IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トロノックス エルエルシーの特許一覧

特許7245869NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法
<>
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図1
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図2
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図3
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図4
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図5
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図6
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図7
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図8
  • 特許-NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】NOxを低減するコーティング及び当該コーティングによってNOxを低減するための方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20230316BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20230316BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230316BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B01D53/86 222
B05D5/00 Z
B32B7/023 ZAB
B05D7/00 L
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021091439
(22)【出願日】2021-05-31
(62)【分割の表示】P 2018520472の分割
【原出願日】2016-10-21
(65)【公開番号】P2021154281
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】62/244,217
(32)【優先日】2015-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500002799
【氏名又は名称】トロノックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ケロッド,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】ウィン,キム
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247546(JP,A)
【文献】特開2001-297614(JP,A)
【文献】特開2001-316849(JP,A)
【文献】特開平09-268509(JP,A)
【文献】特開2010-172797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94-53/96
B32B 1/00-43/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体構造の付近にあるNOを除去する方法であって、
前記基体構造の表面の少なくとも一部に、90超のL値を呈し波長355nm~375nmの範囲における入射光の少なくとも60%を反射するようになされた第1のコーティング材料の層である第1のコーティング層を備え付けること及び
透明又は半透明であり、前記基体構造の付近にあるNOの少なくとも一部の酸化を触媒するのに有効な量の、光触媒作用のある二酸化チタンを含む、第2のコーティング材料の層を、前記第1のコーティング材料の前記層を覆うように設けること
を含む、方法。
【請求項2】
基体構造が、立体駐車場又は道路構造である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
光触媒作用のあるTiO材料によるNOの低減を改善する方法であって、
前記光触媒作用のあるTiO材料を含む透明又は半透明な層を、90超のL値を呈し波長355nm~375nmの範囲における入射光の少なくとも60%を反射するようになされた材料のさらなる層と、前記透明又は半透明な層が前記さらなる層の上に覆うように組み合わせることを含み、
前記さらなる層を覆う前記透明又は半透明な層の組み合わせが、前記透明又は半透明な層それ自体に比べて増加した速度にてNOの酸化を触媒するのに有効である、
方法。
【請求項4】
増加した速度が、前記透明又は半透明な層と前記さらなる層との相乗効果に起因する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記さらなる層を覆う透明又は半透明な層の組み合わせによるNOの酸化が、透明又は半透明な層それ自体によるNOの酸化より少なくとも10%大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のコーティング層が、白系の可視色を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のコーティング層が、90超のL値、-5~+5のa値及び-2~+10のb値によって規定された色を有する、請求項1、2、6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
I.紫外光への100時間の曝露後、前記第1のコーティング層の色が、95.0~97.0のL値、-1.50~-0.50のa値及び1.0~4.0のb値によって規定されるという条件、及び
II.紫外光への1300時間の曝露後、前記第1のコーティング層の色が、95.0~97.5のL値、-1.00~-0.45のa値及び1.0~2.5のb値によって規定されるという条件
のうちの1つが、満たされている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
記材料のさらなる層が、白系の可視色を有する、請求項~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
記材料のさらなる層が、90超のL値、-5~+5のa値及び-2~+10のb値によって規定された色を有する、請求項3~5、9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
I.紫外光への100時間の曝露後、前記材料のさらなる層の色が、95.0~97.0のL値、-1.50~-0.50のa値及び1.0~4.0のb値によって規定されるという条件、及び
II.紫外光への1300時間の曝露後、前記材料のさらなる層の色が、95.0~97.5のL値、-1.00~-0.45のa値及び1.0~2.5のb値によって規定されるという条件
のうちの1つが、満たされている、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境中のNOxの低減に関し、より特定すると、表面上にコーティングとして装着されたときにNOxの低減のために有用な組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大気質は、特に都市部及び工業地帯において、懸念され続けている事柄である。空気汚染の課題は、大抵の場合、二酸化炭素(CO)及び微粒子状物質のレベルに関連付けられるが、窒素酸化物(NOx)もまた、大気汚染の有意な寄与因子である。
