(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】時計伝達カップリング
(51)【国際特許分類】
G04B 13/02 20060101AFI20230316BHJP
G04B 19/02 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G04B13/02 Z
G04B19/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018127939
(22)【出願日】2018-07-05
【審査請求日】2021-06-11
(32)【優先日】2017-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599091346
【氏名又は名称】ロレックス・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】ROLEX SA
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベラン, ラウル
(72)【発明者】
【氏名】フラシェボー, ブレーズ
(72)【発明者】
【氏名】ズビリュット, ルドヴィク
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-22144(JP,A)
【文献】特開平2-21029(JP,A)
【文献】実開昭54-074568(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00 - 99/00
F16D 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1軸(A2)周りに回転運動可能な第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ(2A)の、少なくとも第2軸(A3)周りに回転運動可能な第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ(3A)への機械式リンケージ用時計伝達カップリング(100)であって、前記第1及び第2軸は平行または実質的に平行であり、前記伝達カップリングは、
前記第1シャフト(21)の前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、
前記第2シャフト(31)の前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)と、
前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)との間の遊びを制限または相殺するよう配置された、少なくとも第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)と、
を含み、
前記少なくとも1つの第1戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)とを機械的に接続
し、
前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は、第1滑り面の第2滑動要素(22)の第2突出要素を含み、及びまたは第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は、第2滑り面の第2滑動要素(32;32a、32b)の第2突出要素を含む、
伝達カップリング。
【請求項2】
前記伝達カップリングは、前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステムがその上に固定されるフレーム(15a、16a;17;115、117;210)を含む、
請求項1に記載の伝達カップリング。
【請求項3】
前記伝達カップリングは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)との間の遊びを制限または相殺するよう配置された第2弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;112a、112b;221、222、223、224)を含み、前記第2戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)とを機械的に接続する、
請求項1または2に記載の伝達カップリング。
【請求項4】
前記伝達カップリングは、第1滑り面の第1滑動要素(11)を含み、及びまたは前記伝達カップリングは、第2滑り面の第2滑動要素(12;12a、12b)を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【請求項5】
前記伝達カップリングは、第1滑り面の第1滑動要素(11)、及び第2滑り面の第2滑動要素(12;12a、12b)を含み、前記第1滑動要素及び前記第2滑動要素は、前記第1軸(A2)または前記第2軸(A3)の方向へ、または前記第1滑り面の第3軸(D1)及び前記第2滑り面の第4軸(D4)に垂直な方向へ延長し、軸部分(z1、z2)上に重なり合う、
請求項1から3のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【請求項6】
前記第1滑動要素は、溝(11)またはいくつかの溝
を含み、及びまたは前記第2滑動要素は、溝(12)またはいくつかの溝(12a、12b)
を含み、及びまたは前記第1滑動要素は少なくとも1つの摩擦面(13)を含み、及びまたは前記第2滑動要素は少なくとも1つの摩擦面(14)を含む、
請求項4または5のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【請求項7】
前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)及び前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は、前記第1軸の方向または前記第2軸の方向に延長し、軸部分(Z1、Z2)に重畳される、
請求項1から4のいずれか一項
に記載の伝達カップリング。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステムは、
前記第1滑り面を弾性的に戻すよう設計される、1以上の第1弾性ブレード(18;16a’~16d’)を含み、及びまたは前記第2弾性戻しシステムは、
前記第2滑り面を弾性的に戻すよう設計される、1以上の第2弾性ブレード(18;16a’~16d’)を含む、
請求項
4から
6のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【請求項9】
前記第1弾性戻しシステム(111a、111b)は、
平行または実質的に平行な2つの弾性変形可能アーム(111a、111b)を含み、及びまたは第2弾性戻しシステム(112a、112b)は、
平行または実質的に平行な2つの弾性変形可能アーム(112a、112b)を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【請求項10】
前記伝達カップリングは第1受け要素(113)を含み、前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステムは、前記第1軸に沿って前記第1受け要素を位置させるために変形するよう配置され、及びまたは前記伝達カップリングは第2受け要素(114)を含み、前記第2弾性戻しシステムは、前記第2軸に沿って前記第2受け要素を位置させるために変形するよう配置される、
請求項9に記載の伝達カップリング。
【請求項11】
前記フレームは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、前記第2軸に設けられた少なくとも1つのペグ(311、312、313、314)と協働するよう設計された少なくとも1つのカム面(211、212、213、214
)を含み、前記フレームの前記第1弾性戻しシステム(221、222、223、224)は、前記少なくとも1つのカム面に設けられた少なくとも1つの弾性ブレードを含む、
請求項2に記載の伝達カップリング。
【請求項12】
前記フレームは、位数Nの回転対称で配置されたN個のカム面及びまたはN個の弾性ブレードを含み、ここでNは2以上の整数であり、及びまたは前記カム面はそれぞれ摩擦面を含む、
請求項11に記載の伝達カップリング。
【請求項13】
伝達カップリング(100)用時計機械式リンケージ要素(10;110;210)であって、前記機械式リンケージ要素は、第1シャフト(21)から第2シャフト(31)へ、回転の動きを伝達するよう設計され、前記第2シャフトは前記第1シャフトに対して偏心し、前記リンケージ要素は、
前記第1シャフト(21)を受けるための第1構造(11;113;220)と、
前記第2シャフト(31)を受けるための第2構造(12;114;211、212、213、214)と、
前記第1または前記第2受け構造と協働するよう配置された、少なくとも第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、22
2、223、224)と、
を含む、時計機械式リンケージ要素と、
前記第1シャフト(21)の少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、
前記第2シャフト(31)の少なくとも1つの第2パーツ(3A)と、
を含み、
前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は
、第1滑り面の第2滑動要素(22
)の第2突出要素を含み、及びまたは第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は
、第2滑り面の第2滑動要素(32;32a、32b)
の第2突出要素を含む、
伝達カップリング。
【請求項14】
前記第2突出要素は、長方形または実質的に長方形のまたはペグの形状である、
請求項1から13のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の伝達カップリング、歯車列(110)、及びディスプレイ要素(6)を含み、前記第1シャフトは前記歯車列と噛合し、前記第2シャフトは前記ディスプレイ要素と噛合する、
クロック機構(200)。
【請求項16】
請求項1から
14のいずれか一項に記載の伝達カップリング、
または請求項15に記載の機構を含む、
小型時計ムーブメント(300)。
【請求項17】
請求項16に記載のムーブメント、または請求項15に記載の機構、または請求項1から
14のいずれか一項に記載の伝達カップリン
グを含む、
時計(400)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計用の機械式伝達カップリング用の機械式リンケージ要素に関する。本発明は時計用の機械式伝達カップリングに関する。本発明はまた、当該伝達カップリングを含むクロック機構に関する。本発明は更に、当該伝達カップリングまたは当該機構を含む小型時計ムーブメントに関する。本発明はまた、当該伝達カップリングまたは当該機構または当該ムーブメントを含む、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
