(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】O,O-ジメチルホスホルアミドチオアートおよびn-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミドの調製方法
(51)【国際特許分類】
C07F 9/24 20060101AFI20230315BHJP
【FI】
C07F9/24 Z
(21)【出願番号】P 2021526406
(86)(22)【出願日】2019-07-19
(86)【国際出願番号】 US2019042621
(87)【国際公開番号】W WO2020018914
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-12-16
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518053987
【氏名又は名称】アリスタ ライフサイエンス インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】15401 Weston Parkway,Suite 150, Cary,North Carolina, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーンズ スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】プラサド ヴィク
(72)【発明者】
【氏名】ホアン デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】カタリア カマル
(72)【発明者】
【氏名】ラーソン クリストファー リン
(72)【発明者】
【氏名】ギブ キャメロン シース
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】東ドイツ国経済特許第161069(DD,A1)
【文献】中国特許出願公開第1727352(CN,A)
【文献】特開2000-072786(JP,A)
【文献】特開昭62-281887(JP,A)
【文献】米国特許第06127566(US,A)
【文献】米国特許第05936113(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102603795(CN,A)
【文献】ANALYTICAL BIOCHEMISTRY,1993年,209,143-149
【文献】J. Iran. Chem. Soc.,2011年,Vol. 8, No. 3,717-726
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/24
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
O,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを作製する方法であって、
O-メチルホスホロジクロリドチオアートをCH
2Cl
2の溶液中でメチル灰汁と反応させて、O,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートを形成させること、および
形成されたO,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートをCH
2Cl
2の溶液中でアンモニア水、液状アンモニア、または水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムと反応させて、O,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを形成させること
を含み、
前記メチル灰汁が、メタノールと水酸化ナトリウム水溶液との反応産物であり、
形成されたO,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートおよびO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートが、前記方法の間、常にCH
2Cl
2の溶液中で維持される、方法。
【請求項2】
前記メチル灰汁が、メタノールと水酸化ナトリウム水溶液とを
等しい当量で反応させた反応産物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PSCl
3をメタノールと反応させて、O-メチルホスホロジクロリドチオアートを形成させることをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
硫黄をPCl
3と反応させてPSCl
3を形成させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
形成されたO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを触媒である硫酸ジメチルと反応させてメタミドホスを形成させることをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
形成されたメタミドホスを無水酢酸と反応させてN-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミドを形成させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
形成されたO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを触媒である硫酸ジメチルと反応させてメタミドホスを形成させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
形成されたメタミドホスを無水酢酸と反応させてN-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミドを形成させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
形成されたO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを触媒である硫酸ジメチルと反応させてメタミドホスを形成させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
