(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】電圧検出器一体型手袋
(51)【国際特許分類】
A41D 19/00 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
A41D19/00 Z
(21)【出願番号】P 2022549241
(86)(22)【出願日】2020-08-12
(86)【国際出願番号】 IB2020057572
(87)【国際公開番号】W WO2021136986
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2019/001379
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522261031
【氏名又は名称】ステイプルズ,グラント エドワード
【氏名又は名称原語表記】STAPLES, Grant Edward
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(72)【発明者】
【氏名】ステイプルズ,グラント エドワード
【審査官】津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0209448(US,A1)
【文献】米国特許第10247763(US,B1)
【文献】米国特許第09939468(US,B1)
【文献】中国実用新案第207639713(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107898028(CN,A)
【文献】中国実用新案第204409675(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 19/00-19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触で交流電圧を検出する手袋であって、前記手袋は、
人の手の形状を有する外層であって、手の甲部、手首部、掌部、および複数の指部を備え、前記複数の指部のそれぞれは上部および下部を含む、外層と、
人の手の形状を有する内層であって、手の甲部、手首部、掌部、および複数の指部を備え、前記複数の指部のそれぞれは上部および下部を含み、前記内層は、前記外層の内側に収まっている、内層と、
(a)前記外層の前記複数の指部のそれぞれの前記上部と前記内層の前記複数の指部のそれぞれの前記上部との間、(b)前記外層の前記手の甲部と前記内層の前記手の甲部との間、および(c)前記外層の前記手首部と前記内層の前記手首部との間に配置された、フレキシブルな誘電体層と、
前記誘電体層と前記外層との間に配置されたフレキシブル回路基板と、を備え、
前記フレキシブル回路基板は、
誘電体基板と、
複数のサーペンタインプリント回路であって、各サーペンタインプリント回路は各指の付け根のあたりから遠位端のあたりまで延在し、各サーペンタインプリント回路は単極のアンテナとして機能する、複数のサーペンタインプリント回路と、
複数の電子コンポーネントであって、前記複数の電子コンポーネントは、低帯域通過フィルタ、高帯域通過フィルタ、電圧検出器、電源、アナンシエータ、および接地コンタクト部を含む、複数の電子コンポーネントと、
前記複数の電子コンポーネントを接続するための複数のパッドと、
前記複数のサーペンタインプリント回路と前記複数のパッドとを接続する複数のプリント回路と、を備え
前記接地コンタクト部は、導電性材料を含み、かつ、前記内層の前記手首部に配置されており、
前記アナンシエータは、前記電圧検出器が前記アンテナへの交流電圧の近接を検出すると、前記手袋のユーザに警告するように構成されている、手袋。
【請求項2】
前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器は、ディスクリート回路を用いて実装されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
前記複数の電子コンポーネントは、特定用途向け集積回路(ASIC)をさらに含み、
前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器は、前記ASICに実装されている、請求項1に記載の手袋。
【請求項4】
前記複数の電子コンポーネントは、マイクロコントローラをさらに含み、
前記マイクロコントローラは、プロセッサおよび不揮発性メモリを有し、
前記不揮発性メモリは、前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器の少なくとも1つの実装に関連する計算を実行するための命令を含み、
前記不揮発性メモリは、前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器の少なくとも1つの実装に関する計算結果を格納するための命令を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項5】
