(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】無線周波数電力増幅器のための電源
(51)【国際特許分類】
H03F 1/02 20060101AFI20230316BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
H03F1/02 111
H04B1/04 R
(21)【出願番号】P 2020564699
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 CN2020092347
(87)【国際公開番号】W WO2020238898
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】201910448539.6
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520446872
【氏名又は名称】陜西亜成微電子股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHAANXI REACTOR MICROELECTRONICS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room 301, Block A, Hanyun Pavilion Xi’an Software Park, No. 68, Keji 2nd Road, Hi Tech Zone, Xi’an, Shaanxi 710075 China
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(74)【代理人】
【識別番号】100088063
【氏名又は名称】坪内 康治
(72)【発明者】
【氏名】夏勤
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-009923(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108900165(CN,A)
【文献】特表2016-507190(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109768778(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109286375(CN,A)
【文献】再公表特許第2010/089971(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/02
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数電力増幅器のための電源であって、第一のエンベロープ信号における低電力
信号を線形に増幅し、線形に増幅された低電力信号に基づいて無線周波数電力増幅器に第
一の電圧を提供するように構成され、前記低電力信号がエンベロープ信号における電力比
が30%以下の信号である第一の線形回路と、第一のエンベロープ信号における、低電力
信号以外の高電力信号を線形に増幅し、線形に増幅された高電力信号に基づいて無線周波
数電力増幅器に第二の電圧を提供するように構成され、低電力信号以外の前記高電力信号
がエンベロープ信号における電力比が70%以上の信号である第二の線形回路と、線形に
増幅された高電力信号をセンシングし、そしてセンシングされた、線形に増幅された高電
力信号に基づいて無線周波数電力増幅器に第三の電流を提供するように、一定オン時間を
有する一定オン時間制御モード又は一定オフ時間を有する一定オフ時間制御モードで動作
するように構成される第三の回路とを備え、
前記第一のエンベロープ信号は前記無線周波数電力増幅器に入力されるエンベロープ信
号であり、
フィルタ、RF検波器、RMS検出器のいずれか1つ又はそれらのいずれかの組み合わ
せで前記第一のエンベロープ信号における低電力信号及び/又は低電力信号以外の高電力
信号を取得し、
前記電源はさらに前記一定オン時間制御モードと一定オフ時間制御モードの間で選択す
るように構成される第一のモード選択ユニットを備え、
第三の回路は、第三の制御ユニット、第三の駆動ユニット、第三のインダクターを含み
、第三の制御ユニットが前記センシングされた、線形に増幅された高電力信号を受信する
ように構成される入力端を含み、第三の制御ユニットがさらに、前記電源が一定オン時間
を有する一定オン時間制御モード、一定オフ時間を有する一定オフ時間制御モードのいず
れかのモードで動作するように、第三の制御信号を出力するように構成される出力端を含
み、第三の駆動ユニットが第三の制御ユニットの出力端に接続され、前記第三の制御信号
