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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】抗CD25抗体及びその適用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230315BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230315BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230315BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230315BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230315BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/28
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 D
A61K39/395 N
C12P21/08
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021560469
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 CN2020094919
(87)【国際公開番号】W WO2020248938
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】201910495614.4
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910495626.7
(32)【優先日】2019-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521442039
【氏名又は名称】山東博安生物技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG BOAN BIOTECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.39, Keji Avenue, High-Tech Zone, Yantai, Shandong, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宋徳勇
(72)【発明者】
【氏名】劉秀
(72)【発明者】
【氏名】韓静
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/167104(WO,A1)
【文献】米国特許第06521230(US,B1)
【文献】国際公開第2004/045512(WO,A2)
【文献】Walker, K.W. et al.,Pharmacokinetic comparison of a diverse panel of non-targeting human antibodies as matched IgG1 and IgG2 isotypes in rodents and non-human primates,PLoS One,14(5),2019年05月23日,e0217061
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/13
C07K 16/28
C12N 5/10
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 39/395
C12P 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの重鎖相補性決定領域であって、HCDR1アミノ酸配列は、配列番号14によって表され、HCDR2アミノ酸配列は、配列番号15によって表され、及びHCDR3アミノ酸配列は、配列番号16によって表される、3つの重鎖相補性決定領域と、
3つの軽鎖相補性決定領域であって、LCDR1アミノ酸配列は、配列番号11によって表され、LCDR2アミノ酸配列は、配列番号12によって表され、及びLCDR3アミノ酸配列は、配列番号13によって表される、3つの軽鎖相補性決定領域とを含み
CD25に結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号4によって表される重鎖可変領域及び配列番号3によって表される軽鎖可変領域を含み、CD25に結合する抗体又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記抗体又は抗原結合断片は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片又はdsFv断片を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
トCD25に結合する、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
核酸であって、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸。
【請求項6】
細胞であって、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片を発現する細胞。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項に記載の核酸、又は請求項に記載の細胞を含む医薬組成物。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項に記載の核酸を含むキット。
【請求項9】
