IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イーライ リリー アンド カンパニーの特許一覧

特許7245926安定なペプチド製剤を調製するための方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】安定なペプチド製剤を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20230316BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20230316BHJP
   A61K 38/26 20060101ALI20230316BHJP
   C07K 1/34 20060101ALN20230316BHJP
   C07K 14/605 20060101ALN20230316BHJP
【FI】
A61K38/00
A61K9/14
A61K47/12
A61K47/24
A61K47/40
A61K38/26
C07K1/34
C07K14/605 ZNA
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021560275
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-23
(86)【国際出願番号】 US2020028988
(87)【国際公開番号】W WO2020219391
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】62/839,246
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【弁理士】
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,グレゴリー ネルソン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スコーク,クルト ガルト
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507852(JP,A)
【文献】特表2014-524908(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0146156(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 47/00
A61K 9/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチド粉末製剤を調製するための方法であって、
a.水性担体中で、酸、リン脂質界面活性剤、およびシクロデキストリンの第1の混合物を形成するステップと、
b.前記第1の混合物を第1の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
c.前記第1の濾過生成物にペプチドを添加して第2の混合物を形成し、前記第2の混合物を第2の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
d.前記第2の濾過生成物を乾燥させて固体製剤を形成し、前記固体製剤を処理して最終粉末製剤を製造するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記ペプチドが、グルカゴンまたはグルカゴン類似体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドが、グルカゴンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記界面活性剤、前記シクロデキストリンおよび前記ペプチドが一緒になって、前記第2の混合物の約1.5重量%~約3重量%を構成する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
界面活性剤、前記シクロデキストリンおよび前記ペプチドが一緒になって、前記第2の混合物の約2.5重量%を構成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および前記第2の濾過ステップの両方における前記膜が、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および前記第2の濾過ステップの両方における前記膜が、約0.45μmの孔径を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記酸が、クエン酸または酢酸である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ドデシルホスホコリン、ジデシルホスファチジルコリン、リゾラウロイルホスファチジルコリン、ジオクタノイルホスファチジルコリン、またはジラウロイルホスファチジルグリセロールである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記シクロデキストリンが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ペプチドがグルカゴンであり、前記方法が、
