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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20230316BHJP
   B65D 51/22 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B65D41/04 500
B65D51/22 110
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018057353
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019167141
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪ノ上 綾
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-067360(JP,A)
【文献】特開2016-064866(JP,A)
【文献】特開2011-173630(JP,A)
【文献】特開2015-140214(JP,A)
【文献】特開2004-149164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176586(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けられる中栓と、回転されることにより中栓に着脱自在なねじ式の蓋とを有し、
中栓は周囲が破断可能な弱化部で囲まれた離脱部を有し、
蓋が開栓方向へ回転された際の蓋の回転トルクが離脱部に伝えられ、この回転トルクにより弱化部が破断して、離脱部が中栓から離脱することによって、中栓に注出口が形成されるキャップであって、
蓋の外周にローレット加工領域とローレット非加工領域とが設けられ、
ローレット加工領域とローレット非加工領域とは蓋の回転方向において交互に位置し、
ローレット加工領域に複数の凹凸部が形成され、
凹凸部は、開栓方向に対向する一方の傾斜面と、閉栓方向に対向する他方の傾斜面とを有し、
一方の傾斜面は凹部の底を通る仮想の同心円から第1の角度で立ち上がり、
他方の傾斜面は上記仮想の同心円から第2の角度で立ち上がり、
第1の角度は第2の角度よりも大きく設定され、
ローレット非加工領域に、ローレット加工領域よりも平滑な平滑面が形成され
平滑面と開栓方向において平滑面に隣接する凸部とのコーナー部は第1のアールで円弧状に形成され、
第1のアールは凹部の底に形成された円弧状の第2のアールよりも大きく設定されていることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
蓋は、蓋板と、蓋板の外周縁から垂下された筒状の外周壁と、蓋板と外周壁とのコーナー部に傾斜して形成された肩部とを有し、
ローレット加工領域とローレット非加工領域とが外周壁と肩部とに設けられ、
凹凸部はローレット加工領域において外周壁から肩部に延設され、
平滑面はローレット非加工領域において外周壁から肩部に延設されていることを特徴とする請求項1記載のキャップ。
【請求項3】
平滑面は、蓋の回転方向において、指先が平滑面から隣接する凹凸部にはみ出る幅を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
離脱部に第1の係合部が形成され、
蓋の内部に第2の係合部が形成され、
蓋が開栓方向へ回転した際、第2の係合部が開栓方向において第1の係合部に係合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のキャップ。
【請求項5】
離脱部は筒状であり、
蓋は、内部に、内外二重に配設された筒状の内側および外側保持部を有し、
蓋が閉じた状態で、中栓の離脱部が蓋の内側保持部と外側保持部との間に保持され、
第1の係合部は第1の外周側係合部と第1の内周側係合部とを有し、
第1の外周側係合部は離脱部の外周に形成され、
第1の内周側係合部は離脱部の内周に形成され、
第2の係合部は第2の内周側係合部と第2の外周側係合部とを有し、
第2の内周側係合部は外側保持部の内周に形成され、
第2の外周側係合部は内側保持部の外周に形成され、
