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特許7245830高い機械的性能を備えるビチューメンコングロメレートのための添加剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】高い機械的性能を備えるビチューメンコングロメレートのための添加剤組成物
(51)【国際特許分類】
   E01C 7/18 20060101AFI20230316BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20230316BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20230316BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230316BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
E01C7/18
C08L23/02
C08L29/14
C08K3/04
C08L101/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020524644
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-21
(86)【国際出願番号】 EP2018080169
(87)【国際公開番号】W WO2019091915
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】102017000126622
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】518418692
【氏名又は名称】イテルキミカ ソチエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャンナッタージオ、フェデリーカ
(72)【発明者】
【氏名】チサーニ、セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトゥレッティ、エリーザ
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0163625(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0260116(US,A1)
【文献】特開2013-231158(JP,A)
【文献】特表2006-522209(JP,A)
【文献】特開2007-326896(JP,A)
【文献】特表2015-501850(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124693(WO,A1)
【文献】特開平03-031365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 1/00-17/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路舗装のためのビチューメンコングロメレート中に混合、および前記ビチューメンコングロメレートの機械的特性を向上させるため添加剤組成物であって、少なくとも一つの熱可塑性重合体と、ポリビニルブチラール(PVB)と、グラフェンとを含む添加剤組成物であって、前記少なくとも一つの熱可塑性重合体が、ポリオレフィンまたはポリオレフィンの混合物である添加剤組成物
【請求項2】
前記少なくとも一つの熱可塑性重合体が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ならびに、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物であって前記混合物の総重量に対して25~75重量%のあいだの量のポリエチレンを含む混合物からなる群より選択される請求項1記載の添加剤組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性重合体が、リサイクルされた材料である請求項1または2記載の添加剤組成物。
【請求項4】
前記ポリビニルブチラール(PVB)が、リサイクルされたポリビニルブチラール(PVB)である請求項1~のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項5】
前記グラフェンが、リサイクルされたグラフェンである請求項1~のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項6】
前記グラフェンが、組成物の総重量に対して、0.005~1重量%のあいだの量で前記添加剤組成物中に含有されている請求項1~のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項7】