モジュール式小型時計ムーブメントは、先行技術から既知である。
【0003】
特許文献1は、当該ムーブメントがその一部を構成する腕時計のディスプレイユニットの配置に応じて、交換可能かつ位置決め可能なモジュールを有するムーブメントを開示する。このため、各モジュールのための複数の位置決め開口部を含む、基板に対するモジュールの一方または他方に関する位置を変更することにより、同じムーブメントの異なる変形例を得ることができる。このため、ムーブメントの異なる変形例の区別は、ムーブメントの組立プロセスとして、特に残りのムーブメントに対するモジュールの組立として行われる。
【0004】
特許文献2は同様に、当該ムーブメントがその一部を構成する腕時計のディスプレイユニットの配置に応じて、交換可能かつ位置決め可能なモジュールを有するムーブメントを開示する。このため、各モジュールのための複数の位置決め開口部を含む、基板に固着された中間支持物に対するモジュールの一方または他方に関する位置を変更することにより、同じムーブメントの異なる変形例を得ることができる。このため、ムーブメントの異なる変形例の区別は、ムーブメントの組立プロセスとして、特に残りのムーブメントに対するモジュールの組立として行われる。
【0005】
当該デザインは、基本ムーブメントが組み立てられた後に、時計の特定のディスプレイ要素の配置を調整することが求められた場合に、問題を生じることがある。なぜならば、基板または中間支持物に対する少なくとも1つのモジュールの完全な再配置を必要とするためである。更に、当該ムーブメントに関連する異なる動作パーツの組立の正確性は、各モジュールの実施に必要となる中間ムーブメントブランクの数の多さに鑑み、補償することが難しい場合もある。このため、当該解決策は満足できるものではない。
【0006】
特許文献3は、回転軸が実質的に平行な、小型時計ムーブメントの第1軸部と小型時計ケースの第2軸部との間の、等速回転の動きの伝達用装置を開示する。当該装置は、特に、2つの軸部の回転軸の接点に配置される、オルダムカップリングの形状で存在するリンケージ要素を含む。当該要素は、2つの軸部のそれぞれの回転軸に実質的に垂直な、2つの別個の平面にそれぞれ配置される2つのスライドを有する。当該実施形態は、特定の適用に関しては適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第2085833号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2442191号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2275883号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の不都合を改善し、従来技術から既知の装置を改良した伝達カップリングを提案することにある。特に、本発明は、正確且つ等速または実質的に等速の動きの伝達を可能とする伝達カップリングを提案する。本発明はまた、小型で、小型時計ムーブメントに特に良く適合する伝達カップリングを提案する。本発明は更に、正確且つ等速または実質的に等速の動きの伝達を可能とする機械式伝達カップリング用機械式リンケージ要素を提案する。最後に本発明は、小型で、小型時計ムーブメントに特に良く適合する機械式伝達カップリング用機械式リンケージ要素を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様によれば、伝達カップリングは以下の定義で特定される。
【0010】
1. 少なくとも第1軸(A2)周りに回転運動可能な第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ(2A)の、少なくとも第2軸(A3)周りに回転運動可能な第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ(3A)への伝達カップリング(100)、特に時計用伝達カップリング及びまたは等速伝達カップリングであって、前記第1及び第2軸は平行または実質的に平行であり、前記伝達カップリングは、
前記第1シャフト(21)の前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、
前記第2シャフト(31)の前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)と、
前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)との間の遊びを制限または相殺するよう配置された、少なくとも第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)と、
を含み、
前記少なくとも1つの第1戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)とを機械的に接続する、伝達カップリング。
【0011】
2. 前記伝達カップリングは、前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステムがその上に固定されるフレーム(15a、16a;17;115、117;210)を含む、定義1に記載の伝達カップリング。
【0012】
3. 前記伝達カップリングは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)との間の遊びを制限または相殺するよう配置された第2弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;112a、112b;221、222、223、224)を含み、前記第2戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)とを機械的に接続する、定義1または2に記載の伝達カップリング。
【0013】
4. 前記伝達カップリングは、第1滑り面の第1滑動要素(11)を含み、及びまたは前記伝達カップリングは、第2滑り面の第2滑動要素(12;12a、12b)を含む、
定義1から3のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【0014】
5. 前記伝達カップリングは、第1滑り面の第1滑動要素(11)、及び第2滑り面の第2滑動要素(12;12a、12b)を含み、前記第1滑動要素及び前記第2滑動要素は、前記第1軸(A2)または前記第2軸(A3)の方向へ、または前記第1滑り面の第3軸(D1)及び前記第2滑り面の第4軸(D4)に垂直な方向へ、延長し、軸部分(z1、z2)上に重なり合う、定義1から3のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【0015】
6. 前記第1滑動要素は、溝(11)またはいくつかの溝を、特に1以上の直線的滑り面を含み、及びまたは前記第2滑動要素は、溝(12)またはいくつかの溝(12a、12b)を、特に1以上の直線的滑り面を含み、及びまたは前記第1滑動要素は少なくとも1つの摩擦面(13)を含み、及びまたは前記第2滑動要素は少なくとも1つの摩擦面(14)を含む、定義4または5のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【0016】
7. 前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)及び前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は、前記第1軸の方向または前記第2軸の方向に延長し、軸部分(Z1、Z2)に重畳される、定義1から4のいずれか一項に、または定義4及び6に記載の伝達カップリング。
【0017】
8. 前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステムは、1以上の第1弾性ブレード(18;16a’~16d’)を含み、及びまたは前記第2弾性戻しシステムは、1以上の第2弾性ブレード(18;16a’~16d’)を含む、定義1から7のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【0018】
9. 前記第1弾性戻しシステム(111a、111b)は、少なくとも1つの弾性変形可能アーム(111a、111b)を含み、及びまたは第2弾性戻しシステム(112a、112b)は、少なくとも1つの弾性変形可能アーム(112a、112b)を含む、定義1から3のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【0019】
10. 前記伝達カップリングは、第1受け要素(113)を含み、前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステムは、前記第1軸に沿って前記第1受け要素を位置させるために変形するよう配置され、及びまたは前記伝達カップリングは、第2受け要素(114)を含み、前記第2弾性戻しシステムは、前記第2軸に沿って前記第2受け要素を位置させるために変形するよう配置される、定義9に記載の伝達カップリング。
【0020】
11. 前記フレームは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、前記第2軸に設けられた少なくとも1つのペグ(311、312、313、314)と協働するよう設計された少なくとも1つのカム面(211、212、213、214)、特に少なくとも1つの円形開口部とを含み、前記フレームの前記第1弾性戻しシステム(221、222、223、224)は、前記少なくとも1つのカム面に設けられた少なくとも1つの弾性ブレードを含む、定義2に記載の伝達カップリング。
【0021】
12. 前記フレームは、位数Nの回転対称で配置された、N個のカム面及びまたはN個の弾性ブレードを含み、ここでNは2以上の整数であり、及びまたは前記カム面はそれぞれ摩擦面を含む、定義11に記載の伝達カップリング。
【0022】
13. 前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は、前記第1滑り面の第2滑動要素(22)、特に長方形または実質的に長方形のまたはペグの形状の第2突出要素を含み、及びまたは前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は、前記第2滑り面の第2滑動要素(32;32a、32b)、特に長方形または実質的に長方形のまたはペグの形状の第2突出要素を含む、定義1から12のいずれか一項に記載の伝達カップリング。
【0023】
本発明の第1態様によれば、リンケージ要素は、以下の定義で特定される。
14. 伝達カップリング(100)用機械式リンケージ要素(10;110;210)であって、前記機械式リンケージ要素は、第1シャフト(21)から第2シャフト(31)へ、回転の動きを伝達するよう設計され、特に等速的に回転の動きを伝達するよう設計され、前記第2シャフトは前記第1シャフトに対して偏心し、前記リンケージ要素は、
