(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】コンピュータ用ケース、コンピュータ用ラック、及びコンピュータ用ケースの使用方法
(51)【国際特許分類】
G06F 1/20 20060101AFI20230316BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20230316BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
G06F1/20 C
G06F1/20 B
G06F1/16 313
H05K7/20 B
H05K7/20 F
H05K7/20 H
(21)【出願番号】P 2021103187
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2022-09-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300084030
【氏名又は名称】システムインテリジェント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154184
【氏名又は名称】生富 成一
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 章弘
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06072697(US,A)
【文献】特開2010-079403(JP,A)
【文献】特開平07-098195(JP,A)
【文献】国際公開第2011/053313(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/088856(WO,A1)
【文献】米国特許第07212409(US,B1)
【文献】国際公開第2020/091690(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0198457(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
G06F 1/16
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ機能を有する筐体を複数収容するためのコンピュータ用ケースであって、
前記筐体を収容する本体部と、前記本体部の一側壁の外面側に配置された鉛直方向に複数のフィンが形成されたヒートシンクとを備え、
前記本体部が、
前記筐体の放熱板に接触して熱を伝導可能な熱伝導板を複数備えると共に、前記熱伝導板が前記本体部の一側壁の内面側に接触して配置され、
前記筐体において発生した熱が前記熱伝導板及び前記ヒートシンクを介して放熱される
ことを特徴とするコンピュータ用ケース。
【請求項2】
前記本体部の他の一側壁が、当該コンピュータ用ケースをコンピュータ用ラックに固定するためのラック取り付け用壁部からなることを特徴とする請求項1記載のコンピュータ用ケース。
【請求項3】
前記筐体が前記本体部に収容して備えられ、
前記筐体の放熱板が前記熱伝導板に接触するように
前記筐体が前記熱伝導板に固定されたことを特徴とする請求項1又は2記載のコンピュータ用ケース。
【請求項4】
前記筐体がNUC(Next Unit of Computing)であり、前記熱伝導板が前記本体部に2~8個備えられたことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のコンピュータ用ケース。
【請求項5】
電動冷却装置を備えていないことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のコンピュータ用ケース。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のコンピュータ用ケースが収容されたコンピュータ用ラックであって、
複数の前記コンピュータ用ケースが、前記ヒートシンクにおける複数のフィンの凸部と凹部がそれぞれ上下方向に整列するように取り付けられたことを特徴とするコンピュータ用ラック。
【請求項7】
複数の前記コンピュータ用ケースが、前記ヒートシンクが互いに向かい合うように上下方向にさらに取り付けられたことを特徴とする請求項6記載のコンピュータ用ラック。
【請求項8】
前記コンピュータ用ラックが19インチラックであり、
