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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】流体加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 1/10 20220101AFI20230317BHJP
   H05B 3/40 20060101ALI20230317BHJP
   F24H 1/14 20220101ALI20230317BHJP
   F24H 1/16 20220101ALI20230317BHJP
【FI】
F24H1/10 C
H05B3/40 A
F24H1/14 A
F24H1/16 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018192816
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2020060343
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】594020248
【氏名又は名称】株式会社幸和電熱計器
(74)【代理人】
【識別番号】100126310
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】川井 清
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-102135(JP,U)
【文献】米国特許第05606641(US,A)
【文献】特開2010-225490(JP,A)
【文献】実公昭43-017749(JP,Y1)
【文献】実開昭57-196931(JP,U)
【文献】特開2010-101546(JP,A)
【文献】特開2015-004470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/06 - 8/00
H05B 3/02 - 3/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒形のセラミックヒータを発熱させて、前記セラミックヒータの中空部を流れる被加熱流体を加熱する流体加熱装置において、
前記セラミックヒータの中空部に同一軸心上に挿設され、内部空間内に被加熱流体が給送される直状流路体と、
前記セラミックヒータの外側位置に配設される筒状のケース部材と、
前記ケース部材の外側位置にコイル状に巻設され、流路上流側にて前記直状流路体と内部連通状に接続されて内部空間内に被加熱流体が給送される螺旋流路体と、
を具備してなり、
前記直状流路体と前記セラミックヒータとの間に形成される伝熱セメントを硬化させてなる内側セメント硬化体にて、前記セラミックヒータの内周面が被覆されるとともに、前記セラミックヒータ及び前記直状流路体が固定され、
前記ケース部材と前記セラミックヒータとの間に形成される伝熱セメントを硬化させてなる外側セメント硬化体にて、前記セラミックヒータの外周面が被覆されるとともに、前記セラミックヒータ及び前記ケース部材が固定され、
前記ケース部材の外側位置に形成される伝熱セメントを硬化させてなる最外側セメント硬化体にて、前記ケース部材の外周面が被覆されるとともに、前記ケース部材及び前記螺旋流路体が互いに接触しない状態で埋設されて固定される
ことを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
前記螺旋流路体は、前記セラミックヒータに近い位置に巻設される内螺旋流路体と、前記内螺旋流路体の外側位置に巻設される外螺旋流路体とが連続して設けられる請求項1に記載の流体加熱装置。
【請求項3】
直列又は並列に複数連結されてなる請求項1又は請求項2に記載の流体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体加熱装置の技術に関し、より詳細には、中空円筒形のセラミックヒータを発熱させて、前記セラミックヒータの中空部を流れる被加熱流体を加熱する流体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックヒータは、シーズヒータに比べて小型で長寿命であるという特徴を有しており、特に、中空円筒形のセラミックヒータは中空部に被加熱流体を給送させることができることから、セラミックヒータを発熱させて、セラミックヒータの中空部を流れる被加熱流体を加熱する流体加熱装置とした場合に、装置の小型化が容易であり、これまでにも小型温水器等に用いられる流体加熱装置のヒータ装置として採用されているところである。
