(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】貫通機能を有する口腔内スキャナを用いた表面マッピング
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230316BHJP
A61B 1/24 20060101ALI20230316BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G01N21/17 625
A61B1/24
A61B1/00 526
(21)【出願番号】P 2019571972
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2018067721
(87)【国際公開番号】W WO2019002616
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-23
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517429282
【氏名又は名称】ケアストリーム・デンタル・テクノロジー・トプコ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】イングレーゼ,ジャン-マルク
(72)【発明者】
【氏名】グリネク,ヤニク
(72)【発明者】
【氏名】ボイル,イアモン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァーミル,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ベルカリ,マリアンヌ
(72)【発明者】
【氏名】カプリ,アルノウド
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヴィクター
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-257166(JP,A)
【文献】特開2012-016620(JP,A)
【文献】特開2014-117611(JP,A)
【文献】特表2012-523945(JP,A)
【文献】特開2013-110328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/61
A61B 1/00-A61B 1/32
A61B 3/00-A61B 3/18
OPTICA
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルを撮像するための方法であって、前記方法は、
a)第1のOCT(光コヒーレンス断層撮影)撮像コンテンツを、
(i)閾値波長より上の波長の低コヒーレンス光を生成するステップと、
(ii)前記サンプルから散乱した前記低コヒーレンス光の第1の部分と、基準から反射した前記低コヒーレンス光の第2の部分との間で干渉信号を取得するステップと、
により取得するステップと、
b)表面輪郭撮像コンテンツを取得するステップと、
c)ステップb)と同時に、取得された表面輪郭撮像コンテンツに関連する第2のOCT撮像コンテンツを取得するステップと、
d)前記第2のOCT撮像コンテンツの中から、非変形撮像コンテンツをセグメント化するステップと、
e)前記サンプルのCBCT
(コーンビームコンピュータ断層撮影)走査3D画像を提供するステップと、
f)前記非変形撮像コンテンツを前記CBCT走査3D画像に登録するステップと、
g)前記
第2のOCT撮像コンテンツを前記CBCT走査3D画像
にマッチングさせるステップと、
を備え、
前記第1のOCT撮像コンテンツおよび前記表面輪郭撮像コンテンツが取得され、前記非変形撮像コンテンツを用いて同じ座標系にマッピングされる、方法。
【請求項2】
前記非変形撮像コンテンツは、硬組織を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非変形撮像コンテンツは、軟組織を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のOCT撮像コンテンツおよび前記表面輪郭撮像コンテンツは、同時またはほぼ同時に取得され、前記干渉信号は、マイケルソン干渉計またはマッハツェンダ干渉計により取得される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
コンピュータに請求項1~4の何れか一項に記載の方法を実行させるためのコンピュータプログラムを格納するコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光コヒーレンス断層撮影のための装置に関し、より具体的には、光コヒーレンス断層撮影による深度撮像と、表面輪郭撮像機能とを結合する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンス断層撮影(OCT)は、サンプルの深度構造を特徴化する高解像度の断面断層画像を取得するために干渉計原理を利用する非侵襲性撮像技術である。人体組織の体内撮像に特に適しているため、OCTは、たとえば眼科学、皮膚病学、腫瘍学、および他の分野において、ならびに耳鼻咽喉科(ENT)および歯科用撮像においてなど、生物医学研究および医療撮像用途の範囲における有用性を示している。
【0003】
OCTは、断面データを取得するために生体組織内からの反射エネルギを撮像する、一種の「光超音波」として説明されている。OCT撮像システムにおいて、たとえばスーパールミネセントダイオード(SLD)または他の光源などの広帯域幅光源からの光は、既知の長さの基準アームおよび研究対象である組織または他の被写体を照射するサンプルアームという2つの異なる光路に沿って向けられる。基準およびサンプルアームから戻り後方散乱する光は、その後、OCT装置内で再結合され、サンプルの表面および表面付近内部構造の特性を決定するために、干渉効果が用いられる。干渉データは、サンプルにわたりサンプル照明を迅速に走査することによって取得され得る。数千の点の各々において、OCT装置は、光源コヒーレンスの因子である材料内への軸方向深度によってA走査を再構成するために用いられ得る干渉プロファイルを得る。多くの組織撮像用途に関して、OCTは、広帯域照明源を用い、数ミリメートル(mm)の深度で画像コンテンツを提供し得る。
【0004】
初期のOCT装置は、たとえば圧電アクチュエータなど何らかの型式の機械機構を用いて基準アームの長さを迅速に変化させることによって前後走査が実現される時間領域(TD-OCT)アーキテクチャを用いるものであった。TD-OCT法は、点ごとの走査を用い、撮像セッション中に、照明プローブがある位置から次の位置へ動かされ、または走査されることを必要とする。近年のOCT装置は、それらが生成する信号の光周波数に従って様々な深度からの反射を区別するフーリエ領域アーキテクチャ(FD-OCT)を用いる。FD-OCT法は、多数の深度からの情報を同時に収集することによって軸方向走査要件を単純化または排除し、改善された取得速度および信号対雑音比(SNR)を提供する。スペクトル領域OCT(SD-OCT)および掃引光源OCT(SS-OCT)という、フーリエ領域OCTの2つの実装が存在する。
【0005】
SD-OCT撮像は、広帯域光源によってサンプルを照明し、分光計によってたとえばCCD(電荷結合素子)検出器などのアレイ検出器に反射および散乱光を分散させることによって遂行され得る。SS-OCT撮像は、高速波長同調レーザによってサンプルを照明し、単一の光検出器またはバランスド光検出器のみを用いて波長掃引中に反射した光を収集する。SD-OCTおよびSS-OCT両方に関して、様々な深度から反射した散乱光のプロファイルは、信号分析技術の当業者に周知である、たとえば高速フーリエ変換(FFT)などのフーリエ変換を用いて記録された干渉信号に処理をすることによって得られる。
【0006】
歯の表面撮像に関して、光三角測量を用いる様々な方法が用いられてきた。これらは、一般に可視または近可視赤外(NIR)波長の光の構造化パターンが歯表面に向けられ、歯表面によって変調された結果生じるパターンがカメラによって検出される、構造化光撮像を含む。取得された画像における投影パターンの歪みの解釈により、歯表面の正確な特徴化が可能である。検出された画像情報は、たとえば歯表面の特徴をマッピングするメッシュまたは点群を形成するために用いられ、他の種類の深度撮像とともに、歯の診断および治療を支援し得る有用な情報を提供するために用いられ得る。
【0007】
OCTおよび構造化光撮像から組み合わせられた結果は、歯科用撮像に関する有用な情報を提供することができる。しかし、この組み合わせを単一装置のソリューションで取得するために提案されるアプローチは、測定種類間での光クロストーク、同時の表面およびOCT測定において最適な画像品質を実現する困難性、ワークフロー制約、大量の処理オーバヘッドを伴う計算複雑性を含む、数々の問題が特徴とされている。OCTおよび表面輪郭撮像機能を組み合わせる歯科用撮像デバイスを用いる性能およびワークフローの向上に利点があることは明らかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の態様は、歯科用撮像システムの技術を進歩させることである。
【0009】