複数の前記コンピュータ用ケースが、前記コンピュータ用ラックの一側面に上下方向に2~14個取り付けられ、かつ、前記ヒートシンクが向かい合うように、さらに複数の前記コンピュータ用ケースが、前記コンピュータ用ラックの前記一側面の反対側面に上下方向に2~14個取り付けられたことを特徴とする請求項6又は7記載のコンピュータ用ラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ用ケースに関し、特に複数のコンピュータを収容するためのコンピュータ用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンターを利用することによって、IT機器の運用が行われるケースが増えている。データセンターの利用は、クラウドサービスを利用する場合に比較して、使用するハードウェア機器やネットワークの選択の自由度が高いという利点がある。
データセンターには、一般的に多くの19インチラックが備えられおり、利用者はこのラックに多数のサーバを設置することによって、データセンター内に高機能なクラウドサーバを構築し、安定的に機能させることが可能になっている。
【0003】
しかし、19インチラックにサーバを設置する場合、一つのラックに通常は数十台程度のサーバしか配置させることができず、スペース効率が良くないという問題があった。
また、高性能なサーバは高額であるため、高機能なクラウドサーバの構築には多額の費用がかかるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明者は、高性能なサーバに代えて、NUC(Next Unit of Computing)などの小型コンピュータを数多く使用することによって、このような問題を解消することを試みた。
具体的には、このような小型コンピュータを使用すれば、19インチラックに200台以上を配置させることが可能になり、これらによって高機能なクラウドサーバを構築することが可能となる。また、NUCは比較的低額であるため、高性能なサーバを使用する場合に比較して、全体としてより高機能なクラウドサーバをより低価格で構築することが可能となる。
【0006】
しかしながら、このように小型コンピュータを19インチラックに多数配置させた場合、コンピュータから発生する熱を逃し難いため、コンピュータの温度が上昇する結果、処理速度が低下するという問題があった。
このような問題を解消するために、本発明者は、複数の小型コンピュータを収容でき、かつ、コンピュータから発生する熱を逃し易い構造を有するコンピュータ用ケースを開発した。
また、このコンピュータ用ケースを19インチラックに複数配置した場合において、これらのコンピュータから発生した熱がさらに放熱され易くなるようにすることも可能とした。
【0007】
具体的には、コンピュータ用ケースに複数のフィンが形成されたヒートシンクを備えると共に、小型コンピュータごとに熱伝導板を備え、小型コンピュータの放熱板から熱伝導板及びヒートシンクを介して熱を逃すことを可能とした。
また、このような複数のコンピュータ用ケースをヒートシンクにおける複数のフィンの凸部と凹部がそれぞれ上下方向に整列するようにコンピュータ用ラックに取り付けることで、データセンター内の送風を利用してコンピュータからの放熱をさらに効率的に行うことを可能とした。
【0008】
ところで、コンピュータから放熱をさせる場合は、一般的にケースに電動ファンなどの電動冷却装置を設置して、ケース内の熱を逃がすことが行われる。しかし、電動ファンは寿命が短く、また壊れた場合には、小型コンピュータからの放熱ができなくなり、トラブルの原因となっていた。
【0009】
そこで、本発明では、上記のとおり、コンピュータ用ケースに電動ファンなどの電動冷却装置を備えることなく、小型コンピュータからの熱を熱伝導板とヒートシンクを介して放熱することを可能とした。また、このようなコンピュータ用ケースを上記のようにラックに取り付けることによって、より効率的に放熱することを可能とした。
さらに、本発明をこのような構成にすれば、電動冷却装置による電力の消費をなくすことも可能となる。
【0010】
ここで、特許文献1には、天面パネルや底面パネルに放熱部を備えたパソコンケースが開示されている。
しかしながら、このパソコンケースは、その内部に複数の小型コンピュータを収容できるものではなく、また複数のコンピュータから放熱される熱を逃し易い構造を有するものでもなかった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の小型コンピュータから発生する熱を逃し易いコンピュータ用ケース、コンピュータ用ラック、及びコンピュータ用ケースの使用方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明のコンピュータ用ケースは、複数の小型コンピュータを収容するためのコンピュータ用ケースであって、前記小型コンピュータを収容する本体部と、前記本体部の一側壁の外面側に配置された鉛直方向に複数のフィンが形成されたヒートシンクとを備え、前記本体部が、前記小型コンピュータの放熱板に接触して熱を伝導可能な熱伝導板を複数備えると共に、前記熱伝導板が前記本体部の一側壁の内面側に接触して配置され、前記小型コンピュータにおいて発生した熱が前記熱伝導板及び前記ヒートシンクを介して放熱される構成としてある。