前記誘電体層は、厚さが約3mmのネオプレンを含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項6】
前記電源は、電池を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項7】
前記アナンシエータは、前記交流電圧の近接を前記ユーザに警告するために音を発する、請求項1に記載の手袋。
【請求項8】
前記ユーザが前記電源のオン/オフを行うことができるように構成されたスイッチをさらに備える、請求項1に記載の手袋。
【請求項9】
前記外層が、皮革、綿、羊毛、キャンバス、ゴム、ラテックス、ナイロン、ネオプレン、ニトリル、ポリビニル、ポリエチレン、絹、ケブラー、ポリウレタン、テフロン、および金属繊維からなる群より選ばれた1以上の材料からなり、
前記内層が、綿、絹、羊毛および皮革からなる群から選ばれた1つ以上の材料からなる、請求項1に記載の手袋。
【請求項10】
非接触で交流電圧を検出する手袋であって、前記手袋は、
人の手の形状を有する外層であって、手の甲部、手首部、掌部、および複数の指部を備え、前記複数の指部のそれぞれは上部および下部を含む、外層と、
人の手の形状を有する内層であって、手の甲部、手首部、掌部、および複数の指部を備え、前記複数の指部のそれぞれは上部および下部を含み、前記内層は、前記外層の内側に収まっている、内層と、
(a)前記外層の前記複数の指部のそれぞれの前記上部と前記内層の前記複数の指部のそれぞれの前記上部との間、(b)前記外層の前記手の甲部と前記内層の前記手の甲部との間、および(c)前記外層の前記手首部と前記内層の前記手首部との間に配置された、フレキシブル回路基板と、を備え、
前記フレキシブル回路基板は、
誘電体基板と、
複数のサーペンタインプリント回路であって、各サーペンタインプリント回路は各指の付け根のあたりから遠位端のあたりまで延在し、各サーペンタインプリント回路は単極のアンテナとして機能する、複数のサーペンタインプリント回路と、
複数の電子コンポーネントであって、前記複数の電子コンポーネントは、低帯域通過フィルタ、高帯域通過フィルタ、電圧検出器、電源、アナンシエータ、および接地コンタクト部を含む、複数の電子コンポーネントと、
前記複数の電子コンポーネントを接続するための複数のパッドと、
前記複数のサーペンタインプリント回路と前記複数の電子コンポーネントとを接続する複数のプリント回路と、を備え
前記接地コンタクト部は、導電性材料を含み、かつ、前記内層の前記手首部に配置されており、
前記アナンシエータは、前記電圧検出器が前記アンテナへの交流電圧の近接を検出すると、前記手袋のユーザに警告するように構成されている、手袋。
【請求項11】
前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器は、ディスクリート回路を用いて実装されている、請求項10に記載の手袋。
【請求項12】
前記複数の電子コンポーネントは、特定用途向け集積回路(ASIC)をさらに含み、
前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器は、前記ASICに実装されている、請求項10に記載の手袋。
【請求項13】
前記複数の電子コンポーネントは、マイクロコントローラをさらに含み、
前記マイクロコントローラは、プロセッサおよび不揮発性メモリを有し、
前記不揮発性メモリは、前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器の少なくとも1つの実装に関連する計算を実行するための命令を含み、
前記不揮発性メモリは、前記低帯域通過フィルタ、前記高帯域通過フィルタ、および前記電圧検出器の少なくとも1つの実装に関する計算結果を格納するための命令を含む、請求項10に記載の手袋。
【請求項14】
前記電源は、電池を含む、請求項10に記載の手袋。
【請求項15】
前記アナンシエータは、前記交流電圧の近接を前記ユーザに警告するために音を発する、請求項10に記載の手袋。
【請求項16】
前記ユーザが前記電源のオン/オフを行うことができるように構成されたスイッチをさらに備える、請求項10に記載の手袋。
【請求項17】
前記外層が、皮革、綿、羊毛、キャンバス、ゴム、ラテックス、ナイロン、ネオプレン、ニトリル、ポリビニル、ポリエチレン、絹、ケブラー、ポリウレタン、テフロン、および金属繊維からなる群より選ばれた1以上の材料からなり、
前記内層が、綿、絹、羊毛および皮革からなる群から選ばれた1つ以上の材料からなる、請求項10に記載の手袋。
【請求項18】
非接触で交流電圧を検出する手袋であって、前記手袋は、
人の手の形状を有する外層であって、手の甲部、手首部、掌部、および複数の指部を備え、前記複数の指部のそれぞれは上部および下部を含む、外層と、
人の手の形状を有する内層であって、手の甲部、手首部、掌部、および複数の指部を備え、前記複数の指部のそれぞれは上部および下部を含み、前記内層は、前記外層の内側に収まっている、内層と、
前記外層の前記複数の指部のそれぞれの前記下部と前記内層の前記複数の指部のそれぞれの前記下部との間に配置された第1フレキシブル回路基板と、