【0003】
この種の従来の流体加熱装置としては、例えば、特許文献1又は特許文献2に開示されるように、流体容器内に中空円筒形のセラミックヒータが挿設され、被加熱流体がセラミックヒータの一端から中空部を流れて流体容器内に流通し、流体容器内にてセラミックヒータの外周面と流体容器の内壁面の間に形成された空間を流れた後に、流体容器に設けられた排出口より機外に排出される流体加熱装置の構成が公知である。かかる構成によれば、セラミックヒータが発熱されることで、セラミックヒータの中空部を流れる被加熱流体だけでなく、セラミックヒータより流出して流体容器内の空間を流れる被加熱流体も同時に加熱することができる。
【0004】
ところで、上述した従来の流体加熱装置に用いられるセラミックヒータは、外部からの物理的な衝撃に弱く、また、セラミックヒータを直接流体中で使用した際には、気泡や液体中の異物が表面(セラミック層)に付着することで当該部分の温度が高まり、熱応力や熱衝撃によって表面にヒビが入り、場合によってはセラミックヒータ自体が割れてしまうという問題があった。
【0005】
この点、上述した特許文献1には、中空円筒形のセラミックヒータの内周面と外周面を覆うように形成された二重の有底筒状のケース部材にセラミックヒータを嵌挿して覆い、ケース部材とセラミックヒータとの間に金属粉末等からなる絶縁粉体を充填してなる流体加熱装置の構成が開示されている。しかしながら、かかる流体加熱装置ではケース部材とセラミックヒータとの間に金属粉末を充填させる構成であったため、充填時の粉体の挙動や、ケース部材への充填量を一定にコントロールすることが難しく、その結果、ケース部材の表面にて温度ムラや温度勾配が生じて均一な温度分布を得ることができず、被加熱流体の加熱効率に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平10-247584号公報
【文献】特開2013-104649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、流体加熱装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、セラミックヒータの損傷を防止しつつ、被加熱流体の加熱効率を向上させた流体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、中空円筒形のセラミックヒータを発熱させて、前記セラミックヒータの中空部を流れる被加熱流体を加熱する流体加熱装置において、前記セラミックヒータの中空部に同一軸心上に挿設され、内部空間内に被加熱流体が給送される直状流路体と、前記セラミックヒータの外側位置に配設される筒状のケース部材と、前記ケース部材の外側位置にコイル状に巻設され、流路上流側にて前記直状流路体と内部連通状に接続されて内部空間内に被加熱流体が給送される螺旋流路体と、を具備してなり、前記直状流路体と前記セラミックヒータとの間に形成される伝熱セメントを硬化させてなる内側セメント硬化体にて、前記セラミックヒータの内周面が被覆されるとともに、前記セラミックヒータ及び前記直状流路体が固定され、前記ケース部材と前記セラミックヒータとの間に形成される伝熱セメントを硬化させてなる外側セメント硬化体にて、前記セラミックヒータの外周面が被覆されるとともに、前記セラミックヒータ及び前記ケース部材が固定され、前記ケース部材の外側位置に形成される伝熱セメントを硬化させてなる最外側セメント硬化体にて、前記ケース部材の外周面が被覆されるとともに、前記ケース部材及び前記螺旋流路体が互いに接触しない状態で埋設されて固定されるものである。
【0013】
請求項2においては、前記螺旋流路体は、前記セラミックヒータに近い位置に巻設される内螺旋流路体と、前記内螺旋流路体の外側位置に巻設される外螺旋流路体とが連続して設けられるものである。
【0014】
請求項3においては、直列又は並列に複数連結されてなるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果として、セラミックヒータの損傷を防止しつつ、被加熱流体の加熱効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施例の流体加熱装置の全体的な構成を示した正面図である。
図2図1の流体加熱装置の縦断面図である。
図3図1の流体加熱装置の水平断面図である。
図4】別実施例の流体加熱装置の全体的な構成を示した正面図である。
図5図4の流体加熱装置の縦断面図である。