【0013】
また、本発明のコンピュータ用ケースは、前記本体部の他の一側壁が、当該コンピュータ用ケースをコンピュータ用ラックに固定するためのラック取り付け用壁部からなる構成とすることが好ましい。
また、本発明のコンピュータ用ケースは、前記小型コンピュータが前記本体部に収容して備えられ、前記小型コンピュータの放熱板が前記熱伝導板に接触するように前記小型コンピュータが前記熱伝導板に固定された構成とすることが好ましい。
【0014】
また、本発明のコンピュータ用ケースは、前記小型コンピュータがNUC(Next Unit of Computing)であり、前記熱伝導板が前記本体部に2~8個備えられた構成とすることが好ましい。
また、本発明のコンピュータ用ケースは、電動冷却装置を備えていない構成とすることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明のコンピュータ用ラックは、上記のコンピュータ用ケースを収容するコンピュータ用ラックであって、複数の前記コンピュータ用ケースが、前記ヒートシンクにおける複数のフィンの凸部と凹部がそれぞれ上下方向に整列するように取り付けられた構成としてある。
また、本発明のコンピュータ用ラックは、複数の前記コンピュータ用ケースが、前記ヒートシンクが互いに向かい合うように上下方向にさらに取り付けられた構成とすることが好ましい。
【0016】
また、本発明のコンピュータ用ラックは、前記コンピュータ用ラックが19インチラックであり、複数の前記コンピュータ用ケースが、前記コンピュータ用ラックの一側面に上下方向に2~14個取り付けられ、かつ、前記ヒートシンクが向かい合うように、さらに複数の前記コンピュータ用ケースが、前記コンピュータ用ラックの前記一側面の反対側面に上下方向に2~14個取り付けられた構成とすることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明のコンピュータ用ケースの使用方法は、上記のコンピュータ用ケースの使用方法であって、複数の前記コンピュータ用ケースを、前記ヒートシンクにおける複数のフィンの凸部と凹部がそれぞれ上下方向に整列するようにコンピュータ用ラックに取り付けると共に、前記ヒートシンクが互いに向かい合うように上下方向にコンピュータ用ラックにさらに取り付け、向かい合う前記ヒートシンクの間に対して、上下方向に送風を行う方法としてある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の小型コンピュータから発生する熱を逃し易いコンピュータ用ケース、コンピュータ用ラック、及びコンピュータ用ケースの使用方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを示す正面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを示す右側面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを示す背面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを示す底面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースに収容する小型コンピュータを示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースにおける熱伝導板への小型コンピュータの取り付けを示す説明図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースに小型コンピュータを収容した状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースに小型コンピュータを収容した状態を示す平面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースに小型コンピュータを収容した状態を示す右側面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを収容したコンピュータ用ラックを示す正面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを収容したコンピュータ用ラックを示す背面