蓋が開栓方向へ回転した際、第2の内周側係合部が開栓方向において第1の外周側係合部に係合するとともに、第2の外周側係合部が開栓方向において第1の内周側係合部に係合することを特徴とする請求項4に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋にローレット加工を施したキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のキャップとしては、例えば、図14に示すように、容器に取り付けられる中栓と、回転されることにより中栓に着脱自在なねじ式の蓋101とを有するキャップ100がある。蓋101の外周には、全周にわたってローレット加工が施されている。尚、ローレット加工とは、滑り止め用として多数の細かい凹凸部102,103を形成する加工である。
【0003】
これによると、蓋101を閉栓状態から開栓する際、複数本の指先で蓋101の外周を掴み、蓋101を開栓方向Oに回す。
【0004】
尚、上記のようなローレット加工を施した蓋を有するキャップは例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-41608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記の従来形式では、ローレット加工の凸部103の断面は山形状であるため、蓋101を閉栓状態から開栓方向Oに回して開栓する際、蓋101の外周に押し付けた指先に凸部103が食い込んで、指先に痛みを感じるといった問題がある。
【0007】
特に、蓋101が小径であり、開栓するのに必要なトルク(開栓トルク)が高い場合、指先を蓋101の外周に強く押し付けて、大きな力で蓋101を開栓方向Oに回さなければならないため、指先に痛みを感じることが多かった。
【0008】
また、蓋101の外周はローレット加工により多数の凹凸部102,103が形成されているため、指先と蓋101の外周との接触面積が減少し、蓋101を回す際、指先に込めた力が安定して蓋101の外周に伝達され難いといった問題があった。
【0009】
本発明は、蓋を回す際、指先の痛みを和らげることができ、指先に込めた力を安定して蓋に伝達することが可能なキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本第1発明は、容器に取り付けられる中栓と、回転されることにより中栓に着脱自在なねじ式の蓋とを有し、
中栓は周囲が破断可能な弱化部で囲まれた離脱部を有し、
蓋が開栓方向へ回転された際の蓋の回転トルクが離脱部に伝えられ、この回転トルクにより弱化部が破断して、離脱部が中栓から離脱することによって、中栓に注出口が形成されるキャップであって、
蓋の外周にローレット加工領域とローレット非加工領域とが設けられ、
ローレット加工領域とローレット非加工領域とは蓋の回転方向において交互に位置し、
ローレット加工領域に複数の凹凸部が形成され、
凹凸部は、開栓方向に対向する一方の傾斜面と、閉栓方向に対向する他方の傾斜面とを有し、
一方の傾斜面は凹部の底を通る仮想の同心円から第1の角度で立ち上がり、
他方の傾斜面は上記仮想の同心円から第2の角度で立ち上がり、
第1の角度は第2の角度よりも大きく設定され、
ローレット非加工領域に、ローレット加工領域よりも平滑な平滑面が形成され
平滑面と開栓方向において平滑面に隣接する凸部とのコーナー部は第1のアールで円弧状に形成され、
第1のアールは凹部の底に形成された円弧状の第2のアールよりも大きく設定されているものである。
【0011】
これによると、未使用状態のキャップを最初に開栓する時(以下、「初期開栓時」と言う)、蓋の外周を複数本の指先で掴んで、蓋を開栓方向に回すことにより、蓋の回転トルクが離脱部に伝えられ、この回転トルクにより弱化部が破断して、離脱部が中栓から離脱し、これにより、中栓に注出口が形成される。
【0012】
尚、初期開栓時においては上記のように弱化部を破断させて離脱部を中栓から離脱させるため、大きな回転トルクを要し、指先の力を安定して蓋の外周に伝達させる必要がある。
【0013】
上記のような初期開栓時に、少なくともいずれかの指先を蓋の外周の平滑面に押し付けることにより、指先に食い込む凸部の本数が減少するため、指先の痛みを和らげることができる。また、指先と蓋の外周との接触面積が十分に確保されるため、蓋を回す際、指先に込めた力が安定して蓋の外周に伝達される。これにより、蓋に大きな回転トルクを付与することができ、弱化部を確実に破断することができる。
【0014】