に基づいて第三の電気信号を第三のインダクターに提供するように構成され、第三のイン
ダクターが第三の電気信号の作用で無線周波数電力増幅器に第三の電流を提供するように
構成され、
第三の駆動ユニットは、第三のスイッチング増幅器を含み、又は上部電力管及び下部電
力管を含み、
第三の回路は、前記一定オン時間又は一定オフ時間を確定するように構成される計時ユ
ニットを含み、
第三の回路は、(1)第三の回路における予め設定された電流値IDが第二の線形回路
の出力電流リップル値ISL未満又はそれ以下である場合、第三の回路を動作させ、第三
の電流を提供し、(2)第三の回路における予め設定された電流値IDが第二の線形回路
の出力電流リップル値ISL以上又はそれよりも大きい場合、第三の回路に電流を提供さ
せないように構成されるコンパレータを含み、
第二の線形回路は複数の並列に接続された分岐を含み、且つ各分岐がそれぞれ前記高電
力信号のうちの一部の信号を線形に増幅し、線形に増幅された一部の高電力信号に基づい
て対応する分岐電圧を提供し、各分岐電圧が重畳された後に無線周波数電力増幅器に第二
電圧を提供し、
第一の線形回路は、第一のインダクターを含み、第一のインダクターと第三の回路にお
ける第三のインダクターの間の相互インダクタンスにより、前記第一の線形回路が第三の
ンダクターを用いて無線周波数電力増幅器に第一の電圧を提供し、
エンベロープ信号に低電力信号と高電力信号が含まれ、低電力信号/高電力信号のみを
検出し、検出された低電力信号/高電力信号に対して差分演算をエンベロープ信号により
行って残りの高電力信号/低電力信号を得て、
第三の回路は第二の線形回路の各分岐と一対一対応する第三の回路の各分岐により、第
二の回線回路の各分岐によって線形に増幅された高電力信号部分をそれぞれセンシングす
ることができ、第三の回路の各分岐によって出力された電流を重畳して無線周波数電力増
幅器に第三の電流を提供するように、第三の回路の各分岐の予め設定された電流値と第二
の線形回路の各分岐の出力電流リップル値に従って、第三の回路の各分岐は、COTモー
ドで動作する、
ことを特徴とする無線周波数電力増幅器のための電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は移動通信分野に関し、特に無線周波数電力増幅器のための電源に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信分野では、無線周波数電力増幅器の効率を向上させるために、線形増幅ユニッ
トとスイッチング電源を組み合わせたハイブリッド電源を使用することができ、このよう
な電源にはヒステリシス制御(hysteresis control)技術が用いられ
ることが多い。該技術により線形増幅とスイッチング電源技術を効果的に組み合わせてシ
ステムを安定的に動作させることができるが、該技術においてスイッチング周波数がエン
ベロープ信号の帯域幅の影響を受ける特性、即ちエンベロープ信号の帯域幅の増大に伴い
、スイッチング周波数が速くなる特性により、スイッチング制御に課題をもたらす。また
、該技術のオン時点が出力ノイズに非常に敏感であり、且つオン時間が最適なスイッチン
グ時点よりも遅れることが多く、そして広帯域幅、高PAPRのエンベロープ信号が処理
されるとともに、スイッチング電源及び線形増幅関連回路の出力電力損失が増加し、その
結果、電源システム全体の効率が帯域幅の増大に伴って低くなる。
【0003】
帯域幅が継続的に増大する現状で、どのように無線周波数電力増幅器の電源効率をさら
に向上させるかは、常に本分野で考慮すべき技術的問題である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記技術的問題を解決するために、本開示による無線周波数電力増幅器のための電源は
、
第一のエンベロープ信号における低電力信号を線形に増幅し、線形に増幅された低電力
信号に基づいて無線周波数電力増幅器に第一の電圧を提供するように構成され、前記低電
力信号がエンベロープ信号における電力比が30%以下の信号である第一の線形回路と、
第一のエンベロープ信号における、低電力信号以外の高電力信号を線形に増幅し、線形
に増幅された高電力信号に基づいて無線周波数電力増幅器に第二の電圧を提供するように
構成され、低電力信号以外の前記高電力信号がエンベロープ信号における電力比が70%
以上の信号である第二の線形回路と、
線形に増幅された高電力信号をセンシングし、そしてセンシングされた、線形に増幅さ
れた高電力信号に基づいて無線周波数電力増幅器に第三の電流を提供するように、一定オ
ン時間を有する一定オン時間制御モード又は一定オフ時間を有する一定オフ時間制御モー