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースを収容したコンピュータ用ラックを示す側面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースの効果を確認するために行った実施例1の実験結果のグラフを示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースの効果を確認するために行った実施例2の実験結果のデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のコンピュータ用ケース、コンピュータ用ラック、及びコンピュータ用ケースの使用方法の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態及び実施例の具体的な内容に限定されるものではない。
【0021】
[コンピュータ用ケース]
まず、本実施形態のコンピュータ用ケースについて、
図1~
図6を参照して説明する。
図1~
図6は、それぞれ本実施形態のコンピュータ用ケースの斜視図、正面図、平面図、右側面図、背面図、及び底面図である。なお、左側面図は右側面図と対称であるため省略している。
【0022】
図1~
図6に示すように、本実施形態のコンピュータ用ケースは、NUC(Next Unit of Computing)などの複数の小型コンピュータを収容するためのコンピュータ用ケース1であって、小型コンピュータを収容する本体部2と、本体部2に収容された小型コンピュータを冷却するためのヒートシンク3とを備えている。
コンピュータ用ケース1は、19インチラックなどのラックに取り付けて使用できるものとすることが好ましく、そのサイズとしては、例えばおよそ48cm×25cm×13cmとすることができる。
【0023】
本体部2は、ヒートシンク3をその外面側に取り付けて固定する正面壁部21と、19インチラックなどのラックにコンピュータ用ケース1を取り付けて固定するラック取り付け壁部22と、これらの壁部を繋ぐ左右の側壁部23と、底面部24とを備えている。また、図示しないが、本体部2の上面側を覆う取り外し可能な上面部を備えていてもよい。
なお、これらの図において、正面壁部21と側壁部23はコの字形状に形成されており、それぞれ側壁部23、ラック取り付け壁部22に固定されているが、壁部、底面部、及び上面部の具体的な形状や固定方法はこれらに限定されず、底面部をコの字形状に形成して固定したり、全部又は一部を一体に形成してもよい。
【0024】
本体部2は、アルミニウムや銅、カーボンファイバー(炭素繊維)などのカーボン素材等の熱伝導性の高い材料からなることが好ましく、特にヒートシンク3が固定される正面壁部21は、熱伝導性に優れた材料で構成することが好ましい。
本体部2の正面壁部21は、その外面側にヒートシンク3が固定されている。なお、ヒートシンク3は、正面壁部21に一体に形成されていてもよい。
【0025】
ヒートシンク3は、放熱器であり、鉛直方向に多数のフィン31が形成されており、本体部2に蓄積された熱をヒートシンク3を介して効率的に放熱できるようになっている。
ヒートシンク3は、アルミニウムや銅、カーボン素材等の熱伝導性の高い材料からなることが好ましい。
【0026】
本体部2の正面壁部21には、その内面側に複数の熱伝導板4が接触して配置され、固定されている。
熱伝導板4は、アルミニウムや銅、カーボン素材等の熱伝導性の高い材料からなることが好ましい。
本実施形態の例では、正面壁部21に8個の熱伝導板4が固定されており、8個の小型コンピュータが、これらの熱伝導板4に固定できるようになっている。
なお、本実施形態において、熱伝導板4の個数は複数であればよく、特に限定されない。
【0027】
また、本体部2の正面壁部21への熱伝導板4の固定方法は特に限定されず、熱伝導板4を正面壁部21に熱伝導性を有する接着剤やねじ止めによって固定することができる。
本体部2の正面壁部21への熱伝導板4の固定方法は、コンピュータ用ケース1の加工の容易性の観点から、ねじ止めよりも熱伝導性の接着剤を用いて行うことが好ましい。さらに、図示しないが、熱伝導板4が支持部材によって支持されて固定されていてもよい。
【0028】
小型コンピュータにおいて発生した熱は、熱伝導板4及びヒートシンク3を介して放熱される。
すなわち、小型コンピュータにおいて発生した熱は、小型コンピュータから熱伝導板4へ伝達され、さらに熱伝導板4からヒートシンク3に伝達されて、コンピュータ用ケース1の外部に放熱されるようになっている。
【0029】
