(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】地盤変状評価方法
(51)【国際特許分類】
G01C 7/02 20060101AFI20230317BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230317BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20230317BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230317BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20230317BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20230317BHJP
【FI】
G01C7/02
G01C15/00 103Z
G06T1/00 285
G06T7/00 640
G06T7/70 B
G06T7/60 300Z
(21)【出願番号】P 2019045069
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506332605
【氏名又は名称】基礎地盤コンサルタンツ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】515102770
【氏名又は名称】ルーチェサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080838
【氏名又は名称】三浦 光康
(74)【代理人】
【識別番号】100194261
【氏名又は名称】栢原 崇行
(72)【発明者】
【氏名】武政 学
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 豊
(72)【発明者】
【氏名】福田 信行
(72)【発明者】
【氏名】柳浦 良行
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-085145(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032495(WO,A1)
【文献】特開2002-074370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 7/02
G01C 15/00
G06T 1/00
G06T 7/00
G06T 7/70
G06T 7/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調査対象地盤に生える樹木をレーザー測量で測量するレーザー測量工程と、該レーザー測量工程で測量された測量結果から地盤の変状を評価する形質評価工程とで構成され、
前記レーザー測量工程では少なくとも前記樹木の頂点座標を取得するものであり、
前記形質評価工程は、
前記樹木の頂点座標を含む前記樹木の状態又は変化から前記調査対象地盤の変状又は動態を評価する地盤変状評価方法。
【請求項2】
前記形質評価工程は、
前記樹木の頂点座標を含む樹木個体の幾何学的特徴、樹木配列の幾何学的特徴、樹木の本数又は樹木の傾きの少なくともいずれかの状態又は変化から前記調査対象地盤の変状又は動態を評価することを特徴とする請求項1に記載の地盤変状評価方法。
【請求項3】
前記形質評価工程は、単位面積あたりの樹木の本数の状態又は変化、配列の状態又は変化、
前記樹木の頂点座標の状態又は変化又は傾きの状態又は変化の少なくともいずれかを統計処理し、前記調査対象地盤の変状又は動態を評価することを特徴とする請求項1に記載の地盤変状評価方法。
【請求項4】
前記形質評価工程において、樹木の傾きについて評価する際には風の影響を想定して評価することを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の地盤変状評価方法。
【請求項5】
前記レーザー測量工程は、調査対象地盤に生える樹木を複数回レーザー測量するとともに、前記形質評価工程は、前記樹木の変化から前記調査対象地盤の変状を評価することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の地盤変状評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は豪雨や地震発生後の斜面災害の監視・点検、または定期的な斜面状況の点検のためのレーザー測量と解析を行う地盤変状評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
豪雨や地震が発生した際、道路などの公共インフラの管理者は安全確認のために斜面の点検を行う必要がある。この点検は巡回車両からの目視や、専門技術者が実際に斜面を歩いて点検するなどの手法が用いられている。特に技術者が実際に斜面を歩いて行う点検(踏査)は、スキルのある専門技術者が現地を歩いて状況判断をするため、迅速性を高める上で支障となっている。
【0003】
一方、大規模な土砂災害が発生した場合には、従来から空中写真を用いて崩壊や地すべりなどの地盤変状箇所の把握などが行われてきた。最近では空中写真に加えて、航空機に搭載したレーザー測量(LP)による精細な地形図を元に微地形判読を行って地盤変状の抽出を行う方法も知られている(特許文献1)。
【0004】
