(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】シート型マッサージ機
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
A61H7/00 323M
(21)【出願番号】P 2020000246
(22)【出願日】2020-01-06
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】592009214
【氏名又は名称】大東電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田口 耕治
(72)【発明者】
【氏名】沼田 康一
(72)【発明者】
【氏名】清水 新策
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064807(JP,A)
【文献】特開2007-330698(JP,A)
【文献】特開昭53-010583(JP,A)
【文献】特開平08-066448(JP,A)
【文献】特開2003-190243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が接するマッサージ部と、前記マッサージ部内に収納され且つ使用者の施療部を施療可能とするマッサージ機構と、を有するシート型マッサージ機であって、
前記マッサージ機構を施療部から隔離することで、使用者がマッサージ機構の存在を感じることなく、前記マッサージ部に接することを許容する許容モードと、
前記マッサージ機構を施療部に近接可能とすることで、使用者の施療部をマッサージ機構でマッサージすることを許容するマッサージモードと、
を切替可能に有して
おり、
前記マッサージ部が座部とされ、前記マッサージ機構は、前記使用者の臀部の施療部をマッサージする座部マッサージ機構を有しており、
前記座部の表面には、前記臀部の施療部を下方より支持する座部クッションマットが設けられており、前記許容モードの場合には、前記座部マッサージ機構を座部クッションマットの内側に収容することで、前記座部マッサージ機構の存在を感じることなく前記座部に着座することが許容され、前記マッサージモードの場合には、前記座部マッサージ機構を座部クッションマットよりも上方に進出させて施療部のマッサージを行うことが許容される構成とされていて、
前記座部マッサージ機構は、前後方向に長尺に形成されるとともに、一端に対して他端が上下方向に揺動自在となるように支持されたマッサージアームと、前記マッサージアームの他端に設けられて、前記臀部の施療部をマッサージ可能とされた施療子と、前記マッサージアームの長手方向の中途側に、一端が左右方向を向く連結軸回りに揺動自在に連結されたリンクアームと、前記マッサージアームの一端側を、左右方向を向く軸心に対して偏心回転させる偏心カムと、前記偏心カムを前記軸心周りに回転させる回転モータと、を有し、
前記リンクアームの一端の連結軸が、前記偏心カムの軸心の上方から下方に亘る範囲で移動可能となるように、前記マッサージアームに枢支されている
ことを特徴とするシート型マッサージ機。
【請求項2】
前記マッサージ部が座部とされており、前記許容モードが座椅子モードとなることを特徴とする請求項1に記載のシート型マッサージ機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート型として使用できると共に、床や椅子などの上に載置された状態で着座した使用者に対してマッサージを行うことのできるシート型マッサージ機に関するものである。
より詳しくは、本発明は、既存の椅子や床の上に載置して座椅子の形態として使用する座椅子モードと、既存の椅子や床の上に載置した状態のまま乃至は床上に引き広げて(シート状として)マッサージ機として使用するマッサージモードとを切り替え自在に有するシート型マッサージ機に関するものである。
【0002】
また、座布団の形状を呈した単独タイプのシート型マッサージ機に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、椅子などの上に載置された状態で、着座した使用者の施療部をマッサージするマッサージ機として、特許文献1のようなものが知られている。
特許文献1のマッサージ機は、背もたれ部と座部とが一体化したようなバケットシート型に形成されており、背もたれ部の上端から座部の前端までの広い範囲に亘って設けられるラック部に沿ってマッサージ機構を案内することにより、肩から上肢までの広い範囲に対する施療を可能とするものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のマッサージ機は、既存の椅子などの背もたれ部に立て掛けてマッサージする場合、背もたれ部の前面より、アーム部材や施療子などといったマッサージ機構の一部を前方に向かって突出させて背部などの施療部をマッサージ可能となっている。ここで、上述したシート型のマッサージ機の場合は、マッサージ機構を収容するスペースがあまりない(厚みがなく、比較的薄型である)ことが多いので、マッサージを行うときと同様にマッサージを行わない時も、これらのアーム部材や施療子などのマッサージ機構は、前方に突出したままの状態となっている場合が多い。
【0006】
