(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】鋳物製造用構造体
(51)【国際特許分類】
B22C 9/02 20060101AFI20230315BHJP
B22C 9/08 20060101ALI20230315BHJP
B22C 1/00 20060101ALI20230315BHJP
B22C 3/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
B22C9/02 103Z
B22C9/08 B
B22C1/00 J
B22C3/00 Z
(21)【出願番号】P 2022002350
(22)【出願日】2022-01-11
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木部 義幸
(72)【発明者】
【氏名】松浦 傑
(72)【発明者】
【氏名】池永 春樹
(72)【発明者】
【氏名】森 俊彦
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C
B22D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の鋳物製造用構造体であって、
筒状の本体部と該本体部の内周面を被覆する被覆層とを有し、
前記本体部及び前記被覆層の少なくとも一方は、
前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが変化しており、厚みが最も小さい最小厚み部から厚みが最も大きい最大厚み部に向かって厚みが増大する厚み分布を有
しており、且つ
前記構造体の軸方向に直交する同一断面内において、前記周方向に存する前記最小厚み部及び前記最大厚み部の数はそれぞれ1つのみである、鋳物製造用構造体。
【請求項2】
前記被覆層が、前記厚み分布を有し、前記構造体の軸方向に直交する同一断面内において該被覆層における前記最大厚み部の厚みと前記最小厚み部の厚みとの差が、0.08mm以上0.9mm以下である、請求項1に記載の鋳物製造用構造体。
【請求項3】
前記本体部が、前記厚み分布を有し、前記構造体の軸方向に直交する同一断面内において該本体部における前記最大厚み部の厚みと前記最小厚み部の厚みとの差が、0.1mm以上2.5mm以下である、請求項1又は2に記載の鋳物製造用構造体。
【請求項4】
前記本体部と前記被覆層の合計厚みが、前記厚み分布を有しており、前記構造体の軸方向に直交する同一断面内における該合計厚みが最も小さい最小厚み部の厚みと該合計厚みが最も大きい最大厚み部の厚みとの差が、0.1mm以上3.4mm以下である、請求項1~3の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体。
【請求項5】
鋳物製造用構造体を鋳物砂に埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、
前記鋳型に溶融金属を鋳込む鋳込み工程とを有する、鋳鋼鋳物の製造方法であって、
前記鋳型製造工程において、少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置する、鋳鋼鋳物の製造方法。
【請求項6】
鋳物製造用構造体を鋳物砂に埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、
前記鋳型に溶融金属を鋳込む鋳込み工程とを有する、鋳鋼鋳物の製造方法であって、
前記鋳型製造工程において、少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置する、鋳鋼鋳物の製造方法。
【請求項7】
鋳物製造用構造体を鋳物砂に埋設する工程を有する鋳型の製造方法であって、
少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置する、鋳型の製造方法。
【請求項8】
鋳物製造用構造体を鋳物砂に埋設する工程を有する鋳型の製造方法であって、
少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置する、鋳型の製造方法。
【請求項9】
鋳物砂に埋設されている鋳物製造用構造体に溶融金属を鋳込む鋳物の製造方法であって、
前記鋳物製造用構造体の少なくとも一つは、請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体であり、該構造体は、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置されており、
前記溶融金属が前記構造体内を通るように注湯する、鋳物の製造方法。
【請求項10】
鋳物砂に埋設されている鋳物製造用構造体に溶融金属を鋳込む鋳物の製造方法であって、
前記鋳物製造用構造体の少なくとも一つは、請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体であり、該構造体は、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置されており、
前記溶融金属が前記構造体内を通るように注湯する、鋳物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記被覆層が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程を有し、
前記被覆層形成工程では、前記本体部の内側に塗液組成物を注入した後、該本体部を、該本体部の軸方向を鉛直方向に対して傾けた状態で静置した状態で、該本体部の内側に、前記塗液組成物からなる前記被覆層を形成する、鋳物製造用構造体の製造方法。
【請求項12】
請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記本体部が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された抄造型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーを堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程と、
含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有し、
前記抄紙ネットは、一方の前記割型の内面を被覆する前記抄紙ネットと、他方の前記割型の内面を被覆する前記抄紙ネットとで目開きが異なる、鋳物製造用構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記本体部が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された成形用型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーを堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程と
含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有し、
前記抄紙工程は、前記成形用型内を減圧吸引し、前記抄紙ネット上に堆積された含水状態の前記本体部を脱水する脱水工程を有しており、
前記脱水工程において、一方の前記割型側の減圧吸引力と、他方の前記割型側の減圧吸引力とを異ならせる、鋳物製造用構造体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~4の何れか一項に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記本体部が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された成形用型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーを堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程と
含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有し、
前記抄紙工程を、一方の前記割型と他方の前記割型とが鉛直方向に並ぶように、又は作製される含水状態の前記本体部の軸方向が水平方向となるように、一対の前記割型を配置した状態で行う、鋳物製造用構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物製造用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物の製造では、一般に、鋳物砂で内部にキャビティを有する鋳型を形成するとともに、該キャビティに溶湯を供給する受け口、湯口、湯道及び堰を該キャビティに通じるように形成し、さらに、外部に通じるガス抜き、押湯、揚がりを形成している。キャビティ内には、中子が配されることもある。本出願人は、先に、湯道や揚がりとして使用することができる鋳物製造用構造体を提案している(特許文献1)。特許文献1に記載の鋳物製造用構造体は、筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備え、胴部及び嵌合部は、筒状の本体部及び該本体部の内面に形成された被覆層を有している。
また特許文献2には、排水管用の継手が記載されている。特許文献2の継手は、横断面視形状が、排水管の軸方向において真円形状から卵形状に変化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-70052号公報
【文献】特開2019-190239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鋳物製造用構造体は、胴部における被覆層の厚みが軸方向において不均一であることによって、注湯時における該被覆層の剥離を抑制できるが、本発明者らの新たな知見によれば、溶融金属を注湯する際の衝撃が大きい場合や溶湯圧力が高い場合では、該鋳物製造用構造体および胴部における被覆層の構造維持が困難となることがあった。特許文献1の鋳物製造用構造体は、該鋳物製造用構造体の外部に配置される鋳物砂の焼着を抑制する性能の向上の点からは改善の余地があった。特許文献2の継手は、排水管用の継手であり、鋳物の鋳造に用いられる溶湯の高温に耐えることは想定されていない。
