダイゼーション、リボヌクレアーゼRNAプロテクション、細胞内RNAのin situハイブリダイゼーションによって、またはRTqPCR(逆転写後の定量的PCR)によって定量され得る。選択された配列から発現されたタンパク質は、様々な方法、例えばELISAによって、ウェスタンブロットによって、ラジオイムノアッセイによって、免疫沈降によって、タンパク質の生物活性のアッセイによって、またはタンパク質の免疫染色後のFACS解析によって定量され得る。
【0109】
用語「発現カセット」または「転写ユニット」または「発現ユニット」は、転写される1つまたは複数の遺伝子を含有するベクター、構築物またはポリヌクレオチド配列内の領域を定義し、転写される遺伝子をコードするヌクレオチド配列ならびに発現カセット内に含有される制御エレメントを含有するポリヌクレオチド配列が、互いに作動可能に連結されている。それらは、プロモーターから転写され、転写は、少なくとも1つのポリアデニル化シグナルによって終結される。1つの特定の態様では、それらは1つの単一のプロモーターから転写される。結果として、異なる遺伝子は少なくとも転写的に連結されている。1つより多くのタンパク質または産物は転写され、各転写ユニット(マルチシストロン転写ユニット)から発現される。各転写ユニットは、ユニット内に含有される任意の選択された配列の転写および翻訳に必要な制御エレメントを含むであろう。各転写ユニットは、同じまたは異なる制御エレメントを含有し得る。例えば、各転写ユニットは、同じターミネーターを含有してもよく、IRESエレメントまたはイントロンは、転写ユニット内での遺伝子の機能的な連結に使用され得る。ベクターまたはポリヌクレオチド配列は1つより多くの転写ユニットを含有し得る。
【0110】
用語「発現増加」、「力価または生産性増加」または「発現または生産性改善」により、好適な対照との比較、例えば、cDNAによってコードされるタンパク質対イントロン含有遺伝子によってコードされるタンパク質による、宿主細胞に導入された異種および/または外来性配列、例えば治療タンパク質をコードする遺伝子の発現、合成または分泌の増加を意味する。本発明に記載の細胞が、本明細書に記載の本発明による方法に従って培養される場合、およびこの細胞が、特定の生産性または力価において少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍または5倍増加した場合、力価または生産性増加がある。本発明に記載の細胞が、本明細書に記載の本発明による方法に従って培養される場合、およびこの細胞が、特定の生産性または力価において少なくとも1.2倍または少なくとも1.5倍または少なくとも2倍または少なくとも3倍増加した場合も、力価または生産性増加がある。本発明に記載の細胞が、本明細書に記載の本発明による方法に従って培養される場合、およびこの細胞が、特定の生産性または力価において少なくとも1.2倍~5倍、好ましくは1.5倍~5倍、より好ましくは2倍~5倍、特に好ましくは3倍~5倍増加した場合も、特別な力価または生産性増加がある。「発現増加」は、そのうえ、より多くの細胞が目的の遺伝子/配列を実際に発現することを意味し得る。例えば、発現増加は、本発明の新しいプロモーターが、他のプロモーターと比較して、ウイルス複製サイクル中により長い期間活性であることを意味し得る。
【0111】
発現、力価または生産性増加は、本発明に記載の異種ベクターを使用することによって得ることができる。これは、追加の選択可能マーカーとして、1つまたは複数の蛍光タンパク質(例えばGFP)または細胞表面マーカーを含有する組換え宿主細胞のFACSアシスト選択などの他の手法と組み合わせることができる。発現増加を得る他の方法、および使用することができる異なる方法の組合せも、例えばクロマチン構造(例えば、LCR、UCOE、EASE、アイソレーター、S/MARs、STARエレメント)の操作のためのcis活性エレメントの使用、(人工)転写因子の使用、内在性または異種および/または外来性遺伝子発現を上方制御するための天然または合成剤による細胞の処置、mRNAまたはタンパク質の安定性(半減期)の改善、mRNA翻訳の開始の改善、エピソーム性プラスミドの使用による遺伝子用量の増加(複製オリジンとしてウイルス配列の使用に基づく、例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、EBV、またはBPV)、DNAコンカテマーに基づく増幅促進配列またはin vitro増幅システムの使用に基づく。
【0112】
「発現増加」を測定するためのアッセイは、LC-MS/MSベースのタンパク質測定、例えば、多重反応モニタリング(MRM);抗体ベースの検出方法、例えば、ウェスタンブロット、ドットブロット、または免疫拡散法、およびフローサイトメトリー;ならびに赤血球凝集反応アッセイによる生物活性の測定である。
「プロモーター活性」は、それぞれのプロモーターの調節下で転写されるmRNAの定量によって間接的に測定される。mRNAは、内因性の標準と比較して、RTqPCRによって定量される。
用語「ウイルス力価」は、ウイルス調製物の容積当たりの感染ユニットの測定である。ウイルス力価は、生物学的手順のエンドポイントであり、並行して行った試験の特定の割合で効果を示す希釈率として定義される(Reed and Muench, 1938)。特に、1ミリリットル当たりの組織培養感染量50(TCID50/ml)は、その希釈率で並行して接種された細胞培養の数の50%が感染する、ウイルス調製物の希釈率を与える。
「転写制御エレメント」は、通常、発現される遺伝子配列の上流のプロモーター、転写開始および終結部位、およびポリアデニル化シグナルを含む。
用語「転写開始部位」は、転写一次産物、すなわちmRNA前駆体に組み込まれる最初の核酸に相当する構築物の核酸を指す。転写開始部位は、プロモーター配列とオーバーラップしてよい。
【0113】
「終結シグナル」または「ターミネーター」または「ポリアデニル化シグナル」または「ポリA」または転写終結部位」または「転写終結エレメント」は、真核生物のmRNAの3’端の特異的部位での切断、および切断された3’端での約100~200アデニンヌクレオチド(ポリAテイル)の配列の転写後組込みを引き起こし、したがって、RNAポリメラーゼに転写を終結させるシグナル配列である。ポリアデニル化シグナルは切断部位および下流に位置する配列の約10~30ヌクレオチド上流に配列AATAAAを含む。tk ポリA、SV40後期および初期ポリA、BGH ポリA(例えば、米国特許第5,122,458号に記載)またはハムスター増殖ホルモンポリA(国際公開第2010010107号)など、様々なポリアデニル化エレメントが公知である。
【0114】
「翻訳制御エレメント」は、発現される各個々のポリペプチドに翻訳開始部位(AUG)、終止コドンおよびポリAシグナルを含む。配列内リボソーム進入部位(IRES)は、いくつかの構築物に含まれてよい。発現を最適化するため、発現される核酸配列の5’-および/または3’-非翻訳領域を除去、付加、または変更し、転写または翻訳のいずれかのレベルで、発現を干渉または減少させ得る、任意の潜在的に余分で不適切な代わりの翻訳開始コドンまたは他の配列を除外することが得策であり得る。コンセンサスリボソーム結合部位(Kozak配列)は開始コドンのすぐ上流に挿入され、翻訳、したがって発現を増強することができる。このリボソーム結合部位周辺の増加A/U含量は、さらにリボソーム結合により効果的である。
【0115】
定義により、宿主細胞に挿入された全てのポリヌクレオチド配列または全ての遺伝子およびそれによりコードされるそれぞれのタンパク質またはRNAは、異なる(ウイルス)種に由来する場合、宿主細胞に対して、「外来性」、「外来性配列」、「外来性遺伝子」、「外来性コード配列」と呼ばれる。したがって、本発明のEHV-4ベースのプロモーターは、EHV-1ウイルスベクターを考慮して外来性である。抗原など目的の配列または遺伝子に関して本明細書で使用する場合、用語「外来性」は、目的の前記配列または遺伝子、特に前記抗原はその天然種の背景の外で発現されることを意味する。したがって、ブタIAV由来のH3、H1avまたはH1pdm抗原は、EHV-1ベクターに関する外来性の抗原の例である。EHV-1以外の異なる病原体に由来する任意の配列は、したがって、本発明の特定の態様に記載の目的の外来配列もしくは遺伝子または抗原である。
【0116】
定義により、宿主細胞に挿入された全てのポリヌクレオチド配列または全ての遺伝子およびそれによりコードされるそれぞれのタンパク質またはRNAは、宿主細胞に対して、「異種、「異種配列」、「異種遺伝子」、「異種コード配列」、「導入遺伝子」または「異種タンパク質」と呼ばれる。これは、導入される配列または導入される遺伝子が、宿主細胞の内在性配列または内在性遺伝子と同一である場合でさえも適用する。例えば、異なる部位で、またはEHV-4野生型ウイルスにおいてよりも改変形態でEHV-4ウイルスベクターに導入されるEHV-4プロモーター配列は、定義により、異種配列である。抗原など目的の配列または遺伝子に関して本明細書で使用する場合、用語「異種」は、目的の前記配列または遺伝子、特に前記抗原は、その天然亜種の背景の外で発現されることを意味する。したがって、抗原、例えばEHV-1を除く任意のウマアルファヘルペスウイルス、例えばEHV-3、EHV-8由来の抗原など、目的の任意の非EHV-1特異的配列または遺伝子は、したがって、目的の異種配列もしくは遺伝子または本発明の特定の態様に記載の抗原である。
用語「非天然型」は、この文脈において天然には生じない抗原などの目的の任意の配列または遺伝子、例えば異なる種由来の抗原などの目的のハイブリッド配列もしくは配列もしくは遺伝子、または人工的な変異、挿入、欠損等により天然の産物ではない、抗原などの目的の配列もしくは遺伝子を意味する。
【0117】
用語「組換え」は、本発明の明細書を通して、用語「非天然型」、「異種」および「外来性」と交換可能に使用される。したがって、「組換え」タンパク質は、異種または外来性ポリヌクレオチド配列のいずれかから発現されるタンパク質である。ウイルスに関して使用される場合、用語組換えは、ウイルスゲノムの人工的な操作によって産生されるウイルスを意味する。外来性抗原コード配列など、異種または外来性配列を含むウイルスは、組換えウイルスである。用語組換えウイルスおよび用語非天然型ウイルスは、交換可能に使用される。
したがって、用語「異種ベクター」は、異種または外来性ポリヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。用語「組換えベクター」は、異種または組換えポリヌクレオチド配列を含むベクターを意味する。
【0118】
本明細書で使用する場合、用語「作動可能に連結される」は、制御エレメントと遺伝子またはそのコード領域の間の接続を記載するために使用される。典型的には、遺伝子発現は、1つまたは複数の制御エレメント、例えば、限定はされないが、構成的または誘導性プロモーター、組織特異的制御エレメント、およびエンハンサーの調節下に置かれる。遺伝子またはコード領域は、制御エレメントと「作動可能に連結される(operably linked to)」または「作動可能に連結される(operatively linked to)」または「作動可能に関連する(operably associated with)」と言われ、遺伝子またはコード領域が制御エレメントによって調節または影響されることを意味する。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響する場合、プロモーターはコード配列に作動可能に連結される。
さらに、本明細書の範囲内で、用語「機能的連結」、「機能的に連結された」または「作動可能に連結された」は、2つまたはそれ以上の核酸配列または配列エレメントが、それらが意図した方法で機能するように配置されることを意味する。例えば、cis位置で連結された遺伝子配列の転写を調節または調整することができる場合、ポロモーター/エンハンサーまたはターミネーターは、コード遺伝子配列に機能的に連結される。通常、必ずしもそうではないが、機能的に連結されたDNA配列は隣接し、2つのポリペプチドコード領域を合わせる必要がある場合または分泌シグナルペプチドの場合、隣接し、リーディングフレームである。しかしながら、作動可能に連結されたプロモーターは、通常、上流に位置し、作動可能に連結されたターミネーターは、通常、コード配列の下流に位置するが、必ずしもそれと隣接していない。エンハンサーは、それらがコード配列の転写を増加する限り、必ずしも隣接していない。このため、それらはコード配列の上流に位置することも、下流に位置することもあり、いくらか距離を隔てていることもある。ポリアデニル化部位は、コード配列を通ってポリアデニル化シグナルまで転写が進行するようにコード配列の3’端に位置する場合、コード配列に作動可能に連結される。連結は、例えば、好適な制限部位もしくは平滑末端でのライゲーションにより、または融合PCR法を使用することにより、当技術分野で公知の組換え方法によって達成される。合成オリゴヌクレオチドリンカーまたはアダプターは、好適な制限部位が存在しない場合、従来の実行と一致して使用され得る。
【0119】
したがって、プロモーター配列の、用語「機能的断片」または「機能的誘導体」は、断片または誘導体が依然としてプロモーター活性が有効であることを意味する。プロモーター活性を評価する方法の機能アッセイは当業者に周知である(Bustin 2000, Nolan et al. 2006)。そのような機能アッセイの例示的な実施形態としては、例えば、プロモーター動態実験が挙げられる。プロモーターまたはその断片がレポーター導入遺伝子の転写を導く発現カセットを有するベクターウイルスを感染させた細胞は、異なる時間インキュベートされる。全RNAは、感染後の異なる時間で回収された試料から調製される。DNAseI消化によるコンタミネートしたDNAの破壊後、RNAは逆転写される。RNA調製物からのコンタミネートしたDNAの除去の成功を実証するため、1つの複製試料が逆転写酵素(RT)の添加によって処理され、2つ目の複製はRTの添加無しで処理される。生じるcDNAは精製され、従来のPCRの鋳型として使用される。RTの添加によって処理された試料のみがPCR産物を産生するはずである。これらのcDNAは、次いで、レポーター導入遺伝子のプライマーによるqPCRに、ウイルスベクターの必須遺伝子(内部標準遺伝子)のプライマーによるものと並行して使用することができ、その転写は、感染および複製の効率のための内部標準を提供する。レポーターのqPCR値は、内部標準遺伝子のqPCR値を使用して、異なる構築物および感染後の時間の間でノーマライズされる。これは、異なるプロモーターおよびその断片のプロモーター活性の解釈を可能にする。
【0120】
「配列相同性」は、本明細書で使用する場合、2つの配列の関連性を決定する方法を指す。配列相同性を決定するため、2つまたはそれ以上の配列が最適にアラインされ、必要であればギャップが導入される。しかしながら、「配列同一性」とは対照的に、配列相同性を決定する場合には、保存的なアミノ酸置換は一致としてカウントされる。
【0121】
言い換えると、参照配列と95%の配列相同性を有する比較できるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを得るため、85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の参照配列のアミノ酸残基またはヌクレオチドが一致しなければならず、別のアミノ酸またはヌクレオチドとの保存的な置換を含まなければならない。代わりに、参照配列における、保存的な置換を含まない、全アミノ酸残基またはヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%まで、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%、0.1%までのアミノ酸またはヌクレオチドの数が、参照配列に挿入され得る。好ましくは、相同配列は、少なくとも50、さらにより好ましくは100、さらにより好ましくは250、さらにより好ましくは500ヌクレオチドのストレッチを含む。
【0122】
当技術分野で公知のように、「配列同一性」は、2つまたはそれ以上のポリペプチド配列または2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド配列、すなわち、参照配列と、参照配列と比較される所与の配列の間の関係を指す。配列同一性は、配列が最適にアラインされた後に所与の配列を参照配列と比較することによって決定され、そのような配列のストリング間の一致により決定されるように、最も高い程度の配列類似性を産生する。そのようなアライメントにより、配列同一性は、位置ごとに確認され、例えば配列は、その位置で、ヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一である場合、特定の位置で「同一」である。そのような位置同一性の総数は、次いで参照配列のヌクレオチドまたは残基の総数によって割られ、%配列同一性を与える。配列同一性は、限定はされないが、Computational Molecular Biology, Lesk, A. N., ed., Oxford University Press, New York (1988), Biocomputing:Informatics and Genome Projects, Smith, D.W., ed., Academic Press, New York (1993);Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A.M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey (1994);Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinge, G., Academic Press (1987);Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991);およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載のものを含む公知の方法によって容易に算出することができ、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。配列同一性を決定する好ましい方法は、試験した配列間で最大の一致を与えるように設計される。配列同一性を決定する方法は、所与の配列間の配列同一性を決定する一般的に利用可能なコンピュータープログラムでコード化される。そのようなプログラムの例としては、限定はされないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990)が挙げられる。BLASTXプログラムはNCBIおよび他の供給元から公的に利用可能である(BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCVI NLM NIH Bethesda, MD 20894, Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990)、その教示は参照により本明細書に組み込まれる)。これらのプログラムは、所与の配列と参照配列の間に最高レベルの配列同一性を産生するため、デフォルトのギャップ重み付けを使用して配列を最適にアラインする。例として、参照ヌクレオチド配列に対して、例えば、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%「配列同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、所与のポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列のそれぞれ100ヌクレオチド当たり15まで、好ましくは10まで、さらにより好ましくは5までの点変異を含み得ることを除いて、所与のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることが意図される。言い換えると、参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにおいて、参照配列のヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%、0.1%までが欠損または別のヌクレオチドによって置換され、参照配列の総ヌクレオチドの15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%、6%、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%、0.1%までのヌクレオチドの数が参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端位置またはそれらの末端位置間のどこでも起こることがあり、参照配列、または参照配列内の1つまたは複数の隣接基のいずれかのヌクレオチド中で個々に分散される。同様に、参照アミノ酸配列に対して、例えば、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%配列同一性を有する所与のアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、所与のポリペプチド配列が、参照アミノ酸配列のそれぞれ100アミノ酸当たり15まで、好ましくは10、9、8、7、6まで、さらにより好ましくは5、4、3、2、1までのアミノ酸変化を含み得ることを除いて、ポリペプチドの所与のアミノ酸配列が参照配列と同一であることが意図される。言い換えると、参照アミノ酸配列と、少なくとも85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、さらにより好ましくは95%、96%、97%、98%、99%配列同一性を有する所与のポリペプチド配列を得るため、参照配列のアミノ酸残基の15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%まで、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%までが欠損または別のアミノ酸と置換され、参照配列のアミノ酸残基の総数の15%まで、好ましくは10%、9%、8%、7%まで、さらにより好ましくは5%、4%、3%、2%、1%までのアミノ酸の数が参照配列に挿入され得る。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノもしくはカルボキシ末端位置、またはそれらの末端位置間のどこでも起こることがあり、参照配列または参照配列内の1つまたは複数の隣接基のいずれかの残基中で個々に分散される。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。しかしながら、配列同一性を決定する場合、保存的置換は一致として含まれない。
