IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司の特許一覧

特許7245867ポリフェノール縮合物及びそのエポキシ樹脂
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】ポリフェノール縮合物及びそのエポキシ樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/04 20060101AFI20230316BHJP
   C08G 59/08 20060101ALI20230316BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20230316BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
C08G8/04
C08G59/08
C08L61/06
C08L63/00 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021083628
(22)【出願日】2021-05-18
(62)【分割の表示】P 2017094656の分割
【原出願日】2017-05-11
(65)【公開番号】P2021138717
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】62/335,425
(32)【優先日】2016-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/581,171
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 有仁
(72)【発明者】
【氏名】鐘 淞廣
(72)【発明者】
【氏名】洪 長霖
(72)【発明者】
【氏名】杜 安邦
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 坤源
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-526572(JP,A)
【文献】特表2002-542389(JP,A)
【文献】米国特許第06608161(US,B1)
【文献】国際公開第2006/001395(WO,A1)
【文献】特開2010-168548(JP,A)
【文献】国際公開第2013/111563(WO,A1)
【文献】特開2006-036956(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/04- 59/62
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C08G 59/00- 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン及びフェノールとして計算され、1.3×[1×(グリオキサールの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(グリオキサールの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]で表される式を満足する重量平均分子量(Mw)の範囲を有するグリオキサール-フェノール縮合物を含み;
検出波長254nmで、前記Mwの範囲内のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積分面積が、総体GPC積分面積の約35%ないし約50%を占め;並びに、
ガードナー指数が約13以下であり、
前記フェノール化合物は、フェノール、o-メチルフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-イソプロピルフェノール、p-ノニルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記グリオキサール-フェノール縮合物は、第1の酸触媒の存在下でのグリオキサールとフェノール化合物との第1の反応と、それに続く第2の酸触媒の添加による第2の反応から製造され、前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒はそれぞれ異なる、グリオキサール及びフェノール化合物から製造されたグリオキサール-フェノール縮合物。
【請求項2】
前記縮合物は、365nmで少なくとも0.320又は350nmで少なくとも0.550の紫外線(UV)吸光度を有する、請求項1に記載の縮合物。
【請求項3】
前記重量平均分子量(Mw)対数平均分子量(Mn)は、Mw/Mnが約1.1ないし約1.3である式を満足するものである、請求項1に記載の縮合物。
【請求項4】
ポリスチレン及びフェノールで計算され、1.3×[1×(グリオキサールの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(グリオキサールの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)+168]で表される式を満足する重量平均分子量(Mw)の範囲を有し、
検出波長254nmで、前記Mwの範囲内のGPC積分面積が、総体GPC積分面積の約60%ないし約70%を占め、
ガードナー指数が約14以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の縮合物からエポキシ化してなるエポキシ化合物。
【請求項5】
前記エポキシ化合物は、365nmで少なくとも0.240又は350nmで少なくとも0.430の紫外線(UV)吸光度を有する、請求項4に記載のエポキシ化合物。
【請求項6】
(a)フェノール化合物に対するグリオキサールのモル比が約0.11ないし約0.17である縮合物の混合物を縮合させる工程と、
(b)縮合反応のために装入された約0.05%~30%のグリオキサールの存在下で、混合物に第1の酸触媒を添加する工程と、
(c)前記混合物に第2の酸触媒の酸触媒を添加する工程であって、ここで、前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒はそれぞれ異なり、
(d)ポリスチレン及びフェノールで計算され、1.3×[1×(グリオキサールの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(グリオキサールの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]で表される式を満足する重量平均分子量(Mw)の範囲を有し;検出波長254nmで、前記Mwの範囲内のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積分面積が総体GPC積分面積の約35%ないし約50%を占め;且つガードナー指数が約13以下であるグリオキサール-フェノール縮合物を得る工程と、
を含み、
