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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】結晶成長方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20230316BHJP
   C30B 29/40 20060101ALI20230316BHJP
   C30B 29/06 20060101ALI20230316BHJP
   C30B 29/08 20060101ALI20230316BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20230316BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20230316BHJP
   C23C 14/14 20060101ALI20230316BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20230316BHJP
   C23C 14/02 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B29/40
C30B29/06
C30B29/08
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
C23C14/14 D
C23C16/24
C23C14/02 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019136855
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021009984
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】16/456,265
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】508280195
【氏名又は名称】ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(72)【発明者】
【氏名】雁木 比呂
(72)【発明者】
【氏名】黄 鐘日
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ケンパ
(72)【発明者】
【氏名】エリック トンプソン
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0181272(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0187276(US,A1)
【文献】特開2011-119612(JP,A)
【文献】特開2014-107546(JP,A)
【文献】特開昭59-181529(JP,A)
【文献】米国特許第06605535(US,B1)
【文献】特表2010-541194(JP,A)
【文献】特開平05-198636(JP,A)
【文献】特開2013-219203(JP,A)
【文献】特開平02-137353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C30B 29/40
C30B 29/06
C30B 29/08
H01L 29/78
H01L 29/12
C23C 14/14
C23C 16/24
C23C 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と側部とを含む孔を有する構造体の前記底部の少なくとも一部に第1元素を含む第1部材を形成する第1部材形成工程であって、前記第1部材形成工程において前記第1元素は前記側部の少なくとも一部に付着しない、前記第1部材形成工程と、
前記第1部材形成工程の後に、前記孔に第2元素を含む原料を供給して、前記孔中に前記第2元素を含む結晶部材を成長させる成長工程と、
前記第1部材形成工程の後で前記成長工程の前において、前記側部に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
を備えた、結晶成長方法。
【請求項2】
前記成長工程の前において、前記第1部材は、前記底部と接し、
前記成長工程の後において、前記結晶部材は、前記底部と接する、請求項1記載の結晶成長方法。
【請求項3】
前記結晶部材は、前記側部の少なくとも一部と接する、請求項1または2に記載の結晶成長方法。
【請求項4】
前記第1部材形成工程において、前記第1部材は固相であり、
前記成長工程において、前記第1部材は液相である、請求項1~3のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項5】
第1膜の少なくとも一部を除去する除去工程をさらに備え、
前記除去工程の前において、前記第1膜は、前記底部及び前記側部に設けられた、請求項1~4のいずれか1つの結晶成長方法。
【請求項6】
前記構造体は第3元素を含み、
前記第1膜は、前記第3元素を含む化合物を含む、請求項5記載の結晶成長方法。
【請求項7】
前記孔は、開口部をさらに含み、
前記底部から前記開口部への第1方向に沿う前記第1部材の長さは、前記第1方向と交差する第2方向に沿う前記開口部の長さの20%以上である、請求項1~6のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項8】
前記孔は、開口部をさらに含み、
前記底部から前記開口部への第1方向に沿う前記第1部材の長さは、前記第1方向と交差する第2方向に沿う前記第1部材の長さよりも長い、請求項1~6のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項9】
前記孔は、開口部をさらに含み、
