IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロードの特許一覧

<>
  • 特許-ガス状水素流の連続生産方法 図1
  • 特許-ガス状水素流の連続生産方法 図2
  • 特許-ガス状水素流の連続生産方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ガス状水素流の連続生産方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/56 20060101AFI20230316BHJP
   B01D 53/047 20060101ALI20230316BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20230316BHJP
   B01J 20/02 20060101ALI20230316BHJP
   B01J 20/08 20060101ALI20230316BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20230316BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C01B3/56
B01D53/047
B01D53/04 230
B01J20/02 A
B01J20/02 B
B01J20/08 A
B01J20/18 B
B01J20/18 E
B01J20/20 B
B01J20/20 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020504308
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-15
(86)【国際出願番号】 FR2018051786
(87)【国際公開番号】W WO2019025690
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-06-28
(31)【優先権主張番号】1757491
(32)【優先日】2017-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】ローラン・アリディエレス
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-167629(JP,A)
【文献】特開2010-111562(JP,A)
【文献】特開平09-228282(JP,A)
【文献】特開2017-080665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00-6/34
B01D 53/02-53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのフェーズ:
- 以下の一連の段階:
a)PSAタイプの設備(2)を用いての吸着による合成ガス(1)の精製の段階と、
b)1ppm超のCO含有量を示す水素ガス流の、PSA設備(2)の出口での、回収の段階と、
c)化学吸着体タイプのTSAタイプの設備(4)を用いての吸着による段階b)において回収されたガス流の精製の段階と、
d)1ppm未満の含有量を示す水素ガス流(5)の、前記TSA設備の出口での、回収の段階と
を含む第1フェーズ、
- 以下の一連の段階:
段階e)及びf)の全体にわたって、前記TSA設備が前記水素ガス流によって迂回され(7)、再生される(6)状態で、
e)PSAタイプの設備(2)を用いての吸着による合成ガス(1)の精製の段階、
f)1ppm未満のCO含有量を示す水素ガス流(5)の、PSA設備の出口での、回収の段階
を含む第2フェーズ
を示す生産サイクルを含む、合成ガス(1)から出発する1ppm未満のCO含有量を示す水素ガス流(5)の生産方法。
【請求項2】
前記第2フェーズの間に、前記TSA設備がバイパスライン(7)によって迂回されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記TSA設備がたった1つの吸着体(4)を含むことを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着体が、前記COの少なくとも一部を化学吸着するであろう活性材料を含むことを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記活性材料が、ニッケル及び/又は銅を含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PSA設備(2)が、千鳥状に、それぞれ続く少なくとも2つの吸着体を含み、圧力サイクルが、吸着、減圧及び再加圧段階を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2フェーズの間に実施される前記圧力サイクルが、前記第1フェーズの間に実施される前記圧力サイクルの継続時間よりも短い継続時間を示すことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
- 前記第1フェーズの間の前記圧力サイクル及び前記第2フェーズの間の前記圧力サイクルが、同一の継続時間を示し、
- 前記第2フェーズの間に実施される前記圧力サイクルの減圧が、前記第1フェーズの間に実施される減圧の圧力よりも低い圧力で実施される
ことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記PSA設備(2)が、アルミナの層と、活性炭の層とモレキュラーシーブの層とを含む少なくとも1つの吸着体を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1フェーズの継続時間が、前記第2フェーズの継続時間の10倍超であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1ppm未満のCO含有量を示す水素ガス流の、合成ガスからの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の大量生産は、通常、メタンに富む、天然ガスなどの、炭素系ソースの水蒸気改質(「SMRプロセス」)によって実施される。このプロセスは、Hに及びCOに主に富む合成ガスの形成をもたらす。水素を得るために、合成ガスは、例えば、実際には蒸留法さえの、精製プロセスによって、後処理されるであろう。
【0003】
幾つかの解決策が、必要とされる純度の程度に及び標的とされる生産コストに応じて、提供される。
【0004】
超純粋Hの生産は、H/COに富む混合物の低温蒸留によって達成することができる。蒸留フェーズの前に、生産された合成ガスは、脱二酸化炭素される及び脱水されるべきである。この技術は、同時に2分子のHとCOとを生産することが望まれる場合に有利である。COの低温分離用のクーラーボックスに由来するHに富む残存ガスは、およそ97%を含有する。
【0005】
水蒸気改質炉に直接由来する、又は1つ以上の段階の水との反応(水性ガスシフト反応)にかけられた、この同じH/CO混合物(合成ガス)はまた、PSA(圧力スイング吸着)上の通過によって後処理することができるが、この場合、PSAの限界のせいで、及びその産出量を過度に不利にしないために、最終生成物は、2,3ppm~数十若しくは数百ppmのレベルでN又はCOタイプの不純物を含有することができる。
【0006】
ある種の工業的用途(例えば燃料電池への供給)向けに、重大な分子は、その濃度が200ppb超である場合に燃料電池にとって毒である、COであることが分かっている。将来、高価な(白金タイプの)触媒がより少ない燃料電池技術を可能にするために、この値は100ppbへと下がるリスクがある。
【0007】
0.5~100ppmのCOを含む水素を100ppbに至るまで精製するための1つの技術は、非常に低い温度、典型的には液体窒素の温度で吸着体(活性炭又はモレキュラーシーブ)中へガス流を通すことに存する。この技術の不利点は、主に装置(加圧低温タンク、熱交換器、LN2低温保持装置)のコストにある。
【0008】
別の精製技術は、パラジウム被覆金属膜に水素を通すことに存する。パラジウムのコストの結果として、この技術もまた高くつく。更に、水素は、膜中のヘッド損失の結果として低圧で回収される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これから出発して、提起される課題は、一酸化炭素を欠く水素流の改善された、しかしながら、低温吸着又は金属膜を当てにしない生産方法を提供するというものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決策は、
2つのフェーズ:
- 以下の一連の段階:
a)PSAタイプの設備2を用いての吸着による合成ガス1の精製の段階と、
b)1ppm超のCO含有量を示す水素ガス流3の、PSA設備の出口での、回収の段階と、
c)化学吸着体タイプのTSAタイプの設備4を用いての吸着による段階b)において回収されたガス流の精製の段階と、
d)1ppm未満の含有量を示す水素ガス流5の、TSA設備の出口での、回収の段階と
を含む第1フェーズ、
- 以下の一連の段階:
段階e)及びf)の全体にわたって、TSA設備が水素ガス流によって迂回され7、再生される6状態で、
e)PSAタイプの設備2を用いての吸着による合成ガス1の精製の段階、
f)1ppm未満のCO含有量を示す水素ガス流5の、PSA設備の出口での、回収の段階
を含む第2フェーズ
を示す生産サイクルを含む、合成ガス1から出発する1ppm未満の含有量を示す水素ガス流5の生産方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図2】不純な水素(95ppmのCOで汚染された)を供給されるTSA試験の結果を例示する。
図3】運転温度の影響を示す、異なるパラメータ条件でのTSAによるCOの破過の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
TSAは温度スイング吸着法を意味すると理解される。
【0013】
TSA法において、吸着体は、使用の終わりに、その場再生され、すなわち、捕捉された不純物は、前記吸着体がその吸着能力のより大きい部分を回復するために及び精製サイクルを再開することができるために排出され、本質的な再生効果は、温度の上昇による。
【0014】
PSAタイプのプロセスにおいて、吸着体は、生産フェーズの終わりに、それらの分圧の低下によって得られる、不純物の脱着によって再生される。この圧力の低下は、全圧の低下によって及び/又は不純物を欠いている若しくは不純物をほとんど含有しないガスでフラッシュすることによって得ることができる。
【0015】
場合によっては、本発明による方法は、以下の特徴:
- 第2フェーズの間に、TSA設備は、バイパスライン7によって迂回される、
- TSA設備は、たった1つの吸着体4を含む、
- 吸着体は、COの少なくとも一部を化学吸着するであろう活性材料を含む、
- 活性材料は、ニッケル及び/又は銅を含む、
- PSA設備2は、千鳥状に、それぞれ続く少なくとも2つの吸着体を含み、圧力サイクルは、吸着、減圧及び再加圧段階を含む、
- 第2フェーズの間に実施される圧力サイクルは、第1フェーズの間に実施される圧力サイクルの継続時間よりも短い継続時間を示す、
