(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】奥行取得のためのライトフィールド画像処理方法
(51)【国際特許分類】
H04N 25/10 20230101AFI20230316BHJP
G06T 7/557 20170101ALI20230316BHJP
G06T 7/90 20170101ALI20230316BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230316BHJP
H04N 13/257 20180101ALI20230316BHJP
H04N 13/271 20180101ALI20230316BHJP
H04N 13/239 20180101ALI20230316BHJP
G03B 35/08 20210101ALI20230316BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20230316BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20230316BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20230316BHJP
H04N 23/54 20230101ALI20230316BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20230316BHJP
【FI】
H04N25/10
G06T7/557
G06T7/90 D
G06T7/00 300B
H04N13/257
H04N13/271
H04N13/239
G03B35/08
G02B3/00 A
G02B5/00 Z
H04N23/55
H04N23/54
H04N23/60
(21)【出願番号】P 2020530983
(86)(22)【出願日】2018-12-05
(86)【国際出願番号】 CA2018051554
(87)【国際公開番号】W WO2019109182
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-12-01
(32)【優先日】2017-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518434533
【氏名又は名称】エアリー3ディー インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】AIRY3D INC.
【住所又は居所原語表記】5445 Gaspe Avenue, Suite 230 Montreal, QuebecH2T 3B2 CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】サーリ、 ジョナサン イコラ
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ジ-ホ
【審査官】西谷 憲人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-002387(JP,A)
【文献】国際公開第2013/179538(WO,A1)
【文献】特開2017-017690(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0174998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/10
G06T 7/557
G06T 7/90
G06T 7/00
H04N 13/257
H04N 13/271
H04N 13/239
G03B 35/08
G02B 3/00
G02B 5/00
H04N 23/55
H04N 23/54
H04N 23/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーンの三次元画像データを捕捉する方法であって、
a)回折された光学波面を生成するよう、格子軸に沿った格子間隔を有する回折格子パターンに従って前記シーンから生じる光学波面を回折することと、
b)各々が色フィルタと関連付けられた複数の感光画素を含む画素アレイを使用して、近接場領域内で前記回折された光学波面を検出し、画素データを獲得することであって、前記色フィルタは、一次色と関連付けられた異なる隣接した画素が前記回折された光学波面の全サイクルにわたって前記回折された光学波面の異なる空間的部分を検出するように配列された前記一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成して前記検出をすることと、
c)前記一次色及び前記二次色に従って、前記画素データを対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに解析することと、
d)前記一次色チャネルと関連付けられた前記回折された光学波面の強度プロファイルの主基底成分及び主変調成分を判定することと、
e)前記二次
色チャネルの各々と関連付けられた前記回折された光学波面の強度プロファイルの二次基底成分及び二次変調成分を判定することと、
f)前記主基底成分及び前記二次基底成分を使用して、前記シーンの2D画像を再構築することと、
g)少なくとも1つの色放射伝達関数を使用して、前記シーンの奥行マップを作成することと、
を備え、
前記色放射伝達関数のそれぞれは、前記一次色チャネル及び前記二次色チャネルのうちの対応する1つの色チャネルと関連するとともに、前記一次色チャネル及び前記二次色チャネルのうちの関連する1つの色チャネルの主変調成分又は二次変調成分から物体距離情報を提供するよう較正されている方法。
【請求項2】
各々の色放射伝達関数は、前記関連する色チャネルの前記回折された光学波面の前記強度プロファイルを、前記検出するステップのために使用される画像捕捉デバイスの対応する焦点平面に関連付ける、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップe)の二次基底成分及び二次変調成分を判定することは、隣接したバンクが強め合う干渉オフセットまたは弱め合う干渉オフセットを有するかどうかを判定するために、前記画素の隣接したバンクについての前記一次色チャネルと関連付けられた前記回折された光学波面の前記強度プロファイルを使用することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップg)の前記奥行マップを作成することは、前記主変調成分及び前記関連する色放射伝達関数を使用して、粗い奥行マップを作成することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粗い奥行マップを作成することは、
前記一次色チャネルについての相対的な奥行情報を、それに関連付けられた前記主変調成分から獲得することと、
前記相対的な奥行情報と、前記一次色チャネルと関連付けられた前記色放射伝達関数との比較から、前記一次色チャネルについての絶対的な奥行情報を獲得することと、
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記一次色チャネルは、緑色チャネルであり、
前記二次色チャネルは、赤色チャネル及び青色チャネルであり、
前記関連する色放射伝達関数はそれぞれ、緑色放射伝達関数(GRTF)、赤色放射伝達関数(RRTF)、及び青色放射伝達関数(BRTF)を定義する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記色モザイクは、Bayerパターンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記画素アレイは、前記格子間隔よりも短い、前記格子軸に沿った画素ピッチを有する請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前期画素ピッチの前記格子間隔に対する比率は実質的に2に等しい請求項8に記載の方法。
【請求項10】
主基底成分及び主変調成分を判定することは、それぞれ、前記一次色に関連した隣接画素バンクから強度画素データを加算し及び減算することを含む請求項1~9のいずれか1項
に記載の方法。
【請求項11】
回折された光学波面を生成するよう、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、シーンから生じ、格子軸に沿った格子間隔を有する回折格子パターンに従って回折され
た光学波面から前記シーンの三次元画像データを獲得するためのコンピュータ実行可能命令を有する、前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記回折された光学波面は、各々が色フィルタと関連付けられた複数の感光画素を含む画素アレイを使用して近接場領域で
検出されて、画素データを獲得し、
前記色フィルタは、一次色と関連付けられた異なる隣接した画素が前記回折された光学波面の全サイクルにわたって前記回折された光学波面の異なる空間的部分を検出するように配列された前記一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成し、
前記コンピュータ実行可能命令は、前記画素データを受信したプロセッサによって実行されるとき、前記プロセッサに、
a)前記一次色及び前記二次色に従って、前記画素データを対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに解析することと、
b)前記一次色チャネルと関連付けられた前記回折された光学波面の強度プロファイルの主基底成分及び主変調成分を判定することと、
c)前記二次
色チャネルの各々と関連付けられた前記回折された
光学波面の強度プロファイルの二次基底成分及び二次変調成分を判定することと、
d)前記主基底成分及び前記二次基底成分を使用して、前記シーンの2D画像を再構築することと、
e)少なくとも1つの色放射伝達関数を使用して、前記シーンの奥行マップを作成することと、
を実行させる、前記非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、
前記色放射伝達関数のそれぞれは、前記一次色チャネル及び前記二次色チャネルのうちの対応する1つの色チャネルと関連するとともに、前記一次色チャネル及び前記二次色チャネルのうちの関連する1つの色チャネルの主変調成分又は二次変調成分から物体距離情報を提供するよう較正されている非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
各々の色放射伝達関数は、前記関連する色チャネルの前記回折された光学波面の前記強度プロファイルを、前記検出するステップのために使用される画像捕捉デバイスの対応する焦点平面に関連付ける、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項13】
ステップc)の二次基底成分及び前記二次変調成分を判定することは、隣接したバンクが強め合う干渉オフセットまたは弱め合う干渉オフセットを有するかどうかを判定するために、前記画素の隣接したバンクについての前記一次色チャネルと関連付けられた前記回折された光学波面の前記強度プロファイルを使用することを含む、請求項11又は12に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項14】
ステップe)の前記奥行マップを作成することは、前記主変調成分及び前記関連する色放射伝達関数を使用して、粗い奥行マップを作成することを含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
前記粗い奥行マップを作成することは、
前記一次色チャネルについての相対的な奥行情報を、それに関連付けられた前記主変調成分から獲得することと、
前記相対的な奥行情報と、前記一次色チャネルと関連付けられた前記色放射伝達関数との比較から、前記一次色チャネルについての絶対的な奥行情報を獲得することと、
を含む、請求項14に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項16】
前記一次色チャネルは、緑色チャネルであり、
前記二次色チャネルは、赤色チャネル及び青色チャネルであり、
前記関連する色放射伝達関数はそれぞれ、緑色放射伝達関数(GRTF)、赤色放射伝達関数(RRTF)、及び青色放射伝達関数(BRTF)を定義する、請求項11~15のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項17】
前記色モザイクは、Bayerパターンである、請求項16に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項18】
前記画素アレイは、前記格子間隔よりも短い、前記格子軸に沿った画素ピッチを有する請求項11~17のいずれか1項に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項19】
前期画素ピッチの前記格子間隔に対する比率は実質的に2に等しい請求項18に記載の
非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項20】
主基底成分及び主変調成分を判定することは、それぞれ、前記一次色に関連した隣接画素バンクから強度画素データを加算し及び減算することを含む請求項11~19のいずれか1項に記載の
非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全体的な技術分野は、撮像システム及び方法に関し、特に、奥行取得及び三次元(3D)撮像のためのライトフィールド撮像デバイス及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の撮像ハードウェアは、簡易化された二次元(2D)平面への複合的な三次元(3D)シーンの投影を伴い、入射光において特有な次元性を失う。情報の損失は、入射光の時間平均強度Iを直接測定することができるにすぎず、その位相φ、または波ベクトルk、または角周波数ω、
を直接測定しない、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサアレイなど、二乗検出器の性質の直接の結果である。
【0003】
この制約内で作動して、プレノプティックカメラは、複数の同時に取得された画像の比較分析、複雑な機械学習、及び/もしくは再構築技術のいずれかを通じて、または能動的照明器及びセンサの使用を通じて奥行情報を回復することを強いられる。プレノプティックカメラは概して、
P=P(x,y,λ,t,Vx,Vy,Vz,p) (2)
によって観察者またはポイント上で衝突したライトフィールドをパラメータ化する、「プレノプティック関数」を通じてシーンを記述し、x及びy座標は、位置(Vx、Vy、Vz)において観察者によって目撃されるように、波長λ、及び偏光角pに対する、時間tにおける特定の画像平面を定義する。それらは、単一または複数のセンサに基づくシステムであってもよく、現在のプレノプティックカメラは、最低でも、センサアレイのいずれかの所与の画素によって検出された光の強度に唯一依存することがある。特に、立体視覚またはマイクロレンズ効果などの既存の解決策は、奥行を識別するために必要とされる様々な視野に適合するよう複数のセンサまたはセンサ分割を採用することによって、全体的な画像品質及びセンサフットプリントを犠牲にする。
【0004】
ランダムな二値オクルージョンマスク及び符号化開口は、パッケージングまたは全体的なフットプリントへの最小の影響と共に単一のセンサの解決策を提供する他の既存のアプローチである。しかしながら、圧縮センシング及び非線形再構築技術における発展にも関わらず、それらの解決策は、大容量の画像辞書及び計算コストが伴うことによって妨げられたままである。
【0005】
タイムオブフライト及び構造化された光に基づく技術は、パルス化され、パターン化され、または変調された連続した波の赤外線光によりシーンを能動的に照射し、照射された光パターンにおける全往復移動時間または僅かな変化を介して奥行を判定する。それらの技術は、画像分割の影響を受けないが、それらは概して、その両方が電力消費と共に全体的なデバイスのフットプリントを増大させる、追加の能動的赤外線放射器及び検出器を必要とする。同様に、それらの技術は、干渉信号、鏡面反射、及び周囲赤外線を感知しやすい傾向があり、よって、それらの野外での実行可能性を制限する。
【0006】
上記説明された様々な画像捕捉ハードウェアの技術的制限及び複雑性は、ライトフィールド捕捉技術の拡散への著しい障壁を表し、ライトフィールド画像を処理する複雑性は、著しいゲーティング因子を残す。まず、現代のカメラ解像度における未加工且つ非圧縮の従来の二次元(x、y)画像は、サイズにおいて50メガバイトの位数にあることがある。同等の四次元(x、y、u、v)ライトフィールド画像は、ギガバイトに近い、より大きい規模の位数である。そのようなデータサイズは、バス帯域幅及びメモリ転送速度と共に純粋な記憶空間の利用可能性の観点から、従来のコンピューティングシステム及び携帯電話システムの制限を押し上げる。したがって、実用的なライトフィールドデバイスは、モバイルデバイスに典型的な現代のシステムオンチップアーキテクチャを使用して機能するために、莫大且つ効率的な圧縮を必要とする。
【0007】
立体視覚アプローチは、ライトフィールドシーンを再構築することができる前の特徴マッチング及び整流を含む複雑な計算ステップを本質的に必要とする。マイクロレンズ効果アプローチは、ハードウェアにより誘導された、画像のダウンサンプルされた性質に起因して、本来のカメラ解像度において画像を戻すために画像内の画素数と共に計算コストにおいて指数関数的に増加する集中的非線形再構築アルゴリズムを必要とする。タイムオブフライト及び他の能動的照射アプローチは、強度画像を捕捉しないことが多く、二次モノクロまたはカラー捕捉デバイスを必要とする。捕捉された奥行マップは次いで、ライトフィールドシーンを処理することができる前に、強度画像によりステッチされる必要がある。赤外線カメラシステムは、強度捕捉デバイスに対して非常に低い解像度を有することが多い。このハードウェアの制限は、奥行マップ空間分解能を強度画像の空間分解能に一致させるために、更なるソフトウェアに基づくアップサンプリングを必要とする。
【0008】
したがって、直接のハードウェア圧縮及び効率的な計算再構築アルゴリズムを組み合わせることができる3Dライトフィールド画像を取得及び処理する技術の開発において課題が残る。
【発明の概要】
【0009】
本説明は概して、奥行マッピング及び他の3D撮像用途のためのライトフィールド撮像技術に関する。
【0010】
本説明は、3D撮像用途において、光学波面センサによって獲得されたライトフィールド画像データを処理する方法を提供する。特に、開示される方法は、シーンから発散する光学波面に関するライトフィールド情報から観察可能なシーンの3Dまたは奥行画像を生成または再構築するために使用されてもよい。
【0011】
一態様に従って、シーンの三次元画像データを捕捉する方法が提供され、方法は、
a)回折された光学波面を生成するよう、格子軸に沿った格子間隔を有する回折格子パターンに従ってシーンから生じる光学波面を回折することと、
b)各々が色フィルタと関連付けられた複数の感光画素を含む画素アレイを使用して、近接場領域内で回折された光学波面を検出し、それによって、画素データを獲得することであって、色フィルタは、一次色と関連付けられた異なる隣接した画素が当該回折された光学波面の全サイクルにわたって回折された光学波面の異なる空間的部分を検出するように配列された一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成し、画素アレイは、格子間隔よりも短い格子軸に沿った画素ピッチを有する、検出することと、
c)当該一次色及び二次色に従って、画素データを対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに解析することと、