前記第1軸(21)を受けるための第1構造(11;113;220)と、
前記第2軸(31)を受けるための第2構造(12;114;211、212、213、214)と、
前記第1または前記第2受け構造と協働するよう配置された、少なくとも第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)と、
を含む、機械式リンケージ要素。
【0024】
本発明の第1態様によれば、伝達カップリングは以下の定義で特定される。
15. 定義14に記載のリンケージ要素と、
第1シャフト(21)の少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、
第2シャフト(31)の少なくとも1つの第2パーツ(3A)と、
を含む、時計伝達カップリング。
【0025】
本発明の第1態様によれば、クロック機構は、以下の定義で特定される。
16. 定義1から13または15のいずれか一項に記載の伝達カップリング、歯車列(110)、及びディスプレイ要素(6)を含み、前記第1シャフト、特に前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は前記歯車列と噛合し、前記第2シャフト、特に前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は前記ディスプレイ要素と噛合する、または
定義14に記載のリンケージ要素を含む、
クロック機構(200)。
【0026】
本発明の第1態様によれば、時計ムーブメントは、以下の定義で特定される。
17. 定義1から13または15のいずれか一項に記載の伝達カップリング、または定義16に記載の機構、または定義14に記載のリンケージ要素を含む、小型時計ムーブメント(300)。
【0027】
本発明の第1態様によれば、時計は以下の定義で特定される。
18. 定義17に記載のムーブメント、または定義16に記載の機構、または定義1から13または15のいずれか一項に記載の伝達カップリング、または定義14に記載のリンケージ要素を含む、時計(400)、特に腕時計。
【0028】
本発明の第2態様によれば、機械式リンケージ要素は、以下の定義で特定される。
19. 伝達カップリング(100)用の機械式リンケージ要素(10)であって、前記機械式リンケージ要素は、第1シャフト(21)を第2シャフト(31)へ機械的に連結するよう設計され、前記機械式リンケージ要素は、特に第1軸(D1)に沿って第1滑り面の第1滑動要素(11)と、特に第2軸(D2)に沿って第2滑り面の第2滑動要素(12)を含み、前記第1滑動要素及び前記第2滑動要素は、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)及び前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)と協働するよう設計され、前記第1滑動要素及び前記第2滑動要素は、前記第1軸及び前記第2軸に垂直または実質的に垂直な第3軸(D3)に沿って、または前記第1及び第2シャフトの前記軸(A2)、(A3)に平行または実質的に平行な第3軸(D3)に沿って延長し、軸部分(z1、z2)上に重なり合うまたは重畳する、機械式リンケージ要素。
【0029】
20. 前記第1滑動要素は、溝(11)またはいくつかの溝を含み、及びまたは前記第2滑動要素は、溝(12)またはいくつかの溝(12a、12b)を含み、及びまたは前記第1滑動要素は少なくとも1つの摩擦面(13)を含み、及びまたは前記第2滑動要素は少なくとも1つの摩擦面(14)を含む、定義19に記載の機械式リンケージ要素(10)。
【0030】
21. 前記機械式リンケージ要素(10)は、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)との間の遊びを制限または相殺するよう配置された、少なくとも第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)を含み、前記少なくとも1つの第1戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)とを機械的に接続する、定義19または20に記載の機械式リンケージ要素(10)。
【0031】
22. 前記機械式リンケージ要素(10)は、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)との間の遊びを制限または相殺するよう配置された第2弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;112a、112b;221、222、223、224)を含み、前記第2戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)とを機械的に接続する、定義21に記載の機械式リンケージ要素(10)。
【0032】
23. 機械式リンケージ要素(10)は、前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステム及びまたは前記第2弾性戻しシステムがその上に固定されるフレーム(15a、16a;17;115、117;210)を含む、定義21または22に記載の機械式リンケージ要素(10)。
【0033】
24. 前記第1弾性戻しシステムは、1以上の第1弾性ブレード(18;16a’~16d’)を含み、及びまたは前記第2弾性戻しシステムは、1以上の第2弾性ブレード(18;16a’~16d’)を含む、定義21から23のいずれか一つに記載の機械式リンケージ要素(10)。
【0034】
25. 前記第1弾性戻しシステムは、前記第1弾性戻しシステムの変形を制限するため、少なくとも第1当接部(19)を含み、及びまたは前記第2弾性戻しシステムは、前記第2弾性戻しシステムの変形を制限するため、少なくとも第2当接部(19)を含む、定義21から24のいずれか一つに記載の機械式リンケージ要素(10)。
【0035】
本発明の第2態様によれば、伝達カップリングは以下の定義で特定される。
26. 少なくとも第4軸(A2)周りに回転運動可能な第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ(2A)の、少なくとも第5軸(A3)周りに回転運動可能な第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ(3A)への機械式リンケージ用伝達カップリング(100)、特に時計伝達カップリング及びまたは等速伝達カップリングであって、前記第4及び第5軸は平行または実質的に平行であり、前記カップリングは、
前記第1シャフト(21)の前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、
前記第2シャフト(31)の前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)と、
定義19から25のいずれか一項に記載のリンケージ要素(10)と
を含む、伝達カップリング。
【0036】
27. 前記伝達カップリング、特に前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記リンケージ要素との間の遊びを制限または相殺するよう配置された、少なくとも第3弾性戻しシステム(21a、21b)、を含み、前記少なくとも1つの第3戻しシステムは、前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)と前記リンケージ要素とを機械的に接続する、及びまたは前記伝達カップリング、特に前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は、前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)と前記リンケージ要素との間の遊びを制限または相殺するよう配置された第4弾性戻しシステム(32a、32b)を含み、前記第1戻しシステムは、前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)と前記リンケージ要素とを機械的に接続する、定義26に記載の伝達カップリング。
【0037】
28. 前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は、前記第1滑り面または前記第2滑り面の第2滑動要素(22;22a、22b)、特に長方形または実質的に長方形のまたはペグの形状の第2突出要素を含み、及びまたは前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は、前記第1滑り面または前記第2滑り面の第2滑動要素(32;32a、32b)、特に長方形または実質的に長方形のまたはペグの形状の第2突出要素を含む、定義26または27に記載の伝達カップリング。
【0038】
本発明の第2態様によれば、クロック機構は以下の定義で特定される。
29. 定義26から28のいずれか一つに記載の伝達カップリング、伝達連鎖(1100)のトレーン、及びディスプレイ要素(6)を含み、前記第1シャフト、特に前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は前記伝達連鎖のトレーンに噛合し、前記第2シャフト、特に前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は前記ディスプレイ要素と噛合する、または
定義19から25のいずれか一つに記載のリンケージ要素を含む、
クロック機構(200)。
【0039】
30. 前記クロック機構は、第1シャフト(21)を含む第1動作パーツ(2)、第2シャフト(31)を含む第2動作パーツ(3)、及び前記第1動作パーツ(1)及びまた前記第1動作パーツ(2)に作用するよう配置される、特に前記第1シャフト及びまたは前記第2シャフトに作用するよう配置される、少なくとも1つの摩擦要素(301、302)、特に少なくとも1つの摩擦薄片とを含む、定義29に記載のクロック機構(200)。
【0040】
本発明の第2態様によれば、小型時計ムーブメントは、以下の定義で特定される。
31. 定義26から28のいずれか一つに記載の伝達カップリングまたは定義29または30に記載の機構を含む、小型時計ムーブメント(300)。
【0041】
本発明の第2態様によれば、時計は以下の定義で特定される。
32. 定義31に記載のムーブメント、または定義29または30に記載の機構、または定義26から28のいずれか一つに記載の伝達カップリング、または定義19から25のいずれか一つに記載のリンケージ要素を含む、時計(400)、特に腕時計。
【0042】
本発明の第3態様によれば、機械式リンケージ要素は以下の定義で特定される。
33. 伝達カップリング(100)用の機械式リンケージ要素(10;110;210)であって、前記機械式リンケージ要素は、第1シャフト(21)から第2シャフト(31)へ回転の動きを伝達するよう設計され、特に等速的に回転の動きを伝達するよう設計され、前記第2シャフトは前記第1シャフトに対して偏心であり、前記リンケージ要素は、