- 第1フェーズの間中の圧力サイクル及び第2フェーズの間中の圧力サイクルは、同一の継続時間を示し、第2フェーズの間に実施される圧力サイクルの減圧は、第1フェーズの間に実施される減圧の圧力よりも低い圧力で実施される。具体的には、この場合に、圧力は少なくとも50mbarだけ低くされるであろう、
- PSA設備は、アルミナの層、活性炭の層及びモレキュラーシーブの層を含む少なくとも1つの吸着体を含む、
- 第1フェーズの継続時間は、第2フェーズの継続時間よりも少なくとも10倍大きい
の1つ以上を示すことができる。
【0016】
本発明は、合成ガスタイプの又はHに非常に富むガスのソースから生産される、超純粋Hの提供に関する。Hに富むこの混合物は、大半のときに2段階において精製されるであろう。提供される方法論は、2つの結合サブプロセスを組み合わせる、すなわち:
- 第1サブプロセス:供給物水素ガス流が、層に分布した、そして物理的吸着による不純物の捕獲を意図する異なる吸着体で充満した少なくとも2つの吸着体を含むPSAタイプの設備中へ導入される。PSAは、短いサイクル(2、3分)で動作するであろう。PSA設備の吸着体は、千鳥状に、以下の一連の段階:サイクルの高圧での吸着、並流的な減圧、対向流的な減圧、溶出、対向流的な再圧縮、並流的な再圧縮に従うであろう。典型的には、PSA設備の吸着体は、水蒸気を除去するためのアルミナの層と、CO、CH及び大半のCO及び窒素などの、ある種の分子を除去するための活性炭の1つ以上の層と、痕跡のCO及び窒素の除去を推し進めるためのモレキュラーシーブの1つ以上の層とを含有することができる。このようにして生産された水素は、>99.999%の純度を有するであろうし;残存不純物は、最小限であろう(ppm~数十ppm)。しかしながら、この水素純度は、CO(含有量>ppm)の存在の結果として燃料電池でのその使用にとって十分ではない。
- 第2サブプロセス:PSAから出る不純な水素は、残存CO不純物を化学吸着するであろう活性材料で充満した単一吸着体を好ましくは含む、TSA設備の通過によって精製される。TSAは、長いサイクル:2、3日、実際には1週間さえ、実際には1カ月さえで動作するであろう。TSAの再生は、好ましくは、150℃超の温度下で実施されるであろう。再生流(窒素、水素又は混合物)の温度は、加熱システム(再加熱装置)によって上げられるであろう。再生流の加熱の継続時間は、再生サイクルの終わりまで維持されるであろうし;終わりに、再加熱装置は停止され、反応器は純水素でフラッシュされ、及びリンスされ、次にH雰囲気下で分離されるであろう。TSAの温度は、その環境との対流交換によって、又は周囲温度での水素の循環によって、又は反応器中の液体クーラントの循環によって周囲温度に戻るであろう。周囲温度ですぐに、TSAは、再び利用可能であり、新たな精製サイクルのために使用可能であろう。
【0017】
1ppm未満のCO含有量を示す水素ガス流が、TSA設備の出口で回収される。
【0018】
TSAの再生の継続時間の全体にわたって、PSAは、「高純度」に調整される;言い換えれば、PSAの産出量は下げられ、1ppm未満のCO含有量を示す水素の生産は、全体サイクルの時間を減らすことによってか、又は好ましくは、減圧圧力を下げることによってかのいずれかによって可能にされる。
【0019】
更に、TSAの再生の継続時間の全体にわたって、水素ガス流は、2つの段階においてもはや精製されず、単一段階において、そしてPSA設備を用いて精製される。このモードの運転の間中、TSAは、そのときバイパスラインによって迂回される。
【0020】
本発明による解決策は、したがって、TSA設備の吸着体の量を制限しながら、且つ、1日、数週間、実際には数カ月さえ当たり2、3時間「高純度」モードでその産出量の下落を経験するだけである、上流PSAの産出量を最適化しながら1ppm未満のCO含有量を示す水素ガス流を連続的に生産することを可能にする。
【0021】
試験は、痕跡(20~100ppm)の形態で存在するCOによって汚染された水素流を、0.1ppm未満のCO含有率まで精製する可能性を示している。TSAによるこの精製は、周囲温度で及び上流PSAによって与えられる圧力(典型的には15~35気圧の範囲の)で実施される。TSA精製の監視及び有効性は、そのCOについての検出レベルが<100ppbである、FTIR(フーリエ変換赤外分光法)タイプの市販の分析計によって生み出される。TSA精製は、少なくとも、吸着体出口での痕跡のCOの出現(破過)まで続く。精製は、精製時間の関数としてのCOの破過曲線を得るために、かなたへと続くことができる。
【0022】
図2は、不純な水素(95ppmのCOで汚染された)を供給されるTSA試験の結果を例示する。超精製(<0.1ppm)は、30時間以上維持され;それを越えると、COが急増する。所望の化学吸着材料の吸着容量は、したがって、このタイプの試験によって計算することができる。
【0023】
図3はまた、運転温度の影響を示す、異なるパラメータ条件でのTSAによるCOの破過の結果を示す。10℃の温度勾配は、化学吸着体の捕捉容量を著しく変える。
【0024】
この観察は、TSAの拡大縮小にとって重要であり;低温で採取されたデータは、周囲温度(したがって運転温度)が上昇すると仮定すると、無難である、したがってリスクなしのTSA設計を可能にするであろう。
【0025】
TSAによってもたらされるこの超精製は、例えば、Niを、実際にはCuさえをベースとする、材料によって可能である。
【0026】
Niの又はCuのCO吸着容量は、運転条件に非常に依存する。
【0027】
再生条件(低圧、すなわち1.5バール以下のオーダーの低圧、及び150℃超の温度)がTSAにおいて吸着体を使用するために規定されており、再現性が確認されている。運転条件及び設計に依存して、TSAは、例えば、1カ月に1回だけ再生されてもよい。
図1
図2
図3