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特許7245785非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20230316BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230316BHJP
   C01G 53/04 20060101ALN20230316BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 E
C01G53/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019562986
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 JP2018046007
(87)【国際公開番号】W WO2019131194
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2017252476
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平塚 秀和
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓生
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117766(JP,A)
【文献】特開2012-178295(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165654(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/199168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aと、W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bとを含み、
前記リチウム複合酸化物Aは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30~60モル%、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するWの割合が0.2~0.6モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は2~6μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は1.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は6.8μm以下であり、
前記リチウム複合酸化物Bは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が50~95モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は10μ~22μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は7.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は22.5μm以下であり、
前記リチウム複合酸化物Bと前記リチウム複合酸化物Aの質量比は1:1~5.7:1である、非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記リチウム複合酸化物Aの前記50%粒径D50は2.5~4.5μmであり、前記10%粒径D10は1.5~2.5μmであり、前記90%粒径D90は4.5~6.0μmである、請求項1に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム複合酸化物Bの前記50%粒径D50は11.0~21.5μmであり、前記10%粒径D10は7.0~10.5μmであり、前記90%粒径D90は21.0~22.5μmである、請求項1又は2に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記リチウム複合酸化物A及び前記リチウム複合酸化物Bのうちの少なくともいずれか一方は、Zrを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用正極活物質を含む非水電解質二次電池用正極。
【請求項6】
請求項5に記載の非水電解質二次電池用正極を備える非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極及び非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力、高エネルギー密度の二次電池として、正極、負極、及び非水電解質を備え、正極と負極との間でリチウムイオン等を移動させて充放電を行う非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
従来、電池特性を改善するために、非水電解質二次電池の正極に用いられる正極活物質として、粒径の異なるリチウム複合酸化物を用いること、W等の添加元素を含むリチウム複合酸化物を用いることが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2008-532221号公報
【文献】特開2009-117261号公報
【文献】特開2011-113825号公報
【発明の概要】
【0005】
しかし、従来の技術では、非水電解質二次電池の高容量及び高出力を達成すること、高温(例えば45℃以上)での充放電サイクルに伴う発生ガス量を抑制するためには、更なる検討が必要であった。
【0006】
本開示の目的は、非水電解質二次電池の高容量化及び高出力化を図りながら、高温での充放電サイクルに伴う発生ガス量を抑制することが可能な非水電解質二次電池用正極活物質、非水電解質二次電池用正極、及び非水電解質二次電池を提供することにある。
【0007】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aと、W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bとを含み、前記リチウム複合酸化物Aは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30~60モル%、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するWの割合が0.2~0.6モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は2~6μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は1.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は6.8μm以下であり、前記リチウム複合酸化物Bは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が50~95モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は10μ~22μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は7.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は22.5μm以下であり、前記リチウム複合酸化物Bと前記リチウム複合酸化物Aの質量比は1:1~5.7:1であることを特徴とする。
