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特許7245391温調ユニットおよび温調ユニットの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】温調ユニットおよび温調ユニットの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20230315BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20230315BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H01L23/46 Z
H01L23/36 Z
H05K7/20 M
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022526616
(86)(22)【出願日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 JP2021020034
(87)【国際公開番号】W WO2021241642
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020094380
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100131842
【弁理士】
【氏名又は名称】加島 広基
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-201026(JP,A)
【文献】特開2005-123496(JP,A)
【文献】特開2017-135227(JP,A)
【文献】特表平4-505046(JP,A)
【文献】国際公開第2007/017945(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0071880(US,A1)
【文献】特開2016-174025(JP,A)
【文献】特開平8-316388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 23/34-23/36
H01L 23/373-23/427
H01L 23/44
H01L 23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材および各前記棒状部材を接続する接続部材を有し、金属から形成される金属多孔質構造体が複数積層されることにより構成され、
各前記金属多孔質構造体の各前記棒状部材が互いに平行に延び、
各前記棒状部材の間の隙間に流体の流路が形成される、温調ユニット。
【請求項2】
前記流路において流体は前記接続部材の延びる方向に沿って流れるようになっている、請求項1記載の温調ユニット。
【請求項3】
各前記棒状部材の断面形状は先細部分を含んでおり、前記流路の両側縁に各前記先細部分が配置される、請求項1または2記載の温調ユニット。
【請求項4】
複数の前記金属多孔質構造体は、隣り合う前記金属多孔質構造体の各前記棒状部材の前記先細部分が互いに対向するまたは反対側を向くよう積層される、請求項3記載の温調ユニット。
【請求項5】
前記流路は前記接続部材の延びる方向に沿って蛇行している、請求項4記載の温調ユニット。
【請求項6】
前記流路において、前記接続部材の延びる方向に沿って見た時に各前記棒状部材が一部で重なり合い、
前記流路は、前記接続部材と平行に延びる仮想直線が必ず前記棒状部材に当たるような形状となっている、請求項4または5記載の温調ユニット。
【請求項7】
各前記棒状部材の断面形状は、台形形状、三角形形状、半円形状または山形状である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の温調ユニット。
【請求項8】
各前記棒状部材は湾曲面を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の温調ユニット。
【請求項9】
各前記金属多孔質構造体は櫛形状または梯子形状である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の温調ユニット。
【請求項10】
各前記金属多孔質構造体は、金属繊維から形成される金属繊維構造体、金属粉体から形成される金属粉体構造体、または金属繊維と金属粉体との混合物から形成される金属混合体である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の温調ユニット。
【請求項11】
複数の金属繊維、金属粒子、または金属繊維と金属粒子との混合体を受け部上に集積させる工程と、
前記受け部上に集積された複数の前記金属繊維、前記金属粒子、または前記混合体を焼結させることにより、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材および各前記棒状部材を接続する接続部材を有し、金属から形成される金属多孔質構造体を複数作成する工程と、
各前記金属多孔質構造体の各前記棒状部材が互いに平行に延びるよう、複数の前記金属多孔質構造体を積層することにより、各前記棒状部材の間の隙間に流体の流路を形成する工程と、
を備えた、温調ユニットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温調ユニットおよび温調ユニットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器、電子機器および半導体機器等において、発熱に弱い回路等を保護するために温調ユニットが用いられている。より詳細には、電気機器等が使用する電力量が多くなると発熱量も多くなるため、発生した熱を温調ユニットによって冷却することにより電気機器等の内部の温度を調整していた。
【0003】
このような温調ユニットとして、例えば日本国公開特許公報の特開2019-9433号公報(JP2019-9433A)等に開示されるものが知られている。特開2019-9433号公報等に開示される温調ユニットは、金属繊維で構成される金属繊維シートと、金属繊維シートを冷却する冷却機構とを備えており、冷却効果に優れ、小型化および薄型化しやすく、電気機器等の内部の局所的な冷却を可能とするものである。
【発明の概要】
【0004】