図6】別実施例の流体加熱装置の全体的な構成を示した正面図である。
図7図4の流体加熱装置の縦断面図である。
図8】複数の流体加熱装置を接続した状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、発明を実施するための形態を説明する。なお、以下の実施例では、矢印X方向を流体加熱装置の上下方向とする。
【0018】
図1乃至図3に示す実施例の流体加熱装置1は、大気圧下で100℃の蒸気(飽和蒸気)をさらに加熱して過熱蒸気を得ることができる加熱装置として構成されている。具体的には、中空円筒形のセラミックヒータ2と、セラミックヒータ2の中空部2aに同一軸心上に挿設され、内部空間内に被加熱流体が給送される直状流路体3と、セラミックヒータ2の外側位置に配設される筒状のケース部材4等とを具備してなり、セラミックヒータ2を発熱させて、セラミックヒータ2の中空部2aに配置される直状流路体3を流れる被加熱流体(蒸気)が加熱されるように構成されている。
【0019】
セラミックヒータ2は、断面円形の筒状に形成されたセラミックス製のヒータとして構成されており、軸心に沿って中空部2aが形成され、外周面の上縁側にフランジ部20が形成されている。セラミックヒータ2は、図示せぬタングステン等の高融点金属からなる電熱線(発熱体)が埋設されており、電熱線の両端部にリード21がロウ付けにより接続されている。リード21は、図示せぬ電源装置と接続されており、電源装置と通電されることで上述した熱電線が発熱する。
【0020】
セラミックヒータ2の材質としては、公知の材料を用いることができ、例えば、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素等が挙げられる。本実施例の流体加熱装置1では、900℃~1200℃での高温使用が可能な高温用セラミックヒータが好ましく用いられる。
【0021】
直状流路体3は、両端が開口された断面円形の筒状の直状管体として構成され、内部空間に被加熱流体が流通する流路が形成されている。直状流路体3は、両端に流体給入口30及び流体排出口31が設けられており、この流体給入口30を介して図示せぬ蒸気生成装置にて生成された飽和蒸気が直状流路体3の内部空間内に給送されるとともに、流体排出口31を介して過熱蒸気が排出される。
【0022】
直状流路体3は、外径がセラミックヒータ2の中空部2aの内径よりも小さくなるように形成されており、セラミックヒータ2の中空部2aに嵌挿されて同一軸心上に位置決めして配設され、セラミックヒータ2の両端より上下方向に突出されている。セラミックヒータ2及び直状流路体3の隙間のクリアランスは、所定の離間を保持して直状流路体3をセラミックヒータ2に嵌挿でき、かつその隙間に後述する内側セメント硬化体5を有効に形成できる大きさであればよい。
【0023】
直状流路体3の材質としては、セラミックヒータ2の熱容量や後述する内側セメント硬化体5の耐熱温度等によって適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼等の鋼系、純銅・青銅・真鍮・洋銀等の銅系、又はこれらの合金等、熱伝導率の高い金属材料やセラミックスを用いることができる。本実施例の流体加熱装置1では、耐熱性及び耐蝕性の点でステンレス鋼が好ましく用いられる他、耐薬品性の点ではセラミックスが好ましく用いられる。
【0024】
ケース部材4は、両端が開口された断面円形の筒状の金属又はセラミックス製の部材として構成されている。ケース部材4は、内径がセラミックヒータ2の外径よりも大きくなるように形成されており、セラミックヒータ2がケース部材4に嵌挿されて同一軸心上に位置決めされてセラミックヒータ2の外側位置に配設され、上端がセラミックヒータ2のフランジ部20に当接され、下端がセラミックヒータ2の下端と同一平面上に位置される。
【0025】
本実施例の流体加熱装置1は、セラミックヒータ2(の中空部2a)の内周面及び直状流路体3の外周面のとの間に形成された隙間に内側セメント硬化体5が配設成され、セラミックヒータ2の外周面及びケース部材4の内周面との間に形成された隙間に外側セメント硬化体6が配設され、セラミックヒータ2の上端及び下端を覆うようにして配設される縁端セメント硬化体7・8が配設されている。
【0026】
内側セメント硬化体5は、セラミックヒータ2と直状流路体3との間に充填された伝熱セメントMを硬化させることによって形成される。本実施例の流体加熱装置1では、内側セメント硬化体5は、セラミックヒータ2の内周面を被覆するようにして形成され、内側セメント硬化体5がセラミックヒータ2の内周面及び直状流路体3の外周面に密着されることでセラミックヒータ2及び直状流路体3が固定される。
