IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアック住環境の特許一覧 ▶ 清水建設株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社東郷製作所の特許一覧

<>
  • 特許-スプリンクラー用継手 図1
  • 特許-スプリンクラー用継手 図2
  • 特許-スプリンクラー用継手 図3
  • 特許-スプリンクラー用継手 図4
  • 特許-スプリンクラー用継手 図5
  • 特許-スプリンクラー用継手 図6
  • 特許-スプリンクラー用継手 図7
  • 特許-スプリンクラー用継手 図8
  • 特許-スプリンクラー用継手 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】スプリンクラー用継手
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/68 20060101AFI20230316BHJP
   F16L 21/06 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
A62C35/68
F16L21/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019215129
(22)【出願日】2019-11-28
(65)【公開番号】P2021083744
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】508321823
【氏名又は名称】株式会社イノアック住環境
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000151597
【氏名又は名称】株式会社東郷製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】寺嶋 章人
(72)【発明者】
【氏名】田村 聡
(72)【発明者】
【氏名】昆野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】今井 啓介
(72)【発明者】
【氏名】大井 茂雄
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-157960(JP,A)
【文献】特開2010-65769(JP,A)
【文献】中国実用新案第204879185(CN,U)
【文献】特許第5576691(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
F16L 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリンクラー設備の給水管路に用いられるスプリンクラー用継手であって、
給水管の内側に差し込まれる配管接続部、および該配管接続部に設けられて、前記給水管を配管接続部から抜け止めする係止機構を有する継手本体と、
前記配管接続部を差し込んだ前記給水管の外側を囲って前記継手本体に取り付けられるスリーブと、を備え、
前記スリーブには、前記配管接続部が差し込まれた前記給水管の外側に嵌まる筒状に形成された内筒部と、該スリーブの外殻を構成する筒状に形成された外筒部との間に、空洞部が設けられている
ことを特徴とするスプリンクラー用継手。
【請求項2】
前記スリーブを前記継手本体に取り付けた際に、前記空洞部は、該継手本体によって塞がれる請求項1記載のスプリンクラー用継手。
【請求項3】
前記スリーブは、
前記内筒部の一端部および前記外筒部の一端部を繋ぐと共に前記空洞部を塞ぐ連結部と、
前記内筒部における前記連結部と反対側の端部に形成され、前記配管接続部の根元側に引っ掛かって該スリーブを前記継手本体から抜け止めする係合部と、を備えている請求項1または2記載のスプリンクラー用継手。
【請求項4】
前記内筒部には、前記外筒部と独立した端部から軸方向へ延びるスリットが形成されている請求項1~3の何れか一項に記載のスプリンクラー用継手。
【請求項5】
前記空洞部は、前記スリーブを前記継手本体に取り付けた際に、前記係止機構の外側を囲うように設けられている請求項1~4の何れか一項に記載のスプリンクラー用継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スプリンクラー設備の給水管路に用いられるスプリンクラー用継手に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された管継手のように、パイプに差し込むだけで簡単に接続できるメカニカルジョイントが提案されている。特許文献1の管継手は、パイプの端部に内挿するための挿入用凸部が形成された管継手本体と、挿入用凸部が内挿されたパイプの端部に外嵌された筒状のスリーブとから構成されている。そして、管継手は、挿入用凸部の外周面に形成された抜け止め部材装着用溝部に装着された抜け止め部材が、挿入用凸部のパイプへの差し込みを許容する一方で、挿入用凸部のパイプからの抜け出しを規制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5576691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