前記第1シャフト(21)を受けるための第1構造(11;113;220)と、
前記第2シャフト(31)を受けるための第2構造(12;114;211、212、213、214)と、
前記第1または第2受け構造と協働するよう配置された、特に第1受け構造と第1シャフトとの間の遊びを制限または相殺するよう配置された、少なくとも1つの第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)と、
を含む、伝達リンケージ要素。
【0043】
34. 前記第1弾性戻しシステムは、
前記第1構造の少なくとも第1表面であって、前記第1シャフトと接触するよう設計された前記少なくとも1つの第1表面、または
前記第2構造の少なくとも第2表面であって、前記第2シャフトと接触するよう設計された前記少なくとも1つの第2表面、
に作用するように設計される、定義33に記載の要素。
【0044】
35. 前記少なくとも1つの第1弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)は、前記第1または第2受け構造の領域に配置される、定義33または34に記載の要素。
【0045】
36. 前記機械式リンケージ要素は、前記第1または第2受け構造と協働するよう、特に前記第2受け構造と前記第2シャフトの間との遊びを制限または相殺するよう配置される第2弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)を含む、定義33から35のいずれか一つに記載の要素。
【0046】
37. 前記第2弾性戻しシステムは、
前記第1構造の少なくとも第3表面であって、前記第1シャフトと接触するよう設計される前記少なくとも1つの第3表面、または
前記第2構造の少なくとも第4表面であって、前記第2シャフトと接触するよう設計される前記少なくとも1つの第4表面、
に作用するように設計される、定義36に記載の要素。
【0047】
38. 前記第2弾性戻しシステム(15、16;18;16a’~16d’;111a、111b;221、222、223、224)は、前記第1または前記第2受け構造の領域に配置される、定義36または37に記載の要素。
【0048】
39. 前記第1構造は、第1滑動要素、特に1以上の溝または1以上の突出要素であり、及びまたは前記第2構造は、第2滑動要素、特に1以上の溝または1以上の突出要素である、定義33から38のいずれか一つに記載の要素。
【0049】
本発明の第3態様によれば、伝達カップリングは、以下の定義で特定される。
40. 定義33から39のいずれか1つに記載のリンケージ要素と、
第1シャフト(21)の少なくとも1つの第1パーツ(2A)と、
第2シャフト(31)の少なくとも1つの第2パーツ(3A)と、
を含む、伝達カップリング。
【0050】
本発明の第3態様によれば、クロック機構は、以下の定義で特定される。
41. 定義40に記載の伝達カップリング、歯車列(110)及びディスプレイ要素(6)を含み、前記第1シャフト、特に前記第1シャフトの前記少なくとも1つの第1パーツ(2A)は前記歯車列と噛合し、前記第2シャフト、特に前記第2シャフトの前記少なくとも1つの第2パーツ(3A)は前記ディスプレイ要素と噛合する、または
定義33から39のいずれか一つに記載の要素を含む、
クロック機構(200)。
【0051】
本発明の第3態様によれば、小型時計ムーブメントは、以下の定義で特定される。:
42. 定義40に記載の伝達カップリング、または定義41に記載の機構、または定義33から39のいずれか一つに記載の要素を含む、小型時計ムーブメント(300)。
【0052】
本発明の第3態様によれば、時計は、以下の定義で特定される。:
43. 定義42に記載のムーブメント、または定義41に記載の機構、または定義40に記載の伝達カップリング、または定義33から39のいずれか一つに記載の要素を含む、時計(400)、特に腕時計。
【0053】
技術的不適合または論理的不適合を除き、異なる態様の全ての特徴を互いに組み合わせることが可能である。
【0054】
添付の図面は、例として、本発明にかかる時計の4つの実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図2】
図2は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図3】
図3は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図4】
図4は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図5】
図5は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図6】
図6は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図7】
図7は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図8】
図8は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図9】
図9は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図10】
図10は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図11】
図11は、伝達カップリングの第1実施形態を有する時計の第1実施形態を示す。
【
図12】
図12は、伝達カップリングの第2実施形態の第1変形例または第2変形例を有する時計の第2実施形態を示す。
【
図13】
図13は、伝達カップリングの第2実施形態の第1変形例または第2変形例を有する時計の第2実施形態を示す。
【
図14】
図14は、伝達カップリングの第2実施形態の第1変形例または第2変形例を有する時計の第2実施形態を示す。
【
図15】
図15は、伝達カップリングの第2実施形態の第1変形例または第2変形例を有する時計の第2実施形態を示す。
【
図16】
図16は、伝達カップリングの第2実施形態の第1変形例または第2変形例を有する時計の第2実施形態を示す。
【
図17】
図17は、伝達カップリングの第2実施形態の第1変形例または第2変形例を有する時計の第2実施形態を示す。
【
図18】
図18は、伝達カップリングの第2実施形態の第3変形例を示す
【
図19】
図19は、伝達カップリングの第2実施形態の第3変形例を示す。
【
図20】
図20は、伝達カップリングの第2実施形態の第3変形例を示す。
【
図21】
図21は、伝達カップリングの第2実施形態の第4変形例を示す。
【
図22】
図22は、伝達カップリングの第2実施形態の第4変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
時計400の第1実施形態を、
図1から11を参照して説明する。時計は、例えば小型時計、とりわけ腕時計である。時計は、小型時計ケース350と、小型時計ケース内に備え付けられる小型時計ムーブメント300を含む。ムーブメントは機械式であってもよい。特に、ムーブメントは、自動式であってもよい。代替的に、ムーブメントは電子式であってもよい。
【0057】
ムーブメントはムーブメント200の伝達用機構を含み、または小型時計ケースはムーブメントの伝達用機構を含み、または時計は小型時計ケースとムーブメントとの接点においてムーブメントの伝達用機構を含む。
【0058】
ムーブメントの伝達用機構は、例えば、伝達カップリング100以外に、伝達の連鎖列1100とディスプレイ要素6を含む。このため、ディスプレイ要素は、例えば、時刻に関するまたは時刻から派生する情報を表示または示すことができる。ディスプレイ要素は、ポインタ6、特に周縁及びまたは文字盤に配置された目盛と協働して時刻情報または時系列情報を示すポインタを含んでもよい。伝達の連鎖列は、香箱といった動力要素とぜんまい及びテンプ型発振器といった調節要素との間にリンケージを提供する輪列であってもよい。代替的に、伝達の連鎖1100は、例えば、クロノグラフ計数連鎖の形態で存在してもよい。機構は更に、歯車列と伝達カップリング間に、クロノグラフモジュールといった時計モジュールを含んでもよい。
【0059】
図1、10、及び11に示すように、小型時計ムーブメントは、モジュール式であってもよい。ここでのカップリング100は、クロノグラフ動作パーツ2を、当該クロノグラフ動作パーツ2が提供する情報のための、ディスプレイ動作パーツ3と接続することを可能にする。動作パーツ2はクロノグラフ計数連鎖1100の不可分の一部である。クロノグラフ計数連鎖1100は、
図10に示すように、シャフト21に備え付けられ、クロノグラフ計数連鎖1100のピニオン5に運動学的に結合される歯車4を含む。動作パーツ3は、シャフト31に備え付けられるディスプレイ要素6を含む。シャフト21は、シャフト21の軸A2周りの回転を案内するよう、ムーブメントのムーブメントブランク7、8のそれぞれに備え付けられる、軸受71、81、特に石71、81、と協働する旋回要素23、24、特に円筒座23、24、を有する。シャフト31は同様に、シャフト31の軸A3周りの回転を案内するよう、ムーブメントのムーブメントブランク9に備え付けられる軸受91、特に管91と協働可能な旋回要素33、34、特に円筒座33、34、を含む。好ましくは、ムーブメントブランク9は、
図11に示すように、ムーブメント200の板9’に設けられてもよい。軸A2に対する軸A3の場所に応じて、時計職人としては、その軸が所望の軸A3と一致する軸受91を有する、適切なムーブメントブランク9を選択すれば十分である。代替的に、ムーブメントブランク9は、軸A2と軸A3との間に所望の間隔rを有して、及びまたは
図9に示すように軸A2に対する軸A3の角度位置を有して、シャフト31を受けられるように、(図示しない)複数の軸受を含んでもよい。ここで間隔rの全ての角度位置は、円Cを形成する。
【0060】
伝達カップリング100は、好ましくは等速型である。カップリングは、少なくとも第1軸A2周りを回転運動可能な第1シャフトの少なくとも第1パーツ2Aを、少なくとも第2軸A3周りを回転運動可能な第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aへ機械的に連結するように配置される。第1及び第2軸は、平行または実質的に平行である。当該実施形態において、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aは、第1シャフトの残余部分と一体のユニットとして製造される。第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと、第1シャフトの残余部分は、モノブロックアセンブリを形成し、両者で第1シャフトを形成する。当該実施形態において、第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aは、第2シャフトの残余部分と一体のユニットとして製造される。第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aと第2シャフトの残余部分は、モノブロックアセンブリを形成し、両者で第2シャフトを形成する。
