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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】電極形成組成物
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230316BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230316BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230316BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20230316BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M50/409
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018504155
(86)(22)【出願日】2016-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2016067565
(87)【国際公開番号】W WO2017017023
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-06-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】15306222.9
(32)【優先日】2015-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591001248
【氏名又は名称】ソルヴェイ(ソシエテ アノニム)
(73)【特許権者】
【識別番号】505041416
【氏名又は名称】セントレ ナショナル ドゥ ラ レシェルシェ サイエンティフィーク
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プラス, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルオー, エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ギヨマール-ラック, オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】ル ビドー, ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ギヨマール, ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】レトリエ, ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ハモン, クリスティーヌ
(72)【発明者】
【氏名】ブライダ, マルク-ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】アブスレメ, ジュリオ ア.
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】山田 正文
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-213370(JP,A)
【文献】特表2015-520781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/13
H01M4/139
H01M4/62
H01M2/16
H01G9/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間の膜
含むリチウムイオン二次電池である電気化学デバイスを製造するための方法であって、前記正極および前記負極のうちの少なくとも1つが、
(i)金属基材を提供する工程と、
(ii)- 少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーとに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマー[ポリマー(FF)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートまたは少なくとも1つのイオン性液体を含む少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む電極形成組成物[組成物(C1)]を提供する工程と、
(iii)工程(ii)で提供された前記組成物(C1)を、工程(i)で提供された前記金属基材上に適用し、それによって前記組成物(C1)からなる少なくとも1つの層でコートされた金属基材を含むアセンブリを提供する工程と、
(iv)工程(iii)で提供された前記アセンブリを乾燥させる工程と
を含む方法により得ることができる電極であり、
前記電極が、
- 金属基材及び、
- 前記金属基材上に直接付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、
- 少なくとも1つのフッ素化モノマーと、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーとに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマー[ポリマー(FF)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの有機カーボネートまたは少なくとも1つのイオン性液体を含む少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む組成物[組成物(C2)]からなる少なくとも1つの層[層(L1)]
を含み、
前記膜がフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体を含み、前記フルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体が、
- 少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーと、
- 式(IV):
4-mAY (IV)
(式中、mが1~4の整数であり、Aが、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Yが加水分解性基であり、およびXが、1つまたは複数の官能基を任意選択的に含む炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 少なくとも1つのイオン性液体と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む組成物を加水分解および/または凝縮する工程を含む方法によって得ることができる、方法。
【請求項2】
前記組成物(C1)における前記ポリマー(FF)が、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマー(FF-1)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組成物(C1)における、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む前記官能性含水素モノマーが、式(I):
(式中、互いに等しいかまたは異なるR、RおよびRのそれぞれが、独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である)
の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物(C1)における前記ポリマー(FF)が、少なくとも0.01モル%の、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物(C1)が、前記媒体(L)および前記ポリマー(FF)の全重量に基づいて少なくとも40重量%の前記媒体(L)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記媒体(L)中の前記塩(M)の濃度が少なくとも0.01Mである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記媒体(L)中の前記塩(M)の濃度が最大で3Mである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記塩(M)が、