本出願の他の態様は、関連する技術における少なくとも上記欠点および他の欠点に全体的または部分的に対処することである。
【0010】
本出願の他の態様は、少なくとも本明細書で説明される利点を全体的または部分的に提供することである。
【0011】
本開示の目的は、診断用撮像の技術を進歩させること、および、同時またはほぼ同時のOCTおよび表面輪郭撮像およびOCT深度データを表面輪郭情報に登録することへの必要性に対処することである。本発明の実施形態は、表面輪郭およびOCT深度撮像コンテンツのいずれかまたは両方を取得するように構成された、両方の種類の撮像が単一のデバイスによって行われることを可能にする装置および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願の態様によると、サンプルを撮像するための方法が提供され、この方法は、
a)(i)閾値波長より上の波長の低コヒーレンス光を生成するステップと、
(ii)サンプルから散乱した低コヒーレンス光の第1の部分と、基準から反射した低コヒーレンス光の第2の部分との間で干渉信号を取得するステップと
により、光コヒーレンス断層撮影撮像コンテンツを取得することと、
b)表面輪郭撮像コンテンツを取得することと、
c)ステップb)と同時に、取得された表面輪郭撮像コンテンツに関連する深度撮像コンテンツを取得することと、
d)深度撮像コンテンツの中から、非変形撮像コンテンツをセグメント化することと
を備え、
光コヒーレンス断層撮影撮像および表面輪郭撮像コンテンツが取得され、非変形コンテンツを用いて同じ座標系にマッピングされる。
【0013】
本出願の更なる態様において、方法は更に、サンプルのCBCT走査3D画像を提供することと、非変形コンテンツをCBCT走査3D画像に登録することとを備える。
【0014】
これらの目的は、実例によってのみ示され、そのような目的は、本発明の1または複数の実施形態の典型例であってよい。開示された方法によって固有に実現される他の望ましい目的および利点が、当業者には想起され、または明らかになり得る。本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0015】
本発明の上記のおよび他の目的、特徴、および利点は、添付図面に示されるように、本発明の実施形態の以下のより具体的な説明から明らかになる。
【0016】
図面の要素は、必ずしも互いに一定の比率で拡大縮小されたものではない。基本的構造関係または動作原理を強調するために、何らかの誇張表現が必要であり得る。たとえば動力の供給、パッケージング、およびシステム光学系を取付けおよび保護するために用いられる支持部品など、説明された実施形態の実装に必要となるいくつかの従来の部品は、説明を単純化するために図示されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施形態に係るプログラマブルフィルタを示す概略図である。
【
図2A】プログラマブルフィルタが選択された波長帯の光をどのように提供するかを示す簡略概略図である。
【
図2B】プログラマブルフィルタのマイクロミラーアレイの一部の拡大図である。
【
図3】アレイ内のマイクロミラーの配置を示す平面図である。
【
図4】本開示の代替実施形態に係る、分散オプティックとしてプリズムを用いるプログラマブルフィルタを示す概略図である。
【
図5】本開示の代替実施形態に係る、波長波数変換を行うプログラマブルフィルタを示す概略図である。
【
図6A】マッハツェンダ干渉計を用いる本開示の実施形態に係る、プログラマブルフィルタを用いる掃引光源OCT(SS-OCT)装置を示す概略図である。
【
図6B】マイケルソン干渉計を用いる本開示の実施形態に係る、プログラマブルフィルタを用いる掃引光源OCT(SS-OCT)装置を示す概略図である。
【
図7】本開示の実施形態に係るプログラマブルフィルタを用いる波長可変レーザを示す概略図である。
【
図8】広帯域光源から波長帯を選択するためのプログラマブルフィルタの使用を示す概略図である。
【
図9】OCT撮像システムプローブの一部として、2D走査を提供するために用いられるガルボミラーを示す。
【
図10A】B走査を得るための走査動作の図式表現を示す。
【
図10B】C走査取得のためのOCT走査パターンを示す。
【
図11】口腔内OCT撮像システムの部品を示す概略図である。
【
図12】本開示の実施形態に係るOCT処理のためのシーケンスを示すプロセスフロー図である。
【
図13A-13E】重い虫歯を有する歯の画像の例を用いて、OCT処理シーケンスの一部として取得および生成された様々な種類の撮像コンテンツを示す。
【
図14】輪郭表面に投影された光のパターンを示す斜視図である。
【
図15】組み合わせられたOCTおよび表面輪郭撮像のための撮像装置の部品を示す概略図である。
【
図16A】組み合わせられたOCTおよび表面輪郭撮像のためのハンドヘルドプローブを有する撮像装置を示す概略図である。
【
図16B】表面輪郭およびOCT撮像を組み合わせる撮像装置を示す概略図である。
【
図17A】単一の2軸走査ミラーを用いるプローブ構成を示す概略図である。
【
図17B】単一の2軸走査ミラーと投影および撮像光路の両方に共有されるレンズとを用いる代替プローブ構成を示す概略図である。
【
図17C】2ミラー2軸スキャナを用いるプローブ構成を示す概略図である。
【
図17D】独立した集束光学系を有さない単一の2軸走査ミラーを用いるプローブ構成を示す概略図である。
【
図17E】OCT走査と外部線掃引とを組み合わせるプローブ構成を示す概略図である。
【
図17F】OCT走査と外部線掃引とを組み合わせる第2の構成を示す概略図である。
【
図18】本開示の装置によって提供された様々な種類の撮像に関する光源選択ガイドを示す。
【
図19】本発明の実施形態に係る口腔外CBCT撮像装置の全体概略斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下は、典型的な実施形態の詳細な説明であり、同じ参照番号がいくつかの図の各々において構造の同じ要素を識別する図面が参照される。
【0019】
本開示の文脈において用いられる場合、「第1の」、「第2の」などの用語は、必ずしも任意の順序、連続性、または優先関係を表すものではなく、特に明記されない限り、単に1つのステップ、要素、または要素のセットをより明確に他と区別するために用いられる。
【0020】
本明細書で用いられる場合、「通電可能」という用語は、電力の受信時、および任意選択的に許可信号の受信時、示された機能を実行するデバイスまたは部品のセットに関する。
【0021】
本開示の文脈において、「光学系」という用語は一般に、光ビームを成形し方向付けるために用いられるレンズおよび他の屈折、回折、および反射部品または開口部を指すために用いられる。この種の個々の部品は、オプティックと称される。
【0022】
本開示の文脈において、「散乱光」という用語は一般に、物体から反射および後方散乱する光を含むように用いられる。
【0023】
本開示の文脈において、「ビューア」、「オペレータ」、および「ユーザ」という用語は等しいものとみなされ、カメラまたはスキャナを操作し、ディスプレイモニタ上のたとえば歯科用画像などの画像を目視および処理もし得る施術者、技術者、または他の人間を指す。「オペレータ命令」または「ビューア命令」は、たとえばカメラまたはスキャナにおけるボタンをクリックすることによって、あるいはコンピュータマウスの使用またはタッチスクリーンまたはキーパッドの入力などによって、ビューアによって入力された明示的コマンドから得られる。
【0024】
本開示の文脈において、「信号通信状態にある」という表現は、2つ以上のデバイスおよび/または部品が、何らかの種類の信号経路上を伝達する信号を介して互いに通信可能であることを示す。信号通信は、有線または無線であってよい。信号は、通信信号、電力信号、データ信号、またはエネルギ信号であってよい。信号経路は、第1のデバイスおよび/または部品と第2のデバイスおよび/または部品との間の物理、電気、磁気、電磁、光、有線、および/または無線接続を含んでよい。信号経路は、第1のデバイスおよび/または部品と第2のデバイスおよび/または部品との間に追加のデバイスおよび/または部品を含んでもよい。
【0025】
本開示の文脈において、「カメラ」という用語は、たとえば歯および支持構造の表面から反射した構造化光などの反射可視またはNIR光から反射率2Dデジタル画像を取得することが可能なデバイスに関する。
【0026】
「スキャナ」という一般用語は、表面のOCT撮像において用いられる基準アームからの光との干渉を検出するために、サンプルアームを通して歯表面に向けられ、サンプルアームに戻る散乱光として取得される広帯域近IR(BNIR)光の走査光ビームを投影する光学システムに関する。「ラスタスキャナ」という用語は、後により詳しく説明されるように、サンプルへ向かう光を走査するハードウェア部品の組み合わせに関する。
【0027】
「被写体」という用語は、撮像される患者の歯または他の部位を指し、光学用語において、対応する撮像システムの「対象物」に等しいとみなされ得る。
【0028】
本開示の文脈において、「広帯域発光器」という表現は、任意の所与の時点において波長範囲にわたる連続的スペクトル出力を発する照明または光源を指す。短コヒーレンスまたは低コヒーレンス広帯域照明源は、たとえばスーパールミネセントダイオード、ショートパルスレーザ、多くの種類の白色光源、およびスーパーコンティニューム光源を含んでよい。これらの種類の低コヒーレンス長光源の多くは、約数十ミクロン以下のコヒーレンス長を有する。