【0061】
シャフト21、31は、それぞれ、軸A2、A3周りに回転運動可能である。
【0062】
第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aの他に、伝達カップリングは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとの間の遊びを制限または相殺するよう配置された、少なくとも第1弾性戻しシステム15を含む。第2戻しシステム16と連携する可能性のある少なくとも1つの第1戻しシステムは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとを機械的に接続する。
【0063】
伝達カップリングは、2つの動作パーツ2、3のそれぞれのシャフト21、31の接点に、特に第1シャフトの第1パーツ2Aと第2シャフトの第2パーツ3Aとの間の接点に配置された、少なくとも1つのリンケージ要素10、110、210を含む。
【0064】
有利には、伝達カップリングは、少なくとも1つの弾性戻しシステム15がその上に固定される、フレームを含む。
図3に示す変形例として、フレーム15a、16aは、少なくとも1つの第1弾性戻しシステム15の一部分により、特に第1弾性戻しシステム15の一部分と第2弾性戻しシステム16の一部分とにより、部分的に形成される。
【0065】
好ましくは、カップリングは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとの間の遊びを制限または相殺するよう配置された、第2弾性戻しシステム16を含み、少なくとも1つの第1戻しシステムは第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとを機械的に接続する。
【0066】
好ましくは、伝達カップリングは第1滑り面の第1滑動要素11を含む。
【0067】
好ましくは、伝達カップリングは第2滑り面の第2滑動要素12;12a、12bを含む。
【0068】
好ましくは、第1滑動要素は溝またはいくつかの溝を含み、及びまたは第2滑動要素は溝またはいくつかの溝を含み、及びまたは第1滑動要素は少なくとも1つの摩擦面13を含み、及びまたは第2滑動要素は少なくとも1つの摩擦面14を含む。これら摩擦面は、有利には、滑動要素の側面である。
【0069】
好ましくは、少なくとも1つの第1弾性戻しシステムは1以上の第1弾性ブレードを含み、及びまたは第2弾性戻しシステムは1以上の第2弾性ブレードを含む。
【0070】
第1シャフトと第2シャフトは、第1軸または第2軸の方向に、軸A2及びA3とそれぞれ整列するものの重ならない軸部分Z1及びZ2上に延長する。実際、
図7に示すように、第1シャフトは部分Z1だけ延長し、第2シャフトは部分Z2だけ延長する。
【0071】
第1滑動要素及び第2滑動要素がそれに沿って延長する軸部分z1、z2は、第1軸または第2軸の方向に重畳される、すなわち、
図7に示すように、各軸部分は、軸A2及びA3とそれぞれ整列するものの重ならない。第1滑動要素及び第2滑動要素は、別々の平面P1、P2に配置される。
【0072】
第1シャフトは、第1滑り面の第2滑動要素22、特に実質的に長方形の第2突出要素を含む。代替的に、第2要素はいくつかのペグを含むこともできる。第2シャフトは、第2滑り面の第2滑動要素32、特に実質的に長方形の第2突出要素を含む。代替的に、第2要素はいくつかのペグを含むこともできる。
【0073】
このため、第1実施形態において、リンク要素10には、オルダムカップリングのものに類似の、2つの滑動要素11、12または2つのスライド11、12が設けられる。これらスライド11、12は、例えば、空洞であり、それぞれ動作パーツ2、3のシャフト21、31の滑動要素またはスライド要素22、32と協働するよう設計される。要素22、32は、例えば、突出する。要素22、32はそれぞれ、スライド11、12の形状と実質的に補完する形状を有する。例えば、要素22、32は軸A2、A3に垂直の平面で実質的に長方形の断面の構造を有してもよく、この長方形の断面の構造は、その軸の方向にシャフトを引き延ばす。例えば、要素22、32はシャフトの軸A2、A3に垂直に延長する大きな寸法の1つの側面を含む、平行六面体の形状を有する。平行六面体の構造の最大の辺は、第1及び第2シャフトのそれぞれのパーツ2A、3Aの一部分の直径と合致または実質的に合致してもよい。
【0074】
第1実施形態において、スライド11、12は、
図7に示すように、実質的に平行な2つの別々の平面P1、P2に配置される。平面は、例えば、スライドの正中面である。
【0075】
有利には、要素10は同様に、動作パーツ2及び3をより少ない遊びで、特により少ない角度的遊びで接続するよう設計された、少なくとも1つの摩擦要素13、14を含む。摩擦要素は、スライド11、12のパーツ、特にスライドの接触面である。摩擦要素は、第1及び第2弾性戻しシステムにより、スライド要素22、32に対して接触するよう備え付けられる。そのために、少なくとも1つの摩擦要素13、14は、少なくとも1つの要素13、14をシャフト21、31のスライド要素22、32の一方または他方と協働する状態へ、特にシャフト21、31のスライド要素22、32の一方または他方と接触する状態へ戻すよう設計された、弾性戻し要素15、16と協働する。このため要素10は、回転軸A2、A3が実質的に平行且つ近接する2つの動作パーツ2、3を、シャフト21、31の接点で可能な限り角度的遊びを最小限にしつつ、運動学的に、特に等速的にまたは実質的に等速的に接続することができる。
【0076】
第1実施形態において、要素10は、それぞれスライド11、12と完全に一致する2つの摩擦要素13、14を含む。各スライド11、12または摩擦要素13、14は、要素10の部分1a、1bの外周を定義する弾性ブレード15、16の形状で存在する弾性要素15、16により弾性的に戻される。要素の厚みは、各図面において、Eで表示される。
【0077】
例えば要素10は、2つの平行な平面P1、P2にそれぞれ配置される2つの部分1a、1bからなる。第1部分1aは、第1スライド11、第1摩擦要素13、及び弾性ブレード15を含む。第2部分1bは、第2スライド12、第2摩擦要素14、及び弾性ブレード16を含む。好ましくは、各部分1a、1bは、モノブロックサブアセンブリの形態で存在する、または一体のユニットとして製造される。部分1a、1bは、溶接で、特にレーザ溶接で、とりわけ要素15、16の弾性性質を維持するために部分1a、1bの所定の領域において、接続されてもよい。
【0078】
代替的に、要素10はモノブロックまたは一体部品の形態で存在してもよい。
【0079】
サブアセンブリ1a、1bまたは要素10は、シリコン製及びまたはシリコン被膜、特に二酸化ケイ素または窒化ケイ素被膜、またはニッケルまたはニッケルリン合金被膜されてもよい。もちろん、サブアセンブリ1a、1bまたは要素10は、代替的に、完全に異なる素材、特に金属ガラスやポリマーといった、その他の弾性素材製であってもよい。
【0080】
サブアセンブリ1a、1bは、同一の素材製であっても異なってもよい。サブアセンブリまたは要素は、好ましくは、電鋳またはエッチングで製造されてよい。代替的に、サブアセンブリ1a、1bまたは要素は、電食またはレーザにより加工されてもよい。
【0081】
好ましくは、要素10のスライド11、12は、オルダム原則で認められるように、シャフト21、31間の回転の動きの伝達を可能にするため、互いに垂直に配置される。スライド11、12は更に、好ましくは第1及び第2軸に垂直に配置される。当該実施形態の機能は、駆動シャフト、例えばシャフト21が、溝11の側面の突出要素22の作用でリンケージ要素の回転を同調し、リンケージ要素が、溝12の側面の突出要素32への作用で被駆動シャフトの回転を同調することを基礎とし、ここで突出要素は溝11、12内で変位される。
【0082】
スライドの範囲は、軸A2、A3間の最大間隔を定義することを可能にする。軸受91の位置は、所定の範囲の間隔rについて軸A2に対する軸A3の位置を定義することを可能にする。好ましくは、リンケージ要素10は、0から1mmの間の、または0から0.6mmの間の間隔rを定義することを可能にする。
【0083】
一般に、当該伝達カップリングは、シャフト21、31間に歯付き動作パーツを収容することが不可能な場合、有利にはシャフト21、31の接点で実施されてもよい。
【0084】
有利には、伝達カップリングは、シャフト21の回転の運動をシャフト31へ円滑に伝達することを可能にする。特に、歯車4の回転の運動が、ポインタ6へ円滑に伝達されることを意味し、これはポインタ6の振動がないことを意味する。有利には、伝達カップリングは、特に要素10の摩擦要素13、14は、摩擦薄片を、その機能を保証しながら置換することを可能にする。好ましくは、生成される摩擦トルクは、およそ0.1から5μNm、またはおよそ1から5μNmである。このため、カップリングの同一の要素10が、伝達要素と伝達の調節の両方の役割を果たす。
【0085】
第1実施形態の変形実施形態(図示せず)において、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aは、第1滑り面内の第1滑動要素間の遊びを制限または相殺するように配置される第3弾性戻しシステムを含む、及びまたは第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aは、第2滑り面内の第2滑動要素の遊びを制限または相殺するように配置される第4弾性戻しシステムを含む。第3戻しシステムは、第1戻しシステムを置換してもよい。代替的に、第3戻しシステムは、第1滑り面内の遊びを両者で制限または相殺するよう、第1戻しシステムを補完してもよい。第4戻しシステムは、第2戻しシステムを置換してもよい。代替的に、第4戻しシステムは、第2滑り面内の遊びを両者で制限または相殺するよう、第2戻しシステムを補完してもよい。
【0086】
第3弾性戻しシステムは、1以上の第3弾性ブレードを含んでもよく、及びまたは第4弾性戻しシステムは1以上の第4弾性ブレードを含んでもよい。
【0087】
第3弾性戻しシステムは、第3弾性戻しシステムの変形を制限する少なくとも第3当接部を含んでもよく、及びまたは第4弾性戻しシステムは、第4弾性戻しシステムの変形を制限する少なくとも第4当接部を含んでもよい。
【0088】
換言すれば、第1実施例にかかる伝達カップリング100は、第1及び第2滑り面またはスライドを有し、第1滑り面内の遊びを制限または相殺するための第1弾性システム及び第2滑り面内の遊びを制限または相殺するための第2弾性システムを含む、オルダムカップリングである。
【0089】
時計400の第2実施形態を、
図12から22を参照して以下に説明する。
【0090】
当該第2実施形態は、伝達カップリングの領域で第1実施形態と異なる。
【0091】
