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特許7245745シート状物の検査方法及び製造方法、並びに吸収性物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】シート状物の検査方法及び製造方法、並びに吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20230316BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01N21/892 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019141996
(22)【出願日】2019-08-01
(65)【公開番号】P2021025811
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】古賀 啓資
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124127(JP,A)
【文献】特開2003-028612(JP,A)
【文献】特開平09-005020(JP,A)
【文献】特開平04-060449(JP,A)
【文献】特開2012-047582(JP,A)
【文献】特開2003-004647(JP,A)
【文献】特開2005-351678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート状部材と、第1シート状部材上に配され、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材とを有するシート状物の検査方法であって、
第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程と、
第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程とをこの順で又は逆の順で備え、
前記赤外線画像における第2シート状部材の周縁と第1シート状部材との境界である第1エッジと、前記可視光線画像における第2シート状部材の絵柄が施されている部位と該絵柄が施されていない部位との境界である第2エッジとをエッジ検出処理によってそれぞれ検出し、
検出された前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置状態の良否を判定する、シート状物の検査方法。
【請求項2】
前記赤外線及び前記可視光線はそれぞれ、同一の光源から照射される、請求項1に記載のシート状物の検査方法。
【請求項3】
前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置位置、寸法、形状及び絵柄の配置位置の少なくとも一つを算出して、第2シート状部材の配置状態の良否を判定する、請求項1又は2に記載のシート状物の検査方法。
【請求項4】
第1シート状部材上に配され、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材を配する工程を有するシート状物の製造方法であって、
前記製造方法においては、第1シート状部材上に第2シート状部材を配した後に、前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程と、
前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程とをこの順で又は逆の順で行い、
前記赤外線画像における第2シート状部材の周縁と第1シート状部材との境界である第1エッジと、前記可視光線画像における第2シート状部材の絵柄が施されている部位と該絵柄が施されていない部位との境界である第2エッジとをエッジ検出処理によってそれぞれ検出し、
検出された前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置状態の良否を判定する工程を有する、シート状物の製造方法。
【請求項5】
吸収性物品を製造する工程のうちのいずれかの工程において、該吸収性物品の構成材料の一つであるシート状物と、該吸収性物品を構成する他の構成材料とを接合する工程を有する吸収性物品の製造方法であって、
第1シート状部材上に、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材を配して前記シート状物を得て、次いで、
前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程と、
前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程とをこの順で又は逆の順で行い、
前記赤外線画像における第2シート状部材の周縁と第1シート状部材との境界である第1エッジと、前記可視光線画像における第2シート状部材の絵柄が施されている部位と該絵柄が施されていない部位との境界である第2エッジとをエッジ検出処理によってそれぞれ検出し、
検出された前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置状態の良否を判定し、