また、初期開栓時において弱化部が破断して離脱部が中栓から離脱した後、蓋を開栓方向又は閉栓方向に回す際にも、上記と同様に、指先の痛みを和らげることができるとともに、指先に込めた力が十分に蓋の外周に伝達される。
また、指先を蓋の平滑面に押し付けて蓋の外周を複数本の指先で掴み、蓋を開栓方向に回す際、指先が平滑面から開栓方向において隣接する凸部に引っ掛かることにより、指先の滑り止め効果が十分に確保される。このように指先が平滑面から開栓方向において隣接する凸部に引っ掛かっても、平滑面と上記隣接する凸部とのコーナー部が円弧状に形成されているため、指先が痛くならない。
【0015】
本第2発明におけるキャップは、蓋は、蓋板と、蓋板の外周縁から垂下された筒状の外周壁と、蓋板と外周壁とのコーナー部に傾斜して形成された肩部とを有し、
ローレット加工領域とローレット非加工領域とが外周壁と肩部とに設けられ、
凹凸部はローレット加工領域において外周壁から肩部に延設され、
平滑面はローレット非加工領域において外周壁から肩部に延設されているものである。
【0016】
これによると、蓋の肩部を複数本の指先で掴んで、蓋を回す際にも、上記と同様に、指先の痛みを和らげることができるとともに、指先に込めた力が十分に蓋に伝達される。
【0019】
本第発明におけるキャップは、平滑面は、蓋の回転方向において、指先が平滑面から隣接する凹凸部にはみ出る幅を有しているものである。
【0020】
これによると、指先を蓋の平滑面に押し付けて蓋の外周を複数本の指先で掴んだ際、指先の一部が平滑面から隣接する凹凸部にはみ出るため、指先は平滑面とその隣の凹凸部との両者に押し付けられる。これにより、蓋を回す際、指先が蓋の外周に対して滑り難くなる。
【0021】
本第発明におけるキャップは、離脱部に第1の係合部が形成され、
蓋の内部に第2の係合部が形成され、
蓋が開栓方向へ回転した際、第2の係合部が開栓方向において第1の係合部に係合するものである。
【0022】
これによると、初期開栓時において、蓋の外周を複数本の指先で掴んで、蓋を開栓方向に回すことにより、蓋と共に第2の係合部が開栓方向に回転して第1の係合部に係合し、蓋の回転トルクが第2の係合部と第1の係合部とを介して離脱部に作用し、この回転トルクにより弱化部が破断して、離脱部が中栓から離脱する。
【0023】
本第発明におけるキャップは、離脱部は筒状であり、
蓋は、内部に、内外二重に配設された筒状の内側および外側保持部を有し、
蓋が閉じた状態で、中栓の離脱部が蓋の内側保持部と外側保持部との間に保持され、
第1の係合部は第1の外周側係合部と第1の内周側係合部とを有し、
第1の外周側係合部は離脱部の外周に形成され、
第1の内周側係合部は離脱部の内周に形成され、
第2の係合部は第2の内周側係合部と第2の外周側係合部とを有し、
第2の内周側係合部は外側保持部の内周に形成され、
第2の外周側係合部は内側保持部の外周に形成され、
蓋が開栓方向へ回転した際、第2の内周側係合部が開栓方向において第1の外周側係合部に係合するとともに、第2の外周側係合部が開栓方向において第1の内周側係合部に係合するものである。
【0024】
これによると、初期開栓時において、蓋の外周を複数本の指先で掴んで、蓋を開栓方向に回すことにより、第2の内周側係合部が第1の外周側係合部に係合するとともに、第2の外周側係合部が第1の内周側係合部に係合し、蓋の回転トルクが第2の内周側係合部と第1の外周側係合部および第2の外周側係合部と第1の内周側係合部を介して離脱部に作用し、この回転トルクにより弱化部が破断して、離脱部が中栓から離脱する。
【0025】
この際、離脱部が蓋の内側保持部と外側保持部との間に保持されているため、大きな回転トルクが離脱部の第1の外周側および内周側係合部に作用しても、離脱部や第1の外周側係合部が径方向内側に撓んで逃げたり、或いは、離脱部や第1の内周側係合部が径方向外側に撓んで逃げたりするのを防止することができる。
【0026】
これにより、蓋を回転した際の回転トルクが十分に離脱部に伝えられて、弱化部が確実に破断される。
【発明の効果】
【0027】
以上のように本発明によると、蓋を回す際、指先の痛みを和らげることができるとともに、指先に込めた力を安定して蓋に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態におけるキャップの正面図である。
図2】同、キャップの断面図である。
図3図2におけるX-X矢視図である。
図4】同、キャップの断面図であり、蓋を中栓に打栓する前の分離した様子を示す。
