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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】自律制御型草刈機
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/64 20060101AFI20230317BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
A01D34/64 M
A01B69/00 303N
A01B69/00 303F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019147291
(22)【出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2021027806
(43)【公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 正寛
(72)【発明者】
【氏名】千葉 充
(72)【発明者】
【氏名】花房 実美
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-079023(JP,A)
【文献】特開平04-259013(JP,A)
【文献】特開昭62-265906(JP,A)
【文献】特開平05-346817(JP,A)
【文献】特開平06-319305(JP,A)
【文献】特開2015-168395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 -34/01
34/412 -34/90
42/00 -42/08
43/06 -43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に、旋回する刈刃と、この刈刃より前に配置される前輪と、前記刈刃より後に配置される後輪と、作業エリアを囲うエリアワイヤを検出するワイヤセンサと、前記後輪を回転制御すると共に前記前輪を操舵制御する制御部とを備え、自律走向する自律制御型草刈機において、
この自律制御型草刈機は、無線遠隔操縦を行う無線操縦機を別に備え、
この無線操縦機は、左旋回と右旋回の一方のみからなる旋回情報を発するものであり、
前記制御部は、機体が直進中であるときに、前記旋回情報に基づいて前記操舵制御を実施することを特徴とする自律制御型草刈機。
【請求項2】
機体に、旋回する刈刃と、この刈刃より前に配置される前輪と、前記刈刃より後に配置される後輪と、作業エリアを囲うエリアワイヤを検出するワイヤセンサと、前記後輪を回転制御すると共に前記前輪を操舵制御する制御部とを備え、自律走向する自律制御型草刈機において、
この自律制御型草刈機は、無線遠隔操縦を行う無線操縦機を別に備え、
この無線操縦機は、左旋回と右旋回の一方のみからなる旋回情報又は前記後輪を後進回転させる後進回転情報を発するものであり、
前記制御部は、機体が直進中であるときに、前記旋回情報に基づいて前記操舵制御を実施する、又は前記後進回転情報に基づいて前記回転制御を実施することを特徴とする自律制御型草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人で草刈り作業を行う自律制御型草刈機に関する。なお、本書において「前進」とは、前へ真っ直ぐ進むことを言い、「後進」とは、後ろへ真っ直ぐ進むことを言う。
【背景技術】
【0002】
従来、芝刈りを含む草刈り作業は、有人草刈機で実施されてきた。人件費の高騰もあり、作業の無人化が求められ、草刈機が自律的に走向しつつ草刈りを行う自律制御型草刈機が各種提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、自律制御型草刈機では、ある確率で、刈り残しが発生する。
自律制御に過負荷対策制御が含まれている場合、草が他の部位より著しく密集していると、この密集部位を過負荷部位をみなして、草刈機が自動的に後退する。結果、密集部位は刈られないまま何時までも残る。
【0004】
そのため、刈り残し部位を自律制御とは別の手法で刈ることが求められる。そこで、自律制御とは別の手法で刈ることができる農作業機が、各種提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に開示される農作業機は、作業員が搭乗した状態で作業を行う有人自律走行モードと、作業者が搭乗しない状態で作業を行う無人自律走行モードとが、選択できる。
