(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】レーザを用いた予防的な歯の硬組織の治療のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/06 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
A61C19/06 A
(21)【出願番号】P 2019561966
(86)(22)【出願日】2018-05-10
(86)【国際出願番号】 US2018032022
(87)【国際公開番号】W WO2018209054
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-05-07
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514052601
【氏名又は名称】コンバージェント デンタル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グローブス, ウィリアム エイチ. ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ドレッサー, チャールズ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】モンティ, ネイサン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ジジェ
(72)【発明者】
【氏名】リッチ, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】キヤール, ジョン アール.
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0170586(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0164291(US,A1)
【文献】特表2014-511215(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0143703(US,A1)
【文献】特開2016-163749(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0280260(US,A1)
【文献】実開昭60-113014(JP,U)
【文献】国際公開第2012/008599(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムであって、前記システムは、
8~12ミクロンの範囲内の波長を有するパルスレーザビームを発生させるように構成されるCO
2レーザ源と、
前記レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、前記少なくとも1つの光学系は、レーザビーム幅を画定し、前記歯の硬組織の表面上の場所または前記場所の近傍において前記パルスレーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、
前記画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するように構成されるコントローラであって、前記パルスレーザビームは、
上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスであって、前記上限閾値フルエンスは、前記歯の硬組織の前記表面の融解および/またはアブレーションを引き起こす最小フルエンスとして定義される、最大局所フルエンスと、
下限閾値フルエンスを上回る少なくとも1つの他の局所フルエンスであって、前記下限閾値フルエンスは、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こすフルエンスとして定義される、少なくとも1つの他の局所フルエンスと
を有するフルエンスプロファイルを焦点において有する、コントローラと
、
前記少なくとも1つの光学系のビームの下方に配置されたビーム誘導システムであって、前記ビーム誘導システムは、
(i)前記レーザ源によって発生させられた前記レーザビームの第1のレーザパルスを前記歯の硬組織の治療領域内の初期場所に指向することであって、これにより、前記初期場所の表面温度が、前記第1のレーザパルス中に初期表面温度から上昇した表面温度まで上昇し、前記上昇した温度が、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回る、ことと、
(ii)その後、前記レーザ源によって発生させられた前記レーザビームの1つ以上の中間レーザパルスを前記治療領域内の1つ以上の中間場所に指向することと、
(iii)(i)および(ii)の後、前記レーザビームの別のレーザパルスを前記初期場所に指向することと
を行うように適合されている、ビーム誘導システムと
を備える、システム。
【請求項2】
前記融解は、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記アブレーションは、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記フルエンスプロファイルは、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、およびトップハットプロファイルのうちの少なくとも1つをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御し、前記パルスエネルギーを制御するように適合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記パルスレーザビームは、0.1~1,000マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記パルスレーザビームは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記歯の硬組織の上に、および前記歯の硬組織を横断してのうちの少なくとも1つで流動するように流体を指向するための流体システムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記流体は、空気、窒素、および水のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記流体は、液体を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記流体は、フッ化物を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記流体は、圧縮性流体を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項17】
前記流体システムは、流体膨張要素をさらに備える、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記流体が、前記パルスレーザビームと非同期的に、前記歯の硬組織の上に、および前記歯の硬組織を横断してのうちの少なくとも1つで指向されるように、前記流体システムを制御する流体コントローラをさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項19】
前記流体が、前記パルスレーザビームと同時に、前記歯の硬組織の上に、および前記歯の硬組織を横断してのうちの少なくとも1つで指向されるように、前記流体システムを制御する流体コントローラをさらに備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項20】
いかなるパルスレーザビームも前記場所に向かって指向されていない間に、前記場所の表面温度を低下した温度まで減少させるために十分な前記流体の流率を調節するための流量コントローラをさらに備え、前記低下した温度および温度上昇量の合計は、最大でも
前記上昇した温度に等しい、請求項12に記載のシステム。
【請求項21】
前記流体は、圧縮空気を含み、
前記流率は、1SLPM~100SLPMの範囲内である、
請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記流体システムは、前記歯の硬組織を横断して前記流体を流動させる陰圧差を発生させるように適合される真空源を備える、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年5月12日に出願された米国仮特許出願第62/505,450号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、該仮特許出願の全内容は、全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
齲蝕は、細菌によって引き起こされる。細菌は、グルコース、フルクトース、およびスクロース等の糖類を、乳酸、酪酸、および酢酸等の酸に変換する。細菌由来の酸は、経時的に、脱塩として公知であるプロセスにおいて歯の硬組織を分解する。残念ながら、齲蝕または虫歯の治療は、殆どの読者によって経験的に公知である。したがって、「虫歯になること」を回避することが望ましい理由が、殆どの読者によって理解される。
【0003】
学術研究は、レーザが、歯の硬組織を齲蝕形成および一般に酸溶解により耐性にするために、使用され得ることを示している。20年にわたって、歯のエナメル質についての研究は、レーザ治療が酸溶解率を低減させることを示している。これらの所見は、生体内および原位置研究によって裏付けられている。例えば、University of California SanFranciscoのDr. Peter Rechmann et al.によって行われ、2011年に発表された研究は、9.6ミクロンレーザを用いて治療された患者のエナメル質に関して、12週間にわたって87%脱塩阻止を見出した。本主題に関連する研究の量および質により、具体的レーザ治療が虫歯の形成を阻止するという根拠が、現在、歯科研究界では広く普遍的と見なされている。
【0004】
歯牙酸蝕症は、口腔内細菌によって形成されない酸による、歯の硬組織の酸溶解として定義される。歯牙酸蝕症の主要な原因は、酸性飲料および胃酸の逆流を含む。虫歯と異なり、歯牙酸蝕症の治療は、あまり広く公知ではない。また、虫歯と異なり、歯牙酸蝕症の治療は、患者の生命の他の側面に影響を及ぼす可能性が高い。フッ化物治療が、歯牙酸蝕症を妨害するために使用されてもよいが、多くの場合、入り交じった結果を伴う。歯牙酸蝕症のより効果的な治療は、通常、生活様式の変化の処方、例えば、ソーダおよびジュースのような酸性飲料を飲むことを長期的に断つことである。生活様式の変化は、殆どの患者にとって同意することが困難であり、一部の歯牙酸蝕症患者にとって実際には不可能である。例えば、その口の中に酸性のワインを繰り返し保持することから歯牙酸蝕症に罹患するソムリエは、転職しなければ、その歯牙酸蝕症を治療するために必要な生活様式の変化を起こすことができない。歯牙酸蝕症を妨害し、虫歯の形成を阻止する歯科治療が、したがって、所望される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムに関する。本システムは、レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、レーザビーム幅を画定し、歯の硬組織の表面またはその近傍においてレーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するように適合される、コントローラであって、レーザビームパルスは、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスであって、上限閾値フルエンスは、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義される、最大局所フルエンスと、下限閾値フルエンスを上回る少なくとも1つの他の局所フルエンスであって、下限閾値フルエンスは、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、フルエンスとして定義される、少なくとも1つの他の局所フルエンスとを有する、フルエンスプロファイルを焦点において有する、コントローラとを含むことができる。
【0006】
上記の側面のいくつかの実施形態では、表面改質は、融解および/またはアブレーションを含む。融解および/またはアブレーションは、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定されることができる。酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定されることができる。酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含むことができる。ある場合には、表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定されることができる。ある事例では、フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、および/またはトップハットプロファイルを含むことができる。レーザ源は、8~12ミクロンの範囲内の波長を有する、レーザビームを生成することができる。ある事例では、コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および/または平均レーザ出力電力を制御し、パルスエネルギーを制御するように適合される。
【0007】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する方法に関する。本方法は、レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、少なくとも1つの光学系を使用して、レーザビーム幅を画定し、歯の硬組織の表面またはその近傍においてレーザビームを集束させるステップと、画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するステップであって、レーザビームパルスは、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスであって、上限閾値フルエンスは、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義される、最大局所フルエンスと、下限閾値フルエンスを上回る少なくとも1つの他の局所フルエンスであって、下限閾値フルエンスは、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、フルエンスとして定義される、少なくとも1つの他の局所フルエンスとを有する、フルエンスプロファイルを焦点において有する、ステップとを含むことができる。
【0008】
上記の側面のいくつかの実施形態では、表面改質は、融解および/またはアブレーションを含むことができる。融解および/またはアブレーションは、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定されることができる。酸溶解は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定されることができる。酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含むことができる。ある場合には、表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される。フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、および/またはトップハットプロファイルを含むことができる。ある事例では、レーザビームパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有する。ある場合には、パルスエネルギーを制御するステップは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御するステップを含むことができる。本方法はさらに、治療後溶液を歯の硬組織に適用するステップを含むことができる。治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。
【0009】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するための別のシステムに関する。本システムは、レーザビームの複数のパルスを発生させるためのレーザ源と、初期場所の表面温度が、第1のレーザパルス中に初期表面温度から上昇した表面温度まで上昇され、上昇した温度が、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回るように、第1のレーザパルスを歯の硬組織の治療領域内の初期場所に指向し、1つ以上の中間レーザパルスを治療領域内の1つ以上の中間場所に指向し、初期場所の冷却が表面温度と初期表面温度との間の差を上昇した温度の50%以下にさせる、冷却周期後に、別のレーザパルスを初期場所(または初期場所の近隣)に指向するように適合される、ビーム誘導システムとを含むことができる。
【0010】
上記の側面のいくつかの実施形態では、初期表面温度は、摂氏20~40度の範囲内である。上昇した表面温度は、摂氏300~1,800度の範囲内であり得る。ある事例では、第1のレーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を有する。ある事例では、第1のレーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを有する。初期場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を有することができる。ある場合には、冷却周期は、少なくとも500マイクロ秒である。ある事例では、1つ以上の中間場所は、初期場所に重複しない。ある事例では、1つ以上の中間場所は、レーザパルスエネルギーおよびレーザビーム幅のうちの少なくとも1つの関数であり得る、規定閾値量を超えない量だけ初期場所に重複する。レーザビームは、8~12ミクロン(例えば、9~10ミクロンまたは10~11ミクロン)の範囲内の波長を有することができる。ある事例では、上昇した温度は、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、温度として定義される下限温度閾値と少なくとも等しい。
