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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20230316BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20230316BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230316BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20230316BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/0566
H01M4/13
H01M50/491
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187786
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077116
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田 和隆
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053343(JP,A)
【文献】特開2007-265666(JP,A)
【文献】特開2012-146590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00-4/62
H01M 50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回電極体と電解液とを含み、
前記巻回電極体は、扁平状の外形を有し、
前記巻回電極体は、正極板とセパレータと負極板とを含み、
前記正極板と前記セパレータと前記負極板とは、この順に積層され、さらに渦巻状に巻回されており、
前記巻回電極体の巻回軸と直交する断面において、
前記巻回電極体は平坦部と湾曲部とを含み、
前記平坦部においては、前記正極板と前記セパレータと前記負極板とが平坦面を有しており、
前記湾曲部においては、前記正極板と前記セパレータと前記負極板とが湾曲面を有しており、
前記巻回電極体の最外周において、
前記セパレータは、前記平坦部において第1透気度を有し、かつ前記湾曲部において第2透気度を有しており、
前記第2透気度に対する前記第1透気度の分率は、161%から278%である(ただし前記分率が202%以下の範囲を除く)
非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記正極板は、正極活物質層を含み、
前記正極活物質層は、3.35g/cm3以上の密度を有する、
請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記巻回電極体の前記最外周において、
前記セパレータは、前記平坦部において第1厚さを有し、かつ前記湾曲部において第2厚さを有しており、
前記第2厚さに対する前記第1厚さの分率は、55%から95%である、
請求項1または請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2017-120729号公報(特許文献1)は、扁平巻回電極体を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-120729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下本明細書においては、正極板および負極板が「電極板」と総称され得る。また非水電解質二次電池が「電池」と略記され得る。
【0005】
巻回電極体は、帯状の電極板およびセパレータが渦巻状に巻回されることにより形成される。巻回当初、巻回電極体は筒状の外形を有している。例えば角形電池等においては、電池の外形に合わせて、筒状の巻回電極体が扁平状に成形されている。
【0006】
扁平状に成形された巻回電極体は、その巻回軸と直交する断面において、平坦部と湾曲部とを含む。平坦部においては、電極板およびセパレータが平坦面を有している。湾曲部においては、電極板およびセパレータが湾曲面を有している。
【0007】
平坦部における電極間距離は、湾曲部における電極間距離に比して狭い傾向がある。電極間距離とイオン拡散抵抗との間には、正の相関関係があると考えられる。したがって、平坦部のイオン拡散抵抗は、湾曲部のイオン拡散抵抗に比して低い傾向があると考えられる。
【0008】
例えばハイレートサイクル時、平坦部は、湾曲部に比して電極板の劣化が進行しやすい傾向がある。イオン拡散抵抗の低い平坦部に電極反応が集中することにより、電極板の劣化が促進されていると考えられる。電極板の劣化は、例えばLiの析出となって顕れる。
【0009】
平坦部と湾曲部との間で電極反応のバランスを調整するため、例えば平坦部の目付量(すなわち活物質量)を低減することが考えられる。ただし平坦部の目付量が低減されることにより、電池のエネルギー密度が低下すると考えられる。
【0010】
