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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/027 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
A01K89/027 501
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020015132
(22)【出願日】2020-01-31
(65)【公開番号】P2021122176
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 和之
(72)【発明者】
【氏名】對馬 大輔
(72)【発明者】
【氏名】谷本 大飛
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-133783(JP,U)
【文献】実開平03-034775(JP,U)
【文献】実開昭62-160852(JP,U)
【文献】特開平01-285140(JP,A)
【文献】特開昭63-036728(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0066815(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 - 89/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に設けられた支軸と、
前記支軸に回転自在に支持され、釣糸の繰り出しで回転する回転体と、
前記回転体の回転を制動する制動部材を有し、前記制動部材を調節体で押圧することで前記回転体に制動力を付与するドラグ装置と、を備えた魚釣用リールであって、
前記調節体による前記制動部材の押圧を所定の範囲に規制する規制部を設け
前記調節体は前記制動部材を押圧する押圧部を備えており、
前記規制部は、前記支軸の外面側に設けられており、
前記規制部に対して前記押圧部が当接することで、前記制動部材に対する前記調節体の押圧が所定の範囲に規制されることを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記規制部は前記支軸と別部材であり、
前記支軸に回り止め嵌合していることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記回転体は、前記支軸に前記制動部材を介して摩擦結合されるスプールであり、
前記調節体は、前記支軸の先端部に螺合により進退可能に取り付けられて、前記制動部材を押圧することを特徴とする請求項1または請求項に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用リールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、魚釣用リールとして知られる魚釣用スピニングリールは、リール本体にスプールを支持し、リール本体の一側に回転可能に支持したハンドルを通じてリール本体内の巻き取り駆動機構を駆動することにより、スプールに釣糸を巻回保持する構成とされている。
【0003】
駆動機構の一部をなすスプール軸には、スプールと、ドラグ装置を構成する制動部材とが嵌合されており、スプール軸の先端に螺合されたドラグ制動調節用の調節体で制動部材を押圧調整することによって、ドラグ制動力が調整されるように構成されている。ドラグ装置は、ドラグ制動力を付与することで、釣糸の繰り出しで回転するスプールの回転を制動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平7-25028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、魚釣用リールは、実釣時の釣法や対象魚を考慮して、ある程度の汎用性を有して制作されている。ドラグ装置においても、実釣時における咄嗟の対応を含めて、人力の最大締め付け力に耐え得る強度に設計されている。このため、構成部品の肉厚化や強度を有する材料の選定等により、ドラグ装置の大型化や重量化を来すおそれがあった。
【0006】
