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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】非水電解液及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230315BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230315BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230315BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/052
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021554889
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039886
(87)【国際公開番号】W WO2021090709
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2019202927
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘行
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-235867(JP,A)
【文献】特表2018-530108(JP,A)
【文献】特表2018-519620(JP,A)
【文献】国際公開第2019/240933(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質塩としてリチウム塩と、電解液溶媒と、ニトロキシラジカル基を有する化合物とを含み、
前記ニトロキシラジカル基を有する化合物がニトロソジスルホン酸及び/又は塩を含むことを特徴とする非水電解液。
【請求項2】
前記リチウム塩が下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物を含む請求項1に記載の非水電解液。
LiN(XSO)(FSO) (1)
(一般式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項3】
電解質塩としてリチウム塩と、電解液溶媒と、ニトロキシラジカル基を有する化合物とを含み、
前記リチウム塩が下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物を含むことを特徴とする非水電解液。
LiN(XSO)(FSO) (1)
(一般式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項4】
前記リチウム塩が、下記一般式(2)で表される化合物、下記一般式(3)で表される化合物、及び六フッ化砒酸リチウムからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解液。
LiPF(C2m+16-a (0≦a≦6、1≦m≦4) (2)
LiBF(C2n+14-b (0≦b≦4、1≦n≦4) (3)
【請求項5】
前記ニトロキシラジカル基を有する化合物がニトロソジスルホン酸のアルカリ金属塩を含む請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解液。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の非水電解液が用いられてなるリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解液、及び当該非水電解液が用いられてなるリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池の電池性能を向上させるために、ラジカル材料を用いたリチウムイオン二次電池が種々検討されている。ラジカル材料を用いたリチウムイオン二次電池は、イオンの吸脱着反応を利用しているため大電流を流すことができるものの、ラジカル材料自体には導電性がほとんどないため、ラジカル材料に導電性を付与する必要がある。
例えば、特許文献1には、導電材を混合させた導電材含有ラジカル材料を含有する二次電池用電極及び該電極を備える二次電池が提案されている。また、特許文献2には、ラジカル材料としてニトロキシドラジカル化合物を含むスピンラベル化剤を用いてスピンラベル化処理が施された活物質及び該活物質を含む電極層を備える二次電池が提案されている。さらに、特許文献3には、ラジカル材料としてアザアントラキノン骨格を有するポリマーを含む電極活物質及び該電極活物質を含む電極を備える二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-213992号公報
【文献】特開2002-117852号公報
【文献】特開2020-66681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3に記載の二次電池はいずれも、電極中にラジカル材料を含有するものである。また、ラジカル材料の電解液への溶解性が高いと効果にバラツキが生じるため、その場合は不溶性の材料を電極内にさらに添加する必要がある。そのため、電極中の活物質比率が低下し、その結果、電池として体積当たりのエネルギー密度が低下するという不都合が生じる。
【0005】
また、ラジカル材料自体は導電性を有しないため、ラジカル材料を活物質内に投入すると電極の導電性が低下し、電池性能が悪化する。そのため、ラジカル材料と導電材とを複合化するという製造プロセスが必要となる。
【0006】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ラジカル材料を含み、電池として体積当たりのエネルギー密度の低下がなく、電池の製造プロセスが容易なリチウムイオン二次電池、及び当該リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ラジカル材料を非水電解液に添加することで上述の課題がすべて解決されることを見出した。本開示は、具体的には以下のとおりである。
・本開示の非水電解液は、電解質塩としてリチウム塩と、電解液溶媒と、ニトロキシラジカル基を有する化合物とを含むことを特徴とする。
・また、本開示の非水電解液は、電解質塩としてリチウム塩と、電解液溶媒と、ニトロキシラジカル基を有する化合物とを含み、前記リチウム塩は、下記一般式(1)で表されるスルホニルイミド化合物を含むことを特徴とする。
LiN(XSO)(FSO) (1)
(一般式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。)
・本開示のリチウムイオン二次電池は、前記の非水電解液が用いられてなる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、ラジカル材料を含み、電池として体積当たりのエネルギー密度の低下がなく、電池の製造プロセスが容易なリチウムイオン二次電池、及び当該リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0010】
<非水電解液>
本実施形態に係る非水電解液は、電解質塩としてリチウム塩と、電解液溶媒とを含み、さらにニトロキシラジカル基を有する化合物を含むものである。この非水電解液は、非水電解液二次電池の中でも、特にリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。