前記フェノール化合物は、フェノール、o-メチルフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-イソプロピルフェノール、p-ノニルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、及びそれらの混合物からなる群から選択される、グリオキサール及びフェノール化合物からグリオキサール-フェノール縮合物を製造する方法。
【請求項7】
前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒それぞれ独立して、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、リン酸、トリクロロ酢酸、酸官能性カチオン交換樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6~7のいずれか1項に記載の方法により製造されたグリオキサール-フェノール縮合物からエポキシ化してなるエポキシ化合物。
【請求項9】
ガードナー指数が約13以下であり;及び
365nmで少なくとも0.320のUV吸光度、且つ検出波長254nmでMw=274ないし630のGPC積分面積の約35%ないし約50%を占めるMw範囲、又は350nmで少なくとも0.550のUV吸光度、且つ検出波長254nmでMw=274ないし630のGPC積分面積の約35%ないし約50%を占めるMw範囲を有するグリオキサール-フェノール縮合物を含
前記フェノール化合物は、フェノール、o-メチルフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-イソプロピルフェノール、p-ノニルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記グリオキサール-フェノール縮合物は、第1の酸触媒の存在下でのグリオキサールとフェノール化合物との第1の反応と、それに続く第2の酸触媒の添加による第2の反応から製造され、前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒はそれぞれ異なる、グリオキサール及びフェノール化合物から製造されたグリオキサール-フェノール縮合物。
【請求項10】
(a)フェノールに対するグリオキサールのモル比が約0.11ないし0.15である縮合物の混合物を縮合させる工程と、
(b)縮合反応のために装入された約0.05%~30%のグリオキサールの存在下で、第1の酸触媒を混合物に添加する工程と、
(c)第2の酸触媒を混合物に添加する工程であって、ここで、前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒はそれぞれ異なり、前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒のうちの一方のpKa値が1.0以下であり、他方のpKa値が1.0~5.0であり、
(d)ポリスチレン及びフェノールで計算され、1.3×[1×(グリオキサールの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(グリオキサールの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]で表される式を満足する重量平均分子量(Mw)の範囲を有し;検出波長254nmで、前記Mwの範囲内のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)積分面積が、総体GPC積分面積の約35%ないし約50%を占め;且つガードナー指数が13以下であるグリオキサール-フェノール縮合物を得る工程と、
を含み、
前記フェノール化合物は、フェノール、o-メチルフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-イソプロピルフェノール、p-ノニルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、及びそれらの混合物からなる群から選択されるグリオキサール及びフェノールからグリオキサール-フェノール縮合物を製造する方法。
【請求項11】
前記第1の酸触媒及び第2の酸触媒それぞれ独立して、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、リン酸、トリクロロ酢酸、酸官能性カチオン交換樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エポキシ化合物を有する難燃性組成物であって、該エポキシ化合物100部を基準として、
(a)約2ないし約15部の請求項4又は5に記載のエポキシ化合物と、
(b)0ないし約98部の(i)ハロゲンを含まないエポキシ樹脂、(ii)臭素含有エポキシ樹脂、(iii)ホスフィン含有エポキシ樹脂、及び(iv)それらの混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂と、
を含む、難燃性組成物。
【請求項13】
充填剤及びポリマーマトリックスを含み、
前記ポリマーマトリックスは、請求項1~3のいずれか1項に記載の縮合物を含む、複合製品。
【請求項14】
充填剤及びポリマーマトリックスを含み、
前記ポリマーマトリックスは、請求項1~3のいずれか1項に記載縮合物からエポキシ化してなるエポキシ化合物を含む、複合製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェノール縮合生成物(「ポリフェノール縮合物」、「polyphenolic condensates」、又は「PNX」)、そのエポキシ化してなる生成物(「多官能性エポキシ樹脂」、「multi-functional epoxy resins」、又は「MFE」)、それらの製造方法、及びそれらの応用に関する。本発明に係る実施形態は、例えば銅張積層板(copper clad laminate、CCL)又は印刷回路基板(printed circuit board、PCB)等の電子積層部材のフォトリソグラフィ工程に供するUV遮断剤として用いられたPNX(混合物)及びMFE(混合物)における、色度(Gardner Index)の抑止及び紫外線(UV)の(340~370nmの、特に350nm及び365nmの)吸光度の増大を目的とする。
【背景技術】
【0002】
フェノール縮合反応は、特許文献1~10に開示された。ポリフェノール縮合生成物(PNX)として、Hexion(Borden Chemical)の商標/商品名「Durite SD-357B」及びNan Ya Plasticsの「TPN1」等が市販されている。エポキシ化反応は、特許文献6(実施例8)及び特許文献11に開示されている。多官能性エポキシ樹脂生成物(MFE)として、Hexion(Borden
Chemical)の商標/商品名:「EPON 1031(A70)」、Huntsmanの「XB-4399」、Shellの「1031(A70)」、及びChang Chun Plasticsの「TNE190A70」等が市販されている。難燃性化合物におけるPNX及び/又はMFEの応用は、特許文献12~14に開示されている。前記特許文献により開示された内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