特に、ドラグ装置の大型化や重量化は、近年人気を得ているライトフィッシング等の細い釣糸を使用した仕掛けで繊細な操作を行う釣りに対して、使いづらく、魚釣操作性が悪かった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、釣糸巻き取りや釣糸繰り出しに伴う釣糸の張力に応じた最適な強度設計が可能であり、軽量化を図ることができる魚釣用リールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に設けられた支軸と、前記支軸に回転自在に支持され、釣糸の繰り出しで回転する回転体と、前記回転体の回転を制動する制動部材を有し、前記制動部材を調節体で押圧することで前記回転体に制動力を付与するドラグ装置と、を備えている。魚釣用リールには、前記調節体による前記制動部材の押圧を所定の範囲に規制する規制部が設けられている。前記調節体は前記制動部材を押圧する押圧部を備えており、前記規制部は、前記支軸の外面側に設けられており、前記規制部に対して前記押圧部が当接することで、前記制動部材に対する前記調節体の押圧が所定の範囲に規制される。
【0009】
この魚釣用リールでは、調節体による制動部材の押圧が規制部により所定の範囲に規制され、制動部材が所定の範囲を超えて押圧されることが防止される。これにより、調節体や制動部材に対して過大な負荷が作用することを回避できる。したがって、調節体の必要以上の締め込みに起因するドラグ装置の破損を防ぐことができる。また、実釣時の釣糸巻き取り時や釣糸繰り出し時に釣糸にかかる張力を規定できるので、その張力に応じた最適強度でリールを設計することができる。これにより、人力の最大締め付け力に耐え得る強度にリールを設計する必要がなくなり、軽量化が可能になる。したがって、魚釣操作性が向上し、ライトフィッシング等の細い釣糸を使用した仕掛けで繊細な操作を行う釣りも快適に行うことができる。
【0011】
また、調節体の押圧部が支軸の外面側の規制部に当接するという簡単な構成で釣糸にかかる張力を規定できる。したがって、生産性に優れ、コストの低減を図ることができる。
【0012】
また、前記規制部は前記支軸と別部材で、前記支軸に回り止め嵌合していることが好ましい。このように構成することで、支軸に簡単に規制部を設けることができ、生産性に優れ、コストの低減を図ることができる。
【0013】
また、前記回転体は、前記支軸に前記制動部材を介して摩擦結合されるスプールである場合には、前記調節体が前記支軸の先端部に螺合により進退可能に取り付けられて前記制動部材を押圧することが好ましい。
【0014】
このように構成することで、スプールの制動部材に対する調節体の螺合による押圧が所定の範囲に規制されるので、実釣時の釣糸巻き取り時や釣糸繰り出し時に釣糸にかかる張力を規定でき、その張力に応じた最適な強度設計によりリールの軽量化が可能になる。これにより、魚釣操作性が向上し、ライトフィッシング等の細い釣糸を使用した仕掛けで繊細な操作を行う釣りも快適に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、釣糸巻き取りや釣糸繰り出しに伴う釣糸の張力に応じた最適な強度設計が可能であり、軽量化を図ることができる魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部を断面にして示す側面図である。
図2】実施形態に係る魚釣用スピニングリールのスプールの内部の構造を示す拡大断面図である。
図3】実施形態に係る魚釣用スピニングリールのスプール軸と規制部とを示す拡大断面図である。
図4】実施形態に係る魚釣用スピニングリールの作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を適用した魚釣用スピニングリールについて、適宜図面を参照して説明する。実施形態の説明において、「上下」、「前後」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。
【0018】
図1に示すように、魚釣用スピニングリールは、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール(回転体)3と、ドラグ装置(ドラグ機構)20とを有して構成される。
【0019】
リール本体1は、軽量化が図れる材料、例えば、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金等の金属や、ABS樹脂、PA樹脂等の高強度樹脂や、CFRP、GFRP等の繊維強化樹脂等で剛性構造に形成されている。
【0020】
リール本体1には、図示しない軸受を介してハンドル軸4が回転可能に支持されており、その図示しない突出端部には、巻き取り操作されるハンドル5が取り付けられている。ハンドル軸4には、図示しない軸筒が、回り止めされて固定されている。この軸筒には、ロータ2を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギャ6が一体的に形成されている。このドライブギャ6は、ハンドル軸4と直交する方向に延出するとともに内部に軸方向に延出する空洞部を有する駆動軸筒8のピニオンギャ8aに噛合している。