d)一次色チャネルと関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルの主基底成分及び主変調成分を判定することと、
e)二次チャネルの各々と関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルの二次基底成分及び二次変調成分を判定することと、
f)主基底成分及び二次基底成分を使用して、シーンの2D画像を再構築することと、
g)当該色チャネルの関連する1つの変調成分から物体距離情報を提供するよう較正された少なくとも1つの色放射伝達関数を使用して、シーンの奥行マップを作成することと、
を含む。
【0012】
この方法のいくつかの実装態様では、各々の色放射伝達関数は、関連する色チャネルの回折された光学波面の強度プロファイルを、当該検出するステップのために使用される画像捕捉デバイスの対応する焦点平面に関連付ける。物体距離情報は、物体(z)~2D画像×CRTFとなるような関係から獲得されてもよく、zは、画像捕捉デバイスの焦点平面からのシーン内の所与の物体の距離であり、2D画像は、ステップf)において再構築された2D画像であり、CRTFは、焦点平面からの極座標r、φ、θ、画素数n、及び入射波長λの適合された5D関数から獲得された放射伝達関数である。
【0013】
この方法のいくつかの実装態様では、ステップe)の二次基底成分及び二次変調成分を判定することは、隣接したバンクが強め合う干渉オフセットまたは弱め合う干渉オフセットを有するかどうかを判定するために、当該画素の当該隣接したバンクについての一次色チャネルと関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルを使用することを含む。
【0014】
この方法のいくつかの実装態様では、ステップf)の2D画像を再構築することは、主基底成分を使用して、二次基底成分を正規化することを含む。
【0015】
この方法のいくつかの実装態様では、ステップf)の2D画像を再構築することは、
-当該物体距離情報を獲得するために、主変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用することと、
-当該2D画像内の光学波面の回折からのアーチファクトを補償するために、当該物体距離情報を考慮して二次変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用することと、
を含む。
【0016】
この方法のいくつかの実装態様では、ステップg)の奥行マップを作成することは、主変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、粗い奥行マップを作成することを含む。
【0017】
この方法のいくつかの実装態様では、
粗い奥行マップを作成することは、
-一次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、当該一次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、一次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含む。
【0018】
奥行マップを作成することはまた、1つ以上の二次変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、当該粗い奥行マップを補正することを含んでもよい。
【0019】
この方法のいくつかの実装態様では、当該粗い奥行マップを補正することは、
-各々の二次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、関連する二次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、各々の二次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含む。
【0020】
この方法のいくつかの実装態様では、色モザイクは、当該二次色のうちの2つを定義する。
【0021】
この方法のいくつかの実装態様では、一次色チャネルは、緑色チャネルであり、二次色チャネルは、赤色チャネル及び青色チャネルであり、当該関連する色放射伝達関数はそれぞれ、緑色放射伝達関数GRTF、赤色放射伝達関数RRTF、及び青色放射伝達関数BRTFを定義する。色モザイクは、Bayerパターンであってもよい。ステップg)の奥行マップを作成することは、
i.
-緑色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、緑色放射伝達関数GRTFとの比較から、緑色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって、粗い奥行マップを作成することと、
ii.
-赤色及び青色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、赤色放射伝達関数RRTF及び青色放射伝達関数BRTFとの比較から、赤色及び青色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって当該粗い奥行マップを補正することと、
を含んでもよい。
【0022】
別の態様に従って、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、シーンから生じ、格子軸に沿った格子間隔を有する回折格子パターンに従って回折された、回折された光学波面からシーンの三次元画像データを獲得するためのコンピュータ実行可能命令をそ有する、当該非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、回折された光学波面は、各々が色フィルタと関連付けられた複数の感光画素を含む画素アレイを使用して近接場領域内で回折されて、それによって、画素データを獲得し、色フィルタは、一次色と関連付けられた異なる隣接した画素が当該回折された光学波面の全サイクルにわたって回折された光学波面の異なる空間的部分を検出するように配列された一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成し、画素アレイは、格子間隔よりも短い格子軸に沿った画素ピッチを有し、コンピュータ実行可能命令は、画素データを受信したプロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、
a)当該一次色及び二次色に従って、画素データを対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに解析することと、
b)一次色チャネルと関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルの主基底成分及び主変調成分を判定することと、
c)二次チャネルの各々と関連付けられた回折された波面の強度プロファイルの二次基底成分及び二次変調成分を判定することと、
d)主基底成分及び二次基底成分を使用して、シーンの2D画像を再構築することと、
e)当該色チャネルの関連する1つの変調成分から物体距離情報を提供するよう較正された少なくとも1つの色放射伝達関数を使用して、シーンの奥行マップを作成することと、
を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0023】
いくつかの実装態様では、各々の色放射伝達関数は、関連する色チャネルの回折された光学波面の強度プロファイルを、当該検出するステップのために使用される画像捕捉デバイスの対応する焦点平面に関連付ける。物体距離情報は、物体(z)~2D画像×CRTFとなるような関係から獲得され、zは、画像捕捉デバイスの焦点平面からのシーン内の所与の物体の距離であり、2D画像は、ステップd)において再構築された2D画像であり、CRTFは、放射伝達関数である。CRTFの値は、焦点平面からの極座標r、φ、θ、画素数n、及び入射波長λのフィッティング関数から獲得される。
【0024】
いくつかの実装態様では、ステップc)の二次基底成分及び二次変調成分を判定することは、隣接したバンクが強め合う干渉オフセットまたは弱め合う干渉オフセットを有するかどうかを判定するために、当該画素の当該隣接したバンクについての一次色チャネルと関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルを使用することを含む。
【0025】
いくつかの実装態様では、ステップd)の2D画像を再構築することは、主基底成分を使用して、二次基底成分を正規化することを含む。
【0026】
いくつかの実装態様では、ステップd)の2D画像を再構築することは、
-当該物体距離情報を獲得するために、主変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用することと、
-当該2D画像内の光学波面の回折からのアーチファクトを補償するために、当該物体距離情報を考慮して二次変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用することと、
を含む。
【0027】
いくつかの実装態様では、ステップe)の奥行マップを作成することは、主変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、粗い奥行マップを作成することを含む。粗い奥行マップを作成することは、
-一次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、当該一次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、一次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含んでもよい。
【0028】
いくつかの実装態様では、奥行マップを作成することは、1つ以上の二次変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、当該粗い奥行マップを補正することを含む。当該粗い奥行マップを補正することは、
-各々の二次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、関連する二次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、各々の二次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含んでもよい。
【0029】
いくつかの実装態様では、色モザイクは、当該二次色のうちの2つを定義する。
【0030】
いくつかの実装態様では、一次色チャネルは、緑色チャネルであり、二次色チャネルは、赤色チャネル及び青色チャネルであり、当該関連する色放射伝達関数はそれぞれ、緑色放射伝達関数GRTF、赤色放射伝達関数RRTF、及び青色放射伝達関数BRTFを定義する。色モザイクは、Bayerパターンであってもよい。ステップe)の奥行マップを作成することは、
i.
-緑色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、緑色放射伝達関数との比較から、緑色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって、粗い奥行マップを作成することと、
ii.
-赤色及び青色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、赤色放射伝達関数及び青色放射伝達関数との比較から、赤色及び青色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって、当該粗い奥行マップを補正することと、
を含んでもよい。
【0031】
別の態様に従って、シーンの三次元画像データを捕捉する方法が提供され、方法は、
a)回折された波面を生成するよう、格子軸に沿った格子間隔を有する回折格子パターンに従ってシーンから生じる光学波面を回折することと、
b)各々が色フィルタと関連付けられた複数の感光画素を含む画素アレイを使用して、近接場領域内で回折された光学波面を検出し、それによって、画素データを獲得することであって、色フィルタは、一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成する、検出するステップと、
c)当該一次色及び二次色に従って、画素データを対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに解析することと、
d)一次色チャネルと関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルの主基底成分及び主変調成分を判定することと、
e)二次チャネルの各々と関連付けられた回折された波面の強度プロファイルの二次基底成分及び二次変調成分を判定することと、
f)当該色チャネルの関連する1つの変調成分から物体距離情報を提供するよう較正された少なくとも1つの色放射伝達関数を使用して、シーンの奥行マップを作成することと、
を含む。
【0032】
いくつかの実装態様では、画素アレイは、格子間隔以上の格子軸に沿った画素ピッチを有し、当該方法は、色彩的に依存した集束光学系を使用して、シーンから生じる光学波面を収束する事前ステップを更に含む。
【0033】
いくつかの実装態様では、各々の色放射伝達関数は、関連する色チャネルの回折された光学波面の強度プロファイルを、当該検出するステップのために使用される画像捕捉デバイスの対応する焦点平面に関連付ける。
【0034】
いくつかの実装態様では、ステップf)の奥行マップを作成することは、主変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、粗い奥行マップを作成することを含む。粗い奥行マップを作成することは、
-一次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、当該一次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、一次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含んでもよい。
【0035】
いくつかの実装態様では、奥行マップを作成することは、1つ以上の二次変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、当該粗い奥行マップを補正することを含む。当該粗い奥行マップを補正することは、
-各々の二次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、関連する二次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、各々の二次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含んでもよい。
【0036】
いくつかの実装態様では、一次色チャネルは、緑色チャネルであり、二次色チャネルは、赤色チャネル及び青色チャネルであり、当該関連する色放射伝達関数はそれぞれ、緑色放射伝達関数GRTF、赤色放射伝達関数RRTF、及び青色放射伝達関数BRTFを定義する。色モザイクは、Bayerパターンであってもよい。ステップf)の奥行マップを作成することは、
i.
-緑色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、緑色放射伝達関数との比較から、緑色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって粗い奥行マップを作成することと、
ii.
-赤色及び青色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、赤色放射伝達関数及び青色放射伝達関数のそれぞれとの、並びに当該緑色放射伝達関数との比較から、赤色チャネル及び青色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって、当該粗い奥行マップを補正することと、
を含んでもよい。
【0037】
更なる別の態様に従って、非一時的コンピュータ可読記憶媒体に記憶され、シーンから生じ、格子軸に沿った格子間隔を有する回折格子パターンに従って回折された、回折された光学波面からシーンの三次元画像データを獲得するためのコンピュータ実行可能命令を有する、非一時的コンピュータ可読記憶媒体であって、回折された光学波面は、各々が色フィルタと関連付けられた複数の感光画素を含む画素アレイを使用して近接場領域内で回折されて、それによって、画素データを獲得し、色フィルタは、一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成し、コンピュータ実行可能命令は、画素データを受信したプロセッサによって実行されるとき、プロセッサに、
a)当該一次色及び二次色に従って、画素データを対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに解析することと、
b)一次色チャネルと関連付けられた回折された光学波面の強度プロファイルの主基底成分及び主変調成分を判定することと、
c)二次チャネルの各々と関連付けられた回折された波面の強度プロファイルの二次基底成分及び二次変調成分を判定することと、
d)当該色チャネルの関連する1つの変調成分から物体距離情報を提供するよう較正された少なくとも1つの色放射伝達関数を使用して、シーンの奥行マップを作成することと、
を実行させる、非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0038】
いくつかの実装態様では、画素アレイは、格子間隔以上の格子軸に沿った画素ピッチを有し、当該方法は、色彩的に依存した集束光学系を使用して、シーンから生じる光学波面を収束する事前ステップを更に含む。
【0039】
いくつかの実装態様では、各々の色放射伝達関数は、関連する色チャネルの回折された光学波面の強度プロファイルを、当該検出するステップのために使用される画像捕捉デバイスの対応する焦点平面に関連付ける。
【0040】
いくつかの実装態様では、ステップd)の奥行マップを作成することは、主変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、粗い奥行マップを作成することを含む。
【0041】
いくつかの実装態様では、粗い奥行マップを作成することは、
-一次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、当該一次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、一次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含む。
【0042】
いくつかの実装態様では、粗い奥行マップを作成することは、1つ以上の二次変調成分及び関連する色放射伝達関数を使用して、当該粗い奥行マップを補正することを含む。当該粗い奥行マップを補正することは、
-各々の二次色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、関連する二次色チャネルと関連付けられた色放射伝達関数との比較から、各々の二次色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
を含んでもよい。
【0043】
いくつかの実装態様では、一次色チャネルは、緑色チャネルであり、二次色チャネルは、赤色チャネル及び青色チャネルであり、当該関連する色放射伝達関数はそれぞれ、緑色放射伝達関数GRTF、赤色放射伝達関数RRTF、及び青色放射伝達関数BRTFを定義する。色モザイクは、Bayerパターンであってもよい。
【0044】
いくつかの実装態様では、ステップd)の奥行マップを作成することは、
i.