ドで動作するように構成される第三の回路とを備える。
【0005】
好ましくは、
前記第一のエンベロープ信号は前記無線周波数電力増幅器に入力されるエンベロープ信
号である。
【0006】
好ましくは、
フィルタ、RF検波器、RMS検出器のいずれか1つ又はそれらのいずれかの組み合わ
せで前記第一のエンベロープ信号における低電力信号及び/又は低電力信号以外の高電力
信号を取得する。
【0007】
好ましくは、
前記電源はさらに前記一定オン時間制御モードと一定オフ時間制御モードの間で選択す
るように構成される第一のモード選択ユニットを備える。
【0008】
好ましくは、
第三の回路は、第三の制御ユニット、第三の駆動ユニット、第三のインダクターを含み
、
第三の制御ユニットが前記センシングされた、線形に増幅された高電力信号を受信する
ように構成される入力端を含み、
第三の制御ユニットがさらに、前記電源が一定オン時間を有する一定オン時間制御モー
ド、一定オフ時間を有する一定オフ時間制御モードで動作するように、第三の制御信号を
出力するように構成される出力端を含み、
第三の駆動ユニットが第三の制御ユニットの出力端に接続され、前記第三の制御信号に
基づいて第三の電気信号を第三のインダクターに提供するように構成され、
第三のインダクターが第三の電気信号の作用で無線周波数電力増幅器に第三の電流を提
供するように構成される。
【0009】
好ましくは、
第三の駆動ユニットは、第三のスイッチング増幅器を含み、又は上部電力管及び下部電
力管を含む。
【0010】
好ましくは、
第三の回路は、前記一定オン時間又は一定オフ時間を確定するように構成される計時ユ
ニットを含む。
【0011】
好ましくは、
第三の回路は、
(1)第三の回路における予め設定された電流値IDが第二の線形回路の出力電流リッ
プル値ISL未満又はそれ以下である場合、第三の回路を動作させ、第三の電流を提供し
、
(2)第三の回路における予め設定された電流値IDが第二の線形回路の出力電流リッ
プル値ISL以上又はそれよりも大きい場合、第三の回路に電流を提供させないように構
成されるコンパレータを含む。
【0012】
好ましくは、
第二の線形回路は複数の並列に接続された分岐を含み、且つ
各分岐がそれぞれ前記高電力信号のうちの一部の信号を線形に増幅し、線形に増幅され
た一部の高電力信号に基づいて対応する分岐電圧を提供し、
各分岐電圧が重畳された後に無線周波数電力増幅器に第二電圧を提供する。
【0013】
好ましくは、
第一の線形回路は、第一のインダクターを含み、第一のインダクターと第三の回路にお
ける第三のインダクターの間の相互インダクタンスにより、前記第一の線形回路が第三の
ンダクターを用いて無線周波数電力増幅器に第一の電圧を提供する。
【0014】
上記技術的解決策により、従来のヒステリシス制御と比較して、本開示は、エンベロー
プ信号における異なる電力比に応じて無線周波数電力増幅器に電気エネルギーを適応的に
提供して電源全体の効率を向上させることができる、無線周波数電力増幅器のための新し
い電源を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示における異なる実施形態に示される電源の構造概略図である。
【
図2】本開示における異なる実施形態に示される電源の構造概略図である。
【
図3】本開示における異なる実施形態に示される電源の構造概略図である。
【
図4】本開示における1つの実施形態に示される第三の回路の概略図である。
【
図5】本開示における異なる実施形態に示される電源の構造概略図である。
【
図6】本開示における異なる実施形態に示される電源の構造概略図である。
【
図7】1uHの小さいインダクターが用いられる場合、第一のエンベロープ信号が100MHzの信号である従来のヒステリシス制御電源のシミュレーション図である。
【
図8】該ヒステリシス制御電源のスイッチング電源部分に対応する駆動ユニットスイッチの波形である。
【
図9】1uHの小さいインダクターが用いられる場合、本開示の1つの実施形態における同様の第一のエンベロープ信号が100MHzの信号である電源のシミュレーション図である。
【
図10】該電源のスイッチング電源部分に対応する第三の駆動ユニットスイッチの波形である。
【
図11】50uHの大きなインダクターが用いられる場合、第一のエンベロープ信号が100MHzの信号である従来のヒステリシス制御電源のシミュレーション図である。
【
図12】該ヒステリシス制御電源のスイッチング電源部分に対応する駆動ユニットスイッチの波形である。
【
図13】50uHの大きなインダクターが用いられる場合、本開示の1つの実施形態における同様の第一のエンベロープ信号が100MHzの信号である電源のシミュレーション図である。
【