【0003】
二酸化窒素(NO)は、主に一酸化窒素(NO)の酸化によって形成される反応性の高い気体であり、高温燃焼工程(自動車エンジン及び発電所等)が、NOx(すなわち、NOとNOの合計)の主要な発生源である。NOx型排出物質の過半数はNOの形態であるが、NOの形態もかなりの量である。健康への悪影響は、NOへの短期間の曝露(例えば、感受性の高い集団群における肺機能の変化)及び長期間の曝露(例えば、呼吸器感染症の罹患しやすさの増大)と関連付けできることが公知である。大気中に窒素が過剰に蓄積されると、生態系において含窒素栄養素が余分になることがあり、この結果、陸域生態系及び水界生態系において富栄養化が起き得る。窒素酸化物は、オゾンの形成においても主要な役割を担い、二次的な無機エアロゾルの形成への寄与によって(すなわち、ニトレートの形成によって)、NOxは、大気中の微粒子状物質濃度にも寄与し得る。
【0004】
NOx汚染を低減するために、許容されるNOx型排出物質の制御を含む様々なステップが採用されてきた。導入されたNOx削減技術の1つは、光、水及び酸素の存在下で触媒を利用する、NOxの光触媒作用に関する。例えば、二酸化チタン(TiO)が紫外(UV)光に晒されると、電子正孔対が生成され、TiO表面上に吸着されたフリーラジカルの形成によって酸化還元反応が促進される。反応性が高いラジカル種は、TiO触媒を大量に消費することなく、汚染物質(窒素酸化物、硫黄酸化物及び揮発性有機化合物等)を分解して、比較的害の少ない物質(例えば、NOxの酸化によるニトレートの形成)に変えることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光触媒塗料及び光触媒(TiO等)を組み込んだ同様のコーティング材料は、NOx削減のための潜在的な媒体として開発されてきており、様々なレベルの成功を示してきた。しかしながら、大気中のNOxの低減を増進するためのさらなる技術が、依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、空気からNOxを除去するための改善を提供する。ある構造の付近の大気から、当該構造に光触媒コーティングを備え付けることによってNOxを除去できるようにする、方法が提供される。特に、大気からNOxを除去する光触媒コーティング材料の能力は、表面を覆ったコーティングに特定の特徴を付与することによって改善される。したがって、本開示は、光触媒作用のある二酸化チタン組成物によって少なくとも部分的にコーティングされた母材(例えば、立体駐車場、トンネル又は他の沿道における構造体等の構造体)を含む、構造体も提供する。本方法及び本構造体は、光触媒コーティング材料が、透明又は半透明であり、透明又は半透明なコーティングの下に位置する表面が、二酸化チタン光触媒の光触媒活性を増大させることが判明している光反射特性を備えるため、特に有用である。
【0007】
いくつかの実施形態において、本開示は、積層構造体に関する。例えば、積層構造体は、基体、入射光の少なくとも約60%を反射するようになされた基体上の第1のコーティング層、及び実質的に透明又は半透明であり、光触媒作用のある二酸化チタンを含む、第1のコーティング層を覆った第2のコーティング層を含み得る。例示的な実施形態が、複数の層と関連付けて記述されているが、いくつかの実施形態においては、基体の表面が、他の方法により、第1のコーティング層に関して本明細書において記述された光反射特性及び/又はさらなる特性を呈する限り、第1のコーティング層が存在しなくてもよいと理解されている。積層構造体は、下記の記載事項の1つ又は複数をさらに特徴とすることが可能であり、下記の記載事項は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の数のこれらの記載事項を組み合わせ、及び/又はこれらの記載事項の任意の組分けをなすように組み合わせることができる。
【0008】
基体は、セメント質であってよい。
【0009】
基体は、木材、金属、メーソンリー、プラスチック、紙又は石膏であってよい。
【0010】
第1のコーティング層は、塗料であってよい。
【0011】
第1のコーティング層は、白系の可視色を有し得る。
【0012】
第1のコーティングの色は、約90超のL値、及び/又は約-5~+5の間のa値、及び/又は約-2~約+10の間のb値によって規定することができる。
【0013】
第2のコーティング層は、約0.1重量%~約30重量%の二酸化チタンを含み得る。
【0014】
光触媒作用のある二酸化チタンは、100nm未満の平均サイズを有する粒子の形態であってよい。
【0015】
第1のコーティング層は、白色顔料を含み得る。
【0016】
第2のコーティング層は、NOxの酸化を触媒するようになされることが可能である。
【0017】
第1のコーティング層を覆う第2のコーティング層の組み合わせは、第2のコーティング層それ自体に比べて増加した速度にてNOxの酸化を触媒するのに有効であり得る。
【0018】
NOxの酸化の増加した速度は、第1のコーティング層と第2のコーティング層との相乗効果に起因し得る。
【0019】
第1のコーティング層を覆う第2のコーティング層の組み合わせによるNOxの酸化は、第2の層それ自体によるNOxの酸化より少なくとも約10%大きいことが可能である。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、基体構造の付近にあるNOxを除去する方法に関し得る。例えば、このような方法は、基体構造の表面の少なくとも一部に、入射光の少なくとも約60%を反射するようになされた第1のコーティング材料の層を備え付けること及び実質的に透明又は半透明であり、基体構造の付近にあるNOxの少なくとも一部の酸化を触媒するのに有効な量の光触媒作用のある二酸化チタンを含む、第2のコーティング材料の層を、第1のコーティング材料の層を覆うように設けることを含み得る。本方法は、下記の記載事項の1つ又は複数をさらに特徴とすることが可能であり、下記の記載事項は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の数のこれらの記載事項を組み合わせ、及び/又はこれらの記載事項の任意の組分けをなすように組み合わせることができる。
【0021】
基体構造は、立体駐車場又は道路構造であってよい。
【0022】
第1のコーティング材料は、白系の可視色を有し得る。
【0023】
第1のコーティング材料の色は、約90超のL値、及び/又は約-5~+5の間のa値、及び/又は約-2~約+10の間のb値によって規定することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示は、光触媒作用のあるTiO材料によってNOxの低減を改善する方法に関し得る。例えば、本方法は、光触媒作用のあるTiO材料を含む透明又は半透明な層を、入射光の少なくとも約60%を反射するようになされたある材料からできたさらなる層と、透明又は半透明な層がさらなる層の上に覆うように組み合わせることを含み得るが、このさらなる層を覆う透明又は半透明な層の組み合わせは、透明又は半透明な層それ自体に比べて増加した速度にてNOxの酸化を触媒するのに有効である。本方法は、下記の記載事項の1つ又は複数をさらに特徴とすることが可能であり、下記の記載事項は、本開示の範囲から逸脱することなく、任意の数のこれらの記載事項を組み合わせ、及び/又はこれらの記載事項の任意の組分けをなすように組み合わせることができる。
【0025】
NOxの酸化の増加した速度は、透明又は半透明な層と、さらなる層との相乗効果に起因する可能性がある。
【0026】
前記さらなる層を覆う透明又は半透明な層の組み合わせによるNOxの酸化は、透明又は半透明な層それ自体によるNOxの酸化より少なくとも約10%大きいことが可能である。
【0027】
さらなる層は、白系の可視色を有し得る。
【0028】
さらなる層の色は、約90超のL値、及び/又は約-5~+5の間のa値、及び/又は約-2~約+10の間のb値によって規定することができる。