-緑色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、緑色放射伝達関数との比較から、緑色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって、粗い奥行マップを作成することと、
ii.
-赤色チャネル及び青色チャネルについての相対的な位相情報を、それに関連付けられた主変調成分から獲得することと、
-当該相対的な位相情報と、赤色放射伝達関数及び青色放射伝達関数のそれぞれとの、並びに当該緑色放射伝達関数との比較から、赤色チャネル及び青色チャネルについての絶対的な位相情報を獲得することと、
によって、当該粗い奥行マップを補正することと、
を含む。
【0045】
態様に従って、奥行取得のための画像処理方法が提供される。方法は、連続したライトフィールドまたは観察可能なシーンから入射する波面の離散化されたサンプリングを表すライトフィールド画像データを処理することを可能にする。ライトフィールド画像データは、回折格子アセンブリによって回折され、任意選択で、画像データ画素のアレイにマッピングされたモザイク色パターンに従って後続でスペクトル的にフィルタリングされた入射波面の空間的分散を表す画像データ画素のアレイを形成する。回折格子アセンブリは、回折格子アセンブリの前方に設けられた集束光学素子によって生じることがある、入射波面の拡散の湾曲及び速度に関連する角度依存回折パターンを有する回折された波面を生成するために使用される。色の用途では、回折された波面は更に、下層の色フィルタアレイによって2つ以上の離散スペクトル成分にスペクトル的にフィルタリングされてもよい。このスペクトル的にフィルタリングされた、回折された波面の強度は、典型的にはデータ画素の行及び列の画像フレームに配列された、ライトフィールド画像データを提供するよう下層の画素によって最終的に測定される。このライトフィールド画像データは概して、画素レベルにおいてサンプリングされた、元の波面に関する強度、スペクトル、及び角度情報の集合である。本画像処理方法は、奥行マップを取得し、観察されたシーンのライトフィールド画像を再構築するよう、このライトフィールド画像データを処理することができる。
【0046】
いくつかの実装態様では、画像処理方法は、以下のステップのうちの少なくともいくつかを含むことができる。
-モザイク色パターンに従って、画像データ画素を複数の個々のスペクトルまたは色チャネルに分割すること。色チャネルは、少なくとも1つの主色チャネル及び少なくとも1つの二次色チャネルを含むことができ、各々の色チャネルは、画像データ画素の一部を包含する。主色チャネルは、二次色チャネルとは異なり、全サイクルにわたって回折された波面の異なる空間的部分(すなわち、位相成分)をサンプリングする画素を含む。例として、1つのとり得る実装態様では、画像データ画素は、緑色、赤色、及び青色チャネルに分割されてもよく、緑色チャネルは、赤色及び青色チャネル(Bayerパターン)と比較して、二重にサンプリングされ、主チャネルとして作用し、赤色及び青色チャネルのいずれかまたは両方は、二次チャネルとして作用する。
-主色チャネルと関連付けられた基底成分及び変調成分を判定すること。概して、ライトフィールド画像データは、基底成分及び変調成分を含む変調された関数として表されてもよい。基底成分は、シーンの従来の2D画像を獲得することができる非位相依存光学波面を表し、変調成分は、回折格子アセンブリによって生成された入射波面への位相依存摂動からもたらされる。
-主チャネルの基底成分及び変調成分から、少なくとも1つの二次チャネルの基底成分及び変調成分を判定すること。
-主基底成分を正規化基底系として使用して、主基底成分及び二次基底成分を使用してシーンのフルカラー2D画像を再構築すること。
-主変調成分、及び、任意選択で、二次変調成分(複数可)から奥行マップを作成すること。
【0047】
いくつかの実装態様では、変調成分は、奥行マップを生成することができる、入射光学波面に関する角度または位相情報を提供することができる。特に、変調成分に包含される角度位相及び奥行は、画像捕捉デバイスのレンズシステムによって生成された波面の拡散及び傾きの速度を介してリンク付けされてもよい。したがって、いくつかの実装態様では、画像捕捉デバイスの焦点位置を知ることが、絶対的な奥行マッピングに対して必要とされるが、相対的な奥行マッピングに対しては必要とされない。
【0048】
変調成分に包含される波面拡散情報は、変調成分によって提供される相対的な位相情報から絶対的な位相情報を獲得するよう、事前に較正された、センサ特有色彩放射伝達関数(CRTF)と比較されてもよい。いくつかの実装態様では、変調成分によって提供される相対的な位相情報は、CRTFを使用して波面拡散にマッピングされてもよく、この波面拡散自体は、画像捕捉デバイスの焦点平面に対する物体位置に対応する。いくつかの実装態様では、粗い奥行マップは、二次変調成分によって粗い奥行マップを補正または強化することができる、主変調成分によって提供されてもよい。
【0049】
いくつかの従来の技術では、奥行マッピングは、ステレオカメラのような、各々の平面内での2つの異なるライトフィールド視点の間の相違を生成することによって達成されてもよい。すなわち、そのような従来の技術は、必然的に奥行を与えないが、2つ以上の平面の間の相違または視差などから、奥行ライトフィールド情報を計算する。対照的に、本技術のいくつかでは、極座標内の物体の波面の角拡散は、極座標内で測定され、それは、ライトフィールドの比較を通じて相違を生成する必要なく、角拡散を奥行に直接マッピングすることができるが、そのようにすることも排除しない。言い換えると、本技術のいくつかは、本質的に奥行情報を捕捉し、次いで、ライトフィールド画像を構築するためにこの奥行情報を使用する。
【0050】
上記説明されたステップの前、間、または後に他の方法及び処理ステップが実行されてもよいことに留意されたい。また、用途に応じて、ステップのうちの1つ以上の順序は異なってもよく、ステップのうちのいくつかは省略されてもよく、繰り返されてもよく、及び/または組み合わされてもよい。
【0051】
別の態様に従って、そこに記憶されたコンピュータプログラムを有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体が提供され、コンピュータプログラムは、ライトフィールド画像データを処理し、及び/または特徴付けるように動作可能であり、コンピュータプログラムは、本明細書で開示される方法の様々なステップを実行するよう1つ以上のプロセッサに命令する。
【0052】
本説明の他の特徴及び利点は、添付図面を例としてのみ参照すると仮定して、その特定の実施形態の以下の非限定的な説明を読むとより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができるライトフィールド捕捉デバイスの実施例の概略的な斜視図である。
【
図2】
図1のライトフィールド捕捉デバイスの概略的な部分的な分解斜視図である。
【
図3】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができる、前側照射構成にあるライトフィールド捕捉デバイスの別の実施例の概略的な側面図である。
【
図4】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができる、後側照射構成にあるライトフィールド捕捉デバイスの別の実施例の概略的な側面図である。
【
図5】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができるライトフィールド捕捉デバイスの別の実施例の概略的な部分的な分解側面図であり、デバイスを通じた光の波面の伝播が概略的に表される。
【
図6A】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができるライトフィールド捕捉デバイスの他の実施例の概略的な部分的に透明な上面図であり、ここで、回折格子の格子軸は、画素軸のいずれとも位置合わせされない。
【
図6B】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができるライトフィールド捕捉デバイスの他の実施例の概略的な部分的に透明な上面図であり、ここで、回折格子の格子軸は、画素軸のいずれとも位置合わせされない。
【
図7】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができるライトフィールド捕捉デバイスの別の実施例の概略的な斜視図であり、回折格子アセンブリが格子縞パターンを定義するよう行及び列の両方に交互に配列された直交して方位付けられた回折格子の2つの組を含む。
【
図8】本技術を使用して処理されることになるライトフィールド画像データを獲得するために使用することができるライトフィールド捕捉デバイスの別の実施例の概略的な側面図である。ライトフィールド捕捉デバイスは、回折格子アセンブリの前方に配置され、回折格子アセンブリに到達する前にシーンから生じる光学波面を空間的-スペクトル的に拡散する集束光学系を含む。
【
図9】とり得る実施形態に従った、画像処理方法のフローチャートである。
【
図10】1つの変形に従った色放射伝達関数を構築するデータの取得を例示する図である。
【
図11】A~Dは、
図10に示された各々の画素上の測定された画素電圧の実施例を例示する。
【
図12】A及びBは、色放射伝達関数の例示的な表現である。
【
図13】測定する光の均一な強度を知ることにより二次色彩放射伝達関数を獲得し、角度または距離に応じて二次色チャネル変調を獲得する技術を例示する。
【
図14】正規化された、シーン独立の値を取得して、二次色彩放射伝達関数をナビゲートするために一次放射色彩伝達関数を使用する技術を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本説明では、過度に図面を阻害しないよう、図面における同様の特徴に対して同様の参照符号が与えられており、いくつかの要素は、それらが先の図において既に特定されている場合にいくつかの図において示されないことがある。図面の要素は、本実施形態の要素及び構造を明確に例示する上で強調されるので、必ずしも縮尺通りに表されないことが理解されるべきである。
【0055】
本説明では、他に述べられない限り、用語「接続された(connected)」及び「結合された(coupled)」と共に、その変形及び派生は、2つ以上の要素の間の直接または間接的のいずれかでのいずれかの接続または結合を指す。要素の間の接続または結合は、機械的、光学的、電気的、動作的、またはそれらの組み合わせであってもよい。また、他に示されない限り、1つの要素の別の要素に対する位置または方位を示す位置的な記述及び他の同様の用語は、説明を容易にかつ簡潔にするために本明細書で使用され、図面のコンテキストにおいて解釈されるべきであり、限定するものと考えられるべきでないことを認識されたい。そのような空間的に相対的な用語は、図面において例示される方位に加え、本実施形態の使用または動作における異なる方位を網羅することを意図することを理解されたい。特に、本説明では、2つの要素の間の相対的な空間的関係を指定する際の用語「その上(over)」及び「その下(under)」は、2つの要素が相互に直接接触し、または1つ以上の介在要素によって相互に分離される、のいずれかであってもよいことを表すことに留意されたい。本説明では、用語「a」、「an」、及び「one」は、「少なくとも1つの(at least one)」を意味するために定義され、すなわち、それらの用語は、他に特に指定されない限り、複数の項目を排除しない。
【0056】
本説明は概して、3D撮像用途において、シーンの三次元画像データを捕捉し、光学波面センサによって獲得されたライトフィールド画像データを処理する技術に関する。特に、本説明は、シーンから発散する光学波面に関するライトフィールド情報から観察可能なシーンの3Dもしくは奥行画像、または組み合わされた2D画像及び奥行マップを生成または構築する技術を開示する。
【0057】
本説明では、用語「提供する(providing)」は、広義に使用され、それに限定されないが、使用のために利用可能とし、取得し、獲得し、アクセスし、供給し、受信し、割り当て、及び取り出すことを指す。例として、いくつかの実装態様では、処理されることになるライトフィールド画像データを提供することは、ライトフィールド捕捉デバイスを使用してライトフィールド画像データを直接取得し、よって、取得されたライトフィールド画像データを利用可能にする動作を伴うことができる。しかしながら、他の実装態様では、ライトフィールド画像データを提供することは、例えば、データベースまたは記憶媒体から、前に取得されたライトフィールド画像データを取り出しまたは受信する動作を伴うことができる。
【0058】
いくつかの実装態様では、本技術は、適切な色彩符号化機構と対になった1つ以上の回折光学素子と共に、3D撮像におけるその使用により回折の色彩依存の特定の操作及び比較を伴う。いくつかの実装態様では、3D画像に処理されることになるライトフィールド画像データは、モザイク色パターンに従って、回折格子及びスペクトルフィルタリングによる回折の後のライトフィールドの空間的-スペクトル分散を表す画像データ画素のアレイを形成する。
【0059】