(a)MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、RがC、CまたはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Me(式中、Meが金属であり、およびnが前記金属の原子価であり、典型的にnが1または2である)、
(式中、R’が、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFおよびCFOCFからなる群から選択される)、および
(c)それらの組合せ
からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(iii)下において、前記組成物(C1)がキャスティング、印刷またはロールコーティングによって前記金属基材上に適用される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2015年7月27日出願の欧州出願欧州特許出願公開第15306222.9号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、電極形成組成物、電極の製造のための方法における前記電極形成組成物の使用、前記電極および前記電極を含む電気化学デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーは、二次電池などの電気化学デバイスで使用するための電極を製造するためのバインダーとして好適であることが当該技術分野において公知である。
【0004】
一般に、正極または負極のいずれの製造技術も、フルオロポリマーバインダーを溶解させ、それらを電気活性材料およびすべての他の好適な成分と均質化して、金属コレクターに適用されるペーストを製造するためにN-メチル-2-ピロリドンなどの有機溶媒の使用を伴う。
【0005】
有機溶媒の役割は、典型的に、有機溶媒の蒸発時に電気活性材料粒子をそれぞれ一緒におよび金属コレクターに結合させるためにフルオロポリマーを溶解させることである。
【0006】
ポリマーバインダーは、電気活性材料粒子を、これらの粒子が充電および放電サイクル中の大量膨張および収縮に化学的に耐えるように一緒におよび金属コレクターに適切に結合させるべきである。
【0007】
特に、国際公開第2008/129041号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2008年10月30日には、(メタ)アクリルモノマーに由来する0.05%~10モル%の繰り返し単位を含む直鎖半結晶性フッ化ビニリデンコポリマーおよびリチウムイオン電池のための電極におけるバインダーとしてのその使用が開示されている。
【0008】
二次電池、特にリチウムイオン二次電池のより良好な商品化のための必要条件は、すべての環境において電池の安全性を確保することである。
【0009】
二次電池などの電気化学デバイスで使用するのに好適な電解質は、典型的に、液体電解質および固体電解質、特にポリマー電解質を含有する。
【0010】
電解質が二次電池で使用するのに好適であるために、それらは、高いイオン伝導率、電極に対する高い化学的および電気化学的安定性ならびに広範囲の温度にわたる高い熱安定性を示すのがよい。
【0011】
リチウムイオン二次電池で使用するのに好適な液体電解質は、典型的に、有機溶媒に溶解されたリチウム塩を含む。
【0012】
例えば、欧州特許出願公開第0793286A号明細書(AEA TECHNOLOGY PLC)1997年9月3日には、カルボキシル基、スルホン酸基、エステル基およびアミド基から選択される1つ以上の基を含む不飽和モノマーでグラフトされたフッ化ビニリデンポリマーを含む電解質を含む複合電極が開示されている。
【0013】
また、米国特許出願公開第2006/0032045号明細書(GAIA AKKUMULATORENWERKE GMBH)2006年2月16日には、1つ以上の有機溶媒、支持電解質、ポリマーバインダーおよび支持電解質添加剤を有する混合物中のリチウム挿入可能炭素を含有する記憶デバイス用の電極が開示されている。
【0014】
しかしながら、液体電解質がその引火点を超える温度に加熱されるときに重大な安全性問題が過熱により生じる場合がある。特に、カソード材料によって放出される酸素と燃料としての有機液体電解質との化学反応によって熱暴走が高温で生じる場合がある。
【0015】
リチウムイオン二次電池の安全性問題を解決するために、液体電解質と固体ポリマー電解質との両方の利点を有利に組み合わせて、このように高いイオン伝導率および高い熱安定性が与えられるゲルポリマー電解質が研究されている。
【0016】
このように、著しい容量値をさらに示す液体電解質を含有しない電気化学デバイスで使用するのに好適な電極が当該技術分野でさらに必要とされている。
【発明の概要】
【0017】
ここで、驚くべきことに、本発明のフルオロポリマー組成物を使用することにより、電気化学デバイス、特に液体電解質を含有しない電気化学デバイスで使用するのに好適な電極を製造することが可能であることが見出された。
【0018】
本発明の電極は、他の中間プライマー層を全く使用せずに、本発明のフルオロポリマー組成物の1つ以上の層を金属コレクター上に直接適用することによって容易に得ることができる。
【0019】
また、本発明の電極は、有利には、高いイオン伝導率を与えられ、金属コレクターへの高い付着性および電気活性材料中での高い凝集性を良好に示す。
【0020】
したがって、本発明の電極は、電気化学デバイス、好ましくは二次電池で使用するのに特に好適であり、前記電気化学デバイスは、有利には、著しい容量値をさらに示しながら液体電解質を含有しない。
【0021】
さらに、本発明の電極は、有利には、それによって提供される電気化学デバイス中への電解質媒体の後注入を避けながら、電気化学デバイス、好ましくは二次電池の製造を可能にし、前記電気化学デバイスは、有利には、液体電解質を含有しないことが見出された。
【0022】
第1の例において、本発明は、
- 少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマー[ポリマー(FF)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む電極形成組成物[組成物(C1)]に関する。
【0023】
本発明の組成物(C1)は、典型的に、媒体(L)と異なる少なくとも1つの有機溶媒[溶媒(S)]をさらに含む。
【0024】
本発明の組成物(C1)は、有利には、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]をさらに含む。
【0025】
組成物(C1)は、
- 少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマー[ポリマー(FF)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と、
- 前記媒体(L)と異なる少なくとも1つの有機溶媒[溶媒(S)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]と
を好ましくは含むか、より好ましくはそれらからなる。
【0026】
第2の例において、本発明は、電極[電極(E)]の製造のための方法における本発明の電極形成組成物[組成物(C1)]の使用に関する。
【0027】
本発明の電極(E)は、電気化学デバイスで使用するのに特に好適である。
【0028】
好適な電気化学デバイスの非限定的な例には、二次電池が含まれる。
【0029】
本発明の目的のために、「二次電池」という用語は、再充電可能な電池を意味することを意図する。
【0030】
本発明の二次電池は、好ましくはアルカリ二次電池またはアルカリ土類二次電池である。
【0031】
本発明の二次電池は、より好ましくはリチウムイオン二次電池である。
【0032】
したがって、本発明はまた、電極[電極E]の製造のための方法に関し、前記方法は、
(i)金属基材を提供する工程と、
(ii)上に定義されたような電極形成組成物[組成物(C1)]を提供する工程と、
(iii)工程(ii)で提供された組成物(C1)を、工程(i)で提供された金属基材上に適用し、それによって前記組成物(C1)からなる少なくとも1つの層でコートされた金属基材を含むアセンブリを提供する工程と、
(iv)工程(iii)で提供されたアセンブリを乾燥させる工程と
を含む。
【0033】
本発明の方法の工程(iii)下において、組成物(C1)は、典型的に、キャスティング、印刷およびロールコーティングなどの任意の好適な手順によって金属基材上に適用される。
【0034】
任意選択的に、工程(iii)は、典型的に、工程(ii)で提供された組成物(C1)を、工程(iv)で提供された電極上に適用することによって一回以上繰り返されてもよい。
