(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】打ち放しコンクリート表面の塗装方法
(51)【国際特許分類】
C09D 127/12 20060101AFI20230316BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230316BHJP
C09D 183/07 20060101ALI20230316BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230316BHJP
C04B 41/71 20060101ALI20230316BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20230316BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20230316BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20230316BHJP
B05D 1/28 20060101ALI20230316BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20230316BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230316BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C09D127/12
C09D5/00 D
C09D183/07
C09D7/61
C04B41/71
B05D7/00 D
B05D1/36 Z
B05D5/06 101Z
B05D1/28
B05D5/00 K
B05D7/24 302L
B05D7/24 302P
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303A
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2018116821
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】503221735
【氏名又は名称】株式会社クリエイティブライフ
(73)【特許権者】
【識別番号】518247232
【氏名又は名称】株式会社ケミカル・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100098154
【氏名又は名称】橋本 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100092864
【氏名又は名称】橋本 京子
(72)【発明者】
【氏名】大森 正巳
(72)【発明者】
【氏名】北村 透
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-248692(JP,A)
【文献】特開2001-121071(JP,A)
【文献】特開2005-067921(JP,A)
【文献】特開2002-138243(JP,A)
【文献】特開平11-172882(JP,A)
【文献】特開平04-219174(JP,A)
【文献】特開平02-248471(JP,A)
【文献】特許第3707633(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00,
101/00-201/10
B05D 1/00-7/26
C04B 41/71
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、の何れか、またはそれらの組み合わせである耐候性を有する樹脂成分および顔料成分が含有される半透明の下塗り用塗料と、フッ素樹脂である耐候性を有する樹脂成分および顔料成分を含有する半透明の模様付け用塗料とからなるコンクリート表面の仕上げ用塗料を用いた打ち放しコンクリート表面の塗装方法であって、
初めに前記下塗り用塗料を用いて打ち放しコンクリート表面の全面を塗装して表面保護塗膜を形成し、次いで、底面である塗布面
が弾性材により形成されたスタンプ状の塗布具により前記模様付け用塗料を塗布して前記表面保護塗膜上にコンクリート模様調の仕上げ塗膜を形成する
ものであり、前記仕上げ塗膜の表面はクリアー塗料により塗装しないことを特徴とする打ち放しコンクリート表面の塗装方法。
【請求項2】
前記下塗り用塗料または前記模様付け用塗料の少なくとも一方に光触媒または界面活性剤の少なくとも一方が含有されていることを特徴とする請求項1記載の打ち放しコンクリート表面の塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート打ち放し面の仕上げ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の建築物、構築物などは型枠に充填したコンクリートを固化して構築されており、型枠が外されて打ち放された建築物などの表面には型枠表面の模様が転写されることから多くの場合は表面にタイルや壁材を貼設する仕上げ加工が施されて美観が保たれているが、コンクリート打ち放し面は型枠の表面模様が転写されて特有の意匠性を有しており、表面の仕上げ加工を省いて打ち放しコンクリート表面をそのまま仕上げ面とした建築物などが採用されて評価を受けている。