典型的な多層PCB工程を図1に示す。PNX及び/又はMFEは耐熱性だけでなく、光学性質にも優れたものである。高UV吸光度(340~370nm)は、図2A図2Bとの比較に示すように、特に薄層や多層の回路基板用のフォトリソグラフィ工程において、PCBの反対側に対する可能な損害を防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第5012016号公報
【文献】米国特許第6001950号公報
【文献】米国特許第6140421号公報
【文献】米国特許第6232399号公報
【文献】米国特許第6316583号公報
【文献】米国特許第6201094号公報
【文献】米国特許第6239248号公報
【文献】米国特許第6379800号公報
【文献】米国特許第6608161号公報
【文献】米国特許出願公開第20110098380号公報
【文献】米国特許第6001873号公報
【文献】米国特許出願公開第20080064792号公報
【文献】米国特許第7662902号公報
【文献】国際公開第2016141257号公報
【文献】台湾特許第I307350号公報
【文献】台湾特許第I324168号公報
【文献】台湾特許第I324164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PNX及びそれから製造されるMFEはUV吸光度に優れているが、可視光又はUV線の自動光学検査システム(AOI system)に対しては、色が深すぎるので、エポキシ樹脂基板から製造される印刷回路の識別性が低くなってしまう。別の様相では、一部の生成物は色が淡いが、PCBエッチング工程にとって、UV吸光度/遮断効果が不足しているので、PCB製造工程に用いられるマスクに照射するUV線により、焼き付き(ghost image)がプリントスルー(print through)してしまう。即ち、高UV吸光度を有する色淡いPNX及びそれから製造されるMFEの製造は困難である。
【0006】
上述した通り、性質が向上したポリフェノール縮合生成物(PNX)及びそれから製造される多官能性エポキシ樹脂(MFE)が、PCB製造工程およびAOIシステムにとっては、ニーズがあることがわかる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明に係る典型的なポリフェノール縮合物の重量平均分子量(weight average molecular weight、Mw)及び数平均分子量(number average molecular weight、Mn)は、Mw/Mnが約1.1ないし約1.4であり、好ましくは、約1.1ないし約1.3である式を満足するものである。
【0008】
より具体的には、前記ポリフェノール縮合物は、検出波長254nmの総体ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(gel permeation chromatography、GPC)積分面積の約35%ないし約50%を占める、重量平均分子量(Mw)の数値範囲が1.3×[1×(アルデヒドの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(アルデヒドの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]であるGPC積分面積を有する。一つの実施形態では、前記ポリフェノール縮合物はフェノール-アルデヒド縮合物、例えば、グリオキサール-フェノール縮合物である。
【0009】
更に、本発明は、複数触媒を用い、ポリフェノール縮合物を製造する方法を提供する。
【0010】
新規の多官能性エポキシ樹脂又はエポキシドは、前記縮合物より製造されるものである。本発明の実施形態として、多官能性エポキシ樹脂またはエポキシドのMw/Mnの比率は、約1.3ないし約1.7であり、好ましくは、約1.3ないし約1.5である。該多官能性エポキシ樹脂またはエポキシドは、検出波長254nmの総体GPC積分面積の約60%ないし約70%を占める、重量平均分子量(Mw)の数値範囲が1.3×[1×(アルデヒドの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(アルデヒドの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)+168]であるGPC積分面積を有する。
【発明の効果】
【0011】
アルデヒドとフェノール化合物とのモル比が約0.11ないし0.17であり、複数の触媒を用い、アルデヒドとフェノール化合物からポリフェノール縮合物を製造する縮合反応を提供する。約0.05%ないし30%のアルデヒドの存在下で、縮合反応のために一種類の酸触媒を添加する。
【0012】
より具体的には、前記ポリフェノール縮合物は、グリオキサール対フェノール化合物のモル比が約0.11ないし0.15であるグリオキサール-フェノール縮合物を得るために、複数の触媒を利用してグリオキサール及びフェノール化合物から調製される。約0.05%ないし30%のグリオキサールの存在下で縮合反応のために1種類の酸触媒を添加し、その酸触媒のうちの1つは1.0以下のpKa値を有する。
【0013】
本発明は、多官能性エポキシ樹脂又はエポキシドから製造される積層体、難燃性組成物、難燃性生成物を提供する。難燃性組成物は、エポキシ化合物を有し、該エポキシ化合物100部を基準として、(a)約2ないし約15部の前記エポキシ樹脂と;(b)約0ないし約98部の(i)ハロゲンを含まないエポキシ樹脂、(ii)臭素含有エポキシ樹脂、(iii)ホスフィン含有エポキシ樹脂、及び(iv)それらの混合物からなる群から選択されるエポキシ樹脂とを有する。充填剤とポリマーマトリックスとを有する複合製品におけるポリマーマトリックスは、グリオキサール-フェノール縮合物又はそれから製造される多官能エポキシエポキシドを有する。
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】PCB製造工程を示すフローチャートである。
図2A】UV遮蔽効果不足の基板に発生したプリントスルーを示す略図である。
図2B】UV遮蔽効果を有する基板を示す略図である。
図3A】ポリフェノール縮合生成物を製造する多触媒システムの工程Aを示すフローチャートである。
図3B】ポリフェノール縮合生成物を製造する多触媒システムの工程Bを示すフローチャートである。
図4A】検出波長365nmで、PNXにおけるMw=274~630のGPC積分面積%とUV吸光度との関係を示す図である。
図4B】検出波長350nmで、PNXにおけるMw=274~630のGPC積分面積%とUV吸光度との関係を示す図である。
図5A】検出波長254nmで、実施例1、2、3及び5、比較例3、5及び6、並びにTPEの正規化したGPCを示す図である。
図5B】検出波長365nmで、実施例1、3及び6、比較例6のGPCを示す図である。
図5C】検出波長254nmで、実施例9、10及び11、比較例7、8及び10の正規化したGPCを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリフェノール縮合生成物を製造する多触媒システムにおける工程A及び工程Bは、図3A及び図3Bに示される。そのうち、工程Bより、公手Aが好ましい。