【0011】
(電解質塩)
本実施形態に係る非水電解液は、電解質塩としてリチウム塩を含む。リチウム塩としては、例えば、一般式(1):LiN(XSO)(FSO)で表されるスルホニルイミド化合物(以下単に「スルホニルイミド化合物」ともいう」)等が挙げられる。一般式(1)中、Xはフッ素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が挙げられる。炭素数1~6のアルキル基の中では、炭素数1~6の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~6の直鎖状のアルキル基がより好ましい。炭素数1~6のフルオロアルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が有する水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。炭素数1~6のフルオロアルキル基の具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、フルオロエチル基、ジフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。置換基Xとしては、フッ素原子、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基が好ましい。
【0012】
スルホニルイミド化合物の具体例としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(以下「LiFSI」ともいう)、リチウム(フルオロスルホニル)(メチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(エチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド等が挙げられる。スルホニルイミド化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、スルホニルイミド化合物は、市販品を使用してもよく、従来公知の方法により合成して得られたものを用いてもよい。スルホニルイミド化合物の中では、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、及びリチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミドが好ましく、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドがより好ましい。
【0013】
非水電解液は、スルホニルイミド化合物とは異なる他の電解質塩を含んでいてもよい。他の電解質塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO )、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF )、過塩素酸イオン(ClO )、テトラフルオロ硼酸イオン(BF )、ヘキサフルオロ砒酸イオン(AsF )、テトラシアノホウ酸イオン([B(CN)]-)、テトラクロロアルミニウムイオン(AlCl-)、トリシアノメチドイオン(C[(CN))、ジシアナミドイオン(N[(CN))、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(N[(SOCF)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン(C[(CFSO)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF )およびジシアノトリアゾレートイオン(DCTA)等をアニオンとする無機又は有機カチオン塩等の一般に使用される電解質塩が挙げられる。これら他の電解質塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これら他の電解質塩の中では、一般式(2)で表される化合物(以下「フルオロリン酸化合物」ともいう)、一般式(3)で表される化合物(以下「フルオロホウ酸化合物」ともいう)、及び六フッ化砒酸リチウムが好ましい。
【0014】
フルオロリン酸化合物は、一般式(2):LiPF(C2m+16-a (0≦a≦6、1≦m≦4)で表される。フルオロリン酸化合物としては、LiPF、LiPF(CF、LiPF(C、LiPF(C、LiPF(C等が挙げられる。フルオロリン酸化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。フルオロリン酸化合物の中では、LiPF、及びLiPF(Cが好ましく、LiPFがより好ましい。
【0015】
フルオロホウ酸化合物は、一般式(3):LiBF(C2n+14-b (0≦b≦4、1≦n≦4)で表される。フルオロホウ酸化合物としては、LiBF、LiBF(CF、LiBF(C、LiBF(C等が挙げられる。フルオロホウ酸化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。フルオロホウ酸化合物の中では、LiBF、及びLiBF(CFが好ましく、LiBFがより好ましい。
【0016】
電解質塩の塩組成としては、スルホニルイミド化合物の単体塩組成の電解質塩よりも、スルホニルイミド化合物及び他の電解質塩を含む混合塩組成の電解質塩が好ましく、スルホニルイミド化合物及びフルオロリン酸化合物を含む混合塩組成の電解質塩がより好ましく、LiFSI及びLiPFを含む混合塩組成の電解質塩がさらに好ましい。
【0017】
非水電解液におけるスルホニルイミド化合物の濃度は、電池の界面抵抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、好ましくは0.01mol/L以上、より好ましくは0.05mol/L以上、より一層好ましくは0.1mol/L以上、さらに好ましくは0.2mol/L以上、さらに一層好ましくは0.5mol/L以上である。また、当該濃度は、正極集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは1.5mol/L以下、より好ましくは1.2mol/L以下、さらに好ましくは1mol/L以下である。
【0018】
電解質塩として、スルホニルイミド化合物及び他の電解質塩を含む混合塩組成の電解質塩を用いる場合、非水電解液における他の電解質塩の各濃度は、電池の界面抵抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、さらに好ましくは0.5mol/L以上である。また、当該濃度は、正極集電体の腐食を抑制する観点から、好ましくは1.5mol/L以下、より好ましくは1.2mol/L以下、さらに好ましくは1mol/L以下である。
【0019】
非水電解液における電解質塩の濃度の合計は、電池の界面抵抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、好ましくは0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上、より一層好ましくは0.5mol/L以上、さらに好ましくは1mol/L以上である。また、当該濃度は、非水電解液の粘度上昇を抑制する観点から、好ましくは3mol/L以下、より好ましくは2.4mol/L以下、より一層好ましくは2mol/L以下、さらに好ましくは1.5mol/L以下、さらに一層好ましくは1.2mol/L以下である。