【0029】
本開示の実施形態を理解するために、添付の図面を参照するが、これらの図面は、必ずしも原寸に比例して描かれておらず、例示的なものにすぎず、本開示を限定するものとして解釈すべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の層及び第2の層によってコーティングされた基体を示す、本開示の例示的な実施形態による積層構造体の図である。
図2】蛍光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図3】紫外光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図4】蛍光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図5】紫外光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図6】蛍光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図7】蛍光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図8】紫外光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
図9】紫外光に晒されたときの、本開示の例示的な実施形態による構造体を含む様々な構造体による経時的なNOx低減率%を示す、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、下記において、本発明をより完全に記述する。しかしながら、本発明は、数多くの異なる形態で具体化することが可能であり、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきでない。逆に、これらの実施形態は、本開示が網羅的で完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に完全に伝達するように提供されている。本明細書及び特許請求の範囲において使用されているとき、「1つの」、「一」及び「この」という単数形は、そうではないと文脈により明確に述べられていない限り、複数の指示対象を含む。
【0032】
本開示は、大気中から窒素酸化物(NOx)を除去するようになされた構造体を提供する。本明細書において使用されているとき、「NOx」という用語は、試料中(又は一般に、空気中)に存在するNO、NO又は窒素酸化物種(NO及びNOを含む。)の合計を指し得る。構造体は、透明又は半透明であり、光触媒作用のある二酸化チタン(TiO)を含む、材料の層によって少なくとも部分的にコーティングされた表面を有する、基体構造を含み得る。基体材料の表面は、本明細書において記述された特定の光反射特性を呈し得る。代替的には、基体は、異なる組成物からできた複数の層によってコーティングされていてもよく、少なくとも最も外側の層は、光触媒作用のある二酸化チタンを含む透明又は半透明な材料から形成される。透明又は半透明な、光触媒層は、NOxの除去を改善するように、(基体表面であろうが、さらなるコーティング層であろうが)光触媒層の下に位置する材料と相乗的に作用することできる。本開示は、NOxが存在し得る場所にこのような構造体を設けることによって、NOxを除去する方法をさらに提供する。特に、既存の構造体又は新たな構造体は、第2の組成物からできた少なくとも1個の層によって上塗りされた、第1の組成物からできた少なくとも1個の層によってコーティングされていてもよい。第2の組成物は、透明又は半透明であってよく、光触媒材料を含み得るが、第1の組成物は、光触媒材料のNOxの低減効果を改善する特性を呈し得る。
【0033】
したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、基体、基体上の第1のコーティング層及び第1のコーティング層を覆った第2のコーティング層を含む、積層構造体を提供する。本明細書においてさらに詳細に論述されているように、構造体は、2種のコーティング層(又はコーティング層を形成するために使用された2種のコーティング材料)と関連付けて特徴付けることができるが、1個又は複数のさらなる層が、構造体中に含まれていてもよい。例えば、第1のコーティング材料からできた複数の層が装着されていてもよいし、及び/又は第2のコーティング材料からできた複数の層が装着されていてもよい。さらに、さらなる層が、第1のコーティング層と、基体との間に装着されていてもよい。
【0034】
本開示の実施形態による積層構造体100は、図1に示されている。図1に見受けられるように、基体110は、当該基体110の上に載った状態の(第1のコーティング材料から形成された)第1の層120を備え、(第2のコーティング材料から形成された)第2の層130が、第1の層を覆うように設けられている。第2の層130は、透明又は半透明である。
【0035】
基体110は、NOxの低減が望ましい可能性がある領域に配置することができる、任意の構造体であってよい。基体は、当該構造体の上にコーティング層を装着することができる、既存の構造体であってよい。基体は、NOxの低減が望ましい可能性がある領域に意図的に配置され得る、新たな構造体であってよい。基体を形成する構造体のサイズに限定はないが、コーティング層によって被覆できる構造体の表面積の量が大きいほど、予想されるNOx低減のレベルが大きくなると理解されている。基体のすべて又は一部が、コーティング層によって被覆されていてもよい。好ましくは、基体は、コーティング層が、光触媒効果を開始するのに十分な光を吸収しやすいように配置されている。図1に示された例示的な実施形態において、コーティング層(120及び130)は、基体110の露出表面上にコーティングされていることが理解される。
【0036】
基体は、住宅又は建築物等の構造体であってよい。基体は、工業用地、特に発電所又は自動車の往来がある領域等、特にNOx生成の増大が予想される領域に配置された構造体であってよい。例えば、基体は、立体駐車場又は道路構造を含み得る。道路構造は、道路との関連で配置された任意の構造を含み得ると理解されている。道路構造の非限定的な例には、路面、橋及び高架橋、トンネル、沿道用又は中央分離帯用防護柵、道路標識、料金徴収所及び他の建築物(例えば、ガソリンスタンド及びコンビニエンスストア等)が挙げられる。
【0037】
基体は、1個又は複数の層によるコーティングに適した任意の材料から実質的に形成され得る。例えば、セメント質構造(例えば、コンクリート又は類似の材料を使用して形成されたもの)は、基体として特に適切であり得る。しかしながら、限定されるわけではないが木材、金属及びメーソンリー等の他の材料もまた、本開示によって包含される。このような材料は、太陽からの紫外線を受け、雨によって洗われる可能性がある構造体の外面においては、特に見受けられることがある。しかしながら、本開示の構造体は、住宅又は他の建築物の内部等、屋内での使用に適し得る。したがって、基体は、限定されるわけではないが、プラスチック、紙、テキスタイル及び石膏等の他の材料から実質的に形成されることが可能である。
【0038】
第1のコーティング層120は、基体の表面上に層を形成するのに適した任意の材料、例えば成膜材料を含み得る。シート状の材料及び予備成形されたフィルム等も排除されないが、形成の容易さを理由として、第1のコーティング層は、実質的に液体状の形態で基体の表面に塗布し、すなわち、スプレー塗り、ロール塗り、ブラシがけ、浸し塗り又は同様の方法によって塗布し、乾燥又は別様に硬化させて、第1のコーティング層を形成することが可能である、塗料又は他の分散物、混合物若しくは溶液等の材料から形成されることが有用であり得る。
【0039】