疾患の治療、予防、検出又は診断のための薬剤であって、請求項1~のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項に記載の核酸を含み、前記疾患は、癌である、薬剤
【請求項10】
疾患の治療、予防、検出又は診断のための薬剤であって、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片又は請求項5に記載の核酸を含み、前記疾患は、胃癌、食道癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮頸癌、肉腫、細胞腫、肺癌、結腸癌、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌、黒色腫、乳癌、骨髄腫、神経膠腫、白血病及びリンパ腫である、薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、生物医学分野に関し、より具体的には、CD25に結合する抗体及びその適用に関する。
【背景技術】
【0002】
調節性T細胞(Treg)は、免疫恒常性の媒介において極めて重要な役割を果たし、末梢性トレランスの確立及び維持を促進し得る。しかしながら、癌に関連して、その役割は、一層複雑になる。癌細胞は、その独自の腫瘍関連抗原を発現するため、エフェクター細胞の応答を抑制するTregの存在は、腫瘍進行を促進し得る。従って、確立された腫瘍におけるTregの浸潤は、有効性にとって大きい障害の1つである。抑制機構を用いるTregは、現行の治療法、特に抗腫瘍応答の誘導又は増強に依存する免疫療法の限界、更に不成功の大きい一因をなすと考えられる(Onishi H et al.,2012 Anticanc.Res.32,997-1003)。Tregの腫瘍浸潤は、幾つかの予後不良のヒト癌とも関連性がある(Shang B et al.,2015,Sci Rep.5:15179)。Treg細胞がマウスモデルにおいて腫瘍の確立及び進行に寄与すること及びそれが存在しない場合に腫瘍進行の遅延につながることが分かっている。ヒトでは、腫瘍Treg細胞の高い浸潤比率、更に重要なことにエフェクターT細胞(Teff)の対Treg細胞比の低下は、様々なヒト癌の予後不良と関連している(Shang et al.,2015)。
【0003】
CD25は、Treg枯渇を実現する可能性のある分子標的の1つである。CD25は、インターロイキン-2高親和性受容体α鎖(IL-2Rα)としても知られる。CD25は、Tregに高度に発現するが、TeffにはCD25が存在しないか又は低発現である。
【0004】
先行技術の中には、MA251(Rubin et al.,1985,Hybridoma 4(2)91-102、Tanaka et al.,1986,Microbiol.Immunol 30(4),373-388)など、CD25に結合するが、IL2によるCD25への結合を遮断しない抗体があるが、しかし、それらには、不十分なCD25結合活性、PBMC活性化の阻害及び全般的な薬物動態性能などの欠点が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
疾患治療のための医薬への患者の要求、特に抗体薬物への要求に直面して、結合活性がより高い抗CD25抗体を提供することは、臨床上、依然として喫緊に必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の全文において、VL(軽鎖可変領域)、VH(重鎖可変領域)、LCDR(軽鎖相補性決定領域)、HCDR(重鎖相補性決定領域)、LCDR1、LCDR2、LCDR3、HCDR1、HCDR2及びHCDR3に関する様々な実施形態は、個別に又は任意の組み合わせで実施され得る。
【0007】
本発明のある態様において、本発明は、3つの重鎖相補性決定領域であって、HCDR1アミノ酸配列は、配列番号14によって表され、HCDR2アミノ酸配列は、配列番号15によって表され、及びHCDR3アミノ酸配列は、配列番号16によって表される、3つの重鎖相補性決定領域を含む抗体又はその抗原結合断片に関する。更に、抗体又はその抗原結合断片は、3つの軽鎖相補性決定領域であって、LCDR1アミノ酸配列は、配列番号11によって表され、LCDR2アミノ酸配列は、配列番号12によって表され、及びLCDR3アミノ酸配列は、配列番号13によって表される、3つの軽鎖相補性決定領域を更に含む。
【0008】
本発明のある態様において、本発明で提供される抗体又はその抗原結合断片は、配列番号4によって表される重鎖可変領域を含み;好ましくは配列番号3によって表される軽鎖可変領域を更に含む。
【0009】
本発明のある態様において、本発明は、3つの軽鎖相補性決定領域であって、LCDR1アミノ酸配列は、配列番号5によって表され、LCDR2アミノ酸配列は、配列番号6によって表され、及びLCDR3アミノ酸配列は、配列番号7によって表される、3つの軽鎖相補性決定領域;及び/又は3つの重鎖相補性決定領域であって、HCDR1アミノ酸配列は、配列番号8によって表され、HCDR2アミノ酸配列は、配列番号9によって表され、及びHCDR3アミノ酸配列は、配列番号10によって表される、3つの重鎖相補性決定領域を含む抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0010】
別の態様において、本発明は、配列番号1によって表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域及び/又は配列番号2によって表されるアミノ酸配列の重鎖可変領域を含む抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0011】
本発明のある態様によれば、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片の軽鎖定常領域の配列は、配列番号20である。
【0012】
