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  • 特許-タブリード封止用フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】タブリード封止用フィルム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/184 20210101AFI20230316BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20230316BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20230316BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20230316BHJP
   H01M 50/198 20210101ALI20230316BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20230316BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/186
H01M50/193
H01M50/197
H01M50/198
H01G11/80
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022132662
(22)【出願日】2022-08-23
【審査請求日】2022-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519205394
【氏名又は名称】ビージェイテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】立山 群司
(72)【発明者】
【氏名】高尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 直也
(72)【発明者】
【氏名】山崎 哲
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/006350(WO,A1)
【文献】特開2014-132538(JP,A)
【文献】特開2014-225378(JP,A)
【文献】特許第7120501(JP,B1)
【文献】特開2016-091939(JP,A)
【文献】特開2017-033820(JP,A)
【文献】特開2022-078571(JP,A)
【文献】国際公開第2021/100226(WO,A1)
【文献】特開2003-007269(JP,A)
【文献】特開2012-104503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材によって外包された電池において、前記外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムであって、
前記タブリード封止用フィルムがタブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなる積層フィルムであり、
中間層は、プロピレン単独重合体であり、
タブリード接着層は、酸変性ポリプロピレンであり、
外装材接着層は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体であり、
ここで、前記プロピレン単独重合体のJIS K 6921-2に準拠して測定される荷重たわみ温度が85℃以上であり、
前記酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点が140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが5.0~15g/10分である、タブリード封止用フィルム。
【請求項2】
外装材によって外包された電池において、前記外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムであって、
前記タブリード封止用フィルムがタブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなる積層フィルムであり、
中間層は、プロピレン単独重合体であり、
タブリード接着層は、酸変性ポリプロピレンであり、
外装材接着層は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又は酸変性ポリプロピレンであり、
ここで、前記プロピレン単独重合体のJIS K 6921-2に準拠して測定される荷重たわみ温度が85℃以上であり、
前記酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点が140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが5.0~15g/10分であり、
ここで、タブリード封止用フィルムの厚みが100μmであり、かつ、Tダイ押出成形法により、厚み100μmに成形したタブリード封止用フィルムについて、JIS K 6251-1に準拠し、23℃50%RH環境下、引張速度200mm/分で測定した10%伸長時の荷重が23~31N/10mmである、タブリード封止用フィルム。
【請求項3】
前記プロピレン単独重合体のJIS K 6921-2に準拠して測定される荷重たわみ温度が100℃以上である、請求項1又は2に記載のタブリード封止用フィルム。