本明細書においてさらに記述されているように、第1のコーティング層は、第2のコーティング層の光触媒効果を改善する光散乱を発生させるために有益なものであり得る。したがって、第1のコーティング層は、光散乱特性と関連付けて規定することができる。好ましくは、第1のコーティング層は、第1のコーティング層の表面と接触した入射光の大部分を反射するように構成される。反射は、拡散反射(すべての角度における散乱)及び正反射(単一の角度における反射)を包含し得る。いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、すべての入射光の少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は少なくとも約98%を反射するように構成されることが可能である。反射率は、電磁放射の特定の波長及び/又は電磁放射のバンドに関して特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、第1のコーティング層によってもたらされる反射光の百分率は、可視スペクトル(約400nm~約750nmの波長)の光と関連付けて評価することができる。いくつかの実施形態において、第1のコーティング層の反射率は、紫外バンド(例えば、約100nm~約400nmの範囲又は約290nm~約400nmの範囲)の光と関連付けて規定することができる。好ましくは、第1のコーティング層は、約350nm~約380nm、約355nm~約375nm又は約360nm~約370nmの波長を有する光を反射するためになされることが可能である。反射率は、例えば、LAMBDA(商標)750UV/Vis/NIR Spectrophotometer(Perkin Elmerから入手可能)等の分光光度計を利用して評価することができる。反射率又は材料に関する測定方法及びデータ解釈は、ASTM E1331-15,Standard Test Method for Reflectance Factor and Color by Spectrophotometry Using Hemispherical Geometry、ASTM E1175-87(2015),Standard Test Method for Determining Solar or Photopic Reflectance,Transmittance,and Absorptance of Materials Using a Large Diameter Integrating Sphere及びASTM G173-03(2012)、Standard Tables for Reference Solar Spectral Irradiances:Direct Normal and Hemispherical on 37°Tilted Surfaceにおいて記述されている。
【0040】
第1のコーティング層は、選択的には、白系の可視色を有する。材料の見かけの色は一般的に、可視光の反射率に起因すると理解されているため、一般的に視認可能な白色の材料によってもたらされる可視スペクトルの光のような、可視スペクトルのすべての光の実質的に大部分を反射するようになされたコーティング材料を利用することは、特に有用なことがあり得る。したがって、第1のコーティング層の形成に使用されるコーティング材料は、純白又はオフホワイトのコーティング層をもたらすようになされることが可能である。
【0041】
いくつかの実施形態において、コーティング層の「白色度」の度合いは、L値、a値及びb値のいずれか又はすべてと関連付けて特徴付けることができる。これらの値は、International Commission on Illumination(CIE)によって開発された公知のCIE L(CIELAB)尺度と関連付けて得ることができる。CIELABは、網膜の色刺激が明暗の識別、赤色と緑色との識別及び青色と黄色との識別に変換されることに基づいた、反対色系である。CIELABは、L、a及びbという3種の軸を用いて、上記L値、a値及びb値を示す。
【0042】
は、色の明度(0~100の尺度による。0が黒色であり、100が拡散反射白色である(100より大きい値も、正反射白色に関しては可能である。))を表し、aは、緑色からマゼンタの間の尺度(負の値が緑色を示し、正の値がマゼンタを示す。)を表し、bは、黄色から青色の間の尺度(負の値が青色を示し、正の値が黄色を示す。)を表すと理解されている。第1のコーティング材料によって形成されたコーティング層は、約90超、約92超又は約95超のL値を呈し得る(最大のL値は、100であると理解されている。)。特定の実施形態において、Lは、約90~100又は約92~100であってよい。さらなる実施形態において、Lは、約95~約97であってよく、又はより厳密には、95.0~97.5又は95.0~97.0であってよい。
【0043】
第1のコーティング材料によって形成されたコーティング層は、約-5~約+5、約-4~約+4又は約-2~約+2のa値を呈し得る。いくつかの実施形態において、aは、約-5から0未満まで、約-4から0未満まで、-3から0未満まで又は-2から0未満まで等、0未満であってよい。特に、aは、-1.50~-0.50又は-1.00~-0.45であってよい。
【0044】
第1のコーティング材料によって形成されたコーティング層は、約-2~約+10、約-1~約+9又は約0~約+8のb値を呈し得る。いくつかの実施形態において、bは、約1~約5等、0超であってよく、又はより特定すると1.0~4.0若しくは1.0~2.5であってよい。
【0045】
1つ又は複数の実施形態において、上記L、a及びbの値は、任意の方法により組み合わせることができる。言い換えると、コーティング層は、上記範囲のいずれかに含まれるL値を有する一方で、上記範囲のいずれかに含まれるa値も有しながら、同時に、上記範囲のいずれかに含まれるb値をさらに有することが可能であり、当業者ならば、適切なコーティング層の色が、上記範囲からのL値、a値及びb値の選択によって達成され得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態において、紫外光への曝露時間によっては、特定の値の組み合わせが所望されることもある。例えば、紫外光への100時間の曝露後、コーティング層は、95.0~97.0のL値、-1.50~-0.50のa値及び1.0~4.0のb値を有し得る。別の例として、紫外光への1300時間の曝露後、コーティング層は、95.0~97.5のL値、-1.00~-0.45のa値及び1.0~2.5のb値を有し得る。
【0046】
上記値は、第1のコーティング層が透明又は半透明な第2のコーティング層によって被覆された場合に呈されることが可能である。L値、a値及びb値は例えば、color-view(商標)Spectrophotometer(BYK-Gardner USA、Columbia、Marylandから入手可能)を使用して測定することができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、視認可能な白系の色を付与するようになされた1種又は複数の顔料を含み得る。例えば、TIONA(商標)595(Millennium Inorganic Chemicals Ltd.から入手可能)等の二酸化チタン顔料が含まれ得る。
【0048】
第2のコーティング層130は、光が第2のコーティング層130を通過して、第1の層(又は適切な基体表面)等の第2のコーティング層130の下に位置する材料によって反射されることが可能になるほど、十分に透明又は半透明な層を生じさせる材料から形成することができる。第2のコーティング層は、光触媒活性を第2のコーティング層に付与するのに適した形態の二酸化チタンを含む。したがって、第2の層は、光触媒作用のあるTiOを含むものとして特徴付けることができる。光触媒作用のあるTiO組成物の例には、CristalからCristalACTiV(商標)の名称で入手可能なTiO組成物が挙げられる。二酸化チタンのコロイドゾルは特に、所望の光触媒活性も呈する透明なコーティング層を形成するために有用な材料であることが実証されてきた。
【0049】
