(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】霧噴射装置
(51)【国際特許分類】
G08B 15/02 20060101AFI20230316BHJP
B05B 1/24 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G08B15/02
B05B1/24
(21)【出願番号】P 2019100761
(22)【出願日】2019-05-29
【審査請求日】2021-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210403
【氏名又は名称】竹中エンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森川 嘉文
(72)【発明者】
【氏名】畑 寿光
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-321999(JP,A)
【文献】特開2003-080178(JP,A)
【文献】特開2008-272730(JP,A)
【文献】特開2004-313933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00-3/18
7/00-9/08
B08B3/00-3/14
G08B13/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射液をたくわえる噴射液容器と、起動信号を受け付けた後に、予め定めた第1の設定時間、前記噴射液を吸いだし、加熱器に送り込むポンプと、前記噴射液を加熱し霧状にしてノズルから噴射させる加熱器とを備えた霧噴射装置において、
前記噴射液容器と前記ポンプ間に気体取込部を設け、
第1の設定時間終了後に予め定めた第2の設定時間、前記気体取込部から気体を前記ポンプにより前記加熱器に送り込むことを特徴とする霧噴射装置。
【請求項2】
前記気体取込部に2方弁を備えた請求項1に記載の霧噴射装置。
【請求項3】
前記気体取込部に3方弁を備えた請求項1に記載の霧噴射装置。
【請求項4】
噴射液をたくわえる噴射液容器と、起動信号を受け付けた後に、予め定めた第1の設定時間、前記噴射液を吸いだし、加熱器に送り込むポンプと、前記噴射液を加熱し霧状にしてノズルから噴射させる加熱器とを備えた霧噴射装置において、
視界を妨げるための霧噴射装置であって、
前記ポンプと前記加熱器間に、2方弁または3方弁と圧縮ボンベとを備えた気体取込部を設け、
第1の設定時間終了後に予め定めた第3の設定時間、前記気体取込部から前記圧縮ボンベ内の気体を前記圧縮ボンベの圧力により前記加熱器に送り込むことを特徴とする霧噴射装置。
【請求項5】
前記加熱器は、上下方向に伸びる螺旋状のパイプを備え、
噴射液が、前記螺旋状のパイプの下部に送られ、前記螺旋状パイプの上部から前記ノズルに送られる請求項1~4のいずれか1項に記載の霧噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥棒が侵入した際の侵入警報信号等によって起動される装置であり、室内や店舗内に霧を充満させて視界を妨げ、泥棒の窃盗行為そのものを不可能にさせる霧噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
霧噴射装置は、金庫を置いた室内や、宝石や高級腕時計などの貴金属を陳列したショーケースがたくさん並んだ貴金属店の店舗内等に設置して用いるものであり、セキュリティシステムが泥棒を検出したときに、一定時間霧を噴射し、室内を視界不良状態にし、泥棒の行動を阻止するものである。霧を発生させる基本原理は周知であり、実用化されている。
【0003】