しかし、上述したシート型のマッサージ機に対しては、マッサージを行っていない場合に、単に座椅子として使用し、着座してくつろぎたいといった要望が寄せられる場合がある。このような場合に、施療子が前方に突出したままの特許文献1のマッサージ機では、施療子やアーム部材などのマッサージ機構が、着座した使用者の背中や臀部などに当たり、異物感や不快感を与える可能性があり、使用者がくつろぎを感じるのを邪魔する可能性があった。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、座椅子のように単に着座するだけの用途で使用する際に、マッサージ機構を使用者から隔離することで、マッサージ機構に触れることで使用者が感じる異物感や不快感を可能な限り低減させることができるシート型マッサージ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のシート型マッサージ機は以下の技術的手段を講じている。
即ち、本発明のシート型マッサージ機は、使用者が接するマッサージ部と、前記マッサージ部内に収納され且つ使用者の施療部を施療可能とするマッサージ機構と、を有するシート型マッサージ機であって、前記マッサージ機構を施療部から隔離することで、使用者がマッサージ機構の存在を感じることなく、前記マッサージ部に接することを許容する許容モードと、前記マッサージ機構を施療部に近接可能とすることで、使用者の施療部をマッサージ機構でマッサージすることを許容するマッサージモードと、を切替可能に有しており、前記マッサージ部が座部とされ、前記マッサージ機構は、前記使用者の臀部の施療部をマッサージする座部マッサージ機構を有しており、前記座部の表面には、前記臀部の施療部を下方より支持する座部クッションマットが設けられており、前記許容モードの場合には、前記座部マッサージ機構を座部クッションマットの内側に収容することで、前記座部マッサージ機構の存在を感じることなく前記座部に着座することが許容され、前記マッサージモードの場合には、前記座部マッサージ機構を座部クッションマットよりも上方に進出させて施療部のマッサージを行うことが許容される構成とされていて、前記座部マッサージ機構は、前後方向に長尺に形成されるとともに、一端に対して他端が上下方向に揺動自在となるように支持されたマッサージアームと、前記マッサージアームの他端に設けられて、前記臀部の施療部をマッサージ可能とされた施療子と、前記マッサージアームの長手方向の中途側に、一端が左右方向を向く連結軸回りに揺動自在に連結されたリンクアームと、前記マッサージアームの一端側を、左右方向を向く軸心に対して偏心回転させる偏心カムと、前記偏心カムを前記軸心周りに回転させる回転モータと、を有し、前記リンクアームの一端の連結軸が、前記偏心カムの軸心の上方から下方に亘る範囲で移動可能となるように、前記マッサージアームに枢支されていることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記マッサージ部が座部とされており、前記許容モードが座椅子モードとなるとよい。
【0010】
好ましくは、前記マッサージ機構は、前記使用者の背部の施療部をマッサージする背部マッサージ機構を有しており、前記背もたれ部の上端には、前記背もたれ部の表面を被覆可能な背部クッションマットが、前記背もたれ部に対して前後に折り返し自在に設けられており、前記座椅子モードの場合には、前記背もたれ部の前側に折り返された背部クッションマットで背部マッサージ機構を被覆することで、前記背部マッサージ機構の存在を感じることなく前記背もたれ部に凭れ掛かることが許容され、前記マッサージモードの場合には、前記背もたれ部の後側に背部クッションマットを折り返すことで、前記背部マッサージ機構により背部の施療部をマッサージすることが許容されるマッサージモードとなるように構成されているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のシート型マッサージ機によれば、座椅子のように単に着座するだけの用途で使用する際に、マッサージ機構を使用者から隔離することで、マッサージ機構に触れることで使用者が感じる異物感や不快感を可能な限り低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】水平展開した状態の第1実施形態のマッサージ機を示した斜視図である。
【
図2】床面に水平展開された第1実施形態のマッサージ機を用いてマッサージを行う使用態様を示した図である。
【
図3】椅子上に載置された第1実施形態のマッサージ機を用いてマッサージを行う使用態様を示した図である。。
【
図4】第1実施形態のマッサージ機の背もたれ部を示した分解図である。
【
図5】第1実施形態のマッサージ機の座部を示した分解図である。
【
図6】マッサージモードとなっている座部に設けられたマッサージ機構の斜視図である。
【
図7】座椅子モードとなっている座部に設けられたマッサージ機構の斜視図である。
【
図8】マッサージモードとなっているマッサージ機構を拡大して示した斜視図である。
【
図9】座椅子モードとなっているマッサージ機構を拡大して示した斜視図である。
【
図10】マッサージ機構の上下方向のサイズを座椅子モードとマッサージモードとで比較して示した図である。
【
図11】座椅子モードとなっている第2実施形態のマッサージ機の背もたれ部を側面から見た図である。
【
図12】座部のみでマッサージ機を構成している実施例(座布団タイプ)を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明のマッサージ機1の実施形態を、図面に基づき詳しく説明する。
図1は、本実施形態のマッサージ機1を模式的に示したものであり、座部2の部分に特徴がある。