形成されたメタミドホスを無水酢酸と反応させてN-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミドを形成させることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
バッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
バッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
バッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
バッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
バッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
バッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その開示が全体として本明細書に参照により明確に組み込まれている、2018年7月19日出願の米国出願第16/040,136号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明が概して関する技術の分野は、殺虫組成物である。
【背景技術】
【0003】
殺有害生物剤などの殺虫組成物は、典型的には、1つまたは複数の種の昆虫を殺すために、傷つけるために、撃退するために、または軽減するために製剤化される。殺虫剤は、様々な方法で作用する。神経系を破壊する殺虫剤もあれば、昆虫の外骨格に損傷を与え得る、昆虫を撃退し得る、または他の何らかの方法で昆虫を制御し得る殺虫剤もある。これらの要因のため、いずれの殺虫剤も、非標的の昆虫、人間、愛玩動物、および環境に対する様々なレベルの危険性を有する恐れがある。また、これらの組成物を生成するために使用される物質は、反応の前、間、および後のいずれにおいても、物質自体の取扱い上の問題を生じる恐れがある。
【発明の概要】
【0004】
そのような殺虫組成物ならびにそれらの生成に関連する化学物質および反応が複雑であるため、殺虫組成物を安全かつ有効な方法で生成するための課題が常に存在している。
【0005】
O,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを作製する方法は、硫黄をPCl3と反応させてPSCl3を形成させること、形成されたPSCl3をメタノールと反応させてO-メチルホスホロジクロリドチオアートを形成させること、形成されたO-メチルホスホロジクロリドチオアートをCH2Cl2の溶液中でメチル灰汁(methyl lye)と反応させてO,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートを形成させること、ならびに形成されたO,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートをCH2Cl2の溶液中で水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムと反応させてO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを形成させることを含み、形成されたO,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートおよびO,O-ジメチルホスホルアミドチオアートは、当該方法の間、常にCH2Cl2の溶液中で維持されることが記載される。
【0006】
さらなる実施形態は、形成されたO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートを触媒の硫酸ジメチルと反応させてメタミドホスを形成させ、形成されたメタミドホスを無水酢酸と反応させてN-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミドを形成させ、形成されたO,O-ジメチルホスホロクロリドチオアートおよび形成されたO,O-ジメチルホスホロアミドチオアートが当該方法の間、常にCH2Cl2の溶液中で維持される、上記の方法;バッチプロセスとして実行される上記の方法;および連続プロセスとして実行される上記の方法、を含む。
【0007】
これらおよびさらなる実施形態は、以下の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に示される詳細は、例示であり、本発明の様々な実施形態の例証的考察を目的とするものにすぎず、本発明の原理および概念的態様の最も有用な、容易に理解される説明と考えられることを提供するために呈示されるものである。これに関して、本発明の基本的理解のために必要である以上に詳しく本発明の詳細を示そうとはしておらず、説明は、本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化され得るのかを当業者に明らかにするものである。
【0009】
ここで、より詳細な実施形態を参照にすることにより本発明を説明する。しかしながら、本発明は、様々な形態において具現化され得るものであり、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が完璧かつ完全となり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるものとなるように提供されるものである。
【0010】
別段の明記がない限り、本明細書において使用される技術および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の技術者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書において本発明の説明の中で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためのものであるにすぎず、本発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上、別段の明確な指示がない限り、複数形もまた含むことが意図される。本明細書において言及されたすべての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、全体として参照により明確に組み込まれる。
【0011】
