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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】TRPV1モジュレータ化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 235/06 20060101AFI20230316BHJP
   C07C 231/06 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230316BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C07C235/06 CSP
C07C231/06
A61K31/222
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P29/00
A61P17/00
A61P17/04
A61P17/06
A61P19/02
A61P37/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019562376
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 EP2018062169
(87)【国際公開番号】W WO2018206742
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】17382266.9
(32)【優先日】2017-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519396474
【氏名又は名称】アンタルゲニクス,エセ.エレ.
【氏名又は名称原語表記】ANTALGENICS,S.L.
【住所又は居所原語表記】Edificio Quorum III,Parque Cientifico-Universitas Miguel Hernandez,Av.de la Universidad,03202 ELCHE(ES)
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デヴェサ ヒネル,イサベル
(72)【発明者】
【氏名】ジェナッツァーニ,アルマンド
(72)【発明者】
【氏名】ピラリ,トレイシー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルナンデス カルバハル,アジア
(72)【発明者】
【氏名】フェレール モンティエル,アントニオ ビセンテ
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/160842(WO,A1)
【文献】米国特許第03689557(US,A)
【文献】Marquez, N. et al.,Iodinated N-Acylvanillamines: Potential "Multiple-Target" Anti-Inflammatory Agents Acting via the Inhibition of T-Cell Activation and Antagonism at Vanilloid TRPV1 Channels,Molecular Pharmacology,2006年,69(4),pp. 1373-1382
【文献】Appendino, G. et al.,Development of the First Ultra-Potent "Capsaicinoid" Agonist at Transient Receptor Potential Vanilloid Type 1 (TRPV1) Channels and Its Therapeutic Potential,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2005年,312(2),pp. 561-570
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその医薬的、獣医学的若しくは化粧品的に許容される塩、又は式(I)の化合物又はその医薬的、獣医学的若しくは化粧品的に許容可能な塩のいずれかのどちらかの、立体異性体若しくは混合物:
【化1】

式中、
mが1~3から選択される整数であり;

、R及びR6´が、H、(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素及び(C-C)シクロアルキルからなる群から独立して選択され;
ここで(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、及び(C-C)シクロアルキルが、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR、-NO、-CF、-OCF、-CN、-OR、-CONH、-CONHR、-NHR、-NHCOR、-NHSO、及び-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換され;

がHであり;

が、水素又はハロゲンであり;

が、H、(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C)シクロアルキル、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールからなる群から選択され;
ここで(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C)シクロアルキル、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールが、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR、-NO、-CF、-OCF、-CN、-OR、-CONH、-CONHR、-NHR、-NHCOR、-NHSO、及び-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換され;

が、(C-C28)アルキル、不飽和(C-C28)炭化水素、及び
【化2】

からなる群から選択され、
ここで(C-C28)アルキル及び不飽和(C-C28)炭化水素が、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR、-NO、-CF、-OCF、-CN、-OR、-CONH、-CONHR、-NHR、-NHCOR、-NHSO、及び-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換される。
【請求項2】
、R、R、R、R6´及びmは、請求項1で定義した通りであり、且つRが、(C-C28)アルキル及び不飽和(C-C28)炭化水素からなる群から選択され、前記(C-C28)アルキル及び不飽和(C-C28)炭化水素は、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR、-NO、-CF、-OCF、-CN、-OR、-CONH、-CONHR、-NHR、-NHCOR、-NHSO、及び-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換される;又は
前記式(I)の化合物が、(Z)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル12-(2-フェニルアセトキシ)オクタデカ-9-エノエート、及び(Z)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル12-(2-フェニルアセトキシ)オクタデカ-9-エノエートからなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
mが1~2から選択される整数である、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
が、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から選択される、請求項1~3のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
がHである、請求項1~4のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
がハロゲンである、請求項1~4のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
が、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から選択される、請求項1~6のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
及びR6´が、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から独立して選択される、請求項1~7のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項9】
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルブチレート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルブチレート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルペンタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルペンタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3-メチルブタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3-メチル-ブタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルヘキサノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルヘキサノエート;
(2E,4E)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルヘキサ-2,4-ジエノエート;
(2E,4E)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルヘキサ-2,4-ジエノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルヘプタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルヘプタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルオクタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルオクタノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルノナノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルノナノエート;
(E)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート;
(E)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルデカノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルデカノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルドデカノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルドデカノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルペンタデカノエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルペンタデカノエート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルステアレート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルステアレート;
2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルオレエート;
2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルオレエート;
(R,Z)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル12-ヒドロキシオクタデカ-9-エノエート;
(R,Z)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル12-ヒドロキシオクタデカ-9-エノエート;
(Z)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル12-(2-フェニルアセトキシ)オクタデカ-9-エノエート;
(Z)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル12-(2-フェニルアセトキシ)オクタデカ-9-エノエート;
(Z)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルドコサ-13-エノエート;
(Z)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルドコサ-13-エノエート;
(5Z,8Z,11Z,14Z)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルイコサ-5,8,11,14-テトラエノエート;
(5Z,8Z,11Z,14Z)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルイコサ-5,8,11,14-テトラエノエート;
(4E,8E,12E,16E)-2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)-アミノ)-2-オキソエチル4,8,13,17,21-ペンタメチルドコサ-4,8,12,16,20-ペンタエノエート;
(4E,8E,12E,16E)-2-((4-ヒドロキシ-2-ヨード-5-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル4,8,13,17,21-ペンタメチル-ドコサ-4,8,12,16,20-ペンタエノエート;