本発明のある態様によれば、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片の重鎖定常領域の配列は、配列番号17である。
【0013】
具体的には、本発明において提供される抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、配列番号3によって表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域、配列番号4によって表されるアミノ酸配列の重鎖可変領域、配列番号20によって表されるアミノ酸配列の軽鎖定常領域及び配列番号17によって表されるアミノ酸配列の重鎖定常領域を含む。
【0014】
具体的には、本発明において提供される抗体又はその抗原結合断片は、好ましくは、配列番号1によって表されるアミノ酸配列の軽鎖可変領域、配列番号2によって表されるアミノ酸配列の重鎖可変領域、配列番号20によって表されるアミノ酸配列の軽鎖定常領域及び配列番号17によって表されるアミノ酸配列の重鎖定常領域を含む。
【0015】
本発明のある態様によれば、本発明の抗体又はその抗原結合断片は、CD25、好ましくはヒトCD25に結合する。
【0016】
本発明のある態様によれば、本発明は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、scFv断片又はdsFv断片などを含む、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片に関する。
【0017】
本発明のある態様によれば、本発明は、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸に関する。
【0018】
本発明のある態様によれば、本発明は、前出の態様の核酸を含むベクターに関するか、又はこのベクターは、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片を発現することができる。好ましくは、ベクターは、ウイルスベクターであり得;好ましくは、ウイルスベクターとしては、限定はされないが、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター又はレトロウイルスベクターなどが挙げられ;好ましくは、ベクターは、非ウイルスベクターであり得;好ましくは、ベクターは、哺乳類細胞発現ベクターであり得;好ましくは、発現ベクターは、細菌発現ベクターであり得;及び好ましくは、発現ベクターは、真菌発現ベクターであり得る。
【0019】
本発明のある態様によれば、本発明は、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片の細胞を発現することができる細胞に関する。好ましくは、細胞は、細菌細胞であり;好ましくは、細菌細胞は、大腸菌(E.coli)細胞などであり;好ましくは、細胞は、真菌細胞であり;好ましくは、真菌細胞は、酵母細胞であり;好ましくは、酵母細胞は、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)細胞などであり;好ましくは、細胞は、哺乳類細胞であり;好ましくは、哺乳類細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒト胎児腎細胞(293)、B細胞、T細胞、DC細胞又はNK細胞などである。
【0020】
本発明のある態様によれば、本発明は、前出の態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、核酸、ベクター又は細胞を含む医薬組成物に関し、好ましくは、この医薬組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤を更に含み、及び薬学的に許容可能なベクターは、好ましくは、以下:薬学的に許容可能な溶媒、分散剤、添加剤、可塑剤などの1つ以上を含む。
【0021】
一部の実施形態において、医薬組成物は、他の療法剤を更に含み得る。一部の実施形態において、他の療法剤は、化学療法剤、免疫療法剤又はホルモン療法剤を含む。抗体又はその抗原結合断片と他の療法剤との併用投与は、療法剤の治療効果を亢進させることができる。
【0022】
一部の実施形態において、「治療効果を亢進させる」とは、他の療法剤又は治療法の治療効果を亢進させることを指す。本発明において提供される抗体又は抗原結合断片は、個別に又は他の療法剤若しくは治療法と併用して投与することができる。一部の実施形態において、他の療法剤又は治療法は、化学療法剤、免疫療法剤、ホルモン療法剤、放射線療法及び手術を含む。
【0023】
本発明のある態様によれば、本発明の抗体若しくはその抗原結合断片を含むか、又は抗体若しくはその抗原結合断片をコードする核酸を含むキットが提供される。
【0024】
本発明のある態様によれば、本発明は、疾患の治療又は予防用医薬品の調製における、前出の態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、核酸、ベクター又は細胞の適用に関する。
【0025】
本発明のある態様によれば、本発明は、診断又は検出キットの調製における、前出の態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片又は核酸の適用に関する。
【0026】
本発明のある態様では、疾患を治療又は予防する方法であって、必要としている対象に本発明の抗体若しくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物を投与することを含む方法が提供される。
【0027】
本発明のある態様では、診断又は検出方法であって、必要としている対象又は試料に本発明の抗体若しくは抗原結合断片、核酸又はキットを投与することを含む方法が提供される。好ましくは、方法は、疾患を診断又は検出する方法である。
【0028】