前記熱可塑性重合体が、組成物の総重量に対して、45~95重量%のあいだの量で前記添加剤組成物中に含有されている請求項1~のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項8】
前記ポリビニルブチラール(PVB)が、組成物の総重量に対して、5~55重量%のあいだの量で前記添加剤組成物中に含有されている請求項1~7のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項9】
組成物の総重量に対する重量%で示されている以下の成分:
熱可塑性材料 50~95
ポリビニルブチラール 5~50
グラフェン 0.005~1
から成る請求項1~8のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項10】
0.5~10mmのあいだの平均の直径を有する粒子による粒状形状、または、0.08~3mmのあいだの平均の直径を有する粒子による粉末の形状であることによって特徴付けられる請求項1~のいずれか1項に記載の添加剤組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の添加剤組成物の、ビチューメンコングロメレートの製造における使用。
【請求項12】
向上した機械特性を有する道路舗装を製造するためビチューメンコングロメレートであって、骨材、フィラー、ビチューメンおよび請求項1~10のいずれか1項に記載の添加剤組成物を含み、前記添加剤組成物は、前記ビチューメンコングロメレート中に、前記ビチューメンの総重量に対して、0.009~15重量%のあいだの量で含まれているビチューメンコングロメレート。
【請求項13】
高い機械性能をもつ道路舗装を製造するためビチューメンを製造するための方法であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の添加剤組成物、ビチューメンおよびフィラーを、攪拌下、および、130~200℃のあいだの温度で、前記骨材に添加する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路舗装のためのビチューメンコングロメレートの製造の技術分野に関する。
【0002】
特には、本発明は、ビチューメンコングロメレートのための添加剤組成物であって、該添加剤を含むビチューメンコングロメレートの機械的性能を向上させるとともに、そのようなビチューメンコングロメレートで作られた道路舗装の寿命を延ばすことのできる添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
可能な限り環境に優しい技術および製品を開発する要求が石油化学産業の全ての分野において、とりわけアスファルトおよびビチューメンコングロメレートの分野において依然としてある。
【0004】
この要求は、自然のおよび人為的な環境に可能な限り最も適合する材料の探索、ならびに、その製造のプロセスの最適化の試み、原料の総利用量の低減、そのようなプロセスに起因するカーボンフットプリントの低減を必要とする。
【0005】
さらに、当該技術分野において、ビチューメンコングロメレートの性能および一般的なアスファルトの性能を向上させるための添加剤の使用は公知であり、例えば、そのような添加剤は、そのような添加剤を含むビチューメンアスファルトの機械的特性、特には、典型的には道路の表面を覆うように使用されるビチューメンコングロメレートにおける破壊強度および亀裂形成抵抗などを向上させるための熱可塑性ポリマーを含む組成物であり得る。
【0006】
骨材、例えばタイヤなどのゴム片由来の粒状または粉末状の材料、ならびに熱可塑性重合体および共重合体の混合物、ならびに追加の添加剤および充填材料を含むアスファルトの組成物が特許文献1に記載されている。
【0007】
特許文献2は、粒状のポリオレフィンおよび可塑剤、好ましくはフタル酸ジオクチルを含む他の材料を含む、混合物の形態であるアスファルトのための添加剤について言及している。この添加剤もまた、それで形成されたアスファルトにおいてクラック形成を低下させることに効果的である。
【0008】
特許文献3もまた、ポリプロピレン、ポリエチレン、PVBを含み、可塑剤としてフタル酸ジオクチルも含み、ならびにさらに、分散剤、チキソトロープ剤および金属ベースの粉末を含むアスファルトのための添加剤について言及している。この添加剤は、アスファルト混合物の性能を向上させる。
【0009】
特許文献4もまた、ポリオレフィン(ポリエチレン、スチレン-ブタジエン-スチレン、ポリエチレンテレフタレート)、結合剤としてポリビニルブチラール、および充填材料を含むアスファルト混合物に関する。
【0010】