(E)-2-((3,4-ジヒドロキシベンジル)-アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート;
(E)-2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨード-ベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート;
(4E,8E,12E,16E)-2-((3,4-ジヒドロキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル4,8,13,17,21-ペンタメチルドコサ-4,8,12,16,20-ペンタエノエート;
(4E,8E,12E,16E)-2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨードベンジル)-アミノ)-2-オキソエチル4,8,13,17,21-ペンタメチル-ドコサ-4,8,12,16,20-ペンタノエート;
(E)-2-((3,4-ジヒドロキシフェネチル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート;
(E)-2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨードフェネチル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエート;
(4E,8E,12E,16E)-2-((3,4-ジヒドロキシフェネチル)アミノ)-2-オキソエチル4,8,13,17,21-ペンタメチルドコサ-4,8,12,16,20-ペンタエノエート;
(4E,8E,12E,16E)-2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨードフェネチル)-アミノ)-2-オキソエチル4,8,13,17,21-ペンタメチル-ドコサ-4,8,12,16,20-ペンタノエート;
2-((3,4-ジヒドロキシフェネチル)-アミノ)-2-オキソエチルオレエート;
2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨードフェネチル)アミノ)-2-オキソエチルオレエート;
(5Z,8Z,11Z,14Z)-2-((3,4-ジヒドロキシフェネチル)アミノ)-2-オキソエチルイコサ-5,8,11,14-テトラエノエート;及び
(5Z,8Z,11Z,14Z)-2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨードフェネチル)-アミノ)-2-オキソエチルイコサ-5,8,11,14-テトラエノエート
からなる群から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
a)ホルムアルデヒドの存在下で、式(II)の化合物と式(III)の化合物(式中、R、R、R、R、R6´及びmは、請求項1~9のいずれかで定義した通りであり、Rはヒドロキシ保護基である。)とを反応させ、前記ヒドロキシ保護基を除去してRがHである式(I)の化合物を生じる工程;
【化3】

b)任意に、このように得た前記式(I)の化合物を、式(I)の別の化合物に変換する工程;及び
c)任意に、工程a)又はb)のいずれかで得られた前記式(I)の化合物を塩基又は酸と反応させて、対応する塩を得る工程;
を含む、請求項1~9のいずれかに定義される式(I)の化合物の調製方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかで定義される式(I)の化合物の有効量を、1つ以上の医薬的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と共に含む、TRPV1により媒介される状態及び/又は疾患の治療及び/又は予防への使用のための医薬組成物、獣医学組成物又は化粧品組成物。
【請求項12】
前記状態及び/又は疾患が疼痛、炎症及び癌から選択される、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記状態及び/又は疾患が、敏感肌、かゆみ(掻痒)、酒さ、尋常性ざ瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬及び乾癬性関節炎から選択される、請求項11に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
TRPV1により媒介される状態及び/又は疾患の治療及び/又は予防への使用のための、請求項1~9のいずれかで定義される式(I)の化合物
【請求項15】
前記状態及び/又は疾患が疼痛、炎症及び癌から選択される、請求項14に記載の使用のための式(I)の化合物
【請求項16】
前記状態及び/又は疾患が、敏感肌、かゆみ(掻痒)、酒さ、尋常性ざ瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬及び乾癬性関節炎から選択される、請求項14に記載の使用のための式(I)の化合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年5月11日に出願された欧州特許出願第17382266.9号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、薬学、獣医学及び化粧品の分野に関する。より詳細には、本発明は、バニロイド受容体1(TRPV1)のモジュレータである新規化合物に関する。本発明は、その調製方法、それを含む医薬組成物、獣医学組成物又は化粧品組成物、及びその医薬、獣医学及び化粧品での使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
侵害受容は、機械的、熱的及び化学的刺激を含む、ある有害な又は潜在的に有害な刺激に対する感覚神経系の反応である。侵害受容器はこの情報を中枢神経系に伝達し、痛覚をもたらす。大半の侵害受容器は、一過性受容体電位(TRP)チャネルを含むカチオンチャネルである。
【0004】
TRPファミリには30を超えるカチオンチャネルが含まれ、その大部分はCa2+、Na、Mg2+などの2価及び1価のカチオンに対して透過性である。カプサイシン受容体及びバニロイド受容体1(VR)としても既知である、一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)受容体は、このファミリのイオンチャネルに属する非選択的カチオンチャネルである。TRPV1の機能は、体温の検出と調節である。さらに、TRPV1は熱傷熱覚及び痛覚を与える(侵害受容)。
【0005】
TRPV1は、痛覚神経並びに他の組織、例えば脳、腎臓、気管支上皮細胞及び表皮角化細胞に存在する。TRPV1は疼痛の伝達経路で重要な役割を果たし、多種多様の疾患や受傷状態において明確な炎症誘発性の役割を有する。
【0006】
TRPV1受容体の阻害には2つの機構があり、i)TRPV1アゴニストによって生成される受容体の脱感作、及びii)TRPV1アンタゴニストによって生成される受容体の阻害である。したがって、アゴニストとアンタゴニストのどちらも、TRPV1受容体の阻害によって媒介される状態に対抗するために有用である。
【0007】
TRPV1アゴニストの場合、TRPV1がアゴニストへの長期暴露により連続的に活性化されると、過剰なカルシウムが神経線維に進入し、侵害受容器機能の長期的にわたるが可逆的な障害をもたらし、このため疼痛を軽減する過程を開始すると考えられる。カプサイシン又はカプサイシン類似体レシニフェラトキシン(RTX)は、TRPV1アゴニストとして既知である。カプサイシンは、抗炎症剤、止痒剤、抗乾癬剤及びかゆみ止め剤として作用し、アポトーシスを引き起こし、及び/又は悪性癌細胞の増殖を阻害することが報告されている。しかし、治療薬としてカプサイシンを適用することは、その刺激効果と灼熱感のために困難であり、このため患者は事前に処置を中止する。さらに長期処置では、皮膚へのカプサイシンの蓄積が癌を引き起こし得ることが既知である(非特許文献1)。
【0008】
他方、AMG9810([(E)-3-(4-t-ブチルフェニル)-N-(2,3-ジヒドロ-ベンゾ[b][1,4]ジオキシン-6-イル)アクリルアミド])などのTRPV1アンタゴニストは、TRPV1活性を遮断し、疼痛を軽減する。TRPV1アンタゴニストは、片頭痛、癌に続発する慢性難治性疼痛、AIDS又は糖尿病を有する患者に有効であるとして開示されている。さらに最近のデータは、TRPV1アンタゴニストが、切迫性尿失禁、慢性咳、過敏性腸症候群などの疼痛以外の障害の処置にも有用であり得ることを示している。しかし、カプサイシンと同様に、TRPV1アンタゴニストAMG9810はマウスの皮膚腫瘍形成を促進することが報告されている(非特許文献2)。
【0009】
さらに、TRPV1阻害化合物は、熱誘発性皮膚老化、UV誘発性光老化及び内因性の皮膚老化並びに敏感肌、かゆみ(掻痒)及び酒さなどの他の皮膚状態を含む、皮膚の老化過程を処置及び予防するための良好な候補であり得ることが示唆されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【文献】Cancer Res.2011,71(8),pp.2809-2814
【文献】Carcinogenesis 2011、32(5)、pp.779-785
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、TRPV1モジュレータの研究に多大な努力が払われてきたが、高度な臨床開発に至ったのはごく少数の薬物のみである。したがって、TRPV1により媒介される状態及び/又は疾患において活性の改善を示し、先行技術の化合物の問題を克服する化合物を開発する必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、TRPV1のモジュレータである、置換(アセチルオキシ)アセトアミドアルキル部分に結合した3,4-ジオキシ置換フェニル部分を有する新たな化合物を発見した。実施例によって示すように、本発明の化合物は、TRPV1アゴニスト及びTRPV1アンタゴニストの両方を含む。さらに、炎症のインビボモデルにおいて、本発明の化合物はいずれの毒性も示さず、有意な抗侵害受容効果を示した。したがって、これらの化合物は、TRPV1の阻害によって媒介される状態及び/又は疾患の処置及び/又は予防に有用であり得る。
【0013】
本発明の化合物の利点は、その効果を発揮した後、エステラーゼにより加水分解されやすいエステル結合のために代謝され、このため続いて除去される能力を有することである。したがって、これらの化合物は体内に蓄積されず、活性化合物の定期的な投与を必要とする、慢性疾患の処置又は予防に特に有用である。このため、本発明の化合物は、活性の改善を示すだけでなく、カプサイシンの刺激効果又は皮膚への蓄積による発癌活性などの、これまでに開発された先行技術化合物に見られる副作用も回避する。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様は、式(I)の化合物又はその医薬的、獣医学的若しくは化粧品的に許容される塩、又は式(I)の化合物又はその医薬的、獣医学的若しくは化粧品的に許容可能な塩いずれかのどちらかの立体異性体若しくは混合物に関し、
【化1】
【0015】
式中、
mは1~3から選択される整数であり、
、R、R及びR6´は、H、(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素及び(C-C)シクロアルキルからなる群から独立して選択され、
ここで(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、及び(C-C)シクロアルキルは、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR、-NO、-CF、-OCF、-CN、
-OR、-CONH、-CONHR、-CONR、-NHR、-NR、-NHCOR、-NHSO及び
-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換され、
は、水素又はハロゲンであり、
は、H、(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C)シクロアルキル、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールからなる群から選択され;
ここで(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C)シクロアルキル、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールは、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR
-NO、-CF、-OCF、-CN、-OR、-CONH、-CONHR、-CONR、-NHR、-NR
-NHCOR、-NHSO及び-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換され、
は、(C-C28)アルキル、不飽和(C-C28)炭化水素、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールであり、
ここで(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールは、ハロゲン、-COOH、-OH、-NH、-COOR、-NO、-CF
-OCF、-CN、-OR、-CONH、-CONHR、-CONR、-NHR、-NR、-NHCOR
-NHSO及び-SONHRからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意に置換され、
ただし、式(I)の化合物は、
(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル-ブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシフェネチル-カルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)-メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(2E,4E)-(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブチレート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル2-エチルブタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、