前記手の甲部または前記掌部において、前記外層と前記内層との間に配置された第2フレキシブル回路基板と、を備え、
前記第1フレキシブル回路基板は、
誘電体基板と、
複数のサーペンタインプリント回路であって、各サーペンタインプリント回路は各指の付け根のあたりから遠位端のあたりまで延在し、各サーペンタインプリント回路は単極のアンテナとして機能する、複数のサーペンタインプリント回路と、を備え、
前記第2フレキシブル回路基板は、
誘電体基板と、
複数の電子コンポーネントであって、前記複数の電子コンポーネントは、低帯域通過フィルタ、高帯域通過フィルタ、電圧検出器、電源、アナンシエータ、および接地コンタクト部を含む、複数の電子コンポーネントと、
前記複数の電子コンポーネントを接続するための複数のパッドと、
前記複数のサーペンタインプリント回路を前記複数のパッドに接続する複数のプリント回路と、を備え
前記接地コンタクト部は、導電性材料を含み、かつ、前記内層の前記手首部に配置されており、
前記アナンシエータは、前記電圧検出器が前記アンテナへの交流電圧の近接を検出すると、前記手袋のユーザに警告するように構成されている、手袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
PCT/IB2019/001379、2019年12月31日出願。
【背景技術】
【0002】
交流の商用利用は、1世紀以上にわたって世界を変え続け、世界のあらゆる近代的成長の大きな原動力となっている。住宅、オフィスビル、工場、船舶は全て交流を使用している。しかしながら、交流は五感で簡単に検出できる存在ではないため、作業者が無意識に交流の露出源に接触する可能性のある環境では、交流によって作業者が負傷したり死亡したりする危険がある。例えば、配電盤で作業している電気技師が、電源がオフになっていると伝えられていたとしても、その後、別の作業者が配電盤に再通電した可能性がある。別の例として、送電線が暴風によってダウンしていた可能性のある場合、最初の応答者は送電線が「生きて(通電状態で)」いるかどうか分からない。別の例として、壊れた銅管を修理している配管工は、建物の他の場所で露出した電線が、同じ銅管の遠端に接触したことに気付かない場合がある。毎年、何千件もの偶発的な感電死が発生している。電気事故は、労災関連の外傷性死亡事故原因の第4位を占める。
【0003】
交流の存在を検出するために、作業者は、交流導体の周りで変化する電界および磁界を検出する非接触型交流電圧検出器を使用することがある。非接触で交流電圧を検出する技術はよく理解されており、市販の携帯型検出器も容易に入手可能である。しかし、市販の携帯型検出器は、ユーザが工具箱やポケットから検出器を取り出し、検出器のプローブを導電性材料に近づけてから、検出器を工具箱やポケットに戻す必要があるという点で不便である。この不便さが、偶発的な感電死の実際のリスクに発展する可能性がある。例えば、作業の開始時に、電気技師は、携帯型検出器を用いて、回路ボックスが通電されていないことを確認することができる。しかし、回路ボックスの作業中に、誰かが回路ボックスに電源を再接続する危険性がある。最善策としては、電気技師が定期的にライブ電圧(live voltage)の存在を確認する必要があるが、実際問題として、電気技師は最善策に従わないことを選択したり、単にライブ電圧の存在を必要なだけ頻繁に確認することを忘れたりする場合がある。
【0004】
より良い解決策として、非接触型交流電圧検出器を、作業者が作業遂行の一部として携帯または装着するものに組み込むことが考えられる。一つの選択肢として、手袋のような、作業者が手に装着するものが考えられる。ただし、手袋に組み込まれた電圧検出器は、手袋自体がその主な目的、すなわち手を保護し、および/または、物品を拾い上げて保持するための追加の握力を与える衣類としての使用、に依然として有用である場合にのみ、作業者にとって価値があるものとなる。実際には、手袋としても電圧検出器としても有用な手袋を製造することは困難であることが判明している。例えば、米国特許第10,247,763号は、アンテナ(aerial / antenna)部材を手袋の指の先端の周りに延在させる必要がある「電圧検出手袋」を開示している。このような構造は、電圧検出器としての手袋の性能を向上させることができるものの、実際の手袋としての性能を低下させてしまう。第2の例として、米国特許出願公開第2016/0209448号は、従来の手袋に縫い付けたポケットに取り付けられた従来の非接触型電圧検出器にすぎない「電圧検出器安全手袋」を開示している。しかしながら、この構造では、検出された信号の質および強度に対して人体が及ぼす影響が考慮されていないようである。第3の例として、国際公開第2014/158030号は、手の甲および/または指に組み込まれたワイヤループアンテナを用いた「電気エネルギー検出手袋」を開示している。しかしながら、実際には、ワイヤループアンテナは、多くの欠点を有する。このような欠点として、ワイヤループアンテナは、近くの交流電圧を検出するために(潜在的に危険な)すぐそばに配置される必要があること、検出された信号がループを通過する際に強度を失う可能性が高いこと、および、開示された構造が単一の故障点(a single point of failure)を有することが挙げられる。