良品と判定された前記シート状物と前記吸収性物品を構成する他の構成材料とを接合する、吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物の検査方法及び製造方法、並びに吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつや生理用ナプキン等の吸収性物品は、シート状部材等の構成部材を複数接合して形成したものである。シート状部材は、吸収性物品の肌触り、風合い、見栄え等の機能性を向上させる目的で、吸収性物品の製造過程において様々な位置に配される。これらのシート状部材は、目的の場所に適切に配置されることによって所望の機能性が発現するので、製造過程においてシート状部材の配置状態を監視しておく必要がある。
【0003】
本出願人は先に、第1シート状部材上の所定の配設部位に第2シート状部材が配されているか否かを検査して不良品を検出する方法を提案した(特許文献1)。本方法は、配設部位を含む領域に、可視光波長のレーザー光を所定パターンで投光して不良品を検出することができる。
【0004】
またシート状部材等の構成部材の配置状態を監視するために、特許文献2には、複合パーソナルケア物品を製造するとともに、製造されたパーソナルケア物品における、連続的ウェブ材料を含む前駆体の少なくとも1つの構成部品の組立品質特性を検知するための検査装置が開示されている。この検査装置は、構成部材に塗布されるホットメルト接着剤から放射された赤外線を検知できることが、同文献に開示されている。
【0005】
特許文献3には、シート状物品の一方の面に向けて、異なる二つの検査光をそれぞれ異なる光源から照射し、該検査光を透過光を撮像して得られた画像の明暗差からシート状物品の内部状態を検査する、シート状物品の検査方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-166810号公報
【文献】特表2002-530130号公報
【文献】特開2010-101692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の検出方法は、同系統の彩色を有する部材が配設されている場合でも適用可能であるが、検出精度を高めるために、部材の彩色に応じて適切なレーザー光の波長を選択する必要があり、この点に関して改善の余地があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の検出方法では、接着剤等の熱源を用いずに接合した場合に、構成部材の配置位置等が検出できない。特許文献3に記載の検査方法は、シート状物品の内部に存在する欠陥を検査するものであり、シートの配置位置を検査することについて何ら検討されていない。
【0009】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を解決し得るシート状物の検査方法及び製造方法、並びに吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1シート状部材と、第1シート状部材上に配され、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材とを有するシート状物の検査方法であって、
第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程と、
第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程とをこの順で又は逆の順で備え、
前記赤外線画像における第2シート状部材の周縁と第1シート状部材との境界である第1エッジと、前記可視光線画像における第2シート状部材の絵柄が施されている部位と該絵柄が施されていない部位との境界である第2エッジとをエッジ検出処理によってそれぞれ検出し、
検出された前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置状態の良否を判定する、シート状物の検査方法を提供するものである。
【0011】
また本発明は、第1シート状部材上に配され、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材を配する工程を有するシート状物の製造方法であって、
前記製造方法においては、第1シート状部材上に第2シート状部材を配した後に、前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程と、
前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程とをこの順で又は逆の順で行い、
前記赤外線画像における第2シート状部材の周縁と第1シート状部材との境界である第1エッジと、前記可視光線画像における第2シート状部材の絵柄が施されている部位と該絵柄が施されていない部位との境界である第2エッジとをエッジ検出処理によってそれぞれ検出し、
検出された前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置状態の良否を判定する工程を有する、シート状物の製造方法を提供するものである。
【0012】
更に本発明は、吸収性物品を製造する工程のうちのいずれかの工程において、該吸収性物品の構成材料の一つであるシート状物と、該吸収性物品を構成する他の構成材料とを接合する工程を有する吸収性物品の製造方法であって、
