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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】洗濯機および洗濯機の異常診断方法
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/00 20200101AFI20230316BHJP
【FI】
D06F33/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019107098
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199010
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 眞徳
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】金内 優
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 幹夫
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-050910(JP,A)
【文献】特開2002-136791(JP,A)
【文献】特表2011-514824(JP,A)
【文献】特開2009-240456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00-34/34
D06F 58/30-58/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯機の運転状態を示す条件情報を検出する条件情報検出部と、
前記洗濯機の騒音状態を示す動作信号を検出する異常信号検出部と、
動作信号の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
前記洗濯機の異常判定を行う異常判定モデルを取得する通信部と、
前記異常判定モデルにより前記条件情報と前記動作信号の特徴量とから前記洗濯機の異常を判定する異常判定部と、
を備え
前記条件情報は、前記洗濯機が設置された室の騒音の伝達特性あるいは音響特性を示す環境情報を含むことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記条件情報は、さらに、ドラムへの衣類の収容状態を示す衣類情報、または、洗濯機の洗い・すすぎ・脱水・乾燥の運転工程を示す工程情報を含む
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯機において、
前記洗濯機は、ドラム内部を撮影するカメラを備え、
前記カメラにより撮像した撮像情報から抽出されたドラム円周方向の分布情報を前記衣類情報とする
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項に記載の洗濯機において、
前記洗濯機は、マイクロフォンを備え、
基準音を前記マイクロフォンにより検出した際の音圧比から求めた前記洗濯機を設置した部屋の壁の枚数、あるいは基準音を前記マイクロフォンにより検出した際のインパルス応答の残響時間から求めた前記洗濯機を設置した部屋の広さを前記洗濯機が設置された室の騒音の伝達特性とする
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項4に記載の洗濯機において、
前記基準音は、前記洗濯機と通信する携帯端末により出力する
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記洗濯機は、マイクロフォン、あるいは振動センサを備え、
前記動作信号は、前記マイクロフォンで検出した前記洗濯機の動作音の信号、あるいは前記振動センサで検出した前記洗濯機の振動の信号である
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記異常判定モデルを記憶する記憶部を備え、
前記異常判定モデルは、前記通信部により接続するサービスサーバにおいて、教師あり機械学習により生成される
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項8】
請求項7に記載の洗濯機において、
前記異常判定モデルは、前記洗濯機の故障による異常の状態、前記洗濯機の使い方に起因する不具合の状態、または異常なしの状態を示す異常レベルと、
故障や洗濯物の偏りを示す騒音原因と、
