(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】近距離無線通信デバイスを制御するためのデバイスを備える携行型時計ケース
(51)【国際特許分類】
G04R 60/08 20130101AFI20230315BHJP
G04R 20/26 20130101ALI20230315BHJP
G04C 9/00 20060101ALI20230315BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20230315BHJP
【FI】
G04R60/08
G04R20/26
G04C9/00 301A
G04G21/04
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021183042
(22)【出願日】2021-11-10
【審査請求日】2021-11-10
(32)【優先日】2020-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ゾラン・ランジェロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ダニエル・エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・スコルディリ
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109623(JP,A)
【文献】特開平10-160872(JP,A)
【文献】特開2007-133651(JP,A)
【文献】特開2003-222689(JP,A)
【文献】特開2020-085880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04G 3/00-99/00
G04C 1/00-99/00
G04R 20/00-60/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の外側要素(7a、7b)によって形成される中央が開いている回転式ベゼル(3)を備える携行型時計(1)のケース(2)であって、
前記ケース(2)には、アンテナ(5b)に接続される少なくとも1つのマイクロ回路(5a)を備える近距離無線通信デバイス(4)があり、
前記ケース(2)には、前記近距離無線通信デバイス(4)を遠隔制御して前記近距離無線通信デバイス(4)をアクティブ化又は非アクティブ化するように構成している制御デバイス(30)があ
り、
前記ベゼル(3)は、前記近距離無線通信デバイス(4)が配置されるハウジングを形成することができる2つの外側要素(7a、7b)のアセンブリーによって形成され、
前記ベゼル(3)の前記第1及び第2の外側要素(7a、7b)は、可逆的固定デバイス(8)を用いて組み付けられて一緒にされ、
前記可逆的固定デバイス(8)には、クランプ要素(9a)があり、
前記第1の外側要素(7a)には、前記第1の外側要素(7a)の外周壁に形成された溝(10)がある可逆的固定領域(9b)があり、
前記溝(10)は、前記クランプ要素(9a)を受けるように構成している
ことを特徴とするケース(2)。
【請求項2】
前記制御デバイス(30)は、
2つの自由端それぞれに電気接触端子(35a、35b)があるループタイプの導電性要素(33)と、
前記導電性要素(33)を電気的に開閉することを可能にするスイッチ要素(34)と、及び
前記近距離無線通信デバイス(4)がアクティブ化されているアクティブ位置と前記近距離無線通信デバイス(4)が非アクティブ化されている非アクティブ位置の間である、2つの所定の位置の間にて動かされることができる可動な制御メンバー(3、27)とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のケース(2)。
【請求項3】
前記スイッチ要素(34)には、2つの端部分(36a、36b)があり、これらの端部分はそれぞれ、前記スイッチ要素(34)によって前記導電性要素(33)が電気的に閉じているときに、前記導電性要素(33)の2つの前記電気接触端子(35a、35b)の一方と接触していることができる
ことを特徴とする請求項2に記載のケース(2)。
【請求項4】
前記スイッチ要素(34)と前記導電性要素(33)は、前記スイッチ要素(34)が前記導電性要素(33)を電気的に開いたり又は閉じたりするように、前記携行型時計(1)のケース(2)において互いに対して動くように構成している
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のケース(2)。