図14】該電源のスイッチング電源部分に対応する第三の駆動ユニットスイッチの波形である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の説明では、本開示の実施形態のより包括的な説明を提供するために、複数の詳細
が述べられる。しかしながら、本開示の実施形態は、これらの具体的な詳細がない場合で
実施されてもよいことが当業者にとって明らかである。他の実施形態では、本開示の実施
形態を不明瞭にすることを避けるために、公知の構造及びデバイスは、詳細に示されず、
ブロック図の形で示されている。また、以下に説明される異なる実施形態の特徴は、特に
明記しない限り、互いに組み合わせられてもよい。
【0017】
本開示に用いられる用語「第一」、「第二」などは異なるオブジェクトを区別すること
に用いられるが、特定の順序を説明するためのものではない。また、「含む」と「有する
」及びそれらのいかなる変形は、カバーし且つ排他的に含まないことを意図する。例えば
、一連のステップ又はユニットを含むプロセス、又は方法、又はシステム、又は製品又は
デバイスは示されたステップ又はユニットに限定されず、選択可能に、示されないステッ
プ又はユニットをさらに含み、又は選択可能に、これらのプロセス、方法、システム、製
品又はデバイス固有の他のステップ又はユニットをさらに含む。
【0018】
本明細書に「実施形態」が言及されることは、実施形態と組み合わせて説明される特定
の特徴、構造又は特性が本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれてもよいことを意味
し、説明される実施形態は、本開示の一部の実施形態であるが、全ての実施形態ではない
。本明細書の様々な箇所に出現する該フレーズは、必ずしも同じ実施形態を指すものでは
なく、他の実施例と相互に排他的に独立した実施例又は代替実施形態ではない。当業者は
、本明細書で説明される実施形態が他の実施形態と組合わせられてもいことを理解できる
。
【0019】
図1を参照すると、1つの実施形態では、本開示による無線周波数電力増幅器(PA)
のための電源は、
第一のエンベロープ信号S1における低電力信号S2を線形に増幅し、線形に増幅され
た低電力信号に基づいて無線周波数電力増幅器(PA)に第一の電圧Vc1を提供するよ
うに構成され、前記低電力信号がエンベロープ信号における電力比が30%以下の信号で
ある第一の線形回路と、
第一のエンベロープ信号S1における、低電力信号S2以外の高電力信号S3を線形に
増幅し、線形に増幅された高電力信号に基づいて無線周波数電力増幅器(PA)に第二の
電圧Vc2を提供するように構成され、低電力信号以外の前記高電力信号S3がエンベロ
ープ信号における電力比が70%以上の信号である第二の線形回路と、
線形に増幅された高電力信号をセンシングし、そしてセンシングされた、線形に増幅さ
れた高電力信号に基づいて無線周波数電力増幅器(PA)に第三の電流ISWを提供する
ように、一定オン時間を有する一定オン時間制御モード又は一定オフ時間を有する一定オ
フ時間制御モードで動作するように構成される第三の回路とを備える。
【0020】
上記実施形態では、
第一、第二の線形回路は、それぞれ低電力信号と高電力信号を線形に増幅し、無線周波
数電力増幅器(PA)に第一の電圧Vc1と第二の電圧Vc2を提供し、
一方、高電力信号がエンベロープ信号における電力比が高い信号に属するという特性に
より、第三の回路は、COT制御モード(一定オン時間制御モード又は一定オフ時間制御
モード)を用いて無線周波数電力増幅器(PA)に第三の電流ISWを提供する。
【0021】
これにより、上記実施形態は、以下の作用を有している。
第一、2つの線形回路によって高電力エンベロープ信号と低電力エンベロープ信号に対
して分類処理を行い、高電力エンベロープ信号と低電力エンベロープ信号に対して従来の
信号変調処理ユニットを設計する必要がなく、電源の複雑さが低下する。
第二、2つの線形回路によって高電力エンベロープ信号と低電力エンベロープ信号に対
して分類処理を行い、これにより、エンベロープ信号全体のピーク対平均比(PAPR)
が向上するだけでなく、2つの線形回路の入力信号のピーク対平均比(PAPR)が低下
し、第一、第二の線形回路の出力電圧の振幅が低減され、それに対応して、第一、第二の
線形回路の電力損失が減少し、電源の効率が向上する。
第三、第一、第二の線形回路は無線周波数電力増幅器(PA)に第一の電圧Vc1と第
二の電圧Vc2を提供する。これは、上記実施形態において、第一、第二の線形回路が電
圧ソースとして機能できることを意味する。そのため、第一、第二の線形回路が電流の供
給に及ぼしない場合、第一、第二の線形回路の線形回路の電力損失が減少し、電源の効率