【0005】
このように、電圧検出器の性能および手袋の性能のいずれにも悪影響を与えることなく、既存の手袋の構造に組み込むことができる電圧検出器の構造が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明による手袋の実施形態は、日常の作業用手袋に、その手袋の性能に悪影響を与えることなく、交流電圧検出器を組み込むという課題を解決するものである。より詳細には、本発明による手袋の実施形態は、手袋の各指部の上部に延在する薄く且つ軽量の単極アンテナ(aerial)を用いる。アンテナは、電気的バリアとして機能する誘電体材料の薄い層でユーザの指から分離されている。このため、安全な距離から、近くの交流電圧に対して適切な感度が得られる。また、ユーザが手袋を導電材料に対して特定の角度で保持する必要がない。さらに、通常着用や破損または物理的衝撃により一部のアンテナが機能しなくなった場合でも、交流電圧検出器は機能し続けることができる。
【0007】
さらに、本発明の手袋の実施形態は、アンテナに接続された交流(AC)電圧検出および警告回路を含む。この回路は、少なくとも、交流電圧の存在を検出し、バックグラウンドノイズを除去し、危険な交流電圧の存在をユーザに警告する機能を提供する。この回路は、ユーザの身体に物理的に接触する接地接続部を含んでおり、これにより、検出回路は交流電圧の存在に対してより敏感になる。この感度の向上により、ユーザの手からアンテナを分離する誘電体層をより薄くすることができる。この結果、手袋を不必要に硬くして手袋としての有用性を低下させることを回避できる。
【0008】
さらに、いくつかの実施形態では、検出回路は、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサ、不揮発性メモリ、加速度計、GPS受信機、モーションパワー(motion-powered)充電器、視覚、音声、および/または触覚警告コンポーネント、ならびに、有線または無線の通信インターフェースを備えてもよい。このような追加のコンポーネントは、交流電圧の検出には不要であるが、本発明の手袋にさらなる有益な利便性および動作特性を与える。
【0009】
図面および以下の詳細な説明を参照すれば、本発明の手袋の他の代替実施形態が当業者に認識され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の手袋の一実施形態の上面側の切断面図である。
【
図2】本発明の手袋の一実施形態の手首部分の切断面図である。
【
図3】本発明の手袋の一実施形態の人差し指部分の側面側の切断面図である。
【
図4】本発明の手袋の一実施形態における回路基板の論理レイアウト図である。
【
図5】本発明の手袋の一実施形態における回路基板のコンポーネントによって実行される機能を示すブロック図である。
【
図6】本発明の手袋の一実施形態の上面側の切断面図である。
【
図7】本発明の手袋の一実施形態の手首部分の切断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の手袋は、様々な実施形態で実施され得る。様々な実施形態は、当業者が大規模な実験をすることなく本発明を製造および使用できるように十分な詳細を提供する以下の第1実施形態、および、特定の用途および構成に有益であることが示され得る第1実施形態の変形を含む。
【0012】
本発明の手袋の様々な実施形態を説明する目的で、本開示では、手袋の複数の部分を、人間の手と一般に関連する用語に相当する用語を用いて言及する。そのような用語は、例えば、「指部」(指骨に相当)、「掌部(palm)」(手根骨および中手骨の掌側に相当)、「手の甲部(back)」(手根骨および中手骨における裏側(手の甲側)に相当)、および手首部(手根および手根と橈骨との関節に相当)等を含む。さらに、手袋の指部は、装着時に手の掌側に隣接する部分と、背面側に隣接する部分とを有する。識別のために、本開示では、手袋の指部の掌側および背面側を示すために「下(bottom)」および「上(top)」を用いている。さらに、手袋は、内側部分(すなわち、ユーザの手に最も隣接する側)および外側部分(すなわち、外部要素に面する側)を有する。識別のために、本開示では、手袋の内側部分および外側部分を示すために「内側」および「外側」という用語を使用する。
【0013】
<第1実施形態>
本発明の手袋の第1実施形態において、手袋100は、外層110、内層120、回路基板130、(ワイヤ
141、143を介して接続された)接地ボタン(ground buttons)140、
142、複数の単極アンテナ150a、150b、150c、150d、150e(アンテナ150と総称される)、および誘電体層160を備える。
図1、
図2、
図3は、手袋100の様々な図を示す。
【0014】