したがって本発明は、焼着を抑制することができる鋳物製造用構造体、及び該鋳物製造用構造体を用いた、鋳物の製造方法及び鋳物製造構造体の製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筒状の鋳物製造用構造体に関する。
前記鋳物製造用構造体は、筒状の本体部と該本体部の内周面を被覆する被覆層とを有することが好ましい。
前記本体部及び前記被覆層の少なくとも一方は、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが変化していることが好ましい。
前記本体部及び前記被覆層の少なくとも一方は、厚みが最も小さい最小厚み部から厚みが最も大きい最大厚み部に向かって厚みが増大する厚み分布を有することが好ましい。
【0006】
本発明は、鋳鋼鋳物の製造方法に関する。
前記鋳鋼鋳物の製造方法は、鋳物製造用構造体を鋳物砂に埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、前記鋳型に溶融金属を鋳込む鋳込み工程とを有することが好ましい。
前記鋳型製造工程においては、少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、本発明の鋳物製造用構造体を用いることが好ましい。
【0007】
本発明は、鋳型の製造方法に関する。
前記鋳型の製造方法は、鋳物製造用構造体を鋳物砂に埋設する工程を有することが好ましい。前記鋳型の製造方法は、少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、本発明の鋳物製造用構造体を用いることが好ましい。
【0008】
本発明は、鋳物の製造方法に関する。
前記鋳物の鋳造方法においては、鋳物砂に埋設されている鋳物製造用構造体に溶融金属を鋳込んで鋳物を製造することが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の少なくとも一つは、本発明の鋳物製造用構造体であることが好ましい。
【0009】
前記の鋳鋼鋳物の製造方法、鋳型の製造方法、又は鋳物の製造方法は、下記(1)又は(2)を具備することが好ましい。
(1)前記構造体を、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置する。
(2)前記構造体を、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置する。
【0010】
本発明は、鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
製造する鋳物製造用構造体は、筒状の本体部と該本体部の内周面を被覆する被覆層とを有し、前記本体部及び前記被覆層の少なくとも一方が、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが変化していることが好ましい。
厚みが変化している前記本体部又は前記被覆層は、厚みが最も小さい最小厚み部から厚みが最も大きい最大厚み部に向かって厚みが増大する厚み分布を有することが好ましい。
製造する鋳物製造用構造体は、本発明の鋳物製造用構造体であり且つ前記被覆層が前記厚み分布を有するものであることが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の製造方法は、一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された成形用型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーに含まれる該繊維を堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程を有することが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の製造方法は、含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の製造方法は、乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することが好ましい。
前記被覆層形成工程では、前記本体部の内側に塗液組成物を注入した後、該本体部を、該本体部の軸方向を鉛直方向に対して傾けた状態で静置した状態で、該本体部の内側に、前記塗液組成物からなる前記被覆層を形成することが好ましい。
【0011】
本発明は、鋳物製造用構造体の製造方法に関する。
製造する鋳物製造用構造体は、筒状の本体部と該本体部の内周面を被覆する被覆層とを有し、前記本体部及び前記被覆層の少なくとも一方が、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが変化していることが好ましい。
厚みが変化している前記本体部又は前記被覆層は、厚みが最も小さい最小厚み部から厚みが最も大きい最大厚み部に向かって厚みが増大する厚み分布を有することが好ましい。
製造する鋳物製造用構造体は、本発明の鋳物製造用構造体であり且つ前記本体部が前記厚み分布を有するものであることが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の製造方法は、一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された成形用型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーを堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程を有することが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の製造方法は、含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程を有することが好ましい。
前記鋳物製造用構造体の製造方法は、乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有することが好ましい。
【0012】
前記の鋳物製造用構造体の製造方法は、下記(3)~(5)の何れか1又は2以上を具備することが好ましい。
(3)前記抄紙ネットは、一方の前記割型の内面を被覆する前記抄紙ネットと、他方の前記割型の内面を被覆する前記抄紙ネットとで目開きが異なる。
(4)前記抄紙工程は、前記成形用型内を減圧吸引し、前記抄紙ネット上に堆積された含水状態の前記本体部を脱水する脱水工程を有している。前記脱水工程において、一方の前記割型側の減圧吸引力と、他方の前記割型側の減圧吸引力とを異ならせることが好ましい。
(5)前記抄紙工程は、一方の前記割型と他方の前記割型とが鉛直方向に並ぶように、又は作製される含水状態の前記本体部の軸方向が水平方向となるように、一対の前記割型を配置した状態で行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明(鋳物製造用構造体、鋳鋼鋳物の製造方法、鋳型の製造方法、鋳物の鋳造方法)によれば、注湯時における被覆層の鋳物表面への焼着を抑制することができる。
本発明(鋳物製造用構造体の製造方法)によれば、焼着を抑制可能等の利点を有する鋳物製造用構造体を効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る鋳物製造用構造体の好ましい一実施形態である鋳物製造用構造体を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す鋳物製造用構造体の変形例を示す断面図であり、
図2(a)相当図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す鋳物製造用構造体の別の変形例を示す断面図であり、
図2(a)相当図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す鋳物製造用構造体の更に別の変形例を示す断面図であり、
図2(a)相当図である。
【
図6】
図6は、
図1に示す鋳物製造用構造体を内部に納めた鋳型の模式断面図である。
【
図7】
図7(a)~
図7(f)は、
図4に示す鋳物製造用構造体に係る本体部を製造する方法を説明する模式断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、
図4に示す鋳物製造用構造体に係る被覆層を製造する方法を説明するための模式断面図であり、
図8(c)は、該被覆層を製造する方法の変形例を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る鋳物製造用構造体(以下、単に「構造体」ともいう。)1は、典型的には筒状である。ここでいう「筒状」には、
図4のように通直なもの、
図1に示すように軸方向の一部に屈曲部13を有するもの、
図3に示すように筒状の第1部18から筒状の第2部19が分岐したもの、軸方向の全体が円弧状に湾曲しているもの(図示せず)等が含まれる。また「筒状」には、断面円形の筒状、即ち円筒状の他、断面多角形状の筒状、即ち角筒状も含まれる。円筒状の構造体の軸方向に直交する断面形状は、典型的には円形であるが楕円形でもよく、角筒状の構造体の軸方向に直交する断面形状は、典型的には正方形であるが、三角形、長方形若しくは五角形以上の多角形でもよく、多角形の角部を丸めた形状でもよい。
構造体1は、軸方向の両端に開口部を有している。
本発明の構造体1は、筒状の本体部21と、本体部21の内周面を被覆する被覆層22とを有する。この例を
図1及び
図2に示す。本体部21及び被覆層22が含有する各成分については後述する。
【0016】
本発明の構造体1は、同一又は同種の構造体を複数連結可能なように、筒状の胴部11と胴部11に連設された嵌合部12とを備えていることが好ましい。構造体1は、隣り合う一方の構造体1の胴部11における嵌合部12から遠い側の一端部11aを、他方の構造体1の嵌合部12に挿入して嵌合させることが好ましい。これにより複数の構造体1を連結可能であり、複数の構造体1を所望の個数連結することにより、所望の長さの長尺の筒状体10を形成可能となる。
筒状体10は、
図6に示すように、例えば、湯道管として用いることができる。
【0017】