【0008】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極は、上記非水電解質二次電池用正極活物質を含むことを特徴とする。
【0009】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、上記非水電解質二次電池用正極を備えることを特徴とする。
【0010】
本開示の一態様によれば、非水電解質二次電池の高容量化及び高出力化を図りながら、高温での充放電サイクルに伴う発生ガス量を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質は、W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aと、W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bとを含み、前記リチウム複合酸化物Aは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30~60モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は2~6μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は1.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は6.8μm以下であり、前記リチウム複合酸化物Bは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が50~95モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は10μ~22μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は7.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は22.5μm以下であり、前記リチウム複合酸化物Bと前記リチウム複合酸化物Aの質量比は1:1~5.7:1である。このような特徴を備えることで高容量化及び高出力化を図ることが可能となる。
【0012】
一般的に、W含有のリチウム複合酸化物は、W非含有のリチウム複合酸化物と比べて、粒子の表面抵抗が下がり、電池の高出力化が図られると言われているが、本発明者らが鋭意検討した結果、W含有の効果は、特定の粒子径(10%粒径D10、50%粒径D50、90%粒径D90)のリチウム複合酸化物に対して効果的に発揮されることが分かった。また、W含有の効果が効果的に発揮される特定の粒子径より大きい粒子径のリチウム複合酸化物においては、W含有の効果はほとんどなく、粒子が軽質化するだけであると推察される。本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質では、W含有の効果が効果的に発揮される特定の粒子径を有するリチウム複合酸化物AにWを含有させ、電池の高出力化を図っている。但し、W含有の効果が発揮される特定の粒子径を有するリチウム複合酸化物Aは、粒径の小さい小粒径の粒子に属するため、正極活物質が当該リチウム複合酸化物Aのみから構成されると、充填密度が低く、電池の高容量化を充分に図ることができない。本開示の一態様である非水電解質二次電池用正極活物質では、リチウム複合酸化物Aと当該リチウム複合酸化物Aより大粒径の粒子であるリチウム複合酸化物Bとを所定の質量比で含有させ、且つ大きい粒子径を有するリチウム複合酸化物BにはWを含有させないで、粒子の軽質化を抑えることで、充填密度を高くし、電池の高容量化を図っている。さらに、上記リチウム複合酸化物A及びBの組み合わせにより、高温での充放電サイクルに伴う発生ガス量も抑制されるという予期せぬ効果が得られる。
【0013】
本明細書において、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて、湿式条件で測定される体積基準の累積粒度分布において、小径側からの累積50%に対応する粒径を意味する。同様に、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90及び10%粒径D10とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて、湿式条件で測定される体積基準の累積粒度分布において、それぞれ小径側からの累積90%及び累積10%に対応する粒径を意味する。レーザ回折散乱式粒度分布測定装置としては、例えば堀場製作所製のレーザ回折散乱式粒度分布測定装置LA-960が用いられる。以下、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50を50%粒径D50、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90を90%粒径D90、及び体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10を10%粒径D10と称する。
【0014】
以下に、本開示の一態様である非水電解質二次電池の一例について説明する。
【0015】
実施形態の一例である非水電解質二次電池は、正極と、負極と、非水電解質とを備える。正極と負極との間には、セパレータを設けることが好適である。具体的には、正極及び負極がセパレータを介して巻回されてなる巻回型の電極体と、非水電解質とが外装体に収容された構造を有する。電極体は、巻回型の電極体に限定されず、正極及び負極がセパレータを介して積層されてなる積層型の電極体など、他の形態の電極体が適用されてもよい。また、非水電解質二次電池の形態としては、特に限定されず、円筒型、角型、コイン型、ボタン型、ラミネート型などが例示できる。
【0016】
[正極]
正極は、例えば、金属箔等の正極集電体と、正極集電体上に形成された正極合材層とで構成される。正極集電体には、アルミニウムなどの正極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。
【0017】
正極合材層は、正極活物質を含む。また、正極合材層は、正極活物質の他に、導電材及び結着材を含むことが好適である。正極合材層の厚みは、例えば、10μm以上である。
【0018】
正極は、例えば、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極合材スラリーを調製し、この正極合材スラリーを正極集電体上に塗布、乾燥して正極合材層を形成し、この正極合材層を加圧成形することにより作製できる。
【0019】
正極活物質は、W及びNi含有のリチウム複合酸化物A、W非含有およびNi含有のリチウム複合酸化物Bを含む。
【0020】
W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30モル%~60モル%であり、50%粒径D50は2~6μmであり、10%粒径D10は1.0μm以上であり、90%粒径D90は6.8μm以下である。
【0021】