いずれの場合も、市販のアスファルトおよび該添加剤を用いて製造され得るアスファルトの化学的および機械的特性を向上させるための添加剤は、一般的に、例えば特許文献1に記載されるアスファルト組成物の例のように、例えば他の産業プロセスからのスクラップ材料またはリサイクルされた材料を含むなど、環境負荷を考慮しながら作成されるが、このような製品は依然として、使用される原材料の定性的および定量的なレベルの両方で、それを製造することにおける環境負荷の具体的な低減と、ビチューメンコングロメレートの機械的特性の向上とを組み合わせることはできていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2015/179553号
【文献】中国特許出願公開第106280505号明細書
【文献】中国特許第102585520号明細書
【文献】中国特許出願公開第103509356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の先行技術に照らして、本発明の課題は、道路舗装のためのビチューメンコングロメレートに混合されることが意図される添加剤組成物を提供することであって、ここで、組成物は、そのような組成物を他の適切な成分と混合することによって製造されるビチューメンコングロメレートの機械的特性を向上させるために適切であり、同時に、上述の不利益点をもたず、したがって、同時により環境的に持続可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような課題は、道路舗装のためのビチューメンコングロメレートに混合されることが意図され、および、該ビチューメンコングロメレートの機械的特性を向上させるために適切である、少なくとも一つの熱可塑性重合体と、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチルアクリレート(PEA)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリブチルアクリレート(PBA)、リグニンおよびそれらの混合物からなる群より選択されるポリマー化合物と、グラフェンとを含む添加剤組成物を提供することによって解決された。
【0014】
より好ましくは、該少なくとも一つの熱可塑性重合体は、ポリオレフィンであり、好ましくは、ポリエチレン、またはポリプロピレン、またはポリエチレンおよびポリプロピレンの任意の他の混合物である。
【0015】
より好ましくは、該熱可塑性重合体は、混合物の総重量に対して25~75重量%のあいだの量のポリエチレンを含む、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物である。
【0016】
さらにより好ましくは、該熱可塑性重合体は、以下の表1で示されるポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物であり、ここで、重量%の値は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物の総計の重量を基に算出されている。
【0017】
【表1】
【0018】
好ましくは、該少なくとも一つの熱可塑性重合体は、リサイクルされた材料である。
【0019】
代替的には、本発明にしたがって添加剤組成物中で使用される熱可塑性重合体は、処女材料、または上述のリサイクルされた材料と処女材料との混合物である。
【0020】
有利には、ビチューメンコングロメレートに混合されることが意図される、本発明による添加剤組成物は、例えば可塑剤、硫黄化合物、塩および/または他の材料などのさらなる成分の助けなしに、実質的に上述の成分からなり得る。
【0021】
同等に好ましい形態において、本発明による添加剤組成物に含有されるポリマー化合物は、ポリビニルブチラール(PVB)である。
【0022】
好ましい実施形態において、上述のポリマー化合物は、リサイクルされた化合物、好ましくはリサイクルされたPVBであり、より好ましくは、乗用車のフロントガラスおよび/またはビルの二重ガラスの使用後の処理からの回収プロセスの手段によって得られるものである。
【0023】
代替的には、本発明によって添加剤組成物において使用される上述のポリマー化合物、特にはポリビニルブチラールは、処女材料または上述のリサイクルされた材料と処女材料との混合物である。
【0024】
本発明において、用語「グラフェン(graphene)」は、それぞれの炭素原子が、共有結合によって他の3個の炭素原子と結合しており、および、ファンデルワールス力によって隣り合う層の原子と結合している、六角形マトリックスを有する炭素の単原子層の二次元構造をもつ炭素材料を意味しており、また、そのような炭素材料の官能基化された任意の誘導体、例えば、酸素を含む基で部分的に官能基化されているグラフェンであるグラフェンオキシドなどを意味している。
【0025】
本発明による添加剤組成物において使用されるグラフェンは、好ましくは、2~100g/dm3のあいだ、より好ましくは10~70g/dm3のあいだの見掛けの密度を有しており、同時に、本発明による添加剤組成物において使用されるグラフェンは、10~300m2/gのあいだの表面積を有している。