【請求項4】
プロピレン単独重合体のJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点が160℃~165℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが2.0~9.5g/10分である、請求項1又は2に記載のタブリード封止用フィルム。
【請求項5】
前記酸変性ポリプロピレンが無水マレイン酸変性ポリプロピレンである、請求項1又は2に記載のタブリード封止用フィルム。
【請求項6】
タブリード封止用フィルムの総厚が100~500μmであり、中間層の厚みが前記総厚の40%~70%である、請求項1に記載のタブリード封止用フィルム。
【請求項7】
タブリード封止用フィルムの総厚が100μmであり、中間層の厚みが前記総厚の40%~70%である、請求項2に記載のタブリード封止用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装材によって外包された電池において、外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
タブリードは、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ等に使用されるセル内部から電気を取り出すためのリード線である。近年、ラミネート型のリチウムイオン電池及びキャパシタは、電気自動車、ハイブリッド車等のバッテリー容量の大型化及び出力の増大が要求されている。このようなラミネート型の電池及びキャパシタにおいて、タブリード周りの封止性、耐電解液性、絶縁性等を確保するために、外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムを使用することが知られている。
【0003】
特許文献1には、リチウム電池金属端子部密封用接着性フィルムが開示されており、該フィルムは、金属端子と当接する層が酸変性ポリオレフィン層からなる単層ないし多層のポリオレフィンフィルムであり、該ポリオレフィンフィルムの少なくとも一つの層が充填剤を含有した構成であることが示されている。特許文献2には、扁平型電気化学セル金属端子部密封用接着性シートが開示されており、該シートは、絶縁性粒子が分散した酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる絶縁性粒子分散層の両面を、酸変性ポリオレフィン系樹脂で被覆した構成であることが示されている。特許文献1のフィルム及び特許文献2のシートを用いることにより、包装体のアルミニウム等の金属箔からなるバリア層と金属端子との短絡を防止して安定した状態で密封することができ、水蒸気バリア性等にも優れることが示されている。
【0004】
また、特許文献3には、プロピレン系樹脂にプロピレン系熱可塑性エラストマーが配合された樹脂組成物から成り、架橋構造を有する端子接着用テープが開示されており、短絡防止効果を奏する架橋構造を、活性エネルギー線を用いて構築することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-174825号公報
【文献】特開2009-87628号公報
【文献】特開2014-63679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン電池及びキャパシタのバッテリー容量の大型化及び出力の増大に伴い、タブリードの形状は厚く、幅広化しており、それに起因する発熱に対処すべく、耐熱性の高いタブリード封止用フィルムが求められている。また、このような厚く、幅広化したタブリードを、密閉性を保ちつつ安定した状態で外装材に固定しておくために、タブリード封止用フィルムは、柔軟性だけではなく剛性も求められる。すなわち、タブリード封止用フィルムは、従来のタブリード周りの封止性、耐電解液性、絶縁性等に加えて、高温環境での耐電解液性及び高剛性が要求されている。特許文献1~3の接着性フィルム等は、金属端子との短絡防止効果を奏するものの、フィルムの高温環境での耐電解液性及び剛性は不十分であった。
【0007】
本発明は、外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムであって、高温環境での耐電解液性に優れ、剛性が高いフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、タブリード封止用フィルムの層構成を鋭意検討した結果、タブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなる積層フィルムとし、プロピレン単独重合体を主成分とした中間層を使用し、各接着層を特定の樹脂から構成することにより、高温環境での耐電解液性に優れ、剛性が高いフィルムとすることができることを見出した。
【0009】
本発明は、以下の[1]~[7]に関する。
[1]外装材によって外包された電池において、前記外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムであって、前記タブリード封止用フィルムがタブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなる積層フィルムであり、
中間層100質量%に対し、プロピレン単独重合体の含有割合が50~100質量%であり、プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選択されるプロピレン系樹脂の含有割合が0~50質量%であり;タブリード接着層は、酸変性ポリプロピレンであり;外装材接着層は、前記プロピレン系樹脂であり、
