(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】光電子素子
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230316BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20230316BHJP
H10K 50/11 20230101ALI20230316BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K50/11
(21)【出願番号】P 2020020952
(22)【出願日】2020-02-10
(62)【分割の表示】P 2017240862の分割
【原出願日】2013-09-17
【審査請求日】2020-02-28
(32)【優先日】2012-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2013-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507226592
【氏名又は名称】オックスフォード ユニヴァーシティ イノヴェーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スナイス、ヘンリー、ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】クロスランド、エドワード、ジェイムズ、ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヘイ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ボール、ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】リー、マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ドカンポ、パブロ
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-309308(JP,A)
【文献】特開2009-006548(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104595(WO,A1)
【文献】特表2015-529982(JP,A)
【文献】特表2015-517736(JP,A)
【文献】特開2008-189947(JP,A)
【文献】特開2002-299063(JP,A)
【文献】Hui-Seon Kim et al.,"Lead Iodide Perovskite Sensitized All-Solid-State Submicron Thin Film Mesoscopic Solar Cell with Efficiency Exceeding 9%",Scientific Reports,2012年08月21日,Vol. 2,Article number: 591, pp. 1-7,DOI: 10.1038/srep00591
【文献】Zhuo Chen et al.,"Schottky solar cells based on CsSnI3 thin-films",Applied Physics Letters,2012年08月27日,Vol. 101,pp. 093901-1-093901-4,DOI: 10.1063/1.4748888
【文献】In Chung et al.,"All-solid-state dye-sensitized solar cells with high efficiency",Nature,2012年05月24日,Vol. 485,pp. 486-490,DOI: 10.1038/nature11067
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-30/89
H10K 50/00-50/88
H01L 31/00-31/119
H01L 33/00-33/64
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光活性領域を含む光電子素子であって、前記光活性領域は、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、
前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層と
を含み、
前記ペロブスカイト半導体の前記層が、前記n型領域又は前記p型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成し、
前記ペロブスカイト半導体は、三次元結晶構造を有し、
前記ペロブスカイト半導体が、ハロゲン化物アニオンから選択される少なくとも1つのアニオンを含
み、
前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、前記ペロブスカイト半導体のみからなり、
前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の厚さが、10nmから10μmまでである、
光電子素子。
【請求項2】
前記光電子素子は、発光素子である、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項3】
前記光電子素子は、発光ダイオード、レーザ、又はダイオード注入レーザである、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項4】
前記ペロブスカイト半導体は、層間が全く分離していないペロブスカイトのユニット・セルの三次元ネットワークを含む、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項5】
前記ペロブスカイト半導体が、化学式[A][B][X]
3で表され、ここで、[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、[X]はハロゲン化物アニオンから選択される少なくとも1つのアニオンである、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項6】
前記ペロブスカイト半導体の前記層が、前記n型領域と第1のプレーナ・ヘテロ接合を形成し、前記p型領域と第2のプレーナ・ヘテロ接合を形成する、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項7】
前記ペロブスカイト半導体の前記層の厚さが、
50nmから
1000nmまでである、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項8】
前記光活性領域が、
前記n型領域と、
前記p型領域と、
前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、このキャッピング層が開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層である、キャッピング層と
を含み、
前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体は、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触し、
前記スカフォールド材料は、多孔質であり、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記スカフォールド材料の気孔内に配置されている、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項9】
前記スカフォールド材料は、誘電性スカフォールド材料又は電子輸送スカフォールド材料である、請求項8に記載の光電子素子。
【請求項10】
前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体は、前記p型領域又は前記n型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する、請求項8に記載の光電子素子。
【請求項11】
前記キャッピング層の厚さは、前記第1の層の厚さよりも厚い、請求項8に記載の光電子素子。
【請求項12】
前記第1の層の厚さは、5nmから1000nmまでである、請求項8に記載の光電子素子。
【請求項13】
前記光電子素子は、発光ペロブスカイトである、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項14】
前記ペロブスカイト半導体が、3.0eV以下のバンド・ギャップを有する、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項15】
前記ペロブスカイト半導体が、第1のカチオン、第2のカチオン、及びハロゲン化物アニオンから選択される前記少なくとも1つのアニオンを含む、請求項1に記載の光電子素子。
【請求項16】
前記第2のカチオンが、Ca
2+、Sr
2+、Cd
2+、Cu
2+、Ni
2+、Mn
2+、Fe
2+、Co
2+、Pd
2+、Ge
2+、Sn
2+、Pb
2+、Yb
2+及びEu
2+から選択される金属カチオンである、請求項15に記載の光電子素子。
【請求項17】
前記第1のカチオンは、有機カチオンである、請求項15に記載の光電子素子。
【請求項18】
前記有機カチオンは、化学式(R
1R
2R
3R
4N)
+で表され、ここで、
R
1は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R
2は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R
3は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、そして
R
4は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである、請求項17に記載の光電子素子。
【請求項19】
前記有機カチオンは、化学式(R
5R
6N=CH-NR
7R
8)
+で表され、ここで、
R
5は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R
6は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R
7は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R
8は、水素、非置換型若しくは置換型C
1~C
20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである、請求項17に記載の光電子素子。
【請求項20】
前記ペロブスカイト半導体は、2つ以上の異なるアニオンを含む混合型ハロゲン化物ペロブスカイト半導体であり、前記2つ以上の異なるアニオンは、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである、請求項1~19のいずれか一項に記載の光電子素子。
【請求項21】
光活性領域を含む光電子素子を製造するためのプロセスであって、前記光活性領域は、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、
前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層と、
を含み、
前記ペロブスカイト半導体の前記層が、前記n型領域又は前記p型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成し、
前記ペロブスカイト半導体は、三次元結晶構造を有し、
前記ペロブスカイト半導体が、ハロゲン化物アニオンから選択される少なくとも1つのアニオンを含み、
前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、前記ペロブスカイト半導体のみからなり、
前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の厚さが、10nmから10μmまでであり、
前記プロセスは、
(a)第1の領域を設けるステップと、
(b)前記第1の領域の上に第2の領域を配置するステップであって、前記第2の領域が、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含み、前記ペロブスカイト半導体は、三次元結晶構造を有し、前記ペロブスカイト半導体が、ハロゲン化物アニオンから選択される少なくとも1つのアニオンを含み
、前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、前記ペロブスカイト半導体のみからなり、前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の厚さが、10nmから10μmまでである、配置するステップと、
(c)前記第2の領域の上に第3の領域を配置するステップと、
を含み、
前記第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、前記第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である、又は
前記第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、前記第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域である、プロセス。
【請求項22】
前記光電子素子は、発光ダイオード、レーザ、又はダイオード注入レーザである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記ペロブスカイト半導体は、層間が全く分離していないペロブスカイトのユニット・セルの三次元ネットワークを含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項24】
前記ペロブスカイト半導体が、化学式[A][B][X]
3で表され、ここで、[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、[X]はハロゲン化物アニオンから選択される少なくとも1つのアニオンである、請求項21に記載のプロセス。
【請求項25】
前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
気相堆積によって前記第1の領域の上に前記ペロブスカイト半導体の固体層を生成するサブステップ、
を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項26】
気相堆積によって前記第1の領域の上に前記ペロブスカイト半導体の前記固体層を生成する前記ステップが、
(i)蒸気に前記第1の領域を曝すサブステップであって、前記蒸気が、前記ペロブスカイト半導体又は前記ペロブスカイト半導体を生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含む、曝すサブステップと、
(ii)前記第1の領域の上に前記ペロブスカイト半導体の前記固体層を生成するために、前記第1の領域上への前記蒸気の堆積を可能にするサブステップと、
を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記ペロブスカイト半導体を蒸発させること又は前記ペロブスカイト半導体を生成するための1つ若しくは複数の反応物質を蒸発させることによって前記蒸気を生成するステップをさらに含む、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
気相堆積によって前記ペロブスカイト半導体の固体層を生成するサブステップであって、前記気相堆積が、デュアル・ソース気相堆積である、生成するサブステップ、
を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項29】
(i)前記第1の領域を蒸気に曝すステップであって、前記蒸気が、前記ペロブスカイト半導体を生成するための2つの反応物質を含む、曝すステップと、
(ii)前記第1の領域の上に前記ペロブスカイト半導体の固体層を生成するために、前記第1の領域上への前記蒸気の堆積を可能にするステップと、
を含み、
前記ステップ(i)が、第1のソースから第1の反応物質を蒸発させること及び第2のソースから第2の反応物質を蒸発させることによって前記ペロブスカイト半導体を生成するための2つの反応物質を含む前記蒸気を生成するサブステップをさらに含む、
請求項21に記載のプロセス。
【請求項30】
前記第1の反応物質が、(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を含み、並びに、前記第2の反応物質が、(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物を含む、請求項29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記第1のアニオン及び前記第2のアニオンが、ハロゲン化物イオンから選択される異なるアニオンである、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(i)前記第1の領域の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配するサブステップであって、前記1つ又は複数の前駆物質溶液が、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト半導体、又は1つ若しくは複数の溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト半導体を生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含む、配するサブステップと、
(ii)前記ペロブスカイト半導体の固体層を前記第1の領域の上に生成するために前記1つ又は複数の溶剤を除去するサブステップと、
を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項33】
前記光活性領域が、
前記n型領域と、前記p型領域と、
前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、前記キャッピング層が、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層である、前記キャッピング層と、
を含み、
前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触しており、
前記スカフォールド材料は、多孔質であり、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体は、前記スカフォールド材料の気孔内に配置されており、
前記プロセスが、
(a)前記第1の領域を設けるステップと、
(b)前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置するステップであって、前記第2の領域が、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む前記第1の層と、
(ii)前記第1の層の上のキャッピング層であり、前記キャッピング層が、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であり、前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触する、前記キャッピング層と、
を含む、配置するステップと、
(c)前記第2の領域の上に前記第3の領域を配置するステップと
を含む、請求項21に記載のプロセス。
【請求項34】
前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)は、
(i)前記第1の領域の上にスカフォールド材料を配置するステップと、
(ii)前記第1の層を生成するために前記ペロブスカイト半導体を前記スカフォールド材料の気孔内に配置し、さらに前記キャッピング層を生成するために前記ペロブスカイト半導体を第1の層の上に配置するステップと、
を含む、請求項33に記載のプロセス。
【請求項35】
前記ペロブスカイト半導体を前記スカフォールド材料の気孔内に配置する前記ステップ(i)と、さらに前記ペロブスカイト半導体を前記第1の層の上に配置する前記ステップ(ii)とが、単一ステップで一緒に実行される、請求項34に記載のプロセス。
【請求項36】
前記第1の領域の上に前記スカフォールド材料を配置する前記ステップ(i)は、
スカフォールド組成物を前記第1の領域上に配置するサブステップであって、前記スカフォールド組成物は、前記スカフォールド材料、1つ又は複数の溶剤、及び任意選択で結合剤を含む、配置するサブステップと、
1つ又は複数の溶剤及び、存在するときには、結合剤を除去するサブステップと、
を含む、請求項34に記載のプロセス。
【請求項37】
前記ステップ(ii)は、
前記スカフォールド材料の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配するサブステップであって、前記1つ又は複数の前駆物質溶液が、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト半導体、又は1つ若しくは複数の溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト半導体を生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含む、配するサブステップと、
前記スカフォールド材料の気孔内に、固体ペロブスカイト半導体を、及び前記第1の層の上に、配置された前記ペロブスカイト半導体の固体キャッピング層を生成するために、前記1つ又は複数の溶剤を除去するサブステップと、
を含む、請求項36に記載のプロセス。
【請求項38】
前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)は、さらに、
(iii)ペロブスカイト半導体を加熱するサブステップ
を含む、請求項26、32、又は36に記載のプロセス。
【請求項39】
プロセス全体が、150℃を超えない1つ又は複数の温度で実行される、請求項21又は33に記載のプロセス。
【請求項40】
前記光電子素子が、請求項1~20のいずれか一項に規定された光電子素子である、請求項23又は35に記載のプロセス。
【請求項41】
前記光電子素子が、発光素子である、請求項21又は23~40のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子素子に関し、特に、平面接合光電子素子に関する。本発明はまた、このような光電子素子を製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜光電池は、その高効率、同等の安定性、及び潜在的に低い製造コストのために単結晶対応物に対する将来有望な代替物である。光電池用途に対して現在検討中である最も広く研究されている薄膜材料は、化合物半導体CdTe[X. Wu, Solar Energy, vol. 77, p. 803, 2004]、CuIn1-xGaxSe2(CIGS)[Chirila et al., Nature Materials, vol. 10, p. 857, 2011]、Cu2ZnSnS4(CZTS)[D. Barkhouse et al., Progress in Photovoltaics, vol. 20, p. 6, 2012]、色素増感太陽電池[A. Yalla et al., Science, vol. 334, p. 629, 2011]、及び有機半導体太陽電池[Y. Liang et al., Advanced Energy Materials, vol. 22, p. E135, 2010]を含む。高効率太陽電池を含む無機化合物半導体は、典型的には費用のかかる真空系の堆積を使用して製造されるが、CIGS及びCZTSの溶液処理に向けた最近の道筋は、高効率素子を明示した[M. Graetzel at al., Nature, vol. 488, p. 304, 2012]。低い記録効率を有する色素増感太陽電池及び有機太陽電池は、典型的には溶液系の堆積処理手順で製造されるが、不十分な長期安定性に悩まされている。加えて、テルル及びインジウムの比較的小さな製造能力が、CdTe及びCIGSを潜在的に商業的に魅力のないものにさせている。
【0003】
ペロブスカイト(Perovskites)[D. Mitzi et al., Science, vol. 267, p. 1473, 1995]は、素子用途に対して検討されてきている半導体材料の代替ファミリである[D. Mitzi at al., IBM Journal of Research and Development, vol. 45, p. 29, 2001]。光電池に関して、ペロブスカイトは、液体電解質光電気化学セルにおける増感剤として使用されてきている[J.-H. Im et al., Nanoscale, vol. 3, p. 4088, 2011; A. Kojima et al., Journal of American Chemical Society, vol. 131, p. 6050, 2009]、とはいえこの以前に報告された電解質系では、ペロブスカイト吸収材は、急速に崩壊し、太陽電池は、たった10分後に性能が低下した。ペロブスカイトは、固体光電気化学セルにおいて[H.-S. Kim et al., Scientific Reports, doi:10.1038/srep00591; A. Kojima et al., ECS Meeting Abstracts, vol. MA2007-02, p. 352, 2007]及び固体色素増感太陽電池における正孔トランスポータとして[I. Chung, Nature, vol. 485, p. 486, 2012]やはり使用されてきている。増感太陽電池の主要な動作原理は、光吸収及び電荷輸送の役割が太陽電池内の異なる材料へと分離されることである。これは、光が材料の固体膜を照らした場合に電荷を非効率的に発生するはずの光吸収材が、増感太陽電池内で非常に効率的に動作することを可能にする。これゆえ、メソ構造の太陽電池内で増感剤として又は色素増感太陽電池内で正孔トランスポータとして利用されるペロブスカイトの実例はあるが、太陽電池において効率的に動作するペロブスカイトの固体膜の報告がないので、ペロブスカイトが薄膜光電池において固体薄膜として利用される材料の理想的なファミリではないと仮定することは妥当なはずである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】X. Wu, Solar Energy, vol. 77, p.803, 2004
【文献】Chirila et al., Nature Materials, vol. 10, p. 857, 2011
【文献】D. Barkhouse et al., Progress in Photovoltaics, vol. 20, p. 6, 2012
【文献】A. Yalla et al., Science, vol. 334, p. 629, 2011
【文献】Y. Liang et al., Advanced Energy Materials, vol. 22, p. E135, 2010
【文献】M. Graetzel at al., Nature, vol. 488, p. 304, 2012
【文献】D. Mitzi et al., Science, vol. 267, p. 1473, 1995
【文献】D. Mitzi at al., IBM Journal of Research and Development, vol. 45, p. 29, 2001
【文献】J.-H. Im et al., Nanoscale, vol. 3, p. 4088, 2011
【文献】A. Kojima et al., Journal of American Chemical Society, vol. 131, p. 6050, 2009
【文献】H.-S. Kim et al., Scientific Reports, doi:10.1038/srep00591
【文献】A. Kojima et al., ECS Meeting Abstracts, vol. MA2007-02, p. 352, 2007
【文献】I. Chung, Nature, vol. 485, p. 486, 2012
【文献】J. Rouquerol et al., "Recommendations for the Characterization of Porous Solids", Pure & Appl. Chem., Vol. 66, No. 8, pp. 1739-1758, 1994
【文献】K. S. W. Sing, et al., Pure and Appl. Chem., vol. 57, n04, pp. 603-919, 1985
【文献】IUPAC "Manual on Catalyst Characterization", J. Haber, Pure and Appl. Chem., vol. 63, pp. 1227-1246, 1991
【文献】Barkhouse et al., Prog. Photovolt: Res. Appl. 2012; 20:6-11
【文献】P. Peumans, A. Yakimov, and S. R. Forrest, "Small molecular weight organic thin-film photodetectors and solar cells" J. Appl. Phys. 93, 3693 (2001)
【文献】Masaya Hirade, and Chihaya Adachi, "Small molecular organic photovoltaic cells with exciton blocking layer at anode interface for improved device performance" Appl. Phys. Lett. 99, 153302 (2011)
【文献】V. K. Dwivedi, J. J. Baumberg, and G. V. Prakash, "Direct deposition of inorganic-organic hybrid semiconductors and their template-assisted microstructures," Materials Chemistry and Physics, vol. 137, no. 3, pp. 941-946, Jan. 2013
【文献】T. Miyasaka et al., Journal of Electrochemical Society, vol. 154, p. A455, 2007
【文献】Lee et al., Science, Submitted 2012
【文献】Ball, J. M.; Lee, M. M.; Hey, A.; Snaith, H. Low-Temperature Processed Mesosuperstructured to Thin-Film Perovskite Solar Cells, Energy & Environmental Science 2013
【文献】Beiley, Z. M.; McGehee, M. D. Modeling low cost hybrid tandem photovoltaics with the potential for efficiencies exceeding 20%, Energy & Environmental Science 2012, 5, 9173-9179
【文献】Journal of Luminescence 60&61 (1994) 269 274
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、n型(電子伝導)層とp型(正孔伝導)層との間に配置された光吸収性又は発光性ペロブスカイトの薄膜を有する光電子素子を提供する。発明者は、メソポーラス複合材の必要条件とは反対に、光活性ペロブスカイトの緻密な薄膜を使用することによって優れた素子効率を得ることが可能であるということを予期せずに見出した。開口多孔質ペロブスカイト構造が、典型的には、この材料を用いてバルク・ヘテロ接合を形成するためにp型又はn型材料で浸透され得るとはいえ、本発明において利用する密なペロブスカイト層は、一般にp型層及び/又はn型層とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。
【0006】
ペロブスカイトは、溶液処理及び真空処理の両方によって地球上に豊富な元素から形成されることが可能であり、可変のバンド構造(並びにこれゆえ、光学的特性及び電子的特性)を有し、且つ大気条件において安定であり得るという理由で、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイトは、光電子素子用途にとって魅力的である。発明者は、光活性ペロブスカイト膜を、溶液堆積によって、薄いスカフォールド(scaffold)層若しくはシード層上に、又はこのようなスカフォールドがなくとも成長することができることを示した。薄いシード層を組み込んだ素子を、150℃を超えない温度で全体を処理することが可能であり、これは、製造コストを削減するため、及び柔軟な素子を提供するためにプラスチック基板上の処理を可能にするため、並びにタンデム接合素子及び多接合素子の製造を可能にする他の層の上部での処理をやはり可能にするために重要である。ペロブスカイト薄膜を、バルク粉末からの蒸着によって又はペロブスカイト前駆物質化合物からの共蒸着によって、やはり有効に形成することが可能である。
【0007】
従って、本発明は、光活性領域を含む光電子素子を提供し、この光活性領域は、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、n型領域とp型領域との間に配置された、
開口気孔率(open porosity)のないペロブスカイト半導体の層と
を含む。
【0008】
典型的には、光電子素子は、光起電力素子である。
【0009】
或いは、光電子素子を、光起電力素子以外とすることができる。光電子素子を、例えば、発光素子とすることができる。
【0010】
いくつかの実施例では、光活性領域は、
前記n型領域と、
前記p型領域と、n型領域とp型領域との間に配置された、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、このキャッピング層は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層である、キャッピング層と、
を含み、
キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、第1の層中のペロブスカイト半導体と接触する。
【0011】
別の一態様では、本発明は、光活性領域を含む光電子素子を製造するためのプロセスを提供し、この光活性領域は、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、n型領域とp型領域との間に配置された、
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層と、
を含み、このプロセスは、
(a)第1の領域を設けるステップと、
(b)第1の領域の上に第2の領域を配置するステップであって、この第2の領域が、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含む、配置するステップと、
(c)第2の領域の上に第3の領域を配置するステップと、
を含み、
第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である、又は
第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域である。
【0012】
典型的には、本発明のプロセスは、前記光活性領域を含む光起電力素子を製造するためである。
【0013】
或いは、本プロセスを、光起電力素子以外の光電子素子を製造するために使用することができ、この光電子素子は、前記光活性領域を含む。本プロセスを、例えば、前記光活性領域を含む発光素子を製造するために使用することができる。
【0014】
本発明のプロセスのいくつかの実施例では、光活性領域は、前記n型領域と、前記p型領域と、n型領域とp型領域との間に配置された、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、このキャッピング層は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であり、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、第1の層中のペロブスカイト半導体と接触する、キャッピング層と、
を含む。
【0015】
このような実施例では、本発明のプロセスは、
(a)前記第1の領域を設けるステップと、
(b)第1の領域の上に前記第2の領域を配置するステップであって、第2の領域は、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上のキャッピング層であり、このキャッピング層は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であり、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、第1の層中のペロブスカイト半導体と接触する、キャッピング層と、
を含む、配置するステップと、
(c)第2の領域の上に前記第3の領域を配置するステップと、
を含む。
【0016】
本発明は、光電子素子を製造するための本発明のプロセスによって得ることができる光電子素子をさらに提供する。
【0017】
典型的には、光電子素子は、光起電力素子である。
【0018】
或いは、光電子素子を、光起電力素子以外とすることができる。光電子素子を、例えば、発光素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】(a)本発明の光電子素子の実施例の一般的な構造、及び(b)本明細書において例示される光起電力セル(薄いAl
2O
3層又はTiO
2層が省略される変形例もやはり検討した)の模式図である。金属電極の少なくとも一方が、太陽スペクトルの可視領域から近赤外領域にわたり半透明である。半透明は、典型的には80%の透過度を有し、40から90%までの範囲の透過度を有する。
【
図2】(a)本明細書における下記の実例において検討した下層変形例の各々の上に成長させたペロブスカイト膜のXRD(X-ray diffraction)スペクトル、及び(b)蒸着によって形成したペロブスカイトのXRDスペクトルの図である。
【
図3】本明細書における下記の実例において検討した下層変形例の各々の上に成長させたペロブスカイト膜の正規化したUV-可視スペクトルの図である。
【
図4】(a)HT B-Al
2O
3、(b)HT B-TiO
2、(c)HT Al
2O
3、(d)HT TiO
2、(e)HT C、(f)LT Al
2O
3、(g)LT TiO
2、及び(i)蒸着型の変形例を用いた素子の代表的なJ-V特性の図である。
【
図5】(a)HT B-Al
2O
3、(b)HT B-TiO
2、(c)HT Al
2O
3、(d)HT TiO
2、(e)HT C、及び(f)LT Cの変形例を用いた太陽電池断面のSEM(Scanning electron microscopy)顕微鏡写真である。
【
図6】(a)HT B-Al
2O
3、(b)HT B-TiO
2、(c)HT Al
2O
3、(d)HT TiO
2、(e)HT C、及び(f)LT Cの変形例を用いた基板処理の上から見た平面SEM顕微鏡写真である。
【
図7】(a)LT Al
2O
3、及び(b)LT TiO
2の変形例を用いた基板処理の平面SEM顕微鏡写真である。
【
図8】反転p-i-n型薄膜太陽電池用の素子模式図である。
【
図9】a)p型層及びb)n型層の上のペロブスカイト吸収材の二重層についての定常状態フォトルミネッセンス・スペクトルの図である。放出は、ペロブスカイト吸収材CH
3NH
3PbI
3-xCl
xのフォトルミネッセンス・ピーク上に中心を置く。
【
図10】a)最適化した反転型素子構成のSEM断面像である。スケールバーは250nmを表す。異なる層は、b)に示した素子模式図の配色で色づけされている。
【
図11】PEDOT:PSSの堆積後にa)及びc)150℃で20分間アニールしたPEDOT:PSS並びにb)及びd)FeCl
3の0.25M水溶液で架橋したPEDOT:PSSを含有する基板用のペロブスカイト層が続く基板のSEM上面図である。a)及びc)中のスケールバーは、25μmに対応し、b)及びd)では2.5μmに対応する。
【
図12】架橋した(丸)及びアニールした(四角)PEDOT:PSS層の両者から構成される典型的な素子についてのa)JV曲線及びb)吸収スペクトルの図である。挿入表は、両方のアーキテクチャの典型的な素子についての短絡電流密度(Jsc、mAcm
-2)、電力変換効率(Eff、%)、開路電圧(Voc、V)及びフィル・ファクタ(FF:fill factor)を示す。
【
図13】上部に形成したペロブスカイト層を有し、a)及びc)NiO、並びにb)及びd)V
2O
5を堆積した後の基板の上面図のSEM像である。a)及びb)中のスケールバーは、25μmに対応し、c)及びd)では2.5μmに対応する。
【
図14】酸化バナジウム(四角)及びNiO(丸)p型コンタクトを含む素子からのJV曲線の図である。
【
図15】a)照明時の同じ素子からのJV曲線の時間進展の図である。スキャンを毎分実行し、最初のスキャンが一番下であり、最後のスキャンが一番上である。b)通常構成(三角)及び我々の反転型構成(丸)のチャンピオン素子についてのJV曲線の図である。挿入表は、両方の素子アーキテクチャについての短絡電流密度(Jsc、mAcm
-2)、電力変換効率(Eff、%)、開路電圧(Voc、V)及びフィル・ファクタ(FF)を示す。
【
図16】ハイブリッド・タンデム太陽電池アーキテクチャの模式図であり、ここでは、c-Si HIT(イントリンシック薄層を有するヘテロ接合:Heterojunction with Intrinsic Thin layer)セルを、タンデム接合における裏面セルとして使用し、ここでは、i=イントリンシック、a=非晶質、c=結晶、TCO=透明導電性酸化物(transparent conducting oxide)である。太陽光は、上から入射する。