本発明の構造体1は、胴部11に、本体部21及び被覆層22を有していることが好ましい。本発明の鋳物製造用構造体では、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方は、構造体1の周方向Rにおいて、厚みが変化していることが好ましい。この例を
図1、
図2(a)及び
図2(b)に示す。
本発明の構造体1では、構造体1の周方向Rにおいて、本体部21の厚みは一定であり、被覆層22の厚みが変化していることが好ましい。より具体的には、被覆層22は、構造体1の周方向Rにおいて、厚みが変化し、最も厚みが小さい最小厚み部22aから最も厚みが大きい最大厚み部22bに向かって厚みが増大する厚み分布を有していることが好ましい。
本発明の構造体1においては、構造体1の軸方向と直交する横断面の中央部を挟んで相対向する部位に、最小厚み部22a及び最大厚み部22bを有していることが好ましい。また同横断面に、最小厚み部22aと最大厚み部22bとを結ぶ直線を想定したときに、該直線を挟む両側それぞれにおいて、被覆層22の厚みが、最小厚み部22aから最大厚み部22bに向かって厚みが連続的に増大していることが好ましい。
厚み分布を有する被覆層22は、最小厚み部22aから最大厚み部22bに向かって厚みが連続的に変化していることが好ましい。最小厚み部22aと最大厚み部22bとの間に厚みが変化しない範囲を有していてもよい。厚み分布を有する本体部21、及び本体部21と被覆層22との合計厚みが厚み分布を有する場合の厚み分布についても同様である。
構造体1は嵌合部12に被覆層22を有していてもよい。
嵌合部12には被覆層22がないことが好ましい。構造体1どうしを連結する際に、被覆層22の剥離が生じるのを抑制できるためである。また、溶融金属を注湯する際に該溶融金属に不純物、例えば被覆層22が剥離したものが混じる可能性を低減できるためである。
図1~
図4に示す例では、構造体1は嵌合部12に被覆層22を有していない。
【0018】
本明細書において、厚み分布を有する態様には、被覆層22又は本体部21の表面が細かい凹凸を有する場合や、被覆層22又は本体部21の周方向の一部に軸方向に沿う溝が形成されている場合等は含まれない。換言すれば、厚み分布は、表面が細かい凹凸を有することにより形成されたものや、周方向に溝が形成されていることにより形成されたものではない。
前述のとおり本発明の構造体1では、構造体1の周方向Rにおいて、被覆層22が厚み分布を有する一方、本体部21の厚みは一定であること、即ち、厚み分布を有しないことが好ましい。被覆層22及び本体部21のそれぞれに関し、厚みが一定である、又は、厚み分布を有しないとは、最大厚み部の厚みと最小厚み部との差が0.08mm未満であることを意味し、該差が0である場合も当然に含まれる。被覆層22及び本体部21それぞれの最大厚み部及び最小厚み部の厚み及び厚み差は、後述する<厚みの差の測定方法>に記載の方法で測定される。
【0019】
本発明の構造体1は、例えば、以下のようにして鋳物の製造に用いることができる。
先ず、構造体1どうしを連結して、筒状体10を形成する。そして、
図6に示すように、筒状体10を、鋳物砂内の所定位置に埋設し、砂型15を形成する。構造体は、典型的には、一部の開口部を残して埋設される。具体的には、連結されて筒状体10を構成する複数の構造体1のうち、最も上流に位置する構造体1の該上流側の開口部を鋳物砂外に露出させた状態で埋設されることが好ましい。筒状体10の埋設方法には、特に制限はなく、例えば、筒状体10を所定位置に配した後、鋳物砂を配してもよいし、鋳物砂を所定の状態に配した後、筒状体10を配置してもよい。
砂型15を形成するとき、筒状体10は、構造体1内を流れる溶融金属が、最小厚み部よりも最大厚み部に強く当たることになる向き、又は最小厚み部及び最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体1内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置することが好ましい。また、構造体1の被覆層22の最大厚み部22bが鉛直方向下側に位置するように配置することも好ましい。砂型15の鋳物砂には、従来からこの種の鋳物の製造に用いられている通常のものを制限なく用いることができる。そして、筒状体10の一端に設けられた注湯口16から溶融金属を注ぎ入れ、キャビティ17内に溶融金属を供給し、鋳造を行う。
図6に示す筒状体10(湯道管)は、構造体1を、一部の開口部を残して、鋳物砂に埋設して製造した鋳造用鋳型の一部を構成する。
鋳造後、所定の温度まで冷却し、鋳枠を解体して鋳物砂を取り除き、さらにブラスト処理によって鋳物製造用構造体を取り除いて鋳物を露呈させる。その後必要に応じて鋳物にトリミング処理等の後処理を施して鋳物の製造を完了する。
【0020】
本発明の構造体1は、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方が、構造体1の周方向Rにおいて、厚みが変化しており、最小厚み部から最大厚み部に向かって厚みが増大する厚み分布を有していることが好ましい。これにより、構造体1を用いて鋳造を行うときに、該構造体1を、該構造体1内を流れる溶融金属が、最小厚み部よりも最大厚み部に強く当たることになる向き、又は最小厚み部及び最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体1内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置することができる。構造体1をこのように配置することによって、注湯時の溶融金属の流れが構造体1の内面を損傷することを抑制し、構造体1の破損で溶融金属が鋳物砂に接触してしまうことによる鋳物砂の焼着を防ぐことができる。以下、この点について詳述する。構造体1における溶融金属が強く当たる部分、及び構造体1における溶融金属の流速が速い部分は、該構造体1内面が損傷しやすい部分に相当する。本実施形態の構造体1は、内面が損傷しやすい部分に、最大厚み部が位置するように配置することができるので、構造体1の内面の損傷を抑制でき、構造体1が破損することにより鋳物砂が焼着することを抑制することができる。
【0021】
構造体1が、
図1及び
図2に示すように、軸方向の一部に屈曲部13を有する場合について説明する。この場合、構造体1内を流れる溶融金属が、最小厚み部よりも最大厚み部に強く当たることになる向きとは、例えば、構造体1の嵌合部12が鉛直方向上側に位置し、屈曲部13が鉛直方向下側に位置する向きである。また、
図1及び
図2に示す構造体1では、該構造体1を軸方向に沿って見たときに、屈曲部13における、相対的に嵌合部12から遠い外側部分13b側が、相対的に嵌合部12に近い内側部分13a側よりも、溶融金属の流速が速い。
図1及び
図2に示す構造体1では、屈曲部13の外側部分13b側に最大厚み部が位置し、内側部分13a側に最小厚み部が位置している。
【0022】
また、構造体1を用いて鋳造を行うときに、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方の最大厚み部22bが鉛直方向下側に位置するように該構造体1を配置することができる。構造体1をこのように配置することによって、注湯時の溶融金属の流れが構造体1の内面を損傷することを抑制し、構造体1の破損で溶融金属が鋳物砂に接触してしまうことによる鋳物砂の焼着を防ぐことができる。以下、この点について詳述する。注湯口16から注ぎ入れられた溶融金属は、重力によって鉛直方向下側に引っ張られながら、筒状体10内、即ち構造体1内を流れる。そのため、溶融金属は、筒状体10を構成する構造体1における、鉛直方向下側の部分に、特に強く接する。構造体1における、溶融金属が強く接する部分は、鋳物構造体内面が損傷しやすい部分に相当するところ、本実施形態の構造体1は、溶融金属が強く接する部分である鉛直方向下側の部分に、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方の最大厚み部22bを含んでいるので、構造体1の内面の損傷を抑制でき、構造体1が破損することにより鋳物砂が焼着することを抑制することができる。
特に、被覆層22が厚み分布を有していることが好ましい。
【0023】
本発明の構造体1によって奏される鋳物砂の焼着抑制効果は、単に所定部位の被覆層22の強度が高まることに起因するものではない、すなわち、溶融金属が強く接する部分や温度が高いまま溶融金属が接触しやすい部分は、加熱により本体部21等からガスが発生し、そのガスにより被覆層22が損傷しやすく、それにより焼着等が生じやすくなる。被覆層22に厚み差を設け、厚みが相対的に厚い部分により、本体部21等から発生するガスの流入に起因する構造体1の損傷や焼着を防止することにより、焼着や焼着に起因する鋳物の品質低下等を効果的に防止することができる。
【0024】
また本発明の構造体1は、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方が、最小厚み部22aから最大厚み部22bに向かって厚みが増大する厚み分布を有していることにより、構造体1の取り扱い性の向上とガス発生量の抑制と両立させることができる。以下、この点について説明する。被覆層22の損傷を防ぐためには、例えば、周方向Rの全周において被覆層22又は本体部21を厚くすることも考えられる。しかしながら、周方向Rの全周において被覆層22又は本体部21を厚くした場合、構造体1全体の質量が増加し該構造体1の取り扱い性が悪くなったり、溶融金属鋳込み時に発生するガス量が多くなり、鋳物の製品の品質の低下が起こったりするという不都合が生じる恐れがある。本発明の構造体1のように、周方向Rにおいて、局所的に厚みを厚くすることにより、このような不都合が生じることを防ぎ、構造体1の取り扱い性の向上とガス発生量の抑制と両立させることができる。
【0025】
本発明の構造体1は、鋳鉄鋳物及び鋳鋼鋳物のいずれの製造に用いることもできる。一般に、鋳鋼鋳物の製造に用いられる溶融金属は、鋳鉄鋳物の製造に用いられる溶融金属に比して、溶融温度が高いので、鋳鋼鋳物を製造するときの方が、鋳鉄鋳物を製造するときに比して、溶融金属が流れることによる構造体内面の損傷の程度が大きくなりやすい。本発明の構造体1は、鋳鋼用の鋳物製造用構造体であることが好ましい。本発明の構造体1を、鋳鋼鋳物の製造に用いることにより、注湯時における被覆層の鋳物表面への焼着を抑制することができるという効果が一層顕著に奏される。