いくつかの実施形態において、光触媒作用のあるTiOは、粒径、表面積及び結晶型の1つ又は複数と関連付けて規定することができる。例えば、本開示による有用な光触媒作用のあるTiOは、約100nm未満、約50nm未満、約25nm未満又は約10nm未満(例えば、約1nm~約50nm、約1nm~約40nm又は約2nm~約20nm)の平均粒径を有し得る。表面積は好ましくは、約50m/g、少なくとも約100m/g、少なくとも約200m/g又は少なくとも約250m/g(例えば、約50m/g~約500m/g、約100m/g~約450m/g又は約150m/g~約400m/g)であり得る。結晶構造は、好ましくは、アナターゼ形態であってよい。粒子のキャラクタリゼーションは、透過型電子顕微鏡法(TEM)、X線回折分光法(XRD)又は光散乱法(Malvern Instruments Ltd.、U.K.による動的光散乱法等)等の公知の技法を使用して実施することができる。
【0050】
第2の層を形成する材料中のTiOの濃度は、多様であり得る。例えば、TiO濃度は、約0.1重量%~約99重量%であり得る。いくつかの実施形態において、TiO濃度は、約0.1重量%~約30重量%、約1重量%~約20重量%又は約5重量%~約15重量%であってよい。
【0051】
透明又は半透明なTiOゾルは、水性溶媒中、特に水中又はアルコール等の水混和性溶媒と合わせた水中で用意することができる。第2のコーティング層(TiOゾルを含む。)の形成に使用される材料は、任意に、さらなる原材料を含んでもよいが、このようなさらなる原材料の添加が、測定可能な悪影響をゾルの透明度又は安定性に及ぼさないことを条件とする。TiO及び溶媒の他に存在してもよいさらなる材料の非限定的な例には、殺菌剤、有機溶媒(例えば、アルコール)、成膜助剤、金属イオン封鎖剤及びpH調整剤を挙げることができる。TiOゾルから形成された材料は、酸によって安定化されていてもよいし、塩基によって安定化されていてもよいし、又は実質的に中性であってもよい。
【0052】
第2のコーティング層の形成に使用される材料は、得られる層が、必要なレベルの透明度又は半透明性をもたらし、必要な光触媒機能をもたらす場合、任意の形態であってよい。いくつかの実施形態において、第2のコーティング層は、TiOゾル材料を使用して形成されることが可能である。第2のコーティング層の透明度は、第2のコーティング層を通過する可視光(すなわち、約400nm~約700nmの波長範囲)の量に対して特徴付けることができる。好ましくは、透明度は、第2のコーティング層に入射する可視スペクトルの光の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%(例えば、約50%~約99%、約60%~約98%又は約65%~約95%)が、第2のコーティング層を通過するような透明度である。透明度の標準試験法は、ASTM D1003-13、Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plasticsにおいて記述されている。他の方法も利用されることが可能である。例えば、コーティング材料は、スプレー塗り又は引張棒の使用等の適切な方法によって、所望のコーティング厚さになるまで、透明なガラス基材(例えば、板ガラスのキュベット)に塗布した後、風乾することができる。このようにして形成された試料は、紫外可視分光計により、同じ基材(無コーティング)をブランクとして使用して試験することができる。透明度は、400nm~700nmの波長にわたる平均透過率%として記録することができる。本開示によるコーティングは好ましくは、400nm~700nmの波長にわたって、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%又は少なくとも約90%(例えば、約50%~約99%、約60%~約98%又は約65%~約95%)の平均透過率を呈する。
【0053】
光触媒作用のあるTiO及び当該TiOの組成物(透明又は半透明なTiOゾルを含む。)並びにこのような材料を調製する方法は、Sakamotoらの米国特許第5,049,309号、Moriらの米国特許第6,420,437号、Ohmoriらの米国特許第6,672,336号、Amadelliらの米国特許第6,824,826号、Fuらの米国特許第7,763,565号、Strattonらの米国特許第7,776,954号、Fuらの米国特許第7,932,208号、Imらの米国特許第7,935,329号、Goodwinらの米国特許出願公開第2007/0155622号、Leeらの米国特許出願公開第2011/0159109号、Fuらの米国特許出願公開第2011/0183838号及びKerrodらの米国特許出願公開第2013/0122074号において開示されており、これらの開示は、参照により本明細書に組み込む。このような材料は特に、本明細書において開示された第2のコーティング層の形成に利用することができる。
【0054】
第2のコーティング層は、コーティングの形成に適した任意の方法によって、第1のコーティング層を覆うように設けられる。第2のコーティング層を形成する材料は、実質的に液体状の形態で基体の表面に塗布し、すなわち、スプレー塗り、ロール塗り、ブラシがけ、浸し塗り又は同様の方法によって塗布し、乾燥又は別様に硬化させて、第2のコーティング層を形成することが可能である、分散物、混合物又は溶液(コロイドゾルを含む。)として用意することができる。
【0055】
本開示による積層構造体は、所与の領域中に存在するNOxの低減に特に効果的であり得る。光触媒作用のあるTiOを含む第2のコーティング層は、本積層構造体から影響を受けることなく、NOx低減機能を呈し得る。しかしながら、本開示によれば、特定の反射特性を有する第1のコーティング層と、第2のコーティング層との組み合わせは、NOxを低減する効力を増大させる相乗効果をもたらすことができると判明した。特に、積層構造体によってもたらされるNOxの低減は、第2のコーティング層単独によってもたらされるNOxの低減を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%又は少なくとも約25%上回り得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、第1のコーティング層は、光触媒塗料等の光触媒材料から形成されることが可能である。CristalACTiV(商標)TiOを含むBOYSEN(R)KNOxOUT(商標)塗料(Pacific Paint(Boysen)Philippines,Inc.製)等、様々な光触媒塗料が、当技術分野において公知である。しかしながら、本開示によれば、(本明細書に記載の反射特性を示す場合の)第1のコーティング層と、(透明又は半透明であり、光触媒作用のあるTiOを含む。)第2のコーティング層との組み合わせは、NOxを低減させる効力を増大させる相乗効果をもたらすことができることが判明した。このような効果は、第1のコーティング層それ自体が、NOx低減特性を呈する光触媒材料である場合に見受けられる。特に、積層構造体によってもたらされるNOxの低減は、第1のコーティング層単独によってもたらされるNOxの低減を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%又は少なくとも約25%上回り得る。
【0057】
構造体の付近にあるNOxの低減は、コーティング付き構造体を通り越しながら循環する空気が、大気中に存在するあらゆるNOxを光触媒によって酸化するのに十分なほど外側コーティング層と接触できることを意味するように理解されている。さらに、このようにして影響された空気は、構造体から離れたところで循環することができ、この結果、時間が経過すると、大気の全体的なNOxレベルが低下すると理解されている。本開示による評価を目的とした場合、本明細書に記載の構造体の付近におけるNOxの低減は、コーティング付き基体構造から半径100m以内、半径10m以内、半径1m以内又は半径0.5m以内のNOxの低減を意味し得る。NOxの低減のための試験法は、ISO22197-1:2007、Fine ceramics(advanced ceramics,advanced technical ceramics)--Test method for air-purification performance of semiconducting photocatalytic materials--Part 1:Removal of nitric oxideに記載の方法等、公知の方法に従って実施することができる。NOxの低減を試験するのに適したさらなる方法が、添付の実施例において記述されている。さらに、NOx除去を測定するための方法が、Goodwinらの米国特許出願公開第2007/0167551号において記述されており、この開示は、全体を参照により本明細書に組み込む。