【0021】
駆動軸筒8は、軸受を介して回転可能に支持されており、その空洞部には、ハンドル軸4と直交する方向に延出し、先端側にスプール3が取り付けられるスプール軸(支軸)9が、軸方向に移動可能に挿通され、支持されている。
【0022】
駆動軸筒8はスプール3側に向けて延出しており、その前端部において、ナット2aを介してロータ2が取り付けられている。また、駆動軸筒8には、その中間部分に転がり式の図示しない公知の一方向クラッチが取り付けられており、リール本体1の外部に取り付けられた切換部材1cを回動操作することで、一方向クラッチを作動状態と非作動状態とに切り換えるように構成されている。この場合、切換部材1cを作動状態に切り換えることで、ハンドル5(ロータ2)の逆転方向の回転(釣糸放出方向の回転)が防止されるようになっている。
【0023】
ロータ2は、スプール3のスカート部3a内に位置する円筒部2bと、一対のアーム部2c,2dを具備している。各アーム部2c,2dの前端部には、ベール支持部材2e,2fが釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されており、これらのベール支持部材2e,2f間には、放出状態にある釣糸をピックアップするベール2gが配設されている。ベール2gは、一方の基端部がベール支持部材2eに一体的に設けられた釣糸案内部2hに取り付けられており、他方の基端部がベール支持部材2fに取り付けられている。
【0024】
スプール軸9の後端部には、スプール軸9を前後動させるための公知のスプール往復動装置9aが設けられている。
【0025】
スプール軸9の前端部には、図2に示すように、ドラグ装置20の後記する調節体21を装着させるための雄ネジ9fが形成されている。また、スプール軸9の前部9eには、外周面をDカットすることで形成された一対の直線部9b(平面部、図2では片側のみ図示)が形成されている。前部9eの外周面の断面形状は、図3に示すように、軸方向からみて、左右方向に円弧状に延在する上下2つの円弧部9c,9cと、円弧部9c,9c間で上下方向に延在する2つの直線部9b,9bと、を備え、断面形状が略小判形状(非円形状)に形成されている。
【0026】
スプール3は、図2に示すように、スカート部3aと、前側フランジ3bと、これらの間に形成され釣糸が巻回される釣糸巻回胴部3cと、を備えている。
スプール3は、スプール軸9に取り付けられた支持部材40に、スプール3の後端部が当接してスプール軸9に位置決めされている。
【0027】
支持部材40は、スカート部3aの内側に配置されている。支持部材40は、平板円形状の基部40aと、基部40aに設けられクリック爪バネ43を支持する環状壁部44とを備えている。
支持部材40は、スプール軸9の前部9eの外周面の断面形状に対応する内周面41を備えており、スプール軸9の前部9eと、断面円形状の後部9e1との境界部分に設けられた段部9kに対して、軸方向前側から当て付けられて係止されている。そして、支持部材40の基部40aの前面に、スプール3の後部の後記する径方向内側部3d1の後端部3f及び後記する保持部材30の後端部32が当接している。
【0028】
釣糸巻回胴部3cの内側には、釣糸巻回胴部3cの内側空間を前後に仕切る周壁3c1が形成されている。周壁3c1の径方向内側部3d1は、後方へ向けて突出している。径方向内側部3d1の中央部には、円形状の孔3dが形成され、その孔3d内に、規制部として機能する保持部材30を介してスプール軸9が挿入されている。
【0029】
保持部材30は、スプール軸9の前部9eに外嵌される筒状の部材であり、内面の断面形状がスプール軸9の前部9eの外形状に対応する略小判形状(非円形状)を呈している。つまり、保持部材30の内周面の断面形状は、図3に示すように、軸方向からみて、左右方向に円弧凹状に延在する上下2つの円弧凹部33c,33cと、円弧凹部33c,33c間で上下方向に延在する2つの直線部33b,33bと、を備え、断面形状が略小判形状(非円形状)に形成されている。これにより、保持部材30はスプール軸9の前部9eに回り止め装着される。また、保持部材30は、外面の断面形状も、内面の断面形状に対応する略小判形状(非円形状)を呈しており、円弧凸部34c,34cと、円弧凸部34c,34c間で上下方向に延在する2つの直線部34b,34bと、を備えている。これにより、スプール3は、保持部材30の外周面の円弧凸部34c,34c(2つの直線部34b,34b以外の部分)に接して回動自在に支持されている。
なお、保持部材30の後端部32は、周壁3c1の径方向内側部3d1の後端面3fと面一に配置されている。