ここで、前記酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点が140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが5.0~15g/10分である、タブリード封止用フィルム。
[2]中間層を構成する前記プロピレン系樹脂がプロピレンとエチレンとのブロック共重合体である、[1]に記載のタブリード封止用フィルム。
[3]プロピレン単独重合体のJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点が160℃~165℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが2.0~9.5g/10分である、[1]又は[2]に記載のタブリード封止用フィルム。
[4]外装材接着層を構成する前記プロピレン系樹脂が、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又は前記酸変性ポリプロピレンである、[1]~[3]のいずれか1つに記載のタブリード封止用フィルム。
[5]前記酸変性ポリプロピレンが無水マレイン酸変性ポリプロピレンである、[1]~[4]のいずれか1つに記載のタブリード封止用フィルム。
[6]タブリード封止用フィルムの総厚が100~500μmであり、中間層の厚みが前記総厚の40%~70%である、[1]~[5]のいずれか1つに記載のタブリード封止用フィルム。
[7]Tダイ押出成形法により、厚み100μmに成形したタブリード封止用フィルムについて、JIS K 6251-1に準拠し、23℃50%RH環境下、引張速度200mm/分で測定した10%伸長時の荷重が23~31N/10mmである、[1]~[6]のいずれか1つに記載のタブリード封止用フィルム。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高温環境での耐電解液性に優れ、剛性が高いタブリード封止用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明に係るラミネート型の電池又はキャパシタの一例を示す図である。
図2図2は、図1のA-A’線断面図(A側半分)である。
図3図3は、本発明のタブリード封止用フィルムの層構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のタブリード封止用フィルムは、タブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなる積層フィルムであり;中間層100質量%に対し、プロピレン単独重合体の含有割合が50~100質量%であり、プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選択されるプロピレン系樹脂の含有割合が0~50質量%であり;タブリード接着層は、酸変性ポリプロピレンであり;外装材接着層は、前記プロピレン系樹脂であり;ここで、前記酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点が140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが5.0~15g/10分である。中間層のプロピレン単独重合体の含有割合を50~100質量%とし、各接着層を上記の樹脂から構成することにより、高温環境での耐電解液性に優れ、剛性が高いタブリード封止用フィルムとすることができる。
【0013】
図1は、本発明に係るラミネート型の電池又はキャパシタの一例を示す図である。ラミネート型の電池又はキャパシタは、正極板及び負極板を、セパレータを介して積層した積層電極群と電解液(いずれも図示せず)とを、少なくとも金属箔層及びヒートシール層を積層した多層フィルムからなる外装材3に封入し、正極板に接続したタブリード9、負極板に接続したタブリード10を、タブリード封止用フィルム2を介して外装材3のヒートシール層により密閉封止した状態で取り出して構成される。リード導体1の縦方向の一方の端部は、外装材3から外側に露出され外部装置等への接続端子とされ、他方の端部は、外装材3内で電池の電極板リードとの接続部とされる。なお、リード導体の縦方向とは、外部装置等への接続端子とするために外装材から外側に露出されるリード導体の方向を意味する。リード導体の厚み方向とは、リード導体の縦方向に対して垂直であり、厚みが最も小さい方向を意味し、リード導体の幅方向とは、リード導体の縦方向に対して垂直であり、厚み方向ではない方向を意味する。
【0014】
外装材3は、ラミネート型電池又はキャパシタの外装ケースとなるものである。外装材3に用いる多層フィルムは、少なくとも金属箔層及びヒートシール層を積層したものである。多層フィルムは、金属箔層のヒートシール層とは反対側の面に、保護層を有していてもよい。外装材3は、例えば、長方形の2枚の多層フィルムの周辺のヒートシール層同士を、熱融着により接着することにより袋状に密閉される。タブリード9及び10は、タブリード封止用フィルム2を解して、多層フィルムのヒートシール層と熱融着されてタブリード9及び10と多層フィルムとが密閉される。
【0015】