【0017】
触媒Aは触媒Bより酸性が強いものである。また、触媒Aを中和するためには、塩基が必要とされていることに対して、HPOを除いて、熱分解又は蒸留で触媒Bを除去することができる。NaOH、NaHCO、NaCO、KOH、KCO、Ca(OH)、CaCO、あるいは液体又は固体の類似した試薬を用い、前記中和反応を行ってもよい。
【0018】
工程A又は工程Bに使用された触媒Aは、約1.0以下のpKa値を有する、例えば、HCl、HSO、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸(PTSA)、カチオン交換樹脂、及びそれらの混合物(最後の4つ、特にPTSAが好ましく)でもよい。
【0019】
工程A又は工程Bに使用された触媒Bは、約1.0ないし約5.0のpKa値を有し、例えば、HPO、酢酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、マロン酸、シュウ酸(OXA)、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、フマル酸、及びそれらの混合物でもよい。他の実施形態では、該触媒Bは、マレイン酸、グリコール酸、及びシュウ酸である。更に他の実施形態では、該触媒Bはシュウ酸である。この工程に関して、後述の実施例によりさらに詳しく説明する。
【0020】
本発明のフェノール化合物は、以下の式により表すことができる:
【化1】
【0021】
前記式中、前記Rはそれぞれ置換基で、nは0ないし4の整数である。nが1ないし4である場合、置換基Rは、同一の又は異なる、官能基を有しないか、あるいはアルケニル、アルケニルオキシ、アルコキシ、アルキル、アミド基、アミノ、アラルキル、アラルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、カルボニル、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、イソシアノ、ニトロ、ホスフィンオキシド基、スルフィニル、スルホニル、スルホキシド基を含む官能基を1個以上有する、C1ないしC16アルキル化置換基から選択される。前記C1ないしC16アルキル化置換基は直鎖状、分岐状、環状又は芳香環状でもかまわない。例えば、有用なフェノール化合物は、フェノール、o-メチルフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、パラ-tert-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、p-フェニルフェノール、p-クミルフェノール、p-イソプロピルフェノール、p-ノニルフェノール、2,3-ジメチルフェノール、2,4-ジメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、3,4-ジメチルフェノール、3,5-ジメチルフェノール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3,4-トリメチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール、及びそれらの混合物を含む。
【0022】
本発明のアルデヒドは、以下の式により表すことができる:
【化2】
【0023】
前記式中、前記R及びRは同一又は異なるものである。R及びRのうちの1つが水素である場合、他方は、水素、並びに置換又は非置換のC1~C12アルキル、C6~C18アリール、C2~C12アルケニル、C3~C12シクロアルキル、及びC6~C16アラルキルから選択されるものでもよい。R及びRが水素でない場合、R及びRのうちの一つは、アルデヒド置換C1~C12アルキル、アルデヒド置換C6~C18アリール、アルデヒド置換C2~C12アルケニル、アルデヒド置換C3~C12シクロアルキル、及びアルデヒド置換C6~C16アラルキルから選択されものであり、R及びRの他方は、置換又は非置換のC1~C12アルキル、C6~C18アリール、
C2~C12アルケニル、C3~C12シクロアルキル、及びC6~C16アラルキルから選択されるものでもよい。Rは、直接結合又はビニレン基及び不飽和C6~C18アリール基等の共役結合基である。Rが直接結合、メチリデン、及びエチリデンから選択されることが好ましい。有用なアルデヒドには、例えば、グリオキサール、フマルアルデヒド、ヘキサ-2,4-ジエンジアール、オクタ-2,4,6-トリレンジアール、フェニルグリオキサール、テレフタルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、ナフタレンジカルバルデヒド、及びそれらの混合物が含まれる。
【0024】
ポリフェノール縮合生成物(混合物)は、縮合反応により合成される。アルデヒドが酸触媒によってカチオン化され、フェノール化合物がフェノールのオルト位又はパラ位を介してアルデヒドのカチオン化される位置を1つずつ攻撃する。従って、アルデヒドは、一つ以上のフェノール化合物に直接的に結合していてもよい。ポリフェノール縮合生成物から製造されたエポキシ化生成物は、多官能性エポキシ樹脂(MFE、混合物)と呼ばれ、ポリフェノール縮合物及びエピクロロヒドリン(ECH)から基本条件で合成される。
【0025】
一実施形態では、フェノール化合物はフェノールであり、アルデヒドはグリオキサール(GXA)であり、ポリフェノール縮合生成物とそのエポキシ化生成物との反応は、以下の反応経路によって示される:
【化3】
【0026】
グリオキサールの全ての位置が結合されたポリフェノール縮合生成物の一つは、テトラフェノールエタン(TPE)と呼ばれ、酸性条件下でグリオキサール及びフェノールから合成されるものである。テトラフェノールエタンエポキシ樹脂(TNE)は、塩基性条件(例えば、NaOH)下で、エピクロロヒドリン(ECH)を用い、一般的なエポキシ化反応を行うことにより、TPEから製造する。TPEの最大UV吸収波長は、約300nm未満である。もともと、TPE及び/又はTNEは、UV遮断(340~370nm)のために設計されたものではなかった。TPE及び/又はTNEは高い架橋密度を提供し、その結果、それらの成形品又はコーティング製品の高いTgをもたらし、良好な熱特性に資することができる。TPE及び/又はTNEは、PCBプロセスにおける蛍光ベースのAOIシステムに適した高い蛍光発光に寄与する比較的剛性の構造を有する。しかしながら、TPE又はTNEは、他の縮合生成物によって達成されるUV吸光度(340~370nm)に対して、テトラフェノール構造分子からの高い寄与を有さない。
【0027】
高いUV吸収(340~370nm)及び相対的に低色度のPNXは、典型的には、少なくとも1つのグリオキサール及び2つないし3つのフェノールから形成される。上記の反応経路において、化合物Aは、酸性条件下でフェノールと反応し、化合物Dになることができる。化合物Dは、酸触媒脱水反応を介して化合物Eを形成する。化合物Eは、ケト-エノール互変異性を介して化合物Fになる。化合物Gは、化合物E又は化合物Fの酸触媒脱水反応から形成することができる。これらの1つのグリオキサール及び2つのフェノールから形成されるPNXは、約270ないし約425のGPCのMwの範囲において図5Aに図示されており、図5Bに示すように、GPCの検出波長365nmのUV吸光度