【0026】
被覆層22において、最大厚み部22bの厚みT2と最小厚み部22aの厚みT1との差A(T2-T1,
図2(b)参照)は、構造体1の内面の損傷を抑制し、構造体1が破損することにより鋳物砂が焼着することを一層抑制する観点から、好ましくは0.08mm以上、より好ましくは0.1mm以上、更に好ましくは0.12mm以上である。
前記差Aは、被覆層22を塗液を用いて形成する場合の乾燥時の欠陥を抑制する観点から、好ましくは0.9mm以下、より好ましくは0.7mm以下、更に好ましくは0.5mm以下である。
前記差Aは、これらの両立の観点から、好ましくは0.08mm以上0.9mm以下、より好ましくは0.1mm以上0.7mm以下、更に好ましくは0.12mm以上0.5mm以下である。
【0027】
本体部21と被覆層22との合計厚みに対する被覆層22の厚みの割合Bは、被覆層22の最小厚み部22a及び最大厚み部22bのいずれにおいても、構造体の強度と被覆層22でのガス遮蔽性との両立を容易とする観点から、好ましくは3%以上、より好ましくは10%以上である。
前記割合Bは、構造体1の質量の増加抑制と被覆層22の剥離性の観点から、好ましくは35%以下、より好ましくは67%以下である。
前記割合Bは、これらの両立の観点から、好ましくは3%以上10%以下、より好ましくは35%以上67%以下である。
【0028】
本発明の鋳物製造用構造体においては、構造体1の周方向Rにおいて、本体部21の厚みが変化しており、被覆層22の厚みが一定であってもよいし、本体部21の厚み及び被覆層22の厚みの両方が変化していてもよい。構造体1の周方向Rにおいて、本体部21の厚みが変化しており、被覆層22の厚みが一定である場合や、本体部21の厚み及び被覆層22の厚みの両方が変化している場合でも、焼着を抑制することができる。また、本体部21の厚み及び被覆層22の厚みの両方が変化している場合、本体部21と被覆層22との合計厚みは、周方向Rにおいて一定であってもよいし、変化していてもよい。
本体部21の厚み及び被覆層22の厚みの両方が変化している場合、本体部21の最大厚み部と被覆層22の最大厚み部22bとは、構造体1の周方向Rにおいて、異なる位置に位置していてもよいが、同じ位置に位置していることが好ましい。また本体部21の最小厚み部と被覆層22の最小厚み部22aとは、構造体1の周方向Rにおいて、異なる位置に位置していてもよいが、同じ位置に位置していることが好ましい。
【0029】
本体部21が、構造体1の周方向Rにおいて、最大厚み部と最小厚み部とを有している場合、本体部21の最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差Cは、焼着を一層抑制する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.15mm以上、更に好ましくは0.2mm以上である。
前記差Cは、構造体1の強度と質量増加抑制の観点から、好ましくは2.5mm以下であり、より好ましくは2.3mm以下であり、更に好ましくは1mm以下である。
前記差Cは、これらの両立の観点から、好ましくは0.1mm以上2.5mm以下であり、より好ましくは0.15mm以上2.3mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上1mm以下である。
【0030】
構造体1の周方向Rにおいて、本体部21と被覆層22との合計厚みが変化している場合、構造体1の最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差Dは、焼着を一層抑制する観点から、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.14mm以上、更に好ましくは0.2mm以上である。
前記差Dは、構造体1の強度と質量増加抑制、及び溶融金属の鋳込み時に発生するガス量とそのガス遮蔽性の観点から、好ましくは3.4mm以下であり、より好ましくは3mm以下であり、更に好ましくは1.4mm以下である。
前記差Dは、これらの両立の観点から、好ましくは0.1mm以上3.4mm以下であり、より好ましくは0.14mm以上3mm以下であり、更に好ましくは0.2mm以上1.4mm以下である。
前記差A、前記割合B、前記差C及び前記差Dを算出する際には、最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとは、構造体1の軸方向に直交する同一の断面から求める。
【0031】
構造体1、本体部21及び被覆層22それぞれにおける、最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差は、以下の方法により測定することができる。
<厚みの差の測定方法>
先ず、構造体1の周方向Rに45度間隔で8箇所の測定箇所を選定する。そして、構造体1をその軸方向に直交する方向に切断し、切断面を得る。切断面それぞれにおいて、前記8箇所の測定箇所における厚みを測定する。厚みの測定は、デジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VHX-5000)の寸法測定機能を用いて行う。8箇所の測定箇所の厚みのうち、最大値と最小値との差を、最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差とする。本体部21が外面にリブを有する場合、8箇所の測定箇所は、本体部21における該リブが形成されていない箇所から選定する。本体部と被覆層との境界は切断面のデジタルマイクロスコープ像における色や構造の違いにより判別する。
【0032】
本体部21は、構造体1の成型性と強度を担保する部分であり、被覆層22は、構造体1を鋳物製造に用いたときに、溶湯が本体部21に直接に接触することを妨げるとともに、本体部21から発生するガスが溶湯に移行することを抑制する効果を奏するものであることが好ましい。本体部21の単位質量あたりのガス発生量に対する被覆層22の単位質量あたりのガス発生量の割合は、好ましくは0%以上50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。ガス発生量は、以下のようにして測定することができる。
【0033】
<ガス発生量の測定方法>
ガス発生量の測定は、HARRY W.DIETERT CO.製のガス圧力測定装置(機器名称:No.682 GAS PRESSURE TESTER)を用いて測定する。具体的には、まず、炉内温度を予め窒素雰囲気にて1000℃に上昇、安定させておく。下記のサンプルの採取方法の通り、鋳物製造用構造体の測定対象の箇所から質量0.1gを採取し、それを測定サンプルとする。
(サンプルの採取方法)
本体部のガス発生量を測定する場合は、構造体1から本体部21と被覆層22が積層した状態のサンプルを切り出す。そして、刃物等で本体部21側を削り出し、質量0.1gを採取する。
被覆層のガス発生量を測定する場合には、構造体1から本体部21と被覆層22が積層した状態のサンプルを切り出す。そして、刃物等で被覆層22側を削り出し、質量0.1gを採取する。
【0034】
採取した測定サンプルを前記ガス圧力測定装置の所定の箇所に設置し、前記ガス圧力測定装置の取扱説明書に従い、鋳物製造用構造体から発生するガスの発生量を測定する。なお、ガス発生量のデータ処理には、株式会社島津製作所製のクロマトパックC-R4Aを用いる。
測定サンプル1gあたりのガス発生量を求め、それを単位質量当たりのガス発生量(cm3/g)とする。本体部21の単位質量あたりのガス発生量に対する被覆層22の単位質量あたりのガス発生量の割合は、((被覆層22の単位質量あたりのガス発生量)/(本体部21の単位質量あたりのガス発生量))×100[%]で求められる。
【0035】
本発明の構造体1の胴部11は、一方向Xに直線状に延びる第1部18と、第1部18から、該X方向と交差する方向に突出する第2部19とを有することも好ましい。第2部19は、第1部18と同様に、筒状の本体部21及び該本体部21の内周面を被覆する被覆層22を有することが好ましい。
第2部19の被覆層22は、第1部18が延びる前記一方向Xにおける一方の側に最小厚み部22a、他方の側に最大厚み部22bを有していることが好ましい。
この場合、第1部18の被覆層22は、厚み分布を有していないことが好ましいが、有していてもよい。後者の例を
図5に示す。
【0036】
本発明の構造体1の胴部11は、一方向Xに直線状に延びていることも好ましい。この例を
図4に示す。
【0037】
図3及び
図4に示す変形例においても、被覆層22が、筒状の構造体1の周方向Rにおいて、最大厚み部22bと最小厚み部22aとを有しているので、
図1及び
図2に示す構造体1と同様に、構造体1が損傷し、鋳物砂が焼着することを抑制することができる。例えば、変形例1Bの構造体1は、嵌合部12側から溶融金属が流入したときに、溶融金属が強く当たる部位に最大厚み部22bが位置するように用いることで、該部位における本体部21から発生するガスによる被覆層22の損傷や、それによる焼着等を効果的に防止することができる。
【0038】
図1~
図4に示す例では、構造体1の軸方向の全域において、被覆層22は周方向Rの厚み分布を有しているが、本発明の構造体1は、その軸方向の一部において、被覆層22が周方向Rの厚み分布を有していてもよい。この例を
図5に示す。
本体部21、及び本体部21と被覆層22との合計厚みについても同様である。つまり、本体部21、及び本体部21と被覆層22との合計厚みは、構造体1の軸方向の全域において周方向Rの厚み分布を有していてもよいし、該軸方向の一部に周方向Rの厚み分布を有していてもよい。
構造体1の軸方向の一部のみに周方向Rの厚み分布を有することで、構造体1全体の質量の増加が抑制されるため、溶融金属鋳込み時に発生するガス量が少なくなり、鋳物の製品の品質を向上することが可能となる。
【0039】
次に、構造体1の構成材料について説明する。
本体部21は、典型的には、有機繊維、無機繊維、無機粒子(以下、第1無機粒子ともいう)、バインダー(以下、第1バインダーともいう)を含有する。斯かる本体部21は、典型的には、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子、第1バインダー及び分散媒を含有するスラリー状組成物(以下、原料スラリーという)を調製し、抄造・脱水成形用の金型を用いて本体部21の中間成形体、例えば含水状態の本体部を抄造し、次に金型を用いて該中間成形体を加熱・乾燥することにより形成することができる。