【0020】
非水電解液におけるスルホニルイミド化合物の含有量は、電池の界面抵抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、非水電解液に含まれる電解質塩の合計100mol%中、10mol%以上が好ましく、20mol%以上がより好ましく、30mol%以上がさらに好ましい。最も好ましい範囲は50mol%以上である。
【0021】
電池の界面抵抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、スルホニルイミド化合物の濃度を高めることが好ましい。スルホニルイミド化合物:他の電解質塩は、好ましくは1:15以上、より好ましくは1:10以上、より一層好ましくは1:5以上、さらに好ましくは1:2以上、さらに一層好ましくは1:1以上である。
【0022】
(電解液溶媒)
非水電解液は、電解液溶媒を含む。電解液溶媒は、前記電解質塩を溶解、分散できるものであれば特に限定されない、電解液溶媒としては、非水系溶媒、電解液溶媒に代えて用いられるポリマー及びポリマーゲル等の媒体等が挙げられ、電池に一般に使用される溶媒はいずれも使用できる。
【0023】
非水系溶媒としては、誘電率が大きく、前記電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒である。このような有機溶媒としては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2,6-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ-テル、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン等のエーテル系溶媒;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル(カーボネート)系溶媒;炭酸エチレン、炭酸プロピレン、2,3-ジメチル炭酸エチレン、炭酸1,2-ブチレン及びエリスリタンカーボネート等の飽和環状炭酸エステル系溶媒;炭酸ビニレン、メチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、2-ビニル炭酸エチレン及びフェニルエチレンカーボネート等の不飽和結合を有する環状炭酸エステル系溶媒;フルオロエチレンカーボネート、4,5-ジフルオロエチレンカーボネート及びトリフルオロプロピレンカーボネート等のフッ素含有環状炭酸エステル系溶媒;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2-メチルグルタロニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のニトリル系溶媒;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等の硫黄化合物系溶媒;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル系溶媒;ニトロメタン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン等が挙げられる。これら溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0024】
電解液溶媒の中では、鎖状炭酸エステル系溶媒、環状炭酸エステル系溶媒等のカーボネート系溶媒、ラクトン系溶媒、エーテル系溶媒が好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等がより好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等のカーボネート系溶媒がさらに好ましい。
【0025】
ポリマーやポリマーゲルを電解液溶媒に代えて用いる場合は次の方法を採用すればよい。即ち、従来公知の方法で成膜したポリマーに、溶媒に電解質塩を溶解させた溶液を滴下して、電解質塩並びに非水系溶媒を含浸、担持させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩とを溶融、混合した後、成膜し、ここに溶媒を含浸させる方法(以上、ゲル電解質);予め電解質塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液とポリマーとを混合した後、これをキャスト法やコーティング法により成膜し、有機溶媒を揮発させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩とを溶融し、混合して成形する方法(真性ポリマー電解質);等が挙げられる。
【0026】
電解液溶媒に代えて用いられるポリマーとしては、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル等)の単独重合体又は共重合体であるポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のメタクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)等のニトリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ポリマー、及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらポリマーは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0027】
(ニトロキシラジカル基を有する化合物)
非水電解液は、ラジカル材料として、ニトロキシラジカル基を有する化合物をさらに含む。
【0028】
本実施形態では、ニトロキシラジカル基を有する化合物は、電極中に含有するのではなく、非水電解液中に含有する。そのため、不溶性の材料を電極内にさらに添加する必要がない。したがって、当該非水電解液が用いられた電池では、電極中の活物質比率の低下や、それに伴う電池として体積当たりのエネルギー密度が低下するという不都合が生じない。
【0029】
また、ニトロキシラジカル基を有する化合物が溶解された非水電解液を用いた電池は、その電池性能が向上する。より具体的には、この非水電解液を用いた電池の25℃及び-30℃における界面抵抗の増大が抑制され、それに伴い、当該電池の直流抵抗(DCR)が低減され、高温耐久性能及びサイクル特性の低下が抑制される。
【0030】
このように、本実施形態では、ニトロキシラジカル基を有する化合物の非水電解液への溶解性に起因する効果のバラツキや電池性能の悪化という不都合が生じない。そのため、ニトロキシラジカル基を有する化合物に導電材を混合させる必要がなく、これら2成分を複合化する製造プロセスが不要である。また、前記リチウム塩及び電解液溶媒を含む非水電解液にニトロキシラジカル基を有する化合物を溶解させるだけで本実施形態に係る非水電解液が得られる。したがって、当該非水電解液が用いられた電池は、その製造プロセスが容易である。
【0031】