に寄与する。
【0028】
【化4】
【0029】
化合物Hは、酸触媒フェノールホルムアルデヒド縮合又は酸触媒脱水反応により、化合物B、化合物C、化合物E、又は化合物Gから形成することができる。少なくとも1つのグリオキサール及び3つのフェノールから形成される他のPNXは、例えば、化合物Iないし化合物Lである。これらの少なくとも1つのグリオキサールおよび3つのフェノールから形成されるPNXは、約425ないし約630のGPCのMw範囲内において図5Aに図示されており、図5Bに示すように、GPCの検出波長365nmのUV吸光度へのより大きな寄与を有する。
【0030】
【化5】
【0031】
他の種類のフェノール化合物及び他の種類のアルデヒドから製造されたポリフェノール縮合物並びにそれらの縮合物から製造されるエポキシ化生成物(UV吸光度(340~370nm)に寄与する)における可能な構造及びそれらのGPCのMw範囲を以下の表に示す:
【化6】
【0032】
前記R及びRは、同一又は異なるものであり、メチリデン、エチリデン、置換又は非置換C1~C6アルキル、置換又は非置換C1~C6アルケニル、及びアルキニルから選択することができる。Rは、エチリデン、置換又は非置換C1~C6アルキル、及びC1~C6アルケニル基から選択することができる。Rg1、Rg2及びRg3は、同一又は異なるものであり、水素及び2-エチルオキシランから選択することができる。MFEのGPCのMwの範囲における式の数値「168」は、フェノール化合物の三つの水素原子を三つのエポキシ基(-CO)で置換した分子量の合計を表す。
【0033】
本出願人は、標的分子の量(GPC面積%)を直接制御できる多触媒法を採用している。これらの実施形態に用いられる酸触媒としては、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、塩酸、硫酸、リン酸、トリクロロ酢酸、酸官能性カチオン交換樹脂、酢酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、サリチル酸、フマル酸、及びそれらの混合物が挙げられる。好ましい酸触媒は、p-トルエンスルホン酸及びシュウ酸を含む。一実施形態では、ポリフェノール縮合生成物を合成するためのアルデヒドはグリオキサールであり、ポリフェノール縮合生成物を合成するためのフェノール化合物はフェノールである。図4A及び図4Bに示すように、ガードナー指数が13以下のポリフェノール縮合物の場合、それらの(350nmまたは365nmでの)UV吸光度の特性は、検出波長254nmにおいて、Mw=274ないしMw=630のGPC積分面積と正の関係を有する。いくつかの実施形態では、ポリフェノール縮合物のガードナー指数が13未満
であり、365nmでのUV吸光度が少なくとも0.320であり、検出波長254nmでのMwの範囲がMw=274ないし630のGPC積分面積の約35%ないし約50%を占め、及び/又は350nmでのUV吸光度が少なくとも0.550であり、検出波長254nmでのMw=274ないし630のGPC積分面積が同様のMw範囲%を占める。
【0034】
図5A及び図5BのGPC図(図5Aの検出波長は254nmであり、図5Bの検出波長は365nmである)に示すように、実施例1、2、3及び5(それぞれEX1、EX2、EX3及びEX5)は、市販品である比較例(CP3、CP5オ及びCP6)と比較して、Mw274ないしMw630の範囲において、より高い総体GPC面積の積分面積比を有し、一部の分子は、他の分子よりも365nmでのUV吸光度に寄与する。市販の純TPE(テトラフェノールエタン、Sigma-Aldrichから)を参照のために図5Aに示す。ポリフェノール縮合物の重量平均分子量(Mw)が900より大きい比率は、検出波長254nmにおける総体GPC積分面積の20%以下に制限されることが好ましい。縮合生成物が、365nmで少なくとも0.320及び/又は350nmで少なくとも0.550のUV吸光度を有することも好ましい。場合によっては、ガードナー指数は約11、12ないし約13であり、粉末CIE L色空間のL値は、典型的には、約60ないし約75の範囲であり、L値はまた、約65ないし約70の範囲内であってもよく、または約60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74ないし約75である。a値は、典型的には約2ないし10の範囲内であるが、このa値が約4ないし8の範囲内であってもよく、または約2、3、4、5、6、7、8、9ないし約10であっても構わない。b値は、典型的には約20ないし35の範囲であり、b値は約25ないし約30の範囲であってもよく、または約25、26、27、28、29、30、31、32、33、34ないし約35であっても構わない。
【0035】
図5CのGPC図に示すように、前述の縮合物から製造された多官能性エポキシ樹脂(MFE)である実施例9、10及び11(それぞれEX9、EX10及びEX11)は、市販品である比較例(CP7、CP8及びCP10)と比較して、Mw274ないしMw882の範囲において、より高い総体GPC面積の積分面積比を有し、一部の分子は、他の分子よりもUV吸光度に寄与する。エポキシ化生成物が、365nmで少なくとも0.240及び/又は350nmで少なくとも0.430のUV吸光度を有することも好ましい。ある場合には、ガードナー指数は約12、13、14ないし約15であり、粉末CIE L色空間のL値は約72、73、74、75、76ないし約77、a値は約5、6、7、8ないし約9であり、b値は約36、37、38ないし約39である。
【0036】
本明細書に記載の実施形態と市販品(Hexion SD-357B)との比較を以下に示し、ここでA/Pはアルデヒド(グリオキサール)対フェノール化合物(フェノール)のモル比を意味する。この工程に関しては、Hexionは0.15ないし0.22のA/Pを主張するが、本実施形態は0.12ないし0.17の範囲にあるが、最小又は最大エンドポイントは「約」といった用語を基に調整することができるのみならず、この最小又は最大エンドポイントは0.1235、0.125、0.1275、0.13、0.135、0.1375、0.140、0.1435、0.145、0.1475、0.150、0.1535、0.155、0.1575、0.160、0.1635、0.165および0.1675の値の中の何れかにしてもよい。好ましくは0.135である。本発明に係る方法の実施形態は、複数の触媒を用いるものであることに対して、比較に供するHexionの方法(特許文献2ないし8参照、それらの全ての開示内容は参照により本明細書に組み込まれる)は、触媒を一つしか用いられないものであった。Hexionは、OXA(シュウ酸)、TCA(トリクロロ酢酸)又はTFA(トリフルオロ酢酸)か
ら触媒を選択する。
【0037】
