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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】部屋の臭気低減施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20230316BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20230316BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
E04G23/02 H
A61L9/00
E04F13/07 C
E04G23/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019057474
(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020159000
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年4月24日発行の、刊行物である第35回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集にて、住宅における臭気物質汚染の実態とその低減対策技術に関する研究(その2)、新型空気清浄装置を用いた脱臭技術(1)を公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年4月24日発行の、刊行物である第35回空気清浄とコンタミネーションコントロール研究大会予稿集にて、住宅における臭気物質汚染の実態とその低減対策技術に関する研究(その3)、新型空気清浄装置を用いた脱臭技術(2)を公開。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年5月30日に、ウェブサイト 住まいのニオイ根絶.com、アドレス https://www.sumainonioikonzetsu.com/ にて、部屋の臭気低減施工方法の概略を掲載。
(73)【特許権者】
【識別番号】513164794
【氏名又は名称】ナオス・テック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000150006
【氏名又は名称】日本総合住生活株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504306002
【氏名又は名称】独立行政法人都市再生機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088096
【弁理士】
【氏名又は名称】福森 久夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 喜政
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 竜二
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏行
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-110436(JP,A)
【文献】特許第6624753(JP,B1)
【文献】特開2005-61836(JP,A)
【文献】特開2001-193974(JP,A)
【文献】特開平11-128645(JP,A)
【文献】特開平11-81159(JP,A)
【文献】特開昭46-6049(JP,A)
【文献】特開平1-288267(JP,A)
【文献】特殊清掃『タカフジ』のスタッフblog,2013年07月24日,t-tokusyuseisou.com/blog/2013/07
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
A61L 9/00
E04F 13/07
B01D 53/02
E04B 1/682
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気の原因物質を測定する第一の測定工程と、
前記原因物質を除去する第一の臭気低減工程を有し、
前記第一の臭気低減工程は化粧材および/または焼損部を除去する工程と、
少なくとも一種類以上から選択された消臭消毒用薬剤を部屋全体に噴霧する工程と、
前記消臭消毒用薬剤の噴霧後に少なくとも1回以上ベイクアウトを行う工程と、
前記ベイクアウトによって揮発した前記臭気の原因物質を吸着手段により吸着する工程からなり、
前記第一の臭気低減工程が前記第一の測定工程から得られた前記原因物質の量に基づいて決定され、