図5】同、キャップの中栓の平面図である。
図6】同、キャップの蓋の斜視図である。
図7】同、キャップの蓋の平面図である。
図8】同、キャップの蓋の底面図である。
図9】同、キャップの蓋の外周壁の一部拡大断面図である。
図10】同、キャップの蓋の凹凸部と平滑面との一部拡大断面図である。
図11】同、キャップの蓋の外周壁の一部拡大断面図であり、指先で蓋を掴んだ様子を示す。
図12】同、キャップの断面図であり、離脱部を中栓から離脱して開栓した様子を示す。
図13】本発明の第2の実施の形態におけるキャップの蓋の正面図である。
図14】従来のキャップの蓋の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、図1図3に示すように、1はジュース等の飲み物を入れた紙製の箱形状の容器(液体用紙容器)である。容器1の上部にはキャップ2が設けられている。尚、キャップ2を装着するための取付孔3が容器1の上部に形成されている。
【0031】
キャップ2は、容器1に取り付けられる中栓6と、回転されることにより中栓6に着脱自在なねじ式の蓋7とを有している。
【0032】
図4図5に示すように、中栓6は、容器1の取付孔3に取り付けられる円環状の鍔10と、鍔10に設けられた円環状の台座11と、台座11に設けられた円形状の注出筒12と、周囲が薄肉の破断可能な弱化部13で囲まれた離脱部14とを有している。注出筒12の外周には雄ねじ16が形成されている。
【0033】
離脱部14は、注出筒12の内部にあり、上部が開口した円筒部17と、円筒部17の底を閉鎖する閉鎖部18とを有している。図12に示すように、弱化部13が破断して、離脱部14が中栓6から離脱することによって、中栓6の注出筒12内に注出口19が形成される。
【0034】
離脱部14には第1の係合突起21(第1の係合部の一例)が形成されている。第1の係合突起21は、複数の第1の外周側係合突起21a(第1の外周側係合部の一例)と、複数の第1の内周側係合突起21b(第1の内周側係合部の一例)とを有している。
【0035】
第1の外周側係合突起21aは、離脱部14の円筒部17の外周に形成されており、円筒部17の周方向において所定角度(例えば図5では90°)ごとに配設されている。また、第1の内周側係合突起21bは、円筒部17の内周に形成されており、円筒部17の周方向において所定角度(例えば図5では90°)ごとに配設されている。
【0036】
図4図6図8に示すように、蓋7は、円形の蓋板26と、蓋板26の外周縁から垂下された円筒状の外周壁27と、蓋板26と外周壁27とのコーナー部に傾斜して形成された肩部28と、内外二重に配設された円形状の内側および外側保持筒29,30(内側および外側保持部の一例)と、下部が開口した円形状の閉止用筒31とを有している。
【0037】
内側および外側保持筒29,30と閉止用筒部31とは、外周壁27の内部にあり、軸心32を中心とする同心円状に配置されている。外周壁27の内周には、中栓6の雄ねじ16に螺合する雌ねじ33が設けられている。尚、図2に示すように、蓋7が閉じた状態で、中栓6の離脱部14の円筒部17が蓋7の内側保持筒29と外側保持筒30との間に保持される。
【0038】
図4図8に示すように、蓋7の内部には第2の係合突起37(第2の係合部の一例)が形成されている。第2の係合突起37は、複数の第2の内周側係合突起37a(第2の内周側係合部の一例)と、複数の第2の外周側係合突起37b(第2の外周側係合部の一例)とを有している。
【0039】
第2の内周側係合突起37aは、外側保持筒30の内周に形成され、外側保持筒30の周方向において所定角度(例えば図8では90°)ごとに配設されている。第2の外周側係合突起37bは、内側保持筒29の外周に形成され、内側保持筒29の周方向において所定角度(例えば図8では90°)ごとに配設されている。
【0040】
図3に示すように、初期開栓時に蓋7が開栓方向Oへ回転した際、第2の内周側係合突起37aが開栓方向Oにおいて第1の外周側係合突起21aに係合するとともに、第2の外周側係合突起37bが開栓方向Oにおいて第1の内周側係合突起21bに係合する。
【0041】
図7に示すように、蓋7の外周壁27の外周および肩部28には、複数のローレット加工領域41と、複数のローレット非加工領域42とが設けられている。ローレット加工領域41とローレット非加工領域42とは蓋7の回転方向43(すなわち開栓方向Oと閉栓方向S)において交互に位置している。
【0042】