製品特性の面において、本明細書に記載の実施形態は、UV及びガードナー指数(G)の良好な特性を維持又は改善する。更に、本明細書に記載のポリフェノール縮合物の実施形態は、1.3×[1×(アルデヒドの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(アルデヒドの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]と表されるMw範囲内、市販品及び比較例より大きいGPC積分面積比を取る。また、前記ポリフェノール縮合物から製造される多官能性エポキシ樹脂(MFE)の実施形態は、1.3×[1×(アルデヒドの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(アルデヒドの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)+168]と表されるMw範囲内、市販品オヨb比較例より大きいGPC積分面積比を取る。実施形態の
生成物のMw/Mn比は、市販品のMw/Mn比よりも小さい。Mw/Mnは多分散指数を意味する。PNXのMw/Mnが多くなればなるほど、エポキシ化工程において、より多くの不溶性エマルション副生成物が見出される。
【実施例
【0038】
以下、種々の実施形態の実施例(EX)及び比較例(CP)が提供される。
【0039】
実施例1(EX1)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
1885gのフェノール(20.05モル)、392gの40重量%グリオキサール水溶液(2.70モル)、及び触媒とされる1.7gのp-トルエンスルホン酸一水和物(0.009モル、グリオキサールに対して1.08%)を凝縮器、供給管、及び機械的撹拌機が設置された3Lガラス製のフラスコ中に加えた。グリオキサール対フェノールのモル比は0.135であった。混合物の温度を102~104℃にし、8時間還流を維持した。次いで、混合物を100℃未満に冷却し、続いて85gの2重量%炭酸ナトリウム溶液で触媒を中和した。この反応に、5gのシュウ酸二水和物(0.04モル)を加え、常圧蒸留のために140℃に加熱した。2時間後、未反応フェノールを約160℃で1時間、170℃で30分間、真空下で除去した。100gの水蒸気を流入させ、約1時間の時間内にスチームストリッピングを行った。その後、約170℃で30分間完全真空にして生成物を得た。生成物粉末のCIE L色空間のL値は71.90であり、a値は2.27であり、b値は25.05である。ポリフェノール縮合物の他の特性は、以下の表に示されている。
【0040】
実施例2(EX2)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
p-トルエンスルホン酸一水和物が1.51g(0.008モル、グリオキサールに対して0.96%)であり、2重量%炭酸ナトリウム溶液は70gであり、シュウ酸二水和物は2.5g(0.02モル)である以外は実施例1と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。
【0041】
実施例3(EX3)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
p-トルエンスルホン酸一水和物が0.85g(0.004モル、グリオキサールに対して0.54%)であり、2重量%炭酸ナトリウム溶液は40gであり、シュウ酸二水和物は5g(0.04モル)である以外は実施例1と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。生成物粉末のCIE L色空間のL値は67.26であり、a値は4.50であり、b値は25.67である。
【0042】
実施例4(EX4)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
p-トルエンスルホン酸一水和物が2.9g(0.015モル、グリオキサールに対して1.85%)であり、2重量%炭酸ナトリウム溶液は135gであり、シュウ酸二水和
物は5gである以外は実施例1と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。
【0043】
実施例5(EX5)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
p-トルエンスルホン酸一水和物が1.2g(0.006モル、グリオキサールに対して0.77%)であり、2重量%炭酸ナトリウム溶液は60gであり、シュウ酸二水和物は10gである以外は実施例1と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。
【0044】
実施例6(EX6)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
1880gのフェノール(20.0モル)、440gの40重量%のグリオキサール水溶液(3.03モル)、及び触媒とされる30gのシュウ酸二水和物(グリオキサールに対して17.05%)を凝縮器、供給管、及び機械的撹拌機が設置された3Lガラス製のフラスコ中に加えた。グリオキサール対フェノールのモル比は0.152であった。混合物の温度を102~104℃にし、4時間還流を維持した。次いで、混合物を100℃未満に冷却した。この反応に、2.3gのp-トルエンスルホン酸一水和物(0.012モル、グリオキサールに対して1.31%)を加え、10℃に加熱し、4時間維持した。次いで、混合物を100℃未満に冷却した。中和のために、110gの2重量%炭酸ナトリウム溶液を加えた。常圧蒸留のために140℃に加熱した。2時間後、未反応フェノールを約160℃で1時間、170℃で30分間、真空下で除去した。100gの水蒸気を流入させ、約1時間の時間内にスチームストリッピングを行った。その後、約170℃で30分間完全真空にして生成物を得た。生成物粉末のCIE L色空間のL*値は70.48であり、a値は2.28であり、b値は25.10である。ポリフェノール縮合物の他の特性は、以下の表に示されている。
【0045】
実施例7(EX7)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
シュウ酸二水和物が50g(グリオキサールに対して28.41%)であり、p-トルエンスルホン酸一水和物は1.4g(グリオキサールに対して0.8%)であり、2重量%炭酸ナトリウム溶液は60gである以外は実施例6と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。
【0046】
実施例8(EX8)-複数の触媒を用いたポリフェノール縮合物の合成
ポリフェノール縮合物は、p-トルエンスルホン酸一水和物が1.0g(0.005モル、グリオキサールに対して0.64%)であり、2重量%炭酸ナトリウム溶液は50gであり、シュウ酸二水和物は15g(0.12モル)であった以外は、実施例1と同じ手順で調製した。生成物粉末のCIE L色空間のL値は71.68であり、a値は2.30であり、b値は25.02である。
【0047】
比較例1(CP1)-シュウ酸を用いたポリフェノール縮合物の合成