修理依頼または不具合の解消方法を示す対策内容と、を出力する
ことを特徴とする洗濯機。
【請求項9】
洗濯機の運転状態を示す条件情報を検出するステップと、
洗濯機の騒音状態を示す動作信号を検出するステップと、
前記動作信号の特徴量を抽出するステップと、
異常判定モデルにより前記条件情報と前記動作信号の特徴量とから前記洗濯機の異常を判定するステップと、
前記異常判定モデルを取得するステップと、
を含み、
前記条件情報を検出するステップは、前記洗濯機が設置された室の騒音の伝達特性あるいは音響特性を示す環境情報を取得する
ことを特徴とする洗濯機の異常診断方法。
【請求項10】
請求項9に記載の洗濯機の異常診断方法において、
前記洗濯機を設置する際に、前記異常判定モデルを取得するとともに、前記条件情報のうち前記洗濯機が設置された室の騒音の伝達特性あるいは音響特性を示す環境情報を取得する
ことを特徴とする洗濯機の異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機および洗濯機の異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機や洗濯乾燥機の市場においては、快適性の観点から低騒音・低振動のニーズが高まっており、異常音によるクレームや返送品が発生することがある。一方、異常音の発生は、洗濯機の異常や故障に繋がることがある。このため、騒音や振動に基づいて洗濯機の異常や故障を診断する技術に関して、これまでに様々な考案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-50910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1では、洗濯機に取り付けた3次元加速度センサの信号の振幅スペクトラムと保持されている異常振幅スペクトラムとを比較することで異常部位を特定している。しかしながら、登録された異常時の振幅スペクトラムのみでの判定なので、判定精度に問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、洗濯機の使用者が容易に騒音から異常発生の原因・対策を把握できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の洗濯機は、洗濯機の運転状態を示す条件情報を検出する条件情報検出部と、前記洗濯機の騒音状態を示す動作信号を検出する異常信号検出部と、動作信号の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、前記洗濯機の異常判定を行う異常判定モデルを取得する通信部と、前記異常判定モデルにより前記条件情報と前記動作信号の特徴量とから前記洗濯機の異常を判定する異常判定部と、を備え、前記条件情報は、前記洗濯機が設置された室の騒音の伝達特性あるいは音響特性を示す環境情報であるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗濯機の使用者に騒音から異常発生の原因・対策を含めて異常報知する洗濯機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の洗濯機における異常診断のシステム構成図である。
図2】異常診断部の構成図である。
図3】異常診断部の動作を示す処理フロー図である。
図4】異常判定モデルについて説明する図である。
図5A】洗濯物の不均一な分布状態の一例を示す図である。
図5B】他例の洗濯物の不均一な分布状態を示す図である。
図5C】洗濯物の均一な分布状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態のドラム式の洗濯機100における異常診断を説明するシステム構成図である。なお、洗濯機100は、ドラム式に限定されず、タテ型洗濯乾燥機、全自動洗濯機でもよい。
【0010】
異常診断部1は、詳細を後述する洗濯機100の自己診断を行う処理部であり、洗濯機100の制御部(コントローラ6)の機能として動作する。図1は、システム構成を説明するために、異常診断部1を洗濯機100の外に記述したものである。つまり、図1の破線で囲まれた矩形領域が洗濯機100を示している。
【0011】
カメラ5は、洗濯物が投入されるドラム4の内部を撮像する撮像手段である。詳細は後述するが、カメラ5は、脱水や洗い等の工程において、洗濯物の分布状態を撮像する。
【0012】
マイクロフォン7は、洗濯機100の運転中の動作音を検出する。また、詳細は後述するが、洗濯機100の設置時に、洗濯機100を設置する部屋の音の伝達特性あるいは音響特性を求める際に、出力された基準音を検出する。