【0003】
ところが、コンクリート構造物などは水で溶いた流動セメントを型枠に流し込んだ後、養生・乾燥・固化させるという行程を経て構築されるものであり、一般に構築した際の表面には、不陸、巣穴、ひび割れなどの構築上の理由による各種の欠損が生じてしまうことになり、設計した通りの美観を備えた打ち放しコンクリートの表面を実現させることは困難な場合が多かった。
【0004】
また、コンクリートの主成分であるセメントは石灰質の水和物であり、太陽光、降雨による水分、あるいは大気中に浮遊する各種の酸性の汚染物質等の影響を受けると、経時的に汚染や劣化が進行してしまい美観性が低下してしまう、という問題もある。
【0005】
そこで、従来から登録実用新案第3118405号公報、特開2006-206369号公報などに提示されているように、コンクリート打ち放し面を塗装することで補修、改修して美的効果と耐久性の向上を図った仕上げ方法などが各種提案されている。
【0006】
これらの公報に提示されているような従来のコンクリート打ち放し面の仕上げ方法は、初めにコンクリート打ち放し面に変色部を隠すための着色を施してからその上に半透明の高耐候性エマルジョン塗料を含浸した不織布等の無方向性の繊維材料を繰り返し圧着してコンクリート模様調の塗膜を形成し、前記模様調の塗膜上に、親水性クリアー塗料により保護塗膜を造膜したものであり、保護塗膜が透明性を備えているのでコンクリート模様調の塗膜により意匠性に優れたコンクリート模様を現出するとともに、保護塗膜によりその表面が親水性を備えているので、清掃等も容易に行うことが可能な打放しコンクリート模様外装材を得ることができるなど多くの利点を有している。
【0007】
ところが、前記従来のコンクリート打ち放し面の仕上げ方法は、コンクリート打ち放し面に塗装された模様塗膜の表面をクリアー塗料により塗装して保護塗膜で覆うというものであり、クリアー塗料により塗装すると補修塗りを施した個所と施さない箇所との吸収の違いによりせっかく合わせた色合いが変わることになり、予めそれを見越して非常に高度の技量を要求される色合わせする必要がある。
【0008】
また、コンクリート打ち放し面の変色部を隠すための着色塗料はコンクリートと同質のセメント系材料が使用されることから塗料の主成分である有機ポリマーとの接着性に乏しく、施工しても色合わせに失敗すると再度それを繰り返すためには有機ポリマー層を剥離しなければならないという問題があり、更に、クリアー塗布層の膜厚は検出できないため薄塗り部分では保護効果が十分ではなく、色褪せが早期に出てしまう、という問題もある。
【0009】
更に、コンクリートの模様を塗布する際に、一般に塗布具として用いられている筆やローラーなどを用いると刷毛目や塗り目などが残存するので実際にコンクリート打ち放し面に表現される規則性のない模様を表現することができないことから、例えば特開2001-70876号公報に提示されているようにフェルトや不織布といった、無方向性の繊維材料に塗料を含浸させ、それを、塗装表面に繰返し圧着する、という手段などが採用されているが、フェルトや不織布自体が転写されることから自然の打ち放しコンクリート面を再現するには至っておらず、また、技術的にも熟練が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】登録実用新案第3118405号公報
【文献】特開2006-206369号公報
【文献】特開2001-70876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来のコンクリート打ち放し面の仕上げ方法が有する問題点を解決したものであり、熟練を要さなくても更に美観ならびに耐久性に優れたコンクリート打ち放し面の仕上げ用塗料およびこれを用いた塗装方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するためになされた本発明である打ち放しコンクリート表面の仕上げ用塗料は、耐候性を有する樹脂成分および顔料成分が含有される半透明の下塗り用塗料と、耐候性を有する樹脂成分および顔料成分を含有する模様付け用塗料とからなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明において、前記下塗り用塗料の耐候性を有する樹脂成分がフッ素樹脂、の何れか、またはそれらの組み合わせであると良く、前記模様付け用塗料の耐候性を有する樹脂成分が塗料不揮発分中に塗料不揮発分中における顔料20質量%以下であると好ましい。
【0014】
更に、本発明において、前記下塗り用塗料または前記模様付け用塗料の少なくとも一方に光触媒または界面活性剤の少なくとも一方が含有されている場合には、仕上げ面にセルフクリーニング機能を持たせることができる。
【0015】