第1実施形態同様、伝達カップリング100は、好ましくは、等速型のものである。カップリングは、少なくとも第1軸A2周りに回転運動可能な第1シャフト21の少なくとも第1パーツ2Aを少なくとも第2軸A3周りに回転運動可能な第2シャフト31の少なくとも1つの第2パーツ3Aへ機械的に連結するよう配置される。第1及び第2軸は、平行または実質的に平行である。第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aは、第1シャフトの残余部分と同じ素材製である。第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第1シャフトの残余部分は、モノブロックアセンブリを形成し、両者で第1シャフトを形成する。少なくとも1つの第2パーツ3Aは、第2シャフトの残余部分と同じ素材製である。少なくとも1つの第2パーツ3Aと第2シャフトの残余部分は、モノブロックアセンブリを形成し、両者で第2シャフトを形成する。
【0092】
カップリングは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと、第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとを含む。
【0093】
伝達カップリング100は同様に、リンケージ要素10を含む。
【0094】
シャフト21、31は、それぞれ軸A2、A3周りを回転運動可能である。
【0095】
機械式リンケージ要素は、第1シャフト21を第2シャフト31に機械的に連結するよう設計される。機械式リンケージ要素は、特に第1軸D1に沿って延長する、第1滑り面の第1滑動要素11と、特に第2軸D2に沿って延長する、第2滑り面の第2滑動要素12とを含む。
【0096】
第1及び第2滑動要素は、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aと協働するよう設計される。
【0097】
しかしながら、第2実施形態において、第1滑動要素及び第2滑動要素は、
図17に示すように、
- 第1軸D1及び第2軸D2に垂直または実質的に垂直である、及びまたは
- 第1及び第2シャフトの軸A2、A3に平行または実質的に平行である、
第3軸D3に沿って、全体または部分的に重なり合って、軸部分z1、z2上に、延長する。
【0098】
図示の実施形態において、軸部分であって第1滑動要素及び第2滑動要素がそれに沿って第1軸または第2軸の方向に延長する軸部分は、完全に重なり合う、即ち両者は互いに完全にカバーするかまたは両者は一致する。このため、第1滑動要素及び第2滑動要素は、同じ正中面P10に配置される。
【0099】
代替的に、軸部分であって第1滑動要素及び第2滑動要素がそれに沿って第1軸または第2軸の方向に延長する軸部分は、部分的に重なり合ってもよい。これは、例えば、第1滑動要素及び第2滑動要素が、要素の2つの対向する面で作られる非開口溝で実現される要素10についての場合であり、ここで溝の深さの合計は要素の厚みEよりも大きい。第1滑動要素及び第2滑動要素は、このため、実質的に一致する正中面に配置される。
【0100】
このため、当該実施形態において、リンケージ要素10は、要素10の正中面と実質的に一致する同じ平面P10に配置されるスライド11、12が設けられる。当該第2実施形態は、特に小型でありあまり嵩高ではないという利点を有する。当該要素はまた、特に製造が簡単であり、特に当該要素が電鋳またはエッチングで製造される場合に製造が簡単であるという利点を有する。
【0101】
第2実施形態において、第1滑動要素は、1つの溝11または複数の溝を有する。第2滑動要素は、いくつかの溝12a、12bを有する。溝12a及び12bは、有利には整列される。
【0102】
有利には、第1滑動要素は、少なくとも1つの摩擦面13、特に溝11の一面で形成される摩擦面13を含む。有利には、第2滑動要素は、溝12a、12bの面で形成される少なくとも2つの摩擦面14a、14bを含む。
【0103】
第1実施形態同様、伝達カップリングは、有利には、フレーム17を含み、フレームには少なくとも1つの第1弾性戻しシステム及びまたは第2弾性戻しシステムが固定される。
【0104】
少なくとも1つのスライド11、12は、スライド11、12の一方または他方で互いに拘束される2つの部分で形成される。例えば、スライド12は、スライド11により拘束される2つの部分12a、12bで形成される。第1実施形態同様、摩擦要素13、14はそれぞれ、スライド11、12と一致する。このため、スライド12の部分12a、12bのそれぞれにある摩擦要素14a、14bを識別する。このため、スライド11、12a、12b、または摩擦要素13、14a、14bは、要素10のフレーム17と一体化した弾性ブレードを含む弾性要素または弾性戻しシステムにより戻される。より具体的には、各スライド側面は、要素11、12または13、14をシャフト21、31のスライド要素22、32の一方または他方と協働する状態へ、特にシャフト21、31のスライド要素22、32の一方または他方と接触するよう戻すように設計された弾性ブレードと一体化されてもよい。
【0105】
このため、第1シャフトと第2シャフトは、第1軸または第2軸の方向へ、全部または部分的に重なり合う軸部分Z1、Z2上で延長する。
【0106】
図13及び14に詳細に図示される、第2実施形態の第1及び第2変形例において、第1弾性戻しシステムは、とりわけスライド11を、特に溝11の側面のそれぞれを弾性的に戻すよう設計される、1以上の第1弾性ブレードを有する。第2弾性戻しシステムは、特にスライド部分12a、12bを、とりわけスライド部分12a、12bのそれぞれの側面を、弾性的に戻すよう設計される、1以上の第2弾性ブレードを有する。
【0107】
図13及び14は、第2実施形態にかかる要素10の最初の2つの設計変形例を示す。変形例は、異なる弾性ブレードの配置により識別される。第1変形例において、スライド、摩擦要素及び弾性要素は、互いに連続して製造される。このため、端部180の領域において、フレーム17に接合される弾性ブレードのモノリシックネットワーク18を見つけることができる。第2変形例において、それぞれ第1端部においてスライド12の部分12a、12bの側面のそれぞれと一体化される、弾性ブレード16a’~16d’を識別する。これら弾性ブレードはそれぞれ、第2端部160a’~160d’の領域でフレーム17に対して接合される。有利には、スライド11、12を拘束する当接部19が、ブレード16a’~16d’の可塑化のあらゆる危険性を防止するために、設けられる。このため、第2実施形態の第2変形例において、第1弾性戻しシステムは、第1弾性戻しシステムの変形を制限する少なくとも1つの第1当接部19を含み、及びまたは、第2弾性戻しシステムは、第2弾性戻しシステムの変形を制限する少なくとも1つの第2当接部19を含む。
【0108】
図示しない変形例において、要素10はフレーム17を有さなくてもよい。
【0109】
ネットワーク18またはブレード16a’~16d’は、もちろん、スライド要素22及びまたはスライド要素32に対する摩擦トルクを調節するため、断面に変化、とりわけネックを有してもよい。好ましくは、第1実施形態同様、生成される摩擦トルクは、およそ0.1から5μNm、またはおよそ1から5μNmである。
【0110】
スライド12とスライド要素32との適切な協働を可能とするために、スライド要素32は、スライド12の部分12a、12bの形状と補完する形状の、2つのパーツ32a、32bで製造される。例えば、パーツ32a、32bは、
図15から
図17に示すように、パッドまたはペグ32a、32bの形状で存在してもよい。
【0111】
リンケージ要素10の第2実施形態の第3変形例は、そしてより一般的には伝達カップリングの第2実施形態の第3変形例は、
図18から
図21を参照して以下に説明される。
【0112】
当該第3変形例は、リンケージ要素が硬い溝を、即ち(要素の通常使用時に)変形不能な側面の溝を有する点で、上述の第1及び第2変形例と異なる。このため、弾性戻しシステムは、シャフト21及び31上で、特にシャフト21及び31の端部において、オフセットしてもよい。
【0113】
図19、20に示すように、弾性戻しシステムを有することができるのは、第1シャフト2Aの第1パーツまたは第2シャフト2Bの第2パーツである。
【0114】
第1弾性戻しシステムは、2対の突起またはストリップ21a及び21bで製造される。
【0115】
第2弾性戻しシステムは、2対の突起またはストリップ32a及び32bで製造される。
【0116】
ストリップの対は、それぞれ、スプリットピン製であってもよい。
【0117】
これらストリップは、それぞれ、リンケージ要素の溝に配置されると、弾性変形する。換言すると、これらストリップは、リンケージ要素の溝に配置されると、弾性的にプレストレスが与えられる。
【0118】
代替的にまたは補完的に、
図21に示すように、シャフト21、31は、それぞれ摩擦要素301、302と協働してもよい。更に一般的には、動作パーツ2、3は、それぞれ摩擦要素301、302と協働してもよい。摩擦手段301、302は、例えば薄片の形態で存在してもよい。単独の薄片301、302が、適切な摩擦トルクを生成するのに十分なこともある。
【0119】
第2実施形態の最初の3つの変形例において、滑り面は直線的である。滑り面は、線に沿った滑りを可能にする。
【0120】
第2実施形態にかかる伝達カップリングの作動原理は、第1実施形態にかかる伝達カップリングの作動原理と同様である。
【0121】
リンケージ要素10の第2実施形態の第4変形例を、またより一般的には伝達カップリングの第2実施形態の第4変形例を、
図22を参照して以下に説明する。
【0122】
第4変形例は、リンケージ要素が空洞の滑動要素を、特に直線的ではない溝11、12を有する点で上述の第1、第2及び第3変形例と異なる。実際、滑り面の溝は、湾曲し、特に円弧形状または実質的に円弧形状である。更に、溝は互いに干渉しない。
【0123】
シャフト21、31はそれぞれ、端部の一方に、軸方向に配置された2つのピンを含む。
【0124】
空洞の滑動要素11は、各シャフト21、31の突出滑動要素22b、32a、特にピン、を受けるために設けられる。
【0125】
空洞の滑動要素12は、各シャフト21、31の突出滑動要素22a、32、特にピンを受けるために設けられる。
【0126】
当該変形実施形態の作動は、シャフト21といった駆動シャフトが、溝11、12のそれぞれの側面へのピン22a及び22bの作用で滑動要素を回転駆動し、リンケージ要素が、溝11、12のそれぞれの側面のピン32a及び32bへの作用で被駆動シャフトを回転駆動することを基礎とし、ここでピンは溝11、12内で変位される。
【0127】
他の上述の変形例と異なり、シャフト21、31の滑動要素のそれぞれは、要素10の2つの滑動要素11、12と相互作用する。
【0128】
他の実施形態や変形例にあるような第1及びまたは第2弾性戻しシステムは、リンケージ要素及びまたはシャフト上に配置されてもよい。
【0129】
時計400の第3実施形態を、
図23から26を参照して以下に説明する。
【0130】
当該第3実施形態は、第1実施形態と、伝達カップリングの領域において異なる。
【0131】