【0040】
有機繊維は、本体部21において鋳造に用いられる前の状態では無機繊維、無機粒子に絡み構造体1の形状を維持する効果を示し、鋳造時には溶融金属の熱によって、その一部若しくは全部が燃焼する。
【0041】
有機繊維には、木材パルプの他、合成繊維、再生繊維(例えばレーヨン繊維)等が挙げられ、それらを単独で又は二種以上混合して用いることができる。
これらの中でも紙繊維が好ましい。その理由は、抄造により多様な形態に成形でき、脱水、乾燥された成形体の強度特性が優れ、紙繊維の入手性が容易且つ安定的で、経済的であるためである。
紙繊維には、木材パルプの他、コットンパルプ、リンターパルプ、竹や藁その他の非木材パルプを用いることができる。バージンパルプ若しくは古紙パルプ(回収品)を単独又は二種以上を混合して用いることができる。
入手の容易性、環境保護、製造費用の低減等の点から、新聞古紙などの古紙パルプが好ましい。
【0042】
無機繊維は、主として本体部21において鋳造に用いられる前の状態では構造体1の強度を向上させ、鋳造時に溶融金属の熱によっても燃焼せずにその形状を維持する。特に、後述する有機バインダーが用いられた場合には、該無機繊維は溶融金属の熱による該有機繊維の燃焼並びに有機バインダーの熱分解に起因する熱収縮を抑えることができる。
【0043】
無機繊維には、炭素繊維、ロックウール等の人造鉱物繊維、セラミック繊維、天然鉱物繊維が挙げられ、それらを単独で又は二種以上混合して用いることができる。
これらの中でも、前記の熱収縮を抑える点から金属が溶融するような高温でも高強度を有する炭素繊維が好ましい。
製造費用を抑える点からはロックウールを用いることが好ましい。
【0044】
第1無機粒子としては、ムライト、黒鉛、雲母、シリカ、中空セラミックス、フライアッシュ等の耐火物の骨材粒子が挙げられる。第1無機粒子は、これらを単独又は二種以上を選択して用いることができる。
【0045】
第1無機粒子の平均粒子径は、本体部21の通気性を良くする観点から、10μm以上であり、好ましくは15μm以上である。
また第1無機粒子の平均粒子径は、本体部21の成形性を向上させる観点から、100μm以下である。
第1無機粒子の平均粒子径が上記の下限以上であれば、本体部21の通気性が良くなり、鋳造時の鋳型内のガス圧力が適度に減少する。また、本体部21の通気性が上がることで、本体部21の材料間の空隙が増加し、後述する塗液組成物の本体部21への浸透性が向上し、本体部21から被覆層22が剥離しにくくなる。
第1無機粒子が上記の上限以下であれば、本体部21の表面から無機粒子が脱落しにくくなるとともに、成形性が良くなる。
【0046】
第1無機粒子の見掛け比重は、原料分散性の観点から、好ましくは0.5以上3以下であり、更に軽量化の観点から、より好ましくは、0.5以上2.8以下であり、更に好ましくは0.5以上2.5以下である。見掛け比重とは、中空粒子の内部の中空部分の体積を中空粒子の体積の一部であると仮定した場合の中空粒子の比重であり、内部の中空部分が存在しない中実粒子の場合は真比重と一致する。第1無機粒子の見掛け比重が前記範囲にあることで、分散媒に水を使用した場合の抄造工程における原料分散性が良好となる。また、成形して得られた本体部21の質量を軽量化できるため、取り扱い性が良くなる。なお、本体部21の組成は、第1無機粒子の見掛け比重と共に嵩比重を考慮して決めることができる。嵩比重とは、粒子を一定容積の容器の中に、一定状態で入れたときに、容器内に入る粒子の量を測定し、単位体積あたりの質量を求めたものである。
【0047】
また第1無機粒子は中空であっても良い。中空粒子を用いることで、第1無機粒子の見掛け比重を小さくすることができる。
【0048】
本発明では、第1バインダーとしては、有機バインダー及び/又は無機バインダーを使用することができる。鋳造後の除去性に優れる観点から有機バインダーが好ましい。有機バインダーとしては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの中でも、可燃性ガスの発生が少なく、燃焼抑制効果があり、熱分解(炭化)後における残炭率が高い等の点からフェノール樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
フェノール樹脂としては、ノボラックフェノール樹脂、レゾールタイプ等のフェノール樹脂、尿素、メラミン、エポキシ等で変性した変性フェノール樹脂等が挙げられる。中でも、レゾールタイプのフェノール樹脂を用いる事で、酸、アミン等の硬化剤を必要とせず、本体部21成形時の臭気や、本体部21を鋳型として用いた場合の鋳物欠陥を低減することができるので、好ましい。
【0050】
ノボラックフェノール樹脂を使用した場合には、硬化剤を要する。該硬化剤は水に溶け易いため、本体部21の脱水後にその表面に塗工されるのが好ましい。硬化剤には、ヘキサメチレンテトラミン等を用いることが好ましい。
【0051】
無機バインダーとしてリン酸系バインダー、ケイ酸塩等の水ガラス、石膏、硫酸塩、シリカ系バインダー、シリコン系バインダーを用いても良い。有機バインダーは単独又は二種以上混合して用いても良く、有機バインダーと無機バインダーと併用しても良い。
【0052】
原料スラリーに用いられる分散媒としては、水の他、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、アセトン、キシレンなどの溶剤が挙げられる。これらを単独又は二種以上を混合して用いることができる。その中でも、取り扱い易さの点から、水が好ましい。
【0053】
本体部21は、有機繊維、無機繊維、第1無機粒子及び第1バインダーの他に、紙力強化材を含有していてもよい。紙力強化材は、該中間成形体の形状維持に作用がある。
紙力強化材としては、ラテックス、アクリル系エマルジョン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂等が挙げられる。
【0054】
被覆層22は、典型的には、金属酸化物及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれる平均粒子径1μm以上100μm以下の耐火性無機粒子(以下、第2無機粒子ともいう)、バインダー(以下、第2バインダーともいう)並びに粘土鉱物を含有する塗液組成物を、本体部21の内周面23aに塗布することにより形成することができる。
【0055】
耐火性無機粒子について、耐火性であるとは、融点1500℃以上、好ましくは1600℃以上、より好ましくは1700℃以上であることをいう。
第2無機粒子は、金属酸化物、及び金属のケイ酸塩からなる群から選ばれるものが挙げられる。第2無機粒子としては、ムライト、ジルコン、ジルコニア、アルミナ、オリビン、スピネル、マグネシア、クロマイト等が挙げられる。鋳物のガス欠陥を改善する観点から、ジルコンが好ましい。第2無機粒子は、これらを単独又は二種以上を選択して用いることができる。鋳鉄(1.7~6.7%C)よりも炭素含有量の低い鋳鋼(0.03~1.7%C)では、炭素質以外の骨材粒子を用いることが好ましく、融点が高く、溶融金属との濡れ性が低いジルコンを用いることが、より好ましい。
【0056】
本体部21の表面の封孔性、本体部21と被覆層22との密着性などの観点から、第2無機粒子の平均粒子径は1μm以上が好ましく、3μm以上がより好ましい。
また第2無機粒子の平均粒子径は、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、40μm以下が更に好ましい。
【0057】
構造体1においては、本体部21が含有する第1無機粒子の平均粒子径と、被覆層22が含有する第2無機粒子の平均粒子径との比が、本体部21の表面の封孔性の観点から、〔第1無機粒子の平均粒子径〕/〔第2無機粒子の平均粒子径〕で0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましい。
また、本体部21が含有する第1無機粒子の平均粒子径と、被覆層22が含有する第2無機粒子の平均粒子径との比は、〔第1無機粒子の平均粒子径〕/〔第2無機粒子の平均粒子径〕で35以下が好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、6以下が殊更好ましい。
構造体1においては、被覆層22中、第2無機粒子の割合が50質量%以上、更に60質量%以上、更に70質量%以上、より更に90質量%以上であり、100質量%未満であることが好ましい。
【0058】
被覆層22は、熱間強度向上の観点と塗布時の粘度を付与する観点から、粘土鉱物を含有している。粘土鉱物を、被覆層22を得るための分散液(塗液組成物)に配合することで、分散液に適度な粘度を付与し、分散液中での原料の沈降防止、原料分散性が向上する。
粘土鉱物としては、層状ケイ酸塩鉱物、複鎖構造型鉱物などが挙げられ、これらは天然、合成を問わない。
層状ケイ酸塩鉱物としては、スメクタイト属、カオリン属、イライト属に属する粘土鉱物、例えばベントナイト、スメクタイト、ヘクトライト、活性白土、木節粘土、ゼオライト等が挙げられる。
複鎖構造型鉱物としては、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト等が挙げられる。熱間強度向上の観点や塗布時の粘度を確保する観点から好ましくは、アタパルジャイト、セピオライト、ベントナイト、スメクタイトより選ばれる一種以上が挙げられる。より好ましくは、アタパルジャイト、セピオライト群より選ばれる一種以上が挙げられる。
粘土鉱物は、層状構造又は複鎖構造である点で、例えば、六方最密充填構造を主に含み、通常、層状構造又は複鎖構造をとらない耐火性無機粒子とは区別される。
粘土鉱物は、耐火性無機粒子100質量部に対して、0.5質量部以上含まれることが好ましく、1質量部以上含まれることがより好ましい。
粘土鉱物は、耐火性無機粒子100質量部に対して、30質量部以下含まれることが好ましく、20質量部以下含まれることがより好ましく、2質量部以下含まれること更に好ましい。
この比率において粘土鉱物が上記の下限以上であれば、分散液に適度な粘度を付与することができ、分散液中での原料沈降・浮遊を防止できる。
【0059】