【0123】
用語「配列同一性」または「パーセント同一性」は、本明細書において交換可能に使用される。本発明の目的のため、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列のパーセント同一性を決定するため、配列は最適な比較目的のためにアラインされることが本明細書において規定される(例えば、ギャップが、第2のアミノ酸または核酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸または核酸の配列に導入され得る)。相当するアミノ酸またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸またはヌクレオチド残基が、次いで比較される。第1の配列の位置が、第2の配列の相当する位置と同じアミノ酸またはヌクレオチド残基によって占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一な位置の数/位置の総数(すなわちオーバーラップする位置)×100)。好ましくは、2つの配列は同じ長さである。
配列比較は、比較される2つの配列の全長にわたって、または2つの配列の断片にわたって行われ得る。典型的には、比較は、比較される2つの配列の全長にわたって行われる。しかしながら、配列同一性は、例えば、20、50、100またはそれ以上の隣接するアミノ酸残基の領域にわたって行われ得る。
【0124】
当業者は、2つの配列間の相同性を決定するために、いくつかの異なるコンピュータープログラムが利用可能であることを知っている。例えば、配列の比較および2つの配列間のパーセント同一性の決定は、数値計算用アルゴリズムを使用して達成され得る。好ましい実施形態では、2つのアミノ酸または核酸配列間のパーセント同一性は、Blosum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み付けならびに1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けのいずれかを使用して、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(http://www.accelrys.com/products/gcg/で入手可能)のGAPプログラムに組み込まれるNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970))アルゴリズムを使用して決定される。当業者は、これら全ての異なるパラメーターがわずかに異なる結果をもたらすが、2つの配列の全体的なパーセンテージ同一性は、異なるアルゴリズムを使用する場合著しくは変更されないことを認識する。
【0125】
本発明のタンパク質配列または核酸配列は、「問い合わせ配列」としてさらに使用され、公共のデータベースに対して検索を実施し、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連配列を同定する。そのような検索は、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTNおよびBLASTPプログラム(バージョン2.0)を使用して実施することができる。BLASTタンパク質検索はBLASTPプログラム、スコア=50、ワード長=3で実施され、本発明のタンパク質分子に相同のアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためのギャップ付きアライメントを得るため、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402に記載されるように、Gapped BLASTが利用され得る。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えばBLASTPおよびBLASTN)のデフォルトのパラメーターが使用され得る。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/の国立バイオテクノロジー情報センターのホームページを参照されたい。
【0126】
EHV-1およびEHV-4/組換えベクター技術の定義
用語「ウマ(equid)」または「ウマ(equine)」または「ウマ(equin)」は、ウマ、ロバ、およびシマウマを含み、好ましくはウマである、ウマ科を意味するまたはウマ科に属する。さらに、用語「ウマ(equid)」または「ウマ(equine)」または「ウマ(equin)」は、ウマ科のメンバーのハイブリッドも包含する(例えば、ラバ、ケツテイ等)。
「ヘルペスウイルス」または「ヘルペスウイルスベクター」は、ヘルペスウイルス目のヘルペスウイルス科の種を指す。
【0127】
用語「ウマヘルペスウイルスベクター」または「ウマヘルペスウイルス」または「EHV」は、ウマに感染するヘルペスウイルス科のメンバーを意味する。これまでのところ、8つの異なる種のウマヘルペスウイルスが同定され、5つはアルファヘルペスウイルス亜科(EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8、およびEHV-9)に属し、3つはガンマヘルペスウイルス科に属する。(http://www.ictvonline.org/virustaxonomy.asp Virus Taxonomy: 2015 Release EC 47, London, UK, July 2015; Email ratification 2016 (MSL #30))。
用語「EHV-1」は、ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス属のバリセロウイルス亜属のメンバー、ウマアルファヘルペスウイルス1型を意味する。EHV-1の非限定的な参照配列は、例えば野生型EHV-1株ab4(Genbank受入番号AY665713.1)またはRacH(Hubert 1996)。
用語EHV-4は、ヘルペスウイルス科のアルファヘルペスウイルス属のバリセロウイルス亜属のメンバー、ウマアルファヘルペスウイルス4型を意味する。
【0128】
用語「ORF70に挿入された」は、ウマアルファヘルペスウイルス1型オープンリーディングフレーム70をコードする位置で、ゲノムDNAにDNA断片が挿入されたことを意味する。本発明の特定の態様では、言及される挿入は、ORF70の5’の801塩基対の欠損をもたらし、3’端の残りの423bpは無傷なままで残すが、orf70遺伝子産物糖タンパク質Gの発現を無くす。EHV-1を含むいくつかのアルファヘルペスウイルスの糖タンパク質Gは、感染細胞から分泌され、炎症促進性サイトカインの結合によって免疫調節性タンパク質として機能することが示された。ウイルスベクターでのその発現が無くなると、無傷な糖タンパク質Gを発現する野生型EHV-1と比較した場合、ウイルス感染の免疫原性を増大させるはずである。
用語「UL43に挿入された」は、ウマアルファヘルペスウイルス1型オープンリーディングフレームUL43(ORF17)をコードする位置で、ゲノムDNAにDNA断片が挿入されたことを意味する。本発明の特定の態様では、言及される挿入は、UL43の5’の870塩基対の欠損をもたらし、3’末端の残りの336bpを無傷なまま残すがUL43遺伝子産物pUL43の発現を消失させた。EHV-1のpUL43は、MHC-Iの提示に干渉することにより、pUL56とともに免疫調節性タンパク質として機能することが示された。
【0129】
用語「ORF1/3に挿入された」は、ワクチン株EHV-1 RacHの弱毒化手順中の継代での偶発的な欠損によって、ORF1の90%および全ORF2を含む1283bpの断片が欠失する位置で、ウイルスゲノムにDNA断片が挿入されたことを意味する。この挿入部位は、この位置からの導入遺伝子の発現がウイルスの複製と干渉する可能性が極端に少ないと予測されたため、選択された。
ワクチンの定義
「免疫原性または免疫学的組成物」は、組成物に対する細胞または抗体媒介性免疫応答の宿主での免疫学的応答を引き出す少なくとも1つの抗原、またはその免疫原性部分を含む物質の組成物を指す。
【0130】
本明細書で使用する用語「抗原」は、当技術分野で周知であり、免疫原性、すなわち免疫原である物質、ならびに免疫学的不応性、または免疫不応答、すなわち外来物質に対する体の防御機構による反応の欠如を誘導する物質を含む。本明細書で使用する場合、用語「抗原」は、エピトープを含有するまたは含む、全長タンパク質ならびにそのペプチド断片を意味することが意図される。
用語「食物生産動物」は、例えば、ブタ、ウシ、家禽、魚等、ヒトによる消費のために使用される動物を意味し、好ましくは、食物生産動物はブタおよびウシを意味し、最も好ましくはブタである。
【0131】
本明細書で使用する場合、「免疫原性組成物」は、例えば、本明細書に記載のように免疫学的応答を引き出すウイルス表面タンパク質など、ポリペプチドまたはタンパク質を指し得る。用語「免疫原性断片」または「免疫原性部分」は、1つまたは複数のエピトープを含み、したがって、本明細書に記載の免疫学的応答を引き出すタンパク質またはポリペプチドの断片またはトランケートおよび/または置換形態を指す。一般に、そのようなトランケートおよび/または置換形態、または断片は、全長タンパク質からの少なくとも6個の隣接するアミノ酸を含む。そのような断片は、当技術分野で周知のいくつかのエピトープマッピング技術を使用して同定され得る。例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology, Vol. 66 (Glenn E. Morris, Ed., 1996) Humana Press, Totowa, New Jersey参照。例えば、線状エピトープは、タンパク質分子の部分に相当する多数のペプチドを固体支持体上で同時合成し、ペプチドが依然として支持体に結合しているうちに、ペプチドを抗体と反応させることによって決定され得る。そのような技術は公知であり、当技術分野で記載されている。例えば、米国特許第4,708,871号;Geysen et al. (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002;およびGeysen et al. (1986) Molec. Immunol. 23:709-715参照。同様に、構造エピトープは、例えば、X線結晶解析および二次元核磁気共鳴によるなどアミノ酸の空間的な構造を決定することにより容易に同定される。上記のEpitope Mapping Protocolsを参照。合成抗原も、例えばポリエピトープ、隣接エピトープ、および他の組換えまたは合成由来の抗原の定義内に含まれる。例えば、Bergmann et al. (1993) Eur. J. Immunol. 23:2777-2781;Bergmann et al. (1996), J. Immunol. 157:3242-3249;Suhrbier, A. (1997), Immunol. and Cell Biol. 75:402-408;およびGardner et al., (1998) 12th World AIDS Conference, Geneva, Switzerland, June 28-July 3, 1998参照。(その教示および内容は全て本明細書に参照により組み込まれる。)
用語「免疫化」は、免疫させる食物産生動物への免疫原性組成物の投与による能動免疫化に関し、それにより、そのような免疫原性組成物に含まれる抗原に対する免疫応答を引き起こす。
用語「必要とする(in need)」または「必要とする(of need)」は、本明細書で使用する場合、投与/処置が健康または臨床徴候へのブーストまたは改善、または本発明に従って免疫原性組成物を受ける動物の健康への任意の他の正の薬効と関連することを意味する。
【0132】
本明細書で使用する場合、用語「ワクチン」は、動物の免疫学的応答を誘導する少なくとも1つの免疫学的活性成分、および可能だが必ずではない活性成分の免疫学的活性を増強する1つまたは複数のさらなる成分を含む医薬組成物を指す。ワクチンは、医薬組成物に典型的なさらなる成分をさらに含み得る。区別すると、ワクチンの免疫学的活性成分は、いわゆる改変生ワクチン(MLV)でのその元々の形態または弱毒化粒子のいずれかの完全なウイルス粒子、またはいわゆる死菌ワクチン(KV)での適切な方法によって不活性化された粒子を含み得る。別の形態では、ワクチンの免疫学的活性成分は、生物の適切なエレメント(サブユニットワクチン)を含んでよく、これらのエレメントは、粒子全体を破壊すること、またはそのような粒子を含有する増殖培地のいずれか、および任意選択により所望の構造を産生する続く精製ステップによって、または例えば細菌、昆虫、哺乳動物、もしくは他の種に基づく好適なシステムの使用による適切な操作を含む合成プロセスによって、さらに任意選択により続く単離および精製手順、または好適な医薬組成物(ポリヌクレオチドワクチン接種)を使用する遺伝材料の直接組込みによるワクチンを必要とする動物における合成プロセスの誘導によって生成される。ワクチンは、1つのまたは同時に1つより多くの上記のエレメントを含み得る。本発明の特定の態様内で使用される場合、「ワクチン」は生ワクチンまたは生ウイルスを指し、組換えワクチンとも呼ばれる。本発明の別の特定の態様では、「ワクチン」は、ウイルス様粒子(VLP)を含む不活性化または死菌ウイルスを指す。したがって、ワクチンは、サブユニットワクチンまたは死菌(KV)または不活性化ワクチンであってよい。
【0133】
用語「感染多重度(M.O.I.)」は、どのくらいのウイルス調製物の感染単位、例えばTCID50が、細胞当たり使用され培養細胞に感染するかを記載する。例えば、0.01のM.O.I.は、1つの感染ユニットが接種される培養容器中100個の細胞全てを意味する。
用語「DNAワクチン接種」または「ポリヌクレオチドワクチン接種」は、好適な医薬組成物を使用する遺伝材料の直接接種を意味する。
【0134】
不活性化の様々な物理的および化学的方法が当技術分野で公知である。用語「不活性化」は、照射(紫外線(UV)、X線、電子ビームまたはガンマ照射)、加熱、または化学的に処置され、その免疫原性を保持しながらそのようなウイルスまたは細菌を不活性化または死滅させた、以前は毒性だったまたは非毒性ウイルスまたは細菌を指す。好適な不活性化剤としては、ベータ-プロピオラクトン、バイナリーまたはベータまたはアセチルエチレンイミン、グルテルアルデヒド(gluteraldehyde)、オゾン、およびホルマリン(ホルムアルデヒド)が挙げられる。
ホルマリンまたはホルムアルデヒドによる不活性化のため、ホルムアルデヒドを、典型的には水およびメチルアルコールと混合して、ホルマリンを作製する。メチルアルコールの添加により、活性化プロセス中の分解または交差反応を防ぐ。一実施形態では、37%ホルムアルデヒド溶液の約0.1~1%を使用して、ウイルスまたは細菌を不活性化する。材料は不活性化されるが、高用量による副作用が起こるほど多くないことを確実にするように、ホルマリンの量を調節することが重要である。
【0135】
より詳細には、ウイルスの文脈における用語「不活性化」は、ウイルスがin vivoまたはin vitroでそれぞれ複製することができないことを意味し、細菌の文脈における用語「不活性化」は、細菌がin vivoまたはin vitroで増殖できないことを意味する。例えば、用語「不活性化」は、in vitroで繁殖し、次いでもはや複製できないように化学的または物理的な手段を使用して不活性化されたウイルスを指し得る。別の例では、用語「不活性化」は、繁殖し、次いでワクチンの成分として使用され得るバクテリンを生じるなど、細菌、細菌の断片または成分の懸濁液を生じる、化学的または物理的な手段を使用して不活性化された細菌を指し得る。
本明細書で使用される場合、用語「不活性化」、「死菌」または「KV」は交換可能に使用される。
用語「生ワクチン」は、生きた生物または複製可能なウイルスもしくはウイルスベクターのいずれかを含むワクチンを指す。
【0136】
「医薬組成物」は、それが投与される生物の、または住み着いている生物の、または生物上の生理学、例えば免疫学的機能を改変することができる1つまたは複数の成分から基本的になる。用語は、限定はされないが、抗生物質または駆虫薬、ならびに、例えば、限定はされないが、プロセシング特性、無菌性、安定性、経腸または非経口経路、例えば、経口、鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、または他の好適な経路を介して組成物を投与する可能性、投与後の耐性、または調節性放出特性などの特定の他の目的を達成するために一般に使用される他の構成成分を含む。そのような医薬組成物の1つの非限定的な例は、単に、実証目的のために挙げられ、以下のように調製され得る:感染細胞培養の細胞培養上澄み液は安定剤(例えば、スペルミジンおよび/またはウシ血清アルブミン(BSA)と混合され、混合物は続いて他の方法により凍結乾燥または脱水される。ワクチン接種の前に、混合物は次いで、水溶液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)または非水性溶液(例えば、油エマルジョン、アルミニウムベースのアジュバント)中で再水和される。
【0137】
