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特許7245299酵素的加水分解のための方法及び装置、液体画分及び固体画分
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】酵素的加水分解のための方法及び装置、液体画分及び固体画分
(51)【国際特許分類】
   C12P 1/00 20060101AFI20230315BHJP
   C12P 19/14 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
C12P1/00 A
C12P19/14 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021146620
(22)【出願日】2021-09-09
(62)【分割の表示】P 2018535426の分割
【原出願日】2017-03-22
(65)【公開番号】P2022001058
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】20165250
(32)【優先日】2016-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】518237451
【氏名又は名称】ユーピーエム‐キュンメネ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】トゥルネン, サミ
(72)【発明者】
【氏名】タンパー, ユハ
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/147263(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/115040(WO,A1)
【文献】特表2015-516157(JP,A)
【文献】特表2014-506451(JP,A)
【文献】特開2014-036589(JP,A)
【文献】特表2012-527886(JP,A)
【文献】特開2012-161292(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101143881(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 19/00
C12M 1/00
C12N 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの酵素的加水分解段階における植物系原料の酵素的加水分解のための方法であって、
- 植物系原料には、リグニン、セルロース、ヘミセルロースが含まれ、
- 植物系原料は、最初の酵素的加水分解段階で加水分解され、
- 最初の酵素的加水分解段階での滞留時間は8時間を超え、かつ、12時間未満であり、
- 最初の加水分解段階の後、炭水化物を含む液体画分は、固液分離段階で固体画分から分離され、
- 固体画分は次の酵素的加水分解段階で加水分解され、
- 第2の又はその後の任意の加水分解段階での滞留時間は24時間を超えており、
- 第2の及びその後の任意の加水分解段階の後、炭水化物を含む液体画分は、固液分離段階で固体画分から分離され、そして
- 固体画分は最後の固液分離段階の後に回収される、方法。
【請求項2】
105℃での全固形分に対する植物系原料の堅さが、最初の酵素的加水分解段階においては4~40%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の又はその後の任意の酵素的加水分解の滞留時間が24~36時間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
105℃での全固形分に対する固体画分の堅さが、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階においては10~40%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
植物系原料又は固体画分を、酵素的加水分解の前に、液体で希釈する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
液体画分を、濾過、遠心処理又はそれらの組み合わせによって、固体画分から分離する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
液体画分を、各固液分離段階の後に、回収する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
植物系原料又は固体画分を、段階的に又は徐々に酵素的加水分解段階に供給する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階を、酵素添加なしで実施する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
最後の固液分離段階後のリグニン分離段階でリグニンが固体画分から分離される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
植物系原料が木材系原料又は木材系原料を含む混合物である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素的加水分解のための方法及び装置に関する。さらに、本発明は、液体画分及び固体画分並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスなどの異なる原料から炭水化物及びリグニンを形成するための方法は異なることが知られている。多くのバイオ精製プロセス、例えば、加水分解は、バイオマスの処理後にリグニン及び糖を生成する。バイオ精製プロセスにおいて酵素的加水分解を使用することが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、酵素的加水分解を改善することである。他の目的は、酵素的加水分解を実施するための新しい方法を提供することである。他の目的は、酵素的加水分解に関連して液体画分及び固体画分を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
酵素的加水分解のための方法は、請求項1に提示したものによって特徴付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を説明し、そこでの記載とともに本発明の原理を説明する助けとなる。図面には以下の図がある。
図1】一つの実施形態による方法のフローチャートの説明である。
図2】他の実施形態による方法のフローチャートの説明である。
図3】一つの方法の実施形態により実施された一つの例の結果を示す。
図4】一つの方法の実施形態により実施された一つの例の結果を示す。
図5】一つの方法の実施形態により実施された一つの例の結果を示す。
図6】一つの方法の実施形態により実施された一つの例の結果を示す。
図7】一つの方法の実施形態により実施された一つの例の結果を示す。
図8】一つの方法の実施形態により実施された一つの例の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
酵素的加水分解のための方法では、植物系原料、好ましくはセルロース系材料が酵素によって加水分解される。この方法では、植物系原料(1)を最初の酵素的加水分解段階(2)に供給し、植物系原料(1)を少なくとも二つの酵素的加水分解段階(2、4)で加水分解する。炭水化物を含む液体画分(5a、5b)は、各酵素的加水分解段階(2、4)の後、固液分離段階(7a、7b)において固体画分(6a、6b)から分離され、固体画分(6a)は、次の酵素的加水分解段階(4)に供給され、そこで、固体画分が処理されて、固体画分(6b)は、最終又は仕上げの固液分離段階などの最後の固液分離段階(7b)の後に回収される。好ましくは、固体を含む固体画分(6a、6b)と液体画分(5a、5b)は、固液分離段階(7a、7b)から供給される。
【0007】
本方法の一つの実施形態が図1に示されている。本方法の他の実施形態が図2に示されている。
【0008】