【0027】
外側セメント硬化体6は、セラミックヒータ2とケース部材4との間に充填された伝熱セメントMを硬化させることによって形成される。本実施例の流体加熱装置1では、外側セメント硬化体6は、セラミックヒータ2の外周面を被覆するようにして形成され、外側セメント硬化体6がセラミックヒータ2の外周面及びケース部材4の内周面に密着されることでセラミックヒータ2及びケース部材4が固定される。
【0028】
縁端セメント硬化体7・8は、セラミックヒータ2の上端又は下端に配設された伝熱セメントMを硬化させることによって形成される。本実施例の流体加熱装置1では、縁端セメント硬化体7は、セラミックヒータ2の上端面を被覆して直状流路体3の流体給入口30に向けて徐々に縮径する断面山型に形成され、縁端セメント硬化体8は、セラミックヒータ2及びケース部材4の下端面を被覆して直状流路体3の流体排出口31に向けて徐々に縮径する断面山型に形成されている。このように縁端セメント硬化体7・8が配設されることで、セラミックヒータ2の両端での直状流路体3への熱伝達効率を高めて被加熱物の加熱効率を効果的に向上できる
【0029】
伝熱セメントMは、自由な形状に容易に固化させることが可能なペースト状のものが好ましく用いられる。ペースト状の伝熱セメントMを用いることで、流体加熱装置1を製造する際に、例えば、セラミックヒータ2と直状流路体3又はケース部材4の間に伝熱セメントMを高い密度でくまなく充填させることが容易となる。
【0030】
伝熱セメントMは、耐熱セメントやサーモセメント等と呼ばれる熱伝導率が高く、施工後の硬化によってコンクリートと同等の強度を有するとともに、高い接着力を発揮する公知のセメント複合材料が好適に用いられる。この種のセメント複合材料としては、高純度のグラファイトを主体としたものが知られており、例えば、グラファイト:55~80%、硅酸ソーダ:20~40%、コロイド状シリカ:1.5~2.5%、酸化抑制剤0.1~0.5%の組成を有するもの等が挙げられる。
【0031】
伝熱セメントMは、7~12kcal/mh℃の高い熱伝導率を発揮するセメント複合材料が好ましく用いられる。熱伝導率が7~12kcal/mh℃のセメント複合材料を用いることで、直状流路体3及びケース部材4をステンレス鋼(熱伝導率が14kcal/mh℃)にて形成した場合に、セラミックヒータ2の加熱により内側セメント硬化体5及び外側セメント硬化体6を直状流路体3及びケース部材4とほぼ同速度で素早く昇温させることができ、しかも内側セメント硬化体5及び外側セメント硬化体6の熱伝導率が高いので温度ムラや温度勾配を生じ難く、均一な温度分布を得ることができる。他方、伝熱セメントMの熱伝導率が7kcal/mh℃より低いと、直状流路体3に温度ムラや温度勾配を生じて、被加熱流体の均一な加熱が困難となる。
【0032】
伝熱セメントMには、内側セメント硬化体5及び外側セメント硬化体6の熱伝導率を高めるために、セラミックヒータ2の通電時に溶融しないものであり、かつ直状流路体3及びケース部材4の材質より低融点の副材(充填材)が含まれてもよい。これらの副材(充填材)としては、具体的には、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム等の高熱伝導率の無機粉や、アルミニウム、銅、黒鉛等の金属粉を用いることができ、熱伝導率が高く、また寸法変化も比較的小さく安価であることから、銅粉及び鉄粉から選ばれる少なくとも一種の金属粉が含まれるのが好ましい。
【0033】
内側セメント硬化体5及び外側セメント硬化体6の厚さは、熱伝導率の観点から装置寸法に合せて適宜好ましく設定される。すなわち、流体加熱装置1の熱伝導率を高めるためには薄いほど好ましいが、薄すぎるとセラミックヒータ2と直状流路体3及びケース部材4との隙間に伝熱セメントMを均一に充填させることが困難となる。伝熱セメントMの充填が不十分であると、内側セメント硬化体5及び外側セメント硬化体6の強度や密度が不均一となって、セラミックヒータ2の通電時に不均一箇所で熱伝達効率が低下して、流体加熱装置1の性能が低下するとともに、局所的な熱応力や熱衝撃の発生によりセラミックヒータ2に割れが発生する要因となる。
【0034】