【0058】
いくつかの実施形態において、本開示による構造体は、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%又は少なくとも約50%の低減である、周囲空気中のNOxの量の低減をもたらすことができる。低減は、規定された期間の時間にわたってppm(体積による)により測定された平均のNOx濃度に基づくことができる。例えば、1時間にわたって平均されたある場所におけるNOxのベースライン濃度が1ppm(体積による)である場合において、本開示による構造体を同じ場所に配置した後で1時間にわたって平均されたNOx濃度が0.5ppm(体積による)であったならば、構造体の存在により、約50%のNOxの低減が達成されていたと理解されるであろう。
【0059】
第1のコーティング層及び第2のコーティング層が、光触媒効果を伴うNOx低減特性を呈する場合でさえ、積層された組み合わせが相乗効果をもたらすことは予想されていない。これは、第2のコーティング層により、NOx分子を含む空中浮遊物質が第1のコーティング層と接触して触媒作用を受けることがなくなるため、第2のコーティング層によって被覆された場合の第1のコーティング層は、何らかの触媒効果を実質的にもたらすと予想されていないことが理由である。逆に、本開示によれば、NOxの低減の改善は、積層構造体において、第1のコーティング層(第1のコーティング層の材料に関する何らかの独立した光触媒機能にも左右されず)が、透明又は半透明な第2のコーティング層を通過した入射光を受け取っているときに、本明細書において記述された光反射特性を呈する(例えば、実質的に白系色である。)場合に達成できることが判明した。
【0060】
理論に拘束されることを望むわけではないが、上記層の組み合わせは、透明又は半透明な第2のコーティング層を通過した光が、第1のコーティング層によって反射され、及び/又は別様に散乱されるため、最も外側にある第2のコーティング層の光触媒活性を増大させるように思われる。光の散乱は、NOxの低減が、光を反射する下塗り層と光触媒作用のある透明又は半透明な外側コーティング層を組み合わせたこの多層構造体を有さない光触媒材料との比較で改善されるように、TiOゾル(又は同様の光触媒材料)の活性を増大させると考えられている。
【実施例
【0061】
実験
下記の実施例によって本発明をより完全に説明するが、これらの例は、本発明を説明するために記載されたものであり、本発明を限定するものとして解釈すべきではない。そうではないとの記載がない限り、すべての部及び百分率は、重量によるものであり、すべての重量百分率は、無水ベースで表されているが、これは、そうではないと指摘されていない限り、含水量を排除していることを意味する。
【0062】
実施例1
様々な組み合わせの様々なコーティング材料が、NOx濃度を低減できる度合いを評価した。評価において使用されたコーティング材料は、表1に示されている。
【0063】
【表1】
【0064】
コーティング材料1及びコーティング材料2中に使用された塗料は、Maltbyら米国特許出願公開第2014/0322116号に記載の配合物であったが、この開示は、全体を参照により本明細書に組み込む。コーティング材料3中に使用された塗料は、SIGMACARE(R)Cleanair Matte(PPG Coatingsから入手可能)として市販されている。
【0065】
試験1及び8は、コンクリート上のコーティング材料1の層であった。
【0066】
試験2及び9は、コンクリート上のコーティング材料2の層であった。
【0067】
試験3及び10は、コンクリート上のコーティング材料3の層であった。
【0068】
試験4及び11は、コンクリート上のコーティング材料4の層であった。
【0069】
試験5及び12は、コーティング材料4の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料1の層であった。
【0070】
試験6及び13は、コーティング材料4の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料2の層であった。
【0071】
試験7及び14は、コーティング材料4の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料3の層であった。
【0072】
各試験試料は、約18cmの表面積を有しており、試験法は、Suntestチャンバ(Atlas Material Testing Solutionsから入手可能)を使用して実施された。最初の読取りを実施し、後続の読取りは、Suntestチャンバ内でエージングしてから200時間経った後、500時間経った後、800時間経った後、1100時間経った後、1400時間経った後、1700時間経った後ですすぎ前の時点及び1700時間経った後ですすぎ後の時点において、実施された。Suntestチャンバ内でのエージング中、550w/mにおいて、250nm~765nmのスペクトルの光に試料を晒した。評価のために、約0.7L/minでNOが流れているNOx分析装置に試料を入れた。読取りは、7.24W/mにおいて蛍光(400nm~750nmのスペクトル)を加えながら、6.63W/mにおいて紫外光(290nm~400nmのスペクトル)の影響下で実施された。EnviroTech NOx AnalyzerモデルT200を使用した。さらなるNOx分析装置が、Teledyne Technologies Incorporated、Altech Environment USA及びEmerson Process Management等から市販されている。NOx分析装置は、密封された試験チャンバ(例えば、石英管)、試験チャンバを照明するために構成された光源、NOガス供給源、NOガスを試験チャンバに送達するための管、NOxの存在を検出するために構成された分析装置、試験チャンバから分析装置に気体を送達するための管、浄化された空気(NOxを不含)の供給源、浄化された空気を試験チャンバに送達するための管、水蒸気を試験チャンバに送達するための場合による加湿機、バルブ及びポンプからなる。少なくとも、試験チャンバは、「暗所」における読取りを可能にするために、遮光性容器に入っている。各試験においては、NOx濃度の読取りが、光を加えることなく実施された後、やはり、光を加えて、光触媒条件下におけるNOxの低減を評価した。
【0073】
試験結果のデータは、下記の表2及び表3に提供されている。試験結果は、図2及び図3にグラフにより示されている。さらに、様々な試験試料のL値、a値及びb値が、表4~表6に提供されている。NOx低減率%は、式1
[(D-L)/D]×100 式1
に従って計算されており、式中、Dは、暗所条件下で測定されたNO値とNO値との合計であり、Lは、光条件に晒されている間に測定されたNO値とNO値との合計である。
【0074】
試験法により、白色コーティング層を覆う透明なTiOゾルの組み合わせは、平均して、改善されたNOxの低減をもたらすことが示された。このような改善は一般に、白色層のみからできたコーティング又は透明なTiOゾルのみからできたコーティングとの比較で確認された。
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
【表4】
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
実施例2