前記底部から前記開口部への第1方向と交差する第2方向に沿う前記開口部の長さは、前記孔の前記第2方向に沿う長さの最大値よりも短い、請求項1~6のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項10】
前記孔は、開口部をさらに含み、
前記底部から前記開口部への第1方向に沿う前記第1部材の長さは、前記第1方向に沿う前記孔の深さの40%以上である、請求項1~6のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項11】
前記構造体は、
前記底部を含む第1領域と、
前記側部を含む第2領域と、
を含み、
前記結晶部材の結晶方位は、前記第1領域の結晶方位に沿い、
前記結晶部材の前記結晶方位は、前記第2領域の結晶方位に沿う、請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項12】
前記第1元素は、Au、Al、Ag、Bi、Cd、Co、Cu、Dy、Fe、Ga、Gd、In、Mg、Mn、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Te、Ti及びZnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項13】
前記第2元素は、Si、Ge、Ga及びInよりなる群から選択された少なくとも1つを含む請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項14】
前記結晶部材は、Si、Ge、SiGe、GaAs、GaN及びInPよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項15】
前記原料は、P、B、As及びMgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第4元素を含む、請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項16】
前記原料の供給は、第1ガスの供給を含み、
前記第1ガスは、水素、窒素、アルゴン及びヘリウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【請求項17】
前記第1部材形成工程は、前記第1元素の蒸着、及び、前記第1元素のlong-throw sputteringの少なくともいずれかの実施を含む、請求項1~1のいずれか1つに記載の結晶成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、結晶成長方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置などにおいて、孔のなかに結晶を成長させる技術がある。このような結晶において、高品質の結晶が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第6605535号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、高品質の結晶を成長可能な結晶成長方法及び半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、結晶成長方法は、底部と側部とを含む孔を有する構造体の前記底部の少なくとも一部に第1元素を含む第1部材を形成する第1部材形成工程を含む。前記第1部材形成工程において前記第1元素は前記側部のすくなくとも一部に付着しない。前記結晶成長方法は、前記第1部材形成工程の後に、前記孔に第2元素を含む原料を供給して、前記孔中に前記第2元素を含む結晶部材を成長させる成長工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示するフローチャート図である。
図2図2(a)~図2(e)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式図である。
図3図3(a)及び図3(b)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式図である。
図4図4(a)~図4(h)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式的断面図である。
図5図5(a)~図5(e)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式的断面図である。
図6図6は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図7図7は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示するフローチャート図である。
図1に示すように、実施形態に係る結晶成長方法は、第1部材を形成する第1部材形成工程(ステップS110)、及び、結晶部材を成長させる成長工程(ステップS120)を含む。結晶成長方法は、第1膜を除去する除去工程(ステップS105)をさらに含んでもよい。後述するように、結晶成長方法は、絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程(ステップS115)をさらに含んでもよい。
【0009】
以下、これらの工程の例について説明する。
【0010】
図2(a)~図2(e)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式図である。
図2(a)、図2(b)、図2(d)及び図2(e)は、断面図である。図2(c)は、図2(b)の矢印AAからみた平面図である。図2(b)は、図2(c)のA1-A2線断面図である。
【0011】