ニトロキシラジカル基を有する化合物としては、例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPOメタクリレート)、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-カルボキシ-TEMPO)、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-オキソ-TEMPO)、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-メトキシ-TEMPO)、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-シアノ-TEMPO)、4-オキシベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(4-オキシベンゾイル-TEMPO)、2,2,5-トリメチル-4-フェニル-3-アザヘキサン-3-ニトロキシド、2,2,6,6-テトラエチル-1-ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソ-1-ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3-テトラメチル-2-イソインドリニルオキシラジカル、N,N-ジ-t-ブチルアミンオキシラジカル、ジ-tert-ブチル-ニトロキシド(DBN)、N-tert-ブチル-N-[1-ジエチルフォスフォノ-(2,2-ジメチルプロピル)]ニトロキシド、テトラメチル-イソインドリン-1-オキシル、テトラエチル-イソインドリン-1-オキシル、9-アザノルアダマンタン-N-オキシル(nor-AZADO)、9-アザビシクロ[3.3.1]ノナン-N-オキシル(ABNO)、ニトロソジスルホン酸及び/又は塩等が挙げられる。ニトロソジスルホン酸塩としては、ニトロソジスルホン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。ニトロソジスルホン酸のアルカリ金属塩としては、例えば、ニトロソジスルホン酸カリウム、1-ニトロソ-2-ナフトール-3,6-ジスルホン酸二ナトリウム等が挙げられる。これらニトロキシラジカル基を有する化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。ニトロキシラジカル基を有する化合物の中では、スルホニル基を有するニトロキシラジカル基を有する化合物(ニトロソジスルホン酸及び/又は塩)が好ましく、ニトロソジスルホン酸塩がより好ましく、ニトロソジスルホン酸のアルカリ金属塩がより一層好ましく、ニトロソジスルホン酸カリウムがさらに好ましい。
【0032】
非水電解液におけるニトロキシラジカル基を有する化合物の含有量は、電池の界面抵抗抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、非水電解液100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに一層好ましくは0.5質量%以上である。また、非水電解液におけるニトロキシラジカル基を有する化合物の含有量は、電池の界面抵抗抗及び直流抵抗の低減、高温耐久性及び充放電サイクル特性の改善の観点から、非水電解液100質量%中、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。
【0033】
なお、本明細書において、非水電解液100質量%とは、電解質塩、電解液溶媒、ニトロキシラジカル基を有する化合物、その他必要に応じて用いられるその他の成分等、非水電解液に含まれる全ての成分の合計を意味する。
【0034】
(その他の成分)
非水電解液は、リチウムイオン二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水グルタコン酸、無水イタコン酸、無水ジグリコール酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フェニルコハク酸無水物等のカルボン酸無水物;エチレンサルファイト、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブサルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、テトラメチルチウラムモノスルフィド、トリメチレングリコール硫酸エステル等の含硫黄化合物;1-メチル-2-ピロリジノン、1-メチル-2-ピペリドン、3-メチル-2-オキサゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩等のリン酸塩;ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の飽和炭化水素化合物;ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、メチルビニレンカーボネート(MVC)、エチルビニレンカーボネート(EVC)等の不飽和結合を有する環状カーボネート;フルオロエチレンカーボネート(FEC)、トリフルオロプロピレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート及びエリスリタンカーボネート等のカーボネート化合物;リチウムビスオキサレ-トボラ-ト(LiBOB)等のオキサラトボレートのアルカリ金属塩;スルファミン酸(アミド硫酸、HNSO);スルファミン酸塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩等の他の金属塩;アンモニウム塩;グアニジン塩等)等が挙げられる。これら添加剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。これら添加剤の中では、電池の界面抵抗をより一層低減する観点から、HNSO及びその塩(以下「スルファミン酸化合物」ともいう)が好ましく、HNSO及びそのリチウム塩がより好ましく、HNSO及びLiHNSOがさらに好ましい。なお、LiHNSOは、以下の実施例に記載の方法により製造できる。
【0035】
添加剤は、非水電解液100質量%中、0.1質量%以上10質量%以下の範囲で用いるのが好ましく、0.2質量%以上8質量%以下の範囲で用いるのがより好ましく、0.3質量%以上5質量%以下の範囲で用いるのがさらに好ましい。添加剤の使用量が少なすぎるときには、添加剤に由来する効果が得られ難い場合があり、一方、多量に他の添加剤を使用しても、添加量に見合う効果は得られ難く、また、非水電解液の粘度が高くなり伝導率が低下するおそれがある。
【0036】
非水電解液に添加するスルファミン酸化合物の量は、電池の界面抵抗をより一層低減する観点から、非水電解液100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに一層好ましくは0.5質量%以上である。また、非水電解液に添加するスルファミン酸化合物の量は、非水電解液中に残るスルファミン酸化合物の不溶粒子の量を低減する観点から、非水電解液100質量%中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。
【0037】
以上より、非水電解液は、リチウム塩、電解液溶媒、ニトロキシラジカル基を有する化合物、必要に応じて、他の電解質塩、各種添加剤等の各成分により構成される。非水電解液は、例えば、これら各成分を所定の組成比で混合することにより調製できる(以下「非水電解液(A)ともいう」)。具体的には、各成分を混合した溶液を、例えば0.5~2日間、攪拌しながら放置すればよい。
【0038】
(他添加剤)