図1に示すように、本実施形態のマッサージ機1は、略正方形のやや厚肉の板状に形成された3つの部材に分かれて構成されており、これら3つの部材を直線上に隣り合って並んで備えている。これら3つの部材は、隣り合った部材同士が折り返し自在となるように連結されている。つまり、本実施形態のマッサージ機1は、3つの部材の折り返し状態によって、姿勢がさまざまに変化し、多様なマッサージ姿勢を採ることができる。
【0016】
例えば、
図1のように紙面の手前から奥に向かって直線上に部材を並べる場合に、紙面の手前に位置する部材を第1マッサージ体2a、中央に位置する部材を第2マッサージ体3a、最も紙面の奥に位置する部材をクッションマット4aと呼称する。この場合、まず
図1や
図2に示すように第1マッサージ体2a、第2マッサージ体3a、及びクッションマット4aが直線上に並ぶマッサージ姿勢(以降、このマッサージ姿勢を水平姿勢という)を、本発明のマッサージ機1は採用することができる。この水平姿勢では、第1マッサージ体2a、第2マッサージ体3a、及びクッションマット4aは床面などの水平面に一列に並んでいる。つまり、水平姿勢では、頭部をクッションマット4aに載せて寝そべった使用者Uに対して、使用者Uの太ももや臀部の施療部を第1マッサージ体2aで、また腰部や背部の施療部を第2マッサージ体3aで施療することができる。
【0017】
一方、
図3に示すように水平方向に沿った第1マッサージ体2aに対して、第2マッサージ体3a及びクッションマット4aが上下方向に沿うように起立させるマッサージ姿勢(以降、このマッサージ姿勢を起立姿勢という)を、本発明のマッサージ機1は採用することもできる。この起立姿勢では、第1マッサージ体2aは水平方向に沿って配備され、第2マッサージ体3aは上下方向あるいは水平方向に対して傾斜した方向に沿って配備される。つまり、起立姿勢では、椅子などに着座した使用者Uに対して、着座した使用者Uの太ももや臀部の施療部を第1マッサージ体2aで、また腰部や背部の施療部を第2マッサージ体3aで施療することができる。
【0018】
上述した例に代表されるように、本発明のマッサージ機1は複数のマッサージ姿勢を採り得るものとなっている。しかし、本実施形態のマッサージ機1は、起立姿勢において、マッサージ機構が使用者Uに当たり、異物感や不快感を与えることを抑制可能なものであるので、以降の説明では、起立姿勢の例を挙げて本発明のマッサージ機1の構成を説明する。
【0019】
つまり、以降の説明においては、起立姿勢が基準となるため、第1マッサージ体2aを座部2、第2マッサージ体3aを背もたれ部3、クッションマット4aを背部クッションマット4といい、第1マッサージ体2aに設けられたマッサージ機構を座部マッサージ機構5、第2マッサージ体3aに設けられたマッサージ機構を背部マッサージ機構6という。
【0020】
なお、以降の説明では、
図3に示すように起立姿勢のマッサージ機1に着座した使用者Uから見た方向を、マッサージ機1を説明する場合の前後方向、左右方向、及び上下方向という。なお、これらの方向については、適宜図中に記載している。
図4に示すように、背もたれ部3(第2マッサージ体3a)は、金属製のパンチングメ
タル板などを用いて四角い枠状に形成された背部フレーム7を有している。この背部フレーム7は、中央側から離れるにつれて薄肉となるように外周側が傾斜状に形成されており、中央側が最も肉厚に形成されている。そして、この厚肉とされた背部フレーム7の中央側に後方に向かって凹んだ凹部8が形成されている。この凹部8は、前方に向かって正方形の開口形状で開口しており、背部マッサージ機構6を収容可能となっている。
【0021】
背部マッサージ機構6は、起立姿勢の場合に、マッサージ機1に着座した使用者Uの腰部や背部の施療部を背部施療子9でマッサージする機構である。
具体的には、背部マッサージ機構6は、施療部を施療する背部施療子9と、この背部施療子9を上端と下端との双方に備え、かつ上下方向の中途側が後方に向かって膨らむように弓状に湾曲した長尺の背部マッサージアーム10と、を有している。
【0022】
上述した背部マッサージアーム10は背部マッサージ機構6の左右両側にそれぞれ設けられており、左右に一対で配備されている。また、背部施療子9は、1本の背部マッサージアーム10に2個、マッサージ機1全部で4個設けられている。そして、背部マッサージ機構6では、背部駆動部11で発生した回転駆動力を背部動力変換機構12で変換して、それぞれの背部マッサージアーム10を左右方向に近接離反させることで、腰部または背部の施療部に対してマッサージが行われる。
【0023】
具体的には、上述した背部マッサージ機構6は、左右方向に軸心を向けた背側回転軸13を有しており、この背側回転軸13を背部駆動モータ14が回転駆動している。また、背部駆動モータ14の回転駆動力はウォームギヤを介して背側回転軸13に伝達されている。この背側回転軸13には、背側回転軸13の回転方向の動きを、軸心に沿った方向に背部マッサージアーム10を揺動させる動きに変換する背部動力変換機構12が設けられている。
【0024】
この背部動力変換機構12は、背側回転軸13に一体回動するように設けられた背側ボス部材15と、背側ボス部材15に外嵌する背側環状嵌合部16と、で構成されている。背側ボス部材15の外周面には、背側回転軸13の軸心に対して傾斜した方向を向く軸回りを周回する背側カム面17が形成されている。また、背側環状嵌合部16は、背部マッサージアーム10の長手方向の中途側に形成されると共に、左右方向に沿って背部マッサージアーム10を貫通する円筒形状の孔部である。そして、この背側環状嵌合部16は、後述する背側カム面17にベアリングなどを介して回動可能に外嵌されている。
