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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】電池セルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20230316BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20230316BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M50/533
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020187805
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022077128
(43)【公開日】2022-05-23
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 晴也
(72)【発明者】
【氏名】城田 亮介
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀将
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 勝也
(72)【発明者】
【氏名】前田 和宏
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-135979(JP,A)
【文献】特開2013-235673(JP,A)
【文献】特開2018-156839(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 50/50-50/598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の芯材上の一部に導電材を含むスラリーを塗布することにより、前記芯材上に活物質層と未塗工部とを形成する工程と、
前記芯材に張力を作用させながら圧縮ロールにより前記活物質層に圧縮力を加える工程とを備え、
前記活物質層に前記圧縮力を加える工程において、前記圧縮ロールと前記未塗工部とが離間し、
前記活物質層に前記圧縮力を加える工程において、前記未塗工部における前記活物質層に隣接する部分に前記長尺の長手方向に対して斜め方向に延びる凹凸が形成され、
前記凹凸の深さが0.025mm以上0.055mm以下であり、
前記活物質層に前記圧縮力を加える工程の後、前記長尺の前記芯材を切断して、本体部および前記本体部から突出する電極タブを有する電極板を切り出す工程をさらに備えた、電池セルの製造方法。
【請求項2】
前記電極板は正極板である、請求項1に記載の電池セルの製造方法。
【請求項3】
芯材上に設けられた活物質層と未塗工部とを含み、本体部および前記本体部から突出する電極タブを有する電極板を備え、
前記電極タブの根元部に位置する前記未塗工部に凹凸が形成され、
前記凹凸は、前記本体部と前記電極タブとの境界に対して斜め方向に延び、
前記凹凸の深さは0.025mm以上0.055mm以下である、電池セル。
【請求項4】
前記電極板は正極板である、請求項3に記載の電池セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、電池セルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2015-176773号公報(特許文献1)には、電極板の未塗工部に直線上に延びる複数の皺(凹凸)を形成することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-176773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本体部と電極タブとを有する電極板において、電極タブの折り曲げに対する強度を向上させることが求められている。特許文献1に記載の電池は、捲回型の電極体構造を有するものであり、電極タブを有する電極体とは前提構成が全く異なる。従来の構造は、電極タブの折れ曲がりを抑制する観点から、必ずしも十分なものではない。
【0005】
本技術の目的は、電極タブの折れ曲がりが抑制された電池セルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る電池セルの製造方法は、長尺の芯材上の一部に導電材を含むスラリーを塗布することにより、芯材上に活物質層と未塗工部とを形成する工程と、芯材に張力を作用させながら圧縮ロールにより活物質層に圧縮力を加える工程とを備える。活物質層に圧縮力を加える工程において、圧縮ロールと未塗工部とが離間する。
【0007】
1つの局面では、本技術に係る電池セルは、芯材上に設けられた活物質層と未塗工部とを含み、本体部および本体部から突出する電極タブを有する電極板を備える。電極タブの根元部に位置する未塗工部に凹凸が形成されている。
【0008】
他の局面では、本技術に係る電池セルは、第1領域および第2領域を有する芯材、芯材の第1領域上に設けられた活物質層、および芯材の第2領域に位置する未塗工部を含む電極板を備える。電極板は、芯材の第1領域を含む本体部と、芯材の第2領域を含む電極タブとを有する。第1領域と第2領域とにおいて電極板の引張破断強度が互いに異なる。
【発明の効果】
【0009】
本技術によれば、電極タブの折れ曲がりが抑制された電池セルおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】角形二次電池の斜視図である。
図2図1におけるII-II断面図である。
図3】電池セルの製造方法の第一工程を示す図である。
図4】電池セルの製造方法の第二工程を示す図である。
図5】電池セルの製造方法の第三工程を示す図である。
図6】電池セルの製造方法の第四工程を示す図である。
図7】電極タブ周辺の構造を示す拡大図である。
図8】サンプル用の切り抜き部を示す図である。
図9】環状サンプルの形成方法を示す図である。