【請求項5】
前記スイッチ要素(34)は、制御メンバー(3、27)
に配置され、前記導電性要素(33)は、ミドル部(6)に配置される
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項6】
前記スイッチ要素(34)は、ミドル部(6)に配置され、前記導電性要素(33)は、制御メンバー(3、27)
に配置される
ことを特徴とする請求項2~4のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項7】
前記第2の外側要素(7b)には、前記第1の外側要素(7a)にある溝(10)に配置されるクランプ要素(9a)と摩擦連係することができる可逆的接続領域(9c)がある
ことを特徴とする請求項1~
6のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項8】
前記ベゼル(3)には、近距離無線通信デバイス(4)用の取り外し可能な支持要素(11)がある
ことを特徴とする請求項1~
7のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項9】
前記支持要素(11)には、その上面(13a)に、
前記アンテナ(5b)を受けることができる受容領域(12b)がある
ことを特徴とする請求項
8に記載のケース(2)。
【請求項10】
前記支持要素(11)には、前記少なくとも1つのマイクロ回路(5a)を完全に又は部分的に配置することができる凹み(12a)がある
ことを特徴とする請求項
8又は
9に記載のケース(2)。
【請求項11】
前記支持要素(11)には、その下面(13b)に、前記第2の外側要素(7b)が前記第1の外側要素(7a)に組み付けられるときに前記ベゼル(3)の前記第2の外側要素(7b)の内面(15)に支えられることができる少なくとも2つの足部(14)がある
ことを特徴とする請求項
8~
10のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項12】
前記支持要素(11)を受けるための領域は、フェライトのような保護性の磁気スクリーンを備える又はこれによって形成される
ことを特徴とする請求項
9~
11のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項13】
前記第1及び第2の外側要素(7a、7b)、
取り外し可能な支持要素(11)及び前記
クランプ要素(9a)は、少なくとも1つの誘電体及び/又は非導電性材料によって作られている
ことを特徴とする請求項1~
12のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項14】
前記ベゼル(3)は、少なくとも1つの取り外し可能な固定要素
を用いてミドル部(6)に固定される
ことを特徴とする請求項1~
13のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項15】
前記近距離無線通信デバイス(4)には、前記近距離無線通信デバイス(4)を防水性かつ/又は防湿性にすることができる防水性材料によって作られた被覆がある
ことを特徴とする請求項1~
14のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項16】
前記近距離無線通信デバイス(4)は、非接触型電子的支払いデバイスである
ことを特徴とする請求項1~
15のいずれか一項に記載のケース(2)。
【請求項17】
請求項1~
16のいずれか一項に記載のケース(2)を備える
ことを特徴とする携行型時計(1)。
【請求項18】
防水性である
ことを特徴とする請求項
17に記載の携行型時計(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近距離無線通信デバイスを制御するためのデバイスを備える携行型時計ケースと、このようなケースを備える携行型時計(例、腕時計、懐中時計)に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信デバイスを組み込んだ携行型時計を作ることが知られている。これらの近距離無線通信デバイスは、アンテナに電気的に接続される電子チップないし集積回路によって構成している。ほとんどの場合、これらのデバイスは自律電源を必要とせず、リーダーに近づいたときにすぐに自動的にリーダーと通信するように意図されている。リーダーの電磁場は、アンテナに誘導電流を発生させて、これがチップに電力を供給し、チップがアンテナを通して信号を送信することができるようになる。