【0026】
該表面積は、不活性ガス(窒素)の吸収を用いるBET法によって、具体的には、ISO 9277:2010の方法にしたがって測定される。
【0027】
さらに、グラフェン層の横寸法は、200μmより小さく、好ましくは、100μmより小さく、より好ましくは、50μmより小さい。
【0028】
好ましい実施形態によれば、本発明による添加剤組成物において使用されるグラフェンは、リサイクルされたグラフェンである。
【0029】
代替的には、本発明による添加剤組成物において使用されるグラフェンは、処女グラフェンまたは上述のリサイクルされたグラフェンと処女グラフェンとの混合物である。
【0030】
したがって、最も有利な形態において、本発明にしたがい道路舗装のためのビチューメンコングロメレート中に混合されることが意図される添加剤組成物は、部分的にまたは完全にリサイクルされた材料の混合物として存在し得、本発明による添加剤組成物は、結果的に、原材料の明らかな最終的な節約だけではなく、関連する(そうでなければ問題となっている材料の合成のプロセスのあいだに環境中に排出されるであろう)二酸化炭素排出の低減から決定づけられて、特に環境的に持続可能である。
【0031】
好ましくは、本発明による添加剤組成物中に含まれるグラフェンは、組成物の総重量に対して、0.005~1重量%のあいだ、より好ましくは、0.005~0.15重量%のあいだ、さらにより好ましくは、0.01~0.1重量%のあいだの量で含有される。
【0032】
同様に好ましい形態において、本発明による添加剤組成物中に含まれる上述の熱可塑性重合体は、組成物の総重量に対して、45~95重量%のあいだ、より好ましくは、50~90重量%のあいだの量で含有される。
【0033】
同様に好ましい形態において、本発明による添加剤組成物中に含まれる上述のポリマー化合物、好ましくはポリビニルブチラールは、組成物の総重量に対して、5~55重量%のあいだ、より好ましくは、10~50重量%のあいだの量で含有される。
【0034】
ビチューメンコングロメレート中に混合されることが意図される特に好ましい添加剤組成物は、組成物の総重量に対して、以下の重量%で示される次の成分から成る:
熱可塑性材料 50~95
ポリビニルブチラール 5~50
グラフェン 0.005~1。
【0035】
本明細書において示されている全てのパーセント(%)は、他に特定されない限り、重量/重量パーセントとして理解されるべきである。
【0036】
本発明による添加剤組成物は、粒子形状で、例えば粒状形状またはチップの形状などで、好ましくは、0.5~10mmのあいだ、より好ましくは、4~6mmのあいだの平均の直径を有する粒子で、または、粉末の形状で、好ましくは、0.08~3mmのあいだ、より好ましくは、0.5~3mmのあいだの平均の直径を有する粒子で、製造される。
【0037】
一貫して、本発明による添加剤組成物は、上述の熱可塑性重合体の、ポリマー化合物、好ましくは、ポリビニルブチラールの、および、グラフェンの、別々の粉砕(grinding)およびその後のそれらの混合を含むプロセスによって得られ得る。
【0038】
完全に好ましい形態として、本発明による添加剤組成物を得るための上述のプロセスは、結果として、0.08~3mmのあいだ、より好ましくは、0.5~3mmのあいだの平均の直径を有する粒子の粉末の形状または粒状の形状である本発明による添加剤組成物を得ることとなる。
【0039】
好ましくは、上述の粉砕工程は、冷却ローターまたは造粒ローターを備えたミルの助けを借りて、または、低温粉砕(cryogenic grinding)によって行われ得る。
【0040】
有利には、本発明による添加剤組成物の、任意の実施形態における使用はまた、それらの機械的性能を向上させるため、およびそのようなビチューメンコングロメレートで製造させる道路舗装の寿命を延ばすためのビチューメンコングロメレートの製造を意図している。
【0041】
上述の本発明による添加剤組成物は、次に、高い機械性能をもつ道路舗装を製造するために適切なビチューメンコングロメレートを製造するために使用され得る。このようなビチューメンコングロメレートは、例えば砕石材料、粒状および破砕スラグ、例えばある種のミネラルまたは岩(例えばボーキサイトまたはある種の粘土など)の高温溶融などによって製造される人工的な骨材などの例えば不活性の無機材料などを含む骨材、フィラー、ビチューメン、および上述の添加剤組成物を含み、一般的には、上述のビチューメンの総重量に対して、0.09~15重量%のあいだ、好ましくは、2~6重量%のあいだ、より好ましくは、5重量%の量で含まれている。
【0042】
好ましくは、上述のビチューメンコングロメレートは、ビチューメンコングロメレートの総重量に対して、3~7重量%のあいだのビチューメン量、より好ましくは、ビチューメンコングロメレートの総重量に対して、4~6.5重量%のあいだのビチューメン量を含む。
