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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】染毛用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/41 20060101AFI20230316BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230316BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A61K8/41
A61K8/34
A61K8/86
A61Q5/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019042375
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020143025
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502439647
【氏名又は名称】株式会社ダリヤ
(72)【発明者】
【氏名】松崎 晃一
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188397(JP,A)
【文献】特開2017-210432(JP,A)
【文献】特開2008-273882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物であって、
(A)トルエン-2,5-ジアミン
(B)セチルアルコールまたはステアリルアルコールから選ばれる1種以上
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤
(D)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
(E)モノエタノールアミン
を含有し、第1剤中の前記(B)成分の含有量が3~10質量%であり、第1剤中の前記(C)成分の含有量が0.4~4質量%であり、第1剤中の前記(D)成分の含有量が0.8~3質量%であり、第1剤中の前記(C)成分が、ポリオキシエチレンセチルエーテルであり、第2剤中の前記(B)成分の含有量が0.7~10質量%であり、第2剤中の(C)成分の含有量が0.4~5質量%であり、前記(C)成分の平均HLB値が染毛用組成物の第1剤および第2剤ともに14~17であり、染毛用組成物中の前記(C)成分に対する前記(B)成分との質量比(B)/(C)が3.11~7であり、染毛用組成物の40℃における粘度(V(40℃))に対する20℃における粘度(V(20℃))との粘度比V(20℃)/V(40℃)が0.7以上0.95未満であることを特徴とする染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染毛用組成物に関する。さらに詳しくは、染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物であって、染毛用組成物の第1剤および第2剤の乳化安定性および混合性に優れ、かつ高温でも良好な混合粘度を維持する染毛用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のファッション意識の高まりから、手軽に髪の色を変化させることのできるヘアカラーリング剤は、男女問わず多くの人に受け入れられている。ヘアカラーリング剤には、永久染毛剤、半永久染毛剤、脱色剤、一時着色料等、様々な種類があり、それぞれのニーズによって使用される。なかでも永久染毛剤は染毛効果の持続性に優れ、この特性から現在最も多くの人に使われているヘアカラーリング剤である。
【0003】
永久染毛剤として、酸化染料とアルカリ剤を含有する第1剤組成物と、過酸化水素などの酸化剤を含有する第2剤組成物からなる二剤式が広く利用されている。
【0004】
染毛用組成物には、染料中間体としてパラフェニレンジアミンが広く利用されてきたが、近年ではアレルギー等の安全性の観点からトルエン-2,5-ジアミンが利用されている。トルエン-2,5-ジアミンは、発色性ではパラフェニレンジアミンに劣る為、同様の染毛性を得ようとすると、より多くの酸化染料を配合しなければならない。
【0005】
染毛用組成物には、脱色性および染毛性の観点からアンモニアやその塩類が広く利用されている。しかしながらアンモニアやその塩類は刺激臭があるため、使用に際して、使用者に不快な思いをさせるといった問題があった。
【0006】
これら問題を解決するために様々な試みが行われている。
【0007】
例えば、特許文献1には、不快な刺激臭の低減を目的として、アルカノールアミンを含有する毛髪処理剤組成物が開示されている。
【0008】
特許文献2には、良好な染毛効果と感触向上を目的として、アルカノールアミンと高級アルコール、および第四級アンモニウム型カチオン界面活性剤を含有する毛髪化粧料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-146847号公報
【文献】特開2003-55174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の毛髪処理剤組成物は、アルカリ剤としてアンモニアやその塩類の代わりにモノエタノールアミン等の有機アミン類を用いることで、不快な刺激臭を低減させている。しかしながら、有機アミン類は刺激臭がせず、使用時に不快感を与えることの恐れはないが、アンモニアやその塩類に比べ染毛性や脱色力が劣る為、多量の酸化染料を配合する必要がある。
【0011】
特許文献2の毛髪化粧料組成物は、アルカリ剤としてアルカノールアミンを用い、良好な染毛効果を達成したが、白髪染め用ヘアカラーなど、濃い色調が望まれる場合においては、多くの酸化染料を配合する必要がある。
【0012】
特に、パラフェニレンジアミンより発色性が劣るトルエン-2,5-ジアミンや、アンモニアに比べ脱色力が劣るモノエタノールアミンを用いた系では、満足のいく染毛性を得られにくく、結果、多量の酸化染料を配合する必要がある。