第1シート状部材上に、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材を配して前記シート状物を得て、次いで、
前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程と、
前記シート状物における第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程とをこの順で又は逆の順で行い、
前記赤外線画像における第2シート状部材の周縁と第1シート状部材との境界である第1エッジと、前記可視光線画像における第2シート状部材の絵柄が施されている部位と該絵柄が施されていない部位との境界である第2エッジとをエッジ検出処理によってそれぞれ検出し、
検出された前記各エッジに基づいて、第2シート状部材の配置状態の良否を判定し、
良品と判定された前記シート状物と前記吸収性物品を構成する他の構成材料とを接合する、吸収性物品の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検査物に施されている絵柄や彩色によらず、部材の配置状態を高い精度で検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(a)及び(b)は、本発明の検査装置の一実施形態をそれぞれ示す模式図である。
図2図2(a)は、図1に示す検査装置におけるシート状物の配置位置及び赤外線照射による撮像状態を示す模式図であり、図2(b)は、図1に示す検査装置におけるシート状物の配置位置及び可視光線照射による撮像状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の吸収性物品の製造方法を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明は、第1シート状部材と、該部材上に配された第2シート状部材とを有するシート状物を検査する方法である。
【0016】
図1(a)及び(b)には、本発明の検査方法で好適に用いられる検査装置10の一実施形態が示されている。同図に示す検査装置10は、シート状物1を搬送するための搬送手段20と、シート状物1におけるシート状部材の配置状態を撮像して画像を取得するための撮像装置30と、所定の撮像領域を照らす光源40とを備えている。
【0017】
図1(a)及び(b)に示すシート状物1は、長尺帯状の一枚の第1シート状部材1Aと、第1シート状部材1A上に間隔を置いて配された複数の第2シート状部材1Bとを有している。第2シート状部材1Bは、第1シート状部材よりも面積が小さく、絵柄が施されているものである。第1シート状部材1Aは、絵柄や着色が施されていてもよく、あるいは施されていなくてもよい。第2シート状部材1Bには、絵柄に加えて、地色と異なる色による着色が施されていてもよい。各第2シート状部材1Bは、同形で且つ同寸法である。第2シート状部材1Bは、例えば後述する図2(a)及び図2(b)に示すとおり矩形であり得るが、この形状に限定されない。
【0018】
搬送手段20は、シート状物1を一方向MDに搬送させるためのものである。搬送手段20としては、例えば、図1(a)及び(b)を示すように、軸方向をシート状物1の搬送方向MDに直交するように配した搬送ロールを用いる形態や、ベルトコンベア等の形態が挙げられる。
【0019】
撮像装置30は、一方向MDに搬送されているシート状物1における第2シート状部材1Bの配置状態を撮像して画像を取得するものである。撮像装置30は、レンズ及び光電変化部を備えており、一方向MDに搬送されているシート状物1を静止画像として撮像できる装置である。このような撮像装置としては、例えば光電変換素子を備えるエリアカメラやラインスキャンカメラなどが挙げられる。光電変換素子は、電荷結合素子(CCD)であってもよく、あるいはCMOSセンサであってもよい。光電変換素子は、RGBカラーでの階調表現ができる光電変換素子であってもよく、256階調のグレースケールでの階調表現ができる光電変換素子であってもよく、好ましくは更に高階調な階調表現ができる光電変換素子であってもよい。本検査方法においては、後述するように、可視光線と赤外線との少なくとも二種の波長領域を有する光線を照射して撮像する観点から、光電変換素子は、これらの波長領域に応答して撮像可能なものであることが好ましい。
【0020】
撮像装置30は、画像処理部31と接続されている。画像処理部31の内部には、例えば電気信号処理部、画像処理部、演算部、解析部、処理部及び電気信号発信部等の複数の構成部を有しており(図示せず)、撮像装置30から伝送された電気信号を画像化し、画像処理ができるようになっている。画像処理部31は、例えば、画像処理ソフトウェア等がインストールされたコンピュータや画像コントローラをもとに構築した装置などを用いることができる。画像処理部31には、インターフェース(図示せず)が接続されていてもよく、例えばインターフェースを介して人手によって入力された電気信号に基づいて画像処理部31を制御可能としたり、画像処理部31から発信された電気信号に基づいて、シート状物の配置状態に関する警告や不具合等をインターフェースに表示可能としたりすることができる。
【0021】
