(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】仮設構造物用の補強支柱および組立ユニット
(51)【国際特許分類】
E04G 5/16 20060101AFI20230316BHJP
E04G 7/22 20060101ALI20230316BHJP
E04G 7/32 20060101ALI20230316BHJP
E04G 7/34 20060101ALI20230316BHJP
E04G 25/00 20060101ALI20230316BHJP
F16B 7/04 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
E04G5/16 A
E04G5/16 B
E04G7/22 Z
E04G7/32 A
E04G7/34 301A
E04G25/00 C
E04G25/00 Z
F16B7/04 301U
(21)【出願番号】P 2020038674
(22)【出願日】2020-03-06
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】592192907
【氏名又は名称】日建リース工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】関山 正勝
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 壮平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忍
(72)【発明者】
【氏名】石井 諒太
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 樹
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-229620(JP,A)
【文献】特開平11-229621(JP,A)
【文献】実開平06-030340(JP,U)
【文献】特開平06-288088(JP,A)
【文献】特開平07-082882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 25/00
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つなぎ材とともに足場や支保工などの仮設構造物を構成する、円筒形状を呈する既存支柱から置き換え可能な補強支柱であって、
中空形状を呈する、本体部と、
前記本体部の外周から水平方向に張り出すように設ける、フランジと、を少なくとも具備し、
前記フランジには、前記
本体部の外周面側に開口し前記つなぎ材を連結可能な連結孔が少なくとも一箇所形成されており、
前記本体部の外周面のうち、前記フランジの連結孔側を向いた外周面に、その余の外周面よりも内側に凹んでいる窪み部を形成してあり、
前記本体部の軸中心から前記窪み部の外面までの水平距離を、前記既存支柱の外面までの半径と略等長としてあることを特徴とする、
仮設構造物用の補強支柱。
【請求項2】
前記本体部の断面形状が、
前記本体部の軸中心から第1の半径で湾曲する湾曲面を含む接触辺と、前記接触辺の端部に接続しつつ前記本体部の軸中心から第2の半径で湾曲する隅部とを少なくとも有し、
前記第2の半径を、前記第1の半径よりも長くしてあり、
前記接触辺が、前記窪み部を構成していることを特徴とする、
請求項1に記載の仮設構造物用の補強支柱。
【請求項3】
前記本体部の断面形状が、
平坦面を含む接触辺と、前記接触辺の端部に接続しつつ前記本体部の軸中心から第2の半径で湾曲する隅部とを少なくとも有し、
前記第2の半径を、前記本体部の軸中心から前記接触辺までの最短離隔距離よりも長くしてあり、
前記接触辺が、前記窪み部を構成することを特徴とする、
請求項1に記載の仮設構造物用の補強支柱。
【請求項4】
前記窪み部が、前記本体部の長手方向に連続形成されてあることを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の仮設構造物用の補強支柱。
【請求項5】
前記窪み部が、前記本体部の長手方向に間欠形成されてあることを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の仮設構造物用の補強支柱。
【請求項6】
足場や支保工などの仮設構造物を構築するための組立ユニットであって、
前記既存支柱と、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の補強支柱と、つなぎ材とを少なくとも具備する、
仮設構造物構築用の組立ユニット。