【0029】
本開示の文脈において、「斜め」という用語は、90度の整数倍ではない角度配向を表す。2本の直線または光路は、たとえばそれらが平行から約5度以上または直交状態から約5度以上離れた角度で互いに逸脱または収束する場合、互いに対して斜めであるとみなされ得る。
【0030】
本開示の文脈において、2つの波長は、+/-10nm以内しか離れていない場合、互いに「近い」とみなされ得る。
【0031】
本開示の実施形態によると、可変波長照明を提供し得るプログラマブル光源が提供される。プログラマブル光源は、走査SS-OCTおよび制御可能に変更できるスペクトルパターンから利益を得る他の用途のための掃引光源として用いられ得る。
【0032】
図1を参照すると、低コヒーレンス広帯域光源から所望のパターンおよびシーケンスの波長(λ0・・・λn)を生成するために用いられるプログラマブルフィルタ10が示される。ファイバレーザまたは他の光源からの広帯域光は、サーキュレータ14を介して光ファイバまたは他の導波路12を通り、たとえば回折格子などの光分散オプティック20へコリメート光を向けるコリメータレンズL1へ向けられる。光分散オプティック20は、集束レンズL2へ向けられる分光出力ビーム24を形成する。レンズL2は、たとえばマイクロミラーアレイ30などの空間光変調器80に分散光を集束させる。マイクロミラーアレイは、反射デバイスの線形アレイ、またはテキサス州ダラスのテキサスインスツルメンツ社製のデジタル光プロセッサ(DLP)の直線部分であってよい。アレイ30における1または複数の個々の反射体は、光路を通って戻る対応する波長の光を反射するように作動される。この反射光は、プログラマブルフィルタ10の出力であり、後に説明するようにたとえば光コヒーレンス断層撮影(OCT)などの用途において用いられ得る。アレイ30内の連続した各反射体の迅速な作動は、たとえば
図1に提供されるような分光出力ビームの多数の小スペクトル部分のサンプリングを可能にする。たとえば、空間光変調器80が1列に2048のマイクロミラー素子を有するマイクロミラーアレイ30であり、アレイ30の片側から他方までのスペクトル範囲は35nmである場合、各個々のマイクロミラーは、約0.017nm幅の波長帯を反射し得る。1つの典型的な掃引光源シーケンスは、分光出力ビームによって形成された直線に沿って、単一の空間光変調器80の画素(反射素子)を一度に作動させることによって、低い波長から高い波長へ進む。後に説明するように、他の掃引光源シーケンスも可能である。
【0033】
本明細書で説明されるマイクロミラーアレイ30は
図1~3に示され、以下は、プログラマブル光源の一部として用いることが可能な空間光変調器80の一種である。利用される空間光変調器80は、デバイスの「画素」を効果的に提供する個別にアドレス指定可能な素子を有する、何らかの種類の反射デバイスである。
【0034】
プログラマブルフィルタ10は、部品の全体配置および光分布において分光計の態様と似ている。入射広帯域BNIR光は、光のスペクトル成分を空間的に分離するために光分散オプティック20によって分散する。マイクロミラーアレイ30または他の種類の空間光変調器80は、後に詳しく説明されるように、選択された波長帯が、たとえば干渉計測定での使用またはレーザを同調させるためなど、光学システム内のどこかで用いられ得るように、プログラマブルフィルタ10を通って戻るこの選択された波長帯(複数も可)の光を反射するように配置される。
【0035】
図2Aの略図および
図2Bの拡大図は、選択された波長帯W1の光を提供するためにプログラマブルフィルタ10がどのように動作するかを示す。マイクロミラーアレイ30の大幅に拡大されたエリアEを模式的に示す
図2Bは、ビーム24の入射光に対する3つのミラー32a、32b、および32cの挙動を示す。マイクロミラーアレイ30の各ミラー32素子は、ミラー32aおよび32bに示すように1つの角度に傾いた作動解除状態、またはミラー32cに示すように別の角度に傾いた作動状態という2つの状態のいずれかを有し得る。DLPデバイスの場合、マイクロミラーの作動解除/作動状態に関する傾斜角度は、基板表面から+12および-12度である。したがって、レンズL2を通りプログラマブルフィルタ10の他の部品を通る光軸OAに沿って光を後方へ向けるために、
図2Bに示すように、マイクロミラーアレイ30自体は光軸OAに対して+12度傾けられる。
【0036】
図1のプログラマブルフィルタ10において、光分散オプティック20は、たとえばホログラフィック回折格子を含む、何らかの種類の回折格子であってよい。格子分散方程式は、
mλ=d(sinα+sinβ) (式1)
であり、式中、
λは光波長であり、
dは格子ピッチであり、
αは、オプティック20の入射表面に対する法線に対する入射角度(
図1、
図2Aを参照)であり、
βは、オプティック20の出射表面に対する法線に対する回折光の角度であり、
mは、本開示の実施形態に関して一般にm=1である回折次数である。
【0037】
FWHM(全幅半値)帯域幅は、格子のスペクトル分解能δλgおよびDLPデバイスの画素またはマイクロミラー32における波長範囲δλDLPによって決定され、これらは、
δλg=λc d cos α/D (式2)
および
δλDLP=dp cos β/f (式3)
として求められ、式中、
Dは、レンズL1によってコリメートされた入射ガウスビームの1/e2幅であり、
λcは中心波長であり、
dは格子ピッチであり、
pは、各マイクロミラーに関するDLP画素ピッチであり、
fは、集束レンズL2の焦点距離である。
【0038】
最終的なFWHM帯域幅δλは、(δλg,δλDLP)の最大値である。帯域幅δλは、微細可変波長範囲を定義する。OCT撮像のための適当な構成に関して、以下の関係が維持される。
δλg≦δλDLP
【0039】
DLPを用いて光を導波路12ファイバへ戻り反射させるために、分光スペクトルは、各マイクロミラー32のヒンジ軸と位置合わせされたDLP表面に集束される。DLP基準平坦表面もまた、特定のマイクロミラー32が「オン」状態である時に光が光導波路12へ直接戻り反射するように、12度傾斜する。マイクロミラーが「オン」状態である場合、そのマイクロミラーにおける光入射の空間分布に対応する帯域幅を有するスペクトルの対応する集束部分は、入射光と同じ経路に沿って反対方向に伝達し、導波路12ファイバへ戻り反射する。ファイバ経路内のサーキュレータ14は、選択されたスペクトルの光を出力として第3のファイバへ導く。容易に理解され得るように、他の種類の空間光変調器80は、
図2Bの例に示したように入射光ビームに対して斜めの角度の配向を必要としないこともある。
【0040】
単一のDLP画素に集束した1/e
2ガウスビーム強度径は、以下のとおりである。
w=4λf/(πDcosβ/cosα) (式4)
好適には、w≦pが維持される。これにより、ビーム径wが画素ピッチp未満に設定される。最大同調範囲は、
M×δλ
DLP
によって決定され、式中、Mは、
図3に示すような水平方向におけるDLPマイクロミラーの数である。
図3が示すように、マイクロミラーアレイ30に関するマイクロミラーのアレイは、M個の縦列およびN個の横列を有する。DLPマイクロミラーアレイの単一の横列のみがプログラマブルフィルタ10とともに用いるために必要であり、この1列の上下の他にある横列は、使用されてもされなくてもよい。
【0041】
DLP画素(マイクロミラー)に関する波長は、以下の格子式によって表され得る。
【数1】
式中、iは、0~(M-1)の範囲内の特定の波長に対応するDLP縦列のインデックスである。
【0042】
上記式(5)から、横列における各ミラーに対応する中心波長が決定され得る。
【0043】
図4は、光分散オプティック20としてプリズム16を有する、代替実施形態におけるプログラマブルフィルタ10を示す。プリズム16は、
図1に示す格子とは逆の順序に光波長(λn・・・λ0)を分散させる。より長い波長(赤色)がより高い角度に、より短い波長(青色)がより低い角度に分散する。
【0044】
従来の光分散光学系は、分散光を構成する波長が線形分布を有するように分散光を分布させる。すなわち、波長は、分散光の直線に沿って均等な間隔で離間する。ただし、フーリエ領域OCT処理の場合、波長データから周波数データへの変換が必要である。よって波長データ(nm単位のλ)は、周波数に比例して、波数データ(k=λ
-1)に変換されなければならない。従来の実施において、フーリエ変換計算の前に、この変換を実現するために補間ステップが用いられる。補間ステップは、処理リソースおよび時間を必要とする。ただしこれは、プログラマブルフィルタから波数k値を直接選択することができることが最大の利点である。
図5の概略図は、中間プリズム34を用いた波長(λ
0・・・λ
N)データから波数(k
0・・・k
N)データへの光学変換のための1つの方法を示す。波長波数変換に関するプリズム角度および材料パラメータを指定するための方法は、たとえば、2007年12月15日発行のOPTICS LETTERS、第32巻、第24号、3525~3527頁における“Fourier domain optical coherence tomography with a linear-in-wavenumber spectrometer”と題されたHu氏およびRollins氏による記事に示される。
