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特許7246062切削タップ、切削タップ素材並びに切削タップの切屑落下防止体
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  • 特許-切削タップ、切削タップ素材並びに切削タップの切屑落下防止体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】切削タップ、切削タップ素材並びに切削タップの切屑落下防止体
(51)【国際特許分類】
   B23G 5/06 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
B23G5/06 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018175812
(22)【出願日】2018-09-20
(65)【公開番号】P2020044622
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000151014
【氏名又は名称】株式会社田野井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】沢辺 輝雄
(72)【発明者】
【氏名】久保 武史
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-137392(JP,U)
【文献】実開平05-093723(JP,U)
【文献】特開2014-079810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材の下穴に雌ねじを切削形成するタップ本体と、このタップ本体の先方に設けられた切屑の落下を阻止する切屑落下防止部と、この切屑落下防止部と前記タップ本体の先端との間に形成された空間である切屑移動空間と、を備えてなるとともに、
前記切屑落下防止部と前記下穴の壁との間に形成される隙間の隙間距離は、発生する最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離であり、又は0.03mm~0.5mmの隙間距離であり、
前記切屑移動空間は、前記切屑落下防止部と前記タップ本体の先端の離れ距離が、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が反転ないし移動できる離れ距離の空間であり、
前記タップ本体は、シャンク、該シャンクの先方に形成されたねじ部、該ねじ部に形成されたランド、及び該ランド間に形成されたタップ溝を備え、
前記シャンク側から該タップ本体の先端にクーラントを送るための、前記タップ溝に連絡するクーラント供給溝が前記シャンクに設けられ、またはクーラントを前記ねじ部の先端側に吐出させるための前記タップ本体を貫通するクーラント供給孔が設けられ、
前記切屑移動空間の切屑は、前記クーラントに流されて該クーラントとともに前記タップ溝に流れ込み、前記クーラントの流れに乗って前記下穴の入口から該クーラントとともに吐出される形態であることを特徴とする切削タップ。
【請求項2】
被加工材の下穴に雌ねじを切削形成するタップ本体と、このタップ本体の先方に設けられた、前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部と、この切屑落下防止部と前記タップ本体の先端との間に形成された切屑移動空間と、を備えてなるとともに、
前記切屑移動空間は、前記切屑落下防止部と前記タップ本体の先端の離れ距離が、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が反転ないし移動できる離れ距離の空間であり、
前記タップ本体は、シャンク、該シャンクの先方に形成されたねじ部、該ねじ部に形成されたランド、及び該ランド間に形成されたタップ溝を備え、
前記シャンク側から該タップ本体の先端にクーラントを送るための、前記タップ溝に連絡するクーラント供給溝が前記シャンクに設けられ、またはクーラントを前記ねじ部の先端側に吐出させるための前記タップ本体を貫通するクーラント供給孔が設けられ、
前記切屑移動空間の切屑は、前記クーラントに流されて該クーラントとともに前記タップ溝に流れ込み、前記クーラントの流れに乗って前記下穴の入口から該クーラントとともに吐出される形態であることを特徴とする切削タップ。
【請求項3】
前記タップ本体の先端には、該タップ本体の母材からなる突起形態のタップ側取付け部が設けられ、
前記切屑落下防止部は、前記タップ側取付け部が圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定される穴形態の落下防止側取付け部が設けられてなることを特徴とする請求項1又は2記載の切削タップ。
【請求項4】
前記タップ本体の先端には突起形態のタップ側取付け部が設けられ、
前記タップ側取付け部には、段差や突起などからなる位置決め部が設けられ、
前記切屑落下防止部には、前記タップ側取付け部が圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定される穴形態の落下防止側取付け部が設けられ、
前記タップ側取付け部に固定された前記切屑落下防止部は、前記位置決め部によってその位置が決定されて、前記切屑移動空間が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の切削タップ。
【請求項5】
前記切屑落下防止部は、前記タップ本体の母材により該タップ本体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の切削タップ。
【請求項6】
前記タップ本体を貫通してなる、クーラントを前記ねじ部先端側に吐出させるための前記クーラント供給孔が設けられ、