【0003】
しかし、これらの携行型時計に搭載されるこのような近距離無線通信デバイスは、トランシーバーに接近して所有者が知らないうちに機密情報を取得しようとするような悪意のある第三者に対しては非常に脆弱である。また、このような近距離無線通信デバイスは、それらがアクティブ化されてからリーダーとの通信が確立されるまでの間においても脆弱である。また、様々な既知のセキュリティーについての手法が、特定の携行型時計には不適切であり、実用的ではなく、ハッキングのリスクを完全に排除することを可能にはしないことに留意する必要がある。
【0004】
このように、従来技術においては、このような課題を克服することを可能にする手法がなく、したがって、既存の手法に代わるものを提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、従来技術の手法よりも使いやすくセキュアであるような、携行型時計に搭載される近距離無線通信デバイスをセキュアにする手段を提供することである。
【0006】
別の目的として、両方とも携行型時計に配置される、近距離無線通信デバイス及び/又はこの通信デバイスを制御するための制御デバイスを容易かつ迅速に取り外してその保守を確実にすることができるような携行型時計を提供することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1及び第2の外側要素によって形成される中央が開いている回転式ベゼルを備える携行型時計のケースに関する。前記ケースには、アンテナに接続される少なくとも1つのマイクロ回路を備える近距離無線通信デバイスがあり、前記ケースには、前記近距離無線通信デバイスを遠隔制御して前記近距離無線通信デバイスをアクティブ化又は非アクティブ化するように構成している制御デバイスがある。
【0008】
他の実施形態においては、以下の特徴がある。
- 前記制御デバイスは、2つの自由端それぞれに電気接触端子があるループタイプの導電性要素を備える。
- 前記制御デバイスは、前記導電性要素を電気的に開閉することを可能にするスイッチ要素を備える。
- 前記制御デバイスは、前記近距離無線通信デバイスがアクティブ化されているアクティブ位置と前記近距離無線通信デバイスが非アクティブ化されている非アクティブ位置の間である、2つの所定の位置の間にて動かされることができる可動な制御メンバーを備える。
- 前記スイッチ要素には、2つの端部分があり、これらの端部分はそれぞれ、前記スイッチ要素によって前記導電性要素が電気的に閉じているときに、前記導電性要素の2つの前記電気接触端子の一方と接触していることができる。
- 前記スイッチ要素と前記導電性要素は、前記スイッチ要素が前記導電性要素を電気的に開いたり又は閉じたりするように、前記携行型時計のケースにおいて互いに対して動くように構成している。
- 前記スイッチ要素は、制御メンバー、より詳細には、ベゼル、に配置され、前記導電性要素は、ミドル部に配置される。
- 前記スイッチ要素は、ミドル部に配置され、前記導電性要素は、制御メンバー、より詳細には、ベゼル、に配置される。
- 前記ベゼルは、前記近距離無線通信デバイスが配置されるハウジングを形成することができる2つの外側要素のアセンブリーによって形成され、前記ベゼルの前記第1及び第2の外側要素は、可逆的固定デバイスを用いて組み付けられて一緒にされる。
- 前記可逆的固定デバイスには、クランプ要素、より詳細には、圧縮可能なシール、がある。
- 前記第1の外側要素には、前記第1の外側要素の外周壁に形成された溝がある可逆的固定領域がある。
- 前記溝は、前記クランプ要素を受けるように構成している。
- 前記第2の外側要素には、前記第1の外側要素にある溝に配置されるクランプ要素と摩擦連係することができる可逆的接続領域がある。
- 前記ベゼルには、近距離無線通信デバイス用の取り外し可能な支持要素がある。
- 前記支持要素には、その上面に、より詳細には傾斜面に、前記アンテナを受けることができる受容領域がある。
- 前記支持要素には、前記少なくとも1つのマイクロ回路を完全に又は部分的に配置することができる凹みがある。
- 前記支持要素には、その下面に、前記第2の外側要素が前記第1の外側要素に組み付けられるときに前記ベゼルの前記第2の外側要素の内面に支えられることができる少なくとも2つの足部がある。
- 前記支持要素を受けるための領域は、フェライトのような保護性の磁気スクリーンを備える又はこれによって形成される。
- 前記第1及び第2の外側要素、前記取り外し可能な支持要素及び前記クランプ要素は、少なくとも1つの誘電体及び/又は非導電性材料によって作られている。