光源40は、撮像対象であるシート状物1における撮像領域を照らすものである。光源40は、シート状物1における撮像領域に対して、可視光線及び赤外線を照射可能であれば、その配置位置や個数、あるいは光源の種類、色及び形状に特に制限はない。配置位置としては、例えば図1(a)に示すように、撮像装置30と光源40とを対向して配置し、これらの間をシート状物1が移動できるように配置されていてもよい。この場合、撮像装置30は、シート状物1を透過する光を撮像することになる。これに代えて、図1(b)に示すように、光源40からの光の射出方向の正面、背面又は側方に撮像装置30を配置していてもよい。この場合、撮像装置30は、シート状物1に反射した光を撮像することになる。いずれの場合であっても、撮像装置30及び光源40は、搬送されるシート状物1と距離を隔てて位置に配置されていることが好ましい。
【0022】
撮像装置30におけるシート状物1の撮像をより鮮明にして、検査精度を高める観点から、光源40の配置位置は、図1(a)に示すように、撮像装置30と光源40とを対向して配置し、これらの間をシート状物1が移動できるように配置されていることが好ましい。またこれに伴って、シート状物1を構成する各部材1A,1Bはともに光透過性のものであることも好ましい。また撮像装置30の省スペース性を実現する観点から、光源40は、同一の光源から可視光線及び赤外線の双方を照射可能なものを用いることが好ましい。すなわち、用いる光源40は一つであることが好ましい。
【0023】
本検査方法において、光源40から照射される可視光線(JIS Z 8120:2001)は、そのピーク波長が400nm以上760nm以下の範囲のものであり、光源40から照射される赤外線(JIS Z 8117:2002)は、そのピーク波長が780nm以上2000nm以下の範囲の近赤外線である。可視光線は可視光波長領域の全てのスペクトルを有していてもよく、あるいは一部のスペクトルのみを有していてもよい。赤外線についても同様であり、赤外光波長領域の全てのスペクトルを有していてもよく、あるいは一部のスペクトルのみを有していてもよい。このような光源としては、例えばキーエンス社製マルチスペクトル照明等が挙げられるが、これに限られない。
【0024】
撮像装置30及び光源40は、それぞれ画像処理部31に電気的に接続されて、撮像装置30から画像処理部31に伝送された電気信号及びその解析結果に基づいて、搬送速度の調整、撮像領域の制御、並びに光源40における光量及び照射領域の調整がそれぞれ自動的に行われるようになっていてもよい。
【0025】
以下に、上述の検査装置10を用いた本発明の検査方法について説明する。本検査方法は、第1シート状部材の少なくとも一部と、一枚の第2シート状部材の全域とを含む領域に対して赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、赤外線画像を取得する工程(赤外線撮像工程)と、第1シート状部材と、第2シート状部材の全域とを含む領域に対して可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像して、可視光線画像を取得する工程(可視光線撮像工程)とを備える。赤外線撮像工程及び可視光線撮像工程はこの順で行ってもよく、これに代えて、逆の順で行ってもよい。いずれの場合であっても、本発明の効果は十分に奏される。
【0026】
一般的に、シート状物1に配される第2シート状部材1Bは、絵柄が規則的に施された第2シート状部材1Bの原反を一定の間隔で切断することによって得られる。したがって、各第2シート状部材1Bが有する絵柄はそれぞれ同じものとなることが原則であるが、原反の切断時における位相の変動などの理由によって、施されている絵柄が他の第2シート状部材と異なる欠陥部材が生じる場合があり、そのような欠陥部材を検出して製造ラインから排除する必要がある。また、絵柄が適正に施されている第2シート状部材であったとしても、該第2シート状部材が第1シート状部材の適正な位置に且つ適正な状態で配されていない場合にも欠陥部材が生じ、そのような欠陥部材も検出して製造ラインから排除する必要がある。本発明はそのような欠陥部材の検出及び排除に有用なものである。
【0027】
以下の説明では、まず赤外線撮像工程を行い、次いで可視光線撮像工程を行う場合の検査方法を例にとる。まず、シート状物1における第2シート状部材1Bを含む領域に対して、赤外線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像装置30によって撮像して、赤外線画像を取得する。赤外線画像の取得は、例えば図2(a)に示すように、第1シート状部材1Aの一部と、一枚の第2シート状部材1Bの全域とを含む領域Ri(以下、これを「赤外線照射領域Ri」ともいう。)に対して赤外線を照射して、シート状物1における赤外線照射領域Riを連続的に又は断続的に撮像することによって行うことができる。赤外線画像の取得は、一方向MDに搬送されているシート状物1を対象として行ってもよく、静止しているシート状物1を対象として行ってもよい。これによって、第2シート状部材1Bの配置状態に関する赤外線画像を取得する。
【0028】
次いで、シート状物1における第2シート状部材1Bを含む領域に対して、可視光線を照射し、その照射領域における透過光又は反射光を撮像装置30によって撮像して、可視光線画像を取得する。可視光線画像の取得においては、例えば図2(b)に示すように、第1シート状部材1Aの一部と、一枚の第2シート状部材1Bの全域とを含む領域Rv(以下、これを「可視光線照射領域Rv」ともいう。)に対して可視光線を照射して、シート状物1における可視光線照射領域Rvを連続的に又は断続的に撮像することによって行うことができる。可視光線画像の取得は、前記工程と同様に、一方向MDに搬送されているシート状物1を対象として行ってもよく、静止しているシート状物1を対象として行ってもよい。これによって、第2シート状部材1Bの配置状態に関する可視光線画像を取得する。