特開2019-9433号公報に開示される温調ユニットは、小型化および薄型化しやすい態様であるものの、流路を流れる流体に熱を伝達するための熱交換面積が小さいため、使用する電流量が多い半導体部品を冷却するような、更なる熱交換能力が求められる場合に熱交換能力が不足する場合があった。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、熱交換能力に優れる温調ユニットおよび温調ユニットの製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の温調ユニットは、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材および各前記棒状部材を接続する接続部材を有し、金属から形成される金属多孔質構造体が複数積層されることにより構成され、各前記金属多孔質構造体の各前記棒状部材が互いに平行に延び、各前記棒状部材の間の隙間に流体の流路が形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明の温調ユニットの製造方法は、複数の金属繊維、金属粒子、または金属繊維と金属粒子との混合体を受け部上に集積させる工程と、前記受け部上に集積された複数の前記金属繊維、前記金属粒子、または前記混合体を焼結させることにより、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材および各前記棒状部材を接続する接続部材を有し、金属から形成される金属多孔質構造体を複数作成する工程と、各前記金属多孔質構造体の各前記棒状部材が互いに平行に延びるよう、複数の前記金属多孔質構造体を積層することにより、各前記棒状部材の間の隙間に流体の流路を形成する工程と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の温調ユニットおよび温調ユニットの製造方法によれば、熱交換能力に優れる温調ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態による温調ユニットの構成の一例を示す斜視図である。
図2図1に示す温調ユニットのA-A矢視による断面図である。
図3図2に示す温調ユニットのB-B矢視、すなわち図1に示す温調ユニットのC-C矢視による断面図である。
図4図2に示す温調ユニットのD-D矢視、すなわち図3に示す温調ユニットのE-E矢視および図1に示す温調ユニットのF-F矢視による断面図である。
図5図1に示す温調ユニットを構成する第1金属繊維構造体の構成を示す斜視図である。
図6図1に示す温調ユニットを構成する第2金属繊維構造体の構成を示す斜視図である。
図7図1に示す温調ユニットを構成する板状の外側部材を示す斜視図である。
図8】変形例に係る温調ユニットを構成する第1金属繊維構造体の構成を示す斜視図である。
図9】変形例に係る温調ユニットを構成する第2金属繊維構造体の構成を示す斜視図である。
図10】(a)~(e)は、本発明の様々な実施の形態による温調ユニットを構成する棒状部材の断面図である。
図11】別の変形例に係る温調ユニットの内部構成を示す断面図である。
図12】更に別の変形例に係る温調ユニットの内部構成を示す断面図である。
図13】更に別の変形例に係る温調ユニットの内部構成を示す断面図である。
図14】更に別の変形例に係る温調ユニットの内部構成を示す断面図である。
図15図14に示す温調ユニットの内部構成における範囲Gを拡大して示す断面図である。
図16】評価装置の上面図である。
図17図16に示す評価装置の正面図である。
図18図16に示す評価装置の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図7は、本実施の形態による温調ユニットを示す図である。本実施の形態による温調ユニットは、被伝熱媒体としての流体を加熱したりこの流体から放熱を行ったりするものである。被伝熱媒体としての流体は、例えば水、空気、不凍液、有機溶剤、フッ素系溶媒(例えば、フロリナート、フロン)等である。
【0011】
図1乃至図4は、本実施の形態による温調ユニット10を示す図である。具体的には、図1は、本実施の形態による温調ユニット10の構成の一例を示す斜視図であり、図2は、図1に示す温調ユニット10のA-A矢視による断面図である。また、図3は、図2に示す温調ユニット10のB-B矢視、すなわち図1に示す温調ユニット10のC-C矢視による断面図である。また、図4は、図2に示す温調ユニット10のD-D矢視、すなわち図3に示す温調ユニット10のE-E矢視および図1に示す温調ユニット10のF-F矢視による断面図である。
【0012】
図1乃至図4に示すように、温調ユニット10は、入口20aおよび出口20bを有する略直方体形状の枠体20と、枠体20の内部に設けられた複数の棒状部材30とを備えており、各棒状部材30の間の隙間に流体の流路50が形成されている。この流路50は、流体のメインの流路である。また、本実施の形態では、互いに略平行に延びる複数の流路50が形成される。流体は枠体20の入口20aから当該枠体20の内部に入り、各流路50を通って図1および図2における右方向に流れ、出口20bから枠体20の外部に出るようになっている。この際に、各流路50において流体は各棒状部材30の延びる方向に対して直交する方向である流動方向(具体的には、図1および図2における右方向)に沿って流れる。なお、各流路50における流体の流動方向は、各棒状部材30の延びる方向に対して直交する方向から多少傾いていてもよい。具体的には、各流路50における流体の流動方向と、各棒状部材30の延びる方向に対して直交する方向との間の角度が-10°~10°の範囲内であればよい。このような温調ユニット10の詳細について以下に説明する。
【0013】
図1に示す温調ユニット10は、図5に示す第1金属繊維構造体40と、図6に示す第2金属繊維構造体42とが交互に積層されることにより構成されている。具体的には、図5に示す第1金属繊維構造体40と、図6に示す第2金属繊維構造体42とが交互に積層されることにより金属繊維構造体の積層体が形成され、この積層体の両側に図7に示す板状の外側部材44が取り付けられる。外側部材44は金属体22から構成されている。被伝熱媒体として液体を用いる場合には、被伝熱媒体の入口、出口面を除き、水密に外側部材44を配置してもよい。
【0014】
第1金属繊維構造体40は、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材32および各棒状部材32を接続する一対の接続部材24を有している。図2等に示すように、各棒状部材32は湾曲面を有している。また、各棒状部材32の断面形状は山形状である。具体的には、各棒状部材32の断面形状は、直線および凸形状の曲線(例えば、円弧の一部)に囲まれる領域となっている。また、一対の接続部材24は、各棒状部材32の両端に取り付けられている。このことにより、第1金属繊維構造体40はいわゆる梯子形状となっている。
【0015】