本装置は、植物系原料(1)が加水分解される少なくとも二つの酵素的加水分解段階(2、4)と、各酵素的加水分解段階(2、4)の後に固体画分(6a、6b)から液体画分(5a,5b)が分離される少なくとも二つの固液分離段階(7a,7b)と、植物系原料(1)を少なくとも最初の酵素的加水分解段階(2)に供給するための少なくとも一つの供給デバイスを含む。最初の酵素的加水分解段階(2)の後の酵素的加水分解段階(4)は、固液分離段階(7a)で分離される固体画分(6a)を処理するように設計される。
【0009】
一つの実施形態では、本方法及び本装置は二つの酵素的加水分解段階を含む。 一つの実施形態では、本方法及び本装置は二つより多い酵素的加水分解段階を含む。
【0010】
本発明は、有効な酵素的加水分解に基づく。一つのプロセスにおいては、阻害材、好ましくは、セルロース系材料から生じる阻害材を除去してもよい。一つの例によれば、阻害材は、可溶性リグニン、有機酸、溶解塩、グルコース、キシロース、オリゴマー又は他の阻害材又はそれらの組み合わせからなる群に属してもよい。同時に、液体画分と固体画分の回収を改善することができ、リグニンを含むより純度の高い固体画分を形成することができる。
【0011】
これに関連して、酵素的加水分解は任意の酵素的加水分解を意味する。一つの実施形態では、酵素的加水分解は、炭水化物、例えば、セルロースの酵素的加水分解である。
【0012】
これに関連して、液体画分(5a、5b)は、主に可溶性炭水化物を含み、固体画分から分離される液体濾液を意味する。好ましい実施形態では、液体画分としては、炭水化物、好ましくはC6炭水化物(C12又はC(HO))が挙げられる。さらに、液体画分としては、C5炭水化物(C10又はC(HO))を挙げてもよい。液体画分は、単糖類(C12又はC10)、二糖類(C122211)、オリゴ糖類及び/又は多糖類((C10又は(C)などの炭水化物を含んでいてもよい。一つの実施形態では、液体画分は、可溶性C5及びC6炭水化物及び他の炭水化物を含む。一つの実施形態では、液体画分は、可溶性C5炭水化物及び他の炭水化物を含む。一つの実施形態では、液体画分は、可溶性C6炭水化物及び他の炭水化物を含む。液体画分は他の成分も含んでもよい。
【0013】
これに関連して、固体画分(6a、6b)は、固体画分から液体画分が分離された場合には、固体材料、例えば、固体の塊、高い堅さのスラリー、凝集物などの固体材料等の固体を含む任意の固体画分を意味する。好ましい実施形態では、固体画分はリグニンを含む。さらに、固体画分は、炭水化物、例えば、固体C6炭水化物(C12又はC(HO))を含む。固体画分は、他の炭水化物及び他の成分も含んでもよい。
【0014】
これに関連して、植物系原料(1)は、任意の植物系原料、例えば、木材系原料及び/又は他の植物系材料を意味する。好ましくは、植物系原料はセルロース系材料である。植物系原料としては、リグニン、セルロース及びヘミセルロースが挙げられる。一つの実施形態では、植物系原料は、木材系材料、木材、リグノセルロースバイオマス、農業残留、バガス系材料、サトウキビバガス、トウモロコシ系材料、トウモロコシ茎葉、小麦わら、稲わら、木質バイオマス、木質多年生植物、維管束植物など、それらの混合物及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料から形成される。一つの実施形態では、植物系原料は、木材系材料又は木材系材料を含む混合物を含む。一つの実施形態では、植物系原料は、木材系材料又は木材系材料を含む混合物である。一つの実施形態では、木材系材料は、広葉樹、針葉樹又はそれらの組み合わせから選択される。一つの実施形態では、植物系原料は、植物片、例えば、木材片を含む。
【0015】
一つの実施形態では、植物系原料(1)は炭水化物及びリグニンを含む。好ましくは、炭水化物はC(HO)又はC(HO)n-1を有する。炭水化物は、単糖類(C12又はC10)、二糖類(C122211)、オリゴ糖類及び/又は多糖類((C10又は(C)を含むことができる。好ましくは、植物系原料は、可溶性炭水化物、例えば、C5炭水化物(C10又はC(HO))、及び固体炭水化物、例えば、C6炭水化物(C12又はC(HO))などの炭水化物を含む。
【0016】
植物系原料(1)は、一つ又はそれ以上の材料成分を含んでもよい。好ましくは、植物系原料は、水などの液体を含有する懸濁液の形態である。好ましくは、植物系原料を処理してヘミセルロースを溶解させる。
【0017】
一つの実施形態では、植物系原料(1)は、好ましくは適切な前処理によって前処理されている。前処理段階(10)は、粉砕、押出、マイクロ波前処理、超音波前処理及び凍結前処理などの物理的前処理;酸前処理、アルカリ前処理、イオン性液体前処理、オルガノソルブ前処理及びオゾン分解などの化学的前処理;水蒸気爆発前処理、アンモニア繊維爆発前処理、CO爆発前処理、液状温水前処理及び湿式酸化などの物理化学的前処理;生物学的前処理及びそれらの組み合わせからなる群から選んでもよい。一つの実施形態では、植物系原料は、加水分解、例えば、酸加水分解、自己加水分解、熱加水分解、超臨界加水分解及び/又は亜臨界加水分解により処理され、そこでは、加水分解に関連して、リグニンの少なくとも一部が植物系原料から分離される。一つの実施形態では、植物系原料は水蒸気爆発によって処理され、そこでは、ヘミセルロースが処理され、ヘミセルロースの多糖類の少なくとも一部が加水分解によって単糖類及びオリゴ糖類に分解し、圧力は急速に解放される。一つの実施形態では、植物系原料は、加水分解及び水蒸気爆発によって一つ又はそれ以上の工程で処理される。一つの実施形態では、植物系原料は、触媒前処理、例えば、触媒として酸又は塩基を使用することによって処理される。
【0018】
前処理段階(10)では、植物系原料は、前処理が行われる反応ユニットに入れられる。植物系原料は、一つ又はそれ以上の前処理によって処理することができる。処理された植物系原料(1)は、次いで、直接的に又は中間ステップを介して又は中間貯蔵を介して、酵素的加水分解段階(2)に供給することができる。さらに、一つの実施形態では、植物系原料を、例えば、脱水プレスによって脱水することができ、及び/又は一つ又は二つ又はそれ以上の段階で洗浄することができる。脱水は、糖系流を分離することを可能にする。
【0019】
一つの実施形態では、植物系原料(1)を、液体、好ましくは水、例えば、新鮮な水、又は、例えば、リグニン精製プロセスからの再循環されたプロセス水、又は水蒸気を用いて、希釈して、最初の酵素的加水分解段階(2)への供給物を形成する。好ましくは、植物系原料は適切な固形分に希釈される。希釈水は、混合段階中又は混合段階の前などの酵素的加水分解段階の前に添加してもよい。一つの実施形態では、酵素的加水分解段階への植物系原料の供給濃度は、2~60重量%(105℃でのTS、全固形分)、好ましくは4~40重量%(105℃でのTS、全固形分)、より好ましくは10~30重量%(105℃でのTS、全固形分)である。
【0020】
一つの実施形態では、植物系原料(1)は、ポンプ、例えば、モノポンプ又はピストンポンプ又は他の適切なポンプなどの任意の適切な供給デバイスによって、酵素的加水分解段階(2,4)に供給される。供給デバイスの選択は、例えば、植物系原料の供給濃度及び/又は粘度に基づく。
【0021】
一つの実施形態では、酵素的加水分解プロセスは連続プロセスである。一つの実施形態では、酵素的加水分解プロセスはバッチプロセスである。一つの実施形態では、植物系原料(1)は、均一な流れとして酵素的加水分解段階(2)に供給される。一つの実施形態では、固体画分(6a)は、均一な流れとして次の酵素的加水分解段階(4)に供給される。一つの実施形態では、植物系原料(1)は、酵素的加水分解段階での材料よりも高い堅さを有する材料を供給するために、段階的に又は徐々に、酵素的加水分解段階(2)には供給される。一つの実施形態では、固体画分(6a)は、酵素的加水分解段階での材料よりも高い堅さを有する材料を供給するために、段階的に又は徐々に、次の酵素的加水分解段階(4)に供給される。
【0022】
一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階(2)の滞留時間は48時間未満であり、一つの実施形態では36時間未満であり、一つの実施形態では24時間未満であり、一つの実施形態では12時間未満である。一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は2時間を超え、一つの実施形態では4時間を超え、一つの実施形態では6時間を超え、一つの実施形態では8時間を超える。一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は2~48時間であり、一つの実施形態では4~36時間であり、一つの実施形態では6~24時間であり、一つの実施形態では8~12時間である。