W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aにおいて、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合は30モル%~60モル%であればよいが、電池の容量、出力又は充放電サイクル特性の向上等の点で、35モル%~55モル%であることが好ましい。リチウム複合酸化物Aにおいて、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30モル%未満又は60モル%超であると、リチウムの拡散性の低下や結晶構造の不安定化等により、電池の容量、出力又は充放電サイクル特性等が低下する場合がある。
【0022】
W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aにおいて、50%粒径D50は2~6μmであり、10%粒径D10は1.0μm以上であり、90%粒径D90は6.8μm以下であればよいが、電池の出力向上等の点で、50%粒径D50は2.5~4.5μmであり、10%粒径D10は1.5~2.5μmであり、90%粒径D90は4.5~6.0μmであることが好ましい。リチウム複合酸化物Aにおいて、50%粒径D50、10%粒径D10及び90%粒径D90が上記範囲を満たさない場合、上記範囲を満たす場合と比較して、W含有の効果(粒子の表面抵抗を下げる)がほとんど得られず、電池の出力が低下する。
【0023】
リチウム複合酸化物A中のWの割合は、電池の容量、出力の向上等の点で、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して0.2モル%~0.6モル%であることが好ましい。
【0024】
リチウム複合酸化物Aは、W(タングステン)、Ni(ニッケル)、Li(リチウム)以外に、他の元素を含有していてもよい。他の元素としては、例えば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、リン(P)、硫黄(S)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、及びビスマス(Bi)等が挙げられる。これらの中では、高温での充放電サイクルに伴う発生ガス量を抑える点、或いは充放電サイクル特性の低下を抑制する点等で、リチウム複合酸化物Aは、Zrを含むことが好ましく、Zr、Co及びMnを含むことがより好ましい。
【0025】
リチウム複合酸化物A中のZrの割合は、高温での充放電サイクルに伴う発生ガス量を抑制する点、或いは充放電サイクル特性の低下を抑制する点等で、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して0.1モル%~0.7モル%であることが好ましい。また、リチウム複合酸化物A中のCo及びMnの割合はそれぞれ、高温での充放電サイクルに伴う発生ガス量を抑制する点、或いは充放電サイクル特性の低下を抑制する点等で、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して15モル%~35モル%であることが好ましい。
【0026】
リチウム複合酸化物AのBET比表面積は、例えば、1.20~1.70m/gであることが好ましい。リチウム複合酸化物AのBET比表面積が上記範囲を満たす場合、上記範囲を満たさない場合と比較して、粒子表面の反応性が高くなるため、電池の出力がより向上する場合がある。BET比表面積は、JIS R1626記載のBET法(窒素吸着法)に従って測定する。
【0027】
リチウム複合酸化物Aは、例えば、Ni含有酸化物、リチウム化合物、タングステン化合物等を混合し、この混合物を焼成することにより得られる。上記各原料の配合割合は、最終的に得られるNi及びW含有のリチウム複合酸物中のNiの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して30~60モル%となるように、決定されればよい。また、リチウム複合酸化物Aの粒径(50%粒径D50、10%粒径D10、90%粒径D90)の調整は、Ni含有酸化物を得る際に用いられる前駆体の粒径、混合物の焼成温度及び時間、粉砕等によって調整される。リチウム複合酸化物Aの粒径を上記規定した範囲に調整することを容易とするためには、以下の条件が好ましい。前駆体の粒径は、例えば、50%粒径D50が3~5μm、10%粒径D10が2~3μm、90%粒径D90が6~7μmであることが好ましい。焼成温度は、例えば、850~900℃であることが好ましく、焼成時間は、例えば、15時間以上であることが好ましい。
【0028】
W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が50モル%~95モル%であり、50%粒径D50は10~22μmであり、10%粒径D10は7.0μm以上であり、90%粒径D90は22.5μm以下である。
【0029】
W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bにおいて、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合は50モル%~95モル%であればよいが、電池の容量、出力又は充放電サイクル特性の向上等の点で、55モル%~88モル%であることが好ましい。リチウム複合酸化物Bにおいて、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が50モル%未満又は95モル%超であると、リチウムの拡散性の低下や結晶構造の不安定化等により、電池の容量、出力又は充放電サイクル特性等が低下する場合がある。
【0030】
W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bにおいて、50%粒径D50は10~22μmであり、10%粒径D10は7.0μm以上であり、90%粒径D90は22.5μm以下であればよいが、電池の容量向上等の点で、50%粒径D50は11.0~20.5μmであり、10%粒径D10は7.0~10.5μmであり、90%粒径D90は21.0~22.5μmであることが好ましい。リチウム複合酸化物Bにおいて、50%粒径D50、10%粒径D10及び90%粒径D90が上記範囲を満たさない場合、上記範囲を満たす場合と比較して、充填密度が低下し、電池の容量が低下する。
【0031】
リチウム複合酸化物Bは、Ni(ニッケル)、Li(リチウム)以外に、他の元素を含有していてもよい。他の元素としては、W(タングステン)以外であり、例えば、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、リン(P)、硫黄(S)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、鉛(Pb)、及びビスマス(Bi)等が挙げられる。これらの中では、高温での充放電サイクル伴う発生ガス量を抑える点、或いは充放電サイクル特性の低下を抑制する点等で、リチウム複合酸化物Bは、Zrを含むこと好ましく、Zr、Co及びMnを含むことがより好ましい。
【0032】
リチウム複合酸化物B中のZrの割合は、高温での充放電サイクル伴う発生ガス量を抑制する点、或いは充放電サイクル特性の低下を抑制する点等で、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して0.1モル%~0.7モル%であることが好ましい。また、リチウム複合酸化物B中のCo及びMnの割合はそれぞれ、高温での充放電サイクル伴う発生ガス量を抑制する点、或いは充放電サイクル特性の低下を抑制する点等で、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して5モル%~30モル%であることが好ましい。