レーザー測量では、従来の空中写真では把握できなかった植生の下の地盤形状もある程度把握できる特徴があるが、植生の影響を除去して地形データを抽出する必要があったため、この処理に時間を要してしまうという欠点があった。
【0005】
また、地すべりや崩壊が確認された斜面については、孔内傾斜計、地盤傾斜計、地表面伸縮計(地すべり計)、GPS端末などを設置しての動態観測が一般的であるが、これらの手法は現地に装置を設置する必要があり、大規模災害のような場合には代表的な変状箇所にのみ装置を設置することしかできず、発災地全体の把握ができない点が問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、豪雨や地震が発生した場合の斜面での地盤変状の有無について、迅速かつ客観的に判断することができるとともに、変状の兆候が認められながらも、保安物件との離隔があって本格的な動態観測ができないような斜面についても、監視することができる地盤変状評価方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の地盤変状評価方法は、調査対象地盤に生える樹木をレーザー測量で測量するレーザー測量工程と、該レーザー測量工程で測量された測量結果から地盤の変状を評価する形質評価工程とで構成され、前記レーザー測量工程では少なくとも前記樹木の頂点座標を取得するものであり、前記形質評価工程は、前記樹木の頂点座標を含む前記樹木の状態又は変化から前記調査対象地盤の変状又は動態を評価することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の地盤変状評価方法の前記形質評価工程は、前記樹木の頂点座標を含む樹木個体の幾何学的特徴、樹木配列の幾何学的特徴、樹木の本数又は樹木の傾きの少なくともいずれかの状態又は変化から前記調査対象地盤の変状又は動態を評価することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の地盤変状評価方法の前記形質評価工程は、単位面積あたりの樹木の本数の状態又は変化、配列の状態又は変化、前記樹木の頂点座標の状態又は変化又は傾きの状態又は変化の少なくともいずれかを統計処理し、前記調査対象地盤の変状又は動態を評価することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の地盤変状評価方法は、前記形質評価工程において、樹木の傾きについて評価する際には風の影響を想定して評価することを特徴とする。
請求項5に記載の地盤変状評価方法の前記レーザー測量工程は、調査対象地盤に生える樹木を所定の位置から複数回レーザー測量することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
(1)請求項1に記載された発明においては、_Hlk125105216調査対象地盤に生えている樹木を測量するためミリ単位の微細な地盤変位を、測量誤差を大きく上回る数cm、数十cmの樹木の状態又は変化として捉えることで、地盤変状の有無について迅速に情報を出力することができる_Hlk125105216。
(2)また、樹木の状態又は変化として地盤の変状又は動態を捉えることができるので、変状の兆候が認められながらも、保安物件との離隔があって本格的な動態観測ができないような地盤についても、監視することができる。
(3)樹木の変化を捉えて地盤の変状を評価するため、通常の航空LPにおいて地表面形状を抽出するために行われる樹木に相当する測量点群データをフィルタリング除去した2次データを作成する必要がない。
したがって、樹木相当データをフィルタリングする過程で地盤変状を評価することができるため、従来よりも迅速にアウトプットすることができる。
(4)請求項2及び請求項3に記載された発明も前記(1)~(3)と同様な効果が得られるとともに、樹木の傾きや配列を単位面積あたりの統計処理で評価することにより、専門技術者による判読を必要とせずに迅速かつ客観的に地盤変状の評価を行うことができる。
(5)また、樹木の傾きや座標を面的に把握し、定期的に計測・比較することで従来測定器を設置した箇所しか評価できなかった斜面の状況を面的に評価することができる。
(6)請求項4に記載された発明も前記(1)~(5)と同様な効果が得られるとともに、樹種・樹高・測量時の風向風速をパラメーターとして風による頂点のずれ幅を想定し、風による測定誤差を排除して評価することができる。
したがって、より精度の高い地盤変状評価を行うことができる。
(7)請求項5に記載された発明も前記(1)~(6)と同様な効果が得られるとともに、複数回の測量では、変化を把握できるので、変化が活発な箇所の抽出ができる。
また、複数回の測量を行い、その都度形質評価を行うことで解析結果を時系列的に整理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1乃至
図5は本発明の第1の実施形態を示す模式図である。
図6乃至
図11は本発明の第2の実施形態を示す模式図である。
【
図3】調査対象地盤の動態観測の着目点を示す模式図。
【
図5】地盤変状(地すべり)と樹木の傾き・座標の変化を示した模式図。
【
図7】樹木が傾きによる単位面積あたりの樹木の配列の乱れを示した模式図。
【
図9】単位面積あたりの樹木の座標の変化の統計を示す表。
【
図10】傾いた樹木のLPデータを平面へ投影した場合の模式図。
【
図11】直立した樹木群と傾きが乱れた樹木群の測量点群を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に示す本発明を実施するための形態により、本発明を詳細に説明する。