無人自律走行モードで、刈り残しが発生したときには、この刈り残し部位を有人自律走行モードで刈ることができる。
【0005】
特許文献2の技術を、特許文献1に適用することを検討する。
特許文献1の自律制御型草刈機は、無人自律走行モード相当で運転されるため、これに有人自律走行モード相当を追加することになる。自律制御型草刈機は小型で搭乗することはできない。そこで、有人自律走行モードは、作業員による無線遠隔操縦が好適となる。
無線遠隔操縦により、刈り残し部位を刈ることができる。
【0006】
無線遠隔操縦は、作業員が携帯する無線操縦機(リモートコントローラ、ラジオコントローラ)で実施され、この無線操縦機で前進、後進、左旋回、右旋回などの制御が行われる。
作業員は、草刈機の挙動を常に監視しつつ、前進、後進、左旋回、右旋回などの制御を行う。
作業を無人で行うことを目的に、自律制御型草刈機を導入したのであって、有人自律走行モード時に作業員の手を煩わせることは、望ましいことではない。
対策として、作業員による無線遠隔操縦が割り込める自律制御型草刈機において、無線遠隔操縦時に作業員の負担を軽減することができる技術が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/051662号パンフレット
【文献】特開2018-161085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、作業員による無線遠隔操縦が割り込める自律制御型草刈機において、無線遠隔操縦時に作業員の負担を軽減することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、機体に、旋回する刈刃と、この刈刃より前に配置される前輪と、前記刈刃より後に配置される後輪と、作業エリアを囲うエリアワイヤを検出するワイヤセンサと、前記後輪を回転制御すると共に前記前輪を操舵制御する制御部とを備え、自律走向する自律制御型草刈機において、
この自律制御型草刈機は、無線遠隔操縦を行う無線操縦機を別に備え、
この無線操縦機は、左旋回と右旋回の一方のみからなる旋回情報を発するものであり、
前記制御部は、機体が直進中であるときに、前記旋回情報に基づいて前記操舵制御を実施することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、機体に、旋回する刈刃と、この刈刃より前に配置される前輪と、前記刈刃より後に配置される後輪と、作業エリアを囲うエリアワイヤを検出するワイヤセンサと、前記後輪を回転制御すると共に前記前輪を操舵制御する制御部とを備え、自律走向する自律制御型草刈機において、
この自律制御型草刈機は、無線遠隔操縦を行う無線操縦機を別に備え、
この無線操縦機は、左旋回と右旋回の一方のみからなる旋回情報又は前記後輪を後進回転させる後進回転情報を発するものであり、
前記制御部は、機体が直進中であるときに、前記旋回情報に基づいて前記操舵制御を実施する、又は前記後進回転情報に基づいて前記回転制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明では、「直進中」の場合にのみ、無線遠隔操縦を有効とし、左旋回又は右旋回を可能とする。この左旋回又は右旋回により、刈り残し部位の刈り取りを行うことができる。無線遠隔操縦が有効なときであっても、旋回制御の他の制御は、自律制御が維持される。
全ての操作を無線遠隔操縦を実施する場合に比較して、本発明では殆どを自律制御に委ね、ごく一部を無線遠隔操縦するため、作業者は楽になる。
【0012】
請求項2に係る発明では、旋回に加えて、後進を無線遠隔操縦で行えるようにした。請求項1の効果に加えて、後進により、予期せぬ障害物などから草刈機を人為的に離すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る自律制御型草刈機の正面図である。
図2】本発明に係る自律制御型草刈機の右側面図である。
図3】本発明に係る自律制御型草刈機の平面視構成図である。
図4】(a)は草刈機の走行方向の種類を説明する図、(b)は前進及び後進を説明する図である。
図5】(a)は草刈機がエリアワイヤに接近するときの図、(b)は遠ざかりときの図である。
図6】無線操縦機の正面図である。
図7】制御部に内蔵するスイッチ部の概念図である。
図8】別の無線操縦機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例
【0015】
図1に示すように、自律制御型草刈機(以下、草刈機という)10は、前輪11と、左後輪12Lと、右後輪12Rを備えている。また、草刈機10は、カバー13の前面中央に横長矩形の開口部14を有している。この開口部14の奥に、V字部品(図3、符号36)が配置される。