第1実施形態同様、カップリングは、少なくとも第1軸A2周りを回転運動可能な第1シャフトの、ここでは第1シャフトの円筒端部といった第1端部である少なくとも1つの第1パーツ2Aを、少なくとも第2軸A3周りを回転運動可能な第2シャフトの、ここでは、第2シャフトの円筒端部といった第2端部である少なくとも1つの第2パーツ3Aに対して機械的に連結するために配置される。第1及び第2軸は、平行または実質的に平行である。第1及び第2軸は、このため、偏心している。伝達カップリングは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとを含む。シャフト21、31は、それぞれ、軸A2、A3周りに回転運動可能である。
【0132】
伝達カップリングは、第1シャフトの第1シャフトパーツ2Aと第2シャフトの第2シャフトパーツ3Aとの間の遊びを相殺するよう配置される少なくとも第1弾性戻しシステム111を含む。第1弾性戻しシステム111は、第1シャフトの第1シャフトパーツ2Aと第2シャフトの第2シャフトパーツ3Aとを機械的に連結する。第1戻しシステム111は、リンケージ要素110の一部である。
【0133】
伝達カップリングは、第1シャフトの第1シャフトパーツ2Aと第2シャフトの第2シャフトパーツ3Aとの間の遊びを相殺するよう配置される第2弾性戻しシステム112を含む。第2弾性戻しシステム112は、第1シャフトの第1シャフトパーツ2Aと第2シャフトの第2シャフトパーツ3Aとを機械的に連結する。第2戻しシステム112は、リンケージ要素110の一部である。
【0134】
このため、伝達カップリングは、2つの動作パーツ2、3のそれぞれのシャフト21、31の接点に、特に第1シャフトの第1シャフトパーツ2Aと第2シャフトの第2シャフトパーツ3Aとの接点に配置される、リンケージ要素110を含む。
【0135】
このため、伝達カップリングの第3実施形態において、リンケージ要素110は、シュミットカップリングから既知の作動原理と同様の作動原理のリンケージ要素111、112が設けられる。リンケージ要素111、112は、それぞれ動作パーツ2、3のシャフト21、31の受け要素113、114に、特にシャフト21、31の端部に接続される。
【0136】
要素110は、それぞれ2つの平行な平面P11、P12に配置される2つの部分11a、11bを有する。平面P11、P12は、好ましくは、軸A2、A3に垂直である。
【0137】
第1部分11aは、平行または実質的に平行な2つの柔軟アーム111a、111bの形状で存在する第1リンケージ要素111を含む。アーム111a、111bのそれぞれの柔軟性は、アームのそれぞれの端部に位置する柔軟ネック111aa、111ab;111ba、111bbにより実現される。このため、アーム111a、111bのそれぞれは、部分11aのフレーム115の隣で並進または実質的に並進移動可能である。同様に、アーム111a、111bは、第1シャフトの受け要素113を支持するアーム116により接続される。このため、アーム116は、受け要素113がフレーム115の隣に移動可能なように、4つの円形ネックを有するテーブルになぞらえることができる。受け要素113のフレーム115に対する移動は、特にわずかな振幅のある、並進運動に近似する。
【0138】
部分11bの構造は、部分11aの構造と同様である。後者は、平行または実質的に平行な2つの柔軟アーム112a、112bの形状で存在する2つのリンケージ要素112を有する。アーム112a、112bのそれぞれの柔軟性は、アームのそれぞれの端部に位置する柔軟ネック112aa、112ab;112ba、112bbにより実現される。このため、アーム112a、112bのそれぞれは、部分11bのフレーム117の隣で並進または実質的に並進移動可能である。同様に、アーム112a、112bは、第2シャフトの受け要素114を支持するアーム118により接続される。このため、アーム118は、受け要素114がフレーム117の隣に移動可能なように、4つの円形ネックを有するテーブルになぞらえることができる。受け要素114のフレーム117に対する移動は、特にわずかな振幅のある、並進運動に近似する。
【0139】
このため、第1弾性戻しシステム111a、111bは、少なくとも1つの弾性変形可能アームを含む。同様に、第2弾性戻しシステム112a、112bは、少なくとも1つの弾性変形可能アームを含む。
【0140】
好ましくは、各部分11a、11bは、モノブロックまたは統合サブアセンブリの形状で存在する。部分11a、11bは、溶接により、特にレーザ溶接により、とりわけフレーム115、117の領域において、接続されてもよい。好ましくは、これらフレームまたはフレームの一方または他方は、アームが互いに摺ることなく移動可能なように、余分な厚みを有する。ここでフレーム115は、余分厚み115aを有する。
【0141】
ここで部分11a、11bは、アーム111a、111b、112a、112bが、直交または実質的に直交方向に並進運動可能なように、一方が他方の上に備え付けられる。伝達装置の組立前に、要素110は、
図24に示すように、アーム111a、111b、112a、112bが静止状態にあるときに、同心または実質的に同心の受け要素113、114を有する。
【0142】
伝達装置の組立の間、要素113、114は、受け要素が、動作パーツ2、3のシャフト21、31の一方または他方と接合されるよう、互いに離れるよう移動される。この軸A3と軸A2とを分離する距離に対応する距離で離れる移動は、アーム111a、111b、112a、112bの変位と、柔軟ネックのそれぞれの領域に弾性位置エネルギーの蓄積を引き起こす。例として、
図26は、アーム112a、112bの変位の2つの状態にある部分11bを示す。
【0143】
このため、伝達カップリングは第1受け要素を含み、少なくとも1つの第1弾性戻しシステムは、第1受け要素を第1軸に沿って位置させるように変形可能に配置される。
【0144】
同様に、伝達カップリングは第2受け要素を含み、第2弾性戻しシステムは、第2受け要素を第2軸に沿って位置させるように変形可能に配置される。
【0145】
受け要素は、弾性顎を有するトングを含んでもよい。
【0146】
伝達装置の動作において、アーム111a、111b、112a、112bは、互いに平行または実質的に平行を維持しつつ、それぞれの柔軟ネックに沿って変位される。アーム111a、111b、112a、112bの2つの直交のまたは実質的に直交方向での変位は、その回転軸が平行または実質的に平行であって近接する2つの動作パーツを等速的に接続可能なリンケージ要素110を提供する。有利には、柔軟ネックの形態の戻し要素が蓄積した弾性位置エネルギーは、動作パーツ2、3をより少ない遊びで、特により少ない角度的遊びで、接続することを可能にする。このため、要素110はシャフト21、31の交点での角度的遊びを可能な限り最小限にしつつ、その回転軸A2、A3が平行または実質的に平行であって近接する2つの動作パーツ2、3を等速的に接続可能である。
【0147】
更に有利には、伝達装置の組立中にリンケージ要素110が蓄積した弾性位置エネルギーは、伝達装置の動作中一定に維持される。これは、アーム111a、111b、112a、112bの角度変位が、シャフト21、31の回転中、90°で位相に不一致であるためである。
【0148】
好ましくは、受け要素113、114は、その端部を打ち込むことでシャフト21、31の残りと組み立てることを可能にする、柔軟構造を有する。
【0149】
第1実施形態の要素と同様に、サブアセンブリ11a、11bまたは要素110は、シリコン製及びまたはシリコン被膜、特に二酸化ケイ素または窒化ケイ素被膜、またはニッケルまたはニッケルリン合金被膜されてもよい。もちろん、サブアセンブリ11a、11bまたは要素110は、代替的に、完全に異なる素材、特に金属ガラスやポリマーといった、その他の弾性素材製であってもよい。
【0150】
サブアセンブリ11a、11bは、同一の素材製であってもなくてもよい。サブアセンブリまたは要素は、好ましくは、電鋳またはエッチングで製造されてもよい。代替的に、当該部品は、電食またはレーザにより機械加工されてもよい。サブアセンブリ11a、11bは、特にフレーム115の領域において、糊付け、溶接、ロウ付け、またはその他の適当な方法により接合されてもよい。
【0151】
第3実施形態の一代替変形例において、要素110は同一の平面に位置する2つの部分11a、11bを含んでもよい。当該平面は、好ましくは軸A2及びA3に垂直である。当該変形例において、第1または第2弾性戻しシステムが第2または第1弾性戻しシステムと同一の平面に配置可能なように、アーム111a、111bは、アーム112a、112bの長さと異なる長さを有する。受け要素113、114は、同一の平面を占拠するよう適合されてもよく、例えば垂直に位置される一対の孔または突出の形状で存在してもよい。
【0152】
時計400の第4実施形態を、
図27から31を参照して説明する。
【0153】
当該第4実施形態は、伝達カップリングの領域で、第1実施形態と異なる。
【0154】
第1実施形態同様、カップリングは、少なくとも第1軸A2周りに回転運動可能な第1シャフトの少なくとも第1パーツ2Aを、少なくとも第2軸A3周りに回転運動可能な第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aに機械的に連結するよう配置される。第1及び第2軸は、平行または実質的に平行である。当該実施形態において、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aは、シャフト21の残余部分の端部に備え付けられる板または円盤210である。しかしながら、第1パーツは第1シャフトの残余部分と一体化されてもよい。第1パーツとシャフトの残余部分は、モノブロックである第1シャフトを共に形成してもよい。当該実施形態において、第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aは、第2シャフトの残余部分とモノブロックである。第2シャフトパーツと第2シャフトの残余部分は、共に第2シャフトを形成する。
【0155】
シャフト21、31は、それぞれ軸A2、A3周りに回転運動可能である。
【0156】
伝達カップリングは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとの間の遊びを制限または相殺するように配置される、少なくとも1つの第1弾性戻しシステム221を含む。少なくとも1つの第1戻しシステムは、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツ2Aと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツ3Aとを機械的に接続する。
【0157】
伝達カップリングは、2つの動作パーツ2、3のそれぞれのシャフト21、31の接点に、特に第1シャフトの第1パーツ2Aと第2シャフトの第2パーツ3Aとの間の接点に配置される、少なくとも1つのリンケージ要素210を含む。
【0158】
