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特許7245558ロボット用の統合関節モジュール及びそれを適用した歩行ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ロボット用の統合関節モジュール及びそれを適用した歩行ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20230316BHJP
   B62D 57/032 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B25J17/00 E
B62D57/032 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021552560
(86)(22)【出願日】2020-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2020076440
(87)【国際公開番号】W WO2020177565
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-03
(31)【優先権主張番号】201910172037.5
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521161428
【氏名又は名称】杭州宇▲樹▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王▲興▼▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼知雨
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109176595(CN,A)
【文献】特表2017-536249(JP,A)
【文献】特開2015-206747(JP,A)
【文献】特開2018-056215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B62D 57/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一モータ・減速機アセンブリ(3)と、第二モータアセンブリ(4)と、第二減速機アセンブリ(40)と、第一出力リンク(1)とを含み、
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)はその出力軸端の側に前記第一出力リンク(1)が取り付けられ、前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)の他側に前記第二モータアセンブリ(4)が取り付けられて固定され、前記第二減速機アセンブリ(40)は前記第一出力リンク(1)内に設けられ、前記第二モータアセンブリ(4)の出力軸が前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)を通って前記第二減速機アセンブリ(40)の入力端に固定接続されており、
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)及び前記第二減速機アセンブリ(40)には、それぞれモーメント規制手段が備えられ、
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)のモーメント規制手段は、第一摩擦ディスク(311)と、第一パッド(310)と、第一摩擦力発生器(39)とを含み、
前記第二減速機アセンブリ(40)のモーメント規制手段は、第二摩擦ディスク(46)と、第二パッド(47)と、第二摩擦力発生器(45)とを含み、
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)には、第一減速機アセンブリ(30)が設けられ、
前記第一減速機アセンブリ(30)と前記第二減速機アセンブリ(40)はそれぞれ遊星歯車減速機を含み、前記第一減速機アセンブリ(30)と前記第二減速機アセンブリ(40)の遊星歯車(36)にデュプレックスギアが採用され、前記第一減速機アセンブリ(30)及び第二減速機アセンブリ(40)の内歯車(37,48)の外輪はそれぞれ、前記第一摩擦ディスク(311)及び前記第二摩擦ディスク(46)と摩擦しながら接続される、ことを特徴とするロボット用の統合関節モジュール。
【請求項2】
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)と第二モータアセンブリ(4)は、第一出力リンク(1)の内側に組み付けられることを特徴とする、請求項1に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項3】