非水電解液(A)は、ニトロキシラジカル基を有する化合物の添加効果をより一層向上させる観点から、さらに他添加剤を含んでいてもよい。非水電解液(A)に他添加剤を添加することにより、非水電解液(A)に含まれるスルホニルイミド化合物由来の不純物(酸分)であるフルオロスルホン酸(HFSO)が他添加剤に捕捉(トラップ)される。また、フルオロリン酸化合物を含む非水電解液(A)では、フルオロリン酸化合物由来の不純物であるフッ化水素酸(HF)が他添加剤にトラップされる。
【0039】
他添加剤としては、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ルビジウム(RbCO)、炭酸セシウム(CsCO)等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸ベリリウム(BeCO)、炭酸マグネシウム(MgCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、炭酸バリウム(BaCO)等のアルカリ土類金属炭酸塩;炭酸アンモニウム(NHCO);炭酸銅(II)(CuCO);炭酸鉄(II)(FeCO);炭酸銀(I)(AgCO)等の炭酸塩が挙げられる。これら炭酸塩は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0040】
炭酸塩の中では、HFSO及び/又はHFを確実にトラップする観点から、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩が好ましく、アルカリ金属炭酸塩がより好ましく、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、及び炭酸セシウム(CsCO)がさらに好ましく、炭酸リチウム(LiCO)がさらに一層好ましい。
【0041】
非水電解液(A)に添加する炭酸塩の量は、非水電解液に用いられる電解質塩の量に応じて適宜決定すればよいが、HFSO及び/又はHFを確実にトラップする観点から、非水電解液(A)100質量%中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、さらに一層好ましくは0.5質量%以上である。また、非水電解液(A)に添加する炭酸塩の量は、非水電解液(A)中に残る炭酸塩の不溶粒子の量を低減する観点から、非水電解液(A)100質量%中、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.8質量%以下である。
【0042】
また、非水電解液(A)に、前記炭酸塩と共に、スルファミン酸化合物を添加することが好ましい。これにより、電池の界面抵抗の低減効果がより一層向上する。
【0043】
非水電解液(A)に添加する炭酸塩とスルファミン酸化合物との合計量は、HFSO及び/又はHFを確実にトラップすると共に、電池の界面抵抗をより一層低減する観点から、非水電解液(A)100質量%中、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.4質量%以上、さらに好ましくは0.6質量%以上である。また、非水電解液(A)に添加する炭酸塩とスルファミン酸化合物との合計量は、非水電解液(A)中に残る不溶粒子の量を低減する観点から、非水電解液100質量%中、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.6質量%以下、さらに好ましくは1.2質量%以下である。
【0044】
非水電解液(A)は、炭酸塩、必要に応じてスルファミン酸化合物(以下「炭酸塩等」という)を添加した後、該炭酸塩等にHFSO及び/又はHFを確実にトラップさせるために、またスルファミン酸化合物を添加する場合は難溶解性のスルファミン酸化合物を非水電解液(A)により一層溶解させるために、例えば0.5~2日間、攪拌しながら放置する。
【0045】
(濾過)
非水電解液(A)に炭酸塩等を添加した場合、得られた溶液(以下「非水電解液(B)」ともいう)を濾過することが好ましい。この非水電解液(B)を濾過することで、非水電解液(B)中に残る炭酸塩等を取り除く。
【0046】
これにより、電池内で、非水電解液の保存安定性(特に高温耐久性)を低下させる酸分(HFSO、HF)や水分の継続的な発生が抑制される。その結果、スルホニルイミド化合物由来のHFSOに起因する、電池の界面抵抗の増大が抑制され、電解液溶媒、電解質塩の分解副反応が抑制される。
【0047】
また、炭酸塩等はカーボネート系溶媒等の有機溶媒に不溶なため、不溶物として非水電解液(B)中に含有したままとなる。電解質塩としてフルオロリン酸化合物を含む非水電解液(B)では、炭酸塩等が非水電解液(B)中からなくなるまでフルオロリン酸化合物由来のHFと反応し続けるため、非水電解液(B)中には常に水分が残り、フルオロリン酸化合物が継続的に分解されると共に、二酸化炭素(CO)等のガスが継続的に発生する。しかし、濾過により非水電解液(B)中に残る炭酸塩等を取り除くことで、上述のフルオロリン酸化合物の継続的な分解、及びCOガスの継続的な発生が抑制される。
【0048】
また、非水電解液(B)中に残る炭酸塩等の不溶粒子は、注液装置のハイバーポンプシリンダーの詰まりの発生やピストン動作の低下等、注液装置を故障させる原因にもなるところ、当該原因となる不溶粒子を取り除くことができる。
【0049】
濾過の方法は、非水電解液(B)に含まれる炭酸塩等を取り除くことができれば特に限定されず、加圧濾過や吸引濾過等が挙げられる。使用する濾材(フィルター)は、有機溶媒等を対象とする非水系のものが好ましい。フィルターの材質として、PTFE等のフッ素樹脂製;ステンレススチール繊維製;ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン製;ナイロン製;セルロース繊維製;ガラス繊維製;シリカ繊維製;ポリカーボネート製;コットン製;ポリエーテルサルホン製;セルロースアセテート製等が挙げられる。また、フィルターは、一般に市販されているものを使用できる。市販品のフィルターとしては、例えば、ジーエルサイエンス(株)製のGLクロマトディスク非水系等が挙げられる。フィルターの孔径としては、0.1~1μm程度である。
【0050】
非水電解液(B)を濾過する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは0~70℃の範囲、より好ましくは0~50℃、さらに好ましくは20~50℃である。
【0051】
濾過は、一段の濾過を行っても良く、二段以上の多段濾過を行っても良い。また、濾過後に必要に応じて洗浄を行ってもよい。
【0052】
以上より、電解質塩を含む非水電解液(A)に炭酸塩等を添加した後に、得られた非水電解液(B)を濾過することにより非水電解液(C)が得られる。この非水電解液(C)を備えるリチウムイオン二次電池は、界面抵抗が低減、充放電時の副反応が抑制されると共に、電池内で電解質塩の継続的な分解やガスの継続的な発生が抑制されるため、電池性能がより一層向上する。
【0053】
<二次電池>
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池は、電極(正極及び負極)と、正極及び負極との間に設けられたセパレーターと、セパレーターに含浸された状態で、正極及び負極等と共に外装ケースに収容される非水電解液とを備える。このリチウムイオン二次電池では、本実施形態に係る非水電解液が用いられてなる。
【0054】
(正極)
正極は、正極集電体及び正極合材層を含み、正極合材層が正極集電体上に形成されている。
【0055】
正極集電体に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等が挙げられる。これらの中ではアルミニウムが好ましい。なお、正極集電体の形状や寸法は、特に制限されない。