が向上するだけでなく、同等条件で電源の帯域幅処理能力も向上する。
第四、第一、第二の線形回路によってもたらされる特性に加えて、前記第三の回路は高
出力信号とCOT制御(一定オン時間制御モード又は一定オフ時間制御モード)の二重作
用で、無線周波数電力増幅器に第三の電流を提供し、これにより、第三の回路のオン及び
オフがエンベロープ信号の影響を受けなく、電源のスイッチング周波数に寄与し、それに
よってスイッチングプロセスの電力損失が減少し、システムへのノイズの影響が低減され
、システムの安定性が向上し、且つ従来のヒステリシス制御回路における周波数ジッタリ
ング及びEMI防止特性が維持されるが、周波数ジッタリング範囲が制限され、そのため
、システムの線形性に影響を与えることなく電源の効率を向上させ、一方、エンベロープ
信号全体での高電力信号の電力比が70%以上であるため、第三の電流が電流平均値によ
り近く、これにより、電源の出力電力がエンベロープ信号におけるRMS信号により近く
なり、それによってエンジニアリングで意味のある新しいエンベロープトラッキング電源
を実現することができる。
【0022】
つまり、従来技術と比較して、上記実施形態における電源は低電力信号と高電力信号を
それぞれ処理するだけでなく、線形増幅とCOT制御の利点を十分に利用し、これにより
、電源の効率と安定性が向上し、一方、電源は帯域幅が拡張されるため、全体的な効率が
影響されない。
【0023】
エンベロープ信号での高電力信号の電力比が80~90%である場合、電源のスイッチ
ング周波数と電源の効率のバランスをよりよく得ることができることがより好ましいこと
は理解可能である。それに対応して、これは、低電力信号の電力比が10-20%である
ことを意味している。
【0024】
各回路自体の時定数又は遅延のマッチング問題に関しては、これは回路分野の常識に属
する。本開示もどのように時定数を設計したり、時定数を調整したりするかに着目しない
ため、ここで説明を省略しない。上記実施形態の電源はアナログ回路又はデジタル回路の
方式で実現できれば、アナログ電源であってもよいし、デジタル電源であってもよいこと
が理解できる。
【0025】
また、無線周波数電力増幅器が軽負荷又は無負荷であると判定される場合、上記実施形
態で、一定オン時間モードが好ましい。これは、一定オフ時間モードによる軽負荷の場合
のスイッチング損失の増加及び電源の効率の低下と比較して、一定オン時間モードの方が
軽負荷又は無負荷の場合のスイッチング損失の低減、電源の効率の向上に役立つためであ
る。
【0026】
図2を参照すると、他の実施形態では、
第三の回路は、第三の制御ユニット31、第三の駆動ユニット32、第三のインダクタ
ー33を含み、
第三の制御ユニット31が前記センシングされた、線形に増幅された高電力信号を受信
するように構成される入力端を含み、
第三の制御ユニット31がさらに、前記電源が一定オン時間を有する一定オン時間制御
モード、一定オフ時間を有する一定オフ時間制御モードのいずれかのモードで動作するよ
うに、第三の制御信号を出力するように構成される出力端を含み、
第三の駆動ユニット32が第三の制御ユニットの出力端に接続され、前記第三の制御信
号に基づいて第三の電気信号を第三のインダクターL33に提供するように構成され、
第三のインダクターが第三の電気信号の作用で無線周波数電力増幅器に第三の電流IS
Wを提供するように構成される。
【0027】
上記実施形態では、前記第三の制御ユニット31はCOT制御を実現できるいずれかの
COT制御ユニットであってもよい。COTは、一定オン時間(Constant On
Time)と一定オフ時間(Constant Off Time)を含む。説明すべ
きこととして、本開示は、COT制御ユニットの革新的な実現に着目しないため、COT
制御時に関連する可能性があるタイミングデバイス又はタイマ、又はタイミングデバイス
又はタイマと組み合わせた他の回路又は機能ユニットを含む従来技術における様々なCO
T制御ユニットを参照することができ、対応する一定オン時間又は一定オフ時間を確定す
ることを主な目的とする。
【0028】
従来技術におけるフィルタリングした後にヒステリシス制御が実施される電源との明ら
かな違いは、第三の回路自体がフィルタリングユニットとヒステリシス制御を用いること
なく、第三の制御ユニットによって第三の駆動ユニットのオン時間又はオフ時間に対して
迅速な応答及び調整を行うことであることが理解でき、これにより、効率が向上する。つ
まり、フィルタリングし、フィルタリングした後にヒステリシス制御を実施する従来技術
と比較して、上記実施形態ではCOT制御が実施されるため、第三の駆動ユニットの周波
数が等価負荷、遅延、回路遅延、入力信号などの制限を受けなく、解決策が簡単で、効率