霧噴射装置の基本構成は、噴射液をたくわえる容器、容器内の噴射液を吸い出し加熱器に送り込むポンプ、噴射液を高温に加熱し霧状にしてノズルから噴射させる加熱器からなるものであり、そのほか、ポンプの作動と停止、加熱器の温度をコントロールする制御部を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
噴射液としては、ジプロピレングリコールやトリエチレングリコール等のグリコール類と水やアルコールとの混合液を使用するのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の霧噴射装置においては、ポンプが動き続けることで、噴射液が常に加熱器内に流れ、次々に液が気化することで噴射口から霧が勢いよく押し出され続けて噴出するが、ポンプが止まると噴射液の流れが止まり、加熱器内の液は熱で気化された状態が保持され、加熱器以外では、噴射液が液体として充満された状態でとどまることになる。
【0007】
加熱器は霧を噴射していないときも予熱しており、ノズルや加熱器とポンプ間のパイプにとどまっている噴射液に加熱器の熱が継続して加わるが、加熱器から離れた位置にある噴射液は気化する温度にならずに、液体のまま酸化反応(液の劣化)が促進され噴射液が茶褐色などに変色したり、粘性が高くなったりする。その液が、ノズルやパイプなどに残留する恐れや、霧を噴射する際にノズルから出て周囲を汚す恐れがあった。
【0008】
このため、定期的に噴射のテスト動作をさせ劣化した噴射液を綺麗な噴射液で送り出す必要があったが、テスト動作は手動で行っており、定期的にテスト動作をさせるために機器設置場所まで行くか、遠隔で動作入力を与える必要があり、手間がかかっていた。
【0009】
また、噴射後にパイプにたまった液を機器内部で一旦受け皿にためる構造の機器も存在するが、定期的にその受け皿の廃液を捨てる作業が必要になり、手間がかかっていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の霧噴射装置は、噴射液をたくわえる噴射液容器と、起動信号を受け付けた後に、予め定めた第1の設定時間、前記噴射液を吸いだし、加熱器に送り込むポンプと、前記噴射液を加熱し霧状にしてノズルから噴射させる加熱器とを備え、前記噴射液容器と前記ポンプ間に気体取込部を設け、第1の設定時間終了後に予め定めた第2の設定時間、前記気体取込部から気体を前記ポンプにより前記加熱器に送り込む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ノズルやパイプにとどまる噴射液を気体取込部から取り込んだ気体で送り出すことにより排出し、加熱器の熱影響を受ける範囲に噴射液がとどまることがなくなり、噴射液の酸化反応(劣化)が起こらなくなる。よって、粘性の高い変色した液などが、霧を噴射する際にノズルから出て周囲を汚すことや、ノズルやパイプなどに残留することがなくなる。これに伴い、定期的な噴射のテスト動作や廃液を捨てる作業をする必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の霧噴射装置の第1の実施形態の概略を示したブロック図である。
【
図3】本発明の霧噴射装置の第2の実施形態の概略を示したブロック図である。
【
図5】本発明の霧噴射装置の第3の実施形態の概略を示したブロック図である。
【
図7】本発明の霧噴射装置の第4の実施形態の概略を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の霧噴射装置の第1の実施形態の概略を示したブロック図である。1は噴射液をたくわえておく噴射液容器、2はポンプ、3は噴射液を急激に加熱して霧を作り出す加熱器、4は霧を噴射するノズル、5、6、7は金属製のパイプ、11は空気を取り込むための気体取込部である。気体取込部11は2方弁αを備え、2方弁αは噴射液容器内の噴射液より高い位置になるようにしている。加熱器3は、予め高温状態に保たれた加熱装置を内蔵しており、ポンプ2の働きにより勢いよく流入する噴射液は、ここで急激に加熱され気化し、霧となって、ノズル4から噴出する。噴射液としては、ジプロピレングリコールやトリエチレングリコール等のグリコール類と水やアルコールとの混合液が一般的である。
