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特許7245678地盤改良用材料、セメントミルク、及び、地盤改良方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】地盤改良用材料、セメントミルク、及び、地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/44 20060101AFI20230316BHJP
   E02D 3/12 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C09K17/44 P
E02D3/12 101
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019046348
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020147681
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 あゆみ
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-012622(JP,A)
【文献】特開2007-112714(JP,A)
【文献】特開2006-143976(JP,A)
【文献】河野俊夫,やさしいコンクリートの知識(その7)水,コンクリート工学,16巻,10号,日本,1978年,73-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良用混和剤と、セメントとを含む地盤改良用材料であって、
前記地盤改良用混和剤は、
(A)アルカリ金属炭酸塩と、
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを含み、
前記地盤改良用材料に含まれる塩素の量が、前記地盤改良用材料全体に対し、40ppm以上200ppm以下である、地盤改良用材料。
【請求項2】
前記(A)アルカリ金属炭酸塩と、前記(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とが、あらかじめ同じ容器に梱包されている、請求項1に記載の地盤改良用材料。
【請求項3】
前記(A)アルカリ金属炭酸塩と、前記(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とが、それぞれ別の容器に分包されている、請求項1に記載の地盤改良用材料。
【請求項4】
前記地盤改良用混和剤中の、前記(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上の含有量を100質量部としたとき、前記(A)アルカリ金属炭酸塩の含有量が50質量部以上500質量部以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の地盤改良用材料。
【請求項5】
前記地盤改良用材料中の、前記セメントの含有量を100質量部としたとき、前記地盤改良用混和剤の含有量が1質量部以上、25質量部以下である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の地盤改良用材料。
【請求項6】
前記地盤改良用材料中の、前記セメントの含有量を100質量部としたとき、30質量部以上、500質量部以下の水と混合して用いるように構成された、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の地盤改良用材料。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載の地盤改良用材料と、水とを含むセメントミルク。
【請求項8】
請求項に記載のセメントミルクを地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良用材料、セメントミルク、及び、地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱地盤のような不良地盤を改良するためには、軟弱な地盤を硬化、安定化させなければならない。
この地盤安定化工法としては、例えば、セメントミルクを、高圧で地中深くに噴射し、土と混合して硬化させ安定化する工法が挙げられる(非特許文献1参照)。
この工法は、地中にセメントミルクを噴射する管を挿入し、管を回転させながら管先端付近からセメントミルクを高圧噴射し、地中の土を切削すると同時に、切削された土とセメントミルクとが混合された混合土を別の管内を通して地上へ排出しながら、一定速度で管を上昇させ、地中をセメントミルクと土との混合物で置換して硬化させ、地盤を安定化させる工法である。
【0003】
また、該工法において、切削によりセメントミルクと土を混合した際に、セメント粒子と土の粒子が電気的作用により互いに凝集し、セメントミルクと土との混合物である混合土の粘性が上昇し、混合土を地上へ排出できにくくなる場合があり、混合土の粘性上昇を抑制するために、リン酸塩、アルカリ金属含有物(硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩等)、有機酸およびアンモニウム塩等を含有する物質を添加する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-254903号公報
【文献】特開平06-206747号公報
【文献】特開平07-206495号公報
【文献】特開平07-069695号公報
【文献】特開2004-143041号公報
【文献】特開平09-194835号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】坪井 直道著、薬液注入工法の実際、第5~9頁、昭和56年3月25日、鹿島出版会、改訂版第2刷発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術においては、十分な強度が発現しない場合があった。本発明は、上記課題を解決しようとするものであり、安定的に高い強度発現性が可能となる地盤改良用材料、セメントミルク、及び、地盤改良用方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討を行った結果、特定の塩素濃度の地盤改良用材料を使用することにより、安定的に高い強度発現が可能になることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