【0035】
金属基材は、典型的に金属コレクターとして作用する。
【0036】
金属基材は、一般に、銅、アルミニウム、鉄、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたは銀などの金属でできた箔、メッシュまたはネットである。
【0037】
第3の例において、本発明は、本発明の方法によって得ることができる電極[電極(E)]に関する。
【0038】
本発明の電極((E))は、典型的に、
- 金属基材と、
- 前記金属基材上に直接付着された少なくとも1つの層[層(L1)]であって、
- 少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマー[ポリマー(FF)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む組成物[組成物(C2)]からなる少なくとも1つの層[層(L1)]と
を含む。
【0039】
組成物(C2)は、有利には、少なくとも1つの導電性化合物[化合物(C)]をさらに含む。
【0040】
組成物(C2)は、有利には、1つ以上の溶媒(S)を含まない。
【0041】
組成物(C2)は、
- 少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマー[ポリマー(FF)]と、
- 少なくとも1つの電気活性化合物[化合物(EA)]と、
- 少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と、
- 任意選択的に、少なくとも1つの導電化合物[化合物(C)]と
を好ましくは含み、より好ましくはそれらからなる。
【0042】
本発明の目的のために、用語「電気活性化合物[化合物(EA)]」は、電気化学デバイスの充電段階および放電段階中にアルカリまたはアルカリ土類金属イオンをその構造中に混入または挿入し、かつそれから実質的に放出することができる化合物を意味することを意図する。化合物(EA)は、好ましくは、リチウムイオンを混入または挿入および放出することができる。
【0043】
本発明の電極(E)の層(L1)の化合物(EA)の性質は、それによって提供される電極(E)が正極[電極(Ep)]であるかまたは負極[電極(En)]であるかどうかに左右される。
【0044】
リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合、化合物(EA)は、式LiMQ(式中、Mは、Co、Ni、Fe、Mn、CrおよびVなどの遷移金属から選択される少なくとも1つの金属であり、およびQは、OまたはSなどのカルコゲンである)の複合金属カルコゲナイドを含んでもよい。これらの中でも、式LiMO(式中、Mは上で定義されたのと同じである)のリチウム系複合金属酸化物を使用するのが好ましい。その好ましい例には、LiCoO、LiNiO、LiNiCo1-x(0<x<1)およびスピネル構造LiMnが含まれ得る。
【0045】
代替として、リチウムイオン二次電池用の正極を形成する場合にはさらに、化合物(EA)は、リチウム化または部分的にリチウム化した式M(JO1-f(式中、Mは、リチウムであり、M金属の20%未満に対応する別のアルカリ金属によって部分的に置換されてもよく、Mは、Fe、Mn、Niまたはそれらの混合物から選択される+2の酸化レベルの遷移金属であり、0を含めてM金属の35%未満に対応する、+1~+5の酸化レベルの1つまたは複数のさらに別の金属によって部分的に置換されてもよく、JOは、任意のオキシアニオンであり、ここで、Jは、P、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組合せのいずれかであり、Eは、フルオリド、ヒドロキシドまたはクロリドアニオンであり、fは、一般的に0.75~1に含まれるJOオキシアニオンのモル分率である)の遷移金属オキシアニオン系電気活性材料を含んでもよい。
【0046】
上で定義したM(JO1-f電気活性材料は、好ましくはホスフェート系であり、規則正しいまたは変性されたカンラン石構造を有してもよい。
【0047】
より好ましくは、化合物(EA)は、式Li3-xM’M’’2-y(JO(式中、0≦x≦3であり、0≦y≦2であり、M’およびM’’は、同一または異なる金属であり、それらの少なくとも1つが遷移金属であり、JOは、好ましくは、別のオキシアニオンで部分的に置換されてもよいPOであり、Jは、S、V、Si、Nb、Moまたはそれらの組合せのいずれかである)を有する。より一層好ましくは、化合物(EA)は、式Li(FeMn1-x)PO(式中、0≦x≦1であり、xは、好ましくは1である(すなわち、式LiFePOのリチウム鉄ホスフェートである))のホスフェート系電気活性材料である。
【0048】
リチウムイオン二次電池用の負極を形成する場合、化合物(EA)は、好ましくは、
- リチウムをホストする粉末、フレーク、繊維または球体(例えば、メソカーボンマイクロビーズ)などの形態で典型的に存在する、リチウムを挿入することができる黒鉛炭素、
- リチウム金属、
- リチウム合金組成物、特に米国特許第6,203,944号明細書(3M INNOVATIVE PROPERTIES CO.)2001年3月20日および/または国際公開第00/03444号パンフレット(MINNESOTA MINING AND MANUFACTURING CO.)2000年1月20日に記載されているものなど、
- 一般に式LiTi12によって表されるリチウムチタネート(これらの化合物は、一般に、可動イオン、すなわち、Liを引き取るときに低レベルの物理的膨脹を有する「ゼロ歪」挿入材料と考えられる)、
- 高いLi/Si比のケイ化リチウムとして一般に知られるリチウム-ケイ素合金、特に式Li4.4Siのケイ化リチウム、
- 式Li4.4Geの結晶相を含むリチウム-ゲルマニウム合金
を含んでいてもよい。
【0049】
本発明の目的のために、用語「部分フッ素化フルオロポリマー」は、少なくとも1つのフッ素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含むポリマーを意味することを意図し、ここで、前記フッ素化モノマーおよび前記含水素モノマーのうちの少なくとも1つは少なくとも1つの水素原子を含む。
【0050】
用語「フッ素化モノマー」とは、ここで、少なくとも1つのフッ素原子を含むエチレン系不飽和モノマーを意味することを意図する。
【0051】
用語「含水素モノマー」とは、ここで、少なくとも1つの水素原子を含み、フッ素原子を含まないエチレン系不飽和モノマーを意味することを意図する。
【0052】
用語「少なくとも1つのフッ素化モノマー」は、ポリマー(FF)が1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよいことを意味すると理解される。下記において、表現「フッ素化モノマー」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上に定義されたような1つまたは2つ以上のフッ素化モノマーの両方を意味すると理解される。
【0053】
用語「少なくとも1つの含水素モノマー」は、ポリマー(FF)が1つまたは2つ以上の含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよいことを意味すると理解される。下記において、表現「含水素モノマー」は、本発明の目的のために、複数形および単数形の両方で理解される、すなわち、それらは、上で定義されたような1つまたは2つ以上の含水素モノマーの両方を意味すると理解される。
【0054】
ポリマー(FF)は、典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0055】
ポリマー(FF)は、典型的に、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーの重合によって得ることができる。
【0056】
フッ素化モノマーが少なくとも1つの水素原子を含む場合、フッ素化モノマーは、水素含有フッ素化モノマーと称される。
【0057】
フッ素化モノマーが水素原子を含まない場合、それはパー(ハロ)フルオロモノマーと称される。
【0058】
フッ素化モノマーは、1つまたは複数の他のハロゲン原子(Cl、Br、I)をさらに含むことができる。
【0059】
好適なフッ素化モノマーの非限定的な例としては、とりわけ、以下のもの:
- テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロペンなどのC~Cパーフルオロオレフィン、
- フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、1,2-ジフルオロエチレンおよびトリフルオロエチレンなどのC~C水素化フルオロオレフィン、
- 式CH=CH-Rf0(式中、Rf0は、C~Cパーフルオロアルキルである)のパーフルオロアルキルエチレン、
- クロロトリフルオロエチレンなどのクロロ-および/またはブロモ-および/またはヨード-C~Cフルオロオレフィン、
- 式CF=CFORf1(式中、Rf1は、C~Cフルオロ-またはパーフルオロアルキル、例えば、CF、C、Cである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
- CF=CFOX(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル(式中、Xは、C~C12アルキル基、C~C12オキシアルキル基またはパーフルオロ-2-プロポキシ-プロピル基など、1つまたは複数のエーテル基を有するC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基である)、
- 式CF=CFOCFORf2(式中、Rf2は、C~Cのフルオロ-またはパーフルオロアルキル基、例えば、CF、C、Cなど、または1つもしくは複数のエーテル基を有するC~C(パー)フルオロオキシアルキル基、例えば、-C-O-CFである)の(パー)フルオロアルキルビニルエーテル、
- 式CF=CFOY(式中、Yは、C~C12アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基、C~C12オキシアルキル基、または1つもしくは複数のエーテル基を含むC~C12(パー)フルオロオキシアルキル基であり、かつYは、その酸、酸ハライドまたは塩の形態でカルボン酸またはスルホン酸基を含む)の官能性(パー)フルオロ-オキシアルキルビニルエーテル、
- フルオロジオキソール、好ましくはパーフルオロジオキソール
が挙げられる。
【0060】
フッ素化モノマーが、例えば、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンまたはフッ化ビニルなどの水素含有フッ素化モノマーである場合、ポリマー(FF)は、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、前記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーであるか、またはそれは、少なくとも1つの水素含有フッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、任意選択的に、前記水素含有フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0061】
フッ素化モノマーが、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフロオロプロピレンまたはペルフルオロアルキルビニルエーテルなどのパー(ハロ)フッ素化モノマーである場合、ポリマー(FF)は、少なくとも1つのパー(ハロ)フッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマー、および任意選択的に、前記パー(ハロ)フッ素化モノマーと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0062】
ポリマー(FF)は、非晶質であっても半結晶性であってもよい。
【0063】
用語「非晶質」は、本明細書では、ASTM D-3418-08に従って測定されるように、5J/g未満、好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満の融解熱を有するポリマー(FF)を意味することを意図する。
【0064】
用語「半結晶性」は、本明細書では、ASTM D3418-08に従って測定した融解熱が10~90J/g、好ましくは30~60J/g、より好ましくは35~55J/gであるポリマー(FF)を意味することが意図されている。
【0065】
ポリマー(FF)は、好ましくは半結晶性である。
【0066】
ポリマー(FF)は、好ましくは、少なくとも0.01モル%、より好ましくは少なくとも0.05モル%、さらにより好ましくは少なくとも0.1モル%の、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0067】
ポリマー(FF)は、好ましくは、最大で20モル%、より好ましくは最大で15モル%、更により好ましくは最大で10モル%、最も好ましくは最大で3モル%の、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む。
【0068】
ポリマー(FF)中の少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の平均モル百分率の測定は、任意の好適な方法によって行うことができる。とりわけ酸-塩基滴定方法またはNMR方法に言及することができる。
【0069】
ポリマー(FF)は、好ましくは、フッ化ビニリデン(VDF)、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、VDFと異なる少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する繰り返し単位[ポリマー(FF-1)]を含む部分フッ素化フルオロポリマーである。
【0070】
ポリマー(FF-1)は、好ましくは、
- 少なくとも60モル%、好ましくは少なくとも75モル%、より好ましくは少なくとも85モル%のフッ化ビニリデン(VDF)と、
- 0.01%~20モル%、好ましくは0.05%~15モル%、より好ましくは0.1%~10モル%の、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーと、
(b)任意選択的に、0.1モル%~15モル%、好ましくは0.1モル%~12モル%、より好ましくは0.1モル%~10モル%の、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン(TrFE)およびパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)から選択される少なくとも1つのフッ素化モノマーと
に由来する繰り返し単位を含む。
【0071】
少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む官能性含水素モノマーは、好ましくは、式(I):
(式中、互いに等しいかまたは異なるR、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素原子またはC~C炭化水素基である)の(メタ)アクリルモノマーからなる群から選択される。
【0072】
少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む官能性含水素モノマーの非限定的な例には、とりわけ、アクリル酸およびメタクリル酸が含まれる。
【0073】
ポリマー(FF)は、有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来する繰り返し単位の直鎖状配列を含む直鎖状ポリマー[ポリマー(FF)]である。
【0074】
ポリマー(F)は、したがって、典型的にグラフトポリマーと区別できる。
【0075】
ポリマー(FF)は、有利には、少なくとも1つのフッ素化モノマー、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマー、および任意選択的に、少なくとも1つのカルボン酸末端基を含む、前記官能性含水素モノマーと異なる少なくとも1つの含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の直鎖状配列を含むランダムポリマー[ポリマー(FF)]である。
【0076】
表現「ランダムに分布した繰り返し単位」は、少なくとも1つのフッ素化モノマーに由来する2つの繰り返し単位間に含まれる少なくとも1つの官能性含水素モノマーの配列の平均数(%)と、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の総平均数(%)との間のパーセント比を意味することを意図する。
【0077】