- 前記ベゼルは、少なくとも1つの取り外し可能な固定要素、より詳細にはクリッピングタイプのもの、を用いてミドル部に固定される。
- 前記近距離無線通信デバイスには、前記近距離無線通信デバイスを防水性かつ/又は防湿性にすることができる防水性材料によって作られた被覆がある。
- 前記近距離無線通信デバイスは、非接触型電子的支払いデバイスである。
【0009】
本発明の別の態様は、近距離無線通信デバイスを備えるケースを備える携行型時計に関する。
【0010】
好ましいことに、前記携行型時計は、防水性である。
【0011】
例として与えられ添付の図面によって示されている本発明の少なくとも1つの実施形態についての以下の詳細な説明において、本発明の目的、利点及び特徴が、より明確に現れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、近距離無線通信デバイスが配置されるベゼルと、前記近距離無線通信デバイスを制御するためのデバイスとを備えるケースを備える携行型時計の概略図である。
【
図2】
図2及び3は、本発明の実施形態に係る、非アクティブ位置及びアクティブ位置における
図1の携行型時計の断面図を示している。
図2は、前記通信デバイスが非アクティブ化されている非アクティブ位置における
図1の携行型時計の断面図を示している。
【
図3】前記通信デバイスがアクティブ化されているアクティブ位置における、
図1の携行型時計の断面図を示している。
【
図4】本発明の実施形態に係るベゼルを上方から見た斜視図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るベゼルを下方から見た斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るベゼルの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、ミドル部6、及び中央が開いているベゼル3を備えNFC(Near-field communication(近距離無線通信)の頭字語)タイプの近距離無線通信デバイス4を搭載するケース2を備える携行型時計1の概略図である。このような近距離無線通信デバイス4は、非接触型電子的支払いの実行に寄与することができる。これに関連して、この場合、このようなデバイス4は、非接触型電子的支払いデバイスである。
【0014】
この近距離無線通信デバイス4は、集積回路であることができる少なくとも1つのマイクロ回路5aと、アンテナ5bとを備え、このアンテナ5bは、好ましくは、銅やアルミニウムのような導電性材料によって作られて巻くことができるように円形であり、あるいは前記マイクロ回路5aに接続されるプリント回路基材(PCB)にて作ることができる。
【0015】
図1~6を参照すると、本発明に係る携行型時計1は、具体的には故障した近距離無線通信デバイス4を交換するために、ベゼル3、そしてその拡張範囲にある携行型時計1のケース、を損傷させることなく、容易に取り外し/分解することができるベゼル3を備える。また、このベゼル3は、さらに、この携行型時計1に、より容易かつ経済的な方法でこのようなデバイス4を搭載することを可能にすることに寄与する。なお、このような回転式ベゼル3は、一方向又は双方向に回転するものであることができる。
【0016】
この携行型時計1のセキュリティーを向上させることを考慮して、この携行型時計1は、通信デバイス4を遠隔制御する制御デバイス30を備え、これは、携行型時計1のユーザーが知らないうちに悪意のある第三者が、記録のために構成しているトランシーバーなどを用いてこの携行型時計1に記録された機密情報を取得してしまうことを防ぐのに役立つ。この構成において、通信デバイス4は、デフォルトで非アクティブ化されていて、そのアクティブ化はこの制御デバイス30からのみ実行可能であることを理解することができる。下において詳細に説明するこのような制御デバイス30は、この通信デバイスをアクティブ化したり非アクティブ化したりするように構成している。なお、この制御デバイス30は、通信デバイス4とは別のものであるため、離れて制御するデバイスないし遠隔制御デバイスと呼ばれる。すなわち、この制御デバイス30は、物理的リンクによって通信デバイス4に接続されていない。
【0017】
この携行型時計1は、電子式携行型時計、機械式携行型時計、又はコネクテッドウォッチであることができる。この携行型時計1は、防水性であることができ、この構成において、ダイビングウォッチのようなスポーツ用携行型時計であることができる。
【0018】