a.水性担体中で、酢酸、ドデシルホスホコリン、およびβ-シクロデキストリンの第1の混合物を形成するステップと、
b.前記第1の混合物を第1の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
c.前記第1の濾過生成物にグルカゴンを添加して第2の混合物を形成し、前記第2の混合物を第2の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
d.前記第2の濾過生成物を乾燥させて固体製剤を形成し、前記固体製剤を処理して最終粉末製剤を製造するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ドデシルホスホコリン、前記β-シクロデキストリンおよび前記グルカゴンが一緒になって、前記第2の混合物の約2.5重量%を構成する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および前記第2の濾過ステップの両方における前記膜が、PVDF膜を含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および前記第2の濾過ステップの両方における前記膜が、約0.45μmの孔径を含む、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記酢酸が、1Mの濃度である、請求項11~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関する。より具体的には、本発明は、ペプチドを含む粉末製剤を調製するための改善された方法を提供する。本発明はさらに、グルカゴンまたはグルカゴン類似体を含む粉末製剤を調製するための改善された方法を提供し、当該粉末製剤は経鼻投与に適している。
【背景技術】
【0002】
ペプチドは、製造プロセスの間および後に凝集等の物理的不安定性を有する傾向がある。凝集は、いくつかの異なる機構によって生じる複雑なプロセスである。凝集は、小さな可溶性の凝集体を形成する、いくつかのペプチドまたはタンパク質の核形成によって誘発され、次いでそれらは、その後により大きな不溶性凝集体が成長するための核形成中心として機能する。核形成-成長プロセスは、時間、温度、タンパク質濃度、およびその他のパラメータによって増加し得る。製造中、タンパク質は、限外濾過、アフィニティークロマトグラフィー、選択的吸収クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、凍結乾燥、透析、および沈殿または「塩析」等の様々な手段を用いて精製および濃縮される。そのような濃縮プロセスは、凝集を引き起こし得る(Maggio、BioProcess International 2008;6(10):58-65)。これらの凝集体を除去または可溶化するには追加の処理ステップが必要であるが、それは高価であり得、また製品全体の収率を低下させる可能性がある。凝集の影響には、材料の損失、有効性の低下、薬物動態の変化、安定性および製品の貯蔵寿命の低下、ならびに望ましくない免疫原性の誘導が含まれる。
【0003】
特に、現在の高濃度溶液への傾向によってタンパク質間相互作用の可能性が高くなり、それによって凝集が促進されるため、凝集はバイオ医薬品メーカーにとって大きな問題となっている。(Maggio,BioProcess International 2008;6(10):58-65)。限定されないが、pH、緩衝液条件、イオン強度の調整、および/またはシクロデキストリン等の他の賦形剤の添加を含む、ペプチドの凝集を制限するための様々な手法が研究されてきた。
【0004】
グルカゴンは、水溶液中で凝集する傾向があることで知られており(Pedersen JS.,J Diabetes Sci Technol.2010;4(6):1357-1367;Beaven et al.,The European J.Biochem.1969;11(1):37-42;Matilainen et al.,European J.of Pharmaceutical Sciences 2009;(36):412-420)、グルカゴン粉末製剤の製造中に問題を引き起こし得る。経鼻投与に適したグルカゴン粉末製剤を調製する以前の方法は、WO2016/133863に開示されている。
【0005】
ペプチド粉末製剤、特にグルカゴンまたはグルカゴン類似体粉末製剤を調製するための代替方法の必要性が存在する。特に、水溶液中のペプチドの凝集を低減または排除する方法が必要である。凝集を低減するか、または好ましくは排除することにより、最終粉末製剤は、非常に高いパーセンテージの活性ペプチドを保持することとなり、非常に有利である。好ましくは、方法は、乾燥前に、長期間、例えば最大24時間、物理的および化学的に安定な水溶液をもたらす。この拡張された安定性により、プロセスが大規模製造にはるかに適したものとなる。さらに、長い貯蔵寿命、好ましくは最大約24ヶ月を有する最終粉末製剤をもたらす方法が必要である。