閉鎖型湿式のスプリンクラー設備では、スプリンクラーヘッドまでの給水管路に水が満たされている。そして、火災が発生した場合、スプリンクラーヘッドの感熱部の可溶片が熱で溶けてシール部分が開くことで検知装置が作動し、これにより水が供給されてスプリンクラーヘッドから放水される。火災が発生した場合、給水管路が高熱に晒されることがあり、スプリンクラーヘッドの感熱部が溶けて検知装置が作動するまで、水が満たされて水圧がかかった給水管路から水が漏れないように耐える必要がある。特に、前述したような機械的な接続構造の管継手であると、炎であぶられるなどにより高温に晒されるとパイプの端部が開いてしまって、パイプが挿入用凸部から外れるおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、耐火性に優れたスプリンクラー用継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のスプリンクラー用継手は、
スプリンクラー設備の給水管路に用いられるスプリンクラー用継手であって、
給水管の内側に差し込まれる配管接続部、および該配管接続部に設けられて、前記給水管を配管接続部から抜け止めする係止機構を有する継手本体と、
前記配管接続部を差し込んだ前記給水管の外側を囲って前記継手本体に取り付けられるスリーブと、を備え、
前記スリーブには、前記配管接続部が差し込まれた前記給水管の外側に嵌まる筒状に形成された内筒部と、該スリーブの外殻を構成する筒状に形成された外筒部との間に、空洞部が設けられていることを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、スリーブにおける内筒部と外筒部との間に空洞部が設けられているので、外筒部が高温に晒されたとしても、空洞部の空気層で断熱して、内筒部および内筒部で囲った給水管に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、火災発生時に、内筒部および給水管の軟化を防止して、給水管を継手本体から抜けないように保つことができる。
【0007】
請求項2に係る発明では、前記スリーブを前記継手本体に取り付けた際に、前記空洞部は、該継手本体によって塞がれることを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、スリーブの空洞部が継手本体に塞がれるので、空洞部に炎が侵入することを防止でき、これにより火災発生時に内筒部および給水管の軟化を防止して、給水管を継手本体から抜けないように保つことができる。
【0008】
請求項3に係る発明では、前記スリーブは、
前記内筒部の一端部および前記外筒部の一端部を繋ぐと共に前記空洞部を塞ぐ連結部と、
前記内筒部における前記連結部と反対側の端部に形成され、前記配管接続部の根元側に引っ掛かって該スリーブを前記継手本体から抜け止めする係合部と、を備えていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、スリーブを継手本体に取り付けるための係合部が内筒部に設けられているので、外筒部が高温に晒されたとしても、空洞部の空気層で断熱して、内筒部の係合部に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、火災発生時に、内筒部の軟化を防止して、スリーブが継手本体から外れないように保つことができる。
【0009】
請求項4に係る発明では、前記内筒部には、前記外筒部と独立した端部から軸方向へ延びるスリットが形成されていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、内筒部にスリットを形成することで、内筒部が撓み易くなって、スリーブを継手本体に取り付け易くすることができる。
【0010】
請求項5に係る発明では、前記空洞部は、前記スリーブを前記継手本体に取り付けた際に、前記係止機構の外側を囲うように設けられていることを要旨とする。