この携行型時計1において、ケース2には、まず、ミドル部6がある。当該ミドル部6は、金属(例えば、鋼、好ましくは、ステンレス鋼)、合成材料(例えば、典型的には炭素である繊維がロードされたポリマーマトリックスを含む複合材料)、又はセラミックス、又は誘電体及び/又は非導電性材料によって作られていることができる。
図1に示しているように、ミドル部6の輪郭は、円形である。ミドル部6は、計時器用ムーブメントを収容するように構成している内部空間を形成する。当該ミドル部6には、手首に携行型時計1を装着するためのブレスレットを引っ掛けるように意図されているホーンがある。ホーンは別として、ミドル部6は、全体として見ると、中心軸Xのまわりの回転対称性がある。
【0019】
この携行型時計1のケース2は、次に、ミドル部6に取り外し可能に取り付けられるベゼル3を備える。このベゼル3は、実際に、具体的にはクリップ又は相互ロックタイプの、少なくとも1つの取り外し可能な固定要素を用いて当該ミドル部6に取り付けられる。このような固定要素は、損傷させることなく、ベゼル3をミドル部6から容易、迅速、かつ、単純に、組み付けること及び分解することを可能にし、これによって、近距離無線通信デバイス4の保守などを確実にする。
【0020】
図1~4において、このベゼル3は実質的に環状の形状をしている。このベゼル3は、2つの外側要素7a、7b、可逆的固定デバイス8、及び近距離無線通信デバイス4の取り外し可能な支持要素11を備える。特に、このベゼル3は、近距離無線通信デバイス4が配置されるハウジングを形成するように、第1の外側要素7aを第2の外側要素7bに組み付けることによって形成される。具体的には、この構成において、支持要素11がこれらの2つの外側要素7a、7bの間に挟まれる。このベゼル3において、可逆的固定デバイス8には、固定領域9bと接続領域9c、そして、下にて説明するクランプ要素9aがある。このようなデバイス8がクランプによる相互ロックによって第1及び第2の外側要素7a、7bの組み付けに寄与することを思い出されたい。
【0021】
第1の外側要素7aには、グラデュエーション16が取り付けられる又は形成される外面15がある。図示している例において、グラデュエーションはインデックスを含み、その一部は造形的であり、数(好ましくは、アラビア数字)の形式になっている。ゼロインデックス17と呼ばれるインデックスの1つは、この第1の外側要素7aの内側を指す三角形の形状であり、原点マークを形成し、ユーザーはこの原点マークから、ミドル部6に対するベゼル3の正確な角位置に対応する所定の初期時点からの経過時間を分単位で測定する。この第1の外側要素7aには、さらに、内面18、内周壁19及び外周壁がある。
【0022】
この第1の外側要素7aには、通信デバイス4の前記少なくとも1つのマイクロ回路5aを配置するための配置領域29があり、これは、内周壁19の一部と内面18の一部の両方に形成されている。この配置領域29は、好ましくは、ゼロインデックス17の裏に配置される。
【0023】
第1の外側要素7aには、さらに、その外周壁に設けられた、溝10がある可逆的固定領域9bがある。このような溝10は、クランプ要素9aを受けるように特別に構成している。
【0024】
このクランプ要素9aは、溝10の外周(周部)よりも大きさが小さい圧縮可能なシールであることができる。したがって、このようなクランプ要素9aは、引き伸ばされながら溝10内に配置される。クランプ要素9aは、弛緩させることを可能にするその弾性的性質のおかげで、周部が小さいにもかかわらず、この溝10内の適切な位置に自ずと配置され、クランプ要素9aは溝10内に配置されると細くなり、溝10にある外周壁を押す。
【0025】
この可逆的固定領域9bは、ベゼル3の第2の外側要素7bの内周壁21上に形成される可逆的接続領域9cと連係するように構成している。この接続領域9cは、第1の外側要素7aを第2の外側要素7bと可逆的に接続するために、固定領域9bにある溝10に取り付けられたクランプ要素9aの外面20と連係するように構成している。なお、接続領域9cは、溝10内に配置されるクランプ要素9aの外面20と摩擦連係することができる。
【0026】
この構成において、第1の外側要素7aに取り付けられたクランプ要素9aの外面20の2つの点を接続する直径は、第2の外側要素7bの接続領域9cの2つの点を接続する直径よりも十分に大きい又は厳密に大きい。なお、第1の外側要素7aの溝10における2つの点を接続する直径は、第2の外側要素7bの接続領域9cの2つの点を接続する直径よりも十分に小さい又は厳密に小さい。また、クランプ要素9aのない第1の外側要素7aの直径は、第2の外側要素7bの直径よりも十分に小さい又は厳密に小さいことがわかる。
【0027】