本明細書で使用される場合、「薬学的にまたは獣医学的に許容される担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散培地、コーティング、アジュバント、安定化剤、希釈剤、保存剤、抗菌および抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などを含む。いくつかの好ましい実施形態、特に本発明での使用のための凍結乾燥免疫原性組成物、安定化剤を含むものは、凍結乾燥またはフリーズドライのための安定剤を含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、本発明の免疫原性組成物はアジュバントを含有する。本明細書で使用する場合、「アジュバント」は、水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウム、サポニン、例えばQuil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンを含み得る。エマルジョンは、特に、軽質流動パラフィンオイル(ヨーロッパ薬局方型);スクアランまたはスクアレンなどのイソプレノイドオイル;アルケンのオリゴマー化から生じるオイル、特にイソブテンまたはデセン;線状アルキル基を含有する酸のまたはアルコールのエステル、より具体的には、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ-(カプリル酸/カプリン酸)、グリセリルトリ-(カプリル酸/カプリン酸)またはプロピレングリコールジオレエート;分枝脂肪酸またはアルコールのエステル、特にイソステアリン酸のエステルに基づき得る。オイルは乳化剤と組み合わせて使用され、エマルジョンを形成する。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特にソルビタンのエステル、マンニド(例えば、無水マンニトールオレエート)のエステル、グリコールのエステル、ポリグリセリンのエステル、プロピレングリコールのエステル、およびオレイン酸、イソステアリン酸、リシノール酸またはヒドロキシステアリン酸の、エトキシル化されていてもよいエステル、ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニック(登録商標)製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995) and Todd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)参照。例示的なアジュバントは、"Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach" edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の147頁に記載されているSPTエマルジョン、およびこの同じ書籍の183頁に記載されているエマルジョンMF59である。
【0139】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸またはメタクリル酸のポリマーおよび無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖または多価アルコールのポリアルケニルエーテルと架橋されたアクリル酸またはメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は用語カルボマーで公知である(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者は、少なくとも3個、好ましくは8個以下のヒドロキシル基を有し、少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルで置き換えられているポリヒドロキシル化化合物と架橋したそのようなアクリルポリマーについて記載している米国特許第2,909,462号を参照することもできる。好ましいラジカルは、2~4個の炭素原子を含有するもの、例えば、ビニル、アリルおよび他のエチレン性不飽和基である。不飽和ラジカルは、それ自体がメチルなどの他の置換基を含有し得る。CARBOPOL(登録商標)の名称で販売されている製品(BF Goodrich、Ohio、USA)が特に適している。これらは、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールと架橋されている。それらとしては、Carbopol 974P、934Pおよび971Pを挙げることができる。CARBOPOL(登録商標)971Pの使用が最も好ましい。無水マレイン酸とアルケニル誘導体のコポリマーは、コポリマーEMA(Monsanto)であり、これらは無水マレイン酸とエチレンのコポリマーである。これらのポリマーを水に溶解させることにより酸性溶液が生じ、これを、免疫原性組成物、免疫学的組成物またはワクチン組成物自体が組み込まれるアジュバント溶液をもたらすために、好ましくは生理的なpHまで中和する。
【0140】
さらに好適なアジュバントとしては、多くの他のものもあり、限定はされないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta GA)、SAF-M(Chiron、Emeryville CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌由来の熱不安定性エンテロトキシン(組換えまたは他の方法)、コレラ毒素、IMS1314またはムラミルジペプチド、または天然に存在するもしくは組換えサイトカインもしくはその類似体または内在性サイトカイン放出の刺激薬が挙げられる。
【0141】
アジュバントは、用量当たり約100μg~約10mgの量で、好ましくは用量当たり約100μg~約10mgの量で、より好ましくは用量当たり約500μg~約5mgの量で、さらにより好ましくは用量当たり約750μg~約2.5mgの量で、最も好ましくは用量当たり約1mgの量で添加することができると予測される。あるいは、アジュバントは、最終製品の容積で約0.01~50%の濃度、好ましくは約2%~30%の濃度、より好ましくは約5%~25%の濃度、なおさらに好ましくは約7%~22%の濃度、および最も好ましくは10%~20%の濃度であってよい。
「希釈剤」としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロール等を挙げることができる。等張剤としては、とりわけ、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースを挙げることができる。安定剤としては、とりわけ、アルブミンおよびエチレンジアミン四酢酸のアルカリ塩が挙げられる。
「単離された」は、その天然の状態から「人間の手によって」変更されたこと、すなわち、それが天然に存在する場合、その元々の環境から変更または取り出された、またはその両方であることを意味する。例えば、本明細書でその用語が用いられる場合、生きている生物内に天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは「単離され」ていないが、その天然の状態で共存する材料から分離された同じポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、「単離され」ている。
【0142】
「弱毒化」は、病原体の毒性を低下させることを意味する。本発明では、「弱毒化」は「非病原性」と同義である。本発明では、弱毒化ウイルスは、感染の臨床徴候を引き起こさないが標的動物における免疫応答を誘導することはできるように毒性を低下させたものであるが、弱毒化ウイルス、特に請求項のようにEHV-1 RacHウイルスベクターを感染させた動物における臨床徴候の発生率または重症度が、弱毒化していないウイルスまたは病原体を感染させ、弱毒化ウイルスを受けていない「対照群」の動物と比較して低下することも意味し得る。この場合、用語「低下する/低下した」は、上記で定義された対照群と比較して少なくとも10%、好ましくは25%、さらにより好ましくは50%、なおより好ましくは60%、さらにより好ましくは70%、なおより好ましくは80%、さらにより好ましくは90%、および最も好ましくは100%の低下を意味する。したがって、例えば請求項のように弱毒化ウイルスベクターなどの、弱毒化した非病原性病原体、特に請求項のようにEHV-1(好ましくはRacH)ウイルスベクターが、改変生ワクチン(MLV)または改変生免疫原性組成物の生成に好適である。
【0143】
用語「処置および/または予防」は、集団における感染(特にブタA型インフルエンザウイルス感染)の発生率の減少または特定の感染によって引き起こされるまたは特定の感染(特にブタA型インフルエンザウイルス感染)と関連する臨床徴候の重症度の減少を指す。したがって、用語「処置および/または予防」は、病原体によって感染される集団の動物の数の減少(特にブタA型インフルエンザウイルス=その特定のブタA型インフルエンザウイルス感染の発生率の低下)、または通常本明細書に提供する有効量の免疫原性組成物を受ける動物の群での感染(特にブタA型インフルエンザウイルス感染)と関連するまたは感染(特にブタA型インフルエンザウイルス感染)によって引き起こされる臨床徴候の重症度のそのような免疫原性組成物を受けない動物の群と比較した減少を指す。
【0144】
「処置および/または予防」は一般に、有効量の本発明の免疫原性組成物の、そのような処置/予防を必要とするまたはそのような処置/予防が有益であり得る動物または動物の集団への投与を含む。用語「処置」は、その動物またはその集団の少なくともいくらかの動物がそのような病原体(特にブタA型インフルエンザウイルス)によってすでに感染し、そのような動物はそのような病原体感染(特にブタA型インフルエンザウイルス)によって引き起こされるまたはそのような病原体感染(特にブタA型インフルエンザウイルス)と関連するいくつかの臨床徴候をすでに示す場合の、有効量の免疫原性組成物の1回の投与を指す。用語「予防」は、病原体(特にブタA型インフルエンザウイルス)によるそのような動物のいずれの感染よりも前の、または少なくともそのような動物または動物の群のどの動物もそのような病原体(特にブタA型インフルエンザウイルス)による感染によって引き起こされるまたはそのような病原体(特にブタA型インフルエンザウイルス)による感染と関連するいずれの臨床徴候も示さない場合の、動物への投与を指す。用語「予防」および「防止」は、本出願において交換可能に使用される。
【0145】
本明細書で使用する場合、用語「臨床徴候」は、病原体(特にブタA型インフルエンザウイルス)からの動物の感染の徴候を指す。感染の臨床徴候は、選択された病原体によって変わる。そのような臨床徴候の例としては、限定はされないが、呼吸困難、耳炎、ざらざらの被毛、微熱、うつ病、食欲低下が挙げられる。しかしながら、臨床徴候は、限定はされないが、生きた動物から直接観察可能な臨床徴候も挙げられる。生きた動物から直接観察可能な臨床徴候の例としては、鼻汁および眼漏、無気力、咳、喘鳴、動悸、体温上昇、体重減少、脱水症状、跛行、消耗、皮膚の蒼白、発育不全等が挙げられる。
本明細書では、「有効用量」は、限定はされないが、抗原が投与される動物における臨床症状の減少をもたらす免疫応答を引き出す、または引き出すことができる抗原の量を意味する。
【0146】
本明細書で使用する場合、用語「有効量」は、組成物の文脈では、動物において感染または付随する疾患の発生率を低下させるまたはその重症度を軽減する免疫応答を誘導することができる免疫原性組成物の量を意味する。特に、有効量は、用量当たりのコロニー形成単位(CFU)を指す。あるいは、療法の文脈では、用語「有効量」は、疾患もしくは障害、または1つもしくは複数のその症状の重症度または持続時間を低下または好転させるため、疾患または障害の前進を予防するため、疾患または障害の後退を引き起こすため、疾患または障害に付随する1つまたは複数の症状の再発、発生、発症、または進行を予防するため、または、別の療法または治療剤による予防もしくは処置を増強もしくは改善するために十分である療法の量を指す。
「免疫応答」または「免疫学的応答」は、限定はされないが、目的の(免疫原性)組成物またはワクチンに対する細胞および/または抗体により媒介される免疫応答の発生を意味する。通常、免疫応答または免疫学的応答は、限定はされないが、以下の作用の1つまたは複数を含む:目的の組成物またはワクチンに含まれる1つまたは複数の抗原を特異的に対象とする抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、および/または細胞傷害性T細胞の産生または活性化。好ましくは、宿主は治療的または防御的な免疫学的(記憶)応答のいずれかを示し、したがって、新しい感染に対する抵抗性が増強され、および/または疾患の臨床的な重症度が低下する。そのような防御は、症状の数、症状の重症度の低下、もしくは病原体の感染に伴う症状の1つまたは複数の欠如、ウイルス血症の発症の遅延、ウイルスの持続性の低下、全ウイルス負荷量の減少および/またはウイルス排泄の減少のいずれかによって実証される。
【0147】
「疾患に対する防御」、「防御免疫」、「機能免疫」、「臨床症状の減少」、「中和抗体および/または血清変換の誘導/産生」、および同様の句は、1つまたはそれ以上の本発明の治療用組成物、またはこれらの組合せの投与によって生じる、疾患または状態に対する部分的または完全な応答を意味し、その結果、疾患または感染に暴露された免疫されていない対象において予測されるものよりも生じる有害作用が少ないことを意味する。すなわち、ワクチン接種された対象では感染の有害作用の重症度が低下する。ワクチン接種された対象では、感染が減少し得る、遅くなり得る、または場合により完全に予防され得る。本明細書では、感染の完全な予防を意味する場合には、明確に記載される。完全な予防と記載されていない場合、この用語は、部分的な予防を含む。
【0148】
本明細書では、「臨床徴候の発生率および/または重症度の低下」または「臨床症状の減少」は、限定はされないが、野生型感染と比較した、群内の感染した対象の数の減少、感染の臨床徴候を示す対象の数の減少もしくは排除、または1または複数の対象に存在する任意の臨床徴候の重症度の低下を意味する。例えば、病原体負荷量の減少、病原体の排出、病原体の伝染の減少、またはマラリアの任意の症候性の臨床徴候の減少のいずれかを指すべきである。好ましくは、本発明の治療用組成物を受けた1またはそれ以上の対象において、組成物を受けておらず感染する対象と比較して、これらの臨床徴候が少なくとも10%減少する。より好ましくは、本発明の組成物を受けた対象において臨床徴候が少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、さらにより好ましくは少なくとも50%減少する。
【0149】
本明細書では、用語「防御の増大」は、限定はされないが、ワクチン接種された対象の群における感染因子による感染に付随する1つまたは複数の臨床症状が、ワクチン接種されていない対象の対照群に対して統計的に優位に減少することを意味する。用語「統計的に有意な臨床症状の減少」は、限定はされないが、感染因子によるチャレンジ後に、ワクチン接種された対象の群における少なくとも1つの臨床症状の発生頻度が、ワクチン接種されていない対照群よりも少なくとも10%、好ましくは20%、より好ましくは30%、さらにより好ましくは50%、およびさらにより好ましくは70%低いことを意味する。
「長期にわたる防御」は、少なくとも3週間、より好ましくは少なくとも3ヵ月、なおより好ましくは少なくとも6ヵ月にわたって持続する「改善された有効性」を指す。家畜の場合、長期にわたる防御は、動物が食肉用に販売される平均年齢まで持続するものとされることが最も好ましい。
【0150】
ウイルスによって誘導される、用語「ウイルス血症の減少」は、限定はされないが、動物の血流に入るウイルスの減少を意味し、ウイルス血症のレベル、すなわち血清mL当たりのウイルスDNAまたはRNAのコピー数または血清デシリットル当たりのプラーク形成コロニーの数が、組成物を受けておらず、感染し得る動物と比較して少なくとも50%、本発明の組成物を受けた動物の血清中で減少する。より好ましくは、ウイルス血症レベルは、本発明の組成物を受けた動物で、少なくとも90%、好ましくは少なくとも99.9%、より好ましくは少なくとも99.99%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.999%減少する。
【0151】
用語「病原体」は、当業者に周知である。しかしながら、用語「病原体」は、細菌またはウイルスを含む。用語「病原体」は、シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢症ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアのような病原体を含む。
用語「食物産生動物」は、ブタ、ウシ、家禽、魚等、好ましくはブタのようなヒトの消費のために使用される動物を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「ウイルス血症」は、動物、特に哺乳動物、トリ、または昆虫の血流中でウイルス粒子が複製および/または循環する状態として特に理解される。
「安全性」は、ワクチン接種された動物において、ワクチン接種後に、限定はされないが、ウイルスに基づくワクチンの毒性への潜在的な復帰、持続性の全身性疾病またはワクチン投与の部位における許容できない炎症などの臨床的に有意な副作用を含む、有害な結果が存在しないことを指す。
用語「ワクチン接種(vaccination)」または「ワクチン接種すること(vaccinating)」またはその変形は、本明細書で使用する場合、限定はされないが、動物に投与されると、動物における免疫応答を直接または間接的に引き出すまたは引き出すことができる本発明の免疫原性組成物の投与を含むプロセスを意味する。
「死亡率」とは、本発明の文脈では、感染によって引き起こされる死亡を指し、感染が、苦痛を予防し、その生涯に人道的な終わりをもたらすために動物を安楽死させるほど重症である状況を含む。
製剤
組成物を投与する対象は、限定はされないが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、家禽(例えば、ニワトリ)、ヤギ、ネコ、イヌ、ハムスター、マウスおよびラット、を含む動物であることが好ましく、最も好ましくは、哺乳動物はブタである。
【0152】
本発明の製剤は、有効な免疫量の1つまたは複数の免疫原性組成物および生理学的に許容されるビヒクルを含む。ワクチンは、有効な免疫量の1つまたは複数の免疫原性組成物および生理学的に許容されるビヒクルを含む。製剤は投与の形式に適したものであるべきである。
免疫原性組成物は、所望であれば、微量の湿潤剤または乳化剤、またはpH緩衝剤も含有してよい。免疫原性組成物は、液剤、懸濁剤、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル剤、持続放出製剤、または散剤であってよい。経口製剤としては、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準の担体を挙げることができる。
【0153】
処置の方法
投与の好ましい経路としては、限定はされないが、鼻腔内、経口、皮内、および筋肉内が挙げられる。飲料水での投与、最も好ましくは単回用量が望ましい。当業者は、本発明の組成物が、1用量、2用量、またはそれ以上の用量で、ならびに他の投与経路によって投与することもできることを理解するであろう。例えば、そのような他の経路としては、皮下、皮内、腹腔内、皮内が挙げられ、所望の処置の持続時間および効果に応じて、本発明による組成物は、1回または数回、また断続的に、例えば、数日、数週間または数ヵ月にわたって毎日、異なる投与量、例えば、約103~108TCID50(上記のウイルス力価を参照)で投与することができる。本発明の特定の態様では、特に生ウイルス/生ワクチンに関して、投与量は約103~108TCID50である。
組成物は、所望であれば、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス中に存在してよい。このパックは、例えば、ブリスターパックなどの金属またはプラスチックホイルを含んでよい。このパックまたはディスペンサーデバイスには、投与、好ましくは哺乳動物、特にブタに投与するための指示書が添付されていてよい。そのような容器に関しては、医薬品または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態で通知され、その通知は、ヒトへの投与のための製造、使用または販売機関による認可を反映している。
【0154】
抗原定義