本開示の目的は、巻回電極体の平坦部における電極板の劣化を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本開示の技術的構成および作用効果が説明される。ただし本開示の作用メカニズムは、推定を含んでいる。作用メカニズムの正否は、特許請求の範囲を限定しない。
【0012】
〔1〕 非水電解質二次電池は、巻回電極体と電解液とを含む。巻回電極体は、扁平状の外形を有する。巻回電極体は、正極板とセパレータと負極板とを含む。正極板とセパレータと負極板とは、この順に積層され、さらに渦巻状に巻回されている。巻回電極体の巻回軸と直交する断面において、巻回電極体は平坦部と湾曲部とを含む。平坦部においては、正極板とセパレータと負極板とが平坦面を有する。湾曲部においては、正極板とセパレータと負極板とが湾曲面を有する。巻回電極体の最外周において、セパレータは、平坦部において第1透気度を有し、かつ湾曲部において第2透気度を有する。第2透気度に対する第1透気度の分率は、161%から278%である。
【0013】
セパレータは多孔質である。セパレータ内には細孔が形成されている。セパレータ内の細孔には電解液が浸透している。よってセパレータ内の細孔は、Liイオン拡散パスとなる。セパレータの透気度は、流体の透過性の指標である。セパレータの透気度は、Liイオン拡散抵抗の指標となり得る。すなわち透気度が高い程、イオン拡散抵抗が大きくなると考えられる。透気度が低い程、イオン拡散抵抗が小さくなると考えられる。
【0014】
本開示の巻回電極体の最外周においては、平坦部と湾曲部との間で、セパレータの透気度が異なっている。すなわちセパレータは、平坦部において第1透気度(P1)を有し、かつ湾曲部において第2透気度(P2)を有する。第2透気度に対する第1透気度の分率(P1/P2)は、161%から278%である。以下、当該分率は「透気度分率」とも記される。本開示の新知見によると、透気度分率が161%以上である時、平坦部における電極板の劣化が軽減される傾向がある。平坦部と湾曲部との間における電極反応のバランスが良好であるためと考えられる。ただし透気度分率が278%を超えると、平坦部における電極板の劣化がかえって促進される傾向がある。平坦部における電極反応が過度に制限されるためと考えられる。
【0015】
セパレータの透気度は、電極板の活物質量と直接関係しないと考えられる。よって本開示においては、電池のエネルギー密度が損なわれることなく、平坦部における電極板の劣化が軽減されることが期待される。
【0016】
なお、本明細書における「透気度」は、「JIS P8117:2009 紙及び板紙-透気度及び透気抵抗度試験方法 (中間領域)-ガーレー法」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度(透気抵抗度)は、単位面積および単位圧力あたり、規定された体積の空気が通過するのに要する時間を示す。透気度は、王研式試験機法により測定される。透気度は、100mL当たりの時間(秒)により表される。
【0017】
〔2〕 正極板は、正極活物質層を含む。正極活物質層は、例えば3.35g/cm3以上の密度を有していてもよい。本開示の正極活物質層は、平坦部において大きい目付量(g/cm2)を有し得る。そのため正極活物質層は3.35g/cm3以上の密度を有し得る。
【0018】
〔3〕 巻回電極体の最外周において、セパレータは、平坦部において第1厚さを有し、かつ湾曲部において第2厚さを有する。第2厚さに対する第1厚さの分率は、例えば55%から95%であってもよい。以下、当該分率は「厚さ分率」とも記される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
図2図2は、本実施形態における巻回電極体を示す概略図である。
図3図3は、本実施形態における巻回電極体を示す概略断面図である。
図4図4は、透気度の測定位置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示の実施形態(以下「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
【0021】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「直交」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「直交」は、厳密な意味での「直交」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。
【0022】
各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本開示の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0023】
本明細書において、例えば「161%から278%」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。例えば「161%から278%」は、「161%以上278%以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0024】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。組成比は非化学量論的であってもよい。