少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位のそれぞれが分離されるとき、すなわち、官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位が少なくとも1つのフッ素化モノマーの2つの繰り返し単位間に含まれるとき、少なくとも1つの官能性含水素モノマーの配列の平均数は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の平均総数に等しく、その結果、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来するランダムに分布した繰り返し単位の分率は100%である。この値は、少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位の完全ランダム分布に対応する。したがって、少なくとも1つの官能性含水素モノマー由来の繰り返し単位の総数に対して少なくとも1つの官能性含水素モノマー由来の分離された繰り返し単位の数が大きいほど、少なくとも1つの官能性含水素モノマー由来のランダムに分布した繰り返し単位の分率の百分率値はより高くなるであろう。
【0078】
ポリマー(FF)は、したがって、典型的にブロックポリマーと区別できる。
【0079】
ポリマー(FF)は、典型的に、乳化重合または懸濁重合によって得られる。
【0080】
溶媒(S)の選択は、それがポリマー(FF)を可溶化するのに好適である限り特に限定されない。
【0081】
溶媒(S)は、典型的に、
- メチルアルコール、エチルアルコール、ジアセトンアルコールなどのアルコール、
- アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン、
- イソプロピルアセテート、n-ブチルアセテート、メチルアセトアセテート、ジメチルフタレートおよびγ-ブチロラクトンなどの直鎖状または環状エステル類、
- N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドおよびN-メチル-2-ピロリドンなどの直鎖状または環状アミド、および
- ジメチルスルホキシド
からなる群から選択される。
【0082】
本発明の目的のために、「液体媒体[媒体(L)]」という用語は、大気圧下において20℃で液体状態において1つまたは複数の物質を含む媒体を意味することを意図する。
【0083】
媒体(L)は、典型的に、1つまたは複数の溶媒(S)を含有しない。
【0084】
媒体(L)の選択は、それが塩(M)を可溶化するのに好適であることを条件として特に限定されない。
【0085】
塩(M)は、典型的に、
(a)MeI、Me(PF、Me(BF、Me(ClO、Me(ビス(オキサラト)ボレート)(「Me(BOB)」)、MeCFSO、Me[N(CFSO、Me[N(CSO、Me[N(CFSO)(RSO)](式中、RがC、C、またはCFOCFCFである)、Me(AsF、Me[C(CFSO、Me(式中、Meが金属、好ましくは遷移金属、アルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、より好ましくはMeがLi、Na、KまたはCsであり、さらにより好ましくはMeがLiであり、およびnが前記金属の原子価であり、典型的にnが1または2である)、
(b)
(式中、R’が、F、CF、CHF、CHF、CHF、C、C、C、C、C、C、C、C、C、C11、COCF、COCF、COCFおよびCFOCFからなる群選択される)、および
(c)それらの組合せ
からなる群から選択される。
【0086】
組成物(C1)中の媒体(L)の量は、典型的に、前記媒体(L)およびポリマー(FF)の全重量に基づいて少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%である。
【0087】
前記媒体(L)およびポリマー(FF)の全重量に基づいて少なくとも50重量%の媒体(L)を含む組成物(C1)を使用して非常に良好な結果が得られている。
【0088】
媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には、少なくとも0.01M、好ましくは少なくとも0.025M、より好ましくは少なくとも0.05Mである。
【0089】
媒体(L)中の塩(M)の濃度は、有利には、最大で3M、好ましくは最大で2M、より好ましくは最大で1Mである。
【0090】
本発明の第1の実施形態によれば、媒体(L)は、少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0091】
好適な有機カーボネートの非限定的な例としては、特に、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの混合物、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-メチルカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、フルオロプロピレンカーボネートおよびこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
本発明の第2の実施形態によれば、媒体(L)は、少なくとも1つのイオン液体および任意選択的に少なくとも1つの有機カーボネートを含む。
【0093】
本発明の目的のために、用語「イオン液体」は、大気圧下において100℃未満の温度で液体状態である、プラスに帯電したカチオンとマイナスに帯電したアニオンとの組み合わせにより形成される化合物を意味することを意図する。
【0094】
イオン液体は、典型的に、
- 1つまたは複数のC~C30アルキル基を任意選択的に含有するイミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウムおよびピペリジニウムイオンからなる群から選択されるプラスに帯電したカチオンと、
- ハロゲン化物アニオン、過フッ素化アニオンおよびボレートからなる群から選択されるマイナスに帯電したアニオンと
を含有する。
【0095】
~C30アルキル基の非限定的な例としては、とりわけ、メチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシルおよびドデシル基が挙げられる。
【0096】
イオン液体のプラスに帯電したカチオンは、好ましくは、
- 式(II):
(式中、互いに等しいかまたは異なるR11およびR22は、独立して、C~Cアルキル基を表し、互いに等しいかまたは異なるR33、R44、R55およびR66は、独立して、水素原子またはC~C30アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す)
のピロリジニウムカチオン、および
- 式(III):
(式中、互いに等しいかまたは異なるR11およびR22は、独立して、C~Cアルキル基を表し、互いに等しいかまたは異なるR33、R44、R55、R66およびR77は、独立して、水素原子またはC~C30アルキル基、好ましくはC~C18アルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基を表す)
のピペリジニウムカチオン
からなる群から選択される。
【0097】
イオン液体のプラスに帯電したカチオンは、より好ましくは、
- 式(II-A):
のピロリジニウムカチオン、
- 式(III-A):
のピペリジニウムカチオン
からなる群から選択される。
【0098】
イオン液体のマイナスに帯電したアニオンは、好ましくは、
- 式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF のテトラフルオロボレート、および
- 式:
のオキサロボレート
からなる群から選択される。
【0099】
イオン液体は、さらにより好ましくは、上に定義されたような式(II-A)のピロリジニウムカチオンと、式(SOCFのビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、式PF のヘキサフルオロホスフェートおよび式BF のテトラフルオロボレートからなる群から選択される過フッ素化アニオンとを含有する。
【0100】
本発明の目的のために、用語「導電化合物[化合物(C)]」は、電子導電率を電極に与えることができる化合物を意味することを意図する。
【0101】
化合物(C)は、典型的に、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、黒鉛粉末、黒鉛繊維などの炭質材料、ならびにニッケルおよびアルミニウム粉末または繊維などの金属粉末または繊維からなる群から選択される。
【0102】
本発明の方法の工程(iv)下において、乾燥は、大気圧下または真空下のいずれで行われてもよい。あるいは、乾燥は、、例えば、典型的に、特に水分が除かれた(0.001%v/v未満の水蒸気含有量)不活性ガス下などの改善された雰囲気下で行うことができる。