が高く、制御信号のジッタリングを解消できるだけでなく、ノイズを低減でき、また、C
OT制御の応答速度が速いため、エンベロープトラッキングのように入力信号帯域幅が大
きく要求され、拡張しやすい応用シーンに非常に適用する。
【0029】
さらに特に指摘すべきこととして、第三の駆動ユニット32を制御することにより、電
源が一定オン時間モード又は一定オフ時間モードで動作する場合、これは、第三の駆動ユ
ニット32により、本電源がスイッチング電源の特性を有することを示し、また、本電源
が第一、第二の線形回路を備えるため、本電源は線形増幅特性とスイッチング電源特性の
2つの特性を組み合わせたハイブリッドエンベロープトラッキング電源である。しかしな
がら、無線通信技術の迅速な発展に伴い、5Gの商用化時代が始まろうとしており、且つ
6G技術も研究段階に入り、モバイルインターネット、モノのインターネットなどの様々
なサービスデータの急増に直面し、無線周波数入力信号の電力ピーク対平均比(PAPR
)がますます大きくなるめ、PAPRが大きい状況で定電圧供給のための線形増幅技術の
効率は低くなる。
【0030】
上記実施形態は、ピーク対平均比(PAPR)が大きい状況で線形増幅技術の効率が非
常に低いため、電源全体の効率が低くなるという問題を解決することに明らかに役立ち、
これは、上記実施形態で第一、第二の線形回路に加えて、センシングされた高電力信号に
基づき、第三の駆動ユニットを制御することにより、電源が一定オン時間モード又は一定
オフ時間モードで動作するためであり、これは、割合が高い前記高電力信号に基づいて電
源全体におけるスイッチング電源の割合を増やし、線形回路の消費電力割合を減らすこと
に役立ち、これにより、スイッチング電源の高効率の利点を十分に活用する。このように
、上記実施形態は、電源全体の供給効率をさらに向上させることに役立つ。
【0031】
他の実施形態では、前記第一のエンベロープ信号は前記無線周波数電力増幅器に入力さ
れるエンベロープ信号である。
【0032】
前記実施形態に対して、第一のエンベロープ信号が前記無線周波数電力増幅器に入力さ
れるエンベロープ信号である場合、従来技術のほとんどの技術的解決策において無線周波
数電力増幅器(即ちRF)への入力信号がエンベロープトラッキングのための基準信号と
して用いられることと同様に、前記実施形態でも、信号ソース、即ち無線周波数電力増幅
器に入力されるエンベロープ信号からエンベロープトラッキングを実現する。しかしなが
ら、これは本開示が他の第一のエンベロープ信号を排除することを意味するものではなく
、明らかに、上記各実施形態の技術的効果を達成する上で、本開示に開示された原理に従
って、関連する実施形態はエンベロープ信号のソースに限定されるものではない。
【0033】
他の実施形態では、前記電源はさらに前記一定オン時間制御モードと一定オフ時間制御
モードの間で選択するように構成される第一のモード選択ユニットを備える。
【0034】
該実施形態では、モード選択の実施形態、即ち第一のモード選択ユニットによって選択
することが示されている。前記選択がハードウェア回路によって実現されてもよいし、ソ
フトウェア計算によって実現されてもよいことは理解可能である。また、ハードウェア回
路又はソフトウェア計算の方式に関わらず、上述したように、無線周波数電力増幅器が軽
負荷又は無負荷であると判定した場合、さらに一定オン時間制御モードを好適にすること
ができる。
【0035】
上述したように、他の実施形態では、前記第三の回路は、前記一定オン時間又は一定オ
フ時間を確定するように構成される計時ユニットを含む。
【0036】
説明すべきこととして、どのように一定オン時間又は一定オフ時間を確定するかについ
て、従来技術における全ての対応する手段が用いられてもよく、本開示では説明を省略す
る。前記計時ユニットは、前記第三の制御に設けられてもよいし、第三の回路の独立ユニ
ットとして用いられてもよい。
【0037】
他の実施形態では、
フィルタ、RF検波器、RMS検出器のいずれか1つ又はそれらのいずれかの組み合わ
せで前記第一のエンベロープ信号における低電力信号及び/又は低電力信号以外の高電力
信号を取得する。
【0038】
該実施形態は、低電力信号及び/又は高電力信号を検出して両者に対して分類処理を行
うことを目的とする。第一、第二の線形回路に対して、低電力信号、高電力信号の周波数
特徴、電力特徴に従って、異なるタイプのフィルタ及び/又はRF検波器(RF電力検波
器とも呼ばれ、例えばADI、即ちAnalog Device会社の対応する製品)及
び/又はRMS検出器(RMS応答電力検出器とも呼ばれる)はそれぞれ低電力信号と高
電力信号を検出することができることが理解できる。説明すべきこととして、電源のスイ