更にまた、本発明において前記下塗り用塗料がスプレーまたは少なくとも塗装面が弾性材により形成されたスタンプ状の塗布具により塗布され、前記模様付け用塗料が少なくとも塗装面が弾性材により形成されたスタンプ状の塗布具によりそれぞれ塗装されることが好ましく、特に、コンクリート表面の微妙な凹凸にも追随可能で且つ打ち放しコンクリート表面の模様を容易に再現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、耐候性を有する樹脂成分を含んでいるとともに耐候性阻害する顔料を一定濃度以上含まない下塗り用塗料により打ち放しコンクリート表面を覆う表面保護塗膜が形成されるので、保護作用が確実で長期にわたって耐久性を維持するばかりか下塗り用塗料が自然の風合いを損なわない半透明性であるとともにその上に耐候性を有する模様付け用塗料によりコンクリート模様を描くことから自然に形成された模様を形成するコンクリート面が隠蔽されずに表面保護塗膜ならびに模様を有する仕上げ塗膜を透して見えるので打ち放しコンクリートのテキスチャーを活かすことができる。
【0017】
また、本発明は、従来のように打ち放しコンクリート表面の模様を付した仕上げ塗膜の上にクリアー塗料を塗布しないことから、コンクリート打ち放し表面の模様を塗装した仕上げ塗膜は従来のように表面をクリアー塗料により塗装しないのでクリアー塗料により塗装すると補修塗りを施した個所と施さない箇所との吸収の違いにより色合いが変わることがなく、予めそれを見越して非常に高度の技量を要求される色合わせする必要もないので熟練者でなくても施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の好ましい実施の形態において仕上げ施工された打ち放しコンクリート表面の断面概略部分図。
【
図2】本発明において仕上げ塗料を用いてコンクリート模様を塗布する際に用いられる塗布具の一例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0020】
図1は本発明の好ましい実施の形態である打ち放しコンクリートの仕上げ方法により形成される仕上げ面を示すものであり、初めに
図1(a)に示すようにコンクリート製の構造物1の打ち放しコンクリート表面11の全面に下塗り用塗料21を塗布して表面保護塗膜2で覆う。
【0021】
例えばスプレーガン22或いは
図2に示した底面である塗布面41,基台42,掴み部43が例えばゴム材やスポンジ材などの弾性を有する素材により形成されたスタンプ状の塗布具4により塗布することにより凹凸が形成されている打ち放しコンクリート表面11にも邑なく塗布することで確実に全面を表面保護塗膜2で覆うことができる。
【0022】
殊に、本実施の形態では、表面保護塗膜2は耐候性を有する樹脂成分を含有しているので耐候性に富み、また、セメントと反応する顔料を含んでいないことから打ち放しコンクリート表面11が劣化せず、更に、透明または半透明であることから下地となる自然に形成された模様を形成する打ち放しコンクリート表面11の模様が隠蔽されずに表面保護塗膜2を透して見えるので打ち放しコンクリートのテキスチャーを活かした美観を表現すことができる。
【0023】
そして、本実施の形態では、次に、
図1(b)に示すように前記表面保護塗膜2上にセメント系の材料からなる顔料成分ならびに前記
図1(a)に示した下塗り用塗料21に配合したものと同様な耐候性を有する樹脂成分を含有する半透明の模様付け用塗料31を用いて
図1(c)に示すように前記表面保護塗膜2上にコンクリート模様調の仕上げ塗膜3を形成する。
【0024】
本実施の形態では、模様付け用塗料31を用いて表面保護塗膜2上にコンクリート模様調の仕上げ塗膜3を形成する際に、前記
図2に示したスタンプ状の塗布具4を用いて模様付け用塗料31を前記表面保護塗膜2上に押し当てることにより塗布することで、例えば従来の不織布などの塗布具を用いる場合に比べて確実に且つ熟練を要さずに模様付け用塗料を用いて容易に型枠を外した打ち放しコンクリート表面のような規則性のない模様を描くことができる。
【0025】
この本実施の形態に使用されるスタンプ状の塗布具4は、底面である塗布面41がゴムやスポンジなどの弾性材により形成されているのでセメント材を配合してある模様付け用塗料31を確実に保持させて表面保護塗膜2の表面に押しつけることで打ち放しコンクリート表面11に酷似の模様を呈する仕上げ塗膜3を形成することが可能である。
【0026】
このように本実施の形態により施工された打ち放しコンクリート表面11の塗装方法によると、打ち放しコンクリート表面11は全面が耐候性を有するとともに顔料を一定以上の濃度含有していない半透明な表面保護塗膜2により覆われるので打ち放しコンクリート表面11が長期にわたって劣化しない。また、その上に形成される仕上げ塗膜3も超長期の耐候性を有する樹脂成分を含んでいるので長期の使用に耐えることができる。
【0027】
また、下塗り用塗料21または模様付け用塗料31に、光触媒または界面活性剤の少なくとも一方を含有させて施工することで仕上げ面に親水性を付与してセルフクリーニング機能を持たせることができる。
【0028】
尚、本実施の形態では塗布具4として塗布面41が角型を呈する形状のものを用いたが、例えば円形や楕円形など他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 構造物、2 表面保護塗膜、3 仕上げ塗膜、4 塗布具、11 打ち放しコンクリート表面、21 下塗り用塗料、22 スプレーガン、31 模様付け用塗料、41 塗布面、42 基台、43 掴み部