このように本実施例の流体加熱装置1では、従来の流体加熱装置のように容器内にセラミックヒータを挿入して被加熱流体を加熱するのではなく、セラミックヒータ2の中空部2aに挿設された直状流路体3を流れる被加熱流体を昇温させて状態変化を可能とするものであり、セラミックヒータ2を発熱させることで、セラミックヒータ2にて発生した熱が内側セメント硬化体5を介して直状流路体3に伝わり、流体給入口30より直状流路体3の内部空間内に送給された被加熱流体としての飽和蒸気が加熱され、やがて過熱蒸気として流体排出口31より排出される。例えば、流体加熱装置1による流体加熱にて、大気圧下で100℃の蒸気(飽和蒸気)を加熱して、400℃~500℃の過熱蒸気を連続して得ることができる。
【0035】
以上のように、本実施例の流体加熱装置1は、中空円筒形のセラミックヒータ2を発熱させて、セラミックヒータ2の中空部2aを流れる被加熱流体を加熱する流体加熱装置1において、セラミックヒータ2の中空部2aに同一軸心上に挿設され、内部空間内に被加熱流体が給送される直状流路体3を具備してなり、直状流路体3とセラミックヒータ2との間に形成される伝熱セメントMを硬化させてなる内側セメント硬化体5にて、セラミックヒータ2の内周面が被覆されるとともに、セラミックヒータ2及び直状流路体3が固定されるため、セラミックヒータ2の損傷を防止しつつ、被加熱流体の加熱効率を向上できるのである。
【0036】
すなわち、本実施例の流体加熱装置1は、セラミックヒータ2の発熱により、セラミックヒータ2の中空部2aに挿設された直状流路体3を流れる被加熱流体を加熱するものであるため、熱応力や熱衝撃によるセラミックヒータ2の損傷を防止することができるとともに、伝熱セメントMを硬化させてなる内側セメント硬化体5にてセラミックヒータ2の内周面が被覆されるため、内側セメント硬化体5の伝熱効果及び蓄熱効果にて、直状流路体3における温度ムラや温度勾配が生じるのを防いで均一な温度分布を得ることができ、セラミックヒータ2から直状流路体3への熱伝達効率を高めて被加熱物の加熱効率を向上できる。
【0037】
特に、本実施例の流体加熱装置1は、セラミックヒータ2の外側位置に配設される筒状のケース部材4を具備してなり、ケース部材4とセラミックヒータ2との間に形成される伝熱セメントMを硬化させてなる外側セメント硬化体6にて、セラミックヒータ2の外周面が被覆されるとともに、セラミックヒータ2及びケース部材4が固定されるため、外部からの物理的な衝撃をケース部材4にて防ぎつつ、外側セメント硬化体6を介してセラミックヒータ2にて発生した熱を外側セメント硬化体6の伝熱効果及び蓄熱効果にて平均化して、熱応力や熱衝撃によるセラミックヒータ2の損傷を効果的に防止することができる。
【0038】
次に、図4及び図5に示す別実施例の流体加熱装置101は、上述した実施例の流体加熱装置1とは異なり、被加熱流体としての水を加熱して過熱蒸気を得ることができる小型の電気ボイラとして構成されている。具体的には、中空円筒形のセラミックヒータ102と、セラミックヒータ102の中空部102aに同一軸心上に挿設され、内部空間内に被加熱流体が給送される直状流路体103と、セラミックヒータ102の外側位置に配設される筒状のケース部材104と、セラミックヒータ102(ケース部材104)の外側位置にコイル状に巻設され、内部空間内に被加熱流体が給送され、直状流路体103と内部連通状に接続される螺旋流路体109等とを具備してなり、セラミックヒータ102を発熱させて、直状流路体103及び螺旋流路体109を流れる被加熱流体が加熱されるように構成されている。
【0039】
なお、本流体加熱装置101においては、特に言及する場合を除き、セラミックヒータ102や直状流路体103等の構成部材は上述した実施例の流体加熱装置1(図2等参照)のものと同様に構成されているものとする。
【0040】
螺旋流路体109は、両端が開口された断面円形の筒状の螺旋管体として構成され、内部空間に被加熱流体が流通する流路が形成されている。螺旋流路体109は、両端に流体給入口190及び流体排出口191が設けられており、この流体給入口190を介して図示せぬ給水装置より供給された水が螺旋流路体109の内部空間内に給送されるとともに、流体排出口191を介して飽和蒸気が排出される。本実施例では、螺旋流路体109は、流体排出口191が接続管体110を介して直状流路体103の流体給入口130と内部連通状に接続されており、流体排出口191より排出された飽和蒸気が接続管体110を介して直状流路体103の流体給入口130に給送される。
【0041】
螺旋流路体109は、セラミックヒータ102(ケース部材104)の外側位置にケース部材104及び螺旋流路体109が互いに接触しない状態でコイル状に巻設され、セラミックヒータ102の側方に向けて流体給入口190及び流体排出口191が突出されている。セラミックヒータ102(ケース部材104)との隙間や螺旋流路体109同士の隙間のクリアランスは、その隙間に後述する最外側セメント硬化体111を有効に形成できる大きさであればよい。