【0103】
乾燥温度は、本発明の電極(E)からの1つまたは複数の溶媒(S)の蒸発による除去を達成するように選択されるであろう。
【0104】
本発明の電極(E)は、好ましくは1つまたは複数の溶媒(S)を含有しない。
【0105】
本発明の電極(E)の層(L1)は、典型的に、10μm~500μm、好ましくは50μm~250μm、より好ましくは70μm~150μmに含まれる厚さを有する。
【0106】
第4の例において、本発明は、本発明の電極(E)を含む電気化学デバイスに関する。
【0107】
特に、本発明は、
- 正極と、
- 負極と、
- 前記正極と前記負極との間の膜と
を含む二次電池にさらに関し、ここで、正極および負極のうちの少なくとも1つが本発明の電極[電極(E)]である。
【0108】
したがって、本発明はまた、正極と負極との間に膜を組み立てる工程を含む、二次電池の製造のための方法に関し、ここで、正極および負極のうちの少なくとも1つが本発明の電極[電極(E)]である。
【0109】
本発明の目的のために、用語「膜」は、それと接触する化学種の透過を抑える不連続の、一般に薄い界面を意味することを意図される。この界面は、均質であっても、すなわち、構造が完全に一様であってもよく(稠密な膜)、またはそれは、例えば、有限の寸法の空洞、細孔もしくは穴を含有して化学的にもしくは物理的に不均一であってもよい(多孔質膜)。
【0110】
膜は、典型的に、無機材料および有機材料から選択される少なくとも1つの材料を含む。
【0111】
好適な有機材料の非限定的な例には、とりわけ、部分フッ素化フルオロポリマーからなる群から好ましくは選択されるポリマーが含まれる。
【0112】
膜は、有利には、上に定義されたような1つ以上の化合物(EA)を含有しない。
【0113】
膜は、上に定義されたような少なくとも1つの媒体(L)および上に定義されたような少なくとも1つの塩(M)をさらに含んでもよい。
【0114】
本発明の第1の実施形態によれば、膜がフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体を含み、前記ハイブリッドは、
- 少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーと、
- 式(IV):
4-mAY (IV)
(式中、mが1~4の整数であり、Aが、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Yが加水分解性基であり、およびXが、場合により1つまたは複数の官能基を含む炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 上に定義されたような少なくとも1つのイオン性液体と、
- 上に定義されたような少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む組成物を加水分解および/または凝縮する工程を含む方法によって得ることができる。
【0115】
上に定義されたような式(IV)の化合物(M1)の加水分解性基Yの選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にすることを条件として特に限定されない。上に定義されたような式(IV)の化合物(M1)の加水分解性基Yは、典型的に、好ましくは塩素原子であるハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0116】
上で定義した式(IV)の化合物(M1)が少なくとも1つの官能基をX基上に含む場合、それは官能性化合物(M1)と称される。上で定義した式(IV)の化合物(M1)のX基のいずれも官能基を含まない場合、上で定義した式(IV)の化合物(M1)は非官能性化合物(M1)と称される。
【0117】
化合物(M1)は、好ましくは、式(IV-A):
4-mA(OR (IV-A)
(式中、mが1~4、および特定の実施形態によれば1~3の整数であり、Aが、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、RおよびRが、互いにおよび各出現時に等しいかまたは異なり、C1~18炭化水素基から独立して選択され、ここで、Rが任意選択的に少なくとも1つの官能基を含む)で表される。
【0118】
官能基の非限定的な例には、とりわけ、イソシアネート基、エポキシ基、カルボン酸基(その酸、エステル、アミド、無水物、塩またはハライドの形態)、スルホン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態)、ヒドロキシル基、リン酸基(その酸、エステル、塩またはハライドの形態)、チオール基、アミン基、第4級アンモニウム基、エチレン性不飽和基(ビニル基など)、シアノ基、尿素基、有機シラン基、芳香族基が含まれる。
【0119】
上に定義されたような式(IV)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは、より好ましくは、式(IV-B):
A’ 4-mA(ORB’ (IV-B)
(式中、mが1~3の整数であり、AがSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRA’が、少なくとも1つの官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRB’がC~C直鎖状または分岐アルキル基であり、好ましくはRB’がメチルまたはエチル基である)
のものである。
【0120】
官能性化合物(M1)の例は、特にビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、式CH=CHSi(OCOCHのビニルトリスメトキシエトキシシラン、式:
の2-(3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン)、式:
のグリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、式:
のグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、式:
のアミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、式:
NCNHCSi(OCH
のアミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロイソブチルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3-アクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3-(n-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2-(4-クロロスルホニルフェニル)エチルトリクロロシラン、カルボキシエチルシラントリオール、およびそのナトリウム塩、式:
のトリエトキシシリルプロピルマレインアミド酸、式HOSO-CHCHCH-Si(OH)の3-(トリヒドロキシシリル)-1-プロパン-スルホン酸、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレン-ジアミン三酢酸、およびそのナトリウム塩、式:
の3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、式HC-C(O)NH-CHCHCH-Si(OCHのアセトアミドプロピルトリメトキシシラン、式Ti(L)(OR)(式中、Lはアミン置換アルコキシ基、例えばOCHCHNHであり、Rはアルキル基であり、xおよびyはx+y=4であるような整数である)のアルカノールアミンチタネートである。
【0121】
非官能性化合物(M1)の例は、特にトリメトキシシラン、トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメチルチタネート、テトラエチルチタネート、テトラ-n-プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ-n-ブチルチタネート、テトラ-イソブチルチタネート、テトラ-tert-ブチルチタネート、テトラ-n-ペンチルチタネート、テトラ-n-ヘキシルチタネート、テトライソオクチルチタネート、テトラ-n-ラウリルチタネート、テトラエチルジルコネート、テトラ-n-プロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラ-n-ブチルジルコネート、テトラ-sec-ブチルジルコネート、テトラ-tert-ブチルジルコネート、テトラ-n-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ペンチルジルコネート、テトラ-tert-ヘキシルジルコネート、テトラ-n-ヘプチルジルコネート、テトラ-n-オクチルジルコネート、テトラ-n-ステアリルジルコネートである。
