(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】直交型フラックスゲートセンサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/04 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
G01R33/04
(21)【出願番号】P 2019013906
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】517205767
【氏名又は名称】笹田磁気計測研究所株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597010628
【氏名又は名称】協立電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】笹田 一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 彰利
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-277522(JP,A)
【文献】特開2014-029323(JP,A)
【文献】実開昭55-077191(JP,U)
【文献】特開2016-164532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長い強磁性体のコアと、
前記コアに巻かれた検出コイルと、
所定の周期の交流電流に対して該交流電流の振幅以上の大きさの
直流バイアス電流を重畳した励磁電流
を前記コアの軸方向に流して
前記コアを
周方向に磁化する励磁部と、を有し、
前記検出コイルに生じる誘起電圧を用いてセンシングを行う直交型フラックスゲートセンサにおいて、
センシング開始の際に、前記直流バイアス電流と同じ極性であって前記励磁電流よりも大きな磁化促進電流を前記コアの軸方向に流して前記コアを
周方向に磁化する磁化促進部と、
を備えたことを特徴とする直交型フラックスゲートセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交型フラックスゲートセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気センサの一つとしてフラックスゲートセンサが知られている。このフラックスゲートセンサでは、励磁電流を用いて強磁性体のコアを励磁し、コアに巻かれた検出コイルに生じる誘起電圧からコアに印加された磁界の強度を求める。こうしたフラックスゲートセンサの一つに特許文献1に記載の直交型フラックスゲートセンサがある。この直交型フラックスゲートセンサでは、周波数fの交流成分と、この交流成分の振幅よりも大きなバイアス電流を重畳した励磁電流でコアを励磁し、検出コイルから生じる周波数fの成分を用いて求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載の直交型フラックスゲートセンサでは、コアに磁界が印加された場合に、励磁電流の交流成分と同じ周波数の成分が検出コイルの誘起電圧となって出力される。このため、コアに印加された磁界の強度を求めるにあたって、検出コイルの誘起電圧のうち励磁電流の交流成分と同じ周波数の成分を用いることができ、簡単な構成とすることができる。また、バイアス電流を重畳したことによりコアに励磁される磁界の方向が反転しない(励磁が単極性になる)ため、コアに励磁される磁界が反転する構成と比較して、磁化反転によるノイズの発生を抑えることができる。
【0005】
しかし、センシングを行う前のコアの磁性によっては、センシング時において磁化反転によるノイズ(バルクハウゼンノイズ)が発生する場合がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に鑑みてなされたものであり、ノイズを低減した直交型フラックスゲートセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の直交型フラックスゲートセンサの一実施形態は、
細長い強磁性体のコアと、
前記コアに巻かれた検出コイルと、
所定の周期の交流電流に対して該交流電流の振幅以上の大きさの直流バイアス電流を重畳した励磁電流を前記コアの軸方向に流して前記コアを周方向に磁化する励磁部と、を有し、