【0023】
一つの実施形態では、植物系原料(1)の堅さは、最初の酵素的加水分解段階(2)で、40%TS(105℃での全固形分)未満であり、一つの実施形態では30%TS(105℃での全固形分)未満であり、一つの実施形態では25%TS(105℃での全固形分)未満である。一つの実施形態では、植物系原料の堅さは、最初の酵素的加水分解段階で、4%TS(105℃)を超え、一つの実施形態では10%TS(105℃)を超え、一つの実施形態では15%TS(105℃)を超える。一つの実施形態では、植物系原料の堅さは、最初の酵素的加水分解段階で、4~40%TS(105℃)、一つの実施形態では10~30%TS(105℃)、一つの実施形態では15~25%TS(105℃)である。1つの実施形態では、植物系原料の堅さは、最初の酵素的加水分解段階で、4~10%TS(105℃)である。
【0024】
一つの実施形態では、固体画分(6a)を、液体、好ましくは水、例えば、新鮮な水、又は、リグニン精製プロセスからの再循環されたプロセス水、又は水蒸気で、酵素的加水分解段階に関連して、及び/又は次の酵素的加水分解(4)に供給する前に、希釈する。好ましくは、固体画分は適切な固形分に希釈される。希釈水は、混合段階中又は混合段階の前などの酵素的加水分解段階の前に添加してもよい。一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の温度は、希釈液の温度によって調節される。一つの実施形態では、固体画分(6a)は、希釈せずに次の酵素的加水分解(4)に供給される。
【0025】
一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の滞留時間は72時間未満であり、一つの実施形態では56時間未満であり、一つの実施形態では50時間未満であり、一つの実施形態では49時間未満であり、一つ実施形態では36時間未満である。一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の滞留時間は6時間を超え、一つの実施形態では12時間を超え、一つの実施形態では18時間を超え、一つの実施形態では20時間を超え、一つの実施形態では22時間を超え、一つの実施形態では24時間を超える。一つの実施形態では、第2の又はその後の酵素的加水分解段階の滞留時間は6~72時間であり、一つの実施形態では12~56時間、一つの実施形態では18~50時間であり、一つの実施形態では20~49時間であり、一つの実施形態では22~48時間であり、一つの実施形態では24~36時間である。一つの実施形態では、第2の酵素的加水分解段階(4)の滞留時間は72時間未満であり、一つの実施形態では56時間未満であり、一つの実施形態では50時間未満であり、一つの実施形態では49時間未満であり、一つの実施形態では48時間未満であり、一つの実施形態は36時間未満である。一つの実施形態では、第2の酵素的加水分解段階の滞留時間は6時間を超え、一つの実施形態では12時間を超え、一つの実施形態では18時間を超え、一つの実施形態では20時間を超え、一つの実施形態では22時間を超え、一つの実施形態では24時間を超える。一つの実施形態では、第2の酵素的加水分解段階の滞留時間は6~72時間である。
【0026】
一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階(2)の滞留時間は、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の滞留時間よりも短い。一つの例によれば、最初の酵素的加水分解段階(2)の滞留時間は8~12時間であり、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の滞留時間は24~48時間である。
【0027】
一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階(2)及びその後の酵素的加水分解段階(4)の全滞留時間は24時間を超え、一つの実施形態では36時間を超え、一つの実施形態では48時間を超え、一つの実施形態では56時間を超え、一つの実施形態では72時間を超え、一つの実施形態では80時間を超える。
【0028】
一つの実施形態では、本方法、本装置又は本プロセスは、少なくとも三つの酵素的加水分解段階を含み、そこでは、最初の酵素的加水分解段階は短く、中間の酵素的加水分解段階はより長く、最後の酵素的加水分解段階は長い。一つの例によれば、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は4~36時間であり、一つの実施形態では6~24時間であり、一つの実施形態では8~12時間であり、中間の酵素的加水分解の滞留時間は6~72時間であり 一つの実施形態では12~56時間であり、一つの実施形態では18~50時間であり、一つの実施形態では22~48時間であり、一つの実施形態では24~36時間であり、最後の酵素的加水分解段階は30~100時間である。一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は、中間の酵素的加水分解段階の滞留時間よりも短く、最後の酵素的加水分解段階の滞留時間は、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間と少なくとも同じ長さである。一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は、中間の酵素的加水分解段階の滞留時間よりも短く、最後の酵素的加水分解段階の滞留時間は、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間よりも長い。一つの実施形態では、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は、中間の酵素的加水分解段階の滞留時間よりも短く、最後の酵素的加水分解段階の滞留時間は、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間と同じレベルであり、例えば、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間と実質的に同じ長さである。一つの実施形態では、本方法又は本プロセスは少なくとも三つの酵素的加水分解段階を含み、そこでは、最初の酵素的加水分解段階は短く、中間の酵素的加水分解段階はより長く、最後の酵素的加水分解段階は短い。一つの例によれば、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は4~36時間であり、一つの実施形態では6~24時間であり、一つの実施形態では8~12時間であり、中間の酵素的加水分解段階の滞留時間は6~72時間であり、一つの実施形態では12~56時間であり、一つの実施形態では18~50時間であり、一つの実施形態では22~48時間であり、一つの実施形態では24~36時間であり、最後の酵素的加水分解段階の滞留時間は4~36時間であり、一つの実施形態では6~24時間であり、一つの実施態様では8~12時間である。一つの実施形態では、少なくとも第2の酵素的加水分解段階の滞留時間は、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間よりも長い。一つの実施形態では、最後の酵素的加水分解段階は長く、例えば、30~100時間である。一つの実施形態では、最後の酵素的加水分解段階の滞留時間は、最後の酵素的加水分解段階における活性酵素の量に依存する。一つの実施形態では、最後の酵素的加水分解段階は酵素添加なしで行われる。一つの実施形態では、最後の酵素的加水分解段階に酵素が添加される。一つの実施形態では、固体画分の精製、例えば、リグニン精製は、最後の酵素的加水分解段階で実施される。一つの実施形態では、炭水化物の量は、最後の酵素的加水分解段階の後の固体画分(6b)において、15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。