【0025】
なお、この背部動力変換機構12は、背側回転軸13の左側と右側とにそれぞれ設けられている。そして、左側と右側との背部動力変換機構12では、背側回転軸13の軸心に対する背側カム面17の傾斜方向を左右で反対方向とすることで動力の変換方向を逆方向としている。つまり、左側の背部動力変換機構12で動力変換することにより左側の背部マッサージアーム10が左側に揺動する場合には、右側の背部動力変換機構12で動力変換された右側の背部マッサージアーム10は右側に揺動する。また、左側の背部動力変換機構12で動力変換することにより左側の背部マッサージアーム10が右側に揺動する場合には、右側の背部動力変換機構12で動力変換された右側の背部マッサージアーム10は左側に揺動する。
【0026】
それゆえ、上述した本実施形態の背部マッサージ機構6では、背部駆動モータ14で発生した回転駆動力を伝達することで背側回転軸13が左右方向を向く軸回りに回転し、背側回転軸13の回転方向の動きを背部動力変換機構12で変換して、左右一対の背部マッサージアーム10が互いに近接離反を繰り返すように揺動する。その結果、左右の背部施療子9の間に背側の施療部を挟み込むようにして揉みマッサージを行うことが可能となる。
【0027】
上述した背部フレーム7は、U字状に屈曲した背部支持枠18で支持されている。この背部支持枠18は、金属製のパイプ材で形成されておリ、背部フレーム7を介して加わる使用者Uの上半身の体重を支持できるようになっている。具体的には、背部支持枠18は、背部フレーム7の左側下縁から背部フレーム7の内部を貫通しつつ上方に進み、上端近傍の背部フレーム7の内部で右方向に屈曲し、次に右端近傍の背部フレーム7内部で下方向に屈曲し、背部フレーム7の右側下縁から外側に抜け出るような逆U字状の軌跡に沿って配備されている。このように背部支持枠18を背部フレーム7の内部に貫通状に張り巡らせることで、背部支持枠18を目立たせることなく背部フレーム7を強固に支持することが可能となる。
【0028】
図5に示すように、座部2(第1マッサージ体2a)は、上方から見た場合に略正方形となるような厚肉の板状に形成されている。座部2は、上下方向に組み合わされた座部クッションマット19、座部マッサージ機構5、及び座部支持枠20の3部材で構成されている。
座部2を構成する3部材の中で最も上側に位置する座部クッションマット19は、発泡ウレタンなどを用いて厚肉の正方形の板状に形成されている。この座部クッションマット19の中央側には、座部クッションマット19を上下に貫通する貫通孔21が形成されている。このような貫通孔21を座部クッションマット19に設けることで、座部クッションマット19を貫通して座部マッサージ機構5の座部施療子22を上下方向に案内することができ、臀部などの施療部を施療することが可能となる。また、座部クッションマット19の下側には、上方に向かって抉れた空洞が形成されており、この空洞に座部マッサージ機構5が収容可能となっている。
【0029】
また、座部2を構成する3部材の中で最も下側に位置する座部支持枠20は、上述した背部支持枠18と同様にU字状に屈曲した座部支持枠20が設けられている。この座部支持枠20も、金属製のパイプ材などで形成されておリ、座部2にかかる使用者Uの上半身の体重を支持できるようになっている。また、座部支持枠20と背部支持枠18との間には、座部支持枠20と背部支持枠18とを左右方向を向く軸回りに揺動自在に連結する連結部23が設けられている。
【0030】
上述した座部クッションマット19は、合成樹脂の材料を用いて形成されたベース部材と、ベース部材の表面を被覆する発泡ウレタンなどの表面部材25との2層構造となっている。具体的には、ベース部材は、座部2に加わる使用者Uの体重を支持できるように、ABS樹脂やPET樹脂などの硬質の樹脂を用いて形成されており、また少量の樹脂で高い強度が得られるように裏側に補強リブが縦横に設けられる薄板構造(リブ補強構造)を有している。また、表面部材25は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料、あるいは発泡ウレタンなどの耐衝撃性に優れる材料で形成されており、ベース部材の表面(上面)を被覆することで座部クッションマット19の衝撃吸収性を向上できるようになっている。
【0031】
座部クッションマット19の下部には、上述した座部支持枠20を座部クッションマット19の下面に埋設された状態で案内可能な枠収容部が形成されている。詳しく説明すれば、座部クッションマット19の後端には、左右に一箇所ずつ、座部支持枠20の挿通を許容する切り欠き27が形成されている。これらの切り欠き27は、座部支持枠20の外径よりもやや大きな寸法に形成されており、座部支持枠20を前後方向に貫通状に挿通可能となっている。これら2箇所の切り欠き27の間には、座部支持枠20を収容可能な枠収容部が形成されている。つまり、この枠収容部は、ベース部材の左側の切り欠き27から前方に向かって真っすぐ伸び、座部クッションマット19の前端の少し手前で右側に直交状に曲がり、座部クッションマット19の右端の少し手前で後側に向かって直交状に曲がり、ベース部材の右側の切り欠き27に達する経路に沿って、補強リブの下面に上方に向かって凹んだ溝状に形成されている。このような枠収容部を形成すればU字状に屈曲した座部支持枠20を座部2の下側に埋設状に取り付けることが可能となり、座部支持枠20を座部クッションマット19の下面から下方に飛び出ないように収容可能となり、ベース部材を座部支持枠20に確実かつ強固に固定することが可能となる。
【0032】