図2に示すように、前輪11と、後輪車軸15との間に、カッターハウジング16を有する。
【0016】
図3に示すように、カバー13内に、旋回する刈刃19と、この刈刃19より前に配置される前輪11と、刈刃19より後に配置される後輪12L、12Rとを備える草刈機10において、この草刈機10は、刈刃19より前輪11側に配置される左ワイヤセンサ21L及び右ワイヤセンサ21Rを備えている。
【0017】
刈刃19は刈刃モータ24で駆動される。この刈刃モータ24はバッテリ25から給電されると共にドライバ26を介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。刈刃モータ24が過負荷状態になったときには逆転制御される。
【0018】
前輪11は前輪モータ28で駆動される。この前輪モータ28はバッテリ25から給電されると共にドライバ29を介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。
前輪11は操舵輪であり、操舵モータ31で操舵される。この操舵モータ31は、バッテリ25から給電されると共にドライバ32を介して、制御部27で直進、左操舵、右操舵の制御がなされる。
【0019】
左後輪12Lは左後輪モータ33Lで駆動される。この左後輪モータ33Lはバッテリ25から給電されると共にドライバ34Lを介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。
同様に、右後輪12Rは右後輪モータ33Rで駆動される。この右後輪モータ33Rはバッテリ25から給電されると共にドライバ34Rを介して、制御部27で回転速度及び正転、停止、逆転が制御される。
【0020】
ところで、従来の多くの草刈機は、コスト低減の点から、前輪駆動車又は後輪駆動車である。何らかの理由(例えば、刈刃を囲うカッターハウジングが瘤に乗り上げるなど)で、駆動輪が地面から浮き上がると、走行不能となる。この場合、管理者が草刈機まで走っていって、瘤から草刈機を離脱させる。
【0021】
対して、図3に示す本発明の草刈機10は、全輪駆動車であるため、前輪11が地面に接していれば、後輪12L、12Rが浮いたとしても、自力での離脱が可能となり、走行が継続される。結果、管理者の負担が大幅に軽減される。
【0022】
また、本発明の草刈機10では、前輪11は、左右2輪であってもよいが、実施例では、1輪とした。1輪であれば、前輪モータ28、ドライバ29、操舵モータ31及びドライバ32の数が半分になり、コストダウンが図れる。
【0023】
作図の都合で、カバー13の外に示したバッテリ25及び制御部27は、カバー13内に配置される。
カバー13の前部に、V字部品36が収納され、このV字部品36に充電端子37が設けられている。充電端子37を介して、外部からバッテリ25へ充電される。
【0024】
また、制御部27は、左ワイヤセンサ21Lと右ワイヤセンサ21Rから、エリアワイヤ(図4(b)、符号38)の検知信号を受ける。
また、制御部27は、無線操縦機40の送信信号を受信するアンテナ39を備えている。アンテナ39は制御部27に内蔵することは差し支えない。
【0025】
以上の述べた草刈機10において、無線遠隔操縦を行わないで実施する自律制御運転を、図4図5に基づいて説明する。
図4(a)に示すように、草刈機10は、矢印(1)のように前進し、矢印(2)のように左旋回し、矢印(3)のように右旋回し、矢印(4)のように後進する。
図4(b)に示すように、矢印(1)のように前進する草刈機10が、エリアワイヤ38に接近し、このエリアワイヤ38が発する電磁気を、左ワイヤセンサ21Lと右ワイヤセンサ21Rの両方が検知したときには、制御部(図3、符号27)は、矢印(4)のように草刈機10を後進させる。一定距離又は一定時間後進させた後は、通常運転に切り替える。
【0026】
図5(a)に示すように、左ワイヤセンサ21Lだけがエリアワイヤ38を検知したら、図5(b)に示すように、制御部(図3、符号27)は、矢印(3)のように草刈機10を右旋回させる。一定距離又は一定時間旋回させた後は、通常運転に切り替える。
【0027】
図面は省略するが、右ワイヤセンサ21Rだけがエリアワイヤ38を検知したときには、草刈機10を左旋回させ、一定距離又は一定時間旋回させた後は、通常運転に切り替える。
【0028】
次に、無線操縦機(図3、符号40)を用いて実施する無線遠隔操縦について、説明する。