【0011】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する別の方法に関する。本方法は、第1のレーザパルスを歯の硬組織の治療領域内の初期場所に指向するステップと、初期場所の表面温度を、第1のレーザパルス中に、初期表面温度から上昇した表面温度まで上昇させるステップであって、上昇した温度は、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回る、ステップと、1つ以上の中間レーザパルスを治療領域内の1つ以上の中間場所に指向するステップと、初期場所の冷却が表面温度と初期表面温度との間の差を上昇した温度の50%以下にさせる、冷却周期後に、別のレーザパルスを初期場所(または初期場所の近隣)に指向するステップとを含むことができる。
【0012】
上記の側面のいくつかの実施形態では、初期表面温度は、摂氏20~40度の範囲内である。上昇した表面温度は、摂氏300~1,800度の範囲内であり得る。ある事例では、第1のレーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を有する。ある事例では、第1のレーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを有する。初期場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を有することができる。ある場合には、冷却周期は、少なくとも500マイクロ秒である。ある事例では、1つ以上の中間場所は、初期場所に重複しない。ある事例では、1つ以上の中間場所は、レーザパルスエネルギーおよびレーザビーム幅のうちの少なくとも1つの関数であり得る、規定閾値量を超えない量だけ初期場所に重複する。レーザビームは、8~12ミクロン(例えば、9~10ミクロンまたは10~11ミクロン)の範囲内の波長を有することができる。ある事例では、上昇した温度は、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、温度として定義される下限温度閾値と少なくとも等しい。本方法はさらに、治療後溶液を歯の硬組織に適用するステップを含むことができる。治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。
【0013】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するための別のシステムに関する。本システムは、レーザビームの複数のパルスを発生させるためのレーザ源と、レーザビーム幅を画定するように適合される、少なくとも1つの光学構成要素と、レーザビームパルスが、歯の硬組織の表面にフルエンスプロファイルを有するように、画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するように適合される、コントローラであって、プロファイルは、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、フルエンスとして定義される、下限閾値フルエンスと少なくとも等しい局所フルエンスを備える、コントローラと、複数のレーザビームパルスを歯の硬組織上の個別の場所に指向するように適合される、ビーム誘導システムであって、第1のレーザビームパルスは、第1の場所に指向され、別のレーザビームパルスは、レーザビーム幅に基づく間隔によって第1の場所から分離される別の場所に指向される、ビーム誘導システムとを含むことができる。
【0014】
上記の側面のいくつかの実施形態では、酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される。酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含むことができる。ある場合には、表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される。フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、および/またはトップハットプロファイルを含むことができる。複数のレーザビームパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有することができる。ある場合には、コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および/または平均レーザ出力電力を制御し、パルスエネルギーを制御するように適合される。ある事例では、間隔はさらに、治療フルエンス幅(下記で定義される)に基づくことができる。
【0015】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する別の方法に関する。本方法は、レーザビームの複数のパルスを発生させるステップと、少なくとも1つの光学構成要素を使用して、レーザビーム幅を画定するステップと、レーザビームパルスが、歯の硬組織の表面にフルエンスプロファイルを有するように、画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するステップであって、プロファイルは、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、フルエンスとして定義される、下限閾値フルエンスと少なくとも等しい局所フルエンスを備える、ステップと、第1のレーザビームパルスを歯の硬組織上の第1の場所に指向するステップと、別のレーザビームパルスを、レーザビーム幅に基づく間隔によって第1の場所から分離される別の場所に指向するステップとを含むことができる。
【0016】
上記の側面のいくつかの実施形態では、酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される。酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含むことができる。ある場合には、表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される。フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、および/またはトップハットプロファイルを含むことができる。複数のレーザビームパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有することができる。ある場合には、パルスエネルギーを制御するステップは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および/または平均レーザ出力電力を制御するステップを含む。ある事例では、間隔はさらに、治療フルエンス幅(下記で定義される)に基づくことができる。本方法はさらに、治療後溶液を歯の硬組織に適用するステップを含むことができる。治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。
【0017】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するための別のシステムに関する。本システムは、歯の硬組織の治療領域内の場所に向かって指向されるレーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、場所の表面温度が、レーザパルス中に温度上昇量によって最大で上昇した温度まで上昇され、上昇した温度が、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回るように、レーザ源を制御するように適合される、コントローラと、歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで流動するように流体を指向するための流体システムとを含むことができる。
【0018】
種々の実施形態では、流体は、空気、窒素、水、液体、フッ化物、および/または圧縮性流体を含むことができる。本システムはさらに、流体膨張要素を含むことができる。ある場合には、本システムは、流体が、レーザパルスと非同期的または同時に、歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで指向されるように、流体システムを制御する、流体コントローラを含む。レーザパルスは、0.1~1,000マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を含むことができる。レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを含むことができる。レーザビームは、8~12ミクロン(例えば、9~10ミクロンまたは10~11ミクロン)の範囲内の波長を有することができる。場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を有することができる。ある場合には、本システムは、いかなるレーザビームパルスも場所に向かって指向されていない間に、場所の表面温度を低下した温度まで減少させるために十分な流体の流率を調節するための流量コントローラを含み、低下した温度および温度上昇量の合計は、最大でも上昇した温度に等しい。ある場合には、流体は、圧縮空気を含むことができ、流率は、1SLPM~100SLPMの範囲内である。流体システムは、歯の硬組織を横断して流体を流動させる、陰圧差を発生させるように適合される、真空源を含むことができる。
【0019】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する別の方法に関する。本方法は、レーザ源から、歯の硬組織の治療領域内の場所に向かって指向されるレーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、場所の表面温度が、レーザパルス中に温度上昇量によって最大で上昇した温度まで上昇され、上昇した温度が、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回るように、レーザ源を制御するステップと、歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで流動するように流体を指向するステップとを含むことができる。
【0020】
種々の実施形態では、流体は、空気、窒素、水、液体、フッ化物、および/または圧縮性流体を含むことができる。本方法は、歯の硬組織上に流体を指向することに先立って、圧縮性流体を膨張させるステップを含むことができる。流体を指向するステップは、レーザパルスを生成するステップと非同期的または同時に実施されることができる。レーザパルスは、0.1~1,000マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を含むことができる。レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを含むことができる。レーザビームは、8~12ミクロン(例えば、9~10ミクロンまたは10~11ミクロン)の範囲内の波長を有することができる。場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を有することができる。本方法はさらに、いかなるパルスバーストも場所に向かって指向されていない間に、場所の表面温度を低下した温度まで減少させるために十分な流体の流率を調節するステップを含むことができ、低下した温度および温度上昇量の合計は、最大でも上昇した温度に等しい。ある場合には、流体は、圧縮空気を含むことができ、流率は、1SLPM~100SLPMの範囲内である。本方法はさらに、歯の硬組織を横断して流体を流動させる、陰圧差を発生させるステップを含むことができる。ある場合には、本方法はさらに、治療後溶液を歯の硬組織に適用するステップを含むことができる。治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。
【0021】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織の治療領域を治療するためのシステムに関し、治療領域は、治療領域に付着した染色薄膜を有する。本システムは、治療領域内の場所に向かって指向されるレーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、場所の表面温度が、レーザパルス中に、少なくとも、染色薄膜の少なくとも一部の除去のために必要な温度まで上昇されるように、レーザ源を制御するように適合される、コントローラとを含むことができる。
【0022】
種々の実施形態では、染色は、エリスロシン、フロキシン、ビスマルクブラウン、ムチカルミン、および/または食品着色料を含むことができる。ある場合には、コントローラはさらに、レーザパルス中に、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、温度として定義される下限治療閾値温度を上回って、場所の表面温度を上昇させるように適合されることができる。ある場合には、下限治療閾値温度は、摂氏300度を上回る。レーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を含むことができる。レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを含むことができる。場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を含むことができる。レーザビームは、8~12ミクロン(例えば、9~10ミクロンまたは10~11ミクロン)の範囲内の波長を有することができる。ある事例では、染色は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含む。
【0023】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織の治療領域を治療する別の方法に関し、治療領域は、治療領域に付着した染色薄膜を含む。本方法は、レーザ源からレーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、治療領域内の場所に向かってレーザパルスを指向するステップと、場所の表面温度が、レーザパルス中に、少なくとも、染色薄膜の少なくとも一部の除去のために必要な温度まで上昇されるように、レーザ源を制御するステップとを含むことができる。
【0024】
種々の実施形態では、染色は、エリスロシン、フロキシン、ビスマルクブラウン、ムチカルミン、および/または食品着色料を含むことができる。ある場合には、本方法はさらに、表面温度を上昇させるステップを含むことができる。下限治療温度は、(i)歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加、および(ii)歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少のうちの少なくとも1つを引き起こす、温度として定義されることができる。ある場合には、下限治療閾値温度は、摂氏300度を上回る。レーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を含むことができる。レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを含むことができる。場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を含むことができる。レーザビームは、8~12ミクロン(例えば、9~10ミクロンまたは10~11ミクロン)の範囲内の波長を有することができる。ある事例では、染色は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含む。本方法はさらに、治療後溶液を歯の硬組織に適用するステップを含むことができる。治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。
【0025】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するための別のシステムに関する。本システムは、レーザビームの複数のパルスを発生させるためのレーザ源と、レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、歯の硬組織の表面またはその近傍においてレーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、複数のレーザパルスの少なくとも一部のエネルギーを測定するために適合される、レーザエネルギーセンサと、複数のレーザビームパルスのうちの各1つが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有するフルエンスプロファイルを焦点において有し、上限閾値フルエンスが、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、測定されたエネルギーに応答して、レーザ源を制御するように適合される、コントローラとを含むことができる。
【0026】
種々の実施形態では、レーザエネルギーセンサは、ヒ化インジウムセンサ、水銀カドミウムテルルセンサ、熱電対列、フォトダイオード、および/または光検出器を含むことができる。本システムはさらに、レーザエネルギーセンサに向かって複数のレーザパルスの一部を指向するように適合される、ビームピックオフを含むことができる。ビームピックオフは、反射性減光フィルタ、部分的透過性ミラー、および/またはビーム合成器を含むことができる。ビームピックオフは、レーザエネルギーセンサの損傷閾値に基づいて選択されることができる。ある場合には、コントローラは、パルスあたりのレーザエネルギーに従って、焦点におけるレーザビームの幅およびレーザビームのテーパ化を制御するように適合されることができる。ある場合には、コントローラは、焦点におけるレーザビームの幅に従って、(i)レーザ電力および/または(ii)パルス持続時間を制御するように適合されることができる。