用語「ブタインフルエンザウイルス」は、当業者に公知である。用語ブタインフルエンザウイルスは、ブタインフルエンザを引き起こすオルソミクソウイルス科のA型またはC型インフルエンザウイルスを指す。オルソミクソウイルスは3つの群:A型、B型およびC型を有するが、A型およびC型インフルエンザウイルスのみがブタに感染する。好ましくは、ブタインフルエンザウイルスは、A型ブタインフルエンザウイルスである。ブタインフルエンザウイルスの亜型は、H1N1、H1N2、H3N2、およびH3N1を含む。H9N2およびH5N1はブタにも見出され得る。好ましくは、ブタインフルエンザウイルスは、ブタから単離されたインフルエンザウイルスである。
【0155】
用語「HA」または「H」、「NA」または「N」および「NP」は当業者に公知である。しかしながら、一般に、A型インフルエンザウイルスは、多くの可能な組合せをもたらし得る(H1N1、H1N2~H2N1、H2N2~H5N1、H5N2などと名づけられる)、17H(ヘマグルチニン)および10N(ノイラミニダーゼ)亜型に分けられる。H(ヘマグルチニン)およびN(ノイラミニダーゼ)は、SIAVのようなA型インフルエンザウイルスの表面糖タンパク質である。さらに、Nは、中和抗体の主要な抗原性標的である。さらに、NP(ヌクレオタンパク質)はヌクレオカプシドを形成する。
DIVA定義
用語「DIVA(感染動物とワクチン接種を受けた動物の区別)」は、ワクチン接種を受けた動物を自然感染動物と区別するために使用され得るワクチンを指す。
【0156】
用語「試料」は、体液の試料、分離細胞の試料、または組織もしくは臓器由来の試料を指す。体液の試料は、周知の技術により得ることができ、好ましくは血液、血漿、血清または尿の試料、より好ましくは血液、血漿または血清の試料を含む。組織または臓器試料は、任意の組織または臓器から、例えば生検により、得ることができる。分離細胞は、体液または組織もしくは臓器から、遠心分離または細胞選別などの分離技術により得ることができる。
用語「得られた」は、好ましくは沈殿、カラムなどを使用する、当業者に公知の単離および/または精製ステップを含み得る
【0157】
用語「免疫試験」および「ゲノム解析試験」は、本発明に記載の免疫原性組成物でのワクチン接種を受けた動物と、天然に存在する(疾患関連)ブタインフルエンザウイルスで感染した動物とを区別するための根拠となる。免疫試験の例としては、酵素免疫学的または免疫化学的検出法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)、サンドイッチ酵素免疫試験、蛍光抗体試験(FAT)、電気化学発光サンドイッチ免疫測定法(ECLIA)、解離増強ランタニド蛍光免疫測定法(DELFIA)もしくは固相免疫試験、免疫蛍光検査(IFT)、免疫組織学的染色、ウェスタンブロット分析、または当業者が利用可能な任意の他の好適な方法が挙げられる。使用されるアッセイに依存して、抗原または抗体を、酵素、フルオロフォアまたは放射性同位体により標識することができる。例えば、Coligan et al. Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons Inc., New York, N.Y. (1994);およびFrye et al., Oncogen 4: 1153-1157, 1987を参照されたい。
【0158】
用語「ゲノム解析試験」は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、リアルタイムPCR(r-PCR)またはリアルタイム逆転写PCR(rRT-PCR)、Templex-PCR、核酸配列ベース増幅(NASBA)、およびポリメラーゼと特異的オリゴヌクレオチドをプライマーとして使用する等温増幅法に基づく、ゲノム解析方法を指す。前述の増幅方法は、当技術分野において周知である。
【0159】
条項
以下の条項が本明細書に記載される:
本発明は、以下の条項を提供する:
1.(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
(ii)配列番号19ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号26ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、
(iii)配列番号20ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号27ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一のものからなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL44隣接領域と
を含む発現カセット。
2.条項1に記載の発現カセットを含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
3.(i)少なくとも1つの目的の外来性ヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列であって、プロモーター配列に作動可能に連結されている目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列と、
(ii)配列番号19ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号26ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、
(iii)配列番号20ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列、配列番号27ならびにその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの上流UL44隣接領域と
を含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
4.UL43に挿入された、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列を含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
5.UL43に挿入された、目的の第1のヌクレオチド配列または遺伝子、好ましくは抗原コード配列と、第2の挿入部位、好ましくはUL56またはUS4に挿入された、目的の第2のヌクレオチド配列または遺伝子、好ましくは別の抗原コード配列とを含むウマアルファヘルペスウイルス(EHV)ベクター。
【0160】
6.UL43への挿入が、UL43における部分欠損、トランケーション、置換、改変などによって特徴づけられ、UL44が機能性を維持する、条項2~5のいずれか1項に記載のEHVベクター。
7.UL43への挿入が、RacHのUL43内のおよそ870bp部分(配列番号21)またはその70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/もしくは同一配列の欠損によって特徴づけられる、条項2~6のいずれか1項に記載のEHVベクター。
8.配列番号19、配列番号20、配列番号26、配列番号27ならびにこれらの配列のいずれか1つの70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%相同および/または同一配列からなる群から選択される、少なくとも1つの隣接領域を含む、条項2~7のいずれか1項に記載のEHVベクター。
9.(i)配列番号19、配列番号26からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL43隣接領域と、(ii)配列番号20、配列番号27からなる群から選択される少なくとも1つの上流UL44隣接領域とを含む、条項2~8のいずれか1項に記載のEHVベクター。
10.前記目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列が、天然に存在しない、および/または組換えである、条項2~9のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1に記載の発現カセット。
11.前記目的のヌクレオチド配列が、組換えおよび/または異種性および/または外来性である、条項2~10のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10に記載の発現カセット。
12.前記抗原コード配列が、動物、例えば、ブタ、家禽もしくはウシなどの食物生産動物またはネコ、イヌもしくはウマなどの伴侶動物に感染する病原体に関する、条項2~11のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~11のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0161】
13.終結シグナルまたはポリアデニル化配列などの、追加の制御配列をさらに含む、条項2~12のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~12のいずれか1項に記載の発現カセット。
14.UL56および/またはUS4などの別の挿入部位に挿入されていてもよい、少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列をさらに含む、条項2~13のいずれか1項に記載のEHVベクター。
15.少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列が、UL56に挿入されている、条項2~14のいずれか1項に記載のEHVベクター。
16.少なくとも1つのさらなる目的のヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列が、US4に挿入されている、条項2~15のいずれか1項に記載のEHVベクター。
17.目的の第2のさらなるヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列が、US4に挿入されており、目的の第3のさらなるヌクレオチド配列、好ましくは別の目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列が、UL56に挿入されている、条項2~14のいずれか1項に記載のEHVベクター。
18.目的の遺伝子が、制御配列、好ましくはプロモーター配列に作動可能に連結されている、条項2~17のいずれか1項に記載のEHVベクター、または少なくとも2つの目的の遺伝子が、制御配列、好ましくはプロモーター配列に作動可能に連結されている、条項5~17に記載のEHVベクター。
19.1つまたは2つもしくはそれ以上の目的の配列または遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列が、SV40ラージT、HCMVおよびMCMV最初期遺伝子1、ヒト伸長因子アルファプロモーター、バキュロウイスルポリヘドリンプロモーター、4pgG600(配列番号1)の機能的断片、好ましくは、p430(配列番号3)である前記機能的断片、4pgG600(配列番号1)の相補的ヌクレオチド配列の機能的断片、4pMCP600(配列番号2)の機能的断片、好ましくは、p455(配列番号4)である前記機能的断片、4pMCP600(配列番号2)の相補的ヌクレオチド配列の機能的断片、またはp422(配列番号5)もしくはその機能的断片もしくはそれらの相補的ヌクレオチド配列からなる群から選択される、条項2~18のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~13のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0162】
20.少なくとも1つの目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列が、p422(配列番号5)またはその機能的断片またはそれらの相補的ヌクレオチド配列である、条項2~19のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~13もしくは19のいずれか1項に記載の発現カセット。
21.少なくとも2つの目的の遺伝子に作動可能に連結されているプロモーター配列が異なる、条項5~20のいずれか1項に記載のEHVベクター。
22.組換えである、条項2~21のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~13もしくは19~20のいずれか1項に記載の発現カセット。
23.前記目的の配列もしくは外来性ヌクレオチド配列または目的の遺伝子が、抗原コード配列である、条項2~22のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~13もしくは19~20もしくは22のいずれか1項に記載の発現カセット。
24.抗原コード配列が、リスト:シュマレンベルクウイルス、A型インフルエンザウイルス、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス、ブタサーコウイルス、ブタコレラウイルス、アフリカブタコレラウイルス、E型肝炎ウイルス、ウシウイルス性下痢ウイルス、狂犬病ウイルス、ネコモルビリウイルス、破傷風菌、結核菌、アクチノバチルス・プルロニューモニアから選択される病原体由来である、条項2~23のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~13もしくは19~20もしくは22~23のいずれか1項に記載の発現カセット。
【0163】
25.抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列である、条項2~24のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは条項1もしくは10~13もしくは19~20もしくは22~24のいずれか1項に記載の発現カセット。
26.ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、ブタA型インフルエンザウイルス由来である、条項25に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
27.外来性抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ亜型が、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17およびH18からなる群から選択される、条項25または26に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
28.外来性抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、A/swine/Italy/116114/2010(H1N2)、A/swine/Italy/7680/2001(H3N2)、A/swine/Gent/132/2005(H1N1)、A/swine/Italy/4675/2003(H1N2)、A/swine/Italy/259543/2003(H1N2)、A/swine/Denmark/13772-1/2003(H1N1)、A/swine/England/MD0040352R/2009(H1N1)、A/swine/Hungary/13509/2007(H3N2)、A/swine/Italy/13962/95(H3N2)、A/swine/Cotes d’Armor/1121/00(H1N1)、A/Swine/Colorado/1/77、A/Swine/Colorado/23619/99、A/Swine/Cote d’Armor/3633/84、A/Swine/England/195852/92、A/Swine/Finistere/2899/82、A/Swine/Hong Kong/10/98、A/Swine/Hong Kong/9/98、A/Swine/Hong Kong/81/78、A/Swine/Illinois/100084/01、A/Swine/Illinois/100085A/01、A/Swine/Illinois/21587/99、A/Swine/Indiana/1726/88、A/Swine/Indiana/9K035/99、A/Swine/Indiana/P12439/00、A/Swine/Iowa/30、A/Swine/Iowa/15/30、A/Swine/Iowa/533/99、A/Swine/Iowa/569/99、A/Swine/Iowa/3421/90、A/Swine/Iowa/8548-1/98、A/Swine/Iowa/930/01、A/Swine/Iowa/17672/88、A/Swine/Italy/1513-1/98、A/Swine/Italy/1523/98、A/Swine/Korea/CY02/02、A/Swine/Minnesota/55551/00、A/Swine/Minnesota/593/99、A/Swine/Minnesota/9088-2/98、A/Swine/Nebraska/1/92、A/Swine/Nebraska/209/98、A/Swine/Netherlands/12/85、A/Swine/North Carolina/16497/99、A/Swine/North Carolina/35922/98、A/Swine/North Carolina/93523/01、A/Swine/North Carolina/98225/01、A/Swine/Oedenrode/7C/96、A/Swine/Ohio/891/01、A/Swine/Oklahoma/18717/99、A/Swine/Oklahoma/18089/99、A/Swine/Ontario/01911-1/99、A/Swine/Ontario/01911-2/99、A/Swine/Ontario/41848/97、A/Swine/Ontario/97、A/Swine/Quebec/192/81、A/Swine/Quebec/192/91、A/Swine/Quebec/5393/91、A/Swine/Taiwan/7310/70、A/Swine/Tennessee/24/77、A/Swine/Texas/4199-2/98、A/Swine/Wisconsin/125/97、A/Swine/Wisconsin/136/97、A/Swine/Wisconsin/163/97、A/Swine/Wisconsin/164/97、A/Swine/Wisconsin/166/97、A/Swine/Wisconsin/168/97、A/Swine/Wisconsin/235/97、A/Swine/Wisconsin/238/97、A/Swine/Wisconsin/457/985、A/Swine/Wisconsin/458/98、A/Swine/Wisconsin/464/98およびA/Swine/Wisconsin/14094/99からなる株の群から選択される、条項25~27のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
【0164】
29.外来性抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、A/swine/Italy/116114/2010(H1N2)、A/swine/Italy/7680/2001(H3N2)、A/swine/Gent/132/2005(H1N1)およびA/swine/Italy/4675/2003(H1N2)からなる株の群から選択される、条項25~28のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
30.外来性抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ亜型が、H1および/またはH3である、条項25~29のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
31.抗原コード配列が、ヘマグルチニンコード配列であり、ヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、配列番号44、配列番号45、配列番号46および配列番号47に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、最小91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、条項25~30のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