【
図17】ハイブリッド・タンデム太陽電池アーキテクチャの模式図であり、ここでは、ペロブスカイト太陽電池を上部セルとして使用し、タンデム接合における裏面セルとして従来型の薄膜太陽電池を有し、ここでは、TCO=透明導電性酸化物である。とりわけ、現世代の薄膜技術(例えば、GIGS太陽電池)に関して、モノリシック2端子タンデム素子用に「反転型」ペロブスカイト太陽電池を実現する必要性がある。太陽光は、上から入射する。
【
図18】ペロブスカイトのデュアル・ソース気相堆積用の蒸着チャンバの写真である。
【
図19】デュアル・ソース蒸着チャンバの模式図である。
【
図20】a)完成したデュアル・ソース蒸着型ペロブスカイト太陽電池、b)断面像の説明図、c)完成した素子の断面SEM像の図である。
【
図21】a)緻密なTiO
2層及びスピンコートしたペロブスカイトだけを有するFTO(fluorine-doped tin oxide)コートしたガラスの上に処理した試料、b、c)スピンコートしたペロブスカイトの表面SEM像、d)FTOコートしたガラス及び緻密なTiO
2層及び蒸着したペロブスカイトだけを有する試料、e、f)蒸着型ペロブスカイトの表面SEM像の図である。
【
図22】最高のデュアル・ソース蒸着型ペロブスカイト太陽電池の100mWcm
-2の人工的なAM1.5太陽光の下で測定したJ-V曲線の図である。挿入図は、このJ-V曲線から導出した太陽電池性能パラメータを与える。
【
図23】スピンコート型ペロブスカイト(K330と名付ける)、ヨウ化メチルアンモニウム(MAI:methylammonium iodide)、ヨウ化鉛(PbI
2)、及びTiO
2コートしたFTOガラスと比較した蒸着型ペロブスカイトのXRD測定の図である。
【
図24】蒸着型ペロブスカイト及びスピンコート型ペロブスカイトの200nm厚の膜についての吸光度の比較を示す図である。
【
図25】2ソース気相堆積によって堆積したアニールしないペロブスカイト層とアニールしたペロブスカイト層との間の比較、左:アニールしない蒸着型ペロブスカイト表面(蒸着したまま)、右:アニールした蒸着型ペロブスカイト表面(窒素グローブボックス内で摂氏100度で45分間アニールした後)、を示す図である。
【
図26】2ソース気相堆積及び溶液堆積による表面カバレッジの比較、左:蒸着しアニールしたペロブスカイト膜、右:ガラス/FTO/緻密TiO
2の上にコートした、スピンコートしアニールしたペロブスカイト膜を示す図である。
【
図27】SEM断面図間の比較、左:2ソース蒸着型平面接合素子、右:スピンコート型平面接合素子、を示す図である。
【
図28】2ソース気相堆積によって形成したペロブスカイト層とペロブスカイト前駆物質溶液のスピンコーティングによって形成したペロブスカイト層との間のXRD比較を示す図である。両方の膜について、出発の前駆物質はMAI及びPbCl
2であった。
【
図29】(下から上へ)ガラス基板、FTO、TiO
2電子選択性層、光活性層、スピロ-OMeTADを示す素子の断面走査型電子顕微鏡写真である。光活性層は、(a)PbCl
2及び(b)CH
3NH
3Iのプロパン-2-オル溶液中でPbCl
2膜を浸漬コーティングした後のCH
3NH
3PbI
3-xCl
xである。
【
図30】下から上へ、ガラス基板、FTO、TiO
2電子選択性層、光活性層、スピロ-OMeTADを示す素子の断面走査型電子顕微鏡写真である。光活性層は、(a)PbI
2及び(b)CH
3NH
3Iのプロパン-2-オル溶液中でPbI
2膜を浸漬コーティングした後のCH
3NH
3PbI
3である。
【
図31】(a)PbCl
2、(b)CH
3NH
3PbI
3-xCl
x、(c)PbI
2及び(d)CH
3NH
3PbI
3の薄膜のx線回折スペクトルの図である。浸漬コーティング後に、2つの前駆物質からの膜は、前駆物質格子に対応するピークの相対的強度減少及び(前駆物質XRDスペクトルのない)ペロブスカイト格子の相対的増加を示し、前駆物質膜のペロブスカイトへの優勢な変換を示す。
【
図32】活性層としてPbI
2を使用して作った素子(破線)及びプロパン-2-オル中のヨウ化メチルアンモニウムの溶液中での浸漬コーティングによって蒸着したPbI
2をCH
3NH
3PbI
3へと変換させた素子(実線)の電流密度-電圧特性を示す図である。PbI
2に関する性能パラメータは、J
sc=1.6mA/cm
2、PCE=0.80%、V
oc=0.97V、FF=0.57である。CH
3NH
3PbI
3に関する性能パラメータは、J
sc=5.3mA/cm
2、PCE=2.4%、V
oc=0.82V、FF=0.61である。
【
図33】活性層としてPbCl
2を使用して作った素子(破線)及び蒸着したPbCl
2をプロパン-2-オル中のヨウ化メチルアンモニウムの溶液中での浸漬コーティングによってCH
3NH
3PbI
3-xCl
xへと変換させた素子(実線)の電流密度-電圧特性を示す図である。PbCl
2に関する性能パラメータは、J
sc=0.081mA/cm
2、PCE=0.006%、V
oc=0.29V、FF=0.27である。CH
3NH
3PbI
3-xCl
xに関する性能パラメータは、J
sc=19.0mA/cm
2、PCE=7.0%、V
oc=0.80V、FF=0.49である。
【
図34】p型又はn型消光材の存在下での、混合型ハロゲン化物有機鉛三ハロゲン化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbI
3-xCl
x及び三ヨウ化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbI
3についてのフォトルミネッセンス測定値及び拡散モデルへのフィッティングを示す図である。時間分解PL測定値は、絶縁性PMMAでコートした膜のデータへの伸長型指数関数フィッティング(黒四角)及び本文中で記述する拡散モデルを使用して消光試料へのフィッティングとともに、電子(PCBM;三角形)又は正孔(スピロ-OMeTAD;丸)消光材層を有する混合型ハロゲン化物ペロブスカイトのピーク放出波長で取った。30nJ/cm
2のフルエンスを有する507nmでのパルス型(0.3から10MHz)励起ソースをガラス基板側に衝突させた。
図34中の挿入図:より長い時間スケールにおける、初期強度の1/eに達するまでにかかる時間として示したライフタイムτ
eを有する(PMMAコーティングを有する)2つのペロブスカイトのPL減衰の比較。
【
図35】p型又はn型消光材の存在下での、有機鉛三ヨウ化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbIについてのフォトルミネッセンス測定値及び拡散モデルへのフィッティングを示す図である。時間分解PL測定値は、絶縁性PMMAでコーティングした膜のデータへの伸長型指数関数フィッティング(黒四角)及び本文中で記述する拡散モデルを使用して消光試料へのフィッティングとともに、電子(PCBM;三角形)又は正孔(スピロ-OMeTAD;丸)消光材層を有する混合型ハロゲン化物ペロブスカイトのピーク放出波長で取った。30nJ/cm
2のフルエンスを有する507nmでのパルス型(0.3から10MHz)励起ソースをガラス基板側に衝突させた。
【
図36】スピロ-OMeTADの上部正孔消光層を有する270nm厚の混合型ハロゲン化物吸収材層の断面SEM像である。
【
図37】PMMAでコーティングした、混合型ハロゲン化物有機鉛三ハロゲン化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbI
3-xCl
x(黒四角)及び有機鉛三ヨウ化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbI
3(灰色四角)についてのフォトルミネッセンス減衰を示す図であり、初期強度の1/eに達するまでにかかる時間として示したライフタイムτ
eを有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、光活性領域を含む光電子素子を提供する。光活性領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、n型領域とp型領域との間に配置された、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層とを含む。
【0021】
「光活性領域」という用語は、本明細書において使用するように、(i)光を吸収し、その後自由電荷キャリアを生成することができる、又は(ii)後に再結合し光を放出することができる、電子及び正孔の両方の電荷を受容する光電子素子内の領域を呼ぶ。
【0022】
「半導体」という用語は、本明細書において使用するように、導体の電気伝導度と誘電体の電気伝導度との間の、大きさで中間の電気伝導度を有する材料を呼ぶ。半導体を、n型半導体、p型半導体、又は真性半導体とすることができる。
【0023】
本明細書において使用するように、「n型領域」という用語は、1つ又は複数の電子輸送(すなわち、n型)材料の領域を呼ぶ。同様に、「n型層」という用語は、電子輸送(すなわち、n型)材料の層を呼ぶ。電子輸送(すなわち、n型)材料は、単一の電子輸送化合物若しくは単体材料、又は2つ以上の電子輸送化合物若しくは単体材料の混合物であってもよい。電子輸送化合物又は単体材料を、1つ又は複数のドーパント元素でドープしなくてもドープしてもよい。
【0024】
本明細書において使用するように、「p型領域」という用語は、1つ又は複数の正孔輸送(すなわち、p型)材料の領域を呼ぶ。同様に、「p型層」という用語は、正孔輸送(すなわち、p型)材料の層を呼ぶ。正孔輸送(すなわち、p型)材料は、単一の正孔輸送化合物若しくは単体材料、又は2つ以上の正孔輸送化合物若しくは単体材料の混合物であってもよい。正孔輸送化合物又は単体材料を、1つ又は複数のドーパント元素でドープしなくてもドープしてもよい。
【0025】
「ペロブスカイト」という用語は、本明細書において使用するように、CaTiO3の三次元結晶構造に関係する三次元結晶構造を有する材料又は材料の層を含む材料を呼び、ここでは、層は、CaTiO3の構造に関係する構造を有する。CaTiO3の構造を、化学式ABX3によって表すことが可能であり、ここでは、A及びBは異なるサイズのカチオンであり、Xはアニオンである。ユニット・セル内では、Aカチオンは、(0,0,0)のところにあり、Bカチオンは(1/2,1/2,1/2)のところにあり、そしてXアニオンは、(1/2,1/2,0)のところにある。Aカチオンは、通常Bカチオンよりも大きい。A、B及びXが変わると、違ったイオン・サイズが、CaTiO3によって取られる構造から離れてより低い対称性の変形した構造へとペロブスカイト材料の構造を変形させ得ることを、当業者なら認識するであろう。材料がCaTiO3の構造に関係する構造を有する層を含む場合には、対称性が、やはり低くなるであろう。ペロブスカイト材料の層を含む材料は、よく知られている。例えば、K2NiF4型構造を取る材料の構造は、ペロブスカイト材料の層を含む。ペロブスカイト材料を、化学式[A][B][X]3によって表すことが可能であることを、当業者なら認識するであろう。ここでは、[A]は少なくとも1つのカチオンであり、[B]は少なくとも1つのカチオンであり、そして[X]は少なくとも1つのアニオンである。ペロブスカイトが1つよりも多くのAカチオンを含むときには、異なるAカチオンを、規則的な方式で又は不規則な方式でAサイト全体にわたって分散させることができる。ペロブスカイトが1つよりも多くのBカチオンを含むときには、異なるBカチオンを、規則的な方式で又は不規則な方式でBサイト全体にわたって分散させることができる。ペロブスカイトが1つよりも多くのXアニオンを含むときには、異なるXアニオンを、規則的な方式で又は不規則な方式でXサイト全体にわたって分散させることができる。1つよりも多くのAカチオン、1つよりも多くのBカチオン又は1つよりも多くのXカチオンを含むペロブスカイトの対称性は、CaTiO3の対称性よりも低くなるであろう。
【0026】
前の段落で述べたように、「ペロブスカイト」という用語は、本明細書において使用するように、(a)CaTiO3の結晶構造に関係する三次元結晶構造を有する材料、又は(b)材料の層を含む材料を呼び、ここでは、層はCaTiO3の構造に関係する構造を有する。両方のペロブスカイトのこれらのカテゴリを本発明に従った素子において使用することができるが、第1のカテゴリのペロブスカイト、(a)、すなわち、三次元(3D:three-dimensional)結晶構造を有するペロブスカイトを使用することが、ある状況では好ましい。このようなペロブスカイトは、典型的には、層間に何らかの分離なしにペロブスカイトのユニット・セルの3Dネットワークを含む。第2のカテゴリのペロブスカイト、(b)、は、他方で、二次元(2D:two-dimensional)層状構造を有するペロブスカイトを含む。2D層状構造を有するペロブスカイトは、(挟まれた)分子によって分離されるペロブスカイトのユニット・セルの層を含むことができ、このような2D層状ペロブスカイトの実例は、[2-(1-シクロヘキセニル)エチルアンモニウム]2PbBr4である。2D層状ペロブスカイトは、高い励起結合エネルギーを有する傾向があり、これは、光励起下では、自由電荷キャリアよりはむしろ、結合した電子-正孔対(エキシトン)の生成に好都合である。結合した電子-正孔対が転換し(イオン化し)そして自由電荷を生成させることが可能なp型又はn型コンタクトに到達するためには、結合した電子-正孔対が十分に移動可能でないことがある。その結果、自由電荷を生成させるために、エキシトン結合エネルギーに打ち勝たなければならず、これは、電荷生成プロセスに対するエネルギー・コストを表し、光起電力セルにおいて低い電圧及び低い効率という結果をもたらす。対照的に、3D結晶構造を有するペロブスカイトは、(熱エネルギー程度の)はるかに低いエキシトン結合エネルギーを有する傾向があり、これゆえ、光励起に直ぐに続いて自由キャリアを生成することが可能である。従って、本発明の素子及びプロセスにおいて利用するペロブスカイト半導体は、好ましくは第1のカテゴリのペロブスカイト、(a)すなわち、三次元結晶構造を有するペロブスカイトである。これは、光電子素子が光起電力素子であるときには特に好ましい。
【0027】
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層内に、本発明において利用するペロブスカイト半導体は、典型的には、(i)光を吸収し、これによって自由電荷キャリアを生成すること、並びに/又は(ii)後に再結合し光を放出する電荷、電子及び正孔の両方、を受容することによって光を放出することができるペロブスカイト半導体である。このように、利用するペロブスカイトは、典型的には、光吸収及び/又は発光ペロブスカイトである。
【0028】
当業者なら認識するように、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層内に、本発明において利用するペロブスカイト半導体を、光ドープしたときにn型の電子輸送半導体として働くペロブスカイトとすることができる。或いは、光ドープしたときにp型の正孔輸送半導体として働くペロブスカイトとすることができる。このように、ペロブスカイトは、n型であってもp型であってもよく、又は真性半導体であってもよい。好ましい実施例では、利用するペロブスカイトは、光ドープしたときにn型の電子輸送半導体として働くペロブスカイトである。
【0029】
典型的には、本発明において使用するペロブスカイト半導体は、光増感材料、すなわち、発光及び電荷(電子又は正孔)輸送の両方を実行することができる材料である。
【0030】
本明細書において使用するように、「多孔質(porous)」という用語は、気孔(pores)が内部に配列した材料を呼ぶ。従って、例えば、多孔質スカフォールド材料中では、気孔は、スカフォールド材料がないスカフォールド内部の体積である。個々の気孔は、同じサイズであっても異なるサイズであってもよい。気孔のサイズを、「気孔サイズ」と規定する。気孔の限界サイズは、多孔質固体が関係する大部分の現象に関して、さらに正確さがない場合には、気孔の幅(すなわち、スリット形状の気孔の幅、円柱状又は球状気孔の直径、等)と呼ぶ気孔の最小寸法のサイズである。円柱状気孔とスリット形状の気孔とを比較するときに尺度の変化の誤解を避けるために、「気孔幅」として(円柱状気孔の半径よりはむしろ)円柱状気孔の直径を使用すべきである(J. Rouquerol et al., "Recommendations for the Characterization of Porous Solids", Pure & Appl. Chem., Vol. 66, No. 8, pp. 1739-1758, 1994)。下記の区別及び定義が、前のIUPAC文書に採用された(K. S. W. Sing, et al., Pure and Appl. Chem., vol. 57, n04, pp. 603-919, 1985;及びIUPAC "Manual on Catalyst Characterization", J. Haber, Pure and Appl. Chem., vol. 63, pp. 1227-1246, 1991):
-ミクロポア(Micropores)は、2nm未満の幅(すなわち、気孔サイズ)を有する。
-メソポア(Mesopores)は、2nmから50nmまでの幅(すなわち、気孔サイズ)を有する。
-マクロポア(Macropores)は、50nmよりも大きい幅(すなわち、気孔サイズ)を有する。
【0031】
材料中の気孔は、「閉鎖」気孔並びに開口気孔を含むことができる。閉鎖気孔は、つながっていない空洞である材料中の気孔、すなわち、材料内部で孤立し且ついずれの別の気孔ともつながっていない気孔であり、これゆえ、材料が曝される流体(例えば、溶液などの液体)によりアクセスすることが不可能な気孔である。一方で「開口気孔」は、このような流体によりアクセス可能であるはずである。開口気孔率及び閉鎖気孔率の概念は、J. Rouquerol et al., "Recommendations for the Characterization of Porous Solids", Pure & Appl. Chem., Vol. 66, No. 8, pp. 1739-1758, 1994に詳細に論じられている。
【0032】
開口気孔率は、これゆえ、中に流体の流れが実効的に生じ得る多孔質材料の全体積の小部分を呼ぶ。これは、これゆえ、閉鎖気孔を除外する。「開口気孔率」という用語は、「つながった気孔率」及び「実効気孔率」という用語と互換的であり、本分野では、一般に単純に「気孔率」と短縮される。(本発明の光電子素子において、「開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層」で存在するペロブスカイト半導体を、これゆえ、「多孔質ペロブスカイト」であると呼ぶことができない。
【0033】
「開口気孔率のない」という用語は、本明細書において使用するように、これゆえ、実効的な気孔率のない状態の材料を呼ぶ。
【0034】
本発明の光電子素子は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含む。この層、及びその中のペロブスカイト半導体は、開口気孔率がない。これゆえ、層中のペロブスカイト半導体は、n型領域内のn型材料、又はn型材料のいずれによっても浸透されない、同様にp型領域内のp型材料、又はp型材料のいずれによっても浸透されない。むしろ、その層中のペロブスカイト半導体は、典型的には、n型領域若しくはp型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する、又はいくつかのケースでは、n型領域及びp型領域の両方とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。
【0035】
また、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層が、スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層上に配置される「キャッピング層」であるときには、キャッピング層及びキャッピング層内のペロブスカイト半導体は開口気孔率がないという理由で、キャッピング層は、いずれのスカフォールド材料によっても浸透されない。第1の層中のペロブスカイトは、一方で(これは、一般的にキャッピング層中のペロブスカイト化合物と同じペロブスカイト化合物である)、典型的には、スカフォールド材料の気孔内に配され、これゆえ、スカフォールド材料によって「浸透された」と言われることがある。
【0036】
本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、非多孔質である。「非多孔質」という用語は、本明細書において使用するように、何も気孔率のない、すなわち、開口気孔率がなく且つ閉鎖気孔率もやはりない材料を呼ぶ。
【0037】
一般に、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、本質的にペロブスカイト半導体から構成される。ペロブスカイトは、結晶性化合物である。このように、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、典型的には、本質的にペロブスカイトの微結晶で構成される。いくつかの実施例では、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、ペロブスカイト半導体から構成される。このように、典型的には、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、ペロブスカイトの微結晶で構成される。
【0038】
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、一般に、n型領域又はp型領域のうちの少なくとも一方と接触する。
【0039】
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、典型的には、n型領域又はp型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。n型領域又はp型領域のいずれかを、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の上に配置することができるが、上に述べたように、ペロブスカイト半導体の層は開口気孔率がないので、n型材料又はp型材料は、バルク・ヘテロ接合を形成するようにペロブスカイト半導体に浸透せず、むしろ通常は、ペロブスカイト半導体とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。典型的には、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、n型領域とプレーナ・ヘテロ接合(planar heterojunction)を形成する。
【0040】
いくつかの実施例では、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、n型領域及びp型領域の両方と接触する。このような実施例では、n型領域又はp型領域から開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を分離する(スカフォールド(scaffold)材料及びペロブスカイト半導体を含む「第1の層」などの)別の層がないであろう。上に述べたように、ペロブスカイト半導体の層は開口気孔率がないので、このような実施例では、n型領域材料又はp型領域材料のどちらも、バルク・ヘテロ接合を形成するようにペロブスカイト半導体に浸透せず、むしろ通常は、ペロブスカイト半導体とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。このように、気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、層の両側のn型領域及びp型領域の両方とプレーナ・ヘテロ接合を形成することができる。従って、本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、ペロブスカイト半導体の層は、n型領域と第1のプレーナ・ヘテロ接合を、p型領域と第2のプレーナ・ヘテロ接合を形成する。
【0041】
本発明の光電子素子は、典型的には薄膜素子である。
【0042】
通常、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の厚さは、10nmから100μmまでである。より典型的には、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の厚さは、10nmから10μmまでである。好ましくは、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層の厚さは、50nmから1000nmまで、例えば、100nmから700nmまでである。ペロブスカイト半導体の層の厚さは、多くの場合に100nmよりも大きい。厚さを、例えば、100nmから100μmまで、又は例えば、100nmから700nmまでとすることができる。
【0043】
高効率光起電力素子を提供するために、吸収材/光活性領域の吸収を、理想的には最適な大きさの電流を生成するように最大にすべきである。その結果、太陽電池において吸収材としてペロブスカイトを使用すると、可視スペクトル全体にわたって太陽光の大部分を吸収するために、ペロブスカイト層の厚さを、理想的には、300から600nmまでの程度にすべきである。特に、太陽電池では、100nm未満の厚さを有する光起電力素子では光活性層の使用が素子の性能に対して支障となることがあるので、ペロブスカイト層を、一般的に吸収深さよりも厚くすべきである(これは、所与の波長の入射光の90%を吸収するために必要な膜の厚さとして規定され、これは、かなりの光吸収が可視スペクトル(400から800nm)の全体にわたって必要である場合には、関心のあるペロブスカイト材料に対して典型的には100nmよりも大きい)。
【0044】
対照的に、エレクトロルミネッセント(発光)素子は、光を吸収する必要はなく、これゆえ、吸収深さによって制約されない。その上、実際面では、エレクトロルミネッセント素子のp型コンタクト及びn型コンタクトは、典型的には、一旦、電子又は正孔が素子の一方の側に注入されると、光活性層の厚さとは無関係に、他方から流れ出さないように選択される(すなわち、コンタクトを、1つのキャリアだけを注入する又は集めるように選択する)。本質的に、電荷キャリアは、光活性領域から外へ移動することをブロックされ、これによって、再結合しフォトンを発生するために利用できるであろう、そしてこれゆえ、極めて薄い光活性領域を活用できる。
【0045】
典型的には、これゆえ、光電子素子が光起電力素子であるときには、ペロブスカイト半導体の層の厚さは、100nmよりも大きい。光起電力素子内のペロブスカイト半導体の層の厚さを、例えば、100nmから100μmまで、又は例えば、100nmから700nmまでとすることができる。光起電力素子内のペロブスカイト半導体の層の厚さを、例えば、200nmから100μmまで、又は例えば、200nmから700nmまでとすることができる。
【0046】
本明細書において使用するように、「厚さ」という用語は、光電子素子の構成要素の平均厚さを呼ぶ。
【0047】
発明者は、光活性ペロブスカイト層の成長の種付けをするために、薄いスカフォールドを使用することができ、光活性ペロブスカイト層では、光活性(例えば、光吸収)の大部分がスカフォールドの上方に形成するキャッピング層内で起きることを示した。このキャッピング層は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の上記の層であり、これらの実施例では、「第1の層」は、そのキャッピング層をn型領域又はp型領域のいずれかから分離する。
【0048】
従って、いくつかの実施例では、素子の前記光活性領域は:
前記n型領域と、
前記p型領域と、n型領域とp型領域との間に配置された、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、このキャッピング層が開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層である、キャッピング層と
を含む。
【0049】
キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、第1の層中のペロブスカイト半導体と接触する。
【0050】
第1の層中のペロブスカイト及びキャッピング層中のペロブスカイトを、同じステップで、典型的には、同じ溶液堆積ステップ又は気相堆積ステップによって一緒にしばしば堆積するので、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、通常、第1の層中のペロブスカイト半導体と同じペロブスカイト化合物から作られる。
【0051】
スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体の両方を含む第1の層とは違って、キャッピング層は、スカフォールド材料を含まない。上に説明したように、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であるキャッピング(capping)層を、典型的には、ペロブスカイト半導体の微結晶で本質的に構成する、又はペロブスカイト半導体の微結晶で構成する。キャッピング層を、通常、これゆえ、本質的にペロブスカイト半導体から構成する。いくつかの実施例では、キャッピング層を、ペロブスカイト半導体から構成する。
【0052】
第1の層は、前記スカフォールド材料及びスカフォールド材料の表面上に配置された前記ペロブスカイト半導体を含む。「スカフォールド材料」という用語は、本明細書において使用するように、その機能がもう1つの材料に対する物理的支持体として働くことを含む材料を呼ぶ。本ケースでは、スカフォールド材料は、第1の層中に存在するペロブスカイト半導体に対する支持体として働く。ペロブスカイト半導体を、スカフォールド材料の表面に配置する、又は表面上で支持する。スカフォールド材料は、通常多孔質であり、典型的には開口気孔構造を有することを意味する。従って、スカフォールド材料の「表面」は、ここでは典型的に、スカフォールド材料内の気孔の表面を呼ぶ。このように、第1の層中のペロブスカイト半導体を、典型的には、スカフォールド材料内の気孔の表面上に堆積する。
【0053】
いくつかの実施例では、スカフォールド材料は、多孔質であり、第1の層中のペロブスカイト半導体を、スカフォールド材料の気孔内に堆積する。前記スカフォールド材料の実効気孔率は、通常少なくとも50%である。例えば、実効気孔率を約70%とすることができる。一実施例では、実効気孔率は、少なくとも60%、例えば、少なくとも70%である。
【0054】
スカフォールド材料は、通常、メソポーラス(mesoporous)である。「メソポーラス」という用語は、本明細書において使用するように、材料内部の気孔の平均気孔サイズが、2nmから50nmまでであることを意味する。個々の気孔は、異なるサイズであってもよく、任意の形状であってもよい。
【0055】
或いは、スカフォールド材料は、マクロポーラスであってもよい。「マクロポーラス」という用語は、本明細書において使用するように、材料内部の気孔の平均気孔サイズが、2nmよりも大きいことを意味する。いくつかの実施例では、スカフォールド材料内の気孔サイズは、マクロポーラスであるときには、2nmよりも大きく、1μm以下、又は例えば、2nmよりも大きく、500nm以下、より好ましくは、2nmよりも大きく、200nm以下である。
【0056】
スカフォールド材料を、電荷輸送スカフォールド材料(例えば、チタニア(titania)などの電子輸送材料、若しくは代わりに正孔輸送材料)、又はアルミナなどの誘電性材料とすることができる。「誘電性材料」という用語は、本明細書において使用するように、電気的絶縁体又は電流の非常に悪い導体である材料を呼ぶ。誘電体という用語は、これゆえ、チタニアなどの半導電性材料を除外する。誘電体という用語は、本明細書において使用するように、典型的には、4.0eV以上のバンド・ギャップを有する材料を呼ぶ。(チタニアのバンド・ギャップは、約3.2eVである。)当業者なら、過度の実験を必要としないよく知られた手順を使用することにより、半導体のバンド・ギャップを容易に測定することができる。例えば、半導体から光起電力ダイオード又は太陽電池を作ること、及び光発電作用スペクトルを決定することによって、半導体のバンド・ギャップを推定することが可能である。光電流がダイオードにより発生し始める単色フォトン・エネルギーを、半導体のバンド・ギャップとして取ることが可能であり、このような方法は、Barkhouse et al., Prog. Photovolt: Res. Appl. 2012; 20:6-11によって使用された。半導体のバンド・ギャップに対する本明細書における言及は、この方法によって測定したようなバンド・ギャップ、すなわち、半導体から作られた光起電力ダイオード又は太陽電池の光発電作用スペクトルを記録すること、及び有意な光電流が発生し始める単色フォトン・エネルギーを観測することによって決定されるようなバンド・ギャップを意味する。
【0057】
通常、第1の層中のペロブスカイト半導体(この層は、スカフォールド材料をやはり含む)は、p型領域及びn型領域のうちの一方と接触し、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、p型領域及びn型領域のうちの他方と接触する。典型的には、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、それが接触している領域と、すなわち、p型領域又はn型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。
【0058】
好ましい一実施例では、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、p型領域と接触し、第1の層中のペロブスカイト半導体は、n型領域と接触する。通常、この実施例では、スカフォールド材料は、電子輸送スカフォールド材料又は誘電性スカフォールド材料のいずれかである。典型的には、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、p型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。
【0059】
別の一実施例では、どんな方法でも、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、n型領域と接触し、第1の層中のペロブスカイト半導体は、p型領域と接触する。典型的には、この実施例では、スカフォールド材料は、正孔輸送スカフォールド材料又は誘電性スカフォールド材料である。典型的には、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、n型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する。
【0060】
キャッピング層の厚さは、通常、第1の層の厚さよりも厚い。光活性(例えば、光吸収)の大部分は、これゆえ、通常キャッピング層内で起きる。
【0061】
キャッピング層の厚さは、典型的には、10nmから100μmまでである。より典型的には、キャッピング層の厚さは、10nmから10μmまでである。好ましくは、キャッピング層の厚さは、50nmから1000nmまで、又は例えば、100nmから700nmまでである。
【0062】
キャッピング層の厚さは、例えば、100nmから100μmまで、又は例えば、100nmから700nmまでであってもよい。少なくとも100nmの厚さを有するキャッピング層が通常好まれる。
【0063】
第1の層の厚さは、一方で、多くの場合に、5nmから1000nmまでである。より典型的には、第1の層の厚さは、5nmから500nmまで、又は例えば、30nmから200nmまでである。
【0064】
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層中の、及び存在するときには、前記第1の層中の、本発明において利用するペロブスカイト半導体は、典型的には、(i)光を吸収すること、これによって自由電荷キャリアを生成すること、及び/又は(ii)後に再結合し光を放出する電子及び正孔の両方の電荷を受容することによって、光を放出することができるものである。
【0065】
このように、利用するペロブスカイトは、典型的には、光吸収及び/又は光放出ペロブスカイトである。
【0066】
通常、ペロブスカイトは、光吸収材料である。典型的には、300nmから2000nmまでの波長を有する光を吸収することができるペロブスカイト(すなわち、この範囲内のどこかになる波長を有する光を吸収することができるペロブスカイト)を利用する。より典型的には、利用するペロブスカイトは、300から1200nmまでの範囲内の波長を有する光を吸収することができる、又は例えば、300から1000nmまでの波長を有する光を吸収することができるものである。より典型的には、利用するペロブスカイトは、300から800nmまでの範囲内のどこかの波長を有する光を吸収することができるものである。
【0067】
本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト半導体は、好ましくは、入射光によって電子の励起を可能にするために十分に狭いバンド・ギャップを有する。特に、光電子素子が光起電力素子であるときには、3.0eV以下のバンド・ギャップが特に好まれ、その理由は、このようなバンド・ギャップが、光起電力素子の全体にわたって電子を励起するために太陽光にとって十分に低いためである。いくつかの酸化物ペロブスカイト及び2D層状ペロブスカイトを含むある種のペロブスカイトは、3.0eVよりも広いバンド・ギャップを有し、これゆえ、光起電力素子における使用のためには3.0eV以下のバンド・ギャップを有するペロブスカイトよりも好まれない。このようなペロブスカイトは、CaTiO3、SrTiO3及びCaSrTiO3:Pr3+を含み、これらはそれぞれ、3.7eV、3.5eV及び3.5eV前後のバンド・ギャップを有する。
【0068】
従って、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト半導体は、典型的には、3.0eV以下のバンド・ギャップを有する。いくつかの実施例では、ペロブスカイトのバンド・ギャップは、2.8eV以下、例えば、2.5eV以下である。バンド・ギャップは、例えば、2.3eV以下、又は例えば2.0eV以下であってもよい。
【0069】
通常、バンド・ギャップは、少なくとも0.5eVである。このように、ペロブスカイトのバンド・ギャップは、0.5eVから2.8eVまでであってもよい。いくつかの実施例では、バンド・ギャップは、0.5eVから2.5eVまで、又は例えば、0.5eVから2.3eVまでである。ペロブスカイトのバンド・ギャップは、例えば、0.5eVから2.0eVまでであってもよい。別の実施例では、ペロブスカイトのバンド・ギャップは、1.0eVから3.0eVまで、又は例えば、1.0eVから2.8eVまでであってもよい。いくつかの実施例では、ペロブスカイトのバンド・ギャップは、1.0eVから2.5eVまで、又は例えば、1.0eVから2.3eVまでである。ペロブスカイト半導体のバンド・ギャップは、例えば、1.0eVから2.0eVまでであってもよい。
【0070】
ペロブスカイトのバンド・ギャップは、より典型的には、1.2eVから1.8eVまでである。有機金属ハロゲン化物ペロブスカイト半導体のバンド・ギャップは、例えば典型的には、この範囲内であり、例えば、約1.5eV又は約1.6eVであってもよい。このように、一実施例では、ペロブスカイトのバンド・ギャップは、1.3eVから1.7eVまでである。
【0071】
本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト半導体は、典型的には、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される少なくとも1つのアニオンを含む。
【0072】
「ハロゲン化物」という用語は、7族元素の、すなわち、ハロゲンのアニオンを指す。典型的には、ハロゲン化物は、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオン、ヨウ化物アニオン又はアスタタイドアニオンを指す。「カルコゲナイドアニオン(chalcogenide anion)」という用語は、本明細書において使用するように、6族元素の、すなわちカルコゲンのアニオンを指す。典型的には、カルコゲナイドは、酸化物アニオン、硫化物アニオン、セレン化物アニオン、又はテルル化物アニオンを指す。
【0073】
本発明の光電子素子では、ペロブスカイトは、多くの場合に、第1のカチオン、第2のカチオン、及び前記少なくとも1つのアニオンを含む。
【0074】
当業者なら認識するように、ペロブスカイトは、より多くのカチオン又はより多くのアニオンを含むことができる。例えば、ペロブスカイトは、2つ、3つ若しくは4つの異なる第1のカチオン;2つ、3つ、若しくは4つの異なる第2のカチオン;又は2つ、3つ若しくは4つの異なるアニオンを含むことができる。
【0075】
典型的には、本発明の光電子素子では、ペロブスカイト中の第2のカチオンは、金属カチオンである。金属を、スズ、鉛、及び銅から選択することができ、好ましくはスズ及び鉛から選択する。
【0076】
より典型的には、第2のカチオンは、2価の金属カチオンである。例えば、第2のカチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Sn2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。第2のカチオンを、Sn2+、Pb2+及びCu2+から選択することができる。通常、第2のカチオンを、Sn2+及びPb2+から選択する。
【0077】
本発明の光電子素子では、ペロブスカイト中の第1のカチオンは、通常有機カチオンである。
【0078】
「有機カチオン」という用語は、炭素を含むカチオンを呼ぶ。カチオンは、より多くの元素を含むことができ、例えば、カチオンは、水素、窒素又は酸素を含むことができる。
【0079】
通常、本発明の光電子素子では、有機カチオンは、化学式(R1R2R3R4N)+を有し、ここでは、