【0027】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する別の方法に関する。本方法は、レーザ源からレーザビームの複数のパルスを発生させるステップと、レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系を使用して、歯の硬組織の表面またはその近傍においてレーザビームを集束させるステップと、複数のレーザビームパルスの少なくとも一部のエネルギーを測定するステップと、複数のレーザビームパルスのうちの各1つが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有するフルエンスプロファイルを焦点において有し、上限閾値フルエンスが、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、測定されたエネルギーに応答して、レーザ源を制御するステップとを含むことができる。
【0028】
種々の実施形態では、測定されたエネルギーは、(i)各レーザビームパルスからのエネルギーの一部および/または(ii)各レーザビームパルスからのエネルギーの実質的に全てを含むことができる。本方法は、複数のレーザビームパルスの少なくとも一部の測定されたエネルギーを感知するステップを含むことができる。本方法は、複数のレーザビームパルスからエネルギーの信号部分を取り出すステップを含むことができ、複数のレーザビームパルスの少なくとも一部の測定されたエネルギーを感知するステップは、エネルギーの信号部分の測定されたエネルギーを感知するステップを含む。ある場合には、本方法は、焦点におけるレーザビームの幅を制御するステップと、パルスあたりのレーザエネルギーに従って、レーザビームをテーパ化するステップとを含むことができる。ある場合には、本方法は、焦点におけるレーザビームの幅に従って、(i)レーザ電力および/または(ii)パルス持続時間を制御するステップを含むことができる。ある事例では、本方法は、治療後溶液を歯の硬組織に適用するステップを含むことができる。治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。
【0029】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するための別のシステムに関する。本システムは、レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、レーザビーム幅を画定し、歯の硬組織の表面またはその近傍においてレーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、レーザビームパルスが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有する、フルエンスプロファイルを焦点において有し、上限閾値フルエンスが、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、定義されたビーム幅に基づいてパルスエネルギーを制御するように適合される、コントローラと、治療後溶液を歯の硬組織に適用するように適合される、治療後送達システムとを含むことができる。種々の実施形態では、治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。ある事例では、コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および/または平均レーザ出力電力を制御し、パルスエネルギーを制御するように適合される。
【0030】
別の側面では、本発明は、酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する別の方法に関する。本方法は、レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、少なくとも1つの光学系を使用して、レーザビーム幅を画定し、歯の硬組織の表面またはその近傍においてレーザビームを集束させるステップと、レーザビームパルスが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有する、フルエンスプロファイルを焦点において有し、上限閾値フルエンスが、歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、定義されたビーム幅に基づいてパルスエネルギーを制御するステップと、治療後溶液を歯の硬組織に送達するステップとを含むことができる。種々の実施形態では、治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、および/またはリン酸塩を含むことができる。ある事例では、パルスエネルギーを制御するステップは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および/または平均レーザ出力電力を制御するステップを含む。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムであって、前記システムは、
レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、
前記レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、前記少なくとも1つの光学系は、レーザビーム幅を画定し、前記歯の硬組織の表面またはその近傍において前記レーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、
前記画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するように適合されるコントローラであって、前記レーザビームパルスは、
上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスであって、前記上限閾値フルエンスは、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義される、最大局所フルエンスと、
下限閾値フルエンスを上回る少なくとも1つの他の局所フルエンスであって、前記下限閾値フルエンスは、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こすフルエンスとして定義される、少なくとも1つの他の局所フルエンスと
を有する、フルエンスプロファイルを焦点において有する、コントローラと
を備える、システム。
(項目2)
前記表面改質は、融解およびアブレーションのうちの少なくとも1つを含む、項目1に記載のシステム。
(項目3)
前記融解は、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定される、項目2に記載のシステム。
(項目4)
前記アブレーションは、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定される、項目2に記載のシステム。
(項目5)
前記酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される、項目1に記載のシステム。
(項目6)
前記酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含む、項目5に記載のシステム。
(項目7)
前記表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される、項目1に記載のシステム。
(項目8)
前記フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、およびトップハットプロファイルのうちの少なくとも1つを備える、項目1に記載のシステム。
(項目9)
前記レーザ源は、8~12ミクロンの範囲内の波長を有するレーザビームを生成する、項目1に記載のシステム。
(項目10)
前記コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御し、前記パルスエネルギーを制御するように適合される、項目1に記載のシステム。
(項目11)
前記レーザパルスは、0.1~1,000マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、項目1に記載のシステム。
(項目12)
前記レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、項目1に記載のシステム。
(項目13)
前記場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を備える、項目1に記載のシステム。
(項目14)
前記歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで流動するように流体を指向するための流体システムをさらに備える、項目1に記載のシステム。
(項目15)
前記流体は、空気、窒素、および水のうちの少なくとも1つを含む、項目14に記載のシステム。
(項目16)
前記流体は、液体を含む、項目14に記載のシステム。
(項目17)
前記流体は、フッ化物を含む、項目14に記載のシステム。
(項目18)
前記流体は、圧縮性流体を含む、項目14に記載のシステム。
(項目19)
前記流体システムはさらに、流体膨張要素を備える、項目18に記載のシステム。
(項目20)
前記流体が、前記レーザパルスと非同期的に、前記歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで指向されるように、前記流体システムを制御する流体コントローラをさらに備える、項目14に記載のシステム。
(項目21)
前記流体が、前記レーザパルスと同時に、前記歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで指向されるように、前記流体システムを制御する流体コントローラをさらに備える、項目14に記載のシステム。
(項目22)
いかなるレーザビームパルスも前記場所に向かって指向されていない間に、前記場所の表面温度を低下した温度まで減少させるために十分な前記流体の流率を調節するための流量コントローラをさらに備え、前記低下した温度および温度上昇量の合計は、最大でも上昇した温度に等しい、項目14に記載のシステム。
(項目23)
前記流体は、圧縮空気を含み、
前記流率は、1SLPM~100SLPMの範囲内である、
項目22に記載のシステム。
(項目24)
前記流体システムは、前記歯の硬組織を横断して前記流体を流動させる陰圧差を発生させるように適合される真空源を備える、項目14に記載のシステム。
(項目25)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する方法であって、前記方法は、
レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、
少なくとも1つの光学系を使用して、レーザビーム幅を画定し、前記歯の硬組織の表面またはその近傍において前記レーザビームを集束させるステップと、
前記画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するステップであって、前記レーザビームパルスは、
上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスであって、前記上限閾値フルエンスは、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義される、最大局所フルエンスと、
下限閾値フルエンスを上回る少なくとも1つの他の局所フルエンスであって、前記下限閾値フルエンスは、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こすフルエンスとして定義される、少なくとも1つの他の局所フルエンスと
を有する、フルエンスプロファイルを焦点において有する、ステップと
を含む、方法。
(項目26)
前記表面改質は、融解およびアブレーションのうちの少なくとも1つを含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記融解は、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記アブレーションは、200倍、500倍、および1,000倍のうちの少なくとも1つの倍率において、治療された表面の目視検査によって決定される、項目26に記載の方法。
(項目29)
前記酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される、項目25に記載の方法。
(項目30)
前記酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含む、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される、項目25に記載の方法。
(項目32)
前記フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、およびトップハットプロファイルのうちの少なくとも1つを備える、項目25に記載の方法。
(項目33)
前記レーザビームパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有する、項目25に記載の方法。
(項目34)
前記パルスエネルギーを制御するステップは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御するステップを含む、項目25に記載の方法。
(項目35)
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目36)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記レーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、項目25に記載の方法。
(項目38)
前記レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、項目25に記載の方法。
(項目39)
前記場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を備える、項目25に記載の方法。
(項目40)
前記歯の硬組織の上に、およびそれを横断してのうちの少なくとも1つで流動するように流体を指向するステップをさらに含む、項目25に記載の方法。
(項目41)
前記流体は、空気、窒素、および水のうちの少なくとも1つを含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
前記流体は、液体を含む、項目40に記載の方法。
(項目43)
前記流体は、フッ化物を含む、項目40に記載の方法。
(項目44)
前記流体は、圧縮性流体を含み、前記方法はさらに、前記歯の硬組織上に前記流体を指向することに先立って、前記流体を膨張させるステップを含む、項目40に記載の方法。
(項目45)
前記流体を指向するステップは、前記レーザパルスを生成するステップと非同期的である、項目40に記載の方法。
(項目46)
前記流体を指向するステップは、前記レーザパルスを生成するステップ中に起こる、項目40に記載の方法。
(項目47)
いかなるパルスバーストも前記場所に向かって指向されていない間に、前記場所の表面温度を低下した温度まで減少させるために十分な前記流体の流率を調節するステップをさらに含み、前記低下した温度および温度上昇量の合計は、最大でも上昇した温度に等しい、項目40に記載の方法。
(項目48)
前記流体は、圧縮空気を含み、
前記流率は、1SLPM~100SLPMの範囲内である、
項目47に記載の方法。
(項目49)
前記流体を指向するステップは、前記歯の硬組織を横断して前記流体を流動させる陰圧差を発生させるステップを含む、項目40に記載の方法。
(項目50)
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するステップをさらに含む、項目40に記載の方法。
(項目51)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目40に記載の方法。
(項目52)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムであって、前記システムは、
レーザビームの複数のパルスを発生させるためのレーザ源と、
ビーム誘導システムであって、
初期場所の表面温度が、第1のレーザパルス中に初期表面温度から上昇した表面温度まで上昇され、前記上昇した温度が、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回るように、前記第1のレーザパルスを前記歯の硬組織の治療領域内の前記初期場所に指向することと、
1つ以上の中間レーザパルスを前記治療領域内の1つ以上の中間場所に指向することと、
前記初期場所の冷却が前記表面温度と前記初期表面温度との間の差を前記上昇した温度の50%以下にさせる、冷却周期後に、別のレーザパルスを前記初期場所に指向することと
を行うように適合される、ビーム誘導システムと
を備える、システム。
(項目53)
前記初期表面温度は、摂氏20~40度の範囲内である、項目52に記載のシステム。
(項目54)
前記上昇した表面温度は、摂氏300~1,800度の範囲内である、項目52に記載のシステム。
(項目55)
前記第1のレーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、項目52に記載のシステム。
(項目56)
前記第1のレーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、項目52に記載のシステム。
(項目57)
前記初期場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を有する、項目52に記載のシステム。
(項目58)
前記冷却周期は、少なくとも500マイクロ秒である、項目52に記載のシステム。
(項目59)
前記1つ以上の中間場所は、前記初期場所に重複しない、項目52に記載のシステム。
(項目60)
前記1つ以上の中間場所は、規定閾値量を超えない量だけ前記初期場所に重複する、項目52に記載のシステム。