図10】環状サンプルに圧縮力を加える工程を示す図(その1)である。
図11】環状サンプルに圧縮力を加える工程を示す図(その2)である。
図12】環状サンプルに圧縮力を加えたときの反力の計測結果を示す図である。
図13】芯材の第1領域および第2領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0012】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。
【0013】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含むが、当該構成以外の他の校正を含むことを除外しない。
【0014】
図1は、角形二次電池1の斜視図である。図2は、図1におけるII-II断面図である。
【0015】
図1図2に示すように、角形二次電池1は、電池ケース100と、電極体200と、絶縁シート300と、正極端子400と、負極端子500と、正極集電部材600と、負極集電部材700と、カバー部材800とを含む。
【0016】
電池ケース100は、開口を有する有底角筒状の角形外装体110と、角形外装体110の開口を封口する封口板120とからなる。角形外装体110および封口板120は、それぞれ金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることが好ましい。
【0017】
封口板120には、電解液注液孔121が設けられる。電解液注液孔121から電池ケース100内に電解液が注液された後、電解液注液孔121は、封止部材122により封止される。封止部材122としては、たとえばブラインドリベットおよびその他の金属部材を用いることができる。
【0018】
封口板120には、ガス排出弁123が設けられる。ガス排出弁123は、電池ケース100内の圧力が所定値以上となった際に破断する。これにより、電池ケース100内のガスが電池ケース100外に排出される。
【0019】
電極体200は、電解液とともに電池ケース100内に収容されている。電極体200は、枚葉状の正極板と枚葉状の負極板がセパレータを介して交互に積層されたものである。電極体200と角形外装体110の間には樹脂製の絶縁シート300が配置されている。
【0020】
電極体200の封口板120側の端部には、正極板あるいは負極板から突出し、それらが積層されてなる正極積層タブ210および負極積層タブ220が設けられている。
【0021】
正極積層タブ210と正極端子400とは、正極集電部材600を介して電気的に接続されている。正極集電部材600は、第1正極集電体610および第2正極集電体620を含む。なお、正極集電部材600は、1つの部品から構成されてもよい。正極集電部材600は、金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製とすることがより好ましい。
【0022】
負極積層タブ220と負極端子500とは、負極集電部材700を介して電気的に接続されている。負極集電部材700は、第1負極集電体710および第2負極集電体720を含む。なお、負極集電部材700は、1つの部品から構成されてもよい。負極集電部材700は、金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。
【0023】
正極端子400は、樹脂製の外部側絶縁部材410を介して封口板120に固定されている。負極端子500は、樹脂製の外部側絶縁部材510を介して封口板120に固定されている。
【0024】
正極端子400は金属製であることが好ましく、アルミニウムまたはアルミニウム合金製であることがより好ましい。負極端子500は金属製であることが好ましく、銅または銅合金製であることがより好ましい。負極端子500が、電池ケース100の内部側に配置される銅または銅合金からなる領域と、電池ケース100の外部側に配置されるアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる領域を有するようにしてもよい。
【0025】
カバー部材800は、第1正極集電体610と電極体200との間に位置する。カバー部材800は、負極集電体側に設けられてもよい。また、カバー部材800は必須の部材ではなく、適宜省略が可能である。
【0026】
図3図6は、角形二次電池1の電極体200の各製造工程を示す図である。なお、以下では、正極板について説明するが、負極板においても同様の構成を採用することが可能である。
【0027】
図3に示すように、長尺の芯材10が準備される。芯材10は、たとえばアルミニウム箔からなる。
【0028】
次に、図4に示すように、芯材10上にスラリーが塗布され、正極活物質合剤層11および保護層12(両者を合わせて「活物質層」と称する場合がある。)が形成される。
【0029】
正極活物質合剤層11は、芯材10の両面に形成される。正極活物質合剤層11は、正極活物質(たとえばリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等)、結着材(ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等)、および導電材(たとえば炭素材料等)を含む。
【0030】
保護層12は、芯材10の両面に形成される。保護層12は、アルミナ粒子、結着材、および導電材を含む。なお、保護層12は形成されなくてもよい。
【0031】
正極活物質合剤層11および保護層12は、芯材10表面の一部を残して形成される。正極活物質合剤層11および保護層12が形成されない領域は、未塗工部13となる。
【0032】
さらに、図5に示すように、芯材10に(図中左右方向および上下方向の)張力を作用させながら、圧縮ロール900により活物質層(正極活物質合剤層11および保護層12)に圧縮力が加えられる。このとき、圧縮ロール900の第1部分910は、正極活物質合剤層11および保護層12に当接し、圧縮ロール900の第2部分920は、未塗工部13と離間している。圧縮ロール900の第2部分920の径は、第1部分910の径よりも小さい。