R1は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル(alkyl)、又は非置換型若しくは置換型アリール(aryl)であり、
R2は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R3は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、そして
R4は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである。
【0080】
或いは、有機カチオンは、化学式(R5NH3)+を有することができ、ここでは、R5は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルである。例えば、R5を、メチル又はエチルとすることができる。典型的には、R5はメチルである。
【0081】
いくつかの実施例では、有機カチオンは、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+を有し、ここでは、R5は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R6は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R7は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;そしてR8は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである。
【0082】
典型的には、カチオン(R5R6N=CH-NR7R8)+中のR5は、水素、メチル又はエチルであり、R6は、水素、メチル又はエチルであり、R7は、水素、メチル又はエチルであり、そしてR8は、水素、メチル又はエチルである。例えば、R5を、水素、又はメチルとすることができ、R6を、水素、又はメチルとすることができ、R7を、水素、又はメチルとすることができ、そしてR8を、水素、又はメチルとすることができる。
【0083】
有機カチオンは、例えば、化学式(H2N=CH-NH2)+を有することができる。
【0084】
本明細書において使用するように、アルキル基を、置換型又は非置換型、直鎖又は分枝鎖飽和ラジカルとすることができ、多くの場合には置換型又は非置換型直鎖飽和ラジカル、より多くの場合には非置換型直鎖飽和ラジカルである。C1~C20アルキル基は、非置換型又は置換型、直鎖型又は分枝鎖飽和炭化水素ラジカルである。典型的には、アルキル基は、C1~C10アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル若しくはデシル、又はC1~C6アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル若しくはヘキシル、又はC1~C4アルキル、例えば、メチル、エチル、i-プロピル、n-プロピル、t-ブチル、s-ブチル若しくはn-ブチルである。
【0085】
アルキル基が置換型であるときには、典型的には、置換型又は非置換型C1~C20アルキル、(本明細書において規定したような)置換型又は非置換型アリール、シアノ、アミノ、C1~C10アルキルアミノ、ジ(C1~C10)アルキルアミノ、アリルアミノ、ジアリルアミノ、アリルアルキルアミノ、アミド、アシルアミド、ヒドロキシ、オキソ、ハロ、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1~C20アルコキシ、アリーロキシ、ハロアルキル、スルホン酸、スルフヒドリル(すなわち、チオール、-SH)、C1~C10アルキルチオール、アリルチオール、スルフォニル、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸、及びホスホン酸エステルから選択される1つ又は複数の置換基を含有する。置換型アルキル基の実例は、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルコキシアルキル、及びアルカリール基を含む。アルカリールという用語は、本明細書において使用するように、少なくとも1つの水素原子がアリール基で置き換えられているC1~C20アルキル基に属する。このような基の実例は、ベンジル(フェニルメチル、PhCH2-)、ベンズヒドリル(Ph2CH-)、トリチル(トリフェニルメチル、Ph3C-)、フェネチル(フェニルエチル、Ph-CH2CH2-)、スチリル(Ph-CH=CH-)、シンナミル(Ph-CH=CH-CH2-)を含むが、これらに限定されない。
【0086】
典型的には、置換型アルキル基は、1つ、2つ又は3つの置換基、例えば、1つ又は2つを保有する。
【0087】
アリール基は、置換型又は非置換型、典型的には、環状部分に6個から14個までの炭素原子、好ましくは6個から10個までの炭素原子を含有する単環式又は二環式の芳香族基である。実例は、フェニル、ナフチル、インデニル及びインダニル基を含む。アリール基は、非置換型又は置換型である。上に規定したようなアリール基が置換型であるときには、典型的には、(アラルキル基を形成するために)非置換型であるC1~C6アルキル、非置換型であるアリール、シアノ、アミノ、C1~C10アルキルアミノ、ジ(C1~C10)アルキルアミノ、アリルアミノ、ジアリルアミノ、アリルアルキルアミノ、アミド、アシルアミド、ヒドロキシ、ハロ、カルボキシ、エステル、アシル、アシルオキシ、C1~C20アルコキシ、アリーロキシ、ハロアルキル、スルフヒドリル(すなわち、チオール、-SH)、C1~C10アルキルチオール、アリルチオール、スルホン酸、リン酸、リン酸エステル、ホスホン酸及びホスホン酸エステル、並びにスルフォニルから選択される1つ又は複数の置換基を含有する。典型的には、アリール基は、0個、1個、2個又は3個の置換基を保有する。置換型アリール基を、1つのC1~C6アルキレン基で、又は化学式-X-(C1~C6)アルキレン、又は-X-(C1~C6)アルキレン-X-で表される二座基で2つの位置を置換することができ、ここでは、Xは、O、S及びNRから選択され、Rは、H、アリール、又はC1~C6アルキルである。このように、置換型アリール基を、シクロアルキル基で又はヘテロシクリル基で融合させたアリール基とすることができる。アリール基の環原子は、(ヘテロアリール基におけるような)1つ又は複数の異種原子を含むことができる。このようなアリール基(ヘテロアリール基)は、1つ又は複数の異種原子を含む環状部分内に典型的には6個から10個までの原子を含有する置換型又は非置換型の単環式又は二環式ヘテロ芳香族基である。これは、一般に、O、S、N、P、Se及びSiから選択される少なくとも1つの異種原子を含有する5員環又は6員環である。これは、例えば、1個、2個又は3個の異種原子を含有することができる。ヘテロアリール基の実例は、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、フラニル、チエニル、ピラゾリジニル、ピロリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾニル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、キノリル、及びイソキノリルを含む。ヘテロアリール基を、例えば、アリールに関して上に明記したような、非置換型又は置換型とすることができる。典型的には、0個、1個、2個又は3個の置換基を保有する。
【0088】
主に、本発明の光電子素子では、有機カチオン中のR1は、水素、メチル又はエチルであり、R2は、水素、メチル又はエチルであり、R3は、水素、メチル又はエチルであり、そしてR4は、水素、メチル又はエチルである。例えば、R1を水素又はメチルとすることができ、R2を水素又はメチルとすることができ、R3を水素又はメチルとすることができ、そしてR4を水素又はメチルとすることができる。
【0089】
或いは、有機カチオンは、化学式(R5NH3)+を有することができ、ここでは、R5は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルである。例えば、R5を、メチル又はエチルとすることができる。典型的には、R5はメチルである。
【0090】
一実施例では、ペロブスカイトは、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される2つ以上の異なるアニオンを含む混合型アニオンペロブスカイトである。通常、前記2つ以上の異なるアニオンは、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。
【0091】
このように、利用するペロブスカイトを、第1のカチオン、第2のカチオン、並びにハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される2つ以上の異なるアニオンを含む混合型アニオンペロブスカイトとすることができる。例えば、混合型アニオンペロブスカイトは、2つの異なるアニオンを含むことができ、例えば、アニオンを、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオン、2つの異なるハロゲン化物アニオン、又は2つの異なるカルコゲナイドアニオンとすることができる。第1のカチオン及び第2のカチオンを、本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。このように、第1のカチオンを、本明細書においてさらに規定するようにしてもよい有機カチオンとすることができる。例えば、上に規定したような、化学式(R1R2R3R4N)+又は化学式(R5NH3)+のカチオンとすることができる。或いは、有機カチオンを、上に規定したような化学式[R5R6N=CH-NR7R8]+のカチオンとすることができる。第2のカチオンを、2価の金属カチオンとすることができる。例えば、第2のカチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、第2のカチオンを、Sn2+及びPb2+から選択する。
【0092】
本発明の光電子素子では、ペロブスカイトは、通常、混合型ハロゲン化物ペロブスカイトであり、ここでは、前記2つ以上の異なるアニオンは、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。典型的には、これらは、2つ又は3つのハロゲン化物アニオン、より典型的には、2つの異なるハロゲン化物アニオンである。通常、ハロゲン化物アニオンを、フッ化物、塩化物、臭化物及びヨウ化物、例えば、塩化物、臭化物及びヨウ化物から選択する。
【0093】
多くの場合に、本発明の光電子素子では、ペロブスカイトは、化学式(I):
[A][B][X]3 (I)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
[A]は少なくとも1つの有機カチオンであり、
[B]は少なくとも1つの金属カチオンであり、そして
[X]は前記少なくとも1つのアニオンである。
【0094】
化学式(I)のペロブスカイトは、1つ、2つ、3つ又は4つの異なる金属カチオン、典型的には、1つ又は2つの異なる金属カチオンを含むことができる。また、化学式(I)のペロブスカイトは、例えば、1つ、2つ、3つ又は4つの異なる有機カチオン、典型的には、1つ又は2つの異なる有機カチオンを含むことができる。同様に、化学式(I)のペロブスカイトは、1つ、2つ、3つ又は4つの異なるアニオン、典型的には、2つ又は3つの異なるアニオンを含むことができる。
【0095】
化学式(I)のペロブスカイト化合物中の有機カチオン及び金属カチオンを、本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。このように、有機カチオンを、上に規定したような、化学式(R1R2R3R4N)+のカチオン及び化学式(R5NH3)+のカチオンから選択することができる。金属カチオンを、2価の金属カチオンから選択することができる。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、金属カチオンは、Sn2+又はPb2+である。
【0096】
有機カチオンを、例えば、上に規定したような、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+のカチオン、及び化学式(H2N=CH-NH2)+のカチオンから選択することができる。金属カチオンを、2価の金属カチオンから選択することができる。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、金属カチオンは、Sn2+又はPb2+である。
【0097】
典型的には、化学式(I)中の[X]は、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される2つ以上の異なるアニオンである。より典型的には、[X]は、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。
【0098】
一実施例では、ペロブスカイトは、化学式(IA):
AB[X]3 (IA)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
Aは有機カチオンであり、
Bは金属カチオンであり、そして
[X]は2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。
【0099】
典型的には、化学式(IA)中の[X]は、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される2つ以上の異なるアニオンである。通常、[X]は、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。好ましくは、[X]は、2つ又は3つの異なるハロゲン化物アニオンである。より好ましくは、[X]は、2つの異なるハロゲン化物アニオンである。別の一実施例では、[X]は、3つの異なるハロゲン化物アニオンである。
【0100】
化学式(IA)のペロブスカイト化合物中の有機カチオン及び金属カチオンを、本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。このように、有機カチオンを、上に規定したような、化学式(R1R2R3R4N)+のカチオン及び化学式(R5NH3)+のカチオンから選択することができる。金属カチオンを、2価の金属カチオンとすることができる。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、金属カチオンは、Sn2+又はPb2+である。
【0101】
有機カチオンを、例えば、上に規定したような、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+のカチオン、及び化学式(H2N=CH-NH2)+のカチオンから選択することができる。金属カチオンを、2価の金属カチオンとすることができる。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、金属カチオンは、Sn2+又はPb2+である。
【0102】
典型的には、本発明の光電子素子では、ペロブスカイトは、化学式(II):
ABX3-yX’y (II)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
Aは有機カチオンであり、
Bは金属カチオンであり、
Xは第1のハロゲン化物アニオンであり、
X’は第1のハロゲン化物アニオンとは異なる第2のハロゲン化物アニオンであり、そして
yは0.05から2.95までである。
【0103】
通常、yは、0.5から2.5まで、例えば、0.75から2.25までである。典型的には、yは、1から2までである。
【0104】
再び、化学式(II)では、有機カチオン及び金属カチオンを、本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。このように、有機カチオンを、上に規定したような、化学式(R1R2R3R4N)+のカチオン、又はより典型的には、化学式(R5NH3)+のカチオンとすることができる。金属カチオンを、2価の金属カチオンとすることができる。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、金属カチオンは、Sn2+又はPb2+である。
【0105】
いくつかの実施例では、ペロブスカイトは、化学式(IIa):
ABX3zX’3(1-z) (IIa)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
Aは、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+の有機カチオンであり、ここでは、R5は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R6は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R7は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;そしてR8は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
Bは金属カチオンであり、
Xは第1のハロゲン化物アニオンであり、
X’は第1のハロゲン化物アニオンとは異なる第2のハロゲン化物アニオンであり、そして
zは0よりも大きく1未満である。
通常、zは0.05から0.95までである。
【0106】
通常、zは0.1から0.9までである。zを、例えば、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8又は0.9とすることができ、zは、これらの値のいずれか1つからこれらの値のいずれか他のものまでの範囲(例えば、0.2から0.7まで、又は0.1から0.8まで)であってもよい。
【0107】
B、X及びX’を、本明細書において前に規定したようにすることができる。有機カチオンを、例えば、(R5R6N=CH-NR7R8)+とすることができ、ここでは、R5、R6、R7及びR8は、水素及び非置換型又は置換型C1~C6アルキルから独立に選択される。例えば、有機カチオンを、(H2N=CH-NH2)+とすることができる。
【0108】
多くの場合に、本発明の光電子素子では、ペロブスカイトは、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbF3、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrCl2、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnIBr2、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnClBr2、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択されるペロブスカイト化合物である。
【0109】
例えば、本発明の光電子素子では、ペロブスカイトを、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrCl2、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnIBr2、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnClBr2、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択することができる。
【0110】
典型的には、ペロブスカイトを、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択する。
【0111】
より典型的には、ペロブスカイトを、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnF2I及びCH3NH3SnF2Clから選択する。
【0112】
通常、ペロブスカイトを、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3SnF2Br及びCH3NH3SnF2Iから選択する。
【0113】
多くの場合に、利用するペロブスカイトは、CH3NH3PbCl2Iである。
【0114】
いくつかの実施例では、ペロブスカイトを、化学式(H2N=CH-NH2)PbI3zBr3(1-z)のペロブスカイトとすることができ、ここでは、zは0よりも大きく1未満である。zを本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。
【0115】
本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト半導体は、前記混合型アニオンペロブスカイト及び単一アニオンペロブスカイトを、例えば、混ぜて含むことができ、ここでは、前記単一アニオンペロブスカイトは、第1のカチオン、第2のカチオン並びにハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択されるアニオンを含み、ここでは、第1のカチオン及び第2のカチオンは、前記混合型アニオンペロブスカイト用に本明細書において規定したようである。例えば、光電子素子は、CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbI3;CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbBr3;CH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbI3;又はCH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbBr3を含むことができる。
【0116】
光電子素子は、化学式(H2N=CH-NH2)PbI3zBr3(1-z)のペロブスカイトを含むことができ、ここでは、zは、本明細書において規定したようであり、(H2N=CH-NH2)PbI3又は(H2N=CH-NH2)PbBr3などの単一アニオンペロブスカイトである。
【0117】
或いは、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト半導体は、1つよりも多くのペロブスカイトを含むことができ、ここでは、各ペロブスカイトは、混合型アニオンペロブスカイトであり、ここでは、前記混合型アニオンペロブスカイトは、本明細書において規定したようである。例えば、光電子素子は、2つ又は3つの前記ペロブスカイトを含むことができる。本発明の光電子素子は、例えば、2つのペロブスカイトを含むことができ、ここでは、両方のペロブスカイトは、混合型アニオンペロブスカイトである。例えば、光電子素子は、CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbIBr2;CH3NH3PbICl2及びCH3NH3PbBrI2;CH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbIBr2;又はCH3NH3PbBrCl2及びCH3NH3PbIBr2を含むことができる。
【0118】
光電子素子は、2つの異なるペロブスカイトを含むことができ、ここでは、各ペロブスカイトは、化学式(H2N=CH-NH2)PbI3zBr3(1-z)のペロブスカイトであり、ここでは、zは本明細書において規定したようである。
【0119】
本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、[B]がPb2+である単一金属カチオンであるときには、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンのうちの1つは、ヨウ化物又はフッ化物であり、そして[B]がSn2+である単一金属カチオンであるときには、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンのうちの1つは、フッ化物である。通常、本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンのうちの1つは、ヨウ化物又はフッ化物である。典型的には、本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンのうちの1つは、ヨウ化物であり、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンのうちのもう1つは、フッ化物又は塩化物である。多くの場合に、本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、前記2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンのうちの1つは、フッ化物である。典型的には、本発明の光電子素子のいくつかの実施例では、(a)前記2つ以上の異なるアニオンのうちの1つは、フッ化物であり、前記2つ以上の異なるアニオンのうちのもう1つは、塩化物、臭化物若しくはヨウ化物である、又は(b)前記2つ以上の異なるアニオンのうちの1つは、ヨウ化物であり、前記2つ以上の異なるアニオンのうちのもう1つは、フッ化物若しくは塩化物であることのいずれかである。典型的には、[X]は、2つの異なるハロゲン化物アニオンX及びX’である。多くの場合に、本発明の光電子素子では、前記2価の金属カチオンは、Sn2+である。或いは、本発明の光電子素子では、前記2価の金属カチオンを、Pb2+とすることができる。
【0120】
本発明の光電子素子内のn型領域は、1つ又は複数のn型層を含む。多くの場合に、n型領域は、n型層、すなわち、単一のn型層である。別の実施例では、どんな方法でも、n型領域は、n型層及びn型エキシトン・ブロッキング層を含むことができる。n型エキシトン・ブロッキング層が利用されるケースでは、n型エキシトン・ブロッキング層は、通常、n型層とペロブスカイト半導体を含む層との間に配置される。
【0121】
エキシトン・ブロッキング層は、ペロブスカイトよりも広いバンド・ギャップの材料であるが、ペロブスカイトの伝導帯又は価電子帯とよく一致する伝導帯又は価電子帯のいずれかを有する。エキシトン・ブロッキング層の伝導帯(又は最も低い占有されていない分子軌道エネルギー・レベル)が、ペロブスカイトの伝導帯と密接に位置が合う場合には、電子は、ペロブスカイトからエキシトン・ブロッキング層中へと進み、エキシトン・ブロッキング層を通過する、又はエキシトン・ブロッキング層を通過しペロブスカイトへと進み、我々は、これをn型エキシトン・ブロッキング層と名付ける。このようなものの実例は、{P. Peumans, A. Yakimov, and S. R. Forrest, "Small molecular weight organic thin-film photodetectors and solar cells" J. Appl. Phys. 93, 3693 (2001)}及び{Masaya Hirade, and Chihaya Adachi, "Small molecular organic photovoltaic cells with exciton blocking layer at anode interface for improved device performance" Appl. Phys. Lett. 99, 153302 (2011)}に記載されたようなバトクプロイン(bathocuproine)である。
【0122】
n型層は、電子輸送(すなわち、n型)材料の層である。n型材料を、単一のn型化合物材料若しくは元素材料、又は2つ以上のn型化合物材料若しくは元素材料の混合物とすることができ、これらは、1つ又は複数のドーパント元素でドープされなくてもドープされてもよい。
【0123】
本発明の光電子素子において利用するn型層は、無機又は有機n型材料を含むことができる。
【0124】
適切な無機n型材料を、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、ペロブスカイト、非晶質Si、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体、及びn型II-V族半導体から選択することができ、これらのうちのいずれかを、ドープしてもドープしなくてもよい。
【0125】
n型材料を、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、金属テルル化物、非晶質Si、n型IV族半導体、n型III-V族半導体、n型II-VI族半導体、n型I-VII族半導体、n型IV-VI族半導体、n型V-VI族半導体、及びn型II-V族半導体から選択することができ、これらのうちのいずれかを、ドープしてもドープしなくてもよい。
【0126】
より典型的には、n型材料を、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、及び金属テルル化物から選択する。
【0127】
このように、n型層は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジウム、パラジウム、若しくはカドミウムの酸化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物の酸化物から選択される無機材料を含むことができる。例えば、n型層は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO、又はCdOを含むことができる。
【0128】
利用することができる他の適切なn型材料は、カドミウム、スズ、銅、又は亜鉛の硫化物を含み、前記金属のうちの2つ以上の混合物の硫化物を含む。例えば、硫化物を、FeS2、CdS、ZnS又はCu2ZnSnS4とすることができる。
【0129】
n型層は、例えば、カドミウム、亜鉛、インジウム、若しくはガリウムのセレン化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物のセレン化物;或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物のテルル化物を含む。例えば、セレン化物を、Cu(In,Ga)Se2とすることができる。典型的には、テルル化物は、カドミウム、亜鉛、カドミウム又はスズのテルル化物である。例えば、テルル化物を、CdTeとすることができる。
【0130】
n型層は、例えば、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジウム、パラジウム、カドミウムの酸化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物の酸化物;カドミウム、スズ、銅、亜鉛の硫化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物の硫化物;カドミウム、亜鉛、インジウム、ガリウムのセレン化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物のセレン化物;或いはカドミウム、亜鉛、カドミウム若しくはスズのテルル化物、又は前記金属のうちの2つ以上の混合物のテルル化物から選択される無機材料を含むことができる。
【0131】
適切なn型材料であり得る他の半導体の実例は、例えば、これらがnドープされる場合には、IV族化合物半導体、非晶質Si、III-V族半導体(例えば、ガリウムヒ素)、II-VI族半導体(例えば、セレン化カドミウム)、I-VII族半導体(例えば、塩化第一銅)、IV-VI族半導体(例えば、セレン化鉛)、V-VI族半導体(例えば、テルル化ビスマス)、及びII-V族半導体(例えば、カドミウムヒ素)を含む。
【0132】
典型的には、n型層は、TiO2を含む。
【0133】
n型層が、無機材料、例えば、TiO2又は上に列挙した他の材料のうちのいずれかであるときには、n型層を、前記無機材料の緻密な層とすることができる。好ましくは、n型層は、TiO2の緻密な層である。
【0134】
有機及び高分子電子輸送材料、並びに電解質を含む他のn型材料を、やはり利用することができる。適切な実例は、フラーレン若しくはフラーレン誘導体、ペリレン若しくはその誘導体を含む有機電子輸送材料、又はポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-アルト-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))を含むが、これらに限定されない。
【0135】
本発明の光電子素子内のp型領域は、1つ又は複数のp型層を含む。多くの場合に、p型領域は、p型層、すなわち、単一のp型層である。別の実施例では、どんな方法でも、p型領域は、p型層及びp型エキシトン・ブロッキング層を含むことができる。p型エキシトン・ブロッキング層を利用するケースでは、p型エキシトン・ブロッキング層を、通常、p型層とペロブスカイト半導体を含む層との間に配置する。エキシトン・ブロッキング層の価電子帯(又は最も高い占有された分子軌道レベル)がペロブスカイトの価電子帯と密接に位置が合う場合には、正孔は、ペロブスカイトからエキシトン・ブロッキング層中へと進み、エキシトン・ブロッキング層を通過する、又はエキシトン・ブロッキング層を通過しペロブスカイトへと進むことが可能であり、我々は、これをp型エキシトン・ブロッキング層と名付ける。このようなものの実例は、{Masaya Hirade, and Chihaya Adachi, "Small molecular organic photovoltaic cells with exciton blocking layer at anode interface for improved device performance" Appl. Phys. Lett. 99, 153302 (2011)}に記載されたような、トリス[4-(5-フェニルチオフェン-2-イル)フェニル]アミンである。
【0136】
p型層は、正孔輸送(すなわち、p型)材料の層である。p型材料を、単一のp型化合物若しくは元素材料、又は2つ以上のp型化合物若しくは元素材料の混合物とすることができ、これらは、1つ又は複数のドーパント元素でドープされなくてもドープされてもよい。
【0137】
本発明の光電子素子において利用するp型層は、無機又は有機p型材料を含むことができる。
【0138】
適切なp型材料を、高分子又は分子正孔トランスポータから選択することができる。本発明の光電子素子において利用するp型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトオキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、HTM-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド)、Li-TFSI(リチウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)、又はtBP(三級ブチルピリジン)を含むことができる。通常、p型材料を、スピロ-OMeTAD、P3HT、PCPDTBT及びPVKから選択する。好ましくは、本発明の光電子素子において利用するp型層は、スピロ-OMeTADを含む。
【0139】
p型層は、例えば、スピロ-OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトオキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル]])、又はPVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))を含むことができる。
【0140】
適切なp型材料は、分子正孔トランスポータ、高分子正孔トランスポータ、及び共重合体正孔トランスポータをやはり含む。p型材料を、例えば、分子正孔輸送材料、下記の成分:チオフェニル、フェネレニル、ジチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ジケトピロロピロリル、エトオキシジチオフェニル、アミノ、トリフェニルアミノ、カルボゾリル、エチレンジオキシフェニル、ジオキシチオフェニル、又はフルオレニルのうちの1つ又は複数を含む高分子又は共重合体とすることができる。このように、本発明の光電子素子において利用するp型層は、例えば、上述の分子正孔輸送材料、高分子又は共重合体のうちのいずれかを含むことができる。
【0141】
適切なp型材料は、m-MTDATA(4,4’,4’’-トリス(メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、MeOTPD(N,N,N’,N’-テトラキス(4-メトオキシフェニル)-ベンジジン)、BP2T(5,5'-ジ(ビフェニル-4-イル)-2,2’-ビチオフェン)、ジ-NPB(N,N’-ジ-[(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル]-1,1’-ビフェニル)-4,4’-ジアミン)、α-NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TNATA(4,4’,4’’-トリス-(N-(ナフチレン-2-イル)-N-フェニルアミン)トリフェニルアミン)、BPAPF(9,9-ビス[4-(N,N-ビス-ビフェニル-4-イル-アミノ)フェニル]-9H-フルオレン)、スピロ-NPB(N2,N7-ジ-1-ナフタレニル-N2,N7-ジフェニル-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジアミン)、4P-TPD(4,4’-ビス-(N,N-ジフェニルアミノ)-テトラフェニル)、PEDOT:PSS及びスピロ-OMeTADをやはり含む。
【0142】
p型層を、イオン性塩又は塩基でドープすることができる。p型層を、例えば、HMI-TFSI(1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド)及びLi-TFSI(リチウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド)から選択されるイオン性塩で、又はtBP(三級ブチルピリジン)である塩基でドープすることができる。
【0143】
加えて又は代替で、正孔濃度を増加させるために、p型層をドープすることができる。正孔濃度を増加させために、p型層を、例えば、NOBF4(ニトロソニウム テトラフルオロボレイト)でドープすることができる。
【0144】
別の実施例では、p型層は、無機正孔トランスポータを含むことができる。例えば、p型層は、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;ペロブスカイト;非晶質Si;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含む無機正孔トランスポータを含むことができ、これらの無機材料をドープしてもドープしなくてもよい。p型層を、前記無機正孔トランスポータの緻密な層とすることができる。
【0145】
p型層は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;非晶質Si;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含む無機正孔トランスポータを含むことができ、これらの無機材料をドープしてもドープしなくてもよい。p型層は、例えば、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCISから選択した無機正孔トランスポータを含むことができる。p型層を、前記無機正孔トランスポータの緻密な層とすることができる。
【0146】
典型的には、p型層は、高分子又は分子正孔トランスポータを含み、n型層は、無機n型材料を含む。p型高分子又は分子正孔トランスポータを、任意の適切な高分子又は分子正孔トランスポータ、例えば、上に列挙したもののうちのいずれかとすることができる。同様に、無機n型材料を、任意の適切なn型無機物、例えば、上に列挙したもののうちのいずれかとすることができる。一実施例では、例えば、p型層は、スピロ-OMeTADを含み、n型層は、TiO2を含む。典型的には、その実施例では、TiO2を含むn型層は、TiO2の緻密な層である。
【0147】
別の実施例では、n型層及びp型層の両者は、無機材料を含む。このように、n型層は、無機n型材料を含むことができ、p型層は、無機p型材料を含むことができる。無機p型材料を、任意の適切なp型無機物、例えば、上に列挙したもののいずれかとすることができる。同様に、無機n型材料を、任意の適切なn型無機物、例えば、上に列挙したもののいずれかとすることができる。
【0148】
さらに別の実施例では、p型層は、無機p型材料(すなわち、無機正孔トランスポータ)を含み、n型層は、高分子又は分子正孔トランスポータを含む。無機p型材料を、任意の適切なp型無機物、例えば、上に列挙したもののいずれかとすることができる。同様に、n型高分子又は分子正孔トランスポータを、任意の適切なn型高分子又は分子正孔トランスポータ、例えば、上に列挙したもののいずれかとすることができる。
【0149】
例えば、p型層は、無機正孔トランスポータを含むことができ、n型層は、電子輸送材料を含むことができ、ここでは、電子輸送材料は、フラーレン若しくはフラーレン誘導体、電解質、又は有機電子輸送材料を含み、好ましくは、有機電子輸送材料は、ペリレン若しくはその誘導体、又はポリ{[N,N0-ビス(2-オクチルドデシル)-ナフタレン-1,4,5,8-ビス(ジカルボキシイミド)-2,6-ジイル]-アルト-5,50-(2,20-ビチオフェン)}(P(NDI2OD-T2))を含む。無機正孔トランスポータは、例えば、ニッケル、バナジウム、銅、又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;ペロブスカイト;非晶質Si;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含むことができ、これらの無機材料をドープしてもドープしなくてもよい。より典型的には、無機正孔トランスポータは、ニッケル、バナジウム、銅、又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCIS;p型IV族半導体、p型III-V族半導体、p型II-VI族半導体、p型I-VII族半導体、p型IV-VI族半導体、p型V-VI族半導体、及びp型II-V族半導体を含み、これらの無機材料をドープしてもドープしなくてもよい。このように、無機正孔トランスポータは、ニッケル、バナジウム、銅、又はモリブデンの酸化物;CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCISを含むことができる。