(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルウンデカ-10-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル2-メチルペンタノエート及び2-(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)プロパン-2-イルペンタノエート以外である。
【0016】
本発明の別の態様は、上で定義した式(I)の化合物の調製方法であって、
a)ホルムアルデヒドの存在下で、式(II)の化合物を、式(III)の化合物(式中、R、R、R、R、R、R6´及びmは、上で定義した通りである)と反応させて、式(I)の化合物を生じる工程;
【化2】
b)任意に、このように得た前記式(I)の化合物を、式(I)の別の化合物に変換する1つ又は複数の工程;及び
c)任意に、工程a)又はb)のいずれかで得られた前記式(I)の化合物を塩基又は酸と反応させて、対応する塩を得る工程;
を含む方法に関する。
【0017】
本発明の化合物は、異なる種類の組成物に配合することができる。このため、本発明の別の態様は、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)-メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(2E,4E)-(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル2-エチルブタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル-ブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルウンデカ-10-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル2-メチルペンタノエート及び2-(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-プロパン-2-イルペンタノエートを含む、上で定義した式(I)の化合物の有効量を、1つ以上の医薬的、獣医学的又は化粧品的に許容される賦形剤又は担体と共に含む、医薬組成物、獣医学組成物又は化粧品組成物に関する。
【0018】
上述のように、本発明の化合物は、TRPV1の阻害によって媒介される状態又は疾患の処置及び/又は予防に有用である。このため、本発明の別の態様は、このため、本発明の別の態様は、TRPV1の阻害によって介在される状態又は疾患の処置及び/又は予防での使用のための、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルブタ-2-エノエート、 (3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)-メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(2E,4E)-(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル2-エチルブタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル-ブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルウンデカ-10-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル2-メチルペンタノエート及び2-(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-プロパン-2-イルペンタノエートを含む、上で定義した式(I)の化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】左後足(A)及び右後足(B)においてビヒクル(V)と比較した、CFA誘発性足炎症モデルにおける、静脈内投与による本発明の化合物(実施例37)の効果を示す。この図は、熱刺激に応答した時間(t)に対する足引っ込め潜時(tt)を示す(n=6マウス/群)。データは、平均±SEM、n=6として与える。ボンフェローニの事後検定を用いた2元配置ANOVA。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、***P<0.0001。
図2】左後足(A)及び右後足(B)においてビヒクル(V)と比較した、CFA誘発性足炎症モデルにおける、足底内投与による本発明の化合物(実施例37)の効果を示す。この図は、熱刺激に応答した時間(t)に対する足引っ込め潜時(tt)を示す(n=6マウス/群)。データは、平均±SEM、n=6として与える。ボンフェローニの事後検定を用いた2元配置ANOVA。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、***P<0.0001。
図3】ヒスタミン誘発性リッキング行動の測定に存する、かゆみのインビボモデルにおける対照(白棒)と比較した、本発明の化合物(実施例37)(黒棒)の効果を示す。この図は、ヒスタミン注射後の時間(t(分))に対する注射した足のリッキングに費やした時間を示す。****p<0.001。
図4】クロロキン誘発性掻痒リッキング行動の測定に存する、非ヒスタミン作動性掻痒のインビボモデルにおける、対照(白色棒)と比較した、本発明の化合物(実施例37)(黒色棒)の効果を示す。この図は、クロロキン注射後の時間(t(分))に対する注射した足のリッキングに費やした時間を示す。*p<0.05、****p<0.001。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本出願において本明細書で使用されるすべての用語は、別途記載しない限り、当分野で既知であるような通常の意味で理解されるものとする。本出願で使用するある用語の他のより具体的な定義は、後述の通りであり、明示的に定義された定義がより広い定義を提供しない限り、明細書及び請求項全体に均一に適用されるものである。
【0021】
「保護基」(PG)とは、分子内の反応性基に結合すると、その反応性を遮蔽、低減又は防止する原子の群を示す。
【0022】
「1つ以上で置換された」という表現は、基が十分に置換されやすい位置を有するならば、この基が1つ以上、好ましくは1、2、3又は4個の置換基で置換できることを意味する。
【0023】
本発明の目的のために、室温は20~25℃である。
【0024】
「(C-C)アルキル」という用語は、p~n個の炭素原子及び単結合のみを含有する飽和分枝又は直鎖炭化水素鎖を示す。アルキル基の非限定的な例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、1-メチルプロピル、2-メチルプロピル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ペンタデシルなどが挙げられる。
【0025】
「不飽和(C-C)炭化水素」という用語は、p~n個の炭素原子並びに1個以上の二重結合及び/又は1個以上の三重結合を含む、不飽和分枝又は直鎖炭化水素鎖を示す。このため、「不飽和(C-C)炭化水素」という用語は、(C-C)アルケニル及び(C-C)アルキニルを含み、「(C-C)アルケニル」という用語は、p~n個の炭素原子及び少なくとも1個以上の二重結合を含む、不飽和分枝又は直鎖炭化水素鎖を示す。「(C-C)アルキニル」という用語は、p~n個の炭素原子及び少なくとも1個以上の三重結合を含む、不飽和分枝又は直鎖炭化水素鎖を示す。不飽和(C-C)炭化水素基の非限定的な例としては、ビニル、プロペニル、アリル、オレイル、エチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブタ-1-エン-3-イニル、ヘキサ-1,3-ジエン-5-イニルなどが挙げられる。
【0026】
ハロゲンという用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
【0027】
「(C-C)シクロアルキル」という用語は、1個以上の環及びC、CH、O、N、NH及びSから選択される3~6個の環員を含む、既知の環系飽和、不飽和又は芳香族を示す。(C-C)シクロアルキル環の非限定的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、アジリジニル、オキシラニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジチアゾリル、フリル、ホモピペリジニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピラニル、ピラゾリジニル、ピラジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピリダジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリミジル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、テトラヒドロフリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、チオモルホリニル、トリアゾリルなどが挙げられる。CH環員及びNH環員を含有する環系の場合、環はC原子又はN原子を介して分子の残部に結合し得る。
【0028】
「(C-C12)アリール」という用語は、1個以上の環及び6~12個の環員を含み、すべての環員が炭素原子を含む、芳香族の既知の環系を示す。(C-C12)アリールの例としては、フェニル及びナフタレンが挙げられる。
【0029】
「(C-C12)ヘテロアリール」という用語は、1個以上の環及び5~12個の環員を含み、1個以上の環員、好ましくは1、2、3又は4個の環員が、化学的に可能な場合、NH、N、O、及びSから選択される、既知の芳香族環系を示す。ヘテロアリール環の残りの環員は、C、CH、O、N、NH及びSから独立して選択される。(C-C12)ヘテロアリール環の非限定的な例としては、フラン-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、チオフェン-2-イル、インドール-2-イル、イミダゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、2-ピリジル、3-ピリジル、ピロリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、トリアゾリルなどが挙げられる。CH環員及びNH環員を含有する環系の場合、環はC原子又はN原子を介して分子の残部に結合し得る。
【0030】
本発明で定義される基(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C)シクロアルキル、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールは、本明細書に記載するように非置換であっても又は置換されていてもよく、任意の利用可能な位置に配置される置換基である。
【0031】
本明細書で使用される「既知の環系」という用語は、化学的に実現可能であり、当分野で既知である環系を示すため、化学的に不可能な環系を除外するものである。
【0032】
式(I)の化合物を示す本発明の実施形態において、ある基の置換又は非置換が、例えばその基のある置換を示すこと又はその基が非置換であることを示すことのどちらかによって規定されていない場合、この基の考えられる置換は、式(I)の定義におけるものであると理解する必要がある。特定の群において「任意に置換される」と言う場合にも同じことが当てはまる。
【0033】
本発明は、式(I)の化合物の互変異性形も含む。「互変異性異性体」という用語は、構造において原子、一般に水素原子及び1個以上の多重結合の位置が異なり、容易かつ可逆的にあるものから別ものへと変化することできる異性体を意味する。互変異性体は、本出願では不明瞭に使用されている。このため、例として、ヒドロキシフェニル基は、その互変異性形:シクロヘキサ-2,4-ジエノンと同じであると見なす必要がある。すべての互変異性体は、本発明の目的にとって同じであると見なすべきである。
【0034】
使用可能な本発明の化合物の塩の種類に制限はなく、ただし、これらが治療目的で使用される場合、医薬的、化粧品的又は獣医学的に許容されるものである。「医薬的、化粧品的又は獣医学的に許容される塩」は、アルカリ金属塩を形成し、遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために一般に使用される塩を含む。
【0035】
式(I)の化合物の医薬的、化粧品的又は獣医学的に許容される塩の調製は、当分野で既知の方法によって実施することができる。例えば、その塩は、従来の化学的方法により、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から調製することができる。一般に、そのような塩は、例えば、これらの化合物の遊離酸又は塩基形を、化学量論量の適切な医薬的、化粧品的又は獣医学的に許容される塩基又は酸と、水又は有機溶媒又はその混合物中で反応させることにより調製される。式(I)の化合物及びその塩は、いくつかの物理的性質が異なる場合があるが、本発明の目的にとっては同等である。
【0036】
本発明の化合物は、遊離溶媒和化合物又は溶媒和物(例えば水和物)のどちらかとしての結晶形態であり得て、どちらの形態も本発明の範囲内であるものとする。溶媒和の方法は、当分野で一般的に既知である。一般に、水、エタノールなどの医薬的、化粧品的又は獣医学的に許容される溶媒との溶媒和形態は、本発明の目的のための非溶媒和形態と同等である。
【0037】
本発明のいくつかの化合物は、各種の立体異性体を生じさせることができるキラル中心を有することができる。本明細書で使用する場合、「立体異性体」という用語は、空間内のその原子の配向のみが異なる個別の化合物のすべての異性体を示す。立体異性体という用語には、鏡像異性体(エナンチオマー)、鏡像異性体の混合物(ラセミ体、ラセミ混合物)、幾何(シス/トランス又はシン/アンチ又はE/Z)異性体及び互いに鏡像ではない、1個以上のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオマー)を含む。本発明は、これらの各立体異性体及びその混合物に関する。
【0038】