【0033】
リチウム複合酸化物BのBET比表面積は、例えば、0.1~0.4m/gであることが好ましい。リチウム複合酸化物BのBET比表面積が上記範囲を満たす場合、上記範囲を満たさない場合と比較して、例えば充填密度が高くなるため、電池の容量がより向上する場合がある。
【0034】
リチウム複合酸化物Bは、例えば、Ni含有酸化物、リチウム化合物等を混合し、この混合物を焼成することにより得られる。上記各原料の配合割合は、最終的に得られるW非含有及びNi含有のリチウム複合酸物中のNiの割合が、リチウムを除く金属元素の総モル数に対して50~95モル%となるように、決定されればよい。また、リチウム複合酸化物Bの粒径(50%粒径D50、10%粒径D10、90%粒径D90)の調整は、Ni含有酸化物を得る際に用いられる前駆体の粒径、混合物の焼成温度及び時間、粉砕等によって調整される。リチウム複合酸化物Bの粒径を上記規定した範囲に調整することを容易とするためには、以下の条件が好ましい。前駆体の粒径は、例えば、50%粒径D50が12~23μm、10%粒径D10が8~11μm、90%粒径D90が24~27μmであることが好ましい。焼成温度は、例えば、850~900℃であることが好ましく、焼成時間は、例えば、20時間以上であることが好ましい。
【0035】
リチウム複合酸化物Bとリチウム複合酸化物Aの質量比は1:1~5.7:1であればよいが、充填密度が向上し、電池の容量が向上する点等で、2.0:1~4.5:1であることが好ましい。
【0036】
正極活物質中のリチウム複合酸化物A及びリチウム複合酸化物Bの含有量は、例えば、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0037】
正極活物質は、リチウム複合酸化物A及びリチウム複合酸化物Bとは組成や粒径等が異なる他のリチウム複合酸化物を含んでいてもよい。
【0038】
導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
結着材としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
[負極]
負極は、例えば金属箔等からなる負極集電体と、当該集電体上に形成された負極合材層とで構成される。負極集電体には、銅などの負極の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合材層は、負極活物質、及び結着材を含む。負極は、例えば、負極活物質、結着材等を含む負極合材スラリーを調整し、この負極合材スラリーを負極集電体上に塗布、乾燥して負極合材層を形成し、この負極合材層を加圧成形することにより作製できる。
【0041】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む合金、複合酸化物などを用いることができる。負極活物質は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
結着材としては、正極の場合と同様にフッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。水系溶媒を用いて合材スラリーを調製する場合は、CMC又はその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0043】
[セパレータ]
セパレータには、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、セルロースなどで構成される。セパレータは、セルロース繊維層及びポリオレフィン等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、セパレータは、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、アラミド樹脂で構成される表面層又は無機物フィラーを含有する表面層を有していてもよい。
【0044】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した溶質(電解質塩)とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0045】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0047】
上記ニトリル類の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n-ヘプタニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジボニトリル、ピメロニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。
【0048】
上記ハロゲン置換体の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0049】
電解質塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、Li(P(C)F)、LiPF6-x(C2n+1(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(SOCF、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l,mは0以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。電解質塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。電解質塩の濃度は、例えば非水溶媒1L当り0.8~1.8モルである。
【実施例
【0050】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
[リチウム複合酸化物Aの作製]
共沈法により得られたNi0.35Co0.30Mn0.35(OH)で表わされる遷移金属前駆体を350℃で12時間焼成し、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物を得た。Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、タングステン塩と、ジルコニウム塩と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Wと、Zrとのモル比が1.11:1.00:0.005:0.005になるように混合した。当該混合物を酸素雰囲気中にて875℃で15時間焼成して、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。
【0052】
リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が4.2μmであり、10%粒径D10が2.3μmであり、90%粒径D90が5.8μm以下であった。
【0053】
[リチウム複合酸化物Bの作製]