【請求項7】
前記つなぎ材の先端に、凹部と、前記凹部を挟むように位置する二つの凸部とを有しており、
前記補強支柱の接触辺は、前記凹部、および前記二つの凸部にそれぞれ接触することを特徴とする、
請求項6に記載の仮設構造物構築用の組立ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業足場や支保工などの仮設構造物の構築に用いる補強支柱および該補強支柱を含む組立ユニットに関し、より詳しくは、従来の円筒型の支柱よりも高強度な補強支柱および該補強支柱を含む組立ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
作業足場や支保工などの仮設構造物は、規格化された支柱、つなぎ材および斜材などの構成部材(以下、単に「組立ユニット」ともいう。)を適宜組み立てて構築する。
これらの組立ユニットは、レンタル会社が多数の在庫を保有しており、顧客からの注文を受けて、レンタル会社から適宜貸し出しする態様で使用される。
【0003】
ところで、近年、構造物の高層化や強風対策の観点などから、より高強度な仮設構造物の構築ニーズが高まっている。
例えば、各仮設構造物の強度を向上する方法として、以下の方法がある。
(1)構成部材の菅径を大きくすること。
(2)構成部材の管壁の厚みを増やすこと。
【0004】
管径の異なる足場用支柱の一例を非特許文献として示す。
非特許文献1には管径が42.7mmの足場用支柱が開示されており、非特許文献2には、管径が48.6mmの足場用支柱が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】https://www.netisplus.net/NETISPLUSDB/NETISPLUSDB/detail?TECHID=125474&VIEWID=040001 「NDシステム」
【文献】http://www.maruichi-yg.com/seihin/kasetsu/bike.htm 「ビケ足場 支柱」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の方法では、以下に記載する問題のうち、何れか1つの問題を有する。
(1)支柱間の軸間距離を不変とする前提で、支柱の管径を大きくするなどの変更を行うと、支柱間に架設するつなぎ材や斜材の長さなどを再設計しなければならず、既存の支柱と組み合わせて使用していたフランジやつなぎ材を流用できない。したがって既存の組立ユニットの多くが不良在庫となる。
(2)既存支柱に対し周壁の厚みを外側方向に増やす方法では、前記(1)と同様の問題が発生する。
(3)既存支柱に対し、管壁の厚みを内側に増やす方法では、この支柱に差し込む、他方の支柱のホゾを小さくしなければならなくなり、結局部材の再設計が必要となり、他方の支柱に既存支柱を用いることができない。
【0007】
よって、本願発明は、既存支柱よりも強度が高く、既存支柱やつなぎ材などの構成部材をそのまま流用して仮設構造物を構築可能な補強支柱を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、つなぎ材とともに足場や支保工などの仮設構造物を構成する、円筒形状を呈する既存支柱から置き換え可能な補強支柱であって、中空形状を呈する、本体部と、前記本体部の外周から水平方向に張り出すように設ける、フランジと、を少なくとも具備し、前記フランジには、前記本体部の外周面側に開口し前記つなぎ材を連結可能な連結孔が少なくとも一箇所形成されており、前記本体部の外周面のうち、前記フランジの連結孔側を向いた外周面に、その余の外周面よりも内側に凹んでいる窪み部を形成してあり、前記本体部の軸中心から前記窪み部の外面までの水平距離を、前記既存支柱の外面までの半径と略等長としてあることを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記本体部の断面形状が、前記本体部の軸中心から第1の半径で湾曲する湾曲面を含む接触辺と、前記接触辺の端部に接続しつつ前記本体部の軸中心から第2の半径で湾曲する隅部とを少なくとも有し、前記第2の半径を、前記第1の半径よりも長くしてあり、前記接触辺が、前記窪み部を構成していることを特徴とする。
また、本願の第3発明は、前記第1発明において、前記本体部の断面形状が、平坦面を含む接触辺と、前記接触辺の端部に接続しつつ前記本体部の軸中心から第2の半径で湾曲する隅部とを少なくとも有し、前記第2の半径を、前記本体部の軸中心から前記接触辺までの最短離隔距離よりも長くしてあり、前記接触辺が、前記窪み部を構成することを特徴とする。