図6に示すように、無線操縦機40は、左ボタン部41と、右ボタン部42と、表示部43とを有する。左ボタン部41と、右ボタン部42と、表示部43は、タッチパネルに配置してもよい。無線操縦機40は、ラジオコントローラなどの専用機の他、携帯端末であってもよく、形態、形式は問わない。携帯端末は、専用のアプリケーションソフトをインストールするだけで、無線操縦機40として使えるため、便利である。
【0029】
表示部43には、「操作できます。」と「操作できません。」の何れかが表示される。詳しくは、後述する表1で説明するが、本発明では、草刈機10が、直進中であるときに、「操作できます。」が表示され、その他の場合は「操作できません。」が表示される。
【0030】
作業員が、左ボタン部41をなぞる(又は押す)と、無線遠隔操縦の一環として、草刈機10を左旋回させることができる。
作業員が、右ボタン部42をなぞる(又は押す)と、無線遠隔操縦の一環として、草刈機10を右旋回させることができる。
指を離すと、注意文章部44に示されるように、左と右が無効になる。すなわち、中立になり、草刈機10は直進に戻る。
【0031】
図7に示すように、制御部27に、スイッチ部27aが内蔵されている。スイッチ部27aは、(自律制御)に係るA接点と、(無線遠隔制御)に係るB接点を有する。
多くの場合は、A接点が選択され、制御部27は、ドライバ32を介して操舵モータ31を(自律制御)に基づいて操舵制御する。
【0032】
(1)前進中であることと、(2)無線受信中であることの2条件が満たされとときに、B接点が選択され、制御部27は、ドライバ32を介して操舵モータ31を(無線遠隔制御)に基づいて操舵制御する。
なお、図7は理解を促すための単なる例示であって、スイッチ部27aは、回路基板の回路に組み込まれることや、プログラムで構成することは差し支えない。
【0033】
また、「前進」は、制御部27内で、前進命令が生成され、この前進命令がドライバに送られるときに、前進命令を認識することで「前進」とみなすことができる。よって、「前進」は、草刈機10が現実に直進前進することに限定されない。
【0034】
【表1】
【0035】
ケース(1):
自律制御での走行状態が「前進」であるときに、表示部に「操作できます。」が表示され、無線遠隔制御により左又は右旋回のみが可能となり、制御部は左又は右旋回を実施する。その他(速度制御、負荷対応制御、エリアワイヤから出ないようにする制御、バッテリの残量監視など)は自律制御される。
ケース(1)にあっても、大部分の制御は自律制御が維持されるため、作業員は、左又は右旋回だけに注意すればよい。結果、作業員の役割が軽微となる。
【0036】
ケース(2)~(4):
自律制御での走行状態が後進、左旋回又は右旋回であるときに、表示部に「操作できません。」が表示され、無線遠隔制御は不可(受け付けない又は無視される。)となる。制御部は自律制御を続ける。
【0037】
本発明に係る変更例を、図8及び表2に基づいて説明する。
図8に示すように、無線操縦機40に、後ボタン部45を追加してもよい。その他は、図6の符号を流用し、説明は省略する。
【0038】
【表2】
【0039】
ケース(5):
自律制御での走行状態が「前進」であるときに、表示部に「操作できます。」が表示され、無線遠隔制御により左旋回、右旋回又は後進が可能となり、制御部は左旋回、右旋回又は後進を実施する。その他(速度制御、負荷対応制御、エリアワイヤから出ないようにする制御、バッテリの残量監視など)は自律制御される。
ケース(5)にあっても、大部分の制御は自律制御が維持されるため、作業員は、左又は右旋回だけに注力すればよい。結果、作業員の役割が軽微となる。
【0040】
ケース(6)~(8):
自律制御での走行状態が後進、左旋回又は右旋回であるときに、表示部に「操作できません。」が表示され、無線遠隔制御は不可(受け付けない又は無視される。)となる。制御部は自律制御を続ける。
【0041】
尚、本発明の草刈機は、芝刈機に適用することは差し支えない。
また、実施例では、前輪11に、前輪モータ28を備えたが、前輪モータ28を省いて前輪11は従動輪としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、無人で草刈り作業を行う自律制御型草刈機に好適である。
【符号の説明】
【0043】
10…自律制御型草刈機(草刈機)、11…前輪、12L…左後輪、12R…右後輪、18…機体、19…刈刃、21L…左ワイヤセンサ、21R…右ワイヤセンサ、27…制御部、38…エリアワイヤ、40…無線操縦機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8