いくつかの実装態様では、本明細書で開示される技術は、光学波面の回折の色彩依存、入射の角度、位相、及び偏光の直接の測定を可能にする、生成された干渉または回折格子パターンの特定の空間的-スペクトルサブサンプリングを通じた、観察可能なシーンから生じる光学波面の強度だけでなく、波長にも感度が高い。したがって、ライトフィールド撮像デバイス、例えば、奥行カメラは、典型的には光強度を記録するにすぎない従来のカメラよりも多くの情報を取得することができる。ライトフィールド捕捉デバイスによって捕捉された未加工画像データは、それに限定されないが、3D奥行マップ抽出、3D表面再構築、及び画像再集束などを含む複数の機能を提供する様々な方式において使用または処理されてもよい。用途に応じて、観察可能なシーンのライトフィールド画像データは、1つ以上の静止画像またはビデオストリームとして取得されてもよい。すなわち、各々の個々の捕捉されたフレームは概して、個々のライトフィールドシーンを生成するための全ての関連する情報を包含する。それらのフレーム、及びそれらの後続のライトフィールドシーンは、ビデオストリームのように作用するように組み合わされ、連続して再生されてもよい。
【0060】
例えば、ユーザがシーンの捕捉された画像の焦点、視点、及び/または視野の奥行を変更することを可能にする、強化された奥行センシング及び他の3D撮像能力を必要とし、またはそれらから利点を得ることができる撮像用途において本技術を使用することができる。非限定的な典型的な観察可能なシーンの例は、人が携帯電話でそれらの前向きカメラを使用して自撮りしていること、車が横断している歩行者との交差点及び停止標識に近づいていること、車が詰まった駐車スポットに駐車しようとしていること、並びに個人の手が仮想または拡張現実シーンと相互作用するようジェスチャすること、などを含む。
【0061】
本技術は、限定することなく、プレノプティック記述を使用したライトフィールド撮像用途、回折の色彩依存の比較分析を通じた測距用途、及び単一センサの単一画像奥行取得用途を含む、様々なタイプの3D撮像システム及び方法において適用または実装されてもよい。本技術の特定の実装態様の非包括的な有利性及び利点は、それらの関数を実行より少ない電力を採用する受動的センシング様式との互換性、減少したフットプリントを有する単一センサアーキテクチャとの互換性、2D性能を保ちつつ奥行マッピング関数を可能にすること、既存の画像センサハードウェア及び製造工程への単純且つ低コストの統合、従来のCMOS及びCCD画像センサとの互換性、並びにデュアルカメラまたは奥行検出のための能動的照明システムを備えたカメラなどの複数の構成要素に対する必要性を除去することを含むことができる。
【0062】
本説明では、用語「光(light)」及び「光学(optical)」は、電磁気スペクトルのいずれかの適切な領域における放射を指すために使用される。特に、用語「光」及び「光学」は、可視光に限定されないが、限定することなく、テラヘルツ(THz)、赤外線(IR)、及び紫外線(UV)スペクトル帯域を含む不可視領域の電磁気スペクトルも含むことができる。いくつかの実装態様では、用語「光」及び「光学」は、遠紫外線における約175ナノメートル(nm)からテラヘルツの範囲にある約300マイクロメートル(μm)まで、例えば、可視スペクトルの青端における約400ナノメートルから電気通信波長における約1550ナノメートルまで、または典型的な赤-緑-青(RGB)色フィルタのスペクトル範囲に一致する約400ナノメートル~約650ナノメートルの範囲にある波長を有する電磁気放射を網羅することができる。しかしながら、当業者は、それらの波長範囲が例示的な目的のために提供され、本技術がそれらの範囲を超えて動作してもよいことを理解するであろう。
【0063】
本説明では、用語「色(color)」及び「色彩(chromatic)」、並びにその変形及び派生は、可視電磁気放射(赤、緑、及び青)の人間の感知のそれらの通常のコンテキストにおいて使用されるだけでなく、より広義に、電磁気スペクトルのいずれかの適切な領域上でのスペクトル特性(例えば、回折、透過、反射、分光、吸収)を記述するためにも使用される。このコンテキストでは、他に指定されない限り、用語「色」及び「色彩」、並びにそれらの派生は、用語「スペクトル(spectral)」及びその派生と交換可能に使用されてもよい。
【0064】
本技術は、様々なタイプのライトフィールド捕捉デバイスにより捕捉された未加工ライトフィールド画像データを処理するために使用されてもよい。そのようなデバイスの非限定的な実施例は、以下で説明され、
図1~
図11において例示される。本明細書で説明される画像処理技術を使用して処理することができるライトフィールド画像データを取得することが可能なライトフィールド捕捉デバイスの他の非限定的な実施例は、それらの全体を参照することによってその内容が本明細書に組み込まれる、共同出願された国際特許出願第PCT/CA2017/050686号において開示される。
【0065】
発明の別の態様に従って、コンピュータによって実行されるとき、本明細書で開示される画像処理方法の様々なステップを実行することができる、コンピュータ実行可能命令を記憶したコンピュータ可読メモリが提供される。
【0066】
本明細書で使用されるように、用語「コンピュータ可読メモリ(computer readable memory)」は、本明細書で開示される画像処理方法の様々なステップの実施のために実行可能命令を記憶及び通信することができる非一時的且つ有形コンピュータ製品を指すことが意図される。コンピュータ可読メモリは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)もしくは動的RAMなどの一時的記憶ユニット、ハードディスクなどの永続的記憶装置、CDもしくはDVD(リライタブルもしくはライトワンス/リードオンリ)などの光学式記憶装置、フラッシュメモリ、及び/または他の非一時的メモリ技術を含む、いずれかのコンピュータデータ記憶装置またはそのような装置のアセンブリであってもよい。当業者によって理解することができるように、複数のそのような記憶装置が設けられてもよい。コンピュータ可読メモリは、コンピュータと関連付けられた様々な機能と関連してコンピュータ可読メモリに記憶された命令を実行するように構成されたコンピュータと関連付けられてもよく、結合されてもよく、または含まれてもよい。
【0067】
本明細書で使用されるように、用語「コンピュータ(computer)」は、本明細書で開示される画像処理方法の様々なステップを実行するために必要とされる命令を少なくとも部分的に制御及び実行することができる、電子回路を含むいずれかのコンピューティングユニットもしくはコンピューティングデバイス、またはプロセシングユニットもしくはプロセシングデバイスを広義に差す。コンピュータは、プロセシングユニットとして集合的に動作するように構成された、汎用コンピュータ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プロセシングコア、もしくは他の処理リソース、またはそのようなコンピュータもしくは処理リソースのいずれかの組み合わせによって具体化されてもよい。例えば、いくつかの実装態様では、本明細書で説明される画像処理方法を実施するプロセシングユニットは、システムオンチップ(SoC)上で稼働する画像信号プロセッサ(ISP)もしくはデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、グラフィックプロセシングユニット(GPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0068】
いくつかの実装態様では、本明細書で開示される処理方法のステップの全ては、単一のプロセッサによって達成されてもよく、他の実装態様では、そのような方法のステップのうちの1つ以上は、異なるプロセッサ上でまたは異なる物理位置において実行されてもよいことが容易に理解されたい。更に、いくつかの実装態様では、画像データの処理は、ライトフィールドの取得を実行するのと同一のデバイス、例えば、電話またはタブレットによって実行されてもよく、他の実装態様では、ライトフィールド画像データは、異なる位置またはデバイスに伝送されてもよく、別個に処理されてもよい。
【0069】
いくつかの実装態様では、観察可能なシーンから入射する連続光学波面の離散化サンプリングを表すライトフィールド画像データに対して処理し、またはそうでなければ動作する方法が提供される。ライトフィールド画像データは、回折格子アセンブリによる回折、任意選択で、画像データ画素のアレイにマッピングされたモザイク色パターンに従った後続のスペクトルフィルタリングの後の光学波面の空間的分散を表す画像データ画素のアレイとして提供されてもよい。
【0070】
図1及び
図2を参照して、いくつかの実施形態に従った、シーンの三次元データを捕捉する方法のコンテキストにおいて使用されてもよい、観察可能なシーン22に関する未加工ライトフィールドまたは奥行画像データを捕捉するライトフィールド捕捉デバイス20の実施例の概略的な表現が提供される。本説明では、用語「ライトフィールド捕捉デバイス(light field capture device)」は、シーンから発散するライトフィールドまたは波面を表し、画像平面における光強度に関する情報だけでなく、例えば、そこから光線がデバイスに入る方向及びライトフィールドのスペクトルなどの他のライトフィールドパラメータに関する情報をも包含する、未加工画像データを捕捉することが可能ないずれかの画像捕捉デバイスを広義に差す。
【0071】
ライトフィールド捕捉デバイス20は、シーン22から生じる光学波面26を受信するように構成された回折格子アセンブリまたは構造24を含む。回折格子アセンブリ24は、各々が格子軸30、及び格子軸30に沿った格子間隔34を有する回折格子パターンまたは屈折率変調パターン32を有する、少なくとも1つの回折格子28を含むことができる。
図1及び
図2では、回折格子アセンブリ24は、単一の回折格子28を含むが、以下で説明されるように、他のデバイスでは、1つよりも多い回折格子が設けられてもよい。回折格子28は、入来する光学波面26を回折し、それによって、回折された光学波面36を生成するように構成される。
【0072】
なおも
図1及び
図2を参照して、ライトフィールド捕捉デバイス20はまた、回折格子アセンブリ24の下に配置され、回折された光学波面36をシーン22に関するライトフィールド画像データとして検出するように構成された複数の感光画素40を含む画素アレイ38を含む。ライトフィールド捕捉デバイス20はまた、画素アレイ38の上に配置された色フィルタアレイ42を含むことができる。色フィルタアレイ42は、各々が感光画素の1つと関連付けられた複数の色フィルタ44を含む。色フィルタは、モザイク色パターンに配列され、各々の色フィルタは、色フィルタアレイ42内でそれぞれの位置において色情報を捕捉するよう波長によって入射光をフィルタリングする。色フィルタアレイ42は、複数の感光画素40による回折された波面36の検出の前に、モザイク色パターンに従って回折された波面36を空間的及びスペクトル的にフィルタリングするように構成される。画素アレイによるその検出の前に回折格子アセンブリによって生成された回折された波面の直接空間的-色彩的サブサンプリングを実行するために色フィルタアレイを設けることによって、ライトフィールド捕捉デバイスは、以下で更に説明されるように、そのスペクトルコンテンツだけでなく、光の入射波面の角度及び強度にも感度が高くなることがある。
【0073】
用途または使用に応じて、ライトフィールド捕捉デバイスは、様々な画像センサアーキテクチャ及び画素アレイ構成を使用して実装されてもよい。例えば、ライトフィールド捕捉デバイスは、画素アレイ及び色フィルタアレイを含む既に存在する画像センサの最上部に回折格子アセンブリを追加または結合することによって単純に実装されてもよい。例えば、既存の画像センサは、従来の2D CMOSまたはCCD撮像装置であってもよい。しかしながら、他の実装態様では、ライトフィールド捕捉デバイスは、その構成要素(例えば、回折格子アセンブリ、画素アレイ、色フィルタアレイ)の全てまたはほとんどを組み込んだ別個の、専用の、及び/またはカスタム設計されたデバイスとして実装されてもよく、一体的にパッケージ化されてもよい。
【0074】
例えば、
図3及び
図4を参照して、いくつかの実装態様では、ライトフィールド捕捉デバイス20は、前側照射構成(
図3)では、回折格子アセンブリと画素アレイとの間で、または後側照射構成(
図4)では、画素アレイ38の下に、のいずれかに配置された画素アレイ回路86を含むことができる。特に、回折格子アセンブリ24は、前側照射アーキテクチャ(
図3)のケースでは重なったシリコン層に直接エッチング処理されてもよく、または後側照射アーキテクチャ(
図4)のケースではマイクロレンズアレイ64及び色フィルタアレイ42の上に直接置かれてもよい。マイクロレンズアレイ64は、画素アレイ38の上に配置され、複数のマイクロレンズ66を含む。各々のマイクロレンズ66は、感光画素40の対応する1つに光学的に結合され、その対応する感光画素40上のそれに入射する回折された波面36の空間的部分に集束するように構成される。
【0075】
前側照射技術では、画素アレイ回路86は、色フィルタ44をそれらの対応する感光画素40に接続する金属配線のアレイ(例えば、複数の金属相互接続層を組むシリコン層)を含む。一方で、後側照射技術は、回折格子アセンブリ24によって光学波形26の回折により生じた回折された波面36を直接サンプリングする機会を提供する。光が画素アレイ38に到達する前に画素アレイ回路86の金属配線のアレイを通過する必要がなく、それは、そうでなければ光の損失をもたらすので、周期性が増加してより活動的な回折格子設計を実装することができる。また、
図2に示されるように、より短い光学スタック構成は、回折格子アセンブリ24が画素アレイ38の受光面68に更に近くに近接して位置付けられることを可能にし、それによって、画素バンクの間で望ましくないクロストークを生じさせる、高次回折効果のリスクを減少させることができる。同様に、減少した画素サイズは、既存の撮像ウェルによる回折格子の直接のサブサンプリングを可能にすることができる。