【0006】
したがって、本発明は、粉末製剤の製造中にペプチドの凝集を低減する、改善された費用効果の高い方法を提供する。この方法には、二重濾過ステップが組み込まれている。本発明で使用されるそのようなペプチドの1つは、グルカゴンまたはグルカゴン類似体である。本発明の方法に従って調製される粉末製剤は、経鼻投与に特に適している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一態様によれば、ペプチド粉末製剤を調製するための方法が提供される。この方法は、以下のステップを含む:
a.水性担体中で、酸、リン脂質界面活性剤、およびシクロデキストリンの第1の混合物を形成するステップと、
b.第1の混合物を第1の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
c.第1の濾過生成物にペプチドを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を第2の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
d.第2の濾過生成物を乾燥させて固体製剤を形成し、固体製剤を処理して最終粉末製剤を製造するステップ。
【0008】
一実施形態において、ペプチドは、グルカゴンまたはグルカゴン類似体である。特に、それはグルカゴンである。
【0009】
一実施形態において、酸は、クエン酸または酢酸である。特に、それは酢酸である。より具体的には、酢酸は、1Mの濃度である。
【0010】
一実施形態において、界面活性剤、シクロデキストリンおよびペプチドが一緒になって、第2の混合物の約1.5重量%~約3重量%を構成する。特定の実施形態において、それらは、第2の混合物の約2重量%を構成する。さらなる実施形態において、それらは、第2の混合物の約2.5重量%を構成する。
【0011】
一実施形態において、界面活性剤は、ドデシルホスホコリン(DPC)、ジデシルホスファチジルコリン(DDPC)、リゾラウロイルホスファチジルコリン(LLPC)、ジオクタノイルホスファチジルコリン(D8PC)、またはジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPG)である。特に、界面活性剤はDPCである。
【0012】
一実施形態において、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンである。特に、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。
【0013】
一実施形態において、最終粉末製剤中のペプチドの98%超が、逆相HPLCによって測定される非凝集ペプチドである。好ましくは、ペプチドの99%超が非凝集ペプチドである。より好ましくは、ペプチドの100%が非凝集ペプチドである。
【0014】
本発明の別の態様によれば、以下のステップを含むペプチド粉末製剤を調製するための方法が提供される:
a.水性担体中で、リン脂質界面活性剤とシクロデキストリンの第1の混合物を形成するステップと、
b.第1の混合物を第1の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
c.第1の濾過生成物にペプチドを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を第2の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
d.第2の濾過生成物を乾燥させて固体製剤を形成し、固体製剤を処理して最終粉末製剤を製造するステップ。
【0015】
一実施形態において、界面活性剤、シクロデキストリンおよびペプチドが一緒になって、第2の混合物の約1.5重量%~約3重量%を構成する。特定の実施形態において、それらは、第2の混合物の約2重量%を構成する。さらなる実施形態において、それらは、第2の混合物の約2.5重量%を構成する。
【0016】
一実施形態において、界面活性剤は、DPC、DDPC、LLPC、D8PC、またはDLPGである。特に、界面活性剤はDPCである。
【0017】
一実施形態において、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンである。特に、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンである。
【0018】
一実施形態において、最終粉末製剤中のペプチドの98%超が、逆相HPLCによって測定される非凝集ペプチドである。好ましくは、ペプチドの99%超が非凝集ペプチドである。より好ましくは、ペプチドの100%が非凝集ペプチドである。
【0019】
本発明の別の態様によれば、以下のステップを含むグルカゴン粉末製剤を調製するための方法が提供される。
a.水性担体中で、酢酸、DPC、およびβ-シクロデキストリンの第1の混合物を形成するステップと、