前記第一の臭気低減工程の後に前記臭気の原因物質を再測定する第二の測定工程を有し、
ガスバリア性を有する積層シートを部屋の壁面・天井・床に隙間なく貼り付ける第二の臭気低減工程を有することを特徴とする部屋の臭気低減施工方法。
【請求項2】
前記第一の臭気低減工程に用いる前記消臭消毒用薬剤は次亜塩素酸ナトリウム、クエン酸、酢酸、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素水、セスキ炭酸ソーダから選択されることを特徴とする請求項1記載の部屋の臭気低減施工方法。
【請求項3】
前記吸着手段は、活性炭を備えた空気清浄機であることを特徴とする請求項1又は2記載の部屋の臭気低減施工方法。
【請求項4】
前記第二の臭気低減工程が前記ガスバリア性を有する積層シートを部屋の壁面・天井・床に隙間なく貼り付ける工程と前記部屋の壁面・天井・床の角を変性シリコンでラッピングする工程と、それらを組み合わせた工程とを有することを特徴とする請求項1乃至3記載の部屋の臭気低減施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋の臭気低減施工方法に係り、特にリフォーム工事における部屋内の悪臭低減施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の臭いの問題は賃貸・不動産物件の営業・販売活動の大きな支障となり問題になっている。このような住環境の問題はシックハウス症候群の原因となるアセトアルデヒド、ホルムアルデヒドだけでなく、ペット臭、タバコ臭といった生活臭、ごみ屋敷問題などの廃棄物由来の臭い、孤独死の増加による死臭といった種々の臭いが存在し、このような臭いは元の所有者が退去した後も臭気が残留することが多く課題となっている。
【0003】
この為、退去後のリフォームにて消臭消毒用の薬剤を撒く、汚染箇所の部材を交換する手法を取ることがある。
しかしながら、薬剤のみでは臭い物質を完全に臭いを除去することはできず、臭いを感じなくなるまで薬剤を使用すると時間と費用がかかってしまうなどの問題があった。
【0004】
また、現在主流の消臭法としてオゾン消臭法があげられるが、強い消臭効果の反面、濃度が濃いと人体に悪影響を与えるなどの問題がある。さらに空気中の消臭効果はあるものの、壁、床に浸みこんだ異臭が取り切れず、臭い物質が再び飛散してしまうなどの報告もある。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-33090
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題を鑑みて発明されたものであり、高い消臭性・防臭性と経済性に優れた部屋の臭気低減施工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の部屋の臭気低減施工方法は、臭気の原因物質を測定する第一の測定工程と、前記原因物質を除去する第一の臭気低減工程を有し、前記第一の臭気低減工程は化粧材および/または焼損部を除去する工程と、少なくとも一種類以上から選択された消臭消毒用薬剤を部屋全体に噴霧する工程と、前記消臭消毒用薬剤の噴霧後に少なくとも1回以上ベイクアウトを行う工程と、前記ベイクアウトによって揮発した前記臭気の原因物質を吸着手段により吸着する工程からなり、前記第一の臭気低減工程が前記第一の測定工程から得られた前記原因物質の量に基づいて決定され、前記第一の臭気低減工程の後に前記臭気原因物質を再測定する第二の測定工程を有し、ガスバリア性を有する積層シートを部屋の壁面・天井・床に隙間なく貼り付ける第二の臭気低減工程を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の部屋の臭気低減施工方法は、前記第一の臭気低減工程に用いる前記消臭消毒用薬剤は次亜塩素酸ナトリウム、クエン酸、酢酸、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素水、セスキ炭酸ソーダから選択されることが好ましい。
【0009】
本発明の部屋の臭気低減施工方法は、前記吸着手段は、活性炭を備えた空気清浄機であることが好ましい。
【0010】
本発明の部屋の臭気低減施工方法は、前記第二の臭気低減工程が前記ガスバリア性を有する積層シートを部屋の壁面・天井・床に隙間なく貼り付ける工程と前記部屋の壁面・天井・床の角を変性シリコンでラッピングする工程と、それらを組み合わせた工程とを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、臭気の原因物質を定量的に特定し、ガスバリア性を有する積層シートによって臭いを遮断できる程度まで過不足なく原因物質を低減することができる臭気低減施工方法を提供することができる。