【0014】
図9は、加熱器3の構造を示した図である。加熱器3は、円筒形のヒーター32を備え、ヒーター32の外周を上下方向に伸びる螺旋状のパイプ31が巻かれている。噴射液は、パイプ7を介しパイプ31の下部に送られ、ヒーター32で急激に加熱され気化し、パイプ31の上部からノズル4へ送られ霧となって噴出される。
【0015】
図示は省略するが、霧噴射装置は、霧噴射用の起動信号を受け付け、ポンプ2を所定の時間だけ駆動したり、加熱器3の温度や気体取込部11(2方弁α)の動作を制御したりする働きを担う制御部を備えている。さらに、噴射液容器1の外周には、ヒーターを巻きつけた放熱板を設け、パイプ5の先端(噴射液吸入部)に熱電対などの温度測定器が取り付けられており、ヒーターの温度制御を行っている。噴射液容器1を接続するナットなどの固定部を介して、パイプ5が噴射液容器1に接続されている。噴射液容器1は、ヒーターの上から保温材によって覆われている。
【0016】
所定の温度以下になったことを熱電対で検知し、ヒーターをオンにし、放熱板を加熱することで放熱板から発せられる熱により、噴射液が温められると、その温度が、熱電対に伝わり、所定の温度以上になったことを熱電対で検知して、ヒーターをオフにする。この一連の動作により、噴射液容器1内の噴射液は、低温となって粘度が高くなる前に加熱され、粘度の低い状態が維持される。
【0017】
図1と
図2を用いて霧噴射時の動作を説明する。
図2は、2方弁αの状態を示した図であり、
図2(a)が待機時の状態、
図2(b)が第1の設定時間の状態、
図2(c)は第2の設定時間の状態である。
【0018】
霧噴射装置は、金庫などが置かれた重点警戒エリア内に設置され、泥棒が侵入した際に作動するセキュリティシステムからの起動信号を受けて霧を噴射する。起動信号を受けて即座に霧を噴射する必要があるため、待機時においても電源が供給され、加熱器3が予熱されるようになっている。待機時では2方弁αは「閉」状態となっている。
【0019】
起動信号を受け付けると、第1の設定時間から第2の設定時間にかけてポンプ2を駆動する。第1の設定時間においては、2方弁αは「閉」状態であり、噴射液容器内の噴射液がパイプ5、気体取込部11、パイプ6、ポンプ2、パイプ7を介して、加熱器3へ送りこまれ、加熱器3にて高温に加熱され霧状になって、ノズル4から噴射される。
【0020】
第1の設定時間終了後、第2の設定時間だけ、2方弁αは「開」状態となり、α2からα1の方向に周囲の空気が流れ込み、パイプ5内の噴射液は噴射液容器1に戻り、パイプ6、ポンプ2、パイプ7、加熱器3、ノズル4に残った噴射液はノズル4から噴射され、とどまらないようになる。また、2方弁αは噴射液容器内の噴射液より高い位置のため、α2側へ噴射液が漏れることはない。
第2の設定時間終了後は、待機時に戻り、ポンプ2は停止し、2方弁αは「閉」状態となる。
【0021】
第1の設定時間は霧噴射装置が設置される部屋の大きさとポンプ2の排出量を考慮して決定し、第2の設定時間は気体取込部11から加熱器3までの間の液量とポンプ2の排出量を考慮し決定する。
【0022】
図10のようなヒーター102の外周を左右方向に伸びる螺旋状のパイプ101が巻かれている加熱器100を用いた場合、空気をパイプ101内に送り込んだとしても内部にたまっている飽和蒸気は送り込んだ空気とともに送り出されるが、パイプ101内に噴射液が残留する場合がある。そして空気の送り込みが止まると残った噴射液が再度蒸発し、飽和蒸気104となりパイプ101の螺旋上部にたまる。パイプ101内部の蒸気が飽和状態となり気化しきれない噴射液103は、パイプ101の螺旋下部にとどまり、加熱され続け、酸化反応(液の劣化)が促進される。
【0023】
しかし、