第1金属繊維構造体40の製造方法について説明する。まず複数の金属繊維に物理的な衝撃を与えることにより変形させ、この変形した複数の金属繊維をグラファイト板上に載せる。具体的には、最初に、一対の接続部材24および各棒状部材32に対応するような梯子形状の貫通穴が形成された第1型枠をグラファイト板に載せる。そして、この第1型枠の貫通穴に、変形した複数の金属繊維を入れる。その後、第1型枠の貫通穴に入れられた複数の金属繊維を焼結させ、焼結後にプレスする。そして、グラファイト板から第1型枠を取り外すと、グラファイト板上に第1金属繊維成形体40が形成される。
【0016】
第2金属繊維構造体42は、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材34および各棒状部材34を接続する一対の接続部材26を有している。図2等に示すように、各棒状部材34は湾曲面を有している。また、各棒状部材34の断面形状は山形状である。具体的には、各棒状部材34の断面形状は、直線および凸形状の曲線(例えば、円弧の一部)に囲まれる領域となっている。また、一対の接続部材26は、各棒状部材34の両端に取り付けられている。このことにより、第2金属繊維構造体42はいわゆる梯子形状となっている。
【0017】
第2金属繊維構造体42の製造方法について説明する。まず複数の金属繊維に物理的な衝撃を与えることにより変形させ、この変形した複数の金属繊維をグラファイト板上に載せる。具体的には、最初に、一対の接続部材26および各棒状部材34に対応するような梯子形状の貫通穴が形成された第2型枠をグラファイト板に載せる。そして、この第2型枠の貫通穴に、変形した複数の金属繊維を入れる。その後、第2型枠の貫通穴に入れられた複数の金属繊維を焼結させ、焼結後にプレスする。そして、グラファイト板から第2型枠を取り外すと、グラファイト板上に第2金属繊維成形体42が形成される。
【0018】
本実施の形態では、第1金属繊維構造体40の一対の接続部材24と、第2金属繊維構造体42の一対の接続部材26と、一対の板状の外側部材44とを組み合わせることにより枠体20が構成される。また、枠体20の内部に設けられた複数の棒状部材30は、第1金属繊維構造体40の各棒状部材32と、第2金属繊維構造体42の各棒状部材34とから構成される。
【0019】
図1乃至図3において、第1金属繊維構造体40の各接続部材24や第2金属繊維構造体42の各接続部材26は左右方向に延びている。すなわち、温調ユニット10において、第1金属繊維構造体40の各接続部材24や第2金属繊維構造体42の各接続部材26の延びる方向と、各流路50において流体が流れる方向である流動方向とが平行になる。なお、各流路50における流体の流動方向は、各接続部材24、26の延びる方向に対して直交する方向から多少傾いていてもよい。具体的には、各流路50における流体の流動方向と、各接続部材24、26の延びる方向との間の角度が-10°~10°の範囲内であればよい。
【0020】
上述したように、第1金属繊維構造体40の各棒状部材32および第2金属繊維構造体42の各棒状部材34の各々の断面形状は山形状、すなわち直線および凸形状の曲線に囲まれる領域となっている。このため、この断面形状の凸形状の曲線の頂点の近傍は先細部分32p、34pとなっている。そして、図2に示すように、各流路50の両側縁に各先細部分32p、34pが配置されている。
【0021】
また、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42は、隣り合う金属繊維構造体の各棒状部材32、34の先細部分32p、34pが互いに対向するまたは反対側を向くよう交互に積層される。このことにより、図2に示すように、各流路50は各接続部材24、26の延びる方向、すなわち流動方向(図1および図2における左右方向)に沿って蛇行している。
【0022】
また、図2に示すように、各流路50の各側縁を区画する複数の棒状部材32、34は、隣り合う2つの棒状部材が互いに接している。すなわち、第1金属繊維構造体40の各棒状部材32と、この第1金属繊維構造体40の隣にある第2金属繊維構造体42の各棒状部材34とが互いに接している。このことにより、図2において左右方向に沿って平行に延びる複数の流路50の各々が各棒状部材32、34により区画される。このため、複数の流路50の各々が別の流路50と連通しなくなる。この場合には、ある流路50を流れる流体と、この流路50の隣にある別の流路50を流れる流体とが干渉してしまい流れが大きく乱れてしまうことを防止することができる。
【0023】
また、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42はそれぞれ金属繊維から形成されたものである。このような金属繊維として、金属被覆繊維が用いられてもよい。また、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42は、湿式または乾式製法を用いて不織布、織布およびメッシュ等に形成した後に、金属繊維構造体に加工したものであってもよい。好ましくは、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42として、金属繊維が集積された後に、結着された金属繊維構造体が用いられる。金属繊維が結着されているとは、金属繊維同士が物理的に固定され、結着部を形成していることを意味する。第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42は、金属繊維同士が結着部で直接的に固定されていてもよいし、金属繊維の一部同士が、金属成分以外の成分を介して間接的に固定されていてもよい。
【0024】
第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42が金属繊維から形成されているため、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42の内部には空隙が存在する。このことにより、各流路50を流れる流体は、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42、とりわけ各棒状部材32、34の内部を通れるようになる。また、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42において、金属繊維が結着されている場合には、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42を構成している金属繊維の間に空隙がより一層形成されやすくなる。このような空隙は、例えば金属繊維が交絡することにより形成されてもよい。第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42がこのような空隙を備えることにより、各流路50を流れる流体が第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42、とりわけ各棒状部材32、34の内部に導入されるため、流体に対する熱交換性を高めやすくなる。また、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42は、結着部で金属繊維が焼結されていることが好ましい。金属繊維が焼結されていることにより、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42の熱伝導性および均質性が安定しやすくなる。