【0150】
続く段落は、p型層中の第2の、p型ペロブスカイト、又はn型層中の第2の、n型ペロブスカイトの使用に関係する。(好ましい実施例では、とはいえ、p型層及びn型層のいずれもペロブスカイトを含まない。このように、好ましくは、p型領域及びn型領域のいずれもペロブスカイトを含まない。)
【0151】
p型層がペロブスカイトである無機正孔トランスポータを含むときには、ペロブスカイトは、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層内で、及び存在するときには、スカフォールド材料をやはり含む前記「第1の層」内で使用するペロブスカイトとは異なる。このように、p型層がペロブスカイトである無機正孔トランスポータを含むときには、p型層のペロブスカイトを、本明細書においては「第2のペロブスカイト」と名付ける(そして、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層中の、及び存在するときには、前記第1の層中のペロブスカイトを、本明細書において「第1のペロブスカイト」と呼ぶ)。
【0152】
同様に、n型層がペロブスカイトである無機電子トランスポータを含むときには、ペロブスカイトは、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層内で、及び存在するときには、スカフォールド材料をやはり含む前記「第1の層」内で使用するペロブスカイトとは異なるであろう。このように、n型層がペロブスカイトである無機電子トランスポータを含むときには、ペロブスカイトを、本明細書においては「第2のペロブスカイト」と名付ける(そして、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層中の、及び存在するときには、前記第1の層中のペロブスカイトを、本明細書において「第1のペロブスカイト」と呼ぶ)。
【0153】
そのペロブスカイトの電荷輸送特性を制御するために、ペロブスカイトへのドーピング剤の添加を使用することができることを当業者なら認識するであろう。このように、例えば、n型材料又はp型材料を形成するために、真性材料であるペロブスカイトにドープすることができる。従って、第1のペロブスカイト及び/又は第2のペロブスカイトは、1つ又は複数のドーピング剤を含むことができる。典型的には、ドーピング剤は、ドーパント元素である。
【0154】
同じ材料の異なる試料への異なるドーピング剤の添加は、異なる電荷輸送特性を有する異なる試料をもたらすことがある。例えば、ペロブスカイト材料の第1の試料への1つのドーピング剤の添加は、第1の試料がn型材料になるという結果をもたらすことがあり、一方で、同じペロブスカイト材料の第2の試料への異なるドーピング剤の添加は、第2の試料がp型材料になるという結果をもたらすことがある。
【0155】
このように、第1のペロブスカイト及び第2のペロブスカイトのうちの少なくとも一方は、ドーピング剤を含むことができる。第1のペロブスカイトは、例えば、第2のペロブスカイト中に又は各第2のペロブスカイト中に存在しないドーピング剤を含むことができる。加えて又は代替で、第2のペロブスカイト又は第2のペロブスカイトのうちの1つは、第1のペロブスカイト中に存在しないドーピング剤を含むことができる。このように、第1のペロブスカイトと第2のペロブスカイトとの間の違いを、ドーピング剤の存在若しくは欠如とすることができる、又は各ペロブスカイトにおける異なるドーピング剤の使用とすることができる。或いは、第1のペロブスカイトと第2のペロブスカイトとの間の違いは、ドーピング剤にあるのではなく、代わりに、違いは、第1のペロブスカイト及び第2のペロブスカイトの全体の構造にあることがある。
【0156】
存在するときには、第2のペロブスカイトを、第1のカチオン、第2のカチオン、及び少なくとも1つのアニオンを含むペロブスカイトとすることができる。
【0157】
いくつかの実施例では、p型層又はn型層において利用され、第1のペロブスカイトとは異なる第2のペロブスカイトは、化学式(IB):
[A][B][X]3 (IB)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
[A]は、少なくとも1つの有機カチオン又は少なくとも1つのI族金属カチオンであり、
[B]は、少なくとも1つの金属カチオンであり、そして
[X]は、少なくとも1つのアニオンである。
【0158】
当業者なら認識するように、[A]は、Cs+を含むことができる。
【0159】
通常、[B]は、Pb2+又はSn2+を含む。より典型的には、[B]は、Pb2+を含む。
【0160】
典型的には、[X]は、ハロゲン化物アニオン又は複数の異なるハロゲン化物アニオンを含む。
【0161】
通常、[X]は、I-を含む。
【0162】
いくつかの実施例では、[X]は、2つ以上の異なるアニオン、例えば、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。例えば、[X]は、I-及びF-、I-及びBr-、又はI-及びCl-を含むことができる。
【0163】
通常、化学式IBのペロブスカイト化合物は、CsPbI3又はCsSnI3である。例えば、化学式(IB)のペロブスカイト化合物を、CsPbI3とすることができる。
【0164】
或いは、化学式(IB)のペロブスカイト化合物を、CsPbI2Cl、CsPbICl2、CsPbI2F、CsPbIF2、CsPbI2Br、CsPbIBr2、CsSnI2Cl、CsSnICl2、CsSnI2F、CsSnIF2、CsSnI2Br又はCsSnIBr2とすることができる。例えば、化学式(IB)のペロブスカイト化合物を、CsPbI2Cl又はCsPbICl2とすることができる。典型的には、化学式(IB)のペロブスカイト化合物は、CsPbICl2である。
【0165】
化学式(IB)のペロブスカイト化合物では:[X]を、本明細書において規定したように1つ又は2つ以上の異なるアニオン、例えば、第1のペロブスカイトに関して本明細書において規定したように2つ以上の異なるアニオンとすることができ;[A]は、通常、第1のペロブスカイトに関して上のように本明細書において規定したような有機カチオンを含み;そして[B]は、典型的には、本明細書において規定したような金属カチオンを含む。金属カチオンを、第1のペロブスカイトに関して本明細書の前のように規定することができる。
【0166】
いくつかの実施例では、第2のペロブスカイトは、本明細書において上に第1のペロブスカイトに関して規定したようなペロブスカイトであり、第2のペロブスカイトが第1のペロブスカイトとは異なることを可能にする。
【0167】
前記第1の層を含む本発明の光電子素子の実施例において利用されるスカフォールド材料を、誘電性スカフォールド材料とすることができる。通常、誘電性スカフォールド材料は、4.0eV以上のバンド・ギャップを有する。
【0168】
通常、本発明の光電子素子では、誘電性スカフォールド材料は、アルミニウム、ジルコン、シリコン、イットリウム又はイッテルビウムの酸化物を含む。例えば、誘電性スカフォールド材料は、酸化ジルコン、シリカ、アルミナ、酸化イッテルビウム若しくは酸化イットリウム、又はアルミナシリケートを含むことができる。多くの場合に、誘電性スカフォールド材料は、シリカ又はアルミナを含む。より典型的には、誘電性スカフォールド材料は、多孔質アルミナを含む。
【0169】
典型的に、本発明の光電子素子では、誘電性スカフォールド材料は、メソポーラスである。このように、典型的に、本発明の光電子素子では、誘電性スカフォールド材料は、メソポーラス・アルミナを含む。
【0170】
或いは、スカフォールド材料を、例えば、チタニアなどの無機電子輸送材料とすることができる。このように、例えば、スカフォールド材料は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジウム、パラジウム又はカドミウムの酸化物を含むことができる。例えば、スカフォールド材料は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO、又はCdOを含むことができる。多くの場合に、スカフォールド材料は、チタン、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、タングステン、インジウム、ガリウム、ネオジウム、パラジウム若しくはカドミウム、又はこれらの混合物のメソポーラス酸化物を含むことができる。チタニア、多孔質チタニア、及びメソポーラス・チタニアが好ましい。典型的には、このような実施例では、スカフォールド材料は、多孔質チタニア、好ましくは、メソポーラス・チタニアを含む。
【0171】
スカフォールド材料は、例えば、無機正孔輸送材料を含むことができる。
【0172】
スカフォールド材料を、その一方で、無機正孔輸送材料とすることができる。このように、スカフォールド材料は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物、CuI、CuBr、CuSCN、Cu2O、CuO又はCISを含むことができる。
【0173】
前記第1の層を含む本発明の光電子素子の実施例において利用するスカフォールド材料の気孔率は、通常、50%以上である。例えば、気孔率を、約70%とすることができる。一実施例では、気孔率は、60%以上、例えば、70%以上である。
【0174】
典型的に、本発明の光電子素子では、光活性領域の厚さは、100nmから3000nmまで、例えば、200nmから1000nmまでである、又は例えば、厚さを、300nmから800nmまでとすることができる。多くの場合に、光活性層の厚さは、400nmから600nmまでである。通常、厚さは、約500nmである。
【0175】
本発明の光電子素子は、通常、第1の電極及び第2の電極を含む。このように、本発明の光電子素子は、典型的には、第1の電極、第2の電極、及び第1の電極と第2の電極との間に配置された、前記光活性領域を含む。
【0176】
第1の電極及び第2の電極は、アノード及びカソードであり、通常、アノード及びカソードのうちの一方又は両方は、光の侵入を可能にするために透明である。電極のうちの少なくとも一方は、通常、太陽スペクトルの可視領域から近赤外領域にわたって半透明である。半透明は、典型的に80%の透明度を有することであり、40%から90%までの範囲である。本発明の光電子素子の第1の電極及び第2の電極の選択は、構造のタイプに依存することがある。典型的には、素子の第1の層を、酸化スズを含む第1の電極上へと、より典型的には、通常透明材料又は半透明材料であるフッ素ドープした酸化スズ(FTO:fluorine-doped tin oxide)アノード上へと堆積する。このように、第1の電極は、通常透明であり、典型的には酸化スズ、より典型的にはフッ素ドープした酸化スズ(FTO)を含む。通常、第1の電極の厚さは、200nmから600nmまで、より典型的には300nmから500nmまでである。例えば、厚さを400nmとすることができる。典型的には、FTOをガラス・シート上へとコートする。通常、第2の電極は、大きな仕事関数の金属、例えば、金、銀、ニッケル、パラジウム又は白金、典型的には銀を含む。通常、第2の電極の厚さは、50nmから250nmまで、より一般的には100nmから200nmまでである。例えば、第2の電極の厚さを150nmとすることができる。
【0177】
多くの場合に、第1の電極は、透明又は半透明な電気的導電性材料を含むであろう。例えば、第1の電極は、透明導電性酸化物を含むことができる。透明導電性酸化物は、酸化スズ、酸化亜鉛、ドープした酸化スズ及びドープした酸化亜鉛を含む。例えば、第1の電極は、ITO(indium tin oxide:酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープした酸化スズ)又はAZO(aluminum-doped tin oxide:アルミニウム・ドープした酸化スズ)、好ましくは、FTOを含むことができる。第1の電極は、90から100重量%のITO、FTO又はAZOを含むことができ、いくつかのケースでは、第1の電極を、本質的にITO、FTO又はAZOから構成することができる。通常、第1の電極の厚さは、200nmから600nmまで、より典型的には300nmから500nmまでである。例えば、厚さを400nmとすることができる。第1の電極を、多くの場合に、ガラス基板上に配置するであろう。例えば、第1の電極は、FTOを含むことができ、ガラス基板上に配置することができる。本発明の光電子素子では、第1の電極が多くの場合に透明又は半透明であるので、光の侵入及び/又は放出は、典型的には、第1の電極を通って生じる。特に金属電極が薄層を形成する場合には、光は(第2の電極が多くの場合にあり得るように)金属電極を通って素子に入ることが可能である。
【0178】
多くの場合に、第2の電極は金属を含む。通常、第2の電極は、大きな仕事関数の金属、例えば、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム又は白金を、典型的には銀又は金を含む。通常、第2の電極の厚さは、50nmから250nmまで、より一般的には100nmから200nmまでである。例えば、第2の電極の厚さを150nmとすることができる。
【0179】
本発明の一実施例では、本発明の光電子素子は、第1の電極、第2の電極、及び、第1の電極と第2の電極との間に配置された、前記光活性領域を含むことができ、ここでは、第1の電極は、前記光活性領域のn型領域と接触し、第2の電極は、前記光活性領域のp型領域と接触する。
【0180】
従って、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.第1の電極、
II.少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.第2の電極。
【0181】
「下記の領域を下記の順番で」という用語は、本明細書において使用するように、列挙した領域の各々が存在するであろうこと、及び示した層の各々の順序は、与えられた順番になるであろうことを意味する。例えば、上記のケース(I、II、III、IV、V)では、IIは、Iに続き、IIIの前にあり、II単独でIとIIIとの間であり(すなわち、IV及びVのいずれもIとIIIとの間になく、IIだけである)。これは、「下記の順番で」の通常の理解である。順番は、しかしながら、領域の集合の空間内の向きを規定しない:I、II、IIIは、III、II、Iと等価である(すなわち、「上」及び「下」又は「左」及び「右」を規定しない)。追加の層又は領域を、これらの領域の各々の間に示すことができる。例えば、I、II、IIIは、I、Ia、II、IIa、III及びI、Ia、Ib、II、IIIを含む。典型的には、どんな方法でも、各領域(例えば、IからV)は、先行する領域及び後続の領域の両方と接触する。
【0182】
追加の層又は領域が、これらの領域の各々の間に存在してもよい。典型的には、どんな方法でも、各領域IからVは、先行する領域及び後続の領域の両方と接触する。領域の各々(第1の電極、n型領域、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、p型領域及び第2の電極)を、本明細書中のどこかで規定したようにすることができる。例えば、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.透明導電性酸化物、好ましくは、FTOを含む第1の電極、
II.少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.金属、好ましくは銀又は金を含む第2の電極。
【0183】
いくつかの実施例では、第2の電極は、代わりに透明導電性酸化物を含むことができる。例えば、第1の電極及び第2の電極の両方を、ITO、FTO及びAZOから選択することができる。第2の電極が銀又は金などの金属を含む場合には、第2の電極の厚さを、時には1nmから10nmまでとすることができる。例えば、第1の電極は、FTO又はITOを含むことができ、第2の電極は、1nmから10nmまで、例えば、5nmから10nmまでの厚さを有する銀の層を含むことができる。銀の薄層は、半透明であり得る。
【0184】
本発明は、反転型ヘテロ接合薄膜ペロブスカイト素子をやはり提供する。これゆえ、一実施例では、本発明の光電子素子は、第1の電極、第2の電極、及び、第1の電極と第2の電極との間に配置された、前記光活性領域を含むことができ、ここでは、第2の電極が前記光活性領域のn型領域と接触し、第1の電極が前記光活性領域のp型領域と接触する。このようなアーキテクチャは、反転型素子として知られているものにつながる。これらの素子は、模式的に
図8に示した構成を有することができる。いくつかの状況では、正孔が素子の基板側を介して集められる反転型素子構造を有することが望ましい。特に反転型素子アーキテクチャは、タンデム用途のために必要とされることがある。タンデム用途は、CIGSなどの多数の無機光起電力低バンド・ギャップ・セルを用いた使用を含む。発明者は、半導電性ペロブスカイト吸収材に基づく低温、雰囲気空気、溶液処理可能な光起電力セルを開発した。多くの場合に、選択性p型コンタクト及びn型コンタクトを、それぞれPEDOT:PSS及びPC
60BMの形態にすることができる。注目すべきことに、バルク・ヘテロ接合が固体ペロブスカイト膜で置き換えられた交換した光活性層を有しながらも、最終電極構成は、「バルク・ヘテロ接合」高分子太陽電池において利用した電極構成と非常に似ており、さらに改善するためのかなりの余地を残して、非常に満足な7.5%全太陽電力変換効率を達成する。
【0185】
溶液処理可能な技術に基づく薄膜光電池は、世界の増加し続けるエネルギー需要を満足させるために必要な、低コストで容易に製造可能な素子の明るい見込みを提供する。適した候補は、有機系光電池、無機及びハイブリッド構造である。有機系光電池は、低コストで容易に処理可能な技術を実現する一方で、効率的な電荷分離を実現するために、ドナーとアクセプタとの間のむしろ大きなオフセットが必要である電荷生成における根本的な損失のために、他の薄膜技術と比較して性能低下に悩まされ、最大の達成可能な電力変換効率を単一接合で11%足らずに制限している。無機系薄膜光電池は、非常に有毒な溶剤及び500℃を超える高い温度の使用を必要とし、大量生産にとって望ましくないものにしている。
【0186】
これらの理由のために、ペロブスカイト系ハイブリッド光電池は、150℃未満で処理可能であり、完全に固体素子であり且つ12%を超える高い電力変換効率を既に示しているので、魅力ある代替技術である。ペロブスカイト吸収材は、増感太陽電池において並びに薄膜アーキテクチャにおいて以前に使用されてきている。特に、後者の構成では、ペロブスカイトCH3NH3PbI3-xClxは、アルミナ・メソ構造のスカフォールド上で処理したときに複合型増感剤及び電子トランスポータとして働くことが可能であり、単純に、電子がペロブスカイトの伝導帯を介して導電性基板に直接遷移するという理由で、エネルギー損失を最小にする。このようにして、1.1Vを超える極めて高い開路電圧を実現することが可能である。
【0187】
多くの場合にペロブスカイト系光電池では、電子は、FTO基板から集められ、一方で正孔は、金属カソードのところで集められた。この構成は、正孔がTCO(透明導電性酸化物)界面のところで集められなければならない、いくつかのタンデム用途にとって望ましくない。ここで、新奇な反転型素子アーキテクチャを実際に説明する。多くの場合に、このアーキテクチャは、有機光電池、すなわち、[6,6]-フェニルC61酪酸メチルエステル(PC60BM)及びポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルフォン酸塩)(PEDOT:PSS)、並びにV2O5及びNiO内での電荷収集のために一般に使用されるn型材料及びp型材料に基づく。
【0188】
一実施例では、本発明の光電子素子は、第1の電極、第2の電極、及び、第1の電極と第2の電極との間に配置された、前記光活性領域を含み、ここでは、第2の電極は、前記光活性領域のn型領域と接触し、第1の電極は、前記光活性領域のp型領域と接触し、ここでは、第1の電極は、透明又は半透明な電気的導電性材料を含み、第2の電極は、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム又は白金を含む。
【0189】
従って、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.第2の電極、
II.少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.第1の電極。
【0190】
領域の各々(第2の電極、n型領域、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、p型領域及び第1の電極)を、本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。
【0191】
例えば、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.金属を含む第2の電極、
II.少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.透明導電性酸化物を含む第1の電極。
【0192】
例えば、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.金属、好ましくは銀又は金を含む第2の電極、
II.少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び
V.透明導電性酸化物、好ましくは、FTOを含む第1の電極。
【0193】
本発明による反転型素子内の構成要素のいずれかを、本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。例えば、ペロブスカイトを、上記の化学式I、Ia、II又はIIaのうちのいずれか1つによるペロブスカイトとすることができる。例えば、ペロブスカイトを、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbF3、CH3NH3PbBrI2、CH3NH3PbBrCl2、CH3NH3PbIBr2、CH3NH3PbICl2、CH3NH3PbClBr2、CH3NH3PbI2Cl、CH3NH3SnBrI2、CH3NH3SnBrCl2、CH3NH3SnF2Br、CH3NH3SnIBr2、CH3NH3SnICl2、CH3NH3SnF2I、CH3NH3SnClBr2、CH3NH3SnI2Cl及びCH3NH3SnF2Clから選択されるペロブスカイト化合物とすることができる。いくつかの実施例では、第2の電極は、代わりに透明導電性酸化物を含むことができる。例えば、第1の電極及び第2の電極の両方を、ITO、FTO及びAZOから選択することができる。第2の電極が、銀又は金などの金属を含む場合には、第2の電極の厚さを、時には1nmから10nmまでとすることができる。例えば、第1の電極は、FTO又はITOを含むことができ、第2の電極は、1nmから10nmまで、例えば、5nmから10nmまでの厚さを有する銀の層を含むことができる。銀の薄層は、半透明であり得る。
【0194】
反転型素子内のn型領域は、標準、非反転型素子に関して本明細書においてどこかで規定したような少なくとも1つのn型層を含むことができる。例えば、n型層は、TiO2、SnO2、ZnO、Nb2O5、Ta2O5、WO3、W2O5、In2O3、Ga2O3、Nd2O3、PbO、又はCdOを含むことができる。一実施例では、n型領域は、二酸化チタンの緻密な層を含むことができる。多くの場合に、n型領域は、二酸化チタンの緻密な層及び[60]PCBM([6,6]-フェニル-C61-酪酸メチルエステル)の層を含むことができる。n型領域が二酸化チタンの層及び[60]PCBMの層を含むときには、酸化チタンの緻密な層は、典型的には、第2の電極に隣接し、[60]PCBMの層は、典型的には、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層に隣接する。
【0195】
反転型素子内のp型領域は、標準、非反転型素子に関して本明細書においてどこかで規定したような少なくとも1つのp型層を含むことができる。例えば、p型層は、スピロ-OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトオキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン))、P3HT(ポリ(3-ヘキシルチオフェン))、PCPDTBT(ポリ[2,1,3-ベンゾチアジアゾール-4,7-ジイル[4,4-ビス(2-エチルヘキシル)-4H-シクロペンタ[2,1-b:3,4-b’]ジチオフェン-2,6-ジイル]])、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール))、PEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン))、又はPEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルフォン酸塩))を含むことができる。或いは、p型層は、例えば、ニッケル、バナジウム、銅又はモリブデンの酸化物を含む無機正孔トランスポータを含むことができる。特に、p型領域は、スピロ-OMeTADの層及び/又はPEDOT:PSSの層を含むことができる。一実施例では、p型領域は、PEDOT:PSSの層を含む。p型領域が(PEDOT、又はPEDOT:PSSなどの)p型高分子材料の層を含む場合には、p型層を架橋することができる。素子の製造中にペロブスカイト前駆物質の溶液中に層が溶解する程度を制限するために、層を架橋する、すなわち、高分子(例えば、PEDOT:PSS)を非溶解化するために、高分子を架橋する。例えば、p型領域は、高分子材料を含むp型層を含むことができ、ここでは、p型層を架橋する。時には、p型領域は、PEDOT:PSSの層を含むことができ、ここでは、層を架橋する。p型層を、ルイス酸、例えば、Fe3+を使用することによって架橋することができる。p型領域は、PEDOT:PSSの層を含むことができ、ここでは、FeCl3を使用して、層を架橋している。
【0196】
本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.金属を含む第2の電極、
II.二酸化チタンの緻密な層及び[60]PCBMの層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.PEDOT:PSSの層を含むp型領域、任意選択で、ここでは層を架橋する、及び
V.透明導電性酸化物を含む第1の電極。
【0197】
本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.金属、好ましくはアルミニウム、銀又は金を含む第2の電極、
II.二酸化チタンの緻密な層及び[60]PCBMの層を含むn型領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.PEDOT:PSSの層を含むp型領域、任意選択で、ここでは層を架橋する、及び
V.透明導電性酸化物、好ましくは、FTOを含む第1の電極。
【0198】
例えば、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.アルミニウムを含む第2の電極、
II.二酸化チタンの緻密な層、
III.[60]PCBMの層、
IV.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
V.架橋したPEDOT:PSSの層、及び
VI.FTOを含む第1の電極。
【0199】
前記光活性領域を、素子内の単に光活性領域とすることができ、本発明の光電子素子を、これゆえ、単一接合素子とすることができる。
【0200】
或いは、本発明の光電子素子を、タンデム接合光電子素子又は多接合光電子素子とすることができる。
【0201】
従って、光電子素子は、第1の電極、第2の電極、及び、第1の電極と第2の電極との間に配置された、
前記光活性領域、及び
少なくとも1つの別の光活性領域、
を含むことができる。
【0202】
1つ又は複数の別の光活性領域は、本明細書において前に規定した光活性領域と同じであっても異なってもよい。
【0203】
いくつかの実施例では、1つ又は複数の別の光活性領域は、本明細書において前に規定した光活性領域と同じである。
【0204】
このように、本発明の光電子素子は、第1の電極、第2の電極、及び、第1の電極と第2の電極との間に配置された、複数の前記光活性領域を含むことができる。
【0205】
本発明の光電子素子がタンデム接合素子又は多接合素子であるときには、当業者なら認識するように、光電子素子は、1つ又は複数のトンネル接合を含むことができる。各トンネル接合を、通常、2つの光活性領域の間に配置する。
【0206】
本発明によるタンデム接合光電子素子(又は多接合光電子素子)は、最適化した性能を実現するために、本明細書において開示したペロブスカイト薄膜技術を知られた技術と組み合わせることができる。
【0207】
「すべてのペロブスカイト」多接合セルは、非常に魅力的である、しかしながら、新しい吸収材を開発する必要がなくてさえも、タンデム接合における上部セルとして使用する場合には、CH
3NH
3PbI
3-xCl
xを利用する現在のシステムは、結晶シリコン及びCIS、CIGS及びCZTSSeなどの他の薄膜技術と整合するように既に非常にうまく設定されている。20%を超える効率を有する光電子素子を製造する可能性がある。この注目すべき態様は、現在示した技術における「量子飛躍」を必要とせず、単にほんのわずかな最適化及び実効的な統合である。既存の技術に「抱合せること」の多くの明確な利点がある;既存のPVのコストの継続的な低下が有利になり、すべて新しいペロブスカイト技術よりは「改良したシリコン技術」に適合することを、市場ははるかに喜ぶはずであり、そして最後に、より広いPV社会にとって鍵となる難題は、シリコン及び薄膜技術用のワイド・ギャップ上部セルを開発することである。
図16及び
図17では、c-Si上のペロブスカイト及び従来型の薄膜上のペロブスカイトに関する、可能なタンデム接合素子構成の模式図を与える。
【0208】
一実施例では、本発明は、第1の電極、第2の電極、及び、第1の電極と第2の電極との間に配置された、
本明細書において前に規定したような前記光活性領域、及び
少なくとも1つの別の光活性領域
を含み、
ここでは、少なくとも1つの別の光活性領域が、半導体材料の少なくとも1つの層を含む、光電子素子を提供する。
【0209】
少なくとも1つの別の光活性領域を、従来型の及び知られた光電子素子及び光起電力素子において使用する光活性領域とは別の少なくとも1つの光活性領域とすることができる。例えば、これは、結晶シリコン光起電力セルからの光活性領域又は従来型の薄膜ガリウムヒ素、CIGS、CIS又はCZTSSe光起電力素子からの光活性領域であってもよい。
【0210】
多くの場合に、タンデム光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含む:
I.第1の電極、
II.本明細書において前にどこかで規定したような第1の光活性領域、
III.半導体材料の層を含む第2の光活性領域、及び
IV.第2の電極。
【0211】
領域III内の半導体材料を、任意の半導体材料とすることができる。「半導体材料」という用語は、本明細書において使用するように、導体の導電率と絶縁体の導電率との間の大きさで中間の導電率を有する材料を呼ぶ。典型的には、半導体材料は、103から10-8Scm-1までの導電率を有する材料である。4探針導電率測定法などの標準技術を、導電率を測定するために使用することができる。半導体材料の実例は、金属又はメタロイド元素の酸化物又はカルコゲナイド;IV族化合物;III族元素及びV族元素を含む化合物;II族元素及びVI元素を含む化合物;I族元素及びVII族元素を含む化合物;IV族元素及びVI族元素を含む化合物;V族元素及びVI族元素を含む化合物;II族元素及びV族元素を含む化合物;三元系又は四元系化合物半導体;ペロブスカイト半導体又は有機半導体を含む。半導体材料の典型的な実例は、チタン、ニオブ、スズ、亜鉛、カドミウム、銅又は鉛の酸化物;アンチモン又はビスマスのカルコゲナイド;銅亜鉛スズ硫化物;銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物;銅インジウムガリウムセレン化物;及び銅インジウムガリウム二セレン化物を含む。さらなる実例は、IV族化合物半導体(例えば、炭化シリコン);III-V族半導体(例えば、ガリウムヒ素);II-VI族半導体(例えば、セレン化カドミウム);I-VII族半導体(例えば、塩化第一銅);IV-VI族半導体(例えば、セレン化鉛);V-VI族半導体(例えば、テルル化ビスマス);及びII-V族半導体(例えば、カドミウムヒ素);三元系又は四元系半導体(例えば、銅インジウムセレン化物、銅インジウムガリウム二セレン化物、又は銅亜鉛スズ硫化物);ペロブスカイト半導体材料(例えば、CH3NH3PbI3及びCH3NH3PbI2Cl);並びに有機半導体材料(例えば、ポリアセチレン、ポリフェニレン及びポリチオフェンなどの高分子を含む共役高分子化合物)である。有機半導体の実例は、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、2,2-7,7-テトラキス-N,N-ジ-p-メトオキシフェニルアミン-9,9-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)及びポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリチオフェン又はポリアニリンなどの共役有機高分子を含む。半導体材料でない材料の実例は、例えば、当然のことながら導体である元素金属、及びシリカ又は方解石などの電気的絶縁体又は誘電体を含む。
【0212】
「酸化物」という用語は、本明細書において使用するように、少なくとも1つの酸素イオン(すなわち、O2-)又は2価の酸素原子を含む化合物を呼ぶ。本明細書において使用する「金属酸化物」及び「金属元素の酸化物」という用語は、1つの金属を含む酸化物、及びやはり混合型金属酸化物の両方を包含することを理解されたい。疑義を回避するために、混合型金属酸化物は、1つよりも多くの金属元素を含む単一の酸化物化合物を呼ぶ。混合型金属酸化物の実例は、亜鉛スズ酸化物及びインジウムスズ酸化物を含む。同様に、本明細書において使用する「メタロイド酸化物」及び「メタロイド元素の酸化物」という用語は、1つのメタロイド元素を含む酸化物及びやはり混合型メタロイド酸化物を包含することを理解されたい。疑義を回避するために、混合型メタロイド酸化物は、1つよりも多くのメタロイド元素を含む単一の酸化物化合物を呼ぶ。
【0213】
「カルコゲナイド」という用語は、本明細書において使用するように、硫化物イオン、セレン化物イオン若しくはテルル化物イオン(すなわち、S2-、Se2-、若しくはTe2-)、又は2価の硫黄原子、セレン原子若しくはテルル原子のうちの少なくとも1つを含む化合物を呼ぶ。「金属カルコゲナイド」及び「金属元素のカルコゲナイド」という用語は、1つの金属を含むカルコゲナイド及びやはり混合型金属カルコゲナイドを包含することを理解されたい。疑義を回避するために、混合型金属カルコゲナイドは、1つよりも多くの金属元素を含む単一のカルコゲナイド化合物を呼ぶ。同様に、本明細書において使用する「メタロイドカルコゲナイド」及び「メタロイド元素のカルコゲナイド」という用語は、1つのメタロイドを含むカルコゲナイド及びやはり混合型メタロイドカルコゲナイドを包含することを理解されたい。疑義を回避するために、混合型メタロイドカルコゲナイドは、1つよりも多くのメタロイド元素を含む単一のカルコゲナイド化合物を呼ぶ。
【0214】
時には、半導体材料は、金属元素又はメタロイド元素の酸化物又はカルコゲナイドを含む。例えば、半導体材料は、金属元素又はメタロイド元素の酸化物又はカルコゲナイドから構成される。例えば、半導体材料は、チタン、ニオブ、スズ、亜鉛、カドミウム、銅若しくは鉛又はこれらの任意の組合せの酸化物;或いはアンチモン、ビスマス若しくはカドミウム又はこれらの任意の組合せのカルコゲナイドを含む。例えば、半導体材料は、亜鉛スズ酸化物:銅亜鉛スズ硫化物;銅インジウムガリウムセレン化物、又は銅インジウムガリウム二セレン化物を含むことができる。
【0215】
一実施例では、半導体材料を、ドープした半導体とすることができ、そこでは、不純物元素が0.01%から40%の間の範囲である濃度で存在する。不純物元素が電子ドナーとして働く場合には、半導体材料は、n型になるようにドープされ、不純物元素が電子アクセプタとして働く場合には、半導体材料は、p型になるようにドープされるであろう。主メタロイド元素を置換する不純物メタロイド元素をドープした金属酸化物に関して、ドーパントの原子価が主メタロイド元素の原子価よりも大きい場合には、金属酸化物は、n型にドープされ、ドーパント・メタロイド元素の原子価が主メタロイド元素の原子価よりも小さい場合には、金属酸化物は、p型にドープされるであろうことに留意する。異なるレベルの効能及び効果へと、上に記述した半導体材料のいずれかをドープするために、上に記述した元素のいずれかを使用することが可能である。
【0216】
従って、いくつかのケースでは、半導体材料は、金属元素若しくはメタロイド元素の酸化物若しくはカルコゲナイド;IV族化合物;III族元素及びV族元素を含む化合物;II族元素及びVI元素を含む化合物;I族元素及びVII族元素を含む化合物;IV族元素及びVI族元素を含む化合物;V族元素及びVI族元素を含む化合物;II族元素及びV族元素を含む化合物;三元系若しくは四元系化合物半導体;又は有機半導体を含む。
【0217】
多くの場合に、半導体材料は、シリコン;チタン、ニオブ、スズ、亜鉛、カドミウム、銅若しくは鉛の酸化物;アンチモン若しくはビスマスのカルコゲナイド;銅亜鉛スズ硫化物;銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物、銅インジウムガリウムセレン化物;銅インジウムガリウム二セレン化物、炭化シリコン、ガリウムヒ素、セレン化カドミウム、塩化第一銅、セレン化鉛、テルル化ビスマス、又はカドミウムヒ素を含む。半導体材料がシリコンを含む場合には、シリコンを単結晶、多結晶又は非晶質とすることができる。
【0218】
本発明による光活性領域を、伝統的なシリコン太陽電池とタンデムにすることができる。例えば、半導体材料は、結晶シリコンの層を含むことができる。
【0219】
いくつかの実施例では、光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含む:
I.第1の電極、
II.本明細書においてどこかで規定したような第1の光活性領域、
III.p型半導体の層(A)、
IV.真性半導体の第1の層、
V.p型半導体の層(B)又はn型半導体の層(B)、
VI.真性半導体の第2の層、
VII.n型半導体の層(C)、及び
VIII.第2の電極。
【0220】
時には、光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含む:
I.第1の電極、
II.第1の領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.第3の領域、
V.p型半導体の層(A)、
VI.真性半導体の第1の層、
VII.p型半導体の層(B)又はn型半導体の層(B)、
VIII.真性半導体の第2の層、
IX.n型半導体の層(C)、及び
X.第2の電極、
ここでは、第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である、又は
第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域である。
【0221】
このタンデム素子内の構成要素(例えば、ペロブスカイト、第1の領域又は第3の領域)のいずれかを、本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。言及したp型半導体、n型半導体又は真性半導体のいずれかは、適切にpドープする、nドープする又はドープしなくてもよい本明細書において規定したいずれかの半導体を含むことができる。
【0222】
多くの場合に、第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域である。従って、p型層は、第1の電極に隣接するであろう、そして本発明によるペロブスカイト光活性領域が反転されるであろう。典型的には、素子に当たる光は、第1の電極を通って入射する。少なくとも1つのn型層を含むn型領域を、本明細書において規定したようにすることができる及び/又は少なくとも1つのp型層を含むp型領域を、本明細書において規定したようにすることができる。
【0223】
多くの場合に、本発明によるタンデム光電子素子では、p型半導体の層(A)は、p型非晶質シリコンの層であり及び/又はn型半導体の層(C)は、n型非晶質シリコンの層である。典型的には、p型半導体の層(A)は、p型非晶質シリコンの層であり、n型半導体の層(C)は、n型非晶質シリコンの層である。多くの場合に、真性半導体の第1の層は、真性非晶質シリコンの層であり及び/又は真性半導体の第2の層は、真性非晶質シリコンの層である。時々、真性半導体の第1の層は、真性非晶質シリコンの層であり、真性半導体の第2の層は、真性非晶質シリコンの層である。タンデム素子では、p型半導体の層(B)又はn型半導体の層(B)を、p型結晶シリコンの層又はn型結晶シリコンの層とすることができる。
【0224】
本明細書においてどこかで規定したように、第1の電極は、典型的には、透明導電性酸化物を含み及び/又は第2の電極は、金属を含む。多くの場合に、第1の電極は、典型的には、透明導電性酸化物を含み、第2の電極は、金属を含む。透明導電性酸化物を、上に規定したようにすることができ、多くの場合にFTO、ITO、又はAZOであり、典型的には、ITOである。金属を任意の金属とすることができる。一般に、第2の電極は、銀、金、銅、アルミニウム、白金、パラジウム、又はタングステンから選択される金属を含む。金属のこのリストは、本明細書中の第2の電極の他の事例にやはり適用することができる。多くの場合に、第1の電極材料は、ITOを含み及び/又は第2の電極は、銀を含む。典型的には、第1の電極材料は、ITOを含み、第2の電極は、銀を含む。
【0225】
開口気孔率のないペロブスカイトの層を含む本発明による光活性領域がシリコン光活性領域とタンデムであるよりはむしろ、薄膜光活性領域とタンデムであることができる。例えば、光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.第1の電極、