b.第1の混合物を第1の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
c.第1の濾過生成物にグルカゴンを添加して第2の混合物を形成し、第2の混合物を第2の濾過ステップに供するステップであって、フィルターが、約0.4μm~約0.5μmの孔径を有する膜を含む、ステップと、
d.第2の濾過生成物を乾燥させて固体製剤を形成し、固体製剤を処理して最終粉末製剤を製造するステップ。
【0020】
一実施形態において、グルカゴン、DPCおよびβ-シクロデキストリンは一緒になって、第2の混合物の約1.5重量%~約3重量%を構成する。特定の実施形態において、それらは、第2の混合物の約2重量%を構成する。さらなる実施形態において、それらは、第2の混合物の約2.5重量%を構成する。
【0021】
一実施形態において、酢酸は、1Mの濃度である。
【0022】
一実施形態において、最終粉末製剤中のグルカゴンの98%超が、逆相HPLCによって測定される非凝集グルカゴンである。好ましくは、グルカゴンの99%超が非凝集グルカゴンである。より好ましくは、グルカゴンの100%が非凝集グルカゴンである。
【0023】
本発明はさらに、本発明の方法に従って調製される粉末製剤を提供する。
【0024】
特定の実施形態において、第2の濾過生成物の乾燥は、フリーズドライ(凍結乾燥)または噴霧乾燥によって実施することができる。
【0025】
特定の実施形態において、第1および第2の濾過ステップの両方におけるフィルター膜は、限定されないが、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルスルホン、またはcGMP製造環境での使用に適した他の濾材を含む。好ましい実施形態において、フィルター膜はPVDFを含む。
【0026】
特定の実施形態において、第1および第2の濾過ステップの両方におけるフィルター膜は、約0.45μmの孔径を有する膜である。好ましい実施形態において、フィルター膜は、0.45μmの孔径を有するPVDF膜である。
【0027】
一実施形態において、本発明の方法の間、溶液のpHは2~3に維持される。
【0028】
一実施形態において、本発明の方法の液相は、15~30℃、好ましくは18~25℃、より好ましくは約20℃付近の温度で実施される。
【0029】
本発明の方法は、粉末製剤の製造中に凝集する傾向があるペプチドに使用することができる。特に、この方法は、限定されないが、アミリン、アミリン類似体、組換えヒト第VIII因子(rfVII)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、カルシトニン、GLP-1類似体、GLP-1-GLPデュアルアゴニスト、GIPアゴニスト、組換えヒト成長ホルモン(rhGH)、オクタペプチドCCR5阻害剤D-Ala-ペプチドT-アミリン、組換えヒトインスリン、インスリン類似体、PTH 1-31環状ペプチド類似体、インターフェロン-β、インターフェロンβ-1aおよびβ-1b、インターロイキン-2(IL-2)、エリスロポエチン(EPO)、酢酸プラムリンチド、およびウロキナーゼ等の酵素を含むペプチドに使用することができる。
【0030】
特に、本発明の方法は、グルカゴン粉末製剤を調製するために用いることができる。グルカゴンは、病院内および病院外の両方で、重度の低血糖症の非常に効果的な治療である。グルカゴンは、注射による投与の直前に希釈剤と混合しなければならない粉末製剤として入手可能である。グルカゴンの液体製剤も知られている(Pontiroli et al.,Br Med J(Clin Res Ed)1983;287:462-463)。重度の低血糖症の治療のための経鼻投与用のグルカゴン粉末が開発され、WO2016/133863に記載されているが、これは最近、Baqsimi(商標)の名称で米国およびヨーロッパで承認された。
【0031】
本発明の方法に従って製造されるグルカゴンまたはグルカゴン類似体製剤は、経鼻投与に特に適している。好ましい実施形態において、本発明の方法に従って製造される製剤は、以下のうちの1つまたは複数を有する:
●肺に到達する可能性のある小さな粒子の低い割合
●一方の鼻孔への単回投与として治療効果を達成するために必要な薬物の総用量を提供するのに十分な薬物含有量
●数十ミリグラムの総用量、または送達デバイスによって可能な最大量を送達するのに十分な薬物含有量
●アレルギーまたは風邪に伴い得る鼻づまりがあるにもかかわらず効果的であるために十分な薬物含有量および吸収特性
●長期間、好ましくは少なくとも24ヶ月間の、周囲条件下での保存中の安定性
●良好な安全性および耐容性プロファイル
【0032】
本明細書で使用される場合、「凝集」という用語は、ペプチド等の小さなオリゴマー前駆体の種核、核形成中心、原繊維、またはゲルの、蓄積、凝集、集塊、二量体化、重合、または形成を指す。凝集体のサイズは、可溶性二量体および他の多量体(見かけの球径で約5~10nm)から、肉眼では見ることができない粒子および目に見える粒子として識別される、より大きな不溶性種(見かけの直径で約20~50μm)までに及ぶ。可溶性凝集体群から、高分子量種等のより大きなものは、有害な臨床転帰をもたらす可能性のある免疫原性応答を誘発することが可能であり得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、「種核」または「核形成中心」という用語は、より大きな凝集体が形成される最小の凝集体サイズを指す。