別段の指示がない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、反応条件などを表す数はすべて、すべての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるものとする。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメーターは、本発明によって得られようとする所望の性質に依存して変わり得る近似値である。各数値パラメーターは、少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を限定しようとするものではなく、有効桁数および通常の四捨五入法を考慮して解釈されるべきである。
【0012】
本発明の広い範囲を記載している数値範囲およびパラメーターは近似値ではあるが、具体的な例において記載される数値は、できるだけ正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。本明細書全体を通して記載されるあらゆる数値範囲は、このようなより広い数値範囲に含まれるあらゆるより狭い数値範囲を、このようなより狭い数値範囲のすべてが本明細書に明確に記されているかのように含む。
【0013】
本発明のさらなる利点は、以下の説明の中で部分的に記載され、説明から部分的に明らかとなり、または本発明を実施することによって習得され得る。上述の概括的な説明および以下の詳細な説明はどちらも、例示および説明のためのものにすぎず、特許請求の範囲のように、本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0014】
これまで利用されてきた方法より安全性を高める、殺虫剤アセフェート(N-(メトキシ-メチルスルファニルホスホリル)アセトアミド)およびその中間体の製造方法を記載する。下記に示した方法は、モノエステルの下流で中間体の分離をしない、DMPAT(O,O-ジメチルホスホルアミドチオアート)およびそれに続くアセフェートの製造を含む。その中間体(例えば、下記に示したジエステル)およびDMPATを純粋な物質として取り扱うと、爆発が起こることが既知である。
【0015】
【0016】
特に、本明細書に記載の方法は、PSCl3を、潜在的爆発性の中間体を分離することなくアセフェートへ変換することを含む。モノエステルの、二相性水性/CH2Cl2系におけるMeOH/NaOH(メタノール/水酸化ナトリウム)との反応は、ジエステルを、CH2Cl2の溶液として、例えば85~88%の収量および94~95%の純度で生成する。該ジエステルを、NH3/NaOHとの反応へそのまま組み入れ、DMPATを、やはりCH2Cl2の溶液として、例えば98%の収量および93%の純度で生成させる。このDMPAT溶液は、次いで、触媒の硫酸ジメチルとの反応によってメタミドホスに、続いて無水酢酸での処理によってアセフェートに、いずれもCH2Cl2の溶液として変換される。アセフェートは、次いで、アンモニア水による中和、結晶化、および濾過して集めることにより分離される。
【0017】
本明細書に記載されるように、DMPATは、典型的には、下記で説明するような4つの工程において、バッチまたは連続プロセシングのいずれかによって生成される。
【0018】
第1の(PSCl3)工程は、典型的には、不活性雰囲気(例えば、窒素-アルゴン)下で、触媒の存在下で三塩化リンを硫黄と反応させることにより、三塩化リンを塩化チオホスホリルへ変換することを含む。PSCl3生成物は、反応物(reaction mass)から、蒸留され、無色透明の液体として分離され、一方、「HEEL」と名づけた残渣は、次のバッチのために戻して再循環される。
【0019】
第2の(モノエステル)工程は、典型的には、連続またはバッチモードのいずれかにおいて、塩化チオホスホリルをメタノールと反応させてO-メチルホスホロジクロリドチオアート(モノエステル)を生成させること含む。副産物HClは、過剰メタノールに混和性である。反応物を、バッチまたは連続モードのいずれかにおいて水で洗浄し、水相と油相(モノエステル)を分離させる。モノエステルは、極めて遅い速度でさらに反応して、油相に取り込まれるジエステルを生成し得る。水性洗浄相は、苛性アルカリ溶液で中和される。これをさらに処理して、メタノールを分離し、再循環させる。ほとんど水を含有する残りの水相は、従来の多重効用缶にかけて、水と塩化ナトリウムを(例えば産業用に)分離させる。
【0020】
第3の(DMPTCl:O,O-ジメチルホスホロクロリドチオアート)工程は、典型的には、速い速度で塩基の存在下で再度メタノールと反応させてDMPTCl)を得るためのもとして、前記モノエステル油(粗製)を使用すること含む。
【0021】
4番目の(DMPAT)工程は、典型的には、ジエステルをアンモニア水、液体アンモニア、またはNaOH/NH4OHと反応させて、DMPATを生成すること;塩化アンモニウムを、例えば産業用に、反応物から分離することを含む。
【0022】
詳細には、第1の反応は、以下のように示される。
【0023】
【0024】
この反応は、典型的には、極めて清潔に実行され、すなわち、この工程では、蒸留されたPSCl3生成物中に何ら不純物が存在することなく変換が完了するように進む。
【0025】
第2の工程では、塩化チオホスホリルを、過剰メタノール中で反応させて、モノエステルを生成させる。
【0026】
【0027】
上記したように、苛性アルカリの非存在下で遅く反応する副反応において、ジエステルが低濃度で形成される。
【0028】
第3の工程では、モノエステルは、著しい速度(例えば、2~3時間)で反応して、ジエステル(O,O-ジメチルホスホロクロリドチオアート)を生成させる。
【0029】
【0030】
副反応として、このジエステル形成の間に、少量のトリエステルも形成される。
【0031】
示した最後の工程では、ジエステルを水酸化アンモニウムおよび水酸化ナトリウムと反応させて(例えば、連続モードで)、DMPAT(O,O-ジメチルホスホルアミドチオアート)を生成させる。この工程における主要な不純物は、前工程から持ち越されたチオリン酸トリメチルである。形成されたDMPATもまた、転位してメタミドホスを形成し得る。
【0032】
【0033】
ジエステルおよびDMPATは常に溶液中で維持すべきであることを留意することが重要である。これらの化合物は、純粋なままで調製されると爆発を生じる恐れがある。
【実施例1】
【0034】
工程1:チオール化(PCl3のPSCl3への変換)