【0025】
なお、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42のうち各接続部材24および各接続部材26は金属繊維ではなく金属体から構成されていてもよい。この場合には、板状の各外側部材44も金属体22から構成されているため、枠体20を通って各流路50から流体が出口20b以外の場所で外部に漏出してしまうことを防止することができる。
【0026】
更に別の例として、各外側部材44が金属体22から構成されるのではなく金属繊維から形成されていてもよい。
【0027】
また、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42は接合剤により接合されていてもよく、あるいは融着や焼結により第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42が接合されていてもよい。
【0028】
次に、本実施の形態による温調ユニット10の動作について説明する。図1の矢印に示すように入口20aから枠体20の内部に入った被伝熱媒体としての流体は、第1金属繊維構造体40の各棒状部材32および第2金属繊維構造体42の各棒状部材34の間に形成される各流路50を通って流動方向に沿って図1および図2における右方向に流れる。この際に、各流路50は流動方向に沿って蛇行しているため、流体も蛇行しながら各流路50を流れる。この場合には、各流路50を流れる流体の圧力損失が適度に大きくなり、各流路50内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、第1金属繊維構造体40の各棒状部材32および第2金属繊維構造体42の各棒状部材34が金属繊維から形成されているため、これらの各棒状部材32、34の表面積が大きくなり、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42による熱伝導率を高めることができる。また、各棒状部材32、34がランダムに配置された金属短繊維から構成される場合には、各流路50を流れる流体に乱流を生じやすくなる。この場合には、各流路50を流れる流体の圧力損失が更に大きくなり、各流路50内での流体の滞留時間を更に長くすることができるため、伝熱効果をより一層高めることができる。
【0029】
以上のような構成からなる本実施の形態の温調ユニット10によれば、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材32、34および各棒状部材32、34を接続する接続部材24、26を有し、金属から形成される金属多孔質構造体(具体的には、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42)が複数積層されることにより構成され、各金属多孔質構造体の各棒状部材32、34が互いに平行に延び、各棒状部材32、34の間の隙間に流体の流路50が形成される。
【0030】
この場合には、流体は各棒状部材32、34を避けながら流路50を流れるため、流路50を流れる流体の圧力損失が適度に大きくなり、流路50内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、金属多孔質構造体としての第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42が金属繊維から形成される場合には、各棒状部材32、34の表面積が大きくなり、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット10は熱交換能力に優れたものとなる。
【0031】
なお、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材32、34について、ある棒状部材32、34の延びる方向が他の棒状部材32、34の延びる方向に対して多少傾いていてもよい。具体的には、複数の棒状部材32、34について、ある棒状部材32、34の延びる方向と、他の棒状部材32、34の延びる方向との間の角度が-10°~10°の範囲内であればよい。
【0032】
また、本実施の形態の温調ユニットの製造方法は、複数の金属繊維を受け部(具体的には、グラファイト板)上に集積させる工程と、受け部上に集積された複数の金属繊維を焼結させることにより、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材32、34および各棒状部材32、34を接続する接続部材24、26を有し、金属から形成される金属多孔質構造体(具体的には、第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42)を複数作成する工程と、各金属多孔質構造体の各棒状部材32、34が互いに平行に延びるよう、複数の金属多孔質構造体を積層することにより、各棒状部材32、34の間の隙間に流体の流路50を形成する工程とを備えている。このような温調ユニットの製造方法によれば、上述した構成の温調ユニット10を製造することができる。
【0033】
また、本実施の形態の温調ユニット10によれば、間隔を空けて互いに平行に延びる金属多孔質構造体の複数の棒状部材32、34の間に流体の流路50が形成され、流路50において流体は棒状部材32、34の延びる方向に対して直交する方向である流動方向に沿って流れるようになっており、流路50は、流動方向に沿って蛇行している。
【0034】
この場合には、流体は流路50に沿って蛇行しながら流れるため、流路50を流れる流体の熱交換面積の増大に伴い、圧力損失が適度に大きくなり、流路50内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、各棒状部材32、34は金属多孔質構造体であるため、各棒状部材32、34の表面積が大きくなり、各棒状部材32、34による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット10は熱交換能力に優れたものとなる。
【0035】