1885gのフェノール(20.05モル)、392gの40重量%のグリオキサール水溶液(2.70モル)、及び触媒とされる6.5gのシュウ酸二水和物(グリオキサールに対して4.15%)を凝縮器、供給管、及び機械的撹拌機が設置された3Lガラス製のフラスコ中に加えた。グリオキサール対フェノールのモル比は0.135であった。混合物の温度を102~104℃にし、8時間還流を維持した。次いで、常圧蒸留のために140℃に加熱した。2時間後、未反応フェノールを約160℃で1時間、170℃で30分間真空下で除去した。100gの水蒸気を流入させ、約1時間の時間内にスチームストリッピングを行った。その後、約170℃で30分間完全真空にして生成物を得た。生成物粉末のCIE L色空間のL値は62.43であり、a値は6.80であり、b値は25.85である。ポリフェノール縮合物の他の特性は、以下の表に示されている。
【0048】
比較例2(CP2)-シュウ酸を用いたポリフェノール縮合物の合成
シュウ酸二水和物が50g(グリオキサールに対して31.9%)であった以外は、比較例1と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。
【0049】
比較例3(CP3)-p-トルエンスルホン酸を用いたポリフェノール縮合物の合成
シュウ酸を0.85gのp-トルエンスルホン酸一水和物で置き換え、8時間の還流の後、反応物を100℃未満に冷却し、次いで、2重量%の炭酸ナトリウム溶液40gを添加して中和した。反応を140℃に加熱し、比較例1の残りのプロセスに従った以外は比較例1と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。生成物粉末のCIE L色空間のL値は74.32であり、a値は3.10であり、b値は26.85である。
【0050】
比較例4(CP4)-p-トルエンスルホン酸を用いたポリフェノール縮合物の合成
p-トルエンスルホン酸一水和物が0.5gであった以外は比較例3と同じ手順で、ポリフェノール縮合物を調製した。
【0051】
比較例5(CP5)-グリオキサールを二回添加したポリフェノール縮合物の合成(特許文献2の実施例1に従う)
1728gのフェノール(18.36モル)、及び触媒とされる69.1gのシュウ酸二水和物(全部のグリオキサールに対して38.05%)を凝縮器、供給管、及び機械的撹拌機が設置された3Lガラス製のフラスコ中に加えた。227gの40重量%のグリオキサール水溶液(1.57モル)を30分かけて添加し、温度を90℃で1.5時間維持した。次いで90℃で40分かけて約180gの留出物を真空蒸留した。40重量%のグリオキサール水溶液(1.57モル)を227g、90℃で25分間かけて添加し、温度を更に1.5時間保持した。全部のグリオキサール対フェノールのモル比は0.17であった。その後、減圧蒸留を行うことにより約190gの蒸留物を除去した。反応を常圧で160℃で1時間蒸留した後、160℃で真空蒸留してフェノールを除去した。それを190℃に加熱し、1時間保持した。最後に、100gの水蒸気を流入させ、1時間スチームストリッピングを行った。ポリフェノール縮合物の特性は、以下の表に示されている。
【0052】
比較例6(CP6)-市販品
比較例6は、Hexion(Borden Chemical)から市販されているポリフェノール縮合物である「Durite」(登録商標)SD-357Bである。生成物粉末のCIE L色空間のL値は73.26であり、a値は4.09であり、b値は32.28である。
【0053】
【表1】
【0054】
表1において、EX1ないしEX8はMw/Mnが低く、分子量分布が狭いことを意味する。更に、EX1ないしEX8は、GPCにおけるMw>900が占める比率が低い。これらの二つの特性は、表2に示されているように、エポキシ化反応中のエマルション副生成物を減少させる可能性がある。図4A及び図4Bに示すように、EX1ないしEX8のUV吸光度は、254nmの検出波長において、Mw=274ないしMw 630のGPC積分面積と正の関係を有することがより明らかになる。ガードナー指数(G)が低いと、EX1ないしEX8の生成物は、依然として365nm又は350nmで比較的に高いUV吸光度を有する。CP1、CP2及びCP5は、UV吸光度において許容できる特性を有するが、そのガードナー指数(G)は高すぎることに対して、CP3及びCP4は低いガードナー指数(G)を有するが、UV吸収は非常に低い。EX1ないしEX8の生成物はのCIE L色空間のL値は約67ないし約72であり、a値は約2ないし約5であり、b値は約25ないし約26である。EX1ないしEX8の生成物中のテトラフェノールエタンの量は約9重量%~15重量%であるが、大部分の比較例では約10重量%未満である。より多くの量のテトラフェノールエタンは、更なる応用可能な熱特性及び蛍光特性に寄与し得る。
【0055】
実施例9(EX9)-EX1から多官能性エポキシ樹脂の合成
ポリフェノール縮合物のエポキシ樹脂を調製する手順は、特許文献11に見出すことができる。温度と圧力を制御して示す装置と、水とエピハロヒドリンと溶剤との共蒸留混合物を凝縮させて有機相と水相とに分離する装置とを備えた1L四首反応器に実施例1の生成物970g、エピハロヒドリン(7.73モル)715g、触媒としての4.5gのベンジルトリエチルアンモニウムクロライド(0.02モル)、及び酢酸イソプロピル300gを加えた。混合物を撹拌して、大気圧下で均質な溶液を形成し、次いで絶対圧190mmHg下で70℃に加熱した。圧力と温度の平衡に達した後、混合物に650gの49.5%水酸化ナトリウム溶液を7時間かけて一定速度で添加すると共に、反応系に含まれる水を共沸蒸留し、濃縮した。凝縮した共沸混合物を有機相と水相とに分離し、有機相を順次に反応系に再循環させ、水相を捨てた。反応が完了した後、未反応のエピクロロヒド
リン及び溶媒を減圧下に留去した。得られた粗エポキシ樹脂に含まれる塩化ナトリウムをトルエン及び脱イオン水に溶解し、水洗した。エマルション副生成物は、有機溶媒と水の層の間に位置していた。得られた混合物から減圧下で有機溶媒を留去しながら、体積測定のためにエマルジョン層を回収し、エポキシ樹脂を得た。多官能性エポキシ樹脂の特性は、以下の表に示されている。
【0056】
実施例10ないし12
実施例10ないし実施例12のエポキシ樹脂生成物は、実施例9と同様の手順で合成したが、実施例10、実施例11、実施例12のポリフェノール縮合物をそれぞれEX2、EX3、EX4の生成物に置き換えた。多官能性エポキシ樹脂の全ての特性は、以下の表に示されている。
【0057】
比較例7ないし9
実施例9と同様の手順で比較例7ないし比較例9のエポキシ樹脂生成物を合成したが、比較例7、比較例8及び比較例9のポリフェノール縮合物をそれぞれCP1、CP2、CP6の生成物に置き換えた。多官能性エポキシ樹脂の全ての特性を以下の表に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
表2に示すように、EX9ないしEX12の多官能性エポキシ樹脂は、ポリフェノール縮合物の低いガードナー指数の結果として、低いガードナー指数を有する。更に、EX9ないしEX12は、市販のCP9と類似またはより低い色指数で、365nm及び/又は350nmでより良好なUV吸光度を有する。ポリフェノール縮合物のMw/Mnが低いと、EX9ないしEX12におけるエポキシ化反応のエマルジョン副生成物は他のプロセスよりも少ない。EX9ないしEX12の生成物はCIE L色空間のL値が約75ないし約77であり、a値が約5ないし約7であり、b値が約36ないし約39である。