【0034】
逆相HPLCを用いて、最終粉末製剤中の非凝集ペプチドの量を決定することができる。当業者に既知の標準的な条件、例えば、以下の実施例に記載されている条件を使用することができる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「グルカゴン」は、配列
His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr(配列番号1)のポリペプチドを指す。
グルカゴンは、化学的に合成するか、組換えDNA技術によって生成するか、または天然資源から抽出することができる。「グルカゴン類似体」という用語は、インビボで血糖の増加を刺激する能力を保持するこの配列の変異体を指す。
【0036】
天然配列の1つのアミノ酸がアラニンで置換されているグルカゴン類似体、および複数の置換を有する類似体の例は、Chabenne et al.,Molecular Metabolism 2014;3:293-300に開示されている。増強された生物学的活性を有するグルカゴン類縁体を生じるように3個のアミノ酸が修飾された例示的な類似体は、[Lys17,18,G1u21]グルカゴンであるZealand Pharmaは、例えば、米国特許公開第20140080757号、2014001733号、20130316941号、20130157935号、20130157929号、20120178670号、20110293586号、20110286982号、20110286981号、および20100204105号に、多数のグルカゴン類似体を開示している。これらの類似体は、グルカゴン受容体よりもGLP受容体に対して高い結合親和性を有すると報告されているが、それでもなおグルカゴンの活性を保持している。Zealand Pharmaは、ZP4207と呼ばれる低血糖症の治療のためのグルカゴン類似体の臨床試験も開始している。米国特許公開第2013/0053310号は、低血糖症の治療に有用な他のグルカゴン類似体を開示している。
【0037】
リン脂質界面活性剤は、鼻粘膜を含む人体の細胞および組織の一部である生体膜に広範に分布する成分である。細胞内で最も一般的なリン脂質界面活性剤は、ホスファチジルコリンおよびホスホコリン(PC)であるが、ホスファチジルグリセロール(PG)は生体膜の重要な成分である。アシル基の1つを除去することによりジアシルPCまたはPGに由来するリゾホスリン脂質も使用することができる。
【0038】
本発明で使用することができる例示的なリン脂質界面活性剤は、ドデシルホスホコリン(DPC)、ジデシルホスファチジルコリン(DDPCまたは1,2-ジデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、リゾラウロイルホスファチジルコリン(LLPCまたは1-ジデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、ジオクタノイルホスファチジルコリン(D8PCまたは1,2-ジオクタノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)およびジラウロイルホスファチジルグリセロール(DLPGまたは1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホ(1’-rac-グリセロール)である。
【0039】
好ましいリン脂質界面活性剤は、粉末製剤の製造中に用いられる濃度で、二重層ではなく、ミセルを形成するものである。これには、DPC、DDPC、LLPC、およびD8PCが含まれるが、DLPGは含まれない。最も好ましいのはDPCである。
【0040】
本発明の特定の実施形態において、単一タイプのリン脂質界面活性剤が使用される。他の実施形態において、リン脂質界面活性剤成分は、例えば、上記で特定された界面活性剤の任意の2つ、3つ、または4つの組み合わせを含む、リン脂質界面活性剤の混合物から構成され得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、「シクロデキストリン」という用語は、環内に6つ、7つ、または8つのグルコース残基を含み、円錐形を形成するシクロデキストリン、すなわち、以下を指す:
●α(アルファ)-シクロデキストリン:6員糖環分子
●β(ベータ)-シクロデキストリン:7員糖環分子
●γ(ガンマ)-シクロデキストリン:8員糖環分子。
【0042】
α-CDは、臨床試験でNovo Nordiskによって粉末製剤(HypoGon(登録商標)Nasal)に使用された(Stenniger et al.,Diabetologia 1993;36:931-935;Rosenfalck AM、et al.,Diabetes Res Clin Pract 1992;17:43-50)。α-CDの水溶解度は、約5重量%であると報告されている。