前記ねじ部先端側には、前記クーラント供給孔に連絡しかつ該クーラント供給孔よりも大径の穴形態、又は、前記クーラント供給孔を有して且つ該ねじ部先端径よりも小径の突出形態のタップ側取付け部が設けられ、
前記タップ側取付け部に、突起形態又は穴形態の落下防止側取付け部を有する前記切屑落下防止部が設けられ、
前記タップ側取付け部側又は前記切屑落下防止部側に、前記クーラント供給孔からのクーラントの吐出し方向を前記下穴の壁方向に変えるクーラント吐出し部を有する形態、又は、前記タップ側取付け部と前記切屑落下防止部とで該クーラント吐出し部を形成する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の切削タップ。
【請求項7】
食付部、平行ねじ部を形成していないタップ素材本体と、
このタップ素材本体の先端に設けられた突起形態の、既に完成形態である又は加工して完成形態とするタップ側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記完成形態の前記タップ側取付け部に、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する際に発生する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部を、圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定可能としたものであることを特徴とする切削タップ素材。
【請求項8】
突起形態のタップ側取付け部をタップ本体の先端に有する切削タップに取付けられる、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成したときに発生する切屑の落下を阻止する切削タップの切屑落下防止体であって、
前記下穴内で前記切屑の落下を阻止する落下防止部本体と、
この落下防止部本体に穴形態で設けられた、前記タップ側取付け部に圧入、焼嵌め、ねじ止等されて前記切削タップの先方に固定可能とされた落下防止側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記落下防止部本体が下記(a)、(b)、(c)のいずれかであり、
(a)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を前記切屑のうちの最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離とする大きさであり、
(b)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を0.03mm~0.5mmの範囲の隙間距離とする大きさであり、
(c)前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップの切屑落下防止体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工材に設けられた下穴に、切削動作によって雌ねじを形成したときに発生する切屑を、該下穴内に落下させることを防ぐ切屑落下防止部を有する切削タップ、切削タップ素材並びに切削タップの切屑落下防止体並びに切削タップの切屑落下防止体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工材に設けられた下穴が深く(例えば、100mm以上)、該下穴の上部側に浅い雌ねじを切削により形成した場合、発生した切屑は深い下穴底に落下してしまう。深い下穴底の切屑を出すために噴射エアーを吹き入れて追い出したり、被加工材を逆さにしたりなどの煩雑な操作を行わなければならないという問題があった。
エアーを吹き入れる方法は下穴が8mmで深さが200mm以上であると、殆ど吹出すことができないものであった。
被加工材例としては冷却水路を有する金型があり、冷却水路やこれに連絡する深い穴などを有していて、その入り口に冷却水供給パイプを螺合取付けるための浅い雌ねじを形成することが行われる。
【0003】
また、タップ本体のシャンクから刃先先端の貫通するオイルホール(クーラント供給孔)を有しかつ下穴に雌ねじを切削形成する切削タップにおいて、オイルホールから噴射されるクーラントの流れ方向を、左右横向きに替えるピンをタップ本体先端に取付けて、クーラントが刃先に供給可能とした切削タップが知られている(例えば、非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】発明協会公開技報番号2006-505136号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した非特許文献1の技術は図9に示すようなものであった。
オイルホール(クーラント供給孔)で送られその出口であるクーラント吐出口から吐出されるクーラントは、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する形態では、クーラントとは真っ直ぐ真下に噴出されるだけで、切削負荷が高く発熱量の高い刃先部に当たらない、すなわち刃先を効率的に冷却できないという問題を有するものであり、非特許文献1の発明はこの問題を解決することを目的とし、すなわ、下穴に雌ねじを切削形成する場合において、オイルホールから吐出されるクーラントが切削開始当初から刃先を効率的に冷却できるようにすることを目的としているものである。
【0006】
かかる目的を達成するための非特許文献1の発明を、非特許文献1及びその構成を示した図8(非特許文献1に無い名称は出願人が付与。)によって説明する。
シャンク、平行ねじ部と食付部とからなるねじ部、前記シャンクから食付部先端に向けて貫通形態で設けられたクーラントを食付部先端に送るオイルホール(クーラント供給孔)、このオイルホールのクーラント吐出口とからなるタップ本体と、