(項目61)
前記規定閾値量は、レーザパルスエネルギーおよびレーザビーム幅のうちの少なくとも1つの関数である、項目60に記載のシステム。
(項目62)
前記レーザビームは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有する、項目52に記載のシステム。
(項目63)
前記波長は、9~10ミクロンの範囲内である、項目62に記載のシステム。
(項目64)
前記波長は、10~11ミクロンの範囲内である、項目62に記載のシステム。
(項目65)
前記上昇した温度は、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こす温度として定義される下限温度閾値と少なくとも等しい、項目52に記載のシステム。
(項目66)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する方法であって、前記方法は、
第1のレーザパルスを前記歯の硬組織の治療領域内の初期場所に指向するステップと、
前記初期場所の表面温度を、前記第1のレーザパルス中に、初期表面温度から上昇した表面温度まで上昇させるステップであって、前記上昇した温度は、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最低温度として定義される上限温度閾値を下回る、ステップと、
1つ以上の中間レーザパルスを前記治療領域内の1つ以上の中間場所に指向するステップと、
前記初期場所の冷却が前記表面温度と前記初期表面温度との間の差を前記上昇した温度の50%以下にさせる冷却周期後に、別のレーザパルスを前記初期場所に指向するステップと
を含む、方法。
(項目67)
前記初期表面温度は、摂氏20~40度の範囲内である、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記上昇した表面温度は、摂氏300~1,800度の範囲内である、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記第1のレーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、項目66に記載の方法。
(項目70)
前記第1のレーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、項目66に記載の方法。
(項目71)
前記初期場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を有する、項目66に記載の方法。
(項目72)
前記冷却周期は、少なくとも500マイクロ秒である、項目66に記載の方法。
(項目73)
前記1つ以上の中間場所は、前記初期場所に重複しない、項目66に記載の方法。
(項目74)
前記1つ以上の中間場所は、規定閾値量を超えない量だけ前記初期場所に重複する、項目66に記載の方法。
(項目75)
前記規定閾値量は、レーザパルスエネルギーおよびレーザビーム幅のうちの少なくとも1つの関数である、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記レーザビームは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有する、項目66に記載の方法。
(項目77)
前記波長は、9~10ミクロンの範囲内である、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記波長は、10~11ミクロンの範囲内である、項目76に記載の方法。
(項目79)
前記上昇した温度は、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こす温度として定義される下限温度閾値と少なくとも等しい、項目66に記載の方法。
(項目80)
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するステップをさらに含む、項目66に記載の方法。
(項目81)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目80に記載の方法。
(項目82)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムであって、前記システムは、
レーザビームの複数のパルスを発生させるためのレーザ源と、
レーザビーム幅を画定するように適合される少なくとも1つの光学構成要素と、
前記レーザビームパルスが、前記歯の硬組織の表面にフルエンスプロファイルを有するように、前記画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するように適合されるコントローラであって、前記プロファイルは、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こすフルエンスとして定義される下限閾値フルエンスと少なくとも等しい局所フルエンスを備える、コントローラと、
前記複数のレーザビームパルスを前記歯の硬組織上の個別の場所に指向するように適合されるビーム誘導システムであって、
第1のレーザビームパルスは、第1の場所に指向され、
別のレーザビームパルスは、前記レーザビーム幅に基づく間隔によって前記第1の場所から分離される別の場所に指向される、
ビーム誘導システムと
を備える、システム。
(項目83)
前記酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される、項目82に記載のシステム。
(項目84)
前記酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含む、項目83に記載のシステム。
(項目85)
前記表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される、項目82に記載のシステム。
(項目86)
前記フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、およびトップハットプロファイルのうちの少なくとも1つを備える、項目82に記載のシステム。
(項目87)
前記複数のレーザビームパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を備える、項目82に記載のシステム。
(項目88)
前記コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御し、前記パルスエネルギーを制御するように適合される、項目82に記載のシステム。
(項目89)
前記間隔はさらに、治療フルエンス幅に基づく、項目82に記載のシステム。
(項目90)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する方法であって、前記方法は、
レーザビームの複数のパルスを発生させるステップと、
少なくとも1つの光学構成要素を使用して、レーザビーム幅を画定するステップと、
前記レーザビームパルスが、前記歯の硬組織の表面にフルエンスプロファイルを有するように、前記画定されたビーム幅に基づいて、パルスエネルギーを制御するステップであって、前記プロファイルは、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こすフルエンスとして定義される下限閾値フルエンスと少なくとも等しい局所フルエンスを備える、ステップと、
第1のレーザビームパルスを前記歯の硬組織上の第1の場所に指向するステップと、
別のレーザビームパルスを、前記レーザビーム幅に基づく間隔によって前記第1の場所から分離される別の場所に指向するステップと
を含む、方法。
(項目91)
前記酸溶解抵抗は、酸性負荷およびpH循環研究のうちの少なくとも1つによって決定される、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記酸性負荷は、クエン酸、酢酸、および乳酸のうちの少なくとも1つを使用することを含む、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記表面炭酸塩の量は、反射率FTIR、FTIR-ATR、ラマン分光法、およびXRDのうちの少なくとも1つによって測定される、項目90に記載の方法。
(項目94)
前記フルエンスプロファイルはさらに、ガウスプロファイル、近ガウスプロファイル、およびトップハットプロファイルのうちの少なくとも1つを備える、項目90に記載の方法。
(項目95)
前記複数のレーザビームパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を備える、項目90に記載の方法。
(項目96)
前記パルスエネルギーを制御するステップは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御するステップを含む、項目90に記載の方法。
(項目97)
前記間隔はさらに、治療フルエンス幅に基づく、項目90に記載の方法。
(項目98)
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するステップをさらに含む、項目90に記載の方法。
(項目99)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目98に記載の方法。
(項目100)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織の治療領域を治療するためのシステムであって、前記治療領域は、前記治療領域に付着した染色薄膜を備え、
前記治療領域内の場所に向かって指向されるレーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、
前記場所の表面温度が、前記レーザパルス中に、少なくとも、前記染色薄膜の少なくとも一部の除去のために必要な温度まで上昇されるように、前記レーザ源を制御するように適合される、コントローラと
を備える、システム。
(項目101)
前記染色は、エリスロシン、フロキシン、ビスマルクブラウン、ムチカルミン、および食品着色料のうちの少なくとも1つを含む、項目100に記載のシステム。
(項目102)
前記コントローラはさらに、前記レーザパルス中に、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こす温度として定義される下限治療閾値温度を上回って、前記場所の表面温度を上昇させるように適合される、項目100に記載のシステム。
(項目103)
前記下限治療閾値温度は、摂氏300度を上回る、項目102に記載のシステム。
(項目104)
前記レーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、項目100に記載のシステム。
(項目105)
前記レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、項目100に記載のシステム。
(項目106)
前記場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を備える、項目100に記載のシステム。
(項目107)
前記レーザビームは、8~12ミクロンの範囲内の波長を有する、項目100に記載のシステム。
(項目108)
前記波長は、9~10ミクロンの範囲内である、項目107に記載のシステム。
(項目109)
前記波長は、10~11ミクロンの範囲内である、項目108に記載のシステム。
(項目110)
前記染色は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目100に記載のシステム。
(項目111)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織の治療領域を治療する方法であって、前記治療領域は、前記治療領域に付着した染色薄膜を備え、前記方法は、
レーザ源からレーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、
前記治療領域内の場所に向かって前記レーザパルスを指向するステップと、
前記場所の表面温度が、前記レーザパルス中に、少なくとも、前記染色薄膜の少なくとも一部の除去のために必要な温度まで上昇されるように、前記レーザ源を制御するステップと
を含む、方法。
(項目112)
前記染色は、エリスロシン、フロキシン、ビスマルクブラウン、ムチカルミン、および食品着色料のうちの少なくとも1つを含む、項目111に記載の方法。
(項目113)
前記レーザパルス中に、下限治療温度を上回って前記場所の表面温度を上昇させるステップをさらに含む、項目111に記載の方法。
(項目114)
前記下限治療閾値温度は、(i)前記歯の硬組織の酸溶解抵抗の最小限の増加と、(ii)前記歯の硬組織の表面炭酸塩の量の最小限の減少とのうちの少なくとも1つを引き起こす温度として定義される、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記下限治療閾値温度は、摂氏300度を上回る、項目113に記載の方法。
(項目116)
前記レーザパルスは、0.1~100マイクロ秒の範囲内のパルス持続時間を備える、項目111に記載の方法。
(項目117)
前記レーザパルスは、0.05~100mJの範囲内のパルスエネルギーを備える、項目111に記載の方法。
(項目118)
前記場所は、0.1~10ミリメートルの範囲内の幅を備える、項目111に記載の方法。
(項目119)
前記レーザビパルスは、8~12ミクロンの範囲内の波長を備える、項目111に記載の方法。
(項目120)
前記波長は、9~10ミクロンの範囲内である、項目111に記載の方法。
(項目121)
前記波長は、10~11ミクロンの範囲内である、項目120に記載の方法。
(項目122)
前記染色は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目111に記載の方法。
(項目123)
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するステップをさらに含む、項目111に記載の方法。
(項目124)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目123に記載の方法。
(項目125)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムであって、前記システムは、
レーザビームの複数のパルスを発生させるためのレーザ源と、
前記レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、前記少なくとも1つの光学系は、前記歯の硬組織の表面またはその近傍において前記レーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、
前記複数のレーザパルスの少なくとも一部のエネルギーを測定するために適合されるレーザエネルギーセンサと、
コントローラであって、前記コントローラは、前記複数のレーザビームパルスのうちの各1つが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有するフルエンスプロファイルを焦点において有し、前記上限閾値フルエンスが、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、前記測定されたエネルギーに応答して、前記レーザ源を制御するように適合される、コントローラと
を備える、システム。
(項目126)
前記レーザエネルギーセンサは、ヒ化インジウムセンサ、水銀カドミウムテルルセンサ、熱電対列、フォトダイオード、および光検出器のうちの少なくとも1つを備える、項目125に記載のシステム。
(項目127)
前記レーザエネルギーセンサに向かって前記複数のレーザパルスの一部を指向するように適合されるビームピックオフをさらに備える、項目125に記載のシステム。
(項目128)
前記ビームピックオフは、反射性減光フィルタ、部分的透過性ミラー、およびビーム合成器のうちの少なくとも1つを備える、項目127に記載のシステム。
(項目129)
前記ビームピックオフは、前記レーザエネルギーセンサの損傷閾値に基づいて選択される、項目127に記載のシステム。
(項目130)
前記コントローラは、パルスあたりのレーザエネルギーに従って、焦点における前記レーザビームの幅および前記レーザビームのテーパ化を制御するように適合される、項目125に記載のシステム。
(項目131)
前記コントローラは、前記焦点における前記レーザビームの幅に従って、(i)レーザ電力と、(ii)パルス持続時間とのうちの少なくとも1つを制御するように適合される、項目125に記載のシステム。
(項目132)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する方法であって、前記方法は、
レーザ源からレーザビームの複数のパルスを発生させるステップと、
前記レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系を使用して、前記歯の硬組織の表面またはその近傍において前記レーザビームを集束させるステップと、
前記複数のレーザビームパルスの少なくとも一部のエネルギーを測定するステップと、
前記複数のレーザビームパルスのうちの各1つが、
上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有するフルエンスプロファイルを焦点において有し、前記上限閾値フルエンスが、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義される
ように、前記測定されたエネルギーに応答して、前記レーザ源を制御するステップと
を含む、方法。
(項目133)
前記測定されたエネルギーは、(i)各レーザビームパルスからのエネルギーの一部と、(ii)各レーザビームパルスからの前記エネルギーの実質的に全てとのうちの少なくとも1つを備える、項目132に記載の方法。
(項目134)
前記複数のレーザビームパルスの少なくとも一部の測定されたエネルギーを感知するステップをさらに含む、項目132に記載の方法。
(項目135)
前記複数のレーザビームパルスからエネルギーの信号部分を取り出すステップをさらに含み、前記複数のレーザビームパルスの少なくとも一部の測定されたエネルギーを感知するステップは、前記エネルギーの信号部分の測定されたエネルギーを感知するステップを含む、項目134に記載の方法。