【0029】
一つ酵素的加水分解プロセスにおいて、最初の酵素的加水分解段階の滞留時間は、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階の滞留時間よりも長くてもよい。
【0030】
一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)においては、固体画分(6a)の堅さは40%TS未満(105℃での全固形分)であり、一つの実施形態では30%TS未満(105℃での全固形分)である。一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階においては、固体画分(6a)の堅さは10%TS(105℃)を超え、一つの実施形態では20%TS(105℃)を超える。一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階においては、固体画分(6a)の堅さは10~40%TS(105℃)、一つの実施形態では20~30%TS(105℃)である。一つの実施形態では、第2の酵素的加水分解段階(4)においては、固体画分(6a)の堅さ40%TS(105℃での全固形分)未満であり、一つの実施形態では30%TS(105℃での全固形分)未満である。一つの実施形態では、第2の酵素的加水分解段階においては、固体画分(6a)の堅さは10%TS(105℃で)を超え、一つの実施形態では20%TS(105℃)を超える。一つの実施形態では、第2の酵素加水分解段階においては、固体画分(6a)の堅さは10~40%TS(105℃)であり、一つの実施形態では20~30%TS(105℃)である。
【0031】
一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素加水分解段階(4)における堅さは、最初の酵素的加水分解段階(2)における堅さよりも高い。
【0032】
一つの実施形態では、植物系原料(1)は、固体画分(6a)が、光学測定デバイス、例えば、Metso FS5によって定義される0.2mmより小さい繊維様又は不確定な粒子である80%を超える微細固体粒子を含むように、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の前に、処理される。一つの実施形態では、固体画分(6a)は、Metso FS5によって定義される0.2mmより小さい繊維様又は不確定な粒子である85%を超える微細固体粒子を含み、一つの実施形態では90%を超える微細固体粒子を含み、一つの実施形態では92%を超える微細固体粒子を含み、一つの実施形態では94%を超える微細固体粒子を含む。一つの実施形態では、植物系原料(1)は、固体画分(6a)が、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)の前には、Coulter LS230によって定義される18~300μmの粒子サイズモードを有する微細固体粒子を含むように、処理される。一つの実施形態では、固体画分(6a)は、Coulter LS230によって定義される粒子サイズモード19~200μmを有する微細固体粒子を含み、一つの実施形態では20~150μmを有する微細固体粒子を含み、一つの実施形態では20~120μmを有する微細固体粒子を含み、一つの実施形態では21~75μmを有する微細固体粒子を含む。一つの実施形態では、45℃、10rpm、スピンドル型Vaneで、ブルックフィールド粘度デバイスによって測定して、固体画分(6a)の粘度が、乾燥物含量15%で18000mPas未満になるように、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階前に、植物系原料(1)を処理する。一つの実施形態では、45℃、10rpm、スピンドル型Vaneで、ブルックフィールド粘度デバイスによって測定して、固体画分(6a)の粘度は、乾燥物含有量15%で、18000mPas未満であり、一つの実施形態では13000mPas未満であり、一つの実施形態では10000mPas未満であり、一つの実施形態では8000mPas未満である。植物系原料(1)は前処理することができ、及び/又は固体画分(6a)の粒子サイズ及び粘度は、特許出願PCT/FI2016/050075又はPCT/FI2016/050076に従って決定することができる。
【0033】
一つの実施形態では、本方法は、酵素的加水分解段階(2、4)に関連して、例えば、酵素的加水分解段階の前に又は酵素的加水分解段階中に又は酵素的加水分解の間に、少なくとも一つの混合段階(11、12)を含む。一つの実施形態では、本方法は、最初の酵素的加水分解段階に関連して混合段階を含む。一つの実施形態では、本方法は、最初の酵素的な加水分解段階に続く酵素的加水分解段階に関連して、例えば、第2の酵素的加水分解段階に関連して、又は第2の酵素的加水分解段階に続く任意の酵素的加水分解段階に関連して、混合段階を含む。一つの実施形態では、本方法は、任意の望ましい酵素的加水分解段階に関連して、混合段階を含む。好ましくは、混合は、液体及び固体を混合中に均質混合物に混合するのに十分な剪断力がある混合である。さらに、固体は、効果的な混合によって崩壊することができる。固体粒子は破壊され、高比表面積をもたらすことができる。一つの実施形態では、混合段階の間、材料温度を5~15℃上昇させてもよい。一つの実施形態では、本装置は、ミキサー、スクリューミキサー、ポンプ、他の適切なデバイス又はそれらの組み合わせからなる群から選択してもよい少なくとも一つの混合デバイスを含む。
【0034】
一つの実施形態では、酵素的加水分解段階(2、4)の前に、例えば、混合段階中に又は混合段階の前に又は酵素的加水分解段階の間に、pHを調整する。一つの実施形態では、pHは3~8であり、一つの実施形態では3.5~7であり、一つの実施形態では4~6である。一つの実施形態では、pHが本プロセスで使用される酵素にとって有利なように、pHを調整する。
【0035】
一つの実施形態では、脱水が、最初の酵素的加水分解段階(2)の後に実施される。
【0036】
好ましくは、本方法は、各酵素的加水分解段階(2、4)後に、固液分離段階(7a、7b)を含む。一つの実施形態では、本装置は少なくとも一つの固液分離デバイスを含む。一つの実施形態では、本装置は一つより多い固液分離デバイスを含む。一つの実施形態では、各固液分離段階(7a、7b)は、少なくとも一つの固液分離デバイスを含む。一つの実施形態では、固液分離段階(7a、7b)は、一つより多い固液分離デバイスを含む。一つの実施形態では、各固液分離段階(7a、7b)は、一つの固液分離デバイスを含む。一つの実施形態では、一つより多い固液分離段階(7a、7b)において、一つの固液分離デバイスによって、液体画分(5a、5b)が固体画分(6a、6b)から分離される。一つの実施形態では、一つの固液分離デバイスを一つ又はそれより多い固液分離段階(7a、7b)で使用することができる。一つの実施形態では、一つの固液分離デバイスを一つより多い固液分離段階(7a、7b)で使用することができる。一つの実施形態では、分離デバイスは、一つ又はそれより多い分離工程、例えば、分離セグメントを含む。
【0037】
固液分離段階は、一つ又はそれより多い分離段階を含んでもよい。一つの実施形態では、固液分離段階は、一つ又はそれより多い分離工程で行ってもよい異なる手順を含む。一つの実施形態では、液体画分は一つの工程で分離される。あるいは、液体画分を一つより多い工程で分離してもよい。一つの実施形態では、液体画分は各分離工程において分離される。
【0038】
好ましくは、固液分離段階(7a、7b)は、固体画分(6a、6b)などの固体からの液体画分(5a、5b)の分離を含む。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、濾過、遠心処理又はそれらの組み合わせによって固体画分(6a、6b)から分離される。一つの実施形態では、濾過は、加圧、減圧又は過圧によって行われる。
【0039】