被覆層22は、熱間強度向上の観点から、更に第2バインダーを含有する。被覆層22を形成する際に第2バインダーを用いることが、鋳物製造用構造体の常温強度及び耐熱性を向上させる観点から好ましい。
第2バインダーとしては、有機バインダーと無機バインダーを使用することができる。
有機バインダーとしては、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、水溶性アルキド樹脂、水溶性ブチラール樹脂、ポリビニルアルコール、水溶性アクリル樹脂、水溶性多糖類、酢酸ビニル樹脂又はその共重合体などが挙げられる。
無機バインダーとしては、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、リチウムシリケート、ジルコニアゾル、コロイダルシリカ、アルミナゾルなど各種ゾルなどが挙げられる。好ましくは無機バインダーであり、無機バインダーの中でもより好ましくは、コロイダルシリカ及びリン酸アルミニウムからなる群より選ばれる一種以上、更に好ましくはコロイダルシリカが挙げられる。
前記第2バインダーは単独又は二種以上混合して用いても良く、有機バインダーと無機バインダーとを併用しても良い。
第2バインダーは、第2無機粒子100質量部に対して、有効分換算で、1質量部以上含まれることが好ましく、3質量部以上含まれることがより好ましい。
第2バインダーは、第2無機粒子100質量部に対して、有効分換算で、50質量部以下含まれることが好ましく、40質量部以下含まれることがより好ましく、7質量部以下含まれることが更に好ましい。
【0060】
本発明の構造体の製造方法は、典型的には、抄紙工程と、乾燥工程と、被覆層形成工程とを、この順で有している。
図4に示す構造体1Cを製造する場合の例を
図7及び
図8に示す。
【0061】
抄紙工程では、一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された抄造型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーに含まれる該繊維を含む該原料を堆積させ、含水状態の本体部を作製することが好ましい。
具体的には、先ず、内部から外部へ連通する連通路31を有する一対の割型32,33の内面を抄紙ネットで被覆した後、その一対の割型32,33を突き合わせて、成形用型30を形成する。そして、内部にキャビティ34が形成されると共に該キャビティ34から上方に開口した上方開口部35が形成される成形用型30に、該成形用型30の外部からキャビティ34内に原料スラリー及び流体を供給する共用供給口41を下端に有する供給管40を挿入する。割型32,33の内面、即ち、キャビティ34の形成面は、所定の大きさの網目を有する抄紙ネットによって被覆されている。成形用型30に供給管40が挿入された状態において、キャビティ34の上方開口部35は、シール部42の蓋体43で上方から覆われる。そして、シール部42の嵌合体44が上方開口部35に嵌合する。このように、シール部42の蓋体43及び嵌合体44によって成形用型30の上方開口部35が閉鎖され、キャビティ34内が封止状態となる。この例を
図7(a)に示す。
【0062】
次いで、供給管40の共用供給口41を通じて成形用型30のキャビティ34内に、原料スラリーを供給する。好適には、三方弁によって供給管40をスラリー供給管に接続し、原料スラリーの供給源から所定の原料スラリーを、供給管40の下端の共用供給口41を通して、キャビティ34内に供給する。そうすると上方側から下方側に向かって重力がかかり、原料スラリーに含まれる繊維類が沈降する。また、キャビティ34内を、吸引手段に接続された各連通路31を通じて、減圧吸引する。このように、キャビティ34内に原料スラリーを供給すると共に、キャビティ34内を減圧吸引することによって、割型32,33の内面であるキャビティ34の形成面を被覆する抄紙ネット上に、原料スラリーに含まれる繊維及び原料を堆積させる。その結果、抄紙ネット上に、原料スラリーに含まれる繊維及び原料が堆積されて形成された含水状態の本体部21Aが形成される。この例を
図7(b)及び(c)に示す。
【0063】
原料スラリーの供給流量は、キャビティ34内に即座に原料スラリーを充填できる観点から、好ましくは10L/min以上であり、より好ましくは30L/min以上である。
また、キャビティ34内での渦発生による、抄紙ネット上に堆積する繊維堆積物の剥がれ抑制の観点から、好ましくは80L/min以下であり、より好ましくは50L/min以下である。
【0064】
含水状態の本体部21Aが形成された後、成形用型30から供給管40を抜き出し、成形用型30を割型32と割型33とに分解し、キャビティ34の形成面から含水状態の本体部21Aを取り出す。この例を
図7(d)に示す。
【0065】
次いで、含水状態の本体部21Aを、一対の割型52,53を突き合わせて形成された乾燥型50の内部のキャビティ54に移行する。この例を
図7(e)に示す。
【0066】
乾燥型50のキャビティ54にセットされた含水状態の本体部21Aは、乾燥型50の上方開口部55が蓋57で閉塞された状態で、乾燥型50の加熱手段56で所定温度にまで加熱される。
乾燥型50の温度は、繊維の焦げ発生防止と乾燥効率向上の観点から150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。
また、300℃以下であることが好ましく、250℃以下であることがより好ましい。
【0067】
加熱手段56で乾燥型50を加熱する一方、中子4を、蓋57の孔を通じて乾燥型50のキャビティ54内に挿入し、中子4内に流体を供給して中子4をキャビティ54内で膨らませ、本体部21Aをキャビティ形成面に押圧して加熱・乾燥し、乾燥された本体部21Cを形成する(加熱乾燥工程)。
乾燥された本体部21Cの水分率は、トリミングの観点から、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましい。
中子4の押圧力は、乾燥効率の観点から、0.2MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましい。
また、0.6MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることがより好ましい。
【0068】
乾燥された本体部21Cが所定の水分率まで乾燥された後、乾燥型50から中子4を引き出し、乾燥型50を割型52と割型53とに分解し、キャビティ54の形成面から乾燥された本体部21Cを取り出す。
次いで、取り出された乾燥された本体部21Cに関しては、乾燥された本体部21Cの上下方向の両端部の余分な部分21dをそれぞれ切断して、本体部21を形成する(トリミング工程)。この例を
図7(f)に示す。
【0069】
本体部21の厚みを、周方向Rにおいて変化させる方法としては、例えば、一方の割32型の内面を被覆する抄紙ネットの目開きと、他方の割型33の内面を被覆する抄紙ネットの目開きを異ならせる方法が挙げられる。目開きの大きい方の抄紙ネットで被覆された一方の割型32の内面に、原料スラリーに含まれる繊維が、目開きが小さい方の抄紙ネットで被覆された他方の割型33の内面に比して多く堆積するようになるので、含水した本体部21Aにおける、該一方の割型32側の厚みが、該他方の割型33側の厚みよりも大きくなり、製造された本体部21における、該一方の割型32側の厚みを、該他方の割型33側の厚みよりも大きくすることができる。
【0070】
また乾燥工程において含水状態の本体部21Aを乾燥型50内に移行する前に、割型32,33内を減圧吸引し、抄紙ネット上に堆積された含水状態の本体部を脱水する脱水工程を行ってもよい。脱水工程において、一方の割型32側の減圧吸引力と、他方の割型33側の減圧吸引力とを異ならせることにより、本体部21の厚みを、周方向Rにおいて変化させることもできる。より具体的には、一方の割型32側の減圧吸引力を、他方の割型33側の減圧吸引力よりも大きくすることにより、本体部21Aにおける、該一方の割型32側の厚みが、該他方の割型33側の厚みよりも小さくなり、製造された本体部21における、該一方の割型32側の厚みを、該他方の割型33側の厚みよりも小さくすることができる。
【0071】
また、抄紙工程を、作製される含水状態の本体部21Aの軸方向が水平方向となるように、一対の割型32,33を配置した状態で行ってもよい。具体的には、成形用型30の内部のキャビティ34の軸方向が水平方向となる状態で抄紙工程を行ってもよい。
こうすることにより、本体部21の厚みを、周方向Rにおいて変化させることができる。具体的には、成形用型30内に作製される含水状態の本体部21Aにおける、鉛直方向下側の厚みを、鉛直方向上側の厚みに比よりも大きくすることができる。
また、抄紙工程を、一方の割型32と他方の割型33とが鉛直方向に並ぶように、一対の割型32,33を配置した状態で行うことにより、本体部21の厚みを、周方向Rにおいて変化させてもよい。この場合、一対の割型32,33を突き合せて成形用型30を形成したときに、該成形用型30内部のキャビティ34の軸方向が水平方向となることが好ましい。
【0072】
上述のように本体部21を形成した後に、被覆層形成工程を行う。被覆層形成工程では、本体部21の内周面23側に被覆層22を形成する。具体的には、本体部21の一方の端部を蓋体60により閉塞し、本体部21の内周面23側に、塗液組成物70を充填する。この例を
図8(a)に示す。
本体部21の内周面23側に塗液組成物70を充填した後、一定時間経過後、蓋体60を除去し、該塗液組成物70を該本体部21の内周面23に残液するものを残して排出する。そして、塗液組成物70が残液した本体部21を、該本体部の軸方向X1を鉛直方向Zに対して傾けた状態で静置し、本体部21の内周面23側に被覆層22を形成する。
より詳細には、本体部21の一方の端部を蓋体60により閉塞し、本体部21の内周面23側に塗液組成物70を充填することで該内周面23に塗液組成物70をなじませ、その後本体部21内部の蓋体60による閉塞を解除し、塗液組成物70が乾燥固化する前に本体部21を傾け、本体部21を傾けた状態で塗膜、即ち本体部21の内周面23に残液した塗液組成物70を乾燥・固化させることで、本体部21の内周面側に被覆層22が形成される。塗液組成物70が乾燥・固化する前の本体部21を、該本体部の軸方向X1を鉛直方向Zに対して傾けるときは、被覆層22の最大厚み部22bの形成予定位置を鉛直方向Z下側に位置させることが好ましい。この例を