本発明のある態様によれば、本発明は、疾患の治療又は予防のための、前出の態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、核酸、ベクター、細胞又は医薬組成物の使用に関する。
【0029】
本発明のある態様によれば、本発明は、検出又は診断のための、前出の態様のいずれか1つの抗体若しくはその抗原結合断片、核酸又はキットの使用に関する。好ましくは、この使用は、疾患を診断又は検出するためのものである。
【0030】
本発明のある態様によれば、疾患は、癌である。
【0031】
本発明のある態様によれば、癌は、胃癌、食道癌、頭頸部癌、膀胱癌、子宮頸癌、肉腫、細胞腫、肺癌、結腸癌、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、膵癌、肝癌、黒色腫、乳癌、骨髄腫、神経膠腫、白血病、リンパ腫などを含む。
【0032】
本発明のある態様によれば、本発明は、前出の態様のいずれか1つの抗体又はその抗原結合断片を調製する方法であって、上記のベクターを細胞にトランスフェクトすることと、トランスフェクト細胞によって抗体又はその抗原結合断片を発現させることとを含むか;又は上記の細胞で抗体又はその抗原結合断片を発現させることを含む方法に関する。
【0033】
本発明のある態様によれば、本発明において提供される抗体又はその抗原結合断片は、以下の利点:亢進したCD25タンパク質結合活性、亢進したCD25タンパク質親和性、亢進したCD25発現細胞殺傷能力、減少したPBMC活性化阻害、亢進したインビボ腫瘍増殖阻害能力、亢進したインビボ腫瘍殺傷能力、Treg細胞数を減少させる亢進した能力又はエフェクターT細胞数を増加させる亢進した能力の1つ以上を有する。
【0034】
本発明の具体的な実施形態又は先行技術における技術的解決法を更に明確に説明するため、具体的な実施形態又は先行技術の記載に必要な図面を以下に手短に記載する。当然ながら、以下の記載中にある図面は、本発明の一部の実施形態であり、当業者は、発明の能力を行使することなく、これらの図面に基づいて他の図面を入手することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】7回の免疫後における実施例1の免疫スキームのBoAn-hMab1マウスの血清力価(62500倍希釈)を示す。
図2A】実施例3のELSIA検出によるCD25抗体とCD25との結合感受性を示す。
図2B】実施例3のELSIA検出によるCD25抗体とCD25との結合感受性を示す。
図2C】実施例3のELSIA検出によるCD25抗体とCD25との結合感受性を示す。
図2D】実施例3のELSIA検出によるCD25抗体とCD25との結合感受性を示す。
図2E】実施例3のELSIA検出によるCD25抗体とCD25との結合感受性を示す。
図3A】実施例3の候補抗体の模擬殺傷活性の検出結果を示す。
図3B】実施例3の候補抗体の模擬殺傷活性の検出結果を示す。
図4】実施例3の候補抗体の細胞遮断活性の検出結果を示す。
図5】実施例4のCD25Q2-BA9-IgG1がアカゲザルのTreg細胞含有量の減少に及ぼす効果を示す。
図6】実施例4のカニクイザルにおける候補抗体の薬物代謝を示す。
図7A】実施例5.1のB-hIL2Rαヒト化マウスMC38結腸癌動物モデルにおける候補抗体の有効性結果を示し、ここで、図7Aは、MC38腫瘍モデルマウスの体重データを示す。
図7B】実施例5.1のB-hIL2Rαヒト化マウスMC38結腸癌動物モデルにおける候補抗体の有効性結果を示し、ここで、図7Bは、MC38腫瘍モデルの腫瘍容積データを示す。
図8A】実施例5.2のCD3中のCD8+細胞(Teff)含有量を示す。
図8B】実施例5.2のCD3中のCD25+ Foxp3+細胞(Treg)含有量を示す。
図8C】実施例5.2のCD4中のFoxp3+細胞(Treg)含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下では、本発明の技術的解決法を図面と併せて明確且つ完全に記載し、当然ながら、記載される実施形態は、本発明の実施形態の一部であるが、しかし全ての実施形態であるわけではない。本発明の実施形態に基づき、当業者が発明の能力を行使することなく達成する他のあらゆる実施形態が本発明の範囲内にある。
【0037】
本発明の全文を通して記載される種々の実施形態に関わる技術的特徴は、互いに組み合わせて実施することができる。
【実施例
【0038】
実施例1 抗CD25モノクローナル抗体の作製
1.1 免疫スキーム
CD25(Sino Biological、カタログ番号10165-H08H)をフロイントアジュバントと乳化させて、Boan bioの完全ヒト抗体トランスジェニックマウスBoAn-hMab1(中国特許第103571872B号明細書に記載される方法のとおりに調製される)を免疫する。初回免疫には、フロイント完全アジュバント(Sigma、カタログ番号:F5881-10ML)を使用し、2回目の免疫~6回目の免疫には、フロイント不完全アジュバント(Sigma、カタログ番号:F5506-10ML)を使用し、現時点で合計14匹のマウスを免疫した。血清力価が高い7匹のマウスをブースター免疫に選択し、3日後にマウスを犠牲死させて、続く実験のために脾臓を摘出した。マウスの血清力価(62500倍希釈)を図1に示す。
【0039】
1.2 ファージライブラリの構築
1.1の免疫化マウスの脾臓細胞からRNAを抽出し、次にcDNAに逆転写し、Carlos F.Barbas III,Phage display:A laboratory manualに記載される方法を参照してファージライブラリの構築ステップを実施し、cDNAからPCR法によって重鎖及び軽鎖の可変領域を入手し、次に重鎖及び軽鎖の可変領域のオーバーラップ伸長PCRによってscFvを入手し、scFvをプラスミドpCOMB3xと消化後にライゲートし、次にライゲーション産物を大腸菌(E.coli)TG1コンピテント細胞にエレクトロトランスフェクションし、ファージを加えてインキュベーション後にTG1を感染させて、濃縮した培養液の上清が、本発明のファージライブラリである。