請求項5に係る発明によれば、配管接続部を差し込んだ給水管を抜け止めする係止機構の外側を囲うように空洞部を設けることで、空洞部の空気層で断熱して、係止機構に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、火災発生時に、係止機構の軟化を防止して、給水管を継手本体から抜けないように保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスプリンクラー用継手によれば、耐火性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係るスプリンクラー設備の配管経路を概略的に示す平面図である。
図2】実施例のスプリンクラー設備の配管経路を概略的に示す側面図である。
図3】実施例のヘッダー継手を分解して示す側面図である。
図4】実施例のヘッダー継手を分解して示す断面図である。
図5】実施例のスリーブを示す断面図であって、図4と異なる位置で切断している。
図6】実施例のスリーブを開放端から示す図である。
図7】実施例のヘッダー継手を示す断面図である。
図8】実施例のヘッド継手を分解して示す側面図であり、一部を切断した断面としている。
図9】実施例のヘッド継手を示す側面図であり、一部を切断した断面としている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るスプリンクラー用継手につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例
【0014】
図1および図2に示すように、実施例に係るスプリンクラー設備は、給水上流側の給水配管10に接続するヘッダー12と、ヘッダー12に接続するヘッダー継手(スプリンクラー用継手)14と、ヘッダー継手14に接続する枝配管(給水管)16とを備えている。また、スプリンクラー設備は、枝配管16に接続するヘッド継手18と、ヘッド継手18に接続するスプリンクラーヘッド20とを備えている。実施例では、スプリンクラー設備のうちで建築物の天井に設けられる配管経路が、金属等の直管からなる給水配管10から、ヘッダー12において複数(実施例では4系統)に分岐している。また、ヘッダー12から分岐した枝配管16の先端には、放水口を下に向けたスプリンクラーヘッド20がヘッド継手18を介して接続されている。なお、天井には、複数のスプリンクラーヘッド20が所定間隔をあけて並べて配置されており、実施例では、同じヘッダー12に繋がる4つのスプリンクラーヘッド20が、ヘッダー12を中心とする四角形の角に位置するように配置されている(図1参照)。実施例のスプリンクラー設備は、給水管路に水が満たされている閉鎖型湿式と呼ばれる方式である。スプリンクラー設備は、火災が発生した場合、スプリンクラーヘッド20の感熱部の可溶片が熱で溶けてシール部分が開くことで検知装置(図示せず)が作動し、これにより水が供給されてスプリンクラーヘッド20から放水される。
【0015】
図3図4および図7に示すように、実施例に係るヘッダー継手14は、枝配管16と接続される継手本体22と、継手本体22に接続された枝配管16を覆うように継手本体22に取り付けられるスリーブ24とを備えている。ヘッダー継手14は、継手本体22に設けられた配管接続部26に枝配管16を接続すると共に、継手本体22に設けられたヘッダー接続部28をヘッダー12の分岐接続部12aに接続することで、ヘッダー12と枝配管16とを繋げている。実施例では、直列して配置された配管接続部26とヘッダー接続部28とが、継手本体22における異なる端部に設けられている。
【0016】
図3および図4に示すように、配管接続部26は、円筒状に形成されている。配管接続部26には、ロック溝部30が外周面全周に亘って凹状に形成されている。実施例の配管接続部26は、給水上下流方向に離して設けられた2条のロック溝部30,30を備えており、ロック溝部30のそれぞれにロックリング32が配置されている。ロックリング32は、Cリングのように端が繋がっていない円環状に形成された金属等からなる部材である。ロックリング32は、配管接続部26の外周面に沿って周方向へ回転可能な状態でロック溝部30に保持されている。ロック溝部30には、給水下流側に延在するロック案内面30aが、給水上流側から下流側へ向かうにつれて外方へ傾くように形成され、ロック案内面30aに当たったロックリング32を外方へ向けて拡開するように案内する。
【0017】
図3および図4に示すように、配管接続部26は、外周面全周に亘って凹状に形成されたシール溝部34を備えている。シール溝部34には、ゴム等の弾力性がある材料からなる円環形状のシール部材Sが配置されている。なお、シール部材Sは、例えばOリング等の汎用品を用いることができる。シール部材Sは、配管接続部26の外周面に沿って周方向へ回転可能な状態で、シール溝部34に保持されている。実施例の配管接続部26には、給水上下流方向に離して配置された2条のロック溝部30,30の間に2条のシール溝部34,34が設けられ、シール溝部34のそれぞれにシール部材Sが配置されている。