【0043】
本発明において、用語「ビチューメン(bitumen)」は、一般的に、熱可塑性挙動を有する室温で固体分散相を含む材料を意味しており、該分散相は、高分子の有機化合物、主に炭素数が25より大きい炭化水素を含む。該分散相においては、一般的に、痕跡量の硫黄、窒素、酸素および例えばニッケル、鉄およびバナジウムなどの金属が分散し得る。
【0044】
したがって、さらなるその態様において、本発明は、高い機械性能を有する道路舗装を製造するために適切なビチューメンコングロメレートを製造するための方法であって、上述の骨材に、攪拌下、および、130~200℃のあいだ、好ましくは、165~185℃のあいだ、より好ましくは、170~180℃のあいだの種々の温度で、本発明による上述の、ビチューメンおよびフィラーを含む添加剤組成物を添加する工程を含む。
【0045】
最も有利の形態において、本発明による添加剤組成物は、詳細な説明においてより詳細に説明されるが、道路舗装のためのビチューメンコングロメレートへと添加された場合に、高い機械的性能、例えば高い抗張力、高い剛性、および高い耐疲労性などをもつ道路舗装を得ることを可能にする。
【0046】
一貫して、本発明による添加剤組成物を含むビチューメンコングロメレートを用いて形成された道路表面はまた、詳細な説明においてより詳細に説明されるが、本発明による添加剤組成物を含んでいないビチューメンコングロメレートを用いて作成された道路表面と比較して、わだち掘れ現象が発生する確率が低い。
【0047】
ビチューメンコングロメレート中に混合される添加剤組成物によって道路舗装に授けられる高い機械的特性、および、わだち堀れ現象の発生の顕著な低下は、従前の道路舗装と比較した場合に、道路舗装の運用寿命およびその安全性の実質的な増大を決定づける。
【0048】
完全に有利な形態において、本発明による添加剤組成物を含むビチューメンコングロメレートが道路舗装を製造する際に用いられる場合、後者の層(路盤、基層および表層)は、本発明による添加剤組成物を含んでいないビチューメンコングロメレートを用いて作成された道路舗装と比較して、同じ運用寿命を示すとした場合に、より小さな厚みを有し得る。
【0049】
したがって、このような添加剤組成物を含むコングロメレートの使用は、そうでない場合に製造/抽出においておよび上述の原材料の運搬において生じるであろう二酸化炭素排出の低下を決定づける、より少ない量の骨材およびビチューメンの必要性を伴うだけでなく、ビチューメンコングロメレートのより少ない製造(上記に示されているように、製造はかなりの高温での作業を必要とする)に起因する実質的なエネルギーの節約(および関連したより小さな環境負荷)を伴う。
【0050】
さらに、本発明による組成物は、それを使用するオペレータが吸い込む恐れがある微粉末を含まないため、取り扱いが容易かつ安全である。
【0051】
本発明による組成物はさらに、より長い期間にわたって、何か月間ものあいだ、パッキングのリスクなしに保管され得、そして、時間経過によって不変の流動性を維持し得、これらの特性は、正確かつ再現性のある用量を確実なものとするために、この組成物をビチューメンコングロメレートへと添加する際に重要である。
【0052】
本発明の特徴および優位性は、さらにいくつかの実施形態によって強調され、それらは以下において限定ではなく例示を目的として開示される。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下は、本発明による添加剤組成物のいくつかの例であり、これらは、ビチューメンコングロメレートの製造における機械的性能を向上させるというその効果に関連した好ましい結果を伴って製造および試験された。最終的に、比較例が記載され、そこではグラフェンを含まない、および、本発明にしたがわない、可能な添加剤組成物が示されている。
【0054】
実施例1
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(70:30) 49.995%
ポリビニルブチラール 49.995%
処女材料のグラフェン 0.01%
【0055】
実施例2
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(50:50) 49.95%
ポリビニルブチラール 49.95%
処女材料のグラフェン 0.1%
【0056】
実施例3
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(60:40) 49.95%
ポリビニルブチラール 49.95%
リサイクルされたグラフェン 0.1%
【0057】
実施例4
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(30:70) 74.995%
ポリビニルブチラール 24.995%