【0045】
プログラマブルフィルタ10は、たとえば同調レーザを用いるOCT撮像などの機能のために適当に時間を決められたシーケンスにおいて、広帯域光源から選択された光波長を提供することができる。プログラマブルフィルタ10は、プログラマブルシーケンスを提供するので、低波長から高波長への正順スペクトル掃引ならびに高波長から低波長への逆順掃引を行うことができる。三角掃引パターン、波長の「コム」の生成、または任意波長パターンも提供され得る。
【0046】
特にOCT撮像に関して、様々なプログラマブル掃引パラダイムは、撮像における移動物体の抽出、深度に伴う感度の低下の改善などに役立ち得る。OCT信号感度は、サンプル内の深度の増加とともに低下し、深度はz軸方向に伸長するものとみなされる。離散波長のコムを用いることで、たとえばOCT感度が増加し得る。これは、2008年3月発行のOptics Express第16巻、第6号、4163~4176頁における“Improved spectral optical coherence tomography using optical frequency comb”と題されたBajraszewski氏他による記事において説明される。
【0047】
図6Aおよび
図6Bの簡略概略図の各々は、本開示の実施形態に係るプログラマブルフィルタ10を用いる掃引光源OCT(SS-OCT)装置100を示す。各例において、プログラマブルフィルタ10は、同調レーザ50の一部として用いられる。たとえば口腔内OCTの場合、レーザ50は、約400~1600nmの波長に対応する周波数範囲(波数k)にわたり同調可能である。本開示の実施形態によると、口腔内OCTに関して、約830nmを中心とした35nm帯域幅の可変範囲が用いられる。
【0048】
図6Aの実施形態において、OCT走査のためのマッハツェンダ干渉計システムが示される。
図6Bは、マイケルソン干渉計システムに関する部品を示す。これらの実施形態に関して、プログラマブルフィルタ10は、同調レーザ50出力を生成するためのレーザ空洞の一部を提供する。可変レーザ50の出力は、カプラ38を通ってサンプルアーム40および基準アーム42へ向かう。
図6Aにおいて、サンプルアーム40信号は、サーキュレータ44を通り、サンプルSの測定のためのプローブ46へ向かう。サンプリングされた信号は、サーキュレータ44(
図6A)を通って戻り、カプラ58を通って検出器60へ向けられる。
図6Bにおいて、信号はサンプルアーム40および基準アーム42へ直接向かい、サンプリングされた信号は、カプラ38を通って検出器60へ戻される。検出器60は、同相雑音を相殺するように構成されたバランスド光検出器のペアを用いてよい。制御論理プロセッサ(制御処理ユニットCPU)70は、同調レーザ50およびそのプログラマブルフィルタ10、および検出器60と信号通信状態にあり、検出器60からの出力を取得し、処理する。CPU70は、コマンド入力およびOCT結果表示のためのディスプレイ72とも信号通信状態にある。
【0049】
図7の概略図は、本開示の代替実施形態に係る同調レーザ50の部品を示す。同調レーザ50は、たとえば半導体光増幅器(SOA)52などの広帯域利得媒体を有するファイバリングレーザとして構成される。2つの光アイソレータOIは、逆反射光からのSOAの保護を提供する。ファイバ遅延線(FDL)は、レーザの効果的な掃引速度を決定する。フィルタ10は、ファイバリングを連結するために用いられる入力ファイバおよび出力ファイバを有する。
【0050】
図8の概略図は、たとえばスーパールミネセントダイオード(SLD)などの広帯域光源54から波長帯を選択するためのプログラマブルフィルタ10の使用を示す。この場合、空間光変調器80は、サーキュレータ14を通る広帯域光の成分を反射する。サーキュレータ14は、個別の光路に沿ってプログラマブルフィルタ10との間で光を向けるために用いられる。
【0051】
図9の概略図に示すように、ガルボミラー94および96は、OCT撮像のために必要なラスタ走査を提供するために協働する。示された配置において、ガルボミラー1(94)は、横列に沿ってデータを生成するためにサンプルに沿った各点82への光の波長を走査し、これにより、後に詳しく説明するB走査が提供される。ガルボミラー2(96)は、追加の横列に2Dラスタ走査をもたらすために横列位置を漸進的に移動する。各点82において、空間光変調器80(
図1、
図4、
図5)の画素ごとにプログラマブルフィルタ10を用いて提供された光のフルスペクトルは、信号掃引において迅速に生成され、その結果生じる信号が検出器60(
図6A、
図6B)において測定される。
【0052】
OCT撮像のための走査シーケンス
図10Aおよび
図10Bの概略図は、本開示のOCT装置を用いて断層画像を形成するために用いられ得る走査シーケンスを示す。
図10Aに示すシーケンスは、単一のB走査画像がどのように生成されるかを示す。ラスタスキャナ90(
図9)は、サンプルSにわたり選択された光シーケンスを一点一点、走査する。
図10Aに示すような周期的駆動信号92は、
図10Aおよび
図10Bにおいて水平方向に広がる離散点82として示された、サンプルの各横列を横断する左右走査またはB走査を制御するためにラスタスキャナ90のガルボミラーを駆動するために用いられる。B走査の走査線または横列に沿った複数の点82の各々において、z軸方向にデータを取得するA走査または前後走査は、選択された波長帯の連続部分を用いて生成される。
図10Aは、波長帯にわたる、対応するマイクロミラーの作動、または他の空間光変調器の画素ごとの作動を伴う、ラスタスキャナ90を用いて直進昇りシーケンスを生成するための駆動信号92を示す。駆動信号92の一部であるレトロ走査信号93は、単純に走査ミラーを次の走査線のための開始位置に戻すのみであり、レトロ走査信号93の間にOCTデータは取得されない。
【0053】
留意すべき点として、B走査駆動信号92は、
図9に示すようなラスタスキャナ90のためのガルボミラー94を駆動する。B走査の横列に沿った点82である各インクリメント位置において、A走査が得られる。A走査データを取得するために、同調レーザ50または他のプログラマブル光源は、プログラマブルフィルタ10(
図1、
図2A、
図4、
図5)によって制御されるスペクトルシーケンスを掃引する。よって、プログラマブルフィルタ10が光源に30nm範囲の波長を掃引させる実施形態において、このシーケンスは、B走査経路に沿った各点82において実行される。
図10Aが示すように、A走査取得のセットは各点82において、すなわち走査ガルボミラー94の各位置において実行する。例として、DLPマイクロミラーが空間光変調器80として用いられる場合、各位置82においてA走査を生成するために2048の測定が存在し得る。
【0054】
図10Aは、各A走査中に取得された情報を模式的に示す。DC信号コンテンツを取り除いて示された干渉信号88が各点82の時間インターバルにわたり取得され、この信号は、掃引に必要な時間インターバルの関数であり、取得された信号は、干渉計(
図6A、
図6B)の基準アームおよびフィードバックアームからの光を結合することによって生成されたスペクトル干渉縞を示す。フーリエ変換は、各A走査に関する変換Tを生成する。A走査に対応する1つの変換信号は、
図10Aに例として示される。
【0055】
上記説明から、単一のB走査シーケンスにわたり著しい量のデータが取得されることが理解され得る。このデータを効率良く処理するために、時間ベースの信号データを対応する周波数ベースのデータに変換する高速フーリエ変換(FFT)が用いられ、これにより画像コンテンツはより容易に生成され得る。
【0056】
フーリエ領域OCTにおいて、A走査は、前後走査線(z軸)分解OCT信号を生成するスペクトル取得の1つの走査線に対応する。B走査データは、対応する走査線に沿って2D OCT画像を生成する。
【0057】
ラスタ走査は、C走査方向にラスタスキャナ90の取得をインクリメントすることによって多数のB走査データを得るために用いられる。これは、3Dボリューム情報がA、B、およびC走査データを用いてどのように生成されるかを示す
図10Bに模式的に表される。
【0058】
上述したように、各A走査点82において用いられる波長または周波数掃引シーケンスは、一般的に用いられる昇りまたは下り波長シーケンスから修正され得る。任意波長シーケンシングが代わりに用いられてもよい。OCTのいくつかの特定の実装に役立ち得る任意波長選択の場合、利用可能な波長の一部のみが各掃引の結果として提供される。任意波長シーケンシングにおいて、各波長は、単一の掃引中にOCTシステムにおいて用いられるように、任意の順序でランダムに選択され得る。
【0059】
図11の概略図は、口腔内OCT撮像システム62を形成するためのプローブ46および支持部品を示す。撮像エンジン56は、
図6A~7に関して説明した光源、ファイバカプラ、基準アーム、およびOCT検出器部品を含む。1つの実施形態において、プローブ46は、ラスタスキャナ90またはサンプルアームを含むが、任意選択的に、撮像エンジン56によって提供されない他の要素も含んでよい。CPU70は、制御論理およびディスプレイ72を含む。
【0060】