一つの実施形態では、固液分離デバイスは向流洗浄に基づく。一つの実施形態では、固液分離デバイスは、濾過デバイス、真空濾過デバイス、プレスフィルター、ベルトプレス、遠心デバイス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一つの実施形態では、固液分離デバイスは、加圧濾過デバイス、真空濾過デバイス、減圧に基づく濾過デバイス、過圧に基づく濾過デバイス、フィルタープレス、他の適切なプレス、遠心デバイス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一つの実施形態では、固液分離デバイスは、加圧濾過デバイス、真空濾過デバイス、減圧に基づく濾過デバイス又は過圧に基づく濾過デバイスである。一つの実施形態では、固液分離デバイスは、ベルトプレス、ツインワイヤプレス又は遠心分離機である。あるいは、固液分離デバイスは、少量の洗浄水が使用され、洗浄が高い乾燥物含量で行われる他の洗浄デバイスであることもできる。その後、良好な回復を達成することができる。あるいは、固液分離デバイスは、任意の適切な分離デバイスであってもよい。
【0040】
一つの実施形態では、固液分離段階(7a、7b)は、液体画分(5a、5b)が液体形態で分離され、固体材料が形成される濾過を含む。好ましくは、濾過では圧力が使用される。一つの実施形態では、液体は、真空又は過圧などの圧力差によって分離される。一つの実施形態では、固液分離段階は、固体画分(6a、6b)から大部分の糖類、阻害材及び他の可溶性化合物を除去して、可溶性化合物の高い回収を提供するために、少量の清浄水で置換洗浄を行う洗浄を含む。好ましくは、洗浄水の固体に対する比は6未満であり、好ましくは3未満であり、より好ましくは1.5未満である。一つの実施形態では、固液分離段階(7a、7b)は濾過及び洗浄を含む。好ましくは、少量の清浄水で液相中の可溶性材料の高濃度及び高回収を達成することができる。さらに、少量の可溶性化合物を含む固体画分、又は可溶性化合物を実質的に含まない固体画分、又は可溶性化合物が乏しい固体画分を達成することができる。
【0041】
一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、加圧濾過によって分離される。一つの実施形態では、本装置は、固液分離デバイスとして少なくとも一つの加圧濾過デバイスを含む。
【0042】
異なる固液分離段階では、同様の又は異なる分離方法もしくは分離デバイスを用いて分離を行うことができる。
【0043】
一つの実施形態では、本装置は、酵素的加水分解段階(2、4)から固液分離段階(7a、7b)に中間生成物(3、8)を供給するための手段を含む。一つの実施形態では、中間生成物(3、8)を供給するための手段は、コンベア、スクリュー、ベルト、ポンプ、パイプ、チューブ、ダクト、導管、チャンネル、出口、他の適切な供給デバイス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0044】
一つの実施形態では、本装置は、次の酵素的加水分解段階(4)に固体画分(6a)を供給するための手段を含む。一つの実施形態では、固体画分を供給するための手段は、コンベヤー、スクリュー、ベルト、ポンプ、パイプ、チューブ、ダクト、導管、チャンネル、出口、他の適切な供給デバイス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
一つの実施形態では、酵素的加水分解段階(2、4)は、酵素的加水分解が実施される反応器、管、容器、他の適切なデバイス又はそれらの組み合わせを含む。
【0046】
一つの実施形態では、本装置は、最後の固液分離段階(7b)の後に固体画分(6b)を回収するための手段を含む。一つの実施形態では、固体画分を回収するための手段は、アセンブリ、出口、コンベヤー、スクリュー、ベルト、パイプ、チューブ、ダクト、排出口、排出バルブ、排出チャンネル、導管、その他の適切なデバイス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
一つの実施形態では、各固液分離段階(7a、7b)の後に、液体画分(5a、5b)が回収される。一つの実施形態では、本装置は、各固液分離段階(7a、7b)後に液体画分(5a、5b)を回収するための手段を含む。一つの実施形態では、液体画分を回収するための手段は、アセンブリ、出口、パイプ、チューブ、ダクト、排出出口、排出バルブ、排出チャネル、導管、他の適切なデバイス及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0048】
一つの実施形態では、酵素は、第2の又はその後の任意の酵素加水分解段階(4)で添加される。一つの実施形態では、酵素は、酵素的加水分解段階の前又は酵素的加水分解の間などの、酵素的加水分解段階(4)と関連して添加される。一つの実施形態では、酵素は、混合段階中又は混合段階の前に添加される。一つの実施形態では、本装置は酵素を添加するための添加デバイスを含む。
【0049】
一つの実施形態では、酵素は、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)では添加されない。一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)は、酵素添加なしで実施される。驚くべきことに、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解が開始され、酵素的加水分解が酵素添加なしで進行することが観察された。さらに、酵素が固体画分に行き、前の酵素的加水分解段階(2)の酵素を固体画分とともに次の酵素的加水分解段階(4)に供給できることが観察された。一つの実施形態では、酵素は、酵素が固体に対する接着能力を有するように選択される。一つの実施形態では、リサイクルされた酵素は、混合中に活性化される。
【0050】
一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、本方法によって形成される。一つの実施形態では、液体画分(5a)は、最初の酵素的加水分解段階(2)後に可溶性C5及びC6炭水化物を含む。一つの実施形態では、液体画分(5b)は、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階(4)後に可溶性C6炭水化物を含む。液体画分(5b)は、第2の又はその後の任意の酵素的加水分解段階の後に、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のC5炭水化物を含んでもよい。好ましくは、液体画分(5a、5b)は、他の単糖類、二糖類、オリゴ糖類及び/又は多糖類を含有することができる。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、ガラクトース、グルコース、マンノース、アラビノース、キシロース、グルクロン酸及びガラクツロン酸を含有する。好ましくは、液体画分(5a、5b)は溶液の形態である。
【0051】
一つの実施形態では、最初の固液分離段階(7a)から供給することによって、液体画分(5a)の少なくとも一部が回収される。一つの実施形態では、可溶性炭水化物の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%が最初の固液分離段階から供給される。
【0052】
一つの実施形態では、第2の又はその後の任意の固液分離段階(7b)から供給することによって、液体画分(5b)の少なくとも一部が回収される。一つの実施形態では、可溶性炭水化物の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%が、第2の又はその後の任意の固液分離段階から供給される。一つの実施形態では、液体画分(5b)は、炭水化物の80重量%を超える量、好ましくは90重量%を超える量、最も好ましくは95重量%を超える量のC6炭水化物を含む。好ましくは、液体画分(5b)はグルコースに富む画分である。次いで、液体画分(5b)は、そのまま使用することができるほど十分に純粋であるか、又は濃縮し濃縮後に利用することができる。
【0053】