【0015】
図1乃至
図5に示す本発明を実施するための第1の形態において、1は調査対象地盤をレーザー測量(LP)を行い、調査対象地盤の形質を評価することができる地盤変状評価方法である。
【0016】
この地盤変状評価方法1は、
図1に示すように、任意の位置から地盤及び植生をレーザー測量で測量するレーザー測量工程2と、該レーザー測量工程2で測量された測量結果から地形の形質を評価する形質評価工程3とで構成されている。
【0017】
レーザー測量工程2では、無人航空機4(ドローン)を用いて低空から調査対象地盤5に生える樹木6について測量を行う。このとき、樹木6だけではなく調査対象地盤5についてもあわせて測量を行うことができる。
【0018】
従来の有人航空機を用いたレーザー測量では、高い高度からの測量となるため樹幹形状の把握について精度が低かったが、近年の無人航空機4を用いたレーザー測量では低空から測量が可能であるため、精度の高い樹幹形状の把握が可能となっている。
【0019】
具体的には、
図2に示すように、調査対象地盤5と樹木6の両方を測量するためにレーザー測距儀7を搭載した無人航空機4を用いて空中からのレーザー測量が適しており、特に樹木6の樹幹などを詳細に測量するためには低空から低角度で測距レーザーを射出することが可能な無人航空機4を用いて測量することが適している。
【0020】
このレーザー測量工程2は、調査対象地盤5等に対して複数回定期的に行われることが望ましい。そのような場合には、変化の活発な場所が発見でき、地すべり等が発生することを予測することができ、その都度形質評価工程3を行うことで解析結果を時系列的に整理することができる。
【0021】
また、このレーザー測量工程2は、1回の測量でも、樹木6の状態、例えば、樹木6が大きく傾いている箇所は危険な可能性が高いと評価することができ、1回の測量であっても、地盤変状について一定の評価をすることができる。
【0022】
無人航空機4を用いた測量の場合には、定期的または特定座標にてホバリングを行い、測量時の現地の風速を測定することにより取得結果の誤差や信頼度を評価に役立てることができる。
【0023】
飛行ルートは樹木を欠損なく測定できるように設定する必要があるが、XYZ座標を明確にするためにも、固定点となる構造物や、座標が明確な基準点などを含めたルートとすることが肝要である。また、GPS等を用いて測量を行うことが望ましい。
【0024】
なお、レーザー測量工程2は、無人航空機4を用いずに行うものであってもよい。
図3は斜面(調査対象地盤5)についてレーザー測量を実施して樹木の状態を表したものである。斜面変状が顕著に認められる斜面では、一般に地表面伸縮計、孔内傾斜計、地盤傾斜計などの地すべり動態観測装置を斜面に設置して、地盤変状の挙動についてモニタリングする手法が用いられる。
【0025】
ここで調査対象地盤5とは、樹木6が生えている斜面が含まれるものである。例えば、土砂崩れや地すべり等が発生しそうな山の斜面等が含まれる。
【0026】
しかし、これらの動態観測装置を用いたモニタリングは、装置設置の初期コストが大きいことなどから設置される箇所が限定されることが多く、軽微な変状の場合は装置を設置せずに目視点検で代替すること多い。これに対し、本発明では、
図3で示したような断面が得られるLPを用いれば、樹木の樹芯間隔(TD1~TD5)または樹根間隔(SD1~SD5)を計測することで地表面伸縮計の代替とし、樹芯の傾きを測定することで地盤傾斜計の代替として断面に示される斜面の安定状況について評価することができる。地表に装置を設置する必要がないため、指定したルートで複数回航空測量することで時系列的に地盤変状の進行を評価することができる。
【0027】
解析にあたっては、設定した位置情報に基づき航空測量を実施した後、断面上の各樹木について測量毎に対比を行う。斜面変状の活動が活発になった場合には、前回測量時と樹木の座標が大きくずれて対比が困難になる場合には地表面に目印となる杭や箱などを設置することで対比作業を容易にすることができる。
【0028】
形質評価工程3では、このレーザー測量工程2で測量され、解析された樹木6の状態又は変化から調査対象地盤4の形質の評価を行う工程である。
【0029】
例えば、
図4に示すように、_Hlk125104777樹高が10mの樹木6の場合、地盤が1°傾斜すると、その樹芯頂点は約17cm以上の変位が発生するため、地盤の変状よりも顕著に影響が現れ_Hlk125104777る。また、斜面崩壊で倒木が発生した場合には、所定の範囲の樹木6個体の座標や樹高(幾何学的特徴)、樹木6本数の減少、樹木6の配列(樹木配列の幾何学的特徴)が乱れる等の変化が現れる。
【0030】
このように調査対象地盤5自体の変化はわずかなものであっても、その地盤5に生えている樹木6の変化は大きくあらわれるため、樹木6の変化を解析することにより調査対象地盤5の形質の評価を適切に行うことができる。
【0031】
また、樹木6が大きく傾いている箇所は危険な可能性が高いと評価することができ、このように樹木6の状態を解析することでも調査対象地盤5の形質の評価を適切に行うことができる。
【0032】
本実施形態では、レーザー測量工程2でレーザー測量を用いて樹木6の傾きや本数、樹木6の配列(樹木配列の幾何学的特徴)、樹木6個体の座標や樹高(幾何学的特徴)地盤の安定状況(形質)を評価するが、樹木6の傾き計測に懸念される風の影響については、風速情報と併せて樹種・樹高・測量時の風向風速をパラメーターとして風による頂点のずれ幅を想定し、取得データを整理することにより誤差範囲、信頼度などを評価することができる。