座部クッションマット19の上面の中央側には、座部クッションマット19を上下に貫通する貫通孔21が形成されている。この貫通孔21は、前後方向に比べて左右方向に幅広となるような長方形に開口しており、左右一対の座部施療子22の上下移動を許容する開口幅に形成されている。
座部支持枠20は、上述した背部支持枠18とほぼ同径の金属製のパイプ材などを用いて略U字状に形成されておリ、座部2にかかる使用者Uの上半身の体重を支持できるようになっている。また、座部支持枠20は、座部支持枠20に対して、連結部23を介して
連結されている。
【0033】
連結部23材は、座部支持枠20の後端と、背部支持枠18の前端とを連結する部材である。連結部23材は、左右方向を向く軸回りに揺動自在に両パイプを連結可能とされており、またラチェット機構を採用することで揺動角度を複数の設定のいずれかに調整できるようになっている。
例えば、座部支持枠20に対して座部支持枠20の角度が約150°~180°となるように連結部23材を調整すれば、仰臥姿勢やリクライニング姿勢を採る使用者Uに対応することができる。また、座部支持枠20に対して座部支持枠20の角度が約90°となるように連結部23材を調整すれば、着座姿勢を採る使用者Uに対応することができる。
【0034】
上述した略U字状に形成された座部支持枠20の内側には、座部マッサージ機構5が座部支持枠20に取り囲まれるように配備されている。
座部2を構成する3部材の中で中央に配備されている座部マッサージ機構5は、座部施療子22を用いて座部2に着座した使用者Uの臀部や太腿などの施療部を施療可能となっている。次に、座部マッサージ機構5を構成する座部マッサージアーム30、座部施療子22、座部駆動部28、及び座部動力変換機構29について説明する。
【0035】
図6及び
図7に示すように、座部マッサージ機構5は、前後方向に比べて左右方向に幅広の角箱状のケーシング31を有している。そして、座部マッサージ機構5は、ケーシング31の内部に、前後方向に長尺な座部マッサージアーム30と、この座部マッサージアーム30の長手方向の後端に取り付けられた座部施療子22とを、有している。また、座部マッサージアーム30の長手方向の前端側は、後端よりも上下方向に広幅に厚肉に形成されており、この厚肉の座部マッサージアーム30の前端に短尺円筒状の座部環状嵌合部32が形成されている。
【0036】
上述した座部マッサージアーム30は座部マッサージ機構5の左右両側にそれぞれ設けられており、左右に一対とされている。それぞれの座部マッサージアーム30は、長尺に形成されており、
図7の場合であれば前後方向に沿うように配備されていて、長手方向の前端側で座部マッサージ機構5に連結されている。座部マッサージアーム30における長手方向の後端には、臀部や太腿などの施療部を施療する座部施療子22が設けられている。
【0037】
座部施療子22は、座部マッサージアーム30の後端に配備されており、左右の座部マッサージアーム30にそれぞれ1個ずつ、全部で2個設けられている。それぞれの座部施療子22は、真球を左右方向に潰したような惰球状の部材であり、左右方向を向く軸回りに回転自在となるように座部マッサージアーム30の後端に取り付けられている。
上述した座部マッサージ機構5は、臀部や太腿などの施療部に対してマッサージを行うための回転駆動力を発生させる座部駆動モータ33を有している。
【0038】
この座部駆動モータ33は、左右方向を向く軸心回りに回転する回転駆動力を発生している。座部駆動モータ33で発生した回転駆動力は、ウォームギヤを介して減速された状態で座側回転軸34に伝達し、座側回転軸34が左右方向を向く軸心回りに回転する。
座側回転軸34は、左右方向に軸心を向けた長尺状の部材である。座側回転軸34の長手方向の中途側(右端寄りの中途側)には、座側回転軸34の後方に配備された座部駆動モータ33から、ウォームギヤを介して回転駆動力が入力されている。この座側回転軸34には、座部駆動モータ33で発生した回転駆動力を、座側回転軸34の軸心に沿った方向に座部マッサージアーム30を揺動させる動きに変換する座部動力変換機構29が設けられている。
【0039】
座部動力変換機構29は、座側回転軸34の左端及び右端にそれぞれ取り付けられた円筒状の座側ボス部材35と、座側ボス部材35の外周面に形成された座側カム面に対して回動自在に外嵌する座部環状嵌合部32と、座部マッサージアーム30の長手方向の中途側に連結されたリンク部材37と、を有している。
座側ボス部材35は、左右方向を向く軸心回りに円筒状に形成された部材であり、座側回転軸34に対して偏心状態で取り付けられていて、座側回転軸34の周囲を偏心状態で回転可能となっている。また、円筒状に形成された座側ボス部材35の外周面には、座側
ボス部材35の外周面を周回する座側カム面が形成されている。
【0040】
座部環状嵌合部32は、座側ボス部材35の外径よりも大きな内径を有する円筒状の孔部であり、座部マッサージアーム30の前端側に形成されている。この座部環状嵌合部32は、左右方向に開口しており、座側カム面に対してベアリングなどを介して回動自在に外嵌している。
リンク部材37は、細長い棒状の部材である。リンク部材37の長手方向の一端側は、上述したケーシング31に対して、左右方向を向く軸回りに回動自在に連結されている。また、リンク部材37の長手方向の他端側は、座部マッサージアーム30の長手方向の中途側に対して、左右方向を向く軸回りに回動自在に連結されている。
【0041】