【0040】
1.3 ファージライブラリスクリーニング(2つの方法)
(1)プレートスクリーニング:プレートをCD25タンパク質(Sino Biological、10165-H08H)によって1μg/ウェルでコーティングし、4℃で一晩放置し、翌日、プレートを2%BSAで1時間封止し、ファージライブラリ(2×1012)に加えて2時間インキュベートし、CD25に特異的に結合したファージを溶出緩衝液(4.2mlの濃塩酸(Comeo)を500mlの超純水に加え、グリシン粉末(Biotopped、BG0617-500)でpHを2.2に調整する)又は15μg/mL MA251で4~10回の洗浄後に溶出させる。
【0041】
(2)磁気ビーズスクリーニング:一般的なステップに従い、CD25-Fcタンパク質(Sino Biological、10165-H02H)をビオチン化し、Thermoの磁気ビーズ(Invitrogen Dynabeads M-280ストレプトアビジン、00355871)に結合させて、次にファージライブラリとインキュベートし、CD25に特異的に結合したファージを溶出緩衝液(pH2.2)又は15μg/mL MA251で4~10回の洗浄後に溶出させる。
【0042】
スクリーニングしたファージクローンにscFvを発現させて、scFvとCD25との結合を検出し、scFvによるIL2/CD25結合の遮断を検出して、CD25に良好に結合し、且つCD25を遮断しないscFvを続く構築に選択する。
【0043】
scFvとCD25との結合のELISA検出:CBS緩衝液の調製:1.59gのNaCO(Sinopharm、10019260)及び2.93gのNaHCOを秤量する。また、蒸留水を加えて1Lにすることにより、CBS緩衝液を調製した。CD25(10165-H08H、Sino Biological)タンパク質をpH9.6 CBSで0.2μg/mLに希釈し、酵素標識プレートに100μL/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄した後、3%脱脂粉乳を使用して37℃で1時間封止した。プレートを洗浄した後、80μLのPBST(PBS+0.05%Tween20)を加える。また、次に20μLのscFvペリプラズムを加えて、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、抗flag二次抗体(Proteintech、カタログ番号:HRP-66008)を加えて37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、各ウェルに100μLのTMB(Makewonder、カタログ番号1001)基質を加えて発色させて、10分後、各ウェルに50μLの2M HSOを加えて発色を停止させ、マイクロプレートリーダーでOD450を読み取った。
【0044】
scFvによるCD25/IL2結合の遮断のELISA検出:CD25(10165-H08H、Sino Biological)タンパク質をpH9.6 CBSで0.5μg/mLに希釈し、酵素標識プレートに100μL/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄した後、3%脱脂粉乳を使用して37℃で1時間封止した。プレートを洗浄した後、各ウェルに50μLのscFvペリプラズムを加えた。次に、ビオチン標識IL2タンパク質(最終濃度は、0.02μg/mLである)を50μL/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、PBSTで希釈したSTREP/HRPを100μL/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、各ウェルに100μLのTMBを加えて発色させて、10分後、各ウェルに50μLの2M HSOを加えて発色を停止させて、マイクロプレートリーダーでOD450を読み取った。
【0045】
実施例2 候補抗体の分子構成及び作製
磁気ビーズスクリーニング後のクローンCD25Q2-BA3\BA9\BA125、CD25Q8-BT942、CD25Q11-BA402\BA406\BA410\BA415\BA422\BA428及びCD25Q14-BA443\BA448\BA458並びにプレートスクリーニング後のクローンCD25Q11-CA35\CA36\CT848及びCD25Q14-CA705\CA707\CA721をシーケンシングのためにInvitrogen Biotechnology Ltdに送った。各クローンの軽鎖可変領域及び重鎖可変領域のアミノ酸配列を表1に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
最後に、従来の分子生物学技法によって実施される可変領域遺伝子増幅(2*Phanta Max Master Mix、製造者:Vazyme、品目番号:P515-AA、ロット番号:TE211GB)、シグナルペプチド及び可変領域オーバーラップ伸長、相同組換え(ClonExpress II One Step Cloning Kit、製造者:Vazyme、品目番号:C112-01、ロット番号:TE211L8)などにより、VHをコードするヌクレオチド配列断片を、抗体の重鎖定常領域アミノ酸配列、配列番号17をコードするヌクレオチド配列と共にベクターpCDNA3.4(Life Technology)に挿入し、VLをコードするヌクレオチド配列断片を、抗体の軽鎖定常領域アミノ酸配列(配列番号20)をコードするヌクレオチド配列と共にベクターpCDNA3.4(Life Technology)に挿入した。連結したベクターをHEK293細胞にトランスフェクトし、37℃\8%CO2\125rpm振盪機でインキュベートし、6~7日間一過性に発現させた後、上清をプロテインAアフィニティークロマトグラフィーにより精製して抗CD25抗体を得て、抗体濃度をUV280結合吸光係数により決定した。