II.本明細書において前にどこかで規定したような第1の光活性領域、
III.半導体材料の層を含む第2の光活性領域、及び
IV.第2の電極、
ここでは、半導体材料は、銅亜鉛スズ硫化物、銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物、銅インジウムガリウムセレン化物、銅インジウムガリウム二セレン化物又は銅インジウムセレン化物の層を含む。半導体材料の層を、半導体材料の薄膜とすることができる。
【0226】
一実施例では、光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含む:
I.第1の電極、
II.本明細書において前に規定したような第1の光活性領域、
III.透明導電性酸化物の層、
IV.n型半導体の層(D)、
V.銅亜鉛スズ硫化物、銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物、銅インジウムガリウムセレン化物、銅インジウムガリウム二セレン化物又は銅インジウムセレン化物の層、及び
VI.第2の電極。
【0227】
例えば、本発明による光電子素子は、下記の領域を下記の順番で含むことができる:
I.第1の電極、
II.第1の領域、
III.開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
IV.第3の領域、
V.透明導電性酸化物の層、
VI.n型半導体の層(D)、
VII.銅亜鉛スズ硫化物、銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物、銅インジウムガリウムセレン化物、銅インジウムガリウム二セレン化物又は銅インジウムセレン化物の層、及び
VIII.第2の電極、
ここでは、第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である、又は
第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域である。
【0228】
n型半導体の層(D)は、任意の金属酸化物又はカルコゲナイド半導体を含むことができる。多くの場合に、n型半導体の層(D)は、硫化カドミウムを含む。
【0229】
典型的には、半導体の薄膜を含むタンデム素子では、第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である。少なくとも1つのn型層を含むn型領域を、本明細書においてどこかで規定したようにすることができ、及び/又は少なくとも1つのp型層を含むp型領域を、本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。
【0230】
第1の電極及び/又は第2の電極を、上に規定したようにすることができる。典型的には、第1の電極は、透明導電性酸化物を含み、及び/又は第2の電極は、金属を含む。多くの場合に、第1の電極は、透明導電性酸化物を含み、第2の電極は、金属を含む。典型的には、第1の電極は、ITOを含み、及び/若しくは第2の電極は、タングステンを含む、又は第1の電極は、ITOを含み、第2の電極は、タングステンを含む。
【0231】
本発明の光電子素子を、光起電力素子;フォトダイオード;フォトトランジスタ;光電子増倍管;フォト・レジスタ;光検出器;感光検出器;固体トリオード;電池電極;発光素子;発光ダイオード;トランジスタ;太陽電池;レーザ;又はダイオード注入レーザとすることができる。
【0232】
好ましい実施例では、本発明の光電子素子は、光起電力素子、例えば、太陽電池である。
【0233】
本発明による光電子素子を太陽電池とすることができる。
【0234】
好ましい別の一実施例では、本発明の光電子素子は、発光素子、例えば、発光ダイオードである。
【0235】
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層内の及び/又は前記第1の層内の本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を:
(a)(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を、
(b)(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物と
混合することを含むプロセスによって製造することができ、
ここでは、
第1のカチオン及び第2のカチオンは、ペロブスカイトに関して本明細書において規定したようなものであり、及び
第1のアニオン及び第2のアニオンは、同じアニオンであっても異なるアニオンであってもよい。
【0236】
ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される少なくとも1つのアニオンを含むペロブスカイトを、例えば、
(a)(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を、
(b)(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物と
混合することを含むプロセスによって製造することができ、
ここでは、
第1のカチオン及び第2のカチオンは、ペロブスカイトに関して本明細書において規定したようなものであり、及び
第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される同じアニオンであっても異なるアニオンであってもよい。
【0237】
典型的には、第1のアニオン及び第2のアニオンは、異なるアニオンである。より典型的には、第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオンから選択される異なるアニオンである。
【0238】
本プロセスによって製造されるペロブスカイトは、さらなるカチオン又はさらなるアニオンを含むことができる。例えば、ペロブスカイトは、2つ、3つ若しくは4つの異なるカチオン、又は2つ、3つ若しくは4つの異なるアニオンを含むことができる。ペロブスカイトを製造するためのプロセスは、これゆえ、さらなるカチオン又はさらなるアニオンを含むさらなる化合物を混合すること含むことができる。加えて又は代替で、ペロブスカイトを製造するプロセスは、(a)及び(b)を:(c)(i)第1のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第3の化合物と、又は(d)(i)第2のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第4の化合物と混合することを含むことができる。
【0239】
典型的には、ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、混合型アニオンペロブスカイト中の第2のカチオンは、金属カチオンである。より典型的には、第2のカチオンは、2価の金属カチオンである。例えば、第2のカチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択することができる。通常、第2のカチオンを、Sn2+及びPb2+から選択する。
【0240】
多くの場合に、ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、混合型アニオンペロブスカイト中の第1のカチオンは、有機カチオンである。
【0241】
通常、有機カチオンは、化学式(R1R2R3R4N)+を有し、ここでは、
R1は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R2は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R3は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、そして
R4は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである。
【0242】
主に、有機カチオン中では、R1は、水素、メチル又はエチルであり、R2は、水素、メチル又はエチルであり、R3は、水素、メチル又はエチルであり、そしてR4は、水素、メチル又はエチルである。例えば、R1を水素又はメチルとすることができ、R2を水素又はメチルとすることができ、R3を水素又はメチルとすることができ、そしてR4を水素又はメチルとすることができる。
【0243】
或いは、有機カチオンは、化学式(R5NH3)+を有することができ、ここでは、R5は水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルである。例えば、R5を、メチル又はエチルとすることができる。典型的には、R5はメチルである。
【0244】
或いは、有機カチオンは、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+を有することができ、ここでは、R5は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R6は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R7は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;そしてR8は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである。
【0245】
典型的には、カチオン(R5R6N=CH-NR7R8)+中のR5は、水素、メチル又はエチルであり、R6は、水素、メチル又はエチルであり、R7は、水素、メチル又はエチルであり、そしてR8は、水素、メチル又はエチルである。例えば、R5を、水素又はメチルとすることができ、R6を、水素又はメチルとすることができ、R7を、水素又はメチルとすることができ、そしてR8を、水素又はメチルとすることができる。
【0246】
有機カチオンは、例えば、化学式(H2N=CH-NH2)+を有することができる。
【0247】
ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、ペロブスカイトは、通常、混合型ハロゲン化物ペロブスカイトであり、ここでは、前記2つ以上の異なるアニオンは、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。
【0248】
典型的には、ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、ペロブスカイトは、化学式(I):
[A][B][X]3 (I)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
[A]は少なくとも1つの有機カチオンであり、
[B]は少なくとも1つの金属カチオンであり、及び
[X]は前記少なくとも1つのアニオンであり、そして
プロセスは、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物と
混合することを含み、
ここでは、
第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオン又はカルコゲナイドアニオンから選択される異なるアニオンである。
【0249】
化学式(I)のペロブスカイトは、例えば、1つ、2つ、3つ又は4つの異なる金属カチオンを、典型的には、1つ又は2つの異なる金属カチオンを含むことができる。化学式(I)のペロブスカイトは、例えば、1つ、2つ、3つ又は4つの異なる有機カチオンを、典型的には、1つ又は2つの異なる有機カチオンを含むことができる。化学式(I)のペロブスカイトは、例えば、2つ、3つ又は4つの異なるアニオンを、典型的には、2つ又は3つの異なるアニオンを含むことができる。プロセスは、これゆえ、カチオン及びアニオンを含むさらなる化合物を混合することを含むことができる。
【0250】
典型的に、[X]は、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。第1のアニオン及び第2のアニオンは、このように典型的にはハロゲン化物アニオンである。或いは、[X]を、3つの異なるハロゲン化物イオンとすることができる。このように、プロセスは、第3の化合物を第1の化合物及び第2の化合物と混合することを含むことができ、ここでは、第3の化合物は、(i)カチオン及び(ii)第3のハロゲン化物アニオンを含み、ここでは、第3のアニオンは、第1のハロゲン化物アニオン及び第2のハロゲン化物アニオンとは異なるハロゲン化物アニオンである。
【0251】
多くの場合に、ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、ペロブスカイトは、化学式(IA):
AB[X]3 (IA)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
Aは有機カチオンであり、
Bは金属カチオンであり、及び
[X]は前記2つ以上の異なるアニオンであり、
プロセスは、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のハロゲン化物アニオンを含む第1の化合物を、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のハロゲン化物アニオンを含む第2の化合物と
混合することを含み、ここでは、
第1のハロゲン化物アニオン及び第2のハロゲン化物アニオンは、異なるハロゲン化物アニオンである。
【0252】
通常、[X]は、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである。好ましくは、[X]は、2つ又は3つの異なるハロゲン化物アニオンである。より好ましくは、[X]は、2つの異なるハロゲン化物アニオンである。別の一実施例では、[X]は、3つの異なるハロゲン化物アニオンである。
【0253】
典型的に、ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、ペロブスカイトは、化学式(II):
ABX3-yX’y (II)
のペロブスカイト化合物であり、ここでは、
Aは有機カチオンであり、
Bは金属カチオンであり、
Xは第1のハロゲン化物アニオンであり、
X’は第1のハロゲン化物アニオンとは異なる第2のハロゲン化物アニオンであり、及び
yは0.05から2.95までであり、そして
プロセスは、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)Xを含む第1の化合物を、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)X’を含む第2の化合物と
混合することを含み、
ここでは、混合物内でXのX’に対する比率は、(3-y):yに等しい。
【0254】
(3-y):yに等しいXのX’に対する前記比率を実現するために、プロセスは、さらなる化合物を第1の化合物及び第2の化合物と混合することを含むことができる。例えば、プロセスは、第3の化合物を第1の化合物及び第2の化合物と混合することを含むことができ、ここでは、第3の化合物は、(i)金属カチオン及び(ii)X’を含む。或いは、プロセスは、第3の化合物を第1の化合物及び第2の化合物と混合することを含むことができ、ここでは、第3の化合物は、(i)有機カチオン及び(ii)Xを含む。
【0255】
通常、yは、0.5から2.5まで、例えば、0.75から2.25までである。典型的には、yは、1から2までである。
【0256】
典型的に、ペロブスカイトを製造するためのプロセスでは、第1の化合物は、BX2であり、第2の化合物は、AX’である。
【0257】
多くの場合に、第2の化合物を、化学式(R5NH2)の化合物を反応させることによって生成し、ここでは、R5は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルであり、化学式HX’の化合物を有する。典型的には、R5を、メチル又はエチルとすることができ、多くの場合に、R5は、メチルである。
【0258】
通常、化学式(R5NH2)の化合物及び化学式HX’の化合物は、1:1モル比で反応する。多くの場合に、反応は、窒素雰囲気下で且つ通常無水エタノール中で行われる。典型的には、無水エタノールは、約200プルーフである。より典型的には、15mlから30mlまでの化学式(R5NH2)の化合物を、約15mlから15mlまでのHX’と、通常、50mlから150mlまでの無水エタノール中で窒素雰囲気下で反応させる。プロセスは、前記混合型アニオンペロブスカイトを回収するステップをやはり含むことができる。結晶AX’を抽出するために、回転蒸発装置を多くの場合に使用する。
【0259】
通常、第1の化合物及び第2の化合物を混合するステップは、溶剤中で第1の化合物及び第2の化合物を溶解するステップである。第1の化合物及び第2の化合物を、1:20から20:1までの比率で、典型的には、1:1の比率で溶解することができる。典型的には、溶剤は、ジメチルホルムアミド(DMA:dimethylformamid)又は水である。金属カチオンがPb2+のときには、溶剤は通常ジメチルホルムアミドである。金属カチオンがSn2+のときには、溶剤は通常水である。溶剤としてのDMF又は水の使用は、これらの溶剤が非常に揮発性ではないので有利である。
【0260】
発明の素子中のペロブスカイト半導体層を、溶液処理によって又は真空中での蒸着によって準備することが可能である。低い処理温度は、製造コストを削減するために重要であり、プラスチック基板上の処理及び他の層の上での処理を可能にして、タンデム接合及び多接合太陽電池の製造を可能にする。ここで、発明者は、本発明の素子が、溶液処理可能なスカフォールドを含め低温で処理したすべての層を用いて動作可能であることを実際に証明する。
【0261】
本発明は、光活性領域を含む光電子素子を製造するためのプロセスを提供し、この光活性領域は、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び、n型領域とp型領域との間に配置された、
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
を含み、このプロセスは、
(a)第1の領域を設けること、
(b)第1の領域の上に第2の領域を配置すること、この第2の領域は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含み、及び
(c)第2の領域の上に第3の領域を配置すること、
を含み、ここでは、
第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である、又は
第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域である。
【0262】
多くの場合に、第1の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域である。
【0263】
本発明のプロセスでは、n型領域、n型層、p型領域及びp型層を、本発明の光電子素子用に本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。また、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、及びペロブスカイト半導体それ自体を、本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。
【0264】
本発明のプロセスの一実施例では、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
気相堆積によって第1の領域の上にペロブスカイトの固体層を生成すること、
を含む。
【0265】
この実施例では、気相堆積によって固体層を生成するステップは、典型的には、
(i)蒸気に第1の領域を曝すこと、この蒸気は、前記ペロブスカイト又は前記ペロブスカイトを生成するための1つ又は複数の反応物質を含み、
(ii)前記ペロブスカイトの固体層を第1の領域の上に生成するために、第1の領域上への蒸気の堆積を可能にすること、
を含む。
【0266】
蒸気中のペロブスカイトを、本発明の光電子素子用に本明細書において前に論じたペロブスカイトのうちのいずれかとすることができ、典型的には、本明細書において前に規定したような化学式(I)、(IA)又は(II)のペロブスカイトである。
【0267】
前記ペロブスカイトを生成するための1つ又は複数の反応物質は、ペロブスカイト化合物を合成するためのプロセスに関して上に論じたタイプの反応物質を含むことができる。
【0268】
このように、1つ又は複数の反応物質は、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したように、
(a)(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物、並びに
(b)(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物、
を含むことができる。
【0269】
より詳しくは、1つ又は複数の反応物質は、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物と、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物
を含むことができ、ここでは、第1のアニオン及び第2のアニオンは、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したような、ハロゲン化物アニオン又はカルコゲナイドアニオンから選択される異なるアニオンである。
【0270】
例えば、1つ又は複数の反応物質は、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のハロゲン化物アニオンを含む第1の化合物と、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のハロゲン化物アニオンを含む第2の化合物
を含むことができ、ここでは、第1のハロゲン化物アニオン及び第2のハロゲン化物アニオンは、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したような、異なるハロゲン化物アニオンである。
【0271】
例えば、堆積しようとするペロブスカイトがCH3NH3PbI2Clであるときには、1つ又は複数の反応物質は、典型的には(a)PbI2及び(b)CH3NH3Clを含む。
【0272】
プロセスは、一般に、前記ペロブスカイトを蒸発させることによって、又は前記ペロブスカイトを生成するための前記1つ若しくは複数の反応物質を蒸発させることによって、第1の場所において蒸気を生成することをさらに含む。このステップでは、ペロブスカイト又はペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を、典型的には、後に真空にされる蒸着チャンバへと移送する。ペロブスカイト又はペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を、典型的には、次に加熱する。
【0273】
第1の領域の上に前記ペロブスカイトの固体層を生成するために、得られた蒸気を、次に第1の領域に触れさせ、これによって堆積する。反応物質を使用する場合には、これらはその場で一緒に反応して、第1の領域の上にペロブスカイトを生成する。
【0274】
典型的には、ペロブスカイトの固体層が所望の厚さ、例えば、10nmから100μmまで、又はより典型的には、10nmから10μmまでの厚さを有するまで、気相堆積を続けることが可能である。好ましくは、ペロブスカイトの固体層が、50nmから1000nmまで、又は例えば、100nmから700nmまでの厚さを有するまで、気相堆積を続けることが可能である。例えば、ほぼ100nmから300nmまでの粉末を第1の領域上へと堆積するまで、堆積を続けることができる。
【0275】
気相堆積は、ペロブスカイトの固体層が少なくとも100nmの厚さを有するまで続けることができる。典型的には、例えば、気相堆積は、ペロブスカイトの固体層が、100nmから100μmまで、又は例えば、100nmから700nmまでの厚さを有するまで続く。
【0276】
発明者は、デュアル・ソース気相堆積プロセスが堆積するペロブスカイトの一様な層を可能にすることを見出した。気相堆積は、制御された厚さの薄膜を堆積するための大規模製造における最も一般的な方法の1つであり、真空中で表面上へと所望の膜材料を蒸着させた形態の凝集による薄膜の堆積を従来から呼ぶ。パルス・レーザ堆積及び化学溶液堆積などの無機ペロブスカイトの堆積方法が、よく研究されてきている。(C6H5C2H4NH3)2PbI4又は(C6H5C2H4NH3)2PbBr4などのハイブリッド無機-有機ペロブスカイトを、単一ソース熱堆積を介して良好に蒸着させてきている。しかしながら、無機材料と有機材料との間の物理的特性及び化学的特性の著しい違いのために、ハイブリッド無機-有機ペロブスカイトの堆積方法がほとんど記述されていないので、有機ソース及び無機ソースを同時であるが独立制御で蒸着させるために、デュアル・ソース熱堆積を適用した(V. K. Dwivedi, J. J. Baumberg, and G. V. Prakash, "Direct deposition of inorganic-organic hybrid semiconductors and their template-assisted microstructures," Materials Chemistry and Physics, vol. 137, no. 3, pp. 941-946, Jan. 2013)。最近、テンプレート支援型電気化学堆積が、強いエキシトン放出を有する多重量子井戸構造の新しい種類のハイブリッド・ペロブスカイト(C12H25NH3)2PbI4を得るために提案された。これらの材料を、光起電力素子において非常に有用であるはずの2Dフォトニック構造に直接くりぬくことが可能であることもやはり提案されている。大部分の有機材料が非常に揮発性であり且つ容易に分解し、そしてこれが堆積プロセスの制御をより複雑にさせるという理由で、ハイブリッド有機-無機ペロブスカイト材料の堆積は、常に難題である。
【0277】
一実施例では、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
気相堆積によってペロブスカイトの固体層を生成することを含み、ここでは、気相堆積は、デュアル・ソース気相堆積である。
【0278】
「デュアル・ソース気相堆積」という用語は、本明細書において使用するように、基板上に堆積する蒸気が2つの別々のソースに由来する2つ以上の成分を含む気相堆積プロセスを呼ぶ。典型的には、第1のソースが第1の成分を含む蒸気を生成し、第2のソースが第2の成分を含む蒸気を生成するであろう。デュアル・ソース堆積が普通には好まれるとはいえ、デュアル・ソース気相堆積を、3ソース及び4ソース気相堆積を含むようにやはり拡張することができる。
【0279】
一実施例では、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
(i)第1の領域を蒸気に曝すこと、この蒸気は、前記ペロブスカイトを生成するための2つの反応物質を含み、及び
(ii)前記ペロブスカイトの固体層を第1の領域の上に生成するために、第1の領域上への蒸気の堆積を可能にすること、
を含み、
ここでは、(i)第1のソースから第1の反応物質を蒸発させ且つ第2のソースから第2の反応物質を蒸発させることによって、前記ペロブスカイトを生成するための2つの反応物質を含む前記蒸気を生成することをさらに含む。
【0280】
反応物質を、ペロブスカイトの生成のために本明細書において規定したようにすることができる。蒸気は、代わりに、3つ以上の反応物質を含むことができる。2つのソースを、典型的には、第1の領域から同じ距離、多くの場合に10cmから40cmまでのところに設置する。
【0281】
多くの場合に、第1の反応物質は、(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を含み;並びに第2の反応物質は、(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物を含む。いくつかのケースでは、第1のカチオンは、ここでは金属カチオンであろう。いくつかのケースでは、第2のカチオンは、ここでは有機カチオンであろう。従って、第1の反応物質は、(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を含むことができ;並びに第2の反応物質は、(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物を含むことができる。好ましくは、金属カチオンは、2価の金属カチオンである。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンとすることができる。これらのカチオンのうち、2価の金属カチオンは、Pb2+又はSn2+であることが好ましい。
【0282】
多くの場合に、有機カチオンは、化学式(R1R2R3R4N)+を有し、ここでは、
R1は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R2は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R3は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、そして
R4は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである。
【0283】
有機カチオンを、本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。多くの場合に、有機カチオンは、化学式(R5NH3)+を有し、ここでは、R5は水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルである。例えば、有機カチオンは、化学式(R5NH3)+を有し、ここでは、R5は、メチル、エチル、プロピル又はブチル、好ましくは、メチル又はエチルである。いくつかのケースでは、有機カチオンを、メチルアンモニウムカチオンとすることができる。
【0284】
或いは、有機カチオンは、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+を有し、ここでは、R5は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R6は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;R7は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり;そしてR8は、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである。
【0285】
典型的には、カチオン(R5R6N=CH-NR7R8)+中のR5は、水素、メチル又はエチルであり、R6は、水素、メチル又はエチルであり、R7は、水素、メチル又はエチルであり、そしてR8は、水素、メチル又はエチルである。例えば、R5を水素又はメチルとすることができ、R6を水素又はメチルとすることができ、R7を水素又はメチルとすることができ、そしてR8を水素又はメチルとすることができる。
【0286】
有機カチオンは、例えば、化学式(H2N=CH-NH2)+を有することができる。
【0287】
第1のアニオン及び第2のアニオンを、任意のアニオンとすることができるが、典型的にはハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン)又はカルコゲナイドイオン(例えば、硫化物イオン、セレン化物イオン及びテルル化物イオン)から選択する。多くの場合に、ペロブスカイトは、混合型ハロゲン化物ペロブスカイト又は混合型カルコゲナイド・ペロブスカイトであろう、そして第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物イオン又はカルコゲナイドイオンから選択される異なるアニオンである。好ましくは、第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオンである。典型的には、第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオンから選択される異なるアニオンである。例えば、第1のアニオン及び第2のアニオンを、下記のような対、(第1のアニオン:第2のアニオン):(フッ化物アニオン:塩化物アニオン)、(塩化物アニオン:フッ化物アニオン)、(フッ化物アニオン:臭化物アニオン)、(臭化物アニオン:フッ化物アニオン)、(フッ化物アニオン:ヨウ化物アニオン)、(ヨウ化物アニオン:フッ化物アニオン)、(塩化物アニオン:臭化物アニオン)、(臭化物アニオン:塩化物アニオン)、(塩化物アニオン:ヨウ化物アニオン)、(ヨウ化物アニオン:塩化物アニオン)、(臭化物アニオン:ヨウ化物アニオン)又は(ヨウ化物アニオン:臭化物アニオン)のうちの1つとすることができる。
【0288】
いくつかの実施例では、第1の反応物質は、金属ジハロゲン化物を含み、第2の反応物質は、有機酸のハロゲン化塩を含むであろう。例えば、第1の反応物質は、BX2である第1の化合物を含むことができ、第2の反応物質は、AX’である第2の化合物を含むことができ、ここでは、Bは第1のカチオンであり、Xは第1のアニオンであり、Aは第2のカチオンであり、X’は第2のアニオンである。カチオン及びアニオンの各々を、上に規定したようにすることができる。時には、第1の反応物質は、BX2である第1の化合物を含み、第2の反応物質は、AX’である第2の化合物を含み、ここでは、
Bは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンであり、
Xは、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、
Aは、化学式(R5NH3)+のカチオンであり、ここでは、R5は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルであり、
X’は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、そして
X及びX’は、異なるアニオンである。
【0289】
第1の反応物質は、ハロゲン化鉛又はハロゲン化スズを含むことができ、第2の反応物質は、ハロゲン化メチルアンモニウム又はハロゲン化エチルアンモニウムを含むことができ、ここでは、第1の反応物質及び第2の反応物質中のハロゲン化物イオンは異なる。多くの場合に、第1の反応物質は、フッ化スズを含み、第2の反応物質は、塩化メチルアンモニウム、臭化メチルアンモニウム又はヨウ化メチルアンモニウムを含み、
第1の反応物質は、塩化鉛若しくは塩化スズを含み、第2の反応物質は、臭化メチルアンモニウム若しくはヨウ化メチルアンモニウムを含み、
第1の反応物質は、臭化鉛若しくは臭化スズを含み、第2の反応物質は、塩化メチルアンモニウム若しくはヨウ化メチルアンモニウムを含む、又は
第1の反応物質は、ヨウ化鉛若しくは臭化スズを含み、第2の反応物質は、塩化メチルアンモニウム若しくは臭化メチルアンモニウムを含む。
【0290】
好ましくは、第1の反応物質は、塩化鉛を含み、第2の反応物質は、ヨウ化メチルアンモニウムを含む。
【0291】
化合物のこれらの対を、ペロブスカイトの別の堆積方法、例えば、溶液堆積に対して適用する。
【0292】
或いは、Aを、無機一価のカチオンとすることができる。例えば、Aを、Cs+などの1族金属のカチオンとすることができる。Aが無機である場合には、各反応物質中の2つのハロゲン化物アニオンは、同じであっても異なってもよい。例えば、第1の反応物質は、第1の化合物BX2を含むことができ、第2の反応物質は、AXである第2の化合物を含むことができ、ここでは、
Bは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンであり、
Xは、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、
Aは、Cs+であり、
X’は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、そして
X及びX’は、同じである又は異なる。
【0293】
これらの反応物質を使用するデュアル気相堆積は、上に規定したような化学式(IB)のペロブスカイト、例えば、CsSnBr3の層を生成することが可能である。或いは、CsSnBr3-yIy(ここで、yは、上の化学式(II)において規定されるようである)を生成することができる。
【0294】
デュアル気相堆積は、各成分の蒸着速度(ここでは1秒当たりのオングストロームで与える)が制御されることを可能にし、このように、より制御された堆積に導く。典型的には、第1の反応物質(任意選択で金属カチオンを含む)の蒸着速度は、0.1から10Å/sまで、又は0.1から5Å/sまでであり、第2の反応物質(任意選択で有機カチオンを含む)の蒸着速度は、1から20Å/sまで、又は1から10Å/sまでである。堆積を実行する時間の長さを変えることによって、配置されるペロブスカイトの量を制御することができる。典型的には、(単一ソース又はデュアル・ソースのケースのいずれかでの)気相堆積を、5から60分間まで、又は20から40分間まで実行することができる。堆積時間は、使用する蒸着速度に依存するであろう。多くの場合に、第2の成分が過剰であることが好ましく、堆積した第1の反応物質と第2の反応物質とのモル比を、1:1から1:16まで、又は1:4から1:16までとすることができる。所望の層厚さが得られると、気相堆積を停止することができる。
【0295】
気相堆積は、一般に10-2Pa(10-4mbar)未満、例えば、10-3Pa(10-5mbar)未満の圧力を有するチャンバ内で実行される。気相堆積によって第1の領域の上に第2の領域を堆積するステップは、通常(iii)このように生成されるペロブスカイトの固体層を加熱することをさらに含む。
【0296】
ペロブスカイトの固体層を加熱するステップは、通常、不活性雰囲気中でペロブスカイトの固体層を加熱することを含む。典型的には、ペロブスカイトの固体層を加熱する温度は、150℃を超えない。このように、ペロブスカイトの固体層を、30℃から150℃までの温度で加熱することができ、そして好ましくは40℃から110℃までの温度で加熱する。ペロブスカイトの固体層が所望の半導電性特性を有するまで、ペロブスカイトの固体層を前記温度で加熱することができる。通常、ペロブスカイトの固体層を、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間の間加熱する。いくつかの実施例では、ペロブスカイトの固体層を、所望の半導電性特性が得られるまで加熱し、特性を、電導度及び抵抗率を測定するための定型の方法によって測定することが可能である。ペロブスカイトの固体層を、いくつかのケースでは、色変化が観察されるまで加熱する、この色変化は、所望の半導電性特性が得られたことを示す。CH3NH3PbI2Clペロブスカイトのケースでは、色変化は、典型的には黄色から茶色である。
【0297】
第1の領域の上に第1の化合物(第1のペロブスカイト前駆物質)の固体層を配置すること、及び次に第2の化合物(第2のペロブスカイト前駆物質)の溶液で配置した層を処理することを含む方法によって、第2の領域を第1の領域の上に配置することができる。これを、「2ステップ法」と呼ぶことができる。第1のペロブスカイト前駆物質の固体層を、真空堆積によって配置することができる。この固体層を、次に第2のペロブスカイト前駆物質の溶液で処理する。溶液中の第2の前駆物質は、次に第1のペロブスカイト前駆物質の存在する固体層と反応して、ペロブスカイトの固体層を生成する。例えば、第2のペロブスカイト前駆物質を含む溶液中に第1のペロブスカイト前駆物質の固体層を浸漬することによって、第1のペロブスカイト前駆物質溶液の固体層を、第2のペロブスカイト前駆物質を含む溶液で処理することができる。第1のペロブスカイト前駆物質の固体層の上に第2のペロブスカイト前駆物質を含む溶液を配置することによって、第1のペロブスカイト前駆物質の固体層をやはり処理することができる。
【0298】
第1のペロブスカイト前駆物質は、(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物であり、第2のペロブスカイト前駆物質は、(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物である。第1のカチオン及び第2のカチオンは、通常ペロブスカイトに関して本明細書において規定したようであり、第1のアニオン及び第2のアニオンは、同じでも異なってもよく、第1のアニオン及び第2のアニオンに関して本明細書において規定したようにすることができる。
【0299】
一実施例では、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
(i)第1の領域を蒸気に曝すこと、この蒸気は、第1のペロブスカイト前駆物質化合物を含み、第1の領域上への蒸気の堆積を可能にして、第1の領域の上に第1のペロブスカイト前駆物質化合物の固体層を生成し、そして
(ii)第1のペロブスカイト前駆物質化合物の得られた固体層を第2のペロブスカイト前駆物質化合物を含む溶液で処理し、これによって第1のペロブスカイト前駆物質化合物と第2のペロブスカイト前駆物質化合物とを反応させて、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層を生成すること、
を含み、ここでは、
第1のペロブスカイト前駆物質化合物は、(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含み、第2のペロブスカイト前駆物質化合物は、(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む。
【0300】
第1のカチオン、第1のアニオン、第2のカチオン及び第2のアニオンを、ペロブスカイトに関して本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。
【0301】