【0013】
振動センサ9は、洗濯機100の外槽の支持部に設けられ、洗濯機100の運転中の振動を検出する。また、振動センサ9は、洗濯機100の脚部に設けてもよい。
【0014】
コントローラ6は、洗濯機100の洗い・すすぎ・脱水・乾燥の工程の動作および、各工程における給排水やドラム4の回転制御を行う制御部である。詳しくは、コントローラ6は、マイクロコンピュータやモータドライバ等の電子部品から構成され、マイクロコンピュータのプログラムにより洗い・すすぎ・脱水・乾燥の工程の動作を制御している。
【0015】
操作パネル8は、洗濯機100の上面に設けられ、洗濯モードや洗い・すすぎ・脱水・乾燥の各工程における動作時間等の指示を行う操作指示部(不図示)と、運転状態を示す表示部(不図示)から構成される。
マイクロフォン7は、操作パネル8を構成するひとつの部品として、操作パネル8に実装されている。
【0016】
異常診断部1には、カメラ5、マイクロフォン7、および、振動センサ9の検出結果が通知されるとともに、コントローラ6から運転中の工程が通知され、これらに基づいて、異常診断部1は、洗濯機100の異常診断を行う。
そして、操作パネル8の表示部に、異常診断部1の判定結果である、異常レベル(異常の有無)、騒音の原因、対策内容を表示する。
【0017】
実施形態の洗濯機100は、不図示のネットワークを介して、サービスサーバ2に接続している。異常診断部1は、判定結果を、サービスサーバ2のサービス受付部23に通知し、修理依頼時の故障内容を通知できるようにしている。また、サービスサーバ2は、洗濯機100の障害情報を収集できるようにしている。
【0018】
サービスサーバ2では、モデル生成部22が、複数の洗濯機100(異常診断部1)から収集した障害情報に基づいて、ストレージ21の異常判定モデルを更新する。
後述するが、この異常判定モデルは、異常診断部1に通知され、洗濯機100の異常の有無を判定するモデルとなる。
【0019】
実施形態の洗濯機100は、不図示のネットワークを介して、直接あるいは間接的に、携帯端末3と通信し、洗濯機100の運転状態を携帯端末3に通知する。また、洗濯機100は、携帯端末3から洗濯機100をリモート操作できるようにしている。
異常診断部1は、洗濯機100の設置時に、上記のネットワークを介して携帯端末3と連携し、後述する洗濯機100の環境情報を検出する。
【0020】
つぎに、図2により、異常診断部1の構成を説明する。
条件情報検出部15は、洗濯機100の運転状態を条件情報として検出する検出部である。
条件情報検出部15は、少なくとも、衣類情報検出手段151、工程情報検出手段152、または環境情報検出手段153のいずれかひとつから構成する。
【0021】
衣類情報検出手段151は、カメラ5(図1参照)により撮像した画像により、脱水や洗い等の工程におけるドラム4内の洗濯物の分布状態を検出する。
ドラム4内の洗濯物に偏りが生じている場合や、厚手の洗濯物や洗濯ネットに入れた洗濯物を一枚のみで洗っている場合には、脱水時に騒音が生じることがある。
衣類情報検出手段151は、カメラ5の画像から、洗濯物に偏りや洗濯物の量・種別等を示す特徴量を抽出する。詳細は後述する。
【0022】
工程情報検出手段152は、運転中の洗濯機100における現在の工程が、洗い・すすぎ・脱水・乾燥のいずれの工程であるかを、コントローラ6から取得する。詳しくは、注水すすぎ、ためすすぎ、回転スプレーすすぎ等、より細かく運転工程を取得してもよい。
【0023】
環境情報検出手段153は、基準音をマイクロフォン7(図1参照)により検出して、洗濯機100を設置する部屋の音の伝達特性、あるいは音響特性を求める検出部である。詳細は後述する。
これにより、洗濯機100の同じレベルの動作音であっても、設置場所によって、使用者が認識する騒音レベルが異なることを補償する。
【0024】
異常信号検出部16は、動作音検出手段161、あるいは振動検出手段162から成り、洗濯機100の騒音(振動)状態を検出する検出部である。
【0025】
動作音検出手段161は、マイクロフォン7(図1参照)により洗濯機100の動作音を検出する。
動作音検出手段161で検出した動作音が、所定の音量を超える場合や、正常な動作音と異なる動作音(異音)の場合には、洗濯機100の故障や洗濯物に偏り等の使い方の不具合を判定することができる。
【0026】
振動検出手段162は、振動センサ9(図1参照)により洗濯機100の振動を検出する。