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)と前記第二モータアセンブリ(4)は、アウターロータモータを採用することを特徴とする、請求項1に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項4】
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)のハウジングに関節アダプタ(5)が固定され、前記関節アダプタ(5)における前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)と固定接続される端は凹形構造を有することを特徴とする、請求項1、2又は3に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項5】
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)は第一モータエンコーダと第一出力エンコーダとを有し、前記第二モータアセンブリ(4)は第二モータエンコーダを有し、前記第二減速機アセンブリ(40)は第二出力エンコーダを有し、
前記第一モータエンコーダは第一モータエンコーダ固定子(91)と第一モータエンコーダ回転子(92)とを含み、
前記第一出力エンコーダは第一出力エンコーダ固定子(95)と第一出力エンコーダ回転子(96)とを含み、
前記第二モータエンコーダは第二モータエンコーダ固定子(93)と第二モータエンコーダ回転子(94)とを含み、
前記第二出力エンコーダは第二出力エンコーダ固定子(97)と第二出力エンコーダ回転子(98)とを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項6】
第一出力リンク(1)におけるコンポーネント及び第一出力リンク(1)の後に接続される他のコンポーネントに対して給電と通信を行うための無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントを更に含み、
前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントは、電気エネルギ放出コイル(81)と電気エネルギ受取コイル(82)とを含み、前記無線信号伝達コンポーネントに採用される無線伝達方式は、ラジオ、赤外線、レーザを含むがそれらに限らないことを特徴とする、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項7】
前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントは、前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)と第一出力リンク(1)との間、あるいは、前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)の内部に配置されることを特徴とする、請求項6に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項8】
前記第一モータ・減速機アセンブリ(3)と第二モータアセンブリ(4)には、モータドライバとモータ伝熱・放熱コンポーネントが固定されることを特徴とする、請求項7に記載のロボット用の統合関節モジュール。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のロボット用の統合関節モジュールを備えることを特徴とする歩行ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロボット用の統合関節モジュール及びそれを適用した歩行ロボットに関し、ロボット関節技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
現在、ロボットに用いる動力モジュールは、独立の関節モジュールを直列又は並列に連結した構造等を採用するのが一般的である。特に歩行ロボットの分野では、ロボットのレッグ毎は一般に独立の関節モジュールを直列に連結した構造を採用する。
【0003】
コンパクトな構造が要求される二関節モジュール、特に、歩行ロボットに用いられる二関節モジュールに関して、従来による二関節モジュールの二つのモータは回転関節の両側に配置されており、二つのモータが正常に動くことを確保するために、配線方式を工夫しなければならない。
【0004】