【0013】
染毛用組成物の第1剤に酸化染料を多く配合すると、染毛用組成物の第2剤との混合時に酸化還元反応による発熱によって混合液の温度が高くなり、混合粘度の低下を引き起こし、塗布時のたれ落ちや、塗布後の放置中に液ダレといった問題が生じる。これを防ぐ為に第1剤の粘度を高くすることにより、混合粘度を調整しようとすると、染毛用組成物の第2剤との混合性が悪くなる。
【0014】
また、いずれの文献においても、高温時の混合粘度については考慮されていなかった。
【0015】
さらに、乳化物の安定性や染毛用組成物の第2剤との混合性の向上および毛髪への塗布性の向上を目的とし、多価アルコールを配合した染毛用組成物の第1剤が報告されているが、多価アルコールは染毛性や脱色力を抑制することでも知られている。
【0016】
そこで本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物であって、染毛用組成物の1剤および2剤の乳化安定性および混合性に優れ、かつ高温でも良好な混合粘度を維持する染毛用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、染毛用組成物にトルエン-2,5-ジアミン、炭素数16~18の高級アルコール、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤およびモノエタノールアミンを含有させ、非イオン性界面活性剤の平均HLB値と、炭素数16~18の高級アルコールと非イオン性界面活性剤との比率を特定範囲内なるように調整することで、上記課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は、染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物であって、
(A)トルエン-2,5-ジアミン
(B)セチルアルコールおよびステアリルアルコールから選ばれる1種以上
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上
(D)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
(E)モノエタノールアミン
を含有し、前記(C)成分の平均HLB値が染毛用組成物の第1剤および第2剤ともに14~17であり、染毛用組成物中の前記(C)成分に対する前記(B)成分との質量比(B)/(C)が1.35~7であることを特徴とする染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の染毛用組成物は、染毛用組成物の第1剤および第2剤の乳化安定性および混合性に優れ、かつ高温でも良好な混合粘度を維持する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、含有量を示す単位は、特に明記しない限り全て質量%である。
【0021】
本発明は、染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物であって、
(A)トルエン-2,5-ジアミン
(B)セチルアルコールおよびステアリルアルコールから選ばれる1種以上
(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上
(D)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム
(E)モノエタノールアミン
を含有し、前記(C)成分の平均HLB値が染毛用組成物の第1剤および第2剤ともに14~17であり、染毛用組成物中の前記(C)成分に対する前記(B)成分との質量比(B)/(C)が1.35~7であることを特徴とする染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物である。
【0022】
本発明の染毛用組成物の第1剤について説明する。
【0023】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、染毛性の観点から(A)トルエン-2,5-ジアミンを含有する。
【0024】
本発明で用いられる前記(A)成分の含有量は、特に限定されないが、染毛性の観点から、0.2~5%が好ましい。前記(A)成分が0.2%未満の場合、十分な染毛性が得られない恐れがある。また前記(A)成分が5%を超えても、染毛性はそれ以上の向上を期待できにくい。
【0025】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、染毛用組成物の第1剤の粘度調整の観点から(B)セチルアルコールおよびステアリルアルコールから選ばれる1種以上を含有する。
【0026】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性および染毛用組成物の第2剤との混合性の観点から、特に限定されないが、3~10%が好ましい。前記(B)成分が3%未満の場合、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性が低下する恐れがある。前記(B)成分が10%を超える場合、染毛用組成物の第2剤との混合性が低下する恐れがある。
【0027】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性の観点から(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上を含有する。
【0028】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性および高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、特に限定されないが、0.4~4.5%が好ましく、より好ましくは1~4%である。前記(C)成分が0.4%未満の場合、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性が低下する恐れがある。前記(C)成分が4.5%を超える場合、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性の低下および高温での良好な混合粘度の維持ができない恐れがある。