前記クーラント吐出口に圧入されて左右にクーラントを通す隙間を形成する楕円ピン、この楕円ピン下部に設けられた円盤皿、この円盤皿の上部で前記楕円ピンの左右に設けられた、前記楕円ピンより小幅(図2参照)の外周側に開口を有する左側溝、右側溝とからなるクーラントの流れ横向きの流れに変える流れ変更盤と、からなり、
前記クーラント方向変更円盤の上面は前記タップ本体の先端面に密着して、前記左側溝と前記右側溝はその開口天井が塞がれた形態として、左側に吐出される左クーラントを形成する左クーラント変更管と右側に吐出される右クーラントを形成する右流れ変更管を形成してなる切削タップ(クーラント安定供給型タップ)である。
【0007】
左クーラント変更管、右流れ変更管に導入されたクーラントはその外周側の左右の吐出し口から下穴壁に向かって吐出されて刃先先端を冷却するものであるので、左右の吐出し口と下穴壁との間に十分な空間(左右の吐出し口と壁との隙間距離)が必要であるものである。すなわち、左右の吐出し口と壁との隙間距離が狭いとクーラントの刃先先端への当たり面積が小さくなる、且つ、クーラントの吐出し量が少なくなるため刃先の効果的な冷却ができないことになる。
よって、左右の吐出し口と下穴壁との間には、十分な冷却効果が得られるようにまたクーラントの吐出量が得られるように,可能な限り十分な隙間をとることが必須であるものである。
そうすると、流れ変更盤と下穴壁との間に形成される隙間は、少なくとも一部の切屑よりも大きな隙間幅である可能性が大であり、そうであるなら当該隙間を切屑が抜けて下穴に落下してしまう危険性が極めて高いものであるとするのが相当である。
また、左側溝、右側溝から吐出されたクーラントはタップ溝(切屑排出溝)を通って上方へ行くものと、流れ変更盤と下穴壁との間の隙間から下方へ行くものとに分岐されるので、タップ側に十分なクーラント量が供給され難いとともに、タップ溝へ流れ込み切屑を運搬するのクーラントの流量も不十分となり切屑の排出が不十分になる可能性が大であるものであり、これに加えて、オイルホールのクーラント吐出口を楕円ピンで狭め、かつ、左側溝、右側溝は該楕円ピンの幅よりもわざわざ狭くしているので、そのことでもクーラントの供給量が著しく少なくなるものである。
また、楕円ピンとオイルホールの接触支持面積が2箇所の線上部位と極めて狭いので当該楕円ピンの支持力が弱いので、クーラントの供給量を増加しようとした場合、クーラントの供給圧力が増加するので支持力の弱い楕円ピンが抜けクーラント方向変更円盤が落下してしまう心配があり、当該供給量を増やし難いという問題を有するものであった。
【0008】
本発明は以上のような従来技術の欠点に鑑み、(1)切屑の下穴内への落下を防止することができる切削タップを提供することを目的としている。(2)前記(1)の切削タップを製造し易くする切削タップ素材を提供することを目的としている。(3)前記(1)の切削タップを実現する切削タップの切屑落下防止体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は以下のような構成としている。
<請求項1記載の発明>
被加工材の下穴に雌ねじを切削形成するタップ本体と、
このタップ本体の先方に設けられた切屑の落下を阻止する切屑落下防止部と、
この切屑落下防止部と前記タップ本体の先端との間に形成された空間である切屑移動空間と、を備えてなるとともに、
前記切屑落下防止部と前記下穴の壁との間に形成される隙間の隙間距離は、発生する最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離であり、又は0.03mm~0.5mmの隙間距離であり、
前記切屑移動空間は、前記切屑落下防止部と前記タップ本体の先端の離れ距離が、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が反転ないし移動できる離れ距離の空間であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップである。
<請求項2記載の発明>
被加工材の下穴に雌ねじを切削形成するタップ本体と、
このタップ本体の先方に設けられた、前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部と、
この切屑落下防止部と前記タップ本体の先端との間に形成された切屑移動空間と、を備えてなるとともに、
前記切屑移動空間は、前記切屑落下防止部と前記タップ本体の先端の離れ距離が、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が反転ないし移動できる離れ距離の空間であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップである。
「前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位」とは、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等のゴム製部材、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、軟質樹脂、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;ふっ素樹脂)等の樹脂製部材、金属ブラシ、樹脂製ブラシなどのブラシ部材(髭状部材)等がある。
<請求項3記載の発明>
前記タップ本体の先端には、該タップ本体の母材からなる突起形態のタップ側取付け部が設けられ、
前記切屑落下防止部は、前記タップ側取付け部が圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定される穴形態の落下防止側取付け部が設けられてなることを特徴とする請求項1又は2記載の切削タップである。
<請求項4記載の発明>