本実施形態のコンピュータ用ケース1は、このように小型コンピュータにおいて発生した熱が熱伝導板4及びヒートシンク3を介して放熱される構成となっているため、ケースに電動ファンなどの電動冷却装置を設置してケース内の熱を逃がす構成に比較して、電動冷却装置の故障などにより生じるトラブルを防止することが可能となっている。また、電動冷却装置を備えていないため、電動冷却装置による電力の消費をなくすことも可能となる。
【0030】
なお、本実施形態ではコンピュータ用ケース1として19インチラックに取り付け可能なものを想定し、かつ小型コンピュータとしてNUCを用いることを想定している。
しかしながら、小型コンピュータとしてさらに厚みの薄いものを使用できる場合には、コンピュータ用ケース1内により多くの熱伝導板4を設けて、それぞれに小型コンピュータを固定することができる。
【0031】
また、本体部2の側壁部23には、
図1及び
図4に示すように、側壁開口部231が設けられており、小型コンピュータに接続された電源ケーブルやLANケーブルなどの配線は、この側壁開口部231を通じてコンピュータ用ケース1から外部に出せるようになっている。
【0032】
コンピュータ用ケース1は、このように側壁部23に側壁開口部231が設けられ、これを介して配線を可能にすることにより、本体部2の正面壁部21側にケーブルが存在することがないようになっている。また、このような構成にすることによって、本体部2の正面壁部21に複数の熱伝導板4を接触して配置できるようになっている。
【0033】
また、本体部2のラック取り付け壁部22には、
図5に示すように、コンピュータ用ケース1をラックに取り付けるための取り付け孔221と、コンピュータ用ケース1に収容された小型コンピュータをリセットする場合など必要に応じて直接操作できるようにするための取り付け壁開口部222が設けられている。なお、
図1において、取り付け孔221と取り付け壁開口部222は省略している。
【0034】
すなわち、コンピュータ用ケース1は、この取り付け孔221を介してビスやネジにより19インチラックなどに取り付けることができるようになっている。勿論、取り付け孔221の位置や個数は特に限定されない。
また、本体部2の底面部24は、
図6に示すように、本体部2の底面全体を覆うようにしてあるが、開口部を設けてもよい。
【0035】
本実施形態のコンピュータ用ケース1に収容する小型コンピュータとしては、
図7に示すように、NUC(Next Unit of Computing)5などを好適に用いることができる。
NUC5は、サイズがおよそ10cm×10cm×2cmの小型コンピュータであり、本実施形態のコンピュータ用ケース1が19インチラックに取り付けるできるものである場合、コンピュータ用ケース1にNUC5を8個収容することができる。
【0036】
NUC5は、筐体51と蓋52を備え、蓋52を外すと内部に放熱板53が備えられており、この放熱板53から熱を放熱できるようになっている。また、空気を吸気口54から取り入れて排気口55から排出することで、内部を冷却する構成となっている。さらに、NUC5には、電源端子56とLAN端子57が備えられている。また、NUC5において、USB端子やHDMI出力端子などさらにその他の構成が備えられていてもよいがこれらについては省略する。
【0037】
本実施形態のコンピュータ用ケース1において、NUC5は、
図8に示すように、耐熱性ゴム6を用いて、熱伝導板4に固定することが好ましい。
このとき、NUC5から蓋52を取り外して放熱板53を露出させ、この放熱板53に熱伝導性の接着剤を塗布して熱伝導板4に貼り付けて、耐熱性ゴム6を用いてNUC5を熱伝導板4に固定することが好ましい。
熱伝導板4には貫通孔41が形成されており、この貫通孔41に耐熱性ゴム6を通すことによって、耐熱性ゴム6によりNUC5を熱伝導板4に固定することができるようになっている。
【0038】
このようにNUC5を熱伝導板4に固定することによって、NUC5から発生した熱を放熱板53から熱伝導板4とヒートシンク3を介して、コンピュータ用ケース1の外部へ放熱することが可能である。
また、このようにNUC5を耐熱性ゴム6を用いて熱伝導板4に固定することによって、NUC5を熱伝導板4に容易に取り付けたり、取り外したりすることが可能となる。
【0039】
本実施形態のコンピュータ用ケース1に小型コンピュータを収容した状態を
図9~
図11に示す。
図9~
図11は、それぞれ小型コンピュータを収容したコンピュータ用ケース1の斜視図、平面図、及び右側面図である。
これらの図は、本実施形態のコンピュータ用ケース1に小型コンピュータが8個収容された状態を示しているが、コンピュータ用ケース1に収容する小型コンピュータの数はこれに限定されず、1~7個収容されていてもよい。
【0040】
また、本実施形態のコンピュータ用ケース1において、熱伝導板4を2~7個備えると共に、小型コンピュータがそれぞれの熱伝導板4に固定された構成とすることができ、また熱伝導板4を9個以上備えると共に、小型コンピュータがそれぞれの熱伝導板4に固定された構成とすることもできる。