【0050】
対照抗体の作製:MA251抗体は、先行技術におけるIL2とCD25との結合を遮断しない抗ヒトCD25抗体であり、ヒトCD25に対して高い親和性を有し、IL2とCD25との結合を遮断しない性能が良好である。MA251抗体は、IL2とCD25との結合を研究する古典的な抗体である。MA251抗体の可変領域をコードするヌクレオチド配列を完全な遺伝子によって合成し、次にベクターpCDNA3.4に挿入し、HEK293細胞によって発現させて、作製された抗体をCD25-MA251-IgG1と名付ける(重鎖可変領域の配列は、配列番号18であり、軽鎖可変領域の配列は、配列番号19であり、軽鎖定常領域の配列は、配列番号20であり、及び重鎖定常領域の配列は、配列番号17である)。
【0051】
実施例3 候補抗体の特徴付け
3.1 候補抗体とCD25タンパク質との結合活性のELISA検出
CD25タンパク質(10165-H08H、Sino Biological)をCBSで種々の濃度(0.08μg/mL、0.02μg/mL、0.005μg/mL、0.00125μg/mL、0.0003125μg/mL、0.000078125μg/mL)に希釈し、酵素標識プレートに100μL/ウェルでコーティングし、4℃で一晩インキュベートした。プレートを洗浄した後、3%脱脂粉乳を使用して37℃で1時間封止した。PBST(PBS+0.05%Tween20)で1μL/mLに希釈した100μLの候補抗体を各ウェルに加え、37℃で1時間インキュベートした。次に、ヤギ抗ヒトIgG/HRP(KPL、カタログ番号:5450-0009)を加え、37℃で1時間インキュベートし、10分間発色させた後、マイクロプレートリーダーでOD450を読み取ることにより、計算によってEC50を得た。結果を図2A図2E及び表2~表6に示す。
【0052】
表2に示されるとおり、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1と抗原CD25との結合のEC50値は、3.328であり、これは、10.63である対照群CD25-MA251-IgG1のEC50値と比べて有意に低く、これは、この候補抗体の抗原結合能が対照群CD25-MA251-IgG1と比べて有意に良好であることを示している。
【0053】
表6に示されるとおり、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1と抗原CD25との結合のEC50値は、2.26であり、これは、24.5である対照群CD25-MA251-IgG1のEC50値と比べて有意に低く、これは、この候補抗体の抗原結合能が対照群CD25-MA251-IgG1と比べて有意に良好であることを示している。
【0054】
候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1及びCD25Q8-BT942-IgG1は、対照群CD25-MA251-IgG1と比較すると、CD25を発現するTreg細胞に対してより強力なターゲティング及び結合効果を有し、より良好な殺傷効果を有し、Treg細胞によるTeff細胞の阻害を低減し、より良好な薬学的効果を有するものと予想される。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
3.2 候補抗体の模擬殺傷活性の検出
FBS(Gibco、カタログ番号:10091-148)とRPMI-1640(Gibco、カタログ番号:11875-093)とを1:99に基づいて混合して1%FBS RPMI-1640を調製し、SU-DHL-1標的細胞を収集し、1%FBS RPMI-1640を使用することにより1.2×10細胞/mLに希釈し、適切な候補抗体を取り、1%FBS RPMI-1640を使用することにより25μg/mLに希釈し、この濃度を初期濃度として使用した。後の使用のため、順番に合計8ポイントまで4倍勾配希釈した。エフェクター細胞ジャーカット(G7011、Promega)を収集し、1%FBS RPMI-1640を使用することにより2.4×10細胞/mLに希釈し、標的細胞を白色96ウェルプレートに25μL/ウェルで加えた。標的細胞で覆われたウェルに勾配希釈した抗体を25μL/ウェルで加えた。エフェクター細胞ジャーカットを25μL/ウェルで加え、96ウェルプレートを細胞インキュベーターに置いて5時間培養し;且つ96ウェルプレートを取り出し、室温に置いて、その温度が室温と平衡になることができるようにした。Bio-Gl発色溶液(G7940、Promega)を75μL/ウェルで加え、15分間反応させて、Tecanマイクロプレートリーダーから発光を読み取って値を得た。結果を図3A図3B及び表7~表8に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
表7に示されるとおり、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1の模擬殺傷活性検出のEC50値は、0.2356であり、これは、0.3606である対照群CD25-MA251-IgG1のEC50値と比べて低く、これは、SU-DHL-1に対する候補抗体の殺傷活性が対照群CD25-MA251-IgG1と比べて良好であることを示している。
【0064】
上記の結果は、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1が、CD25を発現する細胞に良好な殺傷効果を及ぼすことを示しており、このことから、この候補抗体は、CD25を発現するTreg細胞及びそれによるTeff細胞の阻害を減少させることができ、従ってより良好な薬学的効果を有するものと予想される。
【0065】
3.3 抗体の親和性のBiaCore検出