前記タップ本体の先端には突起形態のタップ側取付け部が設けられ、
前記タップ側取付け部には、段差や突起などからなる位置決め部が設けられ、
前記切屑落下防止部には、前記タップ側取付け部が圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定される穴形態の落下防止側取付け部が設けられ、
前記タップ側取付け部に固定された前記切屑落下防止部は、前記位置決め部によってその位置が決定されて、前記切屑移動空間が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載の切削タップである。
<請求項5記載の発明>
前記タップ本体は、シャンク側から該タップ本体の先端にクーラントを送るための貫通穴形態のクーラント供給孔が無い形態であることを特徴とする請求項1~3又は4記載の切削タップである。
<請求項6記載の発明>
前記タップ本体はシャンク、該シャンク部の先方に形成されたねじ部とからなるとともに、シャンク側から該タップ本体の先端にクーラントを送るための溝形態のクーラント供給溝が、前記シャンクに設けられてなることを特徴とする請求項1~4又は5記載の切削タップである。
<請求項7記載の発明>
前記タップ本体を貫通してなる、クーラントを該ねじ部先端側に吐出させるためのクーラント供給孔が設けられ、
前記ねじ部先端側には、前記クーラント供給孔に連絡しかつ該クーラント供給孔よりも大径の穴形態、又は、前記クーラント供給孔を有して且つ該ねじ部先端径よりも小径の突出形態のタップ側取付け部が設けられ、
前記タップ側取付け部に、突起形態又は穴形態の落下防止側取付け部を有する前記切屑落下防止部が設けられ、
前記タップ側取付け部側又は前記切屑落下防止部側に、前記クーラント供給孔からのクーラントの吐出し方向を前記下穴の壁方向に変えるクーラント吐出し部を有する形態、又は、前記タップ側取付け部と前記切屑落下防止部とで該クーラント吐出し部を形成する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする請求項1~3又は4記載の切削タップである。
<請求項8記載の発明>
食付部、平行ねじ部を形成していないタップ素材本体と、
このタップ素材本体の先端に設けられた突起形態の、既に完成形態である又は加工して完成形態とするタップ側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記完成形態の前記タップ側取付け部に、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する際に発生する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部を、圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定可能としたものであることを特徴とする切削タップ素材である。
<請求項9記載の発明>
食付部、平行ねじ部を形成していないタップ素材本体と、
このタップ素材本体の先端に設けられた穴形態の、既に完成形態である又は加工して完成形態とするタップ側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記完成形態の前記タップ側取付け部に、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する際に発生する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部を、圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定可能としたものであることを特徴とする切削タップ素材である。
<請求項10記載の発明>
突起形態のタップ側取付け部をタップ本体の先端に有する切削タップに取付けられる、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成したときに発生する切屑の落下を阻止する切削タップの切屑落下防止体であって、
前記下穴内で前記切屑の落下を阻止する落下防止部本体と、
この落下防止部本体に穴形態で設けられた、前記タップ側取付け部に圧入、焼嵌め、ねじ止等されて前記切削タップの先方に固定可能とされた落下防止側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記落下防止部本体が下記(a)、(b)、(c)のいずれかであり、
(a)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を前記切屑のうちの最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離とする大きさであり、
(b)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を0.03mm~0.5mmの範囲の隙間距離とする大きさであり、
(c)前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップの切屑落下防止体である。
<請求項11記載の発明>
止まり穴形態のタップ側取付け部をタップ本体の先端に有する切削タップに取付けられる、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成したときに発生する切屑の落下を阻止する切削タップの切屑落下防止体であって、
前記下穴内で前記切屑の落下を阻止する落下防止部本体と、
この落下防止部本体に突起形態で設けられた、前記タップ側取付け部に圧入、焼嵌め、ねじ止等されて前記切削タップの先方に固定可能とされた落下防止側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記落下防止部本体が下記(a)、(b)、(c)のいずれかであり、