【0041】
このような本実施形態のコンピュータ用ケース1によれば、複数の小型コンピュータを収容して、小型コンピュータから発生する熱を熱伝導板4とヒートシンク3を介して効率的に放熱することが可能となっている。
また、放熱するために電動冷却装置を使用しないため、電動冷却装置の故障にもとづくトラブルの発生を防止でき、電動冷却装置による電力の消費をなくすことも可能になっている。
【0042】
[コンピュータ用ラック]
次に、本実施形態のコンピュータ用ラックについて、
図12~
図14を参照して説明する。
図12~
図14は、それぞれ本実施形態に係るコンピュータ用ケースが収容されたコンピュータ用ラックの正面図、背面図、及び側面図である。
本実施形態のコンピュータ用ラック7は、
図12及び
図13に示すように、複数のコンピュータ用ケース1が、ヒートシンク3における複数のフィン31の凸部と凹部がそれぞれ上下方向に整列するように、ラック取り付け用壁部22を介して上下方向に取り付けられた構成となっている。
【0043】
また、本実施形態のコンピュータ用ラック7は、
図14に示すように、複数のコンピュータ用ケース1が、ヒートシンク3が互いに向かい合うようにラック取り付け用壁部22を介して上下方向にさらに取り付けられた構成となっている。
図12~
図14の例では、本実施形態のコンピュータ用ラック7は、19インチラックを用いて構成され、14個のコンピュータ用ケース1がコンピュータ用ラック7の一側面に上下方向に取り付けられており、かつ、ヒートシンク3が互いに向かい合うように、さらに14個のコンピュータ用ケース1がコンピュータ用ラック7の上記一側面の反対側面に上下方向に取り付けられている。
【0044】
したがって、本実施形態のコンピュータ用ラック7において、小型コンピュータは、合計224台(=8×14×2)収容されている。
なお、本実施形態のコンピュータ用ラック7において、2~13個のコンピュータ用ケース1がコンピュータ用ラック7の一側面に上下方向に取り付けられ、かつ、ヒートシンク3が互いに向かい合うように、さらに2~13個のコンピュータ用ケース1がコンピュータ用ラック7の上記一側面の反対側面に上下方向に取り付けられていてもよい。
【0045】
ここで、データセンターには、一般的に多くの19インチラックが備えられおり、利用者はこのラックにコンピュータを設置することによって、データセンター内に高機能なクラウドサーバを構築して安定的に機能させることが可能になっている。
また、データセンターでは、19インチラックに対して上下方向に送風を行うことによって、コンピュータの冷却が行われている。
【0046】
したがって、このようなデータセンターにおいて本実施形態のコンピュータ用ラック7を適用すれば、19インチラックの中央付近に上下方向に送風を行うことによって、コンピュータ用ラック7内の両側面に配置されたコンピュータ用ケース1におけるヒートシンク3に対して、上下方向に一度に送風することが可能となる。
このため、コンピュータ用ケース1内に電動ファンなどの電動冷却装置を備えなくても、コンピュータ用ケース1内に収容された小型コンピュータから発生した熱を、熱伝導板4とヒートシンク3を介して効率的に放熱させることが可能になっている。
【0047】
ところで、コンピュータ用ケースの上面及び底面に開口部を設けることにより、データセンターにおける送風を利用してケース内の小型コンピュータを冷却するという考え方もある。
しかしながら、複数のコンピュータ用ケースを上下方向に取り付けた場合、風の流れが滞るため、小型コンピュータを適切に冷却することができない。
【0048】
これに対して、本実施形態のコンピュータ用ケース1が収容されたコンピュータ用ラック7によれば、コンピュータ用ケース1内に収容された小型コンピュータから発生した熱を、熱伝導板4とヒートシンク3を介して効率的に放熱させることができることに加えて、ヒートシンク3における複数のフィン31の凸部と凹部が上下方向に整列し、かつ、これらのヒートシンク3に対して、上下方向に一度に送風することが可能である。
このため、本実施形態のコンピュータ用ラック7によれば、小型コンピュータから発生した熱を、極めて効率的に放熱させることが可能になっている。
【0049】
[コンピュータ用ケースの使用方法]
本実施形態のコンピュータ用ケースの使用方法は、
図14に示すように、複数のコンピュータ用ケース1を、ヒートシンク3における複数のフィン31の凸部と凹部が上下方向に整列するように、ラック取り付け用壁部22を介してコンピュータ用ラック7に取り付けると共に、ヒートシンク3が互いに向かい合うようにラック取り付け用壁部22を介して上下方向にコンピュータ用ラック7にさらに取り付け、向かい合うヒートシンク3間の空間に対して、上下方向に送風を行うことを特徴とする。