【0030】
釣糸巻回胴部3cの周壁3c1の前側には、前方に向って開口する環状の前凹部3Aが形成されている。前凹部3Aには、ドラグ装置20の後記する制動部材22が収容されている。
前凹部3Aにおいて、釣糸巻回胴部3cの内面には、径方向外側に窪み周方向に延びる周溝部3gが形成されている。この周溝部3g内には、制動部材22の脱落を防止するための抜け止め部材3hが嵌合している。
【0031】
ドラグ装置20は、スプール3の前後溝部3j及び保持部材30の外面にそれぞれ係合してスプール3に制動力を与える制動部材22と、制動部材22の制動力を調節する調節体21とを備えている。
【0032】
制動部材22は、2つの前後溝部3jに係合する突部が外周縁に形成された回転側制動板23と、回転側制動板23を前後方向から挟む一対の固定側制動板24,24と、各制動板間や周壁3c1の前面側に介在されるライニング材25と、を備える。
回転側制動板23は、スプール軸9(保持部材30)に回転自在に支持され、スプール3と共回りできるようになっている。
【0033】
また、固定側制動板24は、保持部材30(スプール軸9)に回転不能に支持されている。よって、一対の固定側制動板24,24は、スプール3と共回りする回転側制動板23に対し、ライニング材25を介して摩擦抵抗力を作用させる。
そして、釣糸に作用する力が回転側制動板23に作用する摩擦抵抗力以上の場合、回転側制動板23及びスプール3が回転し、釣糸が繰り出される。
【0034】
また、回転側制動板23と一対の固定側制動板24,24とライニング材25は、保持部材30に対し軸方向に移動自在に支持されている。このため、後記するように調節体21の押圧部26から受ける押圧力(図2の矢印A1参照)が大きくなると、回転側制動板23に作用する摩擦抵抗力が大きくなり、スプール3が回動し難くなる。
【0035】
調節体21は、制動部材22を押圧するための押圧部26と、スプール軸9に回転自在に支持された操作部材27と、押圧部26に押圧力を付与するコイルバネ(押圧力付与部材)28と、を備える。
【0036】
押圧部26は、前方に開口する有底円筒状の部材であり、内部にコイルバネ28を収容する。
押圧部26の底部26aは、制動部材22の前側に位置し、底部26aの後面が一対の固定側制動板24のうち前側の固定側制動板24に当接している。
底部26aには、前後方向に貫通する貫通孔26bが形成され、その貫通孔26b内にスプール軸9の前部9eが挿入されている。貫通孔26bの内周面の形状は、スプール軸9の前部9eの外形状に倣って、断面形状が略小判形状(非円形状)に形成されている。
【0037】
押圧部26の内周面及び外周面は、略円形状に形成されている。押圧部26の外周面には、シール部材26cが取り付けられている。シール部材26cの先端部は、前凹部3Aの先端内周縁部に当接している。これにより、海水や砂塵等が制動部材22に付着しないようになっている。
押圧部26は、操作部材27の後部に係止部材27aを介して分離不能に連結されている。押圧部26は、操作部材27に対して相対回転自在であり、かつ、軸方向に相対移動可能である。
【0038】
操作部材27は、スプール軸9の雄ネジ9fに螺合するナット部材27eと、このナット部材27eに対し回転不能かつ軸方向に移動自在に嵌合するドラグノブ27dと、を備える。
ドラグノブ27dの前部には、釣人により把持される指掛け部27d1が形成されている。釣人が指掛け部27d1を把持してドラグノブ27dを回転操作すると、ドラグノブ27dとともにナット部材27eが回転し、ナット部材27eが前方または後方に移動する。
ドラグノブ27dの内側には、ドラグノブ27dを回転操作した際にクリック音を発生するクリック係合子27gが収容されている。
【0039】
コイルバネ28は、押圧部26の底部26aとナット部材27eとの間に配置されている。また、コイルバネ28は、軸方向に縮められた状態で組み付けられている。よって、押圧部26には、コイルバネ28により後方へ移動するような付勢力が常時作用している。
なお、ドラグノブ27dの回転操作が行われ、ナット部材27eが後方へ移動すると、コイルバネ28の付勢力(押圧部26に付与される押圧力)が大きくなる。
一方、ドラグノブ27dの回転操作が行われ、ナット部材27eが前方へ移動すると、コイルバネ28の付勢力(押圧部26に付与される押圧力)が小さくなる。
【0040】