(a)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を前記切屑のうちの最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離とする大きさであり、
(b)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を0.03mm~0.5mmの範囲の隙間距離とする大きさであり、
(c)前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップの切屑落下防止体である。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明にあっては次に列挙する効果が得られる。
<請求項1記載の発明の効果>
(1)切屑落下防止部と下穴壁との間の隙間の隙間距離は、発生する最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離、又は0.03mm~0.5mmの隙間距離という狭い隙間距離であるので、切屑落下防止部で止められた切屑は下穴に落下することがなく、かつ、切屑落下防止部とタップ本体の先端との間には、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が反転ないし移動できる距離の空間である切屑移動空間が設けられているので、切屑が切屑落下防止部とタップ本体の間に引っ掛かって溜まることが起きない。
(2)クーラントを例えば少なくとも1つのタップ溝(切屑排出溝)から注ぎ入れれば、切屑落下防止部と下穴壁との間の隙間が狭いのでクーラントは当該隙間から下方に漏れることが少なく、よってクーラントは切屑移動空間を大量に流れ通り、その殆どは切削タップ先端に供給されて効率的に冷却し、かつ切屑も運んでクーラントが注ぎ込まれないタップ溝(切屑排出溝)からスムーズに排出することを実現する。
それは、タップ本体のシャンクからねじ部先端に貫通するクーラントを流すクーラント供給孔が無くても、ねじ部先端にクーラントを供給し効率的に冷却可能とした切削タップを実現するものである。
(3)また、クーラントの供給機能が無い切削タップでも、切削屑は切屑落下防止部で受け止められその上に載ったまま抜き動作で下穴入り口まで持ち上がられ、下穴入り口付近で吸引で吸い込み除去するとか、噴射エアーで吹き飛ばし除去するとか、ブラシ等で吐出すとかによって、下穴に切屑を落下させることなく除去することを可能する。
<請求項2記載の発明の効果>
このような構成としても、前記請求項1記載の発明と同様な効果を奏する。
<請求項3記載の発明の効果>
前記請求項1又は2記載の発明と同様な効果を奏するとともに、タップ本体の先端には該タップ本体の母材からなる突起形態のタップ側取付け部に、該タップ側取付け部とは別体である切屑落下防止部を圧入、焼嵌め、ねじ止等で固定する形態であるので、切屑落下防止部を安価な部材にすることを可能としている。
<請求項4記載の発明の効果>
このような構成としても前記請求項3記載の発明と同様な効果を奏するとともに、タップ側取付け部の位置決め部によって、切屑落下防止部の取付け固定作業が簡単にできる。
<請求項5記載の発明の効果>
前記請求項1~3又は4記載の発明と同様な効果を奏する。
<請求項6記載の発明の効果>
前記請求項1~4又は5記載の前記タップ本体には、溝形態のクーラント供給溝から注ぎ込まれたクーラントは切屑移動空間を流れ通るので、切削タップ先端を効率的に冷却しかつ切屑も運んでタップ溝(切屑排出)からスムーズに排出することを実現する。
<請求項7記載の発明の効果>
請求項1~3又は4記載の発明と同様な効果を奏するとともに、クーラント供給孔の吐出口を狭めたりすることなく、クーラント供給孔からのクーラントの吐出し方向を下穴の壁方向に変えて、下穴の壁に向けてクーラントを吐出すクーラント吐出部であるので、クーラント供給孔からのクーラントの供給量に規制を加えない形態とすることを可能し、クーラントの十分な供給量を得ることを可能にする。
<請求項8記載の発明の効果>
タップ素材本体に、突起形態の既に完成形態である又は加工して完成形態とするタップ側取付け部を有した切削タップ素材であるので、切屑落下防止部を圧入、焼嵌め、ねじ止等で固定可能としたタップ側取付け部を有する切削タップを容易に製造できる。
<請求項9記載の発明の効果>
タップ素材本体に穴形態の既に完成形態である又は加工して完成形態とするタップ側取付け部を有した切削タップ素材であるので、切屑落下防止部を圧入、焼嵌め、ねじ止等で固定可能としたタップ側取付け部を有する切削タップを容易に製造できる。
<請求項10記載の発明の効果>
穴形態の落下防止側取付け部を有する切削タップの切屑落下防止体であるので、前記請求項1~6又は7に記載の切屑落下防止部を有する切削タップを実現する。
<請求項11記載の発明の効果>
落下防止部本体に突起形態の落下防止側取付け部を有する切削タップの切屑落下防止体であるので、前記請求項1又は2記載の切屑落下防止部を有する切削タップを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1を示す正面図。
図2】本発明の実施例1の切屑落下防止部を設けない状態の底面図(上図)および切屑落下防止部を設けた状態の底面図(下図)。
図3】本件発明の実施例1の切削時のクーラント及び切屑の流れを示す図。
図4】本件発明の実施例1の部分断面正面図。
図5】本件発明の実施例2の異なる形態を示す部分断面部分正面図。
図6】本件発明の実施例3を示す正面図。
図7】本件発明の実施例4を示すコンタリング加工動作図。
図8】本件発明の実施例5を示す部分断面正面図。