従来の配線方式としては主に非中空部材経由及び中空部材経由の配線があり、前者では、線材がそのままロボット関節の外に吊り下げられるので、ロボットの構造上の安全及び見栄えに悪影響が与えられる一方、線材が非常に破損しやすく、また、適切に配線していないと、関節の可動範囲が制限されてしまう。後者では、モータコンポーネント及び関節リンクにおいて専用のケーブル通過用穴及びケーブル配置手段を予め形成しておく必要があり、関節が複雑になって寸法が増える一方、関節の運動により線材に摩耗や疲労損傷が発生し、その耐用年数が低下した。
【0005】
さらには、地面・地形が複雑で変化が多いながら外部からの衝撃と干渉もあるため、ロボット関節モータによる駆動モーメントが関節減速機の耐えられる最大モーメントより大きくなるか、又は減速機の出力軸を介して減速機へ伝達される外部からの最大モーメントが関節減速機の耐えられる最大モーメントより大きくなる場合、ロボット関節の減速機は過負荷の作動状態に陥り、減速機歯車等の関節部品が破損してしまった。そして、多くの作業環境では、ロボット関節は長期間にわたって往復して作動しながら、地面や外部環境からの衝撃荷重を受けているため、その減速機における各歯の噛合面が不均一に摩耗することは厳しくなってしまった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】(特になし)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の問題点に対して、本発明は、二つのモータが回転関節の同一側に組み付けられることで、モータの配線が回転関節を貫通することがなくなり、モータのケーブルや線材の耐用年数が長くなることができ、構造がより確実で見栄えがするロボット用の統合関節モジュール及びそれを適用した歩行ロボットを提供することをその目的とする。
本発明は、摩擦滑りに基づくモーメント規制が可能で、それぞれの複雑作業環境に適し、関節が衝撃荷重を受けている場合に関節部品が破損しないロボット用の統合関節モジュール及びそれを適用した歩行ロボットを提供することをもう一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第一モータ・減速機アセンブリと、第二モータアセンブリと、第二減速機アセンブリと、第一出力リンクとを含み、
前記第一モータ・減速機アセンブリはその出力軸端の側に第一出力リンクが取り付けられ、前記第一モータ・減速機アセンブリの他側に前記第二モータアセンブリが取り付けられて固定され、前記第二減速機アセンブリは前記第一出力リンク内に設けられ、前記第二モータアセンブリの出力軸が前記第一モータ・減速機アセンブリを通って第二減速機アセンブリの入力端に固定接続されるロボット用の統合関節モジュール、であることを特徴とする。
【0009】
本発明では、二関節の二つのモータを関節の同一側に位置させることで、モータの動力ケーブルが関節を通ることがなくなり、モータの動力ケーブルに発生する疲労や破損が効果的に緩和でき、モータのケーブルや線材の耐用年数が長くなる。本発明では、モータコンポーネント及び関節出力リンクにおいて専用のケーブル通過用穴及びケーブル配置手段を予め形成しておく必要がなく、その構造がより確実になり、また、二関節モジュールの統合度が一層向上して関節モジュールの軸方向の寸法が低下し、もっと見栄えがする構造となる。
【0010】
好ましくは、前記第一モータ・減速機アセンブリと第二モータアセンブリは第一出力リンクの内側に組み付けられる。前記第一出力リンクを外側に位置させることで、関節モータを効果的に保護でき、関節モータが外部のものによる衝突で破損することがなくなり、第一モータ・減速機アセンブリと第二モータアセンブリの耐用年数が長くなる。
【0011】
本発明のもう一つの目的を実現するための技術的解決手段として、前記第一モータ・減速機アセンブリ及び第二減速機アセンブリにそれぞれモーメント規制手段を備える。本発明では、減速機アセンブリが受けるモーメントを規制することで、減速機アセンブリがモータ又は関節モジュールの出力端からの大きなモーメントを受けることに起因した減速機アセンブリの破損は防止されており、本発明は様々な複雑作業環境に適用可能なものとなり、関節出力端が受ける外部衝撃トルクによる関節モジュール内部の減速機等の部品の破損が回避され、そして、モーメント規制手段の作動による滑りによれば、減速機の日常運転による摩耗を均等化させて、減速機の各歯の噛合面が不均一に摩耗することを回避可能になる。
【0012】
好ましくは、前記第一モータ・減速機アセンブリのモーメント規制手段は第一摩擦ディスクと、第一パッドと、第一摩擦力発生器とを含み、前記第二減速機アセンブリのモーメント規制手段は第二摩擦ディスクと、第二パッドと、第二摩擦力発生器とを含み、前記第一摩擦力発生器と第二摩擦力発生器は皿ばね、波形ばね、コイルばねを含むがそれらに限らなく、構造が簡単かつコンパクトで確実であり、コストが低い。