【0076】
前の段落において導入された構成要素と共に、ライトフィールド捕捉デバイスの他のとり得る構成要素の構造、構成、及び動作に関する更なる詳細が以下で説明される。
【0077】
図1及び
図2に戻り、回折格子28は、色フィルタアレイ42にわたって延在する格子基板46を含む。格子基板46は、周期的な屈折率変調パターン32が形成された上面48、及び庭面50を有する。格子基板46は、回折された波面36がそれを通じて透過することを許容するスペクトル動作範囲において透明または十分に透明な材料から作成される。そのような材料の非限定的な実施例は、酸化シリコン(SiOx)、ポリマ、コロイド粒子、SU-8フォトレジスト、及びガラスを含む。例えば、いくつかの実装態様では、回折格子28は、約400ナノメートルから約1550ナノメートルまでの範囲にある波長帯において光学波面26を回折するように構成されてもよい。
【0078】
回折は、電磁気またはその他であるかに関わらず、波面が物理的物体または屈折率摂動に直面するときに発生する。波面は、物体の境界の周りで湾曲する傾向がある。周期的またはその他であるかに関わらず、波面が複数の物体に直面する場合、対応するウェーブレットは、Youngの重スリット実験によって証明されたように、初期の直面から或る程度の距離を離れて干渉することがある。この干渉は、元の直面からの距離に応じて、「回折格子パターン」または「回折パターン」または「干渉パターン」と称される、独特なパターンを生じさせ、それは、波面の入射角及びスペクトル成分、並びに直面された物体の全体的なサイズ、形状、及び相対的な空間関係の影響を受けやすい。この干渉は、Huygens-Fresnelの原理によって説明されるように、各々の対応するウェーブレットの発達する相対的な前面を通じて説明することができる。
【0079】
本説明では、用語「回折格子(diffraction grating)」、または単純に「格子(grating)」は概して、それに入射する光学波面の振幅及び/または位相を空間的に変調する周期的に変調された光学特性(例えば、屈折率変調パターン)を有する周期的構造を指す。回折格子は、透過回折マスク(TDM)とも称されてもよい。回折格子は、その空間間隔、格子間隔が光の波長とほぼ等しくまたは僅かに長い(例えば、最大で数倍長い)、回折素子の周期的配列(例えば、交互に尾根及び溝)を含むことができる。回折格子に入射する範囲の波長を包含する光学波面は、回折すると、その振幅及び位相が修正され、結果として、空間-時間依存の回折された波面が生成される。概して、回折格子は、入力光学波面の各々の波長が異なる方向に出力されるようにスペクトル的に分散的である。しかしながら、動作スペクトル範囲を超える相当な無彩色反応を示す回折格子が存在し、いくつかの実装態様において使用されてもよい。例えば、いくつかの実装態様では、回折格子は、対象のスペクトル範囲において無彩色であってもよく、対象のスペクトル範囲の中心波長に対して設計されてもよい。特に、Bayerパターン化色フィルタアレイのケースでは、回折格子を、緑色チャネル、すなわち、約532ナノメートルの中心波長の周りで最適化することができる。回折格子が無彩色であるとき、それは、回折された波面の回折パターンの色彩サブサンプリングを提供する色フィルタアレイのモザイク色パターンであることに留意されたい。
【0080】
回折格子を形成する回折素子が透過または反射するかどうかに応じて、回折格子は、「透過格子」または「反射格子」と称される。本明細書で説明される回折格子は、透過格子であるが、反射格子の使用も先験的(a priori)に排除されない。回折格子はまた、回折素子の性質に応じて、「振幅格子」または「位相格子」に分類されてもよい。振幅格子では、格子によって生じる初期波面への摂動は、直接振幅変調の結果であり、位相格子では、それらの摂動は、格子材料の屈折率の周期的変動によって生じる光の相対的なグループ速度の特定の変調の結果である。本明細書で説明される回折格子は、位相格子であるが、他の実装態様では、振幅格子も使用されてもよい。
【0081】
図1及び
図2では、回折格子28は、位相格子、特に、二値位相格子であり、それに対して屈折率変調パターン32は、格子間隔34において周期的に間隔を空けられ、また格子間隔34において周期的に間隔を空けられた一連の溝54と交互配置された一連の尾根52を含む。よって、屈折率変調パターン32の空間プロファイルは、2レベル階段関数または矩形波関数を示し、それに対し、格子間隔34は、格子軸30に沿った、1つの尾根52及び1つの隣接した溝54の幅の合計に対応する。格子間隔34は、約1マイクロメートルから約20マイクロメートルまでの範囲にあってもよいが、他の値も可能である。
図1及び
図2では、溝54は空であるが(すなわち、それらは空気により充填される)、それらは代わりに、尾根材料の屈折率とは異なる屈折率を有する材料により充填されてもよい。また、用途に応じて、回折格子28は、格子間隔34に対する尾根幅の比率として定義されるデューティサイクルと実質的に等しく、または50%異なるデューティサイクルを有してもよい。回折格子28の別のパラメータは、ステップ高56、すなわち、尾根52と溝54との間の段階における差である。例えば、ステップ高56は、約0.2マイクロメートルから約1マイクロメートルまでの範囲にあってもよい。いくつかのシナリオでは、ステップ高56は、回折格子28が隣接した尾根52と溝54との間で予め定められた光学経路差を生じさせるように選択されてもよい。例えば、ステップ高56は、光学波面の入射の所与の波長及び角度において(例えば、その中心波長)、尾根と溝との間の半波長光学経路差をもたらすよう制御されてもよい。もちろん、他の用途では、他の光学経路差値が使用されてもよい。
【0082】
図1及び
図2における回折格子28は線形であり、または矩形波屈折率変調パターン32を形成する並列した尾根52及び溝54の交互の組から構成された一次元の、二値位相格子であるが、他のライトフィールド捕捉デバイスは、格子間隔、デューティサイクル、及びステップ高の間で少なくとも1つが可変である回折格子、格子軸に垂直な非直線の特徴を有する回折格子、より精巧な屈折率プロファイルを有する回折格子、及び2D回折格子など、異なるタイプの回折格子を採用してもよいことに留意されたい。
【0083】
なおも
図1及び
図2を参照して、画素アレイ38は、それ自体が回折格子アセンブリ24の下に配置された、色フィルタアレイ42の下に配置された複数の感光画素40を含む。本技術では、感光画素40によってライトフィールド画像データとして検出された電磁気放射は、画素アレイ38に到達する前に回折されており、空間的-色彩的にフィルタリングされている、シーン22から入射する光学波面26に対応する。画素アレイ38は、CMOSまたはCCD画像センサによって具体化されてもよいが、他のタイプの光検出器アレイが代わりに使用されてもよい。上記言及されたように、画素アレイ38は、スペクトルのいずれかの適切な領域内で電磁気放射を検出するように構成されてもよい。画素アレイ38の各々の感光画素40は、それに入射する回折された波面36の空間的部分を蓄積電荷に変換することができ、蓄積電荷の量は、画素40によって集光及び記録された光の量に比例する。各々の感光画素40は、感光面、及び画素レベルにおいて信号を処理し、読み取り機などの他の電子機器と通信するための関連する画素回路を含むことができる。
【0084】
図1及び
図2を参照して、感光画素40は、2つの直交する画素軸58、60によって定義された行及び列の矩形グリッドに配列されてもよい。行及び列の数は、画素アレイ38の解像度を定義する。例えば、いくつかの実装態様では、画素アレイ38は、少なくとも16画素の解像度を有することができるが、他の用途では、最大で40メガ画素以上を含む広範な他の解像度値が使用されてもよい。感光画素40が
図1及び
図2では2Dアレイに編成されるが、他の用途では、それらは代わりに線形アレイとして構成されてもよいことに留意されたい。
【0085】
画素アレイ38はまた、画素ピッチ62によって特徴付けられてもよい。本説明では、用語「画素ピッチ(pixel pitch)」は概して、個々の画素40の間の間隔を指し、典型的には、隣接した画素40の間の中心から中心の距離として定義される。画素アレイ38の物理的配列に応じて、2つの直交する画素軸58、60に沿った画素ピッチ62は同一であってもよく、または同一でなくてもよい。画素ピッチはまた、任意の軸に沿って、例えば、2つの直交する画素軸58、60に対して45度に方位付けられた対角軸に沿って定義されてもよいことに留意されたい。また、本技術では、関連する画素ピッチ62は、
図1及び
図2に表されるように、重なった回折格子28の格子軸30に沿った1つであることに留意されたい。以下で更に詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、回折格子28の格子間隔34は、格子軸30に沿った画素アレイ38の画素ピッチ62よりも大きくなるように選択され、言い換えれば、格子軸30に沿った画素ピッチ62は、格子間隔34よりも小さい。例えば、いくつかの実装態様では、格子軸30に沿った画素ピッチ62は、1マイクロメートル以下から10マイクロメートルまでの範囲にあってもよいが、他の実装態様では、異なる画素ピッチ値が使用されてもよい。
【0086】
本説明では、用語「画素データ(pixel data)」は、各々の個々の画素によって捕捉された画像情報を指し、統合間隔にわたって各々の個々の画素によって吸収された光学エネルギーの総量を示す強度データを含むことができる。全ての画素40からの画素データを組み合わせることは、シーン22の周りの「未加工」ライトフィールド画像データを生み出す。本技術では、シーン22から入射する光学波面26が検出の前に回折され、空間的及びスペクトル的にフィルタリングされることを理由に、ライトフィールド画像データは、入射波面26の強度に関する情報だけでなく、入射のその角度、位相、及びスペクトル成分などの他のライトフィールドパラメータに関する情報をも提供する。特に、本技術は、以下で更に説明されるように、画素アレイ38によって捕捉された強度に基づく回折パターンからの奥行または他のライトフィールド情報の回復または抽出を可能にすることができることを理解されたい。
【0087】
図1及び
図2を参照して、色フィルタアレイ42は、画素アレイ38により空間的に記録され、その結果、各々の色フィルタ44は、感光画素40の対応する1つに光学的に結合される。すなわち、各々の色フィルタ44は、単一の感光画素40を覆い、その結果、色フィルタ44と感光画素40との間の1対1の関係またはマッピングが存在する。しかしながら、他の実装態様では、各々の色フィルタは、複数の感光画素の少なくとも2つの対応する1つに光学的に結合されてもよい。しかしながら、両方の構成では、色フィルタアレイ42及び画素アレイ38は共に、以下で詳述及び説明されるように、重なった回折格子アセンブリ24によって生じる回折された波面の直接空間的-色彩的サンプリングを可能にする。
【0088】
図1及び
図2では、色フィルタ44は、モザイク色パターンまたは構成に従って物理的に編成される。色フィルタは、一次色と関連付けられた異なる隣接した画素が回折された光学波面の全サイクルにわたって回折された光学波面の異なる空間的部分を検出するように配列された一次色及び1つ以上の二次色を定義した色モザイクを形成する。いくつかの実装態様では、各々の色フィルタ44は、赤色通過フィルタ、緑色通過フィルタ、及び青色通過フィルタのうちの1つである。例えば、
図1及び
図2では、色フィルタアレイ42のモザイク色パターンは、Bayerパターンであり、Bayerパターンでは、交互の赤色(R)及び緑色(G)フィルタの行と格子縞パターンに配列された色フィルタは、交互の緑色(G)及び青色(B)フィルタの行と交互配置される。Bayerパターンは、赤色または青色フィルタの2倍多くの緑色フィルタを包含し、その結果、モザイク色パターンの緑色成分は、一次的な主色または「密にサンプリングされた」成分と称されてもよく、赤色成分及び青色成分の両方は、二次色または「疎にサンプリングされた」成分と称されてもよい。他の用途では、モザイク色パターンは、より精巧なBayerタイプパターン、例えば、n個の画素単位セルを有するBayerタイプパターンによって具体化されてもよく、nは、4より多い整数である。もちろん、本技術は、Bayerタイプパターンに限定されず、それに限定されないが、RGB、RGB-IR、RGB-W、CYGM、CYYM、RGBE、RGBW #1、RGBW #2、RGBW #3、及びモノクロを含むいずれかの適切なモザイク色パターンに適用されてもよい。いくつかの実装態様では、色フィルタアレイ42は、ハイパースペクトル撮像及びフィルタリング技術、または干渉法フィルタリング技術を含むよう、標準的な可視的なBayerパターンを超えて拡張されてもよいことに留意されたい。そのようなケースでは、回折格子28の設計(例えば、格子間隔34)は、増大したスペクトルサンプリング範囲に適合するよう調節されてもよい。
【0089】
ここで
図5を参照して、モノクロ撮像用途に対して適切なライトフィールド捕捉デバイス20の概略的な部分的な分解側面図が示される。ライトフィールド捕捉デバイス20は、感光画素40の画素アレイ38の最上部に配置された回折格子28、及び関連する色フィルタアレイ42を含む点で、
図1及び
図2に示された1つとの類似点を共有する。回折格子28は、50%のデューティサイクル並びに尾根52及び溝54の交互の組から構成された周期的屈折率変調パターン32を有する二値位相透過格子である。