(項目136)
焦点における前記レーザビームの幅を制御するステップと、
パルスあたりのレーザエネルギーに従って、前記レーザビームをテーパ化するステップと
をさらに含む、項目132に記載の方法。
(項目137)
前記焦点における前記レーザビームの幅に従って、(i)レーザ電力と、(ii)パルス持続時間とのうちの少なくとも1つを制御するステップをさらに含む、項目132に記載の方法。
(項目138)
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するステップをさらに含む、項目132に記載の方法。
(項目139)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目138に記載の方法。
(項目140)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療するためのシステムであって、前記システムは、
レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるためのレーザ源と、
前記レーザ源と光通信する少なくとも1つの光学系であって、前記少なくとも1つの光学系は、レーザビーム幅を画定し、前記歯の硬組織の表面またはその近傍において前記レーザビームを集束させるように適合される、少なくとも1つの光学系と、
コントローラであって、前記コントローラは、前記レーザビームパルスが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有するフルエンスプロファイルを焦点において有し、前記上限閾値フルエンスが、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、前記定義されたビーム幅に基づいてパルスエネルギーを制御するように適合される、コントローラと、
治療後溶液を前記歯の硬組織に適用するように適合される治療後送達システムと
を備える、システム。
(項目141)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目140に記載のシステム。
(項目142)
前記コントローラは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御し、前記パルスエネルギーを制御するように適合される、項目140に記載のシステム。
(項目143)
酸溶解に抵抗するように歯の硬組織を治療する方法であって、前記方法は、
レーザビームの少なくとも1つのパルスを発生させるステップと、
少なくとも1つの光学系を使用して、レーザビーム幅を画定し、前記歯の硬組織の表面またはその近傍において前記レーザビームを集束させるステップと、
前記レーザビームパルスが、上限閾値フルエンス未満の最大局所フルエンスを有するフルエンスプロファイルを焦点において有し、前記上限閾値フルエンスが、前記歯の硬組織の表面改質を引き起こす最小フルエンスとして定義されるように、前記定義されたビーム幅に基づいてパルスエネルギーを制御するステップと、
治療後溶液を前記歯の硬組織に送達するステップと
を含む、方法。
(項目144)
前記治療後溶液は、過酸化水素、フッ化物、キトサン、キシリトール、カルシウム、およびリン酸塩のうちの少なくとも1つを含む、項目143に記載の方法。
(項目145)
前記パルスエネルギーを制御するステップは、パルス持続時間、平均レーザ入力電力、および平均レーザ出力電力のうちの少なくとも1つを制御するステップを含む、項目144に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による、酸溶解抵抗(ADR)治療のために好適な歯科レーザシステムを示す。
【0032】
【
図2】
図2は、ヒトの歯のエナメル質の炭酸塩含有量への温度の影響をグラフに描く。
【0033】
【
図3A】
図3Aは、いくつかの実施形態による、レーザパルスを受けるヒト臼歯に関するモデル化された温度結果を図示する。
【0034】
【
図3B】
図3Bは、いくつかの実施形態による、レーザパラメータによって治療されたエナメル質の測定された炭酸塩含有量を図示する。
【0035】
【
図4A】
図4Aは、いくつかの実施形態による、レーザパルスを受けるヒト臼歯に関するモデル化された温度結果を図示する。
【0036】
【
図4B】
図4Bは、いくつかの実施形態による、レーザパラメータによって治療されたエナメル質の測定された炭酸塩含有量を図示する。
【0037】
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態による、レーザパルスを受けるヒト臼歯に関するモデル化された温度結果を図示する。
【0038】
【
図6A】
図6Aは、いくつかの実施形態による、レーザパルスを受けるヒト臼歯に関するモデル化された温度結果を図示する。
【0039】
【
図6B】
図6Bは、いくつかの実施形態による、レーザパラメータによって治療されたエナメル質の測定された炭酸塩含有量を図示する。
【0040】
【
図7A】
図7Aは、いくつかの実施形態による、レーザパルスを受けるヒト臼歯に関するモデル化された温度結果を図示する。
【0041】
【
図7B】
図7Bは、いくつかの実施形態による、酸溶解抵抗(ADR)のための光学システムを図示する。
【0042】
【
図7C】
図7Cは、いくつかの実施形態による、レーザパラメータによって治療されたエナメル質の測定された炭酸塩含有量を図示する。
【0043】
【
図7D】
図7Dは、いくつかの実施形態による、レーザパラメータによって治療されたエナメル質の測定された炭酸塩含有量を図示する。
【0044】
【
図7E】
図7Eは、いくつかの実施形態による、浸食負荷を受けた後のADRレーザ治療されたヒト臼歯を図示する。
【0045】
【
図7F】
図7Fは、いくつかの実施形態による、レーザ治療のための酸溶解抵抗を示すグラフを備える。
【0046】
【
図7G】
図7Gは、いくつかの実施形態による、浸食負荷を受けた後のレーザADR治療および未治療ヒト臼歯サンプルに関する浸食深度のグラフを備える。
【0047】
【
図8A】
図8Aは、摂氏約400度まで加熱された研磨ヒトエナメル質の顕微鏡画像を描写する。
【0048】
【
図8B】
図8Bは、摂氏約900度まで加熱された研磨ヒトエナメル質の顕微鏡画像を描写する。
【0049】
【
図8C】
図8Cは、摂氏約1,200度まで加熱された研磨ヒトエナメル質の顕微鏡画像を描写する。
【0050】
【
図9A】
図9Aは、いくつかの実施形態による、単一の場所に指向される複数のレーザパルスによって治療された研磨エナメル質の顕微鏡画像を描写する。
【0051】
【
図9B】
図9Bは、いくつかの実施形態による、上限フルエンス閾値および下限フルエンス閾値を示す、フルエンスプロファイルをグラフに描く。
【0052】
【
図10A】
図10Aは、いくつかの実施形態による、単一の場所に指向される複数のレーザパルスによって治療された研磨エナメル質の顕微鏡画像を描写する。
【0053】
【
図10B】
図10Bは、いくつかの実施形態による、上限フルエンス閾値および下限フルエンス閾値を示す、フルエンスプロファイルをグラフに描く。
【0054】
【
図10C】
図10Cは、いくつかの実施形態による、スケーリング閾値フルエンスおよび融解閾値フルエンスのボックスプロットを備える。
【0055】
【
図11】
図11は、いくつかの実施形態による、7箇所レーザパターンを記号で表す。
【0056】
【
図12】
図12は、いくつかの実施形態による、さらなる加熱を示す視覚合図を伴うレーザ治療された研磨エナメル質の顕微鏡画像を描写する。
【0057】
【
図13】
図13は、いくつかの実施形態による、異なる間隔を有するレーザパラメータの2つのセットに関する炭酸塩除去の差異をグラフで描く。
【0058】
【
図14】
図14は、いくつかの実施形態による、レーザパルス後の冷却時間の関数としてモデル化されたエナメル質温度をグラフで描く。
【0059】
【
図15】
図15は、いくつかの実施形態による、49箇所パターンおよびパターンシーケンスを記号で表す。
【0060】
【
図16A】
図16Aは、その歯髄腔の中に固着された熱電対を有する、ヒト臼歯のX線を示す。
【0061】
【
図16B】
図16Bは、いくつかの実施形態による、空気冷却の有無別に治療中の歯髄温度上昇をグラフで描く。
【0062】
【
図17】
図17は、いくつかの実施形態による、流体送達システムの概略図を図示する。
【0063】
【
図18】
図18は、いくつかの実施形態による、別の流体送達システムの概略図を図示する。
【0064】
【
図19A】
図19Aは、いくつかの実施形態による、染色が適用されたヒト臼歯切片を示す。
【0065】
【
図19B】
図19Bは、いくつかの実施形態による、その表面の約半分の上でレーザ治療を受けた、染色が適用されたヒト臼歯切片を示す。
【0066】
【
図20】
図20は、いくつかの実施形態による、閉ループ動作のためのレーザ出力センサの図面を示す。
【0067】
【
図21A】
図21Aは、いくつかの実施形態による、統合レーザセンサを備える光学システムを示す。
【0068】
【0069】
【
図22】
図22は、いくつかの実施形態による、統合レーザセンサに関連するレーザ信号およびレーザトリガ信号を示す。
【0070】
【
図23A】
図23Aは、いくつかの実施形態による、統合レーザセンサに関連する回路を示す。
【0071】
【
図23B】
図23Bは、いくつかの実施形態による、統合レーザセンサに関連するレーザ信号およびレーザトリガ信号を示す。
【0072】
【
図24】
図24は、別の実施形態による、統合レーザセンサに関連するレーザ信号およびレーザトリガ信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
解決されるべき問題の定義
現在、予防的レーザ治療の有効性を実証する、20年以上もの科学研究にかかわらず、齲蝕形成または歯牙酸蝕症を阻止するためにレーザを利用する、製品または手技が存在しない。これの理由は、多種多様であり、以下を含む。
1.)レーザサイズ
予防的歯科治療のための最も有用なレーザは、典型的には大きい、二酸化炭素またはTEAレーザである。歯科治療室は、典型的には、小さい。いくつかは、小さすぎて、部屋の中に患者、歯科医、および歯科助手がいなくても、初期研究の大部分で使用されるレーザを物理的に収納することができない。
2.)治療範囲
表面の加熱は、概して、効果的であるために、下限治療閾値を上回り、上限融解/アブレーション閾値を下回る、治療範囲内で、表面温度を生じなければならない。本明細書は、時として、例えば、治療パラメータが上限融解/アブレーション閾値を超えさせる場合に、歯系組織の融解および/またはアブレーションを表すために用語「表面改質」を使用する。本明細書で使用されるように、表面改質は、歯系組織の表面のどのような観察可能または測定可能な改質も指すわけではなく、むしろ、歯系組織の融解および/またはアブレーションのみを指す。例えば、歯系組織の表面からの炭酸塩の除去は、観察可能または測定可能であり得るが、歯系組織が融解または切除されたかのいずれかではない限り、その用語が本明細書で定義されるため、「表面改質」と見なされないであろう。
典型的には、二酸化炭素レーザは、ガウスまたは近ガウスエネルギープロファイルを有する、レーザビームを生成する。その結果は、レーザビーム内のエネルギー密度がビームの断面にわたって変動し、最高エネルギー密度がビームの中心にあることである。また、最低エネルギー密度は、ビームの周辺にある。これは、単一のレーザパルスが、治療範囲を下回る、範囲内である、および範囲を上回るエネルギー密度(局所フルエンス)を有することが可能である理由である。大部分の研究は、治療のために要求される「[大域的]フルエンス」に焦点を当てている。大域的フルエンスは、全パルスエネルギーによって除算される全ビーム面積である。レーザビームの非一定エネルギー密度は、歯の表面上に可変加熱を生じ、あまり効果的ではない治療および/または表面融解/アブレーション(すなわち、本明細書で定義されるような表面改質)を引き起こす。これは、概して、治療された表面の顕微鏡画像を含む、歯のエナメル質へのレーザの耐酸性効果についての研究論文が、ある程度の歯の表面融解またはアブレーションを示すであろう理由である。
3.)治療速度
治療は、歯の外面を加熱する。これは、歯内の歯髄組織の過熱および壊死を予防するために、典型的な歯科医の診察よりも長い治療時間を要求する。例えば、John Featherstone et al.による著作の「Rational choice of laser conditions for inhibition of caries progression」と題された論文は、約10Hzの繰り返し率が歯髄加熱を予防するように選択されるべきであると示唆している。Featherstoneは、「最低10回のパルスが治療[場所]毎に使用されるべきであり」、「25回のパルスが最適であった」と続けて示唆している。直径が1mm未満であり得る、歯の単一の場所の治療は、したがって、1~2.5秒かかるであろう。寸法10mm×10mm×5mmの5角形の箱からヒト臼歯の表面積を概算することは、約300mm2の表面積を生じさせる。直径が1mmのレーザ治療スポットは、約0.8mm2の面積を有する。円形治療スポットを用いて表面全体を治療することと関連付けられる、円充塞問題を無視し、治療スポットの重複がないと仮定することは、臼歯あたり約375の治療場所を要求する。場所あたり1~2.5秒の速度で、単一の完全に露出した臼歯を完全に治療することは、6~16分かかるであろう。患者の口の中の露出エナメル質表面の全体、または咬合表面だけでも治療することは、したがって、これらのレーザ設定を考慮すると、通常の歯科診察中に実行可能ではない。
4.)レーザ治療の適応
レーザ治療は、治療された歯の表面に可視的変化を起こさない。したがって、臨床医は、治療されている領域および治療されていない領域を認識するためには能力が不十分である。レーザ治療がレーザビームによって照射される領域に局限されると、レーザビームによって照射されていない任意の場所は、治療されていないままとなり、酸の影響を受けやすいであろう。手技が効果的であろうことを確実にすることは、医療手技および医療デバイスの重要な要件である。治療された歯の硬組織と治療されていないものとを区別する手段がないと、全治療が効果的であろうことを確実にすることが可能ではない。
【0074】
上記の問題に対処するレーザベースの治療システムおよび方法が、したがって、歯牙酸蝕症をより効果的に治療し、齲蝕を予防するために必要とされる。これらの問題に対処するレーザベースの治療システムおよび方法が、下記に説明される。
レーザパラメータ選択
【0075】
上記の問題の1)レーザサイズおよび2)治療範囲は、大部分がレーザパラメータの適切な選択を通して対処される。
【0076】
図1を参照すると、Convergent Dental(Needham, MA)からのSolea等の例示的歯科レーザシステム100が、示される。いくつかの実施形態では、歯科レーザシステム100は、臨床的に実行可能な速度で、エナメル質、象牙質、および骨のような歯の硬組織、および歯の軟組織を切除してもよい。例えば、Soleaは、窩洞形成、および軟および骨組織のアブレーションを要求する手技のためにFDAによって承認されている。歯科レーザシステム100は、レーザ(図示せず)を収納する、カート102を備える。関節動作型アーム104は、カート102からハンドピース106にレーザビームを内部で指向する。治療中、レーザビームはさらに、歯系組織に向かって、ハンドピース106の遠位端から外に指向される。臨床医は、タッチスクリーン108およびフットペダル110を通して、歯科レーザシステム100とインターフェースをとってもよい。いくつかの実施形態では、歯科レーザシステム100は、約150ワットの規定最大平均電力および約9.35ミクロンの波長を有する、同位体二酸化炭素レーザ(Coherent E-150i)を備える。本パッケージサイズ内の本レーザは、歯科治療室のために適切にサイズ決めされていることが市場で証明されている。それでもなお、予防的レーザ治療が歯科衛生士治療室で使用するためにより小さいパッケージに収納されることが、おそらく依然として有利である。
【0077】
Featherstone et al.は、「Mechanism of Laser Induced Solubility Reduction of Dental Enamel」と題されたその論文の中で、「表面からの完全な炭酸塩損失を引き起こした[レーザ]フルエンスは、最適な齲蝕阻止と一致した」と結論付けた。エナメル質からの(典型的にはFTIRによって測定される)炭酸塩の除去は、増加した耐酸性を有するエナメル質と相関することが、繰り返し見出されている。広く支持されている理論は、(特に酸の中で可溶性であることが公知である)炭酸塩の欠如が炭酸塩低減エナメル質表面をより耐久性にすることを断定する。炭酸塩は、加熱を通して歯の硬組織から除去される。
図2を参照すると、炭酸塩が、加熱炉に入れられ、加熱される前および後の研磨ヒト臼歯において(FTIR-ATRによって)測定された。グラフ200は、垂直軸202に沿って除去される炭酸塩をパーセントで示し、および水平軸204に沿って加熱炉温度を摂氏度で示す。第1の試験206および第2の試験208が、両方ともグラフ200の中に含まれる。グラフ200に示される結果は、エナメル質が約300℃または400℃で炭酸塩損失を開始し、約800℃または900℃を超過する温度でほぼ全ての炭酸塩を失うことを示す、初期研究を裏付ける。
【0078】
レーザパルスが歯のエナメル質を加熱する方法をさらに理解するために、レーザパルスから加熱を受ける際の歯のエナメル質の温度をモデル化する、数学モデルが作成されている。モデルは、レーザパルス中にエナメル質内で起こる全ての有意な温度関連現象を徹底的に説明することを意図している。モデルは、ベールの吸収の法則、ニュートンの冷却の法則、およびフーリエの伝導の法則を含む、第1原理から導出された。モデルはさらに、レーザがガウスエネルギープロファイルおよびパルス中の一定のピーク電力を有すると仮定する。吸光度、反射率等に関連する係数が、直近のソースから取り出された。モデルは、米国仮特許出願第62/505,450号(その全体として参照することによって本明細書に組み込まれる)の付属書Aとして含まれる、Matlab R2016a上で実行されることができる。
図3A、4A、5、6A、および7Aは、モデルの結果を図示する。