【0025】
<非水電解質二次電池>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100は、非水電解質二次電池である。本実施形態においては、電荷担体がLiイオンに限定されない。リチウムイオン電池は、本実施形態の一例に過ぎない。
【0026】
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば、電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100(単電池)が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【0027】
電池100は外装体190を含む。外装体190は金属製の容器である。外装体190は角形(扁平直方体)である。ただし外装体190は任意の形態を有し得る。外装体190は、例えばアルミラミネートフィルム製のパウチ等であってもよい。
【0028】
外装体190は、巻回電極体150と電解液(不図示)とを収納している。すなわち電池100は、巻回電極体150と電解液とを含む。巻回電極体150は、正極集電部材181によって正極端子191に接続されている。巻回電極体150は、負極集電部材182によって負極端子192に接続されている。
【0029】
《巻回電極体》
図2は、本実施形態における巻回電極体を示す概略図である。
巻回電極体150は、扁平状の外形を有する。巻回電極体150は、正極板110とセパレータ130と負極板120とを含む。巻回電極体150は、2枚のセパレータ130を含んでいてもよい。正極板110とセパレータ130と負極板120とは、いずれも帯状のシートである。正極板110または負極板120は、セパレータ130に挟まれている。正極板110とセパレータ130と負極板120とからなる積層体は、巻回軸10の周りに渦巻状に巻回されている。
【0030】
図3は、本実施形態における巻回電極体を示す概略断面図である。
図3には、巻回軸10と直交する断面が示されている。巻回軸10は紙面と垂直方向(x軸方向)に延びている。巻回電極体150は、平坦部151と湾曲部152とを含む。湾曲部152は「R部」、「コーナー部」等とも称され得る。図3の断面において、巻回電極体150の輪郭線上の最も離れた2点間の距離は、「高さ寸法」とも称される。高さ寸法は、図3のz軸方向の寸法である。湾曲部152は、z軸方向(高さ方向)の両端に位置する。平坦部151は、2つの湾曲部152の間に挟まれている。平坦部151と湾曲部152とは連続している。平坦部151においては、電極板およびセパレータが平坦面を有している。湾曲部152においては、電極板およびセパレータが湾曲面を有している。
【0031】
湾曲部152の断面が円弧とみなされた時、該円弧を含む円は0.5dの半径を有する。平坦部151は、例えば1.0dの厚さ寸法(図3中のy軸方向の寸法)を有していてもよい。
【0032】
巻回電極体150においては、1周毎に周長(1周分の長さ)が長くなる。平坦部151における電極板の長さは、周数によらず略一定と考えられる。周長の増分は、主に湾曲部152に割り当てられると考えられる。そのため湾曲部152においては、巻回電極体150の中心から外側に向かう方向(図3のz軸方向)において、電極間距離が徐々に広くなると考えられる。他方、平坦部151においては、巻回電極体150の中心から外側に向かう方向(図3のy軸方向)において、電極間距離の変化は小さいと考えられる。したがって通常は、平坦部151のイオン拡散抵抗が、湾曲部152のイオン拡散抵抗に比して低くなると考えられる。本実施形態においては、セパレータ130が特定範囲の透気度分率を有することにより、イオン拡散抵抗の差が低減されていると考えられる。
【0033】
《セパレータ》
セパレータ130の少なくとも一部は、正極板110と負極板120との間に介在している。セパレータ130は、正極板110と負極板120とを分離している。
【0034】
(透気度分率)
巻回電極体150の最外周において、セパレータ130は、平坦部151において第1透気度を有する。セパレータ130は、湾曲部152において第2透気度を有する。透気度分率(第1透気度/第2透気度)は、161%から278%である。透気度分率が161%以上である時、平坦部151における電極板の劣化が軽減される傾向がある。平坦部151と湾曲部152との間における電極反応のバランスが良好であるためと考えられる。ただし透気度分率が278%を超えると、平坦部151における電極板の劣化がかえって促進される傾向がある。平坦部151における電極反応が過度に制限されるためと考えられる。透気度分率は、例えば161%から183%であってもよいし、183%から278%であってもよい。なお、巻回電極体150が2枚のセパレータ130を含む場合、内周側のセパレータ130が161%から278%の透気度分率を有するものとされる。
【0035】
なお、最外周よりも内周側の領域においても、所定の範囲にわたって「平坦部の透気度>湾曲部の透気度」の関係が満たされていると考えられる。