なお、本実施の形態による温調ユニットは上述した態様のものに限定されることはない。本実施の形態による温調ユニットの他の様々な例について以下に説明する。
【0036】
ある変形例に係る温調ユニットは、図8に示すような第1金属繊維構造体46と、図9に示すような第2金属繊維構造体48とが交互に積層されることにより構成されている。具体的には、図8に示すような第1金属繊維構造体46と、図9に示すような第2金属繊維構造体48とが交互に積層されることにより金属繊維構造体の積層体が形成され、この積層体の両側に図7に示す板状の外側部材44が取り付けられる。
【0037】
第1金属繊維構造体46は、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材32および各棒状部材32を接続する一本の接続部材24を有している。図8に示す第1金属繊維構造体46で用いられる棒状部材32の形状は、図5に示す金属繊維構造体40で用いられる棒状部材32の形状と略同一となっている。また、接続部材24は、各棒状部材32の一方の端部に取り付けられている。このことにより、第1金属繊維構造体40はいわゆる櫛形状となっている。
【0038】
第2金属繊維構造体48は、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材34および各棒状部材34を接続する一本の接続部材24を有している。図9に示す第2金属繊維構造体48で用いられる棒状部材34の形状は、図6に示す金属繊維構造体42で用いられる棒状部材34の形状と略同一となっている。また、接続部材26は、各棒状部材34の一方の端部に取り付けられている。このことにより、第2金属繊維構造体48はいわゆる櫛形状となっている。
【0039】
変形例に係る温調ユニットでは、第1金属繊維構造体46の接続部材24と、第2金属繊維構造体48の接続部材26と、板状の外側部材44とを組み合わせることにより枠体が構成される。具体的には、第1金属繊維構造体46と第2金属繊維構造体48とが交互に積層されることにより形成される積層体の両側に図7に示す板状の外側部材44が配置されるともに、この積層体における各棒状部材32、34の他方の端部にも金属体22から形成される板状の外側部材44が取り付けられる。このことにより、入口および出口を有する枠体が形成される。
【0040】
このような変形例に係る温調ユニットでも、流体は第1金属繊維構造体46の接続部材24や第2金属繊維構造体48の接続部材26と平行に延びる各流路50に沿って流れるようになっている。
【0041】
上述したように、第1金属繊維構造体46の各棒状部材32および第2金属繊維構造体48の各棒状部材34の各々の断面形状は、山形状、すなわち、直線および凸形状の曲線に囲まれる領域となっている。このため、この断面形状の凸形状の曲線の頂点の近傍は先細部分32p、34pとなっている。そして、各流路50の両側縁に各先細部分32p、34pが配置されている。
【0042】
また、第1金属繊維構造体46および第2金属繊維構造体48は、隣り合う金属繊維構造体の各棒状部材32、34の先細部分32p、34pが互いに対向するまたは反対側を向くよう交互に積層される。このことにより、各流路50は各接続部材24、26の延びる方向、すなわち流体の流動方向に沿って蛇行している。
【0043】
また、各流路50の各側縁を区画する複数の棒状部材32、34は、隣り合う2つの棒状部材が互いに接している。すなわち、第1金属繊維構造体46の各棒状部材32と、この第1金属繊維構造体46の隣にある第2金属繊維構造体48の各棒状部材34とが互いに接している。このことにより、流動方向に沿って平行に延びる複数の流路50の各々が各棒状部材32、34により区画される。このため、複数の流路50の各々が別の流路50と連通しなくなる。
【0044】
また、第1金属繊維構造体46および第2金属繊維構造体48はそれぞれ金属繊維から形成されたものである。第1金属繊維構造体46および第2金属繊維構造体48を構成する金属繊維は、上述した第1金属繊維構造体40および第2金属繊維構造体42を構成する金属繊維と略同一のものが用いられる。
【0045】
このように、図8に示すような第1金属繊維構造体46と、図9に示すような第2金属繊維構造体48とが交互に積層されることにより構成される温調ユニットでも、図1等に示すような温調ユニット10と同様に、流路50を流れる流体の圧力損失が適度に大きくなり、流路50内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、各棒状部材32、34が金属繊維から形成されることにより、各棒状部材32、34の表面積が大きくなり、各棒状部材32、34による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット10は熱交換能力に優れたものとなる。
【0046】
また、別の変形例に係る温調ユニットにおいて、各棒状部材の断面として様々な形状を用いることができる。具体的には、図1乃至図6に示す各棒状部材32、34の代わりに、図10(a)に示すような断面形状が四角形(具体的には、正方形または長方形)である各棒状部材32a、34a、図10(b)に示すような断面形状が台形である各棒状部材32b、34b、図10(c)に示すような断面形状が三角形形状(具体的には、二等辺三角形)である各棒状部材32c、34c、図10(d)に示すような断面形状が山形状、すなわち、直線および凸形状の曲線で囲まれる領域である各棒状部材32d、34d、図10(e)に示すような断面形状が山形状、すなわち、直線および凸形状の曲線で囲まれる領域である各棒状部材32e、34eのうちいずれかが用いられてもよい。なお、図10(e)に示す各棒状部材32e、34eの断面形状は、図10(d)に示す各棒状部材32d、34dの断面形状と比較して凸形状の曲線の曲率が小さくなっている。また、更に別の種類の各棒状部材として、断面形状が半円形状であるものが用いられてもよい。
【0047】
図10に示す様々な棒状部材の断面のうち、図10(b)に示す各棒状部材32b、34b、図10(c)に示す各棒状部材32c、34c、図10(d)に示す各棒状部材32d、34d、図10(e)に示す棒状部材32e、34eの各々の断面形状は先細部分を含んでいる。この場合は、図10(a)に示す各棒状部材32a、34aが用いられる場合と比較して、温調ユニットを流体が流れる時間が長くなり過ぎてしまい流体の処理効率(流量)が低下してしまうことを抑制することができる。
【0048】
また、図10に示す様々な棒状部材の断面のうち、図10(d)に示す各棒状部材32d、34dおよび図10(e)に示す棒状部材32e、34eは湾曲面を含んでいる。この場合は、図10(a)に示す各棒状部材32a、34a、図10(b)に示す各棒状部材32b、34b、または図10(c)に示す各棒状部材32c、34cが用いられる場合と比較して、温調ユニットを流体が流れる時間が長くなり過ぎてしまい流体の処理効率(流量)が低下してしまうことを抑制することができる。