ジアステレオマー及びエナンチオマーは、クロマトグラフィーや分別結晶などの従来の手法で分離できる。光学異性体は、光学的に純粋な異性体を得るための、光学分割の従来の手法によって分割できる。この分割は、任意のキラル合成中間体又は本発明の化合物で実施することができる。光学的に純粋な異性体は、エナンチオ特異的合成を使用して個別に得ることもできる。
【0039】
式(I)の化合物に言及しているすべての実施形態において、その医薬的、化粧品的又は獣医学的に許容される塩、及び式(I)の化合物のいずれか若しくはその医薬的に許容される塩のいずれかのどちらかの立体異性体又は立体異性体の混合物は、特に言及しない場合でも、常に考慮されている。
【0040】
本発明の第1の態様において、本発明の化合物は表1に列挙されたもの以外である。
【表1】
【0041】
上記の表に見られるように、最後の化合物を除くすべての引用された化合物は、関連する参考文献がない市販製品である。CAS RN182553-24-8の化合物は、参考文献J.Org.Chem.1997,62,2080-2092及びTetrahedron Letters1996,Vol.37,No.34,pp.6193-6196に開示されている。これらの文書は化合物の化学合成を開示しているにすぎず、したがって本発明の化学分野に属さない、即ち、これらの文書のいずれも、TRPV1を調節するこれらの化合物の能力についても、関連する状態及び/又は疾患の処置及び/又は予防におけるその使用についても記載していない。
【0042】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組み合わせた、一実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、mは1~2から選択される整数である。より詳細な実施形態において、mは1である。別のより詳細な実施形態において、mは2である。
【0043】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、Rは、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から選択される。より詳細には、RはH又は任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、RはH又はメチルである。
【0044】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、Rは、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から選択される。より詳細には、RはH又は任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、RはH又はメチルであり、さらになおより詳細には、RはHである。
【0045】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、RはHである。
【0046】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、Rはハロゲン、より詳細にはヨウ素である。
【0047】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、Rは、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から選択される。より詳細には、RはH又は任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、RはHである。
【0048】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、R及びR6´は、H、任意に置換された(C-C)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C)炭化水素からなる群から独立して選択される。より詳細には、R及びR6´は独立して、H又は任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、任意に置換された(C-C)アルキルは、任意に置換された(C-C)アルキルである。さらにより詳細には、R及びR6´はHである。
【0049】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、Rは、任意に置換された(C-C28)アルキル及び任意に置換された不飽和(C-C28)炭化水素からなる群から選択される。より詳細には、Rは、任意に置換された(C-C28)アルキル又は任意に置換された不飽和(C-C28)炭化水素である。さらにより詳細には、Rは、任意に置換された(C-C26)アルキル又は任意に置換された不飽和(C-C26)炭化水素である。
【0050】
上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、Rは、プロピル、ブチル、2-メチルプロピル、ペンチル、ペンタ-1,3-ジエニル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2,6-ジメチルヘプタ-1,5-ジエニル、ノニル、ウンデシル、テトラデシル、ヘプタデシル、ヘプタデカ-8-エニル、11-ヒドロキシヘプタデカ-8-エニル、ヘニコス-12-エニル、ノナデカ-4,7,10,13-テトラエニル、3,7,12,16,20-ペンタメチルヘニコサ-3,7,11,15,19-ペンタエニル、イコサ-5,8,11,14-テトラエン-2-イル及びヘプタデカ-8-エニルからなる群から選択される。より詳細には、Rは、2,6-ジメチルヘプタ-1,5-ジエニル、ウンデシル及び3,7,12,16,20-ペンタメチルヘニコサ-3,7,11,15,19-ペンタエニルである。
【0051】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、R は、以下からなる群から選択される:
【化3】

【0052】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の実施形態において、本発明は、前述の式(I)の化合物に関し、式中、R は、以下からなる群から選択される:
【化4】
【0053】
本発明の別の実施形態において、式(I)の化合物は、以下からなる群から選択される:
【数1】
【0054】
以下のスキームに示すような、ホルムアルデヒドの存在下で式(II)の化合物を式(III)の化合物とカップリングすることによる、上で定義した式(I)の化合物の調製方法も、本発明の一部を形成して:
【化5】
【0055】
式中、RがHであり、R、R、R、R、R、R6´及びmが上で定義された通りである、式(I)の化合物を生じる。この変換(パッセリーニ多成分反応)は、好適な溶媒、例えばジクロロメタンの存在下、好適な温度にて、好ましくは還流下で行う。
【0056】
及び/又はRが水素である場合、上記の変換は、式(II)の化合物の前駆体を使用して実施することもでき、式中、ヒドロキシ基は保護基で好都合に保護されている。ホルムアルデヒドの存在下での式(III)の化合物との反応後、保護基が除去され、所望ならば、式(I)の化合物は式(I)の別の化合物に変換することができる。保護基の導入及び/又は除去は、例えばT.W.Green and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Chemistry(Wiley,3rd ed.1999,Chapter2,pp.17-200)に記載されているような、当分野で周知の標準方法によって行う。代表的なヒドロキシ保護基としては、ヒドロキシ基がアシル化又はアルキル化されているもの、例えばベンジル及びトリチルエーテル、トリチルエーテル並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル及びアリルエーテルが挙げられる。例えば、ヒドロキサム酸保護基はtertブチルジメチルシリルであり、脱保護は、酸性媒体中で、例えば酢酸を用いて、テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド(TBAF)の存在下、テトラヒドロフランなどの好適な溶媒中で行う。
【0057】
がHである式(I)の化合物は、Rが(C-C)アルキル、不飽和(C-C)炭化水素、(C-C)シクロアルキル、(C-C12)アリール及び(C-C12)ヘテロアリールからなる群から選択される、式(I)の化合物に変換することができる。この変換は、カリウムカーボネート、水素化ナトリウム、ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミドなどの塩基及びアセトニトリル、テトラヒドロフラン又はジメチルホルムアミドなどの好適な溶媒の存在下で、Xが例えばハロゲン原子などの離脱基である式RXのアルキル化剤によって、化合物(I)をアルキル化することにより行うことができる。溶媒や温度などの条件は、使用する塩基によって変わる。
【0058】
又は、式(I)の化合物は、以下のスキームに示すように、式(VI)のアミンと式(VII)の化合物をカップリングすることにより調製することができる:
【化6】
【0059】
式中、R、R、R、R、R、R、R6´及びmは上記で定義した通りであり、RはHである。この変換は、任意に1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドヒドロクロリド20(EDC.HCl)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)などの活性化剤の存在下、好ましくはN-メチルモルホリン(NMM)などの塩基の存在下、ジクロロメタン、クロロホルム又はiメチルホルムアミドなどの好適な溶媒中、室温から溶媒の沸点までの温度で、好ましくは室温にて行う。
【0060】
式(II)の化合物は、以下のスキームに示すように、式(V)の化合物から調製することができる式(IV)の化合物から調製され得る:
【化7】
【0061】
上記のスキームでは、R、R、R、R、R6´及びmは、上で定義した通りである。又は、上の変換において、R及び/又はRは、後にR及び/又はR基に変換される保護基であることができる。これらの基は、上に示したものなどの、当分野で周知の条件下で導入及び除去することができる。
【0062】
式(V)の化合物の式(IV)の化合物への変換は、任意に好適な溶媒、例えばメタノールの存在下及び任意に塩基、例えばKCOの存在下、ギ酸のエステル、例えばメチルホルメート又はエチルホルメートの存在下で好適な温度、好ましくは35℃で行うことができる。又は、式(V)の化合物は、0℃にて大過剰の無水酢酸及びギ酸を使用することにより、式(IV)の化合物に変換することができる。この反応は、溶媒を用いても又は用いなくても行うことができる。溶媒を使用する場合は、THFを選択することが良好であり得る。
【0063】
式(IV)の化合物は、好適な溶媒、例えばジクロロメタン中、好適な温度、好ましくは0℃にて、POCl及び塩基、例えばトリエチルアミンの存在下で式(II)の化合物に変換することができる。
【0064】
がヨウ素である式(I)の化合物は、好適な溶媒、例えばクロロホルム中、ヨウ素及び銀トリフルオロアセテートの存在下で、RがHである式(IV)の化合物から調製することができる。得られた化合物は、先に定義した式(I)の化合物に変換することができる。
【0065】
式(III)、(V)、(VI)、及び(VII)の化合物は市販されているか、又は従来の合成方法によって得ることができる。例えば、RがHとは異なる式(VI)の化合物は、アルキル化によって式(V)の化合物から調製することができる。
【0066】
式(I)の化合物は、1つ又は複数のステップで式(I)の別の化合物に変換され得る。当業者は、他の合成経路を使用して本発明の化合物が合成され得ることを認識するであろう。特定の出発材料及び試薬が実施例に開示されているが、多種多様の誘導体及び/又は反応条件を提供するために、他の出発材料及び試薬を容易に代用することができる。加えて、以下に記載する方法により調製される化合物の多くは、当業者に周知の従来の化学的作用を使用して、本開示に照らしてさらに修飾することができる。
【0067】
本発明は、医薬的、獣医学的又は化粧品的に許容される賦形剤又は担体と共に、本発明の化合物の有効量を含む医薬組成物、獣医学組成物又は化粧品組成物にも関する。
【0068】
本発明の組成物は、即時又は持続放出系であり得る。
【0069】
「持続放出」という用語は、本明細書において、化合物の送達のための系であって、一定期間にわたって、必ずしもというわけではないが、好ましくは一定期間にわたって相対的に一定の化合物の放出レベルにて、前記化合物の徐放を提供する系を示すために使用される。
【0070】
持続放出系又は担体系の例としては、限定されないが、リポソーム、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子及び固体脂質ナノ粒子、ナノ構造化脂質担体、スポンジ、シクロデキストリン、ベシクル、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、リン脂質-界面活性剤混合ミセル、ミリスフィア、マイクロスフェア及びナノスフェア、リポスフィア、ミリカプセル、マイクロカプセル及びナノカプセル並びにマイクロエマルジョン及びナノエマルジョンが挙げられ、これらは有効成分の浸透性を高め、並びに/又は有効成分の薬物動態学的及び薬力学的特性を改善するために添加され得る。好ましい持続放出系又は担体系は、リポソーム、混合ミセルリン脂質及びマイクロエマルジョン、最も好ましくは内部逆ミセル構造を備えた油中水型マイクロエマルジョンである。
【0071】
「有効量」という表現は、本明細書で使用する場合、その適用後に所望の化粧品的又は治療的効果を与える生成物の量に関する。治療効果を与える有効量(ここでは治療有効量とも呼ばれる)は、化合物の投与時に、対象となる疾患の症状の1つ以上の症状の発症を予防するか、又は症状をある程度緩和するために十分な化合物の量である。本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、投与された化合物、投与の経路及び頻度、患者の年齢、状態、状態の性質又は重症度、治療又は予防される障害又は状態及び同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状態に応じて異なり得る。
【0072】
通例、組成物中の本発明の化合物の量は、好ましくは、組成物の総重量に対して、好ましくは0.00000001重量%~20重量%、より好ましくは0.000001%~20%、さらにより好ましくは0.0001~10%、なおより好ましくは0.0001%~5%である。
【0073】