【0029】
一方向MDに搬送されているシート状物1を対象として撮像する場合、光源40からの赤外線の照射と可視光線の照射とは逐次に行われるので、赤外線照射領域Riと可視光線照射領域Rvとは完全に一致しないが、赤外線の照射と可視光線の照射を間断なく行うことで、赤外線照射領域Riと可視光線照射領域Rvとを略一致させることができる。
【0030】
続いて、得られた赤外線画像における第2シート状部材1Bに基づくエッジと、得られた可視光線画像における第2シート状部材1Bに基づくエッジとを、エッジ検出処理によってそれぞれ検出する。エッジ検出処理とは、画像のピクセル輝度において階調値の変化が大きい部分を検出する処理を指し、例えば一方向における階調値を微分して得られた勾配に基づいて階調値の大きい箇所を抽出する処理等の既知の検出処理方法が挙げられる。本処理は、撮像装置30の撮像と並行して画像処理部31によって行ってもよく、撮像装置30の撮像後に画像処理部31又は他の画像処理装置を用いて行ってもよい。また、エッジ検出処理の処理方向は、シート状物1の搬送方向MD及び該搬送方向MDに交差する方向の少なくとも一方に沿って行われることが好ましい。
【0031】
赤外線は、可視光線と比較して、波長が長く且つ散乱しにくい物理的性質を有しているので、シート状部材に対して赤外線を照射すると、絵柄を施すためにシート状部材に付着させたインクを透過する。その結果、赤外線画像は、シート状部材に施された絵柄の種類に関係なく、シート状部材の厚みや重なり、あるいは材質に依存して、階調値の変化が描出されたものとなる。例えば図2(a)に示すような赤外線画像をエッジ検出処理に供した場合、赤外線照射領域Riにおいて、矩形状の第2シート状部材1Bの周縁と、第1シート状部材1Aとの境界が階調値の変化が大きい部分となるので、これらの境界部分が第1エッジE1,E2,E3,E4としてそれぞれ検出される。
【0032】
また、可視光線の照射によって得られる可視光線画像は、シート状部材に付着させたインクの位置、及び該インクに含まれる顔料の種類に依存して、階調値の変化が描出されたものとなる。例えば図2(b)に示すような可視光線画像をエッジ検出処理に供した場合、可視光線照射領域Rvにおいて、矩形状の第2シート状部材1Bにおいて絵柄が施されている部位1jと、第2シート状部材1Bにおいて絵柄が施されていない部位1kとの境界が階調値の変化が大きい部分となるので、これらの境界部分が第2エッジEa,Ebとしてそれぞれ検出される。
【0033】
続いて、赤外線画像から検出された第1エッジと、可視光線画像から検出された第2エッジとに基づいて、第2シート状部材1Bの配置状態の良否を判定する。本明細書における「配置状態」とは、第1シート状部材に対する第2シート状部材1Bの配置位置、第2シート状部材1Bの寸法及び平面視形状、並びに第2シート状部材1Bの形状に対する絵柄の配置位置の少なくとも一つを指す。第2シート状部材の配置状態の良否判定は、第2シート状部材1Bの配置位置、第2シート状部材1Bの寸法及び平面視形状、並びに第2シート状部材1Bの絵柄の配置位置のうちいずれか一つに基づいて行ってもよく、これらの組み合わせで行ってもよい。
【0034】
赤外線画像に基づく良否の判定対象は、第1シート状部材1Aに対する第2シート状部材1Bの配置位置、第2シート状部材1Bの寸法及び平面視形状等の、第2シート状部材1Bの位置及び形状である。具体的には、第1シート状部材1Aに対する第2シート状部材1Bの配置位置が設計した位置に配されているか否か、矩形状の第2シート状部材1Bの長辺が第1シート状部材1Aの幅方向CDに延びているか否か、第2シート状部材1Bの長さ及び幅が設計寸法の範囲内であるか否か、あるいは矩形状の第2シート状部材1Bにおける対辺が平行となっているか否か等の少なくとも一つを判定する。幅方向CDは、第1シート状部材1Aの搬送方向MDに直交する方向である。
【0035】
このような第2シート状部材1Bの位置や寸法に着目して良否を判定する方法は、例えば以下のとおりである。まず、赤外線照射領域Riにおける赤外線画像を取得して、その画像から、矩形状の第2シート状部材1Bの周縁と、第1シート状部材1Aとの境界のエッジをエッジ検出処理によって検出する。このとき、エッジ検出処理は、図2(a)に示すように、第2シート状部材1Bにおける幅方向CDの両端で検出されるエッジE1,E2と、第2シート状部材1Bにおける搬送方向MDの両端で検出されるエッジE3、E4とが検出できるように設定しておくことが好ましい。
【0036】
次いで、赤外線照射領域Ri内において各エッジE1,E2,E3,E4の位置を検出し、第2シート状部材1Bの配置位置の良否を判定する。例えば、赤外線照射領域Ri内に全ての各エッジE1,E2,E3,E4が検出されていれば、第2シート状部材1Bの配置位置は良好であると判定し、赤外線照射領域Ri内に少なくとも一つのエッジが検出されなければ、第2シート状部材1Bの配置位置は不良であると判定することができる。
【0037】