【0036】
透気度分率は、例えば、巻回電極体150が扁平状に成形される際の成形圧力によって調整され得る。成形圧力が大きくなる程、透気度分率が高くなる傾向がある。その他、セパレータ130の材質、セパレータ130の厚さ分率等によっても、透気度分率が変化し得ると考えられる。
【0037】
図4は、透気度の測定位置を示す概略平面図である。
図4には、巻回電極体150の最外周が示されている。本実施形態における透気度は、巻回電極体150の最外周において測定される。図4におけるセパレータ130は、図2における内周側のセパレータ130である。最外周において、平坦部151の中央に第1領域R1が設定される。巻回電極体150において、第1領域R1は正極板110と負極板120とに挟まれている。すなわち第1領域R1は電極対向部に位置する。第1領域R1内の任意の箇所が、王研式試験機の測定ヘッド部の直下に配置されるように、セパレータ130が固定される。第1領域R1は、王研式試験機の測定ヘッド部に比して、十分大きい面積を有する(後述の第2領域R2も同様である)。第1領域R1内の互いに異なる3箇所以上で、透気度が測定される。3箇所以上の透気度の算術平均が、第1透気度とみなされる。第1透気度は、例えば339s/100mLから573s/100mLであってもよいし、339s/100mLから386s/100mLであってもよいし、386s/100mLから573s/100mLであってもよい。
【0038】
最外周において、湾曲部152の中央に第2領域R2が設定される。第2領域R2内の任意の箇所が、王研式試験機の測定ヘッド部の直下に配置されるように、セパレータ130が固定される。第2領域R2内の互いに異なる3箇所以上で、透気度が測定される。3箇所以上の透気度の算術平均が、第2透気度とみなされる。第2透気度は、例えば206s/100mLから211s/100mLであってもよいし、206s/100mLから210s/100mLであってもよいし、210s/100mLから211s/100mLであってもよい。
【0039】
透気度分率は、第1透気度が第2透気度で除された値の百分率である。透気度分率は、整数部分のみ有効である。小数点以下は四捨五入される。
【0040】
(材質)
セパレータ130は電気絶縁性である。セパレータ130は、例えばポリオレフィン製であってもよい。セパレータ130は、例えばポリエチレン(PE)製であってもよいし、ポリプロピレン(PP)製であってもよい。セパレータ130は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ130は、例えばPE層からなっていてもよい。セパレータ130は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ130は、例えばPP層とPE層とPP層とを含んでいてもよい。PP層とPE層とPP層とはこの順に積層されていてもよい。さらに、例えばセパレータ130の表面にセラミック層等が形成されていてもよい。
【0041】
(厚さ)
セパレータ130は、例えば5μmから50μmの厚さを有していてもよいし、5μmから25μmの厚さを有していてもよいし、10μmから20μmの厚さを有していてもよい。
【0042】
(厚さ分率)
巻回電極体150の最外周において、セパレータ130は、平坦部151と湾曲部152とで異なる厚さを有していてもよい。すなわちセパレータ130は、平坦部151において第1厚さ(T1)を有する。セパレータ130は、湾曲部152において第2厚さ(T2)を有する。第2厚さに対する第1厚さの分率(T1/T2)は、例えば55%から95%であってもよい。厚さ分率(T1/T2)は、例えば60%から90%であってもよいし、65%から85%であってもよいし、70%から80%であってもよい。第1厚さは、例えば5.5μmから19μmであってもよい。第2厚さは、例えば10μmから20μmであってもよい。
【0043】
第1厚さおよび第2厚さの各々は、定圧厚さ測定器(厚さゲージ)により測定される。第1厚さは、第1領域R1内において(図4参照)、互いに異なる3箇所以上で測定される。3箇所以上の算術平均が第1厚さとみなされる。第2厚さは、第2領域R2内において(図4参照)、互いに異なる3箇所以上で測定される。3箇所以上の算術平均が第2厚さとみなされる。厚さ分率は、第1厚さが第2厚さで除された値の百分率である。厚さ分率は、整数部分のみ有効である。小数点以下は四捨五入される。
【0044】
《正極板》
正極板110は正極活物質層112を含む。正極板110は正極基材111をさらに含んでいてもよい。正極活物質層112は、正極基材111の表面に配置されていてもよい。正極活物質層112は、正極基材111の片面のみに配置されていてもよいし、表裏両面に配置されていてもよい。正極基材111は、例えばアルミニウム(Al)箔等を含んでいてもよい。正極基材111は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。
【0045】