好適なサイズの多目的ガラス内張反応器内に、溶解した硫黄(120℃)を窒素ブランケット下で装入する(表1を参照されたい)(第1バッチ(再循環-0)については、硫黄は、適切な変換および還流温度を保証するために、PCl3に対して40%過剰に装入する)。計量タンクから、三塩化リンを作動冷却器下で加え、還流弁を開いて気化したPCl3の還流を確保する。MEP(メチルエチルピリジン)の必要量(表1を参照されたい)を前記反応混合物に加え、該反応物の加熱を開始する。(MEP触媒は、第1および第2バッチについてのみ添加され、他方、その後のバッチでは「HEEL」を介して運ばれる/再循環する)。反応器の撹拌機およびジャケット加熱(高圧蒸気による)を開始させる。反応物の温度は、1から2時間で、開始還流の80℃から130℃まで上昇させる。反応物を、さらに2~3時間、(POCI3不純物の形成をもたらし得る、空気下でまたは酸素の存在下で)窒素ブランケットをその間維持したまま130℃で加熱する。反応物のPSCl3;PCl3含有量を確認する(反応の最後:PCl3は0.5%未満である)。反応が終了したところで、反応物を、蒸留前に40℃まで冷却する。PSCl3の蒸留を、(700~710mm(ミリメートル)Hg絶対真空下;温度40℃~70℃(反応器温度)で開始し、蒸留された透明な水様物質を、ガラス製留出物受器中に集める。留出物を、反応物の量に対して約70%~約75%を集める。底の残渣(HEEL)は、冷却し、その後、バッチで再循環させる(表1を参照されたい)。その後の変換を続け、約8~約10回の再循環の後、PCl3に関して得られたPSCl3の%モル収率は、98%に達する(3~4回の再循環の後、留出物は100%を超え、約9~約10回の再循環の後、PCl3に関して得られたPSCl3のモル収率は、98%に達する)。
【0035】
【実施例2】
【0036】
工程2:O-メチルホスホロジクロリドチオアート(PSCl3のメタノリシス)
外部熱交換器および循環ポンプを備えた好適なサイズのガラス内張反応器内に、予冷した塩化チオホスホリル(PSCl3 純度99.5%)を、バッチ全体の必要条件の40%装入し、反応器中で同じ温度で維持する。反応器の底弁のスイッチを入れ、PSCl3を、外部熱交換器を通して反応器に還流させる。循環が安定化したところで、予冷したメタノール(4モル比;0~5℃)を、3時間で添加が完了するような速度で循環ポンプ吸い込み管路へ加える。PSCl3(60%、0~5℃)の残量も並行してメタノールに加えるが、これは、最上部の液体添加口から反応器へ加える。添加の完了後、反応物を、さらに2~3時間、撹拌下、0~10℃で維持する。反応物を、反応の完了について分析する(PSCl3 0.5%未満;モノ-エステル 95%超;ジエステル 2~3%;トリエステル 1%未満)。次いで、反応物を洗浄反応器に移し、そこへ0~10℃の水を加え、さらに1~2時間撹拌する。相を分離させてモノエステルを生成させ、これは、追加のプロセシングを受けることなく先に持ち越される。
【実施例3】
【0037】
工程3:O,O-ジメチルホスホロクロリドチオアート(ジエステルE-118形成)
O-メチルホスホロジクロリドチオアートを反応器に装入し、CH2Cl2で希釈する(1キログラム当たり3リットル(L/kg))。バッチを撹拌し、温度を-5~5℃に調整する。「メチル灰汁」(1.1当量)を、-5~5℃の温度を維持しながら、2~3時間かけてバッチに加える。「メチル灰汁」は、不活性雰囲気下で、予冷した(0~5℃)メタノール(1.1当量)を水酸化ナトリウム水溶液(1.1当量)と反応させることによって調製する。市販の「メチル灰汁」もまた使用することができる。撹拌を-5~5℃で1時間続け、次いで、ガスクロマトグラフィー(GC)によって反応完了を分析する。相対的なモノエステル濃度が0.5%未満であれば、反応は完了しているとみなされる。撹拌を停止し、相を分離させる。O,O-ジメチルホスホロクロリドチオアート(E-118、ジエステル)を、85%~88%の収率および94%~95%の純度(GC解析)で、CH2Cl2の溶液として分離する。E-118は、常に溶液中で維持されなければならない。
【実施例4】
【0038】
工程4:DMPAT(アンモノリシス)
連続撹拌反応器システム(CSTR)に、DCM(ジクロロメタン)、O,O-ジメチルホスホロクロリドチオアート(E-118)、E-l18に対して0.93モル当量に維持した25%水酸化ナトリウム、E-l18に対して1.41モル当量に維持した18%水酸化アンモニウムを同時に加える。反応の滞留時間は、40℃で3時間である。反応混合物は、所望の量を維持するために、連続的に除去する。相分離させ、水相をCH2Cl2で抽出して、O,O-ジメチルホスホロアミドチオアート(DMPAT)を回収する。有機抽出物を混合して、さらに精製せずとも使用し得る、CH2Cl2の溶液としてDMPATを得る。DMPATを、98%の収率および約7%チオリン酸トリメチルを含有する約93%の純度で分離する。この生成物は、常に溶液中で維持されなければならない。
【0039】
【0040】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は、パラメーター、量、時間範囲などの測定可能な値を指すものであり、具体的に記載された値の、また具体的に記載された値からの、+/-15%以下の変動、好ましくは+1~10%以下の変動、より好ましくは+1~5%以下の変動、さらにより好ましくは+/-1%以下の変動、なお一層好ましくは+1~0.1%以下の変動が、本明細書に記載された本発明における実施に適切なものである限り、そのような変動を含むことを意味する。さらに、修飾語「約」が指す値は、本明細書において具体的に開示されたその値自体であることも、また理解されるべきである。
【0041】
これらの実施例は、単に例示にすぎず、決して本発明の範囲および基本原理を限定するものとして理解されるべきではない。当業者には、下記実施例および前述の説明の後から、本明細書で示し説明した修正に加えて本発明の様々な修正が明らかとなるであろう。このような修正はまた、添付の特許請求の範囲に含まれることを意図するものとする。
【0042】
本明細書に記載したように、本領域におけるこれらの問題などを、本明細書に記載の本発明によって対処する。よって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に含まれ得るすべての修正および変形を含むものとする。本発明のその他の実施形態は、当業者には、明細書を考慮し、本明細書に開示した本発明を実施することから明らかとなるであろう。本明細書および実施例は単に例示とみなされ、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲によって示されることを意図するものとする。