【0122】
本発明の第2の実施形態によれば、膜がフルオロポリマーハイブリッド有機/無機複合体、上に定義されたような少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]および上に定義されたような少なくとも1つの金属塩[塩(M)]を含み、前記ハイブリッドは、
- 少なくとも1つのヒドロキシル末端基を含む少なくとも1つの官能性含水素モノマーに由来する繰り返し単位を含む少なくとも1つの部分フッ素化フルオロポリマーと、
- 式(V):
X’4-m’A’Y’m’ (V)
(式中、m’が1~3の整数であり、A’がSi、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、Y’が加水分解性基であり、およびX’が、少なくとも1つの-N=C=O官能基を含む炭化水素基である)
の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M2)]と、
- 任意選択的に、上に定義されたような式(IV)の少なくとも1つの金属化合物[化合物(M1)]と、
- 上に定義されたような少なくとも1つの液体媒体[媒体(L)]と、
- 上に定義されたような少なくとも1つの金属塩[塩(M)]と
を含む組成物を加水分解および/または凝縮する工程を含む方法によって得ることができる。
【0123】
上に定義されたような式(V)の化合物(M2)の加水分解性基Y’の選択は、それが適切な条件下で-O-A≡結合の形成を可能にすることを条件として特に限定されない。上に定義されたような式(V)の化合物(M2)の加水分解性基Y’は、典型的に、好ましくは塩素原子であるハロゲン原子、ヒドロカルボキシ基、アシルオキシ基およびヒドロキシル基からなる群から選択される。
【0124】
化合物(M2)は、好ましくは、式(V-A):
4-m’A’(ORm’ (V-A)
(式中、m’が1~3の整数であり、A’が、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRが、少なくとも1つの-N=C=O官能基を含むC~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRがC~C直鎖状または分岐アルキル基であり、好ましくはRがメチルまたはエチル基である)
のものである。
【0125】
化合物(M2)は、より好ましくは式(V-B):
O=C=N-RC’-A’-(ORD’ (V-B)
(式中、A’が、Si、TiおよびZrからなる群から選択される金属であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRC’が直鎖状または分岐C~C12炭化水素基であり、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なるRD’がC~C直鎖状または分岐アルキル基であり、好ましくはRD’がメチルまたはエチル基である)
のものである。
【0126】
好適な化合物(M2)の非限定的な例としては、以下のもの:トリメトキシシリルメチルイソシアネート、トリエトキシシリルメチルイソシアネート、トリメトキシシリルエチルイソシアネート、トリエトキシシリルエチルイソシアネート、トリメトキシシリルプロピルイソシアネート、トリエトキシシリルプロピルイソシアネート、トリメトキシシリルブチルイソシアネート、トリエトキシシリルブチルイソシアネート、トリメトキシシリルペンチルイソシアネート、トリエトキシシリルペンチルイソシアネート、トリメトキシシリルヘキシルイソシアネートおよびトリエトキシシリルヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0127】
本発明のこの第2の実施形態による膜中の、上に定義されたような式(IV)の化合物(M1)が官能性化合物(M1)である場合、それは典型的に、-N=C=O官能基と異なる少なくとも1つの官能基を含む。
【0128】
本発明の第1の実施形態によれば、二次電池は、
- 正極[電極(Ep)]と、
- 負極と、
- 前記電極(Ep)と前記負極との間の、上に定義されたような膜と
を含む。
【0129】
本発明のこの第1の実施形態の二次電池の負極は、典型的に金属基材であり、好ましくは、リチウムまたは亜鉛などの金属から製造される箔である。
【0130】
本発明の第2の実施形態によれば、二次電池は、
- 正極[電極(Ep)]と、
- 負極[電極(En)]と、
- 前記電極(Ep)と前記電極(En)との間の、上に定義されたような膜と
を含む。
【0131】
参照により本明細書に組み込まれる任意の特許、特許出願および刊行物の開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0132】
本発明は、以下の実施例を参照してこれからより詳細に説明されるが、実施例の目的は、例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0133】
原材料
ポリマー(FF-A):25℃のDMF中で0.30l/gの粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー(FF-B):25℃のDMF中で0.30l/gの粘度を有するVDF-AA(0.9モル%)ポリマー。
ポリマー(F-1):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.8モル%)-HFP(2.4モル%)ポリマー。
ポリマー(F-2):15g/分(2.16Kg、230℃)のメルトフローインデックス(MFI)を有するVDF-HEA(0.8モル%)ポリマー。
ポリマー(F-3):約148.5~149℃の融点および25℃のDMF中で0.28~0.29l/gの粘度を有するVDF-HFPコポリマー。
LiTFSI:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム塩。
Pyr13TFSI:N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
電解質媒体(EL-1):Pyr13TFSI中のLiTFSIの溶液(0.5モル/L)。
電解質媒体(EL-2):ビニレンカーボネート(VC)(2重量%)を含むエチレンカーボネート(EC)/プロピレンカーボネート(PC)(1/1体積比)中のLiTFSIの溶液(1モル/L)。
黒鉛:75%のSMG HE2(Hitachi Chemical Co.,Ltd.)/25%のTIMREX(登録商標)SFG6。
DBTDL:ジブチル錫ジラウレート。
TSPI:3-(トリエトキシシリル)プロピルイソシアネート。
【0134】
電極の接着試験
金属コレクターと電極の層(L1)との間の中間層の接着強さを以下の手順に従って測定した:SCOTCH(登録商標)3M467M接着剤のストライプをステンレス鋼プラック上に強固に付着させ、ストライプの他方の面を電極に付着させた。ステンレス鋼ロールでそれを3回押しつけることにより、電極へのこのストライプの接着強さを強化した。標準離層を180°で測定し、力をN/m単位で測定した。引張り速度は室温で300mm/分であった。
【0135】
電解質媒体(EL-1)を使用する電極の作製のための一般的な手順
DMSO中のポリマー(FF-B)の溶液を60℃で調製し、次いで室温にした。次の工程において、電解質媒体(EL1)を溶液に添加した。重量比[m電解質/(m電解質+mポリマー(FF-))]×100は70%であった。カソード:SUPER P(登録商標)カーボンブラック(CF)とLiFePO(LFP)とのブレンドを含む組成物をそのように得られた溶液に重量比87/13((CF+LFP)/ポリマー(FF-B))で添加した。CF/LFP重量比は13/87であった。
【0136】
キャスティング手順
テープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さで金属コレクター上に塗布した。厚さは、ナイフと金属コレクターとの間の距離によって制御された。そのように得られた電極の湿潤層(L1)の厚さは約250μmであった。次に、電極を1時間にわたり真空下で乾燥させ、その後、5kN/cmの圧力下において室温で静的プレスを使用してカレンダー処理した。最終負荷は0.5mAh/cmであった。
【0137】