様々な組み合わせの様々なコーティング材料が、NOx濃度を低減できる度合いを評価した。評価において使用されたコーティング材料は、表7に示されている。
【0081】
【表7】
【0082】
コーティング材料5、コーティング材料6及びコーティング材料7中に使用された塗料は、Maltbyらの米国特許出願公開第2014/0322116号に記載の配合物であった。コーティング材料5~7中に使用されたTIONA(商標)595は、Millennium Inorganic Chemicals Ltd.から入手可能である。コーティング材料8~11は、ナノTiOが添加された又は添加されていない、一般のスチレンアクリル酸塗料を使用した。
【0083】
試験15及び29は、コンクリート上のコーティング材料5の層であった。
【0084】
試験16及び30は、コンクリート上のコーティング材料6の層であった。
【0085】
試験17及び31は、コンクリート上のコーティング材料7の層であった。
【0086】
試験18及び32は、コンクリート上のコーティング材料8の層であった。
【0087】
試験19及び33は、コンクリート上のコーティング材料9の層であった。
【0088】
試験20及び34は、コンクリート上のコーティング材料10の層であった。
【0089】
試験21及び35は、コンクリート上のコーティング材料11の層であった。
【0090】
試験22及び36は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料5の層であった。
【0091】
試験23及び37は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料6の層であった。
【0092】
試験24及び38は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料7の層であった。
【0093】
試験25及び39は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料8の層であった。
【0094】
試験26及び40は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料9の層であった。
【0095】
試験27及び41は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料10の層であった。
【0096】
試験28及び42は、コーティング材料12の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料11の層であった。
【0097】
各試験試料は、約18cmの表面積を有しており、試験法は、実施例1の場合と同様のSuntest Chamber内で実施された。最初の読取りを実施し、後続の読取りは、Suntestチャンバ内でエージングしてから100時間経った後、400時間経った後、900時間経った後ですすぎ前の時点、900時間経った後ですすぎ後の時点及び1200時間経った後において、実施された。Suntestチャンバ内でのエージング中、550w/mにおいて、250nm~765nmのスペクトルの光に試料を晒した。評価のために、約0.6L/minでNOが流れているNOx分析装置に試料を入れた。読取りは、7.24W/mの蛍光(400nm~750nmのスペクトル)を加えながら、7.19W/mの紫外光(290nm~400nmのスペクトル)の影響下で実施された。各試験においては、NOx濃度の読取りが、光を加えることなく実施された後、やはり、光を加えて、光触媒条件下におけるNOxの低減を評価した。
【0098】
試験結果のデータは、下記の表8及び表9に提供されている。試験結果は、図4及び図5にグラフにより示されている。さらに、様々な試験試料のL値、a値及びb値が、表10~表12に提供されている。NOx低減率%を式1に従って計算した。試験法により、白色コーティング層を覆う透明なTiOゾルの組み合わせは、平均して、改善されたNOxの低減をもたらすことが示された。このような改善は一般に、白色層のみからできたコーティングとの比較で確認された。
【0099】
【表8】
【0100】
【表9】
【0101】
【表10】
【0102】
【表11】
【0103】
【表12】
【0104】
実施例3
様々な組み合わせの様々なコーティング材料が、NOx濃度を低減できる度合いを評価した。評価において使用されたコーティング材料は、表13に示されている。
【0105】
【表13】
【0106】
コーティング材料13及び14中に使用された塗料は、一般のスチレンアクリル酸塗料であった。コーティング材料15~17中に使用された塗料は、Maltbyらの米国特許出願公開第2014/0322116号に記載の配合物であった。コーティング材料13及び15において、ナノTiOは、ナノTiO粒子に担持された状態のシリカコーティングを備えていた。コーティング材料14、16及び17において、ナノTiO粒子を、スラリー形態の塗料に添加した。
【0107】
試験43及び66は、コンクリート上のコーティング材料13の層であった。
【0108】
試験44及び67は、コーティング材料18の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料13の層であった。
【0109】
試験45及び68は、コーティング材料19の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料13の層であった。
【0110】
試験46及び69は、コーティング材料20の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料13の層であった。
【0111】
試験47及び70は、コンクリート上のコーティング材料14の層であった。
【0112】
試験48及び71は、コーティング材料18の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料14の層であった。
【0113】
試験49及び72は、コーティング材料19の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料14の層であった。
【0114】
試験50及び73は、コーティング材料20の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料14の層であった。
【0115】
試験51及び74は、コンクリート上のコーティング材料15の層であった。
【0116】
試験52及び75は、コーティング材料18の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料15の層であった。
【0117】
試験53及び76は、コーティング材料19の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料15の層であった。
【0118】
試験54及び77は、コーティング材料20の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料15の層であった。
【0119】
試験55及び78は、コンクリート上のコーティング材料16の層であった。
【0120】
試験56及び79は、コーティング材料18の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料16の層であった。
【0121】
試験57及び80は、コーティング材料19の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料16の層であった。
【0122】
試験58及び81は、コーティング材料20の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料16の層であった。
【0123】
試験59及び82は、コンクリート上のコーティング材料17の層であった。
【0124】