上記説明は、プログラマブルフィルタ10から波長帯を選択するために用いられ得る1つの有用な種類の空間光変調器としてDLPマイクロミラーアレイ30を用いるOCT撮像システム62の詳細な説明を記載する。ただし、留意すべき点として、他の種類の空間光変調器80が選択された波長帯の光を反射するために用いられ得る。たとえば、反射液晶デバイスが、DLPマイクロミラーアレイ30の代わりに用いられ得る。DLPデバイス以外の他の種類のMEMS(微小電気機械システムデバイス)マイクロミラーアレイが代わりに用いられ得る。
【0061】
OCT撮像のための処理
図12の論理フロー図は、本開示の実施形態に係る、OCTコンテンツから抽出され得る表面点とともにOCT撮像コンテンツを得るためのOCT処理に関するシーケンスを示す。B走査ごとに多数のA走査を有する横列2Dスペクトルデータ150は、走査線ごとにN個の画素を有するM本の走査線として提供された、線形波長λにわたり提供される。その後、マッピング152は、対応する各波長λに波数値kを提供する。各k値に関してB方向に計算されたバックグラウンド減算154が実行し、バックグラウンド信号の直線が得られる。各A走査線において行われたバックグラウンド減算154は、固定パターン雑音を除去するために役立つ。ゼロパディング動作156および位相補正プロセス160において、スペクトルサンプリングが補正され、分散誘起OCT信号広帯域化が得られる。FFT処理ステップ162は、視覚化および診断支援のために役立つ、3Dボリュームレンダリングおよび2Dフレーム表示レンダリング166のための入力を提供するために、位相補正データの処理およびスケーリングを提供する。ステップ162の終了時、OCT画像コンテンツが利用可能である。
【0062】
図12のシーケンスにおける後続処理は、その後、表面特徴化のための点群を抽出する。その後、OCTボリュームデータから表面輪郭データを抽出するために、セグメンテーションステップ170が実行される。物体表面点群生成ステップ172は、測定された物体の表面点群を提供する。点群はその後、較正され、更なる処理とともにメッシュレンダリングステップ174のために用いられ得る。形状歪みの補正を促すために、OCT画像の幾何学的歪み較正が実行され得る。歪みは、正確に補正されない限り、走査パターンまたは用いられる光学配置の結果、生じ得る。歪み処理は、所与のジオメトリの較正目標を用いて得られた空間構成データを使用し得る。目標の走査および走査データの取得は、走査データの3D空間への登録を調整するための基礎を確立し、走査精度における誤差を補償する。較正目標は1または複数の位置で撮像された2D目標、または3D目標であってよい。
【0063】
図12のシーケンスのセグメンテーションステップ170、物体表面点群生成ステップ172、およびメッシュ生成およびレンダリングステップ174は、OCTボリューム測定から表面輪郭データを取得する。重要な点として、これらのステップの結果は、OCTによって測定された物体の再構成表面である。この抽出されたOCT表面撮像コンテンツは、たとえば反復最接近点(ICP)マージングなどの当該技術において一般的に知られた座標マッチング法を用いて、OCTコンテンツと同じ座標系を共有する表面輪郭撮像デバイスによって測定された結果と直接マージされ得る。よって、OCTおよび表面輪郭画像データコンテンツは、追加のステップを必要とせず、ICPマージングによって、点群またはメッシュのいずれかとして自動的に登録され得る。
【0064】
抽出されたOCT表面データは、それ自体が、あるいは表面輪郭画像データへの登録において、表示され、格納され、または他のコンピュータまたは記憶デバイスへ伝送され得る。
【0065】
用途および撮像状態に依存して、物体表面を抽出するためにセグメンテーションステップ170において様々な画像セグメンテーションアルゴリズムが用いられ得る。たとえば単純な直接閾値、能動輪郭レベル設定、流域抽出、教師付きおよび教師なし画像セグメンテーション、ニューラルネットワークベースの画像セグメンテーション、スペクトル埋込および最大フロー/最小カットグラフベースの画像セグメンテーションなどの画像セグメンテーションアルゴリズムが画像処理分野において周知であり、用いられてよく、それらは、3Dボリューム全体に、またはOCTデータの各2Dフレームに個別に適用され得る。
【0066】
図13A~13Eは、重い虫歯を有する歯の画像の例を用いて、OCT処理シーケンスの一部として取得および生成された様々な種類の撮像コンテンツを示す。
図13Aは、OCT撮像に関するB走査に対応する2Dスライスを示す。
図13Bは、基準として任意選択的なカラーバー180とともに、歯の深度符号化カラー投影を示す。
図13Cは、OCT撮像コンテンツから得られたボリュームレンダリングの対応するスライスを示す。
図13Dは、歯表面に沿った点が抽出された、
図13Aのセグメンテーション処理の結果を示す。
図13Eは、OCTボリュームデータから生成された歯の表面点群64を示す。表面点群64は、
図12のシーケンスに関して上に示すように、セグメンテーション後にOCTボリュームデータから得られ得る。
【0067】
表面輪郭撮像
上述したOCT撮像とは異なり、表面輪郭撮像は、反射率撮像を用い、たとえば表面構造、曲率、および輪郭特性などの表面を特徴化するためのデータを提供するが、表面下にある物質に関する情報は提供しない。輪郭撮像データまたは表面輪郭画像データは、構造化光撮像装置、または、一般に約380nmより上から740nm未満の閾値の範囲内の可視光照明、740nm付近およびそれより上まで及ぶ近赤外光、または380nmを下回る紫外光波長を用いて得られた2D反射率画像のシーケンスから表面に関連する構造情報を取得する撮像装置から得られ得る。輪郭撮像のための代替技術は、構造化光撮像とともに、たとえば三角測量による特徴追跡、ストラクチャフロムモーション写真測量、飛行時間型撮像、およびデプスフロムフォーカス撮像などの反射率撮像技術を用いて表面構造を特徴化するための他の既知の技術を含む。あるいは輪郭画像コンテンツは、たとえば表面組織を表すボクセルのみを識別および収集することによって、
図12に関して上述したように、たとえばOCTボリュームコンテンツなどのボリューム画像コンテンツから抽出され得る。
【0068】
「パターン化光」という表現は、光が、たとえば1または複数の識別可能な平行線、曲線、格子または基板格子パターン、または照明を用いずにエリアによって分離された光のエリアを有する他の特徴などの1または複数の特徴を有するように、所定の空間パターンを有する光を示すために用いられる。本開示の文脈において、「パターン化光」および「構造化光」という表現は、いずれも輪郭画像データを導出するために被写体に投影される光を識別するために用いられる均等物であるとみなされる。
【0069】
構造化光撮像において、直線パターンまたは他の構造化パターンは、撮像装置から物体の表面に向けて所与の角度から投影される。表面からの投影パターンは、その後、輪郭線の出現に基づいて表面情報を分析するために三角測量の利点を得る輪郭画像として別の角度から目視される。投影パターンが新たな位置での追加の測定値を得るために空間的に増分シフトされる位相シフトは一般に、表面の輪郭マッピングを完了し、輪郭画像における全体解像度を高めるために用いられる、構造化光撮像の一部として適用される。
【0070】
図14は、複数の光の線とともにパターンを用いる表面撮像を示す。直線パターンの増分シフトおよび他の技術は、表面に沿った急な移行の結果生じ、各投影線に対応するセグメントを明確に識別することを困難にし得る不正確性および乱れを補償するために役立つ。
図14において、たとえば、表面の一部にわたり、直線セグメント116が直線セグメント118と同じ照明線からであるか隣接した直線セグメント119からであるかを決定することは困難であり得る。
【0071】
画像が取得された時のスキャナの瞬間的位置および物体相対座標系内の光の線の瞬間的位置を知ることにより、適当なソフトウェアが組み込まれたコンピュータは、三角測量法を用い、多数の照明された表面点の座標を計算することができる。この画像取得の結果、頂点または複数の頂点の点群が識別され、表面輪郭を特徴化するために用いられ得る。点群における点または頂点は、その後、物体の3次元表面における実際の測定点を表す。
【0072】
パターンは、たとえばデジタル光プロセッサ(DLP)などの空間光変調器または回折格子を用いてパターン化光に加えられ得る。またパターンは、たとえば微細電気機械システム(MEMS)またはガルボの使用などによって、スキャナハードウェアと調和した、作動された発光の偏光によって、ラスタパターンとして生成されてもよい。
【0073】
留意すべき点として、反射率撮像は、表面輪郭撮像以外の目的にも用いられ得る。たとえば歯表面の反射率撮像は、歯表面の色、表面テクスチャ、および他の可視特性を決定するために用いられ得る。
【0074】
OCTと表面輪郭および他の反射率撮像との組み合わせ
特定の典型的な方法および/または装置の実施形態は、歯科用撮像のための組み合わせられたOCTおよび構造化光撮像を提供し得る。撮像装置200として