【0030】
本発明で用いられる前記(C)成分は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性の観点から、2種以上含有することが好ましい。
【0031】
本発明で用いられる前記(C)成分のHLB値は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性および高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、平均HLB値が14~17以下が好ましい。前記(C)成分のHLB値は14未満または17を超える場合では、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性の低下および高温での良好な混合粘度を維持できない恐れがある。また、前記(C)成分は、高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、HLB値が14以上のポリオキシエチレンセチルエーテルの組み合わせがより好ましい。
【0032】
本発明における「HLB」とは、親水性と親油性のバランス:HYDROPHILE―LIPOPHILE BALANCEの略称であって、界面活性剤の分子が持つ親水性と親油性の相対的な強さを表すパラメーターである。HLBの値が大きいほど親水性が強く、HLBの値が小さいほど親油性が強い。
【0033】
本発明におけるHLB値は、Griffinの式により求められる値であり、平均HLB値とは、前記(C)成分を1種単独で用いる場合はそのもの単独のHLB値を意味する。また、2種以上のポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤を組み合わせて用いる場合は、Griffinの式および各々の含有量を基に求められるこれら複数のポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤全体の平均HLB値を意味する。
【0034】
本発明による染毛用組成物の第1剤は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性の観点から(D)塩化ベヘニルトリメチルアンモニウムを含有する。
【0035】
本発明で用いられる前記(D)成分の含有量は、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性および高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、特に限定されないが、0.8~3%以下が好ましい。前記(D)成分が0.8%未満の場合、染毛用組成物の第1剤の乳化安定性が低下する恐れがある。前記(D)成分が3%を超える場合、高温での良好な混合粘度を維持できない恐れがある。
【0036】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、アルカリ剤として(E)モノエタノールアミンを含有する。
【0037】
本発明で用いられる前記(E)成分の含有量は、染毛性の観点から、特に限定されないが、0.5~8%が好ましい。前記(E)成分が0.5%未満の場合、十分な染毛性が得られない恐れがある。また前記(E)成分が8%を超えても、染毛性はそれ以上向上しにくいため、8%以下が好ましい。
【0038】
本発明の染毛用組成物の第1剤には(A)トルエン-2,5-ジアミン以外の酸化染料を含有することができる。
【0039】
本発明の染毛用組成物の第1剤に含有できる前記(A)成分以外の酸化染料とは、染料中間体やカップラー等の酸化染毛剤に用いられる染料を意味する。
【0040】
本発明の染毛用組成物の第1剤に用いる前記(A)成分以外の酸化染料は、特に限定されないが、パラフェニレンジアミン、オルトアミノフェノール、パラアミノフェノール、メタアミノフェノール、5-アミノオルトクレゾール、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、1-ナフトール、レゾルシンおよびそれらの塩類等が挙げられる。その他、「医薬部外品原料規格2006 統合版」(2013年11月発行、薬事日報社)に収載されたものも適宜用いることができる。
【0041】
本発明の染毛用組成物の第1剤には前記(B)成分以外の高級アルコールを含有することができる。
【0042】
本発明の染毛用組成物の第1剤に含有できる前記(B)成分以外の高級アルコールとしては、特に限定されないが、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0043】
本発明の染毛用組成物の第1剤には多価アルコールを含有することができる。
【0044】
本発明の染毛用組成物の第1剤に含有できる多価アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等が挙げられる。
【0045】
本発明による、染毛用組成物の第1剤における多価アルコールの含有量は、染毛効果の観点から、特に限定されないが、好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。
【0046】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、上記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、HC染料、前記(C)成分および前記(D)成分以外の界面活性剤、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、金属封鎖剤、酸化防止剤、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、色素、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0047】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、その剤型がクリーム状または乳液状であることが好ましい。