前記検出コイルに生じる誘起電圧を用いてセンシングを行う直交型フラックスゲートセンサにおいて、
センシング開始の際に、前記直流バイアス電流と同じ極性であって前記励磁電流よりも大きな磁化促進電流を前記コアの軸方向に流して前記コアを周方向に磁化する磁化促進部と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記の直交型フラックスゲートセンサによれば、磁化促進部によってセンシングにかかるコアの磁化を促し、磁区を一方向にそろえることにより、センシング開始時におけるバルクハウゼンノイズを低減させることができる。
【0010】
上記の直交型フラックスゲートセンサによれば、磁化促進電流を用いてコアの磁化を促し、センシング開始時におけるバルクハウゼンノイズを低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の直交型フラックスゲートセンサの実施形態によれば、ノイズを低減した直交型フラックスゲートセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1の構成を示す概略図である。
【
図2】直交型フラックスゲートセンサ1のコア2の状態の変化の一例を示すモデル図である。
【
図3】交流電流のみの励磁電流と、これに伴うコア2の軸方向の磁束および検出コイル3の出力電圧の変化の一例を示す図である。
【
図4】交流電流をバイアスした励磁電流と、これに伴うコア2の軸方向の磁束および検出コイル3の出力電圧の変化を示す図である。
【
図5】コア2の周面の点Pにおける磁化Jの方向の変化の一例を示すモデル図である。
【
図6】消磁状態にある強磁性体を磁化した場合の初磁化曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本実施形態の直交型フラックスゲートセンサの一例について説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1の構成を示す概略図である。
【0015】
本実施形態のフラックスゲートセンサ1は、強磁性体(例えば、スーパーマロイ、アモルファス、等)のコア2と、このコア2に巻かれた検出コイル3と、コア2に直列に接続された交流電源4と直流電源5とを有するものである。コア2は、交流電源4からの周波数fHzの交流電流に直流電源5からのバイアス電流を重畳した励磁電流によって励磁される。ここで、直流電源5からのバイアス電流の大きさは、交流電源4からの交流電流の振幅よりも大きく設定されている。また、検出コイル3には、外部磁界の印加によって検出コイル3に誘起される電圧のうちfHzの成分を抽出し、外部磁界の大きさに相当する電圧を出力する検波回路6が接続されている。
【0016】
上記コア2は、円筒形のものであるが、細長い形状であれば、例えば薄い板状やワイヤー状のものを用いてもよい。また、直流電源5からのバイアス電流は、プラスの極性のものであるが、極性についてはマイナスであってもよく、励磁電流全体でプラスとマイナスのいずれかの極性となっていればよい。
【0017】
上記直流電源5には、時定数回路7と、電源投入を検出する起動検出回路8が接続されている。起動検出回路8で電源投入が検出されると、時定数回路7から一定時間(例えば1秒間)に亘って直流電源5に信号が出力される。この信号が入力されると、直流電源5では、センシング時の直流バイアス電流よりも大きな直流電流をコア2に供給する。これによって、センシング開始時に、コア2に対して大きな電流(例えば、励磁電流の最大値の2~5倍)を流す構成を採用している。
【0018】
以下の説明では磁束密度Bと磁界Hおよび磁化Jの間のB=μ0H+Jの関係を用いる(ここでμ0は真空の透磁率)。なお磁束は磁束密度を特定の面で面積積分したものである。たとえば、コア内の磁束密度をコアの断面にわたって面積積分するとコアを通過する磁束が求まる。
【0019】
[励磁電流が交流成分のみの場合]
上記直交型フラックスゲートセンサ1の動作原理を説明する前に、バイアス電流を重畳せずに交流電流のみの励磁電流を用いた場合の動作について説明する。
図2は、直交型フラックスゲートセンサ1のコア2の状態の変化の一例を示すモデル図である。また
図3は、交流電流のみの励磁電流と、これに伴うコア2の軸方向の磁束および検出コイル3の出力電圧の変化の一例を示す図である。なお、以下の説明では、コア2の軸方向に沿って(