また、本願発明はガスバリア性を有する積層シートを仕上げに用いるため、新たな臭いの原因物質のほとんどが積層シートまでしか到達せず、再びリフォーム工事を行った場合、消臭に掛かる時間と費用が抑えられるという利点がある。
【0012】
また、本発明によれば、吸着手段に活性炭を用いることでリフォーム工事中に悪臭が必要以上に飛散しないという効果を有する。
さらに、本発明によれば、変性シリコンを併用することで住居の複雑な構造部分やガスバリア性を有する積層シートの隙間を埋めることができるのでより強い防臭効果を得られるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例における、基本的工程を示す図である。
図2】本発明の実施例における、化学分析の一例を示す図である。
図3】本発明の実施例における、変性シリコンを用いた施工の例を示す図である。
図4】本発明の実施例における、積層シートを用いた施工の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の部屋の臭気低減施工方法について以下の通り説明する。
【実施例
【0015】
図1は本願発明の基本的工程を示した図である。
【0016】
(工程I)第一の測定工程
本工程は室内の空気を捕集し、化学分析を行う工程である。
室内の空気は厚生労働省「室内空気中化学物質の採取方法と測定方法」に従い、FL+1.2 m の位置で各対象ガスに対応した吸着剤とサンプリングポンプを用いて捕集した。
【0017】
上記の捕集した空気についてクロマトグラフィーによる化学分析を行う。
測定方法:サンプリングポンプにて捕集した試料を用いて精密化学分析を行った。
DCMS:ガスクロマトグラフ室量分析計(VOC)
HPLC:高速液体クロマトグラフ(アルデヒド類)
IC:イオンクロマトグラフト(アンモニア・ギ酸など)

本化学分析によりVOC(48 物質:エタノール、アセトン、2-プロパノール、ジクロロメタン、1-プロパノール、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ヘキサン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、2,4-ジメチルペンタン、ブタノール、ベンゼン、1,2-ジクロロプロパン、ブロモジクロロメタン、トリクロロエチレン、2,2,4-トリメチルペンタン、ヘプタン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ジブロモクロロメタン、酢酸ブチル、オクタン、テトラクロロエチレン、エチルベンゼン、m,p-キシレン、スチレン、o-キシレン、ノナン、α-ピネン、m,p-エチルトルエン、1,3,5-トリメチルベンゼン、o-エチルトルエン、β-ピネン、1,2,4-トリメチルベンゼン、デカン、パラジクロロベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、リモネン、ノナナール、ウンデカン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、デカナール、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン、)、アルデヒド類(14 物質:ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、プロピオンアルデヒド、クロトンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、イソバレルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、o-トルアルデヒド、m-トルアルデヒド、p-トルアルデヒド、ヘキサアルデヒド、2,5-ジメチルベンズアルデヒド、)、アンモニア、酢酸、ギ酸、テキサノール、TXIB、2-エチル-1-ヘキサノール、プロピオン酸、酪酸、イソ吉草酸、トリメチルアミン、硫黄化合物(メチルメル