【0048】
本発明による、染毛用組成物の第1剤は、染毛用組成物の第2剤との混合性の観点から、20℃の条件下で粘度が5,000~20,000mPa・sであることが好ましい。
【0049】
本発明の染毛用組成物の第2剤について説明する。
【0050】
本発明による、染毛用組成物の第2剤は、染毛用組成物の第2剤の粘度調整の観点から(B)セチルアルコールおよびステアリルアルコールから選ばれる1種以上を含有する。
【0051】
本発明で用いられる前記(B)成分の含有量は、染毛用組成物の第2剤の乳化安定性および染毛用組成物の第1剤との混合性の観点から、特に限定されないが、0.7~10%が好ましい。前記(B)成分が0.7%未満の場合、染毛用組成物の第2剤の乳化安定性が低下する恐れがある。前記(B)成分が10%を超える場合、染毛用組成物の第1剤との混合性が低下する恐れがある。
【0052】
本発明による、染毛用組成物の第2剤は、染毛用組成物の第2剤の乳化安定性の観点から(C)ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤から選ばれる1種以上を含有する。
【0053】
本発明で用いられる前記(C)成分としては、特に限定されないが、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0054】
本発明で用いられる前記(C)成分の含有量は、染毛用組成物の第2剤の乳化安定性および高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、特に限定されないが、0.4~5%が好ましい。前記(C)成分が0.4%未満の場合、染毛用組成物の第2剤の乳化安定性が低下する恐れがある。前記(C)成分が5%を超える場合、染毛用組成物の第2剤乳化安定性の低下および高温での良好な混合粘度の維持ができない恐れがある。
【0055】
本発明で用いられる前記(C)成分のHLBは、染毛用組成物の第2剤の乳化安定性および高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、平均HLB値が14~17が好ましい。
【0056】
本発明による、染毛用組成物の第2剤には、毛髪に含まれるメラニンの脱色効果の観点から酸化剤を含有する。
【0057】
本発明に用いる酸化剤は、特に限定されないが、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、ピロリン酸塩の過酸化水素付加物、臭素酸ナトリウム等が挙げられる。前記酸化剤のうち、毛髪に含まれるメラニンの脱色性を向上の観点から、過酸化水素が好ましい。これらの酸化剤は少なくとも1種以上を含有してよい。
【0058】
本発明で用いられる前記酸化剤の含有量は、染毛性の観点から、特に限定されないが、2~6%が好ましい。前記酸化剤が2%未満の場合、十分な染毛性が得られない恐れがある。また前記酸化剤が6%を超えても、染毛性はそれ以上向上しにくいため、6%以下が好ましい。
【0059】
本発明の染毛用組成物の第2剤には前記(B)成分以外の高級アルコールを含有することができる。
【0060】
本発明の染毛用組成物の第2剤に含有できる前記(B)成分以外の高級アルコールとしては、特に限定されないが、例えばラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0061】
本発明による、染毛用組成物の第2剤は、その剤型がクリーム状または乳液状であることが好ましい。
【0062】
本発明による、染毛用組成物の第2剤は、染毛用組成物の第1剤との混合性の観点から、20℃の条件下で粘度が800~15,000mPa・sであることが好ましい。
【0063】
本発明による、染毛用組成物の第2剤は、酸化剤の安定性を向上させる観点から、リン酸等の酸、またはそれらの塩類、エデト酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸等の金属封鎖剤、またはそれらの塩類を含有することができる。
【0064】
本発明による、染毛用組成物の第2剤は、上記成分の他に必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で上記成分以外の通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば、前記(C)成分および前記(D)成分以外の界面活性剤、多価アルコール、油性成分、保湿剤、増粘剤、薬効成分、蛋白誘導体、加水分解蛋白、アミノ酸類、植物性抽出物、生薬抽出物、ビタミン類、防腐剤、pH調整剤、香料等から選ばれる少なくとも1種以上を含有することができる。ただし、これら例示に限定されるものでない。
【0065】
本発明による、染毛用組成物に含有される前記(B)成分/前記(C)成分との質量比(B)/(C)は、高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、1.35~7であることが好ましい。
【0066】
本発明における染毛用組成物の第1剤および第2剤の20℃の条件下における粘度は、常法にて調製して得られ染毛用組成物の第1剤および第2剤を各々140gのサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填し、20℃で1日間放置し調温した後に、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、回転速度30rpmの条件下で測定したものである。
【0067】