図1では左から右に向かう方向、
図2では下から上に向かう方向)外部磁界が印加されているものとする。
【0020】
コア2への励磁電流Idが0の場合、コア2は外部磁界によってのみ磁化された状態となる。ここでは、この状態でコア2内部の軸方向の磁束が最大(外部磁界の磁束がコア2に最も引き寄せられた状態)になるものとして説明する。
図2(A)は、コア2への励磁電流Idが0の場合に、外部磁界の磁束がコア2に引き寄せられてコア2の内部を通っていることが破線で示した磁束線によって定性的に示されている。
【0021】
ここから、励磁電流Idが増加すると、これに伴ってコア2は外部磁界と励磁電流Idによる磁界によって磁化される。この状態では、励磁電流Idが増加するほどコア2の磁化の方向は励磁方向である周方向に向けられ、コア2内部の軸方向の磁束が減少する(コア2に引き寄せられる磁束が減少する)。
図2に示す矢印(1)は、励磁電流Idがプラス方向に対して増加することでコア2内部の軸方向の磁束が減少する期間を示している。さらに励磁電流Idが増加してコア2の磁化の方向が最も周方向に向けられた状態になると、コア2内部の軸方向の磁束が最小になる(外部磁界の磁束がコア2に最も引き寄せられない状態)。
図2(B)には、
図2(A)と比較してコア2の軸方向の磁束が少なくなっていることが破線で示した磁束線によって定性的に示されている。
【0022】
続いて励磁電流Idが減少に転じると、これに伴ってコア2の磁化の方向を周方向に向ける力が弱まり、コア2内部の軸方向の磁束が増加する(コア2に引き寄せられる磁束が増加する)。
図2に示す矢印(2)は、励磁電流Idがプラスから0へ減少することでコア2内部の軸方向の磁束が増加する期間を示している。そして励磁電流Idが0になると、再びコア2が外部磁界によってのみ磁化された状態になり(
図2(A))、コア2内部の軸方向の磁束が最大になる(外部磁界の磁束がコア2に最も引き寄せられた状態)。
【0023】
さらに、励磁電流Idが減少(マイナス側に増加)すると、これに伴ってコア2は外部磁界と励磁電流Idによる磁界によって磁化される。この状態では、励磁電流Idの絶対値が増加するほどコア2の磁化の方向は励磁方向である周方向(励磁電流Idがプラスの場合とは逆方向)に向けられていき、コア2内部の軸方向の磁束が減少する(コア2に引き寄せられる磁束が減少する)。
図2に示す矢印(3)は、励磁電流Idがマイナス方向に増加することでコア2内部の軸方向の磁束が減少する期間を示している。さらに励磁電流Idが減少(マイナス側に増加)してコア2の磁化の方向が最も周方向に向けられた状態になると、コア2内部の軸方向の磁束が最小になる(外部磁界の磁束がコア2に最も引き寄せられない状態)。
図2(C)には、
図2(A)と比較してコア2の軸方向の磁束が少なくなっていることが破線で示した磁束線によって定性的に示されている。
【0024】
続いて励磁電流Idがマイナスから0への増加に転じると、これに伴ってコア2の磁化の方向を周方向に向ける力が弱まり、コア2内部の軸方向の磁束が増加する(コア2に引き寄せられる磁束が増加する)。
図2に示す矢印(4)は、励磁電流Idがマイナスから0へ増加することでコア2内部の軸方向の磁束が増加する期間を示している。そして、励磁電流Idが0になると、再びコア2が外部磁界によってのみ磁化された状態になり(
図2(A))、上記説明した変化が繰り返される。
【0025】
図3には、上記
図2で説明した励磁電流Idの一周期の変化に対して、コア2の軸方向の磁束の変化は二周期分になっていることが示されている。また、
図3には検出コイル3の出力が示されているが、この周期は、コア2の軸方向の磁束の変化の周期と同じ周期である。すなわち、コア2の軸方向に沿って外部磁界が印加されている場合、検出コイル3から励磁電流Idの周波数の2倍の周波数の誘起電圧が出力されることになる。
【0026】
[交流成分の振幅よりも大きなバイアス電流を重畳した励磁電流を用いた場合]
次に、上記説明を踏まえ、本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1の動作原理を説明する。
図4は、交流電流をバイアスした励磁電流と、これに伴うコア2の軸方向の磁束および検出コイル3の出力電圧の変化を示す図である。
【0027】
