(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】水蒸気の生成方法および水蒸気の生成装置
(51)【国際特許分類】
F22B 3/00 20060101AFI20230316BHJP
F22B 1/14 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
F22B3/00
F22B1/14
(21)【出願番号】P 2018148967
(22)【出願日】2018-08-08
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000154668
【氏名又は名称】株式会社ヒラカワ
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 義夫
(72)【発明者】
【氏名】上梨 厚見
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓哉
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-217447(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0147934(US,A1)
【文献】特開昭53-119431(JP,A)
【文献】特開2018-100824(JP,A)
【文献】特開2016-080314(JP,A)
【文献】特開昭58-127001(JP,A)
【文献】特開2008-020167(JP,A)
【文献】特開平09-060803(JP,A)
【文献】特開昭54-031814(JP,A)
【文献】国際公開第2017/160492(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 3/00
F22B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器の内部でバーナにより水素と酸素との混合気を燃焼させ、
前記燃焼により前記圧力容器の内部で発生した水蒸気を前記圧力容器から取り出
し、
前記圧力容器から取り出された水蒸気であって系外に取り出されて利用に供される前の前記水蒸気の一部を、燃焼前の酸素に混合させて、
水蒸気で希釈された酸素にて、
水素を、爆発的ではない穏やかな状態で燃焼させることを特徴とする水蒸気の生成方法。
【請求項2】
燃焼により発生した第1の水蒸気に水を添加することで、この水を第1の水蒸気の保有する熱により蒸発させて第2の水蒸気を発生させることを特徴とする請求項1記載の水蒸気の生成方法。
【請求項3】
圧力容器と、
この圧力容器の内部で水素と酸素との混合気を燃焼させるバーナと、
前記バーナによる水素の燃焼にて前記圧力容器の内部で生成された水蒸気を圧力容器から取り出すための水蒸気取出路と、
前記水蒸気取出路の内部の水蒸気
であって、系外に取り出されて利用に供される前の前記水蒸気の一部を、燃焼前の酸素に混合させて、水蒸気で希釈された酸素にて、前記バーナにより、
水素を、爆発的ではない穏やかな状態で燃焼させるようにした希釈手段とを有することを特徴とする水蒸気の生成装置。
【請求項4】
燃焼により発生した第1の水蒸気に水を添加することで、この水を第1の水蒸気の保有する熱により蒸発させて第2の水蒸気を発生させる水添加手段をさらに有することを特徴とする請求項3記載の水蒸気の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水蒸気の生成方法および水蒸気の生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水蒸気を生成させるための装置として、ボイラが広く知られている。一般的なボイラは、燃料の燃焼により発生した熱により水を加熱して水蒸気を発生させるものである。このため一般的なボイラは、水管や煙管などの、燃焼系と水蒸気発生系とを区画するための壁部を有するとともに、この壁部によって燃焼系から水蒸気発生系に向けて伝熱を行わせるように構成されている。
【0003】
これに対し、特許文献1には、圧力容器の内部で酸素を用いて水素を燃焼させることで、燃料である水素から直接に水蒸気を生成させるようにした装置が開示されている。このような装置であると、燃焼系と水蒸気発生系とを区画するための壁部を不要とした構成とすることができ、水蒸気発生装置の構成を簡単化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水素を酸素(純酸素であって、窒素と酸素とが混合した空気ではない)を用いて燃焼させると、その燃焼は爆発的なものとなってしまい、取扱い性に劣る。
【0006】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、酸素を用いて水素を燃焼させることで水蒸気を得るときに、爆発的ではない穏やかな燃焼状態を達成できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため本発明は、
圧力容器の内部でバーナにより水素と酸素との混合気を燃焼させ、
前記燃焼により前記圧力容器の内部で発生した水蒸気を前記圧力容器から取り出し、
前記圧力容器から取り出された水蒸気であって系外に取り出されて利用に供される前の前記水蒸気の一部を、燃焼前の酸素に混合させて、
水蒸気で希釈された酸素にて、水素を、爆発的ではない穏やかな状態で燃焼させるものである。
【0008】