アンテナ150の各々は、約3メートルの40ゲージポリウレタン絶縁銅リッツ線(Litz wire)を含む。このリッツ線の大部分は、手袋の各指部の上側に平らに横たわるコイル状に配置されている。短く、概して直線状のリッツ線のセグメントが回路基板130に向かって延在し、回路基板130に接続されている。コイル状の部分の幅は約18mmである。アンテナ150b、150c、150d、150eのコイル状セグメントに直線セグメントを加えた合計長さは約100mmである。アンテナ150a(親指)のコイル状セグメントおよび直線セグメントの合計長さは約70mmである。手袋が装着されたとき、平らにされたコイルは、ユーザの指の形状に合うようにわずかに曲がり得る。各アンテナ150のコイル状部分は、各ユーザの指の指関節のあたりから各ユーザの指の先端まで延在し得る。しかしながら、重要なことは、装着されたとき、アンテナ150のいずれの部分もユーザの指先を越えて延在しないので、アンテナの存在が、物を拾い上げる、物を保持するなどの典型的な作業に関連する活動のための手袋の使用を妨げないことである。
【0015】
接地ボタン140、142は、導電性材料を含み、装着時にユーザの手首でユーザの手の皮膚に接触するように意図されている。そのようなものとして、手袋100は、接地ボタン140、142の内側がユーザの手と電気的に接触するように手袋100を固定するためのベルクロリストストラップ(図示せず)を備える。接地ボタン140は、ワイヤ141を介して回路基板130に電気的に接続され、ワイヤ143によって接地ボタン142に電気的に接続される。接地ボタン140、接地ボタン142、およびワイヤ143は、接地ボタン140および接地ボタン142の少なくとも一部が内層120の開口部内でユーザの手首に露出するように、手袋100の手首部で外層110の内側に縫い付けられている。
【0016】
アンテナ150は、誘電体層160と外層110との間において手袋100の指部内に配置され、接着剤で誘電体層160に機械的に取り付けられる。誘電体層160は、3mmのネオプレンであり、アンテナ150によって検出された交流電圧のユーザの手への漏れを防止する。誘電体層160は、手袋100の各指部の上面(アンテナ150のコイル状部分の下)を通り、手袋100の手の甲部(アンテナ150および回路基板130の下)を横切って延在している。
【0017】
外層110は、ユーザの手、アンテナ150、および回路基板130を機械的リスクから保護する。外層110は、牛皮シボ革から作られる。内層120は、綿材料を含む。綿材料は、ユーザの快適さを与え、ユーザの手を回路基板130および誘電体層160に直接接触しないように分離する。外層110および内層120の両方はユーザの手の形状に沿っている。外層110および内層120は、内層120を外層110内の概ね固定された位置に保つために、それぞれの手首部分および必要に応じて他の部分で縫い合わされている。
【0018】
回路基板130は、アンテナ150からの信号を処理するための従来の低電力電子機器を備える。
図4は、回路基板130の論理レイアウトを示す。回路基板130は、(アンテナ150が接続される)アンテナコネクタ131、(ワイヤ141が接続される)接地コネクタ132、(ブロック
図170に記載された機能を実行するために必要な種々の抵抗器、コンデンサ、トランジスタ、トレース等を有する)交流電圧検出コンポーネント133、表面実装ブザー134、および(回路基板130に電力を供給する2つのCR2032 3vコインセル電池を保持するのに好適な)表面実装コインセルホルダー135、136を備える。回路基板130のコンポーネント(部品)は、回路基板レイアウトを設計する技術分野における当業者に知られているように、最適な性能を提供するように物理的に配置されている。
【0019】
図5に示すブロック
図170は、アンテナ150から信号が届いたときの回路基板130のコンポーネントの機能を示す。アンテナ150からの電気信号は、最初に帯域通過フィルタ171を通過する。帯域通過フィルタ171は、例えば低周波の静電場やスイッチモード電源による高周波の場など、非常に低い周波数の信号と非常に高い周波数の信号とを除去する。帯域通過フィルタ171から出力された信号は、次に周波数比較器(comparator)172を通過する。比較器172は、フィルタリングされた信号と基準信号とを比較する。フィルタリングされた信号が基準信号よりも高い周波数を有する場合、比較器172の出力は低くなり、フィルタリングされた信号が基準信号よりも低い周波数を有する場合、比較器172の出力は高くなる。したがって、十分に強い交流電圧が存在する場合、比較器172から出力される信号は、アンテナ150によって受信される電気信号の周波数と等しい周波数を有する方形波である。この信号は、ピーク検出器173に供給される。ピーク検出器173は、比較器172からの信号のピーク値に等しい直流電圧を出力する。ピーク検出器173の出力は、十分な信号を受信したときに可聴警報を発する音声アナンシエータ174の回路を駆動する。このように、アンテナ150が商用交流電圧に近接しているとき、検出された電圧によってアナンシエータ174は可聴警報を発する。アンテナ150が商用交流電圧に近接していないとき、アナンシエータ174は無音のままである。