いくつかのケースでは、第1のカチオンは、ここでは金属カチオンであろう。いくつかのケースでは、第2のカチオンは、ここでは有機カチオンであろう。従って、第1の化合物は、(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含むことができ;そして第2の化合物は、(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含むことができる。好ましくは、金属カチオンは、2価の金属カチオンである。例えば、金属カチオンを、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンとすることができる。これらのカチオンのうち、2価の金属カチオンは、Pb2+又はSn2+であることが好ましい。
【0302】
第1のアニオン及び第2のアニオンを、これらは同じであっても異なってもよく、任意のアニオンとすることができるが、典型的には、ハロゲン化物イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオン)又はカルコゲナイドイオン(例えば、硫化物イオン、セレン化物イオン及びテルル化物イオン)から選択される。
【0303】
多くの場合に、生成されるペロブスカイトは、混合型ハロゲン化物ペロブスカイト又は混合型カルコゲナイド・ペロブスカイトであろう、そして第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物イオン又はカルコゲナイドイオンから選択される異なるアニオンである。
【0304】
好ましくは、第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオンである。典型的には、第1のアニオン及び第2のアニオンは、ハロゲン化物アニオンから選択される異なるアニオンである。例えば、第1のアニオン及び第2のアニオンを、下記のような対、(第1のアニオン:第2のアニオン):(フッ化物アニオン:塩化物アニオン)、(塩化物アニオン:フッ化物アニオン)、(フッ化物アニオン:臭化物アニオン)、(臭化物アニオン:フッ化物アニオン)、(フッ化物アニオン:ヨウ化物アニオン)、(ヨウ化物アニオン:フッ化物アニオン)、(塩化物アニオン:臭化物アニオン)、(臭化物アニオン:塩化物アニオン)、(塩化物アニオン:ヨウ化物アニオン)、(ヨウ化物アニオン:塩化物アニオン)、(臭化物アニオン:ヨウ化物アニオン)又は(ヨウ化物アニオン:臭化物アニオン)のうちの1つとすることができる。
【0305】
有機カチオンを、(R1R2R3R4N)+、(R5NH3)+、又は(R5R6N=CH-NR7R8)+から選択することができ、ここでは、R1からR8を上に規定したようにすることができる。
【0306】
多くの場合に、第1の化合物は、化学式BX2を有し、第2の化合物は、化学式AX’を有し、ここでは、
Bは、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンであり、
Xは、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、
Aは、化学式(R5NH3)+のカチオンであり、ここでは、R5は、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルであり、
X’は、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、そして
X及びX’は、同じである又は異なるアニオンである。
【0307】
多くの場合に、第1のペロブスカイト前駆物質化合物を、フッ化鉛、塩化鉛、臭化鉛、ヨウ化鉛、フッ化スズ、塩化スズ、臭化スズ、又はヨウ化スズから選択することができる。典型的には、これは塩化鉛又はヨウ化鉛である。多くの場合に、第2のペロブスカイト前駆物質化合物を、フッ化メチルアンモニウム、塩化メチルアンモニウム、臭化メチルアンモニウム、ヨウ化メチルアンモニウム、フッ化エチルアンモニウム、塩化エチルアンモニウム、臭化エチルアンモニウム、又はヨウ化エチルアンモニウムから選択する。典型的には、これはヨウ化メチルアンモニウムである。
【0308】
典型的には、第1のペロブスカイト前駆物質化合物の気相堆積は、第1の化合物の固体層が所望の厚さ、例えば、10nmから100μmまで、又はより典型的には、10nmから10μmまでの厚さを有するまで続けることが可能である。好ましくは、気相堆積は、第1の化合物の固体層が、50nmから1000nmまで、又は例えば、100nmから700nmまでの厚さを有するまで続けることが可能である。例えば、ほぼ100nmから300nmまでの第1の化合物が第1の領域上へと堆積されるまで、堆積を続けることができる。
【0309】
気相堆積は、第1のペロブスカイト前駆物質化合物の固体層が、100nmから100μmまで、又は100nmから700nmまでの厚さを有するまで続けることができる。
【0310】
第1の化合物の蒸着の速度を、0.1から10Å/sまで、又は1から5Å/sまでとすることができる。気相堆積は、一般に10-2Pa(10-4mbar)未満、例えば、10-3Pa(10-5mbar)未満の圧力を有するチャンバ内で実行される。第1の化合物を蒸着させる温度を、200℃から500℃まで、又は250℃から350℃までとすることができる。
【0311】
典型的には、第2の領域の生成を可能にするために、第1の化合物の得られた固体層を第2の化合物を含む溶液に触れさせるステップ(iii)は、第2の領域、すなわち、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を形成するために、第1の化合物の固体層を含む基板を第2の化合物を含む溶液中に十分な時間の間浸漬することを含む。ステップ(iii)は、第1の化合物の固体層を含む基板を第2の化合物を含む溶液中に1から60分間まで、又は5から15分間まで浸漬することを含むことができる。第1の化合物の固体層を含む基板を第2の化合物を含む溶液中に浸漬することを、浸漬コーティングと呼ぶことができる。
【0312】
第2のペロブスカイト前駆物質化合物を含む溶液は、溶剤及び第2の化合物を含む。溶剤を、本明細書において規定したいずれかの溶剤とすることができる。溶剤を、ジメチルホルムアミド、エタノール又はイソプロパノールとすることができる。溶剤をイソプロパノールとすることができる。溶剤中の第2の化合物の濃度を、5から50mg/mlまで、又は10から30mg/mlまでとすることができる。
【0313】
(例えば、浸漬コーティングによって)第2の領域の生成を可能にするために、第1のペロブスカイト前駆物質化合物の得られた固体層を第2の化合物を含む溶液に触れさせた後で、基板をアニールすることができる。例えば、基板を80℃から200℃まで、又は100℃から150℃まで加熱することができる。基板を、1から60分間まで、又は5から15分間まで加熱することができる。基板を窒素雰囲気中でアニールすることができる。
【0314】
溶液堆積法を、第1の領域の上に第2の領域を配置するために使用することができる。このように、いくつかの実施例では、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
(i)第1の領域の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配すること、この1つ又は複数の前駆物質溶液は、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト、又は1つ若しくは複数の溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含み、そして
(ii)ペロブスカイトの固体層を第1の領域の上に生成するために1つ又は複数の溶剤を除去すること、
を含む。
【0315】
再び、ペロブスカイトを、本発明の光電子素子用に本明細書において前に論じたペロブスカイトのうちのいずれかとすることができ、典型的には、本明細書において前に規定したような化学式(I)、(IA)又は(II)のペロブスカイトである。
【0316】
また、前記ペロブスカイトを生成するための1つ又は複数の反応物質は、ペロブスカイト化合物を合成するためのプロセスのために上に論じたタイプの反応物質を含むことができる。
【0317】
このように、1つ又は複数の反応物質は、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において規定したような、
(a)(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物、並びに
(b)(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物、
を含むことができる。
【0318】
より詳しくは、1つ又は複数の反応物質は、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物と、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物と、
を含み、ここでは、第1のアニオン及び第2のアニオンは、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したような、ハロゲン化物アニオン又はカルコゲナイドアニオンから選択される異なるアニオンである。有機カチオンを、ペロブスカイトを生成するためのプロセスに関して本明細書において規定したようにすることができる。
【0319】
例えば、1つ又は複数の反応物質は、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のハロゲン化物アニオンを含む第1の化合物と、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のハロゲン化物アニオンを含む第2の化合物と、
を含むことができ、ここでは、第1のハロゲン化物アニオン及び第2のハロゲン化物アニオンは、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を製造するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したように、異なるハロゲン化物アニオンである。
【0320】
例えば、堆積しようとするペロブスカイトがCH3NH3PbI2Clであるときには、1つ又は複数の反応物質は、典型的には(a)PbI2及び(b)CH3NH3Clを含む。
【0321】
典型的には、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
(i)第1の領域の上に前駆物質溶液を配すること、この前駆物質溶液は、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを含み、及び
(ii)ペロブスカイトの固体層を第1の領域の上に生成するために溶剤を除去すること、
を含む。
【0322】
ペロブスカイトを、本発明の光電子素子用に本明細書において前に論じたペロブスカイトのうちのいずれかとすることができ、典型的には、本明細書において前に規定したような化学式(I)、(IA)又は(II)のペロブスカイトである。
【0323】
通常、(i)第1の領域の上に前駆物質溶液を配するステップ及び(ii)溶剤を除去するステップは、ペロブスカイトの前記固体層を第1の領域の上に生成するために、第1の領域上へと1つ又は複数の前駆物質溶液をスピンコーティングすること又はスロット・ダイ・コーティングすることを含む。典型的には、前記コーティングを、不活性雰囲気中で、例えば、窒素下で行う。スピンコーティングを、通常1000から2000rpmまでの速度で実行する。スピンコーティングを、典型的には、30秒から2分間行う。
【0324】
ペロブスカイトの前記固体層を第1の領域の上に生成するために、第1の領域上へのスピンコーティングによって、1つ又は複数の前駆物質溶液を配することができる。
【0325】
第1の領域の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配するステップ及び1つ又は複数の溶剤を除去するステップを、ペロブスカイトの固体層が、所望の厚さ、例えば、10nmから100μmまで、より典型的には、10nmから10μmまでの厚さを有するまで行う。例えば、第1の領域の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配するステップ及び1つ又は複数の溶剤を除去するステップを、ペロブスカイトの固体層が、50nmから1000nmまで、又は例えば、100nmから700nmまでの厚さを有するまで行うことができる。
【0326】
第1の領域の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配するステップ及び1つ又は複数の溶剤を除去するステップを、ペロブスカイトの固体層が、100nmから100μmまで、又は100nmから700nmまでの厚さを有するまで行うことができる。
【0327】
(溶液堆積によって)第1の領域の上に第2の領域を配置するステップは、通常、(iii)このように生成したペロブスカイトの固体層を加熱することをさらに含む。
【0328】
ペロブスカイトの固体層を加熱するステップは、通常、不活性雰囲気中でペロブスカイトの固体層を加熱すること含む。典型的には、ペロブスカイトの固体層を加熱する温度は、150℃を超えない。このように、ペロブスカイトの固体層を、30℃から150℃までの温度で加熱することができ、そして好ましくは40℃から110℃までの温度で加熱する。ペロブスカイトの固体層が所望の半導電性特性を有するまで、ペロブスカイトの固体層を前記温度で加熱することができる。通常、ペロブスカイトの固体層を、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間の間加熱する。いくつかの実施例では、ペロブスカイトの固体層を、所望の半導電性特性が得られるまで加熱し、特性を、電導度及び抵抗率を測定するための定型の方法によって測定することが可能である。ペロブスカイトの固体層を、いくつかのケースでは、色変化が観察されるまで加熱する、この色変化は、所望の半導電性特性が得られたことを示す。CH3NH3PbI2Clペロブスカイトのケースでは、色変化は、典型的には黄色から茶色である。
【0329】
本発明のプロセスのいくつかの実施例では(例えば、製造する素子の光活性領域がスカフォールド材料を持たないときには)、第2の領域は、開口気孔率のない前記ペロブスカイト半導体の前記層から構成される。
【0330】
本発明のプロセスの別の一実施例では、どんな方法でも、前記光活性領域は、
前記n型領域、
前記p型領域、及び、n型領域とp型領域との間に配置された、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層、並びに
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層を含み、このキャッピング層は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であり、
ここでは、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、第1の層中のペロブスカイト半導体と接触し、
そして、プロセスは、
(a)前記第1の領域を設けること、
(b)第1の領域の上に前記第2の領域を配置すること、ここでは、第2の領域が、
(i)スカフォールド材料及びペロブスカイト半導体を含む第1の層、並びに
(ii)前記第1の層の上のキャッピング層を含み、このキャッピング層は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であり、ここでは、キャッピング層中のペロブスカイト半導体は、第1の層中のペロブスカイト半導体と接触し、そして
(c)第2の領域の上に前記第3の領域を配置すること
を含む。
【0331】
一般に、スカフォールド材料は、多孔質であり、前記第1の層は、スカフォールド材料の気孔内に配された前記ペロブスカイト半導体を含む。このように、典型的に、この実施例では、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップ(b)は、
(i)第1の領域の上にスカフォールド材料を配置すること、並びに
(ii)前記第1の層を生成するためにスカフォールド材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを配すること、及び前記キャッピング層を生成するために第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置することを含む。通常、スカフォールド材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを「配すること」及び第1の層の上へと前記ペロブスカイトを「さらに配置すること」を、単一ステップで、例えば、溶液堆積ステップによって又は気相堆積によって一緒に実行する。これらを、典型的には、溶液堆積によって実行する。
【0332】
典型的には、第1の領域の上にスカフォールド材料を配置するステップ(i)は、
第1の領域上へとスカフォールド組成物を配置すること、このスカフォールド組成物は、スカフォールド材料、1つ又は複数の溶剤、及び任意選択で結合剤を含み、並びに、
1つ又は複数の溶剤及び、存在するときには、結合剤を除去すること
を含む。
【0333】
結合剤は、典型的には、例えば、エチルセルロースなどの高分子結合剤である。
【0334】
このステップは、典型的には、第1の領域上へとスカフォールド組成物をスクリーン印刷すること、ドクタ・ブレーディングすること、スロット・ダイ・コーティングすること又はスピンコーティングすることを含む。
【0335】
膜は、典型的にはその後、いずれか、存在するすべての高分子結合剤を分解し、除去するために500℃前後の温度に加熱され(通常、30分間前後保持される)(高温シンタリング)、又は結合剤がなければ、典型的には120℃前後に加熱され、90分間前後保持される(低温シンタリング)。基板は、典型的には次に、ペロブスカイト溶液堆積に備えるために冷却された。
【0336】
このように、通常、第1の領域の上にスカフォールド材料を配置するステップ(i)は、スカフォールド組成物を加熱することをさらに含む。
【0337】
メソポーラス・スカフォールド層の低温処理に対して重要なことは、堆積中にはナノ粒子ペースト中に熱分解性高分子結合剤がないことである。代わりに、ナノ粒子を、1つ又は複数の溶剤中でコロイド状分散液から堆積する。低温では、粒子間の及び基板への付着は、表面水酸基の脱水によって進むと考えられる[T. Miyasaka et al., Journal of Electrochemical Society, vol. 154, p. A455, 2007]。発明者は、異なる粘性及び沸点を有する分散液中の2つの溶剤を混合することによって、気孔率を調整することが可能であることをやはり示した。
【0338】
このように、好ましい実施例では、スカフォールド組成物は、結合剤を含まず、スカフォールド組成物を加熱する温度は、150℃を超えない。
【0339】
このように、典型的には、第1の領域の上にスカフォールド材料を配置するステップ(i)は、
第1の領域上へとスカフォールド組成物を配置すること、このスカフォールド組成物は、スカフォールド材料及び1つ又は複数の溶剤を含み、並びに、
1つ又は複数の溶剤を除去すること、
を含む。
【0340】
通常、第1の領域の上にスカフォールド材料を配置するステップ(i)は、150℃を超えない温度にスカフォールド組成物を加熱することをさらに含む。典型的には、スカフォールド組成物を、60℃から150℃までの温度に加熱する。スカフォールド組成物を、適切な時間の間、例えば、すべての溶剤を除去するまで前記温度に加熱する。典型的には、スカフォールド組成物を、少なくとも30分間、より典型的には、少なくとも1時間の間、又は少なくとも90分間前記温度に加熱する。
【0341】
通常、第1の領域の上にスカフォールド材料を配置するステップ(i)を、第1の領域の上に配置したスカフォールド材料が、所望の厚さ、例えば、5nmから500nmまで、好ましくは、30nmから200nmまでの厚さを有するまで実行する。
【0342】
スカフォールド組成物において利用するスカフォールド材料を、本発明の光電子素子に関して上に規定したようにすることができる。多くの場合に、利用するスカフォールド材料は、チタニア又はアルミナである。
【0343】
スカフォールド組成物において利用する1つ又は複数の溶剤は、異なる粘性及び沸点を有する2つ以上の溶剤の混合物、例えば、異なる粘性及び沸点を有する2つの溶剤の混合物を含むことができる。2つ以上の溶剤の比率を変えることによって、第1の領域の上に配置するスカフォールド材料の気孔率を調整することが可能であることを、発明者が示したので、異なる粘性及び沸点を有する2つ以上の溶剤の使用は有利である。2つ以上の溶剤は、例えば、2つ以上の異なるアルコール、例えば、2つの異なるアルコールを含むことができる。このように、例えば、2つ以上の溶剤は、エタノール、プロパノール、ブタノール及びテルピネオールから、又はエタノール、イソ-プロパノール、三級ブタノール及びテルピネオールから選択される2つの溶剤を含むことができる。
【0344】
典型的には、前記第1の層を生成するためにスカフォールド材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを配するステップ及び前記キャッピング層を生成するために第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置するステップ(ii)を、キャッピング層が所望の厚さ、例えば、10nmから100μmまでの厚さ、又はより典型的には、10nmから10μmまでの厚さ、好ましくは、50nmから1000nmまで、又は例えば、100nmから700nmまでの厚さを有するまで行う。
【0345】
前記第1の層を生成するためにスカフォールド材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを配するため、及び前記キャッピング層を生成するために第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置するために、溶液堆積法を使用することができる。このように、いくつかの実施例では、前記第1の層を生成するためにスカフォールド材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを配するステップ及び前記キャッピング層を生成するために第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置するステップ(ii)は、
スカフォールド材料の上へと1つ又は複数の前駆物質溶液を配すること、この1つ又は複数の前駆物質溶液は、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト、又は1つ若しくは複数の溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含み、並びに
スカフォールド材料の気孔内に固体ペロブスカイトを及び第1の層の上に配置したペロブスカイトの固体キャッピング層を生成するために1つ又は複数の溶剤を除去すること、
を含む。
【0346】
ペロブスカイトを、本発明の光電子素子に関して本明細書において前に論じたペロブスカイトのうちのいずれかとすることができ、典型的には、本明細書において前に規定したような化学式(I)、(IA)又は(II)のペロブスカイトである。
【0347】
また、前記ペロブスカイトを生成するための1つ又は複数の反応物質は、ペロブスカイト化合物を合成するためのプロセスに関して上に論じたタイプの反応物質を含むことができる。
【0348】
このように、1つ又は複数の反応物質は、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したような、
(a)(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物、並びに
(b)(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物、
を含むことができる。
【0349】
より詳しくは、1つ又は複数の反応物質は、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物と、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物と
を含み、ここでは、第1のアニオン及び第2のアニオンは、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したような、ハロゲン化物アニオン又はカルコゲナイドアニオンから選択される異なるアニオンである。
【0350】
例えば、1つ又は複数の反応物質は、本発明の光電子素子において利用するペロブスカイト化合物を生成するためのプロセスに関して本明細書において前に規定したような、
(a)(i)金属カチオン及び(ii)第1のハロゲン化物アニオンを含む第1の化合物と、
(b)(i)有機カチオン及び(ii)第2のハロゲン化物アニオンを含む第2の化合物とを含み、ここでは、第1のハロゲン化物アニオン及び第2のハロゲン化物アニオンは、異なるハロゲン化物アニオンである。
【0351】
例えば、堆積しようとするペロブスカイトがCH3NH3PbI2Clであるときには、1つ又は複数の反応物質は、典型的には(a)PbI2及び(b)CH3NH3Clを含む。
【0352】
典型的には、前記第1の層を生成するためにスカフォールド材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを配するステップ及び前記キャッピング層を生成するために第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置するステップ(ii)は、
スカフォールド材料の上へと前駆物質溶液を配すること、この前駆物質溶液は、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを含み、並びに
スカフォールド材料の気孔内に固体ペロブスカイトを及び第1の層の上に配置したペロブスカイトの固体キャッピング層を生成するために溶剤を除去すること、
を含む。
【0353】
ペロブスカイトを、本発明の光電子素子に関して本明細書において前に論じたペロブスカイトのうちのいずれかとすることができ、典型的には、本明細書において前に規定したような化学式(I)、(IA)又は(II)のペロブスカイトである。
【0354】
通常、スカフォールド材料の上へと前駆物質溶液を配するステップ及び1つ又は複数の溶剤を除去するステップは、スカフォールド材料の気孔内に前記固体ペロブスカイトを及び第1の層の上に配置したペロブスカイトの前記固体キャッピング層を生成するために、スカフォールド材料の上へと1つ又は複数の前駆物質溶液をスピンコーティングすること又はスロット・ダイ・コーティングすることを含む。典型的には、コーティングを、不活性雰囲気中で、例えば、窒素下で行う。スピンコーティングを、例えば、1000から2000rpmまでの速度で実行することができる。スピンコーティングを、典型的には、30秒から2分間行う。
【0355】
スカフォールド材料の上へと1つ又は複数の前駆物質溶液を配するステップ及び1つ又は複数の溶剤を除去するステップを、ペロブスカイトの固体キャッピング層が、所望の厚さ、例えば、10nmから100μmまで、又はより典型的には10nmから10μmまで、又は例えば、50nmから1000nmまで、好ましくは100nmから700nmまでの厚さを有するまで行う。
【0356】
通常、第1の領域の上に前記第2の領域を配置するステップ(b)は、(iii)ペロブスカイトを加熱することをさらに含む。
【0357】
ペロブスカイトを加熱するステップは、通常、不活性雰囲気中で、例えば、窒素下でペロブスカイトを加熱することを含む。典型的には、ペロブスカイトを加熱する温度は、150℃を超えない。このように、ペロブスカイトを、30℃から150℃までの温度で加熱することができ、そして好ましくは40℃から110℃までの温度で加熱する。ペロブスカイトが所望の半導電性特性を有するまで、ペロブスカイトを前記温度で加熱することができる。通常、ペロブスカイトを、少なくとも30分間、好ましくは少なくとも1時間の間加熱する。いくつかの実施例では、ペロブスカイトを、所望の半導電性特性を得るまで加熱し、特性を、電導度及び抵抗率を測定するための定型の方法により測定することが可能である。ペロブスカイトを、いくつかのケースでは、色変化が観察されるまで加熱する、この色変化は、所望の半導電性特性が得られたことを示す。CH3NH3PbI2Clペロブスカイトのケースでは、色変化は、典型的には黄色から茶色である。
【0358】
通常、光電子素子を製造するための本発明のプロセスでは、第1の領域を第1の電極の上に配置する。つまり、第1の領域を、通常、既に第1の電極の上に配置する。
【0359】
光電子素子を製造するための本発明のプロセスは、どんな方法でも、
第1の電極の上に第1の領域を配置する
ステップを、さらに含むことができる。
【0360】
このステップを、一般に、第1の領域の上に第2の領域を配置するステップの前に行う。
【0361】
第1の電極及び第2の電極は、アノード及びカソードであり、その一方又は両方は、光の侵入を可能にするために透明である。第1の電極及び第2の電極の選択は、構造タイプに依存することがある。
【0362】
典型的には、第2の領域が上に配置される第1の電極は、酸化スズ、より典型的には、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)であり、これは、通常、透明材料又は半透明材料である。このように、第1の電極は、通常、透明又は半透明であり、典型的にはFTOを含む。通常、第1の電極の厚さは、200nmから600nmまで、より一般的には300nmから500nmまでである。例えば、厚さを400nmとすることができる。典型的には、FTOをガラス・シート上へとコーティングする。多くの場合に、FTOコーティングしたガラス・シートを、亜鉛粉末及び酸でエッチングして、必要な電極パターンを生成する。通常、酸はHClである。多くの場合に、HClの濃度は、約2モルである。典型的には、シートを洗浄し、次に通常、すべての有機残渣を除去するために酸素プラズマ下で処理する。通常、酸素プラズマ下での処理は、1時間以下、典型的には、約5分間である。第1の電極及び第2の電極を、本明細書においてどこかで記述したようにすることができ、例えば、第1の電極は、FTO、ITO又はAZOから構成されてもよい。
【0363】
第1の電極の上に第1の領域を配置するステップ及び第2の領域の上に第3の領域を配置するステップは、p型領域及びn型領域の堆積、すなわち、1つ又は複数のp型層の堆積及び1つ又は複数のn型層の堆積を含む。p型領域及びn型領域並びに1つ又は複数のp型層及び1つ又は複数のn型層を、本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。
【0364】
p型無機化合物又はn型無機化合物の層を堆積するステップは、例えば、化合物又はその前駆物質をスピンコーティングによって若しくはスロット・ダイ・コーティングによって、又は噴霧熱分解によって層を堆積することを含むことができる。例えば、チタニアの緻密な層を、エタノールなどの適切な溶剤中の(弱)酸性チタンイソプロポキシド・ゾルのスピンコーティングによって生成することができる。このようなゾルを、無水エタノール中でHClの溶液を用いてチタンイソプロポキシドと無水エタノールとを混合することによって準備することが可能である。スピンコーティングの後で、層を、典型的には150℃を超えない温度で乾燥する。任意選択で、緻密な層を、その後空気中でホットプレートの上で30分間500℃に加熱した。或いは、このような緻密な層を、噴霧熱分解堆積によって生成することができる。これは、通常、200から300℃までの温度で、多くの場合に、約250℃の温度で、典型的には、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)を含む溶液の堆積を含む。通常、溶液は、チタンジイソプロポキシドビス(アセチルアセトネート)及びエタノールを、典型的には1:5から1:20までの比率で、より典型的には、約1:10の比率で含む。
【0365】
このような方法を、本発明の光電子素子内のn型層及びp型層を生成するために、他のp型又はn型の無機材料に適用することが可能である。
【0366】
有機、分子又は高分子の正孔トランスポータ材料又は電子トランスポータ材料の堆積を、適切な溶剤中の材料の溶液のスピンコーティングによって実現することができる。p型正孔トランスポータ、例えば、スピロ-OMeTADを、典型的には、クロロベンゼン中に溶解する。通常、クロロベンゼン中のスピロ-OMeTADの濃度は、150から225mg/mlまでであり、より一般的には、濃度は約180mg/mlである。添加剤を、正孔トランスポータ材料又は電子トランスポータ材料に添加することができる。添加剤を、例えば、tBP、Li-TFSi、イオン性液体又は混合型ハロゲン化物を有するイオン性液体とすることができる。
【0367】
光電子素子を製造するための本発明のプロセスは、(d)第3の領域の上に第2の電極を配置することをさらに含むことができる。
【0368】
通常、第2の電極は、大きな仕事関数の金属、例えば、金、銀、ニッケル、パラジウム又は白金、典型的には銀を含む。通常、第2の電極の厚さは、50nmから250nmまで、より一般的には100nmから200nmまでである。例えば、第2の電極の厚さを150nmとすることができる。
【0369】
第2の電極を、典型的には、気相堆積によって第3の領域の上に配置する。多くの場合に、第2の電極を作るステップは、熱蒸着装置の中に正孔輸送材料を含む膜を設置することを含む。通常、第2の電極を作るステップは、高真空下でシャドー・マスクを通した第2の電極の堆積を含む。典型的には、真空は、10-4Pa(10-6mBar)である。
【0370】
第2の電極を、例えば、100から200nmまでの厚さの電極とすることができる。典型的には、第2の電極は、150nmからの厚さの電極である。
【0371】
或いは、光電子素子を製造するための本発明のプロセスを、反転型光電子素子を製造するためのプロセスとすることができる。
【0372】
従って、本発明は、光活性領域を含む反転型光電子素子を製造するためのプロセスを提供し、この光活性領域は、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域、及び、n型領域とp型領域との間に配置された、
開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
を含み、このプロセスは、
(a)第1の領域を設けること、
(b)第1の領域の上に第2の領域を配置すること、この第2の領域は、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含み、そして
(c)第2の領域の上に第3の領域を配置すること、
を含み、ここでは、
第1の領域は、少なくとも1つのp型層を含むp型領域であり、第3の領域は、少なくとも1つのn型層を含むn型領域であり、第1の領域を、第1の電極の上に配置する。
【0373】
典型的には、第1の電極は、透明材料又は半透明材料を含む。典型的には、第1の電極は、透明導電性酸化物、例えば、FTO、ITO又はAZOを含む。好ましくは、第1の電極は、FTOを含む。第1の電極を、ガラス基板の上に配置することができる。
【0374】
反転型光電子素子を製造するためのプロセス中のステップの各々を、光電子素子を製造するための本発明によるプロセスに関して本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。本プロセスにおいて使用した又は存在する構成要素の各々を、本発明による光電子素子に関して規定したようにすることができる。
【0375】
p型領域である第1の領域を、p型領域に関して本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。多くの場合に、第1の領域は、PEDOT:PSSの層を含む。p型領域を不溶化させるために、架橋を実行することができ、その結果、堆積プロセスがp型層を溶解するかもしれない場合であっても、p型領域は、第2の領域の堆積中には部分的にも溶解しない。時には、これゆえ、PEDOT:PSSの層は、架橋したPEDOT:PSSを含む。架橋することを、ルイス酸、例えば、Fe3+又はMg2+などの金属カチオンを使用して実行することができる。例えば、(a)は、
(i)PEDOT:PSSの層を含む第1の領域を設けること、及び
(ii)架橋したPEDOT:PSSを含むPEDOT:PSSの層を生成するためにFeCl3水溶液で層を処理すること、
を含むことができる。
【0376】
n型領域である第2の領域を、n型領域に関して本明細書においてどこかで規定したようにすることができる。多くの場合に、n型領域は、本明細書において規定したもののような、無機n型半導体の緻密な層を含む。典型的には、n型領域は、二酸化チタンの緻密な層を含む。いくつかの実施例では、n型領域は、[60]PCBMの層をさらに含む。
【0377】
これゆえ、いくつかの実施例では、(c)は、
(i)[60]PCBMの層を第2の領域の上に配置すること、及び
(ii)二酸化チタンの緻密な層を[60]PCBMの層の上に配置すること、
を含む。
【0378】
反転型素子では、第2の電極を、n型領域である第3の領域の上に配置することができる。従って、プロセスは、
(d)第3の領域の上に第2の電極を配置すること、
をさらに含むことができる。
【0379】
第2の電極を、第3の領域の上に直接配置することができる、又はさらに反転している層があってもよい。典型的には、第2の電極は、第3の領域と接触する。第2の電極を、本明細書においてどこかで規定したようにすることができ、典型的には、金属を含む。例えば、第2の電極は、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム又は白金、典型的にはアルミニウム、銀又は金を含むことができる。一実施例では、第2の電極は、銀、金又はアルミニウムを含む。例えば、n型領域がチタンの緻密な層及び[60]PCBMの層を含む場合には、第2の電極は、アルミニウムを含むことができる。第2の電極を、典型的には、本明細書において記述したものなどの任意の技術によって堆積することができるとはいえ、典型的には、真空堆積によって配置する。従って、第2の電極を、真空堆積によって配置することができる。或いは、光電子素子を製造するための本発明のプロセスを、タンデム接合又は多接合光電子素子を製造するためのプロセスとすることができ、これは、
(d)第3の領域の上にトンネル接合を配置すること、
(e)トンネル接合の上にさらなる光活性領域を配置すること、これは、本明細書において前に規定した光活性領域と同じである又は異なる、
(f)任意選択でステップ(d)及び(e)を繰り返すこと、並びに
(g)前のステップにおいて配置したさらなる光活性領域の上に第2の電極を配置すること、
をさらに含む。
【0380】
本発明によるタンデム接合又は多接合素子を製造するためのプロセスでは、さらなる光活性領域を、本発明によるタンデム光電子素子に関して本明細書において前にどこかで規定したようにすることができる。特に、さらなる光活性領域は、結晶シリコンの層を含むことができる、又はCIGS、CIS若しくはCZTSSeの薄膜を含むことができる。
【0381】
光電子素子を製造するための本発明のプロセスの好ましい実施例では、全体のプロセスを、150℃を超えない1つ又は複数の温度で実行する。
【0382】
光電子素子を製造するための本発明のプロセスでは、光電子素子を、本発明の光電子素子に関して本明細書において前にさらに規定したようにすることができる。
【0383】
本発明は、光電子素子を製造するための本発明のプロセスによって得ることが可能である光電子素子をさらに提供する。
【0384】
本発明を、下記の実例においてさらに図説する。
【0385】
実例
素子準備のための実験方法
高分子結合剤を有するAl2O3ペーストの準備
酸化アルミニウム分散液を、Sigma-Aldrichから購入し(水中に10重量%)、下記の方法で洗った:この分散液を、7500rpmで6時間遠心分離し、超音波プローブを用いて無水エタノール(Fisher Chemicals)中に再分散させ:超音波プローブを、2秒オン、2秒オフの周期で、5分間の合計超音波処理時間で動作させた。このプロセスを3回繰り返した。
【0386】
元々の分散液の10g(総量1gのAl2O3)毎に、下記を添加した:重量で10%、エタノール中に3.33gのα-ターピネオール及びSigma Aldrichから購入したエチルセルロース10cP及び46cPの50:50混合物の5g。各成分の添加の後で、混合物を2分間撹拌し、2秒オン、2秒オフ周期を使用して、1分間の超音波処理時間で超音波プローブを用いて超音波処理した。最後に、得られた混合物を、回転蒸発装置に導入して、過剰なエタノールを除去し、ドクタ・ブレーディング、スピンコーティング又はスクリーン印刷のときに必要な厚さを実現した。
【0387】
高分子結合剤を有するTiO2ペーストの準備
高分子結合剤を含有する二酸化チタン分散液(DSL 18NR-T)を、Dyesolから購入した。超音波プローブを用いて無水エタノール(Fisher Chemicals):DSL 18NR-Tの3:1重量比で、この分散液を希釈した;超音波プローブを、2秒オン、2秒オフの周期で、5分間の合計超音波処理時間で動作させた。
【0388】
高分子結合剤のないAl2O3ペーストの準備
酸化アルミニウム分散液を、Sigma-Aldrichから購入した(イソプロパノール中に重量で20%)。これを、イソプロパノールの16体積当量に希釈した。
【0389】
高分子結合剤のないTiO2ペーストの準備
二酸化チタン粉末(P25)を(Degussa)から購入し、20mg/mlでエタノール中に分散させた。これを、エタノールの16体積当量に希釈した。
【0390】
ヨウ化メチルアンモニウム前駆物質及びペロブスカイト前駆物質溶液の準備
無水エタノール(Sigma-Aldrich)中の33重量%のメチルアミン(CH3NH2)溶液を、無水エタノール200プルーフ(Sigma-Aldrich)中に窒素雰囲気下で、水中の57重量%のヨウ化水素酸(Sigma-Aldrich)と1:1モル比で反応させた。典型的な量は、24mlのメチルアミン、10mlのヨウ化水素酸、及び100mlのエタノールであった。ヨウ化メチルアンモニウム(CHNH3I)の結晶化を、回転蒸発装置を使用して得た。良好な結晶化を示す白色をした析出物を形成した。
【0391】
その後のペロブスカイト特性を変えるために、メチルアミンを、エチルアミン、n-ブチルアミン、三級ブチルアミン、オクチルアミン等などの他のアミンに置換することが可能である。加えて、別のペロブスカイトを形成するために、ヨウ化水素酸を、塩酸などの他の酸で置き換えることが可能である。