【0033】
この結果、正極活物質合剤層11および保護層12が形成された領域(第1領域)においては、芯材10に圧縮力が加えられ、芯材10を引き延ばす力が作用する。他方、未塗工部13が位置する領域(第2領域)においては、芯材10に圧縮力は加えられず、芯材10を引き延ばす力が作用しない。より具体的には、第1領域(合材部)は第2領域(箔部)と比較して、0.6%以上1.0%以下程度長手方向に伸ばされる。この結果、保護層12と未塗工部13との境界部分、より具体的には未塗工部13における保護層12に隣接する部分に紋様14(凹凸)が形成される。
【0034】
紋様14は、長尺の長手方向(図5中左右方向)に対して斜め方向に延びる。紋様14の延在方向は、長尺の長手方向(図5中左右方向)に対して好ましくは5°以上30°以下程度傾斜する。紋様14の凹凸の深さは、好ましくは0.025mm以上0.055mm以下程度である。紋様14の(図5中上下方向の)幅は、好ましくは3mm以上10mm以下程度である。
【0035】
そして、図6に示すように、保護層12部分と未塗工部13部分の芯材10を切断し、本体部200Aおよび本体部200Aから突出する正極タブ210A(電極タブ)が切り出される。そして本体部200Aの所定位置にて、長尺の長手方向に垂直(図5中上下方向)に切断して、枚葉状の正極板(電極板)を作成する。そして枚葉状の正極板は、別途形成される枚葉状の負極板と共にセパレータを介して交互に積層され、電極体200が作製される。
【0036】
図7は、正極タブ210A周辺の構造を示す拡大図である。図7に示すように、紋様14は、正極タブ210Aの根元部に位置する未塗工部13に形成されている。
【0037】
図8は、サンプル用の切り抜き部10Aを示す図である。図8に示すように、本体部200Aおよび正極タブ210Aを有する正極板を切り出す前の芯材10から切り抜き部10Aが切り出される。切り抜き部10Aは、紋様14を含む未塗工部13から切り出される。
【0038】
図9は、正極タブ210Aの折り曲げに対する強度を測定するためのサンプルの形成方法を示す図である。図9(a)に示される切り抜き部10Aを環状にすることで、図9(b)に示される環状サンプル10Bが形成される。
【0039】
図10図11は、環状サンプル10Bに圧縮力を加える工程を示す図である。図10に示すように、治具20のテーブル21上に環状サンプル10Bが載置され、テープ10Cにより環状サンプル10Bはテーブル21に固定される。治具20は、オートグラフにセットされる。オートグラフにより、押圧部材22を介して環状サンプル10Bに圧縮力が加えられる。図11に示すように、環状サンプル10Bはその高さがH(mm)になるまで圧縮される。
【0040】
図12は、環状サンプル10Bに圧縮力を加えたときの反力の計測結果を示す図である。図12に示すように、H=0.5mm,1.0mm,1.5mmの各ケースについて、紋様14の凹凸の深さを0mm~0.070mmの間で変化させ(「0mm」は紋様14無しを意味する。)、オートグラフにより押圧部材22を移動させてHが所定の値(0.5mm,1.0mm,1.5mm)となるまで環状サンプル10Bを圧縮して変形させたときに計測される反力(N)を比較した結果、紋様14の凹凸が0.025mmおよび0.055mmの場合において、相対的に高い反力を示すことが示された。これは、紋様14の凹凸の深さが0.025mm以上0.055mm以下程度の範囲において、正極タブ210Aの折り曲げに対する反力が高いを示している。
【0041】
図13は、芯材10の第1領域10αおよび第2領域10βを示す図である。第1領域10αは、正極活物質合剤層11が塗工された部分に位置する。第2領域10βは、未塗工部13に位置する。第1領域10αおよび第2領域10βは、互いに同じ形状を有する。
【0042】
図13に示す第1領域10αおよび第2領域10βにおいて切り出されたサンプルの両端をオートグラフを用いて引っ張り、サンプルが破断したときの強度および伸びを測定した。その結果、第1領域10αと第2領域10βとにおいて、サンプルの引張破断強度は互いに異なる。より具体的には、芯材10の第1領域10αと第2領域10βとは、互いに同じ形状を有するにも関わらず、第1領域10αよりも第2領域10βの引張破断荷重の方が大きい。これは、第1領域10αにおいては、圧縮ロール900により芯材10が既に長手方向に圧延され、厚みが相対的に小さく(薄く)なっているのに対し、第2領域10βにおいては、圧縮ロール900の圧縮力が芯材10に作用しておらず、芯材10の厚みが第1領域10αよりも相対的に大きい(厚い)からであると考えられる。
【0043】
このように、本実施の形態に係る角形二次電池1によれば、正極タブ210Aの根元部に位置する未塗工部13に形成された紋様14により、正極タブ210Aの折れ曲がりを抑制することが可能である。同様の効果は、負極タブにおいても得られる。
【0044】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0045】
1 角形二次電池、10 芯材、10A 切り抜き部、10B 環状サンプル、10C テープ、10α 第1領域、10β 第2領域、11 正極活物質合剤層、12 保護層、13 未塗工部、14 紋様、20 治具、21 テーブル、22 押圧部材、100 電池ケース、110 角形外装体、120 封口板、121 電解液注液孔、122 封止部材、123 ガス排出弁、200 電極体、200A 本体部、210 正極積層タブ、220 負極積層タブ、210A 正極タブ、300 絶縁シート、400 正極端子、410 外部側絶縁部材、500 負極端子、510 外部側絶縁部材、600 正極集電部材、610 第1正極集電体、620 第2正極集電体、700 負極集電部材、710 第1負極集電体、720 第2負極集電体、800 カバー部材、900 圧縮ロール、910 第1部分(圧縮部分)、920 第2部分(離間部分)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13