図15の簡略概略図に示す本開示の実施形態は、互いに容易に登録され、同時にまたはほぼ同時に取得され得る、すなわちオペレータによる個別の走査パスを必要とせずに単一の撮像動作において取得され得る深度分解断層画像コンテンツおよび表面輪郭画像コンテンツの両方を生成するために単一の撮像装置においてOCTおよび構造化光撮像を組み合わせる典型的な機構および方法を提供する。重要な点として、OCTおよび表面輪郭画像のための撮像経路は分光され、各撮像経路において用いられる波長は互いに異なる。OCT照明撮像のための光は、閾値波長より上にあり、表面輪郭撮像のための光は、閾値波長より下にある。
【0075】
図15の簡略化概略図は、撮像装置200の一部として協働する2つの撮像サブシステムである、反射率撮像または表面輪郭撮像システム210およびOCT撮像システム220を示す。表面輪郭撮像システム210は、たとえば歯などのサンプルSへ伝達される可視光Vis照明を用いる。本開示の実施形態によると、使用されるVis光波長範囲は、約380nm~約740nmに及び、カメラ212によって検出される。
【0076】
図15におけるOCT撮像システム220は、740nm~1550nmの範囲にわたる波長を有する、OCT撮像のために用いられる広帯域コヒーレント近赤外光源からのBNIR光を用いる。ファイバカプラFCは、BNIR光を基準アーム42およびサンプルアーム40に分割する。基準アーム42における光は、基準ミラー222によってレトロ反射され、
図6Aおよび
図6Bの概略図を参照して上述したように、干渉計のための基準光としてファイバカプラFCに結合される。サンプルアーム40における光は、
図9に模式的に示すようなラスタスキャナ90および不図示の支持集束光学部品を介して、たとえば歯などのサンプルSへ伝達される。サンプルSから後方散乱するBNIR光の一部は、サンプルアーム40の同じ光学系によって収集され、サンプルアーム40へ戻り結合される。基準光およびサンプル光は、ファイバカプラFCにおいて干渉する。
【0077】
図15における表面輪郭撮像システム210およびOCT撮像システム220に関する光路は、同じ経路上でファイバカプラFCへ入光するが、上述したように、閾値の上下に互いに分光される。任意選択的に、2つのシステムの更なる隔離をもたらすために、スペクトルフィルタが用いられ得る。ファイバカプラFCとOCT信号検出器224との間に配置されたスペクトルフィルタ216は、広帯域NIR干渉光のみがOCT信号検出器224によって検出されることを確実にする。カメラ212は、可視光のみ感知し、BNIR光は、異なるスペクトルフィルタ214によって遮断される。反射可視光パターンは、パターン化Vis照明方法に対して適当な角度でカメラ212によって捕捉される。表面輪郭撮像のために、所定の照明パターンは、ラスタスキャナ90の制御下で、可視光強度の変調を伴いサンプルSに衝突する。
【0078】
好都合な点として、同じラスタスキャナ90および関連光学系が、OCTのためのBNIR光および表面輪郭撮像のためのVisパターン化照明の両方をサンプルSへ伝達する。OCTおよび表面輪郭撮像は同じラスタスキャナ90を共有するので、撮像装置200においてシステム較正が行われると、OCTおよび表面輪郭撮像の両方が自動的に同じ座標系に較正される。OCT信号検出器224および関連部品とカメラ212との両方と信号通信状態にあるプロセッサ230は、OCTおよび表面輪郭画像コンテンツの両方の取得のために表面輪郭撮像システム210およびOCT撮像システム220の両方の挙動を制御し調和させる。
【0079】
図16Aの概略図は、口腔内撮像のためのハンドヘルドプローブ240の一部としてラスタスキャナ90とカメラ212光学系とを組み合わせる撮像装置200の実施形態を示し、サンプルSは、たとえば歯、歯茎組織、または他の支持構造などの口腔内特徴である。あるいはプローブ240の部品は、OCT撮像および反射撮像部品の追加の部分を含んでもよい。プローブ240は、たとえば信号接続および電力のために、有線接続によってプロセッサ230に接続し、光ファイバケーブル接続を介して光信号を提供する。
【0080】
撮像装置200は、OCT深度撮像または表面輪郭撮像モードのいずれかで作動してよく、いずれかのモードにおいて個別に作動し、あるいは両方のモードで同時に画像コンテンツを取得する。加えて、可視光源Visおよびカメラ212は、OCT撮像を支援するプレビューのみのために用いられ得る。
図16Aは、たとえば反射率撮像、OCT撮像の1つ、または両方の撮像形式などの動作モードの選択のために用いられ得るモードスイッチ226も示す。あるいはモードスイッチ226は、ハンドヘルドプローブ240に存在してよく、またはプロセッサ230のユーザインタフェースにおけるオペレータ命令入力によって切り替えられる「ソフト」スイッチであってよい。
【0081】
1つの典型的な実施形態において、OCT深度撮像は、表面輪郭撮像装置への後付け部品であってよい。
【0082】
図16Bは、表面輪郭撮像とOCT撮像とを組み合わせる撮像装置を示す概略図であり、カプラ38を通して可視光Visを提供する可視光源、および表面輪郭撮像のためのサーキュレータ44を示す。可視光は、プローブ240内のOCT撮像サブシステムにサンプル光を提供するために用いられるものと同じ光路を共有してよい。これにより、OCTおよび反射率画像の同時またはほぼ同時の捕捉が可能であり、OCTからの光および可視光Visは同じ経路に沿って伝達する。留意すべき点として、OCT走査は一般に、毎秒数個の完全フレームしか取得しないが、表面輪郭特徴化または歯または他の表面の色特徴化のために用いられる反射率撮像は、大幅に速い速度で画像を捕捉および処理することができる。
【0083】
図16Bは、マッハツェンダ干渉計構成および掃引光源OCT実装を有するOCT撮像システムを、単に例示として示す。たとえばマイケルソン干渉計などの別の種類の干渉計構成が用いられてもよい。たとえばスペクトル領域OCTまたは時間領域OCTなどの別の種類のOCT実装が用いられてもよい。
【0084】
プローブ240部品のために用いられ得る数々の配置が存在する。
図17Aは、ラスタスキャナ90として単一の2軸走査ミラー250を用いる構成を示す。単一の2軸走査ミラー250は、たとえば2軸MEMSミラーであってよい。光学モジュール260における光学部品は、走査ミラー250へコリメート光を提供する。走査ミラー250からの光は、コリメートビームを集束させる対物レンズL3を通るように向けられる。光学折り返しミラー262は、焦点領域をサンプルSへ向け、反射光を撮像レンズおよびセンサ(個別には不図示)を含むカメラ212へ向けるように光路を折り返す。OCT撮像および表面輪郭(反射率)撮像の両方のための光は、光学モジュール260から発される。これにより、輪郭表面撮像またはたとえば歯の色を特徴化するための撮像など他の反射率撮像にOCT撮像を登録する較正が簡単になる。走査ミラー250の位置は処理論理によって制御されるので、この位置は、発光がOCT撮像のために用いられるBNIR光であるか反射率撮像のために用いられるVis光であるかにかかわらず、一瞬ごとに知られている。走査ハードウェアの較正は、OCT撮像経路および反射率撮像経路の両方に役立つ。
【0085】
図17Aに模式的に示すように、任意選択的なフィルタ214は、OCTを表面輪郭撮像経路から更に区別し、OCT波長および他の不所望の光を拒絶するために、カメラ212とともに用いられ得る。フィルタ216は、Vis光がOCT検出器に到達することを防ぐために、光学モジュール260の一部として提供され得る。
【0086】
図17Bの概略図は、ラスタスキャナ90として2軸走査ミラー250を用いる構成を示す。光学モジュール260内の光学部品は、OCTシステムおよび可視光システムの両方のためのコリメート光を走査ミラー250へ提供する。走査ミラー250からの光は、コリメートビームを集束させる対物レンズL3を通るように向けられる。折り返しミラー262は、光をサンプルSへ、およびカメラ212における焦点領域から導くように、光路を折り返す。またレンズL3は、
図17Bの配置における撮像経路の一部を成し、カメラ212へ光を向ける。
【0087】
図17Cは、2つのミラー252、253、2軸ラスタスキャナ90を用いるプローブ240構成を示す概略図である。各ミラー252、253は単軸ミラーであり、たとえばガルボミラーまたは単軸MEMSミラーであってよい。光学モジュール260は、第1の軸の周囲を走査するミラー252へコリメート光を向ける。反射光は、第2の軸の周囲を走査するミラー253へ向けられ、対物レンズL3を通るように光を向ける。折り返しミラー262は、焦点領域をサンプルSへ向け、反射Vis光をカメラ212へ向けるように、光路を折り返す。またレンズL3は、
図17Cの配置における撮像経路の一部を成し、カメラ212へ光を向ける。
【0088】
図17Dは、外部レンズの必要がないように、光学モジュール260が集束光を生成する概略図である。2軸走査ミラー250は、この光をサンプルSへ向け、画像担持光をカメラ212へ向ける。
【0089】
図17Eおよび
図17Fは、Vis光を提供するために他の光学モジュール266が用いられる代替走査配置を示す概略図である。この走査配置において、可視光Visは、
図16Bの図に示す配置とは異なり、ハンドヘルドプローブへの別の経路を通る。ビームスプリッタ264は、光学モジュール266からのVis光および光学モジュール260からのBNIR光を結合し、2つの光がビームスプリッタ264からサンプルSへの同じ経路を辿るようにする。
図17Eにおいて、生成された走査線は、単軸ミラー252、253によってサンプルSへ向かって走査される。