カプタン、硫化水素、硫化メチル、二硫化メチル)、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、2-メチルプロピオン酸、ヘキサノール、ヘキサメチルシクロトリソロキサン、3-メチル酪酸、2-メチル酪酸、カプロン酸、2,2,3,5-テトラメチルヘプタン、オクタナール、1,4-ジクロロベンゼン、デカメチルシクロペンタシロキサン、トリエトキシフルオロシラン、ジメトキシ(メチル)シラン、5-ヘプタン-2-オン,6-メチル、3-tert-ブチル-5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、レボメントール、1-モノリノレイン,トリメチルシリルエステル、ジ-n-ヘキシルスルフィド、ケイ酸,ジエチルビス(トリメチルシリル)エステル、ヘキサン2.4-メチル、プロピルシクロヘキサン、オクタン2.6-ジメチル、プロピルベンゼン、1-ペンタナール、2-ヘキサナール、2-Heptenal、エナント酸、吉草酸、2-ノネナール、3-メチルブタナール、ヘキサナール、(E)-2-ヘキセナール、(Z)-4-ヘプテナール、(E)-2-オクテナール、(E)-2-ノネナール、(E,Z)-2,6-ノナジエナール、(E,E)-2,4-デカジエナール、フェニルアセトアルデヒド、2-ヘプタノン、2-オクタノン、ペンタン酸、2-アセチル-3-ヒドロキシフラン、3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピロン、フルフラール、5-メチルフルフラール、2-アセチルフラン、4-ヘキサノリド、2-ヘキセン-4-オリド、3-ヘキセン-4-オリド、2-アセチルピリジン、2-アセチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリジン、アセチルピラジン2-エチル-3-メチルピラジン、ジエチルメチルピラジン、5-メチル-(5H)-シクロペンタ[b]ピラジン、2,5-ジメチル-3-エチルピラジン、2,6-ジメチル-3-エチルピラジン、2,3,5-トリメチルピラジン、アセトフェノン、フェノール、桂皮アルデヒド、メタンチオール、硫化ジメチル、ジアセチル、ペンタノン-2、ペンタナール、2-メチルプロピルメルカプタン、メチルイソチオシアネート、ジメチルジスルフィド、4-ペンテンニトリル、2-メチルブタノール-1、ヘキサノン-2、エチルイソチオシアネート、2,4-ジチアペンタン、ヘプタノン-2、ヘプタナール、2,3,4-トリチアペンタン、3-ブテニルイソチオシアネート、ベンゾニトリル、オクタノン-2、ノナノン-2、p-クレゾール、ナフタレン、(E,E)-2,4-ノナジエナール、ベンズチアゾール、4-オクタノリド、5-オクタノリド、デカノール-1、ウンデカノン-2、4-デカノリド、5-デカノリド、トリデカノン-2、4-ドデカノリド、5-ドデカノリド、2-ペンテナール、1-ペンテン-3-オン、1-ペンテン-3-オール、(Z)-2-ヘキセナール、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、3-オクタノン、1-オクテン-3-オン、(Z)-1,5-オクタジエン-3-オン、3-オクタノール、(Z)-1,5-オクタジエン-3-オール、(Z)-2-オクテン-1-オール、(E,Z)-2,5-オクタジエン-1-オール、 (Z)-3-ノネナール、(Z,Z)-3,6-ノナジエナール、(Z)-2-ノネン-1-オール、(Z)-6-ノネン-1-オール、(E,Z)-2,6-ノナジエン-1-オール、(Z,Z)-3,6-ノナジエン-1-オール、2-メチルプロパノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチルブタノール、2-ペンタノール、2-オクタノール、1-オクテン-3-オール、2-ノナノール、2-デカノール、2-フェニルエタノール、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、リナロール、ゲラニオール、フムレノール II、二酸化炭素、(d+l)-2-ヒドロキシプロパン酸、2-オキソプロパン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸、2-フェニル酢酸、4-ヒドロキシ-3-メトキシ安息香酸、酢酸2-ブチル、酢酸2-メチルプロピル、酢酸2-メチルブチル、酢酸3-メチルブチル、酢酸2-フェネチル、ブタン酸エチル、2-メチルブタン酸エチル、3-メチルブタン酸エチル、ヘキサン酸エチル、オクタン酸エチル、デカン酸エチル、ドデカン酸エチル、テトラデカン酸エチル、ヘキサン酸3-メチルブチル、オクタン酸3-メチルブチル、2-メチルプロパン酸ゲラニル、ブタナール、2-メチルプロパナール、2-メチルブタナール、 (E)-2-ノナナール、ドデカナール、2-オキソプロパナールl、ヒドロキシプロパノン、3-ヒドロキシ-2-ブタノン、2,3-ブタンジオン、2,3-ペンタンジオン、2-ノナノン、β-ダマセノン、β-イオノン、フムラジエノン、2-アミノアセトフェノン、N-メチルチラミン、ニコチン酸エチル、2,3-ジメチルピラジン、2,5-ジメチルピラジン、2,6-ジメチルピラジン、二酸化硫黄、エタンチオール、メチルチオメタン、メチルジチオメタン、メチルトリチオメタン、エチルチオエタン、エチルジチオエタン、2-(メチルチオ)-2-プロパンチオール、3-(メチルチオ)-1-プロパノール、3-メチル-2-ブテン-1-チオール、3-(メチルチオ)-プロパナール、2-メルカプト-3-メチル-1-ブタノール、酢酸3-(メチルチオ)プロピル、(1-メチルエチル)-チイラン、2-メトキシ-4-ビニルフェノール、4-ヒドロキシブタン酸ラクトン、4-ヒドロキシペンタン酸ラクトン、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン、ミルセン、フムレンエポキシドI、ホップエーテル、カラハナエーテル、1,1-ジエトキシエタン、2-エチル-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン、3-イソプロピル-2-メトキシピラジン、4,4,6-トリメチル-1,3-ジオキサン、2,2,6-トリメチル-1,5-ジオキサン、2,2,4,5-テトラメチル-1,3-ジオキサン、2-エテニル-2,5-ジメチル-1,3-ジオキサン、4-メチル-4-メルカプトペンタン-2-オン、4-フェニルシクロヘキセン、ベンゾフェノン、脂肪酸、酢酸アルキル、アルキル置換ベンゼン、α-メチルスチレン、クロロクレゾール、クメン、シクロヘキサノン、ジ/トリブロモフェノール、ジクロロベンゼン、硫化ジフェニル、グリコールエステル、グアヤコール、イソフォロン、メチルベンズアルデヒド、安息香酸メチル、n-プロピルベンゼン、ペンタン-1,2-ジオン、プロピレングリコールモノブチルエーテル、チオグリコール酸アルキルエステル、トリブロモアニソール、トリクロロアニソール、トリメチルアニソール、乳酸、ペプチド類、アセトイン、2-メチルブチル酢酸、三硫化ジメチル、脂肪族アルコールとアルデヒド、チオ酢酸メチル、ゲオスミン、2-メチルイソボルネオール、4-ビニルグアヤコール、スカトール、2-メチルフラン、2-ペンチルフラン、2-ヒドロキシメチルフラン、2-カルボキシアルデヒドフラン、5-CH2OH-2-CHOフラン、2-メタンチオールフラン、3-ヒドロキシ-4-エチル-5-メチル2(5H)-フラノン、2,5-ジメチル-4-メトキシ 3(2H)-フラノン、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル3(2H)-フラノン、2-メチル-3-ヒドロキシ 4H-ピラン-4-オン、2-CH2COCH3 ピロール、2-エチルピラジン、2-イソブチルピラジン、2-メチル-6-プロピルピラジン、2-イソブチル-3-メチルピラジン、2,3-ジメチル-5-エチルピラジン、2-メトキシ-3-メチルピラジン、2-エトキシ-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-5-メトキシピラジン、2-イソブチル-5-メトキシピラジン、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジン、2,5-ジメチルチオフェン、2-アセチルチオフェン、5-メチル-2-CHO チオフェン、3,5-ジメチル、 1,2,4-トリチオラン、3-メチル 1,3,5-トリチオラン、2-イソブチルチアゾール、2-アセチルチアゾール、4-エチル-5-プロピルチアゾール、(Z)-ヘキセナール、(E)-2-ヘプテナール、(Z)-2-オクテナール、 (Z)-2-ノネナール、(E,Z)-2,4-ヘプタジエナール、(E,E)-2,4-ヘプタジエナール、 (E,Z)-2,4-デカジエナール、2,6-ジメチル-3-メトキシピラジン、2-メトキシ-3-イソプロピルピラジン、2,4-ジクロロアニソール、2,6-ジクロロアニソール、2,3,6-トリクロロアニソール、2,3,4,6-テトラクロロアニソール、ペンタクロロアニソール、2,4,6-トリブロモアニソール、オクタ-1,3-ジエン、α-テルピネオール、ヘプタン-2-オン、trans,trans-ヘプタ-2,4-ジエナール、2-(2-ペンテニル)フラン、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、trans-2-ノネナール、オクト-1-エン-3-オン、trans-1,3-ペンタジエン、trans-3-ヘキセナール、cis-3-ヘキセナール、trans-2-ヘプテナール、cis-6-ヘプテナール、trans-2-オクテナール、trans-5-オクテナール、cis-5-オクテナール、trans-7-ノネナール、(Z)-3-ヘキセナール、メチオナール、(E,Z)-3,6-ノナジエナール、ジオスミン、カジネンオール、イソプロピルメチルピラジン、2,4,6-トリクロロアニソール、2-イソブチル-3-メトキシピラジン、2-イソプロピル-3-メトキシピラジン、n-ヘキサナール、n-ヘプタナール、2-trans,4-cis,7-cis-デカジエナール、デカジエナール、メルカプタン、ジメチルポリスルフィド、ジメチルトリスルフィド、インドール、クロロフェノール類、遊離塩素、アルデヒド(低分子量)、ヨウ化トリハロメタン、酢酸cis-3-ヘキセン-1-オール、cis-3-ヘキセン-1-オール、アルデヒド(高分子量)、フェノール性抗酸化物質、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、モノクロラミン、ジクロラミン、トリクロラミン、カプリン酸、ラウリン酸、炭素数9-11のアルカナール、炭素数が7または10の2位に二重結合があるアルケナール、炭素数が7または10の2位と4位に二重結合があるジエナール、ノナ-2-t-,6-t-ジエナール、アルカナール(C5-C7)、ヘキセナール、2,4-ジエナール(C5-C10)、ペンテニルフラン、アルカナール(C5-C10)、アルク-2-エナール(C5-C10)、ヘプタジエナール、ヘプタノン、ペント-2-t-エナール、ブテナール、ヘプト-2-エナー
ル、アルカノール(C2-C9)、2-アルカノン(C3-C11)、デカ-2-t,4-c,7-t-トリエナール、2-トランスヘキセナール、ノナ-2,6-ジエナール、2位シスのペンテニルフラン、2-t,4-c-ヘプタジエナール、2-t,4-t-ヘプタジエナール、アルカナール, 2-エナールではない、2-t,4-t-デカジエナール、2-t,4-c-デカジエナール、オクト-1-エン-3-オール、ノン-2-t-,6-c-ジエナール、ノナ-2-t-エナール、ノナ-3-c,6-c-ジエナール、ノン-6-c-エナール、ペンタ-2,4-ジエナール、オクト-2-エナール、ペント-1-エン-3-オン、2-t-ペンテニルフラン、揮発性脂肪酸(C4-C10)、2-t,4-t-オクタジエナール、2-t,2-c-オクテナール、ヘプテナール、2-c-ペンテニルフラン、アルカナール(C5,C6,C8,C10)、脂肪族エステル、イソ酪酸、3-c-ヘキセナール、4-c-ヘプテナール、6-t-ノネナール、2-t-1-ペンテニルフラン、2-c-1-ペンテニルフラン、5-ペンテニル-2-フルアルデヒド、アルカナール(C7-C9)、trans-4,5-エポキシ-t-2-ノネナール、trans-4,5-エポキシ-t-2-デセナール、1-オクテン-3-ヒドロキシペルオキシド、cis-1,5-オクタジエン-3-ヒドロキシペルオキシド、cis-1,5-オクタジエン-3-オン、2-ブタノン、2-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ブテン-2-オン、1-c-5-オクタジエン-3-オン、3-t,5-t-オクタジエン-2-オン、3-t,5-c-オクタジエン-2-オン、3,5-ウンデカジエン-2-オン、1-ブタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、2-ヘキサノール、2-ヘプタノール、2-t-ヘキセン-1-オール、2-t-オクテン-1-オール、1-ヘキセン-3-オール、カプリル酸、ペナタナール、メチルヘキサナール、メチルヘキサノン、メチルヘプテノン、オクテノール、ペンチルフラン、シメン、ノネナール、メチルイソボルネオール、ノナジエナール、デセナール、cis trans-2,4-デカジエナール、trans trans-2,4-デカジエナールの436物質について定量化を行う。
【0018】
(工程II)手順の選択・決定
本工程は工程Iで得られた化学分析の結果に基づき消臭方法を決定する工程である。
図2に本発明の長期間遺体が放置された部屋における化学分析の一部である。
図2より死臭によるものの場合、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナールなどのアルデヒド類、カプリル酸やエナント酸などの脂肪酸が主体であることがわかる。したがって、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒工程に加えて過酸化水素水を噴霧する工程を加える選択を行う。
【0019】
また、ペット臭が原因となる場合は、アンモニア、プロピオン酸、カプロン酸、酪酸、デカメチルシクロペンタシロキサンなどが主体であるため、クエン酸主体の消臭を繰り返し行う工程を追加する選択を行う。
【0020】
また、タバコ臭が原因となる場合は、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ベンゼン、ヘプタン、トルエン、エチルベンゼン、m,p-キシレン、スチレン、o-キシレン、ノナン、m,p-エチルトルエン、1,3,5-トリメチルベンゼン、o-エチルトルエン、1,2,4-トリメチルベンゼン、デカン、1,2,3-トリメチルベンゼン、リモネンが主体であるため、過酸化水素水を噴霧する工程を加えることが有効であるため、過酸化水素水を噴霧する工程を加える選択を行う。