第2の外側要素7bには、その内周壁21に連続する内面がある。この内面は、第1及び第2の外側要素7a、7bが組み付けられるときに、ベゼル3の支持要素11のための支持面となるように特に構成している。この第2の外側要素7bには、前記内面の反対側にある外面22があり、この外面22は、ミドル部6の上面28に対向するように、より具体的には、ベゼル3の取り外し可能な固定のために設けられるミドル部6の部分に対向するように、延在している。この外面22には、このベゼル3の歯付き冠状体23があり、これは、ミドル部6に対するベゼル3の角度的インデクシングに用いられる。この歯付き冠状体23には、周部の歯列があり、その各歯は、非対称であり、各歯には、随意的に水平プレートによって接続されることができる、傾斜ランプと垂直止め面がある。
【0028】
この第2の外側要素7bには、さらに、ベゼル3の把持領域24が形成される外周壁がある。
【0029】
すでに述べたように、ベゼル3には、近距離無線通信デバイス4の取り外し可能な支持要素11がある。特に、この支持要素11には、前記通信デバイス4のアンテナ5bを受けるための受容領域12bがある上面13aがある。前記アンテナ5bが配置されるこの受容領域12bは、より詳細には、傾斜面にある。また、この支持要素11には、凹み12aないし貫通空欠部があり、ここで、前記少なくとも1つのマイクロ回路5aを完全に又は部分的に配置することができる。
【0030】
変異形態の1つにおいて、受容領域12bは、フェライトベースの材料の層でカバーされるフェライトのような保護性の磁気スクリーンを備える/形成することができる。また、これに関連して、このような材料の層が、前記少なくとも1つのマイクロ回路5aの近くに位置する第2の外側要素7bの内周壁と内面の部分にあり、これによって、この支持要素11と磁気スクリーンを形成する。
【0031】
また、この支持要素11には、複数の足部14がある下面13bがあり、この複数の足部14は、この第2の外側要素7bが第1の外側要素7aに組み付けられるときに、このベゼル3の第2の外側要素7bの内面に支えられることができる。
【0032】
このベゼル3において、第1及び第2の外側要素7a、7b、クランプ要素9a及び支持要素11は、ポリマー、チタン、セラミックス、又はその他の合成材料のような誘電体及び非導電性材料から製造されることによって、近距離無線通信デバイス4の動作に適合される。
【0033】
また、通信デバイス4には、水や湿気に対して不浸透性にする防水性材料の被覆がある。また、この材料の被覆は、携行型時計1の着用者が行うダイビング中に遭遇する可能性のある高圧に耐えるようにすることを可能にする。この材料の被覆は、有機層又は無機層、又はこれらの2つのタイプの層の組み合わせを含むことができる。
【0034】
図1~6を参照すると、この携行型時計1のケース2において、通信デバイス4を遠隔制御するための制御デバイス30は、導電性要素33、スイッチ要素34及び可動な制御メンバー3、27を備える。この導電性要素33は、ループタイプのものであり、より詳細には、開いているループであり、その2つの自由端がそれぞれ電気接触端子35a、35bを形成する。この導電性要素33は、実質的に環状の形状を有する。そして、スイッチ要素34は、固定支持体38に取り付けられた金属部分37である。このようなスイッチ要素34は、導電性要素33を電気的に開いたり閉じたりすることを可能にする。このスイッチ要素34には、2つの端部分36a、36bがあり、各端部分36a、36bは、導電性要素33をスイッチ要素34によって電気的に閉じるときに、導電性要素33の2つの端子35a、35bの一方と接触することができる。
【0035】
携行型時計1のケース2において、スイッチ要素34と導電性要素33は、互いに対して動くことができるように配置されて、スイッチ要素34が前記導電性要素33を電気的に開いたり閉じたりし、すなわち、以下のようになる。すなわち、
- 各端子35a、35bは、各端子部分36a、36bと接触して、前記導電性要素33を電気的に閉じたり、又は
- 各端子35a、35bは、各端子部分36a、36bと接触せず、前記導電性要素33を電気的に開いたりする。
【0036】
より詳細には、
図2及び3に示しているように、スイッチ要素34を、例えば、携行型時計1のケース2の回転式ベゼル3やリュウズ27である、回転運動又は並進運動をすることができる可動な制御メンバー3、27内に配置することができ、導電性要素33をミドル部6内に配置することができる。この構成において、スイッチ要素34は、ベゼル3の第2の外側要素7bの外面22の部分に配置される。次に、導電性要素33は、少なくとも1つの誘電体及び/又は非導電性材料によって作られている当該ミドル部6の部分に配置される。なお、ミドル部6の上面28も、導電性要素33が開いており近距離無線通信デバイス4が非アクティブ化されているときにスイッチ要素34の端部分36a、36bが当該上面28に当たるために、少なくとも1つの誘電体及び/又は非導電性材料によって作られていることができる。