図17Fは、表面輪郭撮像のために直線位置をシフトさせるために単一の2軸ミラー250を用いる代替実施形態を示す。
【0090】
表面輪郭特徴化のための他の選択肢として、表面セグメンテーションもまた、物体のOCT画像から現実の表面を表す点群を抽出するために用いられ得る。抽出された点群の幾何学的形状は、構造化光撮像法によって得られたものと整合する。
【0091】
上述したように、OCTおよび反射率画像コンテンツの両方が、同じラスタスキャナ座標を参照して取得され得る。両方のシステムから生成された点群もまた同じ座標を共有する。表面データがセグメンテーションによってOCTボリューム画像から抽出されると、OCTからの表面データの輪郭表面撮像出力への登録が単純化される。
【0092】
光源選択肢
可視光Visは、可視光範囲内の多数の波長であってよい。Vis光源は、たとえば投影された構造化光パターンの色分けのために用いられ得る。あるいはVis光源は、白色光画像プレビューのため、または歯の陰影測定または色またはテクスチャの特徴化のために用いられてもよい。
【0093】
Vis光は、従来のバルブ光源によって提供されてよく、あるいはたとえばレーザまたは1または複数の発光ダイオード(LED)などのソリッドステート発光デバイスから発され得る。個々の赤色、緑色、および青色LEDが、反射率撮像のための原色波長を提供するために用いられる。
【0094】
構造化光パターンの提供に加えて、Vis光源は、たとえば歯の陰影を検出するため、またはたとえばストラクチャフロムモーション撮像などの光パターンを利用しない方法によって表面輪郭データを取得するために、特定の波長の光または従来の反射率撮像に関して被写体にわたり走査される広帯域光を提供してもよい。
【0095】
近UV領域における紫色光は、歯の蛍光撮像のための励起光として用いられ得る。後方散乱蛍光は、OCT光路によって収集され得る。蛍光画像は、フーリエ領域OCTと同じ検出経路によって、異なる横スペクトル位置において検出され得る。
【0096】
図18は、光源のための典型的なスペクトル値を示す。概して、約380nm未満の近UV領域における紫色V波長は一般に蛍光撮像に好ましい。約380nmより上から740nm未満の範囲の青色、緑色、および赤色原色に関するB、G、Rと記された成分を有する可視光Visは多くの場合、構造化光パターン投影のために選択される。740nmより上の赤外光は多くの場合、OCT撮像のために選択される。
【0097】
本開示の実施形態は、OCTシステムおよび反射率撮像システムの両方によって共有される照明経路を含む、輪郭撮像のための能動三角測量システムを提供する。撮像経路内のカメラ212(
図17A~17F)は、照明経路に対して斜めの角度でサンプルを見る。構造化光パターンを生成するために用いられる可視光源は、OCTシステムのために用いられない様々な波長の光を発するので、2つの光学システムは、それらの間に知覚可能なクロストークまたは干渉を伴わず動作することができる。可視光は、ラスタスキャナ90の動きに対して可視光源のタイミングを適当に制御することによって、構造化光撮像のための所定の光パターンを符号化し得る。被写体表面からの歪み光パターンは、撮像経路内の光学システムによって撮像され、カメラによって捕捉される。光パターンの復号により、撮像された物体の表面輪郭が生成される。
【0098】
口蓋弓に対応する3Dメッシュの再構成は、多くの場合、わずかに重なり合う一連の口腔内3Dビューを取得すること、およびそれらを縫い合わせることによって行われる。構成中のメッシュのどの部分に新たに取得されたビューが重なるかを識別するプロセスは、「マッチング」と称される。口腔内3Dスキャナは、このプロセスを用いて、患者の口蓋弓全体の3Dメッシュを生成することができる。ただし、マッチングは表面化プロセスであるため、累積し得るわずかな局部的精度問題が生じ得る。たとえば、マッチングは表面化プロセスであるため、わずかな角度誤差がもたらされることがあり、これは、(たとえば切歯周辺の左後ろ臼歯から右後ろ臼歯までの)累積プロセスによって多くの場合、口蓋弓全体が再構成された後、大幅な誤差をもたらす。一般に、200ミクロンの左から右までの臼歯の誤差が観測され得る。
【0099】
特定の典型的な方法および/または装置の実施形態は、角度誤差が低減された患者の口蓋弓の口腔内3Dメッシュを提供することができる。表面撮像(たとえば表面輪郭撮像)および貫通能力を有するスキャナを用いることにより、本明細書における典型的な方法および/または装置の実施形態は、累積し得るわずかな局部的精度問題を低減するための(たとえば角度誤差を低減する)深度データを含むマッチングプロセスを用いて歯列弓の口腔内3Dメッシュを提供することができる。1つの典型的な実施形態において、OCT技術は、貫通能力のために用いられる。他の典型的な実施形態において、たとえば超音波または光音響などの技術が、深度貫通機能のために用いられ得る。
【0100】
いくつかの典型的な方法および/または装置の実施形態は、低減された角度誤差を有する患者の口蓋弓の口腔内3Dメッシュを提供することができる。典型的な実施形態において、IO走査画像において通常可視ではない硬組織は、3Dメッシュアーチ歪み(たとえば口蓋弓)の低減を保証するために3D CBCTデータへの強固な登録を提供し得る。
【0101】
1つの典型的な方法および/または装置の実施形態は、小スパンおよび大スパンの復元用途/作業に適用され得る2つの要因を含み得る。
【0102】
残存する歯がなく、歯茎組織が3D光学走査(たとえば3D光学走査)されなければならない場合、全歯欠損事例に関する最も複雑な事例である。歯茎組織は、数少ないランドマーク特徴しか有さないので、マッチングプロセスの完了(たとえば個々の3D輪郭画像の登録)は大きな困難であり得る。
【0103】
1つの典型的な方法および/または装置の実施形態において、まず、貫通走査により、歯茎組織下の骨構造を見ることができる。これは、画像が取得されると、軟組織および硬組織(たとえば非変形撮像コンテンツ)が入手されることを意味する。両要素(軟組織および硬組織)を組み合わせることは、最初に硬組織を関連付け、次に、この位置決め情報を用いて軟組織を同様に正確に位置決めすることを意味する。この典型的な実施形態は、データセット(たとえば3D輪郭画像)のより正確な登録を確実にする。
【0104】
大スパン復元、たとえばインプラントワークフローの場合、インプラントを受け入れるための骨構造の安定性を評価するために3D X線(CBCT)走査を行うことが好ましい。この状況において、CBCT走査は、走査プロセスに結び付けられた歪みを有さない基準モデルを提供し得る。他の典型的な方法および/または装置の実施形態において、CBCT X線走査(およびボリューム再構成)は、IO走査データ(たとえば深度情報)がマッチングされるデフォルト構造として用いられ得る。クロスアーチのずれが存在する場合、この例において、マッチングされたCBCT走査再構成およびIOスキャナ深度情報は、修正のために用いられてよく(たとえばIOデータセットは3D X線データセットに厳格または柔軟にマッチングされ)、IO走査の3D表面メッシュは、物体または歯列弓全体にわたり低減された、または最小の歪みを有し得る。
【0105】
図19は、口腔外撮像装置10の実施形態を示す。装置10は、支柱であってよい支持フレーム12を含む支持構造を備える。柱12は、2次元または3次元において調整可能であってよい。たとえば柱12は伸縮式であってよく、固定された下部12bの上に摺動可能に取り付けられた上部12aを含んでよい。
【0106】
また支持構造は、垂直柱12によって支持または保持され得る水平台14も含む。水平台14は、垂直柱12から伸長し、垂直柱12に対しほぼ垂直であってよい。水平台14は、垂直柱12に対し動くことができる。より具体的には、水平台14は、垂直上部12aに固定的に取り付けられるので、これとともに可動である。たとえば、垂直柱の背面に位置するたとえば電動式のアクチュエータ(不図示)は、水平台14を制御された方法で上下運動させるように命令され得る。水平台14は、ガントリ16を支持し得る。ガントリ16は、支持構造、より具体的には水平台14に対し可動である。ガントリ16は、より具体的には、水平台14に対し回転可能であってよい。ガントリ16は、撮像プロセスの動作中に静止状態であってよく、あるいは選択された撮像プロセスに従っていくつかの所定の軌道のうちの1つを辿り得る、回転の垂直軸の周囲を回転可能であってよい。ガントリ16に所与の運動をさせるための既知の駆動機構(不図示)は、水平台14内に一体化される。例として、そのような駆動機構は、X、Y平面における第1の運動を加えるためのモータ、たとえば2つのステップバイステップモータ、および垂直軸Zの周囲の回転運動を加えるためのモータ、たとえばブラシレスモータを含む。
【0107】
ガントリ16は、X線源18、およびX線源に対応して配置される少なくとも1つのX線センサ20の両方を支持する。X線源18および少なくとも1つのX線センサ20は、互いに向き合うように配置され得る。ガントリ16は、X線源18が取り付けられこれを支持する第1のアーム16aおよび少なくとも1つのX線センサ20が取り付けられこれを支持する第2の対向アーム16bという、2つの対向する下向きに伸長するアームを含んでよい。
【0108】
作動時、X線源18は、少なくとも1つのX線センサ20に衝突する前に、撮像エリア、たとえば患者の頭部を載置するための作業エリアの全部または一部を照射するX線ビームを放出する。