試験60及び83は、コーティング材料18の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料17の層であった。
【0125】
試験64及び84は、コーティング材料19の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料17の層であった。
【0126】
試験62及び85は、コーティング材料20の層によって被覆されたコンクリート上のコーティング材料17の層であった。
【0127】
試験63及び86は、コンクリート上のコーティング材料18のみからできたコーティング層であった。
【0128】
試験64及び87は、コンクリート上のコーティング材料19のみからできたコーティング層であった。
【0129】
試験65及び88は、コンクリート上のコーティング材料20のみからできたコーティング層であった。
【0130】
各試験試料は、約18cmの表面積を有しており、試験法は、実施例1の場合と同様のSuntest Chamber内で実施された。最初の読取りを実施し、後続の読取りは、Suntestチャンバ内でエージングしてから100時間経った後、250時間経った後、400時間経った後、700時間経った後、1000時間経った後及び1300時間経った後に実施された。Suntestチャンバ内でのエージング中、550w/mにおいて、250nm~765nmのスペクトルの光に試料を晒した。評価のために、約0.6L/minでNOが流れている50%の相対湿度のNOx分析装置に試料を入れた。読取りは、7.22W/mの蛍光(400nm~750nmのスペクトル)を加えながら、6.63W/mの紫外光(290nm~400nmのスペクトル)の影響下で実施された。各試験においては、NOx濃度の読取りが、光を加えることなく実施された後、やはり、光を加えて、光触媒条件下におけるNOxの低減を評価した。
【0131】
試験結果のデータは、下記の表14及び表15に提供されている。試験結果は、図6図9にグラフにより示されている。NOx低減率%を式1に従って計算した。試験試料の色の外観も、紫外光条件下の試験法の最中に評価した。試料の目視評価が、表16に提供されている。さらに、様々な試験試料のL値、a値及びb値が、表17~表19に提供されている。試験法により、白色コーティング層を覆う透明なTiOゾルの組み合わせは、平均して、改善されたNOxの低減をもたらすことが示された。このような改善は一般に、白色層のみからできたコーティング又は透明なTiOゾルのみからできたコーティングとの比較で確認された。
【0132】
【表14】
【0133】
【表15】
【0134】
【表16】
【0135】
【表17】
【0136】
【表18】
【0137】
【表19】
【0138】
本開示は以下の実施形態を含む。
[1]
基体、
入射光の少なくとも約60%を反射するようになされた前記基体上の第1のコーティング層、及び
実質的に透明又は半透明であり、光触媒作用のある二酸化チタンを含む、前記第1のコーティング層を覆った第2のコーティング層を備える、積層構造体。
[2]
基体が、セメント質、木材、金属、メーソンリー、プラスチック、紙又は石膏である、[1]に記載の積層構造体。
[3]
第1のコーティング層が、塗料である、[1]に記載の積層構造体。
[4]
第1のコーティング層が、白系の可視色を有する、[1]に記載の積層構造体。
[5]
第1のコーティングの色が、約90超のL 値、約-5~約+5のa 値及び約-2及び約+10のb 値によって規定されている、[1]に記載の積層構造体。
[6]
紫外光への100時間の曝露後、第1のコーティングの色が、95.0~97.0のL 値、-1.50~-0.50のa 値及び1.0~4.0のb 値によって規定されるという条件、及び
紫外光への1300時間の曝露後、第1のコーティングの色が、95.0~97.5のL 値、-1.00~-0.45のa 値及び1.0~2.5のb 値によって規定されるという条件
のうちの1つが、満たされている、[5]に記載の積層構造体。
[7]
第2のコーティング層が、約0.1重量%~約30重量%の二酸化チタンを含む、[1]に記載の積層構造体。
[8]
光触媒作用のある二酸化チタンが、100nm未満の平均サイズを有する粒子の形態である、[1]に記載の積層構造体。
[9]
第1のコーティング層が、白色顔料を含む、[1]に記載の積層構造体。
[10]
第2のコーティング層が、NOxの酸化を触媒するようになされている、[1]に記載の積層構造体。
[11]
第1のコーティング層を覆う第2のコーティング層の組み合わせが、第2のコーティング層それ自体に比べて増加した速度にてNOxの酸化を触媒するのに有効である、[10]に記載の積層構造体。
[12]
増加した速度が、相乗効果に起因する、[11]に記載の積層構造体。
[13]
第1のコーティング層を覆う第2のコーティング層の組み合わせによるNOxの酸化が、第2の層それ自体によるNO の酸化より少なくとも約10%大きい、[11]に記載の積層構造体。
[14]
基体構造の付近にあるNO を除去する方法であって、
前記基体構造の表面の少なくとも一部に、入射光の少なくとも約60%を反射するようになされた第1のコーティング材料の層を備え付けること及び
実質的に透明又は半透明であり、前記基体構造の付近にあるNOxの少なくとも一部の酸化を触媒するのに有効な量の光触媒作用のある二酸化チタンを含む、第2のコーティング材料の層を、前記第1のコーティング材料の前記層を覆うように設けること
を含む、方法。
[15]
基体構造が、立体駐車場又は道路構造である、[14]に記載の方法。
[16]
光触媒作用のあるTiO 材料によってNOxの低減を改善する方法であって、
前記光触媒作用のあるTiO 材料を含む透明又は半透明な層を、入射光の少なくとも約60%を反射するようなされたある材料からできたさらなる層と、前記透明又は半透明な層が前記さらなる層の上に覆うように組み合わせることを含み、
前記さらなる層を覆う前記透明又は半透明な層の組み合わせが、前記透明又は半透明な層それ自体に比べて増加した速度にてNOxの酸化を触媒するのに有効である、
方法。
[17]
増加した速度が、相乗効果に起因する、[16]に記載の方法。
[18]
前記さらなる層を覆う透明又は半透明な層の組み合わせによるNOxの酸化が、透明又は半透明な層それ自体によるNOxの酸化より少なくとも約10%大きい、[16]に記載の方法。
[19]
第1のコーティング層又はある材料からできたさらなる層が、白系の可視色を有する、[14]又は[16]に記載の方法。
[20]
第1のコーティング層又はある材料からできたさらなる層が、約90超のL 値、約-5~約+5のa 値及び約-2~約+10のb 値によって規定された色を有する、[14]又は[16]に記載の方法。
[21]
紫外光への100時間の曝露後、第1のコーティング層又はある材料からできたさらなる層の色が、95.0~97.0のL 値、-1.50~-0.50のa 値及び1.0~4.0のb 値によって規定されるという条件、及び
紫外光への1300時間の曝露後、第1のコーティング層又はある材料からできたさらなる層の色が、95.0~97.5のL 値、-1.00~-0.45のa 値及び1.0~2.5のb 値によって規定されるという条件
のうちの1つが、満たされている、[20]に記載の方法。
数多くの本発明の修正形態及び他の実施形態が、上記の記述において提供された教示の利益を受ける、本発明が属する分野の当業者によって想到される。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定すべきでなく、修正形態及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲に含まれるように意図されていることを理解すべきである。本明細書において、特定の用語が採用されているが、これらの用語は、一般的な説明用の意味においてのみ使用されており、限定を目的として使用されているわけではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9