図9のようなヒーター32の外周を上下方向に伸びる螺旋状のパイプ31が巻かれ、パイプ31の上部からノズル4へ霧を送る加熱器3を用いることで、噴射液は気化した蒸気が上昇する性質により上部にあるノズル4へ向かうと共に、パイプ7から加熱器3へ空気を送り込むと、パイプ31内は飽和蒸気量が低下し乾燥した状態となることで、パイプ31内の液体は空気中に取り込まれやすくなり、パイプ31内に残る噴射液をなくすことができる。
【0024】
ノズルやパイプにとどまる噴射液を気体取込部から取り込んだ空気で送り出すことにより排出し、加熱器の熱影響を受ける範囲に噴射液がとどまることがなくなる。
【0025】
図3は、本発明の霧噴射装置の第2の実施形態の概略を示したブロック図である。第1の実施形態と第2の実施形態とは気体取込部のみ異なり、他は同じ構成である。第2の実施形態では気体取込部12に3方弁βを備えており、気体取込部12(3方弁β)は、第1の実施形態の気体取込部11(2方弁α)と同様に制御部(図示省略)により動作が制御される。
【0026】
図3と
図4を用いて霧噴射時の動作を説明する。
図4は、3方弁βの状態を示した図であり、
図4(a)が待機時の状態、
図4(b)が第1の設定時間の状態、
図4(c)は第2の設定時間の状態である。
【0027】
霧噴射装置は、起動信号を受けて即座に霧を噴射する必要があるため、待機時においても電源が供給され、加熱器3が予熱されるようになっている。待機時では3方弁βは、β1が「開」状態、β2が「閉」状態、β3が「開」状態となっている。
【0028】
起動信号を受け付けると、第1の設定時間から第2の設定時間にかけてポンプ2を駆動する。第1の設定時間においては、3方弁βは、β1が「開」状態、β2が「閉」状態、β3が「開」状態であり、噴射液容器内の噴射液がパイプ5、気体取込部12、パイプ6、ポンプ2、パイプ7を介して、加熱器3へ送りこまれ、加熱器3にて高温に加熱され霧状になって、ノズル4から噴射される。
【0029】
第1の設定時間終了後、第2の設定時間だけ、3方弁βは、β1が「閉」状態、β2が「開」状態、β3が「開」状態となり、β2からβ3の方向に周囲の空気が流れ込み、パイプ6、ポンプ2、パイプ7、加熱器3、ノズル4に残った噴射液はノズル4から噴射され、とどまらないようになる。
【0030】
第2の設定時間終了後は、待機時に戻り、ポンプ2は停止し、3方弁βは、β1が「開」状態、β2が「閉」状態、β3が「開」状態となる。
【0031】
第2の設定時間において、第1の実施形態では、2方弁αが噴射液容器1内の噴射液より低い位置にするとサイフォンの原理により噴射液が2方弁αのα2側へ流れ出る可能性があるため、2方弁αを噴射液容器1内の噴射液より高い位置にする必要があったが、
図4(c)の状態でβ1が「閉」状態となっているため、第1の実施形態とは異なり、3方弁βを噴射液容器1内の噴射液より低い位置にしても、3方弁βから外へ液が漏れることはなく、どの位置にでも配置が可能である。
【0032】
第1の実施形態において、待機時は
図2(a)のように2方弁αを「閉」状態としたが、「開」状態としてもよい。また、第2の実施形態において、待機時は
図4(a)のように3方弁βをβ1が「開」状態、β2が「閉」状態、β3が「開」状態としたが、β1、β2、β3は「開」状態と「閉」状態のどちらでもよい。
【0033】
第1の実施形態および第2の実施形態において、気体取込部から周囲の空気でなく、2方弁αのα2または3方弁βのβ2に圧縮ボンベなどを接続し、第2の設定時間に圧縮ボンベから不燃性ガスなどを送り込んでもよく、取り込む気体は限定しない。
【0034】
図5は、本発明の霧噴射装置の第3の実施形態の概略を示したブロック図である。1は噴射液をたくわえておく噴射液容器、2はポンプ、3は噴射液を急激に加熱して霧を作り出す加熱器、4は霧を噴射するノズル、8、9、10は金属製のパイプ、13は空気を取り込むための気体取込部である。気体取込部13は2方弁γと圧縮ボンベGを備えており、圧縮ボンベGには圧縮した不燃性ガスなどを入れておく。加熱器3は、予め高温状態に保たれた加熱装置を内蔵しており、ポンプ2の働きにより勢いよく流入する噴射液は、ここで急激に加熱され気化し、霧となって、ノズル4から噴出する。噴射液としては、ジプロピレングリコールやトリエチレングリコール等のグリコール類と水やアルコールとの混合液が一般的である。