共沈法により得られたNi0.55Co0.20Mn0.25(OH)で表わされる遷移金属前駆体を350℃で9時間焼成し、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物を得た。Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、LiOHと、ジルコニウム塩とを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Zrとのモル比が1.08:1.00:0.005になるように混合した。当該混合物を酸素雰囲気中にて900℃で20時間焼成して、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。
【0054】
リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が12.1μmであり、10%粒径D10が7.3μmであり、90%粒径D90が21.2μm以下であった。
【0055】
[正極の作製]
W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物BとNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合した。これを正極活物質とした。そして、当該正極活物質を95.8質量%、炭素粉末を3質量%、結着材としてのポリフッ化ビニリデン粉末を1.2質量%となるように混合した後、N-メチル-2-ピロリドンを適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次いで、この正極合材スラリーを、アルミニウム箔からなる正極集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、これを乾燥させた後、圧延ローラを用いて500MPaの圧力で圧延することにより、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極を作製した。正極集電体の長手方向中央部に、正極活物質層を形成しない部分を設け、当該部分に正極タブを取り付けた。正極合材層の厚みは、約140μm、正極集電体両面の合計で約300μmとした。
【0056】
[負極の作製]
負極活物質である黒鉛98.2質量%と、スチレン-ブタジエンゴム0.7質量%、カルボキシメチルセルロースナトリウムを1.1質量%となるように混合した後、水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次いで、この負極合材スラリーを、銅箔からなる負極集電体の両面にドクターブレード法により塗布し、これを乾燥させた後、圧延ローラを用いて圧延することにより、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極を作製した。負極集電体の長手方向両端部に合材層を形成しない部分を設け、当該部分に負極タブを取り付けた。負極合材層の厚みは、約120μm、負極集電体両面の合計で約250μmとした。
【0057】
[非水電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)との等体積混合非水溶媒に、6フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.6モル/Lの濃度で溶解させて非水電解質を調製した。
【0058】
[電池の作製]
上記正極、上記負極、上記非水電解液、及びセパレータを用いて、以下の手順で非水電解質二次電池を作製した。(1)正極と負極とをセパレータを介して巻回し、巻回構造の電極体を作製した。(2)電極体の上下にそれぞれ絶縁板を配置し、直径18mm、高さ65mmの円筒形状の電池外装缶に巻回電極体を収容した。(3)負極の集電タブを電池外装缶の底部内面に溶接すると共に、正極の集電タブを封口体の底板に溶接した。(4)電池外装缶の開口部から非水電解液を注入し、その後、封口体によって電池外装缶を密閉した。
【0059】
<実施例2>
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で8:2となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0060】
<実施例3>
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で5:5となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0061】
<実施例4>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、前駆体を大粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が17.0μmであり、10%粒径D10が8.6μmであり、90%粒径D90が21.7μm以下であった。
【0062】
上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0063】
<実施例5>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、前駆体を実施例4よりも大粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が21.0μmであり、10%粒径D10が10.2μmであり、90%粒径D90が22.4μm以下であった。
【0064】
上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0065】
<実施例6>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、前駆体を小粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が10.0μmであり、10%粒径D10が7.0μmであり、90%粒径D90が20.9μm以下であった。
【0066】
上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0067】
<実施例7>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、前駆体を大粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が5.9μmであり、10%粒径D10が2.7μmであり、90%粒径D90が6.8μm以下であった。
【0068】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0069】
<実施例8>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、前駆体を小粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が2.7μmであり、10%粒径D10が1.3μmであり、90%粒径D90が4.4μm以下であった。
【0070】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0071】
<実施例9>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、Zr添加量を0.3モル%に変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.3モル%であり、50%粒径D50が12.2μmであり、10%粒径D10が7.5μmであり、90%粒径D90が21.3μm以下であった。
【0072】