【0013】
好ましくは、前記第一モータ・減速機アセンブリは第一モータエンコーダと第一出力エンコーダとを有し、前記第二モータアセンブリは第二モータエンコーダを有し、前記第二減速機アセンブリは第二出力エンコーダを有し、前記第一モータエンコーダは第一モータエンコーダ固定子と第一モータエンコーダ回転子とを含み、前記第一出力エンコーダは第一出力エンコーダ固定子と第一出力エンコーダ回転子とを含み、前記第二モータエンコーダは第二モータエンコーダ固定子と第二モータエンコーダ回転子とを含み、前記第二出力エンコーダは第二出力エンコーダ固定子と第二出力エンコーダ回転子とを含む。
二つのエンコーダを使用することで、モータの回転角と関節出力端の回転角をより正確かつ同時に検出でき、関節の制御性能を向上させる。そして、二つのエンコーダによれば、関節モーメント規制手段により規制を行う場合、つまり減速機アセンブリに滑りが発生する場合であっても、関節出力端の回転角を正確に検出可能になる。
【0014】
好ましくは、第一出力リンクにおけるコンポーネント及び第一出力リンクの後に接続される他のコンポーネントに対して給電と通信を行うための無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントをさらに含み、前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントは電気エネルギ放出コイルと電気エネルギ受取コイルとを含み、前記無線信号伝達コンポーネントに採用される無線伝達方式はラジオ、赤外線、レーザを含むがそれらに限らない。前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントは実際の需要に応じて無線通信として機能することもできる。回転関節間の無線電気エネルギ伝達と無線情報伝達が実現され、関節間接続用のケーブルが省かれ、そして関節の継続回転が実現され、関節の可動範囲が大きくなる。
【0015】
好ましくは、前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントは前記第一モータ・減速機アセンブリと第一出力リンクとの間、あるいは、前記第一モータ・減速機アセンブリの内部に配置される。電気エネルギと信号の無線伝達が実現され、実現上の需要に応じて取付位置を選択でき、適用範囲が広くなり、関節モジュールの統合度の向上に役立つ。
【0016】
好ましくは、前記第一モータ・減速機アセンブリと第二モータアセンブリにモータドライバとモータ伝熱・放熱コンポーネントが固定される。関節モジュールの統合度が一層向上し、関節モジュールの放熱状況がより良好になり、関節モジュールの高出力化に役立つ。
【0017】
好ましくは、前記第一モータ・減速機アセンブリのハウジングに関節アダプタが固定され、前記関節アダプタにおける前記第一モータ・減速機アセンブリと固定接続される端は凹形構造を有する。関節アダプタと前記第一モータ・減速機アセンブリの固定用のねじの着脱を行えば、二関節モジュールと関節アダプタの着脱を実現でき、構造がコンパクトかつ確実で、重量が軽い。
【0018】
好ましくは、第一モータ・減速機アセンブリに第一減速機アセンブリが設けられ、前記第一減速機アセンブリと第二減速機アセンブリはそれぞれ遊星減速機であり、前記第一減速機アセンブリと第二減速機アセンブリの遊星歯車にデュプレックスギアが採用され、前記第一減速機アセンブリと第二減速機アセンブリの内歯車の外輪はそれぞれ第一摩擦ディスク及び第二摩擦ディスクと摩擦しながら接続される。遊星減速機は構造が簡単で、コストが低く、デュプレックスギアを採用した遊星減速機は一般的な一段遊星減速機に比べると、減速比の調整可能範囲が大きくなる。遊星減速機の内歯車の外輪はそのまま摩擦ディスクと摩擦しながら接続され、構造が簡潔かつコンパクトで確実である。
【0019】
好ましくは、第一モータ・減速機アセンブリと第二モータアセンブリはアウターロータモータを採用する。アウターロータモータはプロセスが簡単で、コストが低い。
【0020】
好ましくは、歩行ロボットは上記したロボット用の統合関節モジュールを備える。歩行ロボットでは、二関節の二つのモータを関節の同一側に位置させることで、モータの動力ケーブルが関節を通ることがなくなり、モータの動力ケーブルに発生する疲労や破損が効果的に緩和でき、モータのケーブルや線材の耐用年数が長くなる。本発明では、モータコンポーネント及び関節リンクにおいて専用のケーブル通過用穴及びケーブル配置手段を予め形成しておく必要がなく、その構造がより確実になり、また、ロボットの統合度が一層向上して関節モジュールの軸方向の寸法が低下し、もっと見栄えがする構造となる。