図2は、図1のA-A’線断面図(A側半分)である。タブリード封止用フィルム2は、帯状のリード導体1の縦方向の両端部を含む領域を除く、前記縦方向の一部の領域の外周を覆うように熱融着される。タブリード封止用フィルム2は、リード導体1と外装材3を構成する多層フィルム中の金属箔層とを絶縁する機能をも有する。
【0016】
図3は、本発明のタブリード封止用フィルムの層構成を示す図である。中間層11は、フィルムの剛性及び耐電解液性を重点的に機能させる層である。中間層11の一方の面に、タブリード接着層12が積層され、中間層11の他方の面に、外装材接着層13が積層される。タブリード接着層12は、タブリード9及び10と熱接着し、外装材接着層13は、多層フィルム1のヒートシール層と熱接着する。
【0017】
中間層11、タブリード接着層12及び外装材接着層13は、シリカ、酸化アルミニウム等の充填剤を含んでもよいが、各層の製膜性、充填剤の均一分散性及びコストの観点から充填剤を実質的に含まないことが好ましい。本発明において、「実質的に含まない」とは、各層100質量%中の充填剤の含有割合が1.0質量%未満であることを意味し、好ましくは0.5質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。
【0018】
[中間層]
本発明において、中間層100質量%に対し、プロピレン単独重合体の含有割合が50~100質量%であり、プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選択されるプロピレン系樹脂(以下、単に「プロピレン系樹脂」ともいう。)の含有割合が0~50質量%である。このような中管層を用いることにより、剛性及び高温環境での耐電解液性に優れたタブリード封止用フィルムとすることができる。
中間層は、タブリード封止用フィルムに、高温環境での耐電解液性を付与する主要な層である。高温環境での耐電解液性を確保するために要求される特性として、電解液に対する低膨潤性及び高温時の剛性が挙げられる。結晶性が高いプロピレン系樹脂ほど、電解液に対する膨潤性が低い傾向がある。また、高温時の剛性の指標として、樹脂の荷重たわみ温度(JIS K 6921-2)が挙げられ、例えば、電解液の温度が85℃となる環境を想定すると、樹脂の荷重たわみ温度は85℃以上とすることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。プロピレン単独重合体は、その他のプロピレン系樹脂に比べ、結晶性が高く、かつ、荷重たわみ温度を85℃以上とすることが容易であり、中間層100質量%に対するプロピレン単独重合体の含有割合を50~100質量%とすることにより、高温環境での耐電解液性を達成することができる。
プロピレン単独重合体の含有割合が50質量%未満であると、タブリード封止用フィルムの高温環境での耐電解液性が悪化する。中間層100質量%に対するプロピレン単独重合体の含有割合は、50~100質量%であることが好ましく、70~100質量%であることがより好ましい。また、中間層100質量%に対するプロピレン系樹脂の含有割合は、0~50質量%であることが好ましく、0~30質量%であることがより好ましい。
【0019】
<プロピレン単独重合体>
プロピレン単独重合体は、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等を用いて、プロピレンを単独重合する方法により得ることができる。高温環境での耐電解液性の観点から、プロピレン単独重合体のJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点は、160~165℃であることが好ましい。本発明において、融点は、示差走査熱量計(DSC)にて、サンプルを窒素気流中、10℃/分の速度で-50℃から200℃まで昇温した場合のDSC曲線における融解ピーク温度である。
【0020】
フィルムの押出加工性の観点から、プロピレン単独重合体のJIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるメルトフローレート(MFR)は、2.0~9.5g/10分であることが好ましく、3.0~7.5g/10分であることがより好ましい。
【0021】
プロピレン単独重合体は市販されており、例えば、サンアロマー(登録商標)PC600A、同PL500A(いずれもサンアロマー株式会社製)等を例示することができる。
【0022】
<プロピレン系樹脂>
プロピレン系樹脂は、プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選択される。プロピレン系樹脂は、共重合体を構成する全単量体100モル%中のプロピレン単量体の割合が50モル%以上である重合体である。
【0023】
(プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体)
プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体は、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等を用いて製造することができる。該共重合体としては、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン3元共重合体等を例示することができる。該共重合体は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0024】
(酸変性ポリプロピレン)