上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0073】
<実施例10>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、Zr添加量を0.3モル%に変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Zrの割合が0.3モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が4.0μmであり、10%粒径D10が2.0μmであり、90%粒径D90が5.6μm以下であった。
【0074】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0075】
<実施例11>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、W添加量を0.3モル%に変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、Wの割合が0.3モル%であり、50%粒径D50が3.9μmであり、10%粒径D10が1.9μmであり、90%粒径D90が5.6μm以下であった。
【0076】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0077】
<実施例12>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量とのモル比が1.10:1.00になるように混合したこと以外は実施例1と同様の条件とし、W及びZr非含有で、Ni、Co及びMn含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。Niの割合、粒径は実施例1のリチウム複合酸化物Bと同様である。
【0078】
上記作製したW及びZr非含有で、Ni、Co、Mn含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比7:3で混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0079】
<実施例13>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、LiOHと、タングステン塩とを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Wとのモル比が1.07:1.00:0.005になるように混合したこと以外は実施例1と同様の条件とし、Zr非含有で、Ni、Co、Mn、W含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。Niの割合、粒径は実施例1のリチウム複合酸化物Aと同様である。
【0080】
実施例12のW及びZr非含有で、Ni、Co及びMn含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したZr非含有で、Ni、Co、Mn、W含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比7:3で混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0081】
<実施例14>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、タングステン塩と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Wとのモル比が1.07:1.00:0.005になるように混合したこと以外は実施例1と同様の条件とし、Zr非含有で、Ni、Co、Mn及びW含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が55モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が4.1μmであり、10%粒径D10が2.3μmであり、90%粒径D90が5.7μm以下であった。
【0082】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したZr非含有で、Ni、Co、Mn及びW含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0083】
<比較例1>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、タングステン塩と、ジルコニウム塩と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Wと、Zrとのモル比が1.08:1.00:0.005:0.005になるように混合したこと、以外は実施例1と同様の条件とし、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、Zrの割合が0.3モル%であり、50%粒径D50が11.9μmであり、10%粒径D10が7.4μmであり、90%粒径D90が21.1μm以下であった。
【0084】
上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0085】
<比較例2>
比較例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で9:1となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0086】
<比較例3>
比較例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で4:6となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0087】
<比較例4>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、前駆体を大粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が25.3μmであり、10%粒径D10が12.0μmであり、90%粒径D90が29.3μm以下であった。
【0088】
上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0089】
<比較例5>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、前駆体を小粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が7.0μmであり、10%粒径D10が5.1μmであり、90%粒径D90が10.2μm以下であった。
【0090】
上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0091】
<比較例6>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、前駆体を大粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が7.0μmであり、10%粒径D10が4.9μmであり、90%粒径D90が9.9μm以下であった。
【0092】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0093】