【0109】
本開示の実施形態において、少なくとも1つのX線センサ20は、パノラマセンサ、たとえばスリット形状センサ、容積式またはコンピュータセンサ(たとえば長方形、正方形)、または頭部計測センサ、またはいくつかのセンサを含んでよい。
【0110】
装置内に存在するセンサまたは複数のセンサに依存して、パノラマ、容積式またはコンピュータ断層撮影、および頭部計測モードの中から、1または複数の動作モードまたは撮像プロセス(1、2、または3)が用いられ得る。
【0111】
また支持構造は、支持フレーム、より具体的には垂直柱12に連結される患者位置決めアーム22も含んでよい。患者位置決めアーム22は、支持フレームに対し可動である。より具体的には、アーム22は、コマンドを受けて上下するように垂直柱12に沿って摺動可能であり得る。患者位置決めアーム22は、固定下部垂直柱12bに対し摺動可能に取り付けられたアーム支持部22aから伸長する。患者位置決めアーム22は、水平台14の伸長方向にほぼ一致する方向に、装置に沿って伸長する。患者位置決めアーム22は、水平台14と略平行関係に、装置に対し側方に配置される。たとえば、垂直柱の背面に位置するたとえば電動式のアクチュエータ(不図示)は、アーム支持部22aを制御された方法で上下運動させるように命令され得る。
【0112】
患者位置決めアーム22は、患者を所与の位置で装置に載置するために機能する。1つの実施形態において、患者位置決めアーム22は、装置10の動作モードの選択に従って撮像エリア内に患者を載置し得る。
【0113】
患者位置決めアーム22は、一般にアームの自由端22bまたはその付近に位置する1または複数の患者位置決めおよび/または保持システムを含んでよい。
【0114】
1または複数の患者位置決めおよび/または保持システムは、様々な配向に従って患者の頭部の解剖学的構造を載置し、検査中、起こり得るあらゆる動きを低減するために患者の頭部を固定することを可能にする。
【0115】
実行される検査の各種類に関して1または複数のシステムが存在する。アーム22は、これらのシステムを受け入れるように構成される。
【0116】
図19に示すように、24と記されたこれらのシステムの1つは、アーム22から上向きに伸長する2つの一時的保持部材を含み、これらはアーム22に取外し可能に取り付けられる。1つの一時的保持部材のみが描写され、他方はアーム16bによって隠されている。
【0117】
他の図示されたシステムは、アーム22から上方向に伸長する顎台26であり、これはアーム26に取外し可能に取り付けられる。
【0118】
鼻支持部、噛付き型支持部など、考えられる他の取付け可能、可動、または一体型システムが想定され得る。
【0119】
ハンドルアセンブリ28は、アームの下かつアームと平行関係に、アームの自由端22bに位置し得る。このハンドルアセンブリ28は、撮像プロセスを受ける際に静止状態を保つために患者が把持し得る2つの垂直な個別ハンドル部28a、28bを含む。
【0120】
このハンドルアセンブリ28全体は、水平基底部28cおよびアーム22に固定された2つの垂直の上向きに伸長する分岐部28a、28bを含み得るU字形を有する。各分岐部は、垂直ハンドル部の役割を果たす。
【0121】
また患者位置決めアーム22は、装置のユーザが装置の特定の機能を目視および駆動することを可能にするモニタまたはディスプレイアセンブリ30も支持する。
【0122】
装置10は更に、支持フレーム12に連結される座席構成40も備える。座席構成40は、座席構成40が、ガントリ16および水平台14との規定の空間関係を有する作業エリア内に位置する作業位置(
図19、たとえば下)と、座席構成40が、ガントリ16の下の作業エリアから十分離れるように作業エリアから離れて位置する少なくとも1つのレスト位置との、少なくとも2つの別個の位置の間で可動である。
【0123】
本発明の実施形態と一貫して、コンピュータプログラムは、電子メモリからアクセスされる画像データにおいて実行する、格納された命令を用いることができる。画像処理技術の当業者によって理解され得るように、本開示の実施形態における撮像システムを動作させるためのコンピュータプログラムは、たとえばパーソナルコンピュータまたはワークステーションなど、本明細書で説明されたようなCPU70として動作する適当な汎用コンピュータシステムによって用いられ得る。ただし、たとえばネットワークドプロセッサ構成を含む、多くの他の種類のコンピュータシステムが、本発明のコンピュータプログラムを実行するために用いられ得る。本発明の方法を実行するためのコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に格納され得る。この媒体はたとえば、たとえばハードドライブまたは取出し可能デバイスといった磁気ディスクまたは磁気テープなどの磁気記憶媒体、たとえば光学ディスク、光学テープ、または機械可読光符号化などの光記憶媒体、たとえばランダムアクセスメモリ(RAM)または読取専用メモリ(ROM)などのソリッドステート電子記憶デバイス、またはコンピュータプログラムを格納するために用いられる他の任意の物理デバイスまたは媒体を備えてよい。本開示の方法を実行するためのコンピュータプログラムは、インターネットまたは他のネットワークまたは通信媒体によって画像プロセッサに接続されたコンピュータ可読記憶媒体にも格納され得る。当業者が更に容易に認識するように、そのようなコンピュータプログラム製品の均等物は、ハードウェアにおいて構成されてもよい。
【0124】
留意すべき点として、本開示の文脈における「コンピュータアクセス可能メモリ」に等しい「メモリ」という用語は、たとえばデータベースを含む、画像データを格納し画像データに作用するために用いられ、コンピュータシステムがアクセス可能である任意の種類の一時的またはより永久的なデータ記憶ワークスペースに言及し得る。メモリは、たとえば磁気または光学ストレージなどの長期間記憶媒体を用いて不揮発性であってよい。あるいはメモリは、たとえばマイクロプロセッサまたは他の制御論理プロセッサデバイスによって一時的バッファまたはワークスペースとして用いられるランダムアクセスメモリ(RAM)など、電子回路を用いて、より揮発性の性質であってよい。たとえば表示データは一般に、ディスプレイデバイスに直接関連付けられ、表示されるデータを提供するために必要に応じて定期的にリフレッシュされる一時的記憶バッファに格納される。この一時的記憶バッファもまた、本開示においてこの用語が用いられる場合、メモリの一種とみなされる。またメモリは、計算および他の処理の中間結果および最終結果を実行および格納するためのデータワークスペースとしても用いられる。コンピュータアクセス可能メモリは、揮発性、不揮発性、または揮発性型と不揮発性型とのハイブリッド結合であってよい。
【0125】
理解されるように、本開示のコンピュータプログラム製品は、周知の様々な画像操作アルゴリズムおよびプロセスを利用してよい。更に理解されるように、本開示のコンピュータプログラム製品の実施形態は、実装に役立つ、本明細書で特に図示または説明されていないアルゴリズムおよびプロセスを具体化し得る。そのようなアルゴリズムおよびプロセスは、画像処理技術の通常技量の範囲内である従来の有用性を含んでよい。たとえば、3Dボリュームセットを登録するためのマッチングアルゴリズムは、歯科用3D撮像または復元技術の当業者に既知である。そのようなアルゴリズムおよびシステム、および画像を生成または処理し、または本開示のコンピュータプログラム製品と協働するためのハードウェア/ソフトウェアの追加の態様は、本明細書において特に図示または説明されず、当該技術において知られているそのようなアルゴリズム、システム、ハードウェア、部品、および要素から選択され得る。
【0126】
本出願に係る特定の典型的な方法および/または装置の実施形態は、歯列弓3D表面メッシュの生成における誤差の低減を提供し得る。本出願に係る典型的な実施形態は、本明細書において説明された様々な特徴を(個々にまたは組み合わせて)含んでよい。
【0127】
本発明は、1または複数の実装に関して説明されたが、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明された例に対する変更および/または修正がなされ得る。加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの実装/実施形態の1つのみに関して開示されたが、そのような特徴は、任意の所与または特定の機能のために所望かつ有利となり得るように、他の実装/実施形態の1または複数の他の特徴と併用され得る。「~の少なくとも1つ」という用語は、記載された事項の1または複数が選択され得ることを意味するために用いられる。「約」という用語は、例示された実施形態に対するプロセスまたは構造の不一致が変更によってもたらされない限り、記載された値が多少変更され得ることを示す。最後に、「典型的な」は、その説明が、理想的であることを暗示するものではなく例として用いられることを示す。本発明の他の実施形態は、本明細書の熟考および本明細書に開示された本発明の実施によって当業者に明らかになる。本明細書および例は典型的なものにすぎないとみなされ、本発明の正しい範囲および趣旨は、少なくとも以下の特許請求の範囲によって示されることが意図される。