図3B、4B、6B、および7Bは、モデル化された結果に基づいてレーザ設定から除去される炭酸塩を示す、FTIR吸光度チャートである。
【0079】
モデルの有用性は、種々のレーザパラメータにおいてモデルによって予測されるエナメル質温度、およびCoherent E-150iを用いたこれらのレーザパラメータにおける治療を受けた後のエナメル質サンプルの炭酸塩含有量を比較することによって、検証された。具体的には、9.35ミクロンの波長、1マイクロ秒のパルス持続時間、500Wのピーク電力、および0.39ミリメートルの焦点における1/e
2ビーム直径のレーザパラメータが、表面融解を殆どまたは全く伴わずに40%を上回る炭酸塩除去を確実に生じることが経験的に見出された。これらのパラメータにおける単一のレーザパルスのためのモデルからの結果を詳述する、プロット300が、
図3Aに示される。
図3Aを参照すると、垂直温度軸302は、摂氏度で温度を表し、左上から右下に指向される半径方向軸304は、ガウスレーザビームの中心から離れた距離を表し、左下から右上に指向される深度軸306は、エナメル質の中への深度を表す。
図3Aから、最高温度はレーザビームの中心およびエナメル質の表面において起こることが分かり得る。温度は、レーザビームのガウスエネルギープロファイルに従って、レーザビームの中心から半径方向に減少する。温度はまた、エナメル質の中へのより大きい深度を伴って減少する。モデルは、摂氏958度のピーク表面温度、摂氏591度の照射表面にわたる平均表面温度、および摂氏400度を上回る温度における3ミクロンの最大深度を報告する。
図2に戻って参照すると、摂氏約600度で、加熱炉の中で除去される炭酸塩の量は約40%であることが分かり得る。
図3Bは、以下のパラメータ、すなわち、9.35ミクロンの波長、隣接する場所の間に0.2mmを伴う19箇所走査パターン、1.6マイクロ秒のパルス持続時間、および0.39mmのビーム幅を伴って、治療に先立った対照エナメル質308および治療を受けたエナメル質310のスペクトルを示す。炭酸塩は、FTIR吸光度チャートでは、1,500cm
-1~1,400cm
-1の2つのピークとして現れる。約1,000cm
-1におけるより大きいピークは、炭酸塩除去の計算で参照として使用される。炭酸塩除去の計算は、下記に示される。
【化1】
または(炭酸塩が常に除去されるが、添加されないと仮定して)単純化される。
【化2】
式中、A
carb,treatは、治療されたサンプルの炭酸塩ピークの下の面積であり、A
ref,treatは、治療されたサンプルの参照ピークの下の面積であり、A
carb,ctrlは、未治療サンプルの炭酸塩ピークの下の面積であり、A
ref,ctrlは、未治療サンプルの参照ピークの下の面積である。
図3Bを参照すると、炭酸塩の約60%が、表面から除去されており、いかなる表面融解も観察されなかった。本モデルを使用して、異なるレーザまたはレーザパラメータを伴う類似結果を生じるために必要とされるパラメータを近似的に予測することが可能である。
【0080】
Coherent C30 CO
2レーザは、E-150iよりもはるかに小さく、9.35ミクロンの波長および約35Wのピーク電力を有する。C30レーザは、卓上パッケージに収納されてもよく、したがって、それが歯科治療室内で占有する空間を限定する。モデル化に先立って、C30と同程度に小さいレーザが予防的治療のために確実に使用され得ることは、即時に認識可能ではなかった。数学モデルは、上記のCoherent E-150iと類似するモデル化された結果を生じる、レーザパラメータを決定するために使用された。
図4Aを参照すると、モデルは、摂氏983度のピーク表面温度、摂氏606度のビーム直径内の平均表面温度、および摂氏400度を上回る温度を有する4ミクロンの最大深度を生じるように、9マイクロ秒のパルス幅および0.261/e
2ビーム直径を予測する。温度軸402と、半径方向軸404と、深度軸406とを有する、プロット400が、
図4Aに示される。C30の有用性を実証するために、49箇所走査レーザパターンが、上記のモデル化された結果に応答して開発された。49の場所は、六角形の充塞配列で配列され、隣接する場所は、0.15mmだけ分離された。走査レーザパターンは、下記でさらに解説される。上記に説明されるパターンとC30レーザを併用して、9マイクロ秒のパルス持続時間および0.26ビーム幅は、炭酸塩の約50%をウシエナメル質サンプルから除去させた。治療されていない408、および治療された410、ウシエナメル質サンプルのFTIRスペクトルが、
図4Bに示される。
【0081】
いくつかの実施形態によると、約10.6ミクロンの波長を有するCO
2レーザが、使用される。再度、数学モデルが、パラメータ選択を誘導し、性能を予測するために使用される。Coherent C50等の100Wのピーク電力を有する10.6ミクロンレーザが、モデル化され、結果が、
図5にプロットされる。プロット500は、温度軸502と、半径方向軸504と、深度軸504とを有する。0.39mmのビーム幅および20マイクロ秒のパルス持続時間は、摂氏966度のピーク表面温度、摂氏595度のビーム直径内の平均表面温度、および摂氏400度を上回る温度を有する14ミクロンの最大深度をもたらす。10.6ミクロンレーザは、エナメル質により深く浸透し、したがって、同一の表面積を治療するためにより多くのエネルギーを要求することに留意されたい。歯の中に送達される全エネルギーは、パルスあたり2mJで推測される。同一のビーム幅、および類似表面温度をもたらすパラメータを有する、9.35ミクロン波長E-150iは、パルスあたり推定0.4mJのみを送達する。しかしながら、10.6ミクロン波長レーザが約14ミクロンの深度まで治療するため、E-150iは、約3ミクロンの深度までしか治療しない。
【0082】
再度、E-150iレーザに戻ると、いくつかの実施形態は、E-150iが5マイクロ秒を上回るパルス持続時間においてパルスにされることを要求する。E-150iのピーク電力が5マイクロ秒において300Wであると仮定して、0.6mmのビーム幅は、摂氏976度のピーク表面温度、摂氏600度のビーム幅内の平均表面温度、および摂氏400度を上回る温度を伴う4ミクロンの最大深度というモデル化された結果を生じる。これらのパラメータのモデル化された結果のプロット600が、
図6Aに示される。プロット600は、温度軸602と、半径方向軸604と、深度軸606とを含む。0.66mmのビーム幅と、4.6および6.6マイクロ秒のパルス持続時間とを有する、レーザパルスを生成するE-150iが、ウシエナメル質を治療するために使用された。0.66mmのビーム幅は、十分に大きいため、レーザビームがパターンで走査されず、代わりに、レーザパルスが、単一の場所において指向された。エナメル質中の炭酸塩の約41%が、4.6マイクロ秒のパルス持続時間を使用して除去され、エナメル質中の炭酸塩の約50%が、6.6マイクロ秒のパルス持続時間を使用して除去された。
図6Bは、未治療ウシエナメル質608、4.6マイクロ秒パルスを用いて治療されたウシエナメル質610、および6.6マイクロ秒パルスを用いて治療されたウシエナメル質612のFTIRスペクトルを示す。
【0083】
いくつかの実施形態では、パラメータは、E-150iが10マイクロ秒のパルス持続時間を有するレーザパルスにおいてパルスを発することを可能にするように修正される。例えば、約10マイクロ秒のパルス持続時間においてE-150iを動作させることは、約300Wのピーク電力をもたらす。数学モデルによると、約0.79mmのスポットサイズは、摂氏974度のピーク表面温度、摂氏598度のビーム幅内の平均表面温度、および摂氏400度を上回る温度を伴う4ミクロンの最大深度をもたらす。
図7Aは、温度軸702と、半径方向軸704と、深度軸706とを有する、プロット700を図示する。
【0084】
0.65mm~0.85mmの1/e
2幅を有する焦点710を生成するために使用される光学システム708が、
図7Bに示される。用紙の右上隅から始まって、レーザ源712(例えば、Coherent E-150i)は、レーザ714を発生させる。補正光学系716は、レーザ713の1つの軸の発散を補正する。例示的補正光学系716は、544.18mmの曲率半径を有する、ZnS平凸円柱レンズであり、レーザ源712の遠位面718から160mmに位置する。コリメーション光学系720が、レーザ714をゆっくりと集束させるために使用されてもよい。例示的コリメーション光学系720は、約460mmの曲率半径を有する、ZnS平凸円柱レンズであり、レーザ源712の遠位面718から約438mmに位置する。いくつかの実施形態では、関節動作アーム722が、レーザ714を指向するために使用される。焦点光学系724は、関節動作アーム722の後に位置する。いくつかの実施形態では、焦点光学系724は、約280.5mmの曲率半径を有し、レーザ源712の遠位面718から約1,802mmに位置する、ZnSe平凸レンズ(例えば、Thorlabs部品番号LA7228-G)である。いくつかの実施形態では、2軸検流計等のビーム誘導システム726が、焦点光学系724のビームの下方に位置する。ハンドピース728も、焦点光学系724の後に位置し、治療領域に向かってレーザ714を指向する。いくつかの実施形態では、焦点710は、焦点光学系724から約240mm、かつハンドピース728の約15mm外側に位置する。
【0085】
図7C、7F、および7Gを参照して、E-150iは、焦点における0.82mmのビーム幅、8マイクロ秒のパルス持続時間、0.35mm間隔を伴う7箇所走査パターン、および200Hzの繰り返し率と併用される。ヒトエナメル質サンプルが、3.0mm/秒で2回の通過のために電動式ステージ上で走査レーザパターンの前に移動された。
図7Cは、これらのパラメータを用いた治療の前742および後744のヒトエナメル質のFTIRグラフ740を示す。除去される炭酸塩は、約50%であることが見出された。
【0086】
図7Dおよび7Fを参照して、E-150iは、焦点における0.82mmのビーム幅、10マイクロ秒のパルス持続時間、0.35mm間隔を伴う7箇所走査パターン、および200Hzの繰り返し率と併用される。ヒトエナメル質サンプルが、3.0mm/秒で2回の通過のために電動式ステージ上で走査レーザパターンの前に移動された。
図7Dは、これらのパラメータを用いた治療の前752および後754のヒトエナメル質のFTIRグラフ750を示す。除去される炭酸塩は、約75%であることが見出された。
図7Cおよび7Dに示される治療の間のレーザパラメータの唯一の差異は、それぞれ、8マイクロ秒および10マイクロ秒のパルス持続時間である。10マイクロ秒パラメータを用いて治療されたサンプルは、8マイクロ秒パラメータを用いて治療されたサンプルよりも多くの炭酸塩を除去されたことが分かり得る。
【0087】
耐酸性を実証するために、実施形態を利用する試験からの方法および結果が、
図7E-Gを参照して開示される。いくつかのヒト臼歯サンプルが、8および10マイクロ秒パルスの両方を用いて、上記で説明されるように治療された。サンプルは、次いで、マニキュアで覆われ、30分にわたって浸食負荷に入れられた。浸食負荷は、温度:摂氏35度、pH:3.6(クエン酸塩緩衝剤)、酸:0.052Mクエン酸、および撹拌:150RPM撹拌子を含む、パラメータを有した。浸食負荷後、サンプルが、除去され、アセトンが、マニキュアを除去するために使用された。3D顕微鏡(1,000倍対物レンズを伴うHirox RH-2000)が、浸食表面深度を測定するために使用された。
図7Eは、サンプル表面760の画像を示す。覆われた表面762は、いかなる浸食の兆候も示さない。未治療(対照)表面764は、顕著な浸食を示す。また、治療された表面766は、わずかな浸食のみを示す。浸食抵抗%
resistanceが、高さの差、すなわち、対照764と覆われた762表面との間のD
control、および対照764と治療された766表面との間のD
differenceに基づいて、計算された。
【化3】
図7Fは、8マイクロ秒774および10マイクロ秒776の両方のパラメータに関して垂直軸上で耐酸性772を示す、グラフ770を含有する。グラフ770上のエラーバーは、耐酸性に関して95%信頼区画を表す。レーザ治療が酸溶解に影響を及ぼさないという帰無仮説H
0が、
図7Gを参照して対処される。
図7Gは、8マイクロ秒レーザパラメータを用いて治療された浸食サンプルのグラフ780を含有する。グラフは、ミクロン単位で浸食深度の垂直軸782を有する。グラフ780は、3つの異なる深度、すなわち、1.)対照764と覆われた762表面との間のD
control784、2.)対照764と治療された766表面との間のD
difference786、および3.)治療された表面766と覆われた表面762との間のD
treated788を示す。
図7Gのエラーバーは、再度、95%信頼区画を表す。グラフ780から分かり得るように、治療された表面深度788および対照表面深度784は、重複しない。帰無仮説H
0は、したがって、治療された表面深度平均788および対照表面深度平均784が異なるという95%を上回る信頼があるため、偽であると実証される。
【0088】
図3A、4A、5、6A、および7Aに関連する開示が、下記の表1に要約される。
【表1】
【0089】
図3B、4B、6B、7C、および7Dに関連する開示が、下記の表2に要約される。
【表2】
【0090】
図7Fに関連する開示が、下記の表3に要約される。
【表3】
【0091】
研磨された平坦なエナメル質は、加熱されると、顕微鏡の下で「薄片」を有することが見られ得る。これらの薄片は、エナメル小柱またはエナメル小柱群であると考えられる。研磨エナメル質は、加熱炉に入れられ、加熱された。「薄片」は、摂氏約400度の温度において現れ始めたことが見出された(
図8A参照)。摂氏約900度の温度では、「薄片」は、表面をほぼ完全に被覆する(
図8B参照)。摂氏約1,200度の温度では、表面融解が、現れ始める(
図8C参照)。「薄片」は、研磨エナメル質サンプルでは拡大下でのみ現れる。研磨されていないサンプルでは、「薄片」は、おそらく、歯のエナメル質の外面がエナメル小柱の凝集体ではないが、代わりに、エナメル質のより均質な層であるため、現れない。「スケーリング」効果は、炭酸塩除去と良好に相関するであろう。「薄片」は、炭酸塩が除去され始める温度において現れ始め、「スケーリング」は、炭酸塩が大部分は除去される温度において、大部分が完了する。炭酸塩除去は、耐酸性と相関することが繰り返し実証されているため、研磨エナメル質中の「薄片」の存在は、生体外の効果的な治療のための視覚合図であり得る。
【0092】
治療された表面からの視覚合図を使用することは、エネルギー密度閾値の我々の理解を知らせ得る。例えば、E-150iレーザが、以下のパラメータ、すなわち、0.66mmのビーム幅、200Hzの繰り返し率、および3.28mJエネルギーパルスを生成する10.6マイクロ秒のパルス持続時間を使用して、単一の場所において10回のパルスを生成するために使用された。ウシエナメル質サンプルが、照射され、200倍の倍率において視認された。サンプルの画像が、
図9Aに示される。3つの円が、
図9Aに存在する。外側の円902は、わずかな表面効果と表面効果なしとの間の境界を推定する。中央の円904は、中央の円内のほぼ完全または完全な「スケーリング」および中央の円の外側のわずかまたは不完全なスケーリングを有する、境界を推定する。最後に、内側の円906は、内側の円の内側の融解と内側の円の外側の融解なしとの間の境界を推定する。
図9Bを参照すると、パルスエネルギーおよびレーザビーム幅を考慮し、ガウスエネルギープロファイルを仮定すると、エネルギー密度プロファイル908が、推定されることができる。エネルギー密度プロファイル908は、垂直軸910上のJ/cm
2単位の局所フルエンスと、水平軸914上のレーザビーム912の中心からのミクロン単位の半径方向距離との間の関係を示す。エネルギー密度プロファイル908上に中心合わせされた、中央の円の直径918および内側の円の円直径916をプロットすることは、表面効果が起こる局所フルエンスの推定値を提供する。したがって、
図9Bから、完全な「スケーリング」フルエンス920は、約0.8J/cm
2~約1.6J/cm
2であることが推定されることができる。いくつかの実施形態によると、「スケーリング」フルエンス範囲920は、中央の円918における局所フルエンスによって表される下限閾値フルエンス(または下限治療フルエンス)と内側の円916における局所フルエンスによって表される上限閾値フルエンスとの間の治療フルエンス範囲を表す。
【0093】
上記のプロセスは、以下のパラメータ、すなわち、0.66mmのビーム幅、200Hzの繰り返し率、および3.87mJエネルギーパルスを生成する12.6マイクロ秒のパルス持続時間を使用して、単一の場所において10回のパルスを生成するために使用されたE-150iレーザを用いて、繰り返された。ウシエナメル質サンプルが、照射され、200倍の倍率において視認された。サンプルの画像が、
図10Aに示される。3つの円が、
図10Aに存在する。外側の円1002は、わずかな表面効果と表面効果なしとの間の境界を推定する。中央の円1004は、中央の円内のほぼ完全または完全なスケーリングおよび中央の円の外側のわずかまたは不完全なスケーリングを有する、境界を推定する。最後に、内側の円1006は、内側の円の内側の融解と内側の円の外側の融解なしとの間の境界を推定する。
図10Bを参照すると、パルスエネルギーおよびレーザビーム幅を考慮し、ガウスエネルギープロファイルを仮定すると、エネルギー密度プロファイル1008が、推定されることができる。エネルギー密度プロファイル1008は、垂直軸1010上のJ/cm
2単位の局所フルエンスと、水平軸1014上のレーザビーム1012の中心からのミクロン単位の半径方向距離との間の関係を示す。エネルギー密度プロファイル1008上に中心合わせされた、中央の円の直径1016および内側の円の円直径1018をプロットすることは、表面効果が起こる局所フルエンスの推定値を提供する。したがって、
図10Bから、完全なスケーリングフルエンス1020は、
図10A-10Bを参照して開示される実施形態を参照して、約0.7J/cm
2~約1.5J/cm
2であることが推定されることができる。本実験は、複数の9.35ミクロンレーザ、ビーム幅、パルスエネルギー、繰り返し率、およびレーザパルスの数を用いて、数回(n=35)実行されている。
図10Cは、垂直軸1028に沿ってmJ/ミクロン
2単位の局所フルエンスを有する、ボックスプロットを示す。「スケーリング」閾値1030は、約0.7J/cm