また、搬送方向MDの両端におけるエッジE3,E4の位置を検出したあと、エッジE3の仮想延長線と幅方向CDに沿う仮想直線とのなす角度、及びエッジE4の仮想延長線と幅方向CDに沿う仮想直線とのなす角度をそれぞれ算出し、算出された各角度と、予め設定されているしきい値の範囲とを比較して、第2シート状部材1Bの長辺が第1シート状部材1Aの幅方向CDに延びているか否かを判定する。例えば、各角度がしきい値の範囲内であれば、第2シート状部材1Bの長辺が第1シート状部材1Aの幅方向CDに延び、配置位置が良好であると判定し、各角度がしきい値の上限より大きいか、又は下限よりも小さければ、第2シート状部材1Bの長辺が第1シート状部材1Aの幅方向CDに延びておらず、配置位置が不良であると判定することができる。
【0038】
また、幅方向CDの両端で検出されるエッジE1,E2間の距離D1を画素の合計値に基づいて算出し、算出された距離D1と、予め設定されているしきい値の範囲とを比較して、第2シート状部材1Bの長手方向の長さの良否を判定する。例えば、距離D1がしきい値の範囲内であれば、第2シート状部材1Bの長手方向の長さが良好であると判定し、距離D1がしきい値の上限より長いか、又は下限よりも短ければ、第2シート状部材1Bの長手方向の長さが不良であると判定することができる。同様に、搬送方向MDの両端で検出されるエッジE3,E4間の距離D2を画素の合計値に基づいて算出し、算出された距離D2と、予め設定されているしきい値の範囲とを比較して、第2シート状部材1Bの幅の良否を判定する。例えば、距離D2がしきい値の範囲内であれば、第2シート状部材1Bの幅は良好であると判定し、距離D2がしきい値の上限より長いか、又は下限よりも短ければ、第2シート状部材1Bの幅は不良であると判定することができる。第2シート状部材1Bの長さ及び幅がともに良好であれば、第2シート状部材1Bの寸法が良好であると判定することができ、第2シート状部材1Bの長さ及び幅の少なくとも一方が不良であれば、第2シート状部材1Bの寸法が不良であると判定することができる。
【0039】
また同様に、幅方向CDの両端におけるエッジE1,E2並びに搬送方向MDの両端におけるエッジE3,E4の位置をそれぞれ検出し、これに基づいて、エッジE1の仮想延長線とエッジE2の仮想延長線とのなす角度、及びエッジE3の仮想延長線と、エッジE4の仮想延長線とのなす角度をそれぞれ算出し、算出された各角度と、予め設定されているしきい値の範囲とを比較して、第2シート状部材1Bの平面視形状における対辺に曲がりが生じているか否かを判定する。例えば、各角度がしきい値の範囲内であるか、又は算出不能であれば、第2シート状部材1Bの対辺は曲がりが無く良好であると判定し、各角度がしきい値の上限より大きければ、第2シート状部材1Bの対辺が曲がっており、不良であると判定することができる。
【0040】
可視光線画像に基づく良否の判定対象は、第2シート状部材1Bの絵柄が適切な位置に存在しているかである。上述した赤外線画像に基づく良否判定は、主に第2シート状部材1Bの配置位置や寸法に関するものであったが、赤外線画像のみによる良否判定では、第2シート状部材1Bの配置位置及び寸法がともに良好であった場合であっても、第2シート状部材1Bの原反が適切に切断されなかったことに起因して、第2シート状部材の適切な位置に絵柄が施されていない場合があり、その結果、本来不良品であるシート状物を良品として誤判定してしまうおそれがある。この点に関して、赤外線画像及び可視光線画像の双方に基づいて良否判定を行う本発明によれば、第2シート状部材1Bに絵柄が配されている場合であっても、第1シート状部材1Aの色や柄に影響されることなく、シート状物1の検査を精度高く行うことができる。
【0041】
このような第2シート状部材1Bの絵柄に着目して良否を判定する方法は、例えば以下のとおりである。図2(b)に示すとおり、まず、可視光線照射領域Rvにおける可視光線画像を取得して、その画像から、矩形状の第2シート状部材1Bにおいて絵柄が施されている部位1jと、第2シート状部材1Bにおいて絵柄が施されていない部位1kとの境界をエッジ検出処理によって検出する。このとき、エッジ検出処理は、図2(b)に示すように、第2シート状部材1Bにおける幅方向CDの一方の端部域において絵柄が施されている部位1jで検出されるエッジEaと、第2シート状部材1Bにおける幅方向CDの他方の端部域において絵柄が施されている部位1jで検出されるエッジEbとを少なくとも検出できるように設定しておくことが好ましい。特に、各エッジEa,Ebを明瞭に検出して、第2シート状部材1Bに配された絵柄が適切に配されていることを精度高く判定する観点から、可視光線画像において、絵柄が施されている部位1jと、絵柄が施されていない部位1kとは、その明度の差が大きくなるように、配される地色及び絵柄を調整することも好ましい。
【0042】
次いで、絵柄が施されている部位1jと、絵柄が施されていない部位1kとの境界におけるエッジEa,Ebの位置を検出し、第2シート状部材1Bの絵柄の配置の良否を判定する。エッジEa,Ebの位置は、各エッジEa,Ebの強度に基づく座標として検出することができる。エッジEa,Ebの位置に基づく良否の判定は、例えば、絵柄が施されている部位1jと、絵柄が施されていない部位1kとを含む所定の範囲をエッジ検出対象の領域として設定し、搬送方向MDに沿う方向にエッジ検出処理を行ったときに、該領域内に検出された強度がしきい値の範囲内であれば、第2シート状部材1Bの絵柄の配置は適正である(すなわち良好である)と判定し、検出された強度がしきい値の上限より大きいか、又は下限よりも小さければ、第2シート状部材1Bの絵柄の配置は不適正である(すなわち不良である)と判定することができる。