【0018】
図7に示すように、配管接続部26は、枝配管16の内側に差し込む(配管接続部26の外側に枝配管16を嵌め合わせる)ことで、枝配管16の内周面によってロックリング32が内方へ押されて縮径する。これにより、枝配管16がロックリング32を乗り越えて配管接続部26への嵌め合わせが許容される。枝配管16がロックリング32を乗り越えると、枝配管16の内周面にシール部材Sが当たり、配管接続部26と枝配管16との間が封止された状態で両者が接続する。配管接続部26と枝配管16との接続状態では、配管接続部26に対して回転可能に保持されたロックリング32およびシール部材Sの回転、あるいはロックリング32およびシール部材Sに対して枝配管16が摺動することで、配管接続部26を軸とした枝配管16の相対的な回転が許容される。配管接続部26から枝配管16が相対的に抜ける方向に力が加わると、枝配管16の内周面に押されたロックリング32がロック案内面30aの傾斜により外方へ付勢されることになる。これにより、ロックリング32が枝配管16の内周面に対してくさびのように引っ掛かって、配管接続部26からの枝配管16の抜け出しが規制される。このように、配管接続部26には、ロックリング32とロック案内面30aとによって、枝配管16を配管接続部26から抜け止めする係止機構が構成されている。係止機構は、配管接続部26と枝配管16とのワンタッチ接続を許容すると共に、接続した配管接続部26と枝配管16との相対的な回転を許容するようになっている。
【0019】
図4に示すように、実施例のヘッダー接続部28は、円筒状に形成されており、Oリング等のシール部材Sおよびシール部材Sを押さえるためのプッシャー28aが内側に配置されている。また、ヘッダー接続部28には、ヘッダー接続部28の径方向に移動可能なリテーナ28bが設けられている。ヘッダー接続部28は、リテーナ28bを退避位置にしたもとで分岐接続部12aに嵌め合わせた後に、リテーナ28bを係合位置にスライドすることで、リテーナ28bを分岐接続部12aに引っ掛けて抜け止めする。
【0020】
図7に示すように、スリーブ24は、配管接続部26が差し込まれた枝配管16の外側を囲って、継手本体22に取り付けられる。スリーブ24は、配管接続部26が差し込まれた枝配管16の外側に嵌まる筒状に形成された内筒部36と、該スリーブ24の外殻を構成する筒状に形成された外筒部38とを備え、内筒部36と外筒部38との間に、空洞部40が設けられている(図5および図7参照)。このように、スリーブ24は、枝配管16を囲む内筒部36と、内筒部36と間隔をあけて外側に配置された外筒部38との2重構造になっている。ここで、空洞部40は、スリーブ24を継手本体22に取り付けた際に、前述した係止機構の外側を囲うように設けられている。
【0021】
図5に示すように、スリーブ24は、内筒部36および外筒部38における給水下流側の端部が、連結部42によって繋がっている。スリーブ24は、空洞部40における給水下流側が連結部42で塞がれると共に、空洞部40における給水上流側があいている。スリーブ24は、継手本体22に取り付けた際に、空洞部40における給水上流側が継手本体22によって塞がれるように構成されている(図7参照)。より具体的には、スリーブ24は、外筒部38における給水上流側の端部が、内筒部36における給水上流側の端部よりも給水上流側へ張り出すように形成されている。スリーブ24を取り付けた際に、外筒部38は、配管接続部26よりも大径に形成された継手本体22の外周部の外側に嵌まり、内筒部36は、配管接続部26と継手本体22の外周部との間の段部22aに当たるようになっている。このとき、空洞部40は、段部22aによって給水上流側の開口が塞がれる。
【0022】
図7に示すように、スリーブ24は、内筒部36の給水上流側の端部に形成され、配管接続部26の根元側に設けられた係合受部27に引っ掛かってスリーブ24を継手本体22から抜け止めする係合部44を備えている。内筒部36において、連結部42と係合部44とは、互いに反対側の端部に離して設けられている。係合部44は、内筒部36において、連結部42で連結されずに外筒部38から独立した端部に設けられているともいえる。係合部44は、内筒部36の内側へ張り出す爪状に形成され、配管接続部26の外周面から外側へ張り出すように鍔状に形成された係合受部27と引っ掛かるようになっている。スリーブ24は、係合部44と係合受部27とが引っ掛かったとき、空洞部40における連結部42と反対側にあく開口が継手本体22(段部22a)によって塞がれる。内筒部36には、複数(実施例では3箇所)の係合部44が、周方向に所要間隔(実施例では等間隔)をあけて設けられている(図6参照)。
【0023】