【0035】
図9は、加熱器3の構造を示した図である。加熱器3は、円筒形のヒーター32を備え、ヒーター32の外周を上下方向に伸びる螺旋状のパイプ31が巻かれている。噴射液は、パイプ10を介しパイプ31の下部に送られ、ヒーター32で急激に加熱され気化し、パイプ31の上部からノズル4へ送られ霧となって噴出される。
【0036】
図示は省略するが、霧噴射装置は、霧噴射用の起動信号を受け付け、ポンプ2を所定の時間だけ駆動したり、加熱器3の温度や気体取込部13(2方弁γ)の動作を制御したりする働きを担う制御部を備えている。さらに、噴射液容器1の外周には、ヒーターを巻きつけた放熱板を設け、パイプ8の先端(噴射液吸入部)に熱電対などの温度測定器が取り付けられており、ヒーターの温度制御を行っている。噴射液容器1を接続するナットなどの固定部を介して、パイプ8が噴射液容器1に接続されている。噴射液容器1は、ヒーターの上から保温材によって覆われている。
【0037】
所定の温度以下になったことを熱電対で検知し、ヒーターをオンにし、放熱板を加熱することで放熱板から発せられる熱により、噴射液が温められると、その温度が、熱電対に伝わり、所定の温度以上に温まったことを検知して、ヒーターをオフにすることで、噴射液容器1内の噴射液は、低温となって粘度が高くなる前に加熱され、粘度の低い状態が維持される。
【0038】
図5と
図6を用いて霧噴射時の動作を説明する。
図6は、2方弁γの状態を示した図であり、
図6(a)が待機時の状態、
図6(b)が第1の設定時間の状態、
図6(c)は第3の設定時間の状態である。
【0039】
霧噴射装置は、起動信号を受けて即座に霧を噴射する必要があるため、待機時においても電源が供給され、加熱器3が予熱されるようになっている。待機時では2方弁γは「閉」状態となっている。
【0040】
起動信号を受け付けると、第1の設定時間だけポンプ2を駆動する。第1の設定時間においては、2方弁γは「閉」状態であり、噴射液容器内の噴射液がパイプ8、ポンプ2、パイプ9、気体取込部13、パイプ10を介して、加熱器3へ送りこまれ、加熱器3にて高温に加熱され霧状になって、ノズル4から噴射される。
【0041】
第1の設定時間終了後、第3の設定時間だけ、2方弁γは「開」状態となり、圧縮ボンベG内の気体が圧縮ボンベGの圧力によりγ2からγ1の方向に流れ込み、パイプ10、加熱器3、ノズル4に残った噴射液はノズル4から噴射され、とどまらないようになる。
第3の設定時間終了後は、待機時に戻り、2方弁γは「閉」状態となる。
【0042】
図10のようなヒーター102の外周を左右方向に伸びる螺旋状のパイプ101が巻かれている加熱器100を用いた場合、気体をパイプ101内に送り込んだとしても内部にたまっている飽和蒸気は送り込んだ気体とともに送り出されるが、パイプ101内に噴射液が残留する場合がある。そして気体の送り込みが止まると残った噴射液が再度蒸発し、飽和蒸気104となりパイプ101の螺旋上部にたまる。パイプ101内部の蒸気が飽和状態となり気化しきれない噴射液103は、パイプ101の螺旋下部にとどまり、加熱され続け、酸化反応(液の劣化)が促進される。
【0043】
しかし、
図9のようなヒーター32の外周を上下方向に伸びる螺旋状のパイプ31が巻かれ、パイプ31の上部からノズル4へ霧を送る加熱器3を用いることで、噴射液は気化した蒸気が上昇する性質により上部にあるノズル4へ向かうと共に、パイプ10から加熱器3へ気体を送り込むと、パイプ31内は飽和蒸気量が低下し乾燥した状態となることで、パイプ31内の液体は気体中に取り込まれやすくなり、パイプ31内に残る噴射液をなくすことができる。