【0043】
絵柄の配置の良否判定においては、図2(b)に示すように、第2シート状部材1Bにおける搬送方向MDの一方の端部で検出される、第1シート状部材1Aと第2シート状部材1Bとの境界であるエッジEcを更に検出できるように設定しておくことが、絵柄の配置の良否判定をより精度良く行える点から好ましい。エッジEcを検出する場合には、各エッジEa,Ec間の距離D3並びに各エッジEb,Ec間の距離D4をそれぞれ算出し、これらの距離に基づいて、絵柄の配置の良否を判定することができる。すなわち、検出された各エッジEa,Ec間の距離D3並びに各エッジEb,Ec間の距離D4を画素の合計値に基づいてそれぞれ算出し、算出された距離D3,D4と、予め設定されているしきい値の範囲とを比較して、第2シート状部材1Bの絵柄の配置の良否を判定する。例えば、距離D3,D4がともにしきい値の範囲内であれば、第2シート状部材1Bの絵柄の配置は良好であると判定し、距離D3,D4のうち少なくとも一方がしきい値の上限より長いか、又は下限よりも短ければ、第2シート状部材1Bの絵柄の配置が不良であると判定することができる。
【0044】
上述のように行われた良否判定の判定過程及びその結果は、画像処理部31によって解析される。このとき、赤外線画像及び可視光線画像に基づく第2シート状部材1Bの配置状態が不良又は判定不能と判定されると、画像処理部31がその判定に基づく電気信号を出力し、撮像装置30の撮像視野や光源40の光量を調整したりする。あるいは、不良と判定されたシート状物1の部位を製造ライン外へ排出する。これらの調整は、画像処理部31に接続されているインターフェースで手動で行ってもよく、画像処理部31内で自動で行うように制御されていてもよい。
【0045】
これらの良否判定の判定過程及びその結果に関する情報は、画像処理部31から出力された電気信号を介してインターフェースに表示させることもできる。インターフェースに表示させる情報は、特に制限はなく、例えば第2シート状部材1Bの配置状態が良好である旨を表示したり、第2シート状部材1Bの配置状態が不良となっている旨及びその箇所を表示したり、又は第2シート状部材1Bの配置状態の良否判定が不能である旨を表示したりすることができる。これらの情報は、リアルタイムで表示及び更新されていてもよく、一定時間ごとに表示及び更新されるように設定してもよい。
【0046】
以上のとおり、本検査方法によれば、各画像のエッジ検出処理によって得られたエッジに基づいて、第1シート状部材に対する第2シート状部材1Bの配置位置、第2シート状部材1Bの寸法及び平面視形状、並びに第2シート状部材1Bの形状に対する絵柄の配置位置の少なくとも一つの良否判定を一度の検査で行うことができる。これらの良否判定は、赤外線画像及び可視光線画像の双方による良否判定を行うことを前提として、シート状物あるいは各シート状部材1A,1Bの物性や色、絵柄に応じて、単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。
【0047】
上述のとおり、赤外線画像に基づく良否判定は主に第2シート状部材1Bの配置位置や寸法に関するものであり、可視光線画像に基づく良否判定は主に第2シート状部材1Bの絵柄の配置に関するものであったところ、いずれか一方の画像による良否判定では、第1シート状部材1Aに対する第2シート状部材1Bの配置位置や、第2シート状部材1B自体の寸法及び絵柄の配置などといった、第2シート状部材1Bの配置状態を一度に判定することが困難であり、良否判定に多くの工程を要していた。一方、良否判定に要する工程を少なくするために、赤外線画像のみによって良否判定を行う場合、第2シート状部材1B自体の配置及び寸法は適正であっても、第2シート状部材の適切な位置に絵柄が施されていない場合があり、その結果、本来不良品であるシート状物を良品として誤判定してしまうおそれがある。同様に、可視光線画像のみによって良否判定を行う場合、第2シート状部材1B自体の配置及び寸法、あるいは絵柄の配置は適正であっても、光源40から照射される波長の種類や、第1シート状部材1Aに施された着色や絵柄の種類によって、良否判定が困難となる場合があり、その結果、本来良品であるシート状物を不良品として誤判定してしまうおそれがある。この点に関して、本発明によれば、赤外線画像及び可視光線画像の双方による良否判定を行うことによって、第2シート状部材1Bに絵柄が配されている場合であっても、第1シート状部材1Aの色や柄に影響されることなく、シート状物1における第2シート状部材1Bの配置状態を効率よく且つ精度高く検査することができる。
【0048】
上述したシート状物1の検査方法は、シート状物1の製造方法の一工程として組み入れることができる。シート状物の製造方法は、まず、第1シート状部材1A上に第2シート状部材1Bを配する工程を行い、次いで、上述の検査方法に基づく検査工程を行う。
【0049】
シート状物の製造方法としては、例えば、一方向に搬送されている長尺帯状の第1シート状部材1A上に、第1シート状部材よりも面積が小さく、且つ絵柄が施されている第2シート状部材1Bを間欠的に配する工程を経ることによって、長尺帯状のシート状物1を得ることができる。第2シート状部材1Bは、上述のとおり、絵柄が規則的に施された第2シート状部材1Bの原反を一定の間隔で切断することによって得られる。第1シート状部材1Aと第2シート状部材1Bとは、接着、圧着等の公知の接合手段で互いに接合されていてもよく、接合せずに積層した状態となっていてもよい。