【0043】
一方はα-CDよりも水溶解度が低く(β-CD、1.85重量%)、もう一方はα-CDよりも水溶解度が高い(HP-β-CD)他の2つのシクロデキストリンも、本発明における使用に適しており、水中で自由に可溶性であるγ-シクロデキストリンも同様である。
【0044】
製剤中のシクロデキストリンは充填剤として作用し、また鼻粘膜表面に付着してグルカゴンの吸収を補助する。鼻孔に送達されると、主成分(90重量%~70重量%)、すなわちシクロデキストリンは、粉末が粘膜表面に付着するのを助ける。
【0045】
シクロデキストリンは、個別に使用されてもよいか、または任意の2つ以上のシクロデキストリンの混合物として使用されてもよい。
【0046】
特定の実施形態において、本方法に従って調製されるグルカゴン粉末製剤は、グルカゴン、DPCおよびβ-シクロデキストリンを含む。好ましくは、粉末製剤は、10:10:80(グルカゴン:DPC:β-シクロデキストリン)の重量比でグルカゴン、DPCおよびβ-シクロデキストリンを含む。好ましくは、グルカゴンは、一方の鼻孔に単回用量で投与された場合に有効である治療量で存在する。一実施形態において、グルカゴンの用量は約3mgである。
【0047】
混合は、静的および動的混合を含む方法によって行うことができる。動的混合は、軸に取り付けられ、モーターによって回転する、液体に挿入された刃を使用して行うことができる。静的混合は、静的ミキサー内の曲がりくねった経路に液体を流すことによって行うことができる。高速混合条件下での混合中に空気-水界面が存在すると、発泡が生じる場合がある。高速混合はまた、剪断応力に起因してタンパク質の不安定化をもたらす場合もある。発泡を最小限に抑え、好ましくはそれを排除するために、低速混合条件が好ましい。動的混合の場合、速度はスターラーの1分あたりの回転数(rpm)によって決定される。好ましいrpm値は、50~300、より好ましくは50~250、さらには50~100である。
【0048】
第2の濾過生成物を乾燥させて、溶媒を除去し、固体生成物を残す。乾燥は、凍結乾燥、噴霧乾燥、トレイ乾燥または他の技術によって実施することができる。生成物の巨視的な物理的特性は、乾燥技術に応じて変化し、凍結乾燥からの薄片状の固体または乾燥固体ケーキの形態であり得る。
【0049】
過剰な水分含有量を有する粉末は、粘着性があり、凝集塊を形成する可能性があり、その結果、投与デバイスに充填するために操作するのが困難な粉末が生じる。重要なのは、残留含水量のレベルが安定性に直接影響することである。バルク粉末の残留水分含有量レベルが5%を超えると、残留含水量が5%未満の粉末と比較して安定性が低下する。したがって、特定の実施形態において、本発明に従って調製される粉末製剤は、好ましくは5%未満の残留含水量を有する。
【0050】
特定の実施形態において、本発明に従って調製される粉末製剤中の酸の量は、10%w/w未満、好ましくは6%w/w未満である。
【0051】
経鼻投与に適した粉末は、それらを経鼻排出デバイスに充填することを可能にするのに十分な流動性を可能にする物理的特性を必要とする。流動性は、粒径、形状、密度、表面テクスチャー、表面積、密度、凝集力、接着性、弾性、多孔性、吸湿性、および破砕性を含む様々なパラメータによって決定される。
【0052】
適切な粒径および流動性特性を有する粉末は、小さすぎるまたは大きすぎる粒子を除去するようにバルク粉末を処理することによって製造することができる。小さすぎるまたは大きすぎる粒子を除去するようにバルク粉末を処理する方法は、バルク粉末を粉砕してより大きな粒子を分解し、ふるいにかけて所望の粒径範囲の粒子を単離することを含み得る。上下振動ふるい、水平ふるい、タップ型ふるい、超音波ふるい、および空気循環ジェットふるい等の、様々なふるい方法が実施され得る。ふるいは、一定公称開口の単一ふるいとして使用されてもよいか、または所望の粒径分布を得るように、開口が徐々に小さくなる一連のふるいを通してバルク粉末を処理してもよい。ふるいは、公称開口が25~1000μmの範囲の金網メッシュふるいであってもよい。
【実施例
【0053】
実施例1.グルカゴン粉末製剤の調製(二重濾過ステップ)
DPCを撹拌により1M酢酸溶液に溶解する。次に、β-シクロデキストリンをDPC溶液に添加し、溶解するまで撹拌して第1の溶液を形成する。第1の溶液を、0.45μm PVDFフィルターを介して第1の濾過ステップに供する。濾過生成物(賦形剤溶液)を新しいクリーンタンクに収集し、タンクの温度を20℃±2℃に調整して、溶液への材料の溶解性を確保する。タンク内の標的温度に達したら、溶液を撹拌しながら、グルカゴンまたはグルカゴン類似体をタンクに添加する。グルカゴンが溶解したように見えたらすぐに(視覚的確認による)、撹拌を直ちに終了する。次いで、グルカゴン溶液を第2の0.45μm PVDFフィルターを通して濾過し、濾過された材料を第2のクリーンタンクに収集する。この第2の濾過された材料(第2の濾過生成物)は、97.5%w/wの1M酢酸水溶液、0.25%w/wのDPC、2%w/wのβ-シクロデキストリン、および0.25%w/wのグルカゴン(合計2.5%w/wの固形分重量)を含む。次いで、材料を凍結乾燥し、緻密化ステップを経て、最終的なグルカゴン粉末製剤を製造する。