【0021】
本発明による歩行ロボットでは、第一モータ・減速機アセンブリ及び第二減速機アセンブリにそれぞれモーメント規制手段が備えられ、減速機アセンブリが受けるモーメントを規制することが可能になるので、減速機アセンブリがモータ又は関節モジュールの出力端からの大きなモーメントを受けることに起因した減速機アセンブリの破損は防止されており、本発明は様々な複雑作業環境に適用可能なものとなり、関節出力端が受ける外部衝撃トルクによる関節モジュール内部の減速機等の部品の破損が回避され、そして、モーメント規制手段の作動による滑りによれば、減速機の日常運転による摩耗を均等化させて、減速機の各歯の噛合面が不均一に摩耗することを回避可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、二関節の二つのモータを関節の同一側に位置させることで、モータの動力ケーブルが関節を通ることがなくなり、モータの動力ケーブルに発生する疲労や破損が効果的に緩和でき、モータのケーブルや線材の耐用年数が長くなる。本発明では、モータコンポーネント及び関節リンクにおいて専用のケーブル通過用穴及びケーブル配置手段を予め形成しておく必要がなく、その構造がより確実になり、また、ロボットの統合度が一層向上して関節モジュールの軸方向の寸法が低下し、もっと見栄えがする構造となる。
【0023】
本発明では、第一モータ・減速機アセンブリ及び第二減速機アセンブリにそれぞれモーメント規制手段が備えられ、減速機アセンブリが受けるモーメントを規制することが可能になるので、減速機アセンブリがモータ又は関節モジュールの出力端からの大きなモーメントを受けることに起因した減速機アセンブリの破損は防止されており、本発明は様々な複雑作業環境に適用可能なものとなり、関節出力端が受ける外部衝撃トルクによる関節モジュール内部の減速機等の部品の破損が回避され、そして、モーメント規制手段の作動による滑りによれば、減速機の日常運転による摩耗を均等化させて、減速機の各歯の噛合面が不均一に摩耗することを回避可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の全体構造模式図(斜視図)である。
図2】本発明の分解構造模式図(斜視図)である。
図3】本発明による第一モータ・減速機アセンブリと第二モータアセンブリの分解構造模式図(斜視図)である。
図4】本発明の一部側面図である。
図5】本発明の図4のA-A断面での断面図である。
図6】本発明の伝熱構造模式図(斜視図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、解決手段及び利点をより明らかにするために、以下、図面及び実施例に合わせて本発明をより詳細に説明する。ここで述べる具体的な実施例は本発明を解釈するためのものに過ぎず、本発明の限定となるものではないことは理解されたい。
【0026】
代わりに、請求項により定義される本発明の精神と範囲に基づくあらゆる置換、変更、等価方法及び解決手段は本発明に含まれている。さらには、本発明をより良好に理解するために、後述する本発明の詳述においては特定の細部がいくつか述べられている。当業者にとっては、これらの細部がなくても、本発明を完全に理解できるはずである。
【0027】
二つの素子を「固定接続」する場合、二つの素子をそのまま又は他の素子を介して接続してもよい。逆に、素子が「そのまま」別の素子「にある」場合、他の素子を介するものではないことは了解されたい。本願において使用される「上」、「下」などの用語及び類似する記述は単に説明のためのものである。
【0028】
図1から図6に示されるように、ロボット用の統合関節モジュールは、第一モータ・減速機アセンブリ3と、第二モータアセンブリ4と、第二減速機アセンブリ40と、第一出力リンク1とを含み、前記第一モータ・減速機アセンブリ3の出力端の側に第一出力リンク1が取り付けられ、前記第一モータ・減速機アセンブリ3の他側に前記第二モータアセンブリ4が固定されて取り付けられ、前記第二減速機アセンブリ(40)は前記第一出力リンク(1)内に設けられ、前記第二モータアセンブリ4の出力軸である第二出力軸44は前記第一モータ・減速機アセンブリ3の回転中心を通って前記第二減速機アセンブリ40の入力端に固定接続される。この構造によれば、二関節モジュールの統合度が向上し、関節モジュールの軸方向の寸法が低下(短縮)し、また、二関節の二つのモータを関節の同一側に位置させることで、モータの動力ケーブルが関節を通ることがなくなり、モータの動力ケーブルに発生する疲労や破損が回避される。
【0029】