「医薬的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体」という表現は、賦形剤又は担体が、ヒト及び動物における医薬的又は医学的用途のための組成物の調製に好適であることを意味する。各成分は、医薬組成物又は獣医学組成物の他の成分と適合性であるという意味で、医薬的に許容されなければならない。各成分は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又は合理的なリスク/ベネフィット関係に合致する他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織又は臓器と接触して使用することにも適していなければならない。
【0074】
「化粧品として許容される賦形剤又は担体」という表現は、賦形剤又は担体が化粧品用途の組成物の調製に好適であることを意味する。各成分は、化粧品組成物の他の成分と適合性であるという意味で化粧品として許容されなければならない。各成分は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性又は合理的なリスク/ベネフィット関係に合致する他の問題若しくは合併症を伴わずに、ヒト及び動物の組織又は臓器と接触して使用することにも適していなければならない。
【0075】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、特定の実施形態において、組成物は、1つ以上の医薬的又は獣医学的に許容される賦形剤又は担体と共に先に定義した式(I)の化合物の治療的有効量を含む、医薬組成物又は獣医組成物である。
【0076】
上記又は下記の様々な実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の特定の実施形態において、組成物は、1つ以上の医薬的に許容される賦形剤又は担体と共に先に定義した式(I)の化合物の有効量を含む、化粧品組成物である。
【0077】
医薬組成物は、粘着パッチ、非粘着パッチ、閉塞パッチなど、マイクロパッチを含む、頬側、経口、局所又は経皮投与用に製剤され得る。経口又は非経口投与などの全身投与。本発明の目的のために、「非経口」という用語は、鼻、心房、眼、直腸、尿道、膣、皮下、皮内、血管内、静脈内、筋肉内、眼内、硝子体内、角膜内、脊髄内、髄内、頭蓋内、頸部内、大脳内、髄膜内、関節内、肝臓内、胸腔内、気管内、クモ膜下腔及び腹腔内並びに他の同様の注射又は輸液技術を含む。
【0078】
製剤の種類の選択は、活性化合物の性質、投与部位、本発明の化合物の動態及び放出期間並びに処置される状態によって変わる。
【0079】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、特定の実施形態において、本発明の組成物は局所組成物である。
【0080】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の特定の実施形態において、本発明の組成物は経皮組成物である。
【0081】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、別の特定の実施形態において、本発明の組成物は頬側又は経口組成物である。
【0082】
頬側及び経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、液剤、エマルジョン、シロップ剤、エリキシル剤などの固体及び液体製剤が含まれる。当業者は、これらの製剤に使用される適切な賦形剤を知っているであろう。賦形剤の非限定的な例としては、崩壊剤、例えば微結晶セルロース、コーンスターチ、ナトリウムスターチ、グリコレート及びアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、アルファ化デンプン、ポリビニルピロリドン(PVP)、コポビドン、アカシアガム、キサンタンガム、トラガカントガム、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)及びカルボキシメチルセルロース(CMC);潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム又はナトリウムラウリルサルフェート;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化ケイ素、デンプン及びタルク;甘味料、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、マルトース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルツロース、イソマルツロース、マルチトール、イソマルチトール、ラクツロース及びラクチトール;着色料及び香味料などが挙げられる。
【0083】
一般に、局所又は経皮製剤としては、「リーブオン」製剤及び「リンスオフ」製剤を含む、クリーム、多重エマルジョン、例えば水中の油及び/又はシリコーンの非限定的エマルジョン、水/油/水又は水/シリコーン/水のエマルジョン及びエマルジョン及び油/水/油又はシリコーン/水/シリコーン、無水組成物、水性分散剤、オイル、ミルク、香膏、フォーム、ゲル、ポマード、粉剤、ローション、クリームゲル、ヒドロアルコール溶液、ヒドログリコール溶液、ヒドロゲル、リニメント、石鹸、シャンプー、コンディショナー、セラム、多糖類フィルム、軟膏、ムース、軟膏粉剤、バー、ドライ、ペースト、ペンシル及び気化器、スプレーが挙げられ、
【0084】
化合物は好適な賦形剤に分散又は溶解されている。
【0085】
局所又は経皮用途は、当業者に既知の技術によって、例えば限定的な意味なしに、各種の固形装備品、例えば包帯、ガーゼ、Tシャツ、ソックス、ストッキング、下着、ガードル、手袋、おむつ、ナプキン、外傷用医薬材料、ベッドスプレッド、ワイプ、粘着パッチ、非粘着パッチ、閉塞パッチ、マイクロエレクトロニックパッチ若しくはフェイスマスクに組み入れることができるか、又は各種のメイクアップライン製品、例えば特にメイク下地、例えば液体メイクアップ下地及びメイクアップローション、クレンジングローション、メイクリムーバ、コンシーラ、アイシャドウ、口紅、リッププロテクタ、リップグロス、パウダーなどに組み入れられ得る。
【0086】
上で定義した局所組成物は、結合剤、皮膚軟化剤、皮膚浸透促進剤、乳化剤、界面活性剤、増ちょう剤、増粘剤、pH調節剤、酸化防止剤、保存料、溶媒、色素、顔料、香料又はその混合物を含む、局所投与に適切な医薬用、獣医学用又は化粧品用の賦形剤又は担体を含む。使用される賦形剤又は担体は、皮膚に対して親和性があり、耐容性が良好であり、安定性であり、所望の粘稠性と適用し易さを提供するために好適な量で使用される。適切な賦形剤及び/又は担体並びにその量は、調製されている製剤の種類に従って、当業者が容易に決定することができる。
【0087】
本発明の組成物は、液体担体、例えば水、石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油、例えばラッカセイ油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、エーテルサルフェート、サルフェート、ベタイン、グリコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキシノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロース、グリセロール、ジギトニンなども含み得る。
【0088】
結合剤の例としては、限定されないが、ポリビニルピロリドン、アルギネート、トラガントなどが挙げられる。皮膚軟化剤又は皮膚浸透促進剤の例としては、限定されないが、特にラウリルアルコール、オレイルアルコール、ユーカリプトール、ナトリウムラウリルサルフェート、グリセリルモノオエート、ソルビタンモノオレエート、イソプロピルミリステート、グリセリルミリステート、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビド、イソプロピルパルミテート、オレイン酸など、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、界面活性剤、アゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン)、アルコール、尿素、エトキシジグリコール、アセトン、ポリエチレングリコールが挙げられる。必要に応じて、本発明の組成物は、本発明の化合物の浸透を向上させるための、イオン導入、ソノフォレーシス、エレクトロポレーション、微小電気パッチ、機械的圧力、浸透圧勾配、閉塞性治療法(occlusive cure)、例えば酸素注入のような、圧力による、針を用いない微量注入若しくは注入、又はその組合せによって、局所部位にて適用され得る。適用部位は、処置又は予防される状態の性質によって決まる。
【0089】
乳化剤又は界面活性剤の例としては、限定されないが、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ソルビタン類(スパン)、レシチン及びカリウムヘキサデシル水素ホスフェートなどが挙げられる。
【0090】
増ちょう剤又は増粘剤の例としては、限定されないが、剛性ポリマー、例えばカルボマー(アクリル酸の架橋ポリマー)などの合成ポリマー、セルロース系ポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシド(プルロニック化合物)を主成分とするブロックコポリマーが挙げられる。
【0091】
pH調節剤又は緩衝剤の例としては、限定されないが、一塩基性ナトリウムホスフェート、二塩基性ナトリウムホスフェート、ナトリウムベンゾエート、カリウムベンゾエート、ナトリウムシトレート、ナトリウムアセテート、ナトリウムタートレート、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
【0092】
抗酸化剤の例としては、限定されないが、アスコルビン酸、ナトリウムアスコルベート、ナトリウムバイサルファイト、ナトリウムサルファイト、ナトリウムメタバイサルフェート、クルクミン、テトラヒドロクルクミン、ジアセチルテトラヒドロクルクミン、レスベラトロール、ケルセチン、ヘスペリジン、ミリセチン、ナリンギン、α-リポ酸、モノチオグリセロール、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、プロピルガレートが挙げられる。
【0093】
保存料の例としては、限定されないが、メチルパラベン、メチルパラベンナトリウム、プロピルパラベン、プロピルパラベンナトリウム、ベンザルコニウムクロリド、ジアゾリジニル尿素、ベンゼトニウムクロリド、クロロクレゾール、チオマルサル、ソルビン酸、カリウムソルベート及びベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0094】
溶媒の例としては、限定されないが、エタノール、イソプロピルアルコール、水、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、置換グリコール、例えばクレモホール又はその混合物などが挙げられる。
【0095】
本発明の化合物は、固体有機ポリマー又は固体鉱物支持体、例えば、限定的な意味なしに、特にタルク(tale)、ベントナイト、シリカ、デンプン又はマルトデキストリンにも吸着され得る。
【0096】
上述のように、本発明の化合物はTRPV1モジュレータである。本発明の化合物のいくつか、特にRがHである式(I)の化合物は、TRPV1アゴニストである。本発明の化合物のいくつか、特にRがハロゲン、特にヨウ素である式(I)の化合物は、TRPV1アンタゴニストである。
【0097】
本発明の目的のために、本明細書で定義するTRPV1アゴニストは、10μM以下、好ましくは1μM以下、より好ましくは500nM以下のEC50値でTRPV1を活性化することができ、本明細書で定義するTRPV1アンタゴニストは、50μM以下、好ましくは30μM以下、より好ましくは10μM以下のIC50値でTRPV1を阻害することができ、TRPV1の活性化/阻害は、本発明の実施例に記載されているものなどの、蛍光アッセイ(例えばインビトロアッセイ)で測定される。
【0098】
このため、本発明の化合物は、TRPV1アゴニストの場合には受容体の直接脱感作を介して、又はアンタゴニストの場合にはTRPV1を遮断することにより、TRPV1活性の消失を引き起こす。TRPV1アンタゴニストの使用には、適用時に灼熱感を引き起こさないという、さらなる利点がある。
【0099】
結果として、本発明の化合物は、TRPV1の阻害によって媒介される状態又は疾患の処置及び/又は予防に有用である。
【0100】
したがって、本発明は、TRPV1の阻害が介在する状態又は疾患の処置及び/又は予防用の薬剤又は化粧品組成物の製造のための、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)-メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(2E,4E)-(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル2-エチルブタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル-ブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルウンデカ-10-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル2-メチルペンタノエート及び2-(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-プロパン-2-イルペンタノエートを含む、上で定義した式(I)の化合物の使用にも関する。
【0101】