【0054】
比較例.グルカゴン粉末製剤の調製(単一濾過ステップ)
DPCを撹拌により1M酢酸溶液(8リットル)に溶解する。溶液を撹拌しながらグルカゴンを添加する。グルカゴンが溶解したように見えたらすぐに(視覚的確認による)、撹拌しながらβ-シクロデキストリンを添加する。添加した固体がすべて溶解したように見えたら、0.45μm PVDFフィルターを通して溶液を濾過する。単一のフィルター膜の目詰まりまたはファウリングが発生した場合、複数のフィルターの使用が必要になる場合がある。濾過された材料は、0.3%w/wのDPC、2.4%w/wのβ-シクロデキストリン、および0.3%w/wのグルカゴン(合計3%%w/wの固形分)を含む。濾過された材料を収集し、凍結乾燥する。
【0055】
1回目の濾過後の賦形剤溶液の安定性
賦形剤溶液(酢酸、DPCおよびβ-シクロデキストリン)を、本質的に実施例1に記載されるように、2.5%w/wの固形分濃度で調製する。試験期間中、溶液を25℃に維持する。データを表1にまとめる。22時間の期間にわたって含有量に有意な変化は起きず、物質収支が確認された。
【表1】
【0056】
グルカゴンを含む水溶液の安定性
溶液アッセイ
グルカゴン溶液を、本質的に実施例1(第2の濾過生成物)に記載されるように調製する。調製後、グルカゴン溶液を撹拌せずに静置する。溶液サンプルを所定の時間に採取し、アッセイの前に0.45μmフィルターを通過させる。凝集体に変換したあらゆるグルカゴンがこの濾過ステップによって除去されるため、このアッセイは凝集の程度の推定を提供する。
【0057】
蛍光アッセイ
蛍光法の基本は、グルカゴン分子中の単一トリプトファン残基の発光波長のシフトを利用することである(Pedersen JS.,J Diabetes Sci Technol.2010;4(6):1357-1367)。グルカゴン分子が、そのコンフォメーションをランダムコイルまたはαヘリックスから凝集形態に変化させると、トリプトファン分子の局所環境が発光スペクトルの青方偏移の形で変化する。したがって、ファイバー光学的に結合された後方散乱蛍光プローブを用いて、グルカゴンの発光蛍光シグナルの波長の変化を経時的に監視することにより、非凝集グルカゴンと該分子の凝集形態との発光ピークの比を計算することが、リアルタイムでの凝集を監視するためのツールとして用いられ得る。
【0058】
グルカゴン溶液を、本質的に実施例1(第2の濾過生成物)に記載されるように調製する。蛍光プローブを用いて、発光スペクトルの経時変化を監視する。溶液を撹拌せず、室温で24時間監視する。
【0059】
小規模実験(100mL)では、この24時間の期間にグルカゴン蛍光比の変化は観察されなかった。
【0060】
さらなる実験において、グルカゴン溶液を、本質的に実施例1(第2の濾過生成物)に記載されるように調製し、異なる温度に維持する。比較のために、これを第2の濾過ステップを通過していないグルカゴン溶液と比較する。その結果を表2にまとめる。
【表2】
【0061】
試験の結果は、グルカゴン溶液が第2の濾過ステップを通過し、5℃または20℃で撹拌せずに保持された場合、システムからの凝集によってグルカゴンが失われないことを示している。しかしながら、溶液を濾過しないと、24時間にわたってグルカゴン含有量の約8%が失われる。
【0062】
本質的に実施例1に記載されるように調製したグルカゴン溶液の化学的安定性はまた、本質的に以下に記載されるように逆相HPLCを用いて試験することができる。
【0063】
100リットル(2.5%w/w固形分)規模の量の二重濾過により、本質的に上記のように実施された調製では、驚くべきことに、第2の濾過ステップ後に収集された溶液は、検出可能な凝集もなく、24時間まで物理的および化学的に安定であることが分かった(上記の方法の1つまたは複数によって決定される)。一方、1回の濾過ステップのみに供されたグルカゴン溶液材料(比較例、8リットルおよび3%w/w固形分)は、グルカゴンの添加から約15分以内に目に見える凝集を示した。
【0064】
経鼻グルカゴン粉末製剤のHPLCによる化学的安定性分析
明確に定義された外部参照標準に対する、実施例1に従って調製された経鼻グルカゴン粉末製剤の安定性は、日常的RP-HPLC技術を用いて決定される。簡単に述べると、HPLC逆相カラムC18(内径3.0mm×150mm、粒径2.6μm)を、214nmのUV検出波長で、リン酸カリウム緩衝液:アセトニトリル移動相とともに用いる。勾配移動相の組成は、54%、80:20の150mMリン酸カリウム緩衝液:アセトニトリルで3分間保持することで開始し、70%、60:40のリン酸カリウム緩衝液:アセトニトリルの組成で8分かけて終了する。
【0065】
表3に示すように、本質的に上記のように実施された実験において、実施例1(100L)に従って調製された経鼻グルカゴン粉末製剤の3つの異なるバッチからの代表的なサンプルは、実験精度内で約100%のグルカゴン活性を保持した。
【0066】