<比較例7>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、前駆体を小粒径のものに変更したこと以外は実施例1と同様の条件として、Ni、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が1.5μmであり、10%粒径D10が0.3μmであり、90%粒径D90が2.6μm以下であった。
【0094】
実施例1のW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0095】
<比較例8>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、タングステン塩と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Wとのモル比が1.11:1.00:0.005になるように混合したこと以外は実施例1と同様の条件とし、Zr非含有で、Ni、Co、Mn及びW含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が4.0μmであり、10%粒径D10が2.2μmであり、90%粒径D90が5.6μm以下であった。
【0096】
比較例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したZr非含有で、Ni、Co、Mn及びW含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0097】
<比較例9>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Aの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、ジルコニウム塩と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Zrとのモル比が1.11:1.00:0.005になるように混合したこと以外は実施例1と同様の条件とし、W非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Aを作製した。当該リチウム複合酸化物Aは、Niの割合が35モル%であり、Zrの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が4.3μmであり、10%粒径D10が2.3μmであり、90%粒径D90が5.9μm以下であった。
【0098】
比較例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Bと上記作製したW非含有で、Ni、Co、Mn及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0099】
<比較例10>
実施例1におけるリチウム複合酸化物Bの作製において、Ni、Co及びMnを含む複合酸化物と、タングステン塩と、LiOHとを、Liと、Ni、Co及びMnの総量と、Wとのモル比が1.08:1.00:0.005になるように混合したこと以外は実施例1と同様の条件とし、Zr非含有で、Ni、Co、Mn及びW含有のリチウム複合酸化物Bを作製した。当該リチウム複合酸化物Bは、Niの割合が55モル%であり、Wの割合が0.5モル%であり、50%粒径D50が11.9μmであり、10%粒径D10が7.1μmであり、90%粒径D90が21.1μm以下であった。
【0100】
上記作製したZr非含有で、Ni、Co、Mn及びW含有のリチウム複合酸化物Bと実施例1のNi、Co、Mn、W及びZr含有のリチウム複合酸化物Aとを質量比で7:3となるように混合し、これを正極活物質としたこと以外は、実施例1と同様に非水電解質二次電池を作製した。
【0101】
[電池容量の測定]
環境温度25℃の下、実施例及び比較例の電池を1Itレートの電流値2000mAで電池電圧が4.2Vになるまで定電流充電を行い、その後4.2Vで定電圧充電を行った後、1Itレートの電流値2000mAで電池電圧が2.5Vになるまで定電流放電を行った。この時の、放電容量を電池容量(定格容量)とした。
【0102】
[電池出力の測定]
実施例及び比較例の電池を定格容量の50%まで充電した後に、電池温度を25℃として、放電終了電圧2Vとしたときの、10秒間充電可能な最大電流値から充電深度(SOC)50%における出力値を下式により求めた。
【0103】
出力値(SOC50%)=(最大電流値)×(放電終止電圧(2.0V))
[充放電サイクル試験]
環境温度45℃の下、実施例及び比較例の電池を1Itレートの電流値2000mAで電池電圧が4.2Vまで定電流充電を行い、その後4.2Vで定電圧充電を行った後、1Itレートの電流値2000mAで2.5Vまで定電流放電を行った。この充放電サイクルを500サイクル行い、下式により容量維持率を算出した。
【0104】
容量維持率(%)=500サイクル目の放電容量/1サイクル目の放電容量×100
[発生ガス量試験]
上記充放電サイクルを500サイクル行った実施例及び比較例の電池を、浮力法により発生ガス量を計測した。具体的には、500サイクル後の電池の水中における質量と試験前の電池の水中での質量との差分を、発生ガス量とした。
【0105】
表1に、各実施例及び各比較例の電池容量、出力、発生ガス量の結果を示す。
【0106】
【表1】
【0107】
実施例1~14の正極活物質は、W及びNi含有のリチウム複合酸化物Aと、W非含有及びNi含有のリチウム複合酸化物Bとを含み、前記リチウム複合酸化物Aは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が30~60モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は2~6μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は1.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は6.8μm以下であり、前記リチウム複合酸化物Bは、リチウムを除く金属元素の総モル数に対するNiの割合が50~95モル%であり、体積基準による累積粒度分布における50%粒径D50は10μ~22μmであり、体積基準による累積粒度分布における10%粒径D10は7.0μm以上であり、体積基準による累積粒度分布における90%粒径D90は22.5μm以下であり、前記リチウム複合酸化物Aと前記リチウム複合酸化物Bの質量比は1:1~1:5.7である。このような正極活物質を用いた実施例1~14はいずれも、上記添加元素、上記粒径、上記混合割合等のうち少なくともいずれか1つが上記規定した範囲外である比較例1~12と比べて、高い電池容量、高い出力であって少ないガス発生量を兼ね備えた特性を示した。
【0108】
実施例1~14の中では、リチウム複合酸化物BにZrを添加している実施例1~11は、他の実施例と比べて、充放電サイクル特性における容量維持率が高く、発生ガス量が少なくなった。リチウム複合酸化物Bの粒径を大きくした実施例4,5や、リチウム複合酸化物Aの粒径を大きくした実施例7は、容量維持率がより高くなり、発生ガス量が少なくなった。リチウム複合酸化物AまたはBの粒径を小さくした実施例6,8は出力がより高くなった。リチウム複合酸化物AとBの質量比を変えた実施例1,2,3は、リチウム複合酸化物Bの比率を増やすにつれて容量維持率が高くなり、ガス量は低くなった。またリチウム複合酸化物Aの比率を増やすにつれて出力が高くなった。