32.NP(核タンパク質)インフルエンザ抗原コード配列もN(ノイラミニダーゼ)インフルエンザ抗原コード配列も含まない、条項25~31のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
【0165】
33.プロモーター配列p422(配列番号5)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列が、配列番号44(H1pdm)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列に作動可能に連結されている、条項25~32のいずれか1項に記載のEHVベクターまたは発現カセット。
34.2つまたはそれ以上のヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列を含む、条項2~33に記載のEHVベクター。
35.さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、配列番号46(H1av)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列である、条項34に記載のEHVベクター。
36.前記さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、UL56に挿入されている、条項35に記載のEHVベクター。
37.条項35に記載のヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、プロモーター配列p430(配列番号3)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、条項35または36に記載のEHV。
38.さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、配列番号45(H3)に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、最小91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列である、条項34~37に記載のEHVベクター。
39.前記さらなるヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、US4に挿入されている、条項38に記載のEHVベクター。
【0166】
40.条項38に記載のヘマグルチニンインフルエンザ抗原コード配列が、プロモーター配列p455(配列番号4)またはその機能的断片もしくは機能的誘導体またはそれらの相補的ヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、条項38または39に記載のEHVベクター。
41.EHV-1、EHV-3、EHV-4、EHV-8およびEHV-9からなる群から選択される、条項2~40のいずれか1項に記載のEHVベクター。
42.EHV-1またはEHV-4である、条項2~41のいずれか1項に記載のEHVベクター。
43.EHV-1、好ましくはRacHである、条項2~42のいずれか1項に記載のEHVベクター。
44.条項2~43に記載のベクターを含むことを特徴とする、哺乳動物宿主細胞。
45.免疫原性組成物またはワクチンを製造するための、条項2~43に記載のベクターまたは条項44に記載の哺乳動物宿主細胞の使用。
46.a.条項2~43に記載のベクター、および/または
b.ウイルス、改変生ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)などのような、条項2~43に記載のベクターにより発現されるポリペプチド
を含み、
c.薬学的または獣医学に許容される担体または賦形剤
を含んでいてもよく、好ましくは前記担体が、経口、皮内、筋肉内または鼻腔内適用に好適である、
免疫原性組成物であって、
好ましくは、感染性ウイルスなどのウイルスを含む免疫原性組成物。
47.a.条項2~43に記載のベクター、および/または
b.改変生ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)などのような、条項2~43に記載のベクターにより発現されるポリペプチド、および
c.薬学的または獣医学に許容される担体または賦形剤
を含み、好ましくは前記担体が、経口、皮内、筋肉内または鼻腔内適用に好適である、
ワクチンまたは医薬組成物であって、
前記ワクチンが、アジュバントをさらに含んでいてもよい、ワクチンまたは医薬組成物。
【0167】
48.条項2~43のいずれか1項に記載の1つまたは複数のEHVベクターを含む、ワクチンまたはDIVAワクチン。
49.感染と関連するまたは感染によって引き起こされる1つまたは複数の臨床徴候の発生率または重症度を低減するための免疫原性組成物またはワクチンを調製する方法であって、
a.条項41に記載の哺乳動物宿主細胞に条項2~43に記載のベクターを感染させるステップ、
b.感染細胞を好適な条件下で培養するステップ、
c.感染細胞培養物を回収するステップ
を含み、
d.ステップc)の回収した感染細胞培養物を精製するステップ、
前記回収した感染細胞培養物を薬学的に許容される担体と混合するステップ
を含んでいてもよい方法。
50.動物に免疫する方法であって、前記動物に前記免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを投与するステップを含む方法で使用するための、条項46~48のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチン。
51.必要とする動物において病原体によって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する方法であって、治療有効量の前記免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを動物に投与するステップを含む方法で使用するための、条項46~48のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチン。
【0168】
52.必要とする動物においてブタインフルエンザウイルスによって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する方法であって、治療有効量の前記免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを動物に投与するステップを含む方法で使用するための、条項46~48のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチン。
53.動物を免疫する方法であって、条項46~48のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンをそのような動物に投与するステップを含む方法。
54.必要とする動物において病原体によって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する方法であって、治療有効量の条項46~48のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを動物に投与するステップを含む方法。
55.必要とする動物においてブタインフルエンザウイルスによって引き起こされる臨床徴候を軽減または防止する方法であって、治療有効量の条項46~48のいずれか1項に記載の免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンを動物に投与するステップを含む方法。
56.動物が、ブタ、子ブタもしくは雌ブタ、家禽、ウシ、ウマ、イヌまたはネコである、条項50~55のいずれか1項に記載の方法または使用。
57.免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンが1回投与される、条項50~56のいずれか1項に記載の方法または使用。
58.免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンが、動物に生後最初の6週間以内、生後最初の2週間以内、生後第1週以内または生後第1日以内に投与される、条項50~57のいずれか1項に記載の方法または使用。
59.免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンが、2回の投与で投与される、条項50~58のいずれか1項に記載の方法または使用。
【0169】
60.免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンが、動物に生後第1週以内に投与され、2回目が生後第2、第3または第4週以内に投与される、条項59に記載の方法または使用。
61.前記免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンが、筋肉内または鼻腔内投与で投与される、条項50~60のいずれか1項に記載の方法または使用。
62.免疫原性組成物、ワクチンまたはDIVAワクチンが、1×104~1×107 TCID50のEHVベクターを含む、条項50~61のいずれか1項に記載の方法または使用。
63.前記方法が、同じ種の免疫されていない対照群の動物と比較して、体重減少の軽減、直腸温度低下、臨床症状軽減、(中和)抗体の誘導増加、またはこれらの組合せからなる群から選択される有効性パラメーターの向上をもたらす、条項50~62のいずれか1項に記載の方法または使用。
64.動物における病原体と関連する疾患に対するワクチンを、動物、好ましくはブタ、家禽もしくはウシなどの食物生産動物またはネコ、イヌもしくはウマなどの伴侶動物に接種するための、および/または動物において病原体と関連するもしくは病原体によって引き起こされる1つもしくは複数の臨床徴候の発生率もしくは重症度を低減するための、キットであって、
a)前記動物にワクチンを投与することができるディスペンサー、および
b)条項46に記載の免疫原性組成物、条項47に記載のワクチン、または条項48に記載のDIVAワクチン
を含み、
c)指示リーフレット
を含んでもよいキット。
65.プロモーター配列が、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列、の発現をもたらす、p422を含むプロモーター配列(配列番号5)またはその相補的ヌクレオチド配列またはその機能的断片またはその機能的断片の相補的ヌクレオチド配列。
【0170】
66.プロモーター配列p422(配列番号5)またはその相補的ヌクレオチド配列またはその機能的断片およびその機能的断片の相補的ヌクレオチド配列を含む発現カセットであって、
プロモーター配列が、目的の配列、好ましくは目的の遺伝子、例えば抗原コード配列、より好ましくは目的の異種および/もしくは外来性配列、目的の遺伝子または目的の抗原コード配列に作動可能に連結されており、
前記プロモーター配列が、目的のヌクレオチド配列、好ましくは目的の遺伝子、より好ましくは抗原コード配列の発現をもたらし、
前記プロモーター配列が、好ましくは異種プロモーター配列、より好ましくは外来性プロモーター配列である、
発現カセット。
67.条項65または66に記載のプロモーター配列または発現カセットを含むベクター。
68.プロモーター配列の機能的断片が、p422の配列(配列番号5)と70%、80%、85%、好ましくは90%、91%、92%、93%、94%、より好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、99.9%の配列同一性および/または相同性を有する、条項65~67のいずれか1項に記載のプロモーターまたは発現カセットまたはベクター。
69.プロモーター配列の前記機能的断片が、100ヌクレオチド、好ましくは125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400ヌクレオチド、最も好ましくは410もしくは420ヌクレオチドの長さを有するか、またはプロモーター配列の機能的断片が、100~422ヌクレオチド、200~422ヌクレオチド、300~422ヌクレオチドもしくは350~422ヌクレオチドの間の長さを有する、条項65~68のいずれか1項に記載のプロモーターまたは発現カセットまたはベクター。
70.ポリアデニル化配列、好ましくは、BGHpA、71pA(配列番号6)または18pA(配列番号7)をさらに含む、条項66~69のいずれか1項に記載の発現カセットまたはベクター。
【0171】
71.終結シグナル、ポリアデニル化シグナル、またはIRESおよび/もしくは2aペプチドのような制御エレメントなどの、1つまたは複数のさらなる制御配列を含む、条項66~70のいずれか1項に記載の発現カセットまたはベクター。
72.組換えおよび/または異種および/または外来性ベクターである、条項67~71のいずれか1項に記載のベクター。
73.ウイルスベクター、好ましくは、ヘルペスウイルス科、例えば、ウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)、ウマアルファヘルペスウイルス4型(EHV-4)、ならびにPrV(仮性狂犬病ウイルス)およびBHV-1(ウシヘルペスウイルス1型)のような他のバリセロウイルス属、アデノウイルス科(AdV)、例えばCAdV(イヌアデノウイルス)、アデノ随伴ウイルス科、バキュロウイルス科、レンチウイルス科、例えばレトロウイルス属、ならびにポックスウイルス科からなる群から選択される、ウイルスベクターである、条項67~72のいずれか1項に記載のベクター。
74.ヘルペスウイルス科のメンバー、好ましくはアルファヘルペスウイルス属のメンバー、より好ましくはバリセロウイルス亜属のメンバーであり、最も好ましくはウマアルファヘルペスウイルス1型(EHV-1)である、条項67~73のいずれか1項に記載のベクター。
【0172】
シーケンス概要:
以下の配列は、本発明において本明細書に詳細に記載され、開示される。
プロモーターおよびポリA配列
(配列番号1)600bp DNA断片4pgG600
(配列番号2)600bp DNA断片4pMCP600:
(配列番号3)詳細には、600bpプロモーターが、4pgGについて430bpにトランケートされた、新たな名称:p430
(配列番号4)および4pMCPについて449bpにトランケートされた、新たな名称:p455
(配列番号5)p422プロモーターの配列
(配列番号6)71pAポリアデニル化配列の配列
(配列番号7)18pAポリアデニル化配列の配列
挿入領域配列
(配列番号8)RacHのUS4(orf70)配列
(配列番号9)Up70隣接領域(417bp)
(配列番号10)Up71隣接領域(431bp)
(配列番号11)127264~127680(隣接領域up orf70)
(配列番号12)128484~128913(隣接領域up orf71)
(配列番号13)Up70隣接領域(283bp)=417bp「クラシカルな」隣接領域の3’の283bpと同一
(配列番号14)Up71隣接領域(144bp)=431bp「クラシカルな」隣接領域の5’の144bpと同一
(配列番号15)wt ab4株のUS4(orf70)nt127681~128916の配列
(配列番号16)野生型ab4(Genbank受入番号AY665713.1)ゲノム配列のorf70(US4)の欠損部分:nt127681~128482
(配列番号17)RacHゲノム配列のorf70(US4)の欠損部分(完全ゲノム配列が不明であるためnt番号入手不可能)
(配列番号18)RacHのUL43の配列
(配列番号19)上流組換え領域Up UL43の配列
【0173】
(配列番号20)下流組換え領域UP UL44の配列
(配列番号21)RacHのUL43の欠損部分の配列
(配列番号22)RacHのUL43の保持3’末端の配列
(配列番号23)wt EHV-1 V592のUL43の配列(逆相補的nt23021~24226)
(配列番号24)wt EHV-1 V592のUL43の欠損部分(870bp)(逆相補的nt23353~24226)
(配列番号25)wt EHV-1 V592のUL43リーディングフレームの保持部分(逆相補的nt23021~23354)
(配列番号26)wt EHV-1 V592の対応する上流組換え領域Up UL43の配列(逆相補的nt24227~24452)
(配列番号27)wt EHV-1 V592の対応する下流組換え領域Up UL44の配列(逆相補的nt23049~23354)
プラスミド配列
(配列番号28)トランスファーベクターpU70-p455-71K71のヌクレオチド配列
(配列番号29)トランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71のヌクレオチド配列
(配列番号30)トランスファーベクターpU-1-3-p430-BGHKBGHのヌクレオチド配列
(配列番号31)トランスファープラスミドpU1-3-p430-H1av-BGHKBGHのヌクレオチド配列
(配列番号32)トランスファープラスミドpU70-p455-H1pdm-71K71のヌクレオチド配列
(配列番号33)トランスファープラスミドpU1-3-p430-H1hu-BGHKBGHのヌクレオチド配列
(配列番号34)トランスファーベクターpUUL43-p422-18K18のヌクレオチド配列
(配列番号35)トランスファープラスミドpUUL43-p422-mC-18K18のヌクレオチド配列
(配列番号36)トランスファープラスミドpUUL43-p422-H1pdm-18K18のヌクレオチド配列
(配列番号37)トランスファープラスミドpUmC70のヌクレオチド配列
プライマー配列
orf70/US4挿入領域について
(配列番号38)フォワードプライマーAGGCTCGTGCGCGGATACATCG
(配列番号39)リバースプライマーTTCGGGGCTGTTAGACTCCTCC
orf1/3/UL56挿入領域について
(配列番号40)フォワードプライマーCCAACTCGCCGCCATGAGACCC
(配列番号41)リバースプライマーAGCGCGCCCCGTACCCAGTGGG
UL43挿入領域について
(配列番号42)フォワードプライマーCGACGCGCGTCGGAGG
(配列番号43)リバースプライマーGTTATAAACATACCATGCACC
A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンのアミノ酸配列
(配列番号44)ヘマグルチニン[A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/116114/2010(H1N2))];GenBank:ADR01746.1 H1pdm
(配列番号45)ヘマグルチニン[A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2))];GenBank:ABS50302.2 H3
(配列番号46)ヘマグルチニン[A型インフルエンザウイルス(A/swine/Gent/132/2005(H1N1))];GenBank:AFR76623.1 H1av
(配列番号47)ヘマグルチニン[A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/4675/2003(H1N2))];GenBank:ADK98476.1* H1hu
【0174】
以下の図面は本明細書の一部を形成し、本発明の特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を本明細書で提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによってよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【
図1】野生型(wt)EHV-1 ab4株のUL56(orf1/3)領域と弱毒化ワクチン株EHV-1 RacHのUL56(orf1/3)領域とを比較する概略図である。orf1、orf2、orf3=EHV-1ゲノムの最初の3つのオープンリーディングフレーム;orf1は、UL56と名づけられた他のアルファヘルペスウイルス属のホモログを有するFlank A、Flank B=orf1/3(UL56)部位への導入遺伝子発現カセットの挿入のための組換え領域(先行技術)