地盤改良用混和剤と、セメントとを含む地盤改良用材料であって、
前記地盤改良用混和剤は、
(A)アルカリ金属炭酸塩と、
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを含み、
前記地盤改良用材料に含まれる塩素の量が、前記地盤改良用材料全体に対し、40ppm以上200ppm以下である、地盤改良用材料が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
上記の地盤改良用材料と、水とを含むセメントミルクが提供される。
【0010】
さらに、本発明によれば、
上記のセメントミルクを地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤改良方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安定的に高い強度発現が可能となる地盤改良用材料、セメントミルク、及び、地盤改良用方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本実施形態に係る地盤改良用材料は、地盤改良用混和剤と、セメントとを含む地盤改良用材料である。
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、
(A)アルカリ金属炭酸塩と、
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを含む。
また、本実施形態に係る地盤改良用材料に含まれる塩素の量は、地盤改良用材料全体に対し、40ppm以上200ppm以下であり、50ppm以上190ppm以下であることがより好ましく、60ppm以上180ppm以下であることがより好ましい。
【0013】
ここで、本実施形態に係る地盤改良用材料に含まれる塩素の量は、JIS R 5202に準じ、電位差滴定法で測定することができる。
【0014】
従来、地盤改良用材料においては、その粘度を安定させること等を目的としてさまざまな検討が行われてきたが、十分な強度が発現しない場合があった。本発明者らは鋭意検討を行った結果、特定の地盤改良用混和剤を含み、かつ、地盤改良用混和剤と、セメントとを含む地盤改良用材料全体の塩素濃度を特定の範囲とすることで、安定的にその硬化体が高強度となるセメントミルクを得ることができることを見出し、本発明を成し得たものである。
本発明の地盤改良用材料によれば、上記構成とすることで、安定的にその硬化体が高強度となるセメントミルクを得ることができる。また、本発明の地盤改良用材料によれば、セメントミルクの粘度を、地盤改良工法において最適に調整することが可能である。
なお、地盤改良用材料全体の塩素濃度は、地盤改良用混和剤とセメントの種類及び量を適切に調整することより制御することができる。
【0015】
<地盤改良用混和剤>
以下、本実施形態に係る地盤改良用混和剤について説明する。
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、
(A)アルカリ金属炭酸塩と、
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを含む。
【0016】
<(A)アルカリ金属炭酸塩>
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、粘性低減効果、強度発現性を高める第一成分として、(A)アルカリ金属炭酸塩を含む。本実施形態に係るに用いられるアルカリ金属炭酸塩としては、具体的に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。この中でも、粘性低減効果、強度発現性を高める観点から、本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを含むことが好ましく、炭酸ナトリウムを含むことがより好ましい。なお、本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、(A)アルカリ金属炭酸塩を1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
【0017】
<(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上>
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、粘性低減効果、強度発現性を高める第二成分として、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上を含む。
本発明で使用するポリアクリル酸類とは、ポリアクリル酸やその誘導体またはそれらの塩類を意味し、具体的には、ポリアクリル酸やポリアクリル酸エステル共重合体またはそれらのナトリウム塩、カリウム塩およびカルシウム塩等を挙げることができる。入手容易性の観点からナトリウム塩の使用が好ましく、共重合体としては架橋分岐型が好ましい。
【0018】
特に、本実施形態においては、高い粘性低減効果が得られる点から、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上として、ポリアクリル酸ナトリウムを含むことが好ましい。
粘性低減の観点から、ポリアクリル酸ナトリウムは、低重合度の水に可溶な重合体であることが好ましく、その固形分が90%以上、25℃における40%濃度のスラリー粘度が10,000cps以下の可溶性重合度タイプのものであることが好ましい。
【0019】
なお、ポリアクリル酸類は一般に空気連行性があるため、地盤改良材料調製時に空気量が過大になって圧送できない場合があるが、消泡剤の添加により所定の空気量にコントロールすることも可能である。消泡剤としては、シリコーン系、ノニオン系、アルコール系、脂肪酸系、エーテル系、脂肪酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエーテル系及びフッ素系等のものが挙げられる。