このようなリンク部材37で座部マッサージアーム30の長手方向の中途側を支持すれば、座部マッサージアーム30の他端側が座部2回転軸の軸心回りを偏心回転するため、座部マッサージアーム30の一端側に設けられる座部施療子22が上下に揺動し、座側回転軸34の回転に合わせて座部施療子22が上下に昇降を繰り返すことになる。
上述した背部マッサージ機構6や座部マッサージ機構5を設ければ、背部施療子9を用いて背部や腰部などの施療部をマッサージしたり、座部施療子22を用いて臀部や太腿などの施療部をマッサージしたりすることができる。しかし、背部施療子9や座部施療子22が施療部側に突出したままであれば、着座した場合にこれらの施療部に当たって使用者Uに不快感や異物感を覚える可能性がある。
【0042】
そのため、本発明のマッサージ機1には、マッサージ機構を施療部から隔離するマッサージ機構隔離手段38が設けられている。この「マッサージ機構を施療部から隔離する」とは、何らかの手段でマッサージ機構が施療部に接触しないようにすること、あるいはマッサージ機構の存在を使用者Uに気づかないようにマッサージ機構を施療部から遠ざけることをいう。
【0043】
このようなマッサージ機構隔離手段38を設ければ、2つのモードを行うことが可能となる。
つまり、上述したマッサージ機構隔離手段38を用いてマッサージ機構を施療部から隔離すれば、マッサージ機構の存在を使用者Uが気づかないようになるので、起立姿勢でマッサージを行わずに使用者Uが着座する場合(座椅子のように着座する場合)使用者Uが十分にくつろぐことができる。このくつろぎを使用者Uに与えるマッサージ機1の状態が座椅子モードである。この座椅子モードになったマッサージ機1では、使用者Uがマッサージ機構の存在を感じることなく、マッサージ機構を施療部から隔離して、座部2に着座または背もたれ部3に凭れ掛かることが許容される。
【0044】
その一方で、上述したマッサージ機構隔離手段38を用いずマッサージ機構を施療部から隔離しなければ、背もたれ部3を起立させた起立姿勢でマッサージを行う際に、マッサージ機構を施療部に近接させて、使用者Uの施療部をマッサージ機構でマッサージすることもできる。このマッサージを行うマッサージ機1の状態をマッサージモードという。
つまり、本実施形態のマッサージ機1は、施療部に対して十分なマッサージを可能とするマッサージモードと、マッサージを行わない場合はマッサージすることなく座椅子のように着座してくつろぐことを許容する座椅子モードとの2つのモードを切替可能に有していることを特徴としている。
【0045】
次に、本発明のマッサージ機1の特徴であるマッサージ機構隔離手段38、並びにこのマッサージ機構隔離手段38を有することで採用可能となる座椅子モード及びマッサージモードについて詳しく説明する。
マッサージ機構隔離手段38は、座部マッサージ機構5や背部マッサージ機構6を施療部から隔離するものであり、これらのマッサージ機構を隔離することで、上述した座椅子モードやマッサージモードを実現するものである。具体的には、このようなマッサージ機構隔離手段38には、使用者Uがマッサージ機構の存在を感じなくなる位置までマッサージ機構を使用者Uから引き離すものと、マッサージ機構を別部材で覆って使用者Uがマッサージ機構の存在を感じなくなるようにさせるものとが考えられる。
【0046】
以降では、第1実施形態において「マッサージ機構を使用者Uから引き離すマッサージ
機構隔離手段38」の例を挙げ、第2実施形態において「マッサージ機構を別部材で覆うマッサージ機構隔離手段38」の例を挙げて、本発明のマッサージ機1に設けられるマッサージ機構隔離手段38を説明する。
第1実施形態のマッサージ機構隔離手段38は、上述したマッサージ機構の中でも、座部マッサージ機構5にマッサージ機構隔離手段38を設けたものとなっており、座部マッサージ機構5自体を臀部などの施療部から引き離す構成となっている。
【0047】
具体的な構成の違いとして、第1実施形態の座部マッサージ機構5は、従来のマッサージアームより長尺とされた座部マッサージアーム30を有している。つまり、従来のマッサージアームは、マッサージ機構の中央から前方や後方にアームを伸ばすことが多く、アームの長さはマッサージ機構の長さの半分程度である場合が多い。ところが、本実施形態の座部マッサージアーム30は、座部マッサージ機構5の前端から後端までの範囲に亘るものとなっており、マッサージ機構(座部マッサージ機構5)とほぼ同じ長さを前後方向に備えている。言い換えれば、本実施形態の座部マッサージアーム30は、マッサージ機構の一方の端からもう一方の端までというマッサージアームとして取り得る最も長い長さを備えたものとなっている。
【0048】
加えて、本実施形態の座部マッサージ機構5は、長尺とされた座部マッサージアーム30の他端(後端)を、一端(前端)に対して揺動させる構成となっている。このような長尺の座部マッサージアーム30を端部中心で揺動させれば、座部マッサージアーム30の揺動中心から揺動端までの距離が長くなり、同じ揺動角でも座部マッサージアーム30の端部(本実施形態の場合であれば座部施療子22が設けられた他端)を大きな移動幅で移動させることができる。つまり、本実施形態の座部マッサージ機構5では、座部施療子22を施療部側に対して上下に大きな移動幅(振り幅)で移動させることができるようになる。
【0049】
なお、このような長尺の座部マッサージアーム30を端部中心で揺動させるには大きな駆動力(大きなトルク)が必要となり、駆動モータなどに出力が大きなモータなどを使用することが必要となって、コストを高騰させてしまう可能性がある。