図1図3図6図7に示すように、ローレット加工領域41には、多数の細かい凹凸部45,46が形成されている。凹凸部45,46はローレット加工領域41において外周壁27から肩部28に延設されている。図9図10に示すように、凹部45はV字型の谷形状であり、凸部46は逆V字型の山形状である。これら凹凸部45,46は、開栓方向Oに対向する一方の傾斜面47と、閉栓方向Sに対向する他方の傾斜面48とを有している。
【0043】
一方の傾斜面47は凹部45の底を通る仮想の同心円49から第1の角度αで立ち上がっており、他方の傾斜面48は上記仮想の同心円49から第2の角度βで立ち上がっており、第1の角度αは第2の角度βよりも大きく設定されている。
【0044】
ローレット非加工領域42には、ローレット加工領域41よりも平滑で且つ平坦な平滑面52が形成されている。平滑面52はローレット非加工領域42において外周壁27から肩部28に延設されている。尚、中栓6と蓋7とはそれぞれ、樹脂製であり、金型を用いて成形される。蓋7を成形するための金型は、平滑面52に対応する部分が鏡面磨きされている。
【0045】
図10に示すように、平滑面52と開栓方向Oにおいて平滑面52に隣接する凸部46とのコーナー部は第1のアールR1で円弧状に形成されている。尚、第1のアールR1は例えば0.3mmに設定されている。また、凹部45の底部は第2のアールR2で円弧状に形成されている。第1のアールR1は第2のアールR2よりも大きく設定されている。
【0046】
図11に示すように、平滑面52は、蓋7の回転方向43において、指先57が平滑面52から隣接する凹凸部45,46にはみ出る幅Wを有している。この幅Wは例えば3mm~8mmに設定されている。
【0047】
以下、上記構成における作用を説明する。
【0048】
初期開栓時において、蓋7の外周を複数本の指先57で掴んで、蓋7を開栓方向Oに回すことにより、図3に示すように、第2の内周側係合突起37aが第1の外周側係合突起21aに係合するとともに、第2の外周側係合突起37bが第1の内周側係合突起21bに係合し、蓋7の回転トルクが第2の内周側係合突起37aと第1の外周側係合突起21aおよび第2の外周側係合突起37bと第1の内周側係合突起21bを介して離脱部14に作用し、この回転トルクにより弱化部13が破断して、図12に示すように離脱部14が中栓6から離脱する。
【0049】
この際、図2に示すように、離脱部14の円筒部17が蓋7の内側保持筒29と外側保持筒30との間に保持されているため、大きな回転トルクが離脱部14の第1の外周側および内周側係合突起21a,21bに作用しても、離脱部14や第1の外周側係合突起21aが径方向内側に撓んで逃げたり、或いは、離脱部14や第1の内周側係合突起21bが径方向外側に撓んで逃げたりするのを防止することができる。
【0050】
これにより、蓋7を回転した際の回転トルクが十分に離脱部14に伝えられて、図12に示すように弱化部13が確実に破断される。
【0051】
尚、初期開栓時においては上記のように弱化部13を破断させて離脱部14を中栓6から離脱させるため、大きな回転トルクを要し、指先57の力を安定して蓋7の外周に伝達させる必要がある。
【0052】
上記のような初期開栓時に、蓋7の外周を複数本の指先57で掴んで、蓋7を開栓方向Oに回す際、図11に示すように、少なくともいずれかの指先57を蓋7の外周の平滑面52に押し付けることにより、指先57に食い込む凸部46の本数が減少するため、指先57の痛みを和らげることができる。また、指先57と蓋7の外周との接触面積が十分に確保されるため、蓋7を回す際、指先57に込めた力が安定して蓋7の外周に伝達される。これにより、蓋7に大きな回転トルクを付与することができ、弱化部13を確実に破断することができる。
【0053】
尚、指先57を平滑面52に押し付けて蓋7の外周を複数本の指先57で掴んだ際、図11に示すように、指先57の一部が平滑面52から隣接する凹凸部45,46にはみ出るため、指先57は平滑面52とその隣の凹凸部45,46との両者に押し付けられる。これにより、蓋7を回す際、指先57が蓋7の外周に対して滑り難くなる。
【0054】
特に、蓋7を開栓方向Oに回す際、指先57が平滑面52から開栓方向Oにおいて隣接する凸部46に引っ掛かることにより、指先57の滑り止め効果が十分に確保される。このように指先57が平滑面52から開栓方向Oにおいて隣接する凸部46に引っ掛かっても、図10に示すように、平滑面52と上記隣接する凸部46とのコーナー部が第1のアールR1を有する円弧状に形成されているため、指先57が痛くならない。