図5はまた、デバイス20を通じた光の伝播を概略的に表す。動作中、ライトフィールド捕捉デバイス20は、観察可能なシーン22を取り囲む視野を有する。回折格子28は、その入力側上でシーン22から入射する光学波面26(実線)を受け、その出力側上で、回折された光学波面36(実線)を生成するよう光学波面26を回折し、回折された光学波面36は、それによる検出のために画素アレイ38に向かって色フィルタアレイ42を通じて伝播する。簡易化のために、
図5における入来する光学波面26は、標準的な入射において回折格子28上で衝突する平面波の波面に対応する。しかしながら、本技術は、ライトフィールド捕捉デバイスの視野内の任意の角度において回折格子28に入射する任意の形状の光学波面に対して実装されてもよい。
【0090】
なおも
図5を参照して、回折された波面36は、その外形が回折格子28の形状寸法、光学波面26の入射の波長及び角度、並びに画素アレイ38の受光面68に対応する観察平面の位置の関数である、回折パターンによって特徴付けられてもよい。観察平面では、回折された波面36の回折パターンは、画素アレイ38の受光面68内の格子軸30に沿った空間的に変化する強度プロファイル70によって特徴付けられてもよい。
図5では、格子軸30は、画素軸58と平行であることに留意されたい。
【0091】
共同出願された国際特許出願第PCT/CA2017/050686号において説明されるように、回折格子28及び画素アレイ38は、画素アレイ38の受光面68が、回折格子28の近接場回折領域、または単純に近接場内に位置付けられるように交互に配置される。近接場回折領域では、回折格子を通過する波の回折パターンを計算するためにFresnel回折理論を使用することができる。遠視野Fraunhofer回折理論とは異なり、Fresnel回折は、波面の屈曲を説明し、干渉波の相対的な位相の計算を可能にする。近接場内で回折された波面36を検出するために、本技術は、屈折率変調パターン32が形成され、回折が発生する回折格子28の上面48と、回折された波面36が検出される下層の画素アレイ38の受光面68との間の十分に短い分離距離72を維持することを伴ってもよい。いくつかの実装態様では、これは、分離距離72が光学波面26の中心波長の約10倍短くなるよう選択することを伴ってもよい。
【0092】
近接場回折領域では、周期的回折格子28によって生じる回折された波面36の強度プロファイル70は概して、回折格子28の格子間隔34に実質的に一致する空間間隔74と共に、回折格子28の屈折率変調パターン32に実質的に一致する形状を有する。例えば、
図5では、画素アレイ38の感光画素40によって検出された回折された波面36の回折パターンは、二値位相回折格子28の屈折率変調パターン32のものと実質的に一致する矩形波、または2段階の強度プロファイル70を有する。本説明では、用語「一致(match)」及びその派生は、検出され回折された波面36の強度プロファイル70と回折格子28の周期的な屈折率変調パターン32との間の「厳密な(exact)」または「完全な(perfect)」一致だけでなく、「実質的な(substantial)」、「ほぼ(approximate)」、または主観的な(subjective)」一致をも網羅することを理解されるべきである。したがって、用語「一致」は、本明細書では、2つの特徴が同一であり、または相互の何らかの予め定められた許容範囲内にあるかのいずれかである状態を指すことを意図している。周期的な回折格子による近接場回折の別の特徴は、
図5における実線の波面と破線との間の比較から分かるように、回折格子28上の入来する光学波面26の入射76の角度が変わると、回折された波面36の強度プロファイル70が、格子軸30に沿って横方向にシフトされるが、実質的に、その間隔74及び形状を維持することである。
【0093】
図5に例示される実施形態では、色フィルタアレイ42は、
図5が交互の緑色(G)フィルタ及び青色(B)フィルタの行を表すBayerパターンを有する。
図5はまた、デバイス20を通じた光の伝播を概略的に表す。動作中、回折格子28は、上記言及されたように、シーン22から生じる光学波面26を受けて回折して、回折された光学波面36を生成する。色フィルタアレイ42は、下層の画素アレイ38によるその検出の前に、回折された光学波面36を受けて空間的-スペクトル的にフィルタリングする。したがって、ライトフィールド捕捉デバイス20の動作は、色フィルタアレイ42及び下層の画素アレイ38を含むセンサ構造の最上部に配置された周期的な回折格子28の提供によって有効にされる、直接的に空間的-色彩的にサンプリングされた回折された波面36に基づいている。
【0094】
下層の画素アレイ38に光学的に結合されると、回折格子28は、光位相情報を標準的な2D画像と畳み込み、その結果、検出された回折された波面36の回折パターンの強度プロファイル70は概して、変調成分Imod及び基底成分Ibaseを含む変調された関数I~Imod(奥行情報)×Ibase(2D画像)として記述されてもよい。基底成分Ibaseは、その前方に回折格子28が存在しなかった場合の画素アレイ38によって検出される非位相依存光学波面を表す。言い換えると、基底成分Ibaseを単独で検出することは、シーン22の従来の2D画像が獲得されることを可能にする。一方、基底成分Ibaseと比較して全体的に小さい(例えば、約0.1から約0.3までの範囲にあるIbaseに対するImodの比率)変調成分Imodは、入射光学波面26の位相の直接の結果であり、その結果、入射角におけるいずれかの境界または僅かな差は、画素アレイ38にわたって空間的にサンプリングされた周期的な電気的応答としてそれ自体を明示する。入射角度への感度、したがって、角度解像度は、回折格子28の特定の設計に依存する。
【0095】
色フィルタアレイ42による空間的-スペクトル的フィルタリングの後の画素アレイ38によって検出された回折された波面36の強度プロファイル70は、赤色フィルタによってフィルタリングされた回折された波面36の部分、緑色フィルタによってフィルタリングされた回折された波面36の部分、及び青色フィルタによってフィルタリングされた回折された波面36の部分の組み合わせまたは重ね合わせであることを理解されたい。そのようにして、標準的なRGB Bayerパターンを例として使用して、強度プロファイルIの変調成分Imod及び基底成分Ibaseは、以下のようにそれらのそれぞれの色成分に分割されてもよい。
IR~Imod,R(奥行情報)×Ibase,R(2D画像) (3)
IG~Imod,G(奥行情報)×Ibase,G(2D画像) (4)
IB~Imod,B(奥行情報)×Ibase,B(2D画像) (5)
【0096】
図5では、強度プロファイルI
G及びI
Bは、破線及び点線のそれぞれにおいて表される。いくつかの実装態様では、それらの個々の色チャネルは、個々の色チャネルライトフィールドシーンを生成するよう独立して扱われてもよい。それらの個々のシーンは、各々がその自身のそれぞれのファイルを有する個々の色チャネルにおいて画像を伝送することができるので、画像圧縮だけでなく、奥行及びシーン分析のための両方の別のキューを提供するよう比較されてもよい。
【0097】
なおも
図5を参照して、上記言及されたように、いくつかの実施形態では、画素アレイ38は、回折格子28の格子間隔34よりも短い格子軸30に沿った画素ピッチ62を有する。これは、画素アレイ38の受光面68が回折格子28の近接場内にあるとき、格子軸30に沿った画素アレイ38の画素ピッチ62も、検出された回折された波面36の格子軸30に沿った強度プロファイル70の空間間隔74よりも短いことを意味する。この条件が満たされるとき、検出された回折された波面36の強度プロファイル70の全間隔は、画素アレイ38の少なくとも2つの隣接した画素バンクによってサンプリングされ、それらの画素バンクの各々は、全サイクルにわたって強度プロファイル70の異なる空間的部分をサンプリングする。本説明では、用語「画素バンク(pixel bank)」は、重なった回折格子の格子軸に垂直な線に沿って配列された画素アレイの感光画素のグループを指す。すなわち、2つの隣接した画素バンクは、格子軸に沿った画素ピッチに対応する距離だけ相互に分離される。例えば、
図5では、画素アレイ38の各々の画素バンクは、ページの平面に垂直に延長する。
【0098】
用途に応じて、格子軸30に沿った画素アレイ38の画素ピッチ62に対する回折格子28の格子間隔34の比率Rは、いくつかの値を取ることができる。いくつかの実装態様では、比率Rは、2以上であってもよく(すなわち、R≧2)、または1よりも大きい正の整数に等しくてもよく(すなわち、R=(n+1)、n={1、2、…})、または2の累乗の整数に等しくてもよい(すなわち、R=2n、n={1、2、…})、などである。いくつかの実装態様では、格子間隔34が格子軸30に沿った画素ピッチ62よりも大きいだけでなく、画素ピッチ62にあまり近くにならないことが有益となることがあり、または必要とされることがある。例えば、いくつかの実装態様では、格子間隔34は、隣接した画素バンクの各々の対が、その空間的変調速度がナイキスト速度の近くまたはナイキスト速度において回折格子28の特性によって要求される、結果として起こる変調された回折された波面36を十分にサブサンプリングすることを可能にするよう、下層の画素バンクピッチ62の少なくとも約2倍であることが有利となることがある。このナイキストまたはナイキストの近いサブサンプリングは、標準的な信号処理技術によって測定された信号Iから変調成分Imodを直接除去することを可能にすることができる。除去されると、変調信号Imodは、基底成分Ibaseとは独立して操作されてもよい。
【0099】
例えば、
図5では、格子軸30に沿った画素ピッチ62に対する格子間隔34の比率Rは、2に実質的に等しい。そのようなケースでは、隣接した画素バンクは、検出された回折された波面36の強度プロファイル70の相補的な空間位相、すなわち、相互に180度だけ位相シフトされた強度プロファイル70の空間的部分をサンプリングすることを理解されたい。これは、|φ
bank,n+1-φ
bank,n|=π、のように数学的に表されてもよく、φ
bank,n+1及びφ
bank,nは、画素アレイ38の(n+1)番目及びn番目の画素バンクによってそれぞれ測定された強度プロファイル70の空間位相である。そのような構成は、入射波面の前面の相互作用から生じる干渉パターンのサブサンプリングを通じた変調成分I
mod及び基底成分I
baseの直接デコンボリューションを可能にすることができる。
I
base=1/2[I(bank
n)+I(bank
n+1)] (6)
I
mod=1/2[I(bank
n)-I(bank
n+1)] (7)
【0100】
式(6)及び(7)におけるI(bankn)±I(bankn+1)は概して、関連する画素バンク内の全ての行の画素によって測定された強度を合計することによって獲得されることに留意されたい。
【0101】
なおも
図5を参照して、回折格子28は、50%のデューティサイクル(すなわち、等しい幅の尾根52及び溝54)を有し、各々の感光画素40は、尾根52の対応する1つまたは溝54の対応する1つのいずれかの下に、及びいずれかと垂直に位置合わせされて位置付けられる。しかしながら、他の用途では、他の配列が使用されてもよい。
【0102】
標準的なRGB Bayerパターンでは、赤色及び青色フィルタが常に隣接した画素バンクに位置するため、疎にサンプリングされた赤色及び青色成分と関連付けられた、信号IR及びIBは、相互に逆位相にある。一方、緑色フィルタが全ての画素バンクに存在するため、密にサンプリングされた緑色成分と関連付けられた、信号IGは、同相及び不一致の位相の寄与の両方を包含する。
【0103】
図5では、回折格子28は、下層の画素アレイ38に対して方位付けられ、その結果、格子軸30は、2つの直交する画素軸58、60の1つと平行である。
図6A及び
図6Bを参照して、他の用途では、格子軸30は代わりに、直交する画素軸58、60に対して斜めであってもよい。そのような構成では、格子軸30に沿った画素ピッチ62は、格子間隔よりも短いままであってもよいことに留意されたい。また、上記定義されたものなどの画素バンク、すなわち、重なった回折格子28の格子軸30を横断する線に沿って配列された画素のグループも、斜め構成において定義されてもよいことに留意されたい。例えば、
図6Aは、尾根52の下に位置する第1の画素バンクに属する画素40
1の第1のグループ、及び隣接した溝54に位置する第2の画素バンクに属する画素40
2の第2のグループを含む。
【0104】
これまでに説明された実施例では、回折格子アセンブリは、単一の回折格子に含まれる。しかしながら、
図7を参照して、他のケースでは、回折格子アセンブリ24は、複数の回折格子28a、28bを含み、回折格子28a、28bは、色フィルタアレイ42上に配置された二次元格子アレイに配列される。
図7では、回折格子アセンブリ24は、16個の回折格子を含むが、この数は、他の用途では変わってもよい。例えば、用途に応じて、回折格子アセンブリ24内の回折格子28a、28bの数は、1から最大で100万までの範囲にあってもよい(例えば、20メガ画素の画素アレイ38は、その最上部で最大で280万個の回折格子を有する)。それらの格子軸の方位以外で、
図7における回折格子28は同一であるが、これは、本技術の要件ではないことに留意されたい。
【0105】
図7では、回折格子28は、回折格子28の第1の組80a及び回折格子28の第2の組80bを含み、第1の組80aの回折格子28の格子軸30aは、第2の組80bの回折格子28の格子軸30bに垂直に延長する。
図7では、第1の組80a及び第2の組80bの回折格子28は、行及び列の両方に交互に配列され、格子縞パターンをもたらす。もちろん、他の用途では、直交して方位付けられた格子のいずれかの他の適切な正規または非正規の配列、パターン、またはモザイクが想定されてもよい。