図2(a)に示すように、構造体30が準備される。構造体30は、孔30Hを有する。孔30Hは、底部30B及び側部30Sを含む。孔30Hは、開口部30Pを含む。孔30Hは、凹部でもよい。構造体30は、結晶を含む。構造体30は、例えば、半導体を含む。
【0012】
この例では、第1膜35が設けられている。第1膜35は、底部30B及び側部30Sに設けられている。
【0013】
1つの例において、構造体30は、シリコンを含む。この場合、第1膜35は、シリコンを含む化合物を含む。例えば、第1膜35は、酸化シリコンを含む。
【0014】
既に説明したように、実施形態に係る結晶成長方法は、第1膜35の少なくとも一部を除去する除去工程(ステップS105:図1参照)を含んでもよい。例えば、第1膜35が酸化シリコンを含む場合、例えば、バッファード弗酸による処理が行われる。バッファード弗酸の処理の前に、酸素プラズマによる処理が実施されてもよい。このような処理により、酸化シリコンを含む第1膜35が除去される。バッファード弗酸による処理の時間は、例えば、30秒以上5分以下である。処理の時間は、例えば、第1膜35の材料及び厚さに依存しても良い。酸素プラズマ処理におけるパワーは、例えば、300W以上1000W以下である。酸素プラズマ処理の時間は、例えば、10秒以上2分以下である。
【0015】
例えば、第1膜35は、構造体30の表面が酸化されることにより形成される。第1膜35が設けられていない場合は、上記の除去工程(ステップS105)は省略できる。構造体30の材料の例、及び、第1膜35の材料の例については、後述する。
【0016】
第1膜35の除去により、構造体30が得られる(図2(b)参照)。構造体30は、孔30Hを有する。孔30Hは、底部30B、側部30S及び開口部30Pを含む。底部30Bから開口部30Pへの方向を第1方向とする。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0017】
図2(c)に示すように、孔30Hは、第2方向の長さW2、及び、第3方向の長さW3を有する。第2方向は、第1方向(Z軸方向)と交差する。この例では、第2方向は、X軸方向である。第3方向は、第1方向及び第2方向を含む平面と交差する。第3方向は、例えばY軸方向である。
【0018】
図2(c)に示すように、この例では、長さW2は、長さW3よりも短い。例えば、孔30Hは、「トレンチ」である。長さW2は、長さW3と実質的に同じでもよい。例えば、X-Y平面で切断したときの孔30Hの形状は、実質的に正方形または実質的に円形でもよい。以下では、長さW2は、長さW3以下とする。孔30Hにおいて、長さが短い方向が第2方向に対応する。長さが長い方向が第3方向に対応する。孔30Hは、例えば、トレンチ、または、ビアホールである。
【0019】
図2(b)に示すように、孔30Hの深さD1は、孔30Hの第1方向(Z軸方向)に沿う長さである。例えば、深さD1は、長さW2よりも大きい。実施形態において、例えば、孔30Hのアスペクト比が高い。アスペクト比は、例えば、長さW2に対する深さD1の比である。
【0020】
孔30Hは、例えば、構造体30となる部材の一部を除去することで形成される。除去は、例えば、ドライエッチングまたはウエットエッチングにより行われる。
【0021】
図2(b)に示すようには、構造体30は、第1領域31及び第2領域32を含む。第1領域31は、底部30Bを含む。第2領域32は、側部30Sを含む。この例では、第2領域32は、第1領域31と連続的である。例えば、第1領域31及び第2領域32は、シームレスである。構造体30は結晶を含み、第1領域31及び第2領域32も結晶を含む。第2領域32の結晶方位は、第1領域31の結晶方位と実質的に同じである。
【0022】
図2(d)に示すように、孔30Hの底部30Bに第1部材10を形成する。第1部材10は、第1元素を含む。第1元素は、例えば、Au、Al、Ag、Bi、Cd、Co、Cu、Dy、Fe、Ga、Gd、In、Mg、Mn、Ni、Os、Pb、Pd、Pt、Te、Ti及びZnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。結晶部材を成長させる成長工程(ステップS120)において、第1部材は、例えば、触媒として機能する。結晶部材がシリコンである場合、例えば、第1元素及び第1部材は、Auを含む。
【0023】
このように、第1部材形成工程(ステップS110)において、孔30Hを有する構造体30の底部30Bに第1元素を含む第1部材10を形成する。図2(d)に示すように、側部30Sの少なくとも一部は、第1部材10に覆われていない。例えば、第1部材10の形成において、第1元素は側部30Sに付着しない。例えば、第1部材10の形成において、第1元素は側部30Sの少なくとも一部に付着しない。例えば、第1部材10の形成において、第1部材10は側部30Sに付着しない。
【0024】
第1部材10は、例えば、第1元素の蒸着により形成される。第1部材形成工程(ステップS110)は、例えば、第1元素の蒸着、及び、第1元素の「Long Throw Sputtering」の少なくともいずれかの実施を含んでもよい。これらの方法においては、第1元素の進む方向の広がり角は小さい。第1元素は、例えば、Z軸方向に沿って、孔30Hの開口部30Pから孔30Hの中に入る。第1元素は、孔30Hの底部30Bに到達する。第1元素が側部30Sに付着することが抑制される。これにより、側部30Sの少なくとも一部は、第1部材10に覆われない。第1部材形成工程(図2(d)において)、例えば、第1部材10は固相である。
【0025】