TRPV1の阻害によって媒介される状態又は疾患の処置及び/又は予防のための方法であって、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3,3-ジメチルブタノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル4-メチルペンタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)-メチル3-メチルブタ-2-エノエート、(2E,4E)-(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-メチルブチレート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチルヘキサ-2,4-ジエノエート、(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)メチル2-エチルブタノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル-ブタ-2-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルブタ-3-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチルウンデカ-10-エノエート、(3,4-ジメトキシベンジルカルバモイル)メチル2-メチルペンタノエート及び2-(3,4-ジメトキシフェネチルカルバモイル)-プロパン-2-イルペンタノエートを含む、上で定義した式(I)の化合物の有効量;並びに1つ以上の医薬的、獣医学的又は化粧品的に許容される賦形剤又は担体を、ヒトを含むそれを必要とする対象において投与することを含む、方法も本発明の一部を形成する。
【0102】
上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、本発明の一実施形態において、TRPV1の阻害により媒介される状態又は疾患は、疼痛、炎症及び癌から選択される。
【0103】
TRPV1の抗腫瘍活性は、例えばBreast Cancer2016 13,8,pp.243-252,and Nat.Rev.Drug Discov.2011,10(8),pp.601-20に開示されている。
【0104】
TRPV1の阻害は、疼痛の軽減及び炎症の低減にも関連してきた。例えばJ.Pain2006,7(10),pp.735-46において、強力なTRPV1非競合的アンタゴニストが、急性及び慢性疼痛の前臨床モデルにおける抗炎症及び鎮痛活性を示すことが開示されている。本発明の文脈において、疼痛は、帯状疱疹後神経痛、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、糖尿病性神経障害、乳房切除後疼痛症候群、口腔神経因性疼痛、三叉神経痛、顎関節障害、群発性頭痛、変形性関節症、関節炎痛、鼻症、口腔粘膜炎、皮膚アレルギー、不安定膀胱、腰痛/血尿症候群、頸部痛、背痛、切断端痛、反射性交感神経性ジストロフィー及び皮膚腫瘍による疼痛に関連付けることができる。
【0105】
TRPV1の阻害は、ある皮膚疾患、例えば敏感肌、かゆみ(掻痒)、酒さ、尋常性ざ瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬及び乾癬性関節炎の治療標的にもなり得る。
【0106】
敏感肌とは、化粧品や洗面用品を使用する際に、主観的感覚として経験されるかゆみや刺激を皮膚が受けやすい、肌の状態である。Exp.Dermatol.2010,19(11),pp.980-6では、敏感肌の処置のための、TRPV1アンタゴニストによるTRPV1の阻害が開示されている。
【0107】
かゆみ(掻痒)は、掻きたいという切迫した欲求に関連する不快な皮膚感覚として定義することができる。Journal of Dermatological Science 2012,65,pp.81-85では、老化した皮膚の神経線維におけるTRPV1発現の増加の発見は、掻痒などの加齢に関連する皮膚症状の病態生理学におけるTRPV1の重要な役割を示唆していることが開示されている。
【0108】
酒さは、顔面の発赤、顔面皮膚の細く表面的な拡張血管、丘疹、膿疱及び腫脹を特徴とする、長期の皮膚状態である。多様な種類の酒さの患者の罹患皮膚において、TRPV1の発現パターンの変化が確認されたことが開示されている。これは、酒さの病因にTRPV1が関与している可能性を示唆している(Br.J.Pharmacol.2014,171(10),pp.2568-2581)。
【0109】
乾癬は、通常は赤く、かゆみがあり、うろこ状の異常な皮膚の斑点を特徴とする、長期持続性の自己免疫疾患である。尋常性ざ瘡は、毛包が死んだ皮膚細胞及び皮脂で詰まると発生する長期の皮膚疾患であり、黒色面皰又は白色面皰、にきび、脂性肌及び瘢痕の可能性を特徴とする。アトピー性皮膚炎は、皮膚の炎症(皮膚炎)の一種である。アトピー性皮膚炎により、皮膚のかゆみ、赤み、腫れ、ひび割れが生じる。乾癬性関節炎は、自己免疫疾患の乾癬に罹患した人々に発生する長期の炎症性関節炎である。乾癬性関節炎の古典的な特徴は、指全体及びつま先全体の腫れである。
【0110】
上記の疾患及び/又は状態におけるTRPV1の役割は、例えばArthritis Res Ther2014,16(5),470;J Invest Dermatol.2009,129(2),pp.329-39;及びJ Invest Dermatol.2011,131(7),pp.1576-9に記載されている。
【0111】
このため、上記又は下記の各種の実施形態の1つ以上の特徴と任意に組合わせた、本発明の別の実施形態において、TRPV1の阻害によって媒介される状態又は疾患は、敏感肌、かゆみ(掻痒)、酒さ、尋常性ざ瘡、アトピー性皮膚炎、乾癬及び乾癬性関節炎から選択される。
【0112】
明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」という用語及びその用語の変形は、他の技術的特徴、添加物、成分又はステップを除外することを意図していない。さらに、「含む(comprise)」という用語は、「からなる(consisting of)」の場合を含む。本発明の追加の目的、利点及び特徴は、明細書を検討することにより当業者に明らかになるか、又は本発明の実施により習得され得る。以下の実施例及び図面は例示のために提供されるものであり、本発明を限定することを意図するものではない。図面に関連し、特許請求の範囲の括弧内に配置された参照符号は、特許請求の範囲の理解しやすさを向上させるようとしているに過ぎず、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の特定の好ましい実施形態のすべての考えられる組合わせを網羅している。
【実施例
【0113】
実施例では、以下の略語を使用する。
TBDMSCl:tert-ブチルジメチルシリルクロリド
TEA:トリエチルアミン
【0114】
実施例1:N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)ホルムアミド(中間体1)の合成
(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メタンアミニウムクロリド(2.30g、15mmol)を飽和NaCO水溶液に溶解させ、THFで(3回)抽出する。収集した有機層を蒸発させる。次いで、4-(アミノメチル)-2-メトキシフェノールをTHF(70mL)に溶解させ、メチルホルメート(1.12mL、18mmol)を添加する。反応物を室温にて一晩撹拌する。次いで、メチルホルメート1.8当量(1.68mL、27mmol)を添加して、反応物をさらに6時間撹拌する。揮発物を真空下で除去すると、中間体1が褐色油として得られた(2.61g、14.4mmol、96%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ8.87(s,1H),8.38(br s,1H),8.08(s,1H),6.82(s,1H),6.72-6.64(m,2H),4.17(d,J5.8Hz,2H),3.73(s,3H).MS:M+1 182
【0115】
実施例2:N-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-メトキシベンジル)ホルムアミド(中間体2)の合成
N-(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)ホルムアミド(3.29g、18.17mmol)の無水DMF(35mL)溶液に、TBDMSCl(3.29g、21.80mmol)、N,N-ジメチル-アミノピリジン(44mg、0.36mmol)及びイミダゾール(1.36g、19.99mmol)を順に窒素下で添加する。反応物を室温で2時間撹拌し、次に水で(1回)洗浄し、ジエチルエーテルで(1回)抽出する。有機層をナトリウムサルフェートで脱水し、揮発物を真空下で除去する。粗物質によって、溶離液として石油エーテル/エチルアセテート6:4、次いで石油エーテル/エチルアセテート4:6を使用したカラムクロマトグラフィーによる精製後、中間体2(2.90 g、9.83mmol、54%)を暗黄色油として得た。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ8.04(s,1H),6.92(br s,1H),6.68(d,J8.0Hz,1H),6.65(d,J1.9Hz,1H),6.60(dd,J8.0,1.9Hz,1H),4.22(d,J6.1Hz,2H),3.66(s,3H),0.91(s,9H),0.06(s,6H).MS:M+1 296
【0116】
実施例3:tert-ブチル(4-(イソシアノメチル)-2-メトキシフェノキシ)ジメチルシラン(中間体3)の合成
N-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-メトキシベンジル)ホルムアミド(200mg、0.68mmol)を0℃にて無水CHCl(2mL)に溶解させ、TEA(343mg、3.39mmol)を窒素下で添加する。POCl(93μL、1mmol)の無水CHCl(2mL)溶液を滴加し、反応物を1時間撹拌する。次いで、飽和NaHCO水溶液を添加して、混合物を10分間撹拌する。次いで、反応物をCHClで抽出し、ナトリウムサルフェート上で脱水し、蒸発させる。粗物質を、溶離液として石油エーテル/エチルアセテート4:6を使用するカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体3(164mg、0.59mmol、87%)を暗黄色油として得る。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ6.83-6.73(m,3H),4.52(s,2H),3.78(s,3H),0.97(s,9H),0.13(s,6H).MS:M+1 279
【0117】
実施例4:N-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヨード-5-メトキシベンジル)-ホルムアミド(中間体4)の合成
N-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-3-メトキシベンジル)ホルムアミド(1.65g、5.59mmol)のCHCl(17mL)溶液に、銀トリフルオロアセテート(1.23g、5.59mmol)及びヨウ素(1.42g、5.59mmol)のCHCl(14mL)溶液を添加する。反応物を1時間撹拌し、真空下にてセライトのパッドで濾過する。濾液をCHClで希釈し、NaHCOの飽和水溶液(1回)及び飽和NaS2O水溶液(1回)で洗浄する。有機層をナトリウムサルフェートで脱水し、蒸発させて、黄色固体(1.98g、4.70mmol、84%)を得る。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ8.12(s,1H),7.16(s,1H),6.78(s,1H),6.74(br t,1H),4.31(d,J6.0Hz,2H),0.91(s,9H),0.07(s,6H).MS:M+1422
【0118】
実施例5:tert-ブチル(5-ヨード-4-(イソシアノメチル)-2-メトキシフェノキシ)-ジメチルシラン(中間体5)の合成
この中間体は、実施例3に記載の方法によって調製したが、出発材料としてN-(4-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヨード-5-メトキシベンジル)ホルムアミドを使用した。黄色固体を得た(84%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ7.25(s,1H),6.96(s,1H),4.52(s,2H),3.79(s,3H),0.96(s,9H),0.14(s, 6H).MS:M+1 404
【0119】
実施例6:(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタンアミン(中間体6)の合成
(3,4-ジヒドロキシフェニル)メタナミニウムブロミド(4.50g、20.44mmol)及びイミダゾール(4.18g、61.33mmol)の無水CHCl(50mL)溶液に、TBDMSCl(6.16g、40.89mmol)の無水CHCl溶液(25 mL)を窒素下で滴加する。反応物を室温にて一晩撹拌する。揮発物を減圧下で蒸発させる。エチルアセテートを添加し、有機相を水で(4回)洗浄し、ナトリウムサルフェートで脱水し、蒸発させる。粗物質を、溶離液として石油エーテル/エチルアセテート2:8、次いでエチルアセテート/メタノール8:2を使用するカラムクロマトグラフィーにより精製し、中間体6(5.69g、14.37mmol、76%)を暗黄色油として得る。分析データ: H-NMR(300MHz;CDCl):δ6.79-6.76(m,3H),3.78(s,2H),1.01-0.93(m,18H),0.19-0.15(m,12H).MS:M+1 369
【0120】
実施例7:N-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)ホルムアミド(中間体7)の合成
(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)メタンアミン(4.95g、13.47mmol)のエチルホルメート(50mL)溶液を還流下で28時間加熱する。揮発物を真空下で除去して、中間体7(5.17g、13.06mmol、97%)を深黄色油として得る。分析データH-NMR(300MHz;CDCl):主回転異性体を参照;δ8.22(s,1H),6.78-6.72(m,3H),4.34(d,J3.2Hz,2H),0.97-0.87(m,18H),0.21-0.18(m,12H).MS:M+1 397
【0121】
実施例8:((4-(イソシアノメチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体8)の合成
この中間体は、実施例3に記載の方法によって調製したが、出発材料としてN-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)ホルムアミドを使用した。黄色固体を得た(61%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ6.83-6.81(m,2H),6.76(d,J8.2Hz,1H),4.50(s,2H),1.04-0.92(m,18H),0.26-0.19(m,12H).