【0037】
変異形態の1つにおいて、導電性要素33を可動な制御メンバー3、27に配置することができ、スイッチ要素34をミドル部6に配置することができる。この構成において、導電性要素33は、ベゼル3の第2の外側要素7bの外面22の部分に配置される。次に、スイッチ要素34は、少なくとも1つの誘電体及び/又は非導電性材料によって作られているミドル部6の部分に配置される。
【0038】
図2を参照すると、ここでは回転式ベゼル3である制御メンバー3、27がアクティブ位置と呼ばれる第1の所定の位置にあるときに、導電性要素33の端部分36a、36bがミドル部6の上面28の非導電性材料に当たっており、これによって、導電性要素33は電気的に開いており、近距離無線通信デバイス4がアクティブ化されている。
【0039】
図3に示しているように、制御メンバー3、27が非アクティブ位置と呼ばれる第2の所定の位置にあるときに、前記端部分36a、36bは、導電性要素33の端子35a、35bの導電性材料に当たっており、これによって、この導電性要素33は電気的に閉じられており、このときに通信デバイス4が非アクティブ化されている。特に、この構成において、通信デバイス4が支払い端末タイプのリーダーの存在下にあり、このデバイス4のチップ5aがアンテナ5bを介して信号の送信を開始するときに、この信号に対応しこのアンテナ5bによって発される磁場は、導電性要素33と衝突する磁力線を含み、その中に、一般的に渦電流と呼ばれる誘導電流を発生させる。したがって、導電性要素33は、デバイス4からこの磁場を吸収し、このためにこのデバイス4はリーダーとの通信に失敗し、したがって、実際に非アクティブ化された構成となっている。すなわち、導電性要素33は、通信デバイス4からリーダーに信号を発する能力をなくす/阻害する。
【0040】
したがって、ベゼルを回転させることによって、近距離無線通信デバイス4を意図的にアクティブ化すること及び非アクティブ化することが可能となり、このことは、デバイス4を非アクティブ化することによって、不正な通信のリスクから保護することを可能にする。一方にてベゼル3及び端部分36a、36bによって構成し、他方にて端子35a、35b及びハウジングによって構成しているアセンブリーは、機械的スイッチを構成する。
【0041】
また、携行型時計1のケース2は、通信デバイス4のアクティブ化状態又は非アクティブ化状態を示す視覚的及び/又はサウンドデバイスを備えることができる。これに関連して、このデバイス4のサウンドインタフェースは、スピーカー、ブザー及び/又はバイブレーターを備えることができる。このデバイス4の視覚的インタフェースは、以下を備えることができる。すなわち、
- この携行型時計1の表盤26に配置される画面、及び/又は
- 表盤26にあるインデックス/装飾物を動かしこれと連係することができる少なくとも1つの針25a、25b、及び/又は
- 携行型時計のフランジにあるインデックス又は数を動かしこれと連係することができる少なくとも1つの針25a、25b、及び/又は
- 携行型時計1の回転式ベゼル3にあるインデックス及び/又は数を動かすこと及び連係することが可能な少なくとも1つの針25a、25b、及び/又は
- 描画や数のようなグラフィック表現を表示することができる、表盤26に形成される少なくとも1つの開口、及び/又は
- 少なくとも1つの発光ダイオード
【0042】
添付の請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、当業者にとって明白な様々な変更及び/又は改善及び/又は組み合わせを上記の本発明の様々な実施形態に対して行うことができることを理解することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 携行型時計
2 ケース
3 ベゼル
4 近距離無線通信デバイス
5a マイクロ回路
5b アンテナ
6 ミドル部
7a 第1の外側要素
7b 第2の外側要素
8 可逆的固定デバイス
9a クランプ要素
9b 可逆的固定領域
9c 可逆的接続領域
10 溝
11 支持要素
12a 凹み
12b 受容領域
13a 上面
13b 下面
14 足部
15 内面
30 制御デバイス
33 導電性要素
34 スイッチ要素
35a、35b 電気接触端子
36a、36b 端部分