ッチング周波数と電源の効率のバランスを取るために、フィルタ、RF検波器、RMS検
出器によって低電力信号と高電力信号の定義を調整し、即ちその定義における電力比を増
減することができる。
【0039】
他の実施形態では、より好ましくは、エンベロープ信号に低電力信号と高電力信号が含
まれるため、低電力信号/高電力信号のみを検出し、検出された低電力信号/高電力信号
に対して差分演算をエンベロープ信号により行って残りの高電力信号/低電力信号を得る
こともできる。
【0040】
他の実施形態では、
図3に示すように、低周波フィルタリングユニット(即ちフィルタ
のうちの低周波フィルタ)が第二の線形回路のみに用いられる場合、
低周波フィルタリングユニットがS1で不要な高周波信号(注記:それが低電力信号に
対応する)をフィルタリングすることができるため、高電力比の低周波信号S3(即ち高
電力信号S3)が通過し、第二の制御ユニットで線形増幅が完了され、無線周波数電力増
幅器に第二の電圧を提供し、
一方、
図3における第一の線形回路と第二の線形回路が並列接続関係を有しており、高
電力信号S3以外の信号、即ち低電力信号S2が第一の線形回路に入るため、第一の線形
回路にフィルタが設けられない場合、第一の制御ユニットにより低電力信号S2を線形に
増幅し、無線周波数電力増幅器に第一の電圧を提供する。
【0041】
つまり、該実施形態では、第二の線形回路に低周波フィルタリングユニットを設けるだ
けで、第一、第二の線形回路による高出力信号と低出力信号の別々の処理を実現すること
ができる。第一、第二の制御ユニットが線形増幅を実現する場合、線形増幅器をさらに備
えることができることは理解可能である。
【0042】
図4を参照すると、他の実施形態では、
第三の駆動ユニットは、第三のスイッチング増幅器を含み、又は上部電力管及び下部電
力管を含む。
スイッチング増幅器がスイッチング電源の駆動ユニットを実現することに用いられるこ
とは明らかであることが理解できる。
【0043】
該実施形態では、
図4を参照し、第三の駆動ユニットが上部電力管M1及び下部電力管
M2を含むことを例とすると、
図4に示すように、第三の駆動ユニットは上部電力管M1及び下部電力管M2を含み、
M1の一端にVDD電源が接続され、M2の一端がアースに接続され、M1とM2の共通
端が出力端であり、M1とM2のゲート電極がそれぞれ制御ユニットの出力端に接続され
、第三の制御ユニットによって提供されたゲート電極電圧に基づいてオン又はオフを実現
する。
【0044】
他の実施形態では、
第三の回路は、
(1)第三の回路における予め設定された電流値IDが第二の線形回路の出力電流リッ
プル値ISL未満又はそれ以下である場合、第三の回路を動作させ、第三の電流ISWを
提供し、
(2)第三の回路における予め設定された電流値IDが第二の線形回路の出力電流リッ
プル値ISL以上又はそれよりも大きい場合、第三の回路に電流を提供させないように構
成されるコンパレータを含む。
該実施形態では、第二の線形回路が電圧ソースと見なすことができるが、実際のエンジ
ニアリングアプリケーションにおいて、出力電流リップル値が避けられないが、高い電源
効率を達成するために、第二の線形回路の出力電流リップル値ISLを用いて第三の回路
の動作を制御する。前記コンパレータは、第三の回路内の独立ユニットであってもよいし
、上述した実施形態と組み合わせて第三の制御ユニットの一部となってもよいことが理解
できる。さらに、前記出力電流リップル値は、第三の電流と共に無線周波数電力増幅器へ
の電流の供給に用いられてもよく、その詳細については後述する。
【0045】
図5を参照すると、他の実施形態では、
第一の線形回路は、第一のインダクターL12を含み、第一のインダクターL12と第
三の回路における第三のインダクターL33の間の相互インダクタンスにより、前記第一
の線形回路が第三のンダクターを用いて無線周波数電力増幅器に第一の電圧Vc1を提供
する。
【0046】
図6を参照すると、他の実施形態では、
第一の線形回路は、第一のコンデンサC12を含み、第一のコンデンサC12によって
無線周波数電力増幅器に第一の電圧Vc1を提供する。
上記の他の実施形態と組み合わせ、第二の線形回路の出力電流リップル値ISLにより
第三の回路が動作することができる場合、前記出力電流リップル値ISLは、第三の電流
ISWと共に無線周波数電力増幅器への電流Imの供給に用いられてもよい。
【0047】
他の実施形態では、
第二の線形回路は複数の並列に接続された分岐を含み、且つ
各分岐がそれぞれ前記高電力信号のうちの一部の信号を線形に増幅し、線形に増幅され
た一部の高電力信号に基づいて対応する分岐電圧を提供し、
各分岐電圧が重畳された後に無線周波数電力増幅器に第二電圧を提供する。
【0048】