【
図2】US4(orf70)挿入部位の略図である。UL=長いユニーク断片 US=短いユニーク断片IR=内部逆方向反復TR=末端逆方向反復gG=糖タンパク質GpA=コード配列の終端のポリアデニル化配列gpII=糖タンパク質IIorf=オープンリーディングフレームorf69、orf70、orf71=US3、US4、US5(orf70/US4挿入部位に適しているオープンリーディングフレーム)Δorf1/3=orf1/3(UL56)挿入部位(先行技術)bp=塩基対
【
図3】トランスファープラスミドpU-p455-H3-71K71のプラスミドマップを示す図である。H3=A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンH3をコードするオープンリーディングフレーム71pA=発明開示EM P2016-022に記載の新しいポリA配列I-SceI=制限エンドヌクレアーゼI-SceIの切断部位プロモーターaph=原核生物カナマイシン耐性遺伝子プロモーターKana=カナマイシン(Kanamycine)耐性遺伝子3’末端ORF70=挿入部位の下流の組換え領域ORI=プラスミドの複製起点AP
r=プラスミドのアンピシリン耐性(resistence)遺伝子上流orf70=挿入部位の上流の組換え領域p455=新しいプロモーターp455bp=塩基対
【
図4】トランスファーベクターpU1-3-p430-H1av-BGHKBGHのプラスミドマップを示す図である。H1av=A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンH1avをコードするオープンリーディングフレームBGHpA=ウシ成長ホルモン遺伝子のポリA配列I-SceI=制限エンドヌクレアーゼI-SceIの切断部位プロモーターaph=原核生物カナマイシン耐性遺伝子プロモーターKana=カナマイシン耐性遺伝子Flank A=挿入部位の上流の組換え領域ORI=プラスミドの複製起点AP
r=プラスミドのアンピシリン耐性遺伝子Flank B=挿入部位の下流の組換え領域p430=新しいプロモーターp430bp=塩基対
【
図5】US4(orf70)挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3のゲノムの概略図である。orf69/US3:orf70(US4)の挿入部位の上流のオープンリーディングフレーム番号69(US3)p455:本明細書に記載の新しいプロモーターH3:導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニン71pA:新しいポリアデニル化配列Δorf70(US4):構造ウイルス糖タンパク質II(gpII)をコードする、orf71(US5)のプロモーターを含有するorf70(US4)の残りの部分bp=塩基対
【
図6】UL56(orf1/3)挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1avのゲノムの概略図である。p430:本明細書に記載の新しいプロモーターH1av:導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニンBGHpA:ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列Δorf1/UL56:orf1(UL56)の残りの部分Orf3:EHV-1オープンリーディングフレームorf3(他のアルファヘルペスウイルス科のホモログなし)bp=塩基対
【
図7】2つの挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1av-70-p455-H3(rEHV-1-RacH-SE B)のゲノムの概略図である。p430:本明細書に記載の新しいプロモーターH1av:導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニンBGHpA:ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列Δorf1/UL56:orf1(UL56)の残りの部分Orf3:EHV-1オープンリーディングフレームorf3(他のアルファヘルペスウイルス科のホモログなし)orf69/US3:orf70(US4)の挿入部位の上流のオープンリーディングフレーム番号69(US3)p455:本明細書に記載の新しいプロモーターH3:導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニン71pA:新しいポリアデニル化配列Δorf70(US4):構造ウイルス糖タンパク質II(gpII)をコードする、orf71(US5)のプロモーターを含有するorf70(US4)の残りの部分bp=塩基対
【
図8】トランスファープラスミドpU1/3-p430-H1hu-BGHKBGHのプラスミドマップを示す図である。p430=新しいプロモーターp430H1hu=A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンH1huをコードするオープンリーディングフレームBGHpA=ウシ成長ホルモン遺伝子のポリA配列I-SceI=制限エンドヌクレアーゼI-SceIの切断部位プロモーターaph=原核生物カナマイシン耐性遺伝子プロモーターKana=カナマイシン耐性遺伝子Flank A=挿入部位の上流の組換え領域ORI=プラスミドの複製起点Flank B=挿入部位の下流の組換え領域I-Ceu=RED組換えのための断片の放出のためのホーミングエンドヌクレアーゼbp=塩基対
【
図9】トランスファープラスミドpU70-p455-H1pdm-71K71のプラスミドマップを示す図である。上流orf70=挿入部位の上流の組換え配列p455=本明細書に記載の新しいプロモーターH1pdm=導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニンH1pdm71pA=新しいポリアデニル化配列3’末端orf70=挿入部位の下流の組換え配列プロモーターaph=原核生物カナマイシン耐性遺伝子プロモーターKana=カナマイシン耐性遺伝子bp=塩基対ScaI、EcoRI、SalI、NotI、KpnI、BamHI、XbaI=制限エンドヌクレアーゼ切断部位
【
図10】US4(orf70)挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H1pdmのゲノムの概略図である。orf69/US3=orf70(US4)の挿入部位の上流のオープンリーディングフレーム番号69(US3)p455=本明細書に記載の新しいプロモーターH1pdm=導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニン H1pdm71pA=新しいポリアデニル化配列Δorf70(US4):構造ウイルス糖タンパク質II(gpII)をコードする、orf71(US5)のプロモーターを含有するorf70(US4)の残りの部分bp=塩基対
【
図11】UL56(orf1/3)挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1huのゲノムの概略図である。p430=本明細書に記載の新しいプロモーターH1hu=導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニンH1huBGHpA=ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列Δorf1/UL56=orf1(UL56)の残りの部分Orf3=EHV-1オープンリーディングフレームorf3(他のアルファヘルペスウイルス科のホモログなし)bp=塩基対
【
図12】挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1hu-70-p455-H1pdm(ウイルスD)のゲノムの概略図である。p430=本明細書に記載の新しいプロモーターH1hu=導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニンH1huBGHpA=ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列Δorf1/UL56=orf1(UL56)の残りの部分Orf3=EHV-1オープンリーディングフレームorf3(他のアルファヘルペスウイルス科のホモログなし)orf69/US3=orf70(US4)の挿入部位の上流のオープンリーディングフレーム番号69(US3)p455=本明細書に記載の新しいプロモーターH1pdm=導入遺伝子インフルエンザウイルスヘマグルチニン H1pdm71pA=新しいポリアデニル化配列Δorf70(US4)=構造ウイルス糖タンパク質II(gpII)をコードする、orf71(US5)のプロモーターを含有するorf70(US4)の残りの部分bp=塩基対
【
図13】新しい導入遺伝子挿入部位UL43の構築の概略図である。UL44、UL43、UL42:挿入領域内のオープンリーディングフレーム18pA:新しいポリアデニル化部位422プロモーター:新しいp422プロモーターbp:塩基対
【
図14】トランスファープラスミドpUUL43-422-mC-18K18のプラスミドマップを示す図である。UpUL43=挿入部位の上流に隣接するウイルスゲノムDNA配列UpUL44=挿入部位の下流に隣接するウイルスゲノムDNA配列422プロモーター=導入遺伝子の発現を駆動するプロモーターmC=導入遺伝子(自己蛍光タンパク質mCherry)18pA=新しいポリアデニル化配列I-Sce1=I-Sce1の切断部位プロモーターaph=カナマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターKana=カナマイシン耐性orfP(BLA)=アンピシリン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターAP(R)=アンピシリン耐性遺伝子ORI=プラスミド複製起点P(LAC)=ベータガラクトシダーゼをコードするlacZの原核生物プロモーターI-Ceu=ホーミングエンドヌクレアーゼ(endocuclease)I-Ceuの認識部位
【
図15】UL43挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-UL43-422-mCのゲノムの概略図である。UL=EHVゲノムの長いユニーク断片US=EHVゲノムの短いユニーク断片IRSおよびTRS=短いユニーク断片を挟む(framing)内部および末端反復領域UL44、UL43、UL42=挿入領域内のオープンリーディングフレームΔUL43=UL43の残りの部分18pA=新しいポリアデニル化部位p422=新しいp422プロモーターbp=塩基対
【
図16】トランスファープラスミドpUUL43-422-H1pdm-18K18のプラスミドマップを示す図である。UpUL43=挿入部位の上流に隣接するウイルスゲノムDNA配列UpUL44=挿入部位の下流に隣接するウイルスゲノムDNA配列422プロモーター=導入遺伝子の発現を駆動するプロモーターH1pdm=導入遺伝子(A型インフルエンザヘマグルチニンH1pdm)18pA=新しいポリアデニル化配列I-Sce1=I-Sce1の切断部位プロモーターaph=カナマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターKana=カナマイシン耐性orfP(BLA)=アンピシリン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターAP(R)=アンピシリン耐性遺伝子ORI=プラスミド複製起点P(LAC)=ベータガラクトシダーゼをコードするlacZの原核生物プロモーターI-Ceu=ホーミングエンドヌクレアーゼI-Ceuの認識部位
【
図17】UL43挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-UL43-422-H1pdmのゲノムの概略図である。UL=EHVゲノムの長いユニーク断片US=EHVゲノムの短いユニーク断片IRSおよびTRS=短いユニーク断片を挟む内部および末端反復領域UL44、UL43、UL42=挿入領域内のオープンリーディングフレームΔUL43=UL43の残りの部分18pA=新しいポリアデニル化部位H1pdm=導入遺伝子(A型インフルエンザヘマグルチニンH1pdm)p422=新しいp422プロモーターbp=塩基対
【
図18】挿入領域を拡大したrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1av-UL43-422-H1pdm-70-p455-H3のゲノムの概略図である。Δorf1/UL56:発現カセットの境界部のUL56の残りの部分p430:新しいプロモーターp430BGHpA:ウシ成長ホルモンポリアデニル化部位H1av、H3、H1pdm:導入遺伝子(A型インフルエンザヘマグルチニン)Δorf70/US4:発現カセットの境界部のUS4の残りの部分orf69(US3)およびorf71(US5):US4挿入領域内のオープンリーディングフレーム71pA:新しいポリアデニル化配列UL44、UL43、UL42:UL43挿入領域内のオープンリーディングフレーム18pA:新しいポリアデニル化部位p422:新しいp422プロモーターbp:塩基対
【
図19】ウェスタンブロットを示す図である。4つの異なる抗体とともにインキュベートした4反復ブロットa:インフルエンザHA H1avに対する自社モノクローナル抗体とともにインキュベートしたブロットb:インフルエンザHA H3に特異的な市販のウサギ抗血清とともにインキュベートしたブロットc:インフルエンザHA H1pdmに対する自社モノクローナル抗体とともにインキュベートしたブロットd:EHV-1 gpIIに対する自社モノクローナル抗体とともにインキュベートしたブロット
【
図20】マウス血清のA型インフルエンザウイルス中和試験の結果を示す図である。ウイルス中和試験を、入手可能な量のマウス血清に依存して2回反復または3回反復で行った。中和価を100 TCID50にノーマライズし、中和能力の逆数として示した。
*エラーバーは標準偏差を示す。
【
図21】トランスファープラスミドpUmC70のプラスミドマップを示す図である。3’末端orf69=トランスファーベクターに含有されているorf69(US3)の部分up70=挿入部位の上流の組換え配列mCherry=導入遺伝子(自己蛍光タンパク質mCherry)BGHpA=ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列up71=挿入部位の下流の組換え配列3’末端orf70=挿入物の下流のorf70(US4)の残りの部分bp=塩基対ScaI、EcoRI、SalI、NotI、KpnI、BamHI、XbaI=制限エンドヌクレアーゼ切断部位
【
図22】トランスファーベクターpU70-p455-71K71のプラスミドマップを示す図である。Up70=挿入部位の上流に隣接するウイルスゲノムDNA配列Up71=挿入部位の下流に隣接するウイルスゲノムDNA配列4pMCP455=導入遺伝子の発現を駆動するプロモーターEHV-4orf71pApA=新しいポリアデニル化配列71pAI-Sce1=I-Sce1の切断部位プロモーターaph=カナマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターKana=カナマイシン耐性orfP(BLA)=アンピシリン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターAP(R)=アンピシリン耐性遺伝子ORI=プラスミド複製起点P(LAC)=ベータガラクトシダーゼをコードするlacZの原核生物プロモーターI-Ceu=ホーミングエンドヌクレアーゼI-Ceuの認識部位KpnI、NotI、XbaI=制限エンドヌクレアーゼ切断部位bp=塩基対
【
図23】トランスファーベクターpU1/3-p430-BGHKBGHのプラスミドマップを示す図である。Flank A=挿入部位の上流に隣接するウイルスゲノムDNA配列Flank B=挿入部位の下流に隣接するウイルスゲノムDNA配列4pgG430=導入遺伝子の発現を駆動するプロモーターBGHpA=ウシ成長ホルモン遺伝子のポリアデニル化配列I-Sce1=I-Sce1の切断部位プロモーターaph=カナマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターKana=カナマイシン耐性orfI-Ceu=ホーミングエンドヌクレアーゼI-Ceuの認識部位KpnI、NotI=制限エンドヌクレアーゼ切断部位bp=塩基対
【
図24】トランスファープラスミドpUUL43-422-H1pdm-18K18のプラスミドマップを示す図である。UpUL43=挿入部位の上流に隣接するウイルスゲノムDNA配列UpUL44=挿入部位の下流に隣接するウイルスゲノムDNA配列p422=導入遺伝子の発現を駆動するプロモーター18pA=新しいポリアデニル化配列I-Sce1=I-Sce1の切断部位プロモーターaph=カナマイシン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターKana=カナマイシン耐性orfP(BLA)=アンピシリン耐性遺伝子の発現を駆動する原核生物プロモーターAP(R)=アンピシリン耐性遺伝子ORI=プラスミド複製起点P(LAC)=ベータガラクトシダーゼをコードするlacZの原核生物プロモーターI-Ceu=ホーミングエンドヌクレアーゼI-Ceuの認識部位bp=塩基対
【0176】
【実施例】
【0177】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。以下の実施例に開示されている技法は本発明の実施において十分に機能することを本発明者らが発見した代表的な技法であり、したがって、それを実施するための好ましい方式を構成するとみなすことができることが当業者には理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、開示されている特定の実施形態に多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果が得られることを理解するべきである。
【0178】
(実施例1)
新しい挿入部位ORF70/US4の確立
EHV-1ベクターの能力を増強するために、本発明者らは、1つのプロモーターの調節下でRNAウイルス由来の機能によって2つの導入遺伝子を結合するのではなく1つのベクター骨格から2つの異なる導入遺伝子を発現する方法を見つけようとした。本発明者らは、ヘルペスウイルスゲノムが、2つの独立した導入遺伝子挿入部位を並行して使用することを許容するであろうと仮定した。EHV-1 ORF70/US4が好適な導入遺伝子挿入部位であるかどうかを判定するために、orf70/US4(1236bp)の5’末端の801塩基対を、自己蛍光mCherryタンパク質(Shaner et al. 2004)をコードする発現カセットに、古典的相同組換えによって置き換えた。プラスミドpU-mC70-BGHのマップは、
図21にある(配列番号37)。相同組換えに使用したDNA断片をpU-mC70-BGHからXbaIで切り出した。ゲル精製した断片をEHV-1 RacHのウイルスゲノムDNAとともにRK13細胞にコトランスフェクトした。組換えベクターウイルスの効率的レスキューおよび培養細胞における効率的複製を、ライブ蛍光およびウイルス滴定により証明した(図示なし)。orf70/US4の3分の2の欠損には、orf70/US4によりコードされる糖タンパク質Gの発現を消失させるという追加の恩恵があった。EHV-1の糖タンパク質Gは、宿主の免疫応答を弱める非構造性分泌ケモカイン結合タンパク質であることが分かっていた(Drummer et al., 1998; Bryant et al., 2003)。ベクターワクチンは、ワクチン接種者の免疫応答を刺激することを意図したものであるので、ウイルスベクターのこの特定の免疫抑制機能の除去は、ウイルスベクタープラットフォームEHV-1 RacH-SEの性能をさらに向上させる可能性がある。
【0179】
(実施例2)