図2(e)に示すように、成長工程(ステップS120)において、第1部材形成工程の後に、孔30Hに第2元素を含む原料を供給して、孔30H中に第2元素を含む結晶部材20を成長させる。原料の供給は、例えば、第1ガスの供給を含む。この成長工程は、高温で行われる。成長工程における温度は、例えば、360℃以上1500℃以下である。成長工程における温度は、例えば、第1元素及び第2元素を含む材料の共晶温度よりも高い。例えば、Au/Siの共晶温度は、363℃である。第1部材10が、Au及びSiを含む場合、温度は、例えば、360℃以上1500℃以下である。例えば、Al/Siの共晶温度は、577℃である。第1部材10が、Al及びSiを含む場合、温度は、例えば、557℃以上800℃以下である。例えば、Zn/Siの共晶温度は、419℃である。第1部材10が、Zn及びSiを含む場合、温度は、例えば、419℃以上1500℃以下である。例えば、Ti/Siの共晶温度は、1330℃である。第1部材10が、Ti及びSiを含む場合、温度は、例えば、1330℃以上1500℃以下である。成長工程におけるチャンバの内部は、常圧状態または減圧状態である。成長工程におけるチャンバの内部の圧力は、例えば、1×10-6Pa以上1.014×10Pa以下である。例えば、上記の原料(例えば、第1ガス)は、プリカーサを含む。プリカーサは、第2元素を含む。
【0026】
第2元素は、例えば、Si、Ge、Ga及びInよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。結晶部材20は、第2元素を含む結晶を含む。結晶部材20は、例えば、Si、Ge、SiGe、GaAs、GaN、InP、GeTe、GeSbTe、MoS及びMoSeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2元素がシリコンを含む場合、結晶部材20は、シリコン結晶を含む。
【0027】
図2(d)に示すように、成長工程(図2(e))の前において、第1部材10は、孔30Hの底部30Bと接する。成長工程は高温で実施されるため、例えば、成長工程において第1部材10は液相である。成長工程において、結晶部材20は、底部30Bと第1部材10との間に形成される。例えば、結晶部材20は、底部30Bにおいて、エピタキシャル成長する。
【0028】
結晶部材20の成長に伴い、第1部材10は上方向に押され、第1部材10の位置が上昇する。成長工程中及び成長工程の後において、結晶部材20は、底部30Bと接する。
【0029】
例えば、成長した結晶部材20の結晶方位は、底部30Bの結晶方位に沿う。実施形態においては、結晶方位が均一な結晶部材20が得られる。
【0030】
実施形態においては、第1部材10は底部30Bに設けられ、側部30Sには実質的に設けられない。第1部材10を触媒として成長する結晶部材20は、底部30Bから成長する。側部30Sからの結晶部材20の成長は、抑制される。実質的に1つの方向(底部30Bからの方向)により結晶部材20が成長するため、結晶部材20の結晶方位は、均一になりやすい。高品質の結晶を成長可能な結晶成長方法を提供できる。
【0031】
例えば、孔の側部にシード層が設けられる参考例がある。シード層は、Au層である。参考例においては、シード層を形成した後に高温処理を行うことで、シード層に含まれるAuの液体が流れて、孔の底部に移動する。この後、結晶成長が行われる。この参考例においては、孔の側部にシード層が一旦付着する。このため、側部には、シード層が残りやすい。
【0032】
このため、参考例においては、孔の底部からの成長と、孔の側部からの成長と、が生じる。孔の底部から成長した結晶と、孔の側部から成長した結晶と、が互いに接して、結晶部材が形成される。このような参考例においては、孔の底部から成長した結晶と、孔の側部から成長した結晶と、の間に、明確な境界、または、空隙が生じ易い。参考例においては、複数の場所から結晶が成長する。複数の場所から成長した結晶のそれぞれ結晶方位は、同じではない。このため、参考例においては、高品質の結晶部材を得ることが困難である。例えば、結晶部材に含まれる結晶粒のサイズは、小さい。参考例においては、互いに結晶方位が異なる複数の結晶粒が形成されやすい。
【0033】
これに対して、実施形態においては、結晶部材20は底部30Bから成長し、側部30Sからの結晶部材20の成長が効果的に抑制される。これにより、均一な結晶方位の結晶部材20が得やすい。例えば、大きな結晶粒が得られる。例えば、1つの結晶部材20は、実質的に1つの結晶である。実施形態によれば、例えば、高品質の結晶を成長可能な結晶成長方法を提供できる。
【0034】
実施形態において、例えば、構造体30に複数の孔30Hが設けられもよい。この場合、複数の孔30Hに対応して、複数の結晶部材20が設けられる。複数の結晶部材20の1つは、複数の孔30Hの1つの中に形成される。複数の結晶部材20のそれぞれにおける結晶方位は、複数の孔30Hのそれぞれの底部30Bの結晶方位に沿う。このため、複数の結晶部材20の結晶方位は、実質的に同じになる。特性の均一な結晶部材20が得られる。より高品質の結晶が得やすい。
【0035】
図2(e)に示すように、実施形態に係る1つの例において、結晶部材20は、孔30Hの側部30Sの少なくとも一部と接する。底部30Bから成長した結晶部材20は、孔30Hの側部30Sと接しながら成長する。例えば、結晶部材20は、側部30Sからの影響を受けつつ成長する。これにより、結晶部材20の結晶方位は、側部30Sにおける結晶方位を反映する。
【0036】
実施形態において、例えば、結晶部材20の結晶方位は、構造体30の第1領域31の結晶方位に沿う。結晶部材20の結晶方位は、構造体30の第2領域32の結晶方位に沿ってもよい。結晶部材20は、第2領域32の少なくとも一部と接する。
【0037】
上記の参考例において、孔の側部にシード層が設けられ、高温処理により、シード層に含まれるAuの液体が、孔の底部に移動する。参考例においては、孔の側部にシード層が一旦付着するため、側部に着したシード層を完全に除去することは困難である。
【0038】
実施形態においては、第1部材10の形成において第1元素が側部30Sに付着しないように、第1部材10が底部30Bに形成される。側部30Sに第1元素が付着しないので、側部30Sからの結晶部材20の成長が効果的に抑制される。