【0049】
また、図10(e)に示す各棒状部材32e、34eの断面形状は、図10(d)に示す各棒状部材32d、34dの断面形状と比較して凸形状の曲線の曲率が小さいが、この場合には、温調ユニットを流体が流れる時間が長くなり過ぎてしまい流体の処理効率(流量)が低下してしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、更に別の変形例に係る温調ユニットとして、図11に示す温調ユニット110、図12に示す温調ユニット210、図13に示す温調ユニット310または図14および図15に示す温調ユニット410が用いられてもよい。
【0051】
図11に示す温調ユニット110は、入口120aおよび出口120bを有する略直方体形状の枠体120と、枠体120の内部に設けられた複数の棒状部材130とを備えており、各棒状部材130の間の隙間に流体の流路150が複数形成されている。流体は枠体120の入口120aから当該枠体120の内部に入り、各流路150を通って図11における右方向に流れ、出口120bから枠体120の外部に出るようになっている。
【0052】
複数の棒状部材130は、第1金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材132および第2金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材134から構成されている。各棒状部材132、134の断面形状は山形状、すなわち直線および凸形状の曲線に囲まれる領域となっている。また、各棒状部材132、134の断面形状の凸形状の曲線の曲率は、図1乃至図6に示す各棒状部材32、34の断面形状の凸形状の曲線の曲率よりも大きくなっている。また、各棒状部材132、134は凸形状の曲線の向きが反対の状態で配置されている。また、第1金属繊維構造体は、複数の棒状部材132を接続する接続部材(図示せず)を有している。また、第2金属繊維構造体は、複数の棒状部材134を接続する接続部材(図示せず)を有している。
【0053】
図11に示す温調ユニット110は、このような第1金属繊維構造体および第2金属繊維構造体が交互に複数積層されることにより構成される。この際に、各金属繊維構造体の各棒状部材132、134が互いに平行に延び、各棒状部材132、134の間の隙間に流体の各流路150が形成される。
【0054】
言い換えると、間隔を空けて互いに平行に延びる、金属繊維から形成される複数の棒状部材130の間に流体の各流路150が形成され、各流路150において流体は棒状部材130の延びる方向に対して直交する方向である流動方向に沿って流れるようになっており、各流路150は、流動方向に沿って蛇行している。
【0055】
このような温調ユニット110でも、図1等に示す温調ユニット10と同様に、流路150を流れる流体の圧力損失が適度に大きくなり、流路150内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、各棒状部材130が金属繊維から形成されることにより、各棒状部材130の表面積が大きくなり、各棒状部材130による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット110は熱交換能力に優れたものとなる。
【0056】
図12に示す温調ユニット210は、入口220aおよび出口220bを有する略直方体形状の枠体220と、枠体220の内部に設けられた複数の棒状部材230とを備えており、各棒状部材230の間の隙間に流体の流路250が複数形成されている。流体は枠体220の入口220aから当該枠体220の内部に入り、各流路250を通って図12における右方向に流れ、出口220bから枠体220の外部に出るようになっている。
【0057】
複数の棒状部材230は、第1金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材232および第2金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材234から構成されている。各棒状部材232、234の断面形状は台形形状となっている。また、各棒状部材232、234は台形形状の向きが反対の状態で配置されている。また、第1金属繊維構造体は、複数の棒状部材232を接続する接続部材(図示せず)を有している。また、第2金属繊維構造体は、複数の棒状部材234を接続する接続部材(図示せず)を有している。
【0058】
図12に示す温調ユニット210は、このような第1金属繊維構造体および第2金属繊維構造体が交互に複数積層されることにより構成される。この際に、各金属繊維構造体の各棒状部材232、234が互いに平行に延び、各棒状部材232、234の間の隙間に流体の各流路250が形成される。
【0059】
言い換えると、間隔を空けて互いに平行に延びる、金属繊維から形成される複数の棒状部材230の間に流体の各流路250が形成され、各流路250において流体は棒状部材230の延びる方向に対して直交する方向である流動方向に沿って流れるようになっており、各流路250は、流動方向に沿って蛇行している。
【0060】
このような温調ユニット210でも、図1等に示す温調ユニット10と同様に、流路250を流れる流体の圧力損失が大きくなり、流路250内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、各棒状部材230が金属繊維から形成されることにより、各棒状部材230の表面積が大きくなり、各棒状部材230による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット210は熱交換能力に優れたものとなる。
【0061】
図13に示す温調ユニット310は、入口320aおよび出口320bを有する略直方体形状の枠体320と、枠体320の内部に設けられた複数の棒状部材330とを備えており、各棒状部材330の間の隙間に流体の流路350が複数形成されている。流体は枠体320の入口320aから当該枠体320の内部に入り、各流路350を通って図13における右方向に流れ、出口320bから枠体320の外部に出るようになっている。
【0062】
複数の棒状部材330は、第1金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材332および第2金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材334から構成されている。各棒状部材332、334の断面形状は台形形状となっている。また、各棒状部材332、334は台形形状の向きが反対の状態で配置されている。また、第1金属繊維構造体は、複数の棒状部材332を接続する接続部材(図示せず)を有している。また、第2金属繊維構造体は、複数の棒状部材334を接続する接続部材(図示せず)を有している。