そこで、本実施形態の座部マッサージ機構5では、座部マッサージアーム30の長手方向の中途側を平行リンク機構(リンク部材37)で揺動自在に支持し、座部マッサージアーム30の長手方向の一端を、左右方向を向く軸回りに偏心回動させている。言い換えれば、本実施形態の座部マッサージ機構5は、座側回転軸34に対して偏心状態で取り付けられた座側ボス部材35と、リンク部材37とで構成された平行リンク機構を、座部マッサージアーム30の一端側に採用することで、出力が大きなモータなどを使用することなく(コストの高騰を招聘することなく)、座部施療子22を施療部に対して大きな移動幅で近接乃至は離反させることを可能としたものということもできる。
【0050】
上述した座部マッサージ機構5を採用すれば、座部マッサージアーム30の他端(後端)を、一端(前端)に対して大きな移動幅で揺動させることが可能となる。
ここで、座部マッサージアーム30の移動幅と、座部クッションマット19の厚みとの関係を考える。例えば、移動幅が小さい従来の座部マッサージアームでは、座部クッションマットに肉厚なものを用いた場合、座部マッサージアームを上下に揺動させても、座部施療子が座部クッションマットを通り抜けて施療部に到達することは困難であり、施療部に満足なマッサージを加えることは難しい。
【0051】
しかし、移動幅が大きい第1実施形態の座部マッサージアーム30では、座部マッサージアーム30が大きな移動幅で上下に揺動するので、肉厚の座部クッションマット19を通り抜けて座部施療子22を臀部や太腿などの施療部に到達させることが可能となる。つまり、長尺の座部マッサージアーム30を採用した第1実施形態の座部マッサージ機構5では、従来では採用できなかった肉厚の座部クッションマット19を採用することが可能となる。
【0052】
なお、座部クッションマット19に肉厚のものを採用すると、肉厚の座部クッションマット19により座部施療子22をマット内に十分に引き込んで収容できるため、使用者Uに座部施療子22の存在を感じさせないようにすることが可能となる。つまり、マッサージを行っていない状態の座部2、言い換えれば座部施療子22がマット内に十分に引き込まれた状態で座部駆動モータ33が停止した座部2に着座する場合、座部2に着座した使用者Uは座部施療子22に接触する前に、座部クッションマット19に接触するが故に、使用者Uは座部施療子22の存在を感じることがなくなり、座部2に着座しても異物感や不快感を覚えることがなくなる。
【0053】
つまり、第1実施形態のマッサージ機構隔離手段38では、座部マッサージ機構5の座部施療子22が下方(座部2内)に引き込まれた状態で駆動を停止すると「座椅子モード」となり、座部マッサージ機構5の座部施療子22が上方(座部2の上方)に引き出された状態が起こるようにマッサージを行うと「マッサージモード」となる。
図6及び
図8に示すように、マッサージモードの座部マッサージ機構5では、座側ボス部材35は、座側回転軸34に対して偏心した状態で回転している。例えば、座側ボス部材35が座側回転軸34に対して後方に偏心した状態で回転している状態を考える。この状態では、座側ボス部材35に回転可能に外嵌する座部環状嵌合部32も後方に偏位した位置に存在している。つまり、後方に偏位した分だけ、座部環状嵌合部32から座部マッサージアーム30の中途側(リンク部材37の上端が連結している位置)までの前後方向に沿った距離は短くなるため、リンク部材37が水平方向に対して大きな角度で起立する。その結果、座部マッサージアーム30の他端(後端)が一端(前端)に対して上方に位置するようになり、座部マッサージアーム30の他端(後端)に取り付けられた座部施療子22も上方に位置するようになる。
【0054】
具体的には、
図10の左側に示すように、マッサージモードの座部マッサージ機構5では、座部2の上面の高さを示す「H
3」に対して、座部施療子22が下端の一部を残して全て上方に突出しており、この突出した部分の座側施療子を用いて臀部や太腿などの施療部を施療することが可能となっている。
なお、上述した座側ボス部材35が座側回転軸34に対して後方に偏心した状態で回転している状態では、座部施療子22は座部2の上面より上方に突出するが、座側ボス部材35の回転位置が座側回転軸34に対して前方などに変化すれば、座部施療子22の高さは座部2の上面と同じになったり、低くなったりする。ただ、座部施療子22が上面より上方に突出していれば、臀部や太腿の施療部を施療することは十分に可能となる。
【0055】
一方、
図7及び
図9に示すように、座椅子モードの座部マッサージ機構5では、座側回転軸34の周囲を偏心状態で回転する座側ボス部材35は、座側回転軸34よりも前方に全体的にずれた状態で回転しており、この座側ボス部材35に回転可能に外嵌する座部環状嵌合部32も前方に偏位した位置に存在している。つまり、前方に偏位した分だけ、座部環状嵌合部32から座部マッサージアーム30の中途側(リンク部材37の上端が連結している位置)までの前後方向に沿った距離は長くなる。そのため、リンク部材37が水平方向に対して小さい角度で倒れ込むようになり、座部マッサージアーム30の他端(後端)が一端(前端)に対して下方に位置するようになって、座部マッサージアーム30の他端(後端)に取り付けられた座部施療子22も下方に位置するようになる。そして、座側ボス部材35の回転位置が座側回転軸34に対して前方になっているときに、座部駆動モータ33を停止させれば、座部マッサージ機構5が座椅子モードの状態となる。
【0056】
具体的には、
図10の右側に示すように、座椅子モードの座部マッサージ機構5では、座部2の上面の高さを示す「H