抗体結合反応速度は、表面プラズモン共鳴(SRP)技術に基づくBIAcore8K機器を使用して測定する。GE抗ヒトIgG Fcアミノカップリングキット(GE、カタログ番号BR-1008-39)によって抗ヒトIgG抗体アミノをCM5バイオセンサーチップに約1000反応単位(RU)が得られるようにカップリングした。反応速度測定のため、CD25タンパク質(Sino Biological、10165-H08H)をHBS-EP+1×(GE、BR-1008-26)緩衝液で、50nMから開始して、4濃度勾配について2倍希釈し、0濃度をセットして、2倍連続希釈した。検出しようとする抗体:2μg/ml、試料注入時間70秒、流量5μL/分、5秒間安定;CD25タンパク質:60秒間結合、流量30μL/分、解離450秒間;再生:再生は3M MgCl緩衝液で30秒間実施した、始動3回。単純1対1Languir結合モデル(BIAcore評価ソフトウェア、バージョン3.2)を使用して会合定数(ka)及び解離定数(kd)を計算し、比kd/kaによって平衡解離定数(KD)を計算した。各抗体の親和性データを表9に示す。
【0066】
【0067】
表9に示されるとおり、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1の平衡解離定数KD値は、8.43E-10であり、これは、5.19E-09である対照群CD25-MA251-IgG1のKD値と比べて低く、これは、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1のCD25タンパク質の親和性が対照群CD25-MA251-IgG1と比べて良好であることを示している。
【0068】
表9に示されるとおり、候補抗体CD25Q8-BT942-IgG1の平衡解離定数KD値は、3.79E-09であり、これは、5.19E-09である対照群CD25-MA251-IgG1のKD値と比べて低く、これは、候補抗体CD25Q8-BT942-IgG1のCD25タンパク質の親和性が対照群CD25-MA251-IgG1と比べて良好であることを示している。
【0069】
上記の結果から、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1及びCD25Q8-BT942-IgG1は、対照群CD25-MA251-IgG1と比較すると、CD25を発現するTreg細胞に対してより強力なターゲティング及び結合効果を有し、より良好な殺傷効果を有し、Treg細胞によるTeff細胞の阻害を低減し、より良好な薬学的効果を有するものと予想される。
【0070】
3.4 候補抗体の細胞遮断活性
凍結PBMC(末梢血単核球、製造者:ALLCELLS、品目番号:PB003F-C)を回収し、次に96U字底プレート上で10μg/mLのCD25抗体と30分間共培養し、対照群に抗体を加えず、対照群をNoAbと表示し、次にIL2(0.1U/mL、1U/mL、10U/mL)を加えて10分間インキュベートすることにより(ワーキング培地:1640+10%FBS、2mM L-グルタミン及び10000U/mL Pen-Strep含有)、細胞懸濁液を調製した。最終回の洗浄後、上清を廃棄し、試料をパルスボルテックスしてペレットを完全に解離させた。各ウェルに200μL Foxp3固定/透過処理ワーキング溶液を加えた。それを2~8℃又は室温で暗所下において30~60分間インキュベートした。試料を室温で5分間、400~600gで遠心し、上清を廃棄した。各ウェルに200μLの1×膜破壊溶液を加え、試料を室温で5分間、400~600gで遠心し、上清を廃棄した。また、2回洗浄し;(BD Phosflow(商標)Perm Buffer IIIを予め-20℃に置いて予冷する)PBSで1回洗浄し、遠心し、上清を廃棄し;氷冷Phosflow(商標)Perm Buffer IIIをボルテックスしながらゆっくりと加え、氷上で30分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、250gで10分間遠心して上清を廃棄した。細胞をPBS中に10細胞/mLとなるように再懸濁し、100μL/ウェルで別個に入れ、蛍光標識した抗体染色を継続し、フローサイトメトリーを実施した。生細胞を識別し、CD3陽性T細胞を更に識別した。リン酸化シグナルトランスデューサー及び転写アクチベーター5(PSTAT5)の割合が高いほど、遮断率が低い。結果を図4及び表10に示す。
【0071】
表10に示されるとおり、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1の%PSTAT5値は、26.09であり、これは、18.52である対照群CD25-MA251-IgG1の%PSTAT5値と比べて有意に高く、これは、この候補抗体がIL2とPBMCとの結合を遮断しない点で対照群CD25-MA251-IgG1と比べて有意に良好であることを示している。これは、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1が対照群CD25-MA251-IgG1ほどPBMC活性化を阻害しないものであり得ることを示しており、このことから、候補抗体CD25Q2-BA9-IgG1は、PBMC免疫効果をより良好に実現し、より良好な薬学的効果/抗腫瘍効果を有し得るものと予想される。
【0072】
表10に示されるとおり、候補抗体CD25Q8-BT942-IgG1の%PSTAT5値は、16.46であり、及びCD25-MA251-IgG1の%PSTAT5値は、18.52であり、これは、IL2とPBMCとの結合を遮断しない点で候補抗体が基本的に対照群CD25-MA251-IgG1と同等であることを示している。このことから、候補抗体CD25Q8-BT942-IgG1は、PBMC免疫効果を十分に実現し、良好な薬学的効果/抗腫瘍効果を有し得るものと予想される。
【0073】
【0074】
実施例4 候補抗体のインビボ活性
4.1 健常アカゲザルにおけるCD25Q2-BA9-IgG1のPD活性