【0055】
また、蓋7を開栓方向Oに回す際に要する回転力は平滑面52と複数の凸部46とに分散されるが、このとき、開栓方向Oにおいて平滑面52に隣接する凸部46に大きな応力が発生する可能性がある。これに対して、図10に示すように、第1のアールR1は第2のアールR2よりも大きく設定されているため、平滑面52と開栓方向Oにおいて平滑面52に隣接する凸部46とのコーナー部における応力を十分に分散して、応力集中の発生を防止することができる。
【0056】
また、初期開栓時において弱化部13が破断して離脱部14が中栓6から離脱した後、蓋7を開栓方向O又は閉栓方向Sに回す際にも、上記と同様に、指先57の痛みを和らげることができるとともに、指先の滑り止め効果が十分に確保され、且つ、指先57に込めた力が十分に蓋7の外周に伝達される。
【0057】
さらに、蓋7の肩部28を複数本の指先57で掴んで、蓋7を回す際にも、上記と同様に、指先57の痛みを和らげることができるとともに、指先の滑り止め効果が十分に確保され、且つ、指先57に込めた力が十分に蓋7に伝達される。
【0058】
尚、下記表1は、本発明の上記キャップ2の蓋7を、一定の締めトルク(50N・cm)で締め込んだ後、開栓方向Oに回して開栓した時の指先57の感覚(以下、「開け感」と言う)を示した実験データである。尚、下記表1に記載された開け感の数値は、小さいほど指先57に痛みを感じ、大きいほど指先57の痛みが少ないことを意味する。つまり、開け感の「1」は指先57に最も大きな痛みを感じ、「5」は指先57に感じる痛みが最も小さいことを意味している。
【0059】
また、下記表2は、本発明に対する参考例として、蓋7の外周に、平滑面52を形成せず、全周にわたってローレット加工を施して多数の凹凸部45,46を形成したものの実験データである。
【0060】
これによると、表1では、開け感の各数値の平均値が3.5であり、表2では、開け感の各数値の平均値が2.5である。このように、表1の開け感の平均値が表2の開け感の平均値よりも大きいため、参考例のキャップよりも、本発明のキャップ2の方が、開栓時に指先57に感じる痛みが軽減されることがわかる。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
(第2の実施の形態)
先述した第1の実施の形態では、図1図6図7に示すように、蓋7の外周壁27の外周および肩部28に、ローレット加工領域41とローレット非加工領域42とを設け、ローレット加工領域41に凹凸部45,46を形成し、ローレット非加工領域42に平滑面52を形成しているが、下記第2の実施の形態で示すように、肩部28にローレット加工領域41とローレット非加工領域42とを設けなくてもよい。
【0063】
すなわち、第2の実施の形態では、図13に示すように、蓋7の外周壁27には凹凸部45,46と平滑面52とを形成しているが、肩部28には、凹凸部45,46と平滑面52とを形成しておらず、単なる傾斜面を全周にわたり形成している。
【0064】
これによると、先述した第1の実施の形態と同様の作用および効果が得られる。
【0065】
上記各実施の形態では、容器の一例として液体用紙容器1を挙げたが、これに限定されるものではなく、例えばペットボトルや袋状の容器であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 容器
2 キャップ
6 中栓
7 蓋
13 弱化部
14 離脱部
21 第1の係合突起(第1の係合部)
21a 第1の外周側係合突起(第1の外周側係合部)
21b 第1の内周側係合突起(第1の内周側係合部)
26 蓋板
27 外周壁
28 肩部
29 内側保持筒(内側保持部)
30 外側保持筒(外側保持部)
37 第2の係合突起(第2の係合部)
37a 第2の内周側係合突起(第2の内周側係合部)
37b 第2の外周側係合突起(第2の外周側係合部)
41 ローレット加工領域
42 ローレット非加工領域
43 回転方向
45 凹部
46 凸部
52 平滑面
57 指先
O 開栓方向
R1 第1のアール
R2 第2のアール
W 平滑面の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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