【0039】
以下、第1部材10の形成状態の例について、説明する。
図3(a)及び図3(b)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式図である。
図3(a)は、構造体30の断面SEM(Scanning Electron Microscope)像である。図3(b)は、図3(a)を基に描かれた断面模式図である。図3(a)及び図3(b)は、第1部材形成工程の後で成長工程の前の状態を例示している。
【0040】
図3(a)及び図3(b)に示すように、孔30Hを有する構造体30が設けられる。図3(b)に示すように、孔30Hの底部30Bに第1部材10が形成されている。図3(b)に示すように、孔30Hの断面形状は必ずしも矩形ではない。例えば、孔30Hの底部30Bは、曲面状の部分を含んでもよい。
【0041】
1つの例において、底部30Bは以下のように定義されてもよい。例えば、既に説明したように、底部30Bから開口部30Pへの方向は、第1方向(すなわち、Z軸方向)に沿う。孔30Hの第1方向に沿う長さを深さD1とする。深さD1は、例えば、底部30Bと開口部30Pとの間の第1方向に沿う距離の最大値である。図3(b)に示すように、深さD1は、底部30Bの第1方向に沿う底部長さD2と、側部30Sの第1方向に沿う側部長さD3と、の和である。実施形態において、底部長さD2は、深さD1の50%と定義してもよい。例えば、実施形態において、孔30Hの深さD1の50%の位置を、底部30Bと側部30Sとの間の境界としてもよい。孔30Hの深さD1の50%が側部30Sの長さに対応する。
【0042】
実施形態においては、上記のような底部30Bに第1部材10が形成される。上記のような側部30Sに、第1元素は付着しない。図3(b)に示すように、孔30Hの表面の一部30Baは、底部30Bに含まれる。このような、孔30Hの表面の一部30Baに、第1部材10は形成される。表面の一部30Baよりも上の領域には、第1部材10の第1元素は、実質的に付着しない。
【0043】
図3(b)に示すように、底部30Bから開口部30Pへの第1方向に沿う第1部材10の長さを長さ10zとする。第1方向と交差する第2方向に沿う第1部材10の長さを長さ10xとする。第2方向は、長さW2の方向であり、X軸方向に沿う。孔30Hにおいて、長さが短い方向が第2方向に対応する。例えば、第1方向(Z軸方向)に沿う第1部材10の長さ10zは、第2方向(この例ではX軸方向)に沿う第1部材10の長さ10xよりも長い。急峻な山状の第1部材10が形成される。
【0044】
実施形態において、第1方向(Z軸方向)に沿う第1部材10の長さ10zは、第2方向(この例では、X軸方向)に沿う開口部30Pの長さW2の20%以上であることが好ましい。長さ10zが長さW2の20%以上であるときに、第1部材10が高温により液相になったときに、孔30Hの底部30Bの実質的に全体が第1部材10で覆われる。これにより、連続的な結晶部材20が均一に成長し易くなる。
【0045】
長さ10zが長さW2の20%未満のときは、第1部材10の量が少ない。このため、第1部材10が高温により液相になったときに、孔30Hの底部30Bにおいて、島状態の第1部材10が形成される。この場合、連続的で均一な結晶部材20が得難い場合がある。
【0046】
実施形態においては、十分な量の第1部材10が孔30Hの底部30Bに形成される。これにより、連続的な結晶部材20が均一に成長することが容易になる。
【0047】
実施形態において、第1方向(Z軸方向)に沿う第1部材10の長さ10zは、例えば、第1方向に沿う孔30Hの深さD1の40%以上であることが好ましい。十分な量の第1部材10が孔30Hの底部30Bに形成されることで、連続的な結晶部材20が均一に成長することが容易になる。
【0048】
図3(b)に示すように、実施形態において、孔30Hの開口部30Pは、孔30Hの最大幅よりも小さくてもよい。例えば、第2方向(この例では、X軸方向)に沿う開口部30Pの長さW2は、孔30Hの第2方向に沿う長さの最大値Wmaxよりも短くでもよい。このような形状の孔30Hにより、第1部材10に含まれる第1元素が孔30Hの側部30Sに付着することが抑制し易くなる。
【0049】
実施形態に係る1つの実験例(図3(a))において、孔30Hの深さD1は、約2579nmである。開口部30Pの長さW2(幅)は、約866nmである。孔30Hの第2方向に沿う長さの最大値Wmax(最大幅)は、例えば、1183nmである。第1部材10の高さ(第1方向に沿う長さ10z)は、1087nmである。第1部材10の幅(第2方向に沿う長さ10x)は、658nmである。
【0050】
発明者の検討によると、開口部30Pの長さW2(幅)が約1000nmである場合、第1部材10の長さ10z(高さ)が約200nm以上のときに、均一な結晶部材20が得易い。1つの例において、長さ10zは、約284nmである。
【0051】
実施形態において、例えば、結晶部材20は、導電性である。結晶部材20の導電形は、構造体30の第2領域32の導電形と異なってもよい。例えば、第2領域32は、n形であり、結晶部材20は、p形である。例えば、第2領域32がp形であり、結晶部材20は、n形でもよい。例えば、構造体30の第2領域32の導電形は、構造体30の第1領域31の導電形と同じでも良く、異なってもよい。
【0052】
以下、実施形態に係る結晶成長方法の別の例について説明する。
図4(a)~図4(h)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式的断面図である。