振動検出手段162で検出した振動が、所定のレベルを超える場合や、正常な振動パターンと異なる場合には、洗濯機100の故障や洗濯物に偏り等の使い方の不具合と判定することができる。
【0027】
特徴量抽出部13は、異常判定を容易に行うために、異常信号検出部16で検出した洗濯機100の動作音や振動の特徴量を抽出する。例えば、特徴量抽出部13は、動作音や振動の検出データに対して、周波数分析や周波数スペクトルの時間変化を求めるサウンドスペクトログラムなどの信号処理を施して特徴量を抽出する。
【0028】
異常判定部12は、記憶部18の異常判定モデル181に基づいて、条件情報検出部15で検出した洗濯機100の運転状態を示す条件情報と、異常信号検出部16で検出した洗濯機100の動作信号を基に特徴量抽出部13で抽出した動作信号の特徴量と、により、異常レベルと騒音原因と対策内容とを求める。
【0029】
ここで、異常レベルは、洗濯機100の故障による異常、洗濯機100の使い方に起因する問題(不具合)、もしくは異常なしの状態を示す値とする。
また、騒音原因は、洗濯機100の故障や不具合の発生原因を示し、対策内容は故障や不具合の解消方法を示す。例えば、騒音原因として、「脱水時の洗濯物の偏りにより、異常振動が発生」を示し、対策内容として、「洗濯物の量の確認」を示す。
【0030】
記憶部18は、異常判定モデル181を記憶する記憶部である。
異常判定モデル181は、異常判定部12により参照されるとともに、前述のとおり、サービスサーバ2で生成されて、通信部14を介して、記憶部18に通知される。
【0031】
異常処理部11は、異常判定部12が異常判定モデル181により求めた判定結果を、表示部17により表示し、また、通信部14を介して、サービスサーバ2に判定した条件情報と動作信号の特徴量と判定結果を通知する処理を行う。
図1に示すサービスサーバ2のモデル生成部22は、通知された条件情報と動作信号の特徴量と判定結果に基づいて教師あり機械学習を行って、異常判定モデルを更新する。
【0032】
表示部17は、操作パネル8に、異常判定部12が異常判定モデル181により求めた判定結果を表示する制御部である。
通信部14は、サービスサーバ2から異常判定モデル181を受信して、記憶部18に記憶するとともに、異常判定した条件情報および動作信号の特徴量をサービスサーバ2に通知する。
【0033】
図2で説明した異常診断部1は、コントローラ6(図1参照)のマイクロコンピュータのプログラムとして機能する。
図3により、異常診断部1(洗濯機100)の処理フローを説明する。
【0034】
まず、洗濯機100を設置する際の処理を説明する。
ステップS21で、異常診断部1(環境情報検出手段153)は、洗濯機100を設置する部屋の音の伝達特性あるいは音響特性を環境情報として求める。この環境情報の詳細は後述する。
【0035】
つぎに、ステップS22で、洗濯機100(コントローラ6)は、洗濯機100の型式および製造番号から成る個体識別情報を、サービスサーバ2に通知して、洗濯機100の稼働登録を行う。
【0036】
そして、ステップS23で、サービスサーバ2は、稼働登録した洗濯機100に異常判定モデルを通知し、異常診断部1は、サービスサーバ2から通知された異常判定モデルを記憶部18に記憶する。
【0037】
洗濯機100を稼働開始すると、以下の処理を繰り返す。
ステップS24で、異常診断部1は、洗濯機100が運転中であるか否かを判定し、運転中でない場合には(S24のNo)、運転待機する。運転中の場合には(S24のYes)、ステップS25に進む。
【0038】
ステップS25で、異常診断部1(条件情報検出部15)は、条件情報として、少なくとも衣類情報、工程情報、または環境情報のひとつを検出する。
ステップS26で、異常診断部1(異常信号検出部16)は、動作信号として、動作音、あるいは振動を検出する。
そして、ステップS27で、異常診断部1(特徴量抽出部13)は、ステップS26で検出した動作信号の特徴量を抽出する。
【0039】
そして、ステップS28で、異常診断部1(異常判定部12)は、記憶部18の異常判定モデル181により、ステップS25で検出した条件情報と、ステップS27で抽出した動作信号の特徴量とから、異常レベル(“故障による異常”、“使い方に起因する問題(不具合)”、“異常なし”)と騒音原因と対策内容とを求めて、運転の異常有無を判定する。異常がない場合には(S28の異常無)、ステップS24に戻り、処理を継続する。異常があった場合には(S28の異常有)、ステップS29に進む。
【0040】