CD25Q2-BA9-IgG1抗体を3匹のアカゲザルに10mg/kgの用量で静脈内投与し、フローサイトメーター(Cytomics(商標)FC500)を使用して投与前及び投与後の種々の時点でTreg細胞(CD3+CD4+CD25+FoxP3+)の含有量をフローサイトメトリーにより検出し、検出時点は、(±1分)投与前及び投与後、投与後0.5時間(±1分)、3時間(±2分)、6時間(±5分)、24時間(±10分)、48時間(±20分、2日)、96時間(±30分、4日)、168時間(±1時間、7日)、336時間(±1時間、14日)であった。実験結果を図5に示す。
【0075】
図5を見ると分かるとおり、CD25Q2-BA9-IgG1は、その投与後、アカゲザルにおいてTreg細胞の含有量を有意に減少させることができ、免疫微小環境を有効に調節することができる。
【0076】
4.2 カニクイザルにおける候補抗体のPK活性
各群2匹のカニクイザルとする。それらに種々のCD25抗体を静脈内注射し、投与前(0時間)及び投与後1分、30分、3時間、6時間、1日、2日、4日、7日、10日及び14日の時点で静脈内から全血試料を採取し、血液試料採取チューブに入れ、アイスボックス内で自然凝固させて、血液試料を採取後8時間以内に遠心機に入れ、1000~3000gで10分間遠心し、血清を分離し、試料保存チューブに入れ、14日目にカニクイザルに再び種々のCD25抗体を静脈内注射し、投与前(0時間)及び投与後1分(14日+1分)、30分(14日+30分)、3時間(14日+3時間)、6時間(14日+6時間)、1日(15日)、2日(16日)、4日(18日)及び7日(21日)の時点で静脈内から全血試料を採取し、血液試料採取チューブに入れ、アイスボックス内で自然凝固させて、血液試料を採取後8時間以内に遠心機に入れ、1000~3000gで10分間遠心し、血清を分離して試料保存チューブに入れ、カニクイザルにおける抗体の代謝をELISAによって検出した。結果を図6及び表11に示す。
【0077】
これらの結果は、CD25Q2-BA9-IgG1及びCD25Q8-BT942-IgG1が対照抗体CD25-MA251-IgG1と比べて高いバイオアベイラビリティを有し、良好な薬物動態学的性能を有することを示している。
【0078】
【0079】
実施例5 インビボ腫瘍モデルにおける候補抗体の有効性
5.1 B-hIL2Rαヒト化マウスMC38結腸癌動物モデルにおける候補抗体の有効性試験
B-hIL2Rαヒト化マウス(Biocytogen)を体重によって5群に分け、ここでは、10匹のマウスがG1陰性対照群であり、8匹のマウスがG2~G4治療群の各々であった。群分け当日から個別投与を実施し(10mg/kg、I.P.、BIW)(10mg/kg、腹腔内注射、週2回)、翌日、PBSに再懸濁したMC38細胞をB-hIL2Rαヒト化マウスの右側腹皮下に5×10細胞/0.1mLの濃度で0.1mL/マウスとして接種した。腫瘍容積及び動物の体重を週2回測定し、測定値を記録し、腫瘍容積(mm)=0.5×長径×短径とした。結果を図7A及び図7B並びに表12及び表13に示す。
【0080】
図7Aに示されるとおり、マウスの体重は、着実に増加し、これは、CD25Q2-BA9-IgG1、CD25Q8-BT942-IgG1及びCD25Q11-CT848-IgG1(10mg/kg、IP、BIW)にマウスに対する毒性及び副作用がないことを示している。
【0081】
図7Bに示されるとおり、対照群と比較して、CD25Q2-BA9-IgG1、CD25Q8-BT942-IgG1及びCD25Q11-CT848-IgG1は、マウスMC38の腫瘍の成長を有意に阻害することができ、そのうちのCD25Q8-BT942-IgG1がより良好な抗腫瘍効果を示す。
【0082】
【0083】
【0084】
5.2 投与後のMC38腫瘍に対する免疫細胞浸潤効果のFACS検出
5.1における試験マウスの5回目の投与後(群分けから16日後)、陰性対照群から4匹のマウスを取り、各治療群から3匹のマウスを取り、それらのマウスを殺処分し、腫瘍を切り刻み、そこに消化酵素を加え、37℃で40分間インキュベートして消化させ、ろ過及び洗浄後に単一細胞懸濁液として再懸濁した。96ウェル丸底プレートの各ウェルに25μLの封止及び生死判別色素溶液並びに25μLの細胞懸濁液を加え、十分に混合し、暗所下において4℃で15分間インキュベートした。各ウェルに50μLの表面色素を加え、十分に混合し、暗所下において4℃で30分間インキュベートした。各ウェルに150μLのFACS溶液を加え、2回洗浄し、4℃、500gで5分間遠心し、上清を廃棄した。200μLの固定溶液に再懸濁した細胞を各ウェルに加え、十分に混合した後、室温で30分間固定した。固定後、4℃、1400gで5分間遠心し、上清を廃棄した。各ウェルに200μLの膜透過処理溶液を加え、4℃、1400gで5分間遠心し、上清を廃棄した。各ウェルに100μLの細胞内色素溶液を加え、室温で暗所下において30分間インキュベートした。各ウェルに150μLの膜透過処理溶液を加え、2回洗浄し、1400gで5分間遠心し、上清を廃棄した。細胞を250μLのPBSで再懸濁し、CD3中のCD8+細胞(Teff)含有量、CD3中のCD25+Foxp3+細胞(Treg)含有量及びCD4中のFoxp3+細胞(Treg)含有量を機械で検出した。結果を図8A図8Cに示す。
【0085】
図8A図8Cに示されるとおり、対照群ヒトIgG1κアイソタイプと比較して、CD25Q2-BA9-IgG1、CD25Q8-BT942-IgG1及びCD25Q11-CT848-IgG1は、マウスMC38の腫瘍におけるTreg細胞の割合を減少させ、Teff細胞の浸潤を増加させることができ、従って腫瘍殺傷能力が向上している。
図1
図2A-2B】
図2C-2E】
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A-7B】
図8A-8C】
【配列表】
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