図4(a)に示すように、構造体30が準備される。この例においても、第1膜35が設けられている。第1膜35の少なくとも一部を除去する(ステップS105)。第1膜35の除去により、構造体30が得られる(図4(b)参照)。構造体30は、孔30Hを有する。孔30Hは、底部30B、側部30S及び開口部30Pを含む。図4(c)に示すように、孔30Hの底部30Bに第1部材10を形成する。この例においても、第1部材10の形成において、第1元素は側部30Sに付着しない。例えば、第1部材10は側部30Sに付着しない。第1部材10は、例えば、第1元素の蒸着により形成される。第1部材形成工程(図4(c)において)、例えば、第1部材10は固相である。
【0053】
図4(d)に示すように、孔30Hの側部30Sに、絶縁膜36を形成する(絶縁膜形成工程、ステップS115)。絶縁膜形成工程は、第1部材形成工程(図4(c))の後で、成長工程(図4(e))の前において実施される。
【0054】
1つの例において、絶縁膜36は、構造体30から形成されてもよい。構造体30がシリコンを含む場合、構造体30の孔30Hの側部30Sの表面部分を酸化または窒化することで、絶縁膜36が形成される。この場合、絶縁膜36は、酸化シリコンまたは窒化シリコンを含む。絶縁膜36は、孔30Hの側部30SにCVD(Chemical Vapor Deposition)などの方法により形成されてもよい。絶縁膜36は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン及び酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。
【0055】
図4(e)に示すように、絶縁膜形成工程の後に、孔30Hに第2元素を含む原料を供給して、孔30H中に第2元素を含む結晶部材20を成長させる。
【0056】
この例においても、第1部材10は底部30Bに設けられ、側部30Sには実質的に設けられない。第1部材10を触媒として成長する結晶部材20は、底部30Bから成長する。側部30Sからの結晶部材20の成長が抑制される。結晶部材20は均一になりやすい。高品質の結晶を成長可能な結晶成長方法を提供できる。
【0057】
図4(f)に示すように、上記の結晶部材20を形成した後に、第1部材10、及び、構造体30の一部を除去してもよい。除去される構造体30の一部は、例えば、第1領域31を含む。構造体30の一部の除去により、結晶部材20と、構造体30の第2領域32と、は、絶縁膜36により、電気的に絶縁されてもよい。結晶部材20は、例えば、接続部材として機能してもよい。図4(f)に示すように、構造体30の第2領域32の表面、及び、結晶部材20の表面が露出する。
【0058】
図4(g)に示すように、第2領域32の表面(例えば下面)、及び、結晶部材20の表面(例えば下面)に、絶縁層38aを形成する。第2領域32の別の表面(例えば上面)、及び、結晶部材20の別の表面(例えば上面)に、絶縁層38bを形成する。絶縁層38a及び38bは、例えば、酸化シリコンなどの酸化膜、または、ポリイミドなどの樹脂膜などを含む。
【0059】
図4(h)に示すように、絶縁層38aの一部、及び、絶縁層38bの一部を除去し、結晶部材20の表面を露出させる。この後、例えば、導電膜61及び導電膜62を形成する。導電膜61は、例えば、下面側の配線(または電極)となる。導電膜62は、例えば、上面側の配線(または電極)となる。導電膜61及び導電膜62の間に、結晶部材20がある。導電膜61と結晶部材20との間に、絶縁層38aの一部がある。導電膜62と結晶部材20との間に、絶縁層38bの一部がある。結晶部材20は、構造体30(第2領域32)を貫通する接続部材となる。接続部材は、導電膜61と導電膜62を電気的に接続する。
【0060】
実施形態において、構造体30の第2領域32は、積層された導電部材及び絶縁部材を含んでも良い。以下、第2領域32が導電部材及び絶縁部材を含む場合における結晶成長方法例について説明する。
【0061】
図5(a)~図5(e)は、第1実施形態に係る結晶成長方法を例示する模式的断面図である。
図5(a)に示すように、構造体30は、第1領域31及び第2領域32を含む。第2領域32は、導電部材32a及び絶縁部材32bを含む。絶縁部材32bから導電部材32aへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。この例では、複数の導電部材32a、及び、複数の絶縁部材32bが設けられている。複数の導電部材32aの1つと、複数の導電部材32aの別の1つとの間に、複数の絶縁部材32bの1つがある。複数の絶縁部材32bの1つと、複数の絶縁部材32bの別の1つとの間に、複数の導電部材32aの1つがあっても良い。
【0062】
図5(a)に示すように、このような第2領域32を含む構造体30に孔30Hが設けられる。孔30Hは、第1領域31に到達する。この例では、第1膜35が設けられている。第1膜35の少なくとも一部を除去する(ステップS105)。第1膜35の除去により、構造体30が得られる(図5(b)参照)。図5(c)に示すように、孔30Hの底部30Bに第1部材10を形成する。この例においても、第1部材10の形成において、第1元素は側部30Sに付着しない。例えば、第1部材10は側部30Sに付着しない。第1部材10は、例えば、第1元素の蒸着により形成される。第1部材形成工程(図5(c)において)、例えば、第1部材10は固相である。
【0063】
図5(d)に示すように、孔30Hの側部30Sに、絶縁膜36を形成する(絶縁膜形成工程、ステップS115)。図5(e)に示すように、絶縁膜形成工程の後に、孔30Hに第2元素を含む原料を供給して、孔30H中に第2元素を含む結晶部材20を成長させる。この例においても、第1部材10は底部30Bに設けられ、側部30Sには実質的に設けられない。第1部材10を触媒として成長する結晶部材20は、底部30Bから成長する。側部30Sからの結晶部材20の成長が抑制される。結晶部材20は均一になりやすい。高品質の結晶を成長可能な結晶成長方法を提供できる。図5(e)に例示した工程の後に、図4(f)~図4(h)に関して説明した工程が実施されてもよい。
【0064】