【0033】
図5に示す形態は本発明が把握目標とする災害時の樹木6の傾きを示した模式図である。図の左側には、災害発生前に直立した樹木6の配列を示している。この斜面5に地すべりに代表される地盤変状が発生した場合の状態を図の右側に示している。
図5に示すように、地すべり地では、地すべりの上端部分では樹木6が斜面5上側に向かって傾くことが多く、地すべりの下端側では樹木6が斜面5下側に向かって傾くことが多い。
【0034】
無人航空機4を用いた空中写真では、樹木6を詳細に撮影することができるものの、光学レンズの特性状傾きを正確に把握することができない。それに対し、レーザー測量は樹木6の傾きを正確に把握し、さらに地盤の形状まで把握することが可能であるため、調査対象地盤5の地すべりや斜面崩壊の位置や規模を正確に把握することができる。本発明では、この樹木6の傾きと地盤変状の関係に着目し、樹木6の頂点座標並びに樹木6の傾きを抽出し、調査対象地盤5の地盤変状の位置や範囲を想定することができる。
【0035】
[発明を実施するための異なる形態]
次に、
図6乃至
図11に示す本発明を実施するための異なる形態につき説明する。なお、これらの本発明を実施するための異なる形態の説明に当って、前記本発明を実施するための第1の形態と同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0036】
図6乃至
図11に示す本発明を実施するための第2の形態において、前記本発明を実施するための第1の形態と主に異なる点は、単位面積あたりの樹木の本数の変化、座標の変化又は傾きの変化等を統計処理し、地盤の変状を評価する形質評価工程3Aにした点で、このような形質評価工程3Aを行う地盤変状評価方法1Aにしても、前記第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
本実施形態では単位面積あたりの樹木6の状態又は変化を統計処理することによって形質評価工程3Aを行うもので、例えば、樹木6がある程度規則正しく配列した植林などを災害発生前の状態とした場合、災害発生後の樹木6の頂点座標はその配列は乱れが生じる。
【0038】
図7は、地盤変状によって任意の単位面積あたりの樹木6の頂点の配列が乱れる状況を模式的に示したものである。この単位面積あたりの頂点座標の乱れを数値化して統計処理することで、一本一本の樹木を対比させることなく、単位面積あたりの地盤変状の有無を評価することができる。
【0039】
また、その他の要素としては、樹木の頂点座標の変化を統計処理することによって形質評価工程3Aを行うこともできる。例えば、
図8は、20m四方の範囲に点在する0~22cm程度の変位を生じた場合のケースa、34cmから4.7m程度の変位を生じた場合のケースbを模式的に示したものであり、
図9では、
図8に示している初期状態A、変動後のケースa、ケースbそれぞれの場合について、20m四方内の樹木頂点座標の統計結果を表として示しものである。この
図9では、単位面積内の樹木頂点座標の合計値や中央値、平均値、標準偏差等々の各解析値はケースaとケースbの違いを顕著に表すことができている。この手法は、広範囲の斜面について、定期的に行う地盤変状の有無確認、豪雨時の道路通行規制解除に係わる斜面点検などに適している。また、大規模斜面災害が発生した場合などに、広範囲の斜面の中から変状発生範囲を迅速に抽出することにも適用できる。
【0040】
なお、
図6乃至
図9に示す形質評価工程3Aは、樹木6の頂点を確定しにくい広葉樹などでは、樹木6の頂点でなく樹根の座標を用いることで代用することも可能である。
また、
図10は、レーザー測量による樹木測定データを平面に投影した状態の模式図である。投影されたデータは、平面座標データ以外に、高さのデータを持っているため、この樹木6の幹部分の点座標と、樹木6頂点の点座標との差分をとることで、樹木6の傾きと方向を求めることができる。
【0041】
図11は、単位面積での樹木6の傾きを平面投影した模式図である。従来のレーザー測量では、この平面投影した点座標はノイズとして除去されるものであるが、本発明ではこの平面投影された点を整理し、
図7乃至
図9で示したように、この樹木の傾きについても単位面積あたり傾き分布について統計処理を行うことで、その範囲の地盤変状を評価する指標となる。
【0042】
樹木が傾いている地域は地盤変状が発生している可能性が高いため、災害発生前のデータが無い場合でも、傾いた樹木が多い範囲を絞り込むことで地盤変状発生の可能性が高い地域として抽出することが可能である。この手法は、大規模斜面災害が発生した場合などに、既往調査データが無い広範囲の斜面の中から変状発生可能性範囲を迅速に抽出することに適している。
【0043】
なお、本発明の地盤変状評価方法は、保安物件への被害が切迫していないが目視点検の対象となっている斜面や、災害発生後の斜面に伸縮計や地盤傾斜計等を設置するまでの事前調査などに適用できる。
【0044】
また、本発明の実施形態では、航空機(特に無人航空機)を用いてレーザー測量工程を行うものについて説明したが、樹木の変化を測量できるものであればよく、所定の地点を定めて通常のレーザー測量を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は斜面等の地盤の形質の変化等、地盤変状の有無を評価する産業で利用される。
【符号の説明】
【0046】
1、1A:地盤変状評価方法、
2:レーザー測量工程、 3、3A:形質評価工程、
4:無人航空機、 5:調査対象地盤、
6:樹木、 7:レーザー測距儀。