液体画分(5a、5b)は、最終生成物を製造する際の成分として使用することができる。最初の固液分離からの液体画分(5a)及び第2の又はその後の任意の固液分離からの液体画分(5b)は、別々に利用することができ、又は、それらを組み合わせて又は混合して混合物として利用することができる。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)をそのまま使用する。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、さらなる処理に供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は精製される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は濃縮される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)のモノマー化は、さらなる処理の前に行われる。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)が発酵プロセスに供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、発酵における原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は加水分解プロセスに供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、酸加水分解、酵素的加水分解などの加水分解において、原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)が化学処理プロセスに供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、化学処理における原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は重合プロセスに供給される。一つの実施形態において、液体画分(5a、5b)は、重合プロセスにおける原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、解重合プロセスに供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、解重合プロセスにおける原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は触媒処理プロセスに供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は触媒処理における原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は分解プロセスに供給される。一つの実施形態において、液体画分(5a、5b)は、分解プロセスにおける原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は酵素処理に供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、酵素処理における原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は結合材の製造に供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、結合材の製造における原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は飼料の製造に供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は、飼料の製造における原材料として使用される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は食品の製造に供給される。一つの実施形態では、液体画分(5a、5b)は食品の製造における原材料として使用される。液体画分(5a、5b)は、発酵、加水分解、化学処理、触媒処理、重合プロセス、解重合プロセス、分解プロセス、酵素処理、結合材の製造、飼料の製造、食物の製造、又は他の適切なプロセス、又はそれらの組み合わせに直接的に供給してもよく、あるいは、適切な処理工程又は追加の工程、例えば、追加の濃縮工程又は精製工程を介して、発酵、加水分解、化学処理、触媒処理、重合プロセス、解重合プロセス、分解プロセス、酵素処理、結合材の製造、飼料の製造、食物の製造、又は他の適切なプロセス、又はそれらの組み合わせに供給してもよい。
【0054】
好ましくは、固体を含む固体画分(6a、6b)は、本方法によって形成される。一つの実施形態では、固体画分(6b)は、最後の固液分離段階(7b)の後に、リグニンを含む。一つの実施形態では、最後の固液分離段階(7b)の後に、固体画分(6b)は、リグニン、C12又はC(HO)などのC6炭水化物等の固体炭水化物、及び他の固体炭水化物を含む。さらに、固体画分(6b)は、何らかの残留可溶性材料を含んでもよい。一つの実施形態では、固体画分(6b)は固体材料の形態である。一つの実施形態では、最後の固液分離段階の後に、固体材料の乾燥物含量は30重量%を超え、好ましくは40重量%を超え、さらに好ましくは50重量%を超える。一つの実施形態では、最後の固液分離段階の後に、固体材料の乾燥物含量は15~80重量%であり、一つの実施形態では20~70重量%であり、一つの実施形態では30~60重量%であり、一つの実施形態では40~60重量%である。一つの実施形態では、最後の固液分離段階の後に、固体画分(6b)は、15重量%未満、好ましくは6重量%未満、より好ましくは3重量%未満の可溶性化合物を含有する。一つの実施形態では、固体画分(6b)における炭水化物の量は、25重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満である。
【0055】
一つの実施形態では、最後の固液分離段階(7b)の後に、固体画分が供給される。一つの実施形態では、任意の以前の固液分離段階の後に、固体画分の少なくとも一部が供給される。一つの実施形態では、最初の固液分離段階(7a)の後に、固体画分の少なくとも一部が供給される。
【0056】
固体画分(6b)は、最終生成物を製造する際の成分として使用してもよい。一つの実施形態では、固体画分(6b)はそのまま使用される。一つの実施形態では、固体画分(6b)はさらなる処理に供給される。一つの実施形態では、固体画分(6b)は、精製されたリグニンを形成するためのリグニン精製に供給される。一つの実施形態では、固体画分(6b)は、固体画分からリグニンを分離するためのリグニン分離に供給される。一つの実施形態では、固体画分(6b)は、酸加水分解、酵素的加水分解、超臨界加水分解及び/又は亜臨界加水分解、及びそれらの組合せからなる群から選択してもよい加水分解に供給され、あるいは、重合プロセス;解重合プロセス;分解プロセス;化学処理;複合体材料、リグニン複合体、活性化炭素、炭素繊維、結合材材料、ポリマー、樹脂、フェノール成分、分散剤又は吸収性材料の製造;飼料又は食品の製造;燃焼プロセス;他の適切なプロセス;又はそれらの組み合わせに供給される。固体画分は、加水分解、重合プロセス、解重合プロセス、分解プロセス、化学処理、前記材料の製造プロセス、燃焼プロセス又は他の適切なプロセスに、直接的に供給されてもよく、あるいは、適切な処理ステップ又は追加のステップ、例えば、追加の分離工程、精製工程又は脱水工程を介して、加水分解、重合プロセス、解重合プロセス、分解プロセス、化学処理、前記材料の製造プロセス、燃焼プロセス又は他の適切なプロセスに供給されてもよい。
【0057】
一つの実施形態では、リグニン(14)は、最後の固液分離段階(7b)の後に、リグニン分離段階(13)で固体画分(6b)から分離される。好ましくは、リグニンは、酵素的加水分解段階(4)、例えば、最後の酵素的加水分解段階及び/又はリグニン分離段階(13)に関連して、精製される。酵素はリグニン分離段階(13)で変性される。一つの実施形態では、本装置は、少なくとも一つのリグニン分離デバイス又はリグニン精製デバイスを含む。リグニンは、最終生成物中の又は燃焼中の成分として、そのまま使用することができる。あるいは、リグニンはさらなる処理に供給することができる。
【0058】
一つの実施形態では、好ましくは固体画分の残留セルロース又は残留炭水化物を含む固体画分(15)の一部は、活性酵素なしで、リグニン分離段階(13)から任意の以前の酵素的加水分解段階(2,4)に、一つの実施形態では最初の酵素的加水分解段階(2)に、再循環してもよい。一つの実施形態では、本装置は、固体画分の残留セルロース又は残留炭水化物をリグニン分離段階から酵素的加水分解段階へ循環させるための少なくとも一つの再循環デバイスを含む。