図8(b)及び(c)に示す。嵌合部12に塗液組成物70を形成させない実施形態の場合では、嵌合部12における本体部21の軸方向X1を水平方向Hに対して一定角度傾けた状態で、塗液組成物70を乾燥・固化させることがより好ましい。この例を
図8(c)に示す。
このようにして、被覆層22が厚み分布を有する被覆層偏在構造体である、
図4に示す構造体1が製造される。
【0073】
充填する塗液組成物の温度は、好ましくは5℃以上であり、より好ましくは15℃以上であり、更に好ましくは20℃以上である。
また、充填する塗液組成物の温度は、好ましくは40℃以下であり、より好ましくは30℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
塗液組成物70の温度が恒温になるように設備設定することも好ましい。
塗液組成物70を充填した後の静置時間は、生産性の観点から1秒以上60秒以下であることが好ましい。
【0074】
被覆層22の厚みを調整するために、塗液組成物70を塗布した本体部21に、振動テーブル等で振動を与えてもよい。被覆層22を本体部21の内周面により強固に付着させるためには、乾燥工程を経ることが好ましい。乾燥方法としてヒーターによる熱風乾燥、遠赤外乾燥、マイクロ波乾燥、過熱蒸気乾燥、真空乾燥等が挙げられるが、限定されるものではない。
熱風乾燥機を用いて乾燥させる場合は乾燥炉内中心部の乾燥温度については100℃以上が好ましく、105℃以上がより好ましい。
また、有機物やバインダーの熱分解による影響を低減させる観点及び発火による安全性を確保する観点から500℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましい。
【0075】
本発明の鋳鋼鋳物の製造方法は、典型的には、鋳物砂15内に、本実施形態の構造体1を埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、該鋳型を用いて溶融金属を鋳込む鋳込み工程とを有する。鋳型製造工程では、構造体1を、該構造体1内を流れる溶融金属が、最小厚み部よりも最大厚み部に強く当たることになる向き、又は最小厚み部及び最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体1内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置することが好ましい。また、構造体1を、被覆層22の最大厚み部22bが鉛直方向下側に位置するように配置することも好ましい。鋳型製造工程において、構造体1を上述のように配置することによって、後続の鋳込み工程において構造体1の被覆層22における最大厚み部22bが、該構造体1内を流れる溶融金属と強く接する部分に位置するようになるので、焼着を抑制することができる。
上述した鋳型製造工程は、本発明の鋳型の製造方法の好ましい一実施態様である。また上述した鋳込み工程は、本発明の鋳造方法の好ましい一実施態様である。本発明の鋳型の製造方法及び鋳造方法によっても、構造体1内に溶融金属を注湯するときに、構造体1の被覆層22における最大厚み部22bが、該構造体1内を流れる溶融金属と強く接する部分に位置するようになるので、焼着を抑制することができる。
【0076】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の付記を開示する。
【0077】
<1>
筒状の鋳物製造用構造体であって、
筒状の本体部と該本体部の内周面を被覆する被覆層とを有し、
前記本体部及び前記被覆層の少なくとも一方は、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが変化しており、厚みが最も小さい最小厚み部から厚みが最も大きい最大厚み部に向かって厚みが増大する厚み分布を有する、鋳物製造用構造体。
【0078】
<2>
前記被覆層が、前記厚み分布を有し、前記構造体の軸方向に直交する同一断面内において該被覆層における前記最大厚み部の厚みと前記最小厚み部の厚みとの差が、0.08mm以上0.9mm以下である、前記<1>に記載の鋳物製造用構造体。
<3>
前記被覆層において、前記最大厚み部の厚みT2と前記最小厚み部の厚みT1との差(T2-T1)は、0.08mm以上、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.12mm以上である、前記<1>又は前記<2>に記載の鋳物製造用構造体。
<4>
前記被覆層において、前記最大厚み部の厚みT2と前記最小厚み部の厚みT1との差(T2-T1)は、0.9mm以下、好ましくは0.7mm以下、より好ましくは0.5mm以下である、前記<1>~前記<3>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
【0079】
<5>
前記本体部と前記被覆層との合計厚みに対する該被覆層の厚みの割合は、3%以上、好ましくは10%以上である、前記<1>~前記<4>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<6>
前記本体部と前記被覆層との合計厚みに対する該被覆層の厚みの割合は、35%以下、好ましくは67%以下である、前記<1>~前記<5>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<7>
前記本体部が、前記厚み分布を有し、前記構造体の軸方向に直交する同一断面内において該本体部における前記最大厚み部の厚みと前記最小厚み部の厚みとの差が、0.1mm以上2.5mm以下である、前記<1>~前記<6>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
【0080】
<8>
前記本体部が、前記構造体の周方向において、前記最大厚み部と前記最小厚み部とを有しており、該本体部の該最大厚み部の厚みと該最小厚み部の厚みとの差は、0.1mm以上、好ましくは0.15mm以上、より好ましくは0.2mm以上である、前記<1>~前記<7>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<9>
前記本体部が、前記構造体の周方向において、前記最大厚み部と前記最小厚み部とを有しており、該本体部の該最大厚み部の厚みと該最小厚み部の厚みとの差は、2.5mm以下であり、好ましくは2.3mm以下、より好ましくは1mm以下である、前記<1>~前記<8>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<10>
前記本体部の厚みは一定であり、前記被覆層の厚みが変化している、前記<1>~前記<6>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<11>
前記本体部と前記被覆層の合計厚みが、前記厚み分布を有しており、前記構造体の軸方向に直交する同一断面内における該合計厚みが最も小さい最小厚み部の厚みと該合計厚みが最も大きい最大厚み部の厚みとの差が、0.1mm以上3.4mm以下である、前記<1>~前記<10>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<12>
前記構造体の周方向において、前記本体部と前記被覆層との合計厚みが変化しており、該構造体の最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差は、0.1mm以上、好ましくは0.14mm以上、より好ましくは0.2mm以上である、前記<1>~前記<11>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<13>
前記構造体の周方向において、前記本体部と前記被覆層との合計厚みが変化しており、該構造体の最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差は、3.4mm以下であり、好ましくは3mm以下であり、より好ましくは1.4mm以下である、前記<1>~前記<12>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
【0081】
<14>
前記構造体においては、該構造体の軸方向と直交する横断面の中央部を挟んで相対向する部位に、前記最小厚み部及び前記最大厚み部を有している、前記<1>~前記<13>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<15>
前記構造体においては、該構造体の軸方向と直交する横断面に、前記最小厚み部と前記最大厚み部とを結ぶ直線を想定したときに、該直線を挟む両側それぞれにおいて、前記被覆層の厚みが、該最小厚み部から該最大厚み部に向かって厚みが連続的に増大している、前記<1>~前記<14>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<16>
前記構造体は、筒状の胴部と該胴部に連設された嵌合部とを備えており、
前記胴部は、一方向に直線状に延びる筒状の第1部と、該第1部から、該X方向と交差する方向に突出する筒状の第2部19とを有する、前記<1>~前記<15>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<17>
第1部及び第2部それぞれは、前記本体部及び前記被覆層を有し、
第2部の前記被覆層は、第1部が延びる前記一方向における一方の側に前記最小厚み部、他方の側に前記最大厚み部を有しており、
第1部の前記被覆層は、厚み分布を有していない、前記<16>に記載の鋳物製造用構造体。
<18>
第1部から第2部が分岐している、前記<17>に記載の鋳物製造用構造体。
<19>
前記構造体は、軸方向の全体が円弧状に湾曲している、前記<17>に記載の鋳物製造用構造体。
【0082】
<20>
前記本体部又は前記被覆層は、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが一定であり、該厚みが一定である該本体部又は該被覆層は、最大厚み部の厚みと最小厚み部の厚みとの差が0.08mm未満である、前記<1>~前記<19>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<21>