【0122】
実施例9:N-(4,5-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヨードベンジル)ホルムアミド(中間体9)の合成
この中間体は、実施例4に記載の方法によって調製しが、出発材料としてN-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)ベンジル)ホルムアミドを使用した。非晶質オレンジ色固体を得た(66%)。分析データH-NMR(300MHz,CDCl):主回転異性体を参照;δ8.22(s,1H),7.23(s,1H),6.89(s,1H),5.90(br s,1H),4.39(d,J6.1Hz,2H),1.04-0.90(m,18H),0.24-0.18(m,12H).MS:M+1 523
【0123】
実施例10:((4-ヨード-5-(イソシアノメチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体10)の合成
この中間体は、実施例3に記載の方法によって調製したが、出発材料としてN-(4,5-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヨードベンジル)ホルムアミドを使用した。深黄色固体を得た(87%)。分析データ: H-NMR(300MHz;CDCl):δ7.28(s,1H),7.03(s,1H),4.54(s,2H),1.08-0.98(m,18H),0.22-0.19(m,12H).
【0124】
実施例11:2-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)エタンアミン(中間体11)の合成
この中間体は、実施例6に記載の方法によって調製したが、出発材料として2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エタンアミニウムクロリドを使用した。白色固体を得た(59%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ8.34(brs,2H),6.74-6.67(m,3H),3.19(t,J6.8Hz,2H),2.99(t,J6.8Hz,2H),1.04-0.76(m,18H),0.25-0.17(m,12H).MS:M+1 383
【0125】
実施例12:N-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェネチル)ホルムアミド(中間体12)の合成
2-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェニル)エタンアミン(2.72g、7.14mmol)を、窒素下で1:1メチルホルメート及びメタノール(115mL)の溶液に溶解させた。KCO(9.87g、71.39mmol)を上記混合物に添加し、反応物を還流下で2時間撹拌する。次いで、反応物を濾過し、揮発物を蒸発させた後、水を添加する。水層をCHClで(2回)抽出し、有機相をナトリウムサルフェートで脱水し、真空下で蒸発させて、淡黄色油(2.55g、6.22mmol、87%)を得る。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):主回転異性体を参照;δ8.12(s,1H),6.76(d,J3.1Hz,1H),6.64-6.61(m,2H),5.48(br s,1H),3.51(q,J6.3Hz,2H),2.70(t,J6.3Hz,2H),1.02-0.98(m,18H),0.26-0.14(m,12H).MS:M+1 411
【0126】
実施例13:((4-(2-イソシアノエチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体13)の合成
この中間体は、実施例3に記載の方法によって調製したが、出発材料としてN-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェネチル)ホルムアミドを使用した。淡黄色油を得た(77%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ6.78(d,J3.1Hz,1H),6.69-6.67(m,2H),3.54(t,J6.2Hz,2H),2.86(t,J6.2Hz,2H),1.00-0.99(m,18H),0.24-0.20(m,12H).
【0127】
実施例14:N-(4,5-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヨードフェネチル)-ホルムアミド(中間体14)の合成
この中間体は、実施例4に記載の方法によって調製したが、出発材料としてN-(3,4-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)フェネチル)ホルムアミドを使用した。。深黄色油を得た(86%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):主回転異性体を参照;δ8.15(s,1H),7.25(s,1H),6.67(s,1H),5.58(br s,1H),3.50(q,J6.2Hz,2H),2.82(t,J6.2Hz,2H),1.07-0.90(m,18H),1.18-0.08(m,12H).MS:M+1 537
【0128】
実施例15:((4-ヨード-5-(2-イソシアノエチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体15)の合成
この中間体は、実施例3に記載の方法によって調製したが、出発材料としてN-(4,5-ビス((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)-2-ヨードフェネチル)ホルムアミドを使用した。白色固体を得た(82%)。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ7.25(s,1H),6.77(s,1H),3.57(t,J6.1Hz,2H),2.96(t,J6.1Hz,2H),1.03-0.93(m,18H),0.21-0.19(m,12H).
【0129】
実施例16:2-((4-ヒドロキシ-3-メトキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチルブチレートの合成
tert-ブチル(4-(イソシアノメチル)-2-メトキシフェノキシ)ジメチルシラン(中間体3)(200mg、0.72mmol)のCHCl(6.2mL)溶液に、37%ホルムアルデヒド水溶液(215μL、2.88mmol)及び酪酸(スキーム1の化合物R-COOH)(63mg、0.72mmol)を添加し、得られた混合物を還流下で3時間撹拌し、次いで室温に達するまで放置し、一晩撹拌する。次いで、揮発物を真空下で除去し、生成物をTHF(2mL)に溶解させ、0℃まで冷却する。この温度にて、酢酸(49μL、0.86mmol)及びTBAF(0.86mL、0.86mmol)を添加する。反応物を30分間撹拌する。揮発物を蒸発させ、エチルアセテートを添加し、水(1回)及び飽和NaHCO水溶液(1回)で洗浄する。収集した有機層をナトリウムサルフェートで脱水し、蒸発させた。溶離液として石油エーテル/エチルアセテート9:1、次いで石油エーテル/エチルアセテート6:4を使用したカラムクロマトグラフィーによる精製により、化合物16を黄色がかった固体として得た。(120mg、0.43mmol、59%)分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ6.85-6.65(m,3H),6.59(br t,1H),6.14(br s,1H),4.54(s,2H),4.33(d,J5.8Hz,2H),3.80(s,3H),2.31(t,J7.4Hz,2H),1.60(m,J7.4Hz,2H),0.89(t,J7.4Hz,3H).MS:M+1 280.
【0130】
実施例16と同じ合成経路に従い、以下の表に別途記載しない限り、同じ試薬及び中間体を使用して、以下の化合物を得た:
【数2】
【0131】
実施例54:(E)-2-((3,4-ジヒドロキシベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエートの合成
((4-(イソシアノメチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体8)(272mg、0.72mmol)のCHCl(6.2mL)溶液に、37%ホルムアルデヒド水溶液(215μL、2.88mmol)及び(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン酸(スキーム1の化合物R-COOH)(121mg、0.72mmol)を添加し、得られた混合物を還流下で3時間撹拌する。次いで、揮発物を真空下で除去し、生成物をTHF(6.5mL)に溶解させ、0℃まで冷却する。この温度にて、酢酸(140μL、2.45mmol)及びTBAF(2.45mL、2.45mmol)を添加する。反応物を3時間撹拌する。揮発物を蒸発させ、エチルアセテートを添加し、水で(2回)洗浄し、ナトリウムサルフェートで脱水し、蒸発させてオレンジ色固体を得る。粗物質を、石油エーテル/エチルアセテート9:1、次いで石油エーテル/エチルアセテート7:3を溶離液としてクロマトグラフィーカラムに加え、化合物54を白色固体(47%)として得る。分析データ: H-NMR(300MHz,CDCl):δ6.86-6.78(m,2H),6.66(br s,1H),6.63(d,J7.7Hz,1H),5.70(s,1H),5.04(t,J6.2Hz,1H),4.63(s,2H),4.36(d,J 5.8Hz,2H),2.20-2.15(m,7H),1.67(s,3H),1.59(s,3H).MS:M-1 346.