処女材料のグラフェン 0.01%
【0058】
実施例5
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(50:50) 74.95%
ポリビニルブチラール 24.95%
処女材料のグラフェン 0.1%
【0059】
実施例6
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(70:30) 79.995%
ポリビニルブチラール 19.995%
処女材料のグラフェン 0.01%
【0060】
実施例7
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(40:60) 79.95%
ポリビニルブチラール 19.95%
処女材料のグラフェン 0.1%
【0061】
実施例8
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(70:30) 89.995%
ポリビニルブチラール 9.995%
処女材料のグラフェン 0.01%
【0062】
実施例9
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(70:30) 89.95%
ポリビニルブチラール 9.95%
処女材料のグラフェン 0.1%
【0063】
実施例10
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(60:40) 89.5%
ポリビニルブチラール 9.95%
処女材料のグラフェン 1%
【0064】
実施例11
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(70:30) 89.990%
ポリビニルブチラール 9.995%
処女材料のグラフェン 0.005%
【0065】
実施例12(本発明によらない参照例)
ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物(70:30) 90.00%
ポリビニルブチラール 10.00%
【0066】
実施例1~11の組成物は、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物、ポリビニルブチラール、およびグラフェンを別々に粉砕することによって、ならびに、粉砕された成分をミキサー内部でその後混合し、2mmの平均の直径を有する粒子の均一な混合物を得ることによって製造された。
【0067】
実施例12の組成物は、同じ方法で製造されたが、ポリエチレンおよびポリプロピレンの混合物ならびにポリビニルブチラールのみから出発された。
【0068】
実施例13
実施例8の組成物を使用して、100mmの直径および約25mmの厚さを有し、以下の表2に示される成分の比にしたがった組成を含むビチューメンコングロメレート(コングロメレートA)の18個のブリケットが実験室において合成された。また、同じ組成を有するが、実施例12にしたがった添加剤組成物を含むビチューメンコングロメレート(コングロメレートB)の18個のブリケット、および、実施例8の添加剤組成物を含まずまた実施例12の組成も含まないビチューメンコングロメレート(コングロメレートC)の18個のブリケット、さらに、ビチューメンコングロメレートの9つのパネル(コングロメレートA、BおよびCのそれぞれの種類につき3つずつ)。
【0069】
【表2】
【0070】
ビチューメンコングロメレートは、ビチューメンコングロメレートの製造のためにプラントで通常使用されるより大きなスケールの機械を機能においてシミュレーションする装置を用いて、以下の方法によって実験室で製造される:
現在製造中のビチューメンコングロメレートを用いて製造しようとしている道路舗装に依存して、粒度分布曲線を選択すること、
上述の粒度分布曲線にしたがって骨材(本実施例では、表2による骨材である)を選択すること、および、ミキサー内で、骨材を170~180℃の温度まで昇温すること、
適切な量の添加剤組成物(本実施例では、表2に示された量の実施例8による添加剤組成物である)を添加し、その後、ブレンドを得るように40~60秒間混合すること、
適切な量のビチューメン(本実施例では、表2に示された量である)をブレンドに添加し、その後、少なくとも20~30秒間混合すること、
ブレンドに適切な量のフィラー(本実施例では、表2に示された量である)を添加し、その後、少なくとも5分間混合(規範法則EN 12697-35で規定されているように)し、ビチューメンコングロメレートの均一なブレンドを得ること。
【0071】
特には、ブレンドは、その処理の全ての工程のあいだ、170~180℃のあいだの温度に維持される。
【0072】
本発明の実施例8の組成物の代わりに、ビチューメンコングロメレートBが用いられる場合、本発明によらない実施例12の組成物(グラフェンを含まない)が添加される。ビチューメンコングロメレートCの場合、骨材を加熱する工程の後に、それらにビチューメンを添加する工程が直接続けられる。