【0042】
螺旋流路体109の材質としては、セラミックヒータ102の熱容量や後述する最外側セメント硬化体111の耐熱温度等によって適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼等の鋼系、純銅・青銅・真鍮・洋銀等の銅系、又はこれらの合金等、熱伝導率の高い金属材料やセラミックスを用いることができる。本実施例の流体加熱装置101では、耐熱性及び耐蝕性の点でステンレス鋼が好ましく用いられる他、耐薬品性の点ではセラミックスが好ましく用いられる。
【0043】
最外側セメント硬化体111は、ケース部材104の外周面に塗布された伝熱セメントMが硬化されることによって形成される。本実施例の流体加熱装置101では、最外側セメント硬化体111は、螺旋流路体109が埋設された状態でケース部材104の外周面を被覆するようにして形成され、最外側セメント硬化体111がケース部材104の外周面に密着されることで螺旋流路体109が固定される。
【0044】
なお、本実施例の縁端セメント硬化体108は、セラミックヒータ102の下端に配設された伝熱セメントMを硬化させることによって形成され、セラミックヒータ102、ケース部材104及び最外側セメント硬化体111の下端面を被覆して直状流路体103の流体排出口131に向けて徐々に縮径する断面山型に形成されている。
【0045】
このように本実施例の流体加熱装置101では、セラミックヒータ102の中空部102aに挿設された直状流路体103及びセラミックヒータ2の外側位置に巻設された螺旋流路体109を流れる被加熱流体を昇温させて状態変化を可能とするものであり、セラミックヒータ102を発熱させることで、セラミックヒータ102にて発生した熱が外側セメント硬化体106及び最外側セメント硬化体111を介して螺旋流路体109に伝わり、流体給入口190より螺旋流路体109の内部空間内に送給された被加熱流体としての水が加熱され、やがて飽和蒸気として流体排出口190より排出される。同時に、セラミックヒータ102にて発生した熱が直状流路体103に伝わるため、接続管体110を介して流体給入口130より直状流路体103の内部空間内に送給された飽和蒸気が加熱され、過熱蒸気として流体排出口131より排出される。例えば、流体加熱装置101による流体加熱にて、大気圧下で常温の水を加熱して、400℃~500℃の過熱蒸気を連続して得ることができる。
【0046】
以上のように、本実施例の流体加熱装置101は、上述した実施例(図2等参照)の流体加熱装置1の構成とは異なり、更に、セラミックヒータ2の外側位置にコイル状に巻設され、内部空間内に被加熱流体が給送され、直状流路体103と内部連通状に接続される螺旋流路体109を具備してなり、セラミックヒータ2の外側位置に形成される伝熱セメントMを硬化させてなる最外側セメント硬化体111にて、セラミックヒータ102の外周面が被覆されるとともに、螺旋流路体109が互いに接触しない状態で埋設されて固定されるため、最外側セメント硬化体111を介してセラミックヒータ102にて発生した熱を最外側セメント硬化体111の伝熱効果及び蓄熱効果にて平均化して、螺旋流路体109における温度ムラや温度勾配が生じるのを防いで均一な温度分布を得ることができ、直状流路体103及び螺旋流路体109への熱伝達効率が高く、被加熱物の加熱効率を向上した小型の電気ボイラとして目的温度の流体を効率よく生成できる。
【0047】
特に、本実施例の流体加熱装置101では、螺旋流路体109が直状流路体103よりも流路上流側に配設されるため、例えば、被加熱流体としての水を加熱して過熱蒸気を生成する場合には、液体(水)を加熱して飽和蒸気を得るために必要なエネルギに比べて、飽和蒸気を加熱して過熱蒸気を得るために必要なエネルギの方が小さいことから、より流路が長い螺旋流路体109にて被加熱流体を被加熱流体としての水を沸騰させて飽和蒸気を生成させる温度まで加熱し、流路が短い直状流路体103にて飽和蒸気から目的温度の過熱蒸気を生成させる温度まで加熱するように構成することで、短時間で被加熱流体を目的温度まで容易に昇温させることができる。
【0048】
本実施例の流体加熱装置101は、直状流路体103及び螺旋流路体109を被加熱流体が移動通過する時間によって被加熱流体の状態を容易に変化させて任意の加熱流体(温水、飽和蒸気、過熱蒸気)を得ることができ、例えば、被加熱流体として常温の水を加熱する際に、(1)短時間とすることで瞬間湯沸器として水温制御された温水を取り出すことができる装置や、(2)中程度の時間とすることで飽和蒸気を取り出すことができる装置や、(3)長時間とすることで過熱蒸気を取り出すことができる装置等、として構成することができる。