3」に対して、座部施療子22が上端の一部を残して全て下方に引き込まれており、座部2の上面より上方にほとんど突出している部分がないので、使用者Uに座部施療子22の存在を感じさせないようにすることが可能となる。なお、本実施例では、座部施療子22が上端の一部を残す程度で下方に引き込まれる例を開示したが、本発明のシート型マッサージ機1では座部施療子22を座部クッションマット19の上面とほぼ同じ位置か、上面の下方まで引き込むものを採用しても良い。
【0057】
また、座側ボス部材35の回転位置が座側回転軸34に対して前方になった状態で座部駆動モータ33を停止させるには、座側ボス部材35の回転位置をセンサなどでセンシングしたり、座部マッサージアーム30の動きで作動するリミットスイッチなどを設けたりすれば、座側ボス部材35の回転位置が座側回転軸34に対して前方になった状態で座部
駆動モータ33を停止させることが可能となる。
【0058】
上述した第1実施形態のマッサージ機1では、駆動モータの高出力化のようなコストの高騰につながるような変更をすることなく、座部マッサージアーム30を長尺にし、リンク部材37を用いた平行リンク機構を採用することで、座椅子モード及びマッサージモードを採用可能としている。つまり、第1実施形態のマッサージ機1では、簡単な構造で且つコストの高騰を招聘することなく、座椅子モード及びマッサージモードを双方実現することが可能となっており、マッサージを行っていない場合に着座する使用者Uに満足の行くくつろぎを与えることが可能となっている。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態のマッサージ機1について説明する。
【0059】
図11に示すように、第2実施形態のマッサージ機1は、背もたれ部3の部分に特徴があり、第1実施形態のようにマッサージ機構自体を下方に移動させるマッサージ機構隔離手段38を採用したものではなく、マッサージ機構を別部材で覆うマッサージ機構隔離手段38を採用したものとなっている。
具体的には、背もたれ部3の上端には、背部クッションマット4(クッションマット)が帯状の連結帯39を介して、前後方向に折り返し自在に設けられている。この背部クッションマット4は、背もたれ部3のほぼ全面を覆うことができる面積を備えた略正方形の板部材であり、発泡ウレタンなどのクッション性に優れた材料で形成されている。また、連結帯39は、背部クッションマット4よりも左右方向にやや狭幅の布で形成されており、背部クッションマット4を、背もたれ部3の前面に重ね合わされた状態に折り返したり、背もたれ部3の後方に垂れ下がった状態に折り返したりできるようになっている。
【0060】
つまり、連結帯39を境に背部クッションマット4を背もたれ部3の前面に重ね合わされた状態に折り返すと、折り返された背部クッションマット4で背部施療子9や背部マッサージアーム10などの背部マッサージ機構6を覆うことができ、使用者Uに座部施療子22の存在を感じさせないようにすることが可能となる。
一方、連結帯39を境に背部クッションマット4を背もたれ部3の後側に折り返すと、背部クッションマット4により背部マッサージ機構6が被覆されなくなり、前方にむき出しになった背部マッサージ機構6で背側の施療部をマッサージすることが可能となる。
【0061】
つまり、第2実施形態のシート型マッサージ機1は、前後方向に折り返し自在な背側クッションマット4をマッサージ機構隔離手段38として用いたものとなっている。
第2実施形態のマッサージ機構隔離手段38は、マッサージ機構の周囲にガイドレールなどが配設されていて、長尺なマッサージアームを採用することができないような場合に好適に用いることができる。
【0062】
なお、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0063】
上述したマッサージ機構を使用者Uから引き離すマッサージ機構隔離手段38と、マッサージ機構を別部材で覆うマッサージ機構隔離手段38とは、いずれか一方のみ用いても良いし、双方用いても良い。また、マッサージ機構を使用者Uから引き離すマッサージ機構隔離手段38を背もたれ部3に用いたり、マッサージ機構を別部材で覆うマッサージ機構隔離手段38を座部2に用いたりしても良い。
【0064】
また、本発明のシート型マッサージ機は、必ずしも座部2と、背もたれ部3と、クッションマット4aを長手状に連結した構造を有する必要はない。例えば、
図12に示すように、使用者が着座する座部3(この中には、座部マッサージ機構5が内蔵されている)のみを座布団のようにして使用することも可能である。また、座部2を複数連結(例えば2連結)して使用したり、座部2にクッションマット4aを連結した形態のシート型マッサージ機として用いても何ら問題はない。
【符号の説明】
【0065】
1 マッサージ機
2 座部
2a 第1マッサージ体
3 背もたれ部
3a 第2マッサージ体
4 背部クッションマット
4a クッションマット
5 座部マッサージ機構
6 背部マッサージ機構
7 背部フレーム
8 凹部
9 背部施療子
10 背部マッサージアーム
11 背部駆動部
12 背部動力変換機構
13 背側回転軸
14 背部駆動モータ
15 背側ボス部材
16 背側環状嵌合部
17 背部支持枠
19 座部クッションマット
20 座部支持枠
21 貫通孔
22 座部施療子
23 連結部
25 表面部材
27 切り欠き
28 座部駆動部
29 座部動力変換機構
30 座部マッサージアーム
31 ケーシング
32 座部環状嵌合部
33 座部駆動モータ
34 座側回転軸
35 座側ボス部材
37 リンク部材
38 マッサージ機構隔離手段
39 連結帯
U 使用者