エンベロープ信号に異なる周波数及びそれに対応する電力比の信号が含まれるため、以
上の低電力信号と高電力信号をそれぞれ検出することと同様に、複数の並列に接続される
分岐を用いてその高電力信号を周波数及び/又は電力に従って検出し、このような並列接
続方式が無線周波数電力増幅器に第二の電圧をより効率的に提供することを意図すること
は理解可能である。当然、これは関連する回路のコストと複雑さを増加させる。当業者は
、実際の状況に応じて回路の複雑さと電源の効率のトレードオフを行うことができる。
【0049】
同様に、
第一の線形回路は複数の並列に接続された分岐を含むこともでき、且つ
各分岐がそれぞれ前記低電力信号のうちの一部の信号を線形に増幅し、線形に増幅され
た一部の低電力信号に基づいて対応する分岐電圧を提供し、
各分岐電圧が重畳された後に無線周波数電力増幅器に第一の電圧を提供する。
【0050】
さらに、第二の線形回路が複数の並列に接続された分岐を含む場合、
第三の回路は第二の線形回路の各分岐と一対一対応する第3回路の各分岐により、第二
の回線回路の各分岐によって線形に増幅された高電力信号部分をそれぞれセンシングする
ことができ、さらに第三の回路の各分岐によって出力された電流を重畳して無線周波数電
力増幅器に第三の電流を提供するように、第三の回路の各分岐の予め設定された電流値と
第二の線形回路の各分岐の出力電流リップル値に従って、第三の回路の各分岐は、COT
モードで動作する。
【0051】
図7-
図14は、同じエンベロープ信号と同じインダクタンスが変調された後の、従来
のヒステリシス制御回路と本開示の第三の制御ユニット31に用いられるCOT制御モー
ド回路のシミュレーション結果を示す図である。図には100MHzの信号に対する変調
が示され、本開示のCOT制御モジュールのスイッチング周波数がより低く、電流がエン
ベロープ信号により近く、COTの最も良いオン時点が最適化される。
図7、
図8、
図9
、
図10に示すように、従来のヒステリシス制御回路と本開示のCOT制御モード回路の
両方に1uHの小さいインダクターが用いられる場合、インダクタンス値が小さいため、
第二の制御ユニット22の出力電流リップル値が大きく、システム遅延が小さく、エンベ
ロープトラッキングに対する反映速度が速く、これに比べ、
図11、
図12、
図13、図
14に示すように、従来のヒステリシス制御回路と本開示のCOT制御モード回路の両方
に50uHの大きなインダクターが用いられる場合、インダクタンス値が大きいため、第
二の制御ユニット22の出力電流リップル値が小さくなり、システム遅延が大きく、エン
ベロープトラッキングに対する反映速度が遅いが、電流が平均値により近く、したがって
、システムの出力電力がエンベロープ信号におけるRMS信号により近く、線形回路に消
費された消費電力全体が低減され、COT制御モジュールのスイッチング周波数がさらに
低下し、システム効率が向上する。
【0052】
また、いくつかの実施形態では、前記制御ユニットは、デジタル送信機のチップ又はプ
ロセッサ(例えば、シリコン)に提供されてもよい。また、前記駆動ユニットは、デジタ
ル送信機のチップ又はプロセッサに提供されてもよい。より広義には、残りのユニットは
、関連するチップ又はプロセッサに提供されてもよい。上記電源は、当然、デジタル送信
機のチップ又はプロセッサに提供されてもよい。
【0053】
特定の実現ニーズに応じて、本開示の実施形態は、ハードウェア又はソフトウェアで実
現されてもよい。該実現は、電子的に読み取り可能な制御信号を記憶したデジタル記憶媒
体(例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROM、EP
ROM、EEPROM又はFLASHメモリ)を使用して実行されてもよい。したがって
、該デジタル記憶媒体はコンピュータで読み取り可能なものであってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書で説明される方法の機能の一部又は全部は、プログ
ラマブル論理デバイス(例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて実行さ
れてもよい。いくつかの実施形態では、フィールドプログラマブルゲートアレイは、本明
細書で説明される電源を実現するために、マイクロプロセッサと協働してもよい。
【0055】
上記実施形態は、本開示の原理を例示的に示すだけである。本明細書で説明される構成
及び詳細に対する修正及び変形は、当業者にとって明らかであると理解されるべきである
。したがって、本明細書の実施形態に対する記述及び説明を通して示される具体的な詳細
によって制限されず、以下の特許請求の範囲のみによって制限されることが意図される。