【0073】
これによって得られるビチューメンコングロメレートのブレンドは、その後、ミキサーから出され、コンテナ中に約1210gと同等の量で用量化され、そして続いて、オーブン中で約3時間150℃の温度で(運搬条件をシミュレーションするために)コンディショニングされる。
【0074】
これによって得られるビチューメンコングロメレートは、オーブンによるコンディショニングのあと、テンプレート内に挿入される。その後、約2.5%のボイド率を得るために、ジャイレトリー式締固め機による締固めが行われる(ジャイレトリー式締固め機の代替として、目的に適切な任意の他の種類の締固め機、例えばマーシャルコンパクタを使用することも可能である):
載荷圧力:600kPa;
ジャイレトリー角:1.25°;
密度限界:2400kg/m3
【0075】
18個のブリケットが、機械的試験を行うためのそれぞれの種類のビチューメンコングロメレートのために製造され、同時に、50cm×70cmのサイズの3つのパネルがそれぞれの種類のビチューメンコングロメレートに対して一つずつ形成された。
【0076】
コングロメレートAの18個のブリケット、コングロメレートBの18個のブリケット、およびコングロメレートCの18個のブリケット、ならびに、コングロメレートAのパネル、コングロメレートBのパネル、およびコングロメレートCのパネルが、最終的に、機械的試験を行うための適切なコンディショニングのため人工気候室に静置された。
【0077】
実施例14(抗張力の測定)
コングロメレートAの6個のブリケット、コングロメレートBの6個のブリケット、およびコングロメレートCの6個のブリケットが抗張力試験を行うために使用された。
【0078】
それぞれのブリケットが、それぞれ、指定された試験バスケットの機械プレスに置かれ、その後、抗張力試験がUNI EN 12697-23方法論にしたがって行われた。
【0079】
間接引張強度(Indirect Tensile Strength, ITS)によって発生する機械的特徴。ITSは、道路舗装によって耐えられ得る、車両の通行によって生成される最大の圧力をシミュレーションする。
【0080】
各試験の結果が以下の表3に示されている。
【0081】
【表3】
【0082】
表3に示されているデータから、本発明による添加剤組成物が、それを用いて作成されたビチューメンコングロメレート(コングロメレートA)において間接引張強度を、ビチューメンそのままを有する慣用のビチューメンコングロメレート(コングロメレートC)と比較して約60%、ポリエチレン/プロピレンおよびPVB含有量に関しては実質的に同一であるがグラフェンを含まない添加剤組成物を含むビチューメンコングロメレート(コングロメレートB)と比較して9%、向上させることが理解され得る。間接引張強度の向上は、負荷がかけられるビチューメンコングロメレートのより高い強度を意味しており、これゆえ、本発明の添加剤組成物は、より長い運用寿命によって特徴付けられる道路舗装を構築することを可能にするビチューメンコングロメレートを形成することを可能にする。たった0.01重量%の量のグラフェンが欠けていることを除き同一である組成物と比較して、本発明の組成物を用いて得られる直接引張強度の顕著な向上は、完全に驚くべきこととして考えられるべきである。
【0083】
実施例15(曲げ剛性率の測定)
コングロメレートAの6個のブリケット、コングロメレートBの6個のブリケット、およびコングロメレートCの6個のブリケットが、車両タイヤのトラック領域から道路表面に及ぼされる負荷を上層構造で伝播させるビチューメンコングロメレートの能力を意味する、曲げ剛性率を測定するための試験を行うために使用された。
【0084】
各ブリケットは、動的試験のための空気圧サーボシステムの指定のハウジング上に置かれ、それは続いて温度コントロールのため気候セル中へと置かれた。続いて、曲げ剛性率の測定のための試験が、UNI EN 12697-26方法論にしたがって行われた。
【0085】
曲げ剛性率の測定のために使用された試験条件は以下のとおりであった:
温度:可変
課された水平応力:5μm
ピークタイム:124ms(周波数 2Hz)
ポアソン比:0.35。
【0086】
個々の試験の結果が以下の表4に示されている。
【0087】
【表4】
【0088】
明らかに、本発明による添加剤組成物(実施例8)は、ビチューメンコングロメレートの形成のために使用される場合、慣用のコングロメレート(コングロメレートC)および実施例12による添加剤組成物を含有するコングロメレートであってグラフェンを含まないコングロメレート(コングロメレートB)の両方に対して、後半、曲げ剛性率の実質的な向上を示している。この意味において、コングロメレートAは、適度に高い温度(T=20℃、T=40℃)において特に良好に働いていることを示している。コングロメレートBと比較して発見されたコングロメレートAの曲げ剛性率における向上は、前の例において見出された抗張力における既に顕著な向上よりもさらに高く、したがって、これはさらにより驚くべきことである。