【0020】
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤を含むことができる。本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤を用いることで、又は、ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類を併用することで、さらに優れた粘性を低減させる効果が得られる。ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤は特に限定されるものでなく、市販のものが使用できる。その形状も粉末状、液体状の何れも使用可能であるが、後述のように、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを混合し、あらかじめ同じ容器に梱包する場合においては、液体状であることが好ましい。
【0021】
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、
(A)アルカリ金属炭酸塩と、
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上を必須成分とするが、対象とする地盤の土質(砂、シルト、粘土など)およびその物性(湿潤密度、含水率等)、更には、各工法における施工条件(注入量、及び要求特性等)に応じて、従来、公知の混和剤を含有することができる。
公知の混和剤としては、オキシカルボン酸塩、リグニンスルホン酸塩などの従来公知のコンクリート用混和剤、リン酸アルカリ金属塩、グルコン酸塩、トリエタノールアミン、サッカロース等のセメント用硬化遅延剤、硬化促進剤、リグニンスルホン酸系化合物、減水剤、流動化剤、AE剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、増粘剤、分離低減剤、防錆剤、収縮低減剤、膨張剤、防凍剤、ポゾラン系混和剤等を挙げることできる。
【0022】
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、地盤改良用混和剤中の、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上の含有量を100質量部としたとき、(A)アルカリ金属炭酸塩の含有量が50質量部以上500質量部以下であることが好ましく、55質量部以上400質量部以下であることがより好ましく、40質量部以上300質量部以下であることが特に好ましい。地盤改良用混和剤の配合を上記数値範囲内とすることによって、粘性低減効果、強度発現効果をより向上させることができるものと考えられる。
【0023】
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、地盤改良用混和剤調製用の水を含むことができる。本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、水を含むことで、含まれる各成分がより均質に分散した地盤改良用混和剤となる。よって、該地盤改良用混和剤とセメントとを含む成分を混合して得られる地盤改良用材料においても、セメントと、地盤改良用混和剤とがより均質に分散した地盤改良用材料とすることができ、セメントミルクにおける強度向上効果も奏するものと考えられる。また、事前に水を含ませ水溶性成分が溶解した地盤改良用混和剤を用いることで、地盤改良用材料調製時における各成分の溶解時間を短縮することができ、より短い時間で、均質な地盤改良用材料を得ることが可能となる。
【0024】
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、地盤改良用混和剤調製用の水を含む場合、地盤改良用混和剤に含まれる(A)アルカリ金属炭酸塩と(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上の合計を100質量部としたとき、地盤改良用混和剤調製用の水が、0.1質量部~70質量部であることが好ましく、0.5質量部~50質量部であることが好ましく、2~10質量部であることが特に好ましい。地盤改良用混和剤調製用の水の配合量を上記数値範囲内とすることによって、地盤改良用混和剤をより均質なものとすることができる。
【0025】
本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、その施工場所や施工条件に応じて、種々の梱包態様を取ることができる。具体的には、本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上と、をあらかじめ同じ容器に梱包した態様とすることができる。また、本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを、それぞれ別の容器に分包した態様とすることもできる。
【0026】
現場での作業を簡易かつ短時間とする観点からは、本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上と、をあらかじめ同じ容器に梱包した態様とすることが好ましい。(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とがあらかじめ同じ容器に梱包されている場合、両者を含む地盤改良用混和剤は十分に混合され均質化されているため、地盤改良用混和剤とセメントとを混和する際、両者が短時間で十分に均質化し、より短い時間で、適正な粘度を有し、十分な強度を発現することができるセメントミルクを得ることができる。
【0027】
また、本実施形態において、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上と、をあらかじめ同じ容器に梱包した態様とする場合、両者を含む地盤改良用混和剤をより均質にする観点から、(A)アルカリ金属炭酸塩が紛体状であり、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上が液体状であることが好ましい。