図9】従来技術を示す部分断面部分正面図(上図)及び流れ変更盤の斜視図(下図)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態である実施例について説明する。但し、本発明をこれら実施例のみに限定する趣旨のものではない。また、後述する実施例の説明に当って、前述した実施例の同一構成部分には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0013】
図1図4に示す本発明の実施例1において切削タップ1は、被加工材2の下穴3に雌ねじ4を切削形成する、シャンク5、平行ねじ部6と食付部7とからなるねじ部8、タップ溝10、ねじ部8が形成されているランド11とかなるタップ本体12と、
このタップ本体12の先方に設けられた、発生する最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が、下穴3との間に形成される隙間を通らない隙間距離とする大きさの切屑の落下を阻止する切屑落下防止部13と、
この切屑落下防止部13とタップ本体12の先端との間に設けられた、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が方向変更しながら流され移動ないし反転できる距離の空間である切屑移動空間14と、を備えてなるものである。
タップ本体12は、シャンク5側から該タップ本体12の先端にクーラント9を送るための貫通穴形態のクーラント供給(オイルホール)が無い形態の切削タップである。
また、タップ本体12には、シャンク5側から該タップ本体12の先端にクーラント9を送るための溝形態のクーラント供給溝16が、シャンク5を通りタップ溝10に連絡する形態で設けられている。クーラント供給溝16が連絡しないタップ溝10は少なくとも2箇所とし、そのタップ溝10はクーラント排出溝及び切屑排出溝として機能する。
クーラント供給溝がシャンク及びランドを通る形態も技術的範囲に含まれる。
【0014】
また、切屑落下防止部13と下穴3との間の隙間距離を0.03mm~0.5mmの範囲にするのがよい。好ましくは0.05mm~0.4mm、より好ましくは0.05mm~0.3mm、さらに好ましくは0.05mm~0.2mmの範囲とするのがよい。
【0015】
想定される最も薄い切屑は、タップの種類によって異なる。例えば、想定される切屑の厚み(薄さ)とタップの種類との関係は次のようである。
M3(0.5ピッチ)・3溝(3ランド)・食付部長さ3P(ピッチ)のタップは、想定される切屑の厚みは0.04mmである。
M6(1ピッチ)・3溝(3ランド)・食付部長さ3P(ピッチ)のタップは、想定される切屑の厚みは0.077mmである。
M12(1.5ピッチ)・3溝(3ランド)・食付部長さ3P(ピッチ)のタップは、想定される切屑の厚みは0.118mmである。
M12(1.5ピッチ)・4溝(4ランド)・食付部長さ3P(ピッチ)のタップは、想定される切屑の厚みは0.081mmである。
【0016】
タップ本体12の先端には、該タップ本体12の母材からなる突起形態のタップ側取付け部19が設けられ、かつ、該タップ側取付け部19には段差からなる位置決め部18が設けられている。
切屑落下防止部13の円盤形態ないし円柱形態の落下防止部本体15には、タップ側取付け部19が圧入ないし焼嵌めによって固定される穴形態の落下防止側取付け部20が設けられ、タップ側取付け部19に固定された切屑落下防止部13は、位置決め部18によってその位置が決定され、その位置決定状態で切屑移動空間14が形成されるようになっている。
【0017】
切削タップ1は以上のような構成であるので、以下に述べるよう機能、作用効果を奏する(主に図3参照)。
(1)切屑落下防止部13と下穴3壁との間の隙間の隙間距離は、発生する最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離、又は0.03mm~0.5mmの隙間距離という狭い隙間距離であるので、切屑落下防止部13で止められた切屑は下穴3内に落下することがなく、かつ、切屑落下防止部13とタップ本体12の先端との間には、発生する最も大きな切屑ないし想定される最も大きい切屑が、クーラントに流され方向を変えても移動できるないし反転できる距離の空間である切屑移動空間14が設けられているので、切屑17が切屑落下防止部13とタップ本体12の間に引っ掛かって溜まることが起きない。
(2)クーラント9を少なくとも1つのタップ溝10(切屑排出溝)から注ぎ入れれば、切屑落下防止部13と下穴壁との間の隙間が狭いのでクーラント9は当該隙間から下方に漏れることが少なく、よってクーラント9は切屑移動空間14を大量に流れ通り、その殆どは切削タップ先端に供給されて効率的に冷却し、かつ切屑17も運んでクーラント9が注ぎ込まれないタップ溝10(切屑排出溝)からスムーズに排出することを実現する。
それは、タップ本体12のシャンク5からねじ部8先端に貫通するクーラントを流すクーラント供給孔が無くても、ねじ部8先端にクーラント9を供給し効率的に冷却可能とした切削タップを実現するものである。
(3)切屑落下防止部13はタップ側取付け部19とは別体であるので、安価な部材にすることを可能としている。
(4)位置決め部18があるので、タップ側取付け部19への切屑落下防止部13の取付け固定作業がミスなく簡単にできる。
【0018】
切屑移動空間14に位置した切屑17はクーラント9に流され、一部は方向変更を行いながら流され、タップ溝10(切屑排出溝)にクーラント9とともに流れ込み、クーラント9の上昇流れに乗って下穴3の入口からクーラント9とともに吐出される。
クーラントは、液体状のもの、ミスト状のもの、エアーなどのガス状のものなどがある。
【0019】
(1)下穴が止まり形態での使用はもちろん、通り穴形態の下穴で使用できるものであることは言うまでもない。
(2)切屑落下防止部がタップ本体と一体の該タップ本体の母材により形成してなる形態も技術的範囲に含むものである。