上記の実施形態において、構造体30は、第3元素を含む。第1膜35は、例えば、第3元素を含む化合物を含む。例えば、第3元素は、シリコンである。この場合、第1膜35は、例えば、酸化シリコンを含む。実施形態において、構造体30は、例えば、Si、Ge、SiGe、GaAs、GaN及びInPよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。構造体30は、例えば、半導体を含む。
【0065】
既に説明したように、結晶部材20に含まれる第2元素は、例えば、Si、Ge、Ga及びInよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。結晶部材20は、例えば、Si、Ge、SiGe、GaAs、GaN及びInPよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。結晶部材20の材料は、構造体30の材料と実質的に同じでもよい。
【0066】
結晶部材20の結晶の格子は、構造体30の第1領域31の結晶の格子と、実質的に整合している。結晶部材20の結晶の格子は、構造体30の孔30Hの底部30Bの結晶の格子と、実質的に整合している。
【0067】
第1部材10に含まれる第1元素は、結晶部材20の結晶成長に適合するように定められる。
【0068】
既に説明したように、結晶部材20の導電形は、n形またはp形でもよい。結晶部材20の成長に用いられる原料は、例えば、第2元素を含む化合物を含む。化合物は、例えば、プリカーサである。結晶部材20がシリコンである場合、化合物は、例えば、モノシラン、ジシラン及びジクロロシランよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。原料の供給は、第2元素のビームの照射を含んでもよい。結晶部材20がシリコンである場合、原料の供給は、シリコンの原子ビームの照射を含んでもよい。
【0069】
結晶部材20の成長に用いられる第1ガスは、例えば、導電形を付与する不純物の原料を含んでもよい。不純物の原料は、例えば、第4元素を含む。第4元素は、例えば、P、B、As及びMgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。結晶部材20がシリコンである場合、第4元素は、例えば、P及びAsよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。または、結晶部材20がシリコンである場合、第4元素は、B及びAlよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。結晶部材20がGaNを含む場合、第4元素は、Mg及びSiの一方を含む。
【0070】
第1ガスは、水素、窒素、アルゴン及びヘリウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含んでもよい。これらの元素は、例えば、キャリアガスの元素である。
【0071】
実施形態において、孔30Hの深さD1は、例えば、1μm以上1000μm以下である。深さD1は、50μm以下でも良い。孔30Hの開口部30Pの第2方向に沿う長さW2は、例えば、10nm以上2000nm以下である。孔30Hの開口部30Pの第3方向に沿う長さW3は、例えば、0.1μm以上5μm以下である。
【0072】
(第2実施形態)
第2実施形態は、半導体装置に係る。
図6は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図6に示すように、本実施形態に係る半導体装置110は、構造体30及び結晶部材20を含む。構造体30は、半導体を含む。構造体30は、第1領域31及び第2領域32を含む。
【0073】
この例では、複数の結晶部材20が設けられる。複数の結晶部材20は、例えば、結晶部材21a~21cなどを含む。以下では、複数の結晶部材20の1つ(例えば、結晶部材21a)に着目する。
【0074】
第1領域31から結晶部材21aへの方向を第1方向とする。第1方向は、例えばZ軸方向である。結晶部材21aから第2領域32への方向を第2方向とする。第1方向は、第2方向と交差する。第2方向は、例えば、X軸方向である。結晶部材21aの結晶方位は、第1領域31の結晶方位に沿う。結晶部材21aの結晶方位は、第2領域32の結晶方位に沿う。
【0075】
結晶部材21aは、第1部分領域pr1、第2部分領域pr2及び第3部分領域pr3を含む。第3部分領域pr3は、第1領域31と接する。第1方向(Z軸方向)において、第2部分領域pr2は、第3部分領域pr3と第1部分領域pr1との間にある。第1部分領域pr1の第2方向に沿う長さを長さdx1とする。第2部分領域pr2の第2方向に沿う長さを長さdx2とする。長さdx1は、長さdx2よりも短い。
【0076】
結晶部材20(例えば、結晶部材21a)は、構造体30に設けられた孔30H(図2(b)などを参照)に第2元素を供給して結晶成長させることで形成できる。第3部分領域pr3は、例えば、孔30Hの底部30Bに接する部分である。第1部分領域pr1は、例えば、孔30Hの開口部に対応する部分である。第2部分領域pr2は、例えば、孔30Hの幅が最大となる部分に対応する。
【0077】
開口部に対応する第1部分領域pr1の幅(長さdx1)が、幅が最大となる部分に対応する第2部分領域pr2の幅(長さdx2)よりも狭いことで、第1部材10が孔30Hの側部30Sに付着しにくい。このため、結晶部材20において、高い品質が得られる。
【0078】
図6に示すように、半導体装置110は、第1~第3電極51~53を含む。構造体30は、第3~第5領域43~45を含む。
【0079】
例えば、第2電極52から第1電極51への方向は、Z軸方向に沿う。第2電極52から第3電極53への方向は、Z軸方向に沿う。第3領域43は、結晶部材20の第3部分領域pr3を含む。第3領域43と第1電極51との間に、第4領域44がある。第4領域44と第1電極51との間に第5領域45がある。第1領域31、第2領域32、第3領域43、第4領域44及び第5領域45は、例えば、シリコンを含む。
【0080】
第1領域31は、例えば、n領域である。第2領域32は、例えば、n領域である。第3領域43は、例えば、p領域である。第4領域44は、例えば、n領域である。第5領域45は、例えば、n領域である。例えば、結晶部材20から、第3領域43の少なくとも一部、第4領域44の少なくとも一部、及び、第5領域45の少なくとも一部が形成できる。例えば、結晶部材20または第2領域32に、適切な導電形の不純物を注入することで、第3領域43、第4領域44及び第5領域45が形成できる。
【0081】
第2電極52と第3電極53との間に第2領域32がある。第2領域32と第3電極53との間に、絶縁層50iがある。半導体装置110は、例えば、スーパージャンクション構造を有するトランジスタである。
【0082】
実施形態に係る半導体装置110においては、結晶部材20における結晶品質が高いため、例えば、良好な特性が安定して得られる。
【0083】
図7は、第2実施形態に係る半導体装置を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る半導体装置120は、構造体30及び結晶部材20を含む。構造体30及び結晶部材20は、1つの半導体部品60に含まれる。構造体30の第2領域32を、結晶部材20が貫通する。第2領域32と結晶部材20との間に絶縁膜36がある。この例では、半導体部品60は、導電膜61及び導電膜62を含む。導電膜61及び導電膜62が、結晶部材20により電気的に接続される。図7においては、図4(g)及び図4(h)に関して説明した絶縁層38a及び38bは省略されている。
【0084】
この例では、半導体部品60は、回路部分63を含む。回路部分63は、例えば、第2領域32の半導体に基づくトランジスタなどを含んでも良い。
【0085】
この例では、複数の半導体部品60が設けられる。複数の半導体部品60は、例えば、Z軸方向において積層される。1つの半導体部品60と別の1つの半導体部品60との間に接続部材65が設けられる。接続部材65は、1つの半導体部品60の導電膜62と、別の1つの半導体部品60の導電膜61と、を電気的に接続する。半導体装置120においては、結晶部材20により導電膜61と導電膜62が、低い抵抗で電気的に接続される。良好な特性が安定して得られる。
【0086】
例えば、半導体装置の製造工程において、半導体層に形成された孔(トレンチまたはビアホールなど)に、半導体部材が埋められる。このような半導体部材により、例えば、積層された複数の回路層が電気的に接続される。一方、スーパージャンクション構造を有する半導体装置において、トレンチに半導体結晶が埋められる。
【0087】
トレンチなどの孔に半導体結晶を埋める場合、孔の底部及び孔の側部から半導体結晶が成長する参考例がある。この場合、底部から成長した結晶、側部から成長した結晶と、が互いに接する。複数の結晶に間に不連続な界面、または、空隙が生じる。この現象は、孔のアスペクト比が高いと顕著になる。
【0088】
複数の結晶の間の不連続界面または空隙により、特性が劣化し、特性が不均一になる。例えば、半導体装置の特性が不安定になりやすい。例えば、不連続界面または空隙により、半導体装置の耐圧が低くなる場合がある。
【0089】
実施形態においては、例えば、孔30Hの第1膜35が除去される。さらに、孔30Hの側部30Sに第1元素が付着しないように、第1元素を含む第1部材10が孔30Hの底部30Bに形成される。これにより、結晶部材20が、孔30Hの底部30Bから成長する。結晶部材20において、均一で高い結晶品質が得られる。結晶部材20の結晶方位は、孔30Hが設けられた構造体30の結晶方位に沿う。
【0090】
実施形態によれば、高品質の結晶を成長可能な結晶成長方法及び半導体装置が提供できる。
【0091】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であればよい。
【0092】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、結晶成長方法で用いられる、構造体、第1部材、結晶部材及び絶縁膜などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0093】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0094】
その他、本発明の実施の形態として上述した結晶成長方法及び半導体装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての結晶成長方法及び半導体装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0095】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0097】
10…第1部材、 10x、10z…長さ、 20…結晶部材、 21a~21c…結晶部材、 30…構造体、 30B…底部、 30Ba…一部、 30H…孔、 30P…開口部、 30S…側部、 31、32…第1、第2領域、 32a…導電部材、 32b…絶縁部材、 35…第1膜、 36…絶縁膜、 38a、38b…絶縁層、 43~45…第3~第5領域、 50i…絶縁層、 51~53…第1~第3電極、 60…半導体部品、 61、62…導電膜、 63…回路部分、 65…接続部材、 110、120…半導体装置、 AA…矢印、 D1…深さ、 D2…底部長さ、 D3…側部長さ、 W1~W3…長さ、 Wmax…最大値、 dx1、dx2…長さ、 pr1~pr3…第1~第3部分領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7