【0106】
いくつかの用途では、ライトフィールド捕捉デバイスは、回折格子の前方に波面調整光学系を含むことができる。波面調整光学系は、回折格子アセンブリに到達する前に、シーンから入射する光学波面を集光し、方向付け、透過し、反射し、屈折し、分光し、回折し、コリメートし、集束し、またはそうでなければ作用するように構成されてもよい。波面調整光学系は、レンズ、ミラー、フィルタ、光ファイバ、並びにいずれかの他の適切な反射、屈折、及び/または回折光学素子などを含むことができる。いくつかの実装態様では、波面調整光学系は、ライトフィールド捕捉デバイスによってサンプリングすることができる方式において入射波面を修正するよう位置付けられ、修正するよう構成された集束光学系を含むことができる。
【0107】
ここで
図8を参照して、ライトフィールド捕捉デバイス20の別のとり得る実施例が例示され、シーンと回折格子アセンブリ24との間の光学波面26の光経路に配置された分光光学系84を含む。分光光学系84は、入来する光学波面26を受け、分光するように構成される。分光光学系84は、電磁気ビームがそれを通過するにつれて波長に応じて空間的拡散の影響を受ける(例えば、色彩収差によって)、いずれかの光学素子または光学素子の組み合わせによって具体化されてもよい。
図8では、分光光学系84は、簡易化のために、集束レンズである。しかしながら、他の実施形態では、分光光学系84は、回折格子アセンブリ24に衝突する前に光学波面26を分光するよう共に作用する(例えば、それらの固有の色彩収差に起因して)より多くの数の光学素子(例えば、集束及び焦点外れ光学系)を含む光学スタックとして設けられてもよいことを理解されたい。
【0108】
例示を目的として、
図8では、シーン22から生じる光学波面26は、光の複数の波長、例えば、緑色成分(破線)及び青色成分(点線)を包含する波の重ね合わせであることが想定される。分光光学系84とのそのエネルギー依存相互作用の性質による、光学波面26の各々の色成分は、僅かに異なる光学経路に従い、回折格子28によって導入された位相シフトにおける色彩依存につながる。言い換えると、回折格子28によって生じる角度依存回折を通じてサンプリングされる、光学波面26の色彩拡散は、光学波面26に関する粗い奥行情報を提供するために利用されてもよい。そのようなシナリオでは、以下で説明されるように、奥行情報のより微細な詳細は、色フィルタアレイ42によってサンプリングされるように、それらの光学経路差に起因して相互に位相シフトされた、変調成分I
mod,R及びI
mod,Bの比較分析から獲得されてもよい。すなわち、赤色及び青色光が色彩収差を理由に分光光学系84によって異なって集束されるため、この差は、奥行取得のより微細な詳細を提供することができる。
【0109】
図9を参照して、シーンからのライトフィールドに対応するライトフィールド画像データを処理する方法200の実施形態のフローチャートが示される。ライトフィールド画像データは、例えば、ローリングまたはグローバルシャッタのような工程を通じて、上記説明されたライトフィールド捕捉デバイス(例えば、
図8における1つ)などのライトフィールド捕捉デバイス20または別のライトフィールド捕捉デバイスにより獲得されてもよい。
【0110】
図10のライトフィールド捕捉デバイス20によって捕捉された画像データは、観察可能なシーン22から入射する連続したライトフィールドまたは波面26の離散化サンプリングを表す。この離散化は、様々な光学処理及び相互作用、デバイス20の有限開口サイズに起因した視野の制限、どの情報に焦点を当てまたは伝送することができるかに関してレンズによって課される制限、画素のサイズに起因したサブサンプリング解像度に関する制限、などを通じて行われてもよい。
図7のデバイス20では、(X、Y、Z)における完全に連続したライトフィールド26は、離散化された(X、Y)平面に投影され、画素アレイ38の画素40によって色及び空間的強度に対してサブサンプリングされる。位相成分(Z)も、回折格子アセンブリ24の提供に起因して測定されてもよい。この位相測定も、全ライトフィールド26の離散化サブサンプリングであり、この離散化は、回折格子アセンブリ24の格子設計及び配列によって制御される。
図7のデバイス20は、撮像に本来的に関与する離散化処理を通じて損失した何らかの情報を維持することを目的とする。特に、回折格子アセンブリ24の位相に基づく性質は、そうでなければ測定不可能であり、期せずに角度依存になる波面の位相上の既知の摂動を生じさせるために使用される。これは、測定されたライトフィールド画像データを記述するために使用することができる追加の変数及び独立した変数を追加する。
【0111】
なおも
図7を参照して、画像捕捉デバイス20に入射する光26は、入来する光26を集光及び集束するよう作用する肉眼光学素子(
図7には示されず、デバイスが回折格子アセンブリの前方に配置された集束光学系を含む、
図8を参照)に最初に直面してもよい。この光学素子は、透過または反射のいずれかのレンズ、ミラー、または光ファイバケーブルであってもよい。この光学素子はまた、赤外線及び紫外線光を除外することによって可視波長に対してスペクトル的に光をフィルタリングしてもよく、またはそれらのスペクトル領域は、別個の肉眼フィルタによって光学スタック内の別のポイントにおいて疎にフィルタリングされてもよい。
【0112】
入射光26を集束するこの光学素子の能力は、光学素子の集束面からの光の元の距離及び光学素子の集束力に関連する。入射光が集点距離もしくは過焦点距離、または光学無限遠から生じるとき、その波面は概して、非常に少数の画素40上に効果的に厳密に集束される。不十分に収束され、または非常に強く収束された光は、画素アレイ38にわたって拡散し続け、複数の画素40上で拡大することができる湾曲した波面につながる。
【0113】
集束された光は次いで、撮像システムの上に配置された回折格子アセンブリ24(すなわち、色フィルタアレイ42及び画素アレイ38)に直面する。
図7では、回折格子アセンブリ24は、行及び列の両方に交互に配列された(格子縞パターン)直交して方位付けられた回折格子28a、28bの2つ組から成る透過回折構造である。回折格子アセンブリ24は、集束光学素子の後に形成された波面の屈曲及び拡散の速度に関連する角度的に依存した回折パターンを有する回折された波面36を生成するために使用される。
【0114】
回折された波面36は更に、下層の色フィルタアレイ40によって2つ以上の離散スペクトル成分にスペクトル的にフィルタリングされる。このスペクトル的にフィルタリングされた、回折された波面の強度は、下層の画素40によって最終的に測定され、画素40によって捕捉された光の強度を表す電気信号に変換される。電気信号は次いで、典型的には、データ画素の行及び列の画像フレームに配列またはフォーマットされた、「未加工」ライトフィールド画像データにデジタル化されてもよい。このライトフィールド画像データは概して、I=角度情報(波長、回折格子アセンブリ位置)+2D(波長、画素位置)として要約することができる、画素レベルにおいてサンプリングされた元の波面に関する強度、スペクトル、及び角度情報の集合である。本説明は、観察されたシーン22のライトフィールド画像を再構築するようこのライトフィールド画像データが処理される、画像処理技術を開示する。用途に応じて、本技術は、捕捉されたライトフィールド画像データから、フル解像度2D画像、3Dポイントクラウド、奥行マップ/画像、及び/または線形的に再構築されたライトフィールド画像を提供することができる。
【0115】
図9に戻り、いくつかの実装態様では、画像処理方法200は、一次色及び少なくとも1つの二次色に従って、対応する一次色チャネル及び二次色チャネルに画像データを解析するステップ202を含むことができる。複数の個々のスペクトルまたは色チャネルへの未加工ライトフィールド画像データの分割または解析は、個々の部分画像を形成する。このステップ202は概して、ハードウェア読み出しレベルにおいて行われる。個々の画素が読み出され、色フィルタモザイクが既知である。例えば標準的なBayerパターン化を使用した12メガ画素カメラについて、6メガ画素の緑色チャネル、3メガ画素の青色チャネル、及び3メガ画素の赤色チャネルが存在する。
【0116】
上記言及されたように、各々の色チャネル内の未加工ライトフィールド画像データは、変調成分Imod及び基底成分Ibaseを含む変調された関数I~Imod(奥行情報)×Ibase(2D画像)として表されてもよい。基底成分Ibaseは、それからシーンの従来の2D画像を獲得することができる非位相依存光学波面を表す。変調成分Imodは、回折格子アセンブリ24によって生成された入射波面への位相依存摂動からもたらされる。したがって、標準的なRGB Bayerパターンのケースでは、各々の色チャネルの強度プロファイルは、IN~Imod,N(奥行情報)×Ibase,N(2D画像)として記述されてもよく、N=色またはスペクトルチャネル、例えば、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)であり、式(3)~(5)を参照されたい。上記言及されたように、本技術は、Bayerタイプパターンに限定されないが、いずれかの適切なモザイク色パターンに適用されてもよい。
【0117】
回折格子アセンブリ24が回折格子28a、28bの複数の組を含む(例えば、
図7にあるように、異なる方位、異なる格子間隔、または他の異なる特性を有する)用途では、
図9の方法200は、それに回折格子28a、28bの複数の組が配列された2D格子アレイのパターンに従ってスペクトルチャネルを解析または分割するステップを含むことができる。例えば、
図7では、解析された赤色、緑色、及び青色チャネルの各々の1つは、回折格子28aの第1の組と関連付けられた第1のサブチャネル及び回折格子28bの第2の組と関連付けられた第2のサブチャネルに再度解析される。このステップは、垂直に方位付けられた格子28aのデータ画素が水平に方位付けられた格子28bから分離され、独立して扱われることを保証する。これは、垂直及び水平に方位付けられた格子の反応が相互に独立して扱われることを可能にすることができ、それは、処理速度を高めることができる。
【0118】
ステップ202のいくつかの実装態様では、それにライトフィールド画像データが解析される色チャネルは、主色チャネル及び1つ以上の二次または補助色チャネルを含む。本説明では、主色チャネルは、全ての画素バンク内に画素を有する色チャネルであり、その結果、隣接した画素バンク内の主色チャネルの画素は、全サイクルにわたって回折された波面36の強度プロファイルの異なる空間的部分をサンプリングする。上記言及されたように、画素バンクは、本明細書では、重なった回折格子28a、28bの格子軸30a、30bに垂直な線に沿って配列された画素アレイ38の画素40のグループを指す。いくつかの実装態様では、全ての画素バンク内に画素を有する1つよりも多い色が存在する場合、2つ以上の主チャネルが存在してもよい。
【0119】
図7のデバイス20では、緑色画素が全ての画素バンクに存在するので、緑色チャネルは主色チャネルである。これは、n番目の画素バンク内の緑色画素が、(n±1)番目の画素バンク内の緑色画素によってサンプリングされた空間位相に対して180度位相シフトされた、回折された波面36の強度プロファイルの空間位相をサンプリングすることを意味する。結果として、より密にサンプリングされた緑色画素と関連付けられた信号I
Gは、同相及び不一致の位相の貢献の両方を包含する。言い換えると、回折された波面36の強度プロファイルの相補位相は、交互の画素バンク内で緑色画素によってサンプリングされる。一方、全ての赤色画素が回折された波面36の強度プロファイルの同一の第1の空間位相をサンプリングし、全ての青色画素が回折された波面36の強度プロファイルの同一の第2の空間位相をサンプリングするので、赤色及び青色チャネルは二次色チャネルであり、第1及び第2の空間位相は、相互に180度だけ位相シフトされる。これは、隣接した画素バンク内の信号I
R及びI
Bが相互に逆位相にあることを意味する。もちろん、他のモザイク色パターンは、主チャネル及び二次チャネルとして異なる色チャネルを使用してもよい。
【0120】
なおも
図9を参照して、方法200のいくつかの実装態様はまた、回折格子アセンブリ24によって信号に与えられる変調の局所的影響が除去される、粗い未加工基底成分を提供または抽出するために主色チャネルを使用するステップ204を含むことができる。
【0121】
図7の実施例では、主色チャネルは、下層の回折パターンの変調成分を取り消すことができる両方の主要な位相成分をサンプリングすることができる、より密にサンプリングされた緑色チャネルである。数学的に、このステップは、以下の式を使用して、I
mod,Gを取り消すことによって、I
G~I
mod,G×I
base,GからI
base,Gを抽出することを伴うことができる。
I
base,G=1/2[I
G(bank
n)+I
G(bank
n+1)] (8)
【0122】
代わりに、変調成分Imod,Gは、フーリエフィルタリングによって除去されてもよい。
【0123】
方法200はまた、シーン22に関する粗い位相/奥行情報を獲得するために使用される、粗い未加工変調成分を提供または抽出するために主色チャネルを使用するステップ206を含むことができる。
【0124】
再度、
図7の実施例では、主色チャネルは、より密にサンプリングされた緑色チャネルである。数学的に、このステップは、以下の式を使用して、I
base,Gを取り消すことによって、I
G~I
mod,G×I
base,GからI
mod,Gを抽出することを伴うことができる。
I
mod,G=1/2[I