【0056】
正極合材層は、正極組成物から形成されている。正極組成物は、正極活物質、導電助剤、結着剤、これら成分を分散するための溶媒等を含有する。
【0057】
正極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出できるものであればよく、一般に使用される正極活物質を使用できる。正極活物質としては、リチウムを含有する金属酸化物が挙げられる。リチウムを含有する金属酸化物としては、コバルト酸リチウム、リン酸鉄リチウム、リン酸マンガンリチウム、マンガン酸リチウム、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム、リチウムニッケルコバルトアルミニウム複合酸化物等が挙げられる。正極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。正極組成物の不揮発分における正極活物質の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは70~98.8質量%、より好ましくは80~98.3質量%である。
【0058】
導電助剤は、リチウムイオン二次電池の出力を向上させるために用いられる。導電助剤としては、主として導電性カーボンが用いられる。導電性カーボンとしては、カーボンブラック、ファイバー状カーボン、黒鉛等が挙げられる。導電助剤の中では、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。正極組成物の不揮発分における導電助剤の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1.5~10質量%である。
【0059】
結着剤としては、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;スチレン-ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム等の合成ゴム;ポリアミドイミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリ(メタ)アクリル系樹脂;ポリアクリル酸;カルボキシメチルセルロース等のセルロース系樹脂;等が挙げられる。結着剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、結着剤は、使用の際に溶媒に溶けた状態であっても、溶媒に分散した状態であっても構わない。
【0060】
溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトン、エタノール、酢酸エチル、水等が挙げられる。溶媒は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。溶媒の使用量は特に限定されず、製造方法や、使用する材料に応じて適宜決定すればよい。
【0061】
正極組成物には、他の成分として、必要により、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ニトリル系ポリマー、ジエン系ポリマー等の非フッ素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー等のポリマー、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤等の乳化剤;スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤等の分散剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、アルカリ可溶型(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等の増粘剤、防腐剤等を含有させてもよい。正極組成物の不揮発分における他の成分の含有率は、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0~10質量%である。
【0062】
正極組成物は、例えば、正極活物質、導電助剤、結着剤、溶媒、必要に応じて他の成分を混合し、ビーズミル、ボールミル、攪拌型混合機等を用いて分散させることによって調製できる。
【0063】
(負極)
負極は、負極集電体及び負極合材層を含み、負極合材層が負極集電体上に形成されている。
【0064】
負極集電体に用いられる金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等が挙げられる。これらの中では銅が好ましい。なお、負極集電体の形状や寸法は特に制限されない。
【0065】
負極合材層は、負極組成物から形成されている。負極組成物は、負極活物質、導電助剤、結着剤、これら成分を分散するための溶媒等を含有する。
【0066】
負極活物質としては、グラファイト、天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ポリアセン系導電性ポリマー、チタン酸リチウム等の複合金属酸化物、リチウム合金、シリコン系材料等が挙げられる。負極活物質は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。負極組成物の不揮発分における負極活物質の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは85~99.7質量%、より好ましくは90~99.5質量%である。
【0067】
導電助剤、結着剤、及び溶媒は、正極組成物に用いられるものと同様のものを使用できる。負極組成物の不揮発分における導電助剤の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは1~20質量%、より好ましくは1.5~10質量%である。
【0068】
負極組成物には、他の成分として、必要により、分散剤、増粘剤、防腐剤等の他の成分を含有させてもよい。負極組成物の不揮発分における他の成分の含有率は、リチウムイオン二次電池の出力特性及び電気特性を向上させる観点から、好ましくは0~15質量%、より好ましくは0~10質量%である。
【0069】
負極組成物は、例えば、負極活物質、導電助剤、結着剤、溶媒、必要に応じて他の成分を混合し、ビーズミル、ボールミル、攪拌型混合機等を用いて分散させることによって調製できる。
【0070】
(電極の製造方法)
電極は、例えば、集電体に電極組成物を塗布し、乾燥させて電極合材層を形成させることによって製造できる。なお、電極には、必要により、例えば、金型プレス、ロールプレス等を用いて加圧処理を施してもよい。
【0071】
(セパレーター)
セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、セルロース系樹脂(セルロース系繊維)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド等のアラミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の樹脂からなるフィルムを用いることができる。
【0072】
(二次電池の製造方法)
本実施形態に係る二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレーターを介して重ね合わせ、得られた積層体を電池容器に入れ、電池容器に非水電解液を注入して封口することにより、容易に製造できる。