また、本願の第4発明は、前記第1発明ないし第3発明のうち何れか1つの発明において、前記窪み部が、前記本体部の長手方向に連続形成されてあることを特徴とする。
また、本願の第5発明は、前記第1発明ないし第3発明のうち何れか1つの発明において、前記窪み部が、前記本体部の長手方向に間欠形成されてあることを特徴とする。
また、本願の第6発明は、足場や支保工などの仮設構造物を構築するための組立ユニットであって、前記既存支柱と、前記第1発明乃至第5発明のうち何れか1つの発明に記載の補強支柱と、つなぎ材とを少なくとも具備することを特徴とする。
また、本願の第7発明は、前記第6発明において、前記つなぎ材の先端に、凹部と、前記凹部を挟むように位置する二つの凸部とを有しており、前記補強支柱の接触辺は、前記凹部、および前記二つの凸部にそれぞれ接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、支柱間の軸間距離を変えることなく、また、支柱間に架設するつなぎ材や斜材の再設計を要することもなく、既存部材をそのまま流用したまま、強度の高い支柱への置き換えを可能とし、支柱の強度、ひいては仮設構造物の強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に係る補強支柱の全体構成を示す概略図。
【
図3】既存支柱および補強支柱の使用状態の比較図。
【
図4】補強支柱と繋ぎ材との係止状態を示す拡大概略図。
【
図6】既存支柱および補強支柱の使用状態の比較図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
<1>全体構成(
図1)
図1に、本発明に係る補強支柱の構成図を示す。
図1(a)は、本発明に係る補強支柱Aの一部を示す概略図であり、
図1(b)は、
図1(a)におけるI-I断面図である。
本発明に係る補強支柱Aは、足場や支保工などの仮設構造物において、鉛直材を構成するものであり、水平方向に伸びるつなぎ材Yや斜め方向に伸びる筋交いなどを適宜組み合わせて連結することで、仮設構造物を構築する。
本発明に係る補強支柱Aは、本体部10およびフランジ20を少なくとも具備し、さらに本体部10の外周に窪み部30を形成してあることを特徴とする。
以下、各部の詳細について説明する。
【0013】
<2>本体部(
図1)
本体部10は、仮設構造物の鉛直材を構成する部材である。
本体部10は、下端が解放された中空形状の鋼管を用いている。
図1(a)に示すように、本体部10の上端には、上方から連結する別体の本体部10の下端を差し込むためのホゾ11を設けている。
図1(b)に示すように、本実施例では、本体部10が、横断面視したときに、前記本体部10の軸中心から第1の半径R1で湾曲する湾曲面121を含む接触辺12と、前記接触辺12の端部に接続しつつ前記本体部10の軸中心から第2の半径R2で湾曲する隅部13とを少なくとも有している。
【0014】
<3>フランジ(
図1)
フランジ20は、補強支柱Aにつなぎ材Yを連結するための部材である。
フランジ20は、本体部10の外周方向に張り出すように設けた鍔状材からなり、鍔状材の外周近傍に、つなぎ材Yの端部に設けた係止具Y1を差し込むための連結孔21を少なくとも一箇所以上設けている。
本実施例では、連結孔21を、前後左右に四箇所設けている。
【0015】
<4>窪み部(
図1)
前記本体部10の外周面のうち、前記フランジ20の連結孔21側を向いた外周面には、その余の外周面に対して内側に凹むように、窪み部30を設ける。
本実施例では、前記本体部10の軸中心Oから第1の半径R1で湾曲する湾曲面121を含む四箇所の接触辺12と、前記接触辺12の端部に接続しつつ前記本体部10の軸中心Oから第2の半径R2で湾曲する四箇所の隅部13でもって、本体部10の断面形状を、各辺に窪みを設けた略矩形状の異形断面に構成している。
また、前記隅部13の湾曲半径となる第2の半径R2を、前記接触辺12の湾曲半径となる第1の半径R1よりも長くする(R2>R1)ことで、前記接触辺12が、前記隅部13に対して、本体部10の軸中心側に凹んだ状態となり、窪み部30として機能する。
【0016】
この窪み部30は、補強支柱Aの製作時に、予め一体成形によって形成してもよいし、鋼管の一部を窪ませるように変形加工してもよい。
また、窪み部30は、フランジ20を設けた箇所周辺に形成してあればよく、支柱の長手方向全長にわたって連続形成してもよいし、間欠形成してもよい。
【0017】
<5>支柱断面の比較(
図2)
図2に、従来の支柱(以下、単に「既存支柱X」ともいう。)と、本発明に係る補強支柱Aとの断面比較図を示す。
図2(a)は、円筒形状を呈する既存支柱Xの単菅部分の断面を示しており、