【0028】
また、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上と、をあらかじめ同じ容器に梱包した態様とする場合、該容器内に地盤改良用混和剤調製用の水を含むこともできる。この場合、同容器内の地盤改良用混和剤調製用の水の量は、(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上の合計を100質量部としたとき、0.1質量部~70質量部とすることができ、0.5質量部~50質量部であることが好ましく、2~10質量部であることが特に好ましい。なお、地盤改良用混和剤調製用の水は、その全部を(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とが梱包された容器内に梱包することも可能であるし、その一部を(A)アルカリ金属炭酸塩と、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とが梱包された容器内に梱包し、残部を現場で混合することもできる。
【0029】
<地盤改良用材料>
本実施形態に係る地盤改良用材料は、上記の地盤改良用混和剤と、セメントとを含む。
本発明で使用するセメントは特に限定されるものではなく、普通、早強、超早強および中庸熱等の各種ポルトランドセメント、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)、並びに、市販されている微粒子セメントなどが挙げられ、各種ポルトランドセメントを微粉末化して使用することも可能である。また、通常セメントに使用されている成分、例えば石膏等の量を増減して調製されたものも使用可能である。なお、本実施形態に係る地盤改良用混和剤は、セメントを1種のみ含んでよいし、2種以上を含んでもよい。
【0030】
価格や入手の容易性の観点から、セメントとしては、上記のうち普通ポルトランドセメントを含むことが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る地盤改良用材料は、地盤改良用材料中のセメントの含有量を100質量部としたとき、地盤改良用混和剤(ただし、地盤改良用混和剤調製用の水を除く)の含有量が1質量部以上、25質量部以下であることが好ましく、3質量部以上、23質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上、20質量部以下であることが特に好ましい。上記下限以上とすることによって、十分な粘性低減効果を得ることができ、上記上限以下とすることによって、十分な強度発現性を維持することができる。
【0032】
本実施形態に係る地盤改良用材料の調製方法は特に限定されず、公知の混錬方法を適宜選択することができる。混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、例えば、手練りとすることもできるし、ミキサを用いることもできる。ミキサを用いる場合、連続式ミキサ、バッチ式ミキサのいずれも使用可能である。
【0033】
<セメントミルク>
本実施形態に係るセメントミルクは、上記の地盤改良用材料と、水とを含む。
セメントミルクに含まれる水の量は、対象とする地盤の湿潤密度、含水率等によっても異なり、特に限定されるものではないが、通常、セメント100質量部に対して、30質量部以上、500質量部以下が好ましく、50質量部以上、300質量部以下がより好ましい。上記数値範囲内とすることによって、粘度及び強度発現のバランスに優れたセメントミルクとすることができる。
本混和剤は、粘性土に限らず、砂質土や腐食土等の土に対しても優れた効果がある。
【0034】
本実施形態に係るセメントミルクの調製方法は特に限定されず、公知の混錬方法を適宜選択することができる。混練に用いる器具や混練装置も特に限定されないが、例えば、手練りとすることもできるし、ミキサを用いることもできる。ミキサを用いる場合、連続式ミキサ、バッチ式ミキサのいずれも使用可能である。
【0035】
<地盤改良方法>
本実施形態に係る地盤改良方法は、上記セメントミルクを地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤改良方法である。
以下、本実施形態に係る地盤改良方法について説明する。
【0036】
まず、地盤改良が必要な箇所を削孔する。削孔径は特に限定されるものではなく、注入ロッドが挿入できる大きさであればよい。削孔の深さは、改良したい領域により変わるが、10~50m程度が一般的である。
【0037】
次に、二重管や三重管構造の注入ロッドを挿入し、セメントミルクをグラウトポンプ、超高圧ポンプ、又はコンプレッサーなどを用いて圧送し、二重管又は三重管のノズルから噴射する。セメントミルクの圧送圧力は大きい方が好ましいが、二重管、三重管、又はこれらのノズルの磨耗等を考慮すると、セメントミルクを噴射圧25MPa以上、噴射量100L/min以上で地盤に噴射することが好ましい。効率的に改良半径が大きくでき、経済的である。
【0038】
セメントミルクの送液量は特に限定されるものではないが、30~800リットル/分程度が好ましい。このように地中で高圧噴射されたセメントミルクは、土と一緒に混合攪拌され、スライムとなる。また、注入ロッドは回転しながら一定速度で地上へ上昇するので、最終的にはスライムからなる円柱状の杭が地中に形成される。
この杭の直径は、地盤の硬さを示すN値等の土の条件や噴射の圧送圧力等の施工条件により変化し、特に限定されるものではないが、0.5~20mが適当である。杭の長さは3m~50m程度のものが形成可能である。
【0039】
スライムの粘度は、対象とする地盤の土質(砂、シルト、粘土など)およびその物性(湿潤密度、含水率等)、更には、各工法における施工条件(注入量、及び要求特性等)に応じて、その最適値が異なるが、例えば、スライム練り混ぜ直後の粘度が30000mPa・S以下であることが好ましく、15000mPa・S以下であることがより好ましく、下限は特に制限が無いが、例えば100mPa・S以上とすることができる。