2の中央値を有する。また、融解閾値1032は、約1.5J/cm
2の中央値と、1.1J/cm
2を上回る、より低い微量値とを有する。これらの所見を考慮すると、9.35ミクロンレーザは、典型的には、約0.7J/cm
2の局所フルエンス閾値において「スケーリング」を示し始め、融解は、約1.5J/cm
2の局所フルエンスにおいて起こり始める。また、概して、いかなる9.35ミクロンレーザも、1.1J/cm
2を下回る局所フルエンスにおいて融解を生じない。これらの推定は、9.6、10.2、および10.6ミクロン等の他の波長レーザに関して行われてもよい。いくつかの実施形態では、視覚合図から導出される局所フルエンス推定は、パラメータ選択を補助し、具体的には、問題2)治療範囲に対処することができる。いくつかの実施形態では、治療範囲は、治療が概して起こる、下限閾値フルエンスと、それを上回ると望ましくない結果が起こり得る、上限閾値フルエンスとの間で見出されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、パルス持続時間(またはパルスエネルギー)およびレーザビーム幅は、最小融解フルエンス閾値(例えば、1.1J/cm
2)を下回る最大局所フルエンス(レーザビームの中心に位置する)フルエンスプロファイルを生成する一方で、下限治療フルエンス(例えば、0.7J/cm
2)を上回るフルエンスプロファイルのある部分を保つために、選択される。
【0094】
種々の実施形態では、レーザシステムは、1つ以上の光学系を使用してビーム幅を画定し、コントローラを使用して、結果として生じるフルエンスが治療範囲内であるように、画定されたビーム幅に基づいてレーザビームパルスのパルスエネルギーを制御することによって、上記に説明される治療フルエンス範囲を達成する。上記で説明されるように、治療フルエンス範囲は、達成することが困難であり、種々のレーザパラメータの精密かつ原理的な制御に高度に依存する。ある事例では、治療フルエンス範囲を達成するために、レーザパラメータは、概して、治療フルエンス範囲を達成することを目的として制御されなければならない。例えば、パルスエネルギーが画定されたビーム幅に基づいて制御されるシステムでは、治療フルエンスは、それがシステムの目的である場合のみ達成されてもよい。換言すると、従来のレーザシステムがパルスエネルギーを制御することができるというだけで、特に、システムが治療フルエンス範囲内で動作する理由を有していない場合、治療フルエンス範囲を達成するためにパルスエネルギーを制御することができるというわけではない。例えば、パルスエネルギーを制御することが可能であるが、フルエンス範囲内で動作することがそのようなシステムの目的ではないため、治療フルエンス範囲内で動作するように、治療フルエンス範囲外で(例えば、融解/アブレーション、すなわち、その用語が本明細書で定義されるため、表面改質を実施するための上限閾値を上回って)動作する、レーザシステムを修正することは、当業者に明白ではないであろう。
【0095】
上記を参照して、ビーム誘導システムの使用を通したレーザビーム走査の組み込みは、レーザビームが治療ゾーン内の異なる面積に指向されることを可能にする。ビーム誘導システムの実施例は、米国特許出願第13/603,165号および第62/332,586号(参照することによって本明細書に組み込まれる)に説明される。レーザビーム走査は、単一の集束スポットを用いて可能であろうよりも広い面積がレーザによって治療されることを可能にする。加えて、走査は、表面のより多くの部分が治療フルエンスを用いて均一に照射されることを確実にする。パターンが、走査と関連付けられるパラメータ、例えば、ジャンプ間隔、すなわち、レーザパターン内の1つの点と別の点との間の時間、滞留時間、すなわち、パターン内の単一の点で費やされる時間、幾何学形状、すなわち、パターン内の点の全ての場所、および点シーケンス、すなわち、ビームが向かって指向される連続点の一覧を定義するために使用される。ビーム誘導システムを用いたパルスレーザの使用と関連付けられるパラメータは、米国特許出願第14/172,562号(参照することによって本明細書に組み込まれる)で詳細に開示される。例示的ビーム誘導システムは、検流計等のスキャナ、およびビーム誘導システムおよびレーザ源を制御するためのコントローラを採用する。例示的コントローラは、Lanmark Controls(Acton, MA)からのMaestro 3000 Controllerである。
【0096】
ビーム誘導システムまたは走査能力を有していない、パルスレーザシステムは、2つのパラメータ、すなわち、パルス幅および繰り返し率の使用を通して、レーザをパルスにしてもよい。レーザ源を制御するために好適なコントローラは、信号発生器である。University of California San Franciscoおよび他の場所で実施された以前の研究は、9.3ミクロンレーザによって治療される歯の硬組織が約2マイクロ秒の熱緩和時間を有することを示している。本値は、パルス幅パラメータの望ましい限界を定義することに役立つ役割を果たす。しかしながら、ビーム誘導または歯の硬組織の治療中のレーザビームの走査と関連付けられるパラメータの好適な範囲を定義するために、研究が殆ど行われていない。
【0097】
いくつかの実施形態による、六角形パターンで配列される7箇所パターン1100が、
図11に図示される。間隔1102が、隣接する場所の間に存在する。六角形パターンは、全ての隣接する点の間に単一の間隔を維持し、パターンを画定するために要求されるパラメータの数を最小限にするため、いくつかの実施形態では有利である。上記で述べられるように、いくつかの実施形態では、間隔1102は、レーザパルスを伴う局所フルエンスまたは視覚合図に基づいて、選択される。いくつかの実施形態によると、E-150iレーザが、0.9mmのビーム幅、18.6マイクロ秒のパルス持続時間、200Hzの繰り返し率、および0.45mmの間隔を有する7箇所六角形パターンと併用される。上記のパラメータにおけるレーザ治療後の研磨エナメル質表面が、
図12に示される。
図12は、200倍の倍率における表面1200を示す。表面全体が部分的に「スケーリングされる」が、明るいマーク1202が存在することが分かり得る。4つの円1104が、
図12の4つの明るいマークの推定直径として示される。約0.17mmの平均円直径が、見出された。明るいマークは、サンプル表面内のさらなる加熱(およびより効果的な治療)を表す視覚合図であると考えられる。治療フルエンス幅は、局所フルエンスが下限治療閾値を上回る、幅または直径である。
図12を参照すると、治療フルエンス幅は、約0.17mmの平均円直径に対応する。応答して、7箇所パターンとほぼ同一の全サイズの19箇所六角形パターンが、治療フルエンス幅に基づいて、0.17mmの場所間隔を有して選択された。
図13は、全ての他のレーザパラメータが一定に保持されている間に、0.45mm離間パターン1302および0.17mm離間パターン1304の両方に関して炭酸塩除去測定を示す、グラフ1300を含有する。より多くの炭酸塩が0.45mm離間パターンよりも0.17mm離間パターンによって除去されることが、
図13から理解され得る。したがって、いくつかの実施形態では、研磨エナメル質サンプルにおける視覚合図に従って、走査された場所を離間することが有利である。
【0098】
いくつかの実施形態では、走査レーザパターン内の隣接する場所の間の間隔は、レーザビーム幅、下限閾値フルエンス、および上限閾値フルエンスに従って選択される。パルスエネルギーを一定に保持し、最大局所フルエンスが上限閾値フルエンスを超えないことを確実にするようにビーム幅を選択することは、下記の方程式を使用して行われてもよい。
【化4】
式中、Eは、パルスエネルギーであり、ωは、ビーム幅の半分であり、I
0<I
meltである。治療フルエンス幅は、半径r内に存在し、I(r)>I
treatである。I(r)、すなわち、所与の半径における局所フルエンスは、以下のように推定されてもよい。
【化5】
ビーム幅に対する治療フルエンス幅の割合、すなわち、r/ωは、以下に従って推定されてもよい。
【化6】
例えば、下限閾値フルエンスI
treatが、0.7(J/cm
2)であり、上限閾値フルエンスI
meltおよび最大局所フルエンスI
0が、1.1(J/cm
2)である、
図10Cに再び戻ると、下限閾値フルエンスを上回る、ビーム幅2ωの割合は、約47.5%である。したがって、隣接する場所の間の間隔は、表面の均一な治療を確実にするように0.475
*ビーム幅未満となるはずである。
【0099】
問題2)治療範囲の別の発現は、レーザパルスのエネルギー密度ではなくて、単一の場所に向かって指向されるレーザパルスの数に関する。各レーザパルスが、場所を加熱し、各後続のパルスが、高温を有している間に場所に作用する場合には、表面融解が、場所において作用するパルスの数の関数になり得る。いくつかの実施形態によると、単一の場所を照射する複数のレーザパルスは、各連続パルスを用いて単一の場所における表面温度を上昇させない。代わりに、複数のレーザパルスはそれぞれ、いったん表面温度が第1のレーザパルスに先立ってほぼ初期表面温度になると、単一の場所を照射する。したがって、各レーザパルスは、先行レーザパルスの数にかかわらず、第1のレーザパルスと同様に表面温度を上昇させるであろう。別の言い方をすれば、各レーザパルスは、表面温度を、第1のレーザパルスに起因する上昇した表面温度に類似する、上昇した表面温度まで上昇させるであろう。上記に説明される数学モデルは、表面温度がレーザパルス後に初期温度に戻るために必要とされる時間量を推定するために、修正された。本時間量の例示的推定が、下記に説明される。
【0100】
モデルは、500Wのピーク電力、1マイクロ秒のパルス持続時間、および0.385ミリメートルのビーム幅を伴って、実行された。初期表面温度は、摂氏35度であり、周囲温度は、摂氏20度である。結果として生じる温度は、0.1、1、10、100、1,000、および10,000マイクロ秒後に見出された。下記の表4を参照されたい。
【表4】
【0101】
表3の含有量は、
図14のグラフ1400に示される。温度は、垂直軸402に沿って摂氏度で示される。レーザパルス後の時間は、水平軸404に沿ってマイクロ秒のオーダーで示される。グラフ1400は、ピーク表面温度データ点1406と、平均スポット温度データ点1408と、ピーク表面温度傾向線1410と、平均スポット温度傾向線1412とを含む。傾向線の方程式およびR二乗値が、下記に記録される。
【化7】
式中、T
peakは、ピーク表面温度であり、nは、time,t=1x10
nである、マイクロ秒のオーダーであり、T
avgは、平均スポット表面温度である。傾向線に基づいて、平均スポット表面温度は、約10
3.492マイクロ秒または3.1マイクロ秒後に摂氏40度に到達する。また、ピーク表面温度は、約10
3.505マイクロ秒または約3.2マイクロ秒後に摂氏40度に到達する。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも3.2マイクロ秒が、単一の場所または2つの重複場所に指向されるレーザパルスの間で経過する。
【0102】
いくつかの実施形態によると、第1の場所に指向される第1のパルスの後、および第1の場所(またはある場合には、第1の場所の近隣)に指向される第2のパルスの前に、中間パルスを中間場所に指向する走査パターンシーケンスが、採用される。本明細書で使用されるように、第1の場所の近隣は、第1の場所に接する、重複する、および/または所定の閾値(例えば、第1の場所のサイズの割合、例えば、第1の場所の直径の2%、5%、10%、25%、50%、75%、および/または100%)を下回る距離によって第1の場所から離間される、場所(例えば、レーザパルスによって衝突される面積)である。いくつかの実施形態によるシーケンスを図示する、例示的49箇所パターン1500が、
図15に示される。例示的49箇所パターン1500は、レーザビーム幅1504よりも小さく、約1/3ビーム幅よりも大きい、間隔1502に非常に適している。本関係を考慮すると、例示的49箇所パターン1500のシーケンスは、重複レーザパルスの間に6つの中間パルスを可能にする。
図14に戻って参照すると、少なくとも3.2マイクロ秒の冷却時間が、同一の場所において作用するパルスの間で経過するべきである。走査に関連するパラメータは、したがって、3.2マイクロ秒が、各重複場所、例えば、場所1と場所8との間で経過することを確実にするように、調節されることができる。重複パルスの間で十分な冷却時間も維持する、中間パルス場所を有するパターンシーケンスは、付加的パルスから不要な加熱を導入することなく、治療領域に指向される単位時間あたりのパルスの数を増加させる。
歯の硬組織の冷却
【0103】
いくつかの実施形態では、能動冷却が、治療を受ける歯の硬組織を冷却するように実装される。能動冷却は、より多くのレーザ電力が治療中に治療領域に向かって指向されることを可能にし、したがって、遅い治療速度、すなわち、問題3)治療速度に対処する。
【0104】
いくつかの実施形態では、能動冷却が、歯の硬組織に向かって指向される流体流を証明する、流体システムを通して実装される。いくつかの実施形態では、流体は、空気を含み、歯の硬組織に向かって連続的に指向される。数学モデルに戻って再び参照すると、自然対流を表す10W/m2から、強制対流を表す100W/m2まで対流の係数を増加させることは、レーザパルス中のエナメル質の加熱にごくわずかな変化を引き起こしたことが見出された。繰り返される試験を通して、(FTIR-ATRによって測定されるような)炭酸塩除去が対流冷却の存在による影響を受けないことが見出されている。
【0105】
ここで
図16Aを参照すると、その歯髄腔の中に熱電対1604を伴うヒト臼歯サンプル1602のX線1600が、示される。サンプル1602の歯髄腔の中に熱電対1604を伴う歯科治療中の歯髄温度上昇を測定することは、一般的実践である。典型的には、歯科治療は、安全と見なされるように、摂氏5.5度の歯髄温度上昇を下回って留まらなければならない。
図16Bは、垂直軸1608に沿って表示される摂氏度単位の歯髄温度と、水平軸1610に沿って表示される秒単位の治療時間とを有する、グラフ1606を含有する。グラフ1606は、約0.7Wの平均電力を生成するE-150iを用いた例示的治療中の歯髄温度上昇を描写する。初期歯髄温度は、摂氏約35度である。周囲空気温度は、摂氏約20度である。冷却1612を伴わずに0.7W治療を受ける、サンプル1602の歯髄温度は、1分未満で5.5度上昇を上回って迅速に上昇する。冷却1614を伴う0.7W治療中の温度上昇は、同一の持続時間にわたってごくわずかである。いくつかの実施形態では、流体送達システムは、サンプルから約25mmに位置する2つの1mm内径の孔を通して、サンプルに向かって約14SLPMの空気を送達する。
【0106】
流体送達システム1700が、
図17を参照していくつかの実施形態に従って説明される。空気は、外部空気源1702、迅速接続解除継手1704、または内蔵圧縮機1706のいずれかを通して、流体送達システム1700に供給される。外部空気源のための例示的空気要件は、60PSIG~100PSIGの間の圧力範囲であり、乾燥した清浄な空気である。例示的内蔵空気圧縮機1706は、3,600のRPMにおいて起動する、Gardner Denver Thomasからの415ZC36/24モデルである。内蔵空気圧縮機1706は、その動作を静かにするために、消音器1708を装着されてもよい。いくつかの実施形態では、流体送達システム1700は、外部空気源1702が存在しないときに内蔵空気圧縮機1706を自動的にオフにするように、自動空気供給切替システム1710を伴って構成される。自動空気供給切替システム1710は、外部空気供給部1702と流体連通し、内蔵圧縮機1708上の制動機1714と電気通信する、空気供給圧力スイッチ1712を備える。いくつかの実施形態では、空気供給圧力スイッチ1712は、空気供給圧力スイッチ1712が要求される圧力を感知し、制動機1714に係合して内蔵空気圧縮機1706を停止させるまで、内蔵圧縮機1706が起動するであろうように、少なくとも60PSIGの圧力においてトリガされる常開スイッチである。空気供給逆止弁1716は、内蔵空気圧縮機1706からの空気が空気供給圧力スイッチ1712をアクティブ化するために逆流することができないように、空気供給圧力スイッチ1712の後に位置する。いくつかの実施形態では、圧力逃し弁1718は、規定を上回る圧力が流体送達システムに到達することを防止するために、空気供給逆止弁1716の後に位置する。いくつかの実施形態では、圧力逃し弁1718は、100PSIGに設定され、消音器1720を含む。典型的には、空気フィルタ1722および空気乾燥機1724が、流体送達システム1700の中に含まれる。空気フィルタ1722は、いくつかの実施形態では、湿気が空気から除去されるために、自動排出管1726に結合される。いくつかの実施形態では、空気乾燥機1724は、膜型空気乾燥機であり、動作のために乾燥機パージ1728を要求する。第1の空気レギュレータ1730は、空気乾燥機1724の後に位置する。いくつかの実施形態では、第1の空気レギュレータ1730は、約56PSIGに設定される。弁1732は、第1の空気レギュレータ1730の後に位置する。弁1732は、ソレノイド型弁であり、流体送達システムコントローラ1734によって制御されてもよい。加えて、弁1732は、弁1732の位置をコントローラ1734に示す、フィードバック機構を含んでもよい。いくつかの実施形態では、弁1732が正確な位置にあり、空気が治療中に存在することを冗長的に確実にすることが有利であり得る。そのような場合において、空気センサ1736が、弁1732の後の流体送達システム1700と流体連通し、コントローラ1734と電気通信して含まれる。いくつかの実施形態では、空気センサ1736は、約25PSIGにおいて閉鎖する、常開空気スイッチである。流体送達システム1700は、最終的に、空気を1つ以上のオリフィス1738に送達し、そこで、空気は、噴出され1740、治療領域に向かって指向される。典型的に流体送達システム1700によって送達される流体の実施例は、空気、窒素、およびヘリウム(清潔にするため)等の圧縮性流体を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、液体流体を送達する、流体送達システム1800の別の実施形態が、