図5および図6に示すように、内筒部36には、外筒部38から独立した端部(給水上流側の端部)から軸方向へ延びるスリット46が形成されている。内筒部36には、複数(実施例では3箇所)のスリット46が、周方向に所要間隔(実施例では等間隔)をあけて設けられている。スリット46は、周方向に隣り合う係合部44,44の間(実施例では中間)に配置されており、内筒部36の途中位置(実施例では約1/3)まで延びている。
【0024】
図6に示すように、スリーブ24には、内筒部36と外筒部38との間を繋ぐ補強部48が、空洞部40に設けられている。補強部48は、軸方向に延びる壁状に形成されている。スリーブ24には、複数(実施例では3箇所)の補強部48が、周方向に所要間隔(実施例では等間隔)をあけて設けられている。補強部48は、スリット46の軸方向の延長線上に設けられ、スリット46の閉塞端から連結部42までに亘って形成されている。空洞部40は、連結部42で塞がれた閉塞端側が補強部48によって区分されている。
【0025】
図4図6に示すように、スリーブ24には、内筒部36の内面から内側へ突出する突起50が設けられている。内筒部36には、複数(実施例では3箇所)の突起50が、周方向に所要間隔(実施例では等間隔)をあけて設けられている。突起50は、スリット46の軸方向の延長線上に設けられている。スリーブ24では、係合部44が、スリット46、補強部48および突起50と周方向に位置をずらして配置されると共に、スリット46、補強部48および突起50が軸方向の延長線上に揃えて配置されている。
【0026】
図8および図9に示すように、実施例に係るヘッド継手18は、枝配管16と接続される継手本体22と、継手本体22に接続された枝配管16を覆うように継手本体22に取り付けられるスリーブ24とを備えている。ヘッド継手18は、継手本体22に設けられた配管接続部26に枝配管16を接続すると共に、継手本体22に設けられたヘッド接続部52をスプリンクラーヘッド20に接続することで、スプリンクラーヘッド20と枝配管16とを繋げている。ヘッド継手18の継手本体22は、枝配管16に繋がる入口の向きとスプリンクラーヘッド20に繋がる出口側の向きとが、90°異なるエルボであり、配管接続部26とヘッド接続部52とが異なる端部に設けられている。
【0027】
図8および図9に示すように、ヘッド継手18の配管接続部26は、ヘッダー継手14の配管接続部26と給水上下流方向の向きが異なるほかは、ヘッダー継手14の配管接続部26と同様の構成である。同様に、ヘッド継手18のスリーブ24は、ヘッダー継手14のスリーブ24と給水上下流方向の向きが異なるほかは、ヘッダー継手14のスリーブ24と同様の構成である。従って、ヘッド継手18の配管接続部26およびスリーブ24についても、ヘッダー継手の配管接続部26およびスリーブ24と同じ符号を付して、説明を省略する。実施例のヘッド接続部52は、継手本体22に取り付けられたナット状部材であり、雌ねじ部分にスプリンクラーヘッド20をねじ込んで接続される。
【0028】
ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、合成樹脂や金属あるいはこれらの複合により構成することができるが、軽量にするために合成樹脂を主体とすることが好ましい。実施例のヘッダー継手14およびヘッド継手18は、ロックリング32およびシール部材Sを除いて合成樹脂によって一体的に形成された成形品であり、例えば、耐熱性や耐薬品性に優れ、難燃剤を添加しなくても自己消化性を有するポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)などにガラス繊維などの繊維強化材が入ったもの等がスプリンクラー設備用として好適である。なお、ヘッド接続部52は、鋳鉄などの金属素材を用いることが好ましい。
【0029】
前述した「ワンタッチ接続」とは、2つの接続対象のうちの一方を他方に相対的に嵌めるだけで、2つの接続対象のうちの一方または両方に設けられた係止機構が他方に引っ掛かったり、他方に食い込んだり、他方を絞り込んだりするなどの機械的な方式によって2つの接続対象同士が抜け止めされる接続態様をいう。従って、「ワンタッチ接続」は、接着剤や溶着などの化学的な方式による接続や、2つの接続対象のうちの一方を他方へねじ込むねじ接続や、配管バンドによるバンド接続などの一方を他方に嵌め込んだ後に別の固定具により接続する態様よりも、接続対象同士を簡単に接続することができ、また、接着剤や溶着装置や工具や固定具などの別のものを用意する必要もない。「ワンタッチ接続」は、2つの接続対象の接続の仕方が直感的に判り易く、技術力や経験がない作業者であっても、2つの接続対象を容易に、かつ効率的に接続することができる。
【0030】