なお、セメントミルクの粘度は例えば、温度20℃、湿度80%、回転数20rpmの条件下でB型粘度計により求めることができる。
【0040】
スライムの硬化体の強度は、対象とする地盤の土質(砂、シルト、粘土など)およびその物性(湿潤密度、含水率等)、更には、各工法における施工条件(注入量、及び要求特性等)に応じて異なるが、例えば、当該スライムを4cm×4cm×16cmの型枠に流し込み、硬化後脱型して得た供試体を、温度20℃で封緘養生した際の材齢28日における圧縮強度を、2.0N/mm以上とすることができ、3.0N/mm以上であることがより好ましく、4.0N/mm以上であることが特に好ましい。
なお、スライムの硬化体の強度を評価する際の、対象地盤としては、例えば、セメントミルクの粘度は東京湾産粘性土(含水率45.6%、湿潤密度1.32g/cm)を用いることができる。
【0041】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0042】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. 地盤改良用混和剤と、セメントとを含む地盤改良用材料であって、
前記地盤改良用混和剤は、
(A)アルカリ金属炭酸塩と、
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とを含み、
前記地盤改良用材料に含まれる塩素の量が、前記地盤改良用材料全体に対し、40ppm以上200ppm以下である、地盤改良用材料。
2. 前記(A)アルカリ金属炭酸塩と、前記(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とが、あらかじめ同じ容器に梱包されている、1.に記載の地盤改良用材料。
3. 前記(A)アルカリ金属炭酸塩と、前記(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上とが、それぞれ別の容器に分包されている、1.に記載の地盤改良用材料。
4. 前記地盤改良用混和剤中の、前記(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤とポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上の含有量を100質量部としたとき、前記(A)アルカリ金属炭酸塩の含有量が50質量部以上500質量部以下である、1.乃至3.のいずれか一つに記載の地盤改良用材料。
5. 前記地盤改良用材料中の、前記セメントの含有量を100質量部としたとき、前記地盤改良用混和剤の含有量が1質量部以上、25質量部以下である、1.乃至4.のいずれか一つに記載の地盤改良用材料。
6. 1.乃至5.のいずれか一つに記載の地盤改良用材料と、水とを含むセメントミルク。
7. 6.に記載のセメントミルクを地盤中に高圧注入し、土と混合して硬化させる地盤改良方法。
【実施例
【0043】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
<使用材料>
実施例及び比較例で使用した材料を以下に記す。
【0045】
(A)アルカリ金属炭酸塩
・炭酸ナトリウム:一級試薬
・炭酸カリウム:一級試薬
【0046】
(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤と、ポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上
・ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤:デンカ社、品名FT-80
・ポリアクリル酸ナトリウム:日本触媒社、品名DL
【0047】
(セメント)
・ポルトランドセメント1:デンカ社、品名:普通ポルトランドセメント
【0048】
(粘土)
・東京湾産粘性土、含水率45.6%、湿潤密度1.32g/cm
【0049】
[実施例1]
(地盤改良混和剤の調製)
(A)アルカリ金属炭酸塩として炭酸ナトリウムを用い、(B)ナフタレンスルホン酸塩系高性能減水剤と、ポリアクリル酸類から選ばれる少なくとも1種以上としてポリアクリル酸ナトリウムを用い、それぞれを表1に示す配合割合で計りとり、さらに水を5質量部を添加し、これらを3分間ビニール袋で混合することにより、地盤改良混和剤を調製した。
【0050】
(地盤改良用材料の調製)
次いで、セメント70質量部に対して、上記の調製した地盤改良混和剤を12質量部混合し、地盤改良用材料を調製した。該地盤改良用材料について、後述の方法で塩素濃度を測定した。また必要に応じ、塩化ナトリウムを添加し、塩素濃度を表1に示す通り、調整した。
【0051】
(セメントミルクの調製)
さらに、セメント100質量部に対して、水150質量部を添加し、モルタルミキサーを用いて2分間混合してセメントミルクを調製した。
【0052】
(スライムの調製)
得られたセメントミルクと、含水率45.6%の粘性土とを、容積比で1:2の割合で計り取り、モルタルミキサーを用いて3分間混合し、混合してスライムを得た。
【0053】
<塩素濃度測定方法>
地盤改良用材料の塩素濃度は、JIS R 5202に準じ、電位差滴定法で測定した。
【0054】
<圧縮強度測定>
得られたスライムを4cm×4cm×16cmの型枠に流し込み、硬化後脱型して得た供試体を、温度20℃で封緘養生し、材齢28日における圧縮強度を測定した。結果を表1に示す。
【0055】
<粘度測定>
得られたスライムを温度20℃、湿度80%、回転数20rpmの条件下でB型粘度計により練混ぜ直後の粘度値を測定した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2~5、比較例1・2]
地盤改良混和剤、地盤改良用材料の配合を表1の通りとした以外は、実施例1と同様の方法で、地盤改良混和剤、地盤改良用材料、セメントミルク、スライムを調製し、地盤改良用材料の塩素濃度、圧縮強度、粘度を測定した。
【0057】
表1から理解されるように、地盤改良用材料の塩素量を、本発明で特定する範囲内に制御した実施例の地盤改良材料を用いたセメントミルクから調製したスライムでは、施工に適した粘度と高い強度が得られた。
【0058】
【表1】