各表において「混合粘度:V(20℃)」とは、染毛用組成物の第1剤および第2剤を20℃で1日間静置し調温した後に、100mLのグリフィンビーカーに各々40g量り取り、ガラス棒を用いて均一になるまで混合し、得られた混合物を50mLのグリフィンビーカーに移し、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、回転速度30rpmの条件下で測定した粘度の値である。
【0068】
各表において「混合粘度:V(40℃)」とは、染毛用組成物の第1剤および第2剤を40℃で1日間放置し調温した後に、100mLのグリフィンビーカーに各々40g量り取り、ガラス棒を用いて均一になるまで混合し、得られた混合物を50mLのグリフィンビーカーに移し、ヘリカルスタンド付B型粘度計(モデル:デジタル粘度計TVB-10M、東機産業株式会社製)により、4号ローターにて1分間、回転速度30rpmの条件下で測定した粘度の値である。
【0069】
各表において「混合粘度比:V(20℃)/V(40℃)」とは、前記の測定法により測定された20℃での混合粘度「V(20℃)」と40℃での混合粘度「V(40℃)」の比率「V(20℃)/V(40℃)」の値を示したものである。
【0070】
本発明による、「混合粘度比:V(20℃)/V(40℃)」は、高温でも良好な混合粘度を維持する観点から、0.7以上0.95未満であることが好ましく、0.8以上0.91未満であることがより好ましい。
【0071】
なお、本発明における高温とは、40℃を意味する。
【0072】
本発明に用いられる染毛用組成物は、ポリ容器、アルミチューブ容器、エアゾール容器、パウチ容器等の各種容器に充填され、使用時まで保存される。
【実施例
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
[乳化安定性]
本明細書に示す「乳化安定性」に係る評価試験においては、染毛用組成物の第1剤および第2剤を140gのサンプル瓶(食品140:第一硝子株式会社製)に120g充填した後に、50℃条件下で保存し、目視にて外観状態を確認し、以下に示すように評価した。
【0075】
[乳化安定性」の評価基準
○:50℃条件下1ヶ月以上経過しても組成物に変化が確認されなかった。
△:50℃条件下1ヶ月未満で若干の分離が確認された。
×:50℃条件下3日未満で分離が確認された。
【0076】
本明細書に示す「混合性」に係る評価試験においては、染毛用組成物の第1剤および第2剤を20℃で1日間放置し調温した後に、100mLのグリフィンビーカーに各々40g量り取り、ガラス棒を用いて攪拌し、均一に混合するまでに攪拌した回数により、下記の評価基準で評価した。
【0077】
◎:50回未満で均一に混合した。
○:100回未満で均一に混合した。
×:100回攪拌しても、均一に混合されず、ダマ等が確認された。
【0078】
本明細書に示す「高温時での混合粘度変化」に係る評価試験においては前記測定法により「混合粘度比:V(20℃)/V(40℃)」を算出し、下記の評価基準で評価した。
【0079】
◎:V(20℃)/V(40℃)=0.8以上0.91未満
○:V(20℃)/V(40℃)=0.7以上0.8未満および0.91以上0.95未満
×:V(20℃)/V(40℃)=0.7未満および0.95以上
【0080】
本明細書に示す評価試験において、染毛用組成物に含まれる成分、および、その含有量を種々変更しながら実施した。各成分の含有量を示す単位は全て質量%であり、これを常法にて調製した。
【0081】
本発明の表2、表3および表4の評価試験においては、表1記載の染毛用組成物の第2剤を用いた。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
表2の実施例1~7では、前記(B)成分の種類および含有量を変えても、比較例1~3と比較して、良好な乳化安定性および混合性と、高温でも良好な混合粘度を維持する結果が得られた。
【0085】
【表3】
【0086】
表3の実施例8~14では、前記(C)成分の種類および含有量を変えても、比較例4~7と比較して、良好な乳化安定性および混合性と、高温でも良好な混合粘度を維持する結果が得られた。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の実施例15~16では、前記(D)成分の含有量を変えても、比較例8~10と比較して、良好な乳化安定性および混合性と、高温でも良好な混合粘度を維持する結果が得られた。
【0089】
【表5】
【0090】
本発明の表5の評価試験においては、実施例3の染毛用組成物の第1剤を用いた。
表5の実施例17~21では、前記(B)成分および前記(C)成分の含有量を変えても、比較例11~12と比較して、良好な乳化安定性および混合性と、高温でも良好な混合粘度を維持する結果が得られた。
【0091】
【表6】
【0092】
本発明の表6の評価試験においては、実施例6~9の染毛用第1剤組成物と実施例18および21の染毛用第2剤組成物を用いた。
表6記載の染毛用第1剤および第2剤組成物のどの組み合わせにおいても、良好な乳化安定性および混合性と、高温でも良好な混合粘度を維持する結果が得られた
【0093】
表7に染毛用組成物の第1剤の処方例を列挙する。以下の実施例22~27の染毛用組成物の第1剤と表1記載の染毛用組成物の第2剤および実施例17~21の染毛用組成物の第2剤を1:1で混合して得られた染毛剤組成物は、乳化安定性、混合性および高温時の粘度変化のいずれも良好な結果が得られた。
【0094】
【表7】
【0095】
表8に染毛用組成物の第2剤の処方例を列挙する。以下の実施例28~30の染毛用組成物の第2剤と実施例1~16および実施例22~26の染毛用組成物の第1剤を1:1で混合して得られた染毛剤組成物は、乳化安定性、混合性および高温時の粘度変化のいずれも良好な結果が得られた。
【0096】
【表8】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、染毛用組成物の第1剤および第2剤を用時混合して使用する染毛用組成物であって、染毛用組成物の第1剤および第2剤の乳化安定性および混合性に優れ、かつ高温でも良好な混合粘度を維持する染毛用組成物を提供することができる。