枝配管16は、湾曲変形可能な可撓性を有する可撓管が用いられている。また、枝配管16は、力を加えていない状態において、径方向へ曲げたり、直線状に伸ばしたりした形状を保つことができる形状保持性を有していることが望ましい。枝配管16としては、合成樹脂や金属、あるいはこれらの複合材料などを用いることができるが、軽量化と耐熱性とを両立させる観点から、例えば、アルミニウム(バリア層)を内層ポリエチレン(母材)と外層ポリエチレン(保護層)の間に接着性樹脂を介してサンドイッチ状に挟んで構成されたアルミ複合ポリエチレン管が好ましい。枝配管16は、ヘッダー継手14の配管接続部26およびヘッド継手18の配管接続部26と接続するために、端末をねじ加工するなど、特に加工を必要としない。
【0031】
ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、スリーブ24における内筒部36と外筒部38との間に空洞部40が設けられている。従って、外筒部38が高温に晒されたとしても、空洞部40の空気層で断熱して、内筒部36および内筒部36で囲った枝配管16に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、火災発生時に、内筒部36の軟化を防止して、内筒部36で枝配管16を押さえて継手本体22の配管接続部26から抜けないように保つことができる。また、火災発生時に、枝配管16自体の軟化を防止して、枝配管16を継手本体22の配管接続部26から抜けないように保つことができる。このように、ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、耐火性に優れているので、火災発生時に検知装置が作動してスプリンクラーヘッド20から放水されるまでの時間に亘って給水経路を適切に保つことができる。
【0032】
ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、スリーブ24の空洞部40が継手本体22に塞がれるので、火災発生時に空洞部40に炎が侵入することを防止できる。これにより、火災発生時に内筒部36および枝配管16の軟化を防止して、枝配管16を継手本体22から抜けないように保つことができる。
【0033】
ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、スリーブ24を継手本体22に取り付けるための係合部44が内筒部36に設けられているので、外筒部38が高温に晒されたとしても、空洞部40の空気層で断熱して、内筒部36の係合部44に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、火災発生時に、内筒部36および係合部44の軟化を防止して、スリーブ24を継手本体22から外れないように保つことができる。また、ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、スリーブ24の空洞部40が連結部42で塞がれるので、火災発生時に空洞部40に炎が侵入することを防止できる。これにより、火災発生時に内筒部36および枝配管16の軟化を防止して、枝配管16を継手本体22から抜けないように保つことができる。
【0034】
ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、内筒部36における外筒部38と独立した端部から軸方向へ延びるスリット46が形成されているので、内筒部36が撓み易くなって、スリーブ24を継手本体22に取り付け易くすることができる。特に、内筒部36における外筒部38と独立した端部には、係合部44が設けられるので、スリーブ24を継手本体22に取り付ける際に、スリット46による内筒部36のばね性を用いて係合部44が係合受部27を乗り越え易くなる。これにより、スリーブ24を継手本体22に取り付ける際に、係合部44および/または係合受部27が破損してしまうことを防止できる。
【0035】
ヘッダー継手14およびヘッド継手18は、配管接続部26を差し込んだ枝配管16を抜け止めする係止機構の外側を囲うように空洞部40を設けることで、空洞部40の空気層で断熱して、係止機構に熱が伝わることを抑えることができる。これにより、火災発生時に、係止機構の軟化を防止して、枝配管16を継手本体22から抜けないように保つことができる。また、スリーブ24の空洞部40により、内筒部36の弾性変形による径方向への変位が妨げられないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0036】
14 ヘッダー継手(スプリンクラー用継手),16 枝配管(給水管),
18 ヘッド継手(スプリンクラー用継手),22 継手本体,24 スリーブ,
26 配管接続部,36 内筒部,38 外筒部,40 空洞部,42 連結部,
44 係合部,46 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9