【0392】
前駆物質溶液を準備するために、ヨウ化メチルアンモニウム(CHNH3I)析出物及び塩化鉛(II)(Sigma-Aldrich)を、ジメチルホルムアミド(C3H7NO)(Sigma-Aldrich)中に30体積%で1:1モル比で溶解した。
【0393】
基板及び透明電極の洗浄及びエッチング
フッ素ドープした酸化スズ(F:SnO2/FTO)でコーティングしたガラス・シート(TEC 15, 15Ω/square、Pilkington USA)を、必要な電極パターンを与えるために、亜鉛粉末及びHCl(2M)を用いてエッチングした。シートを、その後、洗剤(水中に2%ヘルマネックス(Hellmanex))、脱イオン水、アセトン、エタノールを用いて洗浄し、最後に、すべての有機残渣を除去するために、5分間酸素プラズマ下で処理した。
【0394】
緻密なTiO2層の堆積
パターンを形成したFTOシートを、次に、エタノール中の弱酸性チタンイソプロポキシド(Sigma-Aldrich)ゾルをスピンコーティングによってTiO2の緻密な層でコートした。ゾルを、0.71:4の重量比のチタンイソプロポキシド:無水エタノールを0.07:4の重量比の2M HClの酸性溶液:無水エタノールと混合することによって準備した。スピンコーティング(速度=2000rpm、加速度=2000rpm/s、時間=60s)の後で、基板を、10分間ホットプレート上で150℃で乾燥した。任意選択で緻密な層を、その後、空気中でホットプレート上で30分間500℃に加熱した。
【0395】
薄いメソポーラス金属酸化物層の堆積
絶縁性金属酸化物ペースト(例えば、Al2O3ペースト)を、適切なメッシュ、ドクタ・ブレード高さ又はスピン速度を介して、スクリーン印刷、ドクタ・ブレード・コーティング又はスピンコーティングにより緻密な金属酸化物層の上面の上に塗布して、約100nmの厚さを有する膜を作った。膜を、その後、いずれか、高分子結合剤を分解させ除去するために500℃に加熱し、そこで30分間保持した(高温シンタリング)、又は結合剤がないときには、120℃に加熱し、そこで90分間保持した(低温シンタリング)。基板を、次に、ペロブスカイト溶液堆積に備えるために冷却した。
【0396】
ペロブスカイト前駆物質の溶液堆積及び半導電性ペロブスカイト薄膜の形成
30%の体積濃度のジメチルホルムアミド(ヨウ化メチルアンモニウム塩化鉛(II)(CH3NH3PbCl2I))中のペロブスカイト前駆物質溶液の40μlを、各々の準備したメソポーラス電極膜の上へと投与し、不活性窒素環境において60sの間1500rpmでスピンコートした。冷却の前に、コートした膜を、100℃に設定したホットプレート上に設置し、窒素中で60分間そのままにした。100度での乾燥手順中に、コートした電極は、明るい黄色から暗い茶色へと色を変え、半導電性特性を有する所望のペロブスカイト膜の形成を示した。
【0397】
ペロブスカイト前駆物質の蒸着堆積及び半導電性ペロブスカイト薄膜の形成
1:1モル比のPbI2及びCH3NH3Clを、15分間乳棒及び乳鉢を用いて粉砕して、バルク・ペロブスカイト粉末を形成した。これは、>12時間(12時間以上)にわたり窒素環境中で乾燥させた粉末を形成した。ペロブスカイト粉末のるつぼを、その後真空引きされる蒸着チャンバへと移送した。るつぼを、300℃までゆっくりと加熱した。ソース温度が100℃に達すると、シャッタを開いて、基板上への堆積を始めた。ヒータを定期的にオフに切り替えて、チャンバ内で10-2Pa(10-4mbar)の圧力を維持した。ほぼ100~300nmの薄膜が基板の上へと堆積するまで、蒸着を続けた。蒸着に続いて、蒸着させた材料を有する基板を、窒素環境中で1時間50℃に加熱した。
【0398】
ホルムアミジニウムカチオンを含むペロブスカイトの準備
アンモニウムイオンに対する代替として、ホルムアミジニウムカチオンを使用することができる。エタノール中のホルムアミジニウムアセテートの0.5Mモル溶液を3xモル過剰のヨウ素水素酸(FOI用)又は臭化水素酸(FOBr用)と反応させることによって、ヨウ化ホルムアミジニウム(FOI:formamidinium iodide)及び臭化ホルムアミジニウム(FOBr:formamidinium bromide)を合成した。室温で撹拌しながら酸を滴下し、次に、もう10分間撹拌し続けた。100℃で乾燥すると、黄白色の粉末が形成され、これを次に、使用する前に真空オーブン中で一晩中乾燥した。FOPbI3及びFOPbBr3前駆物質溶液を形成するために、FOIとPbI2又はFOBrとPbBr2とを、ml当たりそれぞれ0.88ミリモルで1:1のモル比の無水N,N-ジメチルホルムアミド中に溶解して、0.88Mのペロブスカイト前駆物質溶液を生み出した。FOPbI3zBr3(1-z)ペロブスカイト前駆物質を形成するために、混合物を、必要な比率でFOPbI3及びFOPbBr30.88M溶液から作った、ここでは、zは、0から1までの範囲である。特性評価用又は素子製造用の膜を、窒素を充満したグローブボックス中でスピンコートし、窒素雰囲気中で170℃で25分間アニールした。
【0399】
正孔トランスポータ堆積及び素子組み立て
使用した正孔輸送材料は、2,2(,7,7(-テトラキス-(N,N-ジ-メトオキシフェニルアミン)9,9(-スピロビフルオレン))(スピロ-OMeTAD,Lumtec、台湾)、これを、180mg/mlの典型的な濃度でクロロベンゼン中に溶解した。三級ブチルピリジン(tBP)を、tBP:スピロ-OMeTADの1:26μl/mgの体積対質量比で溶液に直接添加した。リチウム ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミン塩(Li-TFSI)イオン性ドーパントを、170mg/mlでアセトニトリル中に事前溶解し、次に、Li-TFSI溶液:スピロ-OMeTADの1:12μl/mgで正孔トランスポータ溶液に添加した。少量(80μl)のスピロ-OMeTAD溶液を、各々のペロブスカイトでコートした膜の上へと投与し、空気中で30sの間1500rpmでスピンコートした。膜を次に、熱蒸着装置内に設置し、そこでは200nm厚さの銀電極を、高真空(10-4Pa(10-6mBar))下でシャドー・マスクを通して堆積した。
【0400】
検討した素子変形例
素子構造の一般的な模式図を
図1aに示す。この素子を、任意の固体基板材料(ガラス、プラスチック、金属箔、金属メッシュ、等)の上に載置することが可能である。
図1aでは、金属電極のうちの少なくとも一方は、透明/半透明(例えば:ドープした又はドープしない金属酸化物、ペロブスカイト、高分子、薄い金属、金属メッシュ、等)でなければならない、ところが、反対の電極を透明/半透明又は反射性とすることが可能である。n型、p型又は真性とすることが可能な光吸収性ペロブスカイトを、それぞれ選択的電子抽出及び正孔抽出用の1つのn型半導電性層と1つのp型半導電性層(有機、無機、非晶質Si、ペロブスカイト、ハイブリッド有機/無機、等)との間に挟んだ。示した構造を反転させることが可能である。多接合セルを、繰返し構造を積層することによって製造することが可能である。
【0401】
本発明の素子のある種の実施例は、
図1bに示した具体的な構造を有する。使用されると、薄い金属酸化物層は、溶液処理したペロブスカイトに対して一般に浸透性であり、電子選択性コンタクトを有するペロブスカイトの直接接触を確実にする。ここで検討した準備変形例の各々を、表1にまとめる。
【0402】
【0403】
結果及び検討
低温でシンタ(sinter)したメソポーラスAl2O3の気孔率制御
ナノ粒子分散液において異なる粘性及び異なる蒸発速度を有する2つの溶剤を混合することによって、Al2O3のメソポーラス層の気孔率を制御することが可能である。分散液からの堆積及び溶剤除去の後で、Al2O3のメソポーラス合成薄膜と空気の屈折率は、2つの成分の体積分率、すなわち、気孔率に依存する。ターピネオール及びt-ブタノールの可変含有量を有する分散液をガラス・スライド上へのスピンコーティングによって形成した膜の屈折率を、体積当量として示した下記の表2に示す。屈折率が低いほど空気の体積分率が大きいこと、すなわち、より多孔質の膜を示す。一般に、副溶剤を添加することが、得られるメソポーラス膜の気孔率を増加させることを見出した。
【0404】
【0405】
X線回折
検討した異なる下層変形例に基づくペロブスカイト薄膜のXRDパターンを
図2aに示す。すべての試料を、無地のガラスの上に準備した、ここでは、緻密な層のない薄いメソポーラス酸化物を特定した。2つの110及び220ペロブスカイト・ピークは、このペロブスカイトの我々の前の実証と一致して顕著である[Lee et al., Science, Submitted 2012]。
図2bは、蒸着したときのペロブスカイトのXRDパターンを示す。混合型ハロゲン化物ペロブスカイトに対応するピークが、PbI
2から生じるピークに加えて存在する。
【0406】
UV-可視分光
検討した異なる下層変形例に基づくペロブスカイト薄膜についてのUV-可視パターンを
図3に示す。すべての試料を、無地のガラスの上に準備した、ここでは、緻密な層のない薄いメソポーラス酸化物を特定した。スペクトルは正規化した吸光度(ε=log
10[I
0/I
1])を示す。すべてのスペクトルは、ペロブスカイトの存在を確認する~800nmの波長のところで吸収発現を示した。PbI
2に対応するXRD回折ピークは蒸着型ペロブスカイトに関して観察されるが、UV-可視スペクトルは、光の大部分がペロブスカイトによって吸収されることを示す。スペクトルの形状は、このペロブスカイトの我々の前の実証と一致する[Lee et al., Science, Submitted 2012]。
【0407】
電流-電圧特性
検討した各変形例を代表するいくつかの素子の電流密度-電圧(J-V)特性を
図4に示す。これらの結果から抽出したパラメータのまとめを表3に示した。表面プロファイロメータを用いて測定したままの薄い酸化物層の厚さ(t
mesoporous)及びペロブスカイト・キャッピング層の厚さ(t
perovskite cap)もやはり表3に示した。厚さ測定に関して、試料を、無地のガラスの上に準備した、ここでは、緻密な層のない薄いメソポーラス酸化物を特定した。これらの厚さの比は、光吸収の大部分が正孔輸送材料とプレーナ・ヘテロ接合を形成するキャッピング層内で生じるであろうことを示唆する。
【0408】
【0409】
走査型電子顕微鏡観察
太陽電池断面のSEM顕微鏡写真を
図5(a)から
図5(f)に示す。断面に示された別々の層は、右から左へ:ガラス、FTO、緻密層、メソポーラス層、ペロブスカイト・キャッピング層、スピロ-OMeTAD及び銀である。メソポーラス層の平面像を
図6(a)から
図6(f)及び
図7(a)と
図7(b)に示す。Al
2O
3が、結合剤あり及びなしの両方を使用し、そして高温及び低温の両方でのシンタする場合に、像は、メソポーラス構造がペロブスカイトの浸透及び種付けを可能にすることを明確に示す。
図6(e)及び
図6(f)に示した緻密な層は、機器の分解能において特徴がないように見える。TiO
2を使用する場合には、結合剤を用いると、膜はメソポーラスに見える。しかしながら、結合剤がないと、ナノ粒子は、凝集し、サブ単原子層を形成する。
【0410】
結論
実例は、平坦なn型/ペロブスカイト吸収材/p型の構造をした光電子素子を作ることが可能であることを示す。ペロブスカイト光吸収材の成長を、溶液堆積から薄いスカフォールドの上に又はスカフォールドがなくても実現した。薄いシード層を組み込んだ素子を、150℃をまったく超えない温度で処理することが可能であり、これは、融通性のある及び/又はタンデム/多接合素子にとって重要である。加えて、ペロブスカイトを、バルク粉末からの蒸着によって形成することが可能であることを示した。
【0411】
反転型ヘテロ接合ペロブスカイト太陽電池
基板準備
フッ素ドープしたスズ酸化物(FTO)をコートしたガラス・シート(7Ω/square Pilkington)を、亜鉛粉末及びHCl(2モル)でエッチングして、必要な電極パターンを得た。シートを、次に洗剤(水の中に2%ヘルマネックス(Hellmanex))、脱イオン水、アセトン、メタノールで洗い、そして最後に、酸素プラズマ下で5分間処理して、最後に残ったごく微量の有機残渣を除去した。
【0412】
TiOx平面膜前駆物質溶液:
TiOx平面膜前駆物質溶液を、エタノール(>99.9% Fisher Chemicals)中の0.23Mチタンイソプロポキシド(Sigma Aldrich、99.999%)及び0.013M HCl溶液から構成する。この溶液を準備するために、チタンイソプロポキシドを、0.46Mでエタノール中に希釈した。別に、2M HCl溶液を、0.026M濃度を実現するまでエタノールで希釈した。最後に、酸性溶液を、激しく撹拌しながらチタン前駆物質溶液に滴下した。
【0413】
通常アーキテクチャ製造:
エッチングしたFTO基板を、2000rpmで60sの間TiOx平面膜前駆物質溶液をスピンコーティングし、その結果として500℃で30分間加熱することによって堆積したTiO2の緻密な層でコートして、化学量論的組成のアナターゼチタニアを形成した。次に、イソプロパノール中の約20nmのAl2O3ナノ粒子のコロイド状分散液をスピンコーティングし、続いて150℃で10分間乾燥することによって、メソポーラス型スカフォールドを堆積した。室温まで冷却した後で、ヨウ化メチルアンモニウム及びPbCl2のDMF溶液(3:1モル比)からスピンコーティングによって、ペロブスカイトを堆積した、これが100℃に45分間加熱した後でペロブスカイトを形成した。添加した80mM三級ブチルピリジン(tBP)及び25mMリチウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(LITFSI)を含むクロロベンゼン溶液中の7体積%スピロ-OMeTAD(2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトオキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン)を、1000rpmで45sの間スピンコーティングすることによって、正孔輸送層を堆積した。最後に、シャドー・マスクを通してのAgコンタクト電極の高真空中での蒸着で、素子を完成した。
【0414】
反転型アーキテクチャ製造:
PEDOT:PSS:
PEDOT:PSS(Clevios):イソプロパノール(>99.9%、Fisher Chemicals)の25:75体積%溶液を2000rpmで60sの間のスピンコーティングによって堆積したPEDOT:PSSの薄膜で、エッチングしたFTO基板をコーティングし、その後、150℃で20分間アニールする又は0.25M FeCl3水溶液中に5分間基板を浸すことによって架橋し、その後、脱イオン水の2つの連続した槽の中で洗い、最後に窒素で乾燥した。
【0415】
NiO:
両方とも0.1M濃度のニッケルアセテート四水和物及びモノメタノールアミンをエタノール中に、70℃のホットプレート上で4時間、空気中でシールしたバイアル中で撹拌して溶解することによって、NiO薄膜用のスピンコーティング前駆物質を準備した。溶液は均質であり深緑に見えた。
【0416】
V2O5:
イソプロパノール中のバナジウム(V)オキシトリイソプロポキシド(Sigma Aldrich)の1:35体積%溶液をスピンコーティングによって堆積したV2O5の薄膜を用いて、エッチングしたFTO基板をコートし、その後、500℃まで加熱して、結晶酸化バナジウム層を得た。
【0417】
ペロブスカイト及びn型コンタクト堆積:
冷却/乾燥の後で、ペロブスカイト前駆物質溶液を、2000rpmで20sの間スピンコートし、これを次に、100℃に45分間加熱して、構造を形成した。クロロベンゼン(無水、Sigma Aldrich)中の[60]PCBMの20mgmL-1溶液を1000rpmで45sの間スピンコーティングによって、電子選択性コンタクトを堆積した。TiOx平面膜前駆物質溶液を次に3000rpmで60sの間スピンコートし、膜を130℃で10分間アニールした。最後に、シャドー・マスクを通してのAlコンタクト電極の高真空中での蒸着で、素子を完成した。
【0418】
結果及び検討
ペロブスカイト系薄膜光起電力素子が最近報告され、金属カソードを介して正孔を集め、FTOアノードを介して電子を集める固体色素増感太陽電池から発展したアーキテクチャを有する(Ball, J. M.; Lee, M. M.; Hey, A.; Snaith, H. Low-Temperature Processed Mesosuperstructured to Thin-Film Perovskite Solar Cells, Energy & Environmental Science 2013)。この構成では、ペロブスカイト膜の形成を助けるために、メソポーラス・アルミナの薄膜を、緻密なTiO2でカバーしたFTO基板を覆って堆積し、次に、有機正孔トランスポータを形成した構造を覆って堆積して、正孔選択性コンタクトを設ける。しかしながら、上部金属カソードを介して正孔を集めるので、この構成は、タンデム太陽電池において用途を制限され、小さなバンド・ギャップの無機下部セルを含む「ワイド・バンドギャップ」ペロブスカイトを使用することによって、当面の改善を実現することが可能であり(Beiley, Z. M.; McGehee, M. D. Modeling low cost hybrid tandem photovoltaics with the potential for efficiencies exceeding 20%, Energy & Environmental Science 2012, 5, 9173-9179)、これは一般に、電子が上部金属コンタクトにおいて集められる「基板」構成に作られる。
【0419】
ブレンド材用の正孔選択性コンタクトとして有機光電池において使用する典型的な材料は、PEDOT:PSS、V
2O
5及びNiOであり、一方で通常は、PC
60BM及びより最近ではポリ[(9,9-ビス(3’-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル)-2,7-フルオレン)-アルト-2,7-(9,9-ジオクチルフルオレン)](PFN)を電子アクセプタとして使用する。これらの材料が完成素子において機能するかどうかを判断するために、これらの中間層への電荷移動が可能であるかをチェックするための優れた第1ステップは、すべての有機太陽電池において定型になってきているものと同様に、定常状態PL消光(quenching)効率を測定することである。このデータを
図9に示し、そして結果を表4にまとめる。この研究において選択したすべてのp型層が、モデル・スピロ-OMeTAD系よりもさらに効率的にペロブスカイトPLを消光することが明瞭に分かり、99.87%の消光効率のPEDOT:PSS及びV
2O
5に関して類似の値を有する。すべてのn型層は、45%定常状態消光効率しか示さないモデルTiO
2系よりも著しく高い消光率を示した。PFN中間層を用いて製造した太陽電池が極端に悪い光起電力性能をもたらしたので、この研究において製造したすべてのセルは、n型コンタクトとしてスピンコートしたPC
60BM層を利用する。
【0420】
【0421】
p型コンタクトとしてのPEDOT:PSS
両方の光吸収材及び電荷トランスポータとしてペロブスカイトを使用する反転型アーキテクチャの第1の実例は、p型コンタクトとして薄いPEDOT:PSS層を、n型コンタクトとしてPC
60BM及び緻密なTiO
xの二重層を利用する。空気中でこれらの構造を処理することを可能にするために、TiO
xの上部中間層は、上部Alアノードとの良いコンタクトを実現するために必要であった。最適化した構造の断面SEM写真を、
図10に示す。ペロブスカイト構造の一様なカバレッジは、最適な光起電力素子を製造するために本質的であり、素子が上に形成される基板によって激しく影響を受ける。
図11b)及び
図11d)に示したように、アニールしたPEDOT:PSS下層の上に組み立てるときに、ペロブスカイトの30μmの長さを超えるマクロ結晶が形成される。これは層を通る電荷輸送に関しては有利であるはずであるが、むしろ大きなミクロン・サイズのギャップが結晶間に存在し、これが、素子性能にとっては有利でないPC
60BMとPEDOT:PSS下層との間の直接コンタクトを許容する。PEDOT:PSSは、DMFに可溶性であり、この理由のために、DMF中でペロブスカイト前駆物質を堆積するときに、層の再溶解を避けるために、0.25M FeCl
3水溶液中へと浸すことによってPEDOT:PSSを架橋している。PEDOT:PSSを架橋すると、驚くことに、得られるペロブスカイト膜カバレッジは、著しく増加する、とはいえ、この材料に関する平均結晶サイズ/フィーチャ・サイズは、かなり減少している。得られたカバレッジ及び結晶サイズを、
図11a)及び
図11c)に示し、SEM像から直接推定し、アニールしたPEDOT:PSS膜に関して80±1%であり、架橋した膜に関して97±1%であることを見出した。
【0422】
得られた素子の性能を比較すると、
図12a)に示したように、架橋したPEDOT:PSSの上に処理した素子が0.8V前後の開回路電圧を示す一方で、アニールしたPEDOT:PSS上の素子は、約0.64Vを実現するだけであることを見出した。これは、ペロブスカイト膜カバレッジの改善のためにPCBM層中の電荷とPEDOT:PSS層中の電荷との間の電荷再結合の減少と一致する。架橋したPEDOT:PSSを採用した素子は、17.2mAcm
-2を示すアニールしたPEDOT:PSS素子と比較して16.2mAcm
-2のわずかに減少した短絡電流を示す、けれども差は小さく、実験変動の範囲内である。最後に、最適素子の電力変換効率は6.7%を超える値に達し、5.6%に達するアニールしたPEDOT:PSS素子の性能をひどく上回る。
【0423】
p型コンタクトとしてのV
2O
5及びNiO
V
2O
5及びNiOの両者は、高効率且つ安定な有機光起電力素子用に現在使用している通常のp型材料である。ここで、発明者は、完全な結晶の金属酸化物層を確実にするための500℃における引き続くシンタリング・ステップを有する、FTOの上に適切な前駆物質溶液のスピンコーティングによって素子を製造した。
図13のSEM写真に見ることが可能であるように、ペロブスカイト溶液の表面カバレッジが、この材料の問題点であり得る。
【0424】
これらの層を組み込んだ素子の光起電力性能を、
図14に示す。
【0425】
通常アーキテクチャとの比較
最後に、正孔受容層としてPEDOT:PSSを及び電子抽出層としてPC
60BMを組み込んでいるチャンピオン反転型素子を、
図15b)のTiO
2電子受容層及び正孔輸送層としてスピロ-OMeTADから構成した通常アーキテクチャ素子に対して比較する。両方の方式とも、17.5mAcm
-2を超える驚くべき短絡電流及び0.9Vを超える高い開路電圧を実現する。通常アーキテクチャに関する11.8%及び反転型素子に関する7.54%の電力変換効率における主な違いは、後者の低いフィル・ファクタである。これは、
図5.a.に示したようなPEDOT:PSSとPCBMとの間のリーク問題又は直列抵抗損失のいずれかにおそらく起因し、雰囲気空気条件において素子を処理することができるようにTiO
xオーバーレイヤを使用することの必要性におそらく起因する。
【0426】
ここに示し開示した素子は、特に、使用する材料が有機光電池産業用に現在一般に利用され且つ大量生産され、そしてこれゆえ大量生産可能なシステムの開発を大いにスピード・アップするはずであるので、アーキテクチャを設計するための完全に新しい取り組みを提案する。
【0427】
結論
正孔がFTOを介して集められる反転型素子構造は、無機光起電力下部セルを使用するタンデム用途にとって必要である。ここでは、半導電性ペロブスカイト吸収材並びにPEDOT:PSS及び[60]PCBMの形態での選択性n型コンタクト及びp型コンタクトに基づく低温、雰囲気空気及び溶液処理可能な光起電力セルを示す。7.5%の電力変換効率をこれらの反転型構造に関して実現した。ある意味では、これは、幅広い可能性のある素子構成に対するペロブスカイト薄膜技術の多様性を実証し、同等に重要なことには、これが有機光電池コミュニティによるペロブスカイト技術の適用に対するすべての障害を取り除く。
【0428】
2ソース気相堆積
基板準備
基板準備プロセスを空気中で行った。Zn金属粉末及びミリQ水に希釈した2M HClを用いてエッチングすることによって、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)でコートしたガラスをパターニングし、次に、ミリQ水に希釈したヘルマネックスの2%溶液を用いて洗浄し、ミリQ水、アセトン及びエタノールを用いてリンスし、清浄な乾燥空気を用いて乾燥した。酸素プラズマで、その後、10分間処理した。TiO2の緻密な層を、エタノール中のチタンイソプロポキシドの酸性溶液でスピンコートし、次に、150℃で10分間、そして次いで500℃で30分間シンタリングした。
【0429】
気相堆積
使用したシステムは、別々に有機ソース及び無機ソースをうまく管理するデュアル・ソース蒸着法である。蒸着装置は、窒素を充満した乾燥グローブボックス内に収納したセラミックるつぼ(OLEDソース)を有するカート・ジェイ・レスカー・ミニ・スペクトロ堆積システム(Kurt J. Lesker Mini Spectros Deposition System)(
図18)であった。これゆえ、すべてのプロセスは、無酸素環境において作業される。作業チャンバは、蒸気粒子が基板まで直接移動することができる5E-4Pa(5E-6mbar)の圧力下で運転するように設計される。試料を、ソース粉末を含むるつぼの上方のホルダ中に表面を下にして保持した。相互に干渉せずに別々に各ソースの堆積速度をモニタするために、2つの結晶センサ・モニタを、るつぼのほんの10cm上方に設置した。これらの測定値は、ソース化学薬品への加熱温度を調節するためのフィードバックとして利用される。全堆積厚さを測定するために利用することが可能であるもう1つの結晶センサを、基板ホルダの近くで利用できる。
【0430】
ツーリング因子測定
ソースからモニタまでの距離が、ソースから基板までの距離とは異なるので、各ソースのツーリング因子(センサ上に堆積した材料の試料上に堆積した材料に対する比)を個別に校正した。CH3NH3Iの密度を、入手できないので1g/cm3と仮定した。設定値及び結果を表5に示す。
【0431】
【0432】
蒸着プロセス中の有機ソースCH3NH3Iの不安定さのために有機ソースを一定に蒸着させることが難しく、その堆積速度が設定値から+/-20%までの変動を有することに、留意すること。物理的厚さを、ビーコ・デクタック(Veeco DekTak)150膜厚プローブによって測定した。
【0433】
デュアル・ソース・ペロブスカイト堆積
発明者は、デュアル・ソース堆積システム内での蒸着によって「平面接合」ペロブスカイト太陽電池を検討することを目的とした。蒸発させたペロブスカイトを、メソポーラス層なしに直接TiO
2の緻密な層の上面の上に堆積することが可能である(
図20b及び
図20c)。
【0434】
有機ソースCH3NH3I及び無機ソースPbCl2を、ほぼ200mg及び100mgで計量し、2つのるつぼにそれぞれ装填した。試料を基板ホルダへと表面を下にして挿入した。一旦、チャンバ内の圧力を5E-4Pa(5E-6mbar)まで真空引きすると、2つのOLEDソースのシャッタを、ソースを加熱しながら開いた。一旦、2つのソースが設定値に達すると、一様な薄膜を得るためにホルダを回転させて基板のシャッタを開いた。
【0435】
蒸着が完了した後では、試料の色が、2つのソースの組成に対応して変化した。すべての試料を次にホットプレートに設置して、100℃で50分間乾燥し、正孔トランスポータ層をスピンコートする前にペロブスカイト結晶を結晶化させた。
図21は、ホットプレート上でペロブスカイト結晶をアニールした後の表面像を示す。これまでの実験では、添加した三級ブチルピリジン(tBP)及びリチウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(Li-TFSI)を含むクロロベンゼン溶液中の7%スピロ-OMeTADを、正孔トランスポータとして使用し、2000rpmで45sの間スピンコートした。最後に、Agコンタクト電極の蒸着で、素子を完成した(
図20a)。
【0436】
蒸着したペロブスカイトを従来のスピンコートしたペロブスカイトと比較すると、蒸着型ペロブスカイトは、正孔が少ない状態のより一様で平坦な表面を有する(
図21)。蒸着型ペロブスカイトの十分なカバレッジは、TiO
2の緻密な層と十分に接触するだけでなく、正孔輸送層を緻密な層から分離する。これは、システムの至る所での光電流並びに電圧に確かに役立つであろう。
【0437】
素子特性評価
実験は、一定の全厚さのもとで、CH3NH3IのPbCl2に対する組成をモル比で4:1から16:1まで変えることで始めた。一旦、組成を最適化すると、最適組成のもとでの所望の厚さを検討した。
【0438】
最高の性能は、堆積速度をCH3NH3Iに対して5.3Å/sに、且つPbCl2に対して1Å/sに設定することで、13%の電力変換効率が実現され、これは、ツーリング因子を考慮した場合に、理想的にはモル比で9.3:1を与えるはずである。しかしながら、上記のように、有機ソースCH3NH3Iの蒸着が常に変動を有するので、CH3NH3I用のセンサ1において示された最終厚さは、予想された42.4kÅの代わりに44.4kÅであった。言い換えると、CH3NH3Iについての実際の平均堆積速度は、設定値5.3Å/sよりはむしろ5.6Å/sであるはずである。このケースでは、9.8:1のCH3NH3IのPbCl2に対するモル比のもとで、膜を実際に堆積し、これはデクタック・プローブによって測定した230nmの物理的な厚さを与えた。
【0439】
最高の性能は、
図22に示したように、21.47mA/cm
2の短絡光電流J
sc、1.07ボルトの開路電圧V
oc、及び0.67のフィル・ファクタ(FF)を与え、15.36%に至るまでの電力変換効率をもたらした。100mW・cm
-2照度での人工的なAM1.5G太陽光の下で、電流-電圧特性を測定し(2400シリーズ・ソースメータ(SourceMeter)、Keithley Instruments)、太陽電池を、典型的に0.076cm
2である活性領域を規定するための金属アパーチャでマスクし、すべてのエッジ効果を最小にするために光タイトな試料ホルダ内で測定した。
【0440】
蒸着した膜中の含有量を規定するために、蒸着型ペロブスカイト表面のXRDパターンを測定し、次に、スピンコート型ペロブスカイトの従来のXRDパターン及び
図23に示したような他の本質的な化学物質と比較した。XRDパターンによれば、蒸着型ペロブスカイトがDMF中のCH
3NH
3I及びPbCl
2前駆物質から処理した溶液処理ペロブスカイト膜(K330と名付ける)に対してほとんど同じであることを明確に示し、これは、蒸着型ペロブスカイトがスピンコート型ペロブスカイトと同じ結晶構造を有することを示す。
【0441】
図24の最後の測定は、200nmの蒸着型膜とスピンコート型膜との間の吸光度の比較である。2つの200nm「平面接合」蒸着型ペロブスカイトの吸光度は、200nm「平面接合」スピンコート型ペロブスカイトと類似の吸光度の形状を有するが、蒸着型ペロブスカイトは、吸光度のはるかに大きな単位を有する。
【0442】
結論
ここでは、15%を超える電力変換効率を有する平面接合太陽電池に関する蒸着型ハイブリッド無機-有機ペロブスカイトが、CH3NH3I及びPbCl2の堆積速度並びに基板上の堆積厚さを適切に制御することによって実証された。ペロブスカイト太陽電池を製造するために蒸着技術を利用することを実現することは、化学薬品を溶解するための適切な溶液を見出す溶液プロセスの限界を克服し、このように、ハイブリッド無機-有機太陽電池の商業化にやはり役立つ。
【0443】
一般に、大きなエキシトン結合エネルギーを不可避的に有する層状のペロブスカイトを作ることとは反対に、ペロブスカイト中の3D結晶構造を維持することが、有利であると考えられる(Journal of Luminescence 60&61 (1994) 269 274)。ペロブスカイトのバンド・ギャップを調整することができることも、やはり有利である。電子軌道及び結晶構造の両方に直接影響する金属カチオン又はハロゲン化物のいずれかを変えることによって、バンド・ギャップを変えることが可能である。或いは、(例えば、メチルアンモニウムカチオンからホルムアミジニウムカチオンへと)有機カチオンを変えることによって、結晶構造を変えることが可能である。しかしながら、ペロブスカイト結晶内に適合させるために、下記の幾何学的条件を満足しなければならない:
【数1】
ここでは、R
A,B,&Xは、ABXイオンのイオン半径である。発明者は、ホルムアミジニウムカチオン(FO:formamidinium)が、FOPbBr
3(正方晶結晶)ペロブスカイト又はFOPbI
3(立方晶結晶)ペロブスカイト及びこれらの混合型ハロゲン化物ペロブスカイトにおいて3D結晶構造のペロブスカイト構造を実際に形成することを予期せずに発見した。
【0444】
2ステップ・ペロブスカイト層製造
基板準備
Zn粉末及び2M HClの混合物を使用してフッ素ドープした酸化スズでコートしたガラス基板(FTO、TEC7 Pilkington Glass)の上に、電極パターンをエッチングした。これらを次に、順次、ハルマネックス(Hallmanex)、脱イオン水、アセトン、プロパン-2-オル、及びO2プラズマ中で洗浄した。
【0445】
電子選択性層堆積
TiO2の薄い(ほぼ50nm)層は、電子選択性層として働く。添加したHClを含むエタノール中にTi-イソプロポキシドを含有するフィルタ処理した溶液(0.45μmPTFEフィルタ)からスピンコーティング(速度=2000rpm、加速度=2000rpm/s、時間=60s)によって、基板の上へとTiO2の薄い層を堆積した。これらの膜を、500℃に30分間加熱した。
【0446】
PbI2及びPbCl2の蒸着
ほぼ2Å/sの速度でほぼ10-4Pa(10-6mbar)の圧力で基板の上へとシャドー・マスクを通して熱蒸着によって、PbI2及びPbCl2の薄膜(ほぼ150nm)を堆積した。蒸着温度は、それぞれPbI2及びPbCl2に対してほぼ270℃及び310℃であった。
【0447】
浸漬コーティング・ペロブスカイト変換
浸漬コーティングのために、窒素を充満したグローブボックス内で無水プロパン-2-オル中のヨウ化メチルアンモニウムの20mg/ml溶液中へと、PbI2又はPbCl2中で事前コートした基板を浸した。浸漬時間は、すべての素子に対して10分で一定であった。浸漬コーティングの後で、基板を、120℃で窒素雰囲気中で10分間アニールした。浸漬時間は、10秒から2時間までの範囲であってもよい。この特許において与えた実例に関して、浸漬時間は、10分であった。
【0448】
正孔輸送材料堆積
窒素を充満したグローブボックス中で、添加剤として80モル%三級ブチルピリジン(tBP)及び30モル%リチウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)イミド(Li-TFSI)を含有する80mMクロロベンゼン溶液からスピンコーティング(速度=2000rpm、加速度=2000rpm/s、時間=60s)によって、正孔輸送材料、2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-pメトオキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD)を堆積した。
【0449】
上部電極堆積
ほぼ2Å/sで150nmの厚さに熱蒸着(圧力ほぼ6.7×10-4Pa(5μTorr))によって、上部銀電極を堆積した。
【0450】
素子電流-電圧特性評価
太陽電池の性能を測定するために、NREL校正したKG5フィルタ処理したシリコン基準セルを使用して、106.5mW/cm
2当量の照度の人工的なAM1.5を与えるために、校正したクラスAAB ABET人工太陽光源を用いて、人工的なAM1.5太陽光を発生した。ミスマッチ因子を、300から900nmの間で1.065になると計算した、これはKG5フィルタ処理したシリコン基準セル及びペロブスカイト試験セルの両方の動作範囲を超える。電流-電圧曲線を、ソースメータ(Keithley 2400、USA)を用いて記録した。太陽電池の活性領域(0.0625cm
2)を規定する金属アパーチャを用いて、太陽電池をマスクした。素子の電流密度-電圧特性を
図32(光活性層としてPbI
2(破線)及び光活性層として浸漬コーティング後のCH
3NH
3PbI
3(実線)について)、及び
図33(光活性層としてPbCl
2(破線)及び光活性層として浸漬コーティング後のCH
3NH
3PbI
3-xCl
x(実線)について)に示す。
【0451】
X線回折
パナリティカル・エクスパート・プロ(Panalytical X’Pert Pro)x線回折装置を使用して、銀電極のない素子(FTOコートしたガラス、TiO
2、光活性層、スピロ-OMeTAD)から、X線回折(XRD:X-ray diffraction)スペクトルを得た。結果を
図31に示す。
【0452】
走査型電子顕微鏡観察
日立(Hitachi)S-4300を使用して、銀電極のない素子(FTOコートしたガラス、TiO
2、光活性層、スピロ-OMeTAD)から、走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning electron microscopy)像を得た。電子顕微鏡写真を、
図29((a)PbCl
2及び(b)浸漬コーティング後のCH
3NH
3PbI
3-xCl
xについて)、及び
図30((a)PbI
2及び(b)浸漬コーティング後のCH
3NH
3PbI
3について)に示す。
【0453】
結果及び検討
2ステップ法は、グレイジング(glazing)産業において既に容易に利用可能な経済的な技術を使用してペロブスカイトの一様な膜の製造を可能にする。金属ジハロゲン化物の初期の堆積の後で、有機ハロゲン化物による金属ジハロゲン化物の浸透によって、ペロブスカイトの一様で平坦な膜を生成することができる。
図31は、(a)PbCl
2、(b)CH
3NH
3PbI
3-xCl
x、(c)PbI
2、及び(d)CH
3NH
3PbI
3の薄膜のX線回折スペクトルを示す。浸漬コーティング後では、2つの前駆物質からの膜は、前駆物質格子に対応するピークの相対強度の減少及びペロブスカイト格子の相対的な増加(前駆物質xrdスペクトルにおける欠如)を示し、ペロブスカイトへの前駆物質膜の顕著な変換を示す。
【0454】
図29は、下から上へ、ガラス基板、FTO、TiO
2電子選択性層、光活性層、スピロ-OMeTADを示す素子の断面走査型電子顕微鏡写真を示す。光活性層は、(a)PbCl
2、及び(b)浸漬コーティング後のCH
3NH
3PbI
3-xCl
xである。
図30は、下から上へ、ガラス基板、FTO、TiO
2電子選択性層、光活性層、スピロ-OMeTADを示す素子の断面走査型電子顕微鏡写真を示す。光活性層は、(a)PbI
2、及び(b)浸漬コーティング後のCH
3NH
3PbI
3である。両方の事例では、浸漬コーティングによって生成されたペロブスカイトは、相対的な均一性を示す。
【0455】
素子の電流密度-電圧特性を、
図32及び
図33に示す。
図32では、活性層としてPbI
2を使用して作った素子(破線)及びプロパン-2-オル中のヨウ化メチルアンモニウムの溶液に浸漬コーティングすることによって、蒸着型PbI
2をCH
3NH
3PbI
3へと変換した素子(実線)について、特性を示す。PbI
2に関する性能パラメータは、J
sc=1.6mA/cm
2、PCE=0.80%、V
oc=0.97V、FF=0.57である。CH
3NH
3PbI
3に関する性能パラメータは、J
sc=5.3mA/cm
2、PCE=2.4%、V
oc=0.82V、FF=0.61である。
図33では、活性層としてPbCl
2を使用して作った素子(破線)及びプロパン-2-オル中のヨウ化メチルアンモニウムの溶液に浸漬コーティングすることによって、蒸着型PbCl
2をCH
3NH
3PbI
3-xCl
xへと変換した素子(実線)についての電流密度-電圧特性を示す。PbCl
2に関する性能パラメータは、J
sc=0.081mA/cm
2、PCE=0.006%、V
oc=0.29V、FF=0.27である。CH
3NH
3PbI
3-xCl
xに関する性能パラメータは、J
sc=19.0mA/cm
2、PCE=7.0%、V
oc=0.8V、FF=0.49である。両方のケースでは、実行可能な素子が、この2ステップ法によって製造されることを示した。
【0456】
電荷キャリア拡散長推定
光吸収から生成され、薄い固体膜から効率的に集められる電荷(電子又は正孔のいずれか)に関して、電荷種のライフタイム(電荷種が反対に帯電した種と再結合する前に生存する時間)は、膜を横切って拡散し、電極中へと流れるまでにかかる時間よりも長くなければならない。拡散係数(De)とライフタイム(τ
e)との積を、下記の拡散長(L
D)
【数2】
を推定するために使用することが可能である。
【0457】
光励起した結合電子-正孔対(エキシトン)の拡散長を決定するために、フォトルミネッセンス(PL:photoluminescence)消光を有機半導体でうまく以前に利用してきている。エキシトン消光層が存在するとき又は存在しないときに固体薄膜を単に製造し、拡散方程式にフォトルミネッセンス減衰をモデリングすることによって、エキシトン・ライフタイム、拡散速度及び拡散長を正確に決定することが可能である。スピロ-OMeTADの上部正孔消光層を有する270nm厚の混合型ハロゲン化物吸収材層の断面SEM像を
図36に示す。
【0458】
PL減衰ダイナミックスを、1-D拡散方程式(式1)に従って膜中の励起の数及び分布n(x,t)を計算することによってモデル化する、
【数3】
ここでは、Dは拡散係数であり、k(t)は何も消光材材料がないときのPL減衰率である。PMMAでコートしたペロブスカイト層から測定したPLデータに伸長型指数関数的減衰をフィッティングすることによって、全減衰率kを決定した。界面に達するすべての光生成キャリアが消光されることを仮定し、境界条件n(L,t)=0を与えることによって、消光材層の効果を含ませ、ここでは、ガラス/ペロブスカイト界面のところでx=0であり、Lはペロブスカイト膜厚である。試料のガラス基板側から試料を光励起するので、光励起の初期分布を、n(x,0)=n
0exp(-αx)によって与えた、ここでは、αは吸収係数である。種の拡散長L
Dを次に
【数4】
から決定し、ここでは、τ=1/kは、消光材がないときの再結合ライフタイムである。自由電荷が光励起で主に作られる場合には、PL減衰は、電荷キャリアの減少を表し、正孔又は電子に対する拡散係数を、どの消光層を利用するかに応じて推定することが可能である。拡散モデル・フィッティングからの結果を、