【0050】
次いで、得られたシート状物1に対して、上述した検査工程を行って、第1シート状部材1A上に配された第2シート状部材1Bの配置状態の良否判定を行う。このように、上述したシート状物1の検査方法をシート状物1の製造方法の一工程として組み入れた場合であっても、第1シート状部材1Aの色や柄に影響されることなく、絵柄が施された第2シート状部材1Bを備えたシート状物1の検査を効率よく且つ精度高く行うことができる。
【0051】
また、上述したシート状物1の検査方法は、シート状物1を有する吸収性物品の製造方法の一工程として組み入れることもできる。吸収性物品の製造方法は、吸収性物品を製造する工程のうちのいずれかの工程で、吸収性物品を構成する材料の一つであるシート状物1と、吸収性物品の他の構成材料とを接合する工程を有し、好ましくはシート状物1と他の構成材料とを接合する前に、上述のシート状物1を検査する工程を有する。上述したシート状物1の検査工程を経て、第2シート状部材1Bの配置状態が適正であり、良品と判定されたシート状物と、他の構成材料とを接合して、目的とする吸収性物品を製造する。
【0052】
本発明の適用対象となる吸収性物品は、身体に装着され、身体から排泄される排泄物を吸収保持する機能を有するものを広く包含する。そのような吸収性物品としては、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、おむつと等と併用される補助パッド(尿取りパッド)、パンティライナ等が挙げられる。
【0053】
吸収性物品を構成する材料は、例えば表面シート、裏面シート、吸収体、防漏カフ、ウイング部、及び外装体などを形成するために用いられる各種の材料が挙げられる。表面シートは、吸収性物品における肌対向面を形成するものであり、液透過性を有している。裏面シートは、表面シートと反対側に位置し、吸収性物品における非肌対向面を形成するものであり、液不透過性又は液難透過性である。吸収体は、排泄物を吸収保持する機能を主に発現する部材であり、一般的に、親水性繊維と吸水性ポリマーとの混合物を含む。防漏カフは、吸収性物品の肌対向面における左右両側の位置に長手方向に延びるように配置され、液の横漏れを防止する働きを有するものである。ウイング部は、吸収性物品の左右の両側縁から外方に延出する部位であり、吸収性物品をショーツに装着するときに折り返して、ショーツの股下部の外面に固定される部位である。外装体は、吸収性物品の外面を形成する部材である。検査対象となるシート状物1は、外装体として好適に用いられるものであり、例えば第2シート状部材1Bを非肌対向面側に配した状態で他の構成部材と接合される。シート状物1を展開型使い捨ておむつの外装体として用いた場合、例えば第1シート状部材1Aは、おむつの外面を形成する部材となり、第2シート状部材1Bはファスニングテープを止着するためのループテープとして用いられる。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば図2(b)に示す可視光線画像では、検出可能なエッジについて、絵柄が施されている部位1jと、絵柄が施されていない部位1kとの搬送方向MDの下流側における境界でのエッジEa,Eb、並びに第1シート状部材1Aと第2シート状部材1Bとの搬送方向MDの下流側における境界でのエッジEcに着目して説明したが、これらに限られない。例えば、可視光線画像を用いたエッジの検出は、前記各エッジEa,Eb,Ecに加えて、又はこれらに代えて、絵柄が施されている部位1jと、絵柄が施されていない部位1kとの搬送方向MDの上流側における境界や、第1シート状部材1Aと第2シート状部材1Bとの搬送方向MDの下流側における境界で検出されてもよい。この場合、絵柄の境界によるエッジと、シート状部材の境界によるエッジとの距離に基づいて行う良否判定は、搬送方向MDの上流側において検出された二つのエッジを対象として行ってもよく、搬送方向MDの下流側及び上流側においてそれぞれ検出された二つのエッジを対象として行ってもよい。
【0055】
また第2シート状部材1Bの絵柄の配置の良否を各エッジEa,Ebに基づいて判定する他の方法として、例えば、絵柄が施されている部位1jと、絵柄が施されていない部位1kとの境界におけるエッジEa,Ebの位置を検出し、これに基づいて、各エッジEa,Ebを結ぶ仮想延長線と、幅方向CDに沿う仮想直線とのなす角度を算出し、算出された角度と、予め設定されているしきい値の範囲とを比較して行うこともできる。この場合、算出された角度がしきい値の範囲内であれば、第2シート状部材1Bの絵柄の配置は適正である(すなわち良好である)と判定し、算出された角度がしきい値の上限より大きいか、又は下限よりも小さければ、第2シート状部材1Bの絵柄の配置は不適正である(すなわち不良である)と判定することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 シート状物
1A 第1シート状部材
1B 第2シート状部材
10 検査装置
20 搬送手段
30 撮像装置
31 画像処理部
40 光源
Ri 赤外線照射領域
Rv 可視光線照射領域
E1,E2,E3,E4 第1エッジ
Ea,Eb 第2エッジ
MD 搬送方向
CD 幅方向
図1
図2