【0063】
また、図13に示す各棒状部材332、334は、図12に示す各棒状部材232、234と比較して断面の台形形状のアスペクト比(具体的には、台形の高さを底辺の長さで割った値)が大きくなっており、各棒状部材332、334の間の距離(すなわち、各流路350の幅)は各棒状部材232、234の間の距離(各流路250の幅)よりも小さくなっている。このことにより、各流路350を流れる圧力損失がより大きくなり、各流路350内の流体の滞留時間がより長くなるため、伝熱効果を図12に示す温調ユニット210よりも高めることができる。
【0064】
図13に示す温調ユニット310は、このような第1金属繊維構造体および第2金属繊維構造体が交互に複数積層されることにより構成される。この際に、各金属繊維構造体の各棒状部材332、334が互いに平行に延び、各棒状部材332、334の間の隙間に流体の各流路350が形成される。
【0065】
言い換えると、間隔を空けて互いに平行に延びる、金属繊維から形成される複数の棒状部材330の間に流体の各流路350が形成され、各流路350において流体は棒状部材330の延びる方向に対して直交する方向である流動方向に沿って流れるようになっており、各流路350は、流動方向に沿って蛇行している。また、図13に示す温調ユニット310では、各流路350において、接続部材の延びる方向(すなわち、図13における左右方向)に沿って見た時に各棒状部材332、334が一部で重なり合い、流路350
は、接続部材と平行に延びる仮想直線(すなわち、図13において左右方向に延びる仮想直線)が必ず棒状部材332、334に当たるような形状となっている。
【0066】
このような温調ユニット310でも、図1等に示す温調ユニット10と同様に、流路350を流れる流体の圧力損失が大きくなり、流路350内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、各流路350において、接続部材の延びる方向(すなわち、図13における左右方向)に沿って見た時に各棒状部材332、334が一部で重なり合っているため、流路350内での流体の滞留時間がより長くなり、このため伝熱効果をより高めることができる。また、各棒状部材330が金属繊維から形成されることにより、各棒状部材330の表面積が大きくなり、各棒状部材330による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット310は熱交換能力に優れたものとなる。
【0067】
図14に示す温調ユニット410は、入口420aおよび出口420bを有する略直方体形状の枠体420と、枠体420の内部に設けられた複数の棒状部材430とを備えており、各棒状部材430の間の隙間に流体の流路450が複数形成されている。流体は枠体420の入口420aから当該枠体420の内部に入り、各流路450を通って図14における右方向に流れ、出口420bから枠体420の外部に出るようになっている。
【0068】
複数の棒状部材430は、第1金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材432および第2金属繊維構造体(図示せず)の複数の棒状部材434から構成されている。各棒状部材432、434の断面形状は、直線および凸形状の曲線に囲まれる領域となっている。また、各棒状部材432、434の断面形状の凸形状の曲線の曲率は、図1乃至図6に示す各棒状部材32、34の断面形状の凸形状の曲線の曲率と略同一の大きさとなっている。また、各棒状部材432、434は凸形状の曲線の向きが反対の状態で配置されている。また、第1金属繊維構造体は、複数の棒状部材432を接続する接続部材(図示せず)を有している。また、第2金属繊維構造体は、複数の棒状部材434を接続する接続部材(図示せず)を有している。
【0069】
図14に示す温調ユニット410は、このような第1金属繊維構造体および第2金属繊維構造体が交互に複数積層されることにより構成される。この際に、各金属繊維構造体の各棒状部材432、434が互いに平行に延び、各棒状部材432、434の間の隙間に流体の各流路450が形成される。
【0070】
また、図14に示す温調ユニット410では、各流路450の各側縁を区画する複数の棒状部材432、434は、隣り合う2つの棒状部材432、434が互いに離間している。すなわち、各流路450を流れる流体の流動方向において隣り合う2つの棒状部材432、434が接していない。
【0071】
図15は、図14に示す温調ユニット410の内部構成における範囲Gを拡大して示す断面図である。図15に示すように、各流路450の流動方向に直交する方向である幅方向(すなわち、図15における上下方向)における隣り合う2つの棒状部材432、434の間の隙間の距離mが、各流路450の流動方向(すなわち、図15における左右方向)における隣り合う2つの棒状部材432、434の間の隙間の距離nよりも大きい。この場合は、各流路450を流れる流体の流動方向において隣り合う2つの棒状部材432、434が接していなくても、この隣り合う2つの棒状部材432、434の間の距離nが大きくならないため、ある流路450を流れる流体と、この流路450の隣にある別の流路450を流れる流体とが大きく干渉してしまい流れが大きく乱れてしまうことを抑制することができる。
【0072】
図14に示す温調ユニット410でも、図1等に示す温調ユニット10と同様に、流路450を流れる流体の圧力損失が適度に大きくなり、流路450内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。また、各棒状部材430が金属繊維から形成されることにより、各棒状部材430の表面積が大きくなり、各棒状部材430による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニット410は熱交換能力に優れたものとなる。
【0073】
なお、上述した各温調ユニットは、金属繊維から形成される金属繊維構造体が複数積層されることにより構成されるものである。しかしながら、本発明に係る温調ユニットはこのような態様のものに限定されることはない。本発明に係る温調ユニットとして、金属から形成される金属多孔質構造体が複数積層されることにより構成されるものが用いられてもよい。この場合、金属多孔質構造体として、金属繊維から形成される金属繊維構造体以外に、金属粉体から形成される金属粉体構造体、または金属繊維と金属粉体との混合物から形成される金属混合体が用いられてもよい。具体的には、金属粉体構造体は、圧粉焼結法や金属粉末射出成形法等の粉末冶金法により金属粉体から形成される。また、金属繊維と金属粉体との混合物から形成される金属混合体は、上述した金属繊維構造体に粒子状の金属が混合したものである。