経鼻グルカゴン粉末製剤の効力バイオアッセイ
グルカゴンの細胞表面受容体とCRE-ルシフェラーゼレポーター遺伝子の両方を安定に発現するように操作された胎児腎臓細胞株HEK293を用いて、最終的な経鼻グルカゴン製剤製品の相対的効力を決定する。この細胞ベースのアッセイでは、CREプロモーターからのルシフェラーゼの転写は、内因性サイクリックAMP(cAMP)シグナル伝達経路に沿った応答をトリガーすることによって制御される。したがって、グルカゴンの細胞表面受容体への結合は、cAMP産生を誘導する。これにより、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)のリン酸化および活性化がもたらされ、その結果、CRE-ルシフェラーゼレポーター遺伝子によるルシフェラーゼの発現が起こる。ルシフェラーゼ産生は、ルシフェリン基質を反応混合物に添加し、ルミノメーターを使用してルシフェリンの酸化を定量化することによって決定される。発光シグナルは、存在するルシフェラーゼの量に比例し、それは細胞を誘導するために使用されるグルカゴンの量に正比例する。試験サンプルの相対的効力は、参照標準の典型的な8ポイント用量反応曲線をサンプルのそれと比較することによって決定される。応答データを、4パラメータロジスティックモデルに適合させ、参照標準のEC50およびサンプルのEC50を決定する(これらのEC50値の比は、試験材料の相対的効力を表す)。
【0067】
HEK293細胞を、増殖培地(1.0mg/mL Genetecin(登録商標)および125μg/mlハイグロマイシンBを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中の10%ウシ胎児血清(FBS)。ペニシリンおよびストレプトマイシンが100ユニット/mLペニシリンおよび100μg/mLストレプトマイシンの最終濃度で添加されてもよい)に播種し、37℃で30分~2.5時間付着させる。増殖培地を洗浄し、DMEM中の0.25%FBSと、0.5%ウシ血清アルブミン、1×ペニシリン/ストレプトマイシン、および0.00032ng/mL~25ng/mLの範囲の濃度のグルカゴンとからなるアッセイ培地と交換する。プレートを37℃で4.5時間インキュベートする。ウェルごとに100μLのSteadyGlo(登録商標)を添加し、次いで、ウェルを周囲温度で30分間継続的に撹拌する。プレートをルミノメーターで読み取る。
【0068】
表3に示すように、本質的に上記のように実施された実験では、細胞ベースのアッセイによって測定されたグルカゴンの相対的効力のパーセントは、94%~102%であることがわかり、実施例1(100L)による製剤の調製中に凝集が起こっていなかったことが示される。これらの結果は、同じ参照標準を使用したグルカゴン化学物質ベースのアッセイ結果と同等であった。
【0069】
経鼻グルカゴン粉末製剤の不純物分析
経鼻グルカゴン粉末製剤中の潜在的な不純物の同定および定量化は、日常的RP-HPLC技術を用いて行われる。不純物は、製造プロセス、または最終製剤中の材料の化学分解に起因して発生し得る。方法は、USP41-NF36に概説されている条件に基づいている。この分析は、グルカゴン粉末製剤の安定性の指標を提供する。
【0070】
表3に示すように、本質的に上記のように実施された実験では、バッチ出荷時の総不純物レベルは約0.4%~約0.56%の範囲である。さらに、実施例1に従って調製された経鼻グルカゴン粉末製剤について提案された貯蔵寿命仕様分析は、最大約24ヶ月間、約20%(a/a)以下の総不純物レベルを有する。驚くべきことに、経鼻グルカゴン粉末製剤は、現在のUSPモノグラフ(USP41-NF36)が、31%(a/a)以下の総不純物および関連化合物が存在することという制限を規定する、現在市販されているグルカゴン緊急キットに推奨されるレベルよりも大幅に低い総不純物レベルを有する。
【表3】
【0071】
経鼻グルカゴン粉末製剤の臨床的有効性
実施例1の2段階濾過プロセスを用いた、大規模な品質管理された製造バッチからの経鼻グルカゴン粉末製剤の臨床的有効性は、NCT03339453臨床試験研究(Suicoら、EASD-2008;要約150)において研究された。簡単に述べると、経鼻グルカゴン粉末製剤(NG)の有効性および安全性を、制御されたインスリン誘発性低血糖の間に、1型糖尿病の成人患者における筋肉内グルカゴン(IMG)と比較した。経鼻グルカゴン粉末製剤は、3.0mgの用量で一方の鼻孔に送達するためのデバイスに充填される。
【0072】
表4に示す結果は、患者の100%がNGまたはIMGのいずれかで成功裏に治療されたこと、およびNG活性がこの研究でIMG活性に匹敵することを示している。
【表4】
【0073】
配列
(配列番号1)
His-Ser-Gln-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Tyr-Ser-Lys-Tyr-Leu-Asp-Ser-Arg-Arg-Ala-Gln-Asp-Phe-Val-Gln-Trp-Leu-Met-Asn-Thr
【配列表】
0007245926000001.app