正極活物質層112は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよいし、50μmから100μmの厚さを有していてもよい。本実施形態における正極活物質層112は高密度を有し得る。正極活物質層112は、例えば3.35g/cm3以上の密度を有していてもよいし、3.5g/cm3以上の密度を有していてもよい。正極活物質層112は、例えば4g/cm3以下の密度を有していてもよいし、3.7g/cm3以下の密度を有していてもよい。なお本実施形態における活物質層の密度は、見かけ密度を示す。
【0046】
正極活物質層112は正極活物質を含む。正極活物質は任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えばLiCoO、LiNiO2、LiMnO2、LiMn24、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ここで、例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式における「(NiCoMn)」等の記載は、括弧内の組成比の合計が1であることを示している。正極活物質層112は、正極活物質に加えて、例えば導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。導電材は任意の成分を含み得る。導電材は、例えばカーボンブラック等を含んでいてもよい。導電材の配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の正極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0047】
《負極板》
負極板120は負極活物質層122を含む。負極板120は負極基材121をさらに含んでいてもよい。負極活物質層122は、負極基材121の表面に配置されていてもよい。負極活物質層122は、負極基材121の片面のみに配置されていてもよいし、表裏両面に配置されていてもよい。負極基材121は、例えば銅(Cu)箔等を含んでいてもよい。負極基材121は、例えば5μmから25μmの厚さを有していてもよい。
【0048】
負極活物質層122は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよいし、50μmから100μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層122は、例えば0.8g/cm3から1.6g/cm3の密度を有していてもよい。
【0049】
負極活物質層122は負極活物質を含む。負極活物質は任意の成分を含み得る。負極活物質は、例えば黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、Si、SiO、Si基合金、Sn、SnO、Sn基合金およびLi4Ti512からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。負極活物質層122は、負極活物質に加えて、例えばバインダ等をさらに含んでいてもよい。バインダは任意の成分を含み得る。バインダは、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。バインダの配合量は、100質量部の負極活物質に対して、例えば0.1質量部から10質量部であってもよい。
【0050】
《電解液》
電解液の少なくとも一部は、巻回電極体150に含浸されている。電解液の全部が巻回電極体150に含浸されていてもよい。電解液の一部が巻回電極体150に含浸されていてもよい。電解液の一部は、例えば巻回電極体150の外部(外装体190の底部)に貯留されていてもよい。電解液は液体電解質である。電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は任意の成分を含み得る。支持電解質は、例えばLiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO22からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【実施例
【0051】
以下、本開示の実施例(以下「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、特許請求の範囲を限定しない。
【0052】
<試験電池の製造>
《No.1》
下記材料が準備された。
正極活物質:LiNi0.5Co0.2Mn0.32
導電材:カーボンブラック
バインダ:PVdF
分散媒:N-メチル-2-ピロリドン(NMP)
正極基材:Al箔
【0053】
正極活物質と導電材とバインダとが混合されることにより、混合物が調製された。混合比(質量比)は「正極活物質/導電材/バインダ=92/4/4」であった。混合物が分散媒中に分散されることにより、正極スラリーが調製された。正極スラリーが正極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより、正極活物質層が形成された。正極活物質層が圧縮されることにより密度が調整された。以上より、正極板が準備された。
【0054】
下記材料が準備された。
負極活物質:天然黒鉛