本実施形態では、ドラグノブ27dの回転操作により、コイルバネ28の付勢力が押圧部26を介して制動部材22(固定側制動板24)に作用している状態、つまり、制動部材22を押圧してドラグ力(制動力)が発生している状態で、図2に示すように、押圧部26の底部26aが保持部材30の前端部33との間に隙間Sを形成している。したがって、隙間Sの大きさ分、ドラグノブ27dの回転操作により、押圧部26が後方へ移動して制動部材22に押圧力を付与することが可能である。隙間Sの大きさは、調節体21により調節可能な制動力の範囲(所定の範囲)に相当する。
【0041】
ドラグノブ27dの回転操作により、図4に示すように、押圧部26が後方へ移動して隙間S(図2参照)が閉じられると、押圧部26の底部26aが保持部材30の前端部33に当接して押圧部26の後方への移動が規制される。これにより、それ以上にドラグノブ27dを回転操作しても、制動部材22に対して押圧力が付与されることが防止され、所定の範囲を越えてドラグ力が発生することが規制される。
このように、押圧部26の底部26aと保持部材30の前端部33との相対的な位置関係(隙間Sの大きさ)を調整することにより、所定の範囲のドラグ力が発生するように構成することができる。
【0042】
以上説明した本実施形態の魚釣用リールによれば、規制部として機能する保持部材30により、調節体21による制動部材22の押圧が所定の範囲に規制され、制動部材22が所定の範囲を超えて押圧されることが防止される。これにより、調節体21や制動部材22に対して過大な負荷(外力、押圧力)が作用することを回避できる。したがって、調節体21の必要以上の締め込みに起因するドラグ装置20の破損を防ぐことができる。また、実釣時の釣糸巻き取り時や釣糸繰り出し時に釣糸にかかる張力を規定できるので、その張力に応じた最適な強度設計によりリールを構成できる。これにより、人力の最大締め付け力に耐え得る強度にリールを設計する必要がなくなり、軽量化が可能になる。したがって、魚釣操作性が向上し、ライトフィッシング等の細い釣糸を使用した仕掛けで繊細な操作を行う釣りも快適に行うことができる。
【0043】
また、調節体21の押圧部26がスプール軸9の外面に位置する保持部材30の前端部33に当接するという簡単な構成で釣糸にかかる張力を規定できる。したがって、生産性に優れ、コストの低減を図ることができる。
【0044】
また、保持部材30は、スプール軸9と別部材であり、スプール軸9に回り止め嵌合しているので、スプール軸9に簡単に規制部(保持部材30)を設けることができ、生産性に優れ、コストの低減を図ることができる。
【0045】
また、スプール3の制動部材22に対する調節体21の螺合による押圧が所定の範囲に規制されるので、実釣時の釣糸巻き取り時や釣糸繰り出し時に釣糸にかかる張力を規定でき、その張力に応じた最適な強度設計によりリールの軽量化が可能になる。これにより、魚釣操作性が向上し、ライトフィッシング等の細い釣糸を使用した仕掛けで繊細な操作を行う釣りも快適に行うことができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
例えば、前記実施形態では、本発明を魚釣用スピニングリールに適用したものを示したが、これに限られることはなく、両軸受型の魚釣用リールに対して適用することができる。
この場合には、制動部材が備わるハンドル軸等に規制部としての保持部材を装着する。そして、調節体となるスタードラグの操作で制動部材に向けて押圧部が移動するように構成する。例えば、釣糸の繰り出しで回転する、ハンドル軸に摩擦結合されたドライブギャを、押圧部で押圧するように構成して、その押圧部が保持部材に当接するように構成する。これにより、スタードラグの回転操作による制動部材の軸方向の押圧力が所定の範囲に規制される。
【0047】
また、規制部として円筒状の保持部材30を示したが、これに限られることはなく、押圧部26の移動を規制して制動部材22に対する押圧が所定の範囲に規制されるものであれば、種々の形状、形態のものを採用することができる。例えば、釣糸の繰り出しで回転する回転体(スプール、ドライブギャ等)の摩擦結合力を調節する制動部材へ、押圧部が移動するように構成し、この制動部材への押圧部の移動を規制して制動部材に対する押圧が所定の範囲に規制されるように構成してもよい。
【0048】
また、スプール軸9から離れた径方向外側位置に、規制部を設けて、押圧部26に当接するように構成してもよい。
【0049】
また、スプール軸9の外周面に突部等を一体または別体で設けて、これを規制部として利用してもよい。このように構成することで、構成がさらに簡単になり、生産性に優れ、コストの低減を図ることができる魚釣用リールが得られる。
【符号の説明】
【0050】
1 リール本体
2 ロータ
3 スプール(回転体)
5 ハンドル
9 スプール軸(支軸)
20 ドラグ装置
21 調節体
22 制動部材
26 押圧部
30 保持部材(規制部)
図1
図2
図3
図4