【0089】
実施例16(耐疲労性の測定)
コングロメレートAの6個のブリケット、コングロメレートBの6個のブリケット、およびコングロメレートCの6個のブリケットが、耐疲労性試験を行うために使用された。舗装の疲労に起因する破壊は、車両通行ならびに季節変動および温度変化の両方によって引き起こされる引張り応力によって誘導される、経時的に繰り返される変形状態により起こる。
【0090】
各ブリケットは、動的試験のための空気圧サーボシステムの指定のハウジング上に置かれ、それは続いて温度コントロールのための気候セル中へと置かれた。続いて、耐疲労性の測定のための試験が、UNI EN 12697-24方法論にしたがって行われた。
【0091】
耐疲労性の測定のための試験条件は以下のとおりであった:
温度:20℃
課された水平応力:300kPa
ピークタイム:248ms
静止時間:252ms
周波数:2Hz
ポアソン比:0.35
破壊条件:初めの複素弾性係数の10%。
【0092】
個々の試験の結果が以下の表5に示されている。
【0093】
【表5】
【0094】
表5のデータより、本発明による添加剤組成物(実施例8)を含むコングロメレートAは、実施例12による参照の添加剤組成物を含むがグラフェンを含まないビチューメンコングロメレートBと比較して123%増大した破壊サイクル数を有し、慣用のビチューメンコングロメレート(コングロメレートC)と比較して570%増大した破壊サイクル数を有していることが理解できる。これは、コングロメレートの機械的性能の驚くべき向上のさらなる強力な証拠であり、ここで、該向上は、極めて低い量(添加剤組成物の総計の重量の0.01%がビチューメンコングロメレートへと添加される)でしか添加されていないグラフェンの存在のおかげによって達成されている。
【0095】
実施例17(わだち掘れ現象のモニタリング)
コングロメレートAの3個のパネル、コングロメレートBの3個のパネル、およびコングロメレートCの3個のパネルが、載荷軸の下の、車輪の通過のあいだに結果として生じるビチューメン混合物の横方向の動きに伴う肥大によって引き起こされる縦方向の変形の現象を意味するわだち掘れをモニタリングする試験を行うために使用された。各パネルはそれぞれ、わだち掘れ機(車輪トラッキング機)内の指定のハウジング上に置かれ、それは続いて温度コントロールのための気候セル中へと置かれた。続いて、耐疲労性の測定のための試験が、UNI EN 12697-22方法論にしたがって行われた。
【0096】
このような現象のシミュレーションを可能にする研究室試験は以下の結果を提供するものである:
DEPTH:わだちがどのくらい深いかを物理的に示している(高いDEPTHはより低い抵抗性を意味する);
PRD(わだち深さの割合(Proportional Ruth Depth)):試験のあいだの所定のサイクルで生成されたわだちの割合(percentage)を示している。該パラメータを低下させることにより、変形が低減され、およびそれゆえ、舗装の運用寿命が向上される;
WTS(車輪トラッキング傾き(Wheel Tracking Slope)):ビチューメンコングロメレートが変形させられる速度を示している。該パラメータを低下させることにより、変形への抵抗性が増大し、および経時による変形が低減され、舗装の運用寿命が向上される。
【0097】
わだち掘れへの抵抗性を測定するために課された試験条件は、60℃の温度であった。
【0098】
個々の試験の結果が以下の表6に示されている。
【0099】
【表6】
【0100】
行われた試験は、コングロメレートBと比較してわだち掘れ現象の顕著な減少(-51%)を有し、慣用の舗装(コングロメレートC)と比較して舗装の運用寿命および道路の安全性のさらなる向上を結果として有する、本発明による添加剤組成物を含むコングロメレートAの高い性能を強調している。
【0101】
この場合もまた、本発明による添加剤組成物中に含有されるグラフェンが、該グラフェンは明らかに少量(実施例8の組成物において0.01重量%)でしか存在していないにもかかわらず、わだち掘れへの抵抗性の顕著なかつ驚くべき向上を決定づけている。
【0102】
最後に、全ての実験的証拠は、本発明による添加剤組成物が機械的特性の観点からより向上された性能を有するビチューメンコングロメレートを製造することを可能にし、この結果、それらで作製される道路舗装の総計の寿命の延長を決定づける。これは、経済的節約(道路舗装のより少ないメンテナンス)を決定づけるだけでなく、環境負荷の顕著な低減(本発明による添加剤組成物なしのコングロメレートと比較して、同じ寿命でありながら、コングロメレートそれ自身の製造に起因する結果として低減された二酸化炭素排出を伴って、コングロメレートのより薄い層を製造することの可能性)を決定づける。