(3)タップ側取付け部と落下防止側取付け部の取付け形態(連結形態)が、圧入又は焼嵌め形態であるものは、その嵌合保持形態が略面を密着させた面密着保持形態又は隙間を略形成しない隙間なし略面密着保持形態である。すなわち、タップ側取付け部と落下防止側取付け部は、圧入又は焼嵌めで連結取付けを実現する略同形状、略同径(焼嵌めの場合は穴側径より突起側径が僅かに大きく、圧入の場合は略同径か穴側径より突起側径が僅かに小さい)である。
【実施例2】
【0020】
図5に示す本発明の実施例2においては、前記実施例1の切屑落下防止部13とは異なる切屑落下防止部の固定形態を示している。
(a)図の切削タップ
タップ側取付け部が穴形態のタップ側取付け部23であり、切屑落下防止部は落下防止部本体15に突起形態の落下防止側取付け部24を設けてなる切屑落下防止部25であり、タップ側取付け部23に落下防止側取付け部24を圧入し固定形態としているものである。
(b)図の切削タップ
タップ側取付け部がねじ穴形態のタップ側取付け部27であり、切屑落下防止部は落下防止部本体15に突起形態で先側に雄ねじ28が螺刻された形態の落下防止側取付け部29を設けたてなる切屑落下防止部30であり、タップ側取付け部27に落下防止側取付け部29を螺合して固定形態としているものである。
(c)図の切削タップ
突起形態のタップ側取付け部19の先側に雄ねじ32が螺刻され、切屑落下防止部は落下防止部本体15に雄ねじ32に螺合するねじ穴33を設けてなる切屑落下防止部34とし、雄ねじ32に落下防止部本体15を螺合し固定しているものである。
【実施例3】
【0021】
図6に示す本発明の実施例3において前記実施例1と主に異なる点は、切屑落下防止部を、下穴3の壁に隙間を形成しないように擦れ形態で接触しながら移動可能な接触部位35を有する切屑落下防止部36とした切削タップ37を形成した点にある。
接触部位35はゴム製部材ないし樹脂製部材のシート状部材で、落下防止部本体15の間に挟持形態で取付けられている。落下防止部本体15は下穴3壁より0.5mm~1mm離れているないし1mm以上離れるようにするのがよい。
落下防止部本体の全部が又は殆どがゴム製部材ないし樹脂製部材のシート状部材等からなる形態とするのもよい。
また接触部位35は、例えば、シリコンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム等のゴム製部材、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、軟質樹脂、ナイロン、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE;ふっ素樹脂)等の樹脂製部材、金属ブラシ、樹脂製ブラシなどのブラシ部材(髭状部材)等がある。
【0022】
切屑落下防止部36と下穴3の壁との間には隙間の無い形態を実現されるので、微細な切屑の完全な下穴への落下を防止するとともに、クーラントを使用では、該クーラントの下穴への漏れを少なくして刃先先端の冷却及び切屑の運送手段として最良の状態を実現する。
【実施例4】
【0023】
図7に示す本発明の実施例4において前記実施例1と主に異なる点は、落下防止部本体15の下部に下穴3の入口の面取り加工をコンタリング加工するためのコンタリング加工部41を、タップ側取付け部19も圧入によって設けた点にある。
コンタリング加工部41が下穴3の入口に位置した状態で上昇移動を停止させ、コンタリング加工部41が回転動作42(高速回転が望ましい。)しかつ公転動作40であるコンタリング加工を行うことで、下穴3の入口の面取り加工が可能とされている。
「コンタリング加工部」は、切刃に限定されず、ヤスリ、研削砥石、磨き砥石、ブラシ等も技術的範囲に含まれる。
【実施例5】
【0024】
図8に示す本発明の実施例5において前記実施例1と主に異なる点は、タップ本体12の後端から先端に向けて貫通してなる、クーラント9をねじ部8先端側に吐出させるためのクーラント供給孔47が設けられ、
ねじ部8先端側には、クーラント供給孔47に連絡しかつ該クーラント供給孔47よりも大径の穴形態のタップ側取付け部48が設けられ、
このタップ側取付け部48に突起形態の落下防止側取付け部49を有する切屑落下防止部50が設けられ、
落下防止側取付け部49にはクーラント供給孔47に連絡する該クーラント供給孔47と略同径のクーラント供給孔51が設けられるとともに、切屑移動空間14に位置する部位にクーラント9の吐出し方向を下穴3の壁方向に変えるクーラント吐出し部52が設けられ、
タップ側取付け部48には雌ねじ53が螺刻され、落下防止側取付け部49には該雌ねじ53の螺合する雄ねじ54が螺刻され、落下防止側取付け部49の下方には雄ねじ32が螺刻され、切屑落下防止部36には該雄ねじ32に螺合するねじ穴33が設けられてなる切削タップ55を形成した点にある。
クーラント吐出し部52の形態は、クーラント供給孔47から吐出されるクーラントに規制や制限を加える形態ではない。例えば、クーラント吐出し部52の吐出口合計開口面積がクーラント供給孔47の吐出口開口面積より大である形態。
【0025】
タップ側取付け部をねじ部8の先端から突出した突出形態でクーラント供給孔47を有しかつ外周に雄ねじを有するタップ側取付け部aとし、落下防止側取付け部をタップ側取付け部aに螺合するねじ穴を有する形態とするのもよい。
また、クーラント吐出し部を落下防止部本体15側に上部開放形態の溝とするのもよい。
【0026】
タップ側取付け部及び落下防止側取付け部はねじ形態ではないストレート形態にして、圧入ないし焼嵌めによる取付け形態とするのもよい。この場合のタップ側取付け部と落下防止側取付け部との連結形態は略面密着連結形態である。
また、クーラント吐出し部52を設ける場所、その穴形態は、クーラント9の吐出し方向を下穴3の壁方向に変えるという目的が達成されれば、タップ側取付け部、落下防止側取付け部のどちらに設けてよく、またタップ側取付け部と落下防止側取付け部の共同によって形成される形態等、どのような形態でもよいものである。