上述したように本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、直流電源5からのバイアス電流の大きさが、交流電源4からの交流電流の振幅よりも大きく設定されている。このため
図4に示すように、励磁電流の極性が反転せず、コア2の励磁についても一方向のみに磁化される。この過程では磁化の方向が周面において逆方向へ反転することがなく、磁化の反転に付随するバルクハウゼンノイズは発生しない。
図4では、励磁電流は常に正で、周期的に平均値からの増減を繰り返す。励磁電流Idが平均値から増加することでコア2内部の軸方向の磁束が減少する期間(矢印(1)で示す期間)と、励磁電流Idが平均値から減少することでコア2内部の軸方向の磁束が増加する期間(矢印(2)で示す期間)が繰り返されることが示されている。なお、本実施形態ではバルクハウゼンノイズを抑えるため、
図4に示すように励磁電流の最小値が0にならない構成を採用しているが、励磁電流の最小値が0になる構成であってもよい。
【0028】
図3の例では、励磁電流の一周期の間にコア2の周方向の磁化が二回最大になり、これによってコア2の軸方向の磁束が二回最小になる(
図3では、期間(1)(2)の間と、期間(3)(4)の間の二回)。しかし、本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、
図3の例とは異なり、励磁電流の一周期の間にコア2が一回だけ最大になるサイクルとなるため、コア2の軸方向の磁束も一回だけ最小になる(
図4に示す期間(1)から期間(2)になる場合のみ)。これに伴い、励磁電流と検出コイル3の出力の周波数が同じになる。
【0029】
図4には、本実施形態で用いる励磁電流Idの一周期の変化が示されており、またこの励磁電流に対して、コア2の軸方向の磁束の変化が一周期分になっていることが示されている。また、
図4には検出コイル3の出力が示されているが、この周期は、コア2の軸方向の磁束の変化の周期と同じ周期である。すなわち本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、コア2の軸方向に沿って外部磁界が印加されている場合、検出コイル3から励磁電流Idの周波数と同じ周波数の誘起電圧が出力されることになる。
【0030】
さらに上記の動作について、コア2の周面における磁化の方向の変化を
図5を用いて説明する。同図は、コア2の周面の点Pにおける磁化Jの方向の変化の一例を示すモデル図である。
図5に示すように点Pでは、外部磁界および励磁電流Idによって周方向に生じる磁界によって磁化される(
図5の点Pを始点とする矢印が磁化Jを示す)。本実施形態では励磁電流Idの極性は反転しないため、この励磁電流Idによって生じる周方向の磁界の向きは反転せずに一方向のままとなる(
図5では右方向のまま)。励磁電流Idによる磁界の強さが変化すると、これに伴って周方向に対する磁化Jの角度は増減する。
図5では、点Pにおいて、周方向の磁界が強くなると磁化Jの方向が周方向に傾き((1)の矢印)、反対に弱くなると磁化Jの方向が軸方向に傾く((2)の矢印)ことが示されている。このとき、磁化Jの方向が周方向に傾くほどコア2内部の軸方向の磁束が減少する。この動作によってコア2の軸方向に外部磁界が印加されている場合に、検出コイル3から励磁電流Idの周波数と同じ周波数の誘起電圧が出力されることになる。なお、本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、コア2を励磁する磁界が反転する構成と比較してコア2の磁化方向が反転しにくいという特徴がある。
【0031】
以上説明したように、本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、コア2に磁界が印加された場合に、励磁電流の交流成分と同じ周波数の成分が検出コイル3の誘起電圧となって出力される。このため、コア2に印加された磁界の強度を求めるにあたって、検出コイル3の誘起電圧のうち励磁電流の交流成分と同じ周波数の成分を用いることができ、簡単な構成とすることができる。また、コア2を励磁する磁界の方向が反転しない(励磁が単極性になる)ため、コア2を励磁する磁界が反転する構成と比較して、磁化反転によるバルクハウゼンノイズの発生を抑えることができる。
【0032】
[センシング開始時にコアに大きな電流を流す構成について]