【0073】
電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、リード板等を入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。
【0074】
電池の形状としては、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型等が挙げられるが、本開示は、かかる例示のみに限定されるものではない。
【実施例
【0075】
以下に、本開示を実施例に基づいて説明する。なお、本開示は、以下の実施例に限定されるものではなく、以下の実施例を本開示の趣旨に基づいて変形、変更することが可能であり、それらを本開示の範囲から除外するものではない。
【0076】
<非水電解液の調製>
(実施例1)~(実施例3)
電解液溶媒としてエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(体積比)組成の混合溶媒(キシダ化学(株)製)に、電解質塩(リチウム塩)としてLiFSI((株)日本触媒製)及びLiPF(ステラケミファ(株)製)をそれぞれ表1に示す濃度となるように溶解した。
【0077】
続いて、前記で得られた溶液に、ニトロキシラジカル基を有する化合物として、ニトロソジスルホン酸カリウム(シグマアルドリッチ製)を非水電解液質量比で(非水電解液100質量%中のニトロソジスルホン酸カリウムの量が)0.5質量%となるように添加し、1日撹拌することにより、非水電解液を調製した。
【0078】
得られた非水電解液の電解質塩組成、ニトロキシラジカル基含有化合物の種類、及び他添加剤の種類を表1に示す(以下同じ)。
【0079】
(実施例4)
実施例3で得られた非水電解液に、他添加剤として、LiHNSO及びLiCO(富士フイルム和光純薬(株)製)をそれぞれ非水電解液質量比で0.5質量%となるように添加し、1日撹拌した。
【0080】
最後に、得られた非水電解液を孔径0.45μmのフィルター(ジーエルサイエンス(株)製、GLクロマトディスク非水系13N)を用いて濾過することにより、非水電解液を調製した。
【0081】
なお、LiHNSOは、以下のように調製した。HNSOを純水でスラリー化した。得られたスラリーを撹拌すると共に発熱を監視しながら、水酸化リチウム一水和物をスラリーに投入した。続いて、スラリーの不溶分を濾過した。最後に、濾物を80℃で減圧乾燥した。得られたLiHNSOをXRD(スペクトリス(株)製、品番:X PERT-MPD)で分析したところ、不純物は確認できなかった。
【0082】
(比較例1)
非水電解液にニトロソジスルホン酸カリウムを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして非水電解液を調製した。
【0083】
(比較例2)
非水電解液にニトロソジスルホン酸カリウムを添加しなかったこと以外は、実施例2と同様にして非水電解液を調製した。
【0084】
(比較例3)
非水電解液にニトロソジスルホン酸カリウムを添加しなかったこと以外は、実施例3と同様にして非水電解液を調製した。
【0085】
<非水電解液の評価>
(1)ラミネート電池の作製
(正極の作製)
三元系正極活物質であるLiNi1/3Co1/3Mn1/3(ユミコア製、品番:MX7h)、アセチレンブラック(AB、デンカ(株)製、製品名:デンカブラック(登録商標))、グラファイト(日本黒鉛工業(株)製、品番:SP270)、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF、(株)クレハ製、品番:KF1120)をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)中に分散させて正極合材スラリー(正極活物質:AB:グラファイト:PVdF=93:2:2:3(固形分質量比))を作製した。
【0086】
続いて、得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔(正極集電体、日本製箔(株)製、厚み15μm)に対して、乾燥後の塗工重量が19.4mg/cmとなるようにアプリケーターで片面塗工し、110℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。さらに、110℃の真空乾燥炉で12時間乾燥させた。その後、ロールプレス機により密度3.1g/cmとなるまで加圧成形することにより、シート状(厚み83μm)の正極を得た。
【0087】
(負極の作製)
負極活物質としてグラファイト(天然黒鉛(日立化成(株)製、品番:SMG):人造黒鉛(TIMCAL製、品番:SFG15)=85:15(固形分質量比))、スチレン-ブタジエンゴム(SBR、結着剤)及びカルボキシメチルセルロース(CMC、結着剤)を、超純水中に分散させて、負極合材スラリー(負極活物質:SBR:CMC=97.3:1.5:1.2(固形分質量比))を作製した。
【0088】
続いて、得られた負極合材スラリーを銅箔(負極集電体、福田金属箔粉工業(株)製、厚み15μm)に対して、乾燥後の塗工重量が12.7g/cmとなるようにアプリケーターで片面塗工し、80℃のホットプレート上で10分間乾燥させた。さらに、100℃の真空乾燥炉で12時間乾燥させた。その後、ロールプレス機により密度1.3g/cmとなるまで加圧成形することにより、シート状(厚み113μm)の負極を得た。
【0089】
(ラミネート電池の作製)
得られた正極及び負極をそれぞれカットし、極性導出リードを超音波で溶接し、16μmのポリエチレン(PE)セパレーターを介して該正極及び負極を対向させ、ラミネート外装で3方を封止した。未封止の1方より、前記で得られた各非水電解液を700μL添加した。これにより4.2V、容量30mAhのラミネート電池(以下「セル」ともいう)を作製した。
【0090】
(エージング工程)
得られたラミネート電池を、充放電試験装置(アスカ電子(株)製、品番:ACD-01、以下同じ)を用い、常温(25℃、以下同じ)にて0.1C(3mA)の電流値で90分充電した。充電後、封止部の一辺を開裂してガス抜きを行った後、該一辺を真空中で再封止した。その後、常温で3日間放置した。放置後、常温にて0.5C(15mA)、4.2Vで5時間の定電流定電圧充電(CCCV)をした。その後、常温にて0.2C(6mA)、2.75V終止(放電終止電圧)の定電流放電をした。さらに前記と同様の条件で定電流定電圧充電をした後、常温にて1C(30mA)、2.75V終止の定電流放電をした。以上をセルのエージング工程とした。
【0091】
(2)実軸抵抗の評価
エージング後のセルを、常温にて4.2V、1C(30mA)で30分の定電流充電をした後、充電深度(SOC)50%、25℃及び-30℃の条件下で、インピーダンスアナライザ(Bio Logic製、品番:VSP-300)を用い、周波数1GHzから10mHzまでのインピーダンス測定を行った。得られた測定値の円弧が発散する周波数から、実軸抵抗を求めた。その結果を表1の「実軸抵抗」における「25℃」及び「-30℃」の欄に示す。
【0092】
なお、円弧が発散する周波数とは、25℃測定の場合、周波数100Hz~0.01Hzの間で虚軸数値が極小を迎えた周波数をいい、-30℃の測定の場合、周波数10Hz~0.001Hzの間で虚軸数値が極小を迎えた周波数いう。
【0093】