【実施例6】
【0027】
切削タップ1等が完成されていない形態、すなわち食付部、平行ねじ部を形成していないタップ素材本体が、タップ側取付け部を完成形態又は未完成形態で有するタップ素材もよい。
すなわち、タップ素材本体と、このタップ素材本体の先端に設けられた突起形態の、既に完成形態である又は未完成形態であるタップ側取付け部と、を備えるとともに、
完成形態とした前記タップ側取付け部に、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する際に発生する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部を、圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定可能としたものであることを特徴とする切削タップ素材である。
【0028】
タップ素材本体と、このタップ素材本体の先端に設けられた穴形態の、完成形態である又は未完成形態であるタップ側取付け部と、を備えるとともに、
前記完成形態の前記タップ側取付け部に、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する際に発生する切屑の落下を阻止する切屑落下防止部を、圧入、焼嵌め、ねじ止等によって固定可能としたものであることを特徴とする切削タップ素材もよい。
【実施例7】
【0029】
実施例1~実施例5に示されている切屑落下防止部は、それ自体単体として供給可能なものであり、よって、単体として供給できる切削タップの切屑落下防止体の発明が明示されている。
その発明は以下のようである。
突起形態のタップ側取付け部をタップ本体の先端に有する切削タップに取付けられる、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成したときに発生する切屑の落下を阻止する切削タップの切屑落下防止体であって、
前記下穴内で前記切屑の落下を阻止する落下防止部本体(15)と、
この落下防止部本体(15)に穴形態で設けられた、前記タップ側取付け部に圧入、焼嵌め、ねじ止等されて前記切削タップの先方に固定可能とされた落下防止側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記落下防止部本体(15)が下記(a)、(b)、(c)のいずれかであり、
(a)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を前記切屑のうちの最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離とする大きさであり、
(b)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を0.03mm~0.5mmの範囲の隙間距離とする大きさであり、
(c)前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップの切屑落下防止体である。
【0030】
または、
止まり穴形態のタップ側取付け部をタップ本体の先端に有する切削タップに取付けられる、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成したときに発生する切屑の落下を阻止する切削タップの切屑落下防止体であって、
前記下穴内で前記切屑の落下を阻止する落下防止部本体(15)と、
この落下防止部本体(15)に突起形態で設けられた、前記タップ側取付け部に圧入、焼嵌め、ねじ止等されて前記切削タップの先方に固定可能とされた落下防止側取付け部と、を備えてなるとともに、
前記落下防止部本体(15)が下記(a)、(b)、(c)のいずれかであり、
(a)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を前記切屑のうちの最も薄い切屑ないし想定される最も薄い切屑が通らない隙間距離とする大きさであり、
(b)前記下穴との間の隙間の距離である隙間距離を0.03mm~0.5mmの範囲の隙間距離とする大きさであり、
(c)前記下穴の壁に隙間を形成しないように接触しながら移動可能な接触部位を有する形態であり、
以上のごとく構成されてなることを特徴とする切削タップの切屑落下防止体である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、被加工材の下穴に雌ねじを切削形成する装置を有する産業で利用される。
【符号の説明】
【0032】
1:切削タップ、
2:被加工材、
3:下穴、
4:雌ねじ、
5:シャンク、
6:平行ねじ部、
7:食付部、
8:ねじ部、
9:クーラント、
10:タップ溝、
11:ランド、
12:タップ本体、
13:切屑落下防止部、
14:切屑移動空間、
15:落下防止部本体、
16:クーラント供給溝、
17:切屑、
18:位置決め部、
19:タップ側取付け部、
20:落下防止側取付け部、
23:タップ側取付け部、
24:落下防止側取付け部、
25:切屑落下防止部、
27:タップ側取付け部、
28:雄ねじ、
29:落下防止側取付け部、
30:切屑落下防止部、
32:雄ねじ、
33:ネジ穴、
34:切屑落下防止部、
35:接触部位、
36:切屑落下防止部、
37:切削タップ、
40:公転動作、
41:コンタリング加工部、
42:回転動作、
44:クーラント供給溝、
45:切削タップ。
47:クーラント供給孔、
48:タップ側取付け部、
49:落下防止側取付け部、
50:切屑落下防止部、
51:クーラント供給孔、
52:クーラント吐出し部、
53:雌ねじ、
54:雄ねじ、
55:切削タップ。



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9