【0050】
すなわち、同図に示すように、コンピュータ用ラック7の中央上方の天井などに送風装置8が備えられており、またコンピュータ用ラック7の中央下側の床などに排気装置9が備えられている。
そして、送風装置8から排気装置9へ向けて送風を行うことによって、コンピュータ用ラック7に取り付けられた全てのコンピュータ用ケース1のヒートシンク3に対して送風を行うことができ、コンピュータ用ケース1に収容された小型コンピュータから発生した熱を、熱伝導板4及びヒートシンク3を介して放熱することが可能になっている。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のコンピュータ用ケース、コンピュータ用ラック、及びコンピュータ用ケースの使用方法によれば、複数の小型コンピュータから発生する熱を効率的に放熱することが可能となっている。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の実施形態に係るコンピュータ用ケースの効果を確認するために行った実験について説明する。
[実施例1]
まず、本実施形態のコンピュータ用ケースにおける熱伝導板とヒートシンクの温度変化を確認するための実験を行った。
【0053】
まず、
図1~6に示すコンピュータ用ケース1を作製した。コンピュータ用ケース1の本体部2、ヒートシンク3、及び熱伝導板4にはアルミニウム部材を使用した。
そして、このコンピュータ用ケースに8台のNUC(Intel社製、型番BLKNUC7I7DNKE)を
図10に示すように収容し、正面から見て左側からそれぞれNUC(1)~NUC(8)とした。
このとき、NUCの放熱板53に熱伝導性の接着剤を塗布して熱伝導板4に貼り付けた。また、各NUCを耐熱性ゴム6を用いて熱伝導板4に固定した。
【0054】
次に、NUC(5)を取り付けた熱伝導板4の右側面に温度計1を固定すると共に、ヒートシンク2におけるNUC(5)を取り付けた熱伝導板4に対応する位置の縦方向中央に温度計2を固定した。
そして、8台のNUCにおける全てのCPUコアの処理を100%とし、午後9:30から翌日の午前7:30までの10時間に亘って、熱伝導板4とヒートシンク2の温度を3分おきに測定した。その結果を
図15のグラフに示す。
同図に示されるように、コンピュータ用ケースの熱伝導板4及びヒートシンク2の温度は、概ね一定に保たれていた。
【0055】
[実施例2]
また、実施例1の実施に併せて、本実施形態のコンピュータ用ケースに収容したNUCのCPUの温度とクロック周波数を測定して、NUCが温度上昇により性能が低下しないかを確認するための実験を行った。
【0056】
具体的には、8台のNUCにおける全てのCPUコアの処理を100%とし、午後9:30から翌日の午前7:30までの10時間に亘って、CPUに備わっている温度測定とCPUクロック測定を使用して、CPUのコアごとに温度を測定すると共に、CPUのクロック周波数を測定し、これらのデータをドライバーを介してプログラムで1分おきに記録した。この記録を集計した30分ごとの各NUCのCPU温度及びクロック周波数の平均値を
図16に示す。
【0057】
同図に示されるように、全てのNUCの温度は、10時間に亘ってほぼ一定に保たれており、かつ、CPUクロックは、定常時の3GHz程度で動作していることが分かった。このように、本実施形態のコンピュータ用ケースを使用して、8台のNUCにおける全てのCPUコアの処理を100%として実験したところ、温度上昇による処理速度の低下は、見られなかった。
【0058】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、コンピュータ用ケースにおける熱伝導板の形状や配置を変えるなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、データセンターにおいて多数の小型コンピュータを設置する場合などに好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 コンピュータ用ケース
2 本体部
21 正面壁部
22 ラック取り付け壁部
221 取り付け孔
222 取り付け壁開口部
23 側壁部
231 側壁開口部
24 底面部
3 ヒートシンク
31 フィン
4 熱伝導板
41 貫通孔
5 NUC(小型コンピュータ)
51 筐体
52 蓋
53 放熱板
54 吸気口
55 排気口
56 電源端子
57 LAN端子
6 耐熱性ゴム
7 コンピュータ用ラック
71 天板部
72 底板部
73 マウント支柱
8 送風装置
9 排気装置