【0049】
なお、流体加熱装置の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0050】
すなわち、上述した実施例(図4等)の流体加熱装置101では、螺旋流路体109がセラミックヒータの外側位置にコイル状に一重で巻設される構成について説明したが、螺旋流路体109の構成はこれに限定されず、複数重なるようにして巻設されてもよい。例えば、図6及び図7に示す流体加熱装置201のように、螺旋流路体209がセラミックヒータ203に近い位置に巻設される内螺旋流路体209aと、内螺旋流路体209aの外側位置に巻設される外螺旋流路体209bとが連続して設けられて、二重に巻設されるように構成されてもよい。
【0051】
具体的には、螺旋流路体209は、両端に流体給入口290及び流体排出口291が設けられており、流体排出口291が接続管体210を介して直状流路体203の流体給入口230と内部連通状に接続されている。螺旋流路体209は、セラミックヒータ202(ケース部材204)の外側位置にケース部材204及び螺旋流路体209(内螺旋流路体209a及び外螺旋流路体209b)が互いに接触しない状態でコイル状に巻設されている。内螺旋流路体209a及び外螺旋流路体209bは、それぞれセラミックヒータ203の外側位置に巻設されるとともに、外螺旋流路体209bが内螺旋流路体209aよりも外側に位置される。
【0052】
このように構成することで、流体給入口290より図示せぬ給水装置より供給された被加熱流体をまず外螺旋流路体209bの内部空間内に給送して加熱し、さらに内螺旋流路体209aの内部空間内に連続して給送して加熱することで、セラミックヒータ203に近づくにつれて徐々に昇温させることができるため、螺旋流路体209にて被加熱流体の流路を長くして、より短時間で被加熱流体を目的温度まで容易に昇温させることができる。
【0053】
また、上述した実施例(図1図4及び図6等)の流体加熱装置は、装置単体で構成されるだけでなく、それぞれ直列又は並列に複数連結されて構成されてもよい。一例として、図8には、一組の流体加熱装置206を直列又は並列に連結させた構成を示している。一組の流体加熱装置206・206を直列に連結させる場合には、一方の流体加熱装置206の直状流路体203の流体排出口231と他方の流体加熱装置206の螺旋流路体209(外螺旋流路体209b)の流体給入口290とが接続管体212にて連結されて構成される(図8(a))。他方、一組の流体加熱装置206・206を並列に連結させる場合には、それぞれの螺旋流路体209(外螺旋流路体209b)の流体給入口290が分岐管体213にて連結されて構成される(図8(a))。
【0054】
このように複数の流体加熱装置を用いてその連結構成を適宜変更することで、被加熱流体の加熱量をコントロールして、得られる加熱流体(温水、飽和蒸気、過熱蒸気)の量・温度・圧力等の調整がより容易となる。
【0055】
また、上述した実施例(図1図4及び図6等)の流体加熱装置では、セラミックヒータは外周面にフランジ部が形成される構成について説明したが、セラミックヒータの形状はこれに限定されず、例えば、フランジ部の代わりにねじ山やねじ溝が設けられてもよく、また、ケース部材の開口縁部にフランジ部が形成されてもよい。
【0056】
また、上述した実施例(図4及び図6等)の流体加熱装置では、セラミックヒータの外側位置に最外側セメント硬化体が形成される構成について説明したが、例えば、流体加熱装置をケース部材に収容したり断熱部材にて覆うようにしたりして、最外側セメント硬化体が外部に露出しないように構成してもよい。
【0057】
また、上述した実施例(図4及び図6等)の流体加熱装置では、直状流路体及び螺旋流路体が接続管体110・210にて連結される構成について説明したが、例えば、螺旋流路体にて高温の流体(過熱蒸気)が得られる場合には、接続管体が分岐されて直状流路体を介さずに螺旋流路体から流体を直接取り出すことができるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 流体加熱装置
2 セラミックヒータ
2a 中空部
3 直状流路体
4 ケース部材
5 内側セメント硬化体
6 外側セメント硬化体
7 縁端セメント硬化体
8 縁端セメント硬化体
20 フランジ部
30 流体給入口
31 流体排出口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8