【0074】
このような場合でも、金属多孔質構造体が多孔質の金属から形成されることにより、各棒状部材の表面積が大きくなり、金属多孔質構造体による熱伝導率を高めることができる。よって温調ユニットは熱交換能力に優れたものとなる。
【0075】
また、この場合、温調ユニットの製造方法において、複数の金属繊維、金属粒子、または金属繊維と金属粒子との混合体を受け部上に集積させ、次に、受け部上に集積された複数の金属繊維、金属粒子、または混合体を焼結させることにより、間隔を空けて互いに平行に延びる複数の棒状部材および各棒状部材を接続する接続部材を有し、金属から形成される金属多孔質構造体を複数作成することができるようになる。その後、各金属多孔質構造体の各棒状部材が互いに平行に延びるよう、複数の金属多孔質構造体を積層することにより、各棒状部材の間の隙間に流体の流路が形成される。
【実施例
【0076】
以下、本発明について実施例および比較例を用いてより詳細に説明する。
【0077】
<第1実施例>
平均繊維長0.114mm、平均繊維径0.021mmの銅短繊維1kgをカッターミル(ホーライ社製:型式BO-360)に投入し、0.5mmのスクリーンを用いて銅短繊維を処理した。次に、カッターミルから取り出した銅短繊維を高純度アルミナ板(京セラ社製)上に集積させた。より詳細には、高純度アルミナ板に予め複数の貫通穴(縦5mm、横5mm、高さ500μm)が形成されている型枠が載せられ、この型枠の貫通穴に銅短繊維を入れた。このことにより、型枠の貫通穴の内部で銅短繊維が高純度アルミナ板上に集積された。その後、型枠の貫通穴の内部で銅短繊維が集積された高純度アルミナ板を真空焼結炉(中外炉工業社製)に入れ、この真空焼結炉内で窒素ガス使用のもと、圧力10Torr、焼結温度1000℃の条件で2hr焼結した。その後、型枠から焼結体を取り出し、所望の厚みとなるようにスペーサーを設置した上で、圧力100kNでプレスした。このことにより、梯子形状の金属繊維構造体を作成した。そして、作成された金属繊維構造体を積み重ねることにより、図2乃至図4に示すような形状の温調ユニットを作成した。なお、第1実施例に係る温調ユニットでは、各棒状部材の断面は半円形状である。
【0078】
<第2実施例>
第1実施例と同様にして金属繊維構造体を作成し、作成された金属繊維構造体を積み重ねることにより、図13に示すような形状の温調ユニットを作成した。なお、第2実施例に係る温調ユニットでは、各棒状部材の断面は半円形状である。
【0079】
<第1比較例>
第1実施例と同様にして金属繊維構造体を作成し、作成された金属繊維構造体を積み重ねることにより温調ユニットを作成した。ここで、第1比較例に係る温調ユニットでは、各棒状部材の間に形成される流路は、流動方向(すなわち、接続部材の延びる方向)に沿って蛇行しないものとなっている。より詳細には、第1変形例に係る温調ユニットでは、各棒状部材の断面は半円形状であるが、金属繊維構造体が積み重ねられたときに、隣り合う金属繊維構造体の各棒状部材の平面部分が互いに接触するようになる。このため、温調ユニット全体では、円柱状の棒状部材が格子の交点に位置するような配置となる。この場合には、流路において流体は流動方向に沿って直線的に流れるようになる。
【0080】
<第2比較例>
第1実施例と同様にして金属繊維構造体を作成し、作成された金属繊維構造体を積み重ねることにより温調ユニットを作成した。ここで、第2比較例に係る温調ユニットでは、枠体の内部に棒状部材が存在せず、代わりに流動方向(すなわち、接続部材の延びる方向)に沿って延びる平面を有する板状のパーテーションにより流路が区画されたものとなっている。すなわち、流路において流体は流動方向に沿って直線的に流れるようになる。
【0081】
<第3比較例>
第1実施例と同様にして金属繊維構造体を作成し、作成された金属繊維構造体を積み重ねることにより温調ユニットを作成した。ここで、第3比較例に係る温調ユニットは、枠体の内部に棒状部材が存在しないものとなっている。すなわち、流路において流体は流動方向に沿って直線的に流れるようになる。
【0082】
<評価>
第1~第2実施例に係る温調ユニットおよび第1~第3比較例に係る温調ユニットについて熱伝達率を算出した。調査結果を以下の表1に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1において、熱伝達率は図16乃至図18に示す評価装置を用いて、流体として空気を使用し、流量100L/min、入熱量100Wの条件で測定した。図16は、評価装置の上面図であり、図17は、図16に示す評価装置の正面図であり、図18は、図16に示す評価装置の左側面図である。
【0085】
具体的には、第1~第2実施例に係る温調ユニットおよび第1~第3比較例に係る温調ユニット(図16乃至図18において参照符号Wで示す)の各々に流体導入口500、流体導出口502およびヒータ504を設け、温調ユニットを流れる流体をヒータ504により加熱した。流体導入口500から温調ユニットの内部に入った流体は流体通過部510を通って流れ、流体導出口502から温調ユニットの外部に出される。また、流体導入口500および流体導出口502の流体の温度を測定し、それぞれ流体の入口温度および出口温度とした。また、図16に示すようにヒータ504近傍の温調ユニットの表面に8つの温度計506を設置し、これらの8つの温度計により測定される温調ユニットの表面の温度の平均値をTsとした。
【0086】
<熱伝達率の測定方法>
ヒータ504から流体への入熱量W、ヒータ504に隣接する流体通過部510の伝達面積S(伝熱面積)、ヒータ504近傍の温調ユニットの筐体の表面温度Ts、通過流体の平均温度Tw(流体の入口温度と出口温度の平均値)を測定し、入熱量W=熱伝達率h×伝達面積S×(表面温度Ts-流体平均温度Tw)の式から熱伝達率hを求めた。
【0087】
第1~第2実施例に係る温調ユニットは、第1~第3比較例に係る温調ユニットと比較して熱伝達率が優れたものとなった。第1~第3比較例に係る温調ユニットは、流路において流体は流動方向に沿って直線的に流れるため、流路を流れる流体に熱を伝達するための熱交換面積が小さくなり、熱伝達率が比較的小さくなる。これに対し、第1~第2実施例に係る温調ユニットは、流路が前記流動方向に沿って蛇行しているため、流路を流れる流体の圧力損失が適度に大きくなり、流路内での流体の滞留時間を長くすることができるため、伝熱効果を高めることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18