【0059】
本方法及び本装置は、阻害材を含む材料を処理するため、リグニン、炭水化物及び化学物質を製造するため、並びに、阻害材を除去するために使用することができる。本方法及び本装置により、酵素的加水分解を改善することができ、酵素用量を減少させることができ、酵素的加水分解の滞留時間又は反応時間を短縮することができ、酵素的加水分解において堅さを高めることができ、リグニンの純度を改善することができ、及び/又は炭水化物の変換を改善することができる。
【0060】
本方法及び本装置は、良好な品質の固体画分及び液体画分を提供する。固体画分は非常に高濃度のリグニンを有する。さらに、固体画分は非常に高い純度を有する。阻害材が少なくとも二つの工程で液体画分とともに除去される場合、より精製された固体画分を本プロセスで提供することができる。さらに、阻害材及び望ましくない剤を有する原料は、本プロセスの原材料として使用することができる。また、炭水化物の回収及び変換を改善することができる。さらに、本方法及び本装置は、固体画分及び液体画分の後処理コストを低減する。
【0061】
本方法及び本装置は、酵素的加水分解を実施する、工業的に適用可能で、簡単で手頃な方法を提供する。本方法又は本装置は、製造プロセスとして容易にかつ簡単に実現することができる。本方法及び本装置は、異なる出発材料からの異なるリグニン、糖系画分及び最終生成物の製造における使用に適している。
【実施例
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を、添付の図面を参照して以下の実施例によってより詳細に記載する。
【0063】
実施例1
この例では、酵素的加水分解は2段階で実施され、図1のプロセスに従って固体画分及び液体画分が製造される。
【0064】
植物系原料(1)が最初の酵素的加水分解段階(2)に供給される。植物系原料(1)は、最初の酵素的加水分解段階(2)の前に液体で希釈してもよい。最初の酵素的加水分解段階(2)の後に、酵素的加水分解の中間生成物(3)が、濾過デバイスを含む固液分離段階(7a)に供給される。可溶性C5及びC6炭水化物を含む液体画分(5a)が、分離段階(7a)において固体から分離される。例えば、リグニン、固体炭水化物、何らか可溶性糖、オリゴマー及びポリマー残留物を含有する固体画分(6a)が分離段階(7a)から除去される。
【0065】
固体画分(6a)は、次の酵素的加水分解段階(4)に供給される。固体画分(6a)は、次の酵素加水分解段階(4)の前に液体で希釈してもよい。第2の酵素的加水分解段階(4)の後に、酵素的加水分解の中間生成物(8)が濾過デバイスを含む固液分離段階(7b)に供給される。可溶性C6炭水化物を含む液体画分(5b)は、分離段階(7b)において固体から分離される。例えば、リグニン、何らかの固体炭水化物及び何らかの可溶性炭水化物を含有する固体画分(6b)は、分離段階(7b)から除去され、最後の固液分離段階(7b)の後に回収される。
【0066】
実施例2
この例では、酵素的加水分解は2段階で実施され、図2のプロセスに従って固体画分及び液体画分が製造される。
【0067】
植物系原料(1)が最初の酵素的加水分解段階(2)に供給される。植物系原料は、前処理(10)、例えば、マイクロ波、超音波処理又は水蒸気爆発などの物理的、化学的又は物理化学的処理によって、処理されている。植物系原料(1)は、最初の酵素的加水分解前の酵素的加水分解段階(2)に関連して混合段階(11)で、液体で希釈してもよい。
【0068】
最初の酵素的加水分解段階(2)の後に、酵素的加水分解の中間生成物(3)が濾過デバイスを含む固液分離段階(7a)に供給される。可溶性C5及びC6炭水化物を含む液体画分(5a)は、分離段階(7a)において固体から分離される。例えば、リグニン、固体炭水化物、何らかの可溶性糖、オリゴマー及びポリマー残留物を含有する固体画分(6a)が分離段階(7a)から除去される。
【0069】
固体画分(6a)は、次の酵素的加水分解段階(4)に供給される。固体画分(6a)は、第2の酵素的加水分解前の酵素的加水分解段階(4)に関連して第2の混合段階(12)において、液体で希釈してもよい。第2の酵素的加水分解段階(4)の後に、酵素的加水分解の中間生成物(8)が濾過デバイスを含む固液分離段階(7b)に供給される。可溶性C6炭水化物を含む液体画分(5b)が、分離段階(7b)において固体から分離される。例えば、リグニン、何らかの固体炭水化物及び何らかの可溶性炭水化物を含有する固体画分(6b)が、分離段階(7b)から除去され、最後の固液分離段階(7b)の後に回収される。
【0070】
リグニン(14)が、リグニン分離デバイスを含むリグニン分離段階(13)において固体部分(6b)から分離される。酵素はリグニン分離段階(13)で変性される。残留セルロース及び残留炭水化物を含む固体画分(15)の一部を、リグニン分離段階(13)から最初の酵素的加水分解段階(2)に再循環してもよい。
【0071】
実施例3
この例では、2工程の酵素的加水分解を検討した。
【0072】
2工程の酵素的加水分解プロセスをシミュレーションし、実験室規模の試験における従来の1工程の酵素的加水分解プロセスと比較した。希釈酸前処理及び水蒸気爆発カバ材を試験の基材として使用した。商業的に入手可能な酵素混合物Aを酵素的加水分解に使用した。本実験では、蒸留水を用いて基材を希釈し、pHを5に調整し、温度は50℃、酵素用量は4%(105℃での全固形分)、及び初期乾燥物含量は15%(105℃での全固形分)であった。基材スラリー20gを含有する50mlチューブをミキサーに入れ、ミキサーをインキュベーター中に置いた。
【0073】
6、12、48及び72時間後に、参照試料チューブをインキュベーターから取り出した。2工程の試料は、6時間又は12時間後のいずれかで最初の酵素的加水分解段階の後に、取り出した。チューブを、回転速度1000rpmで5分間の運転時間で遠心分離機に入れた。液相をチューブから取り出すことによって固液分離を行った。第2の酵素的加水分解工程のために、50mlチューブ中の残留固形分を希釈して、総重量20gのスラリーに戻した。1日又は2日後に、第2の酵素的加水分解工程の試料をインキュベーターから取り出した。糖分析は、液相から標準HPLC法を用いて行った。
【0074】
図3から、2工程プロセスは86%の全収率で終了し、参照例は同じ酵素用量で78%の収率しか得られなかったことが分かる。2工程の酵素的加水分解プロセスによる収率の上昇は8%であった。
【0075】
実施例4
この例では、2工程の酵素的加水分解を検討した。
【0076】
2工程の酵素的加水分解プロセスをシミュレーションし、実験室規模の試験における従来の1工程の酵素的加水分解プロセスと比較した。希釈酸前処理及び水蒸気爆発カバ材を試験の基材として使用した。商業的に入手可能な酵素混合物Aを酵素的加水分解に使用した。本実験では、蒸留水を用いて基材を希釈し、pHを5に調整し、温度は50℃、及び初期乾燥物含量は15%(105℃での全固形分)であった。1工程プロセスについては、酵素用量は2%及び5%(105℃での全固形分)であり、2工程プロセスについては、初期は2%(105℃での全固形分)であった。基材スラリー20gを含有する50mlチューブをミキサーに入れ、ミキサーをインキュベーター中に置いた。
【0077】
6、12、48及び72時間後に、参照試料チューブをインキュベーターから取り出した。2工程の試料は、12時間後の最初の酵素的加水分解段階の後に、取り出した。チューブを、回転速度1000rpmで5分間の運転時間で遠心分離機に入れた。液相をチューブから取り出すことによって固液分離を行った。第2の酵素的加水分解工程のために、50mlチューブ中の残留固形分を希釈して、総重量20gのスラリーに戻した。2工程プロセスにおいては、元の乾燥物に基づく0.5%及び1%(105℃での全固形分)の酵素の第2の酵素的加水分解工程への添加もあった。1日又は2日後に、第2の酵素的加水分解工程の試料をインキュベーターから取り出した。糖分析は、液相から標準HPLC法を用いて行った。
【0078】