組換えEHV-1ベクターワクチンにおけるp455プロモーターを有する新しいORF70/US4挿入部位の使用および組換えウイルスの構築
p455プロモーター:
第1の動物実験には、ブタ由来A型インフルエンザウイルスからのインフルエンザヘマグルチニンH3亜型(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2)、GenBank受入番号ABS50302.2)を使用した。そのコード配列を合成し、トランスファーベクターpU70-p455-71K71(配列番号28)にサブクローニングし、それによって、H3を新しいp455プロモーターおよび新しい71pAポリアデニル化シグナルの調節下に置き、orf70への挿入のための組換え領域でカセットを挟む、トランスファープラスミドpU70-p455-H3-71K71を生成した(
図3、配列番号29)。
RED組換えシステム(Tischer et al. 2006)を使用するen-passant変異誘発により、発現カセットp455-H3-71をpRacH-SEのorf70/US4に挿入してpRacH-SE70-p455-H3を生成した。
【0180】
PK/WRL細胞にpRacH-SE70-p455-H3をトランスフェクトし、組換えウイルスrEHV-1 RacH-SE70-p455-H3(
図5)をレスキューし、2回、プラーク精製した。発現カセットの正しい挿入を、挿入領域の高忠実度PCR産物のシーケンシングにより検証した。感染細胞における導入遺伝子の発現を間接免疫蛍光アッセイにより分析した。
【0181】
EHV-1 gpIIをコードするorf71の回復を、IFA(図示なし)によりおよびモノクローナル抗体Ai2G7(BI社所有のもの)を使用するウェスタンブロット(
図19)により確認した。感染細胞の原形質膜上のH3の三量体の出現を、ニワトリ赤血球を使用する赤血球吸着試験によりアッセイした(図示なし)。PK/WRL細胞においてTCID
50/mlとして決定したピーク力価は、親ウイルスrEHV-1 RacH-SEの力価と同じ範囲内であり、これは、導入遺伝子発現がウイルス複製に悪影響を及ぼさなかったことを示す(図示なし)。このことを、レスキュー後にPK/WRL細胞のrEHV-1 RacH-SE70-p455-H3を第20継代(P20)まで継代させることにより確認した。P5、P10、P15およびP20で、ウイルスを滴定、シーケンシングおよびウェスタンブロットにより特徴づけ、P10およびP20でさらにIFAにより特徴づけ、HA発現ならびにプロモーターおよびポリA配列とともにHAコード挿入物の遺伝的安定性を確認した。
モノクローナル抗H3抗体およびウマ抗EHV抗血清を使用するP20で感染させた細胞におけるウイルスプラークの二重免疫蛍光アッセイ(dIFA)により、事実上、全てのEHV-1誘導プラークがH3も発現することを確認した(図示なし)。全ての試験で組換えEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3の安定性が認められた。
【0182】
(実施例3)
組換えEHV-1ベクターワクチンにおける新しいp430プロモーターの使用および組換えウイルスの構築
p430プロモーター:
新たに同定したp430プロモーターを使用して、H1N1ウイルス(A/swine/Gent/132/2005(H1N1)、GenBank受入番号AFR76623.1)から別のインフルエンザヘマグルチニンの発現を駆動した。このウイルス分離株のヘマグルチニン遺伝子はトリIAVが起源であるので、それをH1avと呼ぶことにする。H1avを合成し、orf1/3/UL56挿入領域のトランスファーベクターpU1/3-p430-BGHKBGH(配列番号30)にサブクローニングして、pU1/3-p430-H1av-BGH_K_BGH(
図4、配列番号31)を生成した。H1avの発現を、p430プロモーターおよびウシ成長ホルモン(BGH)ポリAシグナルの調節下に置いた。
RED組換えシステム(Tischer et al. 2006)を使用するen-passant変異誘発により、発現カセットp430-H1av-BGHをpRacH-SEのorf1/3/UL56に挿入してpRacH-SE1/3-p430-H1avを生成した。
【0183】
PK/WRL細胞にpRacH-SE1/3-p430-H1avをトランスフェクトし、組換えウイルスrEHV-1 RacH-SE1/3-p430-H1av(
図6)をレスキューし、2回、プラーク精製した。発現カセットの正しい挿入を、挿入領域の高忠実度PCR産物のシーケンシングにより検証した。感染細胞における導入遺伝子の発現を、間接免疫蛍光アッセイ(IFA)によりならびにモノクローナルおよびポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロット(
図19)により分析した。抗体PA-34929による75kDaで泳動する広いバンドの特異的検出は、組換えHA糖タンパク質のその配列から予測して予想された出現と一致する。
【0184】
EHV-1 gpIIをコードするorf71/US5の回復を、IFAによりならびにモノクローナル抗体Ai2G7(BI社所有のもの)を使用するウェスタンブロット(
図19)により確認した。PK/WRL細胞におけるTCID50/mlとして決定したピーク力価は、親ウイルスRacH-SEの力価と同じ範囲内であり、これは、導入遺伝子発現がウイルス複製に悪影響を及ぼさなかったことを示す(図示なし)。
【0185】
発現された組換えヘマグルチニンが予想どおりにプロセシングされ、輸送されるかどうかを試験するために、VERO細胞にrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1av、rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3、rEHV-1 RacH-SE(親)を0.01のm.o.i.で感染させたかまたはVERO細胞を未感染のままにしておいた。感染後24時間、感染および未感染生細胞をPBS中のニワトリ赤血球の懸濁液とともにインキュベートし、PBSで洗浄し、蛍光Hoechst 33342核染色剤で染色した。トリの赤血球は細胞核を含有するので、それらをHoechst 33342で染色することができ、それらは、蛍光顕微鏡観察によってごく小さな青色の点のように見える。ヘマグルチニンを発現しないrEHV-1 RacH-SEを感染させた細胞と比較して、ニワトリ赤血球の吸着は、rEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1avまたはrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3のどちらかを感染させた細胞上で有意に増加した(図示なし)。このことから、ヘマグルチニンが、本物のインフルエンザウイルス感染により産生された場合と同様に、翻訳され、プロセシングされ、ベクターウイルス感染細胞の原形質膜に輸送されたと、結論づけることができる。
感染細胞の赤血球吸着のこの明確な表現型により、トランスジェニックタンパク質の効率的発現を示し、EHV-1ベクター感染細胞の細胞表面での機能的HA三量体の形成を示唆する、ウェスタンブロットおよび免疫蛍光アッセイによる知見が裏づけられる。
【0186】
(実施例4)
組換えEHV-1ベクターワクチンにおける新しいORF70挿入部位およびORF1/3(UL56)挿入部位の並行した使用
2つの新しいプロモーターを並行して使用することができることを明らかにするために、2つの異なるA型インフルエンザウイルス亜型の2つの異なるヘマグルチニンを発現する組換えEHV-1 RacHを生成した。
H3に対する市販のポリクローナル抗体(PA5-34930)とH1avおよびH1pdmに対する自社モノクローナル抗体についての特異性ならびにこれらの交差反応性の欠如は、
図19に示されているように感染細胞のウェスタンブロットから明らかである。同一の試料を、4つの異なる抗体とのインキュベーション前に、4反復SDS-PAGEで泳動させてナイロン膜に転写した。
【0187】
A型インフルエンザウイルス(A/swine/Gent/132/2005(H1N1))のヘマグルチニンをコードするオープンリーディングフレームを合成し、トランスファーベクターpU1-3-p430-BGHKBGH(配列番号30)にクローニングし、その結果、pU1-3-p430-H1av-BGHKBGH(
図4、配列番号31)を得た。組換えBAC pRacH-SE-70-p455-H3で始めて、pU1/3-p430-H1av-BGHKBGH(
図4、配列番号31)内に組み立てた発現カセットp430-H1av-BGHを、2ステップRED組換えによりorf1/3/UL56挿入部位に挿入して、pRacH-SE-1/3-p430-H1av-70-p455-H3を生成した。PK/WRL細胞にpRacH-SE1/3-p430-H1av-70-p455-H3をトランスフェクトし、組換えウイルスrEHV-1 RacH-SE1/3-p430-H1av-70-p455-H3(
図7)をレスキューし、2回、プラーク精製した。
【0188】
この組換えウイルスの略称は、rEHV-1 RacH-SE_Bである。発現カセットの正しい挿入を、隣接配列とともに挿入領域の高忠実度PCR産物をシーケンシングすることにより検証した。感染細胞における導入遺伝子の発現を、間接免疫蛍光アッセイ(IFA、図示なし)によりならびにモノクローナルおよびポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロット(
図19)により分析した。EHV-1 gpIIをコードするorf71/US5の回復を、IFA(図示なし)によりおよびモノクローナル抗体Ai2G7(BI社所有のもの)を使用するウェスタンブロット(
図19)により確認した。
図19に示されているように、導入遺伝子H3とH1avの両方が、二重挿入組換えrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1av-70-p455-H3(B)で感染させた細胞培養物において並行して発現された。導入遺伝子発現は、安定しており、AI-ST A1細胞(BI社の自社ブタ精巣細胞株、表3)において第11継代まで試験してウイルス力価を損なわせなかった。
【0189】
2つの新しいプロモーターp430およびp455は、細胞培養でのrEHV1-RacH-SE複製という状況下で機能性であることが分かった。個々の導入遺伝子に特異的なウェスタンブロットにおけるシグナルの同等の強度から推論して、ウイルス複製サイクル中の活性レベルは、非常に類似しているように見える。これらの特性が、EHV-1 RacHに基づく組換えベクターワクチンの作出、または2つの異なる抗原を並行して同様の効率で発現する他のベクタープラットフォームの作出を可能にする。ワクチンの標的が2つの異なる病原体からなる場合、2つのポリアデニル化配列と組み合わせた2つの挿入部位における2つの新しいプロモーターの利用は、1つだけの抗原成分を発現するベクターに比べて、商品原価を有意に削減することができ、明らかな利点となる。
【0190】
(実施例5)
二価EHV-1ベクターを利用したA型インフルエンザウイルスワクチンの生成、in vitro特徴づけおよびin vivo試験
下で説明するように、本明細書に記載の本発明では、H3N2およびH1N1血清亜型/血清型トリブタIAVに由来する上記4つのブタIAVヘマグルチニン(HA)抗原のうちの2つが1つの組換えEHV-1ベクターウイルスにより発現される。ブタIAVに対するこの新しい二価ワクチンは、例えば、本明細書に記載のワクチンでのワクチン接種のみを受けた動物はブタIAV HAタンパク質しか発現しないのでこれらの動物ではブタIAVタンパク質NPまたはNAに対する抗体が検出されず、しかし、ブタIAV野外株によって感染した動物ではブタIAVタンパク質NPまたはNAに対する抗体が検出されることにより、DIVA特徴をもたらす。
新しい二価ブタIAVワクチンをin vitroで特徴づけ、マウスにおいてA型インフルエンザウイルス中和抗体を誘導するその能力についてin vivoで試験した。
【0191】
発現された組換えヘマグルチニンが予想どおりにプロセシングされ、輸送されるかどうかを試験するために、VERO細胞にrEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1av、rEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3、rEHV-1 RacH-SE(親)を0.01のm.o.i.で感染させたかまたはVERO細胞を未感染のまま放置した。感染後24時間、感染および未感染生細胞をPBS中のニワトリ赤血球の懸濁液とともにインキュベートし、PBSで洗浄し、蛍光Hoechst 33342核染色剤で染色した。トリの赤血球は細胞核を含有するので、それらをHoechst 33342で染色することができ、それらは、蛍光顕微鏡観察によってごく小さな青色の点のように見え、ヘマグルチニンを発現しないrEHV-1 RacH-SEを感染させた細胞と比較して、ニワトリ赤血球の吸着は、rEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1avまたはrEHV-1 RacH-SE-70-p455-H3のどちらかを感染させた細胞上で有意に増加した(図示なし)。このことから、ヘマグルチニンが、本物のインフルエンザウイルス複製により産生された場合と同様に、翻訳され、プロセシングされ、ベクターウイルス感染細胞の原形質膜に輸送されたと、結論づけることができる。感染細胞の赤血球吸着のこの表現型により、トランスジェニックタンパク質の効率的発現を示し、EHV-1ベクター感染細胞の細胞表面での機能的HA三量体の形成を示唆する、ウェスタンブロット(
図19)および免疫蛍光アッセイ(図示なし)による知見が裏づけられる。
【0192】
2つの挿入部位と2つの新しいプロモーターとを有する増強されたEHV-1ベクターは、2つのインフルエンザウイルスヘマグルチニンを並行して発現することが分かった。IFAにより判定したときの細胞内局在化およびウェスタンブロット(
図19)により判定したときのSDS-PAGEでの移動度は、文献から公知のA型インフルエンザウイルス感染細胞において発現される本物の未切断ヘマグルチニンに対応した。
組換えrEHV-1の遺伝的安定性および表現型安定性を、細胞培養で継代させることにより、5継代ごとにウイルス力価を判定して証明した。挿入領域の配列を10継代ごとに確認し、ウェスタンブロットにより導入遺伝子発現も確認した(図示なし)。発現の忠実度は、メトセル-オーバーレイ下のプラークの二重IFAにより、抗EHV抗体および導入遺伝子特異的抗体で染色したプラークをカウントして評価した。
【0193】
(実施例6)
二価rEHV-1 RacHベクターワクチンでのワクチン接種を受けたマウスにおける2つの抗原に対する中和抗体応答の誘導
rEHV-1 RacH SE B(rEHV-1 RacH-SE-1/3-p430-H1av-70-p455-H3、
図7参照)をBalb/cマウスの免疫化に使用して、発現された導入遺伝子がブタ以外の別の種において免疫原性であること、および鼻腔内適用により中和抗体が2つの抗原のいずれに対しても誘導されることを実証した。
【0194】
詳細には、1群当たり5匹の3~5週齢Balb/cマウスの3群に、研究0日目および21日目に、40μlのrEHV-1 RacH SE B(rEHV-1 RacH-SE-1/3-430-H1av-7-455-H3、第1群)、または40μlの空のベクター(rEHV-1 RacH-SE、第2群、ベクター対照)、または40μlの組織培養培地(第3群陰性対照)のいずれかをそれぞれ鼻腔内接種した。第1および2群についての感染性組換えEHV-1投与量は、それぞれ、1×105 TCID50/40μlであった。研究0日目(1回目の接種の前)、7日目、14日目、21日目(2回目の接種の前)、28日目および35日目にマウスから採血した。血清を血液試料から調製し、-80℃で凍結保存した。
【0195】
ベクターウイルスに対する抗体の検出の免疫蛍光アッセイ
空のベクターBAC pRacH-SE1.2からレスキューしたウイルスであるrEHV-1 RacH-SE1212を0.001の感染多重度(MOI)でAI-ST細胞に感染させた。感染後24時間、特有のプラークを観察し、細胞を間接免疫蛍光アッセイ(IFA)用に処理した。PBSで1:50希釈した3群全ての最終採血の血清(2回目のワクチン接種の14日後に得た)を試験した。陽性対照として、EHV-1でのワクチン接種を受けたウマからの血清を1:500希釈物で使用した。二次抗体は、マウス血清については市販のFITC結合ウサギ抗マウスIgGであり、ウマ血清についてはCy5結合ヤギ抗ウマIgGであり、これらの抗体を1:200希釈で使用した。抗体結合を蛍光顕微鏡観察により評価した。ワクチン接種を受けた全てのマウスは、IFAにおいてrEHV-1 RacH-SE感染細胞と反応する抗体を生じさせた。未感染細胞にはいずれの被験血清も結合しなかった。マウスの陰性対照群からの血清は、感染細胞とも、未感染細胞とも、いかなる特異的結合も示さなかった。データを下記の表に要約する。
【表2】
このことから、マウスの鼻孔へのrEHV-1の接種が感染およびウイルス複製をもたらし、その結果、マウス免疫系が刺激されて抗EHV-1抗体が産生されたと、結論づけることができる。
【0196】
ウイルス中和試験(VNT)
A型インフルエンザウイルス(IAV)(A/swine/Italy/7680/2001(H3N2))または(A/swine/Gent/132/2005(H1N1))のどちらかに由来する発現導入遺伝子に対する防御免疫の誘導を明らかにするために、マウス血清をそれぞれのウイルスに対する中和活性ついて試験した(Allwinn et al. 2010; Trombetta et al. 2014)。中和試験に使用したIAVは、2014年以降のドイツのブタからの分離株、具体的には、A/swine/Germany/AR452/2014(H3N2)およびA/swine/Germany/AR1181/2014(H1N1)であった。これらは、ワクチン標的を得た株とは異種であるので、マウス血清によるこれらのウイルスの一切の中和が、rEHV-1ワクチン接種による防御免疫の広範かつ効率的な誘導を示すことになる。陰性対象血清として、インフルエンザウイルス抗体に対して陰性であることが分かっていたブタからの血清を使用した。
【0197】
A型インフルエンザウイルス中和試験:
ウイルス中和および96ウェルプレートでの逆滴定のためのMDCK細胞を使用前に2日間、37℃/5%CO2でインキュベートした。それぞれのIAVストックH3N2およびH1avN1を氷上で解凍し、ゲンタマイシンと2倍濃度のトリプシンとを含有するMEM(MEM/Genta/2xトリプシン)で希釈した。
試験した血清は、第1群(rEHV-1 RacH SE B)、第2群(空のベクター)、陽性対照(不活性化多価IAVワクチンでのワクチン接種を受けたブタからの血清)、および陰性対照についての最終採血からのものであった。
【0198】
血清を熱不活性化し、2回または3回の独立した試験で、それぞれ、1:16で開始して1:4096まで段階的に1:2希釈した。IAVを、およそ100 TCID50/中和反応に希釈した。中和反応物を2時間、37℃、5%CO2でインキュベートした。使用したウイルスの逆滴定を4回反復で行った。増殖培地を除去し、ゲンタマイシンとトリプシンとを含有する培地でMDCK細胞を洗浄した後、中和反応物または逆滴定のウイルス希釈物を添加した。中和反応物またはウイルス希釈物をそれぞれMDCK細胞に添加した後、VNTおよび滴定プレートを37℃/5%CO2で1時間インキュベートした。その後、接種材料を除去し、ゲンタマイシンとトリプシンとを含有する新鮮培地を細胞に重層した。感染後5日間CPEをモニターし、記述した。試験で実際に使用したウイルス力価をReed and Munchに従ってTCID50/mlとして算出し、被験血清がインフルエンザウイルスの典型的なCPEの誘導を防止した希釈度を報告した。下記の表を参照されたい。
【0199】
【0200】
【0201】
独立した試験の結果を比較するために、血清希釈度の逆数とそれによって中和されたそれぞれの力価とを掛けることによって中和能力を算出した。次いで、3回の試験の平均値を100で割って100 TCID50の中和を反映させた(表4、5および6)。データを要約し、