【0020】
<代替・追加実施形態>
前述の実施形態で説明した本発明の手袋は、手袋が(a)手袋としての有用性を維持し、(b)安全な距離で交流電圧を検出する能力を維持する限り、本発明の手袋の趣旨から逸脱することなく、当業者によって変更および/または拡張することが可能である。これらの修正および拡張のうちのいくつかの選択は、特定の用途に使用される場合の性能の観点から、本発明の手袋の一般的な動作の質に影響を与えてもよい。他の修正および拡張は、製造コスト、材料の入手可能性、物理的制約、および本発明の手袋の一般的動作とは無関係な他の要因によってもたらされてもよい。以下の変形例では、本発明の手袋の一般的な機能性に影響を与えることなく、必要に応じて、かつ技術的に実現可能であるように組み合わせることができる他の実施形態の例を非排他的に説明する。
【0021】
いくつかの実施形態では、外層110は、特定の用途での使用に適した材料を含む。例えば、外層110は、綿、ウール、キャンバス、ゴム、ラテックス、ナイロン、ネオプレン、ニトリル、ポリビニル、ポリエチレン、絹、ケブラー、金属繊維などの天然または合成材料、およびこれらの材料のブレンドを含んでもよい。さらに、外層110は、ポリウレタン、テフロン、ニトリル、およびラテックスなどの外側コーティングをさらに含んでもよい。さらに、外層110の一部はある材料を含み、他の一部は他の材料を含んでもよい。例えば、手袋100の指先の前面側は、ユーザのグリップを強化する材料を含んでもよく、手首部分は、手袋100のフィット感を強化するフレキシブルな(柔軟な)材料から作られていてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、内層120は、特定の用途での使用に適した材料を含む。例えば、内層120は、絹、ウール、革などの自然または合成材料、およびそのような材料のブレンドを含んでもよい。さらに、いくつかの実施形態では、内層120は、糸、接着剤、または当業者に一般的に知られている他の適切な手段を用いて外層110に完全に取り付けられている。さらに、いくつかの実施形態では、外層110と内層120との間に、軽量の熱絶縁材料を含む層が存在してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、(a)アンテナ150が安全な距離で交流電圧に対して十分な感度を保ち、(b)重量および/または柔軟性の点で手袋の使用性を妨げないという条件で、アンテナ150の長さ、構成および組成が変化してもよい。例えば、アンテナ150は、より薄いまたはより厚いゲージのワイヤを含んでもよく、固体(非リッツ)ワイヤを含んでもよい。さらに、アンテナ150は、重なり合うコイル以外の構成で配置されてもよく、例えば、ワイヤは、手袋100の指関節部分と指先部分とを結ぶ線に対して平行、直交、または斜めに並んで延在するように配置されてもよい。さらに、アンテナ150の長さおよび構成は、交流電圧の特定の周波数に対して最適化された性能を発揮するように調整されてもよい。さらに、アンテナ150の全線長は、手袋のサイズおよび手袋の指の長さに従って変化してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、アンテナ150は、回路基板130上のサーペンタインプリント回路(蛇行状のプリント回路、serpentine printed circuits)を含んでもよい。回路基板130は、ポリイミドまたはポリエステルなどの単層または多層のフレキシブル誘電体基板を含む。
図6に示すように、そのような実施形態では、回路基板130は、手袋100の指部の上部を通り、手袋100の手の甲部および手首部の一部を通って延在する。回路基板130は、パッドを有する部分130aを含む。部分130aには、交流電圧検出コンポーネント133、表面実装ブザー134、および表面実装コインセルホルダー135、136が実装され得る。さらに、回路基板130上のプリント回路は、アンテナ150、部分130aに実装されたコンポーネント、および接地ボタン140、141の間の直接的または間接的な接続を提供する。いくつかの関連する実施形態では、回路基板130の誘電体基板は、誘電体層160としても機能し得る。いくつかの関連する実施形態において、回路基板の部分130aは、従来のエッジコネクタ技術を用いて回路基板130に接続され得るディスクリート回路(discrete circuits)基板であってもよい。いくつかの関連する実施形態では、電気部品のいくつかは、回路基板130上の部分130a以外の場所に実装されてもよい。いくつかの関連する実施形態では、誘電体層160は回路基板130の下だけに配置されてもよく、他の実施形態では、誘電体層160は手袋100の手の甲部全体および手首部まで延在していてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、アンテナ150は、手袋100の指部の上部ではなく、手袋100の指部の下部に配置されてもよい。