次に、センシング開始時に、コア2に対して大きな電流を流す構成について説明する。
【0033】
図6には、消磁状態にある強磁性体を磁化した場合の初磁化曲線が示されている。まず、初磁化範囲においては磁化が磁界とともに緩やかに増加する。続いて、不連続磁化範囲においては、磁壁が移動して外部磁界の方向成分をもった磁区が増加する。なお、この変化については非可逆的な変化となる。さらに、回転磁化範囲では、磁区内の磁気モーメントが外部磁界の方向へ回転し、磁化が飽和に至る。
【0034】
本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、コア2を励磁する磁界の方向が反転しない。このため、コア2の磁化を回転磁化範囲にある状態で動作させることができ、バルクハウゼンノイズを抑えることができる。しかし、センシングの開始時においては初期条件によっては磁区が望ましい方向と逆に反転していることがある。また、磁区によっては回転しにくい(より多くの励磁エネルギーを要する)ものもある。このためコア2が回転磁化範囲にある状態で動作するようになるまでに時間がかかり、それまでの間バルクハウゼンノイズが生じることがある。場合によってはいつまでたっても回転磁化範囲へ移行しない磁区が残る。
【0035】
そこで、本実施形態の直交型フラックスゲートセンサ1では、センシングの開始時(センサ起動時)に、コア2に対してセンシングの際に用いる直流バイアス電流よりも大きな直流電流を流す構成を採用している。この構成では、センシング中よりも大きな磁化力によってコア2が磁化されるため、センシング中におけるコア2の磁化を回転磁化範囲にある状態にすることができ、バルクハウゼンノイズの発生を抑えることができる。なお、このセンシング開始時における大きな電流を、その役割から磁化促進電流と称するものとする。
【0036】
上記説明した磁化促進電流については、その大きさや時間について何ら限定されるものではない。ただし、あまり大きな電流を流し続けるとコア2が発熱して問題が生じる可能性もあるため、磁化促進電流の大きさについては励磁電流の最大値(あるいはバイアス電流)に対して2~5倍程度の大きさであることが好ましく、また時間についても1秒程度であることが好ましい。
【0037】
また、コア2に対して磁化促進電流の供給を止める(あるいは磁化促進電流から励磁電流に移行する)際には、電流を緩やかに減少させる(例えば、1秒間で)ようにしてもよい。この場合、コア2の磁化力が急激に変化しないため、コア2の状態が急変するような事態を防止することができる。
【0038】
また、本実施形態では直流電源5を制御してコア2に磁化促進電流を流す構成を採用しているが、この構成に限られるものではなく、センシングの際の励磁電流とは異なる経路でコア2に対して磁化促進電流を供給するようにしてもよい。また、コア2を磁化するにあたっては、コア2に直接電流を流す構成に限られるものではなく、外部からコア2をその周方向に磁化する構成を設けてもよい。すなわち、励磁電流によってコア2を励磁する場合と比較して、より大きな磁化力でコア2を磁化する構成であればよい。
【0039】
[その他]
以下、上記説明した発明の構成について記載する。なお、発明の構成と対応する上記実施形態の構成については括弧書きで記載する。
【0040】
以上の説明では、
細長い強磁性体のコア(例えば、コア2)と、
所定の周期の交流電流に対して該交流電流の振幅以上の大きさのバイアス電流を重畳した励磁電流を、前記コアの軸方向に流して該コアを励磁する励磁部(例えば、交流電源4および直流電源5の組み合わせ)と、
前記コアに巻かれた検出コイル(例えば、検出コイル3)と、
前記励磁部よりも大きな磁化力で前記コアを磁化する磁化促進部(例えば、交流電源4、直流電源5、時定数回路7、起動検出回路8の組み合わせ)と、
を備えたことを特徴とする直交型フラックスゲートセンサ、が記載されている。
【0041】
また、上記記載の直交型フラックスゲートセンサであって、
前記磁化促進部は、
前記バイアス電流と同じ極性であって前記励磁電流よりも大きな磁化促進電流を流して前記コアを磁化するものである([センシング開始時にコアに大きな電流を流す構成について]の記載参照)、
ことを特徴とする直交型フラックスゲートセンサ、が記載されている。
【符号の説明】
【0042】
1 フラックスゲートセンサ
2 コア
3 検出コイル
4 交流電源
5 直流電源
6 検波回路
7 時定数回路
8 起動検出回路