電解質媒体(EL-1)を使用する膜の作製のための一般的な手順
膜は、国際公開第2013/160240号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS ITALY S.P.A.)2013年10月31日の実施例3に記載されているように作製した。
【0138】
電解質媒体(EL-2)を使用する電極の作製のための一般的な手順
アセトン中のポリマー(FF-A)の溶液を60℃で調製し、次いで室温にした。次の工程において、電解質媒体(EL2)を溶液に添加した。重量比[m電解質/(m電解質+mポリマー(FF-A))]×100は75%であった。アノード:黒鉛をそのように得られた溶液に重量比90/10(黒鉛/ポリマー(FF-A))で添加した。カソード:50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックおよび50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)とLiFePO(LFP)とのブレンドを含む組成物をそのように得られた溶液に重量比90/10((CF+LFP)/ポリマー(FF-A))で添加した。CF/LFP重量比は11/89であった。
【0139】
キャスティング手順
テープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さで金属コレクター上に塗布した。厚さは、ナイフと金属コレクターとの間の距離によって制御された。そのように得られたアノードの湿潤層(L1)の厚さは約120μmであった。そのように得られたカソードの湿潤層(L1)の厚さは約250μmであった。混合物の粘度はアセトンを添加することによって調節された。次に、溶媒を前記混合物から蒸発させ、それによって電極を提供した。
【0140】
電解質媒体(EL-2)を使用する膜の作製のための一般的な手順
ポリマー(F-1)(1.5g)を60℃で8.5gのアセトンに溶解させ、それによって15重量%の前記ポリマー(F-1)を含有する溶液を提供した。溶液は、室温での均質化後に均一であり、透明であった。次に、DBTDL(0.015g)を添加した。溶液を60℃で均質化し、次いで室温にした。TSPI(0.060g)をそれに添加した。DBTDLの量は、TSPIに対して10モル%であると計算された。TSPIはそれ自体、ポリマー1に対して1.1モル%であるように計算した。再度、溶液を60℃で均質化させ、次にそれを、TSPIのイソシアネート官能基をポリマー1のヒドロキシル基と反応させるために約90分間にわたり60℃でそのままにした。溶液を次に室温にした。次の工程において、電解質媒体(EL-2)を添加した。重量比[m電解質/(m電解質+mポリマー(F-1))]は66%であった。60℃で均質化後、蟻酸を添加した。溶液を60℃で均質化し、次いで室温にした。TEOSをそれに添加した。TEOSがSiOに完全に変換すると仮定して、TEOSの量を重量比(mSiO2/mポリマー1)から計算した。この比は10%であった。蟻酸の量を以下の式から計算した:
蟻酸/nTEOS=7.8
テープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さでPET基材上に塗布した。厚さは、ナイフとPETフィルムとの間の距離によって制御された。溶媒は溶液混合物から急速に蒸発され、膜が得られた。数時間後、膜がPET基材から分離された。そのように得られた膜は、20μmの一定厚さを有した。
【0141】
実施例1 - アノード(EL-2)
上に詳述された電解質媒体(EL-2)を使用して、電極の作製のための一般的な手順に従って調製された溶液混合物から銅コレクター上に層をキャスティングすることにより、アノードを作製した。接着強さ:そのように得られたアノード層と銅コレクターとの間に50N/mの力が測定された。
【0142】
実施例2 - カソード(EL-2)
上に詳述された電解質媒体(EL-2)を使用して、電極の作製のための一般的な手順に従って調製された溶液混合物からアルミニウムコレクター上に層をキャスティングすることにより、カソードを作製した。接着強さ:そのように得られたカソード層と金属コレクターとの間に11N/mの力が測定された。
【0143】
比較例1-A - アノード
実施例1に詳述したのと同じ手順を使用するが、ポリマー(FF-A)の代わりにポリマー(F-3)を使用することによってアノードを作製した。そのように得られたアノード層と金属コレクターとの間に中間層の接着性は観察されなかった。
【0144】
比較例2-A - カソード
実施例2に詳述したのと同じ手順を使用するが、ポリマー(FF-A)の代わりにポリマー(F-1)を使用することによってカソードを作製した。そのように得られたアノード層と金属コレクターとの間に中間層の接着性は観察されなかった。
【0145】
実施例3 - カソード(EL-1)
上に詳述された電解質媒体(EL-1)を使用して、電極の作製のための一般的な手順に従って調製された溶液混合物からアルミニウムコレクター上に層をキャスティングすることにより、カソードを作製した。接着強さ:そのように得られたカソード層と金属コレクターとの間に136N/mの力が測定された。
【0146】
比較例3 - カソード
実施例3に詳述したのと同じ手順を使用するが、ポリマー(FF-B)の代わりにポリマー(F-2)を使用することによってカソードを作製した。層...と金属コレクターとの間に中間層の接着性は観察されなかった。
【0147】
比較例4-A - カソード
N-メチル-2-ピロリドン中のポリマー(FF-B)の12重量%溶液を60℃で調製し、次いで室温にした。50重量%のC-NERGY(登録商標)SUPER C65カーボンブラックおよび50重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)とLiFePO(LFP)とのブレンドを含む組成物をそのように得られた溶液に重量比95.5/4.5((CF+LFP)/ポリマー(FF-B))で添加した。CF/LFP重量比は4/96であった。テープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さで金属コレクター上に塗布した。厚さは、ナイフと金属コレクターとの間の距離によって制御された。そのように得られたカソードの湿潤層の厚さは約15μmであった。次に、一晩にわたり60℃で乾燥させることによって溶媒を前記混合物から蒸発させ、それによって電極を提供した。
【0148】
比較例4-B - アノード
N-メチル-2-ピロリドン中のポリマー(FF-B)の12重量%溶液を60℃で調製し、次いで室温にした。黒鉛をそのように得られた溶液に重量比96/4(黒鉛/ポリマー(FF-B))で添加した。テープキャスティング装置(ドクターブレード)を使用して溶液混合物を一定の厚さで金属コレクター上に塗布した。厚さは、ナイフと金属コレクターとの間の距離によって制御された。そのように得られたアノードの湿潤層の厚さは約15μmであった。次に、一晩にわたり60℃で乾燥させることによって溶媒を前記混合物から蒸発させ、それによって電極を提供した。
【0149】
実施例4 - リチウムイオン電池の製造
電解質媒体(EL-2)を使用して、上に詳述したように一般的な手順に従って作製された膜を実施例2のカソード(EL-2)と実施例1のアノード(EL-2)との間に置くことによってコインセルを作製した。
【0150】
異なる放電率でそのようにして得られたコインセルの放電容量値を本明細書で下の表1に示す。
【0151】
【0152】
比較例5
電解質媒体(EL-2)を使用して、上に詳述したように一般的な手順に従って作製された膜を、比較例4-Aに詳述されたように作製されたカソードと、比較例4-Bに詳述されたように作製されたアノードとの間に置くことによってコインセルを作製した。それによって提供される電池は作動しなかった。
【0153】
実施例5 - リチウムイオン電池の製造
電解質媒体(EL-1)を使用して、上に詳述したように一般的な手順に従って作製された膜をリチウム金属箔と実施例3のカソード(EL-1)との間に置くことによってSwagelokセルを作製した。異なる放電率でそのようにして得られたコインセルの放電容量値を本明細書で下の表2に示す。
【0154】
【0155】
比較例6
電解質媒体(EL-1)を使用して、上に詳述したように一般的な手順に従って作製された膜を、リチウム金属箔と、8重量%のポリマー(F-2)、82重量%のLiFePO(LFP)および10重量%のVGCF(登録商標)炭素繊維(CF)を含むN-メチル-2-ピロリドン中の溶液から調製されたカソードとの間に置くことによってSwagelokセルを作製した。それによって提供された電池は、C/20のレートで5サイクル後に作動しなかった。