第一出力リンク1には第二出力リンク2も回転接続され、この第一出力リンク1は第一ケーシング11と第二ケーシング12とを含み、第一ケーシング11と第二ケーシング12が固定接続されることで収容室が形成され、第二減速機アセンブリ40がこの収容室内に固定され、第二減速機アセンブリ40の出力端に関節出力ロッカアーム7が固定され、収容室内にさらに接続ロッド6が設けられている。この接続ロッド6は一端が関節出力ロッカアーム7に回転接続され、他端が第二出力リンク2に回転接続され、関節出力ロッカアーム7が回転運動することで、第一出力リンク1に対して回転するように接続ロッド6を介して第二出力リンク2を動かす。
【0030】
第一モータ・減速機アセンブリ3に第一モータアセンブリと第一減速機アセンブリ30が設けられ、第一モータアセンブリは第一モータ固定子・巻線32と、第一モータケーシング31に回転接続される第一モータ回転子33とを含み、第一モータ固定子・巻線32は第一モータケーシング31内に固設され、第一モータ回転子33の回転中心に第一出力軸34が同軸に固定される。第一モータアセンブリは第一出力軸34を介して動力を第一減速機アセンブリ30に伝達し、第一モータアセンブリはアウターロータモータを採用することで、第一モータ・減速機アセンブリ3の全体構造がよりコンパクトになる。第一減速機アセンブリ30は第一太陽歯車35と、第一遊星歯車36と、第一内歯車37と、遊星キャリアとを含み、それらにより遊星歯車減速機が構成される。通常の時、第一内歯車37は固定されており、第一モータアセンブリから第一減速機アセンブリ30に伝達される動力は遊星キャリアを介して第一出力リンク1に出力される。ただし、第一太陽歯車35と第一出力軸34は同軸に固定接続されており、固定接続の方式としては、一体成形であってもよいし、又は溶接、締り嵌め等の他の方式であってもよく、ただし、第一遊星歯車36はデュプレックスギアであり、通常の遊星歯車を採用する場合に比べると、デュプレックスギアを第一遊星歯車36とする場合、減速機の重量と体積をわずかに増加するだけで、高い減速比を実現できる。
【0031】
第二モータアセンブリ4は、第二モータ固定子・巻線42と、第二モータケーシング41に回転接続される第二モータ回転子43とを含み、第二モータ固定子・巻線42は第二モータケーシング41内に固設され、第二モータ回転子43の回転中心に第二出力軸44が同軸に固定される。
【0032】
本発明による第一モーメント規制手段を増設した実施例
前記第一減速機アセンブリ30は、第一遊星歯車減速機と第一モーメント規制手段とを含み、前記第一モーメント規制手段は第一摩擦力発生器39を含み、前記第一遊星歯車減速機は第一内歯車37を含み、前記第一内歯車37は外輪側部が前記第一摩擦力発生器39に当接する。前記第一モーメント規制手段は、第一パッド310と第一摩擦ディスク311とをさらに含み、前記第一パッド310は前記第一内歯車37の外輪側部における前記第一摩擦力発生器39に近い側に設けられ、前記第一摩擦ディスク311は前記第一内歯車37の外輪側部の他側に設けられ、前記第一摩擦力発生器39は皿ばね、波形ばね及びコイルばねを含むがそれらに限らない。第一モータフレーム38は前記第一摩擦力発生器39を押圧することで予圧が実現され、第一摩擦力発生器39は能動制御素子を採用してもよく、例えば電磁石や電歪材料を含むがそれらに限らなく、同様に第一内歯車37へ軸方向の圧力を与えることができる。能動制御素子を採用する場合、第一摩擦力発生器39は実際の需要に応じて第一内歯車37が受ける軸方向の圧力、つまり第一内歯車37が受ける最大摩擦モーメントをリアルタイムかつ動的に調整でき、関節モジュールは様々な作業環境に適応しやすくなり、コンパクトかつ確実でコストの低い構造となる。
【0033】
前記第一内歯車37が受ける外力トルクは前記第一摩擦力発生器39により前記第一内歯車37に与えられる摩擦力トルクより小さいか等しくなると、前記第一内歯車37は動かず、前記第一内歯車37が受ける外力トルクは前記第一摩擦力発生器39により前記第一内歯車37に与えられる摩擦力トルクより大きくなると、前記第一内歯車37が摩擦回転するようになる。第一モーメント規制手段を設けることで、関節出力端が受ける外部衝撃による関節モジュール内部の第一減速機アセンブリ30等の部品の破損は回避され、そして、第一モーメント規制手段の作動による滑りによれば、減速機の日常運転による摩耗を均等化させることが可能になる。
【0034】
本発明による第二モーメント規制手段を増設した実施例