図7に示すように、手袋100の指部の下部は、内層120に隣接する誘電体層160と、誘電体層160と外層110との間のアンテナ150とを有する。この構成によって、アンテナ150が手袋100の「作業」側に配置されるので、アンテナ150を保護するためにいくつかの追加措置が求められる場合がある。例えば、外層110は、より厚くされたり、より強い材料から構成されたり、および/または複数の層を含んだりする必要があり得る。また、アンテナ150は、フレキシブル回路基板上のプリント回路を含んでもよい。フレキシブル回路基板は、回路基板130の一部であってもよいし、回路基板130に接続され、かつ、手袋100の手の甲部または掌部に位置する別の回路基板であってもよい。このような追加措置は、外部交流電圧を検出するためのアンテナ150の感度を低下させる可能性があるので、アンテナ150は、手袋100の掌部の内部に延在していてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、単一の接地コンタクト部があってもよく、それは手袋100の他の場所、例えば、手首部の前面側または背面側に位置する接地ボタンとして、配置されてもよい。または、ユーザの手と接触するように設計された様々な場所に複数の接地ボタンがあってもよい。さらに、接地コンタクト部は、例えば手袋の手首部を取り囲むことによってユーザの手と接触するように位置付けられた導電性材料のリボン、リベット、またはストリップであってもよい。さらに、接地コンタクト部は、手袋100のフィッティングを調節するために使用されるスナップ、ボタン、フック、またはジッパーとして機能することもできる。さらに、接地コンタクト部は、所定の位置に接着、縫製、またはリベット留めされていてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、手袋100は、手袋100の用途に適した手段を用いて、ユーザの手首に固定されてもよい。例えば、手袋100は、手袋100の手首に縫い付けられ若しくは取り付けられた弾性体、調節可能なストラップ、スナップ、または伸縮性材料を用いて固定されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態において、誘電体層160は、その材料の厚さまたは組成が手袋100の重量または柔軟性に悪影響を及ぼさないという条件で、より厚いまたはより薄いネオプレンまたは他のフレキシブルな(可撓性の)誘電体材料を含んでもよい。さらに、誘電体層160は、より薄い材料の使用を可能にしつつ、その誘電特性を強化するコーティングまたは塗料を含んでもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、アナンシエータ174は、可聴警報の代わりに、または可聴警報に加えて、他の警報機構を備えてもよい。例えば、アナンシエータ174は、「検出器が機能している、危険なし」の場合は緑色点灯、「危険」の場合は赤色点滅などのように、異なる状態を示す複数のLEDを有してもよい。さらに、可聴警報は、交流電圧の近さおよび/または強度に応じて音の高さ(pitch)または音量を変化させてもよい。さらに、アナンシエータ174は、危険な交流電圧が検出されたときに振動する触覚インジケータを備えてもよい。このような触覚インジケータは、騒がしい環境において有用性が示され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、プリント回路基板130の一部または全部のコンポーネントによって提供される機能性は、特定用途向け集積回路(ASIC)によって実行され得る。ASICを使用することにより、プリント回路基板130に実装された回路の占有面積を減少させることができ、したがって、プリント回路基板130のサイズおよび重量を減少させることができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、プリント回路基板130の一部または全部のコンポーネントによって提供される機能性は、低電力マイクロコントローラによって実行され得る。プログラム可能なマイクロコントローラを使用することにより、例えば、検出された信号をより良く分析して誤検出を減らすことができる。また、特定の動作環境に対して手袋100を最適化し、強度、周波数、および高調波歪みなどの検出された信号に関する追加情報を抽出し、後のアクセスのためにマイクロコントローラの不揮発性メモリに重要なイベントを記録する(logging)など、より高度なカスタマイズ可能な機能を提供することができる。重要なイベントは、例えば、危険電圧の検出、電源のオン/オフ、構成(configuration)の変更、再校正などを含む。さらに、回路基板130にGPS受信機を追加することにより、重要なイベントに関して記録された情報に位置情報を提供することができる。さらに、プログラム可能なマイクロコントローラの存在によって、以下の段落で説明するように外部接続を簡素化することができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、回路基板130は、手袋100をポータブルコンピュータ、スマートフォン、またはコンピュータネットワークなどの外部デバイスに接続するための通信ハードウェアをさらに備える。