また、表1において、実軸抵抗の低減率とは、比較例の実軸抵抗を基準(即ち「1」)とする、当該比較例と同じ塩組成である実施例の実軸抵抗(比率)をいう。より具体的には、実施例1の実軸抵抗の低減率は、比較例1の実軸抵抗を基準とする比率である。また、実施例2の実軸抵抗の低減率は、比較例2の実軸抵抗を基準とする比率である。また、実施例3及び4の実軸抵抗の低減率は、比較例3の実軸抵抗を基準とする比率である。以下、各実施例に対する基準比較例は同じ。
【0094】
例えば、実施例1の実軸抵抗の低減率は、比較例1の実軸抵抗を基準として、以下の(式1):
実施例1の実質抵抗値の低減率(%)=[(実施例1の実質抵抗値)/(比較例1の実質抵抗値)]×100 (式1)
により求めることができる。前記(式1)により求められる実軸抵抗の低減率は0.1%の差があれば、実質抵抗値が低減したといえる。
【0095】
(3)直流抵抗(DCR)の評価
エージング後のセルを、常温にて4.2V、1C(30mA)で30分の定電流充電をし、充電深度(SOC)50%とした。続いて、充電深度(SOC)50%から0.2Cで10秒間放電し、30分休止した後、1Cで10秒放電し、更に30分休止した後、2Cで10秒間放電した。各放電電流を横軸に、放電前後の△Vを縦軸にプロットし、その直線の傾きをDCRとした。各基準比較例のDCRを100%として、当該各基準比較例と同じ塩組成の各実施例のDCRの低減率を表1の「DCR低減率」の欄に示す。
【0096】
(4)高温耐久性の評価
前記「(2)実軸抵抗の評価」において、インピーダンス測定後のセルを、常温にて4.2V、1C(30mA)で3時間終止の定電流定電圧充電をした。この充電後の状態を満充電状態として、60℃で14日間保存した。保存後、25℃で冷却した後、25℃にて1C(30mA)で2.75V終止までの放電を行った。放電後、25℃にて4.2V、1C(30mA)で0.6mA終止の定電流定電圧充電を行い、1C(30mA)、2.75V終止の放電で放電容量を確認した。その測定結果を表1の「60℃で14日保存」における「放電容量」の欄に示す。
【0097】
また、60℃で14日間保存後のセルを、25℃にて4.4V、1C(30mA)で3時間充電を行い、85℃で3日間放置した。放置後のセルを25℃で冷却した後、25℃にて1C(30mA)で2.75V終止までの放電を行った。放電後、25℃にて4.2V、1C(30mA)で0.6mA終止の定電流定電圧充電を行い、1C(30mA)、2.75終止の放電で放電容量を確認した。その測定結果を表1の「85℃で3日放置」における「放電容量」の欄に示す。
【0098】
なお、表1において、60℃で14日間保存後又は85℃で3日間放置後の放電容量(以下「高温保存後の放電容量」ともいう)の改善率とは、比較例の高温保存後の放電容量を基準(即ち「1」)とする、当該比較例と同じ塩組成である実施例の高温保存後の放電容量(比率)をいう。
【0099】
例えば、実施例1の高温保存後の放電容量の改善率は、比較例1の高温保存後の放電容量を基準として、以下の(式2):
実施例1の60℃で14日間保存後又は85℃で3日間放置後の放電容量の改善率(%)=[(実施例1の60℃で14日間保存後又は85℃で3日間放置後の放電容量)/(比較例1の60℃で14日間保存後又は85℃で3日間放置後の放電容量)]×100 (式2)
により求めることができる。前記(式2)により求められる高温保存後の放電容量の改善率は0.1%の差があれば、高温保存後の放電容量が改善したといえる。
【0100】
(5)容量維持率の評価
前記「(3)直流抵抗(DCR)の評価」において、DCR測定後のセルを45℃にて、以下のサイクル条件でサイクル試験を行った。300サイクル後の容量維持率を以下の(式3)に基づいて求めた。その結果を表1の「300サイクル試験」における「容量維持率」の欄に示す。
【0101】
容量維持率(%)=(300サイクル目の1C容量/1サイクル目の1C容量)×100 (式3)
【0102】
(サイクル条件)
・充電:4.2V、1C(30mA)で定電流定電圧充電(CCCV)、0.6mA終止、10分間休止
・放電:1C(30mA)で定電流(CC)放電、2.75V終止、10分間休止
【0103】
なお、表1において、300サイクル試験後の容量維持率の改善率とは、比較例の容量維持率を基準(即ち「1」)とする、当該比較例と同じ塩組成である実施例の容量維持率(比率)をいう。
【0104】
例えば、実施例1の容量維持率の改善率は、比較例1の容量維持率を基準として、以下の(式4):
実施例1の300サイクル試験後の容量維持率の改善率(%)=[(実施例1の300サイクル試験後の容量維持率)/(比較例1の300サイクル試験後の容量維持率)]×100 (式4)
により求めることができる。前記(式4)により求められる300サイクル試験後の容量維持率の改善率は0.1%の差があれば、サイクル特性が改善したといえる。
【0105】
【表1】
【0106】
表1の結果から、各実施例の非水電解液は、ニトロキシラジカル基を有する化合物を含むため、当該各非水電解液が用いられた電池は、界面抵抗の増大が抑制され、それに伴い、DCRが低減し、高温耐久性及びサイクル特性の低下が抑制されることが分かる。より具体的には、実施例1は同じ塩組成の比較例1と対比して、また実施例2は同じ塩組成の比較例2と対比して、また実施例3~4は同じ塩組成の比較例3と対比して、実軸抵抗及びDCRが低減され、高温保存後の放電容量及びサイクル特性が改善されることが分かる。
【0107】
また、LiFSI及びLiPFの混合塩組成の実施例2及び3は、LiPF単体塩組成の実施例1と対比して、実軸抵抗が小さく、高温保存後の放電容量及び300サイクル試験後の容量維持率が大きいだけでなく、同じ塩組成の基準比較例と対比して、実軸抵抗及びDCRの低減率、及び高温保存後の放電容量及び300サイクル試験後の容量維持率の改善率が大きい。従って、LiFSI及びLiPFの混合塩組成の非水電解液は、LiPF単体塩組成の非水電解液よりもニトロキシラジカル基を有する化合物の添加による電池性能の改善効果が大きいことが分かる。その理由は定かではないが、LiFSIを含む非水電解液は、LiPF単体塩組成の非水電解液よりもイオン伝導に優れること、LiFSIがLiPFの分解を抑制し、LiPF分解由来の副反応が抑えられること、LiFSIがニトロキシラジカル基を有する化合物のイオン吸脱着を促進していること等が考えられる。
【0108】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る非水電解液及び当該非水電解液が用いられてなるリチウムイオン二次電池によれば、以下の効果を得ることができる。
【0109】
(1) 本実施形態に係る非水電解液は、リチウム塩と電解液溶媒と共に、ニトロキシラジカル基を有する化合物を含むため、当該非水電解液が用いられたリチウムイオン二次電池では、電池として体積当たりのエネルギー密度が低下するという不都合が生じない。
【0110】
(2) 前記非水電解液は、リチウム塩及び電解液溶媒を含む非水電解液にニトロキシラジカル基を有する化合物を溶解することにより得られ、ニトロキシラジカル基を有する化合物と導電材とを複合化する必要がないため、当該非水電解液が用いられたリチウムイオン二次電池の製造プロセスが容易である。
【0111】
(3) 前記非水電解液が用いられたリチウムイオン二次電池では、界面抵抗が低減され、それに伴い、直流抵抗が低減され、高温耐久性能及びサイクル特性が改善する(換言すると、界面抵抗及び直流抵抗の増大、並びに高温耐久性能及びサイクル特性の低下を抑制できる)。
【産業上の利用可能性】
【0112】
以上説明したように、本開示は、リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液に適している。