ステップS29で、異常診断部1(異常処理部11)は、ステップS28で求めた異常レベルが、“故障による異常”であるか否かを判定し、“故障による異常”の場合には(S29のYes)、ステップS30に進む。“故障による異常”でない場合には(S29のNo)、異常レベルが“使い方に起因する問題(不具合)”として、ステップS32に進む。
【0041】
ステップS30で、異常診断部1(異常処理部11)は、表示部17により、洗濯機100の故障の警告表示を、操作パネル8に行う。この際、異常診断部1(異常処理部11)は、騒音原因と、修理依頼等の対策内容も表示する。
【0042】
ステップS31で、異常診断部1(異常処理部11)は、ステップS25で検出した条件情報と、ステップS27で抽出した動作信号の特徴量とを、サービスサーバ2に通知し、修理時の障害情報とする。
そして、洗濯運転を中断し、処理を終了する。
【0043】
ステップS32で、異常診断部1(異常処理部11)は、表示部17により、運転不具合の表示を、操作パネル8に行う。ここで、運転不具合の表示とは、例えば、「脱水時の洗濯物の偏りにより、異常振動が発生しました。」等である。この際、「洗濯物の量の確認」の不具合の解消方法を対策内容として合わせて表示してもよい。
そして、ステップS24に戻り、処理を継続する。
【0044】
つぎに、図4により、異常判定モデル181(図2参照)について説明する。
異常判定モデル181は、洗濯機100の動作音の特徴量、あるいは振動の特徴量を含む動作信号の特徴量と、洗濯機100を設置する部屋の音の伝達特性、あるいは音響特性である環境情報、ドラム4の衣類の収容状態を示す衣類分布である衣類情報、または洗濯機100の運転工程である工程情報の少なくともひとつを含む洗濯機100の条件情報とから、洗濯機100の運転における異常レベル(“故障による異常”、“使い方に起因する問題(不具合)”、“異常なし”)と騒音原因と対策内容とを求めるモデルである。
より詳細には、環境情報における部屋の音の伝達特性は、設置された洗濯機100の周囲の壁枚数や、洗濯機100の設置室の広さである。
【0045】
異常判定モデル181は、サービスサーバ2において、洗濯機100を用いて既知の手法の“教師あり機械学習”により事前に生成される。
そして、サービスサーバ2から洗濯機100に配布される。
異常判定モデル181の入力情報である動作信号の特徴量や条件情報は、上記に限定されず、他の情報であってもよく、また、情報の種別が多いほど、異常判定モデルの精度が向上することは言うまでもない。
【0046】
また、サービスサーバ2において、異常判定モデルに基づいて、動作信号の特徴量および条件情報と、洗濯機100の異常レベル、騒音原因、および対策内容との対応関係を示す異常判定対応表を生成し、この異常判定対応表をサービスサーバ2から洗濯機100に配布する。そして、洗濯機100において、この異常判定対応表に基づいて、動作信号の特徴量および条件情報から、洗濯機100の異常レベル、騒音原因、および対策内容を求めるようにしてもよい。
【0047】
つまり、図2において、記憶部18の異常判定モデル181に替えて上述の異常判定対応表を記憶し、図3のステップS28において、異常判定対応表により、条件情報と動作信号の特徴量から異常有無を判定する。
【0048】
なお、図2では、洗濯機100の設置時に、サービスサーバ2から異常判定モデルを取得することを説明したが、洗濯機100の設置後に、適宜、異常判定モデルを取得するようにしてもよい。
これにより、サービスサーバ2のモデル生成部22(図1参照)により、複数の洗濯機100(異常診断部1)から収集した障害情報に基づいて更新した異常判定モデルを、取得できるので、診断精度を向上することができる。
【0049】
ここで、図3のステップS21で説明した洗濯機100を設置する部屋の音の伝達特性あるいは音響特性、および、図4で説明した部屋の音の伝達特性としての、設置された洗濯機100の周囲の壁枚数や、洗濯機100の設置室の広さについて説明する。
【0050】
洗濯機100の動作音や振動音は、洗濯機100が設置された部屋の音の伝達特性(設置された洗濯機100の周囲の壁枚数、および設置室の広さ)あるいは音響特性により、聞こえ方が異なる。このため、同じ音圧の洗濯機100の動作音や振動音(音源)であっても、騒音と感じるレベルが異なる。
【0051】
そこで、異常判定モデル181では、洗濯機100が設置された部屋の音の伝達特性あるいは音響特性を環境情報として考慮している。そして、洗濯機100(異常診断部1)においては、設置時に、部屋の音の伝達特性あるいは音響特性を環境情報として取得するようにしている(図3のステップS21)。
【0052】
つぎに、音の伝達特性あるいは音響特性の取得方法について説明する。