【0132】
実施例55:(E)-2-((4,5-ジヒドロキシ-2-ヨードベンジル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエートの合成
((4-ヨード-5-(イソシアノメチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体9)(252mg、0.50mmol)のCHCl(4.5mL)溶液に、37%ホルムアルデヒド水溶液(150μL、2mmol)及び(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン酸(スキーム1の化合物R-COOH)(84mg、0.50mmol)を添加し、得られた混合物を還流下で3.30時間撹拌した。次に、揮発物を減圧下で除去し、生成物をTHF(4.5mL)に溶解させ、0℃まで冷却する。この温度にて、酢酸(97μL、1.70 mmol)及びTBAF(1.70mL、1.70mmol)を添加する。反応物を2時間撹拌する。揮発物を蒸発させ、エチルアセテートを添加し、水で(2回)洗浄し、ナトリウムサルフェートで脱水し、蒸発させてオレンジ色固体を得る。粗物質を、石油エーテル/エチルアセテート8:2、次いで石油エーテル/エチルアセテート7:3を溶離液としてクロマトグラフィーカラムに加え、化合物55を粘着性オレンジ色固体(91mg、192mmol、39%)として得る。分析データ: H-NMR(300MHz;CDCl):δ7.26(s,1H),7.08(br t,J6.0Hz,1H),6.98(s,1H),5.73(s,1H),5.05(t,J5.4Hz,1H),4.62(s,2H),4.40(d,J6.0Hz,2H),2.17-2.15(m,7H),1.70(s,3H),1.60(s,3H).MS:M-1 472
【0133】
実施例54と同じ合成経路に従い、以下の表に別途記載しない限り、同じ試薬及び中間体を使用して、以下の化合物を得た:
【数3】
【0134】
実施例58:(E)-2-((3,4-ジヒドロキシフェネチル)アミノ)-2-オキソエチル3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエノエートの合成
((4-(2-イソシアノエチル)-1,2-フェニレン)ビス(オキシ))ビス(tert-ブチルジメチルシラン)(中間体13)(283mg、0.72mmol)のCHCl(6.2mL)溶液に、37%ホルムアルデヒド水溶液(215μL、2.88mmol)及び(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン酸(スキーム1の化合物R-COOH)(121mg、0.72mmol)を添加し、得られた混合物を還流下で3時間撹拌する。次に、揮発物を減圧下で除去し、生成物をTHF(6.5mL)に溶解させ、0℃まで冷却する。この温度にて、酢酸(140μL、2.45mmol)及びTBAF(2.45mL、2.45mmol)を添加する。反応物を2時間撹拌する。揮発物を蒸発させ、エチルアセテートを添加し、水で(2回)洗浄し、ナトリウムサルフェートで脱水し、蒸発させてオレンジ色固体を得る。粗生成物を、溶離液として石油エーテル/エチルアセテート7:3、次いで石油エーテル/エチルアセテート5:5を用いたクロマトグラフィーカラムに加え、化合物58を無色油(138mg、0.38mmol、53%)として得る。分析データ:1H-NMR(300MHz;CDCl3):δ6.75(d,J7.6Hz,1H),6.69(s,1H),6.56(br s,1H),6.49(d,J7.6Hz,1H),5.66(s,1H),5.04(t,J6.2Hz,1H),4.54(s,2H),3.44(t,J6.5Hz,2H),2.63(t,J6.5Hz,2H),2.15-2.03(m,7H),1.66(s,3H),1.58(s,3H).MS:M-1 360.
【0135】
実施例58と同じ合成経路に従い、以下の表に別途記載しない限り、同じ試薬及び中間体を使用して、以下の化合物を得た:
【数4】
【0136】
TRPV1に対する化合物活性の測定
化合物の活性は、カルシウム・マイクロフルオロメトリー・アッセイにより、TRPV1発現細胞(TRPV1-SH-SY5Y)で測定した。より強力な化合物の効力も求めた。
【0137】
(A)インビトロ活性アッセイ
5%CO及び37°Cの湿度制御インキュベータ内において、ラットTRPV1チャネル(SH-SY5Y-TRPV1)を安定発現するSH-SY5Y細胞を、10%(v/v)FCS、1%非必須アミノ酸、2mM L-グルタミン、100μg/mlストレプトマイシン、100U/mlペニシリン及び0.4μg/mlピューロマイシンを含有する、Earleの最小必須培地(Earle´s minimum essential medium(MEM))中で培養した。蛍光アッセイの場合、TRPV1チャネルを発現する細胞(TRPV1-SH-SY5Y)を96ウェルプレート(コーニング社(Corning Incorporated)、コーニング、ニューヨーク)に、処置2日前に細胞密度40,000個で播種した。処置日に、培地をプロベネシド2.5mMを添加した色素添加溶液Fluo-4NW100μLで置き換えた。5%COの加湿雰囲気中で37℃にて60分間インキュベートした後、プレートを蛍光プレートリーダ(Polastar Omega BMG Labtech)に移した。Fluo-4色素のベースライン蛍光(発光485nm/励起520nm)を4サイクル記録した。次に、媒体(DMSO)1μL又は最終濃度10μMの化合物をウェルに添加し、アゴニスト(TRPV1では10μMカプサイシン)による刺激する前の10サイクルの間に蛍光強度を記録した。アンタゴニスト(TRPV1では10μMルテニウムレッド)を遮断のために添加した。蛍光強度の変化を更に10サイクルの間に記録した。結果を以下の表2に示す。
【0138】
【表2】
【0139】
(B)用量反応測定
最も強力な化合物を選択して、EC50及びIC50を計算した。正規化反応(%)対log[μM]を、可変勾配を用いる非線形適合である、4パラメータ用量応答曲線Y=100/(1+10^((LogEC50-X)*HillSlope))(式中、X=%正規化反応、Y=log [μM])、又は単なる用量応答曲線Y=100/(1+10^((LogEC50-X)))に調整した。EC50は、95%の信頼区間と、後続の回帰調整のためのrで表される。データはすべて、平均±平均の標準誤差(SD)として表す。各条件は、3種類の独立した実験(N=3)にて3通り(n=3)評価した。表3に結果を示す。
【0140】
【表3】
【0141】
(A)インビボ活性アッセイ
炎症性疼痛のモデル
炎症性疼痛のモデルで試験を行うために、より高い効力を有する化合物の1つ(実施例37)を選択した。C57マウス(約30g)を研究に使用した。C57BL/6は、フランスのJanvierから入手した。完全フロイントアジュバント(CFA)エマルジョン(1:1油/生理食塩水、0.5mg/ml)(10μl)を右後足の足底表面に注射した(Garcia-Martinez et al.,2006)。CFA注射の24時間後、化合物実施例37を右後足に、静脈内(1mg/kg、3mg/kg又は10 mg/kg)又は足底内(10mg/kg、30mg/kg又は100mg/kg)投与した。熱痛覚過敏を、CFA注射後の24時間及び化合物投与の2時間後まで、左記に報告したようなウゴ・バジレ・ダイナミック・プランター・エステシオメータ(Ugo Basile Dynamic Plantar Aesthesiometer)(Garcia-Martinez et al.,2006)によって監視した。簡潔には、マウスは、高架ガラステーブル上の個々のパースペックス(Perspex)ボックスからなる装置に馴化させた。可動式放射熱源がテーブルの下に位置し、後足に焦点を合わせた。足引っ込め潜時は、マウスが後足を熱源から除去するのにかかる時間として定義した。組織の損傷を防止するために、25秒の遮断ポイントを設定した。化合物実施例37は、静脈内投与時(図1)及び足底内投与時(図2)の両方で、熱痛覚過敏試験における抗侵害受容効果を示した。
【0142】
図1(B)及び図2(B)の両方で見られるように、本発明の化合物の効果は、化合物が投与された右後足で有意であった。抗侵害受容効果は、60分で最高レベルに達するまで時間と共に上昇した。重要なのは、この時点の後に、効果が減少したことである。一方、化合物を投与しなかった(対照)、左後足の図1(A)及び図2(A)では、有意な効果は認められなかった。その上、化合物を10mg/kgなどの高用量で静脈内注入した場合、化合物の毒性がないことが証明された。
【0143】
ヒスタミン誘発性リッキング行動
実施例37をかゆみのモデルで試験した(図3)。C57マウス(約30g)を透明プラスチックケージに入れ、10分間の馴化期間の後、生理食塩水25μL中のヒスタミン125μgを足底内注射した。ヒスタミンの注射直後に、動物を観察ケージに戻し、30分間に注射した足のリッキングに費やした時間を記録し、クロノメーターを用いて手動で測定した(図3、白棒)。実施例37(100μg)を投与する動物には、ヒスタミン注射の30分前に化合物を注射した(図3、黒棒、****p<0.001)。
【0144】
本発明の化合物の抗掻痒発生効果は、測定した全時間中に明らかであり、ヒスタミン注射後10~20分で最高かつ有意な効果に達した。
【0145】
クロロキン誘発性掻痒
実施例37を非ヒスタミン作動性掻痒症のモデルで評価した(図4)。C57マウス(約30g)を透明なプラスチックケージに入れ、10分間馴化させた後、生理食塩水25μL中クロロキン200μgを足底内注射した。クロロキン注射の直後に、動物を観察ケージに戻した。30分間の期間、注射した足のリッキングに費した時間を記録し、クロノメーターを用いて測定した(図4、白棒)。実施例37を、クロロキン注射の30分前に100μg/足にて足底内投与した(図4、黒棒、*p<0.05、***p<0.001)。
【0146】
本発明の化合物の抗掻痒発生効果は、測定された全時間中に明らかであった。最も高い有意なかゆみ止め効果は、クロロキン注射後5~15分で認められ、最大のクロロキン誘発性リッキング行動に一致していた。
【0147】
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図1
図2
図3
図4