前記第二減速機アセンブリ40は、第二遊星歯車減速機と第二モーメント規制手段とを含み、前記第二モーメント規制手段は第二摩擦力発生器45を含み、前記第二遊星歯車減速機は第二内歯車48を含み、前記第二内歯車48の外輪側部は前記第二摩擦力発生器45に当接する。前記第二モーメント規制手段は、第二摩擦ディスク46と第二パッド47とをさらに含み、前記第二パッド47は前記第二内歯車48の外輪側部における前記第二摩擦力発生器45に近い側に設けられ、前記第二摩擦ディスク46は前記第二内歯車48の外輪側部の他側に設けられ、第二摩擦ディスク46と第二パッド47を設けることで、後日の保守交換が容易になる。前記第二摩擦力発生器45は皿ばね、波形ばね及びコイルばねを含むがそれらに限らない。押圧板49は前記第二摩擦力発生器45を押圧することで予圧が実現され、第二摩擦力発生器45は能動制御素子を採用してもよく、例えば電磁石や電歪材料を含むがそれらに限らなく、同様に第二内歯車48へ軸方向の圧力を与えることができる。能動制御素子を採用する場合、第二摩擦力発生器45は実際の需要に応じて第二内歯車48が受ける軸方向の圧力、つまり第二内歯車48が受ける最大摩擦モーメントをリアルタイムかつ動的に調整でき、関節モジュールは様々な作業環境に適応しやすくなり、コンパクトかつ確実でコストの低い構造となる。
【0035】
前記第二内歯車48が受ける外力トルクは前記第二摩擦力発生器45により前記第二内歯車48に与えられる摩擦力トルクより小さいか等しくなると、前記第二内歯車48は動かず、前記第二内歯車48が受ける外力トルクは前記第二摩擦力発生器45により前記第二内歯車48に与えられる摩擦力トルクより大きくなると、前記第二内歯車48は相対的に回転するようになる。第二モーメント規制手段を設けることで、関節出力端が受ける外部衝撃による関節モジュール内部の第二減速機アセンブリ40等の部品の破損は回避され、そして、第二モーメント規制手段の作動による滑りによれば、減速機の日常運転による摩耗を均等化させることが可能になる。
【0036】
本発明による中空軸を増設した実施例
前記第二モータアセンブリ4は第二出力軸44を有し、前記第一モータ・減速機アセンブリ3は中空軸構造を有することで、前記第二出力軸44は前記第一モータ・減速機アセンブリ3を通って第二減速機アセンブリ40の入力端に固定接続される。この構造によれば、二関節モジュールの高度な統合が実現され、モータの動力ケーブルが関節を通ることがなくなり、モータの動力ケーブルに発生する疲労や破損が回避される。
【0037】
本発明によるモータエンコーダと出力エンコーダを増設した実施例
前記第一モータ・減速機アセンブリ3は第一モータエンコーダと第一出力エンコーダとを有する。前記第二モータアセンブリ4は第二モータエンコーダを有し、前記第二減速機アセンブリ40は第二出力エンコーダを有する。前記第一モータエンコーダは、第一モータエンコーダ固定子91と第一モータエンコーダ回転子92とを含み、第一モータエンコーダ固定子91は第一モータケーシング31に固設され、第一モータエンコーダ回転子92は第一モータ回転子33に固定接続される。前記第一出力エンコーダは、第一出力エンコーダ固定子95と第一出力エンコーダ回転子96とを含み、第一出力エンコーダ固定子95は第一モータ固定子・巻線32に固設され、第一出力エンコーダ回転子96は第一減速機アセンブリ30の遊星キャリアに固定接続される。前記第二モータエンコーダは、第二モータエンコーダ固定子93と第二モータエンコーダ回転子94とを含み、前記第二出力エンコーダは、第二出力エンコーダ固定子97と第二出力エンコーダ回転子98とを含む。二つのエンコーダを使用することで、モータの回転角と関節出力端の回転角をより正確かつ同時に検出でき、関節の制御性能を向上させる。そして、二つのエンコーダによれば、関節モーメント規制により規制を行う場合に関節出力端の回転角を検出できる。第二モータエンコーダと第二出力エンコーダはそれぞれ両端に設けられることで、部品が第二モータエンコーダと第二出力エンコーダを通ることがなくなるので、第二モータエンコーダと第二出力エンコーダについて中心に穴を開けていないものを選択でき、コストの低下が図られている。
【0038】
本発明による無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントを増設した実施例
前記ロボット用の二関節モジュールは、無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントとを含み、前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントは放出コイルと受取コイルとを含み、放出コイルと受取コイルは円形であってもよいし、他の規則的又は不規則的な形状であってもよく、電気エネルギの伝達効率を高めるために、放出コイルと受取コイルは対向して平行に設けられる。前記無線信号伝達コンポーネントに採用される伝達方式はラジオや赤外光又はレーザである。無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントによれば、回転関節間の電気エネルギ伝達が実現され、関節間接続用のケーブルが省かれ、そして関節の継続回転が実現され、関節の可動範囲が大きくなる。