G(bank
n)-I
G(bank
n+1)] (9)
【0125】
変調成分I
mod,Gは、ライトフィールド画像及び/または奥行マップを生成することができる、入射光学波面に関する粗い角度または位相情報を提供することができる。上記説明されたように、変調成分I
mod,Gは、画素ごとの波面の位相差を表し、その結果、I
mod,Gは、シーン22からの入射光学波面26の位相または拡散に関する情報を包含する。特に、変調成分I
mod,Gは、入射波面26の緑色成分の傾斜/角度拡散(例えば、回折格子アセンブリ24の前方にある集束光学系によって生じる、
図8を参照)、及び回折格子アセンブリ24によって生じる位相オフセットの結果である。
【0126】
図9を参照して、方法200は更に、I
base,G及びI
mod,Gをそれぞれ使用して、I
R~I
mod,R×I
base,R及びI
B~I
mod,B×I
base,Bから獲得することができる二次青色及び赤色チャネルの未加工基底成分I
base,R及びI
base,B、並びに未加工変調成分I
mod,R及びI
mod,Bを判定するステップ208を含むことができる。
【0127】
いくつかの実装態様では、IG(bankn)とIG(bankn+1)との間の差は、回折格子によって与えられた変調パターンの標識を付与することができる。すなわち、IG(bankn)<IG(bankn+1)である場合、次いで、banknが弱め合う干渉を受け、bankn+1が強め合う干渉を受け、IG(bankn)>IG(bankn+1)である場合はその逆であると結論付けることができる。したがって、IG(bankn)<IG(bankn+1)であり、bankn内に赤色画素、bankn+1内に青色画素があるシナリオでは、IR(bankn)<Ibase,Rであり、IB(bankn+1)>Ibase,Bであり、その結果、Ibase,R=IR(bankn)+Imod,Rであり、Ibase,B=IB(bankn+1)-Imod,Bであると推論することができる。したがって、[IG(bankn)-IG(bankn+1)]の標識を知っていることは、(Ibase,R、Imod,R)及び(Ibase,B、及びImod,B)を獲得するよう、強め合う位相オフセットまたは弱め合う位相オフセットをIR(bankn)及びIB(bankn+1)に適用するかどうかを判定することを可能にすることができる。
【0128】
赤色光についての位相オフセットの振幅、すなわち、Imod,Rを獲得するために、Imod,GからImod,Rを導出するために、画像捕捉デバイスにおいて緑色光の波面拡散と赤色光の波面拡散との間の関係(例えば、回折格子及び集束光学系によって生じる)を使用することができる。同様に、青色光についての位相オフセットの振幅、すなわち、Imod,Bを獲得するために、Imod,GからImod,Bを導出するために、画像捕捉デバイスにおいて緑色光の波面拡散と青色光の波面拡散との間の関係(例えば、回折格子及び集束光学系によって生じる)を使用することができる。いくつかの実装態様では、波面拡散に関する微細な角度情報は、以下で説明されるように、位相シフトされた赤色二次変調成分Imod,R及び青色二次変調成分Imod,Bから獲得されてもよい。最終的に、赤色及び青色基底成分は、Ibase,R=IR(bankn)+Imod,R及びIbase,B=IB(bankn+1)-Imodを使用して獲得されてもよい。
【0129】
なおも
図9を参照して、方法は、例えば、緑色基底成分I
base,GをI
base,R及びI
base,Bについての正規化基底関数系として使用することによって、従来のデモザイク処理アルゴリズムによって使用される同様の方式において、シーン22のフルカラー2D画像を再構築するために、未加工基底成分I
base,G、I
base,R、及びI
base,Bを使用するステップ210を含むことができる。このフルカラー2D画像は、その前方で回折格子アセンブリ24なしに、画素アレイ38によって捕捉される位相独立未加工画像を表す。2D画像のこの生成は、以下の非限定的な理由:圧縮のために2D情報から奥行情報を分離すること、表示のために予測されるように、画像信号プロセッサ(ISP)に2D画像を提供することが可能であること、及び2D画像がライトフィールド成分のうちの1つであること、のうちの1つ以上に対して実行されてもよい。
【0130】
なおも
図9を参照して、いくつかの実装態様では、方法200は、主色チャネルの変調成分I
mod,Gから、及び任意選択で、二次色チャネルの変調成分I
mod,R及びI
mod,Bからシーンの奥行マップを作成するステップ212を含むことができる。このステップは主に、色チャネルの関連する1つの変調成分から物体距離情報を提供するよう較正された少なくとも1つの色放射伝達関数も伴う。
【0131】
いくつかの実装態様では、色放射伝達関数(CRTF)は、カメラから離れた物体の距離に対する角度に応じて回折格子の回折格子パターンに関連する。言い換えると、CRTFは、シーンの先験的な知識なしに、回折格子の2つの位相成分phase0及びphase180に対して与えられた変調を定量化することを可能にすることができる。
【0132】
説明のみを目的とし、本説明の範囲を限定することなく、
図10に示されるように、カメラからの距離が大きくなるにつれて、カメラが白色光点源の画像を予め定められた間隔で捕捉している状況を考慮してみる。回折格子を有しないカメラのケースでは、センサは、
図10にも示されるように、下層のBayerパターンに応じて白色光の全体的な強度を空間的-色彩的にサンプリングする。白色光源のこの空間的-色彩的サンプリングは、所与の色フィルタアレイ構成要素のスペクトル的に依存した透過によってフィルタリングされた白色光のスペクトル強度に大体比例して各々の画素によって測定された電圧をもたらす。
Pixel
Red∝Intensity(λ)×Transmission(λ) (10.1)
または、
Pixel
Red=2D(Red) (10.2)
TDMの変調された成分も、画素バンクから画素バンクへと変化する。
Pixel
n∝Intensity(λ)×Transmission(λ)×Modulation
Phase0(λ,z) (11.1)
Pixel
(n+1)∝Intensity(λ)×Transmission(λ)×Modulation
Phase180(λ,z) (11.2)
【0133】
下層の色フィルタが回折格子(すなわち、格子間隔よりも短い格子軸に沿った画素ピッチを有する画素アレイ)によって生じる摂動周波数よりも大きい速度において光を空間的-色彩的にサンプリングする、Bayerパターン化センサのケースでは、
図10示されるように、3つの色チャネルは、
Pixel
Red=2D(Red)×Modulation
Phase0(λ,z) (12.1)
Pixel
Green1=2D(Green)×Modulation
Phase180(λ,z) (12.2)
Pixel
Green2=2D(Green)×Modulation
Phase0(λ,z) (12.3)
Pixel
Blue=2D(Blue)×Modulation
Phase180(λ,z) (12.4)
【0134】
【0135】
式12.1~12.4及び式13.1~13.4の関数形式は、実線が回折格子を有さない
図10において説明されたカメラを表し、破線が回折格子を有する同一のカメラを表す、
図11A~
図11Dに示される。
【0136】
Bayerパターン化センサのケースでは、画像に対する回折格子の影響を除去することができ、または、言い換えると、1つの色チャネルに両方の位相成分をサンプリングさせることによって、奥行情報を抽出することができる。
Pixeln=Intensity(n)×phase0(z) (14.1)
Pixeln+1=Intensity(n+1)×phase180(z) (14.2)
【0137】
これは、その関数形式が
図12A及び
図12Bに示される、簡易化された主要な(一次)色チャネル放射伝達関数の定義をもたらす。
Δα(z)=Pixel
n-Pixel
(n+1)=Δphase(z) (15)
【0138】
色彩放射伝達関数は、画像から強度を除去するために、2つの主色チャネルの変調された成分の間の差を使用し、正規化された値が、両方の位相成分を有さず、したがって、その強度が可変である他の2つの色チャネルを、両方の2D画像だけでなく、回折格子変調または奥行情報と関連付けることを可能にする。
【0139】
図10において想定されるのと同様の実験は、二次色チャネルに対して実行されてもよい。このケースでは、角度または距離の関数として二次色チャネル変調を測定するために、光の既知の均一な強度を使用することができる。これは、
図13に示されるように、二次色彩放射伝達関数をもたらす。
【0140】
図14を参照して、シーンの先験的な知識なしに作用する、一次放射色彩伝達関数は、二次色彩放射伝達関数をナビゲートするために、正規化された、シーン独立の値を取得するために使用されてもよい。適切な変調値が二次色チャネルに対して既知である場合、回折格子の効果は、2D画像、並びに二次及び一次放射伝達関数値における差に対して補正されてもよく、それらのそれぞれの画素値は、奥行性能を更に高めるために比較されてもよい。
【0141】
この概念は、同一の処理方法を通じたレンズシステム、並びにその無彩色収差及び色彩的に依存した焦点差にも拡張されてもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、変調成分Imod,Gに包含される未加工波面拡散情報は、シーン22の粗い奥行マップを生み出すために、適切な緑色放射伝達関数(GRTF)と比較されてもよい。特に、Imod,Gは、相対的な位相情報を提供することができ、較正されたセンサ特有GRTFとの比較は、1つがImod,Gによって提供される相対的な位相情報から絶対的な位相情報を獲得することを可能にすることができる。言い換えると、これは、Imod,Gによって提供される相対的な位相情報が、GRTFを使用して波面拡散にマッピングされてもよく、この波面拡散自体は、焦点平面に対する物体位置に対応することを意味する。
【0143】
任意選択で、Imod,G及びGRTFから獲得された粗い奥行マップは、二次色チャネルからのデータ(例えば、Imod,R、Imod,B、並びにそれらの関連する赤色放射伝達関数RRTF及び青色放射伝達関数BRTF)を使用して補正または強化されてもよい。これは、3つの色チャネルに対する変調成分Imod,G、Imod,R、及びImod,Bの直接の比較は、物体距離を確立するために、各々の色チャネルに対して測定されたCRTFを通じて行われることを意味する。
【0144】
上記言及されたように、CRTFの各々の1つは、画像捕捉デバイス20の焦点平面に応じて、直接測定された波面拡散の経験的適合をもたらす。焦点面からの様々な距離で撮影された較正画像のこれらの疎なデータセットのコレクションは、カメラからの距離の関数として適合され、画像の変調成分Imod,G(主)、及びImod,R、Imod,B(副)によって測定され、回折格子アセンブリ24によってサンプリングされるように、焦点面からの距離の関数としての波面の放射状に拡張された広がりの直接的な経験的な測定値を提供する。それらの関数は、Imod,G、Imod,R、及びImod,Bから付与された測定された相対的な位相/波面拡散情報を画像センサからの絶対的な物体距離、したがって、奥行(z)に直接マッピングする方法を提供する。
物体(z)~RGB 2D画像×CRTF(r,φ,θ,n,λ) (10)
zは、シーン22内の所与の物体の画像捕捉デバイスの検出平面からの距離であり、RGB 2D画像は、Ibase,G、Ibase,R、及びIbase,Bによって付与された未加工2D画像であり、CRTFは、画像の焦点平面からの極座標r、φ、θ、画素数n(したがって、画素アレイ38上の空間位置)、及び入射波長λの適合された5D関数である。CRTFは、回折素子及び撮像素子によってサンプリングされたような全てのスペクトル要素に対して単一の画像においてサンプリングされてもよい。すなわち、全てのCRTFは、白色光を使用して1回捕捉されてもよく、色フィルタアレイによって直接サブサンプリングされてもよい。それらの関数は、回折格子アセンブリ24の設計を通じて適応されてもよい。CRTFは、回折格子アセンブリ24の回折格子28の配列からもたらされる回折パターンのマイクロサブサンプリングの肉眼的記述をもたらすことができる。絶対的な奥行の実装態様では、奥行精度を増大させるために、汎用RTFを使用してもよく、または色特有CRTFを使用してもよいことに留意されたい。
【0145】
上記説明された実装態様は、画素サンプリング周波数が格子パターンの周期よりも高い状況に適用され、本明細書で説明される処理方法は、いくつかの例では、それに対してサンプリング周波数が格子間隔以下である(または言い換えると、画素アレイが格子間隔以上である格子軸に沿った画素ピッチを有する)同様の撮像デバイスと関連して有効であり得ることを容易に理解されよう。そのようなケースでは、格子の動作によって2D画像において生成された色彩的に依存したぼやけパターンが存在せず、両方の位相成分が既に各々の格子に含まれるので、2D画像を再構築するステップが省略されてもよい。そのような実施形態では、信号のマイクロ色彩依存及び関連するものが損失されるが、マイクロ色彩依存はなお、奥行情報を提供するために有効であることがある。言い換えると、関連する色放射伝達関数と組み合わされた異なる色チャネルの提供は、焦点位置におけるそれらの相対的な差を獲得するために、異なる色チャネルの比較を通じて奥行情報を提供することができる。
【0146】
もちろん、本説明の範囲から逸脱することなく、多くの修正が上記説明された実施形態に対して行われてもよい。