音の伝達特性あるいは音響特性の取得は、例えば、1KHzの正弦波やホワイトノイズなどの基準音を、マイクロフォン7(図1参照)により検出することにより行う。基準音をインパルス信号として出力して検出した場合には、インパルス応答と呼ばれる、時間的な伝達特性を取得できる。また、ホワイトノイズを基準音として出力して検出した場合には、周波数応答を検出する。
【0053】
より具体的には、音の伝達特性の特徴量として、“壁の枚数”と“広さ”のレベル値を設定する。
“壁の枚数”は、設置した洗濯機100の周囲の壁数である。壁の枚数が多くなれば反射が増えるので、伝達特性は悪くなり、騒音や振動音の音圧値が大きくなる。検出した基準音について、予め音圧レベルの閾値を設定し、3段階の音圧レベルのいずれに該当するかを判定して、“壁の枚数”を求める。
また、洗濯機100の設置時に、携帯端末3(図1参照)から“壁の枚数”を設定するようにしてもよい。
【0054】
“広さ”は、洗濯機100が設置された部屋の広さのレベルを示す。“広さ”が小さいほど残響時間が長くなり、伝達特性は悪くなり、騒音や振動音の値が大きくなる。基準音のインパルス応答から残響時間を求めて、予め設定した3つの広さに対応する残響時間のいずれに該当するかを判定して、“広さ”を求める。
【0055】
上述の基準音は、コントローラ6(図1参照)に設けられたスピーカ(不図示)、あるいは、洗濯機100とネットワークを介して接続する携帯端末3から、出力すればよい。
【0056】
つぎに、図3のステップS25における条件情報として検出する衣類情報、および、図4で説明した衣類分布(衣類情報)について説明する。
洗濯機100のドラム4内(図1参照)の洗濯物に偏りが生じている場合や、厚手の洗濯物や洗濯ネットに入れた洗濯物を一枚のみで洗っている場合には、脱水時に騒音が生じることがある。
【0057】
このため、衣類情報検出手段151(図2参照)は、カメラ5(図1参照)により撮像した画像により、脱水や洗い等の工程におけるドラム4内の洗濯物の分布状態から、洗濯物に偏りや洗濯物の量・種別等を示す特徴量を抽出する。
図5A図5B図5Cは、洗濯物の分布状態を示す図である。
【0058】
衣類情報検出手段151は、衣類が投入されていない状態のドラム4内の画像との差分から、洗濯物の分布状態を検出する。
詳しくは、衣類情報検出手段151は、洗濯物の面積から、衣類の量を算出する。さらに、衣類情報検出手段151は、衣類の色や柄の数から、衣類の枚数を推定することができる。
【0059】
脱水工程においては、図5Cのように、洗濯物がドラム4の円周方向に均一に分布している状態であれば、振動(騒音)への影響が少なくなり、図5Bのように、ドラム4の一部に洗濯物が偏っている状態では、振動への影響が大きくなる。このため、衣類情報検出手段151は、洗濯物のドラム円周方向の分布を求めて、条件情報として検出する衣類情報とする。
【0060】
また、洗濯物の量が多いほど振動への影響が大きくなる。さらに、洗濯物の量が多く、かつ、洗濯物の枚数が少ない場合には、振動への影響がより大きくなる。このため、洗濯物のドラム円周方向の分布に加えて、洗濯物の面積をレベル分けした衣類の量と、衣類の色や柄の数から求めた衣類の枚数とを、条件情報として検出する衣類情報とするとよい。
【0061】
以上の実施形態の洗濯機100によれば、騒音や振動により運転状態の異常の有無を判定する際に、衣類の分布状態、運転工程、または運転環境の少なくともひとつを考慮するようにした。これにより、精度よく異常判定を行うことができるとともに、機器の故障と、使用上の不具合とを判別できるので、利用者の洗濯機100に対する信頼性を向上できる。
【0062】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明で分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 異常診断部
3 携帯端末
4 ドラム
5 カメラ
6 コントローラ
7 マイクロフォン
8 操作パネル
9 振動センサ
11 異常処理部
12 異常判定部
13 特徴量抽出部
14 通信部
15 条件情報検出部
151 衣類情報検出手段
152 工程情報検出手段
153 環境情報検出手段
16 異常信号検出部
161 動作音検出手段
162 振動検出手段
17 表示部
18 記憶部
181 異常判定モデル
2 サービスサーバ
21 ストレージ
22 モデル生成部
23 サービス受付部
100 洗濯機
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C