【0021】
さらに、火災臭が原因となる場合は、火災の履歴から明らかなので、その場合は焦げ跡が部屋中に広がっているため、消臭前にグラインダーで焦げ跡を削る工程とクエン酸による消臭工程を追加する選択を行う。
このように、得られた化学分析の結果に基づいて工程IIIの作業手順を決定する。
【0022】
(工程III)第一の臭気低減工程
本工程は基本消臭工程と、工程IIで追加された工程とで室内の消臭作業を行う工程である。基本消臭工程は以下の通り示す。
【0023】
(1)空気清浄機の搬入
部屋の大きさ・臭いの強さに応じた空気清浄機の搬入する。
搬入する空気清浄機は活性炭などを用いた吸着式の空気清浄機が好ましい。
【0024】
(2)壁紙剥がし
壁紙を内紙まで剥がす。壁紙は臭いがしみ込んでいるため内紙まで剥がす必要がある。
【0025】
(3)次亜塩素酸ナトリウム溶液の噴霧
次亜塩素酸ナトリウムを部屋全体に噴霧機で噴霧する。本工程で部屋全体の細菌の除去、ウィルスを死活化させる。
この際、使用した次亜塩素酸ナトリウム溶液は0.5~10wt%であった。
【0026】
(4)クエン酸溶液の噴霧
クエン酸を部屋全体に噴霧器で噴霧する。アルカリ性の人尿臭、ペット尿臭、生臭い魚臭、タバコ臭、火災臭を酸性で中和させ臭いを除去する。また細菌の増殖を抑える殺菌効果で汚れを落としながら消臭や除菌を行う。
この際、使用したクエン酸水溶液3.85wt%であるが、臭いが強い場合はクエン酸原粉をそのまま用いてもよい。
【0027】
(5)ベイクアウト
部屋全体をヒータ等で加熱し、噴霧器で水を噴霧しベイクアウトを行う。この工程により部屋にしみ込んでいる臭い原因物質を揮発させて空気清浄機によって臭い原因物質を吸着する。
ベイクアウト条件
35℃・湿度60%の場合、
ベイクアウト時間 6時間~8時間 ベイクアウト日数 3~5日間
40℃・湿度90%の場合、
ベイクアウト時間 6時間~8時間 ベイクアウト日数 2~4日間
ベイクアウト条件は高温多湿であるほど強い脱臭効果を得られる。
【0028】
(6)炭酸水素ナトリウム溶液の噴霧
炭酸水素ナトリウム溶液を部屋全体に噴霧機で噴霧する。
酸性の油汚れ臭・汚れなどを除去し、悪臭を低減する。
この際、使用した炭酸水素ナトリウム水溶液3.85wt%であるが、臭いが強い場合は炭酸水素ナトリウム原粉をそのまま用いてもよい。なお、クエン酸に替えてセスキ炭酸ソーダを用いてもよい。
【0029】
(7)ベイクアウト
再び部屋全体をヒータで加熱しベイクアウトを行う。
ベイクアウト条件は工程(5)と同じである。
【0030】
(8)繰り返し処理
通常は1回では臭いを除去できない為、工程(3)~(7)を繰り返して消臭する。
軽度・中程度の臭いであれば1回~2回、重度の臭いであれば3回~10回が好ましい。
【0031】
(工程IV)第二の測定工程
第二の測定工程では6段階臭気強度表示法による官能評価を行う。
臭気強度(6段階臭気強度表示法による評価)
0:無臭
1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
2:何のにおいであるかわかる弱いにおい(認知閾値)
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
環境省 臭気指数規制ガイドライン 表-2より
ガスバリア性を有する積層シート(以下積層シートと記載する)の物理特性を考慮し、第一の臭気低減工程である工程IIIを繰り返すか判断を行う。臭気強度が1まで下がってよいが、ここで臭気の低減が十分ではない場合、工程IIIに戻り再度消臭を行う。
【0032】
特に臭いが強い場合は、原因特定のために工程Iと同じように室内の空気を捕集し、その場で化学分析を行ってもよい。
化学分析により特定の臭い物質が残留している場合は特にその物質に対しての消臭を重点的に行うように工程を再設定する。
【0033】
(工程V)第二の臭気低減工程
本工程において天井、壁、床に積層シートを貼りつけて封止する工程である。
図3にそれぞれ天井、壁面、段差部、玄関部分の床面(玄関ポーチ)の貼り付け例を示す。
本実施例に用いる積層シートは、市販のガスバリア性を有する積層シートを用いた。
ベースとなるフィルム(PET、ナイロンなど)の上に、バリアコート層と無機蒸着バリア層(アルミナもしくはシリカ)が積層されているコーティング層と蒸着層を組み合わせた多層構造を有した積層シートである。
使用した積層シートの有無による臭いの原因物質の放散速度特性を表1に示す。
【表1】
【0034】
必要に応じて天井・壁・床の角など積層シートの貼り付け困難な箇所・シートと併用した方が良い箇所などに変性シリコン剤を塗布して臭いを遮断する。
具体的な施工の例を図3に示す。