図18を参照して説明され、燃料流体システムに概念的に類似する。流体貯蔵部1802が、ポンプ1804と流体連通して提供される。ポンプは、その下流の流体を加圧する。レギュレータ1806は、流体の圧力を制御する。レギュレータ1806の後に、高速弁1808が、1つ以上のオリフィス1810から外への流体流を制御するように位置する。高速弁1808の実施例は、The Lee Company(Westbrook, CT)からのVHSシリーズ弁である。VHSシリーズ弁は、最大1,200Hzの動作速度が可能である。高速弁1808は、コントローラ1812によって制御される。いくつかの実施形態では、コントローラ1812は、加えて、レーザ1814によるレーザパルス発生を制御する。いくつかの実施形態では、コントローラ1812は、レーザパルスと流体との間の相互作用を防止するために、流体の1つ以上の噴出およびレーザパルスを非同期的に送達するように構成される。いくつかの実施形態では、コントローラ1812は、流体システムコントローラ1812Aと、レーザコントローラ1812Bとを備える。流体システムコントローラ1812Aは、概して、流体システム1800のみを制御し、レーザコントローラ1812Bは、概して、レーザ源1814のみを制御し、流体システムおよびレーザコントローラ1812A-1812Bは、同期化される。レーザパルスまたは流体噴出の繰り返し率は、いくつかのバージョンでは、20~2,000Hzであり、典型的には、約200Hzである。典型的には流体送達システム1800によって送達される流体は、水およびアルコール等の非圧縮性流体を含む。
【0108】
いくつかの実施形態では、
図17および18を参照して説明される両方の流体送達システムが、採用される、または各システムからの構成要素または設計を組み込むハイブリッドシステムが、実装される。いくつかの実施形態では、フッ化物、キシリトール、天然および人工調味料、過酸化水素、脱感作剤、およびキトサン等の添加物が、流体送達システムによって指向される流体の中に含まれてもよい。添加物はさらに、フッ化物の場合は治療の有効性を増加させる、または天然または人工調味料の場合は患者体験を増加させ得る。いくつかの実施形態では、流体は、治療された歯の硬組織と治療されていない歯の硬組織とを区別することを補助するための染色を含み。
【0109】
種々の実施形態では、
図17および/または
図18に説明される流体送達システムは、治療表面上に加圧流体を指向するのではなく、歯を囲繞する環境流体(例えば、空気)が歯にわたって引動され、治療表面の対流冷却を引き起こし得るように、陰圧差を発生させるように構成されることができる。そのような実施形態では、
図17の空気圧縮機1706および/または
図18のポンプ1804は、アクティブ化されたときに、陰圧差を発生させ得る、真空源と置換されることができる。ある事例では、陰圧差は、空気を、歯表面を横断して、有利なこととして治療表面の近傍に位置するレーザ治療ハンドピースのノズルまたは他のオリフィスに引き込ませることができる。種々の適応では、いったん空気がノズルに引き込まれると、これは、逆ではないが、上記に説明される他の流体送達構成要素(例えば、弁、レギュレータ等)のうちのいくつかまたは全てを通して指向されることができる。他の適応では、他の流体送達構成要素のうちのいくつかまたは全ては、除外されることができ、引き込まれた空気は、単純に、流動ラインを通して貯蔵タンクまたは出口に指向されることができる。ある場合には、引き込まれた空気は、圧縮機または膨張器の中に指向され、システム内の作業流体としてさらに使用されることができる。
治療識別溶液
【0110】
いくつかの実施形態では、染色が、問題4)レーザ治療の適応に対処するために使用される。例えば、
図19Aを参照して、抽出ヒト臼歯切片1900が、Young Dental(Earth City, MO)からのTRACE染め出し溶液(製造業者部品番号231102)で完全に被覆される。TRACEは、フロキシンとしても公知である、活性成分赤色28号を含有する。フロキシンは、水溶性赤色色素である。TRACEは、口の中の歯垢の存在を示すために使用される一般的な歯科ツールである。TRACEは、歯垢をより暗い赤色に染色し、また、口の中の歯垢で被覆されていない表面をより明るいピンク色に染色する。類似様式で挙動する他の歯垢染め出し溶液は、エリスロシンまたは赤色3号を含む。歯垢染め出し溶液として、エリスロシンおよびフロキシン含有溶液は、歯垢で被覆されていない表面および歯垢を染色するそれらの能力によって妨げられ、歯垢を伴う面積と伴わない面積との間のコントラストを低減させる。本問題は、概して、歯垢のみを染色し、紫外線の下でのみ見える、フルオレセインの使用をもたらした。
【0111】
ここで
図19Bを参照すると、抽出ヒト臼歯切片の半分が、炭酸塩除去および耐酸性治療のためのサブアブレーション設定において、E-150iレーザを用いて治療されている。明確な区別が、左側の治療された表面1902と右側の未治療療表面1904との間で可視である。レーザ治療中の染め出し溶液の存在は、炭酸塩除去(FTIR-ATR)によって測定されるようなレーザ治療の有効性を有意に改変しないことが示されている。
【0112】
薄膜は、口腔内の歯の硬組織上の層である。薄膜は、口腔内の唾液によって形成され、プロリンに富むタンパク質およびムチンを含む、糖タンパク質から成る。糖タンパク質およびムチンの染色は、生物学的染色および組織学染色の技術分野で周知である。いくつかの実施形態は、治療されている歯の硬組織を被覆する薄膜を染色する、染色を採用する。薄膜染色の実施例は、酸ムチンを黄色に染色するビスマルクブラウンY、ムチンの存在を検出するために現在外科で使用されているムチカルミン染色、および食品着色料および色素を含む。付加的実施形態は、薄膜に付着する染色を採用する。
【0113】
レーザ治療中に、歯の硬組織を被覆する薄膜、歯垢、および生物膜が、切除される。これは、治療が、歯の硬組織の表面温度が瞬間的に摂氏約400度~摂氏1,200度まで上昇されることを要求するため、起こる。したがって、薄膜に作用する、または薄膜に付着される染色は、治療中に除去される。薄膜、歯垢、および生物膜の一部の除去のために必要な温度は、典型的には、摂氏100度超である。例えば、口腔液を除去または滅菌することを意図している歯科オートクレーブは、典型的には、摂氏121~132度で動作する。
【0114】
レーザ治療の実施形態は、以下のステップを含む。染色が、患者の口腔内の全ての歯の硬組織表面に適用される。また、歯科レーザシステムが、患者の口腔内の全ての染色された硬組織表面を治療するために適切なパラメータ(上記参照)において使用される。染色された治療領域が治療されると、染色が除去され、表面をその自然色に戻す。レーザ治療は、全ての歯の硬組織表面がその自然色に戻されるまで継続する。
【0115】
上記で説明されるように、いくつかの実施形態によると、予防的8~12μmレーザ治療は、歯石、結石、および薄膜を含む、種々の生物膜が除去されるように、エナメル質の局所表面温度を上昇させる。
図8Bを参照すると、高倍率下のエナメル質は、歯のエナメル質を含む、エナメル小柱の上部と考えられる「薄片」を示す。歯のエナメル質の構造は、生物膜および研磨からの任意の付加的スメア層が歯の表面から除去されているため、部分的に明確に可視である。レーザ治療後、エナメル質は、大部分は生物膜を含まない、露出表面を有すると言われ得る。いくつかの実施形態によると、露出エナメル質表面は、生物膜がある程度除去された後に、増白剤を用いて治療される。増白剤は、典型的には、光学的に活性化される作用物質が添加された、または添加されていない、1~60%過酸化水素を含有するであろう。種々の増白活性化剤の光学活性化波長は、例えば、200nm~20μmの広いスペクトル範囲を伴う源から提供されることができる。過酸化水素は、エナメル質上の染色を除去する酸素ラジカルに分解する。生物膜および薄膜層が、概して、レーザ治療を用いて除去されると、増白剤は、エナメル質表面により直接適用され、より多くの染色を除去することができる。いくつかの実施形態によると、増白剤の組成は、変動し、主要な利点が実際の増白剤の組成ではないが、エナメル質の露出表面上に直接、増白剤を適用することであるため、依然として効果的であり得る。増白剤のpHは、典型的には、可能な限り7に近く(中性、非酸性)調合される。いくつかの実施形態では、酸性増白剤に対する歯のエナメル質が、典型的には、浸食をもたらすため、中性増白剤が採用される。
【0116】
いくつかの実施形態によると、フッ化物治療が、レーザ治療後に露出エナメル質表面に適用される。フッ化物治療は、虫歯に対する歯の抵抗、そしてある程度の浸食に対する歯の抵抗を増加させることが当技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、フッ化物摂取は、露出エナメル質表面への直接的なフッ化物の適用によって、増加される。いくつかの実施形態では、フッ化物治療は、Pulpdent(Watertown, MA)からのEmbraceワニス等のフッ化物ワニスを含む。Embraceワニスは、カルシウム、リン酸塩、およびキシリトールを伴う5%フッ化ナトリウムを含む。
例示的治療仕様
【0117】
治療のための歯科レーザシステムのいくつかの実施形態は、下記の表5による仕様を有する。
【表5】
【0118】
治療のいくつかの実施形態は、下記の表6による性能仕様を有する。
【表6-1】
【表6-2】
閉ループレーザ制御
【0119】
上記で概説されるように、酸溶解に抵抗するためのレーザ治療は、レーザエネルギーが治療範囲(問題2)内で送達されることを要求する。治療に非常に適した波長を生成するCO2レーザは、平均電力およびパルスあたりのエネルギーが変動することが公知である。CO2レーザ製造業者は、広い平均電力仕様内のみでレーザを生成し、個々のCO2レーザは、使用中に平均電力が変動するであろう。したがって、歯の硬組織を治療するためのレーザシステムおよび方法が、平均電力またはレーザのパルスあたりのエネルギーを制御することが有利である。
【0120】
図20を参照すると、レーザ出力計2001が、開示される。レーザ出力計2001は、レーザシステムのハンドピース(図示せず)が挿入され得る、ハンドピースポート2002を有する。レーザ電力計2001は、挿入されたハンドピースを固着し、センサ2003に向かってハンドピースの出力を指向するように構成される。いくつかの実施形態によると、センサ2003は、GenTec-EO(Quebec, QC, Canada)からのPRONTO-250-PLUS等のレーザ電力検出器を備える。PRONTO-250-PLUSは、0.1~8.0Wの範囲内の電力測定に非常に適している。PRONTO-250-PLUSは、(本タイプのレーザ電力計によって通常提供される+/-5%と比較して)+/-3%正確度を提供する。
【0121】
レーザ出力計2001を使用するために、臨床医は、ハンドピースポート2002の中にハンドピースを設置し、公知の繰り返し率およびパルス持続時間においてレーザを発射する。センサ2003は、実際の平均出力電力を測定および報告する。臨床医は、次いで、所望の平均電力読取値が達成されるまで、レーザの繰り返し率またはパルスエネルギーを変動させる。いくつかの実施形態では、パルス持続時間が、変動される一方で、繰り返し率は、略一定に保持される。これらの実施形態では、平均出力電力の変化は、パルスエネルギーの変化に対応する。上記で説明されるように、いくつかの実施形態では、パルスエネルギーは、治療範囲(問題2)内のレーザエネルギーを提供するために制御されなければならない。いったんレーザセンサ2003が所望の平均レーザ出力電力を報告すると、臨床医が治療を開始する。
【0122】
統合レーザセンサ2102を採用する、閉ループレーザ制御の別の実施形態が、
図21A-Bに図示される。
図21Aは、入力開口2108を通してレーザビーム2106を受容し、関節動作アーム2110の中にレーザビームを整合させるように適合される、光学アセンブリ2104を描写する。光学アセンブリ2104内で、レーザビーム2106は、第1の反射体2112および第2の反射体2114によって方向転換される。いくつかの実施形態では、光学サブアセンブリ2116は、レーザビーム2106に作用する。いくつかの実施形態によると、第1の反射体2112は、レーザビーム部分2118が第1の反射体2112を通過し、統合レーザセンサ2102に向かって指向され得るように、部分的に透過性である。いくつかの実施形態によると、第1の反射体は、レーザビーム2106の約1%を「取り出し」、レーザビーム部分2118は、レーザビーム2106の電力の約1%である電力を有する。統合レーザセンサ2102は、したがって、レーザビーム2106を表すレーザビーム部分2118を測定する。統合センサ2102は、したがって、リアルタイムまたは近リアルタイムで治療中のレーザ電力の変動を測定するために非常に適している。
【0123】
図21Bは、いくつかの実施形態による、統合レーザセンサ2102の断面を図示する。レーザビーム部分2118は、NDフィルタ2120によって作用される。NDフィルタは、未使用のレーザビーム部分2122から反射してもよい。例示的NDフィルタは、レーザビーム部分2118の電力の0.30%~0.17%の電力を有する、測定可能なレーザビーム部分2124を透過させる。測定可能なレーザビーム部分2124は、光検出器2126を照射する。いくつかの実施形態では、光検出器2126は、水銀カドミウムテルル(MCT)センサ、CoherentからのPowerMax Pro Sensor(米国特許第9,059,346号)、およびインジウムヒ素アンチモン(IAA)センサのうちの1つを備える。
【0124】
図22Aは、いくつかの実施形態によって採用されるような統合レーザセンサの動作を描写する。典型的CO
2レーザは、トリガ信号2202によって制御され、オフセット2204後にレーザパルスを開始する。レーザ信号2206は、統合レーザセンサによって感知される。レーザ信号2206は、共通水平軸内の時間2208と、垂直軸内のピーク電力2210とを有する、グラフに示される。典型的CO
2レーザは、立ち上がりエッジ2212および立ち下がりエッジ2214を有する、サメの鰭に類似するレーザパルスを生成する。いくつかの実施形態によると、統合レーザセンサからの信号2206は、立ち上がりエッジ2212中のみに真である、デジタルパルス持続時間信号2216を生成するフィルタである。立ち上がり時間2218は、デジタルパルス持続時間信号が真である持続時間に等しく、また、レーザの光学パルス持続時間の測定された表現である。いくつかの実施形態によると、統合レーザセンサからのフィードバックが、光学パルス持続時間を制御するために使用される。
【0125】
ここで
図23A-Bを参照すると、統合電力センサが、別の実施形態に従って採用される。
図23Aを参照すると、レーザ信号2302が、統合電力センサによって提供される。第1のコンパレータ2304は、レーザ信号2302を最小電力閾値2306と比較する。最小電力閾値2306は、典型的には、最小の測定可能な量である、電力値である。第1のコンパレータ2304およびインバータ2307は、デジタルであり、レーザ電力信号2302が最小電力閾値2306を上回るときのみ真の値を有する、第1のコンパレータ信号2308を出力する。レーザ信号2302はさらに、それを最大電力閾値2312と比較する、第2のコンパレータ2310に提供される。第2のコンパレータ2310は、デジタルであり、レーザ信号2302が最大電力閾値2312を上回るときのみ真である、第2のコンパレータ信号2314を出力する。第1および第2のコンパレータ信号2108および2314は、ANDゲート2316に進入する。ANDゲート2316は、第1および第2のコンパレータ信号の両方が真であるときに、接続2320が開放され、開放して保持されるように、ラッチ2318と通信する。接続2320は、接続2320が開放しているときに、レーザトリガ信号2326が遮断されるように、レーザコントローラ2322とレーザ2324との間の電気通信内に位置する。いくつかの実施形態では、レーザコントローラ2322はさらに、レーザパルスの間でラッチ2318を掛止解除する、解除システム2328を備える。
図23Bは、ピーク電力を表す垂直軸2330を伴って、レーザ信号2302を示す。
図23Bはまた、全て時間を表す共通水平軸2332上にある、第1のコンパレータ信号2308、第2のコンパレータ信号2314、およびレーザトリガ信号2326も示す。いくつかの実施形態によると、レーザ信号2302は、エネルギー信号2334を提供するように経時的に統合される。エネルギー信号2334は、いったんエネルギー信号が規定パルスエネルギー閾値に到達すると、レーザトリガ信号2326を遮断するために類似回路で使用されることができる。加えて、いくつかの実施形態では、エネルギー信号2326が、パルスあたりの全エネルギーを測定するために使用される。
【0126】
図24は、統合レーザセンサを採用する、なおも別の実施形態の性能を描写する。
図24を参照して説明される実施形態は、
図23Aのものに類似するが、ANDゲート2416の後にラッチ2418を伴わない。本実施形態によると、レーザトリガ信号2402は、いったんレーザ信号2404が最大電力閾値2406を超えると、恒久的に遮断されない。代わりに、レーザトリガ信号2402は、瞬間的に遮断され、ヒステリシス周期2408後に、レーザトリガ信号は、遮断されない。本動作モードの結果は、最大電力閾値に従って高さ(電力)が限定される、レーザ信号2404である。上記で説明されるように、レーザ信号2404は、測定されたパルスエネルギー2410を提供するように積分されてもよい。いくつかの実施形態によると、トリガ信号2402の全パルス持続時間2412が、測定されたパルスエネルギーに従って制御される。
【0127】
予防的レーザ治療システムおよび方法の公理設計分解が、表7において下記で概説される。付加的システム制約がさらに、設計に影響を及ぼし得る。例えば、Coherent E-150iレーザは、典型的には、5マイクロ秒以上の光学パルス持続時間で動作されなければならない。
【表7】
【0128】
レーザ治療(DP0)の結合行列が、下記に示される。
【化8】
【0129】
例証的実施形態を本明細書で説明したが、当業者は、上記に具体的に説明されるもの以外の本発明の種々の他の特徴および利点を理解するであろう。したがって、前述は、本発明の原理を例証するにすぎず、種々の修正および追加が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく当業者によって行われ得ることを理解されたい。故に、添付される請求項は、示され、説明されている特定の特徴によって限定されるものとしないが、任意の明白な修正およびその均等物も網羅すると解釈されるものとする。