リンケージ要素210またはフレーム210は、シャフト21、31の一方又は他方と、回転的に堅固に接合される。図示の実施形態において、要素210は、シャフト21の一端部26の領域で、シャフト21に回転的に堅固に接合される。当該端部26は、シャフト21からのトルクを要素210へ伝達することを可能にするため、非円形断面を有し、要素210の形状と補完的な形状220と協働してもよい。このため、要素210は動作パーツ2と回転的に堅固に接合され、このため軸A2周りに回転運動可能である。当該要素210は、有利には、単一の平面P20に形成される。
【0159】
要素210は、第2シャフト31の第2パーツ3A上に配置されるパッド311、312、313、314とそれぞれ協働するために設けられる、同一の平面P20内に配置される湾曲カム面211、212、213、214を有する。図示の実施形態において、表面211、212、213、214は同一の円cに中心を取る円の一部分であり、円cは軸A2に中心を取る。パッド311、312、313、314については、軸A3に中心を取る同一の円c’に位置する。円c及びc’の半径は、好ましくは等しいまたは実質的に等しい。カム面及びパッドは、好ましくは、軸A2、A3周りに均一な間隙を介する。表面211、212、213、214とパッド311、312、313、314との協働は、このため、動作パーツ3を軸A3周りに回転運動駆動する。
【0160】
表面211、212、213、214は、パッド311、312、313、314のそれぞれと同時にまたは非同時に協働してもよい。好ましくは、2つのカム面のみが、それぞれのパッドと同時に協働する。
【0161】
好ましくは、表面211、212、213、214は、それぞれ摩擦要素215、216、217、218を有する。各摩擦要素215、216、217、218は、弾性戻し要素221、222、223、224によりパッドに対して弾性的に戻されるように配置される。各弾性戻し要素は、好ましくは、弾性ブレード221、222、223、224の形状で存在する。有利には、リンケージ要素210の角度位置に係らず、少なくとも1つの摩擦要素が、常時パッドと接触する。当該解決策は、リンケージ要素がその一部を構成する伝達装置の等速的性質に影響する恐れのある不静定のあらゆる危険性を回避しつつ、シャフト21、31の接点での角度的遊びを除去可能である。
【0162】
このため、フレームは、第1シャフトの第1パーツ2Aと、第2シャフトに設けられた少なくとも1つのペグと協働するよう設計された少なくとも1つのカム面211、212、213、214、特に少なくとも1つの円形開口部とを含み、フレームの第1弾性戻しシステム221、222、223、224は、少なくとも1つのカム面に設けられた少なくとも1つの弾性ブレードを含む。
【0163】
有利には、フレームは、位数Nの回転対称に配置されたN個のカム面及びまたはN個の弾性ブレードを有し、ここでNは2以上の整数である。好ましくは、N=2またはN=3またはN=4である。
【0164】
有利には、摩擦要素は、パッドにより支持されてもよい。
【0165】
前述の実施例の要素同様、要素210は、好ましくはシリコン製及びまたはシリコン被膜、特に二酸化ケイ素または窒化ケイ素被膜、またはニッケルまたはニッケルリン合金被膜されてもよい。もちろん、要素210は代替的に、完全に異なる素材、特に金属ガラスやポリマーといったその他の弾性素材製であってもよい。当該要素は、好ましくは、電鋳またはエッチングにより製造されてもよい。代替的に当該要素は、電食またはレーザにより機械加工されてもよい。
【0166】
上述のように、異なる実施形態と異なる変形例において、伝達カップリングは、運動学的に、特に等速的に、回転軸が平行または実質的に平行で近接する2つの動作パーツを接続可能である。
【0167】
当該伝達カップリングは、例えば、時刻または時刻に基づく情報を示す第1動作ディスプレイパーツの回転軸が、当該時計表示または時刻に基づく情報を提供する小型時計ムーブメントの第2動作パーツの回転軸の隣に変位可能な、モジュール式アナログディスプレイを有する時計に有利に実施することができる。伝達カップリングは、特に、クロノグラフ機構内に統合してもよい。もちろん、伝達カップリングは、小型時計の第2動作パーツを小型時計の第1動作パーツに対して作動させるために用いてもよい。動作パーツは、必ずしもムーブメントの要素ではない。例えば、ムーブメントステムが伝達カップリング経由でハウジングステムに機械的に結び付けられた、特許文献3に開示された装置に関して改善された伝達装置を提供するため、巻真を含んでもよい。上述の解決策は同様に、小型時計の、特に腕時計の外被に関する2つの動作パーツを結び付けるために用いられてもよく、シャフトをフランジまたは回転ベゼルまたはその他のシャフトに接続するために用いられてもよい。
【0168】
伝達カップリングの異なる実施形態と異なる変形例は、滑り面を含む。各滑り面は、空洞スライド要素と、突出スライド要素とを含む。空洞要素の側面と、突出スライド要素の側面とは、滑り面が定義するような案内を提供するため、接触により協働する。2つのパーツが互いに接合され、または滑り面リンケージにより互いに関連して案内される場合、空洞要素及び突出要素は、突出要素がパーツの一方に位置され、当該突出要素と協働する空洞要素がパーツの他方に位置される限り、2つのパーツの一方または他方に位置されてもよい。有利には、空洞要素は1以上の溝を含む。有利には、突出要素は1以上の平行六面体形状を含み、またはいくつかのパッドまたはいくつかのペグを含む。有利には、弾性戻しシステムは、滑り面の突出要素と空洞要素との間の遊びを制限または相殺するため、各滑り面と連携する。
【0169】
有利には、弾性戻しシステムは、突出要素が空洞要素の寸法よりも大きな寸法を有し、突出要素が空洞要素に導入される際に突出要素及びまたは空洞要素が弾性変形するようにされてもよい。この変形は、好ましくは突出要素の側面と空洞要素の側面との間に複数の接触を伴う。弾性戻しシステムは、好ましくは、1以上の弾性ブレードまたは弾性タブを含む。ブレードまたはタブは、空洞要素の側面または側面の部分を直接形成してもよく、突出要素の側面または側面の部分を直接形成してもよい。代替的にまたは補完的に、ブレードまたはタブは、空洞要素の側面または側面の部分の支持部を形成してもよく、突出要素の側面または側面の部分の支持部を形成してもよい。
【0170】
伝達カップリングの最初の2つの実施形態及び異なる変形例において、伝達カップリングは、
- 第1滑り面の領域で、リンケージ要素上の第1戻しシステム、及びまたは
- 第2滑り面の領域で、リンケージ要素上の第2戻しシステム、及びまたは
- 第1滑り面の領域で、第1シャフト上の第3戻しシステム、及びまたは
- 第2滑り面の領域で、第2シャフト上の第4戻しシステム、
を有してもよい。
【0171】
これら戻しシステムのそれぞれは、弾性戻しシステムの変形を制限するために、当接部を含んでも良い。
【0172】
第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツと第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツとの間の、または第1及び第2動作パーツの間の遊びの減少、または相殺は、伝達カップリングの等速的性質に寄与する重要な特徴である。実際、第1シャフトの少なくとも1つの第1パーツが回転する一方、第2シャフトの少なくとも1つの第2パーツが静止している巻取りの非等速フェーズをこのようにして回避する。
【0173】
伝達カップリングを含むクロック機構の異なる実施形態及び異なる変形例において、機構は、(第2実施形態に関する
図21に示すように)少なくとも1つの摩擦要素301、302を含んでもよい。少なくとも1つの摩擦要素は、シャフトと接触するよう配置される薄片301、またはより一般的にはシャフトが関連するまたは一部を形成する動作パートの一部を構成するあらゆる要素であってもよい。機構はまた、第1シャフト21と接触するよう配置される第1薄片302と、第2シャフト31と接触するよう配置される第2薄片301とを含んでもよい。当該摩擦要素は、第1滑り面の領域のリンケージ要素上の第1弾性戻しシステムを、または第2滑り面の領域のリンケージ要素上の第2弾性戻しシステムを、または第1滑り面の領域の第1シャフト上の第3弾性戻しシステムを、または第2滑り面の領域の第2シャフト上の第4弾性戻しシステムを置換してもよい。
【0174】
異なる実施形態と異なる変形例において、少なくとも1つの第1戻しシステムは、第2動作パーツを、第1動作パーツが存在する位置に依存する、固有の位置に戻すことを可能にする。このため、第1戻しシステムは、第1動作パーツのあらゆる位置を、第2動作パーツの固有の位置と一致させることを可能にする。当該機能は、第1戻しシステムが提供可能である。特定の実施形態において、当該機能は、第1戻しシステムと第2戻しシステムにより連帯して提供されてもよい。
【0175】
本明細書全体で好ましくは、「動作パーツ」は、歯車またはピニオン、または歯車及びまたはピニオンの組み合わせ、またはディスプレイ要素、または歯車及びまたはピニオン及びまたはディスプレイ要素の組み合わせを意味する。「動作パーツ」は、前述の一方または他方の要素から製造されてもよく、完全な部品を形成してもよい、シャフトを含む。
【0176】
本明細書全体で好ましくは、「伝達カップリング」は、
- 2つの回転するシャフトを端部と端部でまたは実質的に端部と端部で結びつける、及びまたは
- 2つの回転する平行または実質的に平行なシャフトを結びつける、及びまたは
- 等速回転のまたは実質的に等速回転の動きを2つのシャフト間で伝達する、及びまたは
- 2つのシャフト間で、増速または減速なくして回転の動きを伝達する、及びまたは
- 同じ方向に回転する2つのシャフトの間で回転の動きを伝達する
ことを可能にする、伝達装置を意味する。
「伝達カップリング」の文言は、2つの整列したシャフト間の堅固な組み合わせを、特に2つの整列したシャフトを堅固に接続する堅固なスリーブまたはスプラインスリーブを除外する。「伝達カップリング」の文言はまた、歯車による伝達を除外する。伝達カップリングは、第2シャフトが第1シャフトに対して偏心する、第1シャフトから第2シャフトへの回転の動きの伝達を可能にする。しかしながら、伝達カップリングはまた、第1シャフトと第2シャフトが同軸である、第1シャフトから第2シャフトへの回転の動きの伝達を可能にする。
【0177】
本明細書全体で好ましくは、「フレーム」は、
- 2つの異なる滑り面の2つのスライド要素、及びまたは
- 2つの弾性戻しシステム、及びまたは
- 弾性戻しシステムの2つの要素、
を完全なリンケージで機械的に接続することを可能にするリンケージ要素のあらゆる部分を意味する。
このため、フレームは有利には、リンケージ要素を構成するパーツである。例えば、フレームは、円盤または円形リングの形状を有する。
【0178】
本明細書全体で好ましくは、「少なくとも1つのシャフトパーツ」は、当該パーツがシャフトの残余部分に備え付けられその後取り外し可能だとしても、シャフトのあらゆるパーツを意味するが、シャフトの通常動作において当該パーツはシャフトの残余部分と完全にリンケージすることを前提とする。
【符号の説明】
【0179】
A2 第1軸
A3 第2軸
2A 第1パーツ
3A 第2パーツ
6 ディスプレイ要素
11 第1滑動要素
12 第2滑動要素
13 摩擦面
14 摩擦面
15 第1弾性戻しシステム
16 第1弾性戻しシステム
21 第1シャフト
31 第2シャフト