酸変性ポリプロピレンとしては、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物等でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂;プロピレンとアクリル酸、メタクリル酸等との共重合体;金属架橋ポリプロピレン系樹脂等が挙げられる。酸変性ポリプロピレンは、エチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンを共重合したものであってもよい。
【0025】
熱接着性、高温環境での耐電解液性及び押出加工性の観点から、酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点は、140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRは、5.0~15g/10分である。
【0026】
これらの中でも、高温環境での耐電解液性の観点から、中間層を構成する前記プロピレン系樹脂は、プロピレンとエチレンとのブロック共重合体であることが好ましい。プロピレンとエチレンとのブロック共重合体は市販されており、例えば、サンアロマー(登録商標)PC480A(サンアロマー株式会社製)等を例示することができる。
【0027】
[タブリード接着層]
タブリード接着層は、酸変性ポリプロピレン樹脂である。タブリード接着層に酸変性ポリプロピレン樹脂を用いることにより、タブリードとの接着性及び耐電解液性に優れたタブリード封止用フィルムとすることができる。タブリード接着層は、本発明の目的を妨げない範囲で、酸変性ポリプロピレン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。タブリード接着層100質量%中の酸変性ポリプロピレン樹脂の含有割合は、90~100質量%であり、95~100質量%であることが好ましい。
【0028】
酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点は、140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRは、5.0~15g/10分である。酸変性ポリプロピレンの融点及びMFRを上記範囲とすることにより、タブリードとの接着性及び高温環境での耐電解液性に優れたタブリード封止用フィルムとすることができる。酸変性ポリプロピレンの融点は、140~148℃であることが好ましい。酸変性ポリプロピレンのMFRは、5.7~15g/10分であることが好ましい。
【0029】
酸変性ポリプロピレンとしては、中間層で例示したものを使用することができる。なかでも、タブリードとの接着性及び耐電解液性の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0030】
酸変性ポリプロピレンは市販されており、例えば、アドマー(登録商標)QF551(三井化学株式会社製、融点:145℃、MFR:5.7g/10分)、アドマー(登録商標)QE840(三井化学株式会社製、融点:140℃、MFR:9.2g/10分)、モディック(登録商標)P587(三菱ケミカル株式会社製、融点:148℃、MFR:15g/10分)等を例示することができる。
【0031】
[外装材接着層]
外装材接着層は、前記プロピレン系樹脂である。外装材接着層に前記プロピレン系樹脂を用いることにより、外装材との接着性に優れたタブリード封止用フィルムとすることができる。外装材接着層は、本発明の目的を妨げない範囲で、前記プロピレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。外装材接着層100質量%中の前記プロピレン系樹脂の含有割合は、90~100質量%であり、95~100質量%であることが好ましい。
【0032】
外装材に対する接着性の観点から、外装材接着層を構成する前記プロピレン系樹脂は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合体又は前記酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。また、タブリード封止用フィルムの表裏を取り違えることによる、タブリードに対する接着不良等を防止するために、外装材接着層は、タブリード接着層と同様の層とすべく、前記酸変性ポリプロピレンであることがより好ましい。酸変性ポリプロピレンとしては、中間層で例示したものを使用することができる。なかでも、外装材に対する接着性の観点から、無水マレイン酸変性ポリプロピレンであることが特に好ましい。
【0033】
酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠し、窒素気流中、昇温速度10℃/分で測定される融点は、140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRは、5.0~15g/10分である。酸変性ポリプロピレンの融点及びMFRを上記範囲とすることにより、外装材との接着性に優れたタブリード封止用フィルムとすることができる。酸変性ポリプロピレンの融点は、140~148℃であることが好ましい。酸変性ポリプロピレンのMFRは、5.7~15g/10分であることが好ましい。
【0034】
プロピレンとエチレンとのランダム共重合体は市販されており、例えば、サンアロマー(登録商標)PC540R(サンアロマー株式会社製)等を例示することができる。
【0035】
[その他の成分]