【0060】
実施例13ないし14
特許文献15、特許文献16、及び特許文献12(現在は特許文献13)に従う難燃性組成物の例を以下に示す。(これらの特許及び公開公報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。TNE190A70(Chang-Chun Plastic Co., Ltd., Taiwan製)を多機能エポキシ樹脂EX9に置き換えると、U
V吸光度及び色度が改善され、全ての熱特性が元のものとほぼ同様であった。
【0061】
【表3】
【0062】
実施例15ないし18
特許文献17及び特許文献13による臭素含有エポキシ樹脂及びハロゲンを含まないエポキシ樹脂の例を以下に示す。TNE190A70(Chang-Chun Plastic Co.,Ltd.製)を多官能性エポキシ樹脂EX9に置き換えると、UV吸光度及び色度が改善され、全ての熱特性が元のものとほぼ同様であった。
【0063】
【表4】
【0064】
以下の試験方法により、以下の縮合物及びエポキシドを分析した。
【0065】
縮合物及びエポキシの分析法
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC):
装置:Waters 717 Autosampler、Waters 515 Pumps
検出器:Waters 2487 Dualλ 吸光度検出器
検出波長:254nm、365nm
検出温度:25℃
254nmのカラム:TSKgel G3000HXL、G2000HXL、G1000HXL
365nmのカラム:TSKgel G3000HXL、G2000HXL、G2000HXL、G1000HXL
カラム温度:40℃
移動相:テトラヒドロフラン(THF)1.0mL/分
サンプル濃度:3mlのTHF中5mg
注入量:60μL
積分領域:16ないし32分(254nm);19ないし40分(365nm)
規格:以下の表に示すように、ポリスチレン標準はAlfa Aesar、Waters及びShodex STANDARDから市販されている。フェノールは、Sigma-Aldrichから入手可能である。
【0066】
【表5】
【0067】
HPLC分析条件
装置:Waters 600
検出器:Waters 2487 Dualλ 吸光度検出器
検出波長:254nm
カラム:Waters XTerra RP18 4.6mm×250mm、5μm
カラム温度:40℃
移動相:水:アセトニトリル=80分にわたり82:18~0:100(v.v)
移動相の流速:1.0mL/分
HPLCは、ポリフェノール縮合物中のTPE重量%を測定するためのものである。
【0068】
ガードナー指数:
方法:ASTM D6166による。
濃度:メタノール中5重量%のポリフェノール縮合物
メタノール中17.5重量%の多官能性エポキシ樹脂
【0069】
CIE L 色空間:
装置:NIPPON DENSHOKU COH 300A
試料:石英キュベット中の粉末10g(粉末直径≦100μm)
【0070】
紫外可視分光光度法(UV-Vis):
装置:PerkinElmer UV/Vis分光計ラムダ25
キュベット:1cm
濃度:10mg試料/100mL THF
検出波長:350nm及び365nmは、それぞれUV350及びUV365と呼ばれる。
【0071】
エポキシ当量(EEW):ASTM D1652の方法に従う。
【0072】
加水分解性塩素(HyCl):ASTM D1726の方法に従い、「ppm」で表される。
【0073】
CCL分析法
比誘電率(Dk)、誘電正接(Df)は、IPC-TM-650-2.5.5.9によって測定される。
ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)(走査速度:20℃/分)を用いて、IPC-TM-650-2.4.25に従って測定する。
分解温度(Td、5%重量損失)は、IPC-TM-650-2.3.40に従い、熱重量分析計(TGA)(走査速度:10℃/分)により測定する。
吸水度(重量%):100℃の水に入れた試験片で、2時間後に測定した重量の増加率(重量%)。
熱応力(S-288):JIS-C-6481に準拠して測定される。電気ラミネートを288°Cのはんだ炉に浸し、離層する時間を測定する。
耐燃性:UL94に従って測定する。
【0074】
出願人は、本実施形態による多触媒システムの使用が、ポリフェノール縮合物(PNX)のMw/Mn比を制御し、以下の効果が得られる:
・異なる量の触媒でガードナー指数を調整することができる。
・従来のプロセスで利用されていた触媒の量を減らすことができる。
・Mw/Mn比を低下させることにより、エポキシ化プロセスにおけるエマルション副生成物を低減させることができる。
・UV350及びUV365吸光度を増大させることができる。
【0075】
出願人は、UV365及び/又はUV350とMw範囲とに関して、以下の事項を発見した:
・UV365及び/又はUV350吸光度を増大するための標的分子を把握した。
・1.3×[1×(アルデヒドの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(アルデヒドの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]と表されるMw範囲内のGPC積分面積は、PNXにおける35ないし50%の総体GPC積分面積を占める。
・1.3×[1×(アルデヒドの分子量)+2×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)]ないし1.5×[3×(アルデヒドの分子量)+3×(フェノール化合物の分子量)-2×(水の分子量)+168]と表されるMw範囲内のGPC積分面積は、MFEにおける60ないし70%の総体GPC積分面積を占める。
【0076】
本発明者らの実施形態を当業者の理解のために記載してきたが、実施形態は単なる例示であり、特許請求の範囲に記載された保護の範囲を測定しないことは明らかである。
【0077】
「備える」、「有する」、及び「含む」という用語は、それらのオープンで非限定的な意味で使用される。用語「一」及び「前記」、「該」は、複数形及び単数形を包含するものと理解される。表現「少なくとも1つ」は、1つ以上を意味し、従って、15の個々の成分並びに混合物/組み合わせを含む。数値を参照するときの「約」という用語は、具体的には、数値を丸めるための標準的な規則を使用して数値を丸めることができることを意味する。例えば、「約1.5」は1.45~1.54である。用語「約」が特定の値と関連して具体的に示される(又は存在しない)かどうかにかかわらず、本明細書に記載される全ての価値は、用語「約」又は用語なしで修正され得る。本明細書に開示される全ての範囲及び数値は、包括的且つ組み合わせ可能である。例として、本明細書に記載された範囲内にある任意の値又は点は、下位範囲等を導出するための最小又は最大値として役立ち
得る。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C