図4(a)は根太の下のコンクリートスラブに臭気の原因物質が残っていたため、低減処理後、変性シリコンにてコンクリートスラブにラッピングした。
図4(b)臭気の原因物質が玄関ポーチに残っていたため、低減処理後、玄関ポーチの細かな部分に変性シリコンを用いてラッピングした。
図4(c)臭気の原因物質が床に残っていたため、低減処理後、床枠と床をそれぞれ変成シリコン及び積層シートでラッピングした。
図4(d)臭気の原因物質が床に残っていたため、低減処理後、配管回りと床に変性シリコンを用いてラッピングした。
図4(e)臭気の原因物質が窓枠下に残っていたため、低減処理後、窓枠下に変性シリコンを用いてラッピングした。
図4(f)臭気の原因物質が細かい配線のある床に残っていたため、低減処理後、変性シリコンを用いてラッピングした。
【0035】
(工程VI)仕上げ
工程IVと同じように室内の空気を捕集し、その場で化学分析を行い臭気が低減されているかどうか確認する。基準となる数値を下回っていれば仕上げを行う。
【0036】
本願発明の部屋の臭気低減施工を行った後は、積層シートの内側の壁、スラブは積層シートによって臭い物質から保護されるので、再施工時は最低限の消臭と積層シートのはり替えのみで済ませることができるので経済的である。
【0037】
(実施例1)
長期間遺体が放置されたRC造集合住宅/内部木造(築41年)にて臭気低減施工を実施した。
低減対策前の測定では、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、ヘキサアルデヒド、ヘプタナール、オクタナールなどが比較的顕著に発生していた。
そこで、基本消臭工程(3)の次亜塩素酸ナトリウムによる消毒工程の後に、過酸化水素水を噴霧する工程とクエン酸、重曹を使用する工程を選択し、臭気低減施工を実施した。
対策前後の室内濃度を比較したものを表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
臭気低減施工を実施後、低減対策前に最も室内濃度が高かったヘキサアルデヒド(1440μg/m)は、対策後には1.2μg/mとなり、99.9%濃度低減した。その他の物質においても、濃度低減率は86.4~99.5%と顕著に減衰しており、パネル(6名)による官能評価においても、臭気強度は対策前の4.5に対して、対策後では1に減少しており、臭気低減施工の効果が認められた。
【0040】
(実施例2)
室内でペットが飼育されており、かつ大量の廃棄物が長期間放置されたRC造集合住宅/内部木造(築22年)にて臭気低減施工を実施した。
低減対策前の測定で、アンモニア、酢酸、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトンなどが高く検出された。
そこで、アンモニア類は基本消臭工程(4)のクエン酸水溶液の噴霧工程において、クエン酸水溶液3.85wt%を5回噴霧、クエン酸原粉による消臭工程を2回にする工程を、ギ酸、酢酸などは炭酸水素ナトリウムを用いる選択を行い、臭気低減施工を実施した。
対策前後の室内濃度を比較したものを表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
低減対策前の測定では、アンモニア、酢酸、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトンの濃度が比較的高かったが、最も室内濃度が高かったアンモニアは、低減対策後には13.9μg/mとなり、85.3%室内濃度が低減した。その他の物質においても、測定された40物質について全ての物質において濃度は低減していた。パネル(6名)による官能評価においても、臭気強度は対策前の4に対して、対策後では1に減少しており、臭気低減施工の効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、臭気の原因物質を定量的に特定し、ガスバリア性を有する積層シートによって臭いを遮断できる程度まで過不足なく原因物質を低減することができるため、消臭消毒用の薬剤を節約することが可能となる臭気低減施工方法を提供することができる。
【0044】
また、本願発明はガスバリア性を有する積層シートを仕上げに用いるため、新たな臭いの原因物質のほとんどが積層シートまでしか到達せず、再びリフォーム工事を行った場合、消臭に掛かる費用が抑えられるという利点がある。
【0045】
また、本発明によれば、吸着手段に活性炭を用いることでリフォーム工事中に悪臭が必要以上に飛散しないという効果を有する。
【0046】
さらに、本発明によれば、変性シリコンを併用することで住居の複雑な構造部分やガスバリア性を有する積層シートの隙間を埋めることができるのでより強い防臭効果を得られるという効果を有する。
図1
図2
図3
図4