中間層、タブリード接着層及び外装材接着層は、それぞれ、本発明の目的を妨げない範囲で、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料等の着色剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0036】
[層構成]
タブリード封止用フィルムは、タブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなる積層フィルムである。タブリード封止用フィルムは、これらの層以外の層を含んでいてもよい、また、各層は、それぞれ、配合が異なる2層以上の層から構成されていてもよい。
【0037】
タブリードの厚みは、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましい。また、タブリードの厚みに対するタブリード封止用フィルムの端部封止性、及び前記封止用フィルム付タブリードの厚みに対する外装材の端部封止性の観点から、前記封止用フィルムの総厚は、100~500μmであることが好ましく、100~400μmであることがより好ましく、100~200μmであることがさらに好ましい。前記封止用フィルムの絶縁性の観点から、中間層の厚みは、前記総厚の40%~70%であることが好ましく、50%~70%であることがより好ましく、50%~60%であることがさらに好ましい。
タブリード及び外装材との熱接着性の観点から、タブリード接着層及び外装材接着層の厚みは、それぞれ、前記総厚の15~30%であることが好ましく、15~25%であることがより好ましく、20~25%であることがさらに好ましい。
【0038】
[タブリード封止用フィルムの製造方法]
タブリード封止用フィルムは、公知の共押出法で3層共押出しして、所定の厚みの3層フィルムとして製造することができる。
【0039】
[タブリード封止用フィルムの物性]
フィルムの剛性の観点から、Tダイ押出成形法により、厚み100μmに成形した3層タブリード封止用フィルムについて、JIS K 6251-1に準拠し、23℃50%RH環境下で、引張速度200mm/分で測定した10%伸長時の荷重が23~31N/10mmであると好ましい。
【0040】
[タブリード封止用フィルムの用途]
本発明のタブリード封止用フィルムは、タブリード及び外装材に対する接着性及び密閉性に優れるとともに、剛性が高く、高温時の耐電解液性に優れる。タブリード封止用フィルムは、高容量及び高出力のラミネート型の電池及びキャパシタ、特に、リチウムイオン電池及びリチウムイオンキャパシタに好適に使用することができる。
【実施例
【0041】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明をさらに詳細に説明する。
【0042】
[使用原料]
実施例及び比較例で使用した原料は、以下のとおりである。なお、各樹脂の融点は、JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量計(DSC)にて、サンプルを窒素気流中、10℃/分の速度で-50℃から200℃まで昇温した場合のDSC曲線における融解ピーク温度である。また、各樹脂のMFRは、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定した値である。
【0043】
<酸変性ポリプロピレン>
(a-1)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製、アドマー(登録商標)QF551、融点:145℃、MFR:5.7g/10分)
(a-2)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製、アドマー(登録商標)QE840、融点:140℃、MFR:9.2g/10分)
(a-3)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三菱ケミカル株式会社製、モディック(登録商標)P587、融点:148℃、MFR:15g/10分)
(a-4)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製、アドマー(登録商標)AT3401、融点:136℃、MFR:8.0g/10分)
(a-5)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製、アドマー(登録商標)QF500、融点:165℃、MFR:3.0g/10分)
【0044】
<プロピレン単独重合体>
(h-1)プロピレン単独重合体(サンアロマー株式会社製、サンアロマー(登録商標)PC600A、融点:162℃、MFR:7.5g/10分、荷重たわみ温度(0.45MPa):102℃(カタログ値))
(h-2)プロピレン単独重合体(サンアロマー株式会社製、サンアロマー(登録商標)PL500A、融点:162℃、MFR:3.0g/10分、荷重たわみ温度(0.45MPa):96℃(カタログ値))
【0045】
<プロピレン-エチレン共重合体>
(b-1)プロピレン-エチレンブロック共重合体(サンアロマー株式会社製、サンアロマー(登録商標)PC480A、融点:160℃、MFR:2.0g/10分、荷重たわみ温度(0.45MPa):83℃(カタログ値))
(r-1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(サンアロマー株式会社製、サンアロマー(登録商標)PC540R、融点:132℃、MFR:5.3g/10分、荷重たわみ温度(0.45MPa):59℃(カタログ値))