【0039】
前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントは、第一出力リンク1におけるコンポーネント及び第一出力リンク1の後に接続される他のコンポーネントに対して給電を行うためのものである。前記無線信号伝達コンポーネントは、第一出力リンク1におけるコンポーネント及び第一出力リンク1の後に接続される他のコンポーネントに対して通信を行うためのものである。無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントを設けることで、関節間接続用のケーブルが省かれ、構造が簡潔かつ確実になる。
【0040】
前記無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントは、前記第一モータ・減速機アセンブリ3と前記第一出力リンク1との間、あるいは、前記第一モータ・減速機アセンブリ3の内部に配置される。異なる位置に無線電気エネルギ伝達コンポーネントと無線信号伝達コンポーネントを取り付けることで、電気エネルギと信号の無線伝達が実現され、実現上の需要に応じて取付位置を選択でき、関節モジュールの統合度の向上に役立つ。
【0041】
本発明による関節アダプタ5とモータ放熱コンポーネントを増設した実施例
前記第一モータ・減速機アセンブリ3は第一モータケーシング31を含み、前記第一モータケーシング31の外側に関節アダプタ5が固設され、前記関節アダプタ5は前記第一モータ・減速機アセンブリ3を被覆する凹形構造を有する。関節アダプタ5と前記第一モータ・減速機アセンブリ3の固定用のねじの着脱を行えば、二関節の着脱を実現でき、構造がコンパクトかつ確実で、重量が軽い。前記第一モータ・減速機アセンブリ3と前記第二モータアセンブリ4にモータドライバとモータ伝熱・放熱コンポーネントが固定され、前記モータ伝熱・放熱コンポーネントの伝熱子10は、前記関節アダプタ5と前記第一モータケーシング31との間に開口された伝熱溝101内に設けられる(図6参照)。関節モジュールの統合度が一層向上し、関節モジュールの放熱状況がより良好になる。
【0042】
本発明によるロボット用の二関節モジュールでは、第一モータ・減速機アセンブリ3と第二モータアセンブリ4はいずれもアウターロータモータを採用する。アウターロータモータを採用することで、生産プロセスが簡単になり、コストが低くなる。
【0043】
本発明は、前述したすべての実施例によるロボット用の統合関節モジュールを備える歩行ロボットをさらに提供する。
【0044】
本願では前記した固定接続は、螺合や溶接や鋲接(リベット接合)やほぞ接ぎであってもよいし、他の部品を介して接続してもよく、当業者は実情に応じて選択可能である。
【0045】
上記した実施形態は本発明の好ましい実施形態に過ぎず、それにより本発明の保護範囲を限定するべきではなく、本発明に基づいて当業者によりなされたあらゆる非実質的な変形及び置換は本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…第一出力リンク、
11…第一ケーシング、
12…第二ケーシング、
2…第二出力リンク、
3…第一モータ・減速機アセンブリ、
30…第一減速機アセンブリ、
31…第一モータケーシング、
32…第一モータ固定子・巻線、
33…第一モータ回転子、
34…第一出力軸、
35…第一太陽歯車、
36…第一遊星歯車、
37…第一内歯車、
38…第一モータフレーム、
39…第一摩擦力発生器、
310…第一パッド、
311…第一摩擦ディスク、
4…第二モータアセンブリ、
40…第二減速機アセンブリ、
41…第二モータケーシング、
42…第二モータ固定子・巻線、
43…第二モータ回転子、
44…第二出力軸、
45…第二摩擦力発生器、
46…第二摩擦ディスク、
47…第二パッド、
48…第二内歯車、
49…押圧板、
5…関節アダプタ、
6…接続ロッド、
7…関節出力ロッカアーム、
81…電気エネルギ放出コイル、
82…電気エネルギ受取コイル、
91…第一モータエンコーダ固定子、
92…第一モータエンコーダ回転子、
93…第二モータエンコーダ固定子、
94…第二モータエンコーダ回転子、
95…第一出力エンコーダ固定子、
96…第一出力エンコーダ回転子、
97…第二出力エンコーダ固定子、
98…第二出力エンコーダ回転子、
10…伝熱子、
101…伝熱溝。
図1
図2
図3
図4
図5
図6