【0044】
第3の設定時間において、2方弁γが「開」状態となったとしても圧縮ボンベGの圧力により、噴射液が圧縮ボンベGに流れ込むことはなく、気体取込部13はポンプ2と加熱器3間のどの位置にでも配置可能である。
【0045】
第1の設定時間は霧噴射装置が設置される部屋の大きさとポンプ2の排出量を考慮して決定し、第3の設定時間は気体取込部13から加熱器3までの間の液量と圧縮ボンベGの圧力を考慮し決定する。
【0046】
ノズルやパイプにとどまる噴射液を気体取込部から取り込んだ気体で送り出すことにより排出し、加熱器の熱影響を受ける範囲に噴射液がとどまることがなくなる。
【0047】
図7は、本発明の霧噴射装置の第4の実施形態の概略を示したブロック図である。第3の実施形態と第4の実施形態とは気体取込部のみ異なり、他は同じ構成である。第4の実施形態では気体取込部14に3方弁δを備えており、気体取込部14(3方弁δ)は、第3の実施形態の気体取込部13(2方弁γ)と同様に制御部(図示省略)により動作が制御される。
【0048】
図7と
図8を用いて霧噴射時の動作を説明する。
図8は、3方弁δの状態を示した図であり、
図8(a)が待機時の状態、
図8(b)が第1の設定時間の状態、
図8(c)は第3の設定時間の状態である。
【0049】
霧噴射装置は、起動信号を受けて即座に霧を噴射する必要があるため、待機時においても電源が供給され、加熱器3が予熱されるようになっている。待機時では3方弁δは、δ1が「開」状態、δ2が「閉」状態、δ3が「開」状態となっている。
【0050】
起動信号を受け付けると、第1の設定時間だけポンプ2を駆動する。第1の設定時間においては、3方弁δは、δ1が「開」状態、δ2が「閉」状態、δ3が「開」状態であり、噴射液容器内の噴射液がパイプ8、ポンプ2、パイプ9、気体取込部14、パイプ10を介して、加熱器3へ送りこまれ、加熱器3にて高温に加熱され霧状になって、ノズル4から噴射される。
【0051】
第1の設定時間終了後、第3の設定時間だけ、3方弁δは、δ1が「閉」状態、δ2が「開」状態、δ3が「開」状態となり、圧縮ボンベG内の気体が圧縮ボンベGの圧力によりδ2からδ3の方向に流れ込み、パイプ10、加熱器3、ノズル4に残った噴射液はノズル4から噴射され、とどまらないようになる。
【0052】
第3の設定時間終了後は、待機時に戻り、3方弁δは、δ1が「開」状態、δ2が「閉」状態、δ3が「開」状態となる。
【0053】
第3の設定時間において、3方弁δのδ2が「開」状態となったとしても圧縮ボンベGの圧力により、噴射液が圧縮ボンベGに流れ込むことはなく、気体取込部14はポンプ2と加熱器3間のどの位置にでも配置可能である。
【0054】
第4の実施形態において、待機時は
図8(a)のように3方弁δをδ1が「開」状態、δ2が「閉」状態、δ3が「開」状態としたが、δ1、δ3は「開」状態と「閉」状態のどちらでもよく、第3の設定時間のときは
図8(c)のように3方弁δをδ1が「閉」状態、δ2が「開」状態、δ3が「開」状態としたが、δ1は「開」状態と「閉」状態のどちらでもよい。また、第3の実施形態、第4の実施形態において、気体取込部から取り込む気体は限定しない。
【0055】
以上、本発明の実施形態を説明したが、前述の実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲は、これに限定するものではなく、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0056】
1・・・噴射液容器
2・・・ポンプ
3,100・・・加熱器
4・・・ノズル
5,6,7,8,9,10,31,101・・・パイプ
11,12,13,14・・・気体取込部
32,102・・・ヒーター
103・・・気化しきれない噴射液
104・・・飽和蒸気
α,γ・・・2方弁
β,δ・・・3方弁
G・・・圧縮ボンベ