通信ハードウェアは、USB若しくはLightningポートなどの有線コネクタを含んでもよく、またはBluetooth、ZigBee、IEEE 802.11x、若しくは他の無線プロトコルでの使用に適した無線トランシーバを含んでもよい。回路基板130上に回路の一部としてのマイクロコントローラが存在すると、そのようなマイクロコントローラが統合(integrated)トランシーバおよび埋め込みプロトコルスタックを含み得るので、外部通信が簡素化される。手袋100は、例えば作業者の上司に即時の報告を行うために、リアルタイムで重要なイベントの発生を外部デバイスに送信し得る。または、手袋100は、作業日の終わりに、例えば手袋100が再充電のために外部デバイスにプラグインされるときに、非リアルタイムで重要なイベントの発生を外部デバイスに送信し得る。さらに、外部デバイスは、外部デバイス上で実行されるアプリケーションソフトウェアを介して、マイクロプロセッサに構成、ソフトウェア更新、および他の動作情報(operational information)を送信し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、回路基板130の電源は、最充電可能な電池(充電式電池)を含んでもよい。充電式電池は、例えば、USBケーブルを介して、手袋100を電源に物理的に接続することによって、手袋100を無線充電パッドに近接して置くことによって、手袋100に組み込まれた運動エネルギー充電器によって、または手袋100が検出するように設計されている電界によって、再充電され得る。後者の実施形態では、電界によって集められた少量のエネルギーを蓄えるためのエネルギー貯蔵回路(蓄電回路)が必要になり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、回路基板130でアンテナ150を介して受信された信号は、帯域通過フィルタ(バンドパスフィルタ)171を通過する前にコンディショニングされ得る。例えば、そのようなコンディショニングとして、接地された大きなレジスタを使用して、帯域通過フィルタ171への入力が、交流電圧が存在しない場合を除いて低いまま維持されていることを確実にしてもよい。回路基板130は、また、帯域通過フィルタ171によって受信される信号を最大化するために、アンテナ150のインピーダンスを一致させるためのコンポーネントを含んでもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、アンテナ150を介して受信された信号は、個別に処理および分析され得る。そのような個別の信号処理によって、例えば、アンテナ150に対する交流電圧の物理的位置に関する追加情報が提供され得る。
【0036】
いくつかの実施形態では、例えば、ユーザがコンピュータのタッチスクリーンなどの何らかの外部デバイスと物理的に接触できるように、手袋の指部の端が露出されることが有用な場合がある。そのような実施形態では、外層110、内層120、および誘電体層160の指部分は、指先まで延在しなくてもよい。アンテナ150は、感度の低下を犠牲にして短くされてもよい。あるいは、感度を維持するために、アンテナ150のコイル状部分は、手袋100の手の甲部分まで延在していてもよいし、または、より密にコイル状に巻いていてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、回路基板130のコンポーネントの機能は、手動または動的に構成可能であってよい。例えば、米国では、交流電圧は60Hzであるが、オーストラリアでは、交流電圧は50Hzである。手袋100上の手動スイッチは、回路をある周波数から別の周波数に変更することができてもよい。あるいは、回路は、手袋100をアクティブな交流電圧導体の近くに保持することによって、自動的に適切な周波数となるように構成されていてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、交流電圧信号を送信するように構成された追加のアンテナが、手袋100に組み込まれ得る。これにより、回路基板130のコンポーネントを定期的に検査し、適切に動作していることを確認することが可能になる。
【0039】
いくつかの実施形態では、低電圧検出回路が、回路基板130のコンポーネントに組み込まれ得る。これにより、電源(例えば、オンボードバッテリー)が弱すぎて適切な動作ができないことをユーザに警告することが可能になる。
【0040】
いくつかの実施形態では、加速度計などの運動検出器は、手袋100が使用されていないときを感知して、回路基板130のコンポーネントを低電力スリープモードに設定し得る。運動検出器はまた、手袋100が使用されているときを感知して、回路基板130のコンポーネントを通常の動作モードに戻し得る。他の実施形態では、手袋100は、ユーザが回路基板130への電力のオン/オフを可能にする電源スイッチを備えてもよい。