【0046】
実施例1
3層Tダイ共押出成形機を用い、タブリード接着層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(a-1)25μm、中間層としてプロピレン単独重合体(h-1)50μm、及び外装材接着層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン(a-1)25μmをこの順で積層して、総厚100μmの3層からなるタブリード封止用フィルムを得た。
押出成形時のダイス部温度は、タブリード接着層:230~240℃、中間層:250~270℃、外装材接着層:230~240℃であった。
【0047】
実施例2~11及び比較例1~7
タブリード接着層、中間層及び外装材接着層の配合及び厚みを表1のように変更した以外は、実施例1と同様にして、3層からなるタブリード封止用フィルムを得た。
【0048】
実施例及び比較例のフィルムの評価方法は、以下のとおりである。
<10%伸長時荷重>
実施例及び比較例のフィルムをJIS K 6251-1に規定するダンベル形状にて打ち抜き、試験片を用意した。試験片を23℃50%RH環境下に24時間保存した。その後、同条件下で、JIS K 6251-1に準拠し、引張速度200mm/分で、10%伸長時の荷重を測定した。測定は5回繰り返し、その平均値を10%伸長時の荷重とした。結果を表1に示す。
【0049】
<電解液浸漬前後の接着強度>
長さ60mm×幅20mm×厚み0.4mmのアルミニウム板(株式会社UACJ製、A1N30)に3価クロメート処理を実施した。こうして得たアルミニウム板を被着体に用い、該被着体とタブリード封止用フィルムのタブリード接着層とを対向させ、190℃に加熱した上下のヒートシールバーの間に80μm厚のガラスクロス含侵耐熱シートを介して挟み、0.6Mpa及び5秒間の条件で接着した。
得られた接着試験片を、蒸留水1,000ppmを添加したエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1:1中の1mol/L LiPF電解液に浸漬し、85℃の恒温槽中に3日間放置した後、恒温槽から取り出して、接着試験片をジメチルカーボネート溶液で洗浄した後、水洗及び乾燥した。
電解液を浸漬しない接着試験片(以下、「未処理」と表記)と電解液浸漬後の接着試験片とを23℃50%RH環境下で24時間保管し、同条件下で、JIS K 6854-2に準拠して、引張速度100mm/分で、接着強度を測定した。測定は5回繰り返し、その平均値を接着強度とした。結果を表1に示す。なお、比較例7のフィルムは、3価クロメート処理をしたアルミニウム板に接着できなかったため、電解液浸漬試験を行わなかった。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示すとおり、中間層100質量%に対し、プロピレン単独重合体の含有割合が50~100質量%であり、タブリード接着層が特定の酸変性ポリオレフィンであり、外装材接着層がエチレン-プロピレンランダム共重合体又は特定の酸変性ポリオレフィンである実施例1~11のタブリード封止用フィルムは、剛性が高く、電解液浸漬前後の接着性が優れている。
実施例1、5及び6の比較、並びに実施例9及び10の比較より、中間層がプロピレン単独重合体のみで構成された実施例1及び9は、剛性及び耐電解液性が一段と優れ、好ましい。
【0052】
各接着層を構成する酸変性ポリプロピレンの融点が136℃である比較例1~3及び6は、剛性及び電解液浸漬前後の接着性に劣る。各接着層を構成する酸変性ポリプロピレンの融点が140℃~150℃であるものの、中間層中のプロピレン単独重合体の含有割合が50質量%未満である比較例4及び5は、剛性及び電解液浸漬前後の接着性に劣る。各接着層を構成する酸変性ポリプロピレンの融点が165℃である比較例7は、3価クロメート処理をしたアルミニウム板に接着できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のタブリード封止用フィルムは、ラミネート型のリチウムイオン電池及びリチウムイオンキャパシタに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 リード導体
2 タブリード封止用フィルム
3 外装材(金属箔ラミネート多層フィルム)
9 正極側のタブリード
10 負極側のタブリード
11 中間層
12 タブリード接着層
13 外装材接着層
【要約】
【課題】外装材とタブリードとを接着するタブリード封止用フィルムであって、高温環境での耐電解液性に優れ、剛性が高いフィルムを提供する。
【解決手段】タブリード接着層、中間層及び外装材接着層の順に積層した、少なくとも3層からなるタブリード封止用フィルム。中間層100質量%に対し、プロピレン単独重合体の含有割合が50~100質量%であり、プロピレンとエチレン又は炭素数4以上のα-オレフィンとの共重合体及び酸変性ポリプロピレンからなる群より選択されるプロピレン系樹脂の含有割合が0~50質量%である。タブリード接着層は、酸変性ポリプロピレンであり、外装材接着層は、前記プロピレン系樹脂である。ここで、前記酸変性ポリプロピレンのJIS K 7121に準拠して測定される融点が140℃~150℃であり、JIS K 7210-1に準拠し、230℃及び2.16kg荷重で測定されるMFRが5.0~15g/10分である。
【選択図】 なし
図1
図2
図3