前記厚み分布は、前記被覆層又は前記本体部の表面が細かい凹凸を有することにより形成されたもの、若しくは、前記被覆層又は前記本体部の周方向の一部に前記構造体の軸方向に沿う溝が形成されていることにより形成されたものではない、前記<1>~前記<20>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<22>
前記構造体は、鋳鋼用の鋳物製造用構造体である、前記<1>~前記<21>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<23>
前記本体部の単位質量あたりのガス発生量に対する前記被覆層の単位質量あたりのガス発生量の割合は、好ましくは0%以上50%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である、前記<1>~前記<22>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<24>
前記被覆層が、前記厚み分布を有し、前記最大厚み部の厚みと前記最小厚み部の厚みとの差が0.08mm以上である一方、前記本体部は、厚みが一定であり、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが最も大きい最大厚み部の厚みと、厚みが最も小さい最小厚み部の厚みとの差が0.08mm未満である、前記<1>~前記<23>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
<25>
前記本体部が、前記厚み分布を有し、前記最大厚み部の厚みと前記最小厚み部の厚みとの差が0.08mm以上である一方、前記被覆層は、厚みが一定であり、前記鋳物製造用構造体の周方向において、厚みが最も大きい最大厚み部の厚みと、厚みが最も小さい最小厚み部の厚みとの差が0.08mm未満である、前記<1>~前記<23>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体。
【0083】
<26>
鋳物製造用構造体を、好ましくは鋳物砂に、また好ましくは一部の開口部を残して、埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、
前記鋳型に溶融金属を鋳込む鋳込み工程とを有する、鋳鋼鋳物の製造方法であって、
前記鋳型製造工程において、少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置する、鋳鋼鋳物の製造方法。
<27>
鋳物製造用構造体を、好ましくは鋳物砂に、また好ましくは一部の開口部を残して、埋設し、鋳型を製造する鋳型製造工程と、
前記鋳型に溶融金属を鋳込む鋳込み工程とを有する、鋳鋼鋳物の製造方法であって、
前記鋳型製造工程において、少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置する、鋳鋼鋳物の製造方法。
【0084】
<28>
鋳物製造用構造体を、好ましくは鋳物砂に、また好ましくは一部の開口部を残して、埋設する工程を有する鋳型の製造方法であって、
少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置する、鋳型の製造方法。
<29>
鋳物製造用構造体を、好ましくは鋳物砂に、また好ましくは一部の開口部を残して、埋設する工程を有する鋳型の製造方法であって、
少なくとも一つの前記鋳物製造用構造体として、前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体を用いるとともに、該構造体を、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置する、鋳型の製造方法。
【0085】
<30>
好ましくは鋳物砂に、また好ましくは一部の開口部を残して、埋設されている鋳物製造用構造体に溶融金属を鋳込む鋳物の製造方法であって、
前記鋳物製造用構造体の少なくとも一つは、前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体であり、該構造体は、該構造体内を流れる溶融金属が、前記最小厚み部よりも前記最大厚み部に強く当たることになる向き、又は前記最小厚み部及び前記最大厚み部のうちの該最大厚み部側が、該構造体内を流れる溶融金属の流速が速い側に位置する向きで配置されており、
前記溶融金属が前記構造体内を通るように注湯する、鋳物の製造方法。
<31>
好ましくは鋳物砂に、また好ましくは一部の開口部を残して、埋設されている鋳物製造用構造体に溶融金属を鋳込む鋳物の製造方法であって、
前記鋳物製造用構造体の少なくとも一つは、前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体であり、該構造体は、前記最大厚み部が鉛直方向下側に位置するように配置されており、
前記溶融金属が前記構造体内を通るように注湯する、鋳物の製造方法。
【0086】
<32>
前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記被覆層が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有し、
前記被覆層形成工程では、前記本体部の内側に塗液組成物を注入した後、該本体部を、該本体部の軸方向を鉛直方向に対して傾けた状態で静置した状態で、該本体部の内側に、前記塗液組成物からなる前記被覆層を形成する、鋳物製造用構造体の製造方法。
<33>
前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記本体部が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された抄造型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーを堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程と、
含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有し、
前記抄紙ネットは、一方の前記割型の内面を被覆する前記抄紙ネットと、他方の前記割型の内面を被覆する前記抄紙ネットとで目開きが異なる、鋳物製造用構造体の製造方法。
<34>
前記<1>~前記<25>の何れか1に記載の鋳物製造用構造体であり且つ前記本体部が前記厚み分布を有するものを製造する、鋳物製造用構造体の製造方法であって、
一対の割型を用いて構成され且つ内面が抄紙ネットで被覆された成形用型内に、繊維を含む原料スラリーを供給し、該抄紙ネット上に、該原料スラリーを堆積させて、含水状態の本体部を作製する抄紙工程と
含水状態の前記本体部を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥された前記本体部の内周面に被覆層を形成する被覆層形成工程とを有し、
前記抄紙工程は、前記成形用型内を減圧吸引し、前記抄紙ネット上に堆積された含水状態の前記本体部を脱水する脱水工程を有しており、
前記脱水工程において、一方の前記割型側の減圧吸引力と、他方の前記割型側の減圧吸引力とを異ならせる、鋳物製造用構造体の製造方法。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を基に本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
〔実施例1〕
図4に示す構造体1を、上述した製造方法により製造し、実施例1の鋳物製造用構造体とした。実施例1の鋳物製造用構造体の組成は、表1及び以下に示す通りである。具体的には、被覆層は、ジルコンを100質量部に対し、他の成分を表1に示す含有量で配合した。本体部は、全ての成分の合計を100質量部とし、それに占める含有割合を含有量として表1に示した。
ジルコン:ハクスイテック株式会社製、ジルコシルNо.1
アタパルジャイト:BASF製、アタゲル50
コロイダルシリカ:日産化学株式会社製、snowtex50-T
炭素繊維:東レ株式会社製、トレカチョップ
球状シリカ:日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、HS-209
フェノール樹脂:エア・ウォーター・ベルパール株式会社製、ベルパールS-890
〔実施例2〕
本体部の最大厚み部と最小厚み部の厚み差を、表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様に、鋳物製造用構造体を製造した。
〔比較例1〕
本体部の内周面側に被覆層を形成しなかった以外は、実施例1と同様に、鋳物製造用構造体を製造した。
〔比較例2〕
本体部及び被覆層の最大厚み部と最小厚み部の厚み差を、表1に示す通り変更した以外は、実施例1と同様に、鋳物製造用構造体を製造した。
【0089】
【0090】
〔鋳物製造後の焼着の評価〕
実施例1,2及び比較例1,2の鋳物製造用構造体それぞれについて、該鋳物製造用構造体を連結して筒状体を作製した。そして、各筒状体を湯道管として有する鋳型に、溶融金属を流し込み、鋳物を製造した。溶融金属は、炭素鋼鋳鋼SC450(JIS分類)を500kg用いた。製造した鋳物の焼着は目視にて焼着が全くないものを「焼着なし」、一部焼着があるが容易に除去できるものを「僅かにあり」、容易に除去できない焼着があるものを「焼着あり」と評価した。
【0091】
比較例1及び2においては、表1に示す通り、焼着が発生していた。これに対し、実施例1及び2においては、表1に示す通り、焼着が発生していなかった。したがって、本発明の鋳物製造用構造体によれば、焼着を抑制することができることが判る。
【符号の説明】
【0092】
1 鋳物製造用構造体
11 胴部
12 嵌合部
21 本体部
22 被覆層
10 筒状体
15 砂型
30 成形用型
32,33 割型
【要約】
【課題】焼着を抑制することができる鋳物製造用構造体を提供すること。
【解決手段】筒状の鋳物製造用構造体1であって、筒状の本体部21と、本体部21の内周面を被覆する被覆層22とを有し、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方は、鋳物製造用構造体1の周方向Rにおいて、厚みが変化しており、本体部21及び被覆層22の少なくとも一方は、最も厚みが小さい最小厚み部22aと、最も厚みが大きい最大厚み部22bとを有する。
【選択図】
図1