バインダ:SBR、CMC
分散媒:水
負極基材:Cu箔
【0055】
負極活物質とバインダとが混合されることにより、混合物が調製された。混合比(質量比)は「負極活物質/SBR/CMC=96/2/2」であった。混合物が分散媒中に分散されることにより、負極スラリーが調製された。負極スラリーが負極基材の表面に塗布され、乾燥されることにより、負極活物質層が形成された。負極活物質層が圧縮されることにより密度が調整された。以上より、負極板が準備された。
【0056】
セパレータが準備された。正極板とセパレータと負極板とがこの順に積層されることにより積層体が形成された。積層体が渦巻状に巻回されることにより、筒状の巻回電極体が形成された。平板プレス機により、巻回電極体が扁平状により成形された。これにより巻回電極体が製造された。本実施例においては、No.1の成形圧力が「100」と定義される。同一条件により、複数個の巻回電極体が製造された。前述の方法により、第1透気度および第2透気度が測定され、透気度分率が算出された。巻回電極体と電解液とが外装体に収納されることにより、試験電池(非水電解質二次電池)が製造された。
【0057】
《No.2からNo.7》
下記表1に示されるように、巻回電極体が扁平状に成形される際の成形圧力が変更されることを除いては、No.1と同様に試験電池がそれぞれ製造された。
【0058】
<評価>
《容量》
定電流-定電圧方式(constant current-constant voltage,CCCV)充電によって、試験電池のSOC(state of charge)が100%になるまで試験電池が充電された。定電流(constant current,CC)充電時の電流は1/3Itであった。SOCの調整後、CCCV放電によって、SOCが0%になるまで試験電池が放電された。CC放電時の電流は1/3Itであった。これにより試験電池の容量(初期放電容量)が測定された。なお本実施例において「It」は、電流の時間率を表す記号である。例えば1Itの電流によれば、100%のSOCに相当する容量が、1時間で放電される。
【0059】
《エネルギー密度》
試験電池の容量が実効体積で除されることにより、エネルギー密度が算出された。本実施例における「実効体積」は、巻回電極体の厚さ寸法(図3中の「1.0d」)と、外装体の幅寸法(図1のx軸方向の寸法)と、外装体の高さ寸法(図1のz軸方向の寸法)との積である。
【0060】
《出力抵抗》
試験電池のSOCが50%に調整された。SOCの調整後、2Itの電流により、試験電池が5秒間放電された。5秒経過時の電圧降下量から出力抵抗が算出された。
【0061】
《Li析出耐性》
20%から85%のSOC範囲において、充放電サイクルが50サイクル実施された。1サイクルは、「2Itの充電→1/3Itの充電→1/3Itの放電」の一巡を示す。50サイクル後、試験電池が解体され、巻回電極体の平坦部において、Liの析出の有無が確認された。確認結果は下記表1に示される。下記表1の「Li析出耐性」の項目において、「A」は、Liの析出が確認できなかったことを示す。「B」は、Liの析出が僅かに確認されたことを示す。「C」は、Liの析出が明瞭に確認されたことを示す。確認結果が「A」である場合、巻回電極体の平坦部における電極板の劣化が軽減されていると考えられる。
【0062】
【表1】
【0063】
<結果>
上記表1において、透気度分率が161%以上になると、Li析出耐性が向上する傾向がみられる。平坦部と湾曲部との間における電極反応のバランスが良好になるためと考えられる。ただし透気度分率が278%を超えると、Li析出耐性がむしろ低下する傾向がみられる。平坦部における電極反応が過度に制限されるためと考えられる。また透気度分率が278%を超えると、出力抵抗が増加する傾向もみられる。
【0064】
成形圧力が高くなると、エネルギー密度が向上する傾向がみられる。巻回電極体の厚さ寸法(すなわち体積)が小さくなるためと考えられる。
【0065】
本実施形態および本実施例は全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は制限的なものではない。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0066】
特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味における全ての変更を包含する。さらに、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる技術的範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の範囲内における全ての変更も包含する。
【符号の説明】
【0067】
10 巻回軸、100 電池(非水電解質二次電池)、110 正極板、111 正極基材、112 正極活物質層、120 負極板、121 負極基材、122 負極活物質層、130 セパレータ、150 巻回電極体、151 平坦部、152 湾曲部、181 正極集電部材、182 負極集電部材、190 外装体、191 正極端子、192 負極端子、R1 第1領域、R2 第2領域。
図1
図2
図3
図4