図20にグラフで示す。
【0202】
rEHV-1 RacH SE Bでのワクチン接種を受けた全てのマウスは、H3N2およびH1avN1亜型の異種株であるそれぞれのIAVに対する中和抗体を生じさせた。したがって、p455プロモーター(H3)の調節下にあるorf70挿入部位から、および並行して、p430プロモーター(H1av)の調節下にあるorf1/3挿入部位からIAVのヘマグルチニンを発現するrEHV-1 RacH-SEによる二重鼻腔内適用は、BALB/cマウスにおいて防御免疫反応をうまく刺激した。
ベクターrEHV-1 RacH-SEを2つの異なる導入遺伝子の並行発現に使用して、鼻腔内ワクチン接種後に免疫応答を刺激することができると、結論づけることができる。
【0203】
ウェスタンブロット
1.感染:10μlの解凍ウイルスストックを増殖培地に直接添加することにより、6ウェルプレートにおける3つのウェル各々のAI-ST細胞の融合性単層に組換えウイルスをおよそ1のM.O.Iで感染させた。3つのウェルは、未感染のままにしておいた。感染および未感染細胞を2日間インキュベートし、次いで、ウェスタンブロット用に処理した。感染に使用したウイルスを下記の表(表2)に要約する。
【0204】
【0205】
2.ライセートの調製:プロテアーゼ阻害剤カクテルを補充したRIPA緩衝剤(RIPA+PI)を次のように調製した:0.7mlの10×RIPA溶解緩衝剤Milliporeカタログ番号20-188を6.3mlのH2Oに添加し、Fisher Scientificカタログ番号BP2470-1、および1錠のComplete(商標)Miniプロテアーゼ阻害剤カクテル(Rocheカタログ番号11 836 153 001)を7mlの1×RIPA緩衝剤に溶解した。未感染対照を培地にかき集め、3つの複製ウェルからの懸濁液を15ml遠心分離管にプールし、氷上に置いた。感染細胞を培地ですすぎ落とし、3つの複製ウェルからの懸濁液を15ml遠心分離管にプールし、氷上に置いた。細胞を1000xg、4℃で5分間、遠心分離により沈降させた。上清を注意深く吸引し、細胞ペレットをRIPA+PIに(未感染細胞は300μlに、感染細胞は150μlに)再懸濁させた。懸濁液を氷上で30分間インキュベートし、10分ごとにボルテックスした。懸濁液を1.5ml微量遠心管に移し、未溶解物質を微量遠心分離機での15000rpm、4℃で10分間の遠心分離により沈降させた。透明な上清を新しい1.5ml微量遠心管に移し、使用するまで-80℃で保管した。
【0206】
3.SDS-PAGEおよびナイロン膜への転写:材料:BioRad Criterion TGX Stain Free Precast Gel、4~20%、26ウェル、カタログ番号567-8095;Bio Rad Precision Plus Dual Colour Marker、カタログ番号161-0374;Bio Rad Precision Plus All Blue Marker、カタログ番号161-0373;Bio Rad Trans Blot Turbo転写キット、Midi形式カタログ番号170-4159;Bio Rad 4x Laemmli Sample Buffer(カタログ番号161-0747)(Bio Rad Laboratories GmbH、Heidemannstrasse 164、D-80939 Munich);TGS泳動緩衝液(Sambrook et al.)、ブロッキング溶液1:PBST中の5%FBS(Sambrook et al.);PBST。還元剤を添加せずに試料を調製した。試料を氷上で解凍し、1体積の4×Laemmli緩衝液と混合し、6分間、96℃で煮沸し、ゲルの負荷までRTで保持した。ゲルを30分間、230mAで泳動させ、次いで、BioRad Trans Blot Turboシステムを使用して電気泳動転写用に組み立てた。転写を2.5A、25V、10分に設定した。膜を滅菌蒸留H2Oですすぎ、PBST中の5%FBSである25mLのブロッキング溶液とともに30分間、4℃でインキュベートした。
【0207】
抗体インキュベーションおよび検出
材料:Immun-Star WesternC Chemiluminecent Kit(Bio Rad Laboratories GmbH、Heidemannstrasse 164、D-80939 Munich)カタログ番号170-5070
一次抗体:
図19の説明文のa~dを参照されたい。
二次抗体:ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス、(Jackson Immune Research #115-035-146) 1:5000。
全てのインキュベーションは、絶えず攪拌しながら十分な体積で行った。抗体を5%FBS/TBSTで希釈した。一次抗体を終夜4℃でインキュベートした。抗体溶液を除去し、ブロットを3回、TBSTで5~10分間洗浄した。希釈二次抗体をブロットとともに1時間、RTでインキュベートし、除去し、ブロットを3回、TBSTで5~10分間洗浄した。ブロットを透明プラスチックシートプロテクター上に配置した。過酸化水素とLumino/Enhancer溶液を混合し(1ml+1ml(ブロットごとに合計2ml))、ピペットでブロット上に移し、3~5分間インキュベートした。その後、膜をChemiDocXRSイメージングシステム(Bio Rad Laboratories GmbH、Heidemannstrasse 164、D-80939 Munich)内に配置し、Image Labソフトウェアを使用してシグナルを記録した。
【0208】
ウイルス滴定
感染前日に、AI-ST細胞を、96ウェルプレート(Corning Incorporated-Life Sciences、One Becton Circle、Durham、NC 27712、USA;REF 353072)の10%FBSを補充したMEMに、2×104細胞/ウェルで播種した。ウイルスストックを急速解凍し、氷上に置いた。段階1:10希釈物を、MEMで、希釈度ごとに1.2mlの体積で調製した。100μl/ウェルのウイルス希釈物を細胞、希釈度ごとに1つの縦列で8ウェル、に添加した。各プレートの縦列11および12は、100μl/ウェルのMEMの添加により培地対照としての役割を果たした。滴定を3回反復で行い、細胞を5日間、37℃/5%CO2でインキュベートした。細胞培養物を顕微鏡で検査し、EHV-1 RacHの典型的なCPEが観察されたウェルを記録した。Reed and Muench (1938)による方法に従ってTCID50/mlとして力価を算出した。
【0209】
(実施例7)
新しいUL43挿入部位の確立
前の実施例に記載のEHV-ベクタープラットフォームを使用して、2つだけの抗原をそれらの本物の形態で並行して発現させることができる。2つのベクターワクチンのブレンドは、商品原価を増加させ、そしてまた複製効率が組換えウイルスによって異なる場合(この可能性は高い)には導入遺伝子の偏った発現をもたらす可能性がある。配列内リボソーム進入部位(IRES)またはピコルナウイルス2aペプチド(2a)のどちらかにより1つの挿入部位内で2つの抗原を結合させる方法があるが、これらの技術は、この課題に十分なものではない。別個の下流翻訳産物の合成をもたらすリボソームスキップを誘発する2aペプチド(Donnelly et al., 2001)によって2つの導入遺伝子を結合させた場合、発現されるタンパク質うちの第1のタンパク質がそのC末端に付加された2aペプチドからの19個のアミノ酸残基を有することになるので、2aペプチドは、この第1のタンパク質を構造的に変化させることになる。第2のタンパク質のN末端には、プロリンである1つのアミノ酸残基が付加されることになる(Ryan et al., 1994)。この1つの追加のアミノ酸は、HAのシグナルペプチドで切断除去されることになるので、全く重要でない可能性が非常に高いとはいえ、第1のHAの19アミノ酸テールの方は、三量体化に干渉し、十分な有効性を妨げる可能性がある。記載した障害を克服するための解決法を見つけるために、本発明者らは、pRacH-SEにおける第3の導入遺伝子発現部位を確立した。
【0210】
統一アルファヘルペスウイルス命名法の使用
様々なアルファヘルペスウイルスの第1のゲノム配列が利用可能であることから、コンピューターで同定したオープンリーディングフレーム(orf)に、ウイルスごとにそれぞれのゲノム内のそれらの位置に従って個々に番号をつけた。その後、アルファヘルペスウイルス遺伝子の大多数が異なる種に存在するホモログであることが判明した。データの比較を容易にするために、遺伝子および遺伝子産物にヒトヘルペスウイルス1型のゲノムにおけるそれらのホモログの名称を割り当てることは、今では一般的な方法である。したがって、本発明者らは、表1に収載するような新しい命名法に従ってEHV orfの旧名を変更した。
【0211】
【表6】
挿入部位の構築については、やはり、DNAポリメラーゼ処理能力因子をコードする遺伝子UL42および糖タンパク質CをコードするUL44の上流および下流の推定プロモーターおよびポリAシグナルを破壊しないように注意しなければならなかった。
新しいUL43挿入部位の構築を
図13に示す。
【0212】
例えば、UL43(配列番号18)の5’末端の870塩基対(配列番号21)を、BAC pRacH-SEのRED組換えにより、自己蛍光mCherryタンパク質をコードする発現カセットに置き換えた。mCherryのオープンリーディングフレーム(orf)を、推定プロモーター(p422、配列番号5)と、カプシドトリプレックスサブユニット2をコードするEHV-4 UL18のポリA配列(配列番号7)との調節下に置いた。
18pAポリアデニル化配列(配列番号7)を、1.en-passant変異誘発の第2のステップ(第2のRED)中にKanaの欠損のための相同領域として役立つ、2.導入遺伝子のポリアデニル化シグナルとして機能する、2重機能を果たすように、カナマイシン耐性発現カセット(Kana)の上流および下流でのRED組換えのためにトランスファーベクターに導入した。トランスファーベクターpUUL43-422-mC-18K18のマップについては、
図14を参照されたい。
【0213】
ウイルスゲノム内での組換えのための隣接領域と、発現カセットと、カナマイシン耐性カセットとを包含するpUUL43-422-mC-18K18(
図14;配列番号35)の断片を、ホーミング制限エンドヌクレアーゼI-CeuIを使用してトランスファーベクターから切り取り、アガロースゲル電気泳動により精製した。次いで、精製されたDNA断片を、en-passant RED組換え(Tischer et al. 2006)によりBAC pRacH-SEに挿入した。配列の完全性を確認した後、組換えEHV-1 RacH-SE-UL43-422-mCherry(
図15)を許容細胞培養物に対するトランスフェクション後にレスキューし、プラーク精製した。蛍光mCherryタンパク質の発現は、蛍光顕微鏡観察により調査したとき、新しい挿入部位の新しい発現カセットが機能性であることを示した(図示なし)。
ベクターワクチンとしての第3の挿入部位の性能を試験するために、ブタ由来A型インフルエンザウイルス(A/swine/Italy/116114/2010(H1N2) GenBank受入番号ADR01746)からのインフルエンザヘマグルチニンH1pdm亜型(配列番号44)をpRacH-SEの新しい部位に挿入した。
【0214】
このために、mCherryをコードするorfをトランスファーベクターpUUL43-422-mC-18K18(
図14;配列番号35)から切り取り、H1pdmをコードするorfを代わりに挿入した。したがって、得られたトランスファープラスミドをpUUL43-422-H1pdm-18K18(
図16、配列番号36)と名づけた。ウイルスゲノム内での組換えのための隣接領域と、発現カセットと、カナマイシン耐性カセットとを包含するpUUL43-422-H1pdm-18K18の断片を、ホーミング制限エンドヌクレアーゼI-CeuIを使用してトランスファーベクターから切り取り、アガロースゲル電気泳動により精製した。次いで、精製されたDNA断片を、en-passant RED組換え(Tischer et al. 2006)によりBAC pRacH-SEに挿入した。配列の完全性を確認した後、組換えEHV-1 RacH-SE-UL43-422-H1pdm(配列番号17)を許容細胞培養物に対するトランスフェクション後にレスキューし、プラーク精製した。
【0215】
同じ手順を使用して、rEHV-1 RacH-SE-Bに基づく組換えEHV-1 RacH-SE(rEHV-1 RacH-SE-orf1/3-p430-H1av-70-p455-H3、
図7)を生成した。生成された三重挿入組換え体を、rEHV-1 RacH-SE-UL56-430-H1av-UL43-422-H1pdm-US4-455-H3(略記rEHV-1 RacH-SE-E、
図18)と名づけた。
【0216】
三重挿入rEHV-1 RacH-SE-UL56-430-H1av-UL43-422-H1pdm-US4-455-H3(rEHV-1-Eと略記する)のゲノムの略図を
図18に示す。先行構築物の名称は、元のEHV-orf命名法を使用するが、新しい三重挿入ウイルス名は、遺伝子をヒトヘルペスウイルス1型のそれらのホモログに従って名づける、アルファヘルペスウイルスの統一命名法に基づく。
組換えプラーク精製ウイルスを、挿入部位領域のシーケンシング(図示なし)、ウェスタンブロット(
図19)およびウイルス滴定(表3)によって特徴づけた。
二重挿入組換えEHV-1であるrEHV-1 RacH-SE-UL56-430-H1hu-US4-455-H1pdm(略記rEHV-1 RacH-SE-D、
図12)を使用して、導入遺伝子の発現強度を比較した。単一挿入rEHV-1 RacH-SEに加えて、p455プロモーターの調節下にある新しいorf70/US4発現部位からIAV HA H1pdmを発現するrEHV-1 RacH-SE-orf70-p455-H1pdm(
図10)を試験に含めた。
【0217】
新しい組換えEHV-1 RacH-SE-UL43-422-H1pdmおよびEHV-1 RacH-SE-Eの発現強度を、他の2つの、H1pdmを発現するrEHV-1 RacH-SEと比較して評価するために、ウェスタンブロット分析を行った。加えて、異なるIAV HAを発現する全ての単一挿入rEHV-1 RacH-SEと2つの二重挿入rEHV-1 RacH-SE BおよびDとをそれぞれ含めた。使用したウイルスのリストについては、表2を参照されたい。
【0218】
【0219】
ヘマグルチニンH1avもしくはH1pdmに対するまたはEHV-1糖タンパク質IIに対する3つの自社単一特異性モノクローナル抗体、および市販のポリクローナル抗H3抗体を使用した。方法は、異なる被験組換えウイルスで感染した細胞において発現された導入遺伝子の量の半定量的評価を可能にした。細胞培養対照としての細胞は未感染のままにしておき、バックグラウンドウイルス対照としては、レスキューして「空の」ベクター骨格BAC(SE)から精製したrEHV-1 RacH-SEを使用した。組換えEHV-1 B、D、E、SE、av、hu、H3、4p、43p(表2を参照されたい)で感染したまたは未感染のままにしておいたAI-ST細胞培養物を感染の30時間後に回収し、還元条件下でのSDS-PAGE用に処理した。電気泳動後、タンパク質をナイロン膜に電気泳動転写させ、HA H1av、H1pdmもしくはEHV-1 糖タンパク質IIのいずれかに対するモノクローナル抗体またはHA H3に対する市販のウサギポリクローナル抗体とともにインキュベートした。ウェスタンブロット(
図19d)は、9つ全てのウイルスの感染および複製の成功を確証した。B、D、av、hu、H3、4p、43pおよびSE感染細胞に発現したgpIIの量は同様に見え、これは、同等の複製効率を示す。E感染細胞におけるgpII量は、他のものと比較して有意に低減される。ウェスタンブロット(
図19aおよび19b)は、新しい組換えEによるヘマグルチニンH1avおよびH3の発現をそれぞれ確証する。Bと比較して、これらの量は同等に見える。対照的に、新しい組換えEHV-1 RacH-SE-Eおよび-43pにより発現されたヘマグルチニンH1pdmの量(ウェスタンブロット(
図19c))は、同一のタンパク質が455プロモーターの調節下にあるUS4(orf70)挿入部位に発現されるDおよび4pと比較すると、大いに低減されるように見える。
【0220】
3つのヘマグルチニンの並行した発現がウイルス複製効率を損なわせるかどうかを評価するために、rEHV-1 RacH-SE-B、-Dおよび-Eを、AI-ST細胞において第11継代まで継代させ、三重反復実験として並行して力価を判定した(表3)。全ての力価は同等の範囲内であり、これは、第3の導入遺伝子発現カセットが細胞培養条件下でウイルス適応性に対して明らかな悪影響を及ぼさなかったことを示す。
【表8】
【0221】
まとめると、組換えEHV-1は、3つの異なる発現部位から3つの異なるA型インフルエンザヘマグルチニンを並行して発現することが分かった。430および455プロモーターの調節下にそれぞれあるUL56(orf1/3)およびUS4(orf70)からの発現は、同等の強度の発現であったが、新しい422プロモーターの調節下にある新しい部位UL43からの発現は、より弱かった。また、p422プロモーターの調節下にあるUL43の新しい挿入部位からヘマグルチニンH1pdmのみを発現する組換えEHV-1 RacH-SEでは、p455プロモーターの調節下にあるUS4(orf70)挿入部位から発現される同じタンパク質と比較して、量が低減されるようであった。したがって、この新規発現システムは、目標が、UL56部位およびUS4部位から発現されるものに加えて第3の導入遺伝子のあまり強くない発現を求めるものである場合、選択肢となる。UL43部位からのより少ない発現は、発現されるタンパク質が、大量に存在すると細胞培養中に毒性効果を発揮することが公知である場合、有利である。さらに、タンパク質の特定の比率が、目的のために、例えば、特異的比率での異なるウイルス構造タンパク質からなるウイルス様粒子の形成のために、必要とされる場合、強い発現部位と弱い発現部位の組合せを使用することができる。加えて、より弱い導入遺伝子発現は、発現されるタンパク質に組換えベクターウイルスを不安定化する傾向がある場合、望ましい可能性がある。
【0222】
増強EHV-1ベクターBAC pRacH-SEを、ウマ、イヌおよびブタを含む哺乳動物種の多様な病原体に対するベクターワクチンの生成(Trapp et al. 2005、Rosas et al. 2007a、2007b, 2008)のプラットフォームとして使用することができる。3つの異なる導入遺伝子をそれらの本物の形態で増強ベクターウイルスにより並行して発現させることができる。3つの異なる抗原は、1つの病原体からの3つの血清型を示すこともあり、またはワクチンが設計される種の異なる病原体に由来することもある。加えて、ウマ病原体の抗原を発現する増強EHV-1ベクターpRacH-SEに基づいて生成されたベクターワクチンには、EHV-1感染に対するワクチン接種も行うことになるので、四価であるという推定上の可能性がある。
増強EHV-1ベクターBAC pRacH-SEに関する情報は、BI社を除けば、発表も提示もされていない。
【0223】
本願において開示し、特許請求の範囲に記載する組成物および方法の全ては、本開示を踏まえて、過度の実験なしに作製および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい実施形態に関して説明したが、変形形態を、これらの組成物および方法に、ならびに本明細書に記載の方法のステップもしくは一連のステップに、本発明の概念、趣旨および範囲を逸脱することなく適用することができることは、当業者には明らかであろう。より具体的には、化学的にも生理的にも関連している特定の薬剤を本明細書に記載の薬剤の代わりに用いることができ、さらに同じまたは同様の結果が達成されることになることは、明らかであろう。当業者には明らかなそのような同様の代用品および変更形態の全てが、後続の特許請求の範囲により規定される本発明の精神、範囲および概念の範囲内であるとみなされる。
【0224】
(参考文献)
以下の参考文献は、それにより本明細書に記載のものを補足する例示的な処置上のまたは他の詳細が提供される限りでは、明確に参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】