図4から、2%(105℃での全固形分)の酵素用量での2工程プロセスは68%の全収率で終了し、参照例は同じ酵素用量で60%の収率しか得られなかったことが分かる。2工程酵素的加水分解プロセスによる収率の上昇は8%であった。第2の酵素的加水分解工程に0.5%(105℃での全固形分)の酵素用量を添加すること(全体で2.5%)により、78%の全収率を達成した。これは、1工程プロセスでの4%(105℃での全固形分)の用量とまったく同じレベルである。2工程プロセスを使用した場合、同じ収率が1.5%少ない酵素消費により達成された。第2の酵素的加水分解工程に1%(105℃での全固形分)の酵素用量を添加すること(全体で3%)により、80%を超える全収率が達成された。
【0079】
実施例5
この例では、2工程の酵素的加水分解を検討した。
【0080】
2工程の酵素的加水分解プロセスをシミュレーションし、実験室規模の試験における従来の1工程の酵素的加水分解プロセスと比較した。希釈酸前処理及び水蒸気爆発カバ材を試験の基材として使用した。商業的に入手可能な酵素混合物Bを酵素的加水分解に使用した。本実験では、水道水を用いて基材を希釈し、pHを4.5に調整し、温度は45℃、及び初期乾燥物含量は15%(105℃での全固形分)であった。酵素用量は6%(105℃での全固形分)であり、最初の工程は、混合及び加熱システムを備えた10リットル反応器で行った。
【0081】
そのまま取り出して、50mlチューブにそれぞれ20gをインキュベーターに入れた1工程の試料以外は、スラリーを、最初の工程の後にブフナー漏斗によって40%乾燥物含量まで脱水した。濾液から標準HPLC法を用いて糖分析を行った。最初の酵素的加水分解工程は16時間であった。脱水した固体材料を15%又は25%乾燥物含量のいずれかに希釈して戻し、第2の酵素的加水分解工程のために、1工程のチューブとともに、50mlチューブ中で同じインキュベーターに入れた。本実験では、インキュベーター内の温度を45℃に調整し、風車式回転チューブミキサーを使用した。酵素的加水分解後に、チューブを、回転速度1000rpmで5分間の運転時間で遠心分離機に入れた。液相をチューブから取り出すことによって固液分離を行った。糖分析は、液相から標準HPLC法を用いて行った。
【0082】
図5から、6%(105℃での全固形分)の酵素用量での2工程プロセスは84~88%の全収率で終了し、参照例は同じ酵素用量で70%の収率しか得られなかったことが分かる。2工程の酵素的加水分解プロセスによるグルコース収率の上昇は14%を超えた。
【0083】
実施例6
この例では、2工程の酵素的加水分解を検討した。
【0084】
2工程の酵素的加水分解プロセスをシミュレーションし、実験室規模の試験における従来の1工程の酵素的加水分解プロセスと比較した。希釈酸前処理及び水蒸気爆発カバ材を試験の基材として使用した。商業的に入手可能な酵素混合物Bを酵素的加水分解に使用した。本実験では、水道水を用いて基材を希釈し、pHを4.5に調整し、温度は45℃、及び初期乾燥物含量は22%(105℃での全固形分)であった。酵素用量は6%(105℃での全固形分)であり、最初の工程は、混合及び加熱システムを備えた10リットル反応器で行った。
【0085】
そのまま取り出して、50mlチューブにそれぞれ20gをインキュベーターに入れた1工程の試料以外は、スラリーを、最初の工程の後にブフナー漏斗によって40%乾燥物含量まで脱水した。濾液から標準HPLC法を用いて糖分析を行った。最初の酵素的加水分解工程は14時間であった。脱水した固体材料を15%又は25%乾燥物含量のいずれかに希釈して戻し、第2の酵素的加水分解工程のために、1工程のチューブとともに、50mlチューブ中で同じインキュベーターに入れた。本実験では、インキュベーター内の温度を45℃に調整し、風車式回転チューブミキサーを使用した。酵素的加水分解後に、チューブを、回転速度1000rpmで5分間の運転時間で遠心分離機に入れた。液相をチューブから取り出すことによって固液分離を行った。糖分析は、液相から標準HPLC法を用いて行った。
【0086】
図6から、6%(105℃での全固形分)の酵素用量での2工程プロセスは84~92%の全収率で終了し、参照例は同じ酵素用量で70%の収率しか得られなかったことが分かる。2工程の酵素的加水分解プロセスによるグルコース収率の上昇は14%を超えた。
【0087】
実施例7
この例では、2工程の酵素的加水分解を検討した。
【0088】
2工程の酵素的加水分解プロセスをシミュレーションし、実験室規模の試験における従来の1工程の酵素的加水分解プロセスと比較した。希釈酸前処理及び水蒸気爆発カバ材を試験の基材として使用した。基材は、Metso FS5によって定義される0.2mmより小さい繊維様の又は不確定の粒子である約98.7%の微細な固体粒子を含み、基材は、Coulter LS230によって定義される粒子サイズモード28.7μmを有する微細な固体粒子を含んでいた。商業的に入手可能な酵素混合物Bを酵素的加水分解に使用した。本実験では、水道水を用いて基材を希釈し、pHを4.5に調整し、温度は45℃、及び初期乾燥物含量は15%(105℃での全固形分)であった。酵素用量は6%(105℃での全固形分)であり、最初の工程は、混合及び加熱システムを備えた10リットル反応器で行った。
【0089】
そのまま取り出して、50mlチューブにそれぞれ20gをインキュベーターに入れた1工程の試料以外は、スラリーを、最初の工程の後にブフナー漏斗によって40%乾燥物含量まで脱水した。濾液から標準HPLC法を用いて糖分析を行った。最初の酵素的加水分解工程は16時間であった。脱水した固体材料を15%乾燥物含量に希釈して戻し、第2の酵素的加水分解工程のために、1工程のチューブとともに、50mlチューブ中で同じインキュベーターに入れた。インキュベーターでの第2の酵素的加水分解工程の前に、2工程プロセスの試料を温和な混合及び効果的混合により混合した。本実験では、インキュベーター内の温度を45℃に調整し、風車式回転チューブミキサーを使用した。酵素的加水分解後に、チューブを、回転速度1000rpmで5分間の運転時間で遠心分離機に入れた。液相をチューブから取り出すことによって固液分離を行った。糖分析は、液相から標準HPLC法を用いて行った。
【0090】
図7から、6%(105℃での全固形分)の酵素用量での2工程プロセスは90%の全収率で終了し、参照例は、同じ酵素用量でかつ同じ加水分解時間で70%の収率しか得られなかったことが分かる。さらに、2工程プロセスの収率は、酵素的加水分解の間での効果的混合により、僅かに高かったことが分かる。
【0091】
実施例8
この例では、2工程の酵素的加水分解を検討した。
【0092】
2工程の酵素的加水分解プロセスをシミュレーションし、実験室規模の試験における従来の1工程の酵素的加水分解プロセスと比較した。希釈酸前処理及び水蒸気爆発カバ材を試験の基材として使用した。商業的に入手可能な酵素混合物Bを酵素的加水分解に使用した。本実験では、原料を希釈し、pHを4.5に調整し、温度は45℃、及び初期乾燥物含量は15%(105℃での全固形分)であった。酵素用量は、参照プロセスにおいては、原料の全固形分に基づき6%(105℃)であり、2工程プロセスにおいては、原料の全固形分に基づき4%(105℃)であった。
【0093】
2工程プロセスでは、スラリーは、12時間であった最初の工程後の真空濾過により、35%乾燥物含量(105℃での全固形分)まで脱水した。酵素を含む固体画分を回収し、脱イオン水で希釈して元の全固体レベルを目標とした。pH調整は行わず、第2工程の前には新たな酵素を添加しなかった。第2工程は68時間までであり、次いで組み合わせで84時間であった。セルロースの大部分は第1工程で加水分解され、残りのセルロースは第2工程で加水分解された。
【0094】
図8から、2工程プロセスを使用する場合には、1/3未満の酵素で、同じ糖収率及び同じ糖回収が達成できることが分かる。
【0095】
本発明による方法及び装置は、異なる酵素的加水分解において使用される異なる実施形態で適切である。さらに、本発明による方法及び装置は、異なる原料から最も異なる種類の液体画分及び固体画分を製造するために使用される異なる実施形態に適している。
【0096】
本発明は、上記の例にのみに限定されるものではなく、 代わりに、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想の範囲内で多くの変形が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8