図34及び
図35に示し、パラメータを表6にまとめた(Dは拡散定数であり、L
Dは拡散長である)。
【0459】
【0460】
三ヨウ化物ペロブスカイト(CH
3NH
3PbI
3)及び混合型ハロゲン化物ペロブスカイト(CH
3NH
3PbI
3-xCl
x)を
図37に比較し、これは、PMMAでコートした混合型ハロゲン化物有機鉛三ハロゲン化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbI
3-xCl
x(黒四角)及び有機鉛三ヨウ化物ペロブスカイト膜CH
3NH
3PbI
3(灰色四角)についてのフォトルミネッセンス減衰を示す。ライフタイムτ
eは、初期強度の1/eに達するまでにかかる時間として見積もった。
【0461】
驚くことに、混合型ハロゲン化物ペロブスカイト中の電子及び正孔の両方についての拡散長は、1μmよりも大きく、これは、100から200nmの吸収深さよりも著しく長い。これは、この特定のペロブスカイト吸収材を有するメソ構造又はナノ構造を必要としないはずであることを示す。三ヨウ化物ペロブスカイトCH3NH3PbI3膜は、電子及び正孔の両方について100nm前後の短い拡散長を有する。混合型ハロゲン化物ペロブスカイトの大きな拡散長は、100nmを超える厚さを有するペロブスカイトの層を有する光起電力素子を作ることを可能にし、これは優れた素子特性を示す。
【0462】
方法
ペロブスカイト前駆物質準備:
エタノール中の33重量%のメチルアミン(Sigma-Aldrich)を水中の57重量%のヨウ化水素酸(HI:hydroiodic acid)と室温で反応させることによって、ヨウ化メチルアミン(MAI:methylamine iodide)を準備した。撹拌しながらHIを滴下した。100℃で乾燥すると、白色粉末が形成され、これを、真空オーブン中で一晩乾燥させ、使用前にエタノールから再結晶化させた。CH3NH3PbI3-xClx又はCH3NH3PbI3前駆物質溶液を形成するために、最終濃度0.88M塩化鉛/ヨウ化鉛及び2.64Mヨウ化メチルアンモニウムを用いて、MAIのPbCl2/PbI2に対する3:1モル比で無水N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中に、ヨウ化メチルアンモニウム及び塩化鉛(II)(Sigma-Aldrich)又はヨウ化鉛(II)(Sigma-Aldrich)のいずれかを溶解した。
【0463】
基板準備:
吸収、TA及びPL測定用のガラス基板を、順次、2%ハルマネックス洗剤、アセトン、プロパン-2-オル及び酸素プラズマ中で洗浄した。素子を、フッ素ドープした酸化スズ(FTO)コートしたガラス(Pilkington、7Ω/square)の上に製造した。始めに、測定ピンとの接触でシャントすることを防止するために、2M HCl及び亜鉛粉末を用いてFTOをエッチングすることによって、アノード・コンタクトの下の領域から、FTOを除去した。基板を、上記のように洗浄し、プラズマ-エッチングした。エタノール中のチタンイソプロポキシドの弱酸性溶液をスピンコーティングによって、緻密なTiO2の正孔ブロッキング層を堆積し、500℃で30分間アニールした。スピンコーティングを、2000rpmで60秒間行った。
【0464】
ペロブスカイト堆積:
分光測定用のペロブスカイト層を形成するために、非化学量論的(non-stoichiometric)前駆物質を、空気中で2000rpmで基板の上にスピンコートした。CH3NH3PbI3-xClxに対しては、前駆物質をそのまま使用し、CH3NH3PbI3に対しては、前駆物質溶液のDMFに対する1:1の比で、前駆物質をDMF中に希釈した。スピンコーティングの後で、CH3NH3PbI3-xClx膜を100℃で45分間アニールし、CH3NH3PbI3を150℃で15分間アニールした。次に、上部消光材を、下記の条件:両者とも1000rpmでスピンコートした10mg/mlのポリ(メチルメタクリレート)(PMMA;Sigma-Aldrich)及び30mg/mlのフェニル-C61-ブチル酸メチルエステル(PCBM;Solenne BV)並びに2000rpmでスピンコートした0.46Mの2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトオキシフェニルアミン)9,9’-スピロビフルオレン(スピロ-OMeTAD;Borun Chemicals):を用いたクロロベンゼン溶液のスピンコーティングを介して空気中で堆積した。
【0465】
特性評価:
SEM像を取得するために、電界放射型走査電子顕微鏡(Hitachi S-4300)を使用した。ビーコ・デクタック150表面プロフィルロメータを使用して、試料厚さを測定した。
【0466】
フォトルミネッセンス測定値及びフィッティング:
時間相関単一フォトン計数技術(TCSPC:time-correlated single photon counting)装置(フルオタイム(FluoTime)300、PicoQuant GmbH)を使用して、定常状態及び時分解PL測定値を取得した。117psのパルス期間及び~30nJ/cm2のフルエンスを用いて、0.3から10MHzの間の周波数でパルス化し、507nmレーザ・ヘッド(LDH-P-C-510、PicoQuant GmbH)を使用して、膜試料を光励起した。高分解能モノクロメータ及びハイブリッド光増倍検出器アセンブリ(PMA Hybrid 40、PicoQuant GmbH)を使用して、PLを集めた。
【0467】
何も消光材がないときのフォトルミネッセンス・ダイナミックスを記述するパラメータを、拡散モデルに入力する必要がある。伸長型指数関数的減衰関数の形式、
【数5】
を用いて、PMMAキャップ型ペロブスカイト膜から測定したバックグラウンド補正PLをフィッティングすることによって、パラメータを求めた。
【0468】
各フィッティング・パラメータを独立に変えることによって求めた小さくしたχ
2表面を調べることによって、フィッティング・パラメータの誤差を決定した。68%の信頼性レベルで限界を求めるために、χ
R
2(p)/χ
R
2=1.2のカット・オフ値を各ケースで使用した。異なる消光材を有する試料間のライフタイムの比較を容易にするため、τ
eを、PL強度のための励起後でそのピーク強度の1/eに低下するまでにかかる時間として定義する。その平均値が1/e線の1標準偏差以内になる点の範囲の半分であるように、このライフタイムの精度の誤差を取った。フォトルミネッセンス・ダイナミックスの結果を、
図34、
図35及び
図37に示す。
【0469】
拡散モデリング:
1D拡散方程式、
【数6】
に従って膜n(x,t)中の励起の数及び分布を計算することによって、PL減衰ダイナミックスをモデル化し、ここでは、Dは拡散係数であり、k(t)は何も消光材材料がないときのPL減衰率である。PMMAを有するペロブスカイト層から測定し、キャッピング材料とは無関係であると仮定したPLデータに伸長型指数関数的減衰をフィッティングすることによって、全減衰率、k=1/k
f+1/k
nr=βτ
-βt
β-1、を決定した。界面に達するすべてのエキシトンが、ユニット効率(n(L,t)=0、ここでは、ガラス/ペロブスカイト界面のところでx=0であり、Lはペロブスカイト膜厚である)で消光されることを仮定することによって、消光層の効果を含めた。励起パルスが試料のガラス基板側からであるので、エキシトンの初期分布を、n(x,0)=n
0exp(-αx)になるように取り、ここでは、α=A/L(507nmにおける吸光度/ペロブスカイト層厚さ)である。ペロブスカイト/消光材界面におけるレーザ・パルスの反射に起因するこの分布からの何らかの偏差を、無視できると仮定した。拡散長L
Dを計算するために、小さくしたカイ二乗値(chi-squared value)、
【数7】
を最小にするように、拡散係数を変え、ここでは、y(t)及びy
c(t)は、時間tにおける測定したPL強度及び計算したPL強度であり、nはデータ点の数であり、pはフィッティング・パラメータの数である。時間tにおける全PL強度を決定するために、Crank-Nicholsonアルゴリズム及び膜全体にわたって積分したエキシトンの数を使用して、方程式を数値的に解いた。別々に記録した機器応答関数(IRF:instrument response function)を用いる繰返し再畳み込みによって、伸長型指数関数モデル及び1D拡散モデルの両方を、実験TCSPCデータにフィッティングし、その結果、観測したPL強度は、
【数8】
IRF、g(t)、を用いて畳み込んだ実際の減衰曲線、f(t)の結果である。平均拡散長L
Dは、
【数9】
によって与えられ、ここでは、τ
eは、何も消光材がないときにPLがその初期強度の1/eに落ちるまでにかかる時間である。
【0470】
以下の項目もあわせて開示する。
【0471】
1. 光活性領域を含む光起電力素子であって、前記光活性領域が、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、
(a) 開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層であって、厚さが10nmから100μmまでであり、n型領域と第1のプレーナ・ヘテロ接合を、およびp型領域と第2のプレーナ・ヘテロ接合を形成する、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
または、
(b)(i)多孔性材料と、前記多孔性材料の気孔内に配置されるペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、前記キャッピング層が開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層であり、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、厚さが10nmから100μmまでであり、前記キャッピング層の前記ペロブスカイト半導体は、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触する、キャッピング層と、
を含む、光起電力素子。
【0472】
2. 前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層の厚さが、100nmから100μmまでである、項目1に記載の光起電力素子。
【0473】
3. 前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層の前記厚さが、100nmから700nmまでである、項目1又は2に記載の光起電力素子。
【0474】
4. 前記ペロブスカイト半導体が、三次元結晶構造を有する、項目1から3までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0475】
5. 前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層が、前記ペロブスカイト半導体からなる層である、項目1から4までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0476】
6. 前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層の厚さが、100nmから100μmまでである、項目5に記載の光起電力素子。
【0477】
7. 前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層の厚さが、100nmから700nmまでである、項目5に記載の光起電力素子。
【0478】
8. 前記多孔性材料がメソポーラスである、項目1に記載の光起電力素子。
【0479】
9. 前記多孔性材料が、誘電性材料である、項目1又は8に記載の光起電力素子。
【0480】
10. 前記多孔性材料が、電荷輸送材料である、項目1又は8に記載の光起電力素子。
【0481】
11. 前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記p型領域及び前記n型領域のうちの一方と接触し、前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記p型領域及び前記n型領域のうちの他方と接触する、項目1および8から10までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0482】
12. 前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記p型領域又は前記n型領域とプレーナ・ヘテロ接合を形成する、項目1および8から11までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0483】
13. 前記キャッピング層の厚さが、前記第1の層の厚さよりも厚い、項目1および8から12までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0484】
14. 前記キャッピング層の前記厚さが、100nmから700nmまでである、項目1および8から12までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0485】
15. 前記n型領域がn型層である、項目1から14までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0486】
16. 前記n型領域が、n型層及びn型エキシトン・ブロッキング層を含む、項目1から14までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0487】
17. 前記n型エキシトン・ブロッキング層が、前記n型層と前記ペロブスカイト半導体を含む前記層との間に配置される、項目16に記載の光起電力素子。
【0488】
18. 前記p型領域がp型層である、項目1から17までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0489】
19. 前記p型領域が、p型層及びp型エキシトン・ブロッキング層を含む、項目1から17までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0490】
20. 前記p型エキシトン・ブロッキング層が、前記p型層と前記ペロブスカイト半導体を含む前記層との間に配置される、項目19に記載の光起電力素子。
【0491】
21. 前記ペロブスカイト半導体が、3.0eV以下のバンド・ギャップを有する、項目1から20までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0492】
22. 前記ペロブスカイトが、ハロゲン化物アニオン又はカルコゲナイドアニオンから選択される少なくとも1つのアニオンを含む、項目1から21までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0493】
23. 前記ペロブスカイトが、第1のカチオン、第2のカチオン、及び前記少なくとも1つのアニオンを含む、項目22に記載の光起電力素子。
【0494】
24. 前記第2のカチオンが、Sn2+、Pb2+及びCu2+から選択される金属カチオンである、項目23に記載の光起電力素子。
【0495】
25. 前記第1のカチオンが、有機カチオンである、項目23又は24に記載の光起電力素子。
【0496】
26. 前記有機カチオンが、化学式(R1R2R3R4N)+を有し、
R1が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R2が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R3が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、及び
R4が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである、
項目25に記載の光起電力素子。
【0497】
27. 前記有機カチオンが、化学式(R5R6N=CH-NR7R8)+を有し、R5が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、R6が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、R7が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、及びR8が、水素、非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである、項目25に記載の光起電力素子。
【0498】
28. 前記ペロブスカイトが、ハロゲン化物アニオン及びカルコゲナイドアニオンから選択される2つ以上の異なるアニオンを含む混合型アニオンペロブスカイトである、項目22から27までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0499】
29. 前記ペロブスカイトが、混合型ハロゲン化物ペロブスカイトであり、前記2つ以上の異なるアニオンが、2つ以上の異なるハロゲン化物アニオンである、項目28に記載の光起電力素子。
【0500】
30. 前記多孔性材料が、4.0eV以上のバンド・ギャップを有する誘電性材料である、項目1から29までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0501】
31. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された、前記光活性領域とを含む、項目1から30までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0502】
32. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された、前記光活性領域とを含み、
前記第2の電極が、前記光活性領域の前記n型領域と接触し、前記第1の電極が、前記光活性領域の前記p型領域と接触し、
前記第1の電極が、透明又は半透明の電気的導電性材料を含み、
前記第2の電極が、金属を含む、
項目1から31までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0503】
33. タンデム接合又は多接合光起電力素子であり、前記素子が、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された、
前記光活性領域と、
少なくとも1つの別の光活性領域と
を含む、項目1から32までのいずれか一項に記載の光起電力素子。
【0504】
34. 第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された、
前記光活性領域と、
少なくとも1つの別の光活性領域と
を含み、
前記少なくとも1つの別の光活性領域が、半導体材料の少なくとも1つの層を含む、
項目33に記載の光起電力素子。
【0505】
35. 前記半導体材料が、結晶シリコン、銅亜鉛スズ硫化物、銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物、銅インジウムガリウムセレン化物、銅インジウムガリウム二セレン化物又は銅インジウムセレン化物の層を含む、項目34に記載の光起電力素子。
【0506】
36. 下記の領域を下記の順番で、
I.第1の電極と、
II.項目1から30までのいずれか一項において規定した第1の光活性領域と、
III.p型半導体の層(A)と、
IV.真性半導体の第1の層と、
V.p型半導体の層(B)又はn型半導体の層(B)と、
VI.真性半導体の第2の層と、
VII.n型半導体の層(C)と、
VIII.第2の電極と、
を含む、項目34又は35に記載の光起電力素子。
【0507】
37. 下記の領域を下記の順番で、
I.第1の電極と、
II.項目1から30までのいずれか一項において規定した第1の光活性領域と、
III.透明導電性酸化物の層と、
IV.n型半導体の層(D)と、
V.銅亜鉛スズ硫化物、銅亜鉛スズセレン化物、銅亜鉛スズセレン化硫化物、銅インジウムガリウムセレン化物、銅インジウムガリウム二セレン化物又は銅インジウムセレン化物の層と、
VI.第2の電極と、
を含む、項目34又は35に記載の光起電力素子。
【0508】
38. 光活性領域を含む光起電力素子を製造するためのプロセスであって、前記光活性領域が、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、
前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、
(1) 開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層であって、厚さが10nmから100μmまでであり、n型領域と第1のプレーナ・ヘテロ接合を、およびp型領域と第2のプレーナ・ヘテロ接合を形成する、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
または、
(2)多孔性材料と、前記多孔性材料の気孔内に配置されるペロブスカイト半導体を含む第1の層と、
前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、前記キャッピング層が開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層であり、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、厚さが10nmから100μmまでであり、前記キャッピング層の前記ペロブスカイト半導体は、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触する、キャッピング層と、
を含み、前記プロセスが、
(a)第1の領域を設けるステップと、
(b)前記第1の領域の上に第2の領域を配置するステップであって、前記第2の領域が、前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含む、配置するステップと、
(c)前記第2の領域の上に第3の領域を配置するステップと、
を含み、
前記第1の領域が、少なくとも1つのn型層を含む前記n型領域であり、及び前記第3の領域が、少なくとも1つのp型層を含む前記p型領域である、又は
前記第1の領域が、少なくとも1つのp型層を含む前記p型領域であり、及び前記第3の領域が、少なくとも1つのn型層を含む前記n型領域である、
プロセス。
【0509】
39. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
気相堆積によって前記第1の領域の上に前記ペロブスカイトの固体層を生成するサブステップ、
を含む、項目38に記載のプロセス。
【0510】
40. 気相堆積によって前記第1の領域の上に前記ペロブスカイトの固体層を生成する前記ステップが、
(i)蒸気に前記第1の領域を曝すサブステップであって、前記蒸気が、前記ペロブスカイト又は前記ペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含む、曝すサブステップと、
(ii)前記第1の領域の上に前記ペロブスカイトの固体層を生成するために、前記第1の領域上への前記蒸気の堆積を可能にするサブステップと、
を含む、項目39に記載のプロセス。
【0511】
41. 前記気相堆積は、ペロブスカイトの前記固体層が100nmから100μmまでの厚さを有するまで続けることが可能である、項目39又は40に記載のプロセス。
【0512】
42. 前記ペロブスカイトを蒸発させること又は前記ペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を蒸発させることによって前記蒸気を生成するステップをさらに含む、項目38又は41に記載のプロセス。
【0513】
43. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
気相堆積によって前記ペロブスカイトの固体層を生成するサブステップであって、前記気相堆積が、デュアル・ソース気相堆積である、生成するサブステップ、
を含む、項目38から42までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0514】
44. (i)蒸気に前記第1の領域を曝すステップであって、前記蒸気が、前記ペロブスカイトを生成するための2つの反応物質を含む、曝すステップと、
(ii)前記第1の領域の上に前記ペロブスカイトの固体層を生成するために、前記第1の領域上への前記蒸気の堆積を可能にするステップと、
を含み、
(i)が、第1のソースから第1の反応物質を蒸発させること及び第2のソースから第2の反応物質を蒸発させることによって前記ペロブスカイトを生成するための2つの反応物質を含む前記蒸気を生成するサブステップをさらに含む、
項目38から43までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0515】
45. 前記第1の反応物質が、(i)金属カチオン及び(ii)第1のアニオンを含む第1の化合物を含み、並びに、前記第2の反応物質が、(i)有機カチオン及び(ii)第2のアニオンを含む第2の化合物を含む、項目44に記載のプロセス。
【0516】
46. 前記有機カチオンが、化学式(R1R2R3R4N)+を有し、
R1が、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R2が、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、
R3が、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールであり、及び
R4が、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキル、又は非置換型若しくは置換型アリールである、
項目45に記載のプロセス。
【0517】
47. 前記第1のアニオン及び前記第2のアニオンが、ハロゲン化物イオン又はカルコゲナイドイオンから選択される異なるアニオンである、項目45又は46に記載のプロセス。
【0518】
48. 前記第1のアニオン及び前記第2のアニオンが、ハロゲン化物アニオンから選択される異なるアニオンである、項目45から46までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0519】
49. 前記第1の反応物質が、BX2である第1の化合物を含み、及び前記第2の反応物質が、AX’である第2の化合物を含み、
Bが、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンであり、
Xが、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、
Aが、化学式(R5NH3)+のカチオンであり、R5が、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルであり、
X’が、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、並びに
X及びX’が、異なるアニオンである、
項目44から48までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0520】
50. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(iii)前記ペロブスカイトの前記固体層を加熱するサブステップ、
をさらに含む、項目40から49までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0521】
51. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(i)蒸気に前記第1の領域を曝すサブステップであって、前記蒸気が、第1のペロブスカイト前駆物質化合物を含み、前記第1の領域の上に前記第1のペロブスカイト前駆物質化合物の固体層を生成するために、前記第1の領域上への前記蒸気の堆積を可能にする、曝すサブステップと、
(ii)第2のペロブスカイト前駆物質化合物を含む溶液で前記第1のペロブスカイト前駆物質化合物の前記得られた固体層を処理するサブステップであって、これによって、開口気孔率のない前記ペロブスカイト半導体の前記層を生成するために、前記第1のペロブスカイト前駆物質化合物と前記第2のペロブスカイト前駆物質化合物とを反応させる、処理するサブステップと、
を含み、
前記第1のペロブスカイト前駆物質化合物が、(i)第1のカチオン及び(ii)第1のアニオンを含み、並びに前記第2のペロブスカイト前駆物質化合物が、(i)第2のカチオン及び(ii)第2のアニオンを含む、
項目38に記載のプロセス。
【0522】
52. 前記第1のカチオン並びにアニオン及び前記第2のカチオン並びにアニオンが、項目45から48までのいずれか一項に規定されるものである、項目51に記載のプロセス。
【0523】
53. 前記第1のペロブスカイト前駆物質化合物が、化学式BX2を有し、及び前記第2のペロブスカイト前駆物質化合物が、化学式AX’を有し、
Bが、Ca2+、Sr2+、Cd2+、Cu2+、Ni2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Pd2+、Ge2+、Sn2+、Pb2+、Yb2+及びEu2+から選択されるカチオンであり、
Xが、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、
Aが、化学式(R5NH3)+のカチオンであり、R5が、水素、又は非置換型若しくは置換型C1~C20アルキルであり、
X’が、F-、Cl-、Br-及びI-から選択されるアニオンであり、並びに
X及びX’が、同じ又は異なるアニオンである、
項目51に記載のプロセス。
【0524】
54. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(i)前記第1の領域の上に1つ又は複数の前駆物質溶液を配するサブステップであって、前記1つ又は複数の前駆物質溶液が、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト、又は1つ若しくは複数の溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含む、配するサブステップと、
(ii)前記ペロブスカイトの固体層を前記第1の領域の上に生成するために前記1つ又は複数の溶剤を除去するサブステップと、
を含む、項目38に記載のプロセス。
【0525】
55. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(i)前記第1の領域の上に前駆物質溶液を配するサブステップであって、前記前駆物質溶液が、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを含む、配するサブステップと、
(ii)前記ペロブスカイトの固体層を前記第1の領域の上に生成するために、前記溶剤を除去するサブステップと、
を含む、項目38に記載のプロセス。
【0526】
56. 前記ペロブスカイトの前記固体層を前記第1の領域の上に生成するために、前記第1の領域上へと前記1つ又は複数の前駆物質溶液をスピンコートするステップを含む、項目54又は55に記載のプロセス。
【0527】
57. 前記第1の領域の上に前記1つ又は複数の前駆物質溶液を配する前記ステップ及び前記1つ又は複数の溶剤を除去する前記ステップが、前記ペロブスカイトの前記固体層が100nmから100μmまでの厚さを有するまで行われる、項目54から56までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0528】
58. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(iii)前記ペロブスカイトの前記固体層を加熱するサブステップ、
をさらに含む、項目54から57までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0529】
59. 前記ペロブスカイトの前記固体層を加熱する前記ステップが、不活性雰囲気中で前記ペロブスカイトの前記固体層を加熱するサブステップを含む、項目50又は58に記載のプロセス。
【0530】
60. 前記ペロブスカイトの前記固体層が加熱される温度は、150℃を超えない、項目50、58及び59のいずれか一項に記載のプロセス。
【0531】
61. 前記ペロブスカイトの前記固体層が、30℃から150℃までの温度で加熱される、項目50、58、59及び60のいずれか一項に記載のプロセス。
【0532】
62. 前記光活性領域が、
前記n型領域と、前記p型領域と、前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、
(i)多孔性材料及び前記多孔性材料の孔内に配置されるペロブスカイト半導体を含む前記第1の層と、
(ii)前記第1の層の上に配置された前記キャッピング層であって、前記キャッピング層が開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層である、前記キャッピング層と、
を含み、
前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触し、
前記プロセスが、
(a)前記第1の領域を設けるステップと、
(b)前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置するステップであって、前記第2の領域が、
(i)多孔性材料及び多孔性材料の気孔内に配置されるペロブスカイト半導体を含む前記第1の層と、
(ii)前記第1の層の上の前記キャッピング層であり、前記キャッピング層が、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の前記層であり、前記キャッピング層中の前記ペロブスカイト半導体が、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触する、前記キャッピング層と、
を含む、配置するステップと、
(c)前記第2の領域の上に前記第3の領域を配置するステップと
を含む、項目38に記載のプロセス。
【0533】
63. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置する前記ステップ(b)が、
(i)前記第1の領域の上に多孔性材料を配置するサブステップと、
(ii)前記第1の層を生成するために前記多孔性材料の気孔内に前記ペロブスカイトを配するサブステップと、前記キャッピング層を生成するために前記第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置するサブステップと、
を含む、項目62に記載のプロセス。
【0534】
64. 前記多孔性材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを前記配するステップ及び前記第1の層の上へと前記ペロブスカイトを前記さらに配置するステップが、単一ステップで一緒に実行される、項目63に記載のプロセス。
【0535】
65. 前記第1の領域の上に多孔性材料を配置する前記ステップ(i)が、
前記第1の領域上へ組成物を配置するサブステップであって、前記組成物が、前記多孔性材料、及び溶剤を含む、配置するサブステップと、
前記溶剤を除去するサブステップと、
を含む、項目63又は64に記載のプロセス。
【0536】
66. 前記第1の領域の上に前記多孔性材料を配置する前記ステップ(i)が、前記第1の領域上へと前記組成物をスクリーン印刷するサブステップ、ドクタ・ブレーディングするサブステップ、スピンコーティングするサブステップ、スロット・ダイ・コーティングするサブステップ又はスプレイ・コーティングするサブステップを含む、項目65に記載のプロセス。
【0537】
67. 前記第1の領域の上に前記多孔性材料を配置する前記ステップ(i)が、前記組成物を加熱するサブステップをさらに含む、項目65又は66に記載のプロセス。
【0538】
68. 前記組成物が、結合剤を含まず、前記組成物を加熱する温度が、150℃を超えない、項目65に記載のプロセス。
【0539】
69. 前記第1の層を生成するために前記多孔性材料の気孔内へと前記ペロブスカイトを配し、前記キャッピング層を生成するために前記第1の層の上へと前記ペロブスカイトをさらに配置するステップ(ii)は、前記キャッピング層が、100nmから100μmまでの厚さを有するまで行われる、項目65から68までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0540】
70. ステップ(ii)は、
前記多孔性材料の上へと1つ又は複数の前駆物質溶液を配するサブステップであって、前記1つ又は複数の前駆物質溶液が、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイト、又は1つ若しくは複数の溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを生成するための1つ若しくは複数の反応物質を含む、配するサブステップと、
前記多孔性材料の気孔内に固体ペロブスカイトを及び前記第1の層の上に配置された前記ペロブスカイトの固体キャッピング層を生成するために前記1つ又は複数の溶剤を除去するサブステップと、
を含む、項目65から69までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0541】
71. ステップ(ii)は、
前記多孔性材料の上へと前駆物質溶液を配するサブステップであって、前記前駆物質溶液が、溶剤中に溶解した前記ペロブスカイトを含む、配するサブステップと、
前記多孔性材料の気孔内に固体ペロブスカイトを及び前記第1の層の上に配置された前記ペロブスカイトの固体キャッピング層を生成するために前記溶剤を除去するサブステップと、
を含む、項目65から70までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0542】
72. 前記多孔性材料の気孔内に前記固体ペロブスカイトを及び前記第1の層の上に配置された前記ペロブスカイトの前記固体キャッピング層を生成するために、前記多孔性材料の上へと前記1つ又は複数の前駆物質溶液をスピンコーティングするステップ又はスロット・ダイ・コーティングするステップを含む、項目65から71までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0543】
73. 前記第1の領域の上に前記第2の領域を配置するステップ(b)が、
(iii)前記ペロブスカイトを加熱するサブステップ、
をさらに含む、項目65から72までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0544】
74. 前記ペロブスカイトを加熱する前記ステップが、不活性雰囲気中で前記ペロブスカイトを加熱するステップを含む、項目73に記載のプロセス。
【0545】
75. 前記ペロブスカイトが加熱される温度が、150℃を超えない、項目73又は74に記載のプロセス。
【0546】
76. 前記ペロブスカイトが、30℃から150℃までの温度で加熱される、項目73から75までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0547】
77. 光活性領域を含む反転型光起電力素子を製造するためのプロセスであって、前記光活性領域が、
少なくとも1つのn型層を含むn型領域と、
少なくとも1つのp型層を含むp型領域と、前記n型領域と前記p型領域との間に配置された、
(1) 開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層であって、厚さが10nmから100μmまでであり、n型領域と第1のプレーナ・ヘテロ接合を、およびp型領域と第2のプレーナ・ヘテロ接合を形成する、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層、
または、
(2)多孔性材料と、前記多孔性材料の気孔内に配置されるペロブスカイト半導体を含む第1の層と、前記第1の層の上に配置されたキャッピング層であって、前記キャッピング層が開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層であり、開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層は、厚さが10nmから100μmまでであり、前記キャッピング層の前記ペロブスカイト半導体は、前記第1の層中の前記ペロブスカイト半導体と接触する、キャッピング層と、
を含み、前記プロセスが、
(a)第1の領域を設けるステップと、
(b)前記第1の領域の上に第2の領域を配置するステップであり、前記第2の領域が、前記開口気孔率のないペロブスカイト半導体の層を含む、配置するステップと、
(c)前記第2の領域の上に第3の領域を配置するステップと、
を含み、
前記第1の領域が、少なくとも1つのp型層を含む前記p型領域であり、及び前記第3の領域が、少なくとも1つのn型層を含む前記n型領域であり、
前記第1の領域が、第1の電極の上に配置される、
プロセスである、項目38から76までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0548】
78. 前記第1の電極が、透明材料又は半透明材料を含む、項目77に記載のプロセス。
【0549】
79. タンデム接合又は多接合光起電力素子を製造するためのプロセスであって、
(d)前記第3の領域の上にトンネル接合を配置するステップと、
(e)前記トンネル接合の上にさらなる光活性領域を配置するステップであり、前記さらなる光活性領域が、項目38又は62において規定した前記光活性領域と同じである又は異なる、配置するステップと、
(f)前のステップにおいて配置した前記さらなる光活性領域の上に第2の電極を配置するステップと、
をさらに含む、項目38から76までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0550】
80. 全体のプロセスが、150℃を超えない1つ又は複数の温度で実行される、項目38から79までのいずれか一項に記載のプロセス。
【0551】
81. 前記光起電力素子が、項目1から37までのいずれか一項に規定されたものである、項目38から80までのいずれか一項に記載のプロセス。