本発明によれば、上記において、燃焼により発生した第1の水蒸気に水を添加することで、この水を第1の水蒸気の保有する熱により蒸発させて第2の水蒸気を発生させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水素の燃焼に用いられる酸素を水蒸気で希釈することで、すなわち酸素濃度を低下させることで、水素が爆発的に燃焼することを防止して、穏やかな燃焼状態を達成することができる。しかも、酸素を燃焼生成物である水蒸気にて希釈するため、その希釈された酸素を用いて水素を燃焼させても、本来の生成物である水蒸気しか生成せず、それ以外の余計な物が生成しないという利点がある。たとえば酸素を窒素で希釈して空気に近い状態として燃焼に用いると、生成された水蒸気中に窒素が混入してしまうし、また窒素酸化物などの有害な不要な物が生成してしまうおそれがあるが、本発明のように酸素を水蒸気にて希釈すれば、そのような問題点は何も発生しないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態の水蒸気の生成装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す水蒸気の生成装置おいて、11は筒状の圧力容器で、胴部12と、一端および他端の鏡板13、13とを備える。図示した水蒸気の生成装置では、一方の鏡板13の部分に、圧力容器11の内部で水素を燃焼させるためのバーナ14が設けられている。バーナ14には、水素供給路15と、酸素供給路16とが接続されている。酸素供給路16は、窒素を含む空気ではなく、窒素を含まない酸素をバーナ14へ供給するように構成されている。
【0012】
酸素を用いてバーナ14にて水素を燃焼させると、圧力容器11の内部で水蒸気が生成される。17は、生成した水蒸気を圧力容器11から取り出すための水蒸気取出路である。水蒸気取出路17には、この水蒸気取出路17の内部の水蒸気の一部を酸素供給路16へ供給するための水蒸気循環路18が分岐状態で接続されている。
【0013】
酸素供給路16には、水蒸気取出路17以外からの水蒸気や水などをこの酸素供給路16へ供給するための別の付加的な供給路19が、必要に応じて接続されている。
【0014】
酸素供給路16に水蒸気が供給されると、酸素供給路16の内部の酸素が水蒸気によって希釈される。すなわち、酸素濃度が低下した酸素・水蒸気の混合気が、バーナ14に供給される。これによって、100%の濃度の酸素を供給した場合のような、水素が爆発的に燃焼する状態の発生を防止することができる。酸素供給路16への水蒸気の供給量は、バーナ14において水素をどのような状態で燃焼させるかによって、決めることができる。
【0015】
付加的な供給路19は、水蒸気のみ、水のみ、あるいは水蒸気と水との両者を、系外から酸素供給路16へ供給することが可能である。酸素供給路16に水のみをたとえば噴霧状態で供給すると、バーナ14には酸素と水との気液混合流体が送り込まれる。一方、酸素供給路16に水蒸気と水との両者を、たとえば水を噴霧状体として供給すると、バーナ14には酸素と水蒸気と水との気液混合流体が送り込まれる。酸素と水蒸気と水との気液混合流体においては、水の一部または全部が水蒸気から熱を受けて気化することで水蒸気化することも起こり得る。いずれの場合も、それによって希釈された状態の酸素が、バーナ14へ送り込まれる。
【0016】
圧力容器11には、バーナ14により生じた水素燃焼ガスすなわち生成水蒸気に水を噴射するための水噴射ノズル20が設けられている。燃焼直後の高温の生成水蒸気と水とが混ざり合うことで、水蒸気の保有する熱により水が気化されたうえで昇温され、それによって、圧力容器11の内部に保有される水蒸気は、所望の温度および圧力に調整される。
【0017】
このような構成において、圧力容器11を運転する際には、水素供給路15からバーナ14へ水素を供給するとともに、付加的な供給路19からのたとえば水蒸気によって希釈された酸素を酸素供給路16からバーナ14へ供給して、バーナ14において水素を燃焼させる。すると、圧力容器の内部において燃焼水素ガスすなわち水蒸気が生成される。この水蒸気は、水素の燃焼によって生成されるものであるため、たとえば1000℃程度の高温である。
【0018】
そこで、水素燃焼ガスすなわち高温の水蒸気に向けて水噴射ノズル20から水を噴射する。すると、水素燃焼ガスは、噴射された水に気化および昇温のための熱を奪われて、その温度が低下する。反対に噴霧された水は、気化および昇温される。これにより、圧力容器11の内部の水蒸気は、使用に適した温度および圧力の状態となる。その状態の水蒸気は、水蒸気取出路17によって系外へ取り出され、利用に供される。
【0019】
圧力容器11から水蒸気取出路17へ取り出された水蒸気の一部は、水蒸気循環路18によって酸素供給路16へ送り込まれ、酸素供給路16に存在する、窒素を含まない純粋な酸素を希釈する。希釈された酸素は、バーナ14に送り込まれて、水素供給路15からの水素の燃焼のために利用される。酸素の希釈に用いられた水蒸気は、この燃焼により昇温されたうえで圧力容器11の内部に送り出される。酸素供給路16の酸素は、水蒸気循環路18からの水蒸気によって希釈されるとともに、必要に応じて付加的な供給路19からの水蒸気や水によって希釈されたうえで、バーナ14に供給される。酸素供給路16の酸素に水が噴霧状態などの状態で含まれる場合において、この水は、上述のように付加的な供給路19に存在する水蒸気が保有する熱により気化されたり、水蒸気循環路18からの水蒸気が保有する熱により気化されたり、バーナ14における燃焼時の高温により気化されたり、圧力容器11の内部に存在する水蒸気から熱を受けて気化されたりすることで、水蒸気化される。
【0020】
このように本発明によれば、水素が爆発的に燃焼する状態の発生を防止することができるうえに、燃焼の際に炭化水素系燃料や空気を用いないため、一酸化炭素や二酸化炭素や窒素酸化物などの発生を防止することもできる。
【符号の説明】
【0021】
11 圧力容器
14 バーナ
15 水素供給路
16 酸素供給路
17 水蒸気取出路
18 水蒸気循環路