図2(b)は、本発明にかかる補強支柱Aの本体部10の断面を示している。
本発明に係る補強支柱Aの本体部10は、窪み部30を設けた箇所において、軸中心Oからの半径(第1の半径)R1と、既存支柱Xの単菅X1の半径R3がほぼ等しく(R1≒R3)するよう設計することが好ましい。
上記設計により、本体部10において窪み部30を形成しないその余の部分は、既存支柱Xよりも拡径した状態となり、補強支柱Aは、既存支柱Xよりも強度が向上した部材となる。
【0018】
<6>使用イメージ(
図3、
図4)
図3を参照しながら、本発明に係る補強支柱Aの使用イメージについて説明する。
図3(a)は、既存支柱X間につなぎ材Yを取り付けた場合を示し、
図3(b)は、本発明に係る補強支柱A間につなぎ材Yを取り付けた場合を示している。
前記したとおり、本発明に係る補強支柱Aは、本体部10の外周面のうち、つなぎ材Yを取り付けることができるフランジ20の連結孔21側を向いた外周面に窪み部30を設けてある。
前述したとおり、補強支柱Aの外周面のうち、つなぎ材Yの端部に設けた係止具Y1が位置する部分は、窪み部30となっているため、係止具Y1の先端が本体部10に干渉することはない。
上記構造により、補強支柱A間と既存支柱X間の軸間距離Lは変わらず、既存支柱Xとの組合せで使用していたつなぎ材Y等の部材を引き続き使用可能としたまま、単純に既存支柱Xを補強支柱Aに置き換える作業のみで、支柱の強度を高め、引いては仮設構造物の強度を向上させることができる。
【0019】
より具体的には、従来、支柱の直径を42.7mmとした既存支柱Xを想定していた仮設構造物の組立ユニットに対し、窪み部30間の直径(2×R1)を42.7mmとし、窪み部30以外の拡径部分の直径(2×R2)を48.7mmなどに設定した補強支柱Aをラインナップに加えることで、組立ユニットの構成部材を流用しつつ、適宜、既存支柱Xを補強支柱Aに置き換えることで、仮設構造物の強度を向上させることができる。
【0020】
また、
図4に示すように、繋ぎ材Yが、係止具Y1の先端に、凹部Y2と、前記凹部Y2を挟むように位置する二つの凸部Y3とを設けた構成としている場合であっても、前記湾曲面121を構成する第1の半径R1は、既存支柱Xの単菅X1の半径R3とほぼ等しい(R1≒R3)構成であるため、補強支柱Aは、既存支柱Xと繋ぎ材Yとの接触態様と同じ接触態様を実現できる。その結果、仮設構造物の組立後の安定性にも悪影響を及ぼすことがない。
【実施例2】
【0021】
次に、
図5を参照しながら本発明の第2実施例について説明する。
本実施例では、
図5に示すように、本体部10を構成する接触辺12を平坦面122で構成して、より矩形状に近い断面形状を呈している点で、実施例1と異なる構造を呈している。
このとき、前記本体部10の軸中心Oから前記接触辺12までの最短離隔距離をBとしたとき、前記本体部10の軸中心Oから前記隅部13までの第2の半径R2を、前記最短離隔距離Bよりも長くする(R2>B)ことで、前記隅部13に対し、前記接触辺12が、前記隅部13に対して前記本体部10の軸中心O側に凹んだ状態となって、窪み部30として機能することになる。
本実施例によっても、既存支柱Xとの組合せで使用していたつなぎ材Y等の部材を引き続き使用可能としたまま、単純に既存支柱Xを補強支柱Aに置き換える作業のみで、仮設構造物の強度を向上させることができる効果を得ることができる。
【実施例3】
【0022】
次に、
図6を参照しながら本発明の第3実施例について説明する。
本実施例では、
図6(a)に示すように、接触辺12を、平坦面122と、前記平坦面122の中間部分に設けた湾曲面121とで構成している。
本構成によれば、
図6(b)に示すように、前記した実施例1と同様、繋ぎ材Yの先端に設けた凹部Y2に、前記湾曲面121が当接し、前記凹部Y1を挟むように設けた二つの凸部Y3に、前記平坦面122が当接するため、補強支柱Aが、既存支柱Xと繋ぎ材Yとの接触態様と同じ接触態様を実現できる。
【実施例4】
【0023】
前記した実施例1乃至3に記載した構成では、補強支柱Aの全周に対し、90°ずつずらした位置に、計四箇所の窪み部30を設けた構成を呈しているが、本発明では上記構成に限定するものではなく、窪み部30の数や配置態様を変更した態様も、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
A 補強支柱
10 本体部
11 ホゾ
12 接触辺
121 湾曲面
122 平坦面
20 フランジ
21 連結孔
30 窪み部
X 既存支柱
X1 単菅
Y つなぎ材
Y1 係止具
Y2 凹部
Y3 凸部
O 軸